JP2005048252A - 潤滑性と離型性を有する炭素膜被覆物品及びその表面処理方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】膜厚の不均一性や密着性の向上策として各種成膜条件の改良が試みられたが、前処理工程の煩雑化や加工時の熱影響、使用基材の制約、炭素膜厚の制約などから限定された物品しか得られず、かつ炭素膜中のフッ素含有量に限界があり、長期の使用に耐えうることが出来なかった。
【解決手段】プラズマベースイオン注入・成膜法を用いて、真空中でフッ素ガスもしくは少なくとも一原子以上のフッ素を含有する炭化水素系ガスを導入して高周波電力の供給によりプラズマを発生させ、この中の被処理物に高周波パルス電圧を印加して、カーボンまたはフッ素を含有するイオンを処理物表面に注入すると同時に、フッ素含有炭素膜を形成することにより潤滑性と離型性を兼備した炭素膜被覆物品及びその表面処理方法を提供するものである。
【選択図】なし

Description

本発明は、金属、セラミックス、プラスチック成形品等に潤滑性と離型性を付与する目的で、プラズマ中でイオン注入・成膜する表面処理技術及びフッ素を含有する炭素膜被覆物品の製造技術に関するものである。
従来から金属材料表面やセラミックス材料表面に滑り性を付与するため、ダイヤモンドライクカーボン層(以下炭素膜と言う)を成膜する方法が提案されている。機械部品や接触部材と摺動する部材表面に、メタンガス、アセチレンガス等の原料を用いてプラズマCVD法で炭素膜を形成する方法は既に実用化されており、ビデオテープキャプスタンローラー、小型軸受け、湯水切替え弁など優れた性能を発揮している。
特願平10-189695、特願平11-172130等に記載されているようにプラズマCVD法において、プラズマ生成方法や印加電圧、ガス組成などを工夫して、出来るだけ低温加工が可能なプラズマCVD装置を開発して、セラミックスやプラスチック成形品表面にも炭素膜を成膜する方法が提案され、さらにカメラ用オーリングや自動車用ワイパーゴムなどに利用することが提案されている。しかしながらこれらのプラズマCVD法は、導入したガスを高周波でプラズマ化させて、活性化したカーボン元素炭素を部品表面で化学的に反応し堆積させる手法であるため、部材表面と炭素膜層との化学的結合力が弱く密着性に乏しいことがある。
特にプラスチック材料やゴム等の熱に弱い材料へ加工するためには、プラズマ密度を低く(弱く)するため、高周波を変調してソフトなプラズマを生成して成膜する必要がある。またプラズマ中のカーボンイオンを引きつけるためには、数十V〜数百Vのバイアス電圧を印加するのが一般的であるが、この程度の電圧では炭素は基材表層部分に付着する程度でありるため、基材内部(数十nm以上)までイオン注入することは出来ない。このことからプラズマCVD法では必ず基材との密着性を上げるために下地処理層としてシリコン単体、シリコン酸化物、シリコン窒化物、シリコン炭化物、四塩化チタン、ペンタエトキシチタニウム、テトライソプロキシチタニウム等を導入して、ケイ素あるいはチタンとカーボンとの化合物の中間層を形成して基材との密着性を向上させることが必要である。
またカーボン固体ターゲットをスパッタリングして成膜するPVD法(物理的蒸着法)などにおいても、密着性を向上させるため金属やセラミックスの基材温度を300〜500℃加熱して炭素膜を形成したり、下地処理としてカーボンとなじみがよいケイ素やクロム材料を蒸着して成膜したりする必要があった。またプラズマ中のカーボンイオンを引きつけるために数十V〜数百Vの直流あるいは交流のバイアス電圧を印加するのが一般的であるが、この電圧は成膜エネルギーとしての利用であり、基材との密着性を大幅に向上させることは出来ない。
さらに下地を均一に付けるためには特別な反応機構の装置を設ける必要があり、膜厚の均一性を確保するためには回転機構は不可欠であり、大きな複雑な物品では対応できず、小型、一定形状の製品にしか対応できなかった。
一方、材料表面に離型性や滑り性を付与する方法として四フッ化エチレン樹脂やそのコポリマー材料をコーテングする方法やフッ素系ガスを混合したガスを用いて炭素膜を成膜する方法も提案されている。しかしながら四フッ化エチレン樹脂やそのコポリマー材料をコーテングした潤滑性フッ化物は、硬度が低く長期間にわたって安定した性能を保持しにくく、摩耗し易く、膜が剥離する問題があった。
また従来のプラズマCVD法でメタンガスやエチレンガスと同時に四フッ化炭素ガス、六フッ化二炭素ガス等のフッ素系ガスを混合して炭素膜を成膜する方法は、前述のごとく基材との密着性が低いばかりでなく、低エネルギーで成膜するため秩序良く炭素膜が形成されやすくカーボン膜が硬くて脆い性質がある。またカーボン膜中のフッ素含有量を上げようとしても強制的にフッ素が入りにくい問題がある。
上述した技術では、直流のバイアス電圧を印加するため、半導体及び絶縁性成形品は帯電されやすく、チャージアップ電荷による絶縁破壊する現象が現れることがあった。このため製品形状や基材の材質にとらわれることなく、複雑な回転機構など付けることなく均一な炭素膜形成が可能なプロセスが望まれていた。
特開2000−96233
従って本発明の主目的は、密着性に優れて潤滑性と離型性を兼備した炭素膜を凹凸のある複雑形状を有する各種金属材料、セラミックス材料、プラスチック成形品に被覆方法と被覆物品を提供することにある。
本発明は金属、セラミックス、プラスチック成形材料等の表面に潤滑性と離型性を兼備した表面改質技術として、従来のパルスバイアス印加によるイオン注入技術やプラズマ成膜技術の組み合わせを用いただけでなく、基材とのイオン注入による界面現象と成膜した膜組成の構造に着目した新規な炭素膜被覆物品を、密着性良く安価で実用に耐える製品を提供するものである。
従来のダイヤモンドライクカーボン(Diamond like carbon膜)(ダイヤモンド状炭素膜)は、高硬度で耐摩耗性、電気絶縁性、親水性等に優れ、成膜方法や使用する原料により、内蔵する水素含有量が異なり様々な硬さの炭素膜が得られた。
成膜方法としてもプラズマCVD法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマベースイオン注入・成膜法などあるが、本発明はプラズマベースイオン注入・成膜法を各種金属材料、セラミックス材料、プラスチック成形材料等の表面に、潤滑性と離型性を兼備した表面改質技術として提供するものである。
また、本発明の他の目的は、凹凸のある複雑形状を有する各種金属材料、セラミックス材料、プラスチック成形品に対してもフッ素と言う活性な元素をカーボンと最適な割合で反応させて、遊離したフッ素を含有することなく潤滑性と離型性を兼備した製品を提供することにある。
