JP2005023794A - 羽根車 - Google Patents
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Abstract
【課題】ポンプ性能や羽根車の強度を低下させることなく容易に製作することができ、特に、低比速度遠心ポンプに好適に用いることができる羽根車を提供する。
【解決手段】第1の通液路9を有する羽根車本体2と、羽根車本体2の外周部に嵌合する円筒状の補助リング3とを備え、補助リング3には、該補助リング3の内周部から外周部まで延びる第2の通液路10が設けられ、該第2の通液路10は第1の通液路9よりも小さい断面積を有し、第2の通液路10を第1の通液路9に連通させた。
【選択図】 図1
【解決手段】第1の通液路9を有する羽根車本体2と、羽根車本体2の外周部に嵌合する円筒状の補助リング3とを備え、補助リング3には、該補助リング3の内周部から外周部まで延びる第2の通液路10が設けられ、該第2の通液路10は第1の通液路9よりも小さい断面積を有し、第2の通液路10を第1の通液路9に連通させた。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は遠心ポンプに使用される羽根車に係り、特に、低比速度遠心ポンプに適した羽根車に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
特許文献1に開示されている従来の羽根車の構造を図15(a)及び図15(b)に示す。図15(a)は低比速度遠心ポンプに使用される従来の羽根車を示す正面断面図である。図15(b)は図15(a)に示す羽根車の子午断面図である。図15(a)及び図15(b)に示すように、羽根車20は、主板6及び側板7と、主板6と側板7との間に配置された複数の翼部8とを備えている。この翼部8は渦巻状に延び、かつ、その外端部に向かって末広がりに形成されている。これにより、翼部8,8間には溝状の通液路9が形成されている。通液路9は、その高さHi及び幅JiがHi=Ji(i=1〜5)となるように、即ち正方形の断面となるように形成され、羽根車20は高速運転される低比速度ポンプに好適な翼形状を有している。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−122095号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このような低比速度遠心ポンプ用の羽根車では、一般に、羽根車の通液路の高さ及び幅は、外周側に向かうほど小さくなるか、又は一定である。そして、小流量点に最高効率点を持つ低比速度遠心ポンプを製作する場合、通液路の高さ及び幅をある程度小さくする必要がある。しかしながら、羽根車を鋳造により一体的に成形する場合には、通液路を形成するために必要な中子に焼付きが生じてしまうため、通液路の高さ及び幅を一定以下に小さくすることができないという問題がある。通常、羽根車を鋳造により成形する場合において、羽根車出口での通液路の高さ及び幅の限界値は、羽根車直径が300mmの場合では約8mm、羽根車直径が200mmの場合では約6mm、羽根車直径が100mmの場合では約4mmとなる。
【0005】
つまり、羽根車直径が300mmで、かつ、羽根車出口での通液路の高さ及び幅が8mm未満の場合は、羽根車を鋳造により一体的に製作することができない。同様に、羽根車の直径が100mmで、かつ、羽根車出口での通液路の高さ及び幅が4mm未満の場合は、羽根車を鋳造により一体的に製作することができない。更に、小流量点に最高効率点を持つ低比速度遠心ポンプ用の羽根車では、羽根車の通液路の高さ及び幅を上述した限界値より小さくする必要があるが、上記理由により鋳造では実際に製作することができない。
【0006】
この問題を解決するために、プレス成形された薄肉の構成部材を溶接して羽根車を製作する方法がある。この方法によれば、上述した限界値より小さい寸法の通液路を形成することができる。しかしながら、この方法では、主板及び側板に反りが不規則に発生してしまうため、完成した羽根車ごとに通液路の高さ及び幅が不均一となって、ポンプ性能が安定しないという問題がある。
【0007】
また、主板及び側板の反りを防止するために、肉厚の主板及び側板をそれぞれ切削加工によって製作し、この主板及び側板を翼部に溶接する方法も提案されている。しかしながら、この方法では、溶接部の密着性や高速回転時における羽根車の強度などに問題がある。
【0008】
本発明は、上述した問題を解決するためのもので、ポンプ性能や羽根車の強度を低下させることなく容易に製作することができ、特に、低比速度遠心ポンプに好適に用いることができる羽根車を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を達成するために、本発明の一態様は、第1の通液路を有する羽根車本体と、前記羽根車本体の外周部に嵌合する円筒状の補助リングとを備え、前記補助リングには、該補助リングの内周部から外周部まで延びる第2の通液路が設けられ、該第2の通液路は前記第1の通液路よりも小さい断面積を有し、前記第2の通液路を前記第1の通液路に連通させたことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、断面積の小さい第2の通液路を第1の通液路に連通させることによって、羽根車全体の通液路の高さ及び幅を小さくすることができる。また、第2の通液路が形成される補助リングは、羽根車本体とは別部材として構成することができるため、補助リング及び羽根車本体を含む羽根車、特に低比速度遠心ポンプ用に適した羽根車を容易に製作することができる。
【0011】
本発明の好ましい一態様は、前記第1の通液路は、翼入口から翼出口までにおいて正方形の断面を有することを特徴とする。
本発明によれば、第1の通液路の入口(翼入口)の断面積を大きくすることができ、液体の衝突損失を減少させて吸込性能を向上させることができる。
【0012】
本発明の好ましい一態様は、前記第1の通液路は、翼入口から翼出口までにおいて円形の断面を有することを特徴とする。
