JP2005076150A - クラフトパルプの漂白方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 クラフト蒸解法で得られたパルプ成分を安価な処理設備と処理費用で漂白すること。
【解決手段】 クラフト蒸解法でリグノセルロース物質を蒸解して得られたパルプ成分をアルカリ酸素脱リグニンし、洗浄し、さらに酸性水溶液中で処理したあと、洗浄を行うことなく、パルプ濃度を35%以上になるように濃縮し、50℃以下の条件で高濃度オゾン処理し、さらにその後洗浄を行うことなく、アルカリ抽出段を設ける。酸処理段と高濃度オゾン処理段のpHを統一するため酸処理段でのpHを2.8〜3.2にして次の高濃度オゾン処理段のpHを調整することが必要ないようにする。アルカリ抽出段は初期pH7〜8と最終pH6〜7で、且つ20分〜40分の短時間で行うことが推奨される。リグノセルロース物質としては広葉樹チップ、針葉樹チップ又は非木材を使用するのが好適である。

Description

本願発明は、クラフト蒸解法でリグノセルロース物質を蒸解して得られたパルプ成分を漂白するためのクラフトパルプの漂白方法に関し、詳しくは、バッチまたは連続蒸解釜にて蒸解したクラフトパルプをアルカリ酸素脱リグニンし、洗浄し、さらに一般的に公知とされている酸処理条件下で酸性水溶液中でパルプを処理したあと、洗浄段なしで高濃度オゾン処理段に移行し、このオゾン処理段のあとも洗浄段を行うことなく、アルカリ抽出段に移行し、さらに好ましくは、このアルカリ抽出段は低pHと短処理時間で行うようにした漂白方法に関するものである。
クラフトパルプの一般的製造工程は、蒸解工程、酸素脱リグニン工程、洗浄・精選工程及び漂白工程となっており、詳しくは、蒸解工程でバッチ釜または連続蒸解釜でリグノセルロース物質を蒸解して得たパルプ成分をアルカリ性または酸性の酸素脱リグニンを行ったあと、パルプを洗浄・精選して漂白工程でパルプの白色度を上げ、完成漂白パルプが得られる。
従来の塩素漂白処理法としては、最初に塩素処理段を設け、リグニンの塩素化により可溶性として洗浄し、次にアルカリ抽出段において大半のリグニン除去を行う。その後、次亜塩素酸塩(ハイポ)、二酸化塩素等を用いて、残存する着色性不純物を分解除去することで白色度の高いパルプを得ている(後記非特許文献1)。
しかし、環境保護の高まりにより最近では無塩素漂白処理法が主流となり、その中で後記特許文献1では、広葉樹クラフトパルプのヘキサンウロン酸及び重金属イオンの除去を目的とした酸処理の後に中濃度オゾン処理を行い、ついでパルプ品質の目的に応じてアルカリ又は弱酸性下での抽出段にて処理、さらに二酸化塩素にて処理することによって、少ないオゾンガス添加量で高い白色度を維持しつつパルプ強度の低下を抑制する漂白処理方法が示されており、その具体的方法として、同特許文献1の請求項1では、アルカリ性薬品にてリグノセルロース物質を蒸解後、酸素脱リグニン工程処理を行うことによってパルプのカッパー価を8〜15にし、得られたパルプ(LOKPという)を酸性水溶液中で処理し、前工程の酸素脱リグニン工程対比でパルプのカッパー価換算で30%以上低下させてパルプのカッパー価を3〜10とし、その後の工程でオゾンガス処理、抽出処理を行い、さらに二酸化塩素処理するシーケンスで漂白することを特徴とするリグノセルロースの漂白方法、が示されている。
そして、同特許文献1には、酸処理、オゾンガス処理、抽出処理、二酸化塩素処理、等の各工程における具体的方法について、実施例1の説明(段落番号「0034」〜段落番号「0035」)において次のような記述がある。
A段(酸処理段)
