JP2005081313A - モノリスタイプの触媒の製造方法とそれに用いる乾燥装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】モノリスタイプの担体個々の触媒スラリコーティング量のばらつきを抑制しながら、半径方向でのコーティング量を積極的に異ならしめる。
【解決手段】
担体1に触媒スラリをコーティングする前に、前処理として加湿処理を施し、さらに加湿処理前に熱風供給装置4により強制的に乾燥処理を施すことによって大気中から吸湿した自然吸湿分を予め除去する。予め乾燥処理をした担体1は乾燥処理を施さないものと比べ、個々の担体1の触媒スラリのコーティング量のばらつきが小さくなり、同時にそのコーティング量も増加する。担体1と熱風供給装置4の間に通風穴43が形成された遮蔽板42を設置することによって、担体1の半径方向における乾燥度合いを積極的に異ならせ、それに応じ触媒スラリのコーティング量も変化させる。
【選択図】図12
【解決手段】
担体1に触媒スラリをコーティングする前に、前処理として加湿処理を施し、さらに加湿処理前に熱風供給装置4により強制的に乾燥処理を施すことによって大気中から吸湿した自然吸湿分を予め除去する。予め乾燥処理をした担体1は乾燥処理を施さないものと比べ、個々の担体1の触媒スラリのコーティング量のばらつきが小さくなり、同時にそのコーティング量も増加する。担体1と熱風供給装置4の間に通風穴43が形成された遮蔽板42を設置することによって、担体1の半径方向における乾燥度合いを積極的に異ならせ、それに応じ触媒スラリのコーティング量も変化させる。
【選択図】図12
Description
本発明は、モノリスタイプの触媒(以下、触媒とする)の製造方法とそれに用いる装置に関し、特に自動車などの排気ガス浄化システムに用いられる触媒を製造するにあたり、吸湿性を有するモノリスタイプの担体(以下、担体とする)に加湿処理を施した後、例えばアルミナやセリアを主成分とし白金やパラジウム等を混合した触媒スラリをコーティングするのに好適な製造方法とそれに用いる乾燥装置に関するものである。
担体に触媒スラリをコーティングするのに好適な製造方法として、特許文献1に記載のものが提案されている。特許文献1に記載の製造方法では、多数のセルを有するハニカム状のセラミック製の担体に粘性の高い触媒スラリをコーティングするのに先立って加湿処理を施している。担体に加湿処理を施すことによって触媒スラリに含まれる媒体(例えば水分)がセル壁面に吸収されることを防止し、触媒スラリの粘性上昇による目詰まりを発生させることなくセルに触媒スラリをコーティングすることが可能となる。なお、上記の特許文献1に記載の排気ガス浄化用触媒の製造法以外にも、同種のものが例えば特開平1−307455号公報に記載されている。
特許第2616157号公報
しかしながら特許文献1に開示されている触媒の製造方法によると、個々の担体に触媒スラリのコーティング量のばらつきが発生する可能性がある。例えばセラミックなどの吸湿性を有する担体では、触媒スラリがコーティングされる前の保管もしくは流通過程においてダンボール箱やビニールカバーなどで覆われていても、保管時間や気象条件の変化(特に湿度の変化)により、個々の担体の自然吸湿量すなわち大気中から吸湿する水分量にばらつきが発生することがある。そして、担体に触媒スラリをコーティングする際にその水分量のばらつきの影響を受け、触媒スラリのコーティング量にばらつきが発生し、コーティング品質の向上および均一化に限界がある。
また、触媒スラリのコーティング前の担体が吸湿している水分量が過大であると、触媒スラリのコーティング量が相対的に少なくなり、所定の排気ガス浄化性能が得られなくなる可能性があり実用的でない。
本発明はこのような課題に着目してなされたものであり、担体に触媒スラリをコーティングする前に大気中から吸湿した水分を除去するべく強制乾燥させることによって、個々の担体が吸湿した水分量のばらつきを小さくし、結果として触媒スラリのコーティング量のばらつきを小さくするようにした触媒の製造方法を提供しようとするものである。
