JP2005019472A - 半導体装置、テラヘルツ波発生装置、及びそれらの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】テラヘルツ領域でほとんど吸収がないSi基板30を用い、このSi基板30上に、AlSbバッファ層31を形成し、さらにバッファ層31上に、テラヘルツ波の発生に用いられる半導体結晶層としてInAs層32をエピタキシャル成長する。そして、InAs層32の面3aをパルス励起光L1の入射面とし、Si基板30の面3bをパルス励起光L1によってInAs層32内で発生したテラヘルツ波L2の出射面とする透過型の構成とする。
【選択図】 図3
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、周波数1THz(テラヘルツ)周辺の電磁波であるテラヘルツ波の発生に用いられる半導体装置、テラヘルツ波発生装置、及びそれらの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
周波数1THz(テラヘルツ)周辺の電磁波領域(テラヘルツ波領域、例えばおよそ0.1THz〜10THz、あるいはさらにその周辺領域を含んだ0.01THz〜100THzなどの広い周波数領域を指す)は、光波と電波の境界に位置する周波数領域である。このようなテラヘルツ波は、非破壊検査、イメージング、通信などへの応用が期待されている。また、テラヘルツ波の利用は、環境計測やライフサイエンスの分野などへも波及しており、先端的基盤技術分野となりつつある(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−257629号公報
【特許文献2】
特開平11−251660号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
テラヘルツ波の利用を進め、産業化するためには安価で簡便、小型なテラヘルツ波光源を実現することが重要である。従来のテラヘルツ波発生装置として、光スイッチ素子(アンテナ素子)にフェムト秒パルス励起光を照射してテラヘルツ波を発生させる装置が知られている。
【0005】
このような装置では、例えば特許文献1に記載されているように、キャリア寿命が極めて短い半導体基板上に電極を形成した光スイッチ素子が用いられることが多い。しかしながら、このような方法では、光学系が複雑であるためにシステム全体としては大掛りとなり、細かいアライメント調整が要求されるなどの問題がある。また、光スイッチ素子は静電気に弱く取り扱いに注意を要し、経時劣化も認められるなど汎用性の点でも問題がある。
【0006】
一方、光スイッチ素子を用いた発生装置以外にも、半導体結晶内でテラヘルツ波を発生させる装置など、様々なテラヘルツ波発生装置が提案されている。例えば、特許文献2には、サブミリワットクラスの比較的高強度のテラヘルツ電磁波を発生する方法として、InAsなどのバルクのIII−V族化合物半導体結晶に磁場を印加してパルス励起光を照射する方法が開示されている。ここでは、III−V族化合物半導体として、電子の有効質量が軽いInAsやInSbが用いられている。
【0007】
このような装置は、リソグラフィー技術を用いた複雑な素子製造工程を必要とせず、その経時劣化もないことから、光スイッチ素子を用いたものに比べて汎用性が高い。しかしながら、半導体結晶に磁場を印加する上記構成では、半導体結晶に磁場を印加するために大掛りな電磁石が必要となる。また、一般にIII−V族化合物半導体はテラヘルツ領域で吸収が大きく反射配置を用いる必要があるため、光学系の構成が複雑になるという問題があった。
【0008】
本発明は、以上の問題点を解決するためになされたものであり、低コストで簡便、小型なテラヘルツ波光源を実現可能な半導体装置、テラヘルツ波発生装置、及びそれらの製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本願発明者は、上記課題を解決することが可能なテラヘルツ波発生装置の構成について鋭意検討を行った結果、半導体結晶に透過配置を適用することによって好適な光源が得られること、及び、そのような透過配置がテラヘルツ領域でほとんど吸収がないSi基板を用いることによって実現可能であることを見出し、本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明による半導体装置は、Si基板と、Si基板上に形成されたAlSbからなるバッファ層と、バッファ層上にエピタキシャル成長されたInAs、InSb、またはその混晶からなる化合物半導体層とを備えることを特徴とする。