本発明によれば、第1の通液路を容易に形成することができる。
【0013】
本発明の好ましい一態様は、前記羽根車本体の外周部には、半径方向に重ね合わされた複数の前記補助リングが嵌合されていることを特徴とする。
本発明によれば、補助リングの数を調節することにより、所望の全揚程を得ることができる。
【0014】
本発明の好ましい一態様は、互いに連通する複数の前記第2の通液路の断面を、前記羽根車本体の翼出口から外方に向かって連続的に小さくなるように形成し、前記第1の通液路及び複数の前記第2の通液路を、それぞれ段差なく接続したことを特徴とする。
本発明によれば、縮流による圧力損失をほぼなくすることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1(a)は本発明の第1の実施形態に係る羽根車を示す正面断面図であり、図1(b)は図1(a)に示す羽根車の子午断面図である。なお、本実施形態に係る羽根車は2つの補助リングを備えているが、補助リングの数は1つでもよく、また、3つ以上であってもよい。
【0016】
図1(a)及び図1(b)に示すように、羽根車1は、羽根車本体2と、羽根車本体2の外周部に嵌合される補助リング3と、この補助リング3の外周部に嵌合される補助リング4とを備えている。羽根車本体2、補助リング3、及び補助リング4は同心上に配置され、補助リング3及び補助リング4は半径方向に重ね合わされている。
【0017】
羽根車本体2は、円形の主板6及び側板7と、主板6と側板7との間に配置される複数の翼部8とを備えている。翼部8は螺旋状に延び、その外端部に向かって末広がりに形成された扇型の形状を有している。これにより、翼部8,8間には、螺旋状に延びる溝状の通液路(第1の通液路)9が形成されている。通液路9の入口である翼入口は半径R1の位置にあり、通液路9の出口である翼出口は半径R2の位置にある。
【0018】
ここで、半径R1における通液路9の高さをH1とし、幅をJ1とする。同様に、半径R2における通液路9の高さをH2とし、幅をJ2とする。通液路9は、その高さ及び幅が互いに等しくなるように形成され(Hi=Ji、i=1,2)、かつ、半径R1から半径R2までにおいて、通液路9の高さ及び幅が一定となっている。すなわち、通液路9の断面は、半径R1から半径R2までの全範囲において正方形に形成されている。
【0019】
なお、通液路9の高さHiは、隣り合う翼8,8の間隔、すなわち、通液路9の断面の周方向の長さ(図1(a)に示す内接円の直径)である。通液路9の幅Jiは、主板6と側板7との間隔、すなわち、通液路9の断面の軸方向の長さ(図1(b)に示す内接円の直径)である。半径Riは、羽根車1の中心からの距離である。
【0020】
円筒状の補助リング3は、羽根車本体2の外周部に取り付けられている。この補助リング3は、羽根車本体2の通液路9の断面よりも小さい断面を持つ複数の通液路(第2の通液路)10を有している。通液路10は、半径方向に対して所定の角度で傾斜するように外方に延び、羽根車本体2の通液路9にそれぞれ連通している。補助リング3の通液路10の高さH3及び幅J3は、補助リング3の内周部(半径R2の位置)から外周部(半径R3の位置)までにおいて互いに等しく(H3=J3)、したがって、通液路10は正方形の断面を有している。
【0021】
円筒状の補助リング4は、補助リング3の外周部に取り付けられている。この補助リング4は、補助リング3の通液路10の断面よりも小さい断面を持つ複数の通液路(第2の通液路)11を有している。通液路11は、半径方向に対して所定の角度で傾斜するように外方に延び、補助リング3の通液路10にそれぞれ連通している。補助リング4の通液路11の高さH4及び幅J4は、補助リング4の内周部(半径R3の位置)から外周部(半径R4の位置)までにおいて互いに等しく(H4=J4)、したがって、通液路11は正方形の断面を有している。即ち、羽根車本体2、補助リング3、及び補助リング4に形成された通液路9,10,11の各寸法の関係は、H2>H3>H4、J2>J3>J4、H2=J2、H3=J3、及びH4=J4である。
【0022】
補助リング3及び補助リング4は、羽根車本体2から分割可能に構成されている。すなわち、補助リング3及び補助リング4は、羽根車本体2とは別部材として構成されている。このような構成によれば、羽根車本体2と同じ材料から作られた丸棒又は板材を必要な形状に加工することで、補助リング3及び補助リング4を羽根車本体2とは別に製作することができる。したがって、通液路10及び11は、放電加工や立切削盤(スロッター)などによって、容易かつ高精度に形成できる。例えば、羽根車本体2の直径が100mmで、通液路9の高さH2及び幅J2が4mmの場合、通液路10の高さH3及び幅J3が3mm、通液路11の高さH4及び幅Jが2mmとなるように通液路10,11を形成することができる。そして、羽根車本体2及び補助リング3,4を組み合わせることにより、羽根車出口での通液路の高さ及び幅が2mmとなる羽根車1を完成させることができる。
【0023】
遠心ポンプの全揚程は、羽根車の直径が大きくなるほど高くなり、最高効率点の流量は、羽根車出口での通液路の断面積が小さいほど小さくなる。したがって、羽根車本体2に補助リング3及び補助リング4を取り付けることによって、羽根車本体2だけの場合と比較して、全揚程を高くすることができる。また、最高効率点の流量は、補助リング3,4の通液路10,11の断面積を小さくすることによって小さくすることができる。
【0024】
ここで、比速度nsは、次式によって計算できる。
ns=nQ1/2/H3/4
ここに、n:羽根車の回転速度(min−1)、Q:最高効率点の流量(m3/min)、H:最高効率点の全揚程(m)である。したがって、羽根車本体2に補助リング3及び補助リング4を取り付けることによって、羽根車本体2だけの比速度と比較して低い比速度を持つ羽根車が実現できる。
【0025】
