JP2005036819A - 複層摺動部材 - Google Patents

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英樹 岩田
Takahiro Niwa
貴裕 丹羽
Takeshi Shindo
剛 新藤
Tsunetaro Kashiyama
恒太郎 樫山
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Abstract

【目的】嵌合力・機械的強度に優れ、厳しい使用条件下での使用が可能な優れた摺動特性を有する複層摺動部材を提供する。
【構成】基材2の表面に金属粉末を焼結させることにより設けられる多孔質金属層3と、該多孔質金属層3にフェノール系樹脂からなる摺動組成物を含浸被覆した後、600〜900℃の真空雰囲気下で炭化処理することにより得られたカーボンからなる摺動層4と、から構成される複層摺動部材1において、摺動層4には、高硬度及び非焼付性に優れたカーボン層が形成され、複層摺動部材1を厳しい使用条件下でも安定して使用することができる。また、ハウジングに円筒形の複層摺動部材1を嵌入した場合、基材2のスプリングバックにより複層摺動部材1の嵌合力が向上すると共に、一般的なカーボン軸受と比して肉厚が薄くても複層摺動部材1自体の機械的強度を確保することができる。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、基材の表面に金属粉末を焼結させることにより設けられる多孔質金属層と、該多孔質金属層にフェノール系樹脂からなる摺動組成物を含浸被覆させた摺動層と、から構成される複層摺動部材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般的に水潤滑あるいは油潤滑において用いられる摺動部材として、すべての構成成分が炭素からなるカーボン軸受が知られている。このカーボン軸受の特徴として、カーボン軸受を構成する炭素の特性により、硬い、高温域での使用が可能、熱伝導率が高いこと等が挙げられる。したがって、粘性が低く、潤滑特性の劣る潤滑剤、例えば、水中ポンプ等の水潤滑あるいはエアコンのコンプレッサーで用いられる冷媒と潤滑油が混合されたもの等といった潤滑油膜が形成されにくい厳しい使用条件下では、高硬度,耐熱性及び熱伝導性に優れたカーボン軸受が適しているといえる。
【0003】
上記したカーボン軸受は、様々な製造方法により作製されているが、例えば、炭素粉末の圧縮成形体を1000〜2000℃で焼成したもの(1000℃付近では非晶質カーボン、1500〜2000℃付近では結晶性カーボンが形成される)、バインダーとして熱硬化性樹脂を用いて炭素粉末を圧縮成形したものがある。しかしながら、このようなカーボン軸受は、弾性体でないため嵌合力がなく、ハウジングから抜け出しやすい、また、カーボン軸受自体がもろく、機械的強度を確保するためにカーボン軸受の肉厚を厚くする必要があると共に、それがコストアップにつながる等の問題点が挙げられる。このため、カーボン軸受は、特殊な分野において適用される場合が多い。
【0004】
【特許文献1】
特開平10−226752号公報
【0005】
また、特開平10−226752号に示されるように、前記のカーボン軸受とは構成が異なるが、グラファイト成分と樹脂成分とからなる摺動組成物を裏金の粗面化部に含浸させた摺動部材において、グラファイト成分が30重量%を超え60重量%以下であることを特徴としたものがある。このような摺動部材においては、構成成分にバインダーとして用いられた熱硬化性樹脂が含まれるため、上記したカーボン軸受よりも熱伝導性が劣ると共に、高温域での使用が不可能であるといった問題点があった。つまり、前記摺動部材の耐熱温度は、実質的に熱硬化性樹脂の耐熱温度に制限され、せいぜい300℃であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記した事情に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、嵌合力・機械的強度に優れ、厳しい使用条件下での使用が可能な優れた摺動特性を有する複層摺動部材を提供することである。
【0007】
【課題を解決しようとする手段】