LOKPパルプに追加水と4N−H2SO4を絶乾パルプに対して、硫酸換算で1.0%添加し、パルプ濃度10%、処理温度105℃で120分間処理した。得られたパルプについてイオン交換水で洗浄し、パルプ濃度20%まで脱水濃縮を行った。
Z段(中濃度オゾン処理段)
A段後のパルプ濃度を10%に調整し、そのパルプを密閉式耐圧型加温ヒーター付き撹拌装置に入れ、102g/m3濃度のオゾンガスをゲージ圧3.3kg/cm2になるよう槽内に封入し、1200rpmで10秒、続いて600rpmで120秒撹拌を行い、オゾンガスとパルプを反応させた。ついで常圧に戻し、槽内の未反応オゾンガスを空気と置換して反応を終了した。得られたパルプについてイオン交換水で洗浄し、パルプ濃度を30%に脱水した。
Eb段(アルカリ抽出処理段)
Z段後のパルプ濃度を14%に調整し、水酸化ナトリウムを1.0%添加し、パルプ濃度10%、処理温度60℃で120分間保持した。得られたパルプについてイオン交換水で洗浄し、パルプ濃度20%まで脱水濃縮を行った。
D段(二酸化塩素処理段)
Eb段後のパルプ濃度を14%に調整したパルプに二酸化塩素を二酸化塩素換算で0.25%加え、パルプ濃度10%、70℃で180分間二酸化塩素処理を行った。D段反応終了後のろ液pHは4.5であった。また、反応終了後、得られたパルプについてイオン交換水で洗浄し、完成漂白パルプを得た。
特開2000−290887号公報
紙パルプ技術協会発行 「パルプの洗浄・精選・漂白」初版第299頁 上記特許文献1に示されているA段の条件の範囲として、pHは2.5〜4.0、反応温度は80℃〜130℃、処理時間は30〜180分となっている。しかし、公知例に記載されているA段条件はいくつかがあり、例として、先ず、フィンランドのUPM―キメニ社ヴィサフォレスト工場では1996年7月からpH3.5、温度90℃、滞留時間最大7.5時間のA段(Sitala, M., Winberg, K., Alenius, M., Henricson, K., Lonnberg, B., 1998 International Pulp Bleaching Conference, Book 1, 279頁)、次に、ブラジルのクラビン社リオセル工場では1999年9月よりpH3.5、温度90℃、滞留時間100〜150分のA段(Ratnieks, E., Ventura, J. W., Mensch, M. R., Zanchin, R. A., Pulp Paper Can., 102(12):93(2001))、さらに、アールストローム社(現在、アンドリッツ社に社名変更)は、自社のAHLTM段(A段と同様)の条件(pH:3〜4、温度:90〜110℃、滞留時間:1〜3時間)を発表した(Henricson, K., Paperi ja Puu, 79(8):546(1997))ため、上記特許文献1に示されているA段の条件には、公知の条件が含まれることになる。
上記特許文献1に例示されている公知のクラフトパルプの漂白方法は、一般的にA段及びZ段のあとにそれぞれ洗浄段があり、漂白処理装置が比較的大規模であるため、多額の設備費用を要しているのが現状である。また、上記例示の公知例に記載されているような従来のクラフトパルプの漂白方法では、Z段後のEb段(アルカリ抽出段)におけるpHが高く(通常pH9.0〜12.0)、また滞留時間も長い(通常60〜150分程度)のが一般的処理条件とされている。さらに、上記例示の公知例に記載されているZ段は一般的な中濃度オゾン処理段である。
本願発明は、従来のクラフトパルプの漂白方法における上記のような課題を改善しようとしてなされたもので、次のような手段からなっている。
