JP2005097036A - 水素処理用多成分ガラス材料及び水素処理複合体 - Google Patents

水素処理用多成分ガラス材料及び水素処理複合体 Download PDF

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Abstract

【課題】水素エネルギー関連技術における材料、構造体および装置を提供する。
【解決手段】本発明はガラス3を有する。ガラス3は、雰囲気中の水素の分圧の高低により、水素を分解して生成水素原子を溶解し、あるいは逆反応として溶解水素を水素分子として雰囲気中に放出する機能を有し、且つ雰囲気中の水蒸気の分圧の高低により、水分子を分解して生成水素原子を選択的に溶解し、あるいは逆反応として溶解水素を雰囲気中の酸素との反応によって水蒸気分子として放出する機能を併せもち、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化タングステンのうち少なくとも1種を含む。
【選択図】 図2

Description

本発明は、水素エネルギー関連技術における材料および構造体および装置に関する。詳しくは、水を熱化学的に分解して水素を製造する装置、水素原子センサー、水素分子センサー、水素分離精製装置、水素貯蔵装置など水素処理を目的とする各種装置、およびこれらの装置において、水や水素などの含水素分子の分解、水素原子の溶解・拡散、水素分子の放出等の素機能を受け持つ材料および構造体に関する。
二酸化炭素の増加による地球温暖化および石油資源の枯渇に対応する為、従来の化石燃料利用に代わり水素エネルギーを利用する事がますます重要になって来ている。水素を有効利用するためには、水素を処理する各種の装置が必要になる。例えば、水素を製造する装置、水素を分離精製する装置、水素を貯蔵・輸送する装置、水素を検出する装置、水素を電気エネルギーに変換する装置(燃料電池)、水素燃焼エンジンなどである。これらの装置には、その機能を実現するために各種の材料および構造体が使用される。水素分離精製装置に使用される水素選択透過膜および燃料電池に使用されるプロトン導電膜などがその代表的な例である。
以下、水素処理装置および、そこで必要とされる水素処理用材料に関して述べる。第一に、水素製造に関わる技術課題を説明する。水素エネルギーシステムの理想的形態を構築する水素製造技術は、エネルギー消費地での、水を原料とし太陽光をエネルギー源とした方法である。水を原料とすれば、化石燃料の分解で問題となったCOの発生を伴わない。更に、水素はエネルギー変換後再び水に戻るので、エネルギー伝達媒体として再利用される。また、水は地球上の多くの地域に存在するため、化石燃料のような資源枯渇の問題も無い。
太陽光をエネルギー源として水から水素を製造する方法は、光エネルギーをフォトンとして利用する方法および熱として利用する方法に大別される。前者には、例えば特許文献1に開示される、固体触媒を光励起し生成した励起電子と励起正孔により水を分解する光触媒法がある。この方法では、実際上約500nm以下の波長の光だけが利用できる。そのため、地表上に到達する太陽光の全エネルギーのうちおよそ1/4程度しか利用できないという、本質的な制限がある。また固体表面で酸素と水素が同時に生成されるため、水素を酸素および水蒸気から分離するためのプロセスおよびエネルギーが必要となる。
水の一段階熱分解反応を有意に進行させるのに必要な温度は約3000℃である。従って、太陽光を熱エネルギーとして水から水素を製造する方法では、太陽光を巨大面積から小さい空間に集光する技術の開発が課題となり、実用的なシステムは未だ開発されていない。
また、非特許文献1および特許文献2に開示されているように、900℃程度の温度で熱化学的反応を利用し水から水素を生成する研究もなされている。これらは複雑な工程を構築するために、大型のプラントにならざるを得ないという欠点を持つため、現在まで実用化されていない。
機能性材料を利用した熱化学的分解法として、特許文献3にはゼオライトの触媒反応により400℃の温度で水蒸気から水素を生成する方法が開示されている。この方法は、従来の熱化学的方法に比較し、材料の持つ触媒機能を利用するため、簡単な構成のシステムが実現できる可能性がある。しかし、この反応では水素と同時に不可避的に酸素も同時に発生するため、後処理装置として水素と酸素を効率的に分離する装置を必要とするという欠点を持ち、水素を生成する方法としては完結していない。
太陽熱を利用し集光度の低い光学系で到達できる温度で、あるいは有効利用されず大気中に放出されている工業廃熱で得られる温度で、水から水素を高効率で製造できるシステムを実現する為にも、新たな水素処理用材料が必要である。この水蒸気から水素を生成する目的で使用される材料は、ゼオライトのようにその表面で水蒸気を水素と酸素に分解する機能を有するのみならず、同時に、水素と酸素を分離し、水素を取り込む機能を有することが望ましい。このような材料を利用することにより、太陽熱もしくは工業廃熱を利用した、水を原料とする簡易な水素生成システムが実現できることは容易に理解されるであろう。
