JP2005018531A - カム研削方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】カム研削方法は、数値制御装置22にドライブユニットDUを介して接続した数値制御研削盤が使用される。そして、平滑化されたリフトデータLDに基づいて決定された主軸の回転速度等が制御され、加工誤差が理論切込量に対してプラスになるように制限されて粗研削が行われる。このとき、主軸の回転位相角度と関連づけた理論切込量に対する加工誤差が誤差情報EIとして取得される。その後、取得した誤差情報EIに基づいて研削能率を算出し、さらに仕上研削における回転速度を決定し、仕上研削が実施される。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、カム研削方法に関するものであり、特に非真円形状を為すカムを精度良く、かつ短時間で研削するためのカム研削方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、数値制御可能な研削装置(数値制御研削盤)を利用して、工作物を主軸に従って回転可能に装着し、主軸に対して垂直方向に移動する砥石車の移動量を主軸の回転と同期させながら制御し、カム等の非真円形の工作物を研削加工することが行われている。
【0003】
このとき、数値制御研削盤には、予め仕上げられる加工形状に基づいて入力されたプロフィルデータ(加工形状データ)がRAMなどに記憶され、該プロフィルデータに基づいて砥石車を工作物の仕上げ形状に沿って往復運動させるように、主軸の位相回転角度に対する砥石車の移動量などが与えられている。ここで、プロフィルデータは、主に工作物の加工形状を指示するリフトデータと工作物を研削する砥石車の砥石径とによって決定されている。
【0004】
リフトデータは、工作物の仕上げ形状の加工精度に大きな影響を及ぼすものであり、特に砥石車に係る加速度や加加速度、及び砥石車の運動精度を考慮して入力される必要があった。特に、砥石車の運動を工作物の装着された主軸の回転に追従するように変化させなければ、研削加工時に砥石車と工作物との間に大きな隙間が生じたり、適切な切込量が得られず安定した研削能率を保つことができないことがあった。ここで、研削能率とは、単位時間当たりの切込量(体積)に相当する。したがって、特にカムなどの非真円形状を為す工作物を研削加工する場合、カムのそれぞれの加工精度(平滑度)を一定に保つために、砥石車の運動による追従誤差を予め設定した範囲内に収める必要があった。
【0005】
そこで、砥石車の運動及び主軸の回転速度を適切に制御し、加速度や加加速度などの急激な変化(振れ)による追従誤差を所定範囲に収めるために、ローパスフィルタや移動平均法などによって入力されたリフトデータをフィルタリング(平滑化)する処理を行うことがあった。具体的に示すと、例えば、予め作成されたリフトデータを低次フィルタに通過させ、補間手段で多点データにするとともに、さらに高次フィルタに通すことにより、砥石車の加速度等の急激な変化を緩和させて平滑化することが行われている(例えば、特許文献1)。これにより、砥石車及び主軸の運動精度に応じて、工作物が装着された主軸の回転速度が決定され、被加工物と砥石車とを安定した研削能率で研削することができる。これにより、工作物を加工精度が高く研削加工を行うことができる。
【0006】
【特許文献1】
特開平8−123525号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述のフィルタリング等の処理技術を利用した研削加工においては、平滑化されたリフトデータに基づいて指示される工作物の理論切込量の値に対し、研削を実施した後の実切込量の加工誤差は、該理論切込量を基準とすると、研削過多及び研削過少の双方にバラついていることがあった。すなわち、工作物の各位置では、理論切込量に対して削り過ぎていたり(マイナス方向)、或いは削り足りない(プラス方向)箇所がそれぞれ存在していた。
【0008】