本願発明のクラフトパルプの漂白方法においては、クラフト蒸解法でリグノセルロース物質を蒸解して得られたパルプ成分をアルカリ性の酸素脱リグニンし、洗浄・精選し、さらに酸性水溶液中で処理する点では、従来のクラフトパルプの漂白方法と同じでよい。そして、本願発明のクラフトパルプの漂白方法では、酸処理のあと洗浄段なしで高濃度オゾン処理段に移行し、オゾン処理のあとにもパルプを洗浄せず、直接にアルカリ抽出段に移行し、さらに好ましくは、このアルカリ抽出段は低pHと短処理時間で行うことが推奨される。
以下、本願発明をさらに詳しく説明する。
本願発明のクラフトパルプの漂白方法では、蒸解液にてリグノセルロース物質を蒸解後、アルカリ性の酸素脱リグニンを行って得られたパルプは酸性水溶液中で処理され(A段)、次いで前工程の酸素脱リグニンに比べパルプのカッパー価が2〜6ポイント低く、パルプの洗浄は行わず、パルプ濃度35%以上になるように脱水した後、オゾンガスで処理し(以下、この[
「高濃度オゾン処理段」を必要に応じて「高濃度Z段」又は、単に「Z段」という)、このあともパルプを洗浄せずに弱アルカリ性の抽出処理(E段)を行う。アルカリ抽出段後のパルプの白色度を80%ハンター以上にするには、二酸化塩素、過酸化水素等の酸化剤を用いて漂白すればよい。
なお、A段(酸処理段)の処理は、上記に記載されている公知例を基に調査した結果、温度は85〜90℃、滞留時間は150〜180分、酸洗浄段と高濃度オゾン漂白段(高濃度Z段)のpHを統一するため、pHは、2.8〜3.2の条件が好ましく(オゾン段でのpH調整は行わない)、この場合、A段後のパルプはA段前のものよりカッパー価が2〜6ポイント低く、さらに得られたパルプは洗浄せず、後段の高濃度Z段のために脱水機にてパルプ濃度35%以上になるように脱水濃縮することが推奨される。
また、A段後の脱水されたパルプのpHを調整せずにフラッパーの着いている高濃度オゾン反応機でオゾン漂白を行うことが推奨される。パルプ強度の低下を防止するため、Z段の温度は一般的な公知温度である60℃以下、好ましくは50℃以下とするのがよい。オゾン漂白後のパルプは、洗浄せずに後段のアルカリ抽出段の濃度(9〜18%)に合わせるため希釈させることが好ましい。アルカリ抽出段(E段)は、短処理時間(20分〜40分、好ましくは30分程度)、弱アルカリ性の初期pH(7〜8)と中性の終期pH(6〜7)の条件下で行うことが推奨される。
本願発明の方法で使用するリグノセルロース物質としては、木材物質(広葉樹,針葉樹等)のほか、非木材物質(たとえば、ケナフト、バガス、竹、藁等)も使用することができる。そして、蒸解法は従来のクラフト蒸解法であるが、蒸解液は白液(主成分:苛性ソーダと硫化ソーダ)またはオレンジ液(ポリサルファイド液)単独、または蒸解初段でオレンジ液、蒸解後段で白液の使用でも良い。
本願発明の明細書で記載されるアルカリ性の酸素脱リグニンと洗浄・精選の工程においては、設備及び操業方法は従来公知のものを使用することができる。アルカリ性の酸素脱リグニンは従来公知の一段方式または二段方式(たとえば、Dualox、OxyTracの二段方式等)でも良い。
本願発明におけるA段の使用酸の種類は、特に限定するものではないが、紙パルプ企業で一般的に使用する硫酸を採用し、上記に記載した公知pH(3.1)とパルプ中濃度(10〜14%)の条件を用いて処理温度と処理時間を調査したところ、表1に示すように、80℃ではクラフトパルプ(広葉樹)のカッパー価の低下幅が小さく、95℃でのカッパー価の減少幅が大きいことが示されているが、A段後のパルプを洗浄せずに次のZ段の処理温度50℃までに冷やすことは、実際の操業面を考慮した場合、困難であると予想されるため酸処理段の温度は、85〜90℃が好ましく、さらに、処理時間は、210分ではカッパー価の低下幅が小さいため、150〜180分の滞留時間が好ましく、これらの条件下でパルプのカッパー価は2〜6ポイント減少することが認められた。