本発明は、プラズマベースイオン注入・成膜法を用いて、金属、セラミックス、プラスチック成形品(基材)の周辺に外部アンテナによるRFプラズマあるいは自己バイアス電圧によるプラズマ生成を行い、これに対して数百V〜数十kVの負パルス電圧を印加して、カーボンを含有するイオンを成形品表面に注入することにより炭素の傾斜層を形成させ、フッ素を含有するガスの導入によりフッ素を含有する炭素膜を形成させることによって上記の課題の解決を実現する目的を達成する。具体的には真空チャンバー、真空排気系、ガス供給・処理系、高周波プラズマ源、負の高電圧パルス電源・高圧導入系と冷却系に構成された装置を用いて各種成形品の表面改質をする。セラミックス、ゴム、プラスチック等の絶縁性成形品には電圧を印加するための電極を背面あるいは中心部に配置して、特定(ガス種、真空度)の雰囲気中、高周波プラズマ源に電力を供給することによりガスプラズマを発生させ、被注入物(セラミックス、ゴム、プラスチック成形品)周辺に負の高圧パルス電圧を加えると、プラズマ中の電子は排斥され、被注入物の輪郭に沿って周りにイオンシースが形成される。このイオンシースは被注入物の輪郭に沿って覆われ、その後負の電圧をこのイオンシースに印加されるため、イオンのみがあらゆる方向から被注入物に引き付けられ加速され、被注入物に狙いとする元素をイオン注入されるものである。
本発明ではセラミックス、プラスチック成形品等の絶縁物に対してイオン注入が可能である。従来直流のバイアス電圧を印加して、プラスのイオンが注入されるため、成形品では帯電してチャージアップ電荷による絶縁破壊する現象が現れることがあった。本発明の高周波・高電圧の負パルス電圧を印加する方法では、パルスなのでパルス電圧がない時にはプラズマは基材に接近し、基材に帯電した電荷はプラズマ中に放出され、チャージアップは解消される。またパルスの周波数および印加時間等を形状毎に最適化して行うことで絶縁破壊を防止すると共に、チャージアップによる膜の不均一性、成膜速度の低下を防ぐことが可能である。
プラズマベースイオン注入・成膜法における特性に及ぼすパラメーターとしては、高周波プラズマ源の周波数、プラズマ増幅電圧、繰返し周波数、パルス数などがあり、さらに高圧誘引パルス電源側のパラメーターとしては印加電圧、カレント電流、繰返しパルス数、パルス幅、ディレータイムなどがあり、またプラズマ生成原料のガス流量、ガス圧力等は影響を及ぼす。これらをコントロールして被注入物の輪郭に沿ってイオンシースを形成し、イオンのみを被注入物である各種金属、セラミックス、プラスチック成形品に対してイオンを注入することにより、潤滑性と離型性を兼備した炭素膜を各種材料の表面に被覆方法とその被覆物品を提供するものである。
ここで言う炭化水素系ガスは、メタン、アセチレン、ベンゼン、トルエン及びシクロヘキサノン、クロロベンゼン等からなる炭化水素化合物から選択される少なくとも1種類を主成分としたのガスを使用し、真空チャンバー内にガス導入し行い、高周波電圧を印加してガスをプラズマ化することによって、カーボン原子もしくは分子イオンを生成させ、これを加速してイオン注入するのが好ましい。
またフッ素系ガス、二フッ化炭素、四フッ化炭素、六フッ化炭素、六フッ化硫黄および十フッ化四カーボン等からなるフッ素を含有する化合物から選択される少なくとも1種類を主成分としたガスを使用し、真空チャンバー内にガス導入を行い、高周波電圧を印加してガスをプラズマ化することによって、フッ素原子もしくは分子イオンを生成させ、これを加速してイオン注入するのが好ましい。
炭化水素系ガスおよびフッ素系ガスの選定方法としては、カーボン原子とフッ素原子をそれぞれどのくらいの比率で基材中にイオン注入するか。さらに炭素膜中にフッ素原子を何パーセント含有させるかによって、ガス種とその混合割合を決定するのが好ましい。また添加ガスから生成される原子としては、プラズマ生成条件によりカーボン分子、あるいは水素、フッ素、塩素等との結合した分子イオンとしても有効である。メタン、アセチレン、ベンゼン、トルエンガスにおいて、脂肪族系と芳香族系によってカーボンのイオン注入度合いや炭素膜の成膜状態が大きく変化することが知られており、さらに二フッ化炭素、四フッ化炭素、六フッ化炭素、六フッ化硫黄および十フッ化四カーボン等を添加することにより、これらガス材料から選択される少なくとも1種類を主成分として金属材料、セラミックス材料、プラスチック材料の種類やプラズマ生成条件によって、最適なガス系を選定するのが望ましい。
ガスプラズマを発生させる高周波電力として、周波数が0.2MHzから2.45GHzまでの範囲で、出力が10Wから20kWまでの範囲で、パルス幅1.0μsec以上であることが望ましい。その理由は周波数が0.2MHzより低い周波数では前記ガスのプラズマ分解が充分でなく成膜速度が上がらないからであり、また2.45GHzより大きいとプラズマ生成の安定性や装置コストの上昇を招くためである。高周波出力が10W以下ではプラズマ密度が低くイオン注入は出来ても成膜が出来ないからであり、また20kW以上では電源容量が大きく装置コストの増加を招くためである。さらにパルス幅1.0μsec以下であると実質的なイオン注入時間が短くなり、また絶縁物の場合チャージアップしやすくなるためである。
さらに上記のプラズマ生成のみならず高周波パルス印加電源は非常に重要である。従来の質量分離型のイオン注入では、メタン、アセチレン等の市販ガスを使用して、電界により励起させた後カーボンイオンのみを注入することが可能であった。しかしプラズマ方式では、各種基材に負の高電圧をパルス状に印加して、カーボンと結合した分子イオンも不純物として同時に注入される。本願発明者等は、これらの余分なイオンの存在下でもカーボンイオンを十分に注入できる良好なプラズマ条件を種々検討した結果、次の高周波パルス印加条件が好適であることを見出した。
高周波パルス印加電圧としては、その周波数、パルス幅、印加電圧の最適化が必要である。その理由は周波数が500Hz以下であると一定時間内のイオン注入回数が減少することになりイオン注入効率が低下する。一方10kHz以上であると高周波パルス電源の高性能化が必要となり装置コストの上昇を招く。パルス幅はイオン注入時のシース幅と大きく関係し、幅が狭いと複雑な形状に沿ってシースが形成され、均一にイオン注入されるが、幅が広いと狭い隙間にはシースが出来なくなりイオン注入量が減少する。このことからパルス幅が1.0μsec以下であると1回のパルスのイオン注入時間が短いことによりイオン注入効率が低下すると共にナノsecオーダーのパルス幅を形成するには高価な高周波電源が必要となり、装置コストがアップする。一方パルス幅が広く1000μsec以上であると成形品周辺に供給されるプラズマ密度が低下して、イオン注入効率が低下するばかりでなくパルス電源の高性能化が必要となり装置コストの上昇を招くことになる。
特に好ましい負パルス電圧は、基材の潤滑性、離型性付与の観点からは−0.5〜50kVが好ましい。−0.5kV以下であると基材へのイオン注入深さが浅く、基材と炭素膜間の傾斜構造化が得られず密着力の向上に寄与せず、また−50kV以上の高電圧になると基材と炭素膜間の傾斜構造化は進むが、高周波パルス電源が大型化して装置コストの大幅な上昇を招きさらに絶縁体の場合には基材表面におけるチャージアップによる放電、発熱によるプラスチック成形品のひずみ発生が顕著になり50kV以上は好ましくない。
