JP2005015924A - 新規なシート状物の製造方法 - Google Patents

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Saisei Miyao
再青 宮尾
Susumu Tawara
将 田原
Kosuke Akiyama
宏介 秋山
Hiroyuki Noda
弘之 野田
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Abstract

【課題】セルロース繊維を主成分とするシート状物の製造において、密度の増加を抑えて寸法安定性を向上させ、かつ紙力の増強をもたらす新規なシート状物の製造方法を提供する。
【解決手段】セルロース繊維を主成分とし、これに軟化点が室温以上である有機高分子物質を添加して得られた紙料から湿紙を製造し、これを過熱水蒸気もしくは主として過熱水蒸気からなる気体を使用して乾燥する。有機高分子物質はポリビニルアルコール系バインダー繊維や芯鞘の二重構造を有する有機合成繊維系バインダー繊維が好ましい。有機高分子物質のセルロース繊維に対する添加率は0.5〜30質量%が好ましい。
【選択図】図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シート状物の製造方法に関する。更に詳しくは、セルロース繊維を主成分とし、これに軟化点が室温以上である有機高分子物質を添加して得られた紙料から湿紙を製造し、これを過熱水蒸気もしくは主として過熱水蒸気からなる気体を使用して乾燥することを特徴とする新規なシート状物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に紙に強度を与える要因として、例えば非特許文献1には
▲1▼セルロース繊維そのものの強さ
▲2▼セルロース繊維相互の摩擦力
▲3▼セルロース繊維間の化学結合(水素結合)力
の3点を挙げている。そしてこれら3つの要因の中で最も寄与が大きいものとして▲3▼の水素結合力を挙げ、紙力増強剤はこれを助長するものであるとしている。
【0003】
この紙力増強剤として、古くから澱粉やコンニャク等が実用化されてきた。特に糊化した澱粉は接着剤としても利用されており、紙料にこのような接着性を持つ物質を加えることで紙の強度が向上することから広く使用されてきた。現在ではポリアクリルアミドのような合成高分子が紙力増強剤の主力となっている。
【0004】
このように高分子物質を紙料に添加することで紙力増強剤としての効果が得られるのは、セルロース繊維間の水素結合が増加することによる紙の強度向上効果であると考えられる。しかしながら、水素結合が増加することはセルロース繊維間の結合面積の増加を招くことになり、ある種の紙質には負の効果を与えることがよく知られている。例えば非特許文献2には結合面積の増加によって紙の結合強度(引張強度)を増加させるが、それに伴って紙の緊度(密度)が増加し、結果として紙の寸法変化を増大させ、特に紙の印刷適性を損なう原因となることが記載されている。
【0005】
上記したような問題点を解決するため、即ち紙の密度の増加を抑え、寸法安定性を向上させ、かつ紙力増強効果をもたらす高分子物質として、熱水可溶性のポリビニルアルコール系バインダー繊維を使用する方法がよく知られている。
【0006】
このように熱水可溶性のポリビニルアルコール系バインダー繊維を使用する方法に効果があるのは以下のように考えられる。紙の乾燥方法として、非特許文献3における「乾燥理論」冒頭にあるように、抄紙機における乾燥方法で現在主流となっているのは乾燥シリンダーに高温の水蒸気を通して加熱し、この表面に湿紙を押しつけるものである。この乾燥シリンダーと湿紙を接触させて乾燥する際に、ポリビニルアルコール系バインダー繊維がセルロース繊維間、あるいはセルロース繊維自体に熱融着することによって、セルロース繊維間の結合面積の増大と共に、密度の増加に比較的無関係であると思われる結合点の強化を図ることができるからと考える。しかしながら、ポリビニルアルコール系バインダー繊維の軟化点は乾燥温度と湿紙の水分によって変化するために、通常の抄紙工程で使用されるような、湿紙水分の変化によって表面温度が変化する乾燥シリンダーによる乾燥方法ではその適用範囲が限定されてしまうという問題があった。