Figure 2005076150
本願発明の方法中の高濃度Z段において、オゾン処理したパルプの粘度低下を防止するにはパルプpH2〜3が好ましいというのは一般的に公知であるが、一方、酸処理A段の好ましいpHは3〜4とされている。本願発明のように、A段後の洗浄段がない場合、A段のpHは3.0の近辺(2.8〜3.2)で調整することが好ましい。
高濃度Z段の他の条件である処理時間と温度については、オゾンガスとパルプの反応は早く、オゾン処理時間が一般的に数分間以内で済むため、高濃度オゾン処理時間は問題なく、反応温度が主因子となる。そこで、濃度10%の未晒広葉樹クラフトパルプ(カッパー価:11.7)を作成して、pHが約3.2になるように希硫酸(4N)で調整した後、恒温槽にて温度50℃、時間10分間で処理した(pH調整及び金属イオンの除去処理)。得られたパルプは遠心分離機で脱水し、最終パルプ濃度は38.5%とし、オゾン添加率0.663%にてZ段処理を行った後、パルプを洗浄してカッパー価と粘度を測定した。その結果を表2に示す。60℃でオゾン漂白したパルプは粘度が劣ったため、高濃度オゾン漂白は50℃以下で行うことが良好であると認められた。
Figure 2005076150
高濃度Z段漂白後の洗浄段の影響を調査するため、次のZ段の条件(オゾン添加率:0.462%、反応温度:50℃、パルプのpH2.44、パルプ濃度:38.5%)でZ段処理をした後、パルプの洗浄がある場合と、ない場合の両方のケースについて、以下の暫定条件でアルカリ抽出E段を行った。暫定条件として、抽出温度:50℃、抽出時間:30分、パルプ濃度:14%、初期pH:約11.5とした。その結果、前Z段後の洗浄段の有無と関係なくE段後のパルプのカッパー価と粘度は、同等であったため高濃度Z段後の洗浄段は必要ないことが知見された。結果を表3に示す。
Figure 2005076150
次いでアルカリ抽出(E)段の条件設定に当たり、上記に記載した高濃度Z段(オゾン添加率:0.462%、反応温度:50℃、パルプのpH2.44、パルプ濃度:38.5%)を行った後のパルプを洗浄せずに、次のアルカリ抽出段に使用してアルカリ抽出段での条件を索定した。なお、このアルカリ抽出段には、酸素(Eo)、過酸化水素(Ep)の各々を単独、または混合(Eop)して使用してもよく、あるいは使用しなくても良い。
(1) アルカリ抽出段の温度条件設定:次の暫定条件、すなわち、初期pH:約10、パルプ濃度:14%、反応時間:30分でアルカリ抽出段を行い、アルカリ抽出段のカッパー価(ZEカッパー価という)及びパルプ粘度の面からアルカリ抽出段の最適温度は、70℃であることが知見された。結果を表4に示す。
Figure 2005076150
(2) アルカリ抽出段のpH条件設定:次の暫定条件、すなわち、温度:50℃、パルプ濃度:14%;反応時間:30分でアルカリ抽出段を行い、ZEカッパー価及びパルプ粘度の面からアルカリ抽出段の最適初期pHは、7〜8であることが知見された。結果を表5に示す。
Figure 2005076150
(3) アルカリ抽出段の滞留時間条件設定:次の条件、すなわち、温度:70℃、初期pH:約7.7、パルプ濃度:14%でアルカリ抽出段を行い、ZEカッパー価及びパルプ粘度の面からアルカリ抽出段の最適滞留時間は、30分であることが知見された。結果を表6に示す。
Figure 2005076150