各種基材表面へのイオン注入時間は制約されるものではないが5〜30分であることが好ましい。より好ましくは生産性の観点から短時間処理であるが、プラスチック成形品の場合にはカーボン元素の注入により表面層が脆くなり、密着性を低下させることもあり、材料成分によってイオン注入条件を選定する必要がある。
従来の質量分離によるイオン注入では、注入電流がmA以下で、高エネルギーの場合では数Aのオーダーである。そのため、1017ions/cm2のイオン注入をするには数時間もかかってしまう。これに対してプラズマベースのイオン注入では、成形品に対して周囲から一度に電流が流入するため、数A〜数十Aの電流が流れ、それにより短時間でのカーボンイオン注入処理が行える。且つ直流によるイオン注入でなくパルスによるイオン注入であるため、絶縁物に対してもチャージアップによる損傷は非常に少ない。
しかしながら絶縁物にあまり長時間イオン注入すると、絶縁表面に電荷が貯まり、チャージアップ現象により放電が発生し膜厚が不均一になり好ましくない。このような場合には絶縁物周辺を金属金網等の導電性物質で均一に覆い、電荷を逃がす工夫をすることが好ましい。例えばプラスチック成形品表面より1cm程度離れた位置に、ステンレス製の数メッシュ粗さの金網を均一に配置して、この金網は負パルス印加電極と所定の抵抗を挟んで接続することによりチャージアップが防止できる。金網の大きさ、距離、抵抗器サイズ等は成形品形状やパルス印加電圧、周波数等により影響されるため、それぞれのイオン注入条件から選定する必要がある。
本発明の被処理物に高周波パルス電圧を印加して、カーボンまたはフッ素を含有するイオンを処理物表面に注入すると同時にフッ素含有炭素膜を形成する手法は、各種基材に適用することは可能であるが、特に金属材料の中でもアルミニウム、チタン、マグネシウム及びそれら合金等からなる非鉄金属の表面改質により適していることが明らかになった。今まで非鉄金属に対する炭素膜形成はプラズマCVD及びPVD法で種々試みられてきたが、基材が柔らかく表層部分の酸化層が炭素膜の密着性を損ない、ケイ素系中間層を入れて炭素膜形成されることがあったが、数十〜100μmの膜厚を形成すると被膜が剥離して実用に耐えることが出来なかった。
本発明のカーボンイオン注入法では表層の酸化層を充分突き破るだけのエネルギーでイオン注入されるため、カーボンの傾斜構造を容易に形成することが可能であり、非鉄金属の表面硬度を上げながら炭素膜形成することが可能であり、炭素膜の弾性率を押さえながら成膜することが可能であるため、炭素膜中の残留応力が低く密着性が得られやすい。このため板厚が厚い硬質基材では3.0〜100μmの範囲の炭素膜を容易に得ることが可能であり、金属箔のようなの柔軟な基材では0.1〜3μmの薄めの炭素膜を形成する表面改質に適している。
またガラス、アルミナ、ジルコニア、石英等のセラミックス基材への炭素膜被覆物品を得ることも非常に有用である。セラミックス材料に大量のカーボンあるいはフッ素を添加することは通常プロセスでは不可能であるが、イオン注入法では任意な量だけ注入することが可能である。非鉄金属と同様に注入によりカーボンの傾斜構造を容易に形成することが可能であり、本プロセスでは炭素膜の弾性率を押さえながら成膜することが可能であるため、炭素膜中の残留応力が低く密着性が得られやすい。このため3.0〜100μmの炭素膜を容易に得ることが可能であり、セラミックスの表面改質に適している。
さらに炭素膜被覆物品がゴム、プラスチック等の柔軟な成形品に適している。本発明ではポリオレフィン材料、ポオレフィンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、シリコーンエラストマー等のプラスチック成形品からなり、この表面を潤滑性と離型性を兼備した炭素膜で被覆することにより従来にない製品を提供する。本発明は従来の手法では接着性が得られにくい樹脂やゴムに対してカーボンやフッ素をイオン注入して傾斜構造化することにより、密着性を向上させることが可能となった。
ゴム、プラスチック材料には種々の材料があるが、本発明ではエポキシ樹脂、フェノール樹脂アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂等の硬質プラスチック成形品より、柔軟なエラストマー材料が適している。硬質プラスチック材料には従来手法で剥離しない程度の密着性を得ることが可能であったが、柔軟な材料では折り曲げた時の微細なクラックにより炭素膜が剥離したが、本発明のプロセスでは柔軟な基材に対して0.1〜1.0μmの薄めの炭素膜を形成することで、屈曲後でも剥離することなく外観に優れた製品を提供する。
本発明の炭素膜被覆物品は上記金属、セラミックス、プラスチック成形品等の物品で、その非処理物表面より炭素が50nm以上イオン注入され、その表層部に硬質な炭素膜層を少なくとも0.1〜3μm成膜されていることが大きな特徴としている。従来のプラズマCVD法やPVD法などは、プラズマ中のカーボンイオンを引きつけるために数十V〜数百Vの直流あるいは交流のバイアス電圧を印加するのが一般的であるが、この電圧では被処理物表面よりカーボン原子が10nm以上イオン注入されることは無く、基材との密着性向上に寄与することはなかった。
高周波パルス電圧やパルス幅、周波数、印荷時間、処理温度等を種々変化させて評価した結果、被処理物表面から、より深くカーボン原子が注入されていることが密着性向上に寄与することを見出した。実験の結果少なくとも50nm以上イオン注入されていることが好ましく、これより浅いと密着性への寄与率が低下することが判った。この理由は、成膜される炭素膜の残留応力が表層より数十原子層では応力緩和することが出来ず、数百原子層は必要であるためと考えている。
カーボン原子が表層部より深く注入され、その表面に形成される硬質な炭素膜層が少なくとも0.1〜100μm成膜されていると、潤滑性と離型性を兼備した炭素膜でより大きな効果を発揮する。従来のプラズマCVD法やPVD法などは、基材界面に発生する残留応力のため0.1〜2.0μmの炭素膜を成膜するのが一般的であったが、本発明の50nm以上の傾斜構造化により基材界面に発生する残留応力が低減され、3.0μm以上の炭素膜の成膜が容易となった。実験によると例えば柔軟なアルミニウム基材に対して50〜100μmの炭素膜の成膜も可能であり、高機能・長寿命な摺動部材として応用可能であることが判った。
