JP2005005525A - 基板収納容器 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】半導体ウェーハWを整列収納するフロントオープンボックスタイプの容器本体1と、容器本体1に整列収納される半導体ウェーハWの両側部周縁を支持する一対の支持ユニットと、容器本体1の内部背面に装着されて半導体ウェーハWの後端部周縁を支持するリヤリテーナ20とを備える。そして、リヤリテーナ20を、ベース板21に半導体ウェーハWの収納方向と直交する上下方向に並ぶ複数の溝27を設けて形成し、各溝27を断面倒V字形に形成してその傾斜面26付近を肉厚に、半導体ウェーハWを位置決め規制する谷部25付近を弾性変形可能な肉薄にそれぞれ形成する。
【選択図】 図3
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリコンウェーハ,ガラス,マスクガラス等からなる基板の収納、輸送、保管、加工等に使用される基板収納容器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体業界では生産量をより一層向上させるため、300mmという大口径の半導体ウェーハやガラスウェーハ等からなる基板が使用され始めている。このような大きな基板は、縦横何れの方向に支持しても、自重で撓んで破損するおそれがあるので、所定の基板収納容器に収納した状態で安全に取り扱うことが求められる。
【0003】
この種の基板収納容器は、図示しないが、複数枚の半導体ウェーハを整列収納するフロントオープンボックスタイプの容器本体と、この容器本体の開口した正面をシールガスケットを介して開閉する蓋体とから構成されている(特許文献1、特許文献2参照)。容器本体は、その内部背面に各半導体ウェーハの後端部周縁を支持するリヤリテーナが装着され、内部両側には半導体ウェーハの側部周縁を支持する一対の支持ユニットがそれぞれ配設されている。
【0004】
リヤリテーナは、容器本体の内部背面に装着されるベース板を備え、このベース板には、上下方向に並ぶ複数の溝が形成され、各溝が断面倒U字形あるいは断面倒V字形に形成されており、半導体ウェーハのローディング時に半導体ウェーハの支持位置を規制するよう機能する。このリヤリテーナは、接触する半導体ウェーハを保護する関係上、支持ユニットよりも柔軟な材料が使用されるものの、変形量の少ない剛性の合成樹脂材料で成形され、各溝の中心高さが支持ユニットの半導体ウェーハ支持位置よりも高い位置に設定されており、蓋体の閉鎖時に半導体ウェーハが支持ユニットから僅かに持ち上げられる際、半導体ウェーハと支持ユニットとの接触摩擦を減少させ、磨耗粉による半導体ウェーハの汚染を抑制防止するよう機能する。
【0005】
蓋体は、容器本体の開口した正面に対応する略矩形に形成され、容器本体の内部背面に対向する内面に、各半導体ウェーハの前端部周縁を個別に支持するフロントリテーナが装着されている。このフロントリテーナは、蓋体の内面に装着されるベース板を備え、このベース板には、上下方向に並ぶ複数の溝が形成され、各溝が断面倒U字形あるいは断面倒V字形に形成されている。フロントリテーナは、熱可塑性エラストマー等の柔軟で弾性の合成樹脂材料で成形され、各溝の中心高さが支持ユニットの半導体ウェーハ支持位置よりも高い位置に設定されており、蓋体の閉鎖時に半導体ウェーハが支持ユニットから僅かに持ち上げられる際、半導体ウェーハと支持ユニットとの接触摩擦を減少させ、磨耗粉による半導体ウェーハの汚染を抑制防止する。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−315721号公報
【0007】
【特許文献2】
特開2002−110776号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従来の基板収納容器は、以上のように構成され、使用時に容器本体と蓋体とが強くクランプされる関係上、クランプの際、フロントリテーナ側からリヤリテーナ側に半導体ウェーハが強く押し込まれることとなり、リヤリテーナと半導体ウェーハとが擦れてパーティクルが発生し、この結果、半導体ウェーハの汚染を招くという問題がある。この問題は、特に蓋体が自動開閉機で開閉され、容器本体の開口した正面に蓋体が必要以上に押圧嵌合される場合には、無視し難い深刻なものとなる。