以上の結果をまとめると、高濃度Z段において反応温度は、50℃以下、反応後のパルプ洗浄は必要無く、次のアルカリ抽出段については、温度は70℃、滞留時間は30分、初期pHは弱アルカリ性7〜8という条件でZ段後の洗浄機が省略でき、アルカリ抽出段での低pHは薬品の低減を可能にし、さらに反応時間が短いため、パルプの増産も可能になり、生産性の向上が図れることが知見された。
本願発明の実施例では、高濃度Z段及びその次の弱アルカリ性抽出E段の条件を設定した後、上記に記載された酸処理段後の洗浄段の影響を検討することに当たり、LUKPパルプを希硫酸(4N)でpHは3.10に、次いでパルプ濃度は10%になるように水で調整した後、温度90℃、時間150分の条件下で処理した。得られたパルプの半分は洗浄・脱水をし(パルプ濃度:37.1%)、オゾンガス添加率0.535%、反応温度50℃の条件下で高濃度オゾン漂白を行った後、パルプを洗浄せずに次の弱アルカリ性抽出E段を行い、ZEカッパー価を測定した。残り半分のパルプは洗浄せず、脱水を行い(パルプ濃度:38.2%)、同様のZ段の条件(オゾンガス添加率:0.535%、反応温度:50℃)にてオゾン漂白をし、得られたパルプはまた洗浄せずに次の弱アルカリ性抽出E段を行い、ZEカッパー価を測定した。表7の結果に示すように酸処理段後のパルプは洗浄の有無にもかかわらず、ZEカッパー価がほぼ同等であるため、酸処理後の洗浄段は必要ないことが知見された。
Figure 2005076150
上記記載の本願発明のクラフトパルプ漂白方法においては次のような効果がある。
(1) 本願発明のクラフトパルプの漂白方法においては、酸処理段および高濃度オゾン(漂白)処理段のあとに洗浄段が必要でなく、したがって、漂白処理装置が簡略化されて設備費用が軽減できる。
(2) また、アルカリ抽出段における滞留時間も短いため、パルプ生産を増加することが可能でランニング費用が低減できる効果がある。
(3) さらに、アルカリ抽出段における処理条件が低pHで行われるため、苛性ソーダ等の薬品費用も削減し得る効果がある。
上記のクラフトパルプ漂白方法では、A段(酸処理段)とZ段(高濃度オゾン処理段)の後の洗浄段がなく、また、次のE段(アルカリ抽出段)は弱アルカリ性という特徴を有することを記載したが、これらのパルプは後段の二酸化塩素(D段と略)または過酸化水素(P段と略)の処理により、高白色度のパルプが得られることが知見されたので下記にいくつかの実施例を示す。比較例としてA段後の洗浄段がある二酸化塩素によるECF(Elementary Chlorine Free)漂白パルプ及びA段を含まない塩素漂白パルプを示す。
以下の各漂白シーケンスにおける薬品添加率は、対絶乾パルプ当たりの重量%であり、各段間の横棒(−)は洗浄段を示す。高濃度Z段以外、他の漂白段は、ポリエチレン袋にて行った。
(実施例8)
(AZE)−D1−D2シーケンスによる漂白
(1) 使用パルプ:アルカリ性酸素脱リグニンと洗浄を行った実生産ラインのカッパー価11.7の混合ユーカリ広葉樹クラフトパルプ(LUKPと略)をサンプリングし、使用しながら5℃の場所で保管した。
(2) A段(酸処理段):パルプ濃度10.5%のLUKPを作成し、次いで4N硫酸溶液にてパルプスラリーのpHを約3.1にし、最終パルプ濃度10.0%を調整した。(硫酸添加率:1.10%、pH:3.10)このパルプは、90℃の恒温槽において時間150分で処理した後、洗浄せずに遠心分離機にてパルプ濃度38.7%までに脱水した。(カッパー価:8.0)
