JP2005003943A - 光学素子およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】電界により帯電性高分子ゲルを繰り返し膨潤・収縮させても経時的に安定した体積変化量を維持することができる光学素子を提供すること。
【解決手段】対向配置された一対の基板と、該一対の基板の対向面間に封入された液体および該液体を電界の付与により吸収・放出して膨張・収縮する帯電性高分子ゲルと、を少なくとも含み、前記一対の基板の少なくとも一方の対向面が、前記帯電性高分子ゲルを固定する接着固定部を少なくとも有し、前記帯電性高分子ゲルが前記接着固定部を介して前記少なくとも一方の対抗面に固定された光学素子において、(1)前記接着固定部の面積が、前記帯電性高分子ゲルの最大膨張時の最大断面積よりも小さく、且つ、(2)前記接着固定部の周囲に非接着部が設けられ、前記非接着部が、少なくとも前記帯電性高分子ゲルの最大膨張時の最長外周線および該最長外周線よりも内側に設けられていることを特徴とする光学素子。
【選択図】 なし
【解決手段】対向配置された一対の基板と、該一対の基板の対向面間に封入された液体および該液体を電界の付与により吸収・放出して膨張・収縮する帯電性高分子ゲルと、を少なくとも含み、前記一対の基板の少なくとも一方の対向面が、前記帯電性高分子ゲルを固定する接着固定部を少なくとも有し、前記帯電性高分子ゲルが前記接着固定部を介して前記少なくとも一方の対抗面に固定された光学素子において、(1)前記接着固定部の面積が、前記帯電性高分子ゲルの最大膨張時の最大断面積よりも小さく、且つ、(2)前記接着固定部の周囲に非接着部が設けられ、前記非接着部が、少なくとも前記帯電性高分子ゲルの最大膨張時の最長外周線および該最長外周線よりも内側に設けられていることを特徴とする光学素子。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気的な刺激に応じて可逆的に光の透過率、吸収や光散乱性などを制御できる光学素子及びその製造方法に関する。より詳しくは、電気的な刺激にを利用する調光素子、表示素子、記録素子、センサー等に利用可能な光学素子およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
pH変化、イオン強度変化、化学物質の吸脱着、溶媒組成変化、あるいは熱、光、電気刺激などの付与によって可逆的に膨潤・収縮(体積変化)を起こす刺激応答性高分子ゲルを利用して、光の透過量や散乱性を制御することで調光・発色を行う光学素子技術が知られている。
例えば、温度変化によって液体を吸脱する高分子ゲルの膨潤・収縮による溶媒との屈折率差を変化させることによる光散乱性を制御して表示を行う素子が提案されている(例えば、特許文献1、2等参照)。また、電気刺激によって液体を吸収・放出する高分子ゲルの光散乱性の変化によって表示を行う素子(特許文献3参照)や、含有される導電性高分子のイオンドープ・脱ドープによるpH変化によって、高分子ゲルの光散乱性を変化させて表示を行う素子(特許文献4参照)、あるいは、電場の作用で液体を吸収・放出する高分子ゲルの膨潤・収縮により、光を遮光・反射・散乱あるいは透過状態を制御して、白濁・透明の表示を行う素子(特許文献5参照)が提案されている。
【0003】
一方、本発明者らは、飽和吸収濃度以上の顔料あるいは飽和散乱濃度以上の光散乱部材を刺激応答性高分子ゲル中に含有させた調光材料を提案している(例えば、特許文献6参照)。この調光材料は可逆的な大きな色変化が得られることや、多色化が容易であることなどの特長をもっている。また、この調光材料の粒子(高分子ゲル粒子)を多数個、基板上に固定することで、これを調光層とした光学素子を提案している(例えば、特許文献7参照)。このように高分子ゲル粒子を基板上に固定することは、膨潤・収縮の繰り返しによる高分子ゲルの凝集を防止することができ、さらには、高分子ゲルが膨潤した時の発色特性あるいは光散乱特性に優れた、良好なコントラスト比をもった素子を作製することができる。
【0004】
さらには、本発明者らは特定の構成からなる帯電性高分子ゲルが絶縁性有機系膨潤溶液中において電界に応答して繰り返し膨潤・収縮するという現象を見出し、これを利用した素子を作製した(例えば、特許文献8参照)。このような電界に応答する帯電性高分子ゲルは従来知られていた電流応答系高分子ゲルの課題であった消費電力の高さ、耐久性の低さ、膨潤液体の電気分解による気泡の発生等を改善するもので、表示素子、調光素子や光スイッチなどの光学素子、あるいはマイクロマシーンとして応用が期待できる。この特定の帯電性高分子ゲルの電界応答挙動は、帯電性高分子ゲル粒子が電極等の基材上に固定化されている場合において生じることがわかっている。つまり、帯電性高分子ゲル粒子が基板上に固定されていることが重要である。