上記水素を選択的に取り込む機能を有する材料は、他の目的の水素処理装置にも求められる材料である。代表的な例として、水素の分離精製技術について説明する。現在、水素は、天然ガス、LPGまたはメタノールなどの炭化水素を原料として、水蒸気改質法などにより製造されている。水蒸気改質法では、通常、水素とともにCO、HOなど他の気体も副生される。従って水素をエネルギー源として利用するためには、生成混合気体から水素を分離精製することが必要である。
水素を含む混合気体から水素を分離する方法としては、吸着剤により不純物を吸収分離する方法、有機、無機、または金属・合金の水素分離膜を利用し分離する方法(膜分離法)などがある。そのなかで、膜分離法はエネルギー利用効率、分離効率、装置の簡便性および運転の容易性などの観点から優れた方法であるといえる。膜分離法に使用される水素分離膜には、多孔質膜および非多孔質膜がある。多孔質膜にはその原理上、最小分子種である水素の選択性には限界がある。
水素吸蔵合金は、雰囲気中の水素分圧に応じて水素を可逆的に吸収あるいは放出する機能を有する。特に、PdおよびPdを主成分とする合金は優れた水素選択性および水素透過性を有しており、一部の応用には工業化されている。このような金属・合金の非多孔質膜を用いた水素分離精製法では、水素を原子に解離して透過させるため原理的に他の成分を含まない高純度な水素を製造することができる。
一般的な水素分離精製膜は、厚さ0.2mm程度のPd−銀Ag合金膜で、水素の拡散係数が実用的な値となる400℃程度の温度で使用される。しかしながら、半導体工業等のように付加価値の大きな工業分野での利用はともかく、Pd基合金がより一般的に利用されるためには、Pdの価格が障害となる。
この課題を解決するため、より低価格のバナジュームVなどの合金を用いる方法(特許文献4)が提示されているが、これらの合金膜は、一酸化炭素、水蒸気などを含む高温の改質ガス中で長時間使用すると、その性能が劣化するという欠点を有する。このため、表面をPd薄膜で被覆することが必要になる。しかし、その場合、被覆したPdと基体である金属が合金層を形成し、水素透過性能を劣化させるという新たな問題が生じる。
このような課題を解決するために、特許文献5はPd等の金属と鉄Feなどの金属板間に水素輸送性のある無機物層を挿入した構造の多層膜を水素分離膜として提案している。ここで、無機材料の水素透過膜としてはSiO、WO、SrCeO等が例として挙げられている。
しかし、これらの無機材料膜はそれぞれ下記の欠点を有する。SiOは水素分子透過性膜の中では良好な水素選択性を示し、ガラスの中では大きな水素拡散係数を有する物質である。しかしながら、金属中の水素拡散係数と比較すると2桁以上小さく、また、水素の溶解度も低いため、水素透過膜として利用するには透過能力が小さい。
SrCeOは800℃、望むらくは900℃で、水分を補給した環境でその機能を発揮するため(例えば特許文献6参照)、上記のような構成では安定した水素透過性を実現できないという欠点を有する。
また、SiOや酸化物結晶は金属に比較して小さな熱膨張係数を有するため、金属と複合膜とした場合、熱膨張係数差が原因となり膜にクラックを生じさせる可能性が大きいという欠点も有する。WOは化学的に不安定であり、高温下での長期使用には耐えない。
特許2526396号公報 特公昭55−3282号公報 特開平11−171501号公報 特公平6−98281号公報 特開平7−185277号公報 特開2003−2610号公報 特開2002−201041号公報 応用物理 第63巻 第8号 831頁 J.Appl.Phys 91,1650,2002年発行
本発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、その目的は、水素エネルギー関連技術における材料および構造体および装置、より詳しくは、水を熱化学的に分解して水素を製造する装置、水素原子センサー、水素分子センサー、水素分離精製装置、水素貯蔵装置など水素処理を目的とする各種装置、およびこれらの装置において、水や水素などの含水素分子の分解、水素原子の溶解・拡散、水素分子の放出等の素機能を受け持つ水素処理用材料および水素処理複合体を提供しようとすることにある。
第一に、本発明に至る基盤的発見について説明する。発明者等はTiO、Nb、WOを含有する酸化物ガラスが、水素吸蔵合金のように雰囲気中の水素分子分圧に依存して可逆的に水素を吸収・放出する機能を有すること、また、これらのガラスは水素原子雰囲気下で効率良く水素原子を吸収することを見いだした事にある。この性質は同時に、これらの材料が極めて高い水素選択性を有している事を意味する。従来、例えば特許文献7に開示されているように、多成分ガラス中に水素が存在することは知られていたが、このような性質を有する事は知られていない。