(3) Z段(高濃度オゾン処理段):A段後の濃度38.7%のパルプは、60gBD/バッチで2リットル容量の茄形フラスコに入れ、ラボ用エバポレーターに取付けた後、濃度約10%のオゾンガスをフラスコに注入し、オゾンとパルプを反応させた(オゾン添加率:0.46%)。なお、高濃度オゾン処理は、50℃の恒温槽にて行った。オゾン漂白したパルプは洗浄せずに集めて混ぜた。
(4) E段(弱アルカリ性抽出段):Z段後の濃度38.7%のパルプに苛性ソーダを0.9%添加し、パルプ濃度14%、70℃で30分保持した。抽出したパルプは、水道水(2リットル/200g絶乾パルプ)で洗浄し、パルプ濃度18%に脱水濃縮した。
(5) D1段(二酸化塩素漂白段):E段後のパルプに二酸化塩素を0.2%添加し、パルプ濃度14%、75℃で117分間二酸化塩素処理を行った。反応後のパルプろ液pHは5.5であった。得られたパルプは、水道水(2リットル/200g絶乾パルプ)で洗浄し、パルプ濃度18%に脱水した。
(6) D2段(二酸化塩素漂白段):D2段のパルプ濃度、処理温度、反応時間、反応後のろ液pH、パルプの洗浄方法は全てD1段と同様であるが、二酸化塩素の添加率のみは低く0.1%とした。以上により、(AZE)−D1−D2シーケンスによる完成パルプを得た。
(実施例9)
(AZE)−D−Pシーケンスによる漂白
(1) (AZE)段:上記に記載された(AZE)−D1−D2シーケンスの(AZE)段のパルプを使用した。
(2) D段(二酸化塩素漂白段):上記の(AZE)−D1−D2シーケンスのD1段後のパルプを用いた。
(3) P段(過酸化水素漂白段):D段後のパルプに過酸化水素を0.15%添加し、パルプ濃度14%、70℃で120分間過酸化水素処理を行った後、水道水(2リットル/200g絶乾パルプ)でパルプを洗浄脱水し、完成漂白パルプを得た。なお、P段後のパルプろ液pHは9.5であった。
(実施例10)
(AZE)−P−Dシーケンスによる漂白
(1) (AZE)段:上記に記載された(AZE)−D1−D2シーケンスの(AZE)段のパルプを使用した。
(2) P段:上記の(AZE)−D−PシーケンスのP段の条件で実施し、過酸化水素添加率は、0.55%であった。
(3) D段:この漂白段の条件は、上記の(AZE)−D1−D2シーケンスのD2段と同様であるが、二酸化塩素添加率は0.18%で、得られたパルプは水道水にて洗浄脱水を行い、完成漂白パルプとした。
(比較例10)
A−D0−E−D1−D2シーケンスによる漂白
(1) A段:上記に記載した(AZE)−D1−D2シーケンスのA段後のパルプを取り、水道水で洗浄し、パルプ濃度18%に脱水した。
(2) D0段:A段後のパルプに二酸化塩素を0.366%添加し、パルプ濃度4%、4N希硫酸にてpHを3.5に調整し、温度58℃、時間25分の処理を行った後、水道水(2リットル/200g絶乾パルプ)でパルプを洗浄脱水した。
(3) E段(アルカリ抽出段):D0段後のパルプに苛性ソーダを0.72%添加し、パルプ濃度14%、70℃で66分保持した。抽出したパルプは水道水で洗浄し、パルプ濃度18%までに濃縮した。
(4) D1段及びD2段(二酸化塩素漂白段):E段後のパルプは、上記に記載した(AZE)−D1−D2シーケンスのD1段及びD2段の条件と同様に実施したが、それぞれの二酸化塩素添加率は0.06%(D1段)と0.15%(D2段)であった。得られたパルプは水道水にて洗浄脱水を行い、完成漂白パルプとした。
(比較例11)
C−E−H−Dシーケンスによる従来漂白
(1) C段:上記の無塩素漂白に使用したLUKPを用いて、このパルプに塩素を1.28%添加し、パルプ濃度4%、温度58℃、時間25分の塩素処理を行った後、水道水でパルプを洗浄脱水した。