さらにゴム・プラスチック成形品へのカーボンイオン注入効果は、水蒸気や各種ガス透過率の低減効果に有用であることも判った。被処理物の表層より50nm以上のカーボンイオン注入層が形成され、元のカーボン元素濃度より数十at%以上高めた表面層の上に炭素膜を成膜することにより、より優れたガスバリア性を有するゴム・プラスチック成形品が得られる。ゴム・プラスチック材料のガス透過率は基材へのガス溶解度と、構成される分子間距離などが影響されるが、イオン注入された成形品は分子間距離を縮め、緻密な炭素膜はガスを透過しないためと考えられる。
一方、本発明の炭素膜被覆物品には、炭素膜中に5〜30at%のフッ素原子を含有することにより潤滑性と離型性を兼備した炭素膜を提供することが可能となった。本発明により形成した炭素膜中には、5〜30at%のフッ素元素を含有することが好ましい。炭素膜にフッ素を添加する試みは古くから行われているが、プラズマベースのイオン注入法と組み合わせて成膜するとより効果的であることを見出した。フッ素は非常に活性な元素であり、反応性に富み各種化合物を形成する。しかしその化合物は水や熱に対して分解しやすく長期間にわたって安定した状態で利用することは困難であった。
従来行われていたプラズマCVD法による成膜は比較的低いエネルギーで成膜されるため、C−C結合が優先的に起こり、炭素膜中のフッ素含有量は数%で以下であることが多く、あるいは炭素膜を形成した後、フッ素系ガスを流してフッ化反応させるため、表層のみに数十at%のフッ素を含有させたカーボン膜が多かった。この理由は熱プラズマで成膜したカーボン膜は秩序良い膜生長により硬くて脆い性質がでやすいためである。カーボン膜はダイヤモンド構造に由来するsp3構造とグラファイト構造に由来するsp2構造が混在したものと言われており、プラズマCVD法による炭素膜による成膜ではsp3構造が多く生成されやすいことが知られている。この構造にフッ素を添加すると不安定なsp3/sp2構造の混合物となり、硬くて脆いため耐摩耗性も劣る。
一方、プラズマベースのイオン注入法では直流バイアス電圧を架けることなく、パルスバイアス電圧で制御しながら炭素膜を成膜するため、sp3/sp2構造の割合を制御し、且つフッ素添加の割合も容易に制御可能であることを見出した。炭素膜中には水素が混入することが知られているが、水素の混入を押さえながらフッ素を添加することが可能であり、その量も5〜30at%のフッ素含有量で摩擦係数を低下させること見出し最適な炭素膜がパルス法において成膜可能となった。この理由はパルス法による成膜ではパルス電圧が膜生長の秩序を乱す効果にあると考えている。
本発明におけるカーボンイオン注入は不可欠であるが、フッ素イオン注入は必ずしも必要でなく、カーボン注入後、前述の炭化水素系およびフッ素系ガスを用いて炭素膜を成膜することは有効である。本発明では高電圧のプラズマベースのカーボンイオン注入をした後、低いパルスバイアス電圧を印加しながら成膜することにより炭素膜中の残留応力が緩和され、任意な割合でフッ化した炭素膜の形成が容易となり密着性の良い被膜を形成することが可能となる。
本発明の炭素膜は、金属、セラミックス、プラスチック成形品を負電圧印加試料台に取付け、これと高電圧のフィードスルーと一体化する。高周波(RF)電力はフィードスルーとチャンバーの間に加え、電子をその間の電界変化によって往復運動させ、気体分子と衝突を繰返すことにより炭化水素系及びフッ素系ガス分子を電離させ、高密度のプラズマを形成する。プラズマ中にはイオン、ラジカル、電子が共存するので、高圧パルス電圧を印加すると、プラズマ中のイオンをゴム、プラスチック成形品試料に注入することができ、高圧パルス電圧を印加されないと自己バイアス(通常数十ボルト)によるイオンを表面に堆積させ、この時ラジカル重合によりカーボン元素が結合し成膜することが出来る。この重畳方式のプラズマイオン注入・成膜装置を用いて、RF電力と高圧パルス電力の制御により、イオン注入・成膜或いはイオン注入と成膜の組み合わせが可能である。
炭素膜の物性は、使用するガス種、ガス圧、印加電圧等によって異なるが、基材との密着性に優れ、高硬度で膜厚の厚い炭素膜が好ましい。プラズマベースイオン注入・成膜装置では少なくとも3ステップのプロセスで成膜するのが好ましく、基板表面のクリーニング後に、高電圧でイオン注入して、その後カーボンイオン注入電圧より低い電圧でメタン、アセチレン等のガスを導入して炭素膜の成膜を行い、引き続き更に低電圧(数kV)のエネルギーで炭素膜を成膜するのが好ましい。この理由は、高エネルギーで炭素膜の成膜を行うと炭素膜構造が乱れ、硬高度な被膜が得られにくいばかりでなく、成膜速度が得られにくいためである。特に表層部分になるほど低エネルギーで成膜する方が高品質な炭素膜での被膜が得られるので好ましい。このように高エネルギーイオン注入、中エネルギー炭素膜成膜、低エネルギー炭素膜成膜の3ステップが炭素膜中の残留応力の緩和に役立ち厚膜形成に有利であることが判った。
以上、説明したように、本発明方法によれば、プラズマベースイオン注入・成膜法を用いて、まず炭化水素系ガスプラズマから金属、セラミックス、プラスチック成形品へのカーボンイオン注入を行い、さらにフッ素ガスもしくは少なくとも一原子以上のフッ素系を含有する炭化水素系ガスを導入しつつ炭素膜を形成することにより、潤滑性と撥水性、離型性に優れた炭素膜被覆物品及びその表面処理方法を提供できることが判った。
また、本発明の炭素膜被覆物品は、カーボンイオンの注入により表面硬度が高く、潤滑性、撥水性・離型性が増大し、耐溶剤性を有するゴムパッキング材、高分子成形容器等以外に、一般に使用されるプラスチック軸受けや摺動部材など工業用ゴム・高分子成形品等に対しても同様に期待できる。さらに、本発明のカーボンイオンプラスフッ素含有炭素膜形成技術は、本発明の金属材料やセラミックス材料以外の表面硬度アップや潤滑性・離型性の機能性向上など工業用セラミックス材料や金属材料成形品等に対しても同様に応用可能である。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
まず、本発明の各種基材への表面処理方法に用いるプラズマベースイオン注入・成膜装置の概略構成を図1に基づいて説明する。この装置は、金属、セラミックス、プラスチック成形品1の設置台2を内蔵する真空チャンバー3を具えている。設置台は負電圧印加のための電極を兼ねている。真空チャンバー3は、排気装置4により内部を所定の真空度に保持することができる。この装置は、所定の炭化水素系ガスおよびフッ素系ガスを、導入口5を通して導入され、炭化水素/フッ素ガス系ガスプラズマを形成させるための高周波方式プラズマ源6も設けられている。また炭素膜の密着性を向上させるために金属元素をイオン注入するための金属プラズマ源7も設けられている。
さらにこの装置は、各種成形品1に高電圧の負電荷を印加する高電圧負パルス電源8と高周波(RF)電源9も具えている。高電圧負パルス電源8では、所定のエネルギーの負電荷を発生させ、高電圧用フィードスルー10を通じて各種成形品1に負電荷のパルスを印加する。このフィードスルーは設置台とつながっており、設置台は絶縁碍子11で、電気的に浮いた状態になっている。さらに炭素膜の成膜時には、高電圧パルスと高周波を重ね合わせる重畳装置11通じて高電圧用フィードスルー10から電力を供給して、供給ガスをプラズマ化させ成膜することが出来る。高電圧用フィードスルー10にはシールドカバー13が取り付けられフィードスルー10を防護している。