請求項1に記載の発明は、吸湿性を有する担体に加湿処理を施した後に触媒スラリをコーティングする触媒の製造方法において、担体の加湿処理に先立って強制的に乾燥処理を施すことを特徴としている。
ここでいう乾燥処理とは、加湿処理前の担体自体が吸湿している水分を除去することを目的として行うもので、例えば請求項2以下に示すように担体のセルに熱風を通過させることにより行うものとする。
また、請求項1にいう担体とは、触媒スラリのコーティング前にそれ自体が吸湿性を有しているものを想定しており、触媒スラリが一旦コーティングされているものは含まない。
請求項7に記載の発明は、それ自体で吸湿性を有しているモノリスタイプの担体もしくは予め触媒スラリがコーティングされているモノリスタイプの担体に加湿処理を施した後に触媒スラリをコーティングしてモノリスタイプの触媒を製造するにあたり、担体の加湿処理に先立って強制的に乾燥処理を施すための乾燥装置であって、乾燥対象となる担体は、筒状のものであり且つ軸心方向に貫通する多数のセルを有するハニカム状のものとして形成されていて、その担体の熱風吹き込み側となる一端開口面と熱風供給手段の熱風吹き出し口とを対向させるとともに、両者の間に熱風の通過を制限する遮蔽部材を設置して、上記担体の径方向における乾燥度合いを積極的に異ならせるようにしたことを特徴としている。
遮断部材の形状は、必要とする乾燥度合いに応じているものであればどのような形状のものでもよく、例えば円筒状の担体の半径方向中心部を積極的に乾燥させる場合には遮断部材に丸穴を空けた板材を用いるものとする。
したがって、請求項1に記載の発明では、担体の加湿処理前に強制的に乾燥処理を施して大気中から吸湿した水分を乾燥させることにより、加湿処理直前の個々の担体が有する水分量や加湿処理後の水分量ひいては個々の担体における触媒スラリのコーティング量のばらつきを小さくすることができる。つまり、加湿処理前の担体が有する水分を除去することによって、加湿処理を施した後の担体の水分量が略均一となり、結果的に触媒スラリのコーティング量のばらつきが小さくなる。
また、請求項7に記載の発明では、担体の乾燥処理において遮蔽部材を担体の熱風吹き込み口と熱風供給手段の間に遮蔽部材を設置することによって、担体の径方向における乾燥度合いを積極的に異ならせることができる。
請求項1に記載の発明によれば、加湿処理前に担体を強制的に乾燥させることによって、自然吸湿による水分量のばらつきの影響を回避して、個々の担体において触媒スラリのコーティング量のばらつきを小さくできることから、個々の触媒の触媒スラリコーティング品質が安定化するとともに、所定の排気ガス浄化性能を有する触媒を得ることができる。
請求項7に記載の発明によれば、担体の径方向における乾燥度合いを遮蔽部材にて積極的に異ならせることによって、径方向にて乾燥度合いの異なる担体を安定して製造することができる。
図1,2は本発明の好ましい実施の形態を示したものであり、図1は触媒スラリをコーティングする前の担体の構造を、図2は乾燥処理工程、加湿処理工程および触媒スラリのコーティング工程を含めた触媒の製造工程の概略をそれぞれ示している。
図1の(A),(B)に示すように、対象となる担体1は例えばセラミックで形成された円筒状のものであり、後工程にて触媒スラリをコーティングすることになる多数の孔すなわち多数のセル2が互いに隣接しながら軸心方向に貫通形成されていて、全体としてハニカム状のものとして形成されている。この担体1はセラミック製のものであるが故にそれ自体で吸湿性を有していて、その直径Dは例えば110mm程度に、高さHは97mm程度にそれぞれ設定されている。そして、この担体1は後述するように強制的な乾燥処理および加湿処理を施した上で触媒スラリのコーティング処理に供されることになる。
図2の(A)は担体1の乾燥処理工程について示したものである。この乾燥処理工程では、次工程である加湿処理工程に供される前の担体1に熱風による強制乾燥処理を施すことを目的としている。
