JP2005023000A - 抗菌剤及びその製造方法、並びに食品製剤及び消毒剤 - Google Patents

抗菌剤及びその製造方法、並びに食品製剤及び消毒剤 Download PDF

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Abstract

【課題】副作用が弱いとともに薬剤耐性菌に対して優れた抗菌作用を有する抗菌剤及びその製造方法、並びに食品製剤及び消毒剤を提供する。
【解決手段】抗菌剤、食品製剤及び消毒剤は、下記一般式(1)で示されるレスベラトロール重合体から選ばれる少なくとも一種を有効成分として含有している。抗菌剤は、グネツム科の植物体の部位から抽出用溶媒によって抽出成分を抽出した後、抽出成分より下記一般式(1)で示されるレスベラトロール重合体から選ばれる少なくとも一種を分離して製造される。
【化1】
Figure 2005023000

(式中、R〜Rは水素、アセチル基、メチル基、エチル基又はグルコシル基を示し、nは1〜10の整数を示す。)
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、薬剤耐性菌に対する治療に用いられる抗菌剤及びその製造方法、並びに食品製剤及び消毒剤に関するものである。より詳しくは、副作用が弱いとともに薬剤耐性菌に対して優れた抗菌作用を有する抗菌剤及びその製造方法、並びに食品製剤及び消毒剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、薬剤耐性菌に対する治療には、ゲンタマイシン等の化学合成された抗菌物質を有効成分として含有する抗菌剤が用いられている。一方、赤ぶどうに含まれるレスベラトロール等の天然物由来の抗菌作用を示す物質を有効成分として含有する抗菌剤は、一般に副作用が少なく、薬剤耐性菌は抗菌剤に対して耐性を持ちにくいという利点がある。また、これまでグネツム科の植物から数種の新規レスベラトロール重合体としてグネモノールA、グネモノールB、グネチンE、グネタール及びグネモノシドE等が見出されているが、それらの作用については調べられていない(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
【非特許文献1】
イリヤ I(Iliya I),タナカ T(Tanaka T),イイヌマ M(Iinuma M),アリ Z(Ali Z),フラサワ M(Furasawa M),ナカヤ K(Nakaya K),シラタキ Y(Shirataki Y),ムラタ J(Murata J),ダーナエディ D(Darnaedi D),”2種のグネツム科由来のスチルベン(Stilbene derivatives from two species of Gnetaceae)”,ケミ ファーム ブル(Chem Pharm Bull),2002年,50巻,6号,p.796−801
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、化学合成された抗菌物質を有効成分として含有する抗菌剤は、腎臓や血液に対する副作用が強いという問題があった。さらに、薬剤耐性菌は、新たに化学合成された抗菌物質を有効成分として含有する抗菌剤に対しても耐性を持つ可能性が大きい。一方、天然物由来の抗菌作用を示す物質を有効成分として含有する抗菌剤は、抗菌作用が軽微であるという問題があった。このため、副作用が弱いとともに薬剤耐性菌に対して優れた抗菌作用を有する抗菌物質が望まれている。
【0005】
この発明は上記のような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、副作用が弱いとともに薬剤耐性菌に対して優れた抗菌作用を有する抗菌剤及びその製造方法、並びに食品製剤及び消毒剤を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の抗菌剤は、下記一般式(1)で示されるレスベラトロール重合体から選ばれる少なくとも一種を有効成分として含有するものである。
【0007】
【化4】
Figure 2005023000
(式中、R〜Rは水素、アセチル基、メチル基、エチル基又はグルコシル基を示し、nは1〜10の整数を示す。)
請求項2に記載の発明の抗菌剤は、請求項1に記載の発明において、前記一般式(1)中のR〜Rがそれぞれ水素を示すものである。
【0008】
請求項3に記載の発明の抗菌剤の製造方法は、請求項1又は請求項2に記載の抗菌剤の製造方法であって、グネツム科の植物体の部位から抽出用溶媒によって前記一般式(1)で示されるレスベラトロール重合体から選ばれる少なくとも一種を含有する抽出成分を抽出した後、抽出成分より前記一般式(1)で示されるレスベラトロール重合体から選ばれる少なくとも一種を分離するものである。
【0009】
請求項4に記載の発明の食品製剤は、下記一般式(1)で示されるレスベラトロール重合体から選ばれる少なくとも一種を含有し、抗菌作用を有するものである。
【0010】
【化5】
Figure 2005023000
(式中、R〜Rは水素、アセチル基、メチル基、エチル基又はグルコシル基を示し、nは1〜10の整数を示す。)
請求項5に記載の発明の消毒剤は、下記一般式(1)で示されるレスベラトロール重合体から選ばれる少なくとも一種を含有し、一般式(1)で示されるレスベラトロール重合体の抗菌作用を経て消毒作用を発現するものである。
【0011】
【化6】
Figure 2005023000
(式中、R〜Rは水素、アセチル基、メチル基、エチル基又はグルコシル基を示し、nは1〜10の整数を示す。)
【0012】
【発明の実施の形態】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態の抗菌剤について詳細に説明する。
