JP2005004995A - 走査形電子顕微鏡 - Google Patents
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Abstract
【課題】一次電子線を試料に照射したときに発生する反射電子や二次電子等の信号電子のエネルギー分布特性を画像として表示する。
【解決手段】一次電子線104を照射した試料107の表面から放出された信号電子109,110を計測する信号電子検出器120に印加する電圧を変化させて信号電子のエネルギー分布を計測し、各エネルギー値に色を割り当て、それぞれのエネルギー値に対応した色と、信号強度に対応した明るさで画像を表示する。
【選択図】 図1
【解決手段】一次電子線104を照射した試料107の表面から放出された信号電子109,110を計測する信号電子検出器120に印加する電圧を変化させて信号電子のエネルギー分布を計測し、各エネルギー値に色を割り当て、それぞれのエネルギー値に対応した色と、信号強度に対応した明るさで画像を表示する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は電子線装置に係り、特に試料から発生した反射電子或いは二次電子等の信号電子を検出し、検出した信号電子に基づいて試料走査像を表示する走査形電子顕微鏡に関する。
【0002】
【従来の技術】
走査形電子顕微鏡は、加速した一次電子線を観察する試料表面に2次元的に微小に走査し、そのとき発生する反射電子、或いは二次電子等の信号電子を検出し、それらの信号強度(信号電流)を走査信号と同期させて、画像として表示装置に2次元的に拡大表示する装置である。信号電子は、比較的低エネルギーの二次電子が大部分を占める。しかし、一次電子線を照射した試料表面からは低エネルギー二次電子だけでなく、一次電子線とほぼ同程度のエネルギーで弾性的に反射してくる反射電子、またこの反射電子と低エネルギー二次電子の間の範囲のエネルギーを持つ電子も放出されてくる。このように信号電子のエネルギーは、0から一次電子線のエネルギー値まで連続的に分布しており、これらの分布の割合は、試料およびその材料特有の性質を反映している。従来の一般的な走査形電子顕微鏡は、これらの電子を区別することなく、単にそれらの信号電子の合計を信号電流、または、信号強度として検出し、その強度に応じて表示装置に画素の明暗として画像を表示する。また、特許文献1のように反射電子用検出器と低エネルギー二次電子用検出器を設け、それぞれの信号を独立に計測することを可能にした技術もある。特許文献1には、反射電子信号,二次電子信号による画像、及びこれらの画像を合成した画像を表示することが記載されている。また、反射電子信号、または、二次電子信号のどちらか一方、又はおのおの検出信号レベルを表示装置へ表示する色信号に変換し合成することも記載されている。これにより、同一の試料に対し、反射電子,二次電子信号により微妙に異なる部分を色の差として区別して表示することが可能になる。この場合、合成する元の画像の種類は、反射電子信号画像と二次電子信号画像の2枚であり、合成画像は2色表示の画像となる。
【0003】
【特許文献1】
特開平7−192679号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
反射電子信号と二次電子信号を異なる色で表示すると、従来のモノクロ画像よりは情報量が多くなる。しかし、0から一次電子線のエネルギー値まで連続的に分布している信号電子の分布特性、すなわち、試料が持っている固有の特性を表示することはできなかった。
【0005】
本発明の目的は、一次電子線を試料に照射したときに発生する反射電子や二次電子等の信号電子の特性の違いを反映した像表示ができる走査形電子顕微鏡を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明では、一次電子線の照射によって試料から放出された信号電子を計測する信号電子検出器の部分に信号電子のエネルギー値を識別するための機能を付加した。そして、信号電子強度のエネルギー分布を計測し、各エネルギー値に色を割り当て、それぞれのエネルギー値の信号強度に対応した明るさで画像を構成し、それぞれのエネルギー値の画像、およびその合成画像を表示しするようにした。
【0007】
本発明によれば、走査形電子顕微鏡にて一次電子線を試料に照射したときに発生する反射電子や二次電子等の信号電子のエネルギー分布・特性を忠実に表示装置にカラーの画像として表示することができるので、試料の2次元的な微細表面構造だけでなく、試料物質の相違・分布等の情報も同時に表示・観察・確認することができる。基本的に電子のエネルギー状態に係らず電子が検出できるようになるので、エネルギーが高い状態の反射電子を検出し、試料の組成を調べる場合にも、高エネルギー反射電子と低エネルギー二次電子とを連続的に分別して検出し、正確な組成分析を行うことが可能になる。したがって、目的や試料の状態に応じて低エネルギー二次電子信号と高エネルギー反射電子信号を選択的に検出あるいは合成することができるだけでなく、試料の物質的な性質の違いを色で表すことができ、それらを1枚のカラー画像として観察できるので、従来の走査形電子顕微鏡のモノクロ画像よりも情報量の多い画像を提供することができ、凹凸情報、組成情報を1枚の画像で確認できるだけでなく、その色調等から、感覚的、感応的に試料の状態を把握できる。
【0008】
また、従来は、X線分析等を行わなければ、元素等の物質を同定できなかったものが、走査形電子顕微鏡の画像で予想が付けられるようになり、分析の時間、効率を大幅に向上させることができる。また、半導体デバイス製造ラインでの適用では、製造中の半導体基板を観察したときに、配線、プラグ、ホール底の電位的な異常・欠陥を色の違いで表示でき、欠陥解析の効率を上げることができる。また、基板表面に異物がある場合なども、異物を通常の表面物質とは異なった色で表示できるので、異物を発見しやすく、異物検査、解析、分析の効率を向上することができる。特に、エッチング後のレジストの残渣等がある場合、レジスト残渣部がSi等の基板とは異なった色で表示されるので、残渣の有無を即座に確認することができ、またその分布の具合も明瞭に表示されるので、良し悪しの程度を感覚的にも把握することができる。さらに画像処理により、残渣量をその分布面積の比率から定量的に評価することも可能になる。その他、従来得られなかった情報が表示され得るので、その画像から新たな発見がなされることが期待できる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。以下の図において、同じ機能部分には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0010】
図1は、本発明による走査形電子顕微鏡の一実施例を示す概略図である。陰極101と第一陽極102に印加される電圧V1により陰極101から放射された一次電子線104は、第二陽極103に印加される電圧Vaccに加速されて後段のレンズ系に進行する。この一次電子線104は、走査形電子顕微鏡制御システム140内の集束レンズ制御器170で制御された集束レンズ105と対物レンズ制御器174で制御された対物レンズ106により試料107に微小スポットとして集束され、二段の偏向コイル108で試料上を2次元的に走査される。偏向コイル108の走査信号は、入力装置154により指定された観察倍率に応じて、CPU150によって走査制御器176を介し制御される。
【0011】
この試料107の一次電子線照射点からは二次電子109と反射電子110が放出される。二次電子109と反射電子110は、対物レンズ106による磁界の影響で螺旋運動をしながら上部へ進行し、電子検出器120に捕捉される。電子検出器120からの信号は信号変換器160に入力され、それぞれの信号はおのおのゼロを含む任意の利得で増幅された後、ディジタル信号に変換される。そしてこれらの信号は、CPU150の指示により信号処理器178で信号処理され、その後、又は信号処理される前にもメモリ等による記憶手段152にデータ信号を記憶させている。そして、記憶手段152に記憶された反射電子,二次電子の信号、又は処理された信号を用いてCPU150はインターフェース156を介して、CRT等の表示装置125に試料の反射電子像,二次電子像、そして処理された信号による拡大された試料像を表示している。また、記憶手段を介さなくても、試料107を走査している時に、それらの試料像をリアルタイムで表示する機能を持つ。
【0012】
ここで、可変電圧電源151により信号検出器120に印加している電圧Vbを変化させることによって、信号検出器120で検出される二次電子109、反射電子110等の信号電子電流を制限している。信号検出器120に印加している可変電圧電源151の電圧が低い場合は、低エネルギーの二次電子109が引き込まれにくくなり、反射電子110等のエネルギーの高い信号電子のみが検出される。また、信号検出器120に印加している可変電圧電源151の電圧Vbを高くして行くと、それに従い低エネルギーの二次電子の取り込む量が増え、割合が高くなって行く。このように、電子検出器120に印加する電圧を変更すること等の手段で電子検出器120に入る信号電子のエネルギーを変化させ、信号処理器178、および、CPU150の制御によって、信号電子のエネルギースペクトル分析を行う。さらに、そのエネルギー値とその強度に従いそれぞれ色と明度を割りあて、それぞれのエネルギー値の画像、および、それぞれのエネルギー値の画像を1つの画像に合成してカラーで表示する。
【0013】
可変電圧電源151から電子検出器120に印加する電圧Vbは、二次電子109や反射電子110などの信号の取り込み中に、図2(a)に示すように段階的に変化させてゆく。この変化は、図2(b)に示したような一次電子線の偏向走査信号と同期して行う。この場合は、1波長が画像1フレームに相当するY方向の偏向走査信号に同期させて変化させて行く。走査形電子顕微鏡における観察画像の作成は、観察領域を一次電子線104で2次元的に走査し、そのとき試料107から発生した二次電子109や反射電子110などの信号電子の強度を走査位置に対応して、2次元的画像として表示装置125に再現する。1フレームの画像は、X方向に繰り返し一次電子線104を走査し、それと共にY方向に走査位置をずらしながら2次元的に走査することで作成される。X方向、Y方向の偏向走査制御信号は、図2(b)に示すような、のこぎり波になる。この場合、Y方向の偏向走査制御信号ののこぎり波1山が、1フレームに相当する。画像の作成に際して、観察領域を高速に2次元的に走査し、同じ領域に対して複数の画像フレームを取得し、その画像を合成することで、チャージアップの影響やノイズが低減された画像を作ることができる。
【0014】
本発明の場合、具体的には例えば、画像取り込みを開始し、電子検出器120にVbの最大電圧を印加する。そして、最初の1フレーム画像取り込みが終了すると、電圧Vbを1段階低下させ、第二フレームの画像を取り込む。取得画像のフレーム数をNフレームとした場合。バイアス電圧Vbは、最大値から最小値まで、N段階に分け、1フレーム画像取得ごとに1段階ずつ電圧を変化させてゆく。このVbとY方向の偏向走査信号、即ち画像取得のタイミングの関係を図2(a)、および、図2(b)に示す。
【0015】
このときの二次電子109や反射電子110などの信号電子の強度推移の一例として図2(c)が得られる。図2(c)の縦軸は信号電子の強度Isである。図2(c)は、電子検出器120が検出した1フレーム画像分の全信号電子電流のバイアス電圧Vbに対する変化と見てもいいし、または、観察領域に割り当てた、1画素ごとの信号電流のバイアス電圧Vbに対する変化とみても良い。これを1画素の信号電流のバイアス電圧Vbに対する変化とみると、このような信号スペクトルが、画素数分存在する。
【0016】
この信号スペクトルを微分すると、図2(d)に示されるような信号電子のエネルギー分布が得られる。スペクトル右端のピークは、一次電子線が試料で弾性的に反射した反射電子110の信号である。二次電子、反射電子のスペクトルは、ADRIANUS J. DEKKER著:固体物理(コロナ社、橋本隆吉・神山雅英訳、458ページ)に記されている。これを図3に示す。図3において、bの部分に試料物質に固有の小さな極大が存在する。これらは、表面から逃げ出る前に一定の離散的なエネルギーを失って非弾性的に反射された一次電子線に対応している。信号電子の大部分は、比較的低エネルギーを持ち幅の広いピークCにある。これらの電子のエネルギー分布は、ほとんど一次電子線のエネルギーによらない。実際の計測でも単一金属試料に対して、これと同様な信号スペクトルが得られている。
【0017】