【0007】
また、非特許文献4には通常の抄紙工程で使用されるような乾燥シリンダーと湿紙を接触して乾燥する乾燥方法ではなく、湿紙に直接高温の水蒸気を吹き付けて乾燥させる紙の水蒸気乾燥の試みが1980年代の始めにカナダのMcGill大学から発表されている。
【0008】
また、非特許文献5には2枚のエンドレススチールベルトでシート状物質を挟み、ベルト面に解放した高圧函を上下に対向して設け、高圧水蒸気加熱及び高圧水冷却し、蒸発する水蒸気を直ちに冷却面に凝縮させてドレン化し、エンドレスファアブリックベルトで持ち去ることによって湿潤状態のシート状物質を、その伸縮を拘束しながら100℃以上の高温下で乾燥する方法が提案されている。しかし、この方法では貴重な高圧蒸気を必要とするが、密閉容器中における高圧蒸気加熱であることから容器内温度は蒸気の飽和温度で制約されるという問題があった。
【0009】
また特許文献1〜特許文献4には過熱水蒸気からなるガスによって、湿ったシート状物質内の水分を瞬間気化蒸発させることでシート状物質を乾燥させる方法が提案されている。
【0010】
特許文献1〜特許文献4は主として過熱水蒸気を使用したシート状物質の乾燥方法および装置に関する発明であり、蒸気の原単位を大幅に低下させ、出来上がったシート状物質の水浸伸度を低く、寸法安定性を高める効果を特徴としている。また、特許文献4では過熱水蒸気雰囲気下(水蒸気100%)や絶対湿度が高い加熱湿り空気雰囲気下ではリグニンやヘミセルロースの軟化点が低下し、繊維のフレキシビリティが増加すると共にセルロースの水酸基と木材に含まれる他の物質との共有結合(エーテル、エステル結合)によって湿紙強度が大幅に増加し、その結果乾燥引張強さ、湿潤引張強さ、水浸伸度、破裂強さ等の物理的特性を、従来の乾燥シリンダーに水蒸気を通して加熱し、この表面に湿紙を押しつける方式の乾燥方法により製造したシート状物質と比較して向上させる効果があるとしている。
【0011】
しかし、この方法は上記したように高温の過熱水蒸気によってリグニンやヘミセルロースの軟化点が低下することを利用しているので、リグニンやヘミセルロース成分の多いGW(Ground Wood)、RGP(Refiner Ground Pulp)、PGW(Pressurized Stone Ground Wood)、CGP(Chemical Ground Pulp)、SCP(Semi Chemical Pulp)、TMP(Thermo Mechanical Pulp)、CTMP(Chemical Thermo Mechanical Pulp)や古紙の再利用で重要なDIP(De−Inked Pulp)等で特に有効であるが、精製されたKP(Kraft Pulp)やSP(Sulfite Pulp)のようにリグニンやヘミセルロース成分を殆ど含まないパルプでは、過熱水蒸気による軟化点の低下によってリグニンやヘミセルロースがセルロース繊維間で接着剤的な役割をすることができず、上記したような物理的特性を向上させる効果が少ないという問題があった。
【0012】
特許文献5には、上記したカナダのMcGill大学で行われた、紙を過熱水蒸気乾燥処理した際の紙質に及ぼす効果について記載されている。ここではTMP等のようにパルプ中にリグニン成分を多く含んだパルプを過熱水蒸気乾燥することによって得られた紙シートの密度が、通常の乾燥シリンダーによる乾燥で得られた紙シートと比較して低いこと、また回収板紙原料を主とした紙料から得られた湿紙を過熱水蒸気乾燥することで引張強さと圧縮強度に優れたライナーボードが得られること、また、無機填料を含んだシートであっても、過熱水蒸気乾燥することで、通常の乾燥方法で得られた無機填料を含まないシートと同等の物性が得られることが記載されている。ここでも精製されたKP(Kraft Pulp)やSP(Sulfite Pulp)のようにリグニンやヘミセルロース成分を殆ど含まないパルプでは、過熱水蒸気による軟化点の低下によってリグニンやヘミセルロースがセルロース繊維間で接着剤的な役割をすることができず、上記したような物理的特性を向上させる効果が少ないという問題があった。
【0013】
【非特許文献1】