本装置の試料設置台2には、図2に示すような直径70mm厚さ2mmの金属、セラミックス、プラスチック成形品(a)と、直径10mm厚さ1mmの各種成形品(b)をセットし、(a)試料では物理的、化学的特性を評価し、(b)試料では組成分析を行えるようにした。これらの金属、セラミックス、プラスチック成形品に負電荷のパルスを印加すると、プラズマ中のカーボンイオンあるいはCHx、CFx、C2Fx等のイオンが金型材料に引き付けられ、カーボンイオンあるいはフッ素イオンが注入される。金属、セラミックス、プラスチック成形品に負電荷のパルスを印加してイオンを注入するので、成形品が平板でなく凹凸のある立体形状物でも、電界が成形品の形状に沿って発生し、この表面に対してほぼ直角にカーボンイオンが衝突する。このため絶縁性のあるゴム・プラスチック成形品に凹凸があってもゴム・プラスチック成形品の表面全体にカーボンイオンを注入することができる。なお、カーボンあるいはフッ素イオン注入と共に水素イオンもイオン注入されるが、基材中の水素は、注入後に拡散して脱ガスすることが知られており、基材の物性をあまり左右されることはないと考えられている。
カーボンイオン注入後、さらに同一装置内で炭素膜を成膜することが可能である。カーボンイオン注入は数kV以上好ましくは10kV以上の電圧でイオン注入されるが、炭素膜の成膜はメタン、アセチレン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系ガスと、アルゴン/フッ素混合ガス、四フッ化カーボン、六フッ化二カーボン、六フッ化硫黄及び十フッ化四カーボン等からなるフッ素系ガスを任意な割合で混合して10kV以下の電圧を印加しながら成膜する。この理由は、高エネルギーで炭素膜の成膜を行うとイオンの衝突エネルギーにより炭素膜の膜構造が乱れ、硬高度な被膜が得られにくいばかりでなく、成膜速度が得られにくいためである。特に表層部分になるほど低エネルギーで成膜する方が高品質な炭素膜被覆物品が得られるので好ましい。好ましくは成膜時に自動制御により高電圧側から低電圧側に徐々に低下させる成膜手法が好ましい。
炭素膜の成膜はメタン、アセチレン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系ガスと、アルゴン/フッ素混合ガス、四フッ化カーボン、六フッ化二カーボン、六フッ化硫黄及び十フッ化四カーボン等からなるフッ素系ガスを任意な割合で混合して成膜するが、この混合割合は使用するガス種とガス流量、印加電圧などによって炭素膜中のフッ素含有量が変化する。混合するフッ素系ガスの割合が多いほど炭素膜中のフッ素含有量は増加するが、必ずしも比例関係にない。通常炭素膜中のフッ素含有量は混合比より少ない比率でしか含有させることが出来ない。この理由は、CF結合の安定性と関係しており、CF→CF→CFになるほど不安定で、結合したFは再分解するためと考えられている。理論的にはC:Fは1:1すなわち50at%入ることが可能であるが、研究の結果、30at%以上のフッ素を含有させても、安定した炭素膜の成膜が得られにくく実用的には5〜30at%が好ましい。
炭素膜の成膜中におけるアルゴン/フッ素混合ガス、四フッ化カーボン、六フッ化二カーボン、六フッ化硫黄及び十フッ化四カーボン等からなるフッ素系ガスの混合は、カーボンイオン注入時から実施しても良いが、炭素膜形成開始してから、しばらくして徐々に混合していくことが好ましい。炭素膜の潤滑性、離型性を得るには、フッ素系ガスを任意な割合で混合して10kV以下の電圧を印加しながら成膜する。この理由は、高エネルギーで炭素膜の成膜を行うと炭素膜構造が乱れ、硬高度な被膜が得られにくいばかりでなく、成膜速度が得られにくいためである。特に表層部分になるほど低エネルギーで成膜する方が高品質な炭素膜被覆物品が得られるので好ましい。

以下実施例に基づき説明する。
図1のようなプラズマベースイオン注入・成膜装置を用いて、図2a、bに示すような外寸法φ70×2mm厚のゴム・高分子成形円盤および分析評価用のφ10×1mmテスト用プレートを用いて、次の条件でプラズマを発生させ、カーボンイオン注入+炭素膜の成膜を行い評価した。
使用材料:アルミニウム合金(日本軽金属製AC4CH材)
使用ガス種:メタンガス/アセチレン/アルゴン・フッ素5%混合ガス
ガス混合比:メタンガス100/アセチレン90〜50/アルゴン・フッ素10〜50
注入・成膜時圧力:0.5Pa〜1.0Pa
注入エネルギー:10keV、20keV、30keV
成膜エネルギー:10keV→2keV
注入時間:10、20、30分
炭素膜成膜時間:180分
印加周波数:1000Hz及び2000Hz
前記の各条件で最初はメタンガスのみでカーボンイオン注入をそれぞれの電圧でアルミニウム基材へイオン注入し、その後電圧を下げながら炭素膜をアセチレン/アルゴン・フッ素混合ガスを用いて成膜を行った。なお圧力はガス混合比を変化すると圧力変動するため、その時の圧力範囲を示し、成膜エネルギーの矢印は成膜時間内に電圧を低下させながら実験したことを示す。注入されたカーボン元素の深さ方向の分布をオージェ分析装置(AES)で評価を行い、カーボンの注入深さと注入量(Atomic Concentration(%))を求めた。またアルミニウム基材表面の硬度と密着性をダイナミック硬度計およびスクラッチ密着性評価試験機にて測定し、さらに摩擦係数をボール&ディスク法による摩擦試験で鋼球を用いて測定した。測定した炭素膜の膜厚は成膜条件により異なるが、2〜4μmの炭素膜が形成されていた。更にアルミニウム基材表面の離型性を評価するための一般的な手法として、水に対する接触角を蒸留水適下法による接触角測定器で評価した。AES分析については代表例として注入時間30分、1000Hzの条件において注入エネルギー10keV、20keV、30keVにおけるカーボン注入分布を図3に示した。また硬度、密着性、摩擦係数、接触角については図4に上記条件における変化を未処理アルミニウム基材と比較して示した。
図3の横軸はアルミニウム材料の深さ方向を示して、原点は炭素膜材料を示し、縦軸は材料中のカーボン元素の割合を示している。なお分析に当たり炭素膜はあらかじめアルゴンスパッタにより薄くしてから分析した。図3から判るようにアルミニウム表面では炭素膜主成分であるカーボン層が300nm付近まで形成されており、310nm付近がアルミニウムの最表層部分と見られる。ここからカーボン注入層が360nm〜450nm付近まで高濃度のカーボン層であることが判る。この結果、注入エネルギーが高いほどカーボンの侵入深さは深く、内部までイオン注入されていることが判る。カーボンの注入深さは10keVで60nm付近まで、20keVで90nm、30keVで120nmほどイオン注入されていることが判る。このことは炭素膜形成前の印加電圧が高い程、カーボンはアルミニウム材料中の深くまで入り込み傾斜構造を示していることが判る。