第二の発見は、これらのガラス材料は広い組成範囲で大きい水素拡散係数をもつことである。従来知られている最も高い水素拡散係数をもつ酸化物ガラスは、シリカガラスである。その500℃における水素の拡散係数は、約6×10−7cm/sである。これに対し本発明に関わるガラス系では、約10−6cm/sと一桁以上大きな値を持つ。
第三の発見は、本発明のガラス材料から作製された板状ガラスの一面をガラス転移点以下の温度において水蒸気雰囲気に曝露したとき、雰囲気中の水分子がガラス表面で分解され生成した水素原子のみが選択的にガラスに溶解し拡散することである。
そして、更に、このガラスの対向面に予め水素吸蔵性合金を積層複合化しておくと、拡散水素が合金層にも分配溶解され合金側雰囲気の水素分圧に応じて水素分子として放出されることも観測された。
なお、これらのガラスの熱膨張係数は約10−5/K程度であり、SiOや酸化物結晶と比較してより金属に近い値を有している。このため、特に水素吸蔵性合金との積層複合体を容易に実現することが出来る。この積層複合体は、水素の分離精製膜等の水素処理体とし優れた性能を持つ。
以上の発明により、水を原料とし約500℃以下の廃熱等をエネルギー源とした水素製造装置を実現する基盤となる材料、水素選択膜を実現する基盤となる材料が実現できる。水素を吸収し、水素を伝達し、水素を放出する機能を有する材料は、上記以外の水素処理装置にも広く適用可能である。更に、この材料と水素吸蔵合金からなる積層複合体はこの材料の水素処理機能を更に強化することにより、多様な目的の水素処理装置に利用可能である。
本発明の水素吸収・放出機能をもつ多成分酸化物ガラス材料について説明する。TiO、Nb、WOのいずれか一種を含有するガラスにおける水素の吸収・拡散・放出は、以下のような機構により進行すると考えられる。
これらのガラスは、数百℃以上の温度で水素分圧がおよそ大気中のそれより高い雰囲気に置かれると、ガラス表面近傍の易還元性イオンであるTi4+、Nb5+、W6+などは水素分子を分解し生成した水素原子から電子を引き抜いて自分自身は還元され、Ti3+、Nb4+、W5+に変わる。
電子を奪われた水素原子即ちプロトンの存在状態は、ガラス組成によって多様な変化を示す。たとえば周囲の酸素イオンと結合して水酸基−OHを形成する。あるいは特定のイオンと結合することなく擬自由イオンとして格子中に溶解する場合もある。存在様式によらずプロトンは、過剰負電荷をもつ還元イオンの周囲にあって電荷補償の役割を負っている。このようなプロトン/電子のペアは近傍のTi4+、Nb5+、W6+の上を容易に移動できるので、結果的に水素原子が高速で拡散する。これらの現象は電子スピン共鳴吸収測定、可視−近赤外−赤外域の光吸収測定から確認できる。
水素の溶解と拡散はガラス転移点以下の温度でも進行するため、このような温度では水素の吸収・溶解によってガラスが結晶化したり、ガラスを形成する骨格構造に大きな変化が生じたりすることはない。従って、このガラス材料は長期に安定して使用可能であることが理解されるであろう。
水素を吸収・溶解したガラスが低水素分圧の雰囲気に置かれると、溶解水素は逆のプロセスでガラスから雰囲気へ水素分子として放出される。低水素分圧の雰囲気は、真空ポンプによって全圧を低下させる、窒素や不活性気体など水素に対して不活性なガスを流通させるなどの方法で実現される。これらの方法により、水素あるいは水素と不活性ガスとの混合ガスを得ることができる。
本発明のガラスの組成について説明する。本発明のガラスは、雰囲気中の水素の分圧の高低により、水素を分解して生成水素原子を溶解し、あるいは逆反応として溶解水素を水素分子として雰囲気中に放出する機能を有し、且つ雰囲気中の水蒸気の分圧の高低により、水分子を分解して生成水素原子を選択的に溶解し、あるいは逆反応として溶解水素を雰囲気中の酸素との反応によって水蒸気分子として放出する機能を併せもち、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化タングステンのうち少なくとも一種の酸化物を含有する多成分系ガラスであれば他の成分に制限はなく、たとえば燐酸塩系、珪酸塩系、ホウ酸塩系、ゲルマン酸塩系、およびそれらの混合系ガラスであってよい。
水素の拡散係数は、隣接するTi、NbおよびWイオン間の距離が短くなるほど大きくなるため、これら陽イオンの含有量は多いことが望ましい。ガラスを構成する陽イオンのモル%表示でNb+Ti+Wの合計含有量が15%以上であることが好ましく、より好ましくは20%以上である。しかしながら、これらの陽イオンの合計量が多くなるとガラスの熱安定性が劣化し、ガラス作製の過程で結晶化しやすくなるため、その範囲はガラスを構成する陽イオンのモル%表示でNb+Ti+Wの合計含有量が、60%以下であることが好ましく、より好ましくは55%以下である。また、これらの陽イオンを多量に含有させるためには、燐酸塩ガラスであることが好ましく、その範囲はガラスを構成する陽イオンのモル%表示で、P:20〜50%、Nb:0〜50%、Ti:0〜20%、W:0〜40%であることがさらに好ましい。