本実施形態では、補助リング3及び補助リング4は、それぞれ焼き嵌めによって羽根車本体2に取り付けられている。なお、焼き嵌めに代えて、溶接、ボルトなどの固定手段により補助リング3,4を羽根車本体2に固定してもよい。図2は溶接によって補助リングが羽根車本体に固定された構成を示す部分断面図である。図2に示すように、補助リング3は溶接部12を介して羽根車本体2に固定され、同様に、補助リング4は溶接部13を介して補助リング3に固定されている。一方、図3はボルトによって補助リングが羽根車本体に固定された構成を示す部分断面図である。図3に示すように、補助リング3はボルト14を介して羽根車本体2に固定され、同様に、補助リング4はボルト15を介して補助リング3に固定されている。
【0026】
羽根車本体2は、必ずしも目的とする比速度を持つ羽根車として新規に製作する必要はない。図4は本発明の第1の実施形態に係る補助リングが取り付けられた従来の羽根車を示す断面図である。図4に示すように、羽根車本体として従来の羽根車20が流用され、この羽根車20の外周部に補助リング3及び補助リング4が取り付けられている。このように、既存の羽根車20に補助リング3,4を取り付けることによって、羽根車20よりも低比速度の羽根車を得ることができる。
【0027】
次に、本発明の第2の実施形態について図5及び図6を参照して説明する。
図5は本発明の第2の実施形態に係る羽根車の第1例を示す部分断面図である。図6は本発明の第2の実施形態に係る羽根車の第2例を示す部分断面図である。なお、特に説明しない構成については第1の実施形態と同様であるので、その重複する説明を省略する。
【0028】
図5に示すように、補助リング3の内周部に位置する通液路10の入口には面取り部16が形成され、これにより、通液路10の入口と通液路9の出口とは段差が形成されることなく滑らかに接続されている。また、補助リング4の内周部に位置する通液路11の入口には面取り部17が形成され、これにより、通液路11の入口と通液路10の出口とは段差が形成されることなく滑らかに接続されている。本実施形態の第1例によれば、縮流による圧力損失を低減させることができる。
【0029】
また、図6に示すように、補助リング3及び補助リング4に形成される通液路10,11の断面は、それぞれ外側に向かって連続的に小さくなっている。そして、通液路9の出口と通液路10の入口とは段差が形成されることなく滑らかに接続され、同様に、通液路10の出口と通液路11の入口とは段差が形成されることなく滑らかに接続されている。本実施形態の第2例によれば、縮流による圧力損失をほぼなくすることができる。
【0030】
次に、本発明の第3の実施形態について図7(a)乃至図8(b)を参照して説明する。図7(a)は本発明の第3の実施形態に係る羽根車の第1例を示す正面断面図である。図7(b)は図7(a)に示す羽根車の子午断面図である。図8(a)は本発明の第3の実施形態に係る羽根車の第2例を示す正面断面図である。図8(b)は図8(a)に示す羽根車の子午断面図である。なお、特に説明しない構成については第1の実施形態と同様であるので、その重複する説明を省略する。
【0031】
図7(a)乃至図8(b)に示すように、本実施形態の第1例及び第2例では、通液路9,10,11は、いずれも直線状に延び、かつ、同一直線上に配列されている。図7(a)に示すように、第1例における通液路9は半径方向に対して所定の角度で傾斜するように外方に延びている。一方、図8(a)に示すように、第2例における通液路9は半径方向に沿って外方に延びている。
【0032】
このように、通液路9を直線状に形成した場合でも、補助リング3,4を羽根車本体2に取り付けることによって、図1(a)及び図1(b)に示す第1の実施形態に係る羽根車と同様に、従来の羽根車よりも低比速度の羽根車を構成することができる。また、通液路9をドリルなどで容易に形成できるので、図1(a)及び図1(b)に示す羽根車と比較して、羽根車1の製作時間を短縮することができる。
【0033】
次に、本発明の第4の実施形態に係る羽根車について図9を参照して説明する。図9は本発明の第4の実施形態に係る羽根車を示す部分断面図である。なお、特に説明しない構成については第1の実施形態と同様であるので、その重複する説明を省略する。
【0034】
図9に示すように、本実施形態に係る羽根車1は、側板のないセミオープン型の羽根車である。通液路9,10,11の断面は、いずれも正方形である。本実施形態では、主板及び側板を有する羽根車に比べて通液路9,10,11からの液体の漏れが増大する。しかしながら、本実施形態に係る羽根車1では、主板及び側板を有する羽根車よりも円板摩擦損失が生じる表面積が少なくなる。したがって、高粘度の液体を取り扱う場合ではポンプ効率を向上させることができる。
【0035】
図10は、羽根車本体に取り付けられる補助リングの数、全揚程、及び流量の関係を示すグラフ図である。羽根車本体2、補助リング3、及び補助リング4の組み合せによって、図10に示すように、最高効率点の流量を一定に保ちつつ、全揚程を低い範囲から高い範囲まで網羅することができる。したがって、本発明の第1乃至第4の実施形態においては、補助リングの数に応じて3種類のポンプを構成することができる。なお、補助リングの数を更に増やすことによって、更に全揚程の範囲を拡大できる。
【0036】
上述した第1乃至第4の実施形態においては、羽根車本体2の通液路9の断面は正方形であり、補助リング3,4の通液路10,11の断面は正方形である。補助リング3,4の通液路10,11の断面は、図9に示す第4の実施形態を除いて円形であってもよい。また、羽根車本体2の通液路9の断面は円形であってもよい。この場合にも、羽根車本体2に補助リング3及び補助リング4を取り付けることによって、羽根車本体2だけの比速度と比較して、更に低比速度の羽根車を得ることができる。さらに、羽根車本体2、補助リング3、及び補助リング4の組み合せによって、最高効率点の流量を一定に保ちつつ、全揚程を低い範囲から高い範囲まで網羅することができる。この場合、補助リングの数を更に増やすことによって、更に全揚程の範囲を拡大することもできる。
【0037】