上記した目的を達成するために、請求項1に係る発明においては、基材の表面に金属粉末を焼結させることにより設けられる多孔質金属層と、該多孔質金属層にフェノール系樹脂からなる摺動組成物を含浸被覆した後、600〜900℃の真空雰囲気下で炭化処理することにより得られたカーボンからなる摺動層と、から構成される複層摺動部材であることを特徴とする。このように構成することにより、フェノール系樹脂が炭化された摺動層には、高硬度及び非焼付性に優れたカーボン層が形成され、複層摺動部材を厳しい使用条件下でも安定して使用することができる。また、摺動層と基材との間に熱伝導性に優れた多孔質金属層が設けられることで、摺動層部分に熱が蓄積せず、焼付きを防止することができる。更に、ハウジングに円筒形の複層摺動部材を嵌入した場合、基材のスプリングバックにより複層摺動部材の嵌合力が向上すると共に、一般的なカーボン軸受と比して肉厚が薄くても複層摺動部材自体の機械的強度を確保することができる。なお、摺動層は、多孔質金属層に含浸被覆することで設けられているが、基材にカーボン層を直接接合することは難しく、多孔質焼結体である多孔質金属層のアンカー効果により接合を可能とし、接合強度を強くしている。
【0008】
摺動層のフェノール系樹脂は、真空雰囲気下で炭化処理することによって形成されているが、この炭化処理温度は、600〜900℃の範囲であり、好ましくは650〜800℃の範囲である。このように炭化処理温度が600℃未満では、摺動組成物の炭化が十分に進まず、摺動層は、十分な硬度及び非焼付性を得ることができない。一方、炭化処理温度が900℃を超えると、多孔質金属層が変形し多孔度が減少する。その結果、摺動層との接合強度が低下する。
【0009】
また、請求項2に係る発明においては、前記摺動組成物に粒径が1μm以下のカーボンブラックを0.1〜5体積%添加したことを特徴とする。このように構成することにより、微細なカーボンブラックが粒径の大きいフェノール系樹脂の粒子間に生じる隙間を埋めることで高密度のカーボン層を形成し、摺動層に発生する摩擦熱を効率よく基材及び多孔質金属層に分散させ、摺動層部分の焼付きを防止することができる。また、添加されるカーボンブラックの粒径として、1μm以下が好ましい。これは、カーボンブラックの粒径が小さいほど、隙間を効率よく埋め、熱伝導性が向上されるためである。一方、カーボンブラックの粒径が1μmよりも大きいと、隙間に入ることができず、良好な熱伝導性が得られない。
【0010】
また、カーボンブラックの含有量は、摺動組成物100体積%に対し、0.1〜5体積%である。0.1体積%未満では隙間を埋める効果が少なく、5体積%を超えると、嵩高いために良好なワニス(樹脂を溶媒に溶かしたもの)性状が得られず、多孔質金属層に含浸被覆できない。
【0011】
また、請求項3に係る発明においては、前記摺動組成物に結晶性カーボンを1〜10体積%添加したことを特徴とする。このように構成することにより、摺動層に摩擦特性の向上と親油性を付与することができる。ここで、結晶性カーボンとは、グラファイトのことであり、優れた摩擦特性を有すると共に、油等を吸着する作用がある。結晶性カーボンの含有量は、摺動組成物100体積%に対し、1〜10体積%である。1体積%未満では油吸着の効果が少なく、10体積%を超えると、嵩高いために良好なワニス性状が得られず、多孔質金属層に含浸被覆できない。
【0012】
また、請求項4に係る発明においては、前記摺動層には、前記摺動組成物に多孔質形成助剤を添加することで多孔質の摺動層が形成されたことを特徴とする。このように構成することにより、摺動層に形成された多孔質部が油だまり効果や毛細管現象を示し、摺動層に親油性を付与することができる。
【0013】
また、請求項5に係る発明においては、前記フェノール系樹脂は、平均分子量が10,000以上であることを特徴とする。このように構成することにより、機械的強度の優れたカーボン層が得られる。また、炭化処理において、加熱によるフェノール系樹脂の分解反応を極力防ぎながら炭化を進行させることができる。なお、通常のレゾール型やノボラック型のフェノール系樹脂は、平均分子量100〜800であるため、炭化処理において分解してしまうので使用できない。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。図1は、実施形態に係る炭化処理前及び処理後の複層摺動部材1の全体図であり、図2は、複層摺動部材1の拡大部分断面図である。
【0015】
図1及び図2において、複層摺動部材1は、表面に銅メッキ層が施された鋼板からなる基材2の表面に銅合金粉末を焼結することにより設けられる多孔質金属層3と、該多孔質金属層3にフェノール系樹脂からなる摺動組成物を含浸被覆した摺動層4と、から構成されている。そして、このように構成される複層摺動部材1は、後述するように曲げ加工されることにより軸受として使用されるようになっている。