このようなスペクトルのエネルギー範囲の最大値から最小値にわたり紫から青、緑、黄、赤といった色を連続的に割り当てる。そして、それぞれのエネルギーレベルに対応した画像を割り当てた色で表示し、それらの画像を全フレームにわたって合成することで、信号電子のエネルギーに対応した色で表現されたカラーの観察画像を得ることができる。これによって、観察画像で2次元的な表面構造を表すだけでなく、各画素に対応した材料が出す固有の反射電子のエネルギー値を色で表現できるので、材料物質的な相違も同時に確認することができる。
【0018】
図2(e)に、信号電子のエネルギーの最大値から最小値まで、紫から青、空色、緑、黄、赤といった可視光色波長の短い順に連続的に割り当てた1例を示す。これを画像表示機能の三原色RGBの3要素に分解すると、図2(e)に示したような分布になる。図2(e)では、このRGBの各値を独立に最大値から最小値まで変化させ、それらを組み合わせることで、複数色のカラー表示が可能になる。RGB各値階調を16階調とすると、原理的には最大で、16×16×16=4096色の表現が可能である。また、RGB各値階調を256階調とすると、原理的には最大で、256×256×256=16,777,216色の表現が可能となる。
【0019】
図2(d)において、すべての画素に対する信号スペクトルの最大値を明度の最大値として割り当て、その1/2の値を明度中央値と割り当てると、図2(e)は明度の中央値におけるRGBそれぞれの階調の分布を示している。例えば図2(e)において、「緑」に対応する信号強度が、中央値以下である場合、その割合にしたがって、G:緑の階調を下げることで、画素の明度を下げることができる。また、エネルギー最大値付近の紫において明度が最大である場合、G:緑の階調を最大に上げることで明度を最大にすることができる。その他の中間色に対しても、それぞれのエネルギーの信号強度に対応した明度になるように、RGBの各階調を調節する。たとえは、緑に対応する信号強度が最大の場合には、赤:Rと青:Bの階調を共に最大にすることで、明度を最大にすることができる。
【0020】
各フレームで、取得される画像は、一次電子線の加速エネルギーを画像フレーム数で割った(分割した)エネルギー幅をもつ信号電子のスペクトルの一部である(図4参照)。このとき1フレームで表現される色調は基本的に1色で、一次電子線のスキャンに対応する信号電子の量によって画面の明暗が決定され、採度が最大の点から、白に向かって明るいほうに256階調、また、黒に向かって暗いほうに256階調取れる。したがって、図2(e)から各画像フレームの個々のピクセルがとり得る色の数は、256×5色×(256×2階調)=655,360色である。これらの画像フレームが重なりあうことで、最大256×256×256=16,777,216色が使われ得る。
【0021】
画像の合成は、各対応するピクセル毎の加算が望ましい。各画像フレームを合成して、1枚の画像を作成する場合、各画像フレームの対応する画素の赤黄青、RGB、もしくは、CMYKの色要素の諧調値を単純加算し、その加算結果を、各色、諧調に均等分配することが望ましい。例えば、画像の各ピクセルのRGB各値が合成のための加算によって、最大値がそれぞれR:4025、G:3602、B:4226になったとすると、個々のピクセルの値(Rij、Gij、Bij)は、単純加算の結果の値(Rij、Gij、Bij)に対し、Rij=Rij×256/4025、Gij=Gij×256/3602、Bij=Bij×256/4226にすると適当な、画像の合成ができる。ここで示した色の割り当ては、これ以外にもさまざまに考案され得る。例えば、赤から紫へのエネルギーの並び順を入れ替え、高エネルギー側の信号を赤に対応させ、低エネルギー側の信号を紫に対応させることもできる。
【0022】
また、変化を効果的に表現するため、途中の配色の分布を非線形にし、例えば、図2(d)で信号変化の大きな、低エネルギー側に配色の変化が多く付くように配分することも可能である。図4に示す様に、あるエネルギー領域の配色の変化を、信号を示す曲線と横軸が作る面積に比例させる。これにより信号の変化を効果的に色の変化で表現させることができる。画像フレームの加算枚数をN枚とする。図4に示すように、あるエネルギーE1からE1+δまでの領域に対し電子信号の曲線fs(E)が作る面積をΔSとするとき、配色の変化をこのΔSに比例させる。信号電子のエネルギーが“0”から最大値“Emax”までの間に作られる面積Sは、次式で表される。
【0023】
【数1】
【0024】
これは、1枚の画像取得時に電子検出器120が検出した、電子の総電荷量に比例する値である。これにより、エネルギーE1における配色の変化率C(E1)は、次式で表される。ここでkは通常、定数の1である。
【0025】
【数2】
【0026】
図5は、図2(d)の信号スペクトルに対して、信号量の多い部分に色変化を多く付くように配色を分布させた例である。ここで、明暗を除いた基本色を256×5色使っていたとすると、互いに隣り合う各フレーム間の基本配色の変化は、通常256×5/Nとなる。これに、式(2)の値をかけて、エネルギーE1に対応するフレームの色変化の割合は、次式で表せる。
【0027】
【数3】
【0028】
図2(d)において、試料の物質的な特長は、比較的高いエネルギーのa,b,c,d等の小さなピークに表れる。表示画像に試料物質の特徴を強調して表示するためにさまざまな方法が考えられるが、一例として、この信号電流スペクトルの対数をとり、これに対応させて画像表示をすることで、a,b,c,d等の小さなピークを強調することができる。この状態を、図6に示す。図6において、実線が、破線で示す信号電流スペクトルの対数をとったスペクトルである。
【0029】
また、ある特定のエネルギー値に電子信号を放出する物質の分布を確認したいといった用途に対しては、その様なエネルギー帯に赤等の目立つ色を対応させて表示することにより、目的の像観察をしやすくすることができる。
【0030】
1フレームごとの画像を重ね合わせるとき、電極電圧変化他の要因で、一次電子線のスキャン領域が、わずかに移動することがある。したがって、画像を重ね合わせるときには、それぞれのフレームの画像の明るさの相関をとり、画像がマッチするように重ね合わせて行く。この場合、まず、電極電圧等を変化させずに二次電子、反射電子すべての信号を取り込んだ、基準と成る画像を最初に取得、保存しておき、相関のベースとなる画像をこの全電子信号を含んだ画像にすると相関がとりやすい。
【0031】
図7は、バイアス電圧Vbの値の変化を1フレーム毎ではなく、4フレーム毎に変化させている例である。このように1フレーム毎に電圧を変化させるのではなく、2フレーム毎、4フレーム毎等、数フレーム毎に電圧を変化させても、試料の物質的特徴を十分表現し得る。バイアス電圧Vbを変化させなければ、一次電子線のスキャン領域が移動することもなくなるので、同一バイアス電圧で取得した数フレームの画像は、そのまま合成し得る。最後に1枚のカラー画像へ合成するときに、予めそれぞれの同一のVbで取得し合成した画像群を、その画素の明度の相関から合わせ位置を調節し、合成することも有効である。
【0032】
さらに明度も、信号強度に対し、明暗を反転させて表示することもできる。このような操作は、入力装置154からの命令入力で、CPU150による信号処理器178、画像積算器155等の制御によってさまざまに変え得る。
【0033】
図8は、これら一連の作業をフローチャートにまとめたものである。
まず、フレーム数Nを決定する(ステップ301)。そして、バイアス電圧の初期値を設定し、電極に電圧を印加する(ステップ302)。この場合、一例として、すべての信号電子電流を取得する設定を初期値としておく。次に、このバイアス電圧設定条件のままで、基準となる画像を取得しておく(ステップ303)。この画像のフレーム数は、4から16フレーム程度、多くても32フレームもあれば十分である。
【0034】
次に、主目的の画像の取得を開始する(ステップ304)。一次電子線を2次元的に走査し、1フレームの画像信号を検出し、保存する(ステップ305)。これを、フレーム毎にバイアス電圧を変化させながら設定したフレーム数だけ繰り返す(ステップ307、308)。前述のように、このバイアス電圧の変化を数フレーム毎に行ってもかまわない。信号取得が終了したら、取得したすべてのデータを保存しておく(ステップ309)。この場合、データとしては、1フレーム画面の画素数×フレーム数(Vb変化の段数に対応)だけある。
【0035】
これらのデータから、各画素の信号スペクトルを取り出し、それを微分し、各エネルギー値に対する信号量を求める。これが、各色に対する明度となる(ステップ310)。各フレーム(Vb電圧:信号電子エネルギー)に配色をし、表示色を決定する。配色は、式(2)に示した方法を使って決定する(ステップ311)。次に、信号処理方法を指定する。物質の特徴を示す信号を強調するといったことが必要な場合、信号の対数をとるなどして、微小信号を強調する指示を入力する(ステップ312)。入力指示に従い、信号の補正を行う(ステップ313)。フレームごとの画像を作成する(ステップ314)。ステップ303で求めた基準画像に対して、マッチングを行い、各フレーム画像の位置を調節する(ステップ315)。調整後、それぞれのフレーム画像を合成する(ステップ316)。これで、1枚の観察画像が出来上がる。ステップ316では、所望のエネルギーの画像のみを表示するようにしてもかまわない。そうすることによって、特定エネルギー特性をもった試料上の個所の分布、面積比等をわかりやすく表示することができる。
【0036】
図9は、本発明による走査形電子顕微鏡の他の実施例を示す概略図である。図9において、光軸上に二次電子109を透過できる多孔電極112と対向電極111、および該電極で発生する電界Eとほぼ直交する磁界Bを発生させる図10に示した磁界発生用コイル213,214を配置して、二次電子109と反射電子110の軌道を偏向させる構成となっている。多孔電極112と対向電極111の電位差を±Ve(V)、磁界発生用コイル213,214の励磁電流をIb(A)、一次電子線の加速電圧をVacc(V)、多孔電極112と対向電極111、および磁界発生用コイル213,214の形状で決まる定数をKe,Kbとしたとき、特許公報第3291880号記載のように、次式の関係を保つようにIbおよびVeを制御し、比例定数K1,K2は一次電子線に偏向作用を及ぼさない条件に設定する。
【0037】
【数4】
【0038】
多孔電極112を透過した二次電子109の軌道を見込む位置に二次電子検出器120配置して検出する。また、反射電子軌道は二次電子と分離され、その反射電子軌道上に反射電子を二次電子に変換する二次電子変換電極440を配置する。この電極に負の電圧を印加すると反射電子は電極に衝突して、電極表面からエネルギーの小さい二次電子を発生する。直交電磁界の強さは、一次電子線104に対して偏向作用を及ぼさないように設定されているが、一次電子線に比較してエネルギーの小さい二次電子450は、磁界よりも電界によって強く曲げられる。その結果、多孔電極側に強く偏向されて多孔電極112を透過し、多孔電極を見込む位置に配置された電子検出器120で検出される。
【0039】
また、多孔電極112の下部に軸対称電極441を配置してこの電極に適当な負の電圧を印加すると、試料から発生した二次電子はこの軸対称電極を進行できずに試料側にはね返される。このように、軸対称電極441に印加する負電圧にしたがって、低エネルギー電子による信号が切り捨てられる。そして、エネルギーの高い反射電子のみが多孔電極上部に配置した変換電極440で二次電子450に変換される。この変換された二次電子450は、試料からの反射電子情報を反映しているため、この信号で像形成することは、試料からの反射電子信号で像形成することと等価となる。電子検出器120は、二次電子変換電極440で発生し、引き込まれる二次電子と、試料から放出され電磁界発生器によって偏向される二次電子を同じように検出できるため、電磁界発生器によって広い範囲に軌道分散(エネルギー分散)する反射電子、及び二次電子を高効率に検出することができる。
【0040】
軸対称電極441に印加する負電圧は、図1における電子検出器120の正のバイアス電圧Vbの逆の作用がある。したがって、図2(a)で示したVbの変化のように、可変電圧電源201から軸対称電極441に印加するバイアス電圧Vb’を、図11(a)に示すように、試料画像の取り込み時にN段に分割し、1フレーム画像取り込みごとにVb’を段階的に印加して行くようにする。こうすると図2(c)で示したのと同様に、電子検出器120には、図11(b)に示したような信号電流が得られる。
【0041】
図12は、本発明による走査形電子顕微鏡の他の実施例を示す概略図である。この走査形電子顕微鏡は、図9の装置における反射電子および二次電子のエネルギーをフィルタリングする機能をより強化したものである。低エネルギーの二次電子が直交電磁界部に入射すると、電磁界によって偏向され、多孔電極112を通って電子検出器120に向かう。このとき、多孔電極112と電子検出器120との間に、多孔電極113があり、これに負電圧を印加して、ここを通過する二次電子をそのエネルギーで制限する。比較的エネルギーの高い反射電子も同様に、直交電磁界以内に設けた負電圧が印加できる多孔電極114を通過するときにフィルタリングされ多孔電極114の電位を越えるエネルギーを持った電子のみがここを通過する。