本発明のガラスは水素の溶解度を大きくすることを目的として、Ti、Nb、Wの他に水素と反応して還元される陽イオンを少なくとも1種類以上さらに含有することができる。水素の溶解度が大きくなる陽イオンであればイオン種に制限はないが、Ti、Nb、Wよりも易還元性陽イオンであることが好ましく、このような陽イオンの例としてFe、Mo、Vなどが挙げられる。
上記以外の陽イオンであっても、熱的・化学的により安定なガラスを作製するために必要なもの、水素の拡散係数および溶解度を著しく低下させないもの、を含有することに制限はない。また、陰イオンに関しても熱的・化学的安定性、水素の拡散係数および溶解度を著しく低下させない範囲であれば、例えばフッ素や塩素などの酸素以外のものも含有することができる。
本発明のガラスをPdなど水素処理に用いられる水素吸蔵合金と比較したとき、特に水素分子を水素原子に解離する機能、および溶解水素原子を水素分子として雰囲気中に放出する機能が劣るため、用途によっては水素の吸収・放出量を更に大きくするという課題がある。
この課題は、本発明のガラスの持つ特異な性質、即ち金属中の水素と同様、実質的に水素原子としてガラス中に溶解するという性質を利用し、水素吸蔵合金膜と積層する事により解決する事が出来る。このような金属膜の例としてはNi、Pd、Ptおよびこれらのいずれか一種を含む合金を挙げることができる。この方法により雰囲気中の水素分子は金属合金の表面で速やかに解離吸着し、吸蔵された後、ガラスへと拡散する。あるいは、ガラス中の溶解水素は、金属合金膜へと拡散し、その表面で速やかに水素分子として脱離することができる。
また、上記積層複合化以外の方法でガラスと金属・合金を複合することも可能である。本発明のガラスは、ガラスを作製する際にあらかじめ構成陽イオンの一種として適切量のPd等を含有させておくことができる。このガラスを水素雰囲気下で加熱することによりPdイオンが水素により還元され、Pd原子が生ずる。Pd原子は加熱下では容易にガラス中を移動できるため、凝集してPd金属微粒子となる。ガラス表面に存在するPd微粒子は雰囲気中の水素分子を解離吸着し、あるいはガラス中の溶解水素を抽出し、自分自身の表面から水素分子として脱離させることができるため、このような方法によっても複合化機能を実現することが出来る。
以上述べたように、本発明のガラスは水素を溶解・拡散・放出する機能を有するので、水素分離膜として有効であることが理解されるであろう。特に、酸化物ガラスのガラス転移点は、例えば改質ガスに適用する水素分離膜の使用温度より高く設定できるので、このような高温で使用する水素選択膜として、水素選択性、耐久性の優れた水素選択膜を供給する事が可能となる。その実施の形態は実施例3で詳細に述べる。さらに、本発明のガラスから成る水素選択膜の表面を水素吸蔵合金で被覆する多層構造とする事により、水素透過能力は更に向上させる事が出来る。
本発明のガラスは、水素を含む化合物をガラス表面で分解し、水素を選択的に溶解・吸収することが可能である。特に水の場合その工業的効果が大きな事は、背景技術で述べた通りである。特に、特許文献3に開示されているゼオライトを利用した水の分解触媒に比較し、本発明のガラスは、水を分解すると同時に水素と酸素を分離し、水素をガラス内に取り込む機能を有する。この機能を利用する事により、簡易化された水の熱化学分解装置が得られる事が理解されるであろう。その具体的な実施の形態は実施例4で詳細に述べる。
また、本発明のガラスは、気相中の水素分子と水素原子に対する吸収能力が異なる事を利用し、水素分子と水素原子の混合雰囲気から水素原子のみを選択的に検出する水素原子センサーとして利用することもできる。
非特許文献2に記載されているように、近年、水素分子を2000K程度に加熱したタングステンワイヤ上に接触させ、水素原子を生成させる技術がある。しかしながら、雰囲気中の水素原子濃度は2光子レーザー誘起蛍光分光法や真空紫外吸収などで測定しなければならず、測定が複雑で、装置が高価であるという問題がある。
本発明の水素吸収性ガラスを用いれば、装置内で数百℃程度に加熱するだけで水素原子を吸収して着色するため、このガラスの光吸収を測定するだけで装置内の水素原子濃度を決定することができる。ここで使用されるガラスは、アルカリの飛散による装置および試料の汚染を防ぐため、これを含有しないことが望ましい。
なお、特許文献7では、ガラスを着色させる手法として水素ガスが存在する雰囲気下で熱処理する方法が開示されているが、水素の吸収速度は水素分子雰囲気下と水素原子雰囲気下では著しく異なり、この差を利用して水素原子センサーとする着想はない。
本発明のガラス中に溶解した水素は、解離してプロトンと遷移金属イオンに捕捉された電子のペアとなって存在している。従って本発明のガラスは、特に高濃度に水素を溶解させた場合は、電子絶縁性を維持したまま高いプロトン伝導性を示す。従って水素に関連した各種の電気化学装置、水素燃料電池、水の固体電気分解装置、電気化学的水素精製装置などのプロトン伝導体としても利用可能である。