【0016】
摺動層4は、多孔質金属層3に含浸被覆することで設けられているが、多孔質金属層3との接合によりアンカー効果が生じ、このアンカー効果によって基材2から剥離しにくくなるものである。本実施形態では、摺動層4は、多孔質金属層3に含浸被覆することで設けられているが、摺動層4と基材2とが接合されればよく、例えば、摺動組成物が含浸被覆される基材2の表面をサンドブラスト又は機械加工等により粗面化したものであってもよい。
【0017】
また、本実施形態では、基材2として鋼板が用いられているが、ステンレス鋼、銅系合金、アルミ系合金、チタン系合金のうちいずれかでもよい。ステンレス鋼のような耐食性材料を用いれば、前記複層摺動部材1を水潤滑下においても使用することができる。
【0018】
また、摺動組成物に粒径が1μm以下のカーボンブラック(以下、CBと表示)を添加してもよい。カーボンブラックは、摺動層4の熱伝導性を向上させるために添加されるものであるが、その含有量は、摺動組成物100体積%に対し、0.1〜5体積%の範囲である。
【0019】
また、摺動組成物に結晶性カーボン(グラファイト,以下、Grと表示)を添加してもよい。結晶性カーボンは、摺動層4に親油性を付与させるために添加されるものであるが、その含有量は、摺動組成物100体積%に対し、1〜10体積%の範囲である。
【0020】
次に、上記のように構成される摺動層4を有する複層摺動部材1の製造方法について説明する。まず、1.2mmの厚さ寸法を有し、表面に銅メッキ層が施された鋼板の基材2上に、銅合金粉末を厚さ0.3mmに散布し、次いで、還元雰囲気中で750〜900℃の温度に加熱して銅合金粉末を焼結した。これにて、基材2の表面に銅合金からなる多孔質金属層3が得られた。
【0021】
一方、摺動層4を構成する材料の混合物(摺動組成物)を得る工程が実行される。ここでは、各々の熱硬化性樹脂に所定量の充填材(CB,Gr等)を均一に混合させたワニスを得た。そして、ワニスを上記基材2の表面に設けられた多孔質金属層3に含浸被覆した後、溶媒を蒸発させ、更に、150〜250℃の温度で摺動組成物のキュアリングを行うことで摺動層4が含浸被覆された平板材料を得た。なお、摺動層4の成形は、ワニスによる多孔質金属層3に含浸被覆することに限らず、射出成形、圧縮成形、トランスファー成形によって摺動層を設けてもよい。
【0022】
基材2上の多孔質金属層3に含浸被覆した平板材料を所要寸法に切断し、曲げ加工(巻き加工)を行うことにより、内径40mm,幅10mmの円筒状の複層摺動部材1(図1)を作製した。そして、表1に示す炭化条件の処理ステップによって、複層摺動部材1を真空雰囲気中で加熱し、各任意の炭化処理温度まで昇温した後に、室温まで冷却して焼成炭化物を得た。なお、摺動層4の割れを防止するため、キュアリングと曲げ加工の順番を入れ替えて、溶媒蒸発後の柔軟な状態で複層摺動部材1を曲げ加工した後、キュアリング及び炭化処理を行ってもよい。
【0023】
【表1】
Figure 2005036819
【0024】
試験を行うための試験試料として、表2の実施例1〜4に示す摺動組成物及び炭化焼成温度の異なる試験試料を用い、比較する試験試料として、表2の比較例1〜4に示す摺動組成物及び炭化焼成温度の異なる試験試料をそれぞれ用いた。
【0025】
【表2】
Figure 2005036819
【0026】
表2に示す試験試料のうち、摺動組成物のベースとなる熱硬化性樹脂として、比較例1についてポリアミドイミド(以下、「PAI樹脂」と表示)を用い、比較例2について一般的なノボラック型のフェノール(以下、「PF樹脂」と表示)を用い、比較例3,4及び実施例1〜4について特殊な製造過程を経て作製されたPF樹脂である鐘紡製「ベルパールS890(商品名、以下、「特殊PF樹脂」と表示)」を用いた。なお、この特殊PF樹脂は、平均分子量が10,000以上のPF樹脂であり、一般的なレゾール型やノボラック型のPF樹脂よりも熱安定性が高い。
【0027】
また、比較例1,2では摺動層4に50体積%のGrが添加され、実施例3では3体積%のCBが添加され、実施例4では5体積%のGrが添加されている。
【0028】
また、摺動層4の炭化処理温度は、比較例1〜3が未処理、比較例4が500℃、実施例1が600℃、実施例2が800℃、実施例3,4が700℃となっている。
【0029】
次に、本発明の実施例及び比較例に係る複層摺動部材1の試験片を用い、測定荷重10gfでマイクロビッカースにより摺動層4の硬度を測定した結果について表3を参照して説明する。