羽根車本体2の通液路9の断面が正方形又は円形のいずれの場合でも、羽根車1が完成した後に、補助リング3,4の通液路10,11をドリルなどで加工して通液路10,11の断面積を大きくすることができる。これによって、最高効率点の流量を増やすことができる。また、羽根車本体2の通液路9の断面が円形の場合には、通液路9をドリルなどによって容易に形成することができる。ただし、通液路の断面が正方形の場合と円形の場合とでは、次に説明する吸込性能の違いがある。
【0038】
ここに、通液路の吸込性能について説明する。図11は正方形の断面を有する通液路を示す模式図である。液体が通過する羽根車本体2の通液路9の断面積A1は、
A1=H1×J1
となる。
図12は円形の断面を有する通液路を示す模式図である。この場合、液体が通過する通液路9の断面積A2は、
A2=(π/4)×D12
ただし、D1:通液路の直径
正方形の断面を有する通液路9と円形の断面を有する通液路9における吸込性能を等しくするためには、通液路の断面積を等しくする必要がある。したがって、断面積A1と断面積A2との間には、次の式が成立することが必要とされる。
A1=A2
即ち、
H1×J1=(π/4)×D12
ゆえに、D1≒1.13×J1
となる。したがって、円形の断面を有する通液路9の直径D1は、正方形の断面を有する通液路9の幅J1の約113%になる。半径方向から見た翼入口(通液路9の入口)を図13及び図14に示す。図14に示すように、通液路9の断面形状が円形(直径D1)の場合には、図13に示す正方形(高さH1、幅J1)の断面の場合と比較して、通液路以外の部位、すなわち、液体の流入に対して無効な部位の面積Eが大きくなる。このため、通液路の断面が円形の場合には、翼入口において液体の衝突損失が増大し、吸込性能が悪化する。したがって、このような通液路を有する羽根車を高速で回転させた場合には、キャビテーションが発生することがある。
【0039】
したがって、キャビテーションの問題を考慮する必要がない場合、例えば、2極電動機などによって比較的低回転速度で遠心ポンプが駆動され、有効吸込ヘッドに十分余裕がある場合には、通液路9の断面を、加工が容易である円形に形成することができる。一方、遠心ポンプが高速運転され、かつ、有効吸込ヘッドに余裕がない場合は、キャビテーションの発生を防止するために、羽根車本体2の通液路9の断面を正方形に形成し、通液路9の入口の面積を大きくすることが好ましい。
【0040】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、次のような優れた効果が得られる。
(1)補助リングは羽根車本体とは別部材として構成されているので、羽根車本体と同じ材料から作られた丸棒又は板材を必要な形状に加工することで補助リングを羽根車本体とは別に製作することができる。したがって、第2の通液路は、放電加工や立切削盤(スロッター)などによって、容易かつ高精度に形成することができる。
(2)複数の第2の通液路の断面を連続的に小さくし、第1の通液路及び複数の第2の通液路を、それぞれ段差なく接続すれば、縮流による圧力損失をほぼなくすることができる。
(3)羽根車本体は、必ずしも目的とする比速度の羽根車として新規に製作しなくともよい。すなわち、従来の羽根車を流用し、この羽根車に補助リングを取り付けることによって、従来の羽根車よりも低比速度の羽根車を実現することができる。
(4)第1及び第2の通液路を直線状に形成した場合は、羽根車の製作時間を短縮することができる。
(5)羽根車本体及び補助リングを適宜組み合わせることによって、最高効率点の流量を一定に維持しつつ、全揚程を低い範囲から高い範囲まで網羅することができる。また、補助リングの数を増やすことによって、全揚程の範囲を拡大することができる。
(6)キャビテーションの問題を考慮する必要がない場合には、第1の通液路の断面を、加工が容易な円形に形成することができる。
(7)羽根車が完成した後でも、第2の通液路の断面積を追加工により大きくすることができる。その結果、最高効率点の流量を増やすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)は本発明の第1の実施形態に係る羽根車を示す正面断面図であり、図1(b)は図1(a)に示す羽根車の子午断面図である。
【図2】溶接によって補助リングが羽根車本体に固定された構成を示す部分断面図である。
【図3】ボルトによって補助リングが羽根車本体に固定された構成を示す部分断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る補助リングが取り付けられた従来の羽根車を示す断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る羽根車の第1例を示す部分断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る羽根車の第2例を示す部分断面図である。
【図7】図7(a)は本発明の第3の実施形態に係る羽根車の第1例を示す正面断面図である。図7(b)は図7(a)に示す羽根車の子午断面図である。
【図8】図8(a)は本発明の第3の実施形態に係る羽根車の第2例を示す正面断面図である。図8(b)は図8(a)に示す羽根車の子午断面図である。
【図9】本発明の第4の実施形態に係る羽根車を示す部分断面図である。
【図10】羽根車本体に取り付けられる補助リングの数、全揚程、及び流量の関係を示すグラフ図である。
【図11】正方形の断面を有する通液路を示す模式図である。
【図12】円形の断面を有する通液路を示す模式図である。
【図13】正方形の断面を有する通液路の入口(翼入口)を半径方向から見たときの模式図である。
【図14】円形の断面を有する通液路の入口(翼入口)を半径方向から見たときの模式図である。
【図15】図15(a)は低比速度遠心ポンプに使用される従来の羽根車を示す正面断面図である。図15(b)は図15(a)に示す羽根車の子午断面図である。
【符号の説明】
1 羽根車
2 羽根車本体
6 主板
7 側板
8 翼部
9 (第1の)通液路
10,11 (第2の)通液路
12,13 溶接部
14,15 ボルト
16,17 面取り部
20 従来の羽根車
【発明の属する技術分野】