一方、アルミニウム表面のダイナミック硬度、スクラッチ密着力と摩擦係数は図4に示すように未処理のアルミニウムは非常に柔らかいが、炭素膜を成膜することによりいずれも900以上の硬度を示し、且つスクラッチ密着力も基材が柔らかいにもかかわらず15N以上の密着力を示すことが判る。またアルミ基材は非常に高い摩擦係数を示すが、炭素膜によりいずれも0.23以下の低摩擦係数を示した。イオン注入エネルギーと注入時間の関係を見ると、高エネルギーでやや時間の長い方が硬度は高く、摩擦係数が低いように思われるが、F混合割合の影響が大きく寄与することが判った。F混合割合は炭素膜中のF含有量とは一致せず、別途光電子分光分析により膜中のフッ素含有量を求めた。
さらにアルミニウム表面への蒸留水の接触角を測定した結果、図4に示すように未処理のアルミニウムは親水性であるが、フッ素含有炭素膜は殆ど90度以上の接触角を示し撥水性表面が得られることが判る。接触角はF混合割合が多いほど高くなり、イオン注入エネルギーと注入時間の関係を検討すると注入時間には大きく影響せず、注入エネルギーが低い方が撥水性の傾向にあることが判った。このことから未処理のアルミニウム合金と比較すると適度なカーボンイオン注入を行い、その表面にF含有炭素膜を形成することにより、潤滑性と撥水性に優れた新規な材料表面を形成することが明らかである。
図1のようなプラズマベースイオン注入・成膜装置を用いて、図2a、bに示すような外寸法φ70×2mm厚のゴム・高分子成形円盤および分析評価用のφ10×1mmテスト用プレートを用いて、次の条件でプラズマを発生させ、カーボンイオン注入+炭素膜の成膜を行い評価した。
使用材料:アルミナ材料(京セラ株式会社製A−476材)
使用ガス種:メタンガス/アセチレン/四フッ化炭素ガス
ガス混合比:メタンガス100/アセチレン90〜50/四フッ化炭素10〜50
注入・成膜時圧力:0.5Pa〜1.0Pa
注入エネルギー:10keV、20keV、30keV
成膜エネルギー:10keV→2keV
注入時間:10、20、30分
炭素膜成膜時間:180分
印加周波数:1000Hz及び2000Hz
前記の各条件で最初はメタンガスのみでカーボンイオン注入をそれぞれの電圧でアルミナ基材へイオン注入し、その後電圧を下げながら炭素膜をアセチレン/四フッ化炭素ガス混合ガスを用いて成膜を行った。なお圧力はガス混合比を変化すると圧力変動するため、その時の圧力範囲を示し、成膜エネルギーの矢印は成膜時間内に電圧を低下させながら実験したことを示す。注入されたカーボン元素の深さ方向の分布をオージェ分析装置(AES)で評価を行い、カーボンの注入深さと注入量(Atomic Concentration(%))を求めた。またアルミナ基材表面の硬度と密着性をダイナミック硬度計およびスクラッチ密着性評価試験機にて測定し、さらに摩擦係数をボール&ディスク法による摩擦試験で鋼球を用いて測定した。測定した炭素膜の膜厚は成膜条件により異なるが、1.5〜3μmの炭素膜が形成されていた。更にアルミナ基材表面の離型性の指標として水に対する接触角を蒸留水適下法による接触角測定器で評価した。AES分析については代表例として注入時間30分、1000Hzの条件において注入エネルギー10keV、20keV、30keVにおけるカーボン注入分布を図5に示した。また硬度、密着性、摩擦係数、接触角については図6に上記条件における変化を未処理アルミナ基材と比較して示した。
図5の横軸はアルミナ材料の深さ方向を示して、原点は炭素膜材料を示し、縦軸は材料中のカーボン元素の割合を示している。なお分析に当たり炭素膜はあらかじめアルゴンスパッタにより薄くしてから分析した。図5から判るようにアルミナ表面では炭素膜主成分であるカーボン層が300nm付近まで形成されており、280nm付近がアルミナの最表層部分と見られる。ここからカーボン注入層が380nm〜550nm付近まで高濃度のカーボン層であることが判る。この結果、注入エネルギーが高いほどカーボンの侵入深さは深く、内部までイオン注入されていることが判る。カーボンの注入深さは10keVで100nm付近まで、20keVで180nm、30keVで250nmほどイオン注入されていることが判る。このことは炭素膜形成前の印加電圧が高い程、カーボンはアルミナ材料中の深くまで入り込み傾斜構造を示していることが判る。
一方、アルミナ表面のダイナミック硬度、スクラッチ密着力と摩擦係数は図6に示すように未処理のアルミナは基材そのものが硬いため、炭素膜を成膜することによりやや硬度が低下する傾向を示す。しかしスクラッチ密着力は基材が硬いため20N以上の密着力を示すことが判る。また摩擦係数はアルミナ基材は高い値であるが、炭素膜によりいずれも0.23以下の低摩擦係数を示した。イオン注入エネルギーと注入時間の関係を見ると、高エネルギーでやや時間の長い方が硬度は高く、摩擦係数が低い傾向にあるが、F混合割合の影響が大きく寄与することが判った。F混合割合は炭素膜中のF含有量とは一致せず、別途光電子分光分析により膜中のフッ素含有量を求めた。
さらにアルミナ表面への蒸留水の接触角を測定した結果、図6に示すように未処理のアルミナは親水性であるが、フッ素含有炭素膜は殆ど90度以上の接触角を示し撥水性表面が得られることが判る。接触角はF混合割合が多いほど高くなり、イオン注入エネルギーと注入時間の関係を検討すると注入時間には大きく影響せず、注入エネルギーが低い方が撥水性の傾向にあることが判った。このことから未処理のアルミナと比較すると適度なカーボンイオン注入を行い、その表面にF含有炭素膜を形成することにより、潤滑性と撥水性に優れた新規な材料表面を形成することが明らかである。
次に使用材料を変化させて図2a、bに示すような外寸法φ70×2mm厚のゴム・高分子成形円盤および分析評価用のφ10×1mmテスト用プレートを用いて、実験例1と同様にプラズマを発生させ、カーボンイオン注入+炭素膜の成膜を行い評価した。
使用材料:ニトリルゴム(日本ゼオン製ニッポールDN201)
使用ガス種:メタンガス/トルエン/四フッ化炭素ガス
ガス混合比:メタンガス100/トルエン90〜50/四フッ化炭素10〜50
注入・成膜時圧力:0.5Pa〜1.0Pa
注入エネルギー:10keV、20keV、30keV
成膜エネルギー:10keV→2keV
注入時間:10、20、30分
炭素膜成膜時間:60分
印加周波数:1000Hz及び3000Hz