(2) E段:上記に記載したA−D0−E−D1−D2シーケンスのE段の条件と苛性ソーダ添加率0.96%の下でアルカリ抽出を行った後、水道水でパルプを洗浄し濃度18%に濃縮した。
(3) H段(次亜塩素酸ソーダまたはハイポ段):E段後のパルプにハイポを0.4%添加し、パルプ濃度14%、温度75℃、時間36分の処理を行った。H段後のろ液のpHは10.5であり、得られたパルプは水道水で洗浄し、パルプ濃度18%までに濃縮した。
(4) D段(二酸化塩素漂白段):H段後のパルプは、上記に記載した(AZE)−D1−D2シーケンスのD1段の条件と二酸化塩素添加率0.40%の下で二酸化塩素漂白を実施した後、水道水で洗浄脱水を行った。得られたパルプは、C−E−H−Dシーケンスの完成漂白パルプである。
<パルプ品質の測定方法>
各完成パルプは、「JIS P8221−2」記載のPFIミルにより叩解を行い、「JIS P8121」記載のカナダ標準濾水度(フリーネス)でフリーネスを測定した後、「JIS P8222」及び「JIS P8223」記載の方法にて各フリーネス水準での手抄シートを作成した後、紙質試験に供した。測定品質項目は、カッパー価、裂断長、比破裂度、比引裂度、耐折度、白色度及び粘度であった。各品質項目において、測定値とフリーネスの相関図を作成し、フリーネス500mlでの品質値を求めた。
カッパー価:「JIS P8211」記載の方法にてカッパー価を測定した。
裂断長 :「JIS P8113」記載の方法を基に裂断長を求めた。
比破裂度 :「JIS P8112」記載の方法を用いて比破裂度として示した。
比引裂度 :「JIS P8116」記載の方法で比引裂度を測定した。
耐折強度 :「JIS P8115」記載の方法を用いて耐折度を求めた。
白色度 :「JIS P8123」記載の方法を基にハンター白色度を求めた。
粘度 :米国「Tappi Standards T230 om−89」記載の方法に伴いパルプ粘度を測定した。
Figure 2005076150
表8に示すように本願発明の実施例にかかる(AZE)段を含むECF漂白シーケンスは、A段後の洗浄を有するECF漂白シーケンスと従来の塩素漂白シーケンスに比べ、完成白色度が同等以上であるとともに、オゾンの使用によりパルプ粘度は劣るものの、裂断長、比破裂度、比引裂度、耐折度等がほぼ同等の結果で、さらに、完成パルプのカッパー価も低い結果が得られたことから、酸処理段及び高濃度オゾン処理段のあとに洗浄段がなく、また、次の抽出段におけるpHが低く、滞留時間も短いことはクラフトパルプの漂白性に影響しないことが知見された。

Claims (4)

  1. クラフト蒸解法でリグノセルロース物質を蒸解して得られたパルプ成分をアルカリ酸素脱リグニンし、洗浄し、さらに酸性水溶液中で処理する酸処理段のあと、洗浄を行うことなくパルプ濃度35%以上になるように濃縮し、そして50℃以下の条件で高濃度オゾン処理する高濃度オゾン処理段を設け、さらにその後洗浄を行うことなくアルカリ抽出段を設けることを特徴とするクラフトパルプの漂白方法。
  2. 酸処理段と高濃度オゾン処理段のpHを統一するため酸処理段でのpHを2.8〜3.2にして次の高濃度オゾン処理段のpHの調整を行わないことを特徴とする請求項1記載のクラフトパルプの漂白方法。
  3. アルカリ抽出段を初期pH7〜8と最終pH6〜7で、且つ20分〜40分の短時間で行うことを特徴とする請求項1または2記載のクラフトパルプの漂白方法。
  4. リグノセルロース物質が広葉樹チップ、針葉樹チップ又は非木材からなることを特徴とする請求項1、2又は3記載のクラフトパルプの漂白方法。
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