【0009】
係る問題を解消する手段としては、リヤリテーナをフロントリテーナ同様、弾力性を有する材料により成形する方法が提案されている。しかしながら、この方法の場合には、リヤリテーナとフロントリテーナとが弾性反発力で半導体ウェーハを相互に押し合うので、半導体ウェーハの位置がばらつくこととなる。さらに、基板収納容器を連続使用すると、リヤリテーナにクリープ変形が発生し、半導体ウェーハのシット位置(半導体ウェーハを水平に収納した基板収納容器の蓋体を開いた際、支持ユニットに半導体ウェーハが支持される水平方向の位置をいう)が変化してローディング、アンローディングに支障を来たすおそれが少なくない。
【0010】
本発明は、上記に鑑みなされたもので、リテーナに基板が擦れて汚れたり、基板の位置がばらつくのを抑制防止し、しかも、例え連続使用したとしても、リテーナにクリープ変形が発生したり、基板の位置が変化して出し入れ作業に支障を来たすのを防ぐことのできる基板収納容器を提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明においては、上記課題を達成するため、基板収納用の容器本体と、基板の両側部に接触する一対の支持ユニットと、基板に接触するリテーナとを含んでなるものであって、
リテーナを、少なくとも基板の収納方向と略直交する方向に並ぶ複数の溝を設けることにより形成し、各溝を断面略V字形に形成してその少なくとも傾斜面付近を肉厚に、谷部付近を弾性変形可能な肉薄にそれぞれ形成したことを特徴としている。
【0012】
なお、容器本体をフロントオープンボックスとしてその正面の開口には着脱自在の蓋体を備え、容器本体の内部背面、容器本体の内側部、及び蓋体の少なくともいずれか一にリテーナを設けることができる。
また、リテーナの少なくとも谷部裏面に、基板に作用する衝撃を緩和する緩衝体を備えることができる。
さらに、リテーナの溝を膜により被覆することもできる。
さらにまた、容器本体を第一の熱可塑性樹脂により形成し、リテーナを第一の熱可塑性樹脂とは異なる第二の熱可塑性樹脂により形成し、これら容器本体とリテーナとを第三の熱可塑性樹脂からなる中間層により一体化することができる。
【0013】
ここで特許請求の範囲における基板には、少なくとも単数複数(例えば、13枚、25枚、あるいは26枚等)のシリコンウェーハ等の半導体ウェーハ、液晶セル、石英ガラス、マスクガラス、マスク基板等の精密基板が含まれる。基板が半導体ウェーハの場合には、口径300mmのシリコンウェーハが含まれる。容器本体は、フロントオープンボックスタイプが主ではあるが、上面の開口した有底筒形のタイプ等でも良い。この容器本体や蓋体には、必要に応じて透明処理が施されたり、帯電処理等が施される。蓋体には、容器本体の開口内周部に設けられた複数の係止穴に出没可能な係止爪をそれぞれ嵌め入れるラッチ機構を内蔵しても良いし、そうでなくても良い。
【0014】
支持ユニットは、容器本体の内側部に一体形成されたり、固定されたり、あるいは着脱自在に取り付けられても良い。リテーナには、単数複数のフロントリテーナとリヤリテーナのいずれもが含まれる。このリテーナは、所定のピッチで並べ設けられる保持リブと、隣接する保持リブと保持リブとの間に形成されて基板を規制する谷部と、隣接する保持リブと保持リブの傾斜面間に区画される断面略V字形の溝とから構成することができる。
【0015】
また、リテーナは、ベース板と、このベース板に所定のピッチで並べ設けられる保持リブと、隣接する保持リブと保持リブとの間に形成されて基板を規制する谷部と、隣接する保持リブと保持リブの傾斜面間に区画される断面略V字形の溝とから構成することもできる。溝の断面略V字形には、断面V字形やこれに類似の形状が含まれる。また、緩衝体は、最低限リテーナの谷部裏面に形成されれば良く、ベース板の裏面に設けられるものでも良い。さらに、基板収納容器は、半導体製造工程のキャリア、工程間搬送キャリア(FOUP)、あるいは出荷用のフロントオープニングシッピングボックス(FOSB)等として利用することができる。
