JP2005081474A - 超微細結晶電鋳工具およびその製造方法 - Google Patents

超微細結晶電鋳工具およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】耐欠損性の優れた電鋳工具の素材としての電鋳皮膜を、ニッケル−リン合金めっき法により製造するにあたり、高いめっき効率を維持しながら超微細結晶の電鋳皮膜を得る。
【解決手段】ニッケル源としての硫酸ニッケルと塩化ニッケル、リン源としての亜リン酸、pH調節剤およびニッケル源としての水酸化ニッケル、およびpH緩衝剤としてのクエン酸からなるめっき浴を使用してニッケル−リン合金めっき法により電鋳皮膜を形成する。この電鋳皮膜を工具素材とし、この工具素材を成形加工することにより、微小加工用の超微細結晶電鋳工具を製造する。
【選択図】図3

Description

本発明は、ニッケル−リン合金めっき法を利用して微細結晶を有する電鋳工具を製造する技術に関する。
工業製品の高集積化、小型化、高性能化に伴い、これらの工業製品を製作するための金型や構成部品も小型化、精密化し、これらの部品類に対する精密加工が増大している。このような精密加工に使用する工具は、工具の寸法が微小で、かつ製造の際に高い寸法精度および形状精度が要求され、さらに工具使用時の耐欠損性が要求される。
このような微小加工用工具として、微小径の鋼製あるいは超硬合金製の棒状シャンクの先端部にダイヤモンド砥粒やcBN砥粒などの超砥粒を電着により固着した電着工具がある。この電着工具では、砥粒層を多層に形成しようとすると、めっき金属層の偏析が大きくなって均一な厚さの砥粒層の形成が困難であるうえ、その内部の砥粒の分布も不均一になる。また、砥粒層を多層にすると、シャンク本体部と砥粒層形成部の境界部付近の径が小さいために当該部分の剛性が低下してしまう。このような点を考慮して、従来は微小径の電着工具として単層の砥粒層を形成した工具が使用されてきた。
しかし、上記のような微小径電着工具は、シャンクの径が微小であることおよび砥粒層が単層であることから、(a)電着時にシャンク先端に電流が集中して正確な形状の砥粒層の創成ができにくい、(b)砥粒の均一安定な電着が難しい、(c)微小径のシャンクの電着部の加工が難しい、(d)砥粒層が単層であるので、工具を工作機械に取り付けたときの振れを除去するツルーイングができない、(e)シャンクの電着部と砥粒層の接合が弱く、使用時に剥離しやすい、(f)工具自体が微小径であるために強度、剛性が小さく破損しやすい、砥粒保持力が不十分で寿命が短い、という問題がある。
このような問題に対処して、微粒の砥粒を多層に高密度でかつ均一に電着させる方法として、基材上に砥粒を沈降させるとともに、通電めっきをすることにより基材上に砥粒層を形成させる方法が特許文献1、特許文献2に開示されている。この方法によって得られる多層の砥粒層は、いわゆる電鋳材と同じものであり、基材から剥離した多層の砥粒層すなわち電鋳材を工具材料として成形加工し、微小加工用工具とすることができる。また、電鋳棒状体形成治具と陽極とをめっき浴に浸漬して電鋳法により得られた棒状体を成形加工する微小加工用工具の製造技術が特許文献3に開示されている。
電鋳材を工具材料として成形加工して微小加工用工具を製作する具体的な成形加工方法は、特許文献4にも開示されている。この特許文献4には、電鋳による工具材料の製造方法として、砥粒を混入、分散させためっき浴中において、陰極側にニッケル、ニッケル−リン合金、ニッケル−タングステン合金などの金属のめっき層を形成させ、砥粒を含有したニッケルまたはニッケル合金を母体とした柱状の工具材料を製造する方法が例示されている。