次に本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
水素処理ガラス材料の水素吸収・放出機能についての実施例を説明する。ガラス材料の作製・処理手順は、以下のとおりである。出発原料としてNb、WO、Ba(PO、NaPO、NaCOを用い、1050〜1150℃で2時間溶解することにより、表1の組成1〜組成10に示したガラスを作製した。このガラスから約20mm×20mmで10mm厚の試料を切り出し、20mm×20mmの大きさを持つ2面について光学研磨を行った。
Figure 2005097036
次いで、水素の拡散係数を以下の方法で評価した。先に記述した方法で作製されたガラス試料をH雰囲気中で500℃、5時間の加熱処理を行い水素原子を拡散させた。拡散水素は電子を放出してTi、Nb、あるいはWを還元し、自分自身はプロトンとなる。本実施例のガラスではW6+がW5+に還元され、ガラスが青黒色に着色する。研磨面の中央部から20mm×10mmで1mm厚の試料を垂直に切り出し、両面光学研磨を行った後、切断前の表面から内部方向に500μmおきに位置を移動させながら可視光吸収スペクトルを測定した。光吸収測定の実効的断面積は、およそ100μmφである。各深さ方向測定位置に対する610nmでの吸収強度プロファイルを拡散理論式を用いて解析した結果、500℃での拡散係数は約4×10−6cm/secと算出された。
続いてガラス中に溶解・拡散した水素濃度の評価について説明する。表1の組成1に示したガラスから、約10mm×10mmで5mm厚の試料を切り出し、10mm×10mmの面の両面光学研磨を行ったあと、この試料をH雰囲気中で500℃、24時間の熱処理を行い、ガラス全体を青黒色に着色させた。電子スピン共鳴吸収測定から、このガラス中に生成した還元・着色種はW5+であること、および、その濃度即ち水素原子の濃度は、およそ1×1018個/cmであることを確認した。
上記の試料を5個使用し、以下の方法で昇温脱離分析を行った。まず、これらの試料を装置内に置き、真空度を10−8Torr以下にした後、試料を100℃まで加熱した。真空度が10−9Torr以下になった後、試料を500℃まで約20分で昇温し、500℃で約5時間保持した。昇温開始直後から装置内に発生した分子量2の気体(水素)を四重極質量分析計にて測定した。この結果、図1に示したように比較例と比較して、水素の発生量が多いことを確認した。
本実施例では、Pd/ガラス/Pd積層複合体の水素溶解・放出機能について説明する。ガラス材料の作製・処理手順は、以下のとおりである。出発原料としてNb、WO、Ba(PO、NaPO、NaCOを用い、1050〜1150℃で2時間溶解することにより、表1の組成1のガラスを作製した。このガラスから約10mm×10mmで5mm厚の試料を切り出し、10mm×10mmの面の両面光学研磨を行った。
ついでガラス中に溶解・拡散した水素濃度の評価について説明する。上記両面研磨試料の光学研磨面にイオンスパッター装置を用いて約10nm厚さのPdを製膜し、3.5%H−96.5%N雰囲気中で500℃、24時間の熱処理を行い、ガラス全体を青黒色に着色させた。電子スピン共鳴吸収測定から、このガラス中に生成した還元・着色種はW5+であること、および、その濃度即ち水素原子の濃度は、およそ3×1018個/cmであることを確認した。
続いてPd/ガラス/Pd積層複合体の水素放出機能について説明する。上記着色試料5個を使用し、以下の方法で昇温脱離分析を行った。まず、これらの試料を室温の真空装置内に置き減圧する。真空度が10−8Torr以下になった後、試料を100℃まで加熱・脱気した。真空度が10−9Torr以下になった後、試料を500℃まで約20分で昇温し、その温度で約13時間保持した。昇温開始直後から装置内に発生した分子量2の気体(水素)を四重極質量分析計にて測定した。この結果、図1に示したように実施例1と比較して、水素の発生量が多いことを確認した。また、測定終了後の試料からPdを研磨により取り除いたところ、ガラスは微かに青黒色に着色しているだけであった。即ち溶解水素の大部分は、Pd製膜面から雰囲気中に放出されている。
次に比較例1について説明する。SiOガラスを約10mm×10mmで5mm厚の大きさに加工し、10mm×10mmの面の両面光学研磨を行った後、約10nmのPdを成膜し、H雰囲気中で500℃・24時間の熱処理を行った。この試料を5個使用し、実施例1と同じ方法で昇温脱離分析を行った結果、図1に示したように実施例1と比較して、発生する水素量が少ないことが確認された。
次に、本発明の水素処理複合体を用いた水素分離精製膜について説明する。本発明の水素吸収性ガラスは、板状に加工し、その両面にPdを成膜するか、あるいはガラス中にPd微粒子を析出させることにより、水素選択性の優れた水素分離精製膜として使用することができる。