この乾燥処理工程には、乾燥対象となる担体1を支持する担体支持トレイ3と、熱風を発生させて担体1側に供給する手段として熱風供給装置4が用意されている。担体支持トレイ3は水平な回転式のものであり、回転中心である回転軸5をはさんで180度位相が異なる位置に一対の担体1を載置するようになっている。この担体支持トレイ3のうち実際に担体1が載置される部分は、その担体1を安定して支持しつつ且つ後述するように熱風供給装置4から供給される熱風の通過を許容し得るように所定の大きさの穴があいているか、もしくはメッシュ状のものとなっている。そして、担体支持トレイ3上の各担体1と対向するように担体支持トレイ3の上下二箇所には熱風供給装置4が配置される。
各熱風供給装置4は、ダクト6内に熱源であるヒータ7と送風ファン8を収容したものであり、ヒータ7から発生する熱は送風ファン8により吹き出し口9から例えば125℃程度の熱風として担体1に向けて吹き出される(吹き出し方向を図2の(A)に矢印aで示す)。
本実施の形態では、担体支持トレイ3上の一方の担体1(図2の(A)の右側のもの)については位置Bにてその一端開口面である下面10aから熱風を吹き込む一方、他方の担体1(図2の(A)の左側のもの)については位置Aにてその一端開口面である上面10bから熱風を吹き込むこととしており、各担体1のうち熱風吹き込み側となる一端開口面としての下面10aまたは上面10bとダクト6の吹き出し口9とは所定距離隔てて対向させてある。こうして各担体1の下面10aまたは上面10bから熱風を吹き込むことにより、後工程にて触媒スラリがコーティングされることになるセル2を中心として各担体1を強制乾燥させる。
また、図2の(A)の状態で位置A,Bにある二つの担体1の強制乾燥を並行して行い、所定の乾燥時間経過後に回転軸5を回転中心として矢印b方向に担体支持トレイ3を180°度回転させて、各熱風供給装置4に対する担体1の位置を入れ換えた上で再度乾燥処理を並行して行う。このように担体支持トレイ3の回転移動を繰り返すことによって、各担体1に対する熱風吹き込み方向を交互に切り換えることができ、各担体1の軸心方向での乾燥度合いを均一化することが可能となる。以上のように回転式の担体支持トレイ3と上下一対の熱風供給装置4とにより、熱風の通過方向をセルの長手方向で交互に変更する手段が形成されている。
なお、各担体1と熱風供給装置4の吹き出し口9とを対向させた状態で熱風吹き込み方向を交互に変えることができる構造でさえあれば、担体1の支持形態は図2の(A)に示したもの限定されない。また、乾燥手段として本実施の形態ではヒータ7および送風ファン8を用いているが、例えばマイクロ波を用いた乾燥方法であっても同様の機能が発揮される。
図2の(B)は担体1の加湿処理工程について示したものである。担体支持トレイ21の上に先の乾燥処理を終えた担体1を載置するとともに、その担体1の上方に加湿ヘッド22を設置し、その加湿ヘッド22によって例えば純水を担体1に噴霧して加湿した後、担体支持トレイ21の下方に設置される吸引装置23の負圧吸引力によって強制的に矢印c方向へ吸水し、セル2に残存する余分な水分を除去する。なお、担体支持トレイ21としては、同図(A)のものと同様に担体1を安定して支持しつつも、少なくとも担体載置領域では吸引装置23による吸引力の流通が阻害されないように穴があいたものもしくはメッシュ状のものとなっている。また、吸引装置23は吸引ダクト24内に吸引ファン25を収容したものである。
図2の(C)は担体1への触媒スラリのコーティング処理工程について示したものである。担体支持トレイ31上に先の加湿処理を終えた担体1を載置するとともに、その担体1の上にコーティング用ホッパ32を載せ、コーティング用ホッパ32から担体1に触媒スラリ33を流し込み、触媒スラリ33が自重によって流下することによって担体1のセル2の壁面にコーティングする。そして、担体支持トレイ31の下方には吸引ダクト34内に吸引ファン35を収容してなる吸引装置36を設置しておき、セル3の壁面にコーティングされずに担体1の下方に自重で流下する余分の触媒スラリ33をその吸引装置35側に回収する。それと同時に吸引装置35の吸引力によって矢印e方向に強制吸引し、セル2に余分にコーティングされた触媒スラリ33を除去する。