本発明は遠心ポンプに使用される羽根車に係り、特に、低比速度遠心ポンプに適した羽根車に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
特許文献1に開示されている従来の羽根車の構造を図15(a)及び図15(b)に示す。図15(a)は低比速度遠心ポンプに使用される従来の羽根車を示す正面断面図である。図15(b)は図15(a)に示す羽根車の子午断面図である。図15(a)及び図15(b)に示すように、羽根車20は、主板6及び側板7と、主板6と側板7との間に配置された複数の翼部8とを備えている。この翼部8は渦巻状に延び、かつ、その外端部に向かって末広がりに形成されている。これにより、翼部8,8間には溝状の通液路9が形成されている。通液路9は、その高さHi及び幅JiがHi=Ji(i=1〜5)となるように、即ち正方形の断面となるように形成され、羽根車20は高速運転される低比速度ポンプに好適な翼形状を有している。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−122095号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このような低比速度遠心ポンプ用の羽根車では、一般に、羽根車の通液路の高さ及び幅は、外周側に向かうほど小さくなるか、又は一定である。そして、小流量点に最高効率点を持つ低比速度遠心ポンプを製作する場合、通液路の高さ及び幅をある程度小さくする必要がある。しかしながら、羽根車を鋳造により一体的に成形する場合には、通液路を形成するために必要な中子に焼付きが生じてしまうため、通液路の高さ及び幅を一定以下に小さくすることができないという問題がある。通常、羽根車を鋳造により成形する場合において、羽根車出口での通液路の高さ及び幅の限界値は、羽根車直径が300mmの場合では約8mm、羽根車直径が200mmの場合では約6mm、羽根車直径が100mmの場合では約4mmとなる。
【0005】
つまり、羽根車直径が300mmで、かつ、羽根車出口での通液路の高さ及び幅が8mm未満の場合は、羽根車を鋳造により一体的に製作することができない。同様に、羽根車の直径が100mmで、かつ、羽根車出口での通液路の高さ及び幅が4mm未満の場合は、羽根車を鋳造により一体的に製作することができない。更に、小流量点に最高効率点を持つ低比速度遠心ポンプ用の羽根車では、羽根車の通液路の高さ及び幅を上述した限界値より小さくする必要があるが、上記理由により鋳造では実際に製作することができない。
【0006】
この問題を解決するために、プレス成形された薄肉の構成部材を溶接して羽根車を製作する方法がある。この方法によれば、上述した限界値より小さい寸法の通液路を形成することができる。しかしながら、この方法では、主板及び側板に反りが不規則に発生してしまうため、完成した羽根車ごとに通液路の高さ及び幅が不均一となって、ポンプ性能が安定しないという問題がある。
【0007】
また、主板及び側板の反りを防止するために、肉厚の主板及び側板をそれぞれ切削加工によって製作し、この主板及び側板を翼部に溶接する方法も提案されている。しかしながら、この方法では、溶接部の密着性や高速回転時における羽根車の強度などに問題がある。
【0008】
本発明は、上述した問題を解決するためのもので、ポンプ性能や羽根車の強度を低下させることなく容易に製作することができ、特に、低比速度遠心ポンプに好適に用いることができる羽根車を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を達成するために、本発明の一態様は、第1の通液路を有する羽根車本体と、前記羽根車本体の外周部に嵌合する円筒状の補助リングとを備え、前記補助リングには、該補助リングの内周部から外周部まで延びる第2の通液路が設けられ、該第2の通液路は前記第1の通液路よりも小さい断面積を有し、前記第2の通液路を前記第1の通液路に連通させたことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、断面積の小さい第2の通液路を第1の通液路に連通させることによって、羽根車全体の通液路の高さ及び幅を小さくすることができる。また、第2の通液路が形成される補助リングは、羽根車本体とは別部材として構成することができるため、補助リング及び羽根車本体を含む羽根車、特に低比速度遠心ポンプ用に適した羽根車を容易に製作することができる。
【0011】
本発明の好ましい一態様は、前記第1の通液路は、翼入口から翼出口までにおいて正方形の断面を有することを特徴とする。
本発明によれば、第1の通液路の入口(翼入口)の断面積を大きくすることができ、液体の衝突損失を減少させて吸込性能を向上させることができる。
【0012】
本発明の好ましい一態様は、前記第1の通液路は、翼入口から翼出口までにおいて円形の断面を有することを特徴とする。
本発明によれば、第1の通液路を容易に形成することができる。
【0013】
本発明の好ましい一態様は、前記羽根車本体の外周部には、半径方向に重ね合わされた複数の前記補助リングが嵌合されていることを特徴とする。
本発明によれば、補助リングの数を調節することにより、所望の全揚程を得ることができる。
【0014】
本発明の好ましい一態様は、互いに連通する複数の前記第2の通液路の断面を、前記羽根車本体の翼出口から外方に向かって連続的に小さくなるように形成し、前記第1の通液路及び複数の前記第2の通液路を、それぞれ段差なく接続したことを特徴とする。
本発明によれば、縮流による圧力損失をほぼなくすることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1(a)は本発明の第1の実施形態に係る羽根車を示す正面断面図であり、図1(b)は図1(a)に示す羽根車の子午断面図である。なお、本実施形態に係る羽根車は2つの補助リングを備えているが、補助リングの数は1つでもよく、また、3つ以上であってもよい。
【0016】