図2を用いて、Pd/ガラス/Pd3層構造の水素分離精製膜について説明する。図2に於いて、1は水素流入側Pd薄膜、2は水素流出側Pd薄膜、3は本発明の水素溶解性ガラス、5は水素透過性を有する多孔質セラミックスである。本発明の水素処理ガラス材料は、これまで説明したように水素選択性の優れた材料であるため、水素流入側のガラス表面に成膜する水素流入側Pd薄膜1にピンホールが存在していても水素以外の分子がガラスを透過することはなく、また、一酸化炭素や水蒸気がガラスに接触しても水素透過性に影響することはない。このため水素流入側Pd薄膜1の膜厚は100nm以下にすることが可能である。
本発明のガラス自体は、水素の拡散係数および溶解度が水素吸蔵合金と比較すると小さく、厚みを大きくすると十分な水素透過量が得られなくなる。このためガラスの厚みは1マイクロメートル以下にすることが好ましい。水素処理ガラス層を透過した水素原子は、水素流出側Pd薄膜2の表面で水素分子として放出される。このPd薄膜は、水素を放出させる機能だけがあればよいため、その膜厚は100nm以下にすることができる。
上記のようにPd薄膜/ガラス/Pd薄膜 3層構造水素分離精製膜の全厚さは1マイクロメートルのオーダーであるため、自立膜としては機械的強度が不十分である。図2の例では、これを気体透過性をもつ多孔性セラミックス5で支持することによって補っている。
図3は、非多孔質水素透過性材料であるNb金属板を支持体として用いた場合の例である。この構造では、水素は、水素溶解性ガラス3、Nb金属板4を通過して流出側Pd薄膜2の表面で水素分子として放出される。この場合もPd薄膜の厚さは、図2の場合と同様に100nm以下にすることができる。
続いて水素処理複合体を用いて水素を精製する際に、透過精製される水素量を増大させる方法について説明する。合金/ガラス/合金 3層構造複合体を構成する素材のなかで、最も小さい拡散係数をもつものはガラス材料である。従ってガラス層を通過する水素流束を大きくするためには、ガラスの水素流入側と流出側の両端面における水素濃度差を大きくすることが有効である。水素処理ガラスを透過する水素原子の量は流入側と流出側の端面濃度の差に比例するからである。両端面の水素濃度差を制御するために、合金中の水素の平衡溶解度は、合金の電位(フェルミエネルギー)によって変化することを利用する。図2および図3の水素流入Pd薄膜1と水素流出Pd薄膜に、それぞれプラス電位およびマイナス電位を与えることにより、水素拡散係数にほとんど影響を与えることなく、水素吸収性ガラスの端面における水素濃度を変化させることができる。
一段階の反応で水を分解して水素を製造するには超高温を要するので、比較的低い温度で実現するいくつかの素過程を組み合わせる。本発明のガラス/水素吸蔵性合金積層複合体を利用することにより、水を分解し水素を選択的に抽出できる分離不要のプロセスが実現できる。
反応を以下の5段階の連続過程で進行させる。
第1反応: 廃熱、太陽光などを熱源とした水の加熱蒸発
第2反応: ガラスなどの固体酸化物表面における水の分解による水素原子生成
第3反応: 水素原子の上記固体内への選択的拡散
第4反応: 水素原子の合金層への分配・拡散
第5反応: 水素分子の合金層表面からの脱離
この一連の反応を可能とする最も重要な技術的要素は、水をその表面で分解し、生成された水素を選択的にその内部に取り込み、酸素と分離する機能である。この現象は従来から知られているものではなく、発明者の研究を通じ新たに見いだされたものである。特許文献3記載のゼオライトの触媒反応、もしくは広く知られている光触媒の反応(例えば特許文献1)に於いても、何らかの物質(触媒)と水が反応し、結果的に水が分解され水素が生成される点に関しては上記の現象と同一である。しかし、これら公知の技術においては、生成された水素は水もしくは水蒸気および酸素と分離される事は無く、ともに触媒の外部に混在することとなる。これに対し、本発明の作用では、分解された水素はガラスの内部に取り込まれ、水蒸気と酸素はガラスの外部に留まる。この為、本発明ではUT−3(非特許文献1参照)などの従来の熱化学的分解法による水素生成法と異なり、実質的に中間生成物が存在しないので、水素生成システムは非常に単純なものとなる。
以下に、本発明に関わる水素処理体を用いて水から水素を生成する実施例を詳細に説明する。図4に、本装置の構成を模式的に示す。装置は、水蒸気保持容器11、水の分解および水素の取り込み反応を実現するガラス材料/Pd複合体からなる反応要素12、反応要素12を機械的に保持する多孔質材料からなる保持板13、水素取り出し容器14および水素吸蔵合金を収容している水素貯蔵手段18が設置されている。この装置の基本機能は、約200℃〜500℃の水蒸気を水蒸気保持容器に充満する事により水素取り出し容器14を経由して水素貯蔵手段18内の水素吸蔵合金に水素を貯蔵するものである。
次に、反応を詳細に説明する。水蒸気は水を原料とし、図4に示した装置の外部に置かれたヒーターにより生成され、水蒸気導入口15から水蒸気保持容器11に導入される。余分な水蒸気は水蒸気排気口16から除去される。水蒸気の圧力は、ほぼ1気圧である。水から水蒸気を生成する反応は収率100%で実現する。水は水蒸気に変化する事で約15kcal/molの自由エネルギーを得る事が出来る。