また、一般にカム等の非真円形状を為す工作物の研削工程は、加工精度はそれほど高くないが、加工時間を短縮することができる粗研削と、加工精度を高くし、製品に仕上げる仕上研削などの複数の研削工程によって行うことが多かった。このとき、粗研削から仕上研削に移行する場合、粗研削において生じた理論切込量から加工誤差を把握し、さらに仕上研削に加工誤差に応じた補正を行うことは、主として研削加工従事者の経験や勘等に基づいて行われていた。また、実際に研削盤を粗研削の条件で稼働させ、工作物を加工し、粗研削済みの工作物の形状を直接測定することにより、粗研削における加工誤差を把握し、仕上研削のデータとして利用することがあった。
【0009】
その結果、加工誤差に基づいて仕上形状データの補正等を繰返し行う必要があった。また、その補正に係る作業に多大な時間を要することがあった。そのため、研削加工のサイクルタイムが伸長し、研削工程が非効率になる問題があった。また、研削加工従事者毎の経験の差などに起因する不確定要素によって、工作物の加工精度が低下することがあった。
【0010】
また、上述の加工誤差の把握は、工作物のそれぞれの位置に対応させて把握することが難しかった。すなわち、粗研削後の工作物に対して加工誤差の最大値及び最小値などを取得することは可能であるが、工作物のどの位置が最大値及び最小値に相当しているのかを認識することができなかった。
【0011】
そこで、本発明は、上記実情に鑑み、非真円形状を為すカムを粗研削時の加工誤差に基づいて、精度良く仕上研削することが可能なカム研削方法の提供を課題とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、請求項1の発明にかかるカム研削方法は、粗研削及び仕上研削を含む少なくとも二つの研削工程によって非真円形状を為すカムを研削加工するカム研削方法であって、被加工物の装着された主軸に対して垂直方向に往復直線運動が可能に配された砥石車の運動及び前記主軸の回転運動を制御し、前記カムの加工形状を指示する加工形状データを平滑化処理する平滑化工程と、平滑化された補正形状データに基づいて前記被加工物の粗研削を行う粗研削工程とを具備し、前記粗研削工程は、粗研削された粗研削済カムの理論切込量に対する実切込量の加工誤差が、研削過多または研削過少のいずれか一方に制限されているものである。
【0013】
ここで、加工形状データとは、研削加工するカムの仕上形状を指示するものであり、数値制御研削盤に入力付与されるプロフィルデータのリフトデータに相当するものである。さらに、補正形状データとは、前出の加工形状データを平滑化したものであり、砥石車や主軸の運動精度に基づいて、加速度や加加速度の急激な変化がないように変化率を緩やかにしたものである。これにより、追従誤差の範囲内で、砥石車等を動かすことが可能となる。
【0014】
したがって、請求項1の発明のカム研削方法によれば、加工形状データが平滑化された補正形状データに基づいて被加工物の研削が行われる。このとき、粗研削工程においては、平滑化された補正形状データの理論切込量に対して実切込量の値が、研削過多または研削過少のいずれか一方に制限されている。換言すると、理論切込量に対して加工誤差がプラス方向またはマイナス方向の一方に振られて研削され、実切込量の最小値または最大値のいずれかが理論切込量に近づくようなる。これにより、従来の理論切込量を平均基準値とし、その上下に誤差がバラつくような研削加工に比べ、その後に実施される仕上研削における切込量(仕上実切込量)を小さく抑えることが可能となり、加工時間の短縮化などが図られる。
【0015】
請求項2の発明にかかるカム研削方法は、請求項1に記載のカム研削方法において、平滑化された前記補正形状データと前記砥石車及び前記主軸に係る運動精度と研削抵抗とに基づいて、前記粗研削工程における前記主軸の回転速度を決定する粗研削速度決定工程をさらに具備するものである。
【0016】