「高分子薬剤入門」三洋化成工業株式会社、1995年、23頁〜
【非特許文献2】
「製紙用紙パルプ製造におけるヘミセルロースの研究」、戸田 久昭、1961年、東京大学農学部博士論文
【非特許文献3】
「紙パルプ製造技術全書」、紙パルプ技術協会編、第6巻、紙の抄造編6.2章、乾燥理論
【非特許文献4】
「Paper Making Science and Technology」、1998年、フィンランド、全19分冊中の第7分冊
【非特許文献5】
Tappi Journal、83頁、May、2000
【特許文献1】
特許第2907265号公報
【特許文献2】
特許第2907266号公報
【特許文献3】
特許第3007542号公報
【特許文献4】
特開2003−41495号公報
【特許文献5】
アメリカ合衆国特許第6322667号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記したような問題を解決する新規なシート状物の製造方法を提供することを課題とする。具体的には、セルロース繊維を主成分とするシート状物の製造において、密度の増加を抑えて寸法安定性を向上させ、かつ紙力の増強をもたらす新規なシート状物の製造方法を提供することを課題とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、セルロース繊維を主成分とし、これに軟化点が室温以上である有機高分子物質を添加して得られた紙料から湿紙を製造し、これを過熱水蒸気もしくは主として過熱水蒸気からなる気体を使用して乾燥することにより前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の主眼とするところは、セルロース繊維を主成分とし、これに軟化点が室温以上である有機高分子物質を添加して得られた紙料から湿紙を製造し、これを過熱水蒸気もしくは主として過熱水蒸気からなる気体を使用して乾燥することを特徴とするシート状物の製造方法である。
【0017】
本発明ではシート状物の乾燥方法として、過熱水蒸気もしくは主として過熱水蒸気からなる気体を使用して乾燥することが特徴である。過熱水蒸気とは、飽和水蒸気を、圧力を上げずにさらに加熱して温度を高めた水蒸気のことをいう。過熱水蒸気は、温度が150℃以上になると放射熱エネルギーが通常の水蒸気(100℃)と比較して著しく多くなるので、短時間で物質を加熱することが可能となることが特徴である。飽和水蒸気では少しでも温度を下げると物質が湿ってしまうが、飽和水蒸気をさらに加熱した過熱水蒸気では、飽和水蒸気と比較して物質を加熱する能力に大きな差がある。水分を多量に含んだ湿紙にこの過熱水蒸気を吹き付けると湿紙中の水分が瞬間的に気化蒸発し、従来の乾燥シリンダーに湿紙を押しつけて乾燥させる方法と比較して3割程度嵩密度を下げることが可能となった。
【0018】
このように湿紙を過熱水蒸気乾燥すると従来の乾燥方法と比較して低密度になるのは、従来のように乾燥シリンダの表面に湿紙が押しつけられないことと、湿紙中の水分が瞬間気化することによって多孔質化するためと考える。
【0019】
このように湿紙を過熱水蒸気乾燥する場合と、乾燥シリンダに湿紙を接触させて乾燥させる通常の紙の乾燥方法との最も顕著な相違は、その乾燥曲線を見れば明らかである。図1は過熱水蒸気を使用した湿紙の乾燥温度を示す図である。湿紙の表面温度は過熱水蒸気乾燥装置内で過熱水蒸気と接触することで急速に100℃近辺まで上昇する。この理由は、過熱水蒸気乾燥装置内にある湿紙に過熱水蒸気が接触して湿紙が乾燥されると過熱水蒸気の一部が凝縮して液体となり、この際に発生する凝縮潜熱によって湿紙の表面温度が急速に上昇して100℃近辺にまで達するためと考える。その後、湿紙は安定乾燥段階に入って一定時間温度を100℃近辺に保ち、湿紙中の自由水が放出されると紙の表面温度は次第に高くなり、目標温度に達した後乾燥装置を出る。
【0020】