【0042】
多孔電極113と114は同一の電源Vb’に接続されている。多孔電極114を通過した電子は、二次電子変換電極440に衝突し、二次電子450を発生する。この二次電子450も直交電磁界部の多孔電極112を通って電子検出器120へ達する。試料107と電子検出器120の間には、必ず負電位の多孔電極113もしくは114があるので、一次電子線104の照射によって試料107上で発生した二次電子109、および反射電子110は、この負電位を越えられるエネルギーを持つもののみが検出器120にて検出される。比較的高エネルギーの反射電子は、二次電子変換電極440に衝突して二次電子450を発生することで信号量を増幅することができる。
【0043】
直交電磁界内の多孔電極114は、接地されている多孔電極117にはさまれており、一次電子線104が通る光軸中央部は、シールド筒116によって電磁シールドされている。したがって、多孔電極114の負電位は、一次電子線104の軌道に影響を与えることはない。この構造により、低エネルギー二次電子から高エネルギー反射電子まで連続的に確実にエネルギー分析することができる。さらに、取得する信号電子のエネルギーを変更するよう電極の電圧を変更しても、一次電子線の軌道にはなにも変化を出さず、影響を与えないので、画像フレームを重ねるときに像位置がずれるという恐れがない。低エネルギー電子の信号量をできるだけ増大させるためには、軸対称電極441には、数十Vの正電圧が印加されていることが望ましいが必ずしも不可欠ではない。
【0044】
図13は、本発明による走査形電子顕微鏡の他の実施例を示す概略図である。この走査形電子顕微鏡は、図9の電子検出器120の代わりにアレー状の電子検出器121を配置したものである。
【0045】
アレー状の電子検出器121は、複数の検出器を一列に並べたようなものである。この検出器の列が、図13において、軸方向、縦に並ぶように配置する。こうすることで、エネルギーの低い二次電子は、直交電磁界によってすぐに偏向され、アレー状の電子検出器121の下部で検出される。一方、エネルギーの高い反射電子等は、図13において、アレー状の電子検出器121の上方で検出される。
【0046】
このようにアレー状の電子検出器121を使うことによって、信号電子のエネルギー分布を、電極等の電圧を変化させずに、信号電子を検出する検出器要素の位置によって計測することができる。アレー状の電子検出器121のそれぞれの検出器の数がM個有った場合、M段階に信号電子のエネルギーを分析できる。信号変換器160では、これらM段の信号を並列で処理し、それぞれの検出器要素の信号ごとに色を割り当てる。これら各検出要素で検出した信号に色成分及び信号強度情報を付加して、スキャン信号に同期させて1枚の画像を仕上げる。この場合、1フレームの画像が既に複数色(M色)のカラー画像になっていることが、上述の図1及び図9の実施例と異なる。通常の走査形電子顕微鏡と同様に、この1フレームの画像を複数枚取得して、それらを重ね合わせノイズを低減することができる。
【0047】
図14は、アレー状電子検出器の拡大図である。図14(a)に示すように、検出器の前面には、シンチレータ901とその背面に位置する光電面902があり、その後ろにダイノードアレー903がある。シンチレータ901には、バイアス電圧153が印加してあり、これにより、このシンチレータ901に入射した信号電子は加速され、シンチレータに衝突したときにシンチレータ901を発光させる。光電面902およびダイノードアレー903にも、図のように高電圧904が印加してある。電圧153および904は、数kVから数十kVが望ましい。ダイノードアレー903の背面には収集電極アレー905がある。また、ダイノードアレー903全体には、側面から磁場Bが印加されている。
【0048】
図15(a)は、図14(a)の拡大断面図である。ダイノードアレー903は、抵抗体の中にチャンネルごとに二次電子増倍用の通路を設けてある。この場合、この通路がM個あり、M個のチャンネルを形成している。この抵抗体の表面と裏面に金属電極を蒸着し、この電極に電圧を印加することで、各チャンネルに均一に電圧が印加できる。図14(b)にダイノードアレー903を示す。
【0049】
試料表面から発生した信号電子は、シンチレータ901に入射し、シンチレータ901を発光させる。その光が光電面901に入射すると、裏面から電子を発する。電子は、ダイノードに入るが、ここで、ダイノードには、側面から磁場が印加してあるので、直進できずチャネル側面に衝突する。このとき、複数個の二次電子が発生し、また加速される。この電子もまた磁場によって、偏向され、ダイノード壁面に衝突し、さらに多くの電子を発生させる。このようにして、電子電流が増倍されて行き、最後に電極905に達する。
【0050】
図15(b)は、ダイノードに抵抗体ではなく、金属電極を使った場合の図である。いくつかに分割された電極に電圧が印加されており、この電極内間を電子が増倍されながら進み、最後に電極905に達する。図14(c)に、この電極が並んだダイノードアレー906を示す。図15(a)および図15(b)は、共に図示していないが、光電面902からダイノードアレー903、電極アレー906までは、ガラス管等で密封されており、外部の影響を受けない構造にしておくことが望ましい。
【0051】
図16は、本発明を試料が傾斜できるタイプの走査形電子顕微鏡に適用した例を示す図である。検出器の部分は、図9、図12及び図13記載の構成を使用してもかまわない。
【0052】
図9及び図16で取得した1フレームごとの画像を重ね合わせるとき、図1の実施例の場合と同様に軸対称電極441の電圧変化他の要因で、一次電子線のスキャン領域が、わずかに移動することがある。したがって、画像を重ね合わせるときには、それぞれの画像の明るさの相関をとり、画像がマッチするように重ね合わせて行く。この場合、まず、電極電圧等を変化させずに二次電子、反射電子すべての信号を取り込んだ、基準と成る画像を最初に取得、保存しておき、相関のベースとなる画像をこの全電子信号を含んだ画像にすると相関がとりやすい。
【0053】
図17,図18は、本発明の走査形電子顕微鏡で試料を測定した場合の表示画面例を説明する図である。
図17は半導体基板(シリコンオキサイド)に設けられたフォトレジスト2212のホール2210を測定した例の説明図である。図17(a)は測定対象の概略形状を示し、ホール開口部近辺に起伏2214があり、その開口部近辺の試料表面が負に帯電している状態を表している。図17(b)はこのホールを開口部方向から一次電子線で走査した像を示しており、ホールの帯電していない壁面の定在波2220、底の部分の正確な像情報が得られているが、帯電している試料開口部近辺の正確な像状態は得られていないことを示している。図17(c)は一次電子線で試料を走査し、高エネルギー反射電子信号による試料表面像を現しており、ホールの底の部分の像は得られていないが、試料開口部近辺の正確な起伏状態が得られていることを示している。
【0054】
通常、一次電子線で試料を走査したことにより発生する二次電子信号は、試料の表面から放出されるエネルギーの低い(数エレクトロンボルト程度)電子であるため、試料の表面から放出され試料の凹凸状態を忠実に反映するため、電子線の試料材料内部での散乱の影響を受けず、高い空間分解能の情報を備える特徴を持っている。しかし、従来の低エネルギー二次電子信号による分析方法においては、試料表面が負に帯電(以下、チャージアップと表現する)していると、低エネルギー二次電子の上昇がチャージアップによって妨げられてしまい、このため、ホール開口部近辺の起伏、即ち試料表面の凹凸状態を忠実に反映することが出来なくなってしまう現象がある。この現象によって帯電している試料開口部近辺の正確な像情報が得られていないことを図17(b)の試料像は示している。これに対し図17(c)に示した試料像は、高エネルギー反射電子によるものであるが、低エネルギー二次電子では得られていない試料開口部近辺の正確な起伏状態が判明していることを示している。
【0055】
以下、本発明の走査形電子顕微鏡において、高エネルギー反射電子により正確な試料像を検出することができる理由を述べる。従来の高エネルギー反射電子検出方法においては、エネルギーが高い高加速電圧の一次電子線で試料を走査しているので試料の深部に入り込み、これに対応して試料の深部からエネルギーが高い反射電子(ほぼ加速電圧と同じエネルギー)を発生させるものである。このため一次電子線の試料内部散乱の影響で高エネルギー反射電子の発生領域が広がり空間分解能は低下するが、その信号は試料表面の凹凸状態の他に組成情報を多く含む特徴を持っているため、従来方法においては主に試料内の組成情報を得るためにエネルギーが高い反射電子を検出していた。また、従来の高エネルギー反射電子検出方法として、低加速の一次電子線で試料を走査し、試料の表面近くで高エネルギー反射電子を発生させ、なるべく空間分解能を低下させずに高エネルギー反射電子を検出する方法も存在するが、従来例の方法では試料に一次電子線を照射することにより発生する低エネルギー二次電子と、高エネルギー反射電子を正確に分別して検出する手段がなく、高エネルギー反射電子信号としてとられた信号には低エネルギー二次電子が混入してしまっていたため、結果的に高い分解能を持つ高エネルギー反射電子検出方法は存在しなかった。
【0056】
これに対し本発明の装置においては、電子源から試料までの光学系上に試料から生じた高エネルギー反射電子および低エネルギー二次電子を連続的に分離する電極を設けこの電極が発生する電界によって、または図13に示した構成のように、これら試料から生じた高エネルギー反射電子および低エネルギー二次電子の軌道を分離する電磁界を設けることによって、それぞれのエネルギーに対応した位置で反射電子、および、二次電子をエネルギー別に連続的に検出することが出来るので、高エネルギー反射電子のみによる試料像の形成を始め、特定のエネルギーの信号電子のみによる試料画像を形成することを可能にしている。そして、本発明の一次電子線照射,高エネルギー反射電子検出方法においては、従来の高エネルギー反射電子の発生方法と異なり加速電圧を低く、即ちエネルギー状態を低くした場合においても、高エネルギー反射電子と低エネルギー二次電子をエネルギー別に連続的に分別して、比較的低いエネルギー状態の高エネルギー反射電子のみで試料像を形成することを可能にしている。
【0057】
このため、加速電圧が低い一次電子線は試料表面の浅い部分にしか入り込まず、試料からの高エネルギー反射電子は浅い部分から放出されるようになるため、この高エネルギー反射電子の信号には試料の組成情報に対して、試料の凹凸状態の情報が多く含まれるので、この状態の高エネルギー反射電子の信号を検出することによって、従来の二次電子走査と同等の試料像を形成することを可能にしている。また、絶縁物等の観察において試料が負に帯電(チャージアップ)している場合においても、上述したようにエネルギーの低い二次電子はその発生過程で試料表面の帯電の影響を受けるため、低エネルギー二次電子信号には試料の凹凸情報が忠実に反映されなくなるが、二次電子に比較してエネルギーレベルの高い反射電子では、帯電の影響を受けないため、試料の帯電があっても試料の凹凸情報を安定して得られるようになる。
【0058】
これから、本発明の一次電子線照射,高エネルギー反射電子検出方法により、試料表面の情報を、その表面が帯電していても正確に検出できることを、図17(c)の開口部近辺の試料像は示している。そして、本発明の走査形電子顕微鏡によれば、一次電子線照射に同期して、反射電子信号,二次電子信号をそれぞれエネルギー別に検出し、また、図13のような構成を使うことによってそれぞれのエネルギーの電子を同時に検出できるので、試料が帯電しない状態で凹凸情報のみを高分解能に観察するための、低エネルギー二次電子の検出、および、組成情報を主に観察するため、また帯電している試料の凹凸観察のための、高エネルギー反射電子の検出、これら両方を同時に観察するための、低エネルギー二次電子から高エネルギー反射電子までの検出を連続的に可能にしている。
【0059】
さらに、本発明の走査形電子顕微鏡によれば、高エネルギー反射電子信号による対象試料の像と、低エネルギー二次電子信号による対象試料の像を重ねあわせて試料像の情報を構築することを可能にしている。例えば、図17(b)の低エネルギー二次電子信号による対象試料の像は、ホールの開口部が帯電しているためその側面,底部しか正確な試料凹凸情報を得られていないが、図17(c)の高エネルギー反射電子信号によれば、開口部の正確な凹凸情報が得られているため、これらの試料像を重ねあわせること、即ち、ホールの内部を低エネルギー二次電子信号による試料像で、そして、その外部を高エネルギー反射電子による試料像を用いることにより、ホール全体の対象試料の情報を得ることが可能になる。さらにそれぞれの信号電子のエネルギーによって画像を色別に合成し1枚の画像を形成することができる。