【0011】
同様に、本発明による半導体装置の製造方法は、Si基板上にAlSbからなるバッファ層を形成するステップと、バッファ層上にInAs、InSb、またはその混晶からなる化合物半導体層をエピタキシャル成長するステップとを備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明による透過型のテラヘルツ波発生装置の製造方法は、上記した半導体装置の製造方法を備えることを特徴とする。
【0013】
上記した半導体装置、半導体装置の製造方法、及びテラヘルツ波発生装置の製造方法においては、テラヘルツ波を発生する半導体結晶として、InAs、InSb、またはその混晶からなる化合物半導体層を用いるとともに、Si基板上に上記化合物半導体層を形成している。このように、テラヘルツ領域でほとんど吸収がないSi基板を用いる構成とすることにより、透過型のテラヘルツ波発生装置に適用可能な半導体装置及び製造方法が実現される。また、Si基板は安価であり、装置を低コスト化することができる。
【0014】
さらに、上記化合物半導体層を形成するためのバッファ層として、As系に比べて格子緩和速度が速いSb系材料であって、かつInAs等と比較的格子定数が接近したAlSbを用いている。これにより、Si基板上に平坦で高品質な化合物半導体層を成長することが可能となる。このような構成は、例えば、分子線エピタキシー(MBE)法によって実現することができる。
【0015】
また、本発明によるテラヘルツ波発生装置は、Si基板と、Si基板上にエピタキシャル成長されたInAs、InSb、またはその混晶からなり、Si基板と反対側の面がパルス励起光の入射面となる化合物半導体層とを備え、Si基板の化合物半導体層と反対側の面が、パルス励起光の入射によって化合物半導体層内で発生したテラヘルツ波の出射面となっていることを特徴とする。
【0016】
上記したテラヘルツ波発生装置においては、Si基板上に形成された上記化合物半導体層を用いてテラヘルツ波を発生するとともに、パルス励起光が化合物半導体層側から入射され、発生したテラヘルツ波がSi基板側から出射される透過配置を適用している。このようなSi基板を用いた透過型の構成によれば、反射型の構成に比べて光学系の構成を簡素化することが可能となる。また、電磁石等の設置も不要となる。したがって、低コストで簡便、小型なテラヘルツ波光源を実現することができる。このような構成では、上記したように、Si基板と、化合物半導体層との間に、Si基板上に形成されたAlSbからなるバッファ層が設けられていることが好ましい。
【0017】
また、発生装置は、Si基板の出射面上でテラヘルツ波が通過する所定位置にレンズが設けられていることが好ましい。同様に、発生装置の製造方法は、Si基板の化合物半導体層と反対側の面上の所定位置にレンズを設けるステップを備えることが好ましい。これにより、インピーダンスマッチングによって化合物半導体層内で発生したテラヘルツ波を充分な強度で出射させることができる。
【0018】
あるいは、発生装置は、化合物半導体層の入射面上でパルス励起光が通過する所定位置にレンズが設けられていることが好ましい。同様に、発生装置の製造方法は、化合物半導体層のSi基板と反対側の面上の所定位置にレンズを設けるステップを備えることが好ましい。これにより、パルス励起光を集光しつつ入射させて、テラヘルツ波の発生効率を向上することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、図面とともに本発明による半導体装置、テラヘルツ波発生装置、及びそれらの製造方法の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0020】
図1は、本発明による半導体装置の一実施形態の構成を概略的に示す側面断面図である。本半導体装置は、テラヘルツ波発生装置に好適に適用可能なものであり、図1に示すように、Si基板10と、Si基板10上に形成されたAlSbからなるバッファ層11と、バッファ層11上にエピタキシャル成長された化合物半導体層12とを備える。
【0021】