図1(a)及び図1(b)に示すように、羽根車1は、羽根車本体2と、羽根車本体2の外周部に嵌合される補助リング3と、この補助リング3の外周部に嵌合される補助リング4とを備えている。羽根車本体2、補助リング3、及び補助リング4は同心上に配置され、補助リング3及び補助リング4は半径方向に重ね合わされている。
【0017】
羽根車本体2は、円形の主板6及び側板7と、主板6と側板7との間に配置される複数の翼部8とを備えている。翼部8は螺旋状に延び、その外端部に向かって末広がりに形成された扇型の形状を有している。これにより、翼部8,8間には、螺旋状に延びる溝状の通液路(第1の通液路)9が形成されている。通液路9の入口である翼入口は半径R1の位置にあり、通液路9の出口である翼出口は半径R2の位置にある。
【0018】
ここで、半径R1における通液路9の高さをH1とし、幅をJ1とする。同様に、半径R2における通液路9の高さをH2とし、幅をJ2とする。通液路9は、その高さ及び幅が互いに等しくなるように形成され(Hi=Ji、i=1,2)、かつ、半径R1から半径R2までにおいて、通液路9の高さ及び幅が一定となっている。すなわち、通液路9の断面は、半径R1から半径R2までの全範囲において正方形に形成されている。
【0019】
なお、通液路9の高さHiは、隣り合う翼8,8の間隔、すなわち、通液路9の断面の周方向の長さ(図1(a)に示す内接円の直径)である。通液路9の幅Jiは、主板6と側板7との間隔、すなわち、通液路9の断面の軸方向の長さ(図1(b)に示す内接円の直径)である。半径Riは、羽根車1の中心からの距離である。
【0020】
円筒状の補助リング3は、羽根車本体2の外周部に取り付けられている。この補助リング3は、羽根車本体2の通液路9の断面よりも小さい断面を持つ複数の通液路(第2の通液路)10を有している。通液路10は、半径方向に対して所定の角度で傾斜するように外方に延び、羽根車本体2の通液路9にそれぞれ連通している。補助リング3の通液路10の高さH3及び幅J3は、補助リング3の内周部(半径R2の位置)から外周部(半径R3の位置)までにおいて互いに等しく(H3=J3)、したがって、通液路10は正方形の断面を有している。
【0021】
円筒状の補助リング4は、補助リング3の外周部に取り付けられている。この補助リング4は、補助リング3の通液路10の断面よりも小さい断面を持つ複数の通液路(第2の通液路)11を有している。通液路11は、半径方向に対して所定の角度で傾斜するように外方に延び、補助リング3の通液路10にそれぞれ連通している。補助リング4の通液路11の高さH4及び幅J4は、補助リング4の内周部(半径R3の位置)から外周部(半径R4の位置)までにおいて互いに等しく(H4=J4)、したがって、通液路11は正方形の断面を有している。即ち、羽根車本体2、補助リング3、及び補助リング4に形成された通液路9,10,11の各寸法の関係は、H2>H3>H4、J2>J3>J4、H2=J2、H3=J3、及びH4=J4である。
【0022】
補助リング3及び補助リング4は、羽根車本体2から分割可能に構成されている。すなわち、補助リング3及び補助リング4は、羽根車本体2とは別部材として構成されている。このような構成によれば、羽根車本体2と同じ材料から作られた丸棒又は板材を必要な形状に加工することで、補助リング3及び補助リング4を羽根車本体2とは別に製作することができる。したがって、通液路10及び11は、放電加工や立切削盤(スロッター)などによって、容易かつ高精度に形成できる。例えば、羽根車本体2の直径が100mmで、通液路9の高さH2及び幅J2が4mmの場合、通液路10の高さH3及び幅J3が3mm、通液路11の高さH4及び幅Jが2mmとなるように通液路10,11を形成することができる。そして、羽根車本体2及び補助リング3,4を組み合わせることにより、羽根車出口での通液路の高さ及び幅が2mmとなる羽根車1を完成させることができる。
【0023】
遠心ポンプの全揚程は、羽根車の直径が大きくなるほど高くなり、最高効率点の流量は、羽根車出口での通液路の断面積が小さいほど小さくなる。したがって、羽根車本体2に補助リング3及び補助リング4を取り付けることによって、羽根車本体2だけの場合と比較して、全揚程を高くすることができる。また、最高効率点の流量は、補助リング3,4の通液路10,11の断面積を小さくすることによって小さくすることができる。
【0024】
ここで、比速度nsは、次式によって計算できる。
ns=nQ1/2/H3/4
ここに、n:羽根車の回転速度(min−1)、Q:最高効率点の流量(m3/min)、H:最高効率点の全揚程(m)である。したがって、羽根車本体2に補助リング3及び補助リング4を取り付けることによって、羽根車本体2だけの比速度と比較して低い比速度を持つ羽根車が実現できる。
【0025】
本実施形態では、補助リング3及び補助リング4は、それぞれ焼き嵌めによって羽根車本体2に取り付けられている。なお、焼き嵌めに代えて、溶接、ボルトなどの固定手段により補助リング3,4を羽根車本体2に固定してもよい。図2は溶接によって補助リングが羽根車本体に固定された構成を示す部分断面図である。図2に示すように、補助リング3は溶接部12を介して羽根車本体2に固定され、同様に、補助リング4は溶接部13を介して補助リング3に固定されている。一方、図3はボルトによって補助リングが羽根車本体に固定された構成を示す部分断面図である。図3に示すように、補助リング3はボルト14を介して羽根車本体2に固定され、同様に、補助リング4はボルト15を介して補助リング3に固定されている。
【0026】
羽根車本体2は、必ずしも目的とする比速度を持つ羽根車として新規に製作する必要はない。図4は本発明の第1の実施形態に係る補助リングが取り付けられた従来の羽根車を示す断面図である。図4に示すように、羽根車本体として従来の羽根車20が流用され、この羽根車20の外周部に補助リング3及び補助リング4が取り付けられている。このように、既存の羽根車20に補助リング3,4を取り付けることによって、羽根車20よりも低比速度の羽根車を得ることができる。
【0027】
次に、本発明の第2の実施形態について図5及び図6を参照して説明する。