湿紙を過熱水蒸気乾燥することで得られる紙質は、上記したようにセルロースパルプの種類によって異なる。これはTMPやCTMPのようなリグニンやヘミセルロースを多く含むパルプにおいて、過熱水蒸気によってこれらパルプ中のリグニンやヘミセルロースの軟化点が低下して柔軟化し、セルロース繊維間の接触を増大化してシート物性の強化に繋がるためと考える。しかしKPやSPといった高級印刷用紙等に多用される精製されたパルプのようにリグニンやヘミセルロースを殆ど含まないパルプでは、これらの代用となるものを添加しないと紙質の強化には至らない。
【0021】
このため、本発明ではセルロースを主成分とし軟化点が室温以上である有機高分子物質を添加して混合した紙料から湿紙を製造することが特徴である。過熱水蒸気乾燥による湿紙の乾燥の特徴は、上記したように湿紙の表面温度が100℃近辺に達する速度が極めて迅速であり、しかもその段階で水蒸気を十分に含んでいる雰囲気に紙が存在することである。従って湿紙の形成時に軟化点が室温以上である有機高分子物質が内在し、その有機高分子物質が水分を含んだ状態での軟化点が100℃以下であると、湿紙に過熱水蒸気が接触した際に湿紙中に含まれる有機高分子物質が湿紙中のセルロース繊維間、あるいはセルロース繊維に部分的に溶融固着して、紙シートにおけるセルロース繊維の結合点の補強を行い、結果的に紙シートの物性を向上すると考える。
【0022】
有機高分子物質としては、例えばポリアクリルアミド、澱粉、ポリビニルアルコール、酢酸ビニルやエチレン酢ビ、SBR、アクリル等の合成樹脂エマルション等が挙げられる。
【0023】
また、有機高分子物質は非晶質で親水性である方が、その内部に水を受け入れやすくなり、水素結合によって膨潤して軟化点が低下し易くなるので好ましい。
【0024】
有機高分子物質の軟化点は室温以上であることが必要である。室温以下であると過熱水蒸気による乾燥が始まる前にセルロース繊維と有機高分子物質が固着してしまい、過熱水蒸気乾燥の特徴である低密度化が損なわれてしまう。また軟化点の上限は特に無いが、過熱水蒸気気体の乾燥温度の上限である300℃以下が好ましい。尚、ここでいう室温とは20℃の温度を意味する。
【0025】
本願でいうところの軟化点とは、木材学会誌 14頁、No.2(1968)に高村憲男氏が紹介している方法で測定した際の温度をいう。即ち、サンプルを五酸化リン(P)の入った真空デシケーター中で乾燥後、重クロム酸カリウム(KCr)水溶液中で、温度が20℃、相対湿度98%に調湿して平衡させ、このサンプルの5mgをとって速やかに直径が3mm、長さが150mmのガラス管に移して水銀でシールし、このガラス管に封入されたサンプルを油浴にて毎分1℃の加熱速度で加熱した時に、ガラス管内のサンプルを、拡大鏡を通して観察し、その収縮を色の変化から判定して求めた。
【0026】
有機高分子物質の水分を含んだ状態での軟化点の上限は100℃以下であることが好ましい。上記したように、過熱水蒸気乾燥装置内にある湿紙に過熱水蒸気が接触して湿紙が乾燥されると過熱水蒸気の一部が凝縮して液体となり、この際に発生する凝縮潜熱によって湿紙の表面温度が急速に上昇して100℃近辺にまで達するため急速な湿紙の乾燥が行われるのであるが、湿紙が水分を含んだ状態で有機高分子物質の軟化点が100℃以下であるとセルロース繊維間あるいはセルロース繊維に部分的に溶融固着して、紙シートの結合点の補強につながり、紙シートの物性を向上させるからである。また、軟化点は上記したように室温以上であることが必要であるが、室温以上であってもその近辺の比較的低温の場合には、その表面がべたつきやすくなるので、より好ましくは50〜100℃、さらに好ましくは80〜100℃である。
【0027】
また、有機高分子物質はポリビニルアルコール系バインダー繊維であることが好ましい。通常の乾燥シリンダーによる乾燥では、水が存在している場合の軟化点が低くても、湿紙が乾燥される程度によってその軟化点が高温側に移行してしまい、結果としてバインダー繊維の熱変形が起こらず強度の増加に繋がらなくなる。これに対して過熱水蒸気乾燥を施す場合には、湿紙の表面温度が100℃以下の際にはバインダー繊維の周辺には過剰の水が存在しているために、軟化点の高温側への移行が起こらず、バインダー繊維のセルロース繊維への熱融着が発生し、シートの強度向上に繋がるためと考える。
【0028】