【0005】
【特許文献1】
特開昭61−151621号公報
【特許文献2】
特開昭62−925号公報
【特許文献3】
特開平4−134325号公報
【特許文献4】
特公平7−95172号公報
【特許文献5】
特開平5−188354号公報
【特許文献6】
特開平11−236559号公報
【特許文献7】
特開2001−350163号公報
【特許文献8】
特開2003−147221号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような電界に応答する帯電性高分子ゲル粒子を基板表面に固定した光学素子について、本発明者らが更に検討したところ、帯電性高分子ゲルが電界によって膨潤・収縮(体積変化)を繰り返す過程で高分子ゲルが変形して基板表面に接触し貼り付いてしまうことで、経時的にその体積変化量が劣化するという問題があることを見出した。
本発明は、上記問題点を解決することを課題とする。すなわち、本発明は、電界により帯電性高分子ゲルを繰り返し膨潤・収縮させても経時的に安定した体積変化量を維持することができる光学素子およびその製造方法を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を達成するために、帯電性高分子ゲル(以下、「高分子ゲル」と略す場合がある)を用いた従来の光学素子において、体積変化量や応答性が経時的に劣化する原因について鋭意検討した。
その結果、従来の電界応答型の光学素子は、その作製に際し高分子ゲルを固定する基板表面全体にシランカップリング剤等の高分子ゲルを固定するための材料を付与し、この表面に高分子ゲルを固定していることが問題であることを見出した。
【0008】
すなわち、この場合、光学素子の作製時に基板表面に最初に接触した領域が高分子ゲルの固定に利用されるが、それ以外の全ての領域も高分子ゲルを固定する能力を有したままである。このため、従来の帯電性高分子ゲルを用いた光学素子においては、高分子ゲルの固定に関与しなかった領域に、高分子ゲルが膨潤・収縮を繰り返す過程で接触した際に貼り付きが起こってしまう可能性が非常に高い。
従って、本発明者らは、高分子ゲルが光学素子作製時において固定された領域以外で、少なくとも高分子ゲルが最大限に膨潤した際に接触可能な基板表面の領域では、経時的な貼り付きが起こらないようにすることが極めて重要であると考え、以下の本発明を想到するに到った。
すなわち、本発明は、
【0009】
<1> 対向配置された一対の基板と、該一対の基板の対向面間に封入された液体および該液体を電界の付与により吸収・放出して膨張・収縮する帯電性高分子ゲルと、を少なくとも含み、
前記一対の基板の少なくとも一方の対向面が、前記帯電性高分子ゲルを固定する接着固定部を少なくとも有し、前記帯電性高分子ゲルが前記接着固定部を介して前記少なくとも一方の対抗面に固定された光学素子において、
(1)前記接着固定部の面積が、前記帯電性高分子ゲルの最大膨張時の最大断面積よりも小さく、且つ、
(2)前記接着固定部の周囲に非接着部が設けられ、前記非接着部が、少なくとも前記帯電性高分子ゲルの最大膨張時の最長外周線および該最長外周線よりも内側に設けられていることを特徴とする光学素子。
【0010】
<2> 前記帯電性高分子ゲルが、水素結合、イオン結合、および、共有結合から選択される1種以上の化学結合により前記接着固定部を介して前記少なくとも一方の対向面に固定されていることを特徴とする<1>に記載の光学素子。
【0011】
<3> 前記接着固定部表面が、シランカップリング剤を含むことを特徴とする<1>に記載の光学素子。
【0012】
<4> 前記非接着部表面の表面張力が30mN/m以下であることを特徴とする<1>に記載の光学素子。
【0013】
<5> 前記非接触部表面が、フッ素系材料で覆われていることを特徴とする<1>に記載の光学素子。
【0014】
<6> 前記液体が、絶縁性液体であることを特徴とする<1>に記載の光学素子
【0015】
<7> 前記一対の基板の少なくとも一方の基板の対向面に、電極が設けられていることを特徴とする<1>に記載の光学素子。
【0016】
<8> 前記帯電性高分子ゲルが、調光用材料を含むことを特徴とする<1>に記載の光学素子。
【0017】
<9> 前記帯電性高分子ゲルが、帯電性粒子を含むことを特徴とする<1>に記載の光学素子。
【0018】
<10> 前記帯電性粒子が、調光用材料であることを特徴とする<5>に記載の光学素子。