化合物半導体層12は、本半導体装置をテラヘルツ波発生装置に適用したときにテラヘルツ波の発生に用いられる半導体結晶層であり、InAsからなる。また、本半導体装置において用いられているSi基板10は、テラヘルツ領域でほとんど吸収がない基板である。このような構成により、図1に示した半導体装置では、テラヘルツ波発生装置として用いた場合に、InAs層12のSi基板10と反対側の面(図中の上面)1aがパルス励起光の入射面となり、Si基板10のInAs層12と反対側の面(図中の下面)1bがテラヘルツ波の出射面となる透過型の構成が実現可能である。
【0022】
以下、図1に示した半導体装置、及びテラヘルツ波発生装置の製造方法について、その構成の具体例とともに説明する。ここでは、固体ソースの分子線エピタキシー(MBE)法を用いた製造方法について述べる。
【0023】
まず、Si基板10を用意し、フッ酸処理してからチャンバへとロードする。そして、真空中で高温にて熱処理して酸化膜の除去を行う。続いて、基板温度を500℃程度として、バッファ層11となるAlSbを厚さ100〜200nm(1000〜2000Å)程度成長する。このとき、As系化合物では格子定数差に起因した歪みによる3次元島状成長モードが比較的長く続く傾向であるのに対し、Sb系化合物では格子緩和速度が速く、As系化合物を用いた場合に比べて短い時間で2次元成長モードへと移行する。
【0024】
次に、基板温度を400℃程度まで下げた後、InAs層12をMBE法によってエピタキシャル成長する。このInAs層12の厚さについては、半導体装置をテラヘルツ波発生装置に適用することを考慮して適宜設定することが好ましい。具体的には、InAs層12が薄い場合はテラヘルツ電磁波の放射強度が弱くなってしまうが、逆に厚い場合にはInAs層12内でのテラヘルツ波の吸収が大きくなること等を考慮する。通常は、InAs層12を1μm以下の厚さとすることが適当である。以上により、図1に示した構成の半導体装置、及びテラヘルツ波発生装置を製造することができる。
【0025】
本実施形態による半導体装置、テラヘルツ波発生装置、及びそれらの製造方法の効果について説明する。
【0026】
図1に示した半導体装置、半導体装置の製造方法、及びテラヘルツ波発生装置の製造方法においては、テラヘルツ波を発生する半導体結晶としてInAs層12を用いるとともに、Si基板10上にInAs層12を形成している。ここで用いられているSi基板10は、テラヘルツ領域でほとんど吸収がない基板であり、したがって、透過型のテラヘルツ波発生装置に適用可能な半導体装置及び製造方法が実現される。また、Si基板10は安価であり、装置を低コスト化することができる。
【0027】
また、図1に示した半導体装置を適用したテラヘルツ波発生装置においては、Si基板10上に形成されたInAs層12を用いてテラヘルツ波を発生するとともに、パルス励起光がInAs層12側の面1aから入射され、発生したテラヘルツ波がSi基板10側の面1bから出射される透過配置が適用される。このような透過型の構成は、テラヘルツ領域でほとんど吸収がないSi基板10を用いることによって可能となるものである。これにより、反射型の構成に比べて光学系の構成を簡素化することが可能となる。
【0028】
このようなテラヘルツ波発生装置では、リソグラフィー技術を用いた複雑な素子製造工程が不要であるなど、光スイッチ素子を用いたものに比べて汎用性が高い。また、本構成では、InAs層12に磁場の印加を行わないため電磁石等の設置が不要である。したがって、低コストで簡便、小型なテラヘルツ波光源を実現することができる。
【0029】
さらに、図1に示した半導体装置及びその製造方法においては、Si基板10上にInAs層12を形成するためのバッファ層11として、As系に比べて格子緩和速度が速いSb系材料であるAlSbを用いている。また、AlSbは、InAsと比較的格子定数が接近している。これにより、Si基板10上に平坦で高品質なInAs層12を成長することが可能となる。
【0030】
なお、Si基板10上にAlSbバッファ層11を介してエピタキシャル成長する半導体層としては、図1に示したInAs層12に限られない。一般には、このテラヘルツ波を発生する半導体結晶としては、InAs、InSb、またはその混晶からなる化合物半導体層を用いることができる。この場合においても、その製造方法、得られる効果等は上記したものと同様である。
【0031】
ここで、Si基板上へのIII−V族化合物半導体のエピタキシャル成長について詳述しておく。Si基板上へのIII−V族化合物半導体のエピタキシャル成長は、安価で熱的性質にも優れたSiと、電気的及び光学的特性に優れたIII−V族化合物半導体との融合を目指して、Si基板上へのGaAsの成長を中心に研究が行われている。
【0032】