【0016】
本発明によれば、容器本体の開口を蓋体が閉じ、基板がリテーナ方向に押されると、基板は、リテーナの保持リブから溝の傾斜面をスライドして弾性変形可能な谷部に接触する。こうして基板は、支持ユニットから離れ、リテーナの谷部に接触することとなる。これに対し、容器本体から蓋体が取り外されると、基板の端部は、リテーナの谷部から溝の傾斜面をスライドし、剛性を有する保持リブに接触する。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明すると、本実施形態における基板収納容器は、図1ないし図4に示すように、300mmの大口径の半導体ウェーハWを複数枚収納する容器本体1と、この容器本体1に整列収納される各半導体ウェーハWを略水平に支持する一対の支持ユニット10と、容器本体1に整列収納される各半導体ウェーハWの後端部周縁を支持するリヤリテーナ20と、容器本体1の開口した正面を着脱自在に開閉する蓋体30とを備えるようにしている。
【0018】
容器本体1は、図1や図2に示すように、軽量性や成形性等に優れるポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリエーテルイミド等の合成樹脂材料を使用して複数枚の半導体ウェーハWを整列収納する透視可能な透明のフロントオープンボックスタイプに成形され、変形しないよう十分な強度、剛性、寸法安定性が確保されており、AGV(Auto Guided Vehiclc)等の自動搬送装置の正常な動作を保障するよう機能する。この容器本体1の底面の前部両側と後部中央とには、断面逆V字形の位置決め溝付きの位置決め具(図示せず)がそれぞれ配設され、この複数の位置決め具が図示しない加工装置の位置決めピンと嵌合して容器本体1、換言すれば、基板収納容器を位置決めするよう機能する。
【0019】
複数の位置決め具には、例えば平面略Y字形を呈した別体のボトムプレート(図示せず)が選択的かつ着脱自在に嵌合支持される。各位置決め具は、耐磨耗性に優れるポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリブチルテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド等を用いて成形され、容器本体1の底面に別体として、あるいは一体的に形成される。この位置決め具により基板収納容器が位置決めされると、容器本体1から加工装置に半導体ウェーハWがローディングされたり、アンローディングされることとなる。
【0020】
なお、ここでいう加工装置とは、位置決めされた基板収納容器の容器本体1から半導体ウェーハWをローディングして別の工程内容器に移し替える装置、あるいは容器本体1から蓋体30を自動的に取り外したり、蓋体30の取り外された容器本体1を搭載してこの容器本体1から半導体ウェーハWをローディングして酸化、フォトレジスト塗布、露光、エッチング、洗浄、薄膜形成等の各種処理や加工を施す加工処理装置に半導体ウェーハWをローディングしたり、アンローディングする装置をいう。
【0021】
容器本体1の天井の中央部には、図1に示すロボティックフランジ2が螺着され、このロボティックフランジ2が図示しない天井搬送機に把持されることにより、容器本体1、換言すれば、基板収納容器が搬送される。また、容器本体1の開口した正面の周縁部は徐々に外方向に折曲膨出形成されてリム部3を形成し、このリム部3の内部段差面がシール面として利用される。容器本体1の背面中央には、半導体ウェーハ視認用の縦長のウインドが選択的に形成され、容器本体1の内部背面には図4に示すように、正面方向に突出する複数の係合突部4が上下方向に並べて形成される。
【0022】
容器本体1の左右両側壁には、リム部3の後方に位置する被係止部5がそれぞれ膨出形成されるとともに、マニュアル運搬用のサイドハンドル6がそれぞれ着脱自在に装着される。各サイドハンドル6は、容器本体1の底面に略平行な第一グリップ7と、容器本体1の底面に略垂直な第二グリップ8とを備えた略L字形に形成される。
【0023】