【0019】
<11> 前記帯電性高分子ゲルが、少なくとも前記帯電性微粒子を含む非イオン性高分子ゲルであること特徴とする<9>に記載の光学素子。
【0020】
<12> 前記帯電性高分子ゲルが、少なくとも前記帯電性微粒子を含むイオン性高分子ゲルであることを特徴とする<9>に記載の光学素子。
【0021】
<13> 前記帯電性高分子ゲルが、イオン性高分子ゲルでることを特徴と<1>する光学素子。
【0022】
<14> 対向配置された一対の基板と、該一対の基板の対向面間に封入された液体および該液体を電界の付与により吸収・放出して膨張・収縮する帯電性高分子ゲルと、を少なくとも含み、
前記一対の基板の少なくとも一方の対向面が、固定剤を含み、前記帯電性高分子ゲルを固定する接着固定部を少なくとも有し、前記帯電性高分子ゲルが前記接着固定部を介して前記一方の対抗面に固定され、
(1)前記接着固定部の面積が、前記帯電性高分子ゲルの最大膨張時の最大断面積よりも小さく、且つ、
(2)前記接着固定部の周囲に固定阻害剤を含む非接着部が設けられ、前記非接着部が、少なくとも前記帯電性高分子ゲルの最大膨張時の最長外周線および該最長外周線よりも内側に設けられている光学素子を作製する光学素子製造方法であって、
前記対向面に前記固定阻害剤を付与する固定阻害剤付与工程と、前記対向面に前記固定剤を付与する固定剤付与工程と、前記対向面に、前記固定阻害剤および前記固定剤から選択される少なくとも1種を選択的に付与可能な領域を形成するパターニング工程と、を少なくとも含むことを特徴とする光学素子製造方法。
【0023】
<15> 対向配置された一対の基板と、該一対の基板の対向面間に封入された液体および該液体を電界の付与により吸収・放出して膨張・収縮する帯電性高分子ゲルと、を少なくとも含み、
前記一対の基板の少なくとも一方の対向面が、前記帯電性高分子ゲルを固定する接着固定部を少なくとも有し、前記帯電性高分子ゲルが前記接着固定部を介して前記少なくとも一方の対向面に固定された光学素子において、
(3)前記接着固定部の面積が、前記帯電性高分子ゲルの最大膨張時の最大断面積よりも小さく、且つ、
(4)前記対向面に凸部が設けられ、前記接着固定部が前記凸部表面に設けられたことを特徴とする光学素子。
【0024】
<16> 前記凸部の高さが、1μm〜100μmの範囲内であることを特徴とする<15>に記載の光学素子。
【0025】
<17> 前記帯電性高分子ゲルが、水素結合、イオン結合、および、共有結合から選択される1種以上の化学結合により前記接着固定部を介して前記凸部表面に固定されていることを特徴とする<15>に記載の光学素子。
【0026】
<18> 前記接着固定部表面が、シランカップリング剤を含むことを特徴とする<15>に記載の光学素子。
【0027】
<19> 前記液体が、絶縁性液体であることを特徴とする<15>に記載の光学素子
【0028】
<20> 前記一対の基板の少なくとも一方の基板の対向面に、電極が設けられていることを特徴とする<15>に記載の光学素子。
【0029】
<21> 前記帯電性高分子ゲルが、調光用材料を含むことを特徴とする<15>に記載の光学素子。
【0030】
<22> 前記帯電性高分子ゲルが、帯電性粒子を含むことを特徴とする<15>に記載の光学素子。
【0031】
<23> 前記帯電性粒子が、調光用材料であることを特徴とする<15>に記載の光学素子。
【0032】
<24> 前記帯電性高分子ゲルが、少なくとも前記帯電性微粒子を含む非イオン性高分子ゲルであること特徴とする<22>に記載の光学素子。
【0033】
<25> 前記帯電性高分子ゲルが、少なくとも前記帯電性微粒子を含むイオン性高分子ゲルであることを特徴とする<22>に記載の光学素子。
【0034】
<26> 前記帯電性高分子ゲルが、イオン性高分子ゲルでることを特徴とする<15>に記載の光学素子。
【0035】
<27> 対向配置された一対の基板と、該一対の基板の対向面間に封入された液体および該液体を電界の付与により吸収・放出して膨張・収縮する帯電性高分子ゲルと、を少なくとも含み、
前記一対の基板の少なくとも一方の対向面が、固定剤を含み、前記帯電性高分子ゲルを固定する接着固定部を少なくとも有し、前記帯電性高分子ゲルが前記接着固定部を介して前記少なくとも一方の対向面に固定され、
(3)前記接着固定部の面積が、前記帯電性高分子ゲルの最大膨張時の最大断面積よりも小さく、且つ、
(4)前記対向面に凸部が設けられ、前記接着固定部が前記凸部表面に設けられた光学素子を作製する光学素子作製方法であって、