前記の各条件で最初はメタンガスのみでカーボンイオン注入をそれぞれの電圧でニトリルゴム成形品へイオン注入し、その後電圧を下げながら炭素膜の形成をトルエン/四フッ化炭素混合ガスを用いて成膜を行った。なお圧力はガス混合比を変化すると圧力変動するため、その時の圧力範囲を示し、成膜エネルギーの矢印は成膜時間内に電圧を低下させながら実験したことを示す。注入されたカーボン元素の深さ方向の分布をオージェ分析装置(AES)で評価を行い、カーボンの注入深さと注入量(Atomic Concentration(%))を求めた。またニトリルゴム表面の硬度と炭素膜の密着性をダイナミック硬度計およびスクラッチ密着性評価試験機を用いて測定し、さらに摩擦係数をボール&ディスク法による摩擦試験で鋼球を用いて測定した。更にニトリルゴム表面の離型性の指標として水に対する接触角を蒸留水適下法による接触角測定器で評価した。AES分析については代表例として注入時間30分、2000Hzの条件において注入エネルギー10keV、20keV、30keVにおけるカーボン注入分布を図7に示した。また硬度、密着性、摩擦係数、接触角については図8に上記条件における変化を未処理ニトリルゴムと比較して示した。
図7の横軸はニトリルゴム材料の深さ方向を示して、原点は炭素膜材料を示し、縦軸は材料中のカーボン元素の割合を示している。図7から判るようにニトリルゴムの表面では炭素膜成分であるカーボン層が300nm付近まで形成されており、320nm付近がニトリルゴムの最表層部分と見られる。またニトリルゴム中にはかなりのカーボンが配合されているためベース濃度が高いことが判る。ここからカーボン注入層が550nm〜800nm付近まで高濃度のカーボン層であることが判る。この結果、注入エネルギーが高いほどカーボンの侵入深さは深く、内部までベースより高濃度であることが判る。カーボンの注入深さは10keVで130nm付近まで、20keVで380nm、30keVで550nmほどイオン注入されていることが判る。このことは炭素膜形成前の印加電圧が高い程、カーボンはニトリルゴム材料中の深くまで入り込み傾斜構造を示していることが判る。
一方、ニトリルゴム表面のダイナミック硬度と摩擦係数は図8に示すように未処理のニトリルゴムは非常に柔らかいが、炭素膜を成膜することによりいずれも600以上の硬度を示し、摩擦係数はいずれも0.27以下の摩擦係数を示した。イオン注入エネルギーと注入時間の関係を見ると、高エネルギーでやや時間の長い方が硬度は高く、摩擦係数が低いように思われるが、F混合割合の影響が大きく寄与することが判った。F混合割合は炭素膜中のF含有量とは一致せず、別途光電子分光分析により膜中のフッ素含有量を求めた。
さらにニトリルゴム表面の水の接触角を測定した結果、図8に示すように未処理のニトリルゴムは親水性であるが、炭素膜形成によりいずれも接触角は大きくなり撥水性表面が得られることが判る。接触角はF混合割合が多いほど高くなる傾向にあることが判った。イオン注入エネルギーと注入時間の関係を検討するとあまり大きく影響せず、F混合割合を最適化する必要があることが判る。このことから未処理のニトリルゴムと比較すると適度なカーボンイオン注入を行い、その表面にF含有炭素膜を形成することにより、潤滑性で撥水性にとんだ新規な材料表面を形成することが明らかである。
次に使用材料を変化させて図2a、bに示すような外寸法φ70×2mm厚のゴム・高分子成形円盤および分析評価用のφ10×1mmテスト用プレートを用いて、実験例1と同様にプラズマを発生させ、カーボンイオン注入+炭素膜の成膜を行い評価した。
使用材料:ポリプロピレン樹脂(住友化学工業製ノーブレンH501)
使用ガス種:メタンガス/アセチレンガス/四フッ化炭素ガス
ガス混合比:メタンガス100/アセチレン90〜50/四フッ化炭素10〜50
注入・成膜時圧力:0.5Pa〜1.0Pa
注入エネルギー:10keV、20keV、30keV
成膜エネルギー:10keV→2keV
注入時間:10、20、30分
炭素膜成膜時間:90分
印加周波数:1000Hz
前記の各条件で最初はメタンガスのみでカーボンイオン注入をそれぞれの電圧でポリプロピレン樹脂成形品へイオン注入し、その後電圧を下げながら炭素膜形成をアセチレン/四フッ化炭素混合ガスを用いて成膜を行った。なお圧力はガス混合比を変化すると圧力変動するため、その時の圧力範囲を示し、成膜エネルギーの矢印は成膜時間内に電圧を低下させながら実験したことを示す。注入されたカーボン元素の深さ方向の分布をオージェ分析装置(AES)で評価を行い、カーボンの注入深さと注入量(Atomic Concentration(%))を求めた。またポリプロピレン樹脂表面の硬度と密着性をダイナミック硬度計およびスクラッチ密着性評価試験機を用いて測定し、また摩擦係数をボール&ディスク法による摩擦試験で鋼球を用いて測定した。更にポリプロピレン樹脂表面の水に対する接触角を蒸留水適下法による接触角測定器で評価した。AES分析については代表例として注入時間30分、1000Hzの条件において注入エネルギー10keV、20keV、30keVにおけるカーボン注入分布を図9に示した。また硬度、密着性、摩擦係数、接触角については図10に上記条件における変化を未処理ポリプロピレン樹脂と比較して示した。
図9の横軸はポリプロピレン樹脂材料の深さ方向を示している。本試料は炭素膜厚が2μmと厚いため、あらかじめアルゴンスパッタリングして測定しており、原点は炭素膜材料の中間部分を示し、縦軸は材料中のカーボン元素の割合を示している。図9から判るようにポリプロピレン樹脂表面には炭素膜成分のカーボン層が残留しており、220nm付近がニトリルゴムの最表層部分と見られる。ここからカーボン注入層が450nm〜800nm付近まで高濃度のカーボン層であることが判る。ポリプロピレン樹脂は元々カーボン成分が少なく、注入エネルギーが高いほどカーボンの侵入深さは深く、内部まで高濃度であることが判る。カーボンの注入深さは10keVで200nm付近まで、20keVで400nm、30keVで600nmほどイオン注入されていることが判る。このことは炭素膜形成前の印加電圧が高い程、カーボンはポリプロピレン樹脂材料中の深くまで入り込み傾斜構造を示していることが判る。
一方、ポリプロピレン樹脂表面のダイナミック硬度は図10に示すように未処理のポリプロピレン樹脂は柔らかいが、炭素膜を成膜することによりいずれも1000以上の硬度を示し、その被膜の密着性も15N以上の密着力を示し、屈曲しても炭素膜が剥離することなく良好な密着性をしました。また摩擦係数は未処理よりも減少しいずれも0.23以下の摩擦係数を示した。イオン注入エネルギーと注入時間の関係を見ると、長時間イオン注入した方がやや硬度は高く、摩擦係数が低いように思われるが、ゴム材料と同様にF混合割合の影響が大きく寄与することが判った。F混合割合は炭素膜中のF含有量とは一致せず、別途光電子分光分析により膜中のフッ素含有量を求めた。
さらにポリプロピレン樹脂表面の水の接触角を測定した結果、図10に示すように未処理のポリプロピレン樹脂はやや疎水性であるが、炭素膜形成することによりいずれも接触角は大きくなり撥水性表面が得られことが判る。また接触角はF混合割合が多いほど高くなることが判った。イオン注入エネルギーと注入時間の関係を見ると、接触角は大きくエネルギーに依存せず炭素膜の成膜条件の影響を受けることが判る。本発明の試料は未処理のポリプロピレン樹脂と比較すると適度なカーボンイオン注入を行い、その表面にF含有炭素膜を成膜することにより、潤滑性で、撥水性に優れた新規な材料表面を形成することが明らかである。