反応要素12は、本発明の水素溶解性ガラスとPd薄膜の積層複合体である。本実施例で使用したガラスの組成は30.7PO5/2−18.5NbO5/2−15.4WO−6.2BaO−29.2LiO1/2(モル%)であった。先に記述した方法に準じて直径25mmのガラス円板を作製し、これに光学研磨を施して厚さを100μmとした。この円板の片面にイオンスパッター装置を用いて約10nmのPdを製膜した。Pd面を多孔質保持板側にして合体させ、反応器にとりつけた。反応要素の円周部は、反応器にセラミックシールで封着され、電気絶縁性と気密性が確保されている。
水蒸気保持容器11内の水蒸気は、反応要素12のガラス表面で水素と酸素に分解される。発生した酸素は水蒸気保持容器11から余分な水蒸気とともに水蒸気排気口16から除去される。水素は反応要素12の水素溶解性ガラス層に溶解し、その中を拡散してPd膜に達する。本実施例で使用されたガラス中の水素の拡散係数は、300℃から500℃で4.5×10−8cm/sから1×10−5cm/sであった。
水素のガラス層への溶解・拡散反応は、反応要素を形成するガラス内の水素原子濃度が表面の吸着水素濃度との間で平衡に達した状態で終了する。従って、反応を連続的に進め水素を取り出すためには、反応要素内の水素原子を取り除く必要がある。この為の基本的な手段は、水蒸気取り出し容器側表面を構成するPdから水素を水素取り出し容器14内の雰囲気中に放出させる事である。水素分圧が低い状態では、Pd中の水素濃度に対応した放出圧力で、水素は雰囲気中に放出される。本実施例では、水素取り出し容器14内の空気を不活性ガスで予めパージして、水素分圧を低下させた。放出された水素は外気温まで冷却され、水素貯蔵手段18内のより小さい放出圧力を有する水素吸蔵合金に捕集される。上記の方法により水から水素が連続的に生成捕集される。
先に記述した水分解水素製造装置を用い、水蒸気に曝露されている反応要素12の単位面積、単位時間あたりの水素収量を増大させる手段(電位アシスト法)について図5を用いて説明する。但し、反応温度、水蒸気保持容器内の水蒸気分圧および酸素分圧、ガラス組成および厚さ、合金組成および厚さ、および水素取り出し容器14内の水素分圧などの反応条件は、すべて最適条件に設定されている。収量を増大させるためのひとつの方法は、ガラス層の水蒸気側の面と合金側の面での濃度勾配を大きくさせることである。
これは、先に述べたたように、水素吸蔵合金中の水素濃度はそのフェルミレベルの制御によって増減できることを利用し、図5に模式的に示した構造によって実現できる。この場合、水蒸気は、接地されている金属製の水蒸気保持容器11と平衡電位にある。ガラス21中の水素濃度は、この水蒸気との平衡条件によって決定されている。22はガラスの水蒸気側の面に取り付けられた参照電極である。必ずしも必要ではないが、参照電極22と水素放出用合金23とは同種金属であるとする。参照電極の水素濃度は、接触しているガラスとの平衡関係によって決定されている。水素放出合金の電位を参照電極の値に対し0.1Vのオーダーで上下させることにより、水素放出合金中の水素濃度を増減することができる。このような操作によって、ガラス中の水素の濃度勾配を高めることができる。同時に水素放出合金の水素放出平衡圧力を制御することができる。この構成における電位制御では、定常電流は存在しない。従って電位制御用電力の大部分は水素の自由エネルギー増大に使われており、電力の損失は極めて小さい。
ガラス中の水素濃度を増大させ、水素収量を増大させる電位アシスト法の第二の例を説明する。図6では、参照電極22を水蒸気と不活性なたとえば白金ブラックなどの多孔体電極を利用し、ガラス表面全体に分散させている。水素放出合金23の電位は、参照電極に対し0.1Vのオーダーで任意の値に制御できることは図5の場合と同様である。参照電極と水素放出合金の電位は、接地されている水蒸気保持容器11および水素料取り出し容器14とは独立に制御できる。この構成では、水蒸気に接しているガラス表面の水蒸気濃度は、実質的に参照電極の電位によって規定される。従ってこのような構成によりガラス中の水素濃度を高め、結果的に水素収量を増大させることができる。この場合、水素放出合金の電位を参照電極に対し制御することによりガラス中の水素流束を大きくできること、水素放出合金の放出圧力を制御できること、および供給電力の損失が極めて小さいこととは上記の場合と同様である。
本実施例では水を分解し水素を取り込む材料として、段落0062に記述した組成をもつガラスを使用したが、この材料はこれに限定されるものではなく、TiO、Nb、WO、MoO、V、Fe、Sb、GeO、CeOのうちいずれか1成分あるいはこれらの混合物を含むガラスが利用可能である。
本実施例では、水蒸気を生成させるため、水蒸気保持容器11の外部に設置したヒーターを利用したが、本発明は水蒸気の作製をヒーターに限定するものではない。むしろ環境保持の観点からよりすぐれた手段として、太陽熱を利用した水蒸気の作製、もしくは各種未利用工業廃熱を利用した水蒸気の生成方法を適用する事も可能である。