前記凸部表面にパターニングを利用して選択的に前記固定剤を付与する固定剤付与工程を少なくとも含むことを特徴とする光学素子製造方法。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を第1の本発明と、第2の本発明と、第1および第2の本発明に共通する事項と、に大きく分けて、順に説明する。
【0037】
(第1の本発明)
本発明の光学素子は、対向配置された一対の基板と、該一対の基板の対向面間に封入された液体および該液体を電界の付与により吸収・放出して膨張・収縮する帯電性高分子ゲルと、を少なくとも含み、前記一対の基板の少なくとも一方の対向面が、前記帯電性高分子ゲルを固定する接着固定部を少なくとも有し、前記帯電性高分子ゲルが前記接着固定部を介して前記少なくとも一方の対抗面に固定された光学素子において、(1)前記接着固定部の面積が、前記帯電性高分子ゲルの最大膨張時の最大断面積よりも小さく、且つ、(2)前記接着固定部の周囲に非接着部が設けられ、前記非接着部が、少なくとも前記帯電性高分子ゲルの最大膨張時の最長外周線および該最長外周線よりも内側に設けられていることを特徴とする。
【0038】
従って、第1の本発明の光学素子は、電界により帯電性高分子ゲルを繰り返し膨潤・収縮させても経時的に安定した体積変化量を維持することができる。
なお、上記(1)および(2)項における「最大膨潤時」とは、高分子ゲルの膨潤・収縮に際し、何らの制限も受けない状態(溶媒中に分散した状態、あるいは、これに相当する状態で、基板等、なんらかの固体表面に固定されたり、接着されたりしていない状態)で最大限に膨張した状態を意味する。
また、上記(2)項において「最長外周線」とは、高分子ゲルが接着固定部を介して対抗面に固定された状態で、高分子ゲルが上記に説明したように接着固定部等、対向面から何らの束縛も受けない状態で最大限に膨潤した状態を仮定した際に、対向面と平行な面における高分子ゲルの外周長さが最も長くなる輪郭線を意味する。この際、「非接着部が、少なくとも高分子ゲルの最大膨張時の最長外周線および該最長外周線よりも内側に設けられている」とは、対向面に対して垂直方向に最大外周線を投影した場合を基準にして定められるものである。
【0039】
上記に説明したように、高分子ゲルが光学素子作製時において固定された領域(接着固定部)以外で、少なくとも高分子ゲルが最大限に膨潤した際に接触可能な基板表面の領域では、経時的な貼り付きが起こらないようにすることが極めて重要である。
本発明者らは、この条件を達成するために、上記(2)項を満たすことが必要であることを見出した。この場合、高分子ゲルが膨潤・収縮を繰り返して接着固定部以外の領域に接触しても、この領域が非接着部からなるために貼り付きが起こらない。このため、高分子ゲルは経時的に安定した体積変化量を維持することができる。
【0040】
なお、本発明において、「接着固定部」とは、基板の対向面(以下、「基板表面」と略す場合がある)に設けられ、この部分に高分子ゲルが接触した際に恒久的に1つの高分子ゲルを固定することが可能な微小な領域を意味し、対向面に少なくとも1つ以上設けられるものである。また、「非接着部」とは、この領域に高分子ゲルが繰り返し接触しても、貼り付きが起きない領域を意味する。なお、これらの領域の詳細については後述する。
【0041】
また、第1の本発明においては、上記(2)項と共に、上記(1)項の条件も同時に満たす必要がある。上記(1)項の条件が満たされない場合には、光学素子を作製した時点で高分子ゲルが広い面積の接着固定部を介して基板表面に固定されることになるため、十分な体積変化量を得ることが出来なくなり、結果として光学素子として必要なコントラスト比等の光学特性を十分に確保できなくなるためである。
【0042】
−接着固定部−
なお、「接着固定部」は、上記に説明したように恒久的に1つの高分子ゲルを固定することができる微小な領域であれば特に限定されないが、具体的には、高分子ゲルと基板表面との間を化学結合(当該化学結合とは、水素結合、イオン結合、共有結合から選択される1種以上を意味する)を利用して化学的に接着・固定できるものであることが好ましい。また、化学結合としては、結合力が強く安定性に優れたイオン結合や共有結合であることがより好ましい。
このような化学結合を形成するためには、接着固定部表面が、例えば、高分子ゲル中の官能基と反応して化学結合の形成が可能な基を有する接着剤、多官能化合物、シランカップリング剤やチオール化合物、セレン化合物、無機物や高分子化合物等の固定剤により処理されていることが好ましい。