各支持ユニット10は、図1や図2に示すように、容器本体1の内側面に一体形成される板体11と、この板体11の表面上下方向に所定のピッチで並設されて半導体ウェーハWの側部周縁を支持する複数の支持リブ12と、この複数の支持リブ12間に断面略倒V字等に形成される溝13とから形成される。この支持ユニット10は、容器本体1の成形時に金型の所定箇所にインサートされ、容器本体1と共に一体形成される。支持ユニット10の各支持リブ12は、半導体ウェーハWを略水平に支持する上面部と、この上面部の裏面に相当する下面部と、これら上面部と下面部とを連結する連結部とから形成される。支持ユニット10の上面部は、半導体ウェーハWがローディング・アンローディングされる容器本体1の正面側から背面側に亘る領域に細長く形成される。
【0024】
リヤリテーナ20は、図2ないし図4に示すように、容器本体1の内部背面に着脱自在に装着されるベース板21を備え、このベース板21に、半導体ウェーハWの収納方向(水平方向)と直交する上下方向に所定のピッチで並ぶ複数の溝27が形成され、半導体ウェーハWのローディング時に半導体ウェーハWの支持位置を規制するよう機能する。このリヤリテーナ20は、機械的な強度や剛性が必要な容器本体1とは要求される機能が異なるので、クリープによる歪みの少ない弾力性の材料を使用して成形される。具体的には、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン等の熱可塑性樹脂、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマーを用いて成形される。
【0025】
リヤリテーナ20のベース板21は、一対の山22を左右に並べ備えた断面略W字形に形成され、その相対的に凹んだ両側部には上下方向に並ぶ複数の係合孔23が穿孔されており、各係合孔23に容器本体1の係合突部4が着脱自在に嵌入する。ベース板21の相対的に突出した一対の山22の平坦な表面には、上下方向に所定のピッチで並ぶ断面三角形の保持リブ24がそれぞれ形成され、上下に隣接する保持リブ24の下端間に、接触する半導体ウェーハWの後端部周縁を位置決め規制する谷部25が形成されるとともに、上下に隣接する保持リブ24の傾斜面26間に、断面倒V字形の溝27が形成される。
【0026】
各保持リブ24は、その傾斜面26を含めて弾性変形不能な肉厚に形成され、半導体ウェーハWの後端部周縁を支持する。これに対し、各谷部25付近は、可撓性を有する肉薄に形成され、弾性変形可能な弾性変形部として機能する。各溝27の中心高さは、支持ユニット10の半導体ウェーハ支持位置よりも高い位置に設定され、蓋体30の閉鎖時に半導体ウェーハWが支持ユニット10から僅かに持ち上げられる際、半導体ウェーハWと支持ユニット10との接触摩擦を減少させ、磨耗粉による半導体ウェーハWの汚染を抑制防止する。
【0027】
蓋体30は、図1に示すように、容器本体1と同様の材料を使用して容器本体1の開口した正面に対応する略矩形に形成され、容器本体1の内部背面に対向する内面(裏面)に、各半導体ウェーハWの前端部周縁を個別に支持するフロントリテーナ33が装着されており、容器本体1のリム部3内に嵌合する。この蓋体30は、合成樹脂からなる表裏一対の板体等が組み合わされることにより形成され、周縁部に、エンドレスで枠形のシールガスケット31が突起や溝等を介し着脱自在に嵌合されており、このシールガスケット31がリム部3のシール面に変形密嵌してシール機能を発揮する。
【0028】
シールガスケット31は、ポリオレフィン系、ポリエステル系の熱可塑性エラストマー、フッ素ゴム、シリコーンゴム等を用いて成形されるが、半導体ウェーハWを汚染させる有機成分の発生が少なく、JISのK6301Aの測定方法による硬度が80°以下の成形材料で成形されるのが好ましい。また、蓋体30の両側部には、U字の切り欠きを備えた係止片32が前後方向に回転可能に軸支され、各係止片32の切り欠きが容器本体1の被係止部5に嵌合係止することにより、容器本体1のリム部3内に嵌合した蓋体30が強固に固定閉鎖される。
【0029】