図5は本発明の第2の実施形態に係る羽根車の第1例を示す部分断面図である。図6は本発明の第2の実施形態に係る羽根車の第2例を示す部分断面図である。なお、特に説明しない構成については第1の実施形態と同様であるので、その重複する説明を省略する。
【0028】
図5に示すように、補助リング3の内周部に位置する通液路10の入口には面取り部16が形成され、これにより、通液路10の入口と通液路9の出口とは段差が形成されることなく滑らかに接続されている。また、補助リング4の内周部に位置する通液路11の入口には面取り部17が形成され、これにより、通液路11の入口と通液路10の出口とは段差が形成されることなく滑らかに接続されている。本実施形態の第1例によれば、縮流による圧力損失を低減させることができる。
【0029】
また、図6に示すように、補助リング3及び補助リング4に形成される通液路10,11の断面は、それぞれ外側に向かって連続的に小さくなっている。そして、通液路9の出口と通液路10の入口とは段差が形成されることなく滑らかに接続され、同様に、通液路10の出口と通液路11の入口とは段差が形成されることなく滑らかに接続されている。本実施形態の第2例によれば、縮流による圧力損失をほぼなくすることができる。
【0030】
次に、本発明の第3の実施形態について図7(a)乃至図8(b)を参照して説明する。図7(a)は本発明の第3の実施形態に係る羽根車の第1例を示す正面断面図である。図7(b)は図7(a)に示す羽根車の子午断面図である。図8(a)は本発明の第3の実施形態に係る羽根車の第2例を示す正面断面図である。図8(b)は図8(a)に示す羽根車の子午断面図である。なお、特に説明しない構成については第1の実施形態と同様であるので、その重複する説明を省略する。
【0031】
図7(a)乃至図8(b)に示すように、本実施形態の第1例及び第2例では、通液路9,10,11は、いずれも直線状に延び、かつ、同一直線上に配列されている。図7(a)に示すように、第1例における通液路9は半径方向に対して所定の角度で傾斜するように外方に延びている。一方、図8(a)に示すように、第2例における通液路9は半径方向に沿って外方に延びている。
【0032】
このように、通液路9を直線状に形成した場合でも、補助リング3,4を羽根車本体2に取り付けることによって、図1(a)及び図1(b)に示す第1の実施形態に係る羽根車と同様に、従来の羽根車よりも低比速度の羽根車を構成することができる。また、通液路9をドリルなどで容易に形成できるので、図1(a)及び図1(b)に示す羽根車と比較して、羽根車1の製作時間を短縮することができる。
【0033】
次に、本発明の第4の実施形態に係る羽根車について図9を参照して説明する。図9は本発明の第4の実施形態に係る羽根車を示す部分断面図である。なお、特に説明しない構成については第1の実施形態と同様であるので、その重複する説明を省略する。
【0034】
図9に示すように、本実施形態に係る羽根車1は、側板のないセミオープン型の羽根車である。通液路9,10,11の断面は、いずれも正方形である。本実施形態では、主板及び側板を有する羽根車に比べて通液路9,10,11からの液体の漏れが増大する。しかしながら、本実施形態に係る羽根車1では、主板及び側板を有する羽根車よりも円板摩擦損失が生じる表面積が少なくなる。したがって、高粘度の液体を取り扱う場合ではポンプ効率を向上させることができる。
【0035】
図10は、羽根車本体に取り付けられる補助リングの数、全揚程、及び流量の関係を示すグラフ図である。羽根車本体2、補助リング3、及び補助リング4の組み合せによって、図10に示すように、最高効率点の流量を一定に保ちつつ、全揚程を低い範囲から高い範囲まで網羅することができる。したがって、本発明の第1乃至第4の実施形態においては、補助リングの数に応じて3種類のポンプを構成することができる。なお、補助リングの数を更に増やすことによって、更に全揚程の範囲を拡大できる。
【0036】
上述した第1乃至第4の実施形態においては、羽根車本体2の通液路9の断面は正方形であり、補助リング3,4の通液路10,11の断面は正方形である。補助リング3,4の通液路10,11の断面は、図9に示す第4の実施形態を除いて円形であってもよい。また、羽根車本体2の通液路9の断面は円形であってもよい。この場合にも、羽根車本体2に補助リング3及び補助リング4を取り付けることによって、羽根車本体2だけの比速度と比較して、更に低比速度の羽根車を得ることができる。さらに、羽根車本体2、補助リング3、及び補助リング4の組み合せによって、最高効率点の流量を一定に保ちつつ、全揚程を低い範囲から高い範囲まで網羅することができる。この場合、補助リングの数を更に増やすことによって、更に全揚程の範囲を拡大することもできる。
【0037】
羽根車本体2の通液路9の断面が正方形又は円形のいずれの場合でも、羽根車1が完成した後に、補助リング3,4の通液路10,11をドリルなどで加工して通液路10,11の断面積を大きくすることができる。これによって、最高効率点の流量を増やすことができる。また、羽根車本体2の通液路9の断面が円形の場合には、通液路9をドリルなどによって容易に形成することができる。ただし、通液路の断面が正方形の場合と円形の場合とでは、次に説明する吸込性能の違いがある。
【0038】
ここに、通液路の吸込性能について説明する。図11は正方形の断面を有する通液路を示す模式図である。液体が通過する羽根車本体2の通液路9の断面積A1は、
A1=H1×J1
となる。
図12は円形の断面を有する通液路を示す模式図である。この場合、液体が通過する通液路9の断面積A2は、
A2=(π/4)×D12
ただし、D1:通液路の直径
正方形の断面を有する通液路9と円形の断面を有する通液路9における吸込性能を等しくするためには、通液路の断面積を等しくする必要がある。したがって、断面積A1と断面積A2との間には、次の式が成立することが必要とされる。
A1=A2
即ち、
H1×J1=(π/4)×D12
ゆえに、D1≒1.13×J1