ここで、上記のように予め強制的に乾燥処理を施すことを前提とした製法に用いられる担体の評価の一環として乾燥実験を行った。
実験に使用する担体の供試体としては、乾燥処理前の供試体に含まれる水分量であるところの自然吸湿量が比較的少なく供試体1個当たりの自然吸湿量が4gのもの(以下、供試体1個当たりの吸湿量を表す単位として4g/個のようにg/個と示す)をサンプルA、同じく乾燥処理前の供試体に含まれる自然吸湿量が比較的多く供試体1個当たりの自然吸湿量が42gのもの(42g/個)をサンプルBとしてそれぞれ用意し、図2の(A)の乾燥処理工程の熱風供給装置4を用いて乾燥処理を施した。
乾燥処理条件としては、サンプルA,Bの一端開口面である下面10aもしくは上面10bと熱風供給装置4の吹き出し口9とのなす距離を数十mmとし、図2の(A)に基づいて先に説明したように熱風供給方向を5秒毎に変更しながら、約125℃の熱風を各サンプルA,Bに吹き込んで強制乾燥させた。そして、サンプルA,Bのうち熱風吹き込み側と反対の熱風吹き出し側となる他端開口面から約30mm離れた位置で出口温度を熱伝対にて測温し、サンプルA,Bの乾燥時間と吸湿量との関係、および同乾燥時間と出口温度との間にどのような変化があるのか調べた。その測定データを表1,2に、同測定データに基づくグラフを図3,4にそれぞれ示す。
結果として表1および図3から明らかなように、サンプルA,Bともに熱風吹き込みによる乾燥処理を開始してから約3分で吸湿量が2g/個以下に減少して乾燥状態となった。また、表2および図4から明らかなように、サンプルA,Bともに熱風吹き込みによる乾燥処理を開始してから約2分で出口温度が約112〜114℃となって吹き込み側の温度である125℃に漸近し、安定した乾燥状態となった。
次に担体に実際に触媒スラリをコーティングすることを前提として、その触媒スラリのコーティング処理に先立つ加湿処理前の担体に含まれる自然吸湿量と、加湿処理後の担体の総吸湿量(総水分量)および触媒スラリのコーティング量のほか、加湿処理前に乾燥処理を施した場合に後工程での触媒スラリのコーティング量との間に何らかの相関があるかどうか、それぞれ測定してみた。
より具体的には、担体の供試体として、乾燥処理前の供試体に含まれる自然吸湿量が比較的少なく供試体1個当たりの自然吸湿量が4g/個のものをサンプルA1,A2、同じく乾燥処理前の供試体に含まれる自然吸湿量が中程度で供試体1個当たりの自然吸湿量が20g/個のものをサンプルB1,B2、さらに乾燥処理前の供試体に含まれる自然吸湿量が比較的多く供試体1個当たりの自然吸湿量が33〜36g/個のものをサンプルC1,C2としてそれぞれ用意した。
これらのうちサンプルA2,B2,C2については加湿処理前に先の場合と同様に強制的に乾燥処理を施した。乾燥処理条件としては、サンプルA2,B2,C2の一端開口面である下面10aもしくは上面10bと図2の(A)の熱風供給装置4の吹き出し口9とのなす距離を数十mmとし、同図に基づいて先に説明したように熱風供給方向を5秒毎に変更しながら、約125℃の熱風を各サンプルA2,B2,C2に吹き込んで乾燥処理を施した。なお、乾燥時間は先の表1,2および図3,4での結果に基づいて3分間とした。
そして、サンプルA2,B2,C2については乾燥処理前の自然吸湿量と、その強制乾燥処理後であって加湿処理前の吸湿量をそれぞれ測定し、サンプルA1,B1,C1については乾燥処理を施さない故に加湿処理前の自然吸湿量のみを測定した。その測定データを表3,4に、同測定データに基づくグラフを図5,6にそれぞれ示す。
表4および図6から明らかなように、乾燥処理を施したサンプルA2,B2,C2については乾燥処理前の吸湿量が4〜33g/個とばらついているものの、乾燥処理を施した後の加湿処理前の吸湿量は2〜7g/個であり、そのばらつきは乾燥処理前よりも大幅に小さくなっていることがわかる。
なお、表3および図5から明らかなように、加湿処理前に乾燥処理を施していないサンプルA1,B1,C1については、当然ではあるが加湿処理前の担体吸湿量に変化はない。