上記に例示されためっき法のなかで、ニッケル−リン合金めっき法は、他のめっき法に比して電析するニッケルの結晶粒が小さくなるという特徴がある。図5の(a)は、各種のメッキ浴を使用して、電析したニッケルの結晶粒の大きさと電鋳皮膜の弾性限度の関係を本発明者らが調査した実験例を示す図であり、図中、○印はニッケル−リン合金めっき浴を使用した場合を示し、▲印は光沢ニッケルめっき浴、●印はスルファミン酸めっき浴、▼印は半光沢ニッケルめっき浴、□印はワット浴を使用した場合をそれぞれ示す。同図からわかるように、使用するめっき浴によって電析するニッケルの結晶粒の大きさが変わり、ニッケル−リン合金めっき浴を使用した場合は他のメッキ浴を使用した場合に比してニッケルの結晶粒は小さくなり、弾性限度が高くなる。このように、ニッケル−リン合金めっき法ではニッケルの結晶粒が微細化される。ただし、市販のニッケル−リン合金めっき浴を使用した場合は、実験の結果では、その微細化の結晶粒の大きさは100Åが限度であった。
特開2000−254866号公報 特開2001−157968号公報 特開2002−264019号公報 特開2002−264017号公報
ところで一般に、ニッケル−リン合金めっき法によって得られるめっき皮膜は、ニッケル皮膜中にリンが固溶して皮膜の結晶粒が微細化し、とくにニッケル皮膜中のリンの含有量が約8%を超えると非晶質構造をとることが知られている。このような微細結晶粒ないし非晶質構造の皮膜は耐食性、耐薬品性などに優れているので、従来これらの特性が要求される部材などの表面処理法としてニッケル−リン合金めっき法が利用されている。
そこで、このようなニッケル−リン合金めっき法を微小加工用工具の素材の製造に応用することが考えられる。前述したように、微小加工用工具には、高い耐欠損性が要求される。耐欠損性の向上は、弾性限度を高めること、言い換えれば電析するニッケルの結晶粒を微細化することによって得られるが、従来の表面皮膜形成用のニッケル−リン合金めっき法では、めっき焼けを発生することなく高いめっき効率(めっき速度)で電鋳皮膜を形成することは困難であった。このことについて本発明者らが行った実験結果を参照して詳しく説明する。
図5の(b)は、ニッケル源としての硫酸ニッケル:150g/l、塩化ニッケル:150g/l、リン源としての亜リン酸:0〜105g/l、pH緩衝剤としてのホウ酸:30g/lのめっき浴(以下の説明でこのめっき浴を引用するときは、ホウ酸浴という)を使用したときの、亜リン酸濃度とニッケル結晶粒の大きさおよび電流効率との関係を示す図である。亜リン酸濃度が0のときに340Åであったニッケルの結晶粒は、亜リン酸濃度が20g/lになると100Å以下に微細化し、45g/lになるとさらに20Å程度に微細化した。しかし、亜リン酸濃度が45g/lのときの電流効率は20%以下であり、約1mmの膜厚の電鋳皮膜を形成するのに約81時間が必要であり、実用的なめっき効率が得られなかった。
図5の(c)は、同実験におけるめっき浴のpHと電流効率の関係を示す図である。めっき浴のpHと電流効率の間には正の相関があり、電流効率を高めるためにはめっき浴のpHを高くする必要がある。しかしながら、ただ単にめっき浴のpHを高くしただけでは、陰極付近の急激なpHの上昇によって陰極の表面に亜リン酸ニッケルが生成され、めっき焼けが発生する。そこで、めっき浴のPHを上げるとともに、陰極近傍の急激なPHの上昇を抑制し,しかもニッケル結晶粒の大きさが100Å以下の超微細結晶の電鋳皮膜を効率よく形成する技術が要請される。
本発明が解決すべき課題は、耐欠損性の優れた電鋳工具を得ること、および、この電鋳工具の素材をニッケル−リン合金めっき法により製造するにあたり、高いめっき効率を維持しながら超微細結晶の電鋳皮膜を得ることにある。
本発明者らは、高いめっき効率を維持しながら超微細結晶の電鋳皮膜を得ることのできるニッケル−リン合金めっき法について鋭意検討した結果、pH調節剤およびニッケル源として水酸化ニッケルを用い、pH緩衝剤としてクエン酸を用いためっき浴が、めっき焼けが生じることなく電流効率を高めるめっき浴として最適であることを確認して、耐欠損性の優れた電鋳工具およびその素材としての電鋳皮膜の製造方法の発明を完成させた。