となる。したがって、円形の断面を有する通液路9の直径D1は、正方形の断面を有する通液路9の幅J1の約113%になる。半径方向から見た翼入口(通液路9の入口)を図13及び図14に示す。図14に示すように、通液路9の断面形状が円形(直径D1)の場合には、図13に示す正方形(高さH1、幅J1)の断面の場合と比較して、通液路以外の部位、すなわち、液体の流入に対して無効な部位の面積Eが大きくなる。このため、通液路の断面が円形の場合には、翼入口において液体の衝突損失が増大し、吸込性能が悪化する。したがって、このような通液路を有する羽根車を高速で回転させた場合には、キャビテーションが発生することがある。
【0039】
したがって、キャビテーションの問題を考慮する必要がない場合、例えば、2極電動機などによって比較的低回転速度で遠心ポンプが駆動され、有効吸込ヘッドに十分余裕がある場合には、通液路9の断面を、加工が容易である円形に形成することができる。一方、遠心ポンプが高速運転され、かつ、有効吸込ヘッドに余裕がない場合は、キャビテーションの発生を防止するために、羽根車本体2の通液路9の断面を正方形に形成し、通液路9の入口の面積を大きくすることが好ましい。
【0040】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、次のような優れた効果が得られる。
(1)補助リングは羽根車本体とは別部材として構成されているので、羽根車本体と同じ材料から作られた丸棒又は板材を必要な形状に加工することで補助リングを羽根車本体とは別に製作することができる。したがって、第2の通液路は、放電加工や立切削盤(スロッター)などによって、容易かつ高精度に形成することができる。
(2)複数の第2の通液路の断面を連続的に小さくし、第1の通液路及び複数の第2の通液路を、それぞれ段差なく接続すれば、縮流による圧力損失をほぼなくすることができる。
(3)羽根車本体は、必ずしも目的とする比速度の羽根車として新規に製作しなくともよい。すなわち、従来の羽根車を流用し、この羽根車に補助リングを取り付けることによって、従来の羽根車よりも低比速度の羽根車を実現することができる。
(4)第1及び第2の通液路を直線状に形成した場合は、羽根車の製作時間を短縮することができる。
(5)羽根車本体及び補助リングを適宜組み合わせることによって、最高効率点の流量を一定に維持しつつ、全揚程を低い範囲から高い範囲まで網羅することができる。また、補助リングの数を増やすことによって、全揚程の範囲を拡大することができる。
(6)キャビテーションの問題を考慮する必要がない場合には、第1の通液路の断面を、加工が容易な円形に形成することができる。
(7)羽根車が完成した後でも、第2の通液路の断面積を追加工により大きくすることができる。その結果、最高効率点の流量を増やすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)は本発明の第1の実施形態に係る羽根車を示す正面断面図であり、図1(b)は図1(a)に示す羽根車の子午断面図である。
【図2】溶接によって補助リングが羽根車本体に固定された構成を示す部分断面図である。
【図3】ボルトによって補助リングが羽根車本体に固定された構成を示す部分断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る補助リングが取り付けられた従来の羽根車を示す断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る羽根車の第1例を示す部分断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る羽根車の第2例を示す部分断面図である。
【図7】図7(a)は本発明の第3の実施形態に係る羽根車の第1例を示す正面断面図である。図7(b)は図7(a)に示す羽根車の子午断面図である。
【図8】図8(a)は本発明の第3の実施形態に係る羽根車の第2例を示す正面断面図である。図8(b)は図8(a)に示す羽根車の子午断面図である。
【図9】本発明の第4の実施形態に係る羽根車を示す部分断面図である。
【図10】羽根車本体に取り付けられる補助リングの数、全揚程、及び流量の関係を示すグラフ図である。
【図11】正方形の断面を有する通液路を示す模式図である。
【図12】円形の断面を有する通液路を示す模式図である。
【図13】正方形の断面を有する通液路の入口(翼入口)を半径方向から見たときの模式図である。
【図14】円形の断面を有する通液路の入口(翼入口)を半径方向から見たときの模式図である。
【図15】図15(a)は低比速度遠心ポンプに使用される従来の羽根車を示す正面断面図である。図15(b)は図15(a)に示す羽根車の子午断面図である。
【符号の説明】
1 羽根車
2 羽根車本体
6 主板
7 側板
8 翼部
9 (第1の)通液路
10,11 (第2の)通液路
12,13 溶接部
14,15 ボルト
16,17 面取り部
20 従来の羽根車
Claims (5)
- 第1の通液路を有する羽根車本体と、
前記羽根車本体の外周部に嵌合する円筒状の補助リングとを備え、
前記補助リングには、該補助リングの内周部から外周部まで延びる第2の通液路が設けられ、該第2の通液路は前記第1の通液路よりも小さい断面積を有し、前記第2の通液路を前記第1の通液路に連通させたことを特徴とする羽根車。 - 前記第1の通液路は、翼入口から翼出口までにおいて正方形の断面を有することを特徴とする請求項1に記載の羽根車。
- 前記第1の通液路は、翼入口から翼出口までにおいて円形の断面を有することを特徴とする請求項1に記載の羽根車。
- 前記羽根車本体の外周部には、半径方向に重ね合わされた複数の前記補助リングが嵌合されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の羽根車。
- 互いに連通する複数の前記第2の通液路の断面を、前記羽根車本体の翼出口から外方に向かって連続的に小さくなるように形成し、前記第1の通液路及び複数の前記第2の通液路を、それぞれ段差なく接続したことを特徴とする請求項4に記載の羽根車。
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