【0013】
本実施形態の抗菌剤には、下記一般式(1)で示されるレスベラトロール重合体から選ばれる少なくとも一種(以下、単にレスベラトロール重合体ともいう。)が有効成分として含有されている。この抗菌剤は医薬品又は医薬部外品として薬剤耐性菌に対する治療等に用いられる。
【0014】
【化7】
Figure 2005023000
(式中、R〜Rは水素、アセチル基、メチル基、エチル基又はグルコシル基を示し、nは1〜10の整数を示す。)
上記一般式(1)はその基本骨格がレスベラトロールであり、レスベラトロールのジヒドロキシベンゾイル環に別のレスベラトロールのトランス型エチレン基が結合することによりピラン又はピレン構造を呈している。上記一般式(1)中のR〜Rは全て同じでもよいし異なっていてもよい。上記一般式(1)中のnは重合しているレスベラトロールの数を示し、好ましくは1〜7、より好ましくは1〜3である。nが10を超えると、レスベラトロール重合体の分子量が大きくなるためにその溶解性が低下する。このため、例えば粉末状をなす抗菌剤を生理食塩水に溶解させて薬剤耐性菌に対する治療に用いるときに、治療に必要な量の有効成分を生理食塩水に溶解させることができない。
【0015】
ここで、薬剤耐性菌の具体例としては、メチシリン耐性黄色ぶどう球菌(methicillin−resistant Staphylococcus aureus、以下、MRSAという。)、バンコマイシン耐性エンテロコッカス(vancomycin−resistant Enterococci、以下、VREという。)等が挙げられる。これら薬剤耐性菌は、特定の抗菌剤を分解する分解酵素産生、細胞膜の透過性の増強等の機能を有している。
【0016】
レスベラトロール重合体は、薬剤耐性菌に対する抗菌作用を有している。これは、レスベラトロール重合体が、薬剤耐性菌の細胞膜に作用して細胞膜の透過性を高めることにより細胞内成分を放出させて薬剤耐性菌を死滅させるとともに、薬剤耐性菌内に侵入して分解酵素の産生を抑制するためである。ここで、例えば上記一般式(1)中のR〜Rがそれぞれメチル基を示すときには、レスベラトロール重合体はメチル基に基づく疎水基を有する。そして、レスベラトロール重合体の疎水基が細胞膜の脂質二重層を構成するリン脂質の疎水基と疎水結合することによって細胞膜の一部を破壊して細胞膜の透過性を高めると推察される。
【0017】
レスベラトロール重合体の具体例としては、レスベラトロールの2量体であるとともに2つの不斉炭素を有するグネモノールE(上記一般式(1)中のR〜Rがそれぞれ水素を示すとともにnが1を示す。)、レスベラトロールの3量体であるグネチンE(上記一般式(1)中のR〜Rがそれぞれ水素を示すとともにnが2を示す。)、レスベラトロールの4量体であるグネモノールB(上記一般式(1)中のR〜Rがそれぞれ水素を示すとともにnが3を示す。)、グネモノシドE(上記一般式(1)中のR〜Rがそれぞれグルコシル基を示す。)、アセチルグネモノールE(上記一般式(1)中のR〜Rがそれぞれアセチル基を示す。)等が挙げられる。
【0018】
さらに、グネモノールEグルコシド(上記一般式(1)中のR〜Rがそれぞれ水素を示すとともにRがグルコシル基を示し、nが1を示す。)、グネチンEグルコシド(上記一般式(1)中のR〜Rがそれぞれ水素を示すとともにRがグルコシル基を示し、nが2を示す。)、グネモノールBグルコシド(上記一般式(1)中のR〜Rがそれぞれ水素を示すとともにRがグルコシル基を示し、nが3を示す。)等が挙げられる。
【0019】
レスベラトロール重合体は、下記一般式(2)で示すように、上記一般式(1)中のR〜Rがそれぞれ水素を示すものが抗酸化作用に優れているために好ましい。さらに、グネモノールE、グネチンE及びグネモノールBから選ばれる少なくとも一種が、抗炎症作用を有し薬剤耐性菌等により障害を受けた組織の炎症を抑制することができるためにより好ましい。ここで、抗酸化作用は一般的に水酸基の数に比例して強くなる。一方、アセチルグネモノールEが脂溶性が高く薬剤耐性菌の細胞膜に対する透過性が高いために好ましく、グネモノシドEが腸肝循環を介した吸収率が高く抗菌作用の持続性を向上させることができるために好ましい。加えて、R〜Rがそれぞれメチル基又はエチル基を示すものが、薬剤耐性菌に対する抗菌作用を向上させることができるために好ましい。
【0020】
【化8】
Figure 2005023000
(式中、nは1〜10の整数を示す。)
抗菌剤中のレスベラトロール重合体の含有量は、好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは1〜15質量%、さらに好ましくは5〜10質量%である。レスベラトロール重合体の含有量が0.1質量%未満では、レスベラトロール重合体の含有量が低いために抗菌剤が抗菌作用を十分に発揮することができない。一方、20質量%を超えると、抗菌剤がその他の添加成分として抗菌剤の安定性の向上に寄与する成分を含有するときに、その成分の含有量が減少することによって抗菌剤の安定性が低下するおそれがある。
【0021】
この抗菌剤には、その他の添加成分として結合剤、賦形剤、滑沢剤、膨化剤、甘味剤、香味剤等を含有させてもよい。抗菌剤中のその他の添加成分の含有量は、抗菌剤の常法に従って決定される。
【0022】
抗菌剤は、医薬品として用いられるときには経口剤又は非経口剤として構成される。経口剤の剤型としては、錠剤、カプセル剤、散剤、シロップ剤、ドリンク剤等が挙げられる。抗菌剤は、錠剤として構成されるときにはその他の添加成分として例えば結合剤、賦形剤、滑沢剤、膨化剤、甘味剤、香味剤が含有され、その表面がシェラック又は砂糖で被覆されてもよい。また、抗菌剤は、カプセル剤として構成されるときには例えば上記錠剤におけるその他の添加成分に加えて油脂等の液体担体が含有され、シロップ剤又はドリンク剤として構成されるときにはその他の添加成分として例えば甘味剤、防腐剤、色素香味剤が含有される。