次いで、各サンプルA1,B1,C1およびA2,B2,C2に加湿処理を施し、加湿処理後の各サンプルA1,B1,C1およびA2,B2,C2に含まれる総水分量を測定した。ここでは加湿処理として各サンプルA1,B1,C1およびA2,B2,C2を純水に2秒間浸漬し、加湿処理後に各サンプルに付着する余分な水分を除去するために図2の(B)と同様の吸引装置12にて10秒間吸引した。
ここで、上記の総水分量は、各サンプルA1,B1,C1およびA2,B2,C2の加湿処理前の吸湿量と加湿処理により吸湿した加湿量の総和にほかならず、したがって測定した総水分量から加湿処理前の吸湿量を差し引けば加湿処理により吸湿した加湿量を算出できる。そして、各サンプルA1,B1,C1およびA2,B2,C2についての加湿処理前の吸湿量と、加湿処理による加湿量および加湿処置後の総水分量のデータを表5,6に、同データに基づくグラフを図7,8に示す。
表5および図7から明らかなように、加湿処理前に乾燥処理を施さなかったサンプルA1,B1,C1での加湿処理による加湿量は177〜202g/個であり、最大値と最小値の差は25g/個でそのばらつきが大きいものの、加湿処理前の自然吸湿量と加湿処理により増加した加湿量とを合わせた総水分量は206〜213g/個であり、最大値と最小値の差は7g/個となってそのばらつきが小さくなった。
一方、表6および図7から明らかなように、加湿処理前に強制的に乾燥処理を施したサンプルA2,B2,C2の加湿処理での加湿量は203〜214g/個であり、最大値と最小値の差は11g/個でそのばらつきが一段と小さいものとなる。そして、加湿処理前の吸湿量と加湿処理により増加した加湿量とを合わせた総水分量は210〜216g/個であり、最大値と最小値の差は6g/個となってそのばらつきが一段と小さいものとなる。以上のことから、乾燥処理を施したサンプルA2,B2,C2と乾燥処理を施していないサンプルA1,B1,C1との総水分量の差も平均値で約2g/個であり、加湿処理の前処理として乾燥処理を施さなくても加湿処理後の担体の総水分量に関する限りは殆ど影響しないことがわかる。
続いて、加湿処理を施した上記の各サンプルA1,B1,C1およびA2,B2,C2について触媒スラリを図1の(C)と同様の手法でコーティングした。そして、コーティング処理後の触媒スラリのコーティング量を測定した。その測定データを表7,8に、同データに基づくグラフを図9,10にそれぞれ示す。
表7および図9から明らかなように、加湿処理前に乾燥処理を施さないサンプルA1,B1,C1については、触媒スラリのコーティング量は34〜40g/個であり、最大値と最小値の差は6g/個となってそのばらつきが大きくなる傾向にある。
一方、表8および図10から明らかなように、加湿処理前に乾燥処理を施したサンプルA2,B2,C2については、触媒スラリのコーティング量は59〜60g/個であり、最大値と最小値の差も1g/個となってそのばらつきが大幅に小さくなる。その上、サンプルA2,B2,C2の触媒スラリのコーティング量は、サンプルA1,B1,C1のコーティング量よりも平均値で約1.6倍に増加していることがわかる。
図11は上記の表3〜8のデータをもとに加湿処理前の乾燥処理の有無別に加湿処理前の吸湿量と触媒スラリのコーティング量との関係を示したものであり、加湿処理前に乾燥処理を施した場合には、同乾燥処理を施さない場合に比べて触媒スラリのコーティング量が大幅に増加していることがわかる。
すなわち、図11のほか表7,8から明らかなように、乾燥処理を施さずに加湿処理を行った場合には、加湿処理前の担体の吸湿量が少ないと触媒スラリのコーティング量が多くなり、加湿処理前の吸湿量が多いと触媒スラリのコーティング量が少なくなる傾向があることがわかる。
その一方、本実施の形態のように加湿処理前に乾燥処理を施した場合には、乾燥処理前の自然吸湿量の多少にかかわらず、触媒スラリのコーティング量がほぼ一定になることがわかる。