ここで、被加工物は非真円形状を為して形成されているため、略真円形状の砥石車とは、研削加工時の回転によって互いに接触する箇所の面積が時々刻々変化をしている。すなわち、互いが略真円形状に近い箇所では、比較的狭い範囲で接触しているのに対し、カムなどの直線部分では、接触面積が大きくなる。そのため、各位置において同速の回転速度で研削を行うと、接触面積が大きな箇所では切込量が大きくなり、一方、接触面積が小さいと切込量が小さくなる。つまり、単位時間当たりの切込量を示す研削能率が変化することになる。その結果、研削加工において被加工物の各位置における切込量が相対的に変化することにより、一定の研削能率を保つことができず、加工精度が安定しないことがある。
【0017】
したがって、請求項2の発明のカム研削方法によれば、請求項1の発明のカム研削方法の作用に加え、粗研削工程における主軸の回転速度が、平滑処理された補正形状データに基づいて決定される。このとき、砥石車及び主軸に係る運動精度と、被加工物の研削抵抗に基づいて回転速度が決められる。これにより、非真円形状を為す被加工物の各位置において、研削能率を一定にすることが可能となり、かつ設定された追従誤差範囲内で回転速度が決定されるため、砥石車による被加工物の切込量が安定し、良好な加工精度を得ることが可能となる。
【0018】
請求項3の発明にかかるカム研削方法は、請求項2に記載のカム研削方法において、前記粗研削工程は、前記理論切込量に対する前記加工誤差を前記被加工物の回転位相角度と関連付けた誤差情報として取得する誤差情報取得工程をさらに有し、仕上研削工程は、前記誤差情報及び前記加工誤差に基づく仕上実切込量により仕上研削における研削能率を算出する研削能率算出工程と、前記加工形状データ、前記研削能率、及び前記砥石車及び前記主軸に係る運動精度に基づいて、前記仕上研削工程における前記主軸の回転速度を決定する仕上研削速度決定工程とをさらに具備するものである。
【0019】
したがって、請求項3の発明のカム研削方法によれば、請求項2の発明のカム研削方法の作用に加え、粗研削を経た粗研削済カムの各位置における加工誤差が、被加工物の回転位相角度と関連させて誤差情報として取得される。すなわち、前述した研削過多及び研削過少のいずれかに制限された加工誤差が、被加工物のどの位置に対応しているかを把握することが可能となる。そして、取得された誤差情報に基づいて被加工物の各位置における切込量が決定され、さらに研削能率に応じて回転速度が決定されるこれにより、仕上研削が加工精度よく安定した行われ、研削ロスが少なく、かつ研削時間を短縮させることが可能となる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態である非真円形状を為すカムWを研削加工するカム研削方法1について図1乃至図5に基づいて説明する。ここで、図1は本実施形態のカム研削方法1に利用される数値制御研削盤2の構成を模式的に示す説明図であり、図2は数値制御研削盤2と接続した数値制御装置22の機能的構成を示すブロック図であり、図3は粗研削における砥石車GによるカムWの研削状態を示す模式図であり、図4は仕上研削における砥石車Gによる粗研削済カムCWの研削状態を示す模式図であり、図5はカム研削方法1の流れを示すフローチャートである。
【0021】
本実施形態のカム研削方法1は、図1に示すように、非真円形状を為すカムWを研削加工するための数値制御研削盤2が利用して行われる。
【0022】
数値制御研削盤2のベッド10上には、螺子送り機構を介してサーボモータ11により駆動されるテーブル12が主軸軸線に平行なZ軸方向に摺動可能に配設されている。さらに、該テーブル12には、主軸13を軸架した主軸台14が配設され、その主軸13は主軸用サーボモータ15によって回転される。また、テーブル12の右側(図1において紙面右方向に相当)は、心押台16が載置され、心押台16のセンタ17aと、主軸13のセンタ17bとによって被加工物となるカムWが挟持されている。ここで、カムWは、主軸13に突設された位置決めピン18と嵌合し、カムWの回転位相は主軸13の回転位相に一致している。また、カムWは、エンジンの動弁機構に用いられるものであり、カムシャフトと称されることがある。