【0023】
一方、非経口剤の剤型としては、軟膏剤、クリーム剤、水剤等の外用剤の他に注射剤等が挙げられる。抗菌剤は、外用剤として構成されるときにはその他の添加成分として例えばワセリン、パラフィン、油脂類、ラノリン、マクロゴールド等の基材が含有される。また、注射剤には液剤や凍結乾燥剤等があり、抗菌剤は、凍結乾燥剤として構成されるときには注射用蒸留水や生理食塩水等に無菌的に溶解して用いられる。抗菌剤は、医薬部外品として用いられるときには皮膚清拭剤、錠剤、カプセル剤、ドリンク剤、石鹸、歯磨き粉等に配合される。
【0024】
さて、抗菌剤を製造するときには、まずグネツム科の植物体からその部位を採取する。ここで、グネツム科の植物体とはグネツム科に属する植物のことであり、グネツム科の植物体は東南アジア、アフリカ、南アメリカ、ヨーロッパ等の国又は地域のいずれの産地であってもよい。グネツム科の植物体の中でもレスベラトロール重合体の含有量が高いために、グネツム アフリカナム(Gnetum africanum)、グネツム グネモン(Gnetum gnemon)又はグネツム グネモノイデス(Gnetum gnemonoides)が好ましく、グネツム グネモンがより好ましい。部位の具体例としては花、葉、茎、根、若葉、新芽、種子等が挙げられるが、根がレスベラトロール重合体の含有量が高いために好ましい。このため、グネツム科の植物体の部位としては、グネツム グネモンの根がより好ましい。
【0025】
グネツム科の植物体の部位は採取された状態のままのもの、採取された後に乾燥されたもの、採取された後に乾燥及び粉砕されたもの等が挙げられ、後述する抽出用溶媒における抽出効率を向上させるために、採取された後に乾燥されたものが好ましい。さらに、採取された後に乾燥及び粉砕されたものが、グネツム科の植物体の部位の表面積を向上させて抽出効率をより向上させることができるためにより好ましい。ここで、グネツム科の植物体の部位の粉砕には粉砕器、裁断機等が用いられる。
【0026】
続いて、抽出用溶媒にグネツム科の植物体の部位を浸漬した後に撹拌又は放置することにより、抽出用溶媒にレスベラトロール重合体を含有する抽出成分を抽出する。抽出用溶媒の具体例としてはエタノール、メタノール、アセトン、酢酸エチル、クロロホルム等が挙げられ、これらは単独で用いられてもよいし二種以上が組み合わされて用いられてもよい。さらに、これらは水と混合された状態で抽出用溶媒として用いられてもよい。これらの中でも、エタノール又は水とエタノールとの混合液が、得られた抗菌剤を経口剤等として容易に用いることができるために好ましい。
【0027】
抽出用溶媒の量は、グネツム科の植物体の部位の質量に対して好ましくは1〜10倍量、より好ましくは2〜6倍量、さらに好ましくは3〜5倍量である。一方、抽出温度は好ましくは10〜50℃、より好ましくは20〜40℃、さらに好ましくは25〜35℃であり、抽出時間は好ましくは1〜24時間、より好ましくは2〜18時間、さらに好ましくは3〜6時間である。
【0028】
抽出用溶媒の量が1倍量未満、抽出温度が10℃未満又は抽出時間が1時間未満では、抽出効率が低下して抗菌剤の製造効率が低下するおそれがある。一方、抽出用溶媒の量が10倍量を超えると抽出後の濃縮に時間を要し、抽出時間が24時間を超えると抽出に時間を要する。このため、抗菌剤の製造効率が低下するおそれがある。また、溶出温度が50℃を超えると、抽出用溶媒の沸点が50℃以下のときに抽出用溶媒が揮発するおそれがある。
【0029】
次いで、グネツム科の植物体の部位及び抽出用溶媒の混合液を固液分離することにより、抽出用溶媒と抽出成分とからなる抽出液を得る。混合液の固液分離には、常圧濾過、吸引濾過、遠心分離等が用いられる。常圧濾過及び吸引濾過に用いる濾材としては食品用の濾紙、珪藻土を重層した濾紙等が挙げられ、遠心分離には通常の遠心分離機等が用いられる。この固液分離は、濾過と遠心分離とを組み合わせて行うのが、抽出効率を向上させることができるために好ましい。さらに、濾過によって得られる残渣は、抽出用溶媒によって再抽出されるのが抽出効率をより向上させることができるために好ましい。
【0030】
そして、必要に応じて抽出液を濃縮及び乾燥することによって抽出物を得る。このとき、抽出液を減圧下で加熱することにより濃縮及び乾燥してもよいし、真空凍結乾燥機を用いることにより抽出液を加熱することなく濃縮及び乾燥してもよい。減圧下で加熱するときには、加熱温度は好ましくは20〜60℃、より好ましくは25〜55℃、さらに好ましくは30〜50℃である。加熱温度が20℃未満では、濃縮及び乾燥に時間を要し、抗菌剤の製造効率が低下するおそれがある。一方、60℃を超えると、得られる抽出物の安定性が損なわれるおそれがある。
【0031】
次いで、抽出物を分離用溶媒に溶解させる。この分離用溶媒は、分離用担体を膨潤させるとともに移動層となるものであって、具体例としては水、水を含有する低級アルコール、親水性溶媒、親油性溶媒等が挙げられる。低級アルコールの具体例としてはメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、二種以上が組み合わせて用いられてもよい。これらの中でも、エタノールが得られた抗菌剤を経口剤等として容易に用いることができるために好ましい。
【0032】