この現象は、加湿処理を短時間で行った場合に発生しやすく、加湿処理前の吸湿量と加湿処理による加湿量との総和である総水分量がほぼ同等であっても(例えば表5のように206〜213g/個)、最終的な触媒スラリのコーティング量に大きな差となって表れることに基づく(図7〜10参照)。
すなわち、担体が大気から吸湿した水分(自然吸湿水分)は触媒層を形成する粒子全体に広く分散しており、主として触媒層の細孔が起こす毛細管現象による吸水力を阻害するのに対して、加湿工程にて加湿された水分は、触媒層を形成する粒子の比較的表面上に浅く分布していて、担体本来の吸水力を阻害しにくいためと推定される。この結果、加湿処理後の触媒スラリのコーティング処理の際に、担体の吸水力が触媒スラリ中の水分を奪い、この時に水分を奪われた触媒スラリは流動性が小さくなって、担体のセル表面に固定化しやすくなるものと考えられる。したがって、本実施の形態のように加湿処理前に担体に予め強制的に乾燥処理を施すと、担体自体の吸水力阻害要因が解消されて、一段とスラリコーティング量が増加するものと推定される。
よって、本実施の形態の製造方法によれば、従来の製造方法と比べて触媒スラリのコーティング量が大幅に増加し、触媒の排気浄化性能の向上に寄与できることになる。
図12は本発明の第2の実施の形態として図2の(A)の乾燥処理工程に適用される乾燥装置の別の例を示している。
図12に示すように、熱風供給装置4の吹き出し口9と担体支持トレイ41上に載置した担体1との間に離間距離fとして例えば数mm〜数十mmの間隔を確保するとともに、吹き出し口9の直前位置に担体1の一端開口面である下面10aの周辺部を覆うようにして遮蔽部材としてリング状の遮蔽板42を設置してある。なお、遮断板42は約125℃程度の熱風を受けても変形および変質しない剛性のある材料で形成される。
遮蔽板42は矩形状のものであって、その中心部には担体1の一端開口面である下面10aの開口面積に対して例えば1/4程度となる面積の円形の通風穴43が設けられている。遮蔽板42を担体1の下面10aと吹き出し口9の間に同心状となるように介装することによって、熱風供給手段である熱風供給装置4から担体1に矢印g方向へ熱風を吹き込んで強制的に乾燥処理する際に、熱風吹き込み側となる担体1の下面10aのうちその周縁部での熱風の通流が遮られる。これは、担体1のうちその周縁部のセルよりも中心部のセルの方が熱風吹き込みによる乾燥が促進されることを意味し、結果的には担体1の半径方向中央部が周縁部よりも積極的に強制乾燥されることになる。
つまり、担体1の半径方向での乾燥度合いを予め積極的に異ならせ、担体1のうち半径方向中央部の乾度合いを周縁部のそれよりも予め高めておくことにより、次工程にて触媒スラリをコーティングする際にその半径方向中央部でのコーティング量を周縁部よりも積極的に増加させることができ、実用上好ましい担体の形態となる。その結果として、当該製法によって製造された触媒を例えば排気ガス浄化システムに適用した場合に、機能上重要な排気ガス通路の断面中央部での浄化性能を一段と高めることができるようになる。
なお、この種の触媒の製造方法において、担体に触媒スラリを一旦コーティングした後に、乾燥処理、焼成処理および加湿処理の各工程を経て再度触媒スラリをコーティングする場合があるが、一旦触媒スラリがコーティングされている担体に対して加湿処理を施す前に上記の乾燥装置を用いて乾燥処理を施すことももちろん可能である。
ここで、発明の効果の欄に記載した以外の本実施の形態における主要な効果を、その発生原因とともに記載すれば下記の通りである。
(1)担体1の半径方向での乾燥度合いを積極的に異ならせて周辺部より中心部の乾燥度合いを大きくすることによって、触媒スラリ33のコーティング量をもその周辺部と中心部とで異ならせることができ、結果的に一つの担体1に必要な総コーティング量を少なくして、材料歩留まりの向上と製造コストの低減が図れる。
(2)担体1の熱風吹き込み口側となる一端開口面と熱風供給装置の吹き出し口9を対向させて乾燥処理を施すことにより、セル2に熱風をスムーズに通過させることが可能となり、例えば乾燥炉内等において熱風吹き出し方向を考慮せずに乾燥処理を施す場合よりも半径方向における乾燥度合いのむらの発生を防止できる。