フロントリテーナ33は、図1に示す蓋体30の内面に装着されるベース板21を備え、このベース板21には、半導体ウェーハWの収納方向と直交する上下方向に並ぶ複数の溝が形成され、各溝が断面倒V字形に形成される。このフロントリテーナ33は、ポリオレフィン系やポリエステル系の熱可塑性エラストマー等の柔軟で弾性の合成樹脂材料で成形され、各溝の中心高さが支持ユニット10の半導体ウェーハ支持位置よりも高い位置に設定されており、蓋体30の閉鎖時に半導体ウェーハWが支持ユニット10から僅かに持ち上げられる際、半導体ウェーハWと支持ユニット10との接触摩擦を減少させ、磨耗粉による半導体ウェーハWの汚染を抑制防止する。
【0030】
上記構成において、左右一対の支持ユニット10に半導体ウェーハWが支持リブ12の上面部を介し水平に支持され、容器本体1の開口した正面に蓋体30が嵌合されると、半導体ウェーハWが正面側からリヤリテーナ20側に強く押し込まれる。すると、フロントリテーナ33の溝がその傾斜面を利用して半導体ウェーハWの前端部周縁を溝の非中心部から中心部に導く。これに伴い、半導体ウェーハWの後端部周縁は、リヤリテーナ20の保持リブ24から溝27の傾斜面26を上方にスライドして柔軟な谷部25に接触する。こうして半導体ウェーハWは、支持ユニット10の支持リブ12の上面部から離れ、フロントリテーナ33における溝の中心部とリヤリテーナ20の谷部25とに支持されることとなる。
【0031】
これに対し、容器本体1から蓋体30が取り外されると、フロントリテーナ33の溝が半導体ウェーハWの前端部周縁から離れ、支持ユニット10の支持リブ12の上面部に半導体ウェーハWの側部周縁が再び接触支持される。そして、半導体ウェーハWの後端部周縁は、リヤリテーナ20の谷部25から溝27の傾斜面26を下方にスライドし、剛性を有する保持リブ24に支持されることとなる。
【0032】
上記構成によれば、容器本体1と蓋体30とのクランプ時に、半導体ウェーハWがフロントリテーナ33側からリヤリテーナ20側に強く押し込まれると、リヤリテーナ20の谷部25が変形して応力を緩和するので、半導体ウェーハWの端部に荷重が集中することがない。したがって、リヤリテーナ20と半導体ウェーハWとが擦れてパーティクルが発生し、半導体ウェーハWの汚染を招くのをきわめて有効に抑制防止することができる。
【0033】
また、リヤリテーナ20をフロントリテーナ33同様、弾力性を有する材料により成形する必要がないので、半導体ウェーハWの位置のばらつくことが全くない。さらに、保持リブ24が弾性変形不能な肉厚なので、半導体ウェーハWを一定の位置に保持することができる。したがって、例え基板収納容器を連続使用したとしても、リヤリテーナ20にクリープ変形が発生し、半導体ウェーハWのシット位置が変化してローディング、アンローディングに支障を来たすおそれもない。
【0034】
次に、図5、図6は本発明の第2の実施形態を示すもので、この場合には、容器本体1の内部背面に、相互に対向する複数の係合片40を左右方向に間隔を開けて設け、各係合片40を略L字形に形成し、容器本体1の内部背面に、複数の保持ブシュ41を上下方向に間隔をおいて並べ設け、ベース板21の両側部には、係合片40の自由端部に係合される被係合溝42をそれぞれ切り欠くとともに、ベース板21における一対の山22の裏面には、各保持ブシュ41に挿入支持されるサポートピン43を上下方向に間隔をおいて並べ設けるようにしている。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0035】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、各保持ブシュ41にサポートピン43が挿入されることにより、リヤリテーナ20の谷部25が変形しても、保持リブ24や溝27の位置ずれを簡易な構成で有効に規制することができるのは明らかである。
【0036】