分離用溶媒の量は、抽出物の質量に対して好ましくは1〜50倍量、より好ましくは3〜20倍量である。分離用溶媒の量が1倍量未満では、抽出物の分離が困難になる。一方、50倍量を超えると、抽出物の分離に時間を有し抗菌剤の製造効率が低下するおそれがある。分離用担体の材質の具体例としては、多孔性の多糖類、酸化ケイ素化合物、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。
【0033】
続いて、分離用担体をカラムに充填した後に分離用溶媒を分離用担体に供し、分離用溶媒中の抽出物において他の成分とレスベラトロール重合体とを分離する。このとき、レスベラトロール重合体は分離用溶媒に溶解した状態、即ちレスベラトロール重合体溶液として得られる。
【0034】
分離用担体の種類としては逆相担体、イオン交換担体、アフィニティ担体、分配性担体、分子篩用担体、吸着性担体等が挙げられる。逆相担体は、その表面が疎水性化合物でコーティングされたもの等が挙げられ、疎水性化合物の疎水結合によって疎水性の高い物質の分離に利用することができる。逆相担体の具体例としては、DM1020T(富士シリシア社製)等が挙げられる。イオン交換担体は、その表面がイオン性の物質でコーティングされたもの等が挙げられ、具体例としてはIRA−410、XAD−2、XAD−4(ロームアンドハース社製)等が挙げられる。イオン交換担体の中でも、陽イオン物質でコーティングされたものは陰イオン性物質の分離に適し、陰イオン物質でコーティングされたものは陽イオン性物質の分離に適している。
【0035】
アフィニティ担体は、抗原抗体反応等の特異的な結合を利用して分子を行うものを示し、例えば抗体がコーティングされたものは、その抗原となる物質のみを分離することができる。分配性担体は、分離する物質と分離用溶媒との間の分配係数の差を利用して分離を行うものを示し、具体例としてはシリカゲル(メルク社製)等が挙げられる。分子篩用担体は、分子の大きさの差異を利用して分離を行うものを示し、具体例としてはセファデックス(登録商標)LH−20(アマシャムファルマシア製)等が挙げられる。吸着性担体は、分離する物質の吸着性を利用して分離を行うものを示し、具体例としてはダイヤイオン(登録商標)(三菱化学(株)製)等が挙げられる。
【0036】
これらの中でも、分配性担体、分子篩用担体、吸着性担体又はイオン交換担体が分離効率を向上させることができるために好ましい。また、分離用溶媒に対する分配係数の差異が大きいときには、逆相担体又は分配性担体が分離効率を向上させることができるためにより好ましい。
【0037】
分離用溶媒としてエタノール等の有機溶媒を用いるときには、有機溶媒に対する耐性を有する分離用担体を用いることが好ましく、医薬品や食品を製造するために用いられる分離用担体が、得られる抗菌剤中に分離用担体由来の不純物が混合されるのを抑制することができるためにより好ましい。このような分離用担体としては、逆相担体としてのDM1020T、イオン交換担体としてのIRA−410、XAD−2、XAD−4、分配用担体としてのシリカゲル、分子篩用担体としてのセファデックスLH−20、吸着性担体としてのダイヤイオン等が挙げられる。
【0038】
これらの中でも、DM1020T、セファデックスLH−20又はダイヤイオンが、上記効果が高いために好ましい。ここで、離用溶媒の除去が容易なために、分離用担体としてセファデックスLH−20を用いるときには、分離用溶媒として低級アルコールを用いるのが好ましい。同様に、分離用担体としてシリカゲルを用いるときには分離用溶媒としてクロロホルム、メタノール、酢酸又はそれらの混合液が好ましく、ダイヤイオンやDM1020Tを用いるときにはメタノール、エタノール等の低級アルコール又は低級アルコールと水との混合液が好ましい。
【0039】
分離用担体の粒径は好ましくは0.1〜300μmである。粒径が0.1μm未満では、抽出物の分離に時間を要し、抗菌剤の製造効率が低下するおそれがある。一方、300μmを超えると、抽出物の分離精度が低下するおそれがある。分離温度(分離用担体が充填されたカラムの温度)は、好ましくは4〜30℃、より好ましくは10〜25℃である。分離温度が4℃未満では、カラムの操作性が悪化するおそれがある。一方、30℃を超えると、分離によって得られるレスベラトロール重合体の安定性が損なわれるおそれがある。
【0040】
また、抽出物を分離するときには、カラムによる分離を複数繰返すことが、レスベラトロール重合体の収率を向上させることができるために好ましい。このとき、同一又は異なる分離用担体を用いてもよく、同一又は異なる分離用溶媒を用いてもよい。さらに、抽出物の分離は、低速クロマトグラムシステム、精製用クロマトグラムシステム、膜分離クロマトグラムシステム等のシステム化された装置を用いることが、抽出物の分離を容易に行うことができるために好ましい。
【0041】
そして、例えば得られたレスベラトロール重合体溶液を濃縮及び乾燥して粉末化するとともにその他の添加成分を配合して抗菌剤を製造する。ここで、抗菌剤は、レスベラトロール重合体溶液にその他の添加成分を配合することにより製造されてもよいが、乾燥により粉末化された状態が保存安定性を向上させることができるために好ましい。この乾燥には減圧蒸留装置、真空乾燥機等を用いることができる。減圧蒸留装置を用いて乾燥したときには、乾燥温度は好ましくは20〜50℃、より好ましくは30〜40℃である。一方、真空乾燥機を用いて乾燥したときには、乾燥温度は好ましくは20〜60℃、より好ましくは25〜40℃である。乾燥温度が20℃未満では、乾燥に時間を要し抗菌剤の製造効率が低下するおそれがある。一方、50℃又は60℃を超えると、レスベラトロール重合体の安定性が損なわれるおそれがある。
【0042】