従来、化合物半導体のエピタキシャル成長は格子定数が接近した材料間で行われているが、異なる結晶型、格子定数、熱的性質を克服してSi基板上に高品質なGaAs層を得る方法としては、Si基板と格子定数が接近したGaPから成長を開始し、GaAsPを経てGaAsへと徐々に目的とする格子定数まで組成を変化させるグレーデッドバッファ層を用いる方法や、2段階成長法(特開昭62−219614号公報参照)、歪超格子をバッファ層として利用する方法(特開平1−117017号公報参照)がある。
【0033】
これらの方法のうち、グレーデッドバッファ層を用いる方法では、格子歪みを緩和させるには充分に厚いバッファ層が必要になるという問題がある。また、2段階成長法では、Si基板温度を450℃以下で20nm程度の多結晶あるいはアモルファス状のGaAsをバッファ層として成長し、その後に600℃程度で熱処理して結晶化して、その上にGaAsを成長する。この方法では、確実に単結晶薄膜が得られるが、成長の初期段階が3次元島状成長であるために一般に成長される半導体層の平坦性が悪い。また、歪超格子を用いる方法では、充分に厚い超格子層が必要となり、また、10nm程度の薄膜を交互に何層も成長させる複雑な製造工程及び成長技術が必要となるなどの問題がある。
【0034】
これに対して、AlSbバッファ層11を介してSi基板10上にInAs層12をエピタキシャル成長する上記した装置及び製造方法によれば、テラヘルツ領域でほとんど吸収がないSi基板上に、平坦で高品質なテラヘルツ波の発生に用いられる化合物半導体層を成長することが可能となる。
【0035】
図2は、本発明による半導体装置の他の実施形態の構成を概略的に示す側面断面図である。本半導体装置は、図1に示した装置と同様に、テラヘルツ波発生装置に好適に適用可能なものであり、図2に示すように、Si基板20と、Si基板20上に形成されたAlSbからなるバッファ層21と、バッファ層21上にエピタキシャル成長されたInAs層22とを備える。このような構成により、図2に示した半導体装置では、テラヘルツ波発生装置として用いた場合に、InAs層22の面2aがパルス励起光の入射面となり、Si基板10の面2bがテラヘルツ波の出射面となる透過型の構成が実現可能である。
【0036】
また、本実施形態による半導体装置は、AlSbバッファ層を用いる構成と、2段階成長法による構成とを併用した構成となっている。すなわち、図2に示した半導体装置においては、Si基板20及びAlSbバッファ層21の間に、GaAs低温成長バッファ層23と、GaAs高温成長バッファ層24とが形成されている。
【0037】
このような半導体装置の製造方法においては、Si基板20上に例えば基板温度200℃の低温にて、低温成長バッファ層23となるGaAsを厚さ10nm程度成長する。そして、As分子線照射、及び600℃での熱処理を行った後、基板温度600℃の高温にて、高温成長バッファ層24となるGaAsを厚さ100〜200nm程度成長する。このとき、GaAs低温成長バッファ層23上に形成されるGaAs高温成長バッファ層24は単結晶となっている。その後、基板温度500℃でのAlSbバッファ層21の成長、及び400℃でのInAs層22の成長を順次行うことにより、図2に示した半導体装置が形成される。
【0038】
図2に示した半導体装置及びその製造方法によっても、AlSbバッファ層11のみを用いた図1の構成と同様に、Si基板20上に平坦で高品質なInAs層22を成長することが可能となる。特に、GaAs層23、24をもバッファ層とすることで、貫通転位の増殖が抑制されるので、バッファ層上にエピタキシャル成長されるInAs層をさらに高品質化することができる。
【0039】
なお、図1及び図2に示した半導体装置に関して上述した製造方法では、固体ソースのMBE法を用いる例について説明したが、それ以外にも、ガスソースによるMBE法や、有機金属気相成長(MOCVD)法などを用いることも可能である。また、半導体装置を構成する各半導体層の膜厚等についても、上記した数値はその一例を示すものであり、これに限定されない。また、テラヘルツ波を発生させる化合物半導体層としては、InAs層に限らず、AlSbバッファ層と同様にSbを含むInSb層、あるいはInAs及びInSbの混晶からなる層を用いても良いことは上述した通りである。
【0040】
次に、上記構成の半導体装置を適用したテラヘルツ波発生装置について、Si基板上にエピタキシャル成長したInAs層を用いたテラヘルツ電磁波の発生方法とともに説明する。図3は、本発明によるテラヘルツ波発生装置の一実施形態の構成を示す側面図である。