また、水蒸気は外部から水蒸気保持容器に導入したが、水蒸気保持容器11に直接水を入れ、保持容器を加熱する事により水蒸気を生成する方法を適用する事も可能である。この場合、発生した酸素を取り除くため、鉄粉などの酸素吸収剤を利用する事が反応効率を上げるために有効である。また生成した酸素は活性原子であるため、強い酸化性を利用した応用も可能である。
本実施例では反応要素の支持体に多孔質材料を使用したが,支持体には水素を透過する金属合金板を使用することも可能である。また本実施例では、金属膜としてPdを利用したが、これに限定されるものではなく、ガラス材料より大きな水素拡散係数を持つ金属が広く利用可能である。
本発明により、早急な開発が必要とされている水素クリーンエネルギーシステムに関連した諸技術の中で、水素製造、分離精製、貯蔵、およびセンシングなどに関わる材料の技術課題が解決される。たとえば水素製造に関しては、水を原料として、未利用廃熱あるいは簡易な集光系で得られる太陽光の熱をエネルギー源とする、準理想的水素製造システムを構築するための、水素処理材料および複合体が提供される。また本発明に関わる材料および複合体は、雰囲気中の水素濃度に依存して可逆的に水素を吸収あるいは放出する機能を有する。従って、本発明に関わる材料あるいは複合体を利用することによって、高水素選択性、高耐久性、コスト競争力の高い水素分離精製装置および水素センシングシステムなどが提供される。
実施例1、実施例2及び比較例の昇温脱離曲線を示す図。 水素選択膜の構成1を示す図である。 水素選択膜の構成2を示す図である。 水素生成装置の基本概念図である。 水素生成装置に於ける電位アシストを説明する図である。 水素生成装置に於ける電位アシストを説明する図である。
符号の説明
1 流入側Pd薄膜
2 流出側Pd薄膜
3 ガラス
4 Nb金属板
5 多孔質セラミックス
11 水蒸気保持容器
12 反応要素
13 保持板
14 水素取りだし容器
15 水蒸気導入口
16 水蒸気排気口
18 水素貯蔵手段
22 参照電極
23 水素放出合金

Claims (11)

  1. 雰囲気中の水素の分圧の高低により、水素を分解して生成水素原子を溶解し、あるいは逆反応として溶解水素を水素分子として雰囲気中に放出する機能を有し、且つ雰囲気中の水蒸気の分圧の高低により、水分子を分解して生成水素原子を選択的に溶解し、あるいは逆反応として溶解水素を雰囲気中の酸素との反応によって水蒸気分子として放出する機能を併せもち、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化タングステンのうち少なくとも1種を含む水素処理用多成分ガラス材料。
  2. ガラスを構成する陽イオンのモル%表示で、Nb+Ti+Wの合計含有量が15%以上であることを特徴とする請求項1に記載の水素処理用多成分ガラス材料。
  3. ガラスを構成する陽イオンのモル%表示で、Nb+Ti+Wの合計含有量が15〜60%であることを特徴とする請求項2に記載の水素処理用多成分ガラス材料。
  4. ガラスを構成する陽イオンのモル%表示で、Nb+Ti+Wの合計含有量が20〜55%であることを特徴とする請求項3に記載の水素処理用多成分ガラス材料。
  5. リン酸塩ガラスであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の水素処理用多成分ガラス材料。
  6. ガラスを構成する陽イオンのモル%表示で、P:20〜50%、Nb:0〜50%、Ti:0〜20%、W:0〜40%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の水素処理用多成分ガラス材料。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載した水素処理用多成分ガラス材料と、該ガラス材料に積層あるいは分散複合された水素吸蔵性合金とを有する水素処理複合体。
  8. 水素吸蔵性合金がパラジュームPd、ニッケルNi、白金Ptおよびこれらの少なくとも1種を含む合金であることを特徴とする請求項7に記載した水素処理複合体。
  9. 請求項1〜6のいずれかに記載した水素処理用多成分ガラス材料又は請求項7若しくは8に記載した水素処理複合体を有し、膜状に形成した水素選択膜。
  10. 前記水素処理用多成分ガラス材料又は水素処理複合体の表裏に電位差を付ける手段を設けた請求項9記載の水素選択膜。
  11. 請求項1〜6のいずれかに記載した水素処理用多成分ガラス材料又は請求項7若しくは8に記載した水素処理複合体と、水蒸気を発生する水蒸気発生手段とを有し、この水蒸気発生手段により発生した水蒸気を水素処理用多成分ガラス材料又は水素処理複合体に接触させた水素生成装置。
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