【0023】
加えて、ベッド10の後方(図1において紙面上方向に相当)には、カムWに対して往復直線運動可能な工具台19が案内され、該工具台19にはモータMによって回転駆動される砥石径rの砥石車Gが支承されている。この工具台19は、砥石用サーボモータ21と送り螺子(図示しない)を介して連結され、サーボモータ21の正逆転により前進及び後退(図1の上下方向に相当)することができる。
【0024】
さらに、数値制御研削盤2は、図1に示すように、主軸13の回転及び工具台19の回転及び運動を制御するための操作盤23を有する数値制御装置22が各軸(X軸、C軸、Z軸)の運動を制御するドライブユニットDUを介して接続されている。ここで、数値制御装置22は、操作盤23から付与された加工指令信号に基づいて主軸13の回転及び工具台19の砥石車Gの送り量を数値制御してカムWを研削加工するための装置であり、図2に示すように、主軸13の回転運動等を制御するメインCPU24、制御用プログラムCPを予め記憶したROM25、及び入力されたデータ等を一時的に記憶するRAM26とから主に構成されている。ここで、RAM26には、カムWを指定形状に沿って研削加工可能なプロフィルデータPD、粗研削における加工誤差MEを主軸13の回転位相角度θと関連づけて取得し、記憶する誤差情報EI、プロフィルデータPDに含まれるオリジナルのリフトデータ(図示しない)を平滑化処理したリフトデータLDなどが記憶されている。ここでプロフィルデータPDは、主軸13の回転位相角度毎の砥石車Gの移動量を与え、カムWを所望の形状に加工するために砥石車GをX軸方向に往復直線運動させるとともに、主軸13の回転速度VR1を指示するものである。ここで、プロフィルデータPDに含まれるオリジナルのリフトデータが本発明における加工形状データに相当し、平滑化されたリフトデータLDが本発明における補正形状データに相当する。
【0025】
さらに、数値制御装置22は、その機能的構成として、プロフィルデータPDをリフトデータLDに平滑化処理する平滑化手段30と、平滑化されたリフトデータLD等に基づいて粗研削における主軸13の回転速度VR1を決定する粗研削速度決定手段31と、決定された主軸13の回転速度VR1に基づいて数値制御研削盤2を制御し、粗研削を行う粗研削制御手段32と、粗研削におけるカムWの誤差情報EIを取得する誤差情報取得手段33と、取得した誤差情報EIに応じて仕上研削における研削能率CEを算出する研削能率算出手段34と、算出された研削能率CEと砥石車G等の運動精度等に基づいて主軸13の回転速度VR2を決定する仕上研削速度決定手段42と、決定された主軸の回転速度VR2に基づいて数値制御研削盤2を制御し、仕上研削を行う仕上研削制御手段35とを備えている。さらに、数値制御装置22は、入出力制御手段39を介してキーボードなどの入力手段40と、CRTなどの出力手段41と接続している。
【0026】
加えて、数値制御装置22は、種々のサーボモータ11,15,21を駆動するためのドライブCPU36とドライブ用RAM37とパルス分配回路38とを備えている。そして、ドライブ用RAM37は、メインCPU24から砥石車G、テーブル12、及び主軸13の各位置をそれぞれ示す位置データ(図示しない)が指示されると、その情報を記憶し、ドライブCPU36に送る。そして、ドライブCPU36は、加工に関する制御軸(C軸、X軸、Z軸)の送り量をスローアップ、スローダウン、及び目標点の補間等の演算を行い、補間点の位置決めデータを一定周期で出力する装置である。さらに、パルス分配回路38は、パルス分配の後、駆動指令パルスをそれぞれのドライブユニットDUに出力するものである。
【0027】
次に、本実施形態のカム研削方法1における数値制御研削盤2の作用について詳述する。始めに、被加工物となる未研削のワークW0を前述した主軸13及び心押台14の間に挟持する。そして、予め所定の入力手段によってRAM26に入力され、記憶されているプロフィルデータPDに応じて研削加工を行う。
【0028】