次に、図7は本発明の第3の実施形態を示すもので、この場合には、容器本体1の内部背面とリヤリテーナ20のベース板21との間に、半導体ウェーハWに作用する衝撃を緩和する緩衝体50を介在し、ベース板21と緩衝体50とを一体化するようにしている。緩衝体50は、例えばリヤリテーナ20がポリブチレンテレフタレートからなる場合には、部分的に弾性変形可能で接着可能なポリエステル系のエラストマー等からなり、ベース板21の裏面に成形や溶融等により一体形成される。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0037】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、緩衝体50のクッション作用により、輸送時に半導体ウェーハWをより安全に保持することができるとともに、基板収納容器が落下等しても安全を確保することができ、リヤリテーナ20のクリープ変形による機能低下を防止して耐久性を著しく向上させることが可能になるのは明らかである。
【0038】
また、本実施形態によれば、容器本体1に別材料のリヤリテーナ20をインサート成形や二色成形等の手法で一体成形することが可能となる。この場合、先ず、ポリエステル系の熱可塑性エラストマーでリヤリテーナ20の緩衝体50を先に成形し、この緩衝体50をリヤリテーナ成形用の金型にインサートしてポリブチレンテレフタレートにより緩衝体50付きのリヤリテーナ20を一体成形し、その後、ポリカーボネートを材料として容器本体1を容器本体用の金型で成形する際、この容器本体用の金型にリヤリテーナ20をインサートして一体成形する。
【0039】
このとき、緩衝体50のポリエステル系エラストマーは、ポリブチレンテレフタレート製のリヤリテーナ20とポリカーボネート製の容器本体1との界面で強固に融着可能なので、適切な一体化が期待できる。こうして一体化すれば、容器本体1の洗浄時にリヤリテーナ20を取り外したり、洗浄後に再度装着するという煩雑な作業が不要となる。さらに、一体成形で洗浄時に水滴の溜まる部分がないので、水切れ性が良く、乾燥時間の短縮が大いに期待できる。
【0040】
次に、図8は本発明の第4の実施形態を示すもので、この場合には、リヤリテーナ20の複数の保持リブ表面を平滑膜60により被覆し、複数の溝27を保護するようにしている。平滑膜60は、例えばポリブチレンテレフタレートやポリエチレンテレフタレート製のフィルム又はシート等からなり、リヤリテーナ20の成形時に保持リブ24の表面に融着して一体化され、半導体ウェーハWに接触される部分を保護する。
【0041】
リヤリテーナ20の保持リブ24表面を平滑膜60で被覆する場合には、先ず、リヤリテーナ成形用の金型に平滑膜60をセットし、この状態でリヤリテーナ20を成形する。具体的には、リヤリテーナ成形用の金型のキャビティに平滑膜60を真空引きでセットしたり、金型のパーティングラインのテンションローラで平滑膜60をセットし、リヤリテーナ20の保持リブ表面、谷部25、溝27を平滑膜60が被覆するようにすれば良い。
リヤリテーナ20を成形したら、ポリカーボネートを材料として容器本体1を容器本体用の金型で成形する際、この容器本体用の金型にリヤリテーナ20をインサートして一体成形すれば良い。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0042】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、二回の成形で平滑膜60付きのリヤリテーナ20を生産することができるので、生産効率の大幅な向上が大いに期待できる。また、平滑膜60が滑らかなので、半導体ウェーハWの後端部周縁がリヤリテーナ20の柔軟な谷部25に強く圧接し、半導体ウェーハWが滑り落ちない結果、シット位置がばらつくのを抑制防止することができる。さらに、緩衝体50からアウトガスが漏れて半導体ウェーハWの汚染を招くのを防ぐことができる。
【0043】
次に、図9ないし図11は本発明の第5の実施形態を示すもので、この場合には、容器本体1の半導体ウェーハWと接触してその挿入を規制する領域、換言すれば、容器本体1の内部両側の後方(最奥側)に、弾力性のリヤリテーナ20をインサート成形により一体成形するようにしている。
リヤリテーナ20は、図10、図11に示すように、容器本体1の内側部後方に複数のサポートピン43を介し位置決め支持され、半導体ウェーハWの収納方向(水平方向)と直交する上下方向に所定のピッチで並ぶ複数の溝27を備え、半導体ウェーハWのローディング時に半導体ウェーハWの支持位置を規制するよう機能する。
【0044】