【0030】
【表3】
Figure 2005036819
【0031】
表3に示す硬度測定結果から次のことが判明した。まず、PAI樹脂にGrが50体積%添加された摺動組成物を炭化処理しない比較例1では、試験片が弾性体のため圧痕が残らず、マイクロビッカース硬度が測定できなかった。また、ノボラック型PF樹脂にGrが50体積%添加された摺動組成物を炭化処理しない比較例2及び特殊PF樹脂を炭化処理しない比較例3では、マイクロビッカース硬度がそれぞれ42,35と低い値を示している。これは、比較例2,3ともに炭化処理が全く施されていないためである。また、特殊PF樹脂を500℃で炭化処理した比較例4では、マイクロビッカース硬度が69を示し、比較例3と比して若干硬くなっているものの、摺動組成物である特殊PF樹脂が十分に炭化されていないために低い値を示している。
【0032】
また、特殊PF樹脂を600,800℃で炭化処理した実施例1,2では、マイクロビッカース硬度がそれぞれ144,226となり、炭化処理していない比較例1〜3及び500℃で炭化処理した比較例4と比して高い値を示している。これは、600℃以上の炭化処理により特殊PF樹脂が十分に炭化されたためである。なお、本実施例中では、800℃で炭化処理された実施例2においてマイクロビッカース硬度が226と最高の値を示した。また、700℃で炭化処理された実施例3,4については、摺動組成物に3体積%のCB、5体積%のGrが添加されているが、マイクロビッカース硬度は、203,205と高い値を示している。
【0033】
次に、本発明の実施例及び比較例に係る複層摺動部材1の試験片を用い、スラスト型試験機により行った複層摺動部材1の焼付面圧を評価するための試験について表4及び表5を参照して説明する。
【0034】
表4は、焼付試験条件を示す表であり、表5は、摺動層4の組成成分が異なる実施例及び比較例に係る複層摺動部材について粘性が低く、潤滑特性の劣る潤滑油中で試験を行った場合の試験結果を示す表である。図3は、その試験パターンを示す図である。
【0035】
【表4】
Figure 2005036819
【0036】
【表5】
Figure 2005036819
【0037】
表5においては、試験を行うための複層摺動部材1として、本発明品に係る実施例1〜4の複層摺動部材1を用い、比較する複層摺動部材1として、比較例1〜4を用いた。そして、この実施例1〜4及び比較例1〜4の複層摺動部材1について、表4に示す焼付試験条件において試験を行った。試験条件は、潤滑油としての灯油中で面圧を5〜10MPaで一定としたときの焼付面圧を測定するものである。なお、この焼付きの判断は、試験片の背面温度200℃又は摩擦力が500Nに達したとき焼付きが発生したと判断した。
【0038】
なお、図3に示すように、試験パターンは、5〜10MPaの一定面圧で起動5秒、停止5秒の計10秒を1サイクルとし、360サイクルを繰り返したときの焼付面圧を測定するものである。
【0039】
表5に示す焼付試験の結果において、キュアリングのみで炭化処理を行わない比較例1〜3では、焼付面圧が5〜7MPaの低い値を示している。これは、摺動層4を構成している熱硬化性樹脂の熱伝導性及び耐熱性が劣っているため、摺動面に熱がこもり易くなり、低い焼付面圧で焼付きに至ったと考えられる。また、炭化処理温度が500℃である比較例4では、炭化処理により特殊PF樹脂が十分に炭化されていないため、耐熱性及び熱伝導性がほとんど改善されておらず、比較例1〜3と同様に5MPaという低い焼付面圧を示したと考えられる。
【0040】
また、炭化処理温度が600,800℃である実施例1,2では、比較例1〜4と比較して高い焼付面圧を示した。これは、炭化処理温度を600℃以上とすることで、特殊PF樹脂が炭化された摺動層4には、耐熱性及び熱伝導性が改善されたカーボン層が形成され、優れた非焼付性が得られたと考えられる。800℃で炭化処理された実施例2においては、10MPaの焼付面圧であっても焼付くことはなかった。
【0041】
また、実施例3,4では、ともに700℃の炭化処理温度であるが、10MPaの焼付面圧であっても焼付くことがなく、実施例2と同様に良好な摺動特性が得られた。これは、炭化処理による耐熱性の向上に加えて、実施例3では、摺動組成物にCBを添加することにより、CBが粒径の大きいフェノール系樹脂の粒子間に生じる隙間を埋めることで高密度のカーボン層を形成し、摺動層4に発生する摩擦熱を効率よく基材2及び多孔質金属層3に分散させ、摺動層4部分の焼付きを防止したと考えられる。一方、実施例4では、Grを添加することで、摺動層4に摩擦特性の向上と親油性が付与されることで焼付きを防止したと考えられる。