【0060】
図17(d)は、に全エネルギーの電子信号を合成した像の説明図である。図17(d)は、エネルギー別に色付けをしたカラー像となっている。図17(d)により、ホール内の側面、底部の凹凸情報と共に、ホール開口部の凹凸情報、および、レジスト表面の起伏の状態が同時に観察できると共に、それぞれが、二次電子や反射電子の信号電子エネルギーによって色分けされているので、レジスト表面の帯電のしやすさや、組成の違い等が、色の違いとして表示されている。
【0061】
図18は、半導体基板(シリコンオキサイド)に設けられたフォトレジスト2212のホール2210の断面を測定した例の説明図である。図18(a)は測定対象の概略形状を示し、半導体基板(シリコンオキサイド)上に形成されたフォトレジスト中に、レジスト形成中に発生した定在波2220がいくつかの層状に存在していることを表している。尚、このフォトレジスト2212は帯電していない状態にある。
【0062】
図17(b)は、このホール2210の断面を断面方向から一般的な一次電子線走査,低エネルギー二次電子検出方法で構成した試料像を示しており、断面形状の凹凸状態を忠実に反映し、かつ、高い空間分解能を持つ試料像が得られていることが示している。図17(c)は一次電子線走査,高エネルギー反射電子検出方法による試料像を示しているが、試料からの高エネルギー反射電子には対象試料中の組成情報が多く含まれるので、これを検出することによってこのフォトレジスト中にレジスト形成時に発生した定在波が、いくつかの層を形成して存在していることが示されている。これは、高エネルギー反射電子が低エネルギー二次電子と比較して試料の深部から発生し、この高エネルギー反射電子信号にはその組成の相違が現れるようになるためである。
【0063】
そして、本発明の走査形電子顕微鏡によれば、一次電子線照射に同期して、高エネルギー反射電子信号から低エネルギー二次電子信号までそれぞれを連続的に明確に分離して同時に検出できるので、試料の凹凸情報と組成情報の両方を精密に対比して観察することが可能である。これにより、例えば試料がこわれやすく、電子線をあまり照射しないで試料の表面情報および組成情報を検出したい場合でも、一回の試料への一次電子線照射によって、凹凸情報と組成情報の両方を精密に得ることができるので、従来の複数回一次電子線を照射しなければ試料の表面情報と組成情報が得られない方法と比較して、試料へのダメージを最小限に抑えることができるので、広い範囲の試料測定アプリケーションに対応することができる。
【0064】
さらに、本発明の走査形電子顕微鏡によれば、高エネルギー反射電子信号による対象試料の像と、低エネルギー二次電子信号による対象試料の像を重ねあわせて試料像の情報を構築することが可能になる。本実施例の図18(b)の低エネルギー二次電子信号によれば、正確な試料表面情報が得られ、図18(c)の高エネルギー反射電子信号によれば、レジストの組成状態の情報が得られているため、これら2つの試料像を重ねあわせることにより、試料の表面状態と組成状態を容易に比較して表示できる。また、表示するための信号処理方法として、単にそれぞれの画像の輝度調整のみでなく、それぞれの画像状態に応じて所定の色情報を付加することによって、試料の表面状態と組成状態を容易に比較して表示することが可能である。
【0065】
図18(d)は、全エネルギーの電子信号を合成した像の説明図である。図18(d)では、エネルギー別に色付けをしたカラー像となっている。これにより、ホール内の正確な試料表面情報とレジストの組成状態の情報が同時に観察できると共に、それぞれが、二次電子や反射電子の信号電子エネルギーによって色分けされているので、組成の違い等が色の違いとして表示されている。
【0066】
本発明の走査形電子顕微鏡による画像表示の他の例についてさらに説明する。図19は、半導体基板(シリコンオキサイド)上の異物の画像例を示す図である。異物の部分が持つエネルギーの周辺の画像だけ表示したものが、図19(b)である。このように、表示するエネルギー範囲を限定することで、異物を特定しやすくなる。自動で画像処理により異物の位置を特定する場合にも、予め予想される異物のエネルギー範囲のデータを取得しておき、そのエネルギー範囲に着目し、その画像によって異物の位置を特定することで、より正確に異物を捉えることができる。特にこの方法は、異物の位置が見つかりにくい場合に有効である。低倍率で広い面積範囲にわたって目標の物体・異物の特性エネルギー範囲の画像を調べることにより、従来の画像認識の方法では、捕まえられなかった異物を捕まえることができる。
【0067】
また、各エネルギー画面を合成した画像である図19(a)では、異物を例えば赤系等の目立つ色で表示することで、人間にも確認しやすいように表示させることができる。図19(c)は、異物のエネルギー範囲以外のあるエネルギー範囲の画像を表示したものである。単純なモノクロ画像では確認しにくい、表面の組成の相違、小さな凹凸が黒点として確認される。
【0068】
図20は、ポリシリコンラインをエッチングした後、アッシングしたサンプルの画像を示している。ポリシリコンラインの左右に異物が付着していることが確認できる。図20(b)は、特に異物のみが発する信号電子のエネルギー範囲のみで作成した画像である。この部分に赤系等の目立つ配色を割り当て、図20(a)に示すようにカラー画像を作成することにより、異物の存在やその位置がわかりやすい画像を作成できる。図20(c)は、異物のエネルギー範囲以外のあるエネルギー範囲の画像を表示したものである。単純なモノクロ画像では確認しにくい、表面の組成の相違、小さな凹凸が黒点として確認される。
【0069】
図21は、シリコン基板上の薄膜積層試料の断面の説明図である。図21(b)は、同一の試料断面をエネルギーの異なる信号電子を用いて形成した走査像である。信号電子のエネルギーによって走査像に現れる層が異なっている。これら信号電子のエネルギーの異なる各走査像にそれぞれ特定の色を割り当て合成することで、層毎に色の異なるカラー画像である図21(a)が得られる。図21(a)により、この1枚の画像で、各層の厚み、材料の混ざり具合、各層相互の関係等を一目で認識できる。
【0070】
【発明の効果】
本発明によれば、観察試料の微細構造だけでなく、物質的な分布をもカラー表示で識別することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による走査形電子顕微鏡の一実施例を示す概略図。
【図2】(a)は電子検出器に印加する電圧Vbの変化の様子を示す図、(b)は一次電子線のY方向の偏向走査信号の図、(c)は1画像取得時の信号電子電流の平均推移を示す図、(d)は信号電子のエネルギー分布を示す図、(e)は信号電子のエネルギー分布に対応した配色分布とRGB成分の分布を示す図。
【図3】二次電子、反射電子のスペクトルの説明図。
【図4】電子信号曲線:fs(E)がE1,E1+δの間で作る面積ΔSの説明図。
【図5】信号量に比例して、色変化が大きくなるように配色を分布させた例を示す図。
【図6】信号電子のエネルギー分布で微小信号を強調した例を示す図。
【図7】バイアス電圧の変化を数フレーム毎に変化させる例を示す図。
【図8】本発明による分析信号の処理手順を示すフローチャート。
【図9】本発明による走査形電子顕微鏡の他の実施例を示す概略図。
【図10】直交電磁界発生部の平面構成図。
【図11】(a)は軸対称電極に印加するバイアス電圧Vb’の変化の様子を示す図、(b)は1画像取得時の信号電子電流の平均推移を示す図。
【図12】本発明による走査形電子顕微鏡の他の実施例を示す概略図。
【図13】本発明による走査形電子顕微鏡の他の実施例を示す概略図。
【図14】アレー状電子検出器の一実施例を示す図。
【図15】アレー状電子検出器の拡大図。
【図16】本発明を試料が傾斜できるタイプの走査形電子顕微鏡に適用した例を示す図。
【図17】本発明の走査形電子顕微鏡で試料を測定した場合の表示画面例を示す図。
【図18】本発明の走査形電子顕微鏡で試料を測定した場合の表示画面例を示す図。
【図19】本発明により異物試料を観察した例を示す図。
【図20】本発明により異物試料を観察した例を示す図。
【図21】本発明により多層材料を観察した例を示す図。
【符号の説明】
101…陰極、102…第一陽極、103…第二陽極、104…一次電子線、105…収束レンズ、106、206…対物レンズ、107、207…試料、108…偏向コイル、109,450…二次電子、110…反射電子、111…対向電極、112…多孔電極、113、114…エネルギー制御用負電位多孔電極、117…接地電極、115…絞り装置、116…シールド筒、120…信号電子検出器、120…アレー状信号電子検出器、125…表示装置(CRT・LCD)、140…走査形電子顕微鏡制御システム、150…CPU、151…可変電圧電源、152…記憶装置(メモリ、ハードディスク)、153…バイアス電源、154…入力装置、155…画像積算器、156…表示装置I/F、160…信号変換器、170…収束レンズ制御器、174…対物レンズ制御器、176…走査制御器、178…信号処理器、213,214…直交磁界発生コイル、440…二次電子変換電極、441…軸対称電極、901…シンチレータ、902…光電面、903…アレー状ダイノード、904…バイアス電圧、905…電極アレー、906…アレー状ダイノード、2212…フォトレジスト、2210…コンタクトホール、2214…フォトレジスト上の起伏、2220…定在波。
【発明の属する技術分野】
本発明は電子線装置に係り、特に試料から発生した反射電子或いは二次電子等の信号電子を検出し、検出した信号電子に基づいて試料走査像を表示する走査形電子顕微鏡に関する。
【0002】
【従来の技術】
走査形電子顕微鏡は、加速した一次電子線を観察する試料表面に2次元的に微小に走査し、そのとき発生する反射電子、或いは二次電子等の信号電子を検出し、それらの信号強度(信号電流)を走査信号と同期させて、画像として表示装置に2次元的に拡大表示する装置である。信号電子は、比較的低エネルギーの二次電子が大部分を占める。しかし、一次電子線を照射した試料表面からは低エネルギー二次電子だけでなく、一次電子線とほぼ同程度のエネルギーで弾性的に反射してくる反射電子、またこの反射電子と低エネルギー二次電子の間の範囲のエネルギーを持つ電子も放出されてくる。このように信号電子のエネルギーは、0から一次電子線のエネルギー値まで連続的に分布しており、これらの分布の割合は、試料およびその材料特有の性質を反映している。従来の一般的な走査形電子顕微鏡は、これらの電子を区別することなく、単にそれらの信号電子の合計を信号電流、または、信号強度として検出し、その強度に応じて表示装置に画素の明暗として画像を表示する。また、特許文献1のように反射電子用検出器と低エネルギー二次電子用検出器を設け、それぞれの信号を独立に計測することを可能にした技術もある。特許文献1には、反射電子信号,二次電子信号による画像、及びこれらの画像を合成した画像を表示することが記載されている。また、反射電子信号、または、二次電子信号のどちらか一方、又はおのおの検出信号レベルを表示装置へ表示する色信号に変換し合成することも記載されている。これにより、同一の試料に対し、反射電子,二次電子信号により微妙に異なる部分を色の差として区別して表示することが可能になる。この場合、合成する元の画像の種類は、反射電子信号画像と二次電子信号画像の2枚であり、合成画像は2色表示の画像となる。
【0003】
【特許文献1】
特開平7−192679号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
反射電子信号と二次電子信号を異なる色で表示すると、従来のモノクロ画像よりは情報量が多くなる。しかし、0から一次電子線のエネルギー値まで連続的に分布している信号電子の分布特性、すなわち、試料が持っている固有の特性を表示することはできなかった。
【0005】
本発明の目的は、一次電子線を試料に照射したときに発生する反射電子や二次電子等の信号電子の特性の違いを反映した像表示ができる走査形電子顕微鏡を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明では、一次電子線の照射によって試料から放出された信号電子を計測する信号電子検出器の部分に信号電子のエネルギー値を識別するための機能を付加した。そして、信号電子強度のエネルギー分布を計測し、各エネルギー値に色を割り当て、それぞれのエネルギー値の信号強度に対応した明るさで画像を構成し、それぞれのエネルギー値の画像、およびその合成画像を表示しするようにした。
【0007】