容器本体1の内側部後方には、上下方向に所定のピッチで並ぶ断面三角形の保持リブ24がそれぞれ形成され、上下に隣接する保持リブ24の下端間に、接触する半導体ウェーハWの側部周縁を位置決め規制する谷部25が形成されるとともに、上下に隣接する保持リブ24の傾斜面26間に、断面倒V字形の溝27が形成される。保持リブ24はポリブチレンテレフタレート樹脂等により成形され、谷部25はポリエステル系の熱可塑性エラストマー等からなる緩衝体50が裏打ち形成される。
【0045】
各保持リブ24は、その傾斜面26を含めて弾性変形不能な肉厚に形成され、半導体ウェーハWの側部周縁を支持する。これに対し、各谷部25付近は、可撓性を有する肉薄に形成され、弾性変形可能な弾性変形部として機能する。各溝27の中心高さは、支持ユニット10の半導体ウェーハ支持位置よりも異なる位置に設定され、蓋体30の閉鎖時に半導体ウェーハWが支持ユニット10から僅かに持ち上げられる際、半導体ウェーハWと支持ユニット10との接触摩擦を減少させ、磨耗粉による半導体ウェーハWの汚染を抑制防止する。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0046】
本実施形態においても上記実施形態と同様、容器本体1の開口した正面から蓋体30が取り外された場合には、半導体ウェーハWが支持ユニット10の支持リブ12上に位置する。これに対し、容器本体1の開口した正面に蓋体30が嵌合された場合には、半導体ウェーハWは、リヤリテーナ20の保持リブ24の傾斜面26を上方に移動し、リヤリテーナ20の溝27により保持されることとなる。
【0047】
なお、上記実施形態では複数の位置決め具にボトムプレートを単に嵌合支持させたが、何らこれに限定されるものではない。例えば、容器本体1の底部に大型のボトムプレートを装着してその露出して張り出した左右両側部には容器本体1の側壁に対向する対向板を立て設け、各対向板にはサイドハンドル6を装着等するようにしても良い。また、蓋体30の表面を透明にしてその内部のラッチ機構を視認可能にしても良い。
【0048】
また、容器本体1の内部背面に、複数のサポートピン43を上下方向に間隔をおいて並べ設け、ベース板21における一対の山22の裏面には、サポートピン43に嵌合する保持ブシュ41を上下方向に間隔をおいて並べ設けることも可能である。また、容器本体1の半導体ウェーハWと接触してその挿入を規制する領域、換言すれば、容器本体1の内部両側の後方(最奥側)に、別体のリヤリテーナ20を着脱自在に装着することも可能である。
【0049】
さらに、容器本体1を第一の熱可塑性樹脂により成形するとともに、リヤリテーナ20を第一の熱可塑性樹脂とは異なる第二の熱可塑性樹脂により成形し、これら容器本体1とリヤリテーナ20とを中間層を介して一体化することもできる。この場合、中間層は、容器本体1を形成する第一の熱可塑性樹脂と、リヤリテーナ20を形成する第二の熱可塑性樹脂の両方に相溶性を有し、どちらにも融着可能な第三の熱可塑性樹脂により薄板状、シート状、あるいはフィルム状等に成形される。この中間層は、例えばリヤリテーナ20に裏打ち形成されて緩衝体50として機能する熱可塑性エラストマー等の弾力性の材料により形成される。
【0050】
【実施例】
以下、本発明に係る基板収納容器の実施例を比較例と共に説明する。
実施例
図1の基板収納容器に、300mmの大口径のシリコンウェーハを25枚整列収納して蓋体を閉じ、この基板収納容器をダンボール箱に梱包してJIS Z 0200に規定された方法により、所定の高さからの落下試験を行い、シリコンウェーハの破損状態を確認した。落下試験の高さは、落下の衝撃を高めて効果を明瞭に把握するため、1mとした。
【0051】
次いで、図1の基板収納容器に、300mmの大口径のシリコンウェーハを25枚整列収納して蓋体を閉じ、この基板収納容器をダンボール箱に梱包して30cmの高さから落下試験を行い、基板収納容器を基板搬送装置にセットして蓋体を取り外し、その後、正常にシリコンウェーハの取出し(ピックアップ)を取出機でできるかどうかを確認した。こうして確認作業が終了したら、シリコンウェーハの破損状態とシリコンウェーハのピックアップ不良の発生状況を表1にまとめた。