なお、接着固定部を介した高分子ゲルの基板表面への固定はこのような化学反応を伴わないものであっても、高分子ゲルを基板表面に恒久的に固定できるのであれば、例えば、微小なフックを接着固定部に形成して高分子ゲルを引っ掛けて固定する等の機械的固定など、他の方法を利用あるいは併用することも可能である。
【0043】
基板表面の接着固定部において、高分子ゲルとの間で化学結合を形成するために用いられる材料としては、多官能性化合物やシランカップリング剤等の各種反応性化学物を用いることができ、例えば、重合性不飽和基や反応性官能基などを2個以上有する化合物を挙げることができる。
【0044】
上記重合性不飽和基を2個以上有する化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリンポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリグリセリンなどのポリオール類のジ(メタ)アクリル酸エステル類またはトリ(メタ)アクリル酸エステル類、前記ポリオール類とマレイン酸、フマル酸などの不飽和酸類とを反応させて得られる不飽和ポリエステル類、N、N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミドなどのビス(メタ)アクリルアミド類、トリレジンイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどのポリイソシアネートと(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルとを反応させて得られるジ(メタ)アクリル酸カルバミン酸エステル類、アリル化澱粉、アリル化セルロース、ジアリルフタレート、その他のテトラアリロキシエタン、ペンタンエリスリトールトリアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、ジエチレングリコールジアリルエーテル、トリアリルトリメチルエーテルなどの多価アリル系を挙げることができる。
【0045】
これらの中でも本発明においては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、N、N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミドなどが好ましく使用される。
【0046】
また、反応性官能基を2個以上有する化合物としては、ジグリシジルエーテル化合物、ハロエポキシ化合物、ジイソシアネート化合物およびトリイソシアネート化合物などを挙げることができる。
ジグリシジルエーテル化合物の具体例としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ポリグリセリンジグリシジルエーテルなどを挙げることができる。
その他、ハロエポキシ化合物の具体例としては、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、β−メチルエピクロロヒドリンなどを挙げることができる。また、ジイソシアネート化合物の具体例としては、2、4−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどを挙げることができる。
【0047】
また、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのビニル系シランカップリング剤、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系シランカップリング剤、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ系シランカップリング剤など、各種シランカップリング剤なども適用できる。
【0048】
これらの中でも本発明には、特にN−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系シランカップリング剤が好ましく使用される。
【0049】
基板表面に部分的に形成される接着固定部の形状は、その面積が基板表面に対して平行な面における高分子ゲルの最大膨張時の最大断面積よりも小さければ特に限定されないが、例えば円形、楕円形、三角形、多角形、長方形、正方形、不定形、ストライプ状などが適用できる。
【0050】
これらの形状の中でも特に接着固定部の形状が円形であることが、高分子ゲル粒子がより安定して固定できると共に、固定前の高分子ゲルと比較して固定後の高分子ゲルの体積変化特性の劣化が少ないという利点がある。また、接着固定部の形状が円形である場合、使用する高分子ゲルの大きさにもよるが、円形パターンの大きさはその直径が1μm〜50μmの範囲内であることが好ましい。