抗菌剤を例えば凍結乾燥剤の注射剤として構成し薬剤耐性菌に対する治療に用いるときには、抗菌剤を生理食塩水等に溶解させた後、注射器等を用いて患者に投与する。このとき、抗菌剤の有効成分であるレスベラトロール重合体は、例えばその疎水基と細胞膜のリン脂質の疎水基との疎水結合により細胞膜の透過性を高めて薬剤耐性菌を死滅させるとともに薬剤耐性菌の分解酵素の産生を抑制する。このため、抗菌剤は薬剤耐性菌に対して優れた抗菌作用を発揮することができる。ここで、薬剤耐性菌の細胞膜は、ヒト等の動物の細胞膜とは性質が異なる。このため、抗菌剤はヒトの細胞に対しては抗菌作用を発揮せず、副作用の発現を抑制することができる。よって、抗菌剤による副作用を弱めることができる。
【0043】
以上詳述した第1の実施形態によれば、次のような効果が発揮される。
・ 第1の実施形態の抗菌剤はレスベラトロール重合体を有効成分として含有している。レスベラトロール重合体は、薬剤耐性菌に対して優れた抗菌作用を有するとともに、副作用の発現を抑制することができる。このため、抗菌剤は、副作用が弱いとともに薬剤耐性菌に対して優れた抗菌作用を有することができる。
【0044】
・ 上記一般式(1)中のR〜Rがそれぞれ水素を示すのが好ましい。この場合には、抗菌剤の抗酸化作用を向上させることができる。
・ 抗菌剤は、グネツム科の植物体の部位から抽出用溶媒を用いてレスベラトロール重合体を含有する抽出成分を抽出した後、分離用溶媒及び分離用担体を用いて抽出成分からレスベラトロール重合体を分離することにより製造される。グネツム科の植物体は、レスベラトロール重合体の抽出のために一般的に用いられている植物体に比べてレスベラトロール重合体の含有量が高い。このため、レスベラトロール重合体を効率よく抽出することができ、抗菌剤の製造効率を向上させることができる。
(第2の実施形態)
以下、本発明を具体化した第2の実施形態の食品製剤について、第1の実施形態の抗菌剤と異なる点を中心に述べる。
【0045】
本実施形態の食品製剤はレスベラトロール重合体を含有し、レスベラトロール重合体に基づく抗菌作用を有している。食品製剤中のレスベラトロール重合体の含有量は、好ましくは0.1〜30質量%、より好ましくは0.3〜20質量%、さらに好ましくは0.5〜15質量%である。レスベラトロール重合体の含有量が0.1質量%未満では、レスベラトロール重合体の含有量が低いために食品製剤が抗菌作用を十分に発揮することができない。一方、30質量%を超えると、食品製剤がその他の添加成分として基材を含有するときに、基材の含有量が減少することによって食品製剤としての形態を維持することができなくなるおそれがある。
【0046】
この食品製剤には、その他の添加成分として飲料品素材等の食品素材、基材、賦形剤、食品添加剤等の添加剤、副素材、増量剤等を含有させてもよい。食品製剤中のその他の添加成分の含有量は、食品製剤の常法に従って決定される。食品製剤の形態は粉末状、錠剤状、ドリンク剤等の液状、カプセル状等が挙げられ、具体的には飴、せんべい、クッキー、各種飲料等の形態を採用することができる。
【0047】
食品製剤は、一日数回に分けて経口摂取される。一日の摂取量は、好ましくは0.1〜10g、より好ましくは0.3〜5g、さらに好ましくは0.5〜3gである。食品製剤の摂取量が0.1g未満では、食品製剤中のレスベラトロール重合体を必要量摂取するのが困難になり、十分な抗菌作用が期待できないおそれがある。一方、10gを超えると、取扱い性が悪化し、コストが高くなるおそれがある。
(第3の実施形態)
以下、本発明を具体化した第3の実施形態の消毒剤について、第1の実施形態の抗菌剤と異なる点を中心に述べる。
【0048】
本実施形態の消毒剤はレスベラトロール重合体を含有し、レスベラトロール重合体の抗菌作用を経て消毒作用を発現する。ここで、レスベラトロール重合体の抗菌作用を経て消毒作用を発現するとは、レスベラトロール重合体の抗菌機序に基づき薬剤耐性菌を死滅させる、即ち消毒することをいう。この消毒剤は、病室、手術室、処置室、患者の衣類、汚染された空気、尿、糞便などの汚物、手術器具や装置等を消毒するために用いられる。さらに、一般家庭、学校、食堂等の病院以外での消毒にも用いられる。
【0049】
消毒剤中のレスベラトロール重合体の含有量は、好ましくは5〜30質量%、より好ましくは7〜25質量%、さらに好ましくは10〜20質量%である。レスベラトロール重合体の含有量が5質量%未満では、レスベラトロール重合体の含有量が低いために抗菌作用に基づく消毒作用を十分に発揮することができない。一方、30質量%を超えてもそれ以上抗菌作用に基づく消毒作用を発揮することができない。
【0050】
消毒剤には、その他の添加成分として界面活性化剤、溶剤、増粘剤、賦形剤等を含有させてもよい。消毒剤中のその他の添加成分の含有量は、消毒剤の常法に従って決定される。消毒剤の形態は溶液状、クリーム状、ペースト状、ゲル状、ジェル状、固形状、粉末状等が挙げられ、具体的には散布剤、エアゾール、液剤、固形剤等の形態を採用することができる。
【0051】
消毒剤は、例えば室内に一日数回に分けて散布されたり清拭等により塗布される。一日の散布量又は塗布量は、好ましくは0.01〜5g、より好ましくは0.05〜3g、さらに好ましくは0.1〜1gである。消毒剤の散布量又は塗布量が0.01g未満では、散布又は塗布されるレスベラトロール重合体の量が少ないために十分な抗菌作用に基づく抗菌作用が期待できないおそれがある。一方、5gを超えると、消毒剤の取扱い性が悪化して散布コスト等が嵩むおそれがある。
【0052】
従って、実施例3の消毒剤は、レスベラトロール重合体の優れた抗菌作用を経て消毒作用を発現することにより、優れた消毒作用を有している。
尚、前記実施形態を次のように変更して構成することもできる。
【0053】