【0052】
比較例
図1の基板収納容器からリヤリテーナを取り除き、この基板収納容器に300mmの大口径のシリコンウェーハを25枚整列収納して蓋体を閉じ、この基板収納容器をダンボール箱に梱包してJIS Z 0200に規定された方法により、所定の高さからの落下試験を行い、シリコンウェーハの破損状態を確認した。
【0053】
次いで、上記基板収納容器に、300mmの大口径のシリコンウェーハを25枚整列収納して蓋体を閉じ、この基板収納容器をダンボール箱に梱包して30cmの高さから落下試験を行い、基板収納容器を基板搬送装置にセットして蓋体を取り外した後、正常にシリコンウェーハの取出し(ピックアップ)を取出機でできるかどうかを確認した。確認作業が終了したら、シリコンウェーハの破損状態とシリコンウェーハのピックアップ不良の発生状況を表1にまとめた。
【0054】
【表1】
【0055】
表1から明らかなように、実施例によれば、シリコンウェーハが破損することがなく、シリコンウェーハのピックアップ不良も発生しなかった。
【0056】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、リテーナに基板が擦れて汚れたり、基板の位置がばらつくのを抑制あるいは防止することができるという効果がある。また、例え基板収納容器を連続的に使用したとしても、リテーナにクリープ変形が発生したり、基板の位置が変化して出し入れ作業に支障を来たすのを有効に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る基板収納容器の実施形態を示す全体斜視説明図である。
【図2】本発明に係る基板収納容器の実施形態を示す横断面全体説明図である。
【図3】本発明に係る基板収納容器の実施形態におけるリヤリテーナを示す縦断面説明図である。
【図4】本発明に係る基板収納容器の実施形態におけるリヤリテーナを示す横断面説明図である。
【図5】本発明に係る基板収納容器の第2の実施形態におけるリヤリテーナを示す縦断面説明図である。
【図6】本発明に係る基板収納容器の第2の実施形態におけるリヤリテーナを示す横断面説明図である。
【図7】本発明に係る基板収納容器の第3の実施形態におけるリヤリテーナを示す縦断面説明図である。
【図8】本発明に係る基板収納容器の第4の実施形態におけるリヤリテーナを示す縦断面説明図である。
【図9】本発明に係る基板収納容器の第5の実施形態を示す断面説明図である。
【図10】図9のIX部の拡大説明図である。
【図11】図10のXI−XI線断面説明図である。
【符号の説明】
1 容器本体
10 支持ユニット
12 支持リブ
13 溝
20 リヤリテーナ(リテーナ)
21 ベース板
22 山
24 保持リブ
25 谷部
26 傾斜面
27 溝
30 蓋体
33 フロントリテーナ(リテーナ)
50 緩衝体
60 平滑膜(膜)
W 半導体ウェーハ(基板)
Claims (5)
- 基板収納用の容器本体と、基板の両側部に接触する一対の支持ユニットと、基板に接触するリテーナとを含んでなる基板収納容器であって、
リテーナを、少なくとも基板の収納方向と略直交する方向に並ぶ複数の溝を設けることにより形成し、各溝を断面略V字形に形成してその少なくとも傾斜面付近を肉厚に、谷部付近を弾性変形可能な肉薄にそれぞれ形成したことを特徴とする基板収納容器。 - 容器本体をフロントオープンボックスとしてその正面の開口には着脱自在の蓋体を備え、容器本体の内部背面、容器本体の内側部、及び蓋体の少なくともいずれか一にリテーナを設けた請求項1記載の基板収納容器。
- リテーナの少なくとも谷部裏面に、基板に作用する衝撃を緩和する緩衝体を備えてなる請求項1又は2記載の基板収納容器。
- リテーナの溝を膜により被覆した請求項1、2、又は3記載の基板収納容器。
- 容器本体を第一の熱可塑性樹脂により形成し、リテーナを第一の熱可塑性樹脂とは異なる第二の熱可塑性樹脂により形成し、これら容器本体とリテーナとを第三の熱可塑性樹脂からなる中間層により一体化するようにした請求項1ないし4いずれかに記載の基板収納容器。
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