(3)担体1におけるセル2の長手方向で熱風通過方向を交互に変更することによって、特定の一方向からセル2の長手方向に熱風を通過させる場合よりも長手方向における乾燥度合いのむらの発生を防止できる。
(4)担体1に乾燥処理を施す際、遮蔽板42を併用して担体1の乾燥度合いを積極的に制限することで例えば半径方向において周辺部よりも中心部の乾燥度合いを大きくし、中心部の触媒スラリのコーティング量を増加させることができる。
(5)図2に示したように、回転式の担体支持トレイ3の上に180°位相をずらせて二つの担体を載置するととに、担体支持トレイ3をはさんでその上下二箇所に各担体1と対向するように熱風供給手段としての熱風供給装置4を配置して、二つの担体1の乾燥処理を並行して行いながら担体支持トレイ3を矢印B方向に回転させその熱風吹き込み方法を切り換えるようにしたことにより、例えば触媒の量産工程での強制乾燥処理を効率良く行えるようになって生産性が向上する。
1…担体
2…セル
3…担体支持トレイ
4…熱風供給装置(熱風供給手段)
9…吹き出し口
10a…下面(一端開口面)
10b…上面(一端開口面)
33…触媒スラリ
41…担体支持トレイ
42…遮蔽板(遮蔽部材)
43…通風穴
2…セル
3…担体支持トレイ
4…熱風供給装置(熱風供給手段)
9…吹き出し口
10a…下面(一端開口面)
10b…上面(一端開口面)
33…触媒スラリ
41…担体支持トレイ
42…遮蔽板(遮蔽部材)
43…通風穴
Claims (8)
- 吸湿性を有するモノリスタイプの担体に加湿処理を施した後に触媒スラリをコーティングするモノリスタイプの触媒の製造方法において、担体の加湿処理に先立って強制的に乾燥処理を施すことを特徴とするモノリスタイプの触媒の製造方法。
- 上記担体はセラミックで形成された筒状のものであって且つ軸心方向に貫通する多数のセルを有するハニカム状のものとして形成されていて、担体の径方向での乾燥度合いが異なるように乾燥処理を施すことを特徴とする請求項1に記載のモノリスタイプの触媒の製造方法。
- 上記担体の径方向において、周辺部よりも中心部の方が乾燥度合いが大きくなるように乾燥処理を施すことを特徴とする請求項2に記載のモノリスタイプの触媒の製造方法。
- 上記担体のセルに熱風を通過させて乾燥処理を施すことを特徴とする請求項2または3に記載のモノリスタイプの触媒の製造方法。
- 上記担体のセルに熱風を通過させて乾燥処理を施す際に、熱風の通過方向をセルの長手方向で交互に変更することによって処理することを特徴とする請求項4に記載のモノリスタイプの触媒の製造方法。
- 上記担体のセルに熱風を通過させて乾燥処理を施す際に、担体の熱風吹き込み側となる一端開口面の周辺部を遮蔽部材にて覆って、熱風が通過する面積を制限することによって上記担体の径方向における乾燥度合いを積極的に異ならせることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載のモノリスタイプの触媒の製造方法。
- それ自体で吸湿性を有しているモノリスタイプの担体もしくは予め触媒スラリがコーティングされているモノリスタイプの担体に加湿処理を施した後に触媒スラリをコーティングしてモノリスタイプの触媒を製造するにあたり、担体の加湿処理に先立って強制的に乾燥処理を施すための乾燥装置であって、
乾燥対象となる担体は、筒状のものであり且つ軸心方向に貫通する多数のセルを有するハニカム状のものとして形成されていて、
その担体の熱風吹き込み側となる一端開口面と熱風供給手段の熱風吹き出し口とを対向させるとともに、両者の間に熱風の通過を制限する遮蔽部材を設置して、上記担体の径方向における乾燥度合いを積極的に異ならせるようにしたことを特徴とする乾燥装置。 - 熱風の通過方向をセルの長手方向で交互に変更する手段を備えていることを特徴とする請求項7に記載の乾燥装置。
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