本発明によれば、走査形電子顕微鏡にて一次電子線を試料に照射したときに発生する反射電子や二次電子等の信号電子のエネルギー分布・特性を忠実に表示装置にカラーの画像として表示することができるので、試料の2次元的な微細表面構造だけでなく、試料物質の相違・分布等の情報も同時に表示・観察・確認することができる。基本的に電子のエネルギー状態に係らず電子が検出できるようになるので、エネルギーが高い状態の反射電子を検出し、試料の組成を調べる場合にも、高エネルギー反射電子と低エネルギー二次電子とを連続的に分別して検出し、正確な組成分析を行うことが可能になる。したがって、目的や試料の状態に応じて低エネルギー二次電子信号と高エネルギー反射電子信号を選択的に検出あるいは合成することができるだけでなく、試料の物質的な性質の違いを色で表すことができ、それらを1枚のカラー画像として観察できるので、従来の走査形電子顕微鏡のモノクロ画像よりも情報量の多い画像を提供することができ、凹凸情報、組成情報を1枚の画像で確認できるだけでなく、その色調等から、感覚的、感応的に試料の状態を把握できる。
【0008】
また、従来は、X線分析等を行わなければ、元素等の物質を同定できなかったものが、走査形電子顕微鏡の画像で予想が付けられるようになり、分析の時間、効率を大幅に向上させることができる。また、半導体デバイス製造ラインでの適用では、製造中の半導体基板を観察したときに、配線、プラグ、ホール底の電位的な異常・欠陥を色の違いで表示でき、欠陥解析の効率を上げることができる。また、基板表面に異物がある場合なども、異物を通常の表面物質とは異なった色で表示できるので、異物を発見しやすく、異物検査、解析、分析の効率を向上することができる。特に、エッチング後のレジストの残渣等がある場合、レジスト残渣部がSi等の基板とは異なった色で表示されるので、残渣の有無を即座に確認することができ、またその分布の具合も明瞭に表示されるので、良し悪しの程度を感覚的にも把握することができる。さらに画像処理により、残渣量をその分布面積の比率から定量的に評価することも可能になる。その他、従来得られなかった情報が表示され得るので、その画像から新たな発見がなされることが期待できる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。以下の図において、同じ機能部分には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0010】
図1は、本発明による走査形電子顕微鏡の一実施例を示す概略図である。陰極101と第一陽極102に印加される電圧V1により陰極101から放射された一次電子線104は、第二陽極103に印加される電圧Vaccに加速されて後段のレンズ系に進行する。この一次電子線104は、走査形電子顕微鏡制御システム140内の集束レンズ制御器170で制御された集束レンズ105と対物レンズ制御器174で制御された対物レンズ106により試料107に微小スポットとして集束され、二段の偏向コイル108で試料上を2次元的に走査される。偏向コイル108の走査信号は、入力装置154により指定された観察倍率に応じて、CPU150によって走査制御器176を介し制御される。
【0011】
この試料107の一次電子線照射点からは二次電子109と反射電子110が放出される。二次電子109と反射電子110は、対物レンズ106による磁界の影響で螺旋運動をしながら上部へ進行し、電子検出器120に捕捉される。電子検出器120からの信号は信号変換器160に入力され、それぞれの信号はおのおのゼロを含む任意の利得で増幅された後、ディジタル信号に変換される。そしてこれらの信号は、CPU150の指示により信号処理器178で信号処理され、その後、又は信号処理される前にもメモリ等による記憶手段152にデータ信号を記憶させている。そして、記憶手段152に記憶された反射電子,二次電子の信号、又は処理された信号を用いてCPU150はインターフェース156を介して、CRT等の表示装置125に試料の反射電子像,二次電子像、そして処理された信号による拡大された試料像を表示している。また、記憶手段を介さなくても、試料107を走査している時に、それらの試料像をリアルタイムで表示する機能を持つ。
【0012】
ここで、可変電圧電源151により信号検出器120に印加している電圧Vbを変化させることによって、信号検出器120で検出される二次電子109、反射電子110等の信号電子電流を制限している。信号検出器120に印加している可変電圧電源151の電圧が低い場合は、低エネルギーの二次電子109が引き込まれにくくなり、反射電子110等のエネルギーの高い信号電子のみが検出される。また、信号検出器120に印加している可変電圧電源151の電圧Vbを高くして行くと、それに従い低エネルギーの二次電子の取り込む量が増え、割合が高くなって行く。このように、電子検出器120に印加する電圧を変更すること等の手段で電子検出器120に入る信号電子のエネルギーを変化させ、信号処理器178、および、CPU150の制御によって、信号電子のエネルギースペクトル分析を行う。さらに、そのエネルギー値とその強度に従いそれぞれ色と明度を割りあて、それぞれのエネルギー値の画像、および、それぞれのエネルギー値の画像を1つの画像に合成してカラーで表示する。
【0013】
可変電圧電源151から電子検出器120に印加する電圧Vbは、二次電子109や反射電子110などの信号の取り込み中に、図2(a)に示すように段階的に変化させてゆく。この変化は、図2(b)に示したような一次電子線の偏向走査信号と同期して行う。この場合は、1波長が画像1フレームに相当するY方向の偏向走査信号に同期させて変化させて行く。走査形電子顕微鏡における観察画像の作成は、観察領域を一次電子線104で2次元的に走査し、そのとき試料107から発生した二次電子109や反射電子110などの信号電子の強度を走査位置に対応して、2次元的画像として表示装置125に再現する。1フレームの画像は、X方向に繰り返し一次電子線104を走査し、それと共にY方向に走査位置をずらしながら2次元的に走査することで作成される。X方向、Y方向の偏向走査制御信号は、図2(b)に示すような、のこぎり波になる。この場合、Y方向の偏向走査制御信号ののこぎり波1山が、1フレームに相当する。画像の作成に際して、観察領域を高速に2次元的に走査し、同じ領域に対して複数の画像フレームを取得し、その画像を合成することで、チャージアップの影響やノイズが低減された画像を作ることができる。
【0014】
本発明の場合、具体的には例えば、画像取り込みを開始し、電子検出器120にVbの最大電圧を印加する。そして、最初の1フレーム画像取り込みが終了すると、電圧Vbを1段階低下させ、第二フレームの画像を取り込む。取得画像のフレーム数をNフレームとした場合。バイアス電圧Vbは、最大値から最小値まで、N段階に分け、1フレーム画像取得ごとに1段階ずつ電圧を変化させてゆく。このVbとY方向の偏向走査信号、即ち画像取得のタイミングの関係を図2(a)、および、図2(b)に示す。
【0015】
このときの二次電子109や反射電子110などの信号電子の強度推移の一例として図2(c)が得られる。図2(c)の縦軸は信号電子の強度Isである。図2(c)は、電子検出器120が検出した1フレーム画像分の全信号電子電流のバイアス電圧Vbに対する変化と見てもいいし、または、観察領域に割り当てた、1画素ごとの信号電流のバイアス電圧Vbに対する変化とみても良い。これを1画素の信号電流のバイアス電圧Vbに対する変化とみると、このような信号スペクトルが、画素数分存在する。
【0016】
この信号スペクトルを微分すると、図2(d)に示されるような信号電子のエネルギー分布が得られる。スペクトル右端のピークは、一次電子線が試料で弾性的に反射した反射電子110の信号である。二次電子、反射電子のスペクトルは、ADRIANUS J. DEKKER著:固体物理(コロナ社、橋本隆吉・神山雅英訳、458ページ)に記されている。これを図3に示す。図3において、bの部分に試料物質に固有の小さな極大が存在する。これらは、表面から逃げ出る前に一定の離散的なエネルギーを失って非弾性的に反射された一次電子線に対応している。信号電子の大部分は、比較的低エネルギーを持ち幅の広いピークCにある。これらの電子のエネルギー分布は、ほとんど一次電子線のエネルギーによらない。実際の計測でも単一金属試料に対して、これと同様な信号スペクトルが得られている。
【0017】
このようなスペクトルのエネルギー範囲の最大値から最小値にわたり紫から青、緑、黄、赤といった色を連続的に割り当てる。そして、それぞれのエネルギーレベルに対応した画像を割り当てた色で表示し、それらの画像を全フレームにわたって合成することで、信号電子のエネルギーに対応した色で表現されたカラーの観察画像を得ることができる。これによって、観察画像で2次元的な表面構造を表すだけでなく、各画素に対応した材料が出す固有の反射電子のエネルギー値を色で表現できるので、材料物質的な相違も同時に確認することができる。
【0018】
図2(e)に、信号電子のエネルギーの最大値から最小値まで、紫から青、空色、緑、黄、赤といった可視光色波長の短い順に連続的に割り当てた1例を示す。これを画像表示機能の三原色RGBの3要素に分解すると、図2(e)に示したような分布になる。図2(e)では、このRGBの各値を独立に最大値から最小値まで変化させ、それらを組み合わせることで、複数色のカラー表示が可能になる。RGB各値階調を16階調とすると、原理的には最大で、16×16×16=4096色の表現が可能である。また、RGB各値階調を256階調とすると、原理的には最大で、256×256×256=16,777,216色の表現が可能となる。
【0019】
図2(d)において、すべての画素に対する信号スペクトルの最大値を明度の最大値として割り当て、その1/2の値を明度中央値と割り当てると、図2(e)は明度の中央値におけるRGBそれぞれの階調の分布を示している。例えば図2(e)において、「緑」に対応する信号強度が、中央値以下である場合、その割合にしたがって、G:緑の階調を下げることで、画素の明度を下げることができる。また、エネルギー最大値付近の紫において明度が最大である場合、G:緑の階調を最大に上げることで明度を最大にすることができる。その他の中間色に対しても、それぞれのエネルギーの信号強度に対応した明度になるように、RGBの各階調を調節する。たとえは、緑に対応する信号強度が最大の場合には、赤:Rと青:Bの階調を共に最大にすることで、明度を最大にすることができる。
【0020】
各フレームで、取得される画像は、一次電子線の加速エネルギーを画像フレーム数で割った(分割した)エネルギー幅をもつ信号電子のスペクトルの一部である(図4参照)。このとき1フレームで表現される色調は基本的に1色で、一次電子線のスキャンに対応する信号電子の量によって画面の明暗が決定され、採度が最大の点から、白に向かって明るいほうに256階調、また、黒に向かって暗いほうに256階調取れる。したがって、図2(e)から各画像フレームの個々のピクセルがとり得る色の数は、256×5色×(256×2階調)=655,360色である。これらの画像フレームが重なりあうことで、最大256×256×256=16,777,216色が使われ得る。
【0021】
画像の合成は、各対応するピクセル毎の加算が望ましい。各画像フレームを合成して、1枚の画像を作成する場合、各画像フレームの対応する画素の赤黄青、RGB、もしくは、CMYKの色要素の諧調値を単純加算し、その加算結果を、各色、諧調に均等分配することが望ましい。例えば、画像の各ピクセルのRGB各値が合成のための加算によって、最大値がそれぞれR:4025、G:3602、B:4226になったとすると、個々のピクセルの値(Rij、Gij、Bij)は、単純加算の結果の値(Rij、Gij、Bij)に対し、Rij=Rij×256/4025、Gij=Gij×256/3602、Bij=Bij×256/4226にすると適当な、画像の合成ができる。ここで示した色の割り当ては、これ以外にもさまざまに考案され得る。例えば、赤から紫へのエネルギーの並び順を入れ替え、高エネルギー側の信号を赤に対応させ、低エネルギー側の信号を紫に対応させることもできる。
【0022】
また、変化を効果的に表現するため、途中の配色の分布を非線形にし、例えば、図2(d)で信号変化の大きな、低エネルギー側に配色の変化が多く付くように配分することも可能である。図4に示す様に、あるエネルギー領域の配色の変化を、信号を示す曲線と横軸が作る面積に比例させる。これにより信号の変化を効果的に色の変化で表現させることができる。画像フレームの加算枚数をN枚とする。図4に示すように、あるエネルギーE1からE1+δまでの領域に対し電子信号の曲線fs(E)が作る面積をΔSとするとき、配色の変化をこのΔSに比例させる。信号電子のエネルギーが“0”から最大値“Emax”までの間に作られる面積Sは、次式で表される。
【0023】
【数1】
【0024】