具体的に説明すると、まずプロフィルデータPDに含まれるオリジナルのリフトデータに対し、主軸13の動きに対して砥石車Gの動きが予め設定した範囲の追従誤差内に入るように砥石車G及び主軸13に係る加速度、及び加加速度などを平滑化する処理(フィルタリング)を行い、加速度等の変化を緩やかにしたリフトデータLDを生成する(平滑化工程:ステップS1)。
【0029】
そして、生成されたリフトデータLDによって粗研削における主軸13の回転速度VR1を主軸13及び砥石車Gに係る運動精度と、加工対象のカムWの研削抵抗を考慮して決定し(粗研削速度決定工程:ステップS2)、粗研削を実行する(粗研削工程:ステップS3)。
【0030】
このとき、粗研削工程(ステップS3)と同時に、カムWの各位置における主軸13の回転速度VR1と、カムWの装着された主軸13の回転位相角度θ及び該回転位相角度θに対応するカムWの外周位置の加工誤差MEが把握され、誤差情報EIとして取得される(誤差情報取得工程:ステップS4)。ここで、取得した誤差情報EIは、数値制御装置22のRAM26に記憶される。なお、誤差情報EIは、ドライブユニットDUに与えられた駆動指令パルスに応じて算出するものや、予め数値制御研削盤2に設置された種々のセンサやエンコーダなどの周知の検知手段に取得することができる。
【0031】
そして、所定の研削時間が経過すると粗研削が完了する(ステップS5)。このとき、粗研削を完了した粗研削済カムCWは、リフトデータLDに基づいて設定された理論切込量TC(すなわち、設定値)に対して実切込量RCの加工誤差MEがプラス(=研削過少)になるように制限されて研削されている(図3参照)。つまり、理論切込量TCを越えて研削がされることがないように、実切込量RCの最大値が理論切込量TCに近づくようにして研削されている。これにより、仕上研削時の切込量を最小に抑え、研削加工時間の短縮が図られる。
【0032】
その後、所得した誤差情報EIに基づいて仕上研削における仕上実切込量FCを決定する(仕上実切込量決定工程:ステップS6)。ここで、仕上実切込量FCは、粗研削で理論切込量TCに対してプラス方向に制限された加工誤差ME、換言すれば粗研削で削り残した部分に相当し、該仕上実切込量FCに応じて粗研削済カムCWの各位置における研削能率CEを決定する(研削能率決定工程:ステップS7)。そして、決定した研削能率CE及び砥石車G等の運動精度に基づいて、仕上研削における主軸13の回転速度VR2が決定され(仕上研削速度決定工程:ステップS8)、決定された回転速度VR2に主軸13が制御され仕上研削が行われ(仕上研削工程:ステップS9)、仕上研削が完了する(ステップS10)。
【0033】
以上説明したように、本実施形態のカム研削方法1によれば、平滑化処理したリフトデータLDに基づいて、粗研削加工における主軸13の回転速度VR1が決定されるとともに、粗研削時における理論切込量TCに対して実切込量RCがプラス方向に制限されている。これにより、その後に実施する仕上研削工程S11において、従来の理論切込量TCを基準としてプラス・マイナスの双方向に誤差を生じている場合と比べ、仕上実切込量FCを可能な限り小さくすることができる。これにより、仕上研削における加工時間を短縮させることができ、サイクルタイムを短くすることができる。
【0034】
さらに、粗研削工程において誤差情報EIを取得し、その後の仕上研削工程を該誤差情報EIに基づいて制御することができる。これにより、誤差情報EIによって研削能率CEを決定することができ、さらに主軸13の回転速度VR2を砥石車Gの運動精度に併せて追従誤差の範囲内で最適なものにすることができる。そのため、加工時間を短縮し、さらに回転速度VR2の決定が誤差情報EIに基づいて容易に算出することができる。したがって、従来は研削加工作業者の経験等に基づいて決定していた作業を省略することができ、加工時間の短縮化とともに、作業者の経験不足等による加工精度の低下を防ぐことができる。
【0035】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0036】