すなわち本発明に係る電鋳工具は、ニッケル−リン合金めっき法により形成され、ニッケルの結晶粒の大きさが100Å未満である電鋳皮膜を素材として成形加工された超微細結晶電鋳工具である。
ここで、上記素材としての電鋳皮膜は、ニッケル源としての硫酸ニッケルと塩化ニッケル、リン源としての亜リン酸、pH調節剤およびニッケル源としての水酸化ニッケル、およびpH緩衝剤としてのクエン酸からなるめっき浴を使用して形成された電鋳皮膜であることが望ましい。
また本発明に係る電鋳皮膜の製造方法は、ニッケル源としての硫酸ニッケルと塩化ニッケル、リン源としての亜リン酸、pH調節剤およびニッケル源としての水酸化ニッケル、およびpH緩衝剤としてのクエン酸からなるめっき浴を使用してニッケル−リン合金めっき法により電鋳皮膜を形成することを特徴とする。
ここで、上記めっき浴の組成は、硫酸ニッケル:100〜200g/l、塩化ニッケル:50〜150g/l、亜リン酸:20〜105g/l、水酸化ニッケル:10〜100g/l、クエン酸:50〜300g/lとするのが望ましい。
上記の製造方法により製造した電鋳皮膜を工具素材とし、この工具素材を成形加工することにより、微小加工用の超微細結晶電鋳工具を製造することができる。
本発明に係る電鋳工具は、ニッケルの結晶粒の大きさが100Åより小さい超微細結晶の電鋳皮膜から成形加工された工具であるので、弾性限度が1700MPa以上と高く、耐欠損性に優れており、微小加工用工具として最適である。とくに、ニッケル源としての硫酸ニッケルと塩化ニッケル、リン源としての亜リン酸、pH調節剤およびニッケル源としての水酸化ニッケル、およびpH緩衝剤としてのクエン酸からなるニッケル−リン合金めっき浴を使用して形成した電鋳皮膜を素材として成形加工した工具は、電鋳皮膜が高いめっき効率のもとで経済的に製造されたものであるので素材コストが高騰することもなく、工具の製造コストも実用的な範囲で製造することができる。
上記のニッケル−リン合金めっき浴を使用して電鋳皮膜を製造すること、とくにpH調節剤およびニッケル源として水酸化ニッケルを用い、pH緩衝剤としてクエン酸を用いためっき浴を使用して電鋳皮膜を形成することにより、めっき時にめっき焼けを生じることのないめっき浴pH範囲内で電流効率を高めることができ、高いめっき効率のもとでニッケルの結晶粒の大きさが100Åより小さい超微細結晶の電鋳皮膜を経済的に製造することができる。
ニッケル−リン合金めっきにおいて、ニッケル皮膜中のリンの含有量が約8%を超えると大部分が非晶質構造になってしまうが、本発明においては、電鋳工具の耐欠損性を高めるのが第1の目的であるから、電鋳皮膜が非晶質構造となる前の超微細結晶の段階にとどめ、電鋳皮膜の弾性限度を高めて耐欠損性を向上させる。このための電鋳皮膜のニッケルの結晶粒の大きさは100Å未満であることが必要であり、さらには50Å〜10Åであることが望ましい。結晶粒の大きさが約20Åのとき電鋳皮膜の弾性限度は最大の2800MPaになることが本発明者らの実験で確認された。
ニッケルの結晶粒の大きさが100Å未満となる電鋳皮膜を高いめっき効率で製造できるめっき浴は、ニッケル源としての硫酸ニッケルと塩化ニッケル、リン源としての亜リン酸、pH調節剤およびニッケル源としての水酸化ニッケル、およびpH緩衝剤としてのクエン酸からなるニッケル−リン合金めっき浴が適しており、この場合の最適なめっき浴の組成は、硫酸ニッケル:100〜200g/l、塩化ニッケル:50〜150g/l、亜リン酸:20〜105g/l、水酸化ニッケル:10〜100g/l、クエン酸:50〜300g/lである。
上記のめっき浴組成において、硫酸ニッケルと塩化ニッケルおよび亜リン酸は従来のニッケル−リン合金めっきの場合と同様な目的で用いるものである。