また、有機高分子物質は芯鞘の二重構造をしているバインダー繊維が好ましい。ここでいう芯鞘の二重構造をしているバインダー繊維とは、外部の鞘部分が比較的低融点で、内部の芯部分が比較的高融点で構成されているもので、熱接着性付与を目的とした複合繊維である。例えば鞘部分を比較的低融点であるポリエチレンや変性ポリエステルとし、芯部分を比較的高融点のポリエステルとしたようなバインダー繊維である。このようなバインダー繊維を使用して過熱水蒸気乾燥すると、鞘部分の比較的低融点である有機高分子物質がセルロース繊維同士またはセルロース繊維間に熱融着し、芯部分の比較的高融点の有機高分子物質は繊維として残るために出来上がったシート状物の低密度化が促進されるからである。
【0029】
過熱水蒸気乾燥の場合、乾燥終期の紙シートの表面温度は150〜300℃となり、通常の乾燥シリンダーによる乾燥温度が通常150℃以下であることと比較して非常に高くなっている。このように紙シートの表面温度が高いことも本発明の特徴の1つとなっている。このため、上記の芯鞘の二重構造をしているバインダー繊維の適用は、本発明の目的に適したものである。
【0030】
本発明に於ける有機高分子物質のセルロース繊維に対する添加率は0.5〜30質量%が好ましい。0.5質量%以下であると本発明の課題である密度の増加を抑えて寸法安定性を向上させ、かつ紙力の増強をもたらすことができなくなる。また30質量%以上であるとロータリードライヤー表面に有機高分子物質が付着しやすくなり、その表面を汚して作業性に問題を生じるので好ましくない。
【0031】
本発明で使用するセルロース繊維としては、一般に製紙用繊維として使用されるものが使用できる。例えば針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)等のケミカルパルプ、TMP、CTMP等のメカニカルパルプ等の木材パルプの単独あるいは混合物を主体とする。または、これらに麻、木綿、竹、藁、ケナフ、楮、三椏等の非木材パルプやカチオンパルプ、マーセル化パルプ等の変性パルプ、ミクロフィブリル化パルプ、また、レーヨン、ビニロン、アクリル、ナイロン、ポリエステル等の合成繊維や半合成繊維あるいは硝子繊維、ロックウール等の無機繊維を単独であるいは混合して併用する。紙質強度の点を考慮すれば、リグニンやヘミセルロース成分を多く含むメカニカルパルプが好ましいが、本発明ではその代用となる軟化点が室温以上である有機高分子物質を添加するのでこれに拘る必要はなく、変色や経時劣化の心配のない化学パルプを有効に使用することが可能である。
【0032】
本発明では、上記したようなセルロース繊維を主体とした製紙用繊維を叩解し、これに軟化点が室温以上である有機高分子物質、あるいはポリビニルアルコール系バインダー繊維、あるいは芯鞘の二重構造となっているバインダー繊維を単独で、あるいは適宜混合して添加する。添加率は上記したように0.5〜30質量%であることが好ましい。これに通常の製紙用として使用される各種の填料、例えば各種のカオリン、タルク等のクレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、合成填料等を必要に応じて適宜添加する。また、SBR、MBR等の合成ゴムラテックスエマルション、アクリレートラテックスエマルション、エチレン酢ビエマルション、およびこれらの共重合エマルション、カゼイン、澱粉、ポリビニルアルコール等のバインダーを必要に応じて適宜使用する。さらに必要に応じて一般的に使用される製紙用薬品、例えば染料、防黴剤、スライムコントロール剤、歩留まり向上剤等を必要に応じて添加する。定着剤としてはポリアクリルアミド類等の高分子定着剤、硫酸アルミニウム等のアルミニウム塩類、ポリエチレンイミン等の公知の製紙用定着剤が適宜1種類以上使用できる。
【0033】
上記した製紙用スラリーを用い、長網抄紙機、円網抄紙機、単網抄紙機あるいはこれらのコンビネーション抄紙機等の、通常の抄紙機を使用して湿紙を抄紙できる。
【0034】
湿紙は耐熱性のキャンバスに挟まれて過熱水蒸気乾燥用の乾燥ゾーンに入り、過熱水蒸気を吹き付けることで乾燥させた。図2は過熱水蒸気乾燥による乾燥フードの装置を示す図である。湿紙(7)はキャンバス(5)の上に乗せられサンプル投入口(2)より過熱水蒸気乾燥フード(1)に入り、ロータリードライヤー(4)上において過熱水蒸気噴出ノズル(6)より過熱水蒸気を当てられ、乾燥後キャンバス(5)からサンプル取り出し窓(3)に移動して取り出した。