【0051】
また、接着固定部の面積は、上記(1)項に説明したように高分子ゲルの最大膨張時の最大断面積よりも小さければよいが、絶対的な体積変化量をより大きくするためには高分子ゲルの最大収縮時の最大断面積よりも小さい方がより好ましい。但し、当該最大収縮時とは、高分子ゲルの膨潤・収縮に際し、何らの制限も受けない状態(溶媒中に分散した状態、あるいは、これに相当する状態で、基板等、なんらかの固体表面に固定されたり、接着されたりしていない状態)で最大限に収縮した状態を意味する。
【0052】
なお、基板表面に設けられる接着固定部の配置は規則的・周期的なものであっても、ランダムなものであっても構わない。また、基板表面の接着固定部の占める面積割合は、基板表面上において、高分子ゲルを(固定できるか否かは別として)配置可能な領域の全面積に対して5%〜50%の範囲内であることが望ましい。
【0053】
−非接着部−
一方、「非接着部」の表面の特性は、この領域に高分子ゲルが繰り返し接触しても、貼り付きが起きない領域であれば特に限定されないが、具体的には高分子ゲルとの間で、高分子ゲルを固定できる程の化学結合(水素結合、イオン結合、共有結合)を実質的に形成できない領域であることが好ましい。
なお、非接着部が、既述したような固定剤により覆われていないものであったとしても、基板本体として使用されるガラス基板の表面や、基板の表面に設けられるITO(Indium Tin Oxide)等の透明導電性セラミックス表面等のように、反応性を有しないにせよ、比較的に化学的親和性が高い場合には経時的に高分子ゲルの貼り付きが発生し易くなる場合がある。
【0054】
以上のことから非接着部表面は、高分子ゲルに対して化学的親和性が低いことがより好ましい。具体的には、非接着部表面の表面張力が30mN/m以下であることが好ましく、20mN/m以下であることがより好ましい。
【0055】
このような観点から、非接着部表面は、反応性を有する官能基は勿論、ヒドロキシル基等の水素結合の形成が可能な官能基や部位(例えば、エーテル結合を構成する酸素等)をその分子中に殆ど含まないあるいは全く含まない材料、例えば、炭化水素系の材料(樹脂や、カップリング剤等)や、炭化水素系化合物よりも表面エネルギーの小さいフッ素系の材料(樹脂や、カップリング剤等)等で覆われていることが好ましい。
このような材料としては、炭化水素系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、アルキル系シランカップリング剤、フッ素化アルキル系シランカップリング剤、アルキル系チオール、フッ素化アルキル系チオール等の固定阻害剤が挙げられる。この場合、固定阻害剤を基板表面の非接着部となる領域に付与すればよい。
勿論、これらの材料に相当するような高分子ゲルに対して化学的親和性の低い材料を、基板表面(例えば、ガラス基板表面や、ITO等の透明セラミックス電極等)に蒸着やスパッタリング等を利用して直接形成することもできる。
【0056】
なお、シランカップリング剤やアルキル系チオールのように反応性官能基を有する固定阻害剤を用いる場合には、分子中に含まれる反応性官能基は、1つであるか、あるいは分子の一方の端にのみ偏在しているものが、これら反応性官能基が基板表面との結合のみに確実に用いられ、これら分子中の高分子ゲルとの化学的親和性の低い部位(アルキル基やフッ素化アルキル基等)が基板表面側に配向することになるために好適である。
【0057】
具体的には、フッ化アルキル基を持つ固定阻害剤としては、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ四フッ化エチレン、エチレン−四フッ化エチレン共重合体、四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体等のフッ素系樹脂が挙げられる。シロキサン基などを持つ固定阻害剤としては、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、シリコーンのアミノ変性体、エポキシ変性体、カルボキシル変性体、メタクリル変性体、フェノール変性体、アルキル変性体等のシリコーン系樹脂が挙げられる。
これらの反応性官能基を有する固定阻害剤を用いる場合には、これを溶媒に溶解または分散させ、この溶液中に基板を浸漬させるなどして基板表面に固定阻害剤を塗布する処理を行なう。
【0058】