・ 第1の実施形態の抗菌剤を、アンピシリン、ゲンタマイシン、ミノサイクリン、ホスホマイシン、バンコマイシン等の抗菌剤と併用してもよい。ここで、各抗菌剤は互いに異なる作用機序により抗菌性をそれぞれ発揮する。このように構成した場合には、異なる作用機序に起因して相乗的な抗菌作用が発揮される。さらに、第1の実施形態の抗菌剤を併用することにより、アンピシリン、ゲンタマイシン、ミノサイクリン、ホスホマイシン、バンコマイシン等に対する耐性菌の発現を抑制することができるとともに、これら抗菌剤の投与量を減らすことによって副作用を軽減することができる。また、第2の実施形態の食品製剤及び第3の実施形態の消毒剤に、上記各抗菌剤を含有させてもよい。
【0054】
・ 第1の実施形態の抗菌剤を薬剤耐性菌以外の菌に対する治療に用いてもよい。また、第2の実施形態の食品製剤を薬剤耐性菌以外の菌に対して用いてもよいし、第3の実施形態の消毒剤を薬剤耐性菌以外の菌の消毒に用いてもよい。
【0055】
・ 第3の実施形態の消毒剤を手の消毒等に用いてもよい。
・ 各実施形態において、レスベラトロール重合体を、レスベラトロールをポリフェノールオキシターゼで反応させることにより生化学的に合成してもよい。
このとき、上記一般式(1)中のR〜Rがアセチル基等を示すときには、レスベラトロールをポリフェノールオキシターゼで反応させた後にアセチル化等させてレスベラトロール重合体を合成する。
【0056】
【実施例】
以下、前記実施形態を実施例及び試験例を用いて具体的に説明する。
(実施例1)
実施例1においては、まずグネツム科の植物体の部位として、インドネシア産のグネツム グネモンの主根部 2kgを乾燥機により乾燥させた後に粉砕機で粉砕し粉砕物を得た。次いで、この粉砕物1.8kgに抽出用溶媒としてのエタノール9kgを添加し25℃で6時間撹拌した後、濾紙(東洋濾紙社製、No2)を用いて自然濾過し濾液を得た。続いて、エパボレーターを用い減圧下で濾液を濃縮及び乾燥し、抗菌剤を褐色の粉末0.85kgとして得た。この抗菌剤には、グネモノールA(1.4質量%)、グネモノールB(2.3質量%)、グネチンE(1.8質量%)、グネタール(2.6質量%)及びグネモノシドE(1.7質量%)が含有されていた。
(実施例2)
実施例2においては、実施例1と同様にして褐色の粉末を得た後、粉末60gを分離用溶媒としてのアセトン100mlに溶解し、この溶液をシリカゲルカラム(富士シリシア製、カラム直径:5cm、カラム長さ:50cm、分離用担体:粒径50μmのシリカゲル)に供した。次いで、クロロホルム:メタノール溶液(容積比20:1)1000mlをシリカゲルカラムに供し、分離用担体に担持されている成分を溶出した後、エバポレータを用いて濃縮及び乾燥して粉体を得た。
【0057】
続いて、得られた粉末をメタノール100mlに溶解し、この溶液をODSカラム(富士シリシア製、カラム直径:3cm、カラム長さ:30cm、分離用担体:粒径30μm)に供した。続いて、メタノール:水(容積比1:1)溶液1000mlをODSカラムに供した後さらにメタノール:水(容積比2:1)溶液1000mlをODSカラムに供して分離用担体に担持されている成分を溶出させた。ここで、一定の溶出時間経過毎に溶出液を分画し薄層クロマトグラフィ(TLC)を用いて各画分の含有成分をそれぞれ分析した後、画分をエバポレータを用いて濃縮及び乾燥することによりグネモノールB(収率3.3質量%)を含有する抗菌剤及びグネチンE(収率3.6質量%)を含有する抗菌剤を得た。
(実施例3)
実施例3においては、クロロホルム:メタノール溶液(容積比10:1)500mlをシリカゲルカラムに供した。一方、メタノール:水(容積比1.5:1)溶液500mlをODSカラムに供した後にメタノール:水(容積比3:1)溶液500mlをODSカラムに供し、さらにメタノール:水(容積比4:1)溶液500mlをODSカラムに供した以外は、実施例2と同様にして抗菌剤を得た。抗菌剤の種類は、グネタール(収率2.9質量%)を含有する抗菌剤及びグネモノシドE(収率1.6%)を含有する抗菌剤の2種であった。ここで、各実施例の抗菌剤中の成分は、高速液体クロマトグラフ装置(カラムとしてカプセルパック(登録商標)AG120、(株)資生堂製を装着)によってそれぞれ分析した。
【0058】
<抗菌作用に関する試験>
薬剤耐性菌としてのAmerican Type Culture Collection(ATCC)より分与を受けたVRE株(Enterococcus faecalis ATCC51299株)及びMRSA株(Staphylococcus aureus)を用い、各例の各抗菌剤の抗菌作用に関する試験を行った。具体的には、まずVRE株及びMRSA株の各菌を、SCDブロス(日本製薬製)を前培養用培地として37℃で6時間前培養した後、前培養した各菌をミューラーヒントン培地(Difco製)にそれぞれ10万個播種した後に培地全体に広げた。
【0059】
一方、各抗菌剤をそれぞれ水に溶解させて検体溶液を調製した。次いで、培地上に円筒のディスクを載置した後に検体溶液0.01mlを滴下し、培地を培養器に入れて37℃で48時間培養した。続いて、培養器から培地を取出した後、実体顕微鏡を用いてコロニーの生育の有無を観察した。そして、コロニーの生育が認められない、即ち菌の増殖が認められないときの検体溶液の濃度を最小二乗法により算出し、最小阻止濃度(MIC)を求めた。
【0060】
この結果、実施例1の抗菌剤のVRE及びMRSAに対するMICはそれぞれ100μg/mlとなった。実施例2及び実施例3における各抗菌剤のVREに対するMICは、グネタール又はグネモノシドEを含有するものは25μg/ml、グネモノールB又はグネチンEを含有するものは12.5μg/mlであった。一方、実施例2及び実施例3における各抗菌剤のMRSAに対するMICは、グネモノシドEを含有するものは12.5μg/ml、グネモノールB又はグネチンEを含有するものは6.25μg/ml、グネタールを含有するものは125μg/mlであった。