【0035】
本発明に用いられる過熱水蒸気の温度は150〜300℃が好ましい。150℃以下であると過熱水蒸気乾燥の特徴である高い熱伝達能力が損なわれて本発明の課題とする、密度の増加を抑えて寸法安定性を向上させ、かつ紙力の増強をもたらす効果が少なくなるので好ましくない。また300℃以上になるとセルロース繊維を含む有機物質の変質が起こり、変色や紙質の低下等が起こるので好ましくない。
【0036】
【実施例】
以下実施例により本発明をさらに詳しく説明する。なお、以下の質量部とは、固形分換算を意味する。
【0037】
(湿紙の製造) 針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)を40質量部、広葉樹晒しクラフトパルプ(LBKP)を60質量部、これに下記の実施例及び比較例で示す有機高分子物質を添加した混合物を叩解し、400mlC.S.F.に調整したパルプスラリーを調製した。これに乾燥紙力増強剤(商品名「ポリアクロンST−13」星光化学工業(株)製造)を0.4質量部、液体硫酸アルミニウムを3.5質量部配合して抄紙用原料を調整した。これを25cm×25cmの角型手漉き装置を使用して、乾燥後の坪量が100g/mとなるように抄紙して湿紙を製造した。
【0038】
(実施例1) 有機高分子物質としてアクリレートラテックスエマルション(商品名「Nipol LX857X2」日本ゼオン(株)製造)を5質量部使用して湿紙を得、図2に示す過熱水蒸気乾燥フードに湿紙を入れ、150℃の過熱水蒸気を使用して1分間乾燥した。
【0039】
(実施例2) 有機高分子物質としてポリビニルアルコール系バインダー繊維(商品名「VPB052」クラレ(株)製造)を3質量部使用して湿紙を得、図2に示す過熱水蒸気乾燥フードに湿紙を入れ、150℃の過熱水蒸気を使用して1分間乾燥した。
【0040】
(実施例3) 有機高分子物質として芯鞘型のバインダー繊維(商品名「INTACKS−A」チッソ(株)製造)を3質量部使用して湿紙を得、図2に示す過熱水蒸気乾燥フードに湿紙を入れ、150℃の過熱水蒸気を使用して1分間乾燥した。
【0041】
(実施例4) 有機高分子物質としてポリビニルアルコール系バインダー繊維(商品名「VPB052」クラレ(株)製造)を0.5質量部使用して湿紙を得、図2に示す過熱水蒸気乾燥フードに湿紙を入れ、150℃の過熱水蒸気を使用して1分間乾燥した。
【0042】
(実施例5) 有機高分子物質として芯鞘型のバインダー繊維(商品名「INTACKS−A」チッソ(株)製造)を30質量部使用して湿紙を得、図2に示す過熱水蒸気乾燥フードに湿紙を入れ、150℃の過熱水蒸気を使用して1分間乾燥した。
【0043】
(比較例1) 有機高分子物質を使用せずに湿紙を得、図2に示す過熱水蒸気乾燥フードに湿紙を入れ、150℃の過熱水蒸気を使用して1分間乾燥した。
【0044】
(比較例2) 有機高分子物質を使用せずに湿紙を得、図3に示す乾燥シリンダーを使用し、乾燥シリンダーの表面温度を115℃にした状態で2分間乾燥した。
【0045】
(比較例3) 有機高分子物質としてポリビニルアルコール系バインダー繊維(商品名「VPB052」クラレ(株)製造)を0.2質量部使用して湿紙を得、図2に示す過熱水蒸気乾燥フードに湿紙を入れ、150℃の過熱水蒸気を使用して1分間乾燥した。
【0046】
(比較例4) 有機高分子物質としてポリビニルアルコール系バインダー繊維(商品名「VPB052」クラレ(株)製造)を35質量部使用して湿紙を得、図2に示す過熱水蒸気乾燥フードに湿紙を入れ、150℃の過熱水蒸気を使用して1分間乾燥した。
【0047】
(比較例5) 有機高分子物質としてポリビニルアルコール系バインダー繊維(商品名「VPB052」クラレ(株)製造)を3質量部使用して湿紙を得、図3に示す乾燥シリンダーを使用し、乾燥シリンダーの表面温度を115℃にした状態で2分間乾燥した。
【0048】
(比較例6) 有機高分子物質として芯鞘型のバインダー繊維(商品名「INTACKS−A」チッソ(株)製造)を3質量部使用して湿紙を得、図3に示す乾燥シリンダーを使用し、乾燥シリンダーの表面温度を115℃にした状態で2分間乾燥した。