次に炭素膜の成膜時のプラズマ生成用フッ素ガス混合割合と成膜された炭素膜中のフッ素含有量との関係を、光電子分光分析装置(XPS)を用いて分析し、F含有量を同定した。使用したガス種はアセチレンガス/アルゴン・フッ素混合ガスまたは四フッ化カーボンまたは六フッ化二カーボンガスを、それぞれ90:10、80:20、70:30、60:40、50:50、40:60の割合で混合したガスを真空チャンバー内に導入して炭素膜を1μm程度行ったものを用いた。その結果、図9に示すようにフッ素系ガスの混合割合が多くなると炭素膜中のF含有量が比例して多くなることが判る。しかしフッ素系ガスを50%以上混合してもF含有量は30%以下に押さえられる傾向にある。混合ガスが50%未満では炭素膜中に入り込むF含有量はほぼ1/2以下でフッ素系ガス種によって異なることが判った。
図4、図6、図8、図10の表面物理的特性と図11のフッ素含有量の関係を検討すると、本発明の金属、セラミックス、プラスチック成形品へのカーボンイオン注入後に炭化水素系ガスとフッ素系ガスを混合して炭素膜を成膜することにより、炭素膜中には5〜30%のフッ素が含有することは明らかになり、これにより高い硬度と密着性を維持しながら潤滑性と優れた撥水性すなわち離型性のある新規な炭素膜被覆物品が得られることは明らかである。
また実験例には記載していないが、図8、図10で得られたゴム、プラスチック成形品のシートは柔軟で180度の折り曲げ試験を実施しても表面の炭素膜は剥離することなく、微細なクラックが入るのみであった。また実験例のように10〜30keV電圧を印加せずに炭素膜を1kVで行った試料は、折り曲げ試験後に炭素膜が部分的に剥離し、摩擦係数は大きくなり未処理のゴム・プラスチック成形品と同等であった。このことから炭素膜形成の前処理としてカーボンのパルスイオン注入が不可欠であることが明らかになった。
本発明の金型処理方法に用いるプラズマベースイオン注入・成膜装置の構成図である。 実験に用いたプレス成形金型及びテスト試料の形状を示す。 アルミニウム合金へのカーボンイオン注入+炭素膜形成後のオージェ分析によるカーボン注入深さとカーボン濃度との関係を示すグラフである。 アルミニウム合金へのカーボンイオン注入+炭素膜形成後の硬度、密着力、摩擦係数、接触角など物理的変化を測定した結果である。 アルミナ基材へのカーボンイオン注入+炭素膜形成後のオージェ分析によるカーボン注入深さとカーボン濃度との関係を示すグラフである。 アルミナ基材へのカーボンイオン注入+炭素膜形成後の硬度、密着力、摩擦係数、接触角など物理的変化を測定した結果である。 ニトリルゴムへのカーボンイオン注入+炭素膜形成後のオージェ分析によるカーボン注入深さとカーボン濃度との関係を示すグラフである。 ニトリルゴムへのカーボンイオン注入+炭素膜形成後の硬度、密着力、摩擦係数、接触角など物理的変化を測定した結果である。 ポリプロピレン樹脂へのカーボンイオン注入+炭素膜形成後のオージェ分析によるカーボン注入深さとカーボン濃度との関係を示すグラフである。 ポリプロピレン樹脂へのカーボンイオン注入+炭素膜形成後の硬度、密着力、摩擦係数、接触角など物理的変化を測定した結果である。 炭素膜形成中におけるフッ素系ガス混合割合と炭素膜中フッ素含有量の関係XPS分析により評価した結果である。
符号の説明
1 金型材料
2 設置台
3 真空チャンバー
4 排気装置
5 炭化水素ガス導入口
6 高周波方式プラズマ源
7 金属プラズマ源
8 高電圧負パルス電源
9 高周波(RF)電源
10 高電圧用フィードスルー
11 絶縁碍子
12 重畳装置
13 シールドカバー





























Claims (9)

  1. 真空中で、フッ素ガスもしくは少なくとも一原子以上のフッ素を含有する炭化水素系ガスを導入して高周波電力の供給によりプラズマを発生させ、この中の被処理物に高周波パルス電圧を印加して、炭素またはフッ素及びこれらの2元素を含有するイオンを被処理物表面に注入すると同時に、フッ素含有炭素膜を形成することを特徴とする潤滑性と離型性を兼備した炭素膜被覆物品及びその表面処理方法。
  2. フッ素ガスもしくは少なくとも一原子以上のフッ素を含有するガスとして、アルゴン/フッ素混合ガス、四フッ化カーボン、六フッ化二カーボン、六フッ化硫黄及び十フッ化四カーボン等から選択される少なくとも1種類のガスと、メタン、エタン、アセチレン、ベンゼン、シクロヘキサン等から選択される少なくとも1種類のガスを、任意な割合で混合したガスを供給することを特徴とする請求項1に記載の潤滑性と離型性を有する炭素膜被覆物品及びその表面処理方法。
  3. ガスプラズマを発生させる高周波電力として、周波数が0.2MHzから2.45GHzまでの範囲で、出力が10Wから20kWまでの範囲で、パルス幅1.0μsec以上であることを特徴とする請求項1に記載の潤滑性と離型性を有する炭素膜被覆物品及びその表面処理方法。
  4. 高周波パルス印加電圧として、周波数が500Hz〜10kHzの範囲内で、パルス幅が1.0から1000μsecまでの範囲内で、印加電圧が−0.5kVから−50kV間での範囲であることを特徴とする請求項1に記載の潤滑性と離型性を有する炭素膜被覆物品及びその表面処理方法。
  5. 炭素膜被覆物品がアルミニウム、チタン、マグネシウム及びそれらの合金等の非鉄金属からなることを特徴とする請求項1に記載の潤滑性と離型性を有する炭素膜被覆物品及びその表面処理方法。
  6. 炭素膜被覆物品がガラス、アルミナ、ジルコニア、石英等のセラミックスからなることを特徴とする請求項1に記載の潤滑性と離型性を有する炭素膜被覆物品及びその表面処理方法。
  7. 炭素膜被覆物品がポリオレフィン材料、ポリオレフィンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、シリコーンエラストマー等のプラスチック成形品からなることを特徴とする請求項1に記載の潤滑性と離型性を有する炭素膜被覆物品及びその表面処理方法。
  8. 炭素膜被覆物品が請求項5,6,7記載の物品で、カーボンイオン注入によりその表面より50nm以上のカーボンの傾斜層を持ち、その表層部に少なくとも0.1〜100μm炭素膜層を有することを特徴とする請求項1記載の潤滑性と離型性を有する炭素膜被覆物品及びその表面処理方法。
  9. 炭素膜被覆物品が請求項8記載の物品で、その表面に形成した炭素膜中に5〜30at%のフッ素を含有したことを特徴とする請求項1記載の潤滑性と離型性を有する炭素膜被覆物品及びその表面処理方法。
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