【0042】
また、実施例3において、摺動層4の熱伝導性を向上させるためにCBを添加した複層摺動部材1を示したが、CBが導電性であることから、この複層摺動部材1を導電性軸受として利用することができる。ここで、導電性軸受に利用できるものとして摺動層4にCBを添加したものを示したが、導電性カーボンであればよく、例えば、カーボンナノチューブ等を添加したものであってもよい。
【0043】
また、摺動層4には、摺動組成物に多孔質形成助剤を添加することで多孔質の摺動層が形成される。ここで、多孔質形成助剤とは、低い温度での焼付性が高い材料であり、例えば、ポリビニルアルコールに代表される樹脂ビーズ、木屑やRBセラミックス(Rice Bran)のように米糠や麩糠類等である。つまり、摺動組成物に多孔質形成助剤を充填し、炭化処理温度でゆっくり分解させると、多孔質形成助剤が蒸発してしまい、その部分の空洞が多孔質部を形成する。このように形成された多孔質部は、油だまり効果や毛細管現象を示し、摺動層4に親油性が付与されることとなる。また、これらの多孔質部は、賦活処理によっても形成可能である。
【0044】
【発明の効果】
以上、説明したところから明らかなように、請求項1に係る発明においては、フェノール系樹脂が炭化された摺動層には、高硬度及び非焼付性に優れたカーボン層が形成され、複層摺動部材を厳しい使用条件下でも安定して使用することができる。また、摺動層と基材との間に熱伝導性に優れた多孔質金属層が設けられることで、摺動層部分に熱が蓄積せず、焼付きを防止することができる。更に、ハウジングに円筒形の複層摺動部材を嵌入した場合、基材のスプリングバックにより複層摺動部材の嵌合力が向上すると共に、一般的なカーボン軸受と比して肉厚が薄くても複層摺動部材自体の機械的強度を確保することができる。
【0045】
また、請求項2に係る発明においては、微細なカーボンブラックが粒径の大きいフェノール系樹脂の粒子間に生じる隙間を埋めることで高密度のカーボン層を形成し、摺動層に発生する摩擦熱を効率よく基材及び多孔質金属層に分散させ、摺動層部分の焼付きを防止することができる。
【0046】
また、請求項3に係る発明においては、油等を吸着する作用がある結晶性カーボンを添加することにより、摺動層に摩擦特性の向上と親油性を付与することができる。
【0047】
また、請求項4に係る発明においては、摺動層に形成された多孔質部が油だまり効果や毛細管現象を示し、摺動層に親油性を付与することができる。
【0048】
また、請求項5に係る発明においては、機械的強度の優れたカーボン層が得られる。また、炭化処理において、加熱によるフェノール系樹脂の分解反応を極力防ぎながら炭化を進行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態に係る炭化処理前及び処理後の複層摺動部材の全体図である。
【図2】複層摺動部材の拡大部分断面図である。
【図3】焼付試験における複層摺動部材の試験パターンである。
【符号の説明】
1 複層摺動部材
2 基材
3 多孔質金属層
4 摺動層

Claims (5)

  1. 基材の表面に金属粉末を焼結することにより設けられる多孔質金属層と、該多孔質金属層にフェノール系樹脂からなる摺動組成物を含浸被覆した後、600〜900℃の真空雰囲気下で炭化処理することにより得られたカーボンからなる摺動層と、から構成されていることを特徴とする複層摺動部材。
  2. 前記摺動組成物に粒径が1μm以下のカーボンブラックを0.1〜5体積%添加したことを特徴とする請求項1記載の複層摺動部材。
  3. 前記摺動組成物に結晶性カーボンを1〜10体積%添加したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の複層摺動部材。
  4. 前記摺動層には、前記摺動組成物に多孔質形成助剤を添加することで多孔質の摺動層が形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の複層摺動部材。
  5. 前記フェノール系樹脂は、平均分子量が10,000以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の複層摺動部材。
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