ただし、硫酸ニッケルと塩化ニッケルの濃度は、本発明においてはpH調節剤およびニッケル源として水酸化ニッケルを用いることから、ニッケル源として必要な総量とめっき浴における硫酸ニッケルと塩化ニッケルの効能を考慮して、その範囲を設定する。硫酸ニッケルの濃度が100g/lより低くなると、めっき浴中のニッケルイオン濃度が減少するため、電析する皮膜の結晶サイズはより微細化されるが、電流効率が低下する。一方、200g/lより高くなると、めっき浴中のニッケルイオン濃度が増加して電流効率は増加するが、電析する皮膜の結晶サイズが大きくなるので好ましくない。また塩化ニッケルの濃度が50g/lより低くなると、陽極として使用したニッケル板から陽極溶出するニッケルイオンが減少し、150g/lより高くなると、ニッケル板が過度に陽極溶出し、陽極の損耗が増加するだけでなく、めっき中にめっき浴のpHが増加するので好ましくない。
亜リン酸の濃度は、ニッケルの結晶粒の大きさが100Å未満の電鋳皮膜を得るためには20g/l以上必要である。上限については、従来のホウ酸浴では亜リン酸の濃度が45g/lを超えるとめっき浴のpHが下がり電流効率が20%以下に下がってめっき効率が低下していたが(図5の(b)参照)、本発明においては、pH調節剤として水酸化ニッケルを用い、pH緩衝剤としてクエン酸を用いることにより、高い電流効率を維持することができるので、亜リン酸の濃度の上限を105g/lまで高めることができる。
水酸化ニッケルは、亜リン酸の濃度を高くしたときにめっき浴のpHが下がり電流効率が低くなるのに対処して、めっき浴のpHを高めるために用いる。同時に水酸化ニッケルはニッケル源ともなる。水酸化ニッケルの最適な濃度は、亜リン酸の濃度によって変わり、また水酸化ニッケルを用いることによってめっき浴pHがそれほど高くない領域でもめっき焼けが生じやすくなる傾向があるので、水酸化ニッケルの濃度は10〜100g/lの範囲内で亜リン酸の濃度に応じてめっき焼けの生じない適正な濃度を設定する。
亜リン酸と水酸化ニッケルの濃度の組み合わせによって異なるが、めっき浴pHがある値以上に高くなると陰極の表面に亜リン酸ニッケルが析出して、めっき焼けが生じやすくなる。クエン酸は、このめっき焼けの発生を抑制するためのpH緩衝剤である。電鋳皮膜のニッケルの結晶粒を微細化するためには亜リン酸の濃度は高いほどよいが、前述したように、亜リン酸の濃度が高くなるとめっき浴pHが下がって電流効率が低くなる。電流効率を高めるために水酸化ニッケルを用いるとしても、めっき焼けが生じない範囲内では水酸化ニッケルを多量に添加できないので、電流効率をそれほど高くすることができない。ここで、ホウ酸に比べて極めてpH緩衝性の強いクエン酸を使用すると、ホウ酸浴を使用した場合に比べ、pH増加剤としてだけでなくニッケル源としても作用する水酸化ニッケルを10倍程度多く、めっき浴に添加することができる。このため、クエン酸浴に水酸化ニッケルを多量に添加することにより、微細な結晶の電鋳皮膜を高い電流効率で造ることができる。
クエン酸の濃度は、亜リン酸の濃度が20〜105g/lで水酸化ニッケルの濃度が10〜100g/lの範囲内のとき、50〜300g/lの濃度範囲とするのが適当である。クエン酸の濃度が50g/lより少ないと、電流効率は増加するが、めっき浴のpH緩衝性が低下するために、めっき焼け生じやすくなる。一方、クエン酸の濃度が300g/lよりも多くなると、めっき浴のpH緩衝性が増加してめっき焼けは生じにくくなるが,ニッケルイオンと錯イオンを造る度合いが増すために、電流効率が低下する。クエン酸の濃度のより好ましい範囲は100〜200g/lである。
上記のニッケル−リン合金めっき浴を使用して製造した電鋳皮膜を素材として微小加工用工具を製造する際の素材の成形加工法は、前述の特許文献3あるいは特許文献4に記載の方法を利用することができる。
以下、本発明者らが行った一連の実験結果に基づいて、超微細結晶電鋳工具の素材としての電鋳皮膜の製造方法を詳しく説明する。
〔実験1〕