【0061】
また、バンコマイシン(塩野義製薬社製)及びメチシリン(シグマ−アルドリッチ社製)の抗菌作用試験を上記と同様にしてそれぞれ行ったところ、バンコマイシンのVREに対するMICは1mg/ml以上となり、メチシリンのMRSAに対するMICは1mg/ml以上となった。これらの結果より、実施例1〜3の各抗菌剤は、バンコマイシン及びメチシリンに比べて薬剤耐性菌に対する優れた抗菌作用を示した。
【0062】
<抗菌作用増強に関する試験>
各例の各抗菌剤によるゲンタマイシンの抗菌作用増強に関する試験を行った。具体的には、ゲンタマイシンと各抗菌剤とを質量比1:1の割合で混合したものを水に溶解させて検体溶液を調製した以外は、上記抗菌作用に関する試験と同様にしてMICを求めた。
【0063】
この結果、各例の抗菌剤をゲンタマイシンにそれぞれ混合したときのVRE及びMRSAに対するMICは、ゲンタマイシン単独のときに比べて低い値となった。次いで、ゲンタマイシン単独でのMICと、各例の抗菌剤をゲンタマイシンにそれぞれ混合したときのMICとの値を比較することにより、各例の抗菌剤によるゲンタマイシンの抗菌作用増強の割合を求めた。
【0064】
この結果、ゲンタマイシンのVREに対する抗菌作用は、実施例1の抗菌剤により1.8倍増強されるとともにグネモノールBを含有する抗菌剤により2.3倍増強され、グネチンEを含有する抗菌剤により3.5倍増強された。さらに、グネタールを含有する抗菌剤により2.7倍増強され、グネモノシドEを含有する抗菌剤により3.3倍増強された。
【0065】
一方、ゲンタマイシンのMRSAに対する抗菌作用は、実施例1の抗菌剤により2.3倍増強されるとともにグネモノールBを含有する抗菌剤により2.1倍増強され、グネチンEを含有する抗菌剤により3.3倍増強された。さらに、グネタールを含有する抗菌剤により2.5倍増強され、グネモノシドEを含有する抗菌剤により3.1倍増強された。これらの結果より、実施例1〜3の各抗菌剤は、ゲンタマイシンの抗菌作用をそれぞれ増強させることができた。
【0066】
<副作用に関する試験>
各例の各抗菌剤単独、ゲンタマイシン単独及び各例の各抗菌剤とゲンタマイシンとの併用による副作用に関する試験を行った。具体的には、正常ddY雄性マウス(10週齢)に検体を10mg/10ml/kgの投与量でそれぞれ皮下投与した。ここで、各抗菌剤とゲンタマイシンとを併用するときには、各抗菌剤とゲンタマイシンとの投与量をそれぞれ10mg/10ml/kgとした。投与期間はいずれも3日間とし、投与3日後に尿を採取するとともに麻酔下で採血して血清を得た。溶媒対照として蒸留水を用い、各検体について5匹のマウスをそれぞれ用いた。尿についてはマルチスティックス(マイルス三共製)を用いて蛋白質検査を行い、血清についてはクレアチニンテストワコー(和光純薬製)を用いてクレアチニン量を測定し5匹の平均値をクレアチニン量とした。
【0067】
この結果、検体として実施例1の抗菌剤、実施例2及び実施例3の各抗菌剤を投与したときには尿蛋白質が見られなかった。クレアチニン量は、実施例1の抗菌剤、グネチンE又はグネタールを含有する抗菌剤のときにはそれぞれ13mg/mlとなった。さらに、グネモノールBを含有する抗菌剤のときには14mg/mlとなり、グネモノシドEを含有する抗菌剤のときには12mg/mlとなった。これら各抗菌剤のクレアチニン量は、溶媒対照群の値と同程度であった。
【0068】
さらに、各抗菌剤とゲンタマイシンとを併用したときにも尿蛋白質は見られなかった。クレアチニン量は、実施例1の抗菌剤とゲンタマイシンとの併用のときには23mg/mlとなり、グネモノールBを含有する抗菌剤との併用のときには34mg/mlとなった。グネチンEを含有する抗菌剤との併用のときには26mg/mlとなるとともにグネタールを含有する抗菌剤との併用のときには40mg/mlとなり、グネモノシドEを含有する抗菌剤との併用のときには42mg/mlとなった。
【0069】
一方、検体としてゲンタマイシンを投与したときには尿蛋白質が見られ、血清のクレアチニン量は150mg/mlとなった。これらの結果より、各例の抗菌剤は副作用が弱く、ゲンタマイシンと併用することによってゲンタマイシンの副作用を低減することができた。
(実施例4及び実施例5)
実施例4においては、グネモノールE(アピ株式会社製)により抗菌剤を調製し、実施例5においては、アセチルグネモノールE(アピ株式会社製)により抗菌剤を調製した。
【0070】
<抗菌剤の抗酸化作用に関する試験>
リノール酸を基質とするとともにラジカル促進剤として2,2−アゾビス二塩酸を用い、実施例4及び実施例5の抗菌剤の抗酸化作用に関する試験を行った。具体的には、まず、1.3質量%リノール酸水溶液2.5ml、50mMリン酸緩衝液2.5ml、実施例4又は実施例5の抗菌剤を含むエタノール溶液(抗菌剤の濃度:0.5g/100ml)0.25ml、蒸留水0.75ml及び2,2−アゾビス二塩酸水溶液(46.6mM)0.25mlを混合して反応液を調製した。続いて、反応液を栓付き試験管中でインキュベート(40℃、暗所)した。
【0071】
次いで、インキュベート開始時から24時間後に前記反応液を0.1mlとり、これに75質量%エタノール4.7ml、30質量%チオシアン酸アンモニウム溶液0.1ml及び0.02M FeCl−3.5質量%塩酸水溶液0.1mlを加えてよく撹拌し、4分後に500nmにおける吸光度を測定した(ロダン鉄法)。そして、500nmにおける吸光度の値から抗酸化能を求めた。この結果、実施例4の抗菌剤の抗酸化能は34%であり、実施例5の抗酸化能は13%であった。このため、実施例4の抗菌剤は、有効成分としてグネモノールEを含有することにより、有効成分としてアセチルグネモノールEを含有する実施例5の抗菌剤に比べて抗酸化作用を3倍程度にまで高めることができた。