これは、1枚の画像取得時に電子検出器120が検出した、電子の総電荷量に比例する値である。これにより、エネルギーE1における配色の変化率C(E1)は、次式で表される。ここでkは通常、定数の1である。
【0025】
【数2】
【0026】
図5は、図2(d)の信号スペクトルに対して、信号量の多い部分に色変化を多く付くように配色を分布させた例である。ここで、明暗を除いた基本色を256×5色使っていたとすると、互いに隣り合う各フレーム間の基本配色の変化は、通常256×5/Nとなる。これに、式(2)の値をかけて、エネルギーE1に対応するフレームの色変化の割合は、次式で表せる。
【0027】
【数3】
【0028】
図2(d)において、試料の物質的な特長は、比較的高いエネルギーのa,b,c,d等の小さなピークに表れる。表示画像に試料物質の特徴を強調して表示するためにさまざまな方法が考えられるが、一例として、この信号電流スペクトルの対数をとり、これに対応させて画像表示をすることで、a,b,c,d等の小さなピークを強調することができる。この状態を、図6に示す。図6において、実線が、破線で示す信号電流スペクトルの対数をとったスペクトルである。
【0029】
また、ある特定のエネルギー値に電子信号を放出する物質の分布を確認したいといった用途に対しては、その様なエネルギー帯に赤等の目立つ色を対応させて表示することにより、目的の像観察をしやすくすることができる。
【0030】
1フレームごとの画像を重ね合わせるとき、電極電圧変化他の要因で、一次電子線のスキャン領域が、わずかに移動することがある。したがって、画像を重ね合わせるときには、それぞれのフレームの画像の明るさの相関をとり、画像がマッチするように重ね合わせて行く。この場合、まず、電極電圧等を変化させずに二次電子、反射電子すべての信号を取り込んだ、基準と成る画像を最初に取得、保存しておき、相関のベースとなる画像をこの全電子信号を含んだ画像にすると相関がとりやすい。
【0031】
図7は、バイアス電圧Vbの値の変化を1フレーム毎ではなく、4フレーム毎に変化させている例である。このように1フレーム毎に電圧を変化させるのではなく、2フレーム毎、4フレーム毎等、数フレーム毎に電圧を変化させても、試料の物質的特徴を十分表現し得る。バイアス電圧Vbを変化させなければ、一次電子線のスキャン領域が移動することもなくなるので、同一バイアス電圧で取得した数フレームの画像は、そのまま合成し得る。最後に1枚のカラー画像へ合成するときに、予めそれぞれの同一のVbで取得し合成した画像群を、その画素の明度の相関から合わせ位置を調節し、合成することも有効である。
【0032】
さらに明度も、信号強度に対し、明暗を反転させて表示することもできる。このような操作は、入力装置154からの命令入力で、CPU150による信号処理器178、画像積算器155等の制御によってさまざまに変え得る。
【0033】
図8は、これら一連の作業をフローチャートにまとめたものである。
まず、フレーム数Nを決定する(ステップ301)。そして、バイアス電圧の初期値を設定し、電極に電圧を印加する(ステップ302)。この場合、一例として、すべての信号電子電流を取得する設定を初期値としておく。次に、このバイアス電圧設定条件のままで、基準となる画像を取得しておく(ステップ303)。この画像のフレーム数は、4から16フレーム程度、多くても32フレームもあれば十分である。
【0034】
次に、主目的の画像の取得を開始する(ステップ304)。一次電子線を2次元的に走査し、1フレームの画像信号を検出し、保存する(ステップ305)。これを、フレーム毎にバイアス電圧を変化させながら設定したフレーム数だけ繰り返す(ステップ307、308)。前述のように、このバイアス電圧の変化を数フレーム毎に行ってもかまわない。信号取得が終了したら、取得したすべてのデータを保存しておく(ステップ309)。この場合、データとしては、1フレーム画面の画素数×フレーム数(Vb変化の段数に対応)だけある。
【0035】
これらのデータから、各画素の信号スペクトルを取り出し、それを微分し、各エネルギー値に対する信号量を求める。これが、各色に対する明度となる(ステップ310)。各フレーム(Vb電圧:信号電子エネルギー)に配色をし、表示色を決定する。配色は、式(2)に示した方法を使って決定する(ステップ311)。次に、信号処理方法を指定する。物質の特徴を示す信号を強調するといったことが必要な場合、信号の対数をとるなどして、微小信号を強調する指示を入力する(ステップ312)。入力指示に従い、信号の補正を行う(ステップ313)。フレームごとの画像を作成する(ステップ314)。ステップ303で求めた基準画像に対して、マッチングを行い、各フレーム画像の位置を調節する(ステップ315)。調整後、それぞれのフレーム画像を合成する(ステップ316)。これで、1枚の観察画像が出来上がる。ステップ316では、所望のエネルギーの画像のみを表示するようにしてもかまわない。そうすることによって、特定エネルギー特性をもった試料上の個所の分布、面積比等をわかりやすく表示することができる。
【0036】
図9は、本発明による走査形電子顕微鏡の他の実施例を示す概略図である。図9において、光軸上に二次電子109を透過できる多孔電極112と対向電極111、および該電極で発生する電界Eとほぼ直交する磁界Bを発生させる図10に示した磁界発生用コイル213,214を配置して、二次電子109と反射電子110の軌道を偏向させる構成となっている。多孔電極112と対向電極111の電位差を±Ve(V)、磁界発生用コイル213,214の励磁電流をIb(A)、一次電子線の加速電圧をVacc(V)、多孔電極112と対向電極111、および磁界発生用コイル213,214の形状で決まる定数をKe,Kbとしたとき、特許公報第3291880号記載のように、次式の関係を保つようにIbおよびVeを制御し、比例定数K1,K2は一次電子線に偏向作用を及ぼさない条件に設定する。
【0037】
【数4】
【0038】
多孔電極112を透過した二次電子109の軌道を見込む位置に二次電子検出器120配置して検出する。また、反射電子軌道は二次電子と分離され、その反射電子軌道上に反射電子を二次電子に変換する二次電子変換電極440を配置する。この電極に負の電圧を印加すると反射電子は電極に衝突して、電極表面からエネルギーの小さい二次電子を発生する。直交電磁界の強さは、一次電子線104に対して偏向作用を及ぼさないように設定されているが、一次電子線に比較してエネルギーの小さい二次電子450は、磁界よりも電界によって強く曲げられる。その結果、多孔電極側に強く偏向されて多孔電極112を透過し、多孔電極を見込む位置に配置された電子検出器120で検出される。
【0039】
また、多孔電極112の下部に軸対称電極441を配置してこの電極に適当な負の電圧を印加すると、試料から発生した二次電子はこの軸対称電極を進行できずに試料側にはね返される。このように、軸対称電極441に印加する負電圧にしたがって、低エネルギー電子による信号が切り捨てられる。そして、エネルギーの高い反射電子のみが多孔電極上部に配置した変換電極440で二次電子450に変換される。この変換された二次電子450は、試料からの反射電子情報を反映しているため、この信号で像形成することは、試料からの反射電子信号で像形成することと等価となる。電子検出器120は、二次電子変換電極440で発生し、引き込まれる二次電子と、試料から放出され電磁界発生器によって偏向される二次電子を同じように検出できるため、電磁界発生器によって広い範囲に軌道分散(エネルギー分散)する反射電子、及び二次電子を高効率に検出することができる。
【0040】
軸対称電極441に印加する負電圧は、図1における電子検出器120の正のバイアス電圧Vbの逆の作用がある。したがって、図2(a)で示したVbの変化のように、可変電圧電源201から軸対称電極441に印加するバイアス電圧Vb’を、図11(a)に示すように、試料画像の取り込み時にN段に分割し、1フレーム画像取り込みごとにVb’を段階的に印加して行くようにする。こうすると図2(c)で示したのと同様に、電子検出器120には、図11(b)に示したような信号電流が得られる。
【0041】
図12は、本発明による走査形電子顕微鏡の他の実施例を示す概略図である。この走査形電子顕微鏡は、図9の装置における反射電子および二次電子のエネルギーをフィルタリングする機能をより強化したものである。低エネルギーの二次電子が直交電磁界部に入射すると、電磁界によって偏向され、多孔電極112を通って電子検出器120に向かう。このとき、多孔電極112と電子検出器120との間に、多孔電極113があり、これに負電圧を印加して、ここを通過する二次電子をそのエネルギーで制限する。比較的エネルギーの高い反射電子も同様に、直交電磁界以内に設けた負電圧が印加できる多孔電極114を通過するときにフィルタリングされ多孔電極114の電位を越えるエネルギーを持った電子のみがここを通過する。
【0042】
多孔電極113と114は同一の電源Vb’に接続されている。多孔電極114を通過した電子は、二次電子変換電極440に衝突し、二次電子450を発生する。この二次電子450も直交電磁界部の多孔電極112を通って電子検出器120へ達する。試料107と電子検出器120の間には、必ず負電位の多孔電極113もしくは114があるので、一次電子線104の照射によって試料107上で発生した二次電子109、および反射電子110は、この負電位を越えられるエネルギーを持つもののみが検出器120にて検出される。比較的高エネルギーの反射電子は、二次電子変換電極440に衝突して二次電子450を発生することで信号量を増幅することができる。
【0043】
直交電磁界内の多孔電極114は、接地されている多孔電極117にはさまれており、一次電子線104が通る光軸中央部は、シールド筒116によって電磁シールドされている。したがって、多孔電極114の負電位は、一次電子線104の軌道に影響を与えることはない。この構造により、低エネルギー二次電子から高エネルギー反射電子まで連続的に確実にエネルギー分析することができる。さらに、取得する信号電子のエネルギーを変更するよう電極の電圧を変更しても、一次電子線の軌道にはなにも変化を出さず、影響を与えないので、画像フレームを重ねるときに像位置がずれるという恐れがない。低エネルギー電子の信号量をできるだけ増大させるためには、軸対称電極441には、数十Vの正電圧が印加されていることが望ましいが必ずしも不可欠ではない。
【0044】
図13は、本発明による走査形電子顕微鏡の他の実施例を示す概略図である。この走査形電子顕微鏡は、図9の電子検出器120の代わりにアレー状の電子検出器121を配置したものである。
【0045】
アレー状の電子検出器121は、複数の検出器を一列に並べたようなものである。この検出器の列が、図13において、軸方向、縦に並ぶように配置する。こうすることで、エネルギーの低い二次電子は、直交電磁界によってすぐに偏向され、アレー状の電子検出器121の下部で検出される。一方、エネルギーの高い反射電子等は、図13において、アレー状の電子検出器121の上方で検出される。
【0046】
このようにアレー状の電子検出器121を使うことによって、信号電子のエネルギー分布を、電極等の電圧を変化させずに、信号電子を検出する検出器要素の位置によって計測することができる。アレー状の電子検出器121のそれぞれの検出器の数がM個有った場合、M段階に信号電子のエネルギーを分析できる。信号変換器160では、これらM段の信号を並列で処理し、それぞれの検出器要素の信号ごとに色を割り当てる。これら各検出要素で検出した信号に色成分及び信号強度情報を付加して、スキャン信号に同期させて1枚の画像を仕上げる。この場合、1フレームの画像が既に複数色(M色)のカラー画像になっていることが、上述の図1及び図9の実施例と異なる。通常の走査形電子顕微鏡と同様に、この1フレームの画像を複数枚取得して、それらを重ね合わせノイズを低減することができる。
【0047】
図14は、アレー状電子検出器の拡大図である。図14(a)に示すように、検出器の前面には、シンチレータ901とその背面に位置する光電面902があり、その後ろにダイノードアレー903がある。シンチレータ901には、バイアス電圧153が印加してあり、これにより、このシンチレータ901に入射した信号電子は加速され、シンチレータに衝突したときにシンチレータ901を発光させる。光電面902およびダイノードアレー903にも、図のように高電圧904が印加してある。電圧153および904は、数kVから数十kVが望ましい。ダイノードアレー903の背面には収集電極アレー905がある。また、ダイノードアレー903全体には、側面から磁場Bが印加されている。
【0048】
図15(a)は、図14(a)の拡大断面図である。ダイノードアレー903は、抵抗体の中にチャンネルごとに二次電子増倍用の通路を設けてある。この場合、この通路がM個あり、M個のチャンネルを形成している。この抵抗体の表面と裏面に金属電極を蒸着し、この電極に電圧を印加することで、各チャンネルに均一に電圧が印加できる。図14(b)にダイノードアレー903を示す。