本実験は、水酸化ニッケルのめっき浴pHと電流効率に及ぼす影響を調査した実験である。実験に使用しためっき浴は、ニッケル源としての硫酸ニッケル:150g/l、塩化ニッケル:150g/l、リン源としての亜リン酸:0〜105g/l、pH緩衝剤としてのホウ酸:30g/l、pH調節剤およびニッケル源としての水酸化ニッケル:0〜15g/lのめっき浴(以下の説明でこのめっき浴を引用するときは、改良ホウ酸浴という)である。
図1(a)に、水酸化ニッケルの濃度をパラメータとした亜リン酸濃度とめっき浴pHとの関係を示す。図中、○印は水酸化ニッケル濃度0、▲印は水酸化ニッケル濃度5g/l、□印は水酸化ニッケル濃度10g/l、●印は水酸化ニッケル濃度15g/lをそれぞれ示す(図1の(b)、(c)も同じ)。各亜リン酸濃度において、水酸化ニッケルの濃度が増すとめっき浴pHが高くなる。ただし、めっき浴のpHが1.3付近でめっき焼けが発生した。
図1(b)に、水酸化ニッケルの濃度をパラメータとした亜リン酸濃度とニッケル結晶粒の大きさとの関係を示し、同図(c)に、水酸化ニッケルの濃度をパラメータとした亜リン酸濃度と電流効率との関係を示す。亜リン酸濃度が45g/l以下の場合には、めっき浴のpHを上げることにより、電析するニッケルの結晶粒の大きさはほとんど変えないで、電流効率を最高で60%程度まで高めることができた。しかし、亜リン酸濃度が70g/l以上の場合には、めっき焼けが原因で電流効率を大幅に向上させることができなかった。そこで、ホウ酸に比べるとpH緩衝性が強いクエン酸をpH緩衝剤として用いる実験2を行った。
〔実験2〕
本実験は、クエン酸のめっき浴pHと電流効率に及ぼす影響を調査した実験である。実験に使用しためっき浴は、硫酸ニッケル:150g/l、塩化ニッケル:150g/l、亜リン酸:70g/l、水酸化ニッケル:0〜100g/l、pH緩衝剤としてのクエン酸:50〜200g/lのめっき浴(以下の説明でこのめっき浴を引用するときは、クエン酸浴という)である。
図2(a)に、クエン酸の濃度をパラメータとした水酸化ニッケル濃度とめっき浴pHとの関係を示す。図中、○印はクエン酸濃度50g/l、▲印はクエン酸濃度100g/l、□印はクエン酸濃度150g/l、●印はクエン酸濃度200g/lをそれぞれ示す(図2の(b)、(c)も同じ)。各水酸化ニッケル濃度において、クエン酸の濃度が増すとめっき浴pHが低くなっている。実験1の図1(a)に示したように、亜リン酸濃度が70g/lの改良ホウ酸浴を使用した場合には、水酸化ニッケルの濃度を10g/lにすれば、めっき浴pHをほぼ1.0に上げることができた。これに対して、たとえばクエン酸濃度が200g/lの場合、めっき浴pHをほぼ1.0に上げるために必要な水酸化ニッケル濃度は約60g/lとなる。すなわち、クエン酸はpH緩衝性が極めて強く、水酸化ニッケル濃度が高いときでも陰極付近のpHの上昇を抑えて、めっき焼けの発生を抑制する効果のあることが確認できた。
図2(b)に、クエン酸の濃度をパラメータとした水酸化ニッケル濃度とニッケル結晶粒の大きさとの関係を示し、同図(c)に、クエン酸の濃度をパラメータとした水酸化ニッケル濃度と電流効率との関係を示す。クエン酸濃度が増すほどニッケル結晶粒はより微細化され、電流効率の上昇度合は減少する。ただし、電流効率の上昇度合が最も低いクエン酸濃度200g/lの場合でも、電流効率を50%以上に上げることができた。実験1の図1(c)に示したように、亜リン酸濃度が70g/lの改良ホウ酸浴を使用した場合には電流効率は約20%であったが、クエン酸浴では50%以上となり、電流効率は2.5倍以上に向上したことになる。
〔実験3〕
実験2によって得られた結果、とくに図2の(b)、(c)に示された結果をもとにして、クエン酸濃度を150g/lに固定し、亜リン酸と水酸化ニッケルの濃度を変えためっき浴を使用した実験3を行った。クエン酸濃度を150g/lに固定したのは、実験2の結果から、50Å程度以下の微細化されたニッケル結晶粒と50%程度以上の高い電流効率を両立させることができると考えられたからである。実験に使用しためっき浴は、硫酸ニッケル:150g/l、塩化ニッケル:150g/l、亜リン酸:0〜105g/l、水酸化ニッケル:0〜80g/l、クエン酸:150g/lのめっき浴である