(実施例6)
実施例1と同様にして得られた抗菌剤0.2g、異性化糖3g、食用セルロース1.8g、アスコルビン酸0.01g及び食用香料0.1gを混合し、常法に従って粉末化することにより顆粒状の食品製剤を得た。
【0072】
<食品製剤の抗菌作用に関する試験>
実施例6の食品製剤の抗菌作用に関する試験を行った。具体的には、まず健常者の血液1mlを寒天培地上に塗布した後、上記抗菌作用に関する試験で用いたVRE株又はMRSA株の各菌をそれぞれ10万個播種した。次いで、実施例6の食品製剤を1g添加した後、培地を培養器に入れて37℃で24時間培養した。続いて、培養器から培地を取出した後、実体顕微鏡を用いてコロニーの生育の有無を観察した。ここで、健常者3例を対象に上記試験をそれぞれ行った。これらの結果、VRE及びMRSAのいずれにおいてもコロニーの生育は認められず、実施例6の食品製剤は菌の増殖を抑制することができた。
(実施例7)
実施例7においては、まずモノステアリン酸ポリエチレングリコール1g及び親油型モノステアリン酸グリセリン1gを消毒用エタノール10gに溶解させた。次いで、実施例1、実施例2又は実施例3の各抗菌剤0.2g及び精製水70gを加えた後、冷却して消毒剤を得た。
(比較例1)
比較例1においては、モノステアリン酸ポリエチレングリコール1g及び親油型モノステアリン酸グリセリン1gを消毒用エタノール10gに溶解させて消毒剤を得た。
【0073】
<消毒作用に関する試験>
実施例7の各消毒剤及び比較例1の消毒剤の消毒作用に関する試験を行った。具体的には、まず3cm角のリント布に上記抗菌作用に関する試験で用いたVRE株又はMRSA株の各菌の前培養液1mlをそれぞれ塗布した。次いで、実施例7の各消毒剤又は比較例1の消毒剤1gをそれぞれ加えた後、リント布を培養器に入れて37℃で24時間培養した。続いて、培養器からリント布を取出した後、実体顕微鏡を用いて菌の生育の有無を観察した。この結果、実施例7の各消毒剤においては、VRE及びMRSAのいずれにおいても菌の生育は認められず、実施例7の各消毒剤はリント布をそれぞれ消毒することができた。一方、比較例1の消毒剤においては、実施例1、実施例2又は実施例3の各抗菌剤を含有していないためにVRE及びMRSAのいずれにおいても菌の生育が認められ、リント布を消毒することができなかった。
【0074】
次に、前記実施形態から把握できる技術的思想について以下に記載する。
(1)前記一般式(1)で示されるレスベラトロール重合体から選ばれる少なくとも一種がグネモノールE、グネチンE及びグネモノールBから選ばれる少なくとも一種である請求項2に記載の抗菌剤。この構成によれば、障害を受けている組織の炎症を抑制することができる。
【0075】
(2)前記一般式(1)中のR〜Rがそれぞれ水素を示す請求項4に記載の食品製剤。この構成によれば、抗酸化作用を向上させることができる。
(3)前記一般式(1)中のR〜Rがそれぞれ水素を示す請求項5に記載の消毒剤。この構成によれば、抗酸化作用を向上させることができる。
【0076】
【発明の効果】
本発明は、以上のように構成されているため、次のような効果を奏する。
請求項1に記載の発明の抗菌剤及び請求項4に記載の食品製剤によれば、副作用が弱いとともに薬剤耐性菌に対して優れた抗菌作用を有している。
【0077】
請求項2に記載の発明の抗菌剤によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、抗酸化作用を向上させることができる。
請求項3に記載の発明の抗菌剤の製造方法によれば、グネツム科の植物体の部位を原料として用いることにより抗菌剤の製造効率を向上させることができる。
【0078】
請求項5に記載の発明の消毒剤によれば、優れた消毒作用を有している。

Claims (5)

  1. 下記一般式(1)で示されるレスベラトロール重合体から選ばれる少なくとも一種を有効成分として含有することを特徴とする抗菌剤。
    Figure 2005023000
    (式中、R〜Rは水素、アセチル基、メチル基、エチル基又はグルコシル基を示し、nは1〜10の整数を示す。)
  2. 前記一般式(1)中のR〜Rがそれぞれ水素を示す請求項1に記載の抗菌剤。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の抗菌剤の製造方法であって、グネツム科の植物体の部位から抽出用溶媒によって前記一般式(1)で示されるレスベラトロール重合体から選ばれる少なくとも一種を含有する抽出成分を抽出した後、抽出成分より前記一般式(1)で示されるレスベラトロール重合体から選ばれる少なくとも一種を分離することを特徴とする抗菌剤の製造方法。
  4. 下記一般式(1)で示されるレスベラトロール重合体から選ばれる少なくとも一種を含有し、抗菌作用を有することを特徴とする食品製剤。
    Figure 2005023000
    (式中、R〜Rは水素、アセチル基、メチル基、エチル基又はグルコシル基を示し、nは1〜10の整数を示す。)
  5. 下記一般式(1)で示されるレスベラトロール重合体から選ばれる少なくとも一種を含有し、一般式(1)で示されるレスベラトロール重合体の抗菌作用を経て消毒作用を発現することを特徴とする消毒剤。
    Figure 2005023000
    (式中、R〜Rは水素、アセチル基、メチル基、エチル基又はグルコシル基を示し、nは1〜10の整数を示す。)
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