【0049】
試料表面から発生した信号電子は、シンチレータ901に入射し、シンチレータ901を発光させる。その光が光電面901に入射すると、裏面から電子を発する。電子は、ダイノードに入るが、ここで、ダイノードには、側面から磁場が印加してあるので、直進できずチャネル側面に衝突する。このとき、複数個の二次電子が発生し、また加速される。この電子もまた磁場によって、偏向され、ダイノード壁面に衝突し、さらに多くの電子を発生させる。このようにして、電子電流が増倍されて行き、最後に電極905に達する。
【0050】
図15(b)は、ダイノードに抵抗体ではなく、金属電極を使った場合の図である。いくつかに分割された電極に電圧が印加されており、この電極内間を電子が増倍されながら進み、最後に電極905に達する。図14(c)に、この電極が並んだダイノードアレー906を示す。図15(a)および図15(b)は、共に図示していないが、光電面902からダイノードアレー903、電極アレー906までは、ガラス管等で密封されており、外部の影響を受けない構造にしておくことが望ましい。
【0051】
図16は、本発明を試料が傾斜できるタイプの走査形電子顕微鏡に適用した例を示す図である。検出器の部分は、図9、図12及び図13記載の構成を使用してもかまわない。
【0052】
図9及び図16で取得した1フレームごとの画像を重ね合わせるとき、図1の実施例の場合と同様に軸対称電極441の電圧変化他の要因で、一次電子線のスキャン領域が、わずかに移動することがある。したがって、画像を重ね合わせるときには、それぞれの画像の明るさの相関をとり、画像がマッチするように重ね合わせて行く。この場合、まず、電極電圧等を変化させずに二次電子、反射電子すべての信号を取り込んだ、基準と成る画像を最初に取得、保存しておき、相関のベースとなる画像をこの全電子信号を含んだ画像にすると相関がとりやすい。
【0053】
図17,図18は、本発明の走査形電子顕微鏡で試料を測定した場合の表示画面例を説明する図である。
図17は半導体基板(シリコンオキサイド)に設けられたフォトレジスト2212のホール2210を測定した例の説明図である。図17(a)は測定対象の概略形状を示し、ホール開口部近辺に起伏2214があり、その開口部近辺の試料表面が負に帯電している状態を表している。図17(b)はこのホールを開口部方向から一次電子線で走査した像を示しており、ホールの帯電していない壁面の定在波2220、底の部分の正確な像情報が得られているが、帯電している試料開口部近辺の正確な像状態は得られていないことを示している。図17(c)は一次電子線で試料を走査し、高エネルギー反射電子信号による試料表面像を現しており、ホールの底の部分の像は得られていないが、試料開口部近辺の正確な起伏状態が得られていることを示している。
【0054】
通常、一次電子線で試料を走査したことにより発生する二次電子信号は、試料の表面から放出されるエネルギーの低い(数エレクトロンボルト程度)電子であるため、試料の表面から放出され試料の凹凸状態を忠実に反映するため、電子線の試料材料内部での散乱の影響を受けず、高い空間分解能の情報を備える特徴を持っている。しかし、従来の低エネルギー二次電子信号による分析方法においては、試料表面が負に帯電(以下、チャージアップと表現する)していると、低エネルギー二次電子の上昇がチャージアップによって妨げられてしまい、このため、ホール開口部近辺の起伏、即ち試料表面の凹凸状態を忠実に反映することが出来なくなってしまう現象がある。この現象によって帯電している試料開口部近辺の正確な像情報が得られていないことを図17(b)の試料像は示している。これに対し図17(c)に示した試料像は、高エネルギー反射電子によるものであるが、低エネルギー二次電子では得られていない試料開口部近辺の正確な起伏状態が判明していることを示している。
【0055】
以下、本発明の走査形電子顕微鏡において、高エネルギー反射電子により正確な試料像を検出することができる理由を述べる。従来の高エネルギー反射電子検出方法においては、エネルギーが高い高加速電圧の一次電子線で試料を走査しているので試料の深部に入り込み、これに対応して試料の深部からエネルギーが高い反射電子(ほぼ加速電圧と同じエネルギー)を発生させるものである。このため一次電子線の試料内部散乱の影響で高エネルギー反射電子の発生領域が広がり空間分解能は低下するが、その信号は試料表面の凹凸状態の他に組成情報を多く含む特徴を持っているため、従来方法においては主に試料内の組成情報を得るためにエネルギーが高い反射電子を検出していた。また、従来の高エネルギー反射電子検出方法として、低加速の一次電子線で試料を走査し、試料の表面近くで高エネルギー反射電子を発生させ、なるべく空間分解能を低下させずに高エネルギー反射電子を検出する方法も存在するが、従来例の方法では試料に一次電子線を照射することにより発生する低エネルギー二次電子と、高エネルギー反射電子を正確に分別して検出する手段がなく、高エネルギー反射電子信号としてとられた信号には低エネルギー二次電子が混入してしまっていたため、結果的に高い分解能を持つ高エネルギー反射電子検出方法は存在しなかった。
【0056】
これに対し本発明の装置においては、電子源から試料までの光学系上に試料から生じた高エネルギー反射電子および低エネルギー二次電子を連続的に分離する電極を設けこの電極が発生する電界によって、または図13に示した構成のように、これら試料から生じた高エネルギー反射電子および低エネルギー二次電子の軌道を分離する電磁界を設けることによって、それぞれのエネルギーに対応した位置で反射電子、および、二次電子をエネルギー別に連続的に検出することが出来るので、高エネルギー反射電子のみによる試料像の形成を始め、特定のエネルギーの信号電子のみによる試料画像を形成することを可能にしている。そして、本発明の一次電子線照射,高エネルギー反射電子検出方法においては、従来の高エネルギー反射電子の発生方法と異なり加速電圧を低く、即ちエネルギー状態を低くした場合においても、高エネルギー反射電子と低エネルギー二次電子をエネルギー別に連続的に分別して、比較的低いエネルギー状態の高エネルギー反射電子のみで試料像を形成することを可能にしている。
【0057】
このため、加速電圧が低い一次電子線は試料表面の浅い部分にしか入り込まず、試料からの高エネルギー反射電子は浅い部分から放出されるようになるため、この高エネルギー反射電子の信号には試料の組成情報に対して、試料の凹凸状態の情報が多く含まれるので、この状態の高エネルギー反射電子の信号を検出することによって、従来の二次電子走査と同等の試料像を形成することを可能にしている。また、絶縁物等の観察において試料が負に帯電(チャージアップ)している場合においても、上述したようにエネルギーの低い二次電子はその発生過程で試料表面の帯電の影響を受けるため、低エネルギー二次電子信号には試料の凹凸情報が忠実に反映されなくなるが、二次電子に比較してエネルギーレベルの高い反射電子では、帯電の影響を受けないため、試料の帯電があっても試料の凹凸情報を安定して得られるようになる。
【0058】
これから、本発明の一次電子線照射,高エネルギー反射電子検出方法により、試料表面の情報を、その表面が帯電していても正確に検出できることを、図17(c)の開口部近辺の試料像は示している。そして、本発明の走査形電子顕微鏡によれば、一次電子線照射に同期して、反射電子信号,二次電子信号をそれぞれエネルギー別に検出し、また、図13のような構成を使うことによってそれぞれのエネルギーの電子を同時に検出できるので、試料が帯電しない状態で凹凸情報のみを高分解能に観察するための、低エネルギー二次電子の検出、および、組成情報を主に観察するため、また帯電している試料の凹凸観察のための、高エネルギー反射電子の検出、これら両方を同時に観察するための、低エネルギー二次電子から高エネルギー反射電子までの検出を連続的に可能にしている。
【0059】
さらに、本発明の走査形電子顕微鏡によれば、高エネルギー反射電子信号による対象試料の像と、低エネルギー二次電子信号による対象試料の像を重ねあわせて試料像の情報を構築することを可能にしている。例えば、図17(b)の低エネルギー二次電子信号による対象試料の像は、ホールの開口部が帯電しているためその側面,底部しか正確な試料凹凸情報を得られていないが、図17(c)の高エネルギー反射電子信号によれば、開口部の正確な凹凸情報が得られているため、これらの試料像を重ねあわせること、即ち、ホールの内部を低エネルギー二次電子信号による試料像で、そして、その外部を高エネルギー反射電子による試料像を用いることにより、ホール全体の対象試料の情報を得ることが可能になる。さらにそれぞれの信号電子のエネルギーによって画像を色別に合成し1枚の画像を形成することができる。
【0060】
図17(d)は、に全エネルギーの電子信号を合成した像の説明図である。図17(d)は、エネルギー別に色付けをしたカラー像となっている。図17(d)により、ホール内の側面、底部の凹凸情報と共に、ホール開口部の凹凸情報、および、レジスト表面の起伏の状態が同時に観察できると共に、それぞれが、二次電子や反射電子の信号電子エネルギーによって色分けされているので、レジスト表面の帯電のしやすさや、組成の違い等が、色の違いとして表示されている。
【0061】
図18は、半導体基板(シリコンオキサイド)に設けられたフォトレジスト2212のホール2210の断面を測定した例の説明図である。図18(a)は測定対象の概略形状を示し、半導体基板(シリコンオキサイド)上に形成されたフォトレジスト中に、レジスト形成中に発生した定在波2220がいくつかの層状に存在していることを表している。尚、このフォトレジスト2212は帯電していない状態にある。
【0062】
図17(b)は、このホール2210の断面を断面方向から一般的な一次電子線走査,低エネルギー二次電子検出方法で構成した試料像を示しており、断面形状の凹凸状態を忠実に反映し、かつ、高い空間分解能を持つ試料像が得られていることが示している。図17(c)は一次電子線走査,高エネルギー反射電子検出方法による試料像を示しているが、試料からの高エネルギー反射電子には対象試料中の組成情報が多く含まれるので、これを検出することによってこのフォトレジスト中にレジスト形成時に発生した定在波が、いくつかの層を形成して存在していることが示されている。これは、高エネルギー反射電子が低エネルギー二次電子と比較して試料の深部から発生し、この高エネルギー反射電子信号にはその組成の相違が現れるようになるためである。
【0063】
そして、本発明の走査形電子顕微鏡によれば、一次電子線照射に同期して、高エネルギー反射電子信号から低エネルギー二次電子信号までそれぞれを連続的に明確に分離して同時に検出できるので、試料の凹凸情報と組成情報の両方を精密に対比して観察することが可能である。これにより、例えば試料がこわれやすく、電子線をあまり照射しないで試料の表面情報および組成情報を検出したい場合でも、一回の試料への一次電子線照射によって、凹凸情報と組成情報の両方を精密に得ることができるので、従来の複数回一次電子線を照射しなければ試料の表面情報と組成情報が得られない方法と比較して、試料へのダメージを最小限に抑えることができるので、広い範囲の試料測定アプリケーションに対応することができる。
【0064】
さらに、本発明の走査形電子顕微鏡によれば、高エネルギー反射電子信号による対象試料の像と、低エネルギー二次電子信号による対象試料の像を重ねあわせて試料像の情報を構築することが可能になる。本実施例の図18(b)の低エネルギー二次電子信号によれば、正確な試料表面情報が得られ、図18(c)の高エネルギー反射電子信号によれば、レジストの組成状態の情報が得られているため、これら2つの試料像を重ねあわせることにより、試料の表面状態と組成状態を容易に比較して表示できる。また、表示するための信号処理方法として、単にそれぞれの画像の輝度調整のみでなく、それぞれの画像状態に応じて所定の色情報を付加することによって、試料の表面状態と組成状態を容易に比較して表示することが可能である。
【0065】
図18(d)は、全エネルギーの電子信号を合成した像の説明図である。図18(d)では、エネルギー別に色付けをしたカラー像となっている。これにより、ホール内の正確な試料表面情報とレジストの組成状態の情報が同時に観察できると共に、それぞれが、二次電子や反射電子の信号電子エネルギーによって色分けされているので、組成の違い等が色の違いとして表示されている。
【0066】