図3(a)に、水酸化ニッケルの濃度をパラメータとした亜リン酸濃度とめっき浴pHとの関係を示す。図中、○印は水酸化ニッケル濃度0、▲印は水酸化ニッケル濃度20g/l、□印は水酸化ニッケル濃度40g/l、●印は水酸化ニッケル濃度60g/l、▼印は水酸化ニッケル濃度80g/lをそれぞれ示す(図3の(b)、(c)および後述の図4も同じ)。各亜リン酸濃度において、水酸化ニッケルの濃度が増すとめっき浴pHが高くなるのは実験1の場合と同様であるが、実験1の改良ホウ酸浴の場合に比してめっき浴pHは約2倍高くなっている。
図3(b)に、水酸化ニッケルの濃度をパラメータとした亜リン酸濃度とニッケル結晶粒の大きさとの関係を示し、同図(c)に、水酸化ニッケルの濃度をパラメータとした亜リン酸濃度と電流効率との関係を示す。亜リン酸濃度が70g/l以上の領域では、電析するニッケルの結晶粒の大きさはほとんど変わらずに、実験1の改良ホウ酸浴の場合に比して電流効率は大幅に向上している。
図3の(b)と(c)の結果をもとに電流効率とニッケル結晶粒の大きさとの関係を求めた結果を図4に示す。図5の(b)に示したように、ホウ酸浴を使用して20Å以下の超微細結晶を得ようとすると、電流効率は20%以下に低下するが、クエン酸浴を使用すると、電流効率を50%程度まで高めることができる。
本発明を、微小加工用工具を中心にして説明してきたが、本発明に係る超微細結晶電鋳工具は微小加工用に限定されるものではなく、強度や耐欠損性が要求される工具全般に適用可能なものである。また、本発明に係る電鋳皮膜の製造方法は、工具素材としての電鋳皮膜の製造のみでなく、メッキ皮膜を形成する表面処理にも応用可能なものである。
pH緩衝剤としてのホウ酸とpH調節剤としての水酸化ニッケルを用いためっき浴を使用した実験結果を示す図である。 pH緩衝剤としてのクエン酸とpH調節剤としての水酸化ニッケルを用いためっき浴を使用した実験結果を示す図である。 pH緩衝剤としてのクエン酸とpH調節剤としての水酸化ニッケルを用いためっき浴を使用した他の実験結果を示す図である。 pH緩衝剤としてのクエン酸とpH調節剤としての水酸化ニッケルを用いためっき浴を使用した他の実験結果を示す図である。 従来のめっき浴を使用した実験結果を示す図である。

Claims (5)

  1. ニッケル−リン合金めっき法により形成され、ニッケルの結晶粒の大きさが100Å未満である電鋳皮膜を素材として成形加工された超微細結晶電鋳工具。
  2. 前記電鋳皮膜が、ニッケル源としての硫酸ニッケルと塩化ニッケル、リン源としての亜リン酸、pH調節剤およびニッケル源としての水酸化ニッケル、およびpH緩衝剤としてのクエン酸からなるめっき浴を使用して形成された電鋳皮膜である請求項1記載の超微細結晶電鋳工具。
  3. ニッケル源としての硫酸ニッケルと塩化ニッケル、リン源としての亜リン酸、pH調節剤およびニッケル源としての水酸化ニッケル、およびpH緩衝剤としてのクエン酸からなるめっき浴を使用してニッケル−リン合金めっき法により電鋳皮膜を形成することを特徴とする電鋳皮膜の製造方法。
  4. 前記めっき浴の組成が、硫酸ニッケル:100〜200g/l、塩化ニッケル:50〜150g/l、亜リン酸:20〜105g/l、水酸化ニッケル:10〜100g/l、クエン酸:50〜300g/lである請求項3記載の電鋳皮膜の製造方法。
  5. 請求項3または4記載の製造方法により製造した電鋳皮膜を工具素材とし、この工具素材を成形加工して微小加工用工具とする超微細結晶電鋳工具の製造方法。
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