【0041】
図3に示すテラヘルツ波発生装置は、透過型の発生装置であり、図1に示した半導体装置と同様に、Si基板30と、Si基板30上に形成されたAlSbバッファ層31と、バッファ層31上にエピタキシャル成長されたInAs層32とを備える。また、このような構成において、InAs層32のエピタキシャル成長表面である面3aがパルス励起光の入射面となり、Si基板30の面3bがテラヘルツ波の出射面となっている。
【0042】
このような構成のテラヘルツ波発生装置に対し、InAs層32内においてテラヘルツ波を発生させるため、その入射面3aからパルス励起光L1が照射される。パルス励起光L1を供給する励起光源(図示していない)は好ましくは超短パルス光源であり、例えばパルス幅100fs程度のチタンサファイアレーザが用いられる。また、このとき、InAs層32の表面3aでの励起光の反射を考慮し、成長表面3aの法線方向に対して角度θでパルス励起光L1を入射する。
【0043】
パルス励起光が発生装置へと入射されると、InAs層32内で励起されたキャリアによってテラヘルツ波L2が発生される。そして、InAs層32内で発生したテラヘルツ波L2は、Si基板30を透過し、出射面3bから外部へと放射される。また、図3においては、Si基板30の出射面3b上でテラヘルツ波L2が通過する所定位置に、レンズ35が設けられている。
【0044】
図4は、InAs層において発生するテラヘルツ波強度のパルス励起光の入射角度依存性を示すグラフである。このグラフにおいて、横軸は入射面3aに対するパルス励起光L1の入射角度θ(deg.)を示し、縦軸は発生するテラヘルツ波のピーク強度(arb. units)を示している。
【0045】
このグラフに示すように、InAs層32でテラヘルツ波を発生させる場合、最適配置はブリュースター角近傍である70°付近で得られる。このとき、InAs中に誘起された瞬時電流によりテラヘルツ波が発生する。このテラヘルツ波は双極子モーメントの向きと垂直方向に発生するため、ここではSi基板30側に放射される。また、Si基板30は上記したようにテラヘルツ領域でほとんど吸収がないため、InAs層32から放射されたテラヘルツ波はSi基板30の出射面3bからほとんどそのまま取り出すことができる。
【0046】
また、InAs層32で発生したテラヘルツ波をSi基板30側から取り出す透過配置を用いているため、出射面となるSi基板30の面3b上にレンズ35を装着することができる。これにより、インピーダンスマッチングをとってテラヘルツ波を増強することができる。このレンズ35としては、具体的には、テラヘルツ領域での屈折率を考慮してSi、MgOなどを用いることが好ましい。特に、Siレンズを用いた場合には、Si基板との一体成型が可能であるために装置を小型化することができ、そのパッケージングも容易となる。
【0047】
また、このようにレンズ35によってテラヘルツ波を増強する構成を用いることにより、例えば半導体結晶に磁場を印加することによるテラヘルツ波の増強は不要となる。したがって、複雑な光学系を必要とせずに、テラヘルツ波発生装置を含むシステム全体を小型化することができる。
【0048】
図5は、上記したテラヘルツ波発生装置において得られるテラヘルツ波の時間波形を示すグラフである。このグラフにおいて、横軸は時間(ps、遅延時間)を示し、縦軸はテラヘルツ波の各時点での強度(arb. units)を示している。また、グラフAはレンズを設置しなかった場合での時間波形を、グラフBはMgOレンズを設置した場合での時間波形をそれぞれ示している。このグラフに示すように、Si基板30側にテラヘルツ波を出射させる透過型の構成を用いるとともに、その出射面3b上にレンズ35を設けることにより、出射されるテラヘルツ波のピーク強度を増大することができる。
【0049】
なお、テラヘルツ波発生装置に対するレンズの設置については、図3に示した構成では、Si基板30の出射面3b上に、テラヘルツ波L2が通過するレンズ35を設ける構成を示した。これに対して、InAs層32の入射面3a上でパルス励起光L1が通過する所定位置に励起光集光用のレンズを設けて、テラヘルツ波の発生効率を向上させる構成としても良い。
【0050】
また、パルス励起光に対する入射面3a上のレンズと、テラヘルツ波に対する出射面3b上のレンズとを併用すれば、さらにテラヘルツ波の放射強度を増大することができる。このようなレンズの適用は、パルス励起光の入射とテラヘルツ波の出射が同一面で行われる従来の反射配置では困難であったが、透過配置を用いた上記構成によれば、このようなレンズの適用が可能となる。