本発明の走査形電子顕微鏡による画像表示の他の例についてさらに説明する。図19は、半導体基板(シリコンオキサイド)上の異物の画像例を示す図である。異物の部分が持つエネルギーの周辺の画像だけ表示したものが、図19(b)である。このように、表示するエネルギー範囲を限定することで、異物を特定しやすくなる。自動で画像処理により異物の位置を特定する場合にも、予め予想される異物のエネルギー範囲のデータを取得しておき、そのエネルギー範囲に着目し、その画像によって異物の位置を特定することで、より正確に異物を捉えることができる。特にこの方法は、異物の位置が見つかりにくい場合に有効である。低倍率で広い面積範囲にわたって目標の物体・異物の特性エネルギー範囲の画像を調べることにより、従来の画像認識の方法では、捕まえられなかった異物を捕まえることができる。
【0067】
また、各エネルギー画面を合成した画像である図19(a)では、異物を例えば赤系等の目立つ色で表示することで、人間にも確認しやすいように表示させることができる。図19(c)は、異物のエネルギー範囲以外のあるエネルギー範囲の画像を表示したものである。単純なモノクロ画像では確認しにくい、表面の組成の相違、小さな凹凸が黒点として確認される。
【0068】
図20は、ポリシリコンラインをエッチングした後、アッシングしたサンプルの画像を示している。ポリシリコンラインの左右に異物が付着していることが確認できる。図20(b)は、特に異物のみが発する信号電子のエネルギー範囲のみで作成した画像である。この部分に赤系等の目立つ配色を割り当て、図20(a)に示すようにカラー画像を作成することにより、異物の存在やその位置がわかりやすい画像を作成できる。図20(c)は、異物のエネルギー範囲以外のあるエネルギー範囲の画像を表示したものである。単純なモノクロ画像では確認しにくい、表面の組成の相違、小さな凹凸が黒点として確認される。
【0069】
図21は、シリコン基板上の薄膜積層試料の断面の説明図である。図21(b)は、同一の試料断面をエネルギーの異なる信号電子を用いて形成した走査像である。信号電子のエネルギーによって走査像に現れる層が異なっている。これら信号電子のエネルギーの異なる各走査像にそれぞれ特定の色を割り当て合成することで、層毎に色の異なるカラー画像である図21(a)が得られる。図21(a)により、この1枚の画像で、各層の厚み、材料の混ざり具合、各層相互の関係等を一目で認識できる。
【0070】
【発明の効果】
本発明によれば、観察試料の微細構造だけでなく、物質的な分布をもカラー表示で識別することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による走査形電子顕微鏡の一実施例を示す概略図。
【図2】(a)は電子検出器に印加する電圧Vbの変化の様子を示す図、(b)は一次電子線のY方向の偏向走査信号の図、(c)は1画像取得時の信号電子電流の平均推移を示す図、(d)は信号電子のエネルギー分布を示す図、(e)は信号電子のエネルギー分布に対応した配色分布とRGB成分の分布を示す図。
【図3】二次電子、反射電子のスペクトルの説明図。
【図4】電子信号曲線:fs(E)がE1,E1+δの間で作る面積ΔSの説明図。
【図5】信号量に比例して、色変化が大きくなるように配色を分布させた例を示す図。
【図6】信号電子のエネルギー分布で微小信号を強調した例を示す図。
【図7】バイアス電圧の変化を数フレーム毎に変化させる例を示す図。
【図8】本発明による分析信号の処理手順を示すフローチャート。
【図9】本発明による走査形電子顕微鏡の他の実施例を示す概略図。
【図10】直交電磁界発生部の平面構成図。
【図11】(a)は軸対称電極に印加するバイアス電圧Vb’の変化の様子を示す図、(b)は1画像取得時の信号電子電流の平均推移を示す図。
【図12】本発明による走査形電子顕微鏡の他の実施例を示す概略図。
【図13】本発明による走査形電子顕微鏡の他の実施例を示す概略図。
【図14】アレー状電子検出器の一実施例を示す図。
【図15】アレー状電子検出器の拡大図。
【図16】本発明を試料が傾斜できるタイプの走査形電子顕微鏡に適用した例を示す図。
【図17】本発明の走査形電子顕微鏡で試料を測定した場合の表示画面例を示す図。
【図18】本発明の走査形電子顕微鏡で試料を測定した場合の表示画面例を示す図。
【図19】本発明により異物試料を観察した例を示す図。
【図20】本発明により異物試料を観察した例を示す図。
【図21】本発明により多層材料を観察した例を示す図。
【符号の説明】
101…陰極、102…第一陽極、103…第二陽極、104…一次電子線、105…収束レンズ、106、206…対物レンズ、107、207…試料、108…偏向コイル、109,450…二次電子、110…反射電子、111…対向電極、112…多孔電極、113、114…エネルギー制御用負電位多孔電極、117…接地電極、115…絞り装置、116…シールド筒、120…信号電子検出器、120…アレー状信号電子検出器、125…表示装置(CRT・LCD)、140…走査形電子顕微鏡制御システム、150…CPU、151…可変電圧電源、152…記憶装置(メモリ、ハードディスク)、153…バイアス電源、154…入力装置、155…画像積算器、156…表示装置I/F、160…信号変換器、170…収束レンズ制御器、174…対物レンズ制御器、176…走査制御器、178…信号処理器、213,214…直交磁界発生コイル、440…二次電子変換電極、441…軸対称電極、901…シンチレータ、902…光電面、903…アレー状ダイノード、904…バイアス電圧、905…電極アレー、906…アレー状ダイノード、2212…フォトレジスト、2210…コンタクトホール、2214…フォトレジスト上の起伏、2220…定在波。
Claims (23)
- 電子線源と、前記電子線源から放出された一次電子線を試料上で走査する走査偏向器と、電子線照射によって試料から放出された信号電子を検出する信号電子検出器と、画像表示部とを備え、前記画像表示部に試料の走査像を表示する走査形電子顕微鏡において、
前記信号電子のエネルギー分布を計測し、計測されたエネルギー値とその強度に従いそれぞれ色と明度を割り当て、1つの画像に合成して前記画像表示部にカラー表示することを特徴とする走査形電子顕微鏡。 - 請求項1記載の走査形電子顕微鏡において、前記信号電子検出器に印加する電圧を前記走査偏向器による前記一次電子線の走査と同期して段階的に変化させることにより信号電子のエネルギー分布を計測することを特徴とする走査形電子顕微鏡。
- 請求項1記載の走査形電子顕微鏡において、試料と前記信号電子検出器との間に前記信号電子検出器に入射する信号電子のエネルギーを制限するための制御電極を備え、当該制御電極に印加する電圧を前記走査偏向器による前記一次電子線の走査と同期して段階的に変化させることにより信号電子のエネルギー分布を計測することを特徴とする走査形電子顕微鏡。
- 請求項2又は3記載の走査形電子顕微鏡において、取得画像のフレーム数がN(Nは正の整数)の場合、前記段階的に変化させる電圧を最大値から最小値までN段階に分け、1フレーム画像取得ごとに1段階ずつ変化させることを特徴とする走査形電子顕微鏡。
- 請求項2又は3記載の走査形電子顕微鏡において、前記段階的に変化させる電圧を指定された画像フレーム数毎に変化させることを特徴とする走査形電子顕微鏡。
- 請求項4記載の走査形電子顕微鏡において、1フレーム毎の画像を重ね合わせるとき、それぞれのフレーム画像の明るさの相関をとり、各フレーム画像がマッチするように重ね合わせることを特徴とする走査形電子顕微鏡。
- 請求項5記載の走査形電子顕微鏡において、前記段階的に変化させる電圧を同じ電圧にして取得した複数フレームの画像はそれぞれそのまま合成して合成画像とし、それらを最後に1枚のカラー画像に合成するとき前記各合成画像の画素の明度の相関から合わせ位置を調節して合成することを特徴とする走査形電子顕微鏡。
- 請求項1記載の走査形電子顕微鏡において、前記信号電子検出器によって広いエネルギー範囲の信号電子を検出して取得した試料の走査像を基準とし、各エネルギーの信号電子による走査像を、前記基準の走査像との明度の相関をもとに合わせ位置を調節し合成することを特徴とする走査形電子顕微鏡。
- 請求項1記載の走査形電子顕微鏡において、前記一次電子線に偏向作用を及ぼさず前記信号電子を前記信号電子検出器の方に偏向する直交電磁界を光軸上に発生させる直交電磁界発生部を有し、前記信号電子検出器は複数の検出器を光軸方向に並べたアレー状電子検出器であることを特徴とする走査形電子顕微鏡。
- 請求項9記載の走査形電子顕微鏡において、前記アレー状電子検出器は、シンチレータ、光電面、ダイノードアレー及び集電電極アレーを有し、前記ダイノードアレーは、一体となった抵抗体の中に極数分だけチャンネル孔が並べて設けられていることを特徴とする走査形電子顕微鏡。
- 請求項9記載の走査形電子顕微鏡において、前記アレー状電子検出器は、シンチレータ、光電面、ダイノードアレー、及び集電電極アレーを有し、前記ダイノードアレーは、極数分だけチャンネル孔が空いている電極を複数並べて構成されていることを特徴とする走査形電子顕微鏡。
- 請求項1記載の走査形電子顕微鏡において、前記信号電子のエネルギー値に従い色を割り当てるとき、エネルギー値の最大値から最小値にわたり可視光色波長の順に割り当てることを特徴とする走査形電子顕微鏡。
- 請求項12において、各エネルギー領域の配色の変化がそれぞれのエネルギー領域における信号電子の信号強度に比例するように配色を割り当てたことを特徴とする走査形電子顕微鏡。
- 請求項1記載の走査形電子顕微鏡において、前記信号電子の各エネルギー値における信号強度に従い画素の明度を割りあて、すべての画素に対する信号スペクトルの信号強度の最大値を明度の最大値として割り当て、その1/2の値を明度中央値と割り当てることを特徴とする走査形電子顕微鏡。
- 請求項1記載の走査形電子顕微鏡において、前記信号電子の各エネルギー値における信号強度の対数値を明度に対応させたことを特徴とする走査形電子顕微鏡。
- 請求項1記載の走査形電子顕微鏡において、前記信号電子のエネルギー値に従い色を割り当てるとき、特定のエネルギー値に指定した色を割り当てることを特徴とする走査形電子顕微鏡。
- 請求項1記載の走査形電子顕微鏡において、指定した1つの電子エネルギー値に対応する画像を表示又は複数の電子エネルギー値に対応する画像を合成して表示することを特徴とする走査形電子顕微鏡。
- 電子線源と、前記電子線源から放出された一次電子線を試料上で走査する走査偏向器と、電子線照射によって試料から放出される信号電子を検出する信号電子検出器とを備える走査形電子顕微鏡において、
前記信号電子検出器と試料との間に配置された制御電極及び前記制御電極に電圧を印加する可変電圧電源を有し、前記可変電圧電源から前記制御電極に印加する電圧を変化させることによって前記信号電子検出器で検出される信号電子のエネルギー分布を計測する機能を有することを特徴とする走査形電子顕微鏡。 - 請求項18記載の走査形電子顕微鏡において、
正電圧が印加され電子が前記信号電子検出器に通過し得る多孔電極と負電圧を印加された電極とからなる一対の電界発生電極対を有し、前記一次電子線に偏向作用を及ぼさず前記信号電子を前記信号電子検出器の方向に偏向する直交電磁界を光軸上に発生させる直交電磁界発生部と、
前記直交電磁界発生部の電子源側部に前記一次電子線の軌道を囲むように設けられた電磁界遮蔽用の金属筒と、
前記金属筒の試料側端部付近に光軸方向の前後を接地電位の多孔電極で挟んで設けられ負電圧が印加された第1の多孔電極と、
前記正電圧が印加された多孔電極と前記信号電子検出器との間に前記第1の多孔電極と同電位の第2の多孔電極を設け、
前記第1及び第2の多孔電極を前記制御電極とすることを特徴とする走査形電子顕微鏡。 - 請求項19記載の走査形電子顕微鏡において、前記電子検出器で検出される電子のエネルギー値とその強度に従いそれぞれ色と明度を割り当て、1つの画像に合成してカラー表示することを特徴とする走査形電子顕微鏡。
- 一次電子線を試料上に走査して照射するステップと、
前記一次電子線の照射によって試料から発生した信号電子を前記走査に同期してエネルギー別に検出するステップと、
検出された信号電子のエネルギー値とその強度に従いそれぞれ色と明度を割り当て、試料の走査像をカラー表示することを特徴とする試料観察方法。 - 請求項21記載の試料観察方法において、複数の画像フレームを合成して1枚の画像を作成するステップを含み、各画像フレームの対応する画素の赤黄青、RGB、もしくは、CMYKの色要素の諧調値を単純加算し、その加算結果を各色、諧調に均等分配したことを特徴とする試料観察方法。
- 一次電子線を試料上に走査して照射するステップと、
前記一次電子線の照射によって試料から発生した信号電子を前記走査に同期してエネルギー別に検出するステップと、
特定のエネルギーを有する信号電子に基づく走査画像を表示し、その信号電子に対応する構造の位置を特定することを特徴とする試料観察方法。
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JP2006108121A (ja) | 電子分光器及びそれを備えた透過型電子顕微鏡 |
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