すなわち、粗研削において、理論切込量TCに対する加工誤差MEをプラスに制限するものを示したがマイナス(研削過多)、換言すれば実切込量RCの最小値が理論切込量TCに近づくようしたものであってもよい。これにより、プラス方向に制限した場合と同様の効果を得ることができる。なお、この場合、設定する理論切込量は、粗研削時と仕上研削時とで変化させる必要がある。
【0037】
【発明の効果】
以上のように、請求項1の発明のカム研削方法は、理論切込量に対して実切込量を研削過多及び研削過少のいずれかに制限することにより、その後に行う仕上研削において、切込量を少なくすることができる。これにより、加工時間の短縮化が図られる。
【0038】
請求項2の発明のカム研削方法は、請求項1の発明のカム研削方法の効果に加え、平滑処理された補正形状データに基づいて粗研削における主軸の回転速度が決定される。これにより、追従誤差の範囲内での安定した研削加工をすることができる。
【0039】
請求項3の発明のカム研削方法は、請求項2の発明のカム研削方法の効果に加え、粗研削における誤差情報に基づいて、仕上研削の研削能率及び主軸の回転速度が決定される。これにより、加工ロスの少ない、かつ安定した加工精度の研削を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態のカム研削方法に利用される数値制御研削盤の構成を模式的に示す説明図である。
【図2】数値制御研削盤と接続した数値制御装置の機能的構成を示すブロック図である。
【図3】粗研削における砥石車によるカムの研削状態を示す模式図である。
【図4】仕上研削における砥石車による粗研削済カムの研削状態を示す模式図である。
【図5】カム研削方法の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 カム研削方法
2 数値制御研削盤
13 主軸
30 平滑化手段
31 粗研削速度決定手段
32 粗研削制御手段
33 誤差情報取得手段
34 研削能率算出手段
35 仕上研削制御手段
42 仕上研削速度決定手段
CE 研削能率
CW 粗研削済カム(被加工物)
EI 誤差情報
FC 仕上実切込量
G 砥石車
LD リフトデータ(補正形状データ)
ME 加工誤差
PD プロフィルデータ(加工形状データ)
TC 理論切込量
VR1,VR2 回転速度
W カム
θ 回転位相角度
Claims (3)
- 粗研削及び仕上研削を含む少なくとも二つの研削工程によって非真円形状を為すカムを研削加工するカム研削方法であって、
被加工物の装着された主軸に対して垂直方向に往復直線運動が可能に配された砥石車の運動及び前記主軸の回転運動を制御し、前記カムの加工形状を指示する加工形状データを平滑化処理する平滑化工程と、
平滑化された補正形状データに基づいて前記被加工物の粗研削を行う粗研削工程とを具備し、
前記粗研削工程は、
粗研削された粗研削済カムの理論切込量に対する実切込量の加工誤差が、研削過多または研削過少のいずれか一方に制限されていることを特徴とするカム研削方法。 - 平滑化された前記補正形状データと前記砥石車及び前記主軸に係る運動精度と研削抵抗とに基づいて、前記粗研削工程における前記主軸の回転速度を決定する粗研削速度決定工程をさらに具備することを特徴とする請求項1に記載のカム研削方法。
- 前記粗研削工程は、
前記理論切込量に対する前記加工誤差を前記被加工物の回転位相角度と関連付けた誤差情報として取得する誤差情報取得工程をさらに有し、
仕上研削工程は、
前記誤差情報及び前記加工誤差に基づく仕上実切込量により仕上研削における研削能率を算出する研削能率算出工程と、
前記加工形状データ、前記研削能率、及び前記砥石車及び前記主軸に係る運動精度に基づいて、前記仕上研削工程における前記主軸の回転速度を決定する仕上研削速度決定工程と
をさらに具備することを特徴とする請求項2に記載のカム研削方法。
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