【0051】
【発明の効果】
本発明による半導体装置、テラヘルツ波発生装置、及びそれらの製造方法は、以上詳細に説明したように、次のような効果を得る。すなわち、テラヘルツ波を発生する半導体結晶としてInAs、InSb、またはその混晶からなる化合物半導体層を用いるとともに、Si基板上に上記化合物半導体層を形成する半導体装置、半導体装置の製造方法、及びテラヘルツ波発生装置の製造方法によれば、テラヘルツ領域でほとんど吸収がないSi基板を用いることにより、透過型のテラヘルツ波発生装置に適用可能な半導体装置及び製造方法が実現される。また、Si基板は安価であり、装置を低コスト化することができる。さらに、上記化合物半導体層を形成するためのバッファ層として、As系に比べて格子緩和速度が速いSb系材料であって、かつInAs等と比較的格子定数が接近したAlSbを用いることにより、Si基板上に平坦で高品質な化合物半導体層を成長することが可能となる。
【0052】
また、Si基板上に形成された上記化合物半導体層を用いてテラヘルツ波を発生するとともに、パルス励起光が化合物半導体層側から入射され、発生したテラヘルツ波がSi基板側から出射される透過配置を適用したテラヘルツ波発生装置によれば、反射型の構成に比べて光学系の構成を簡素化することが可能となる。また、電磁石等の設置も不要となる。したがって、低コストで簡便、小型なテラヘルツ波光源を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】半導体装置の一実施形態の構成を示す側面断面図である。
【図2】半導体装置の他の実施形態の構成を示す側面断面図である。
【図3】テラヘルツ波発生装置の一実施形態の構成を示す側面図である。
【図4】テラヘルツ波強度のパルス励起光の入射角度依存性を示すグラフである。
【図5】テラヘルツ波の時間波形を示すグラフである。
【符号の説明】
10、20、30…Si基板、11、21、31…AlSbバッファ層、12、22、32…InAs化合物半導体層、23…GaAs低温成長バッファ層、24…GaAs高温成長バッファ層、35…レンズ、1a、2a、3a…パルス励起光の入射面、1b、2b、3b…テラヘルツ波の出射面。
Claims (9)
- Si基板と、
前記Si基板上に形成されたAlSbからなるバッファ層と、
前記バッファ層上にエピタキシャル成長されたInAs、InSb、またはその混晶からなる化合物半導体層と
を備えることを特徴とする半導体装置。 - Si基板上にAlSbからなるバッファ層を形成するステップと、
前記バッファ層上にInAs、InSb、またはその混晶からなる化合物半導体層をエピタキシャル成長するステップと
を備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。 - 請求項2に記載の半導体装置の製造方法を備える透過型のテラヘルツ波発生装置の製造方法。
- 前記Si基板の前記化合物半導体層と反対側の面上の所定位置にレンズを設けるステップを備えることを特徴とする請求項3記載のテラヘルツ波発生装置の製造方法。
- 前記化合物半導体層の前記Si基板と反対側の面上の所定位置にレンズを設けるステップを備えることを特徴とする請求項3または4記載のテラヘルツ波発生装置の製造方法。
- Si基板と、
前記Si基板上にエピタキシャル成長されたInAs、InSb、またはその混晶からなり、前記Si基板と反対側の面がパルス励起光の入射面となる化合物半導体層とを備え、
前記Si基板の前記化合物半導体層と反対側の面が、前記パルス励起光の入射によって前記化合物半導体層内で発生したテラヘルツ波の出射面となっていることを特徴とする透過型のテラヘルツ波発生装置。 - 前記Si基板と、前記化合物半導体層との間に、前記Si基板上に形成されたAlSbからなるバッファ層が設けられていることを特徴とする請求項6記載のテラヘルツ波発生装置。
- 前記Si基板の前記出射面上で前記テラヘルツ波が通過する所定位置にレンズが設けられていることを特徴とする請求項6または7記載のテラヘルツ波発生装置。
- 前記化合物半導体層の前記入射面上で前記パルス励起光が通過する所定位置にレンズが設けられていることを特徴とする請求項6〜8のいずれか一項記載のテラヘルツ波発生装置。
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