【0049】
(比較例7) 有機高分子物質として、水分を含んだ状態での鞘部の軟化点が100℃以上である芯鞘型のバインダー繊維(商品名「PN730」クラレ(株)製造)を3質量部使用して湿紙を得、図2に示す過熱水蒸気乾燥フードに湿紙を入れ、150℃の過熱水蒸気を使用して1分間乾燥した。
【0050】
実施例1〜5および比較例1〜7で得たサンプルについてJIS P−8111(1998)の調湿を行った後、以下のような評価を行った。
(密度) JIS P−8118(1998)に従って密度を測定した。
(比引張強さ) JIS P−8113(1998)に従って引張強さを測定し、これをJIS P−8124(1998)に従って測定した坪量で除して比引張強さを求めた。
(寸法安定性) J.TAPPI 紙パルプ試験方法のNo.28−78、湿度の変化による紙及び板紙の伸縮率試験方法に準じて、相対湿度を20%から90%に変化させた際の変化率を求めて評価した。○以上を合格とした。
○:収縮率が0.5%未満
△:収縮率が0.5%以上0.6%未満
×:収縮率が0.6%以上
【0051】
実施例1〜実施例5、および比較例1〜比較例7の評価結果を表1に示した。
【0052】
表1 評価結果
Figure 2005015924
【0053】
表1より以下のことがわかった。
▲1▼ 過熱水蒸気乾燥を行った実施例のサンプルは、従来の乾燥方法を行った比較例と比較して密度がはっきりと低下していることが確認された。
▲2▼ 比引張強さを測定したところ、過熱水蒸気乾燥を行った実施例のサンプルは、従来の乾燥方法を行った比較例と比較してはっきりと強くなっていることが確認された。
▲3▼ 過熱水蒸気乾燥を行った実施例のサンプルは、比較例のサンプルと比較して寸法安定性が向上していることが確認された。
▲4▼ 比較例4のように有機高分子物質を多量に使用すると、ロータリーシリンダーの汚れが目立ち、作業性に支障が発生した。
▲5▼ 比較例7のように水分を含んだ状態での軟化点が100℃以上である有機高分子物質を使用すると、セルロース繊維との熱融着が起こりにくくなり、引張強さや寸法安定性が劣ることが確認された。
【0054】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によるシート状物の製造方法によって製造された紙シートは、従来の方法により製造された紙シートと比較して密度が低下して寸法安定性に優れ、引張強さも向上するという優れた効果を有する。
【0055】
【図面の簡単な説明】
【図1】過熱水蒸気を使用した湿紙の乾燥温度を示す図である。
【図2】過熱水蒸気乾燥による乾燥フードの概念図である。
【図3】乾燥シリンダーによる乾燥装置の概念図である。
【符号の説明】
1 :過熱水蒸気乾燥装置の乾燥フード
2 :サンプル投入口
3 :サンプル取り出し窓
4 :ロータリードライヤー
5 :キャンバス
6 :過熱水蒸気噴出ノズル
7 :湿紙
8 :乾燥シリンダー

Claims (5)

  1. セルロース繊維を主成分とし、これに軟化点が室温以上である有機高分子物質を添加して得られた紙料から湿紙を製造し、これを過熱水蒸気もしくは主として過熱水蒸気からなる気体を使用して乾燥することを特徴とするシート状物の製造方法。
  2. 上記有機高分子物質がポリビニルアルコール系バインダー繊維であることを特徴とする請求項1に記載のシート状物の製造方法。
  3. 上記有機高分子物質が芯鞘の二重構造を有する有機合成繊維系バインダー繊維であることを特徴とする請求項1に記載のシート状物の製造方法。
  4. 上記有機高分子物質のセルロース繊維に対する添加率が、0.5〜30質量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のシート状物の製造方法。
  5. 上記有機高分子物質の水分を含んだ状態での軟化点が100℃以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のシート状物の製造方法。
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