材料自体が高分子ゲルと接着性の低い性質をもつ固定阻害剤(樹脂材料)としては、ウレア樹脂、エポキシ樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリル酸エチル、ポリ酢酸ビニル、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられる。
【0059】
また、基板表面に設けられる非接着部は、高分子ゲルを固定する接着固定部の周囲に必ず設けられ、且つ、その領域は、少なくとも基板表面に対して平行な面における(接着固定部に固定された)高分子ゲルの最大膨張時の最長外周線および該最長外周線よりも内側であれば特に限定されない。
例えば、簡略には、基板表面を接着固定部および非接着固定部の2つの領域のみで構成することができる。あるいは、(接着固定部に固定された)高分子ゲルの最大膨張時の最長外周線よりも外側の領域であれば、体積変化量の経時劣化を引き起こす材料(例えば、基板あるいは基板表面を本来構成するような材料であるガラス表面やITO電極表面等)が剥き出しのままであってもよい。
なお、基板表面の非接着部の占める面積割合は、基板表面上において、高分子ゲルを(固定できるか否かは別として)配置可能な領域の全面積に対して50%〜95%の範囲内であることが望ましい。
【0060】
−光学素子の構成−
次に、第1の本発明の光学素子の具体的な構成例を図面を用いて説明するが、第1の本発明の光学素子は、以下に示す例のみに限定されるものではない。
図1は、第1の本発明の光学素子の一例を示す模式断面図である。図1において、2は基板、4は透明基板、6は高分子ゲル(粒子)、8は液体、10、12は電極、14はスペーサー、16は封止材、20は接着固定部を表す。
図1に示す光学素子は、対向配置された一対の基板(基板2および透明基板4)と、対向面間に封入された高分子ゲル6、液体8およびスペーサー14と、対向配置された一対の基板(基板2および透明基板4)の両端を封止するために、基板2の端部と透明基板4の端部との間を覆うように設けられた封止材16と、から構成される。
【0061】
基板2の対向面には電極10が、また、透明基板4の対向面には透明電極12がそれぞれ設けられている。また、2つの対向面の間隔を一定に維持するために、これら2つの対向面(電極10および透明電極12)と接してスペーサー14が配置されている。
【0062】
高分子ゲル6は、基板2の対向面に設けられた電極10表面に設けられた接着固定部20を介して、基板2上に固定されている。なお、図1において、接着固定部20は、説明を容易とする都合上、基板2の厚み方向に対して高さを有しているように描いているが、実質的には厚みを有さないものである(基板2の厚み方向に対して電極10が成す平面と同じ高さである)。一方、電極10表面の接着固定部20が設けられていない領域は、非接着部から構成されている。なお、図1に示す高分子ゲルは、最大膨潤時の状態を示したものである。
【0063】
図2は、図1に示す光学素子の対向面(電極10表面)に設けられた接着固定部20の、平面方向(光学素子の厚み方向に対して垂直に交わる面)の形状および配列パターンの一例について示す模式図である。
図2において、点線で囲まれた符号10’で示される領域は電極10表面の一領域を表す。図2において、接着固定部20の形状は円形であり、電極10表面には、高分子ゲル6が規則的に配置可能なように接着固定部20が千鳥配列で配置されている。また、各々の接着固定部の間の領域は、非接着部からなる。
【0064】
なお、図1に示した例では高分子ゲル6は、一方の基板(基板2)の対向面(電極10表面)にのみ固定されているが、もう一方の基板(透明基板4)の対向面(透明電極12表面)に固定されていてもよい。この場合、透明電極12の表面に更に接着固定部が設けられる。また、電極は一方の基板上のみに形成されていても構わない。
【0065】
−光学素子の作製方法−
次に第1の本発明の光学素子の作製方法について、接着固定部および非接着部の形成を中心に説明する。
対向面への接着固定部や非接着部の形成は、化学気相成長法、真空蒸着、イオンプレーティング法などにより気相中から接着固定部や非接着部を形成する材料を成膜することにより対抗面に直接形成して行なうこともできるし、固定剤や固定阻害剤を含む溶液を用いて塗布法や、浸漬法、ゾルゲル法、バイロゾル法を利用して行なうこともできる。
なお、このような処理を行わなくても、対向面を元々構成する材料が、そのまま接着固定部や非接着部として機能する場合には、対向面をそのまま接着固定部や非接着部として利用することも可能である。
【0066】
また、接着固定部および非接着部を対向面に選択的に形成するために、公知のパターニング方法、例えば、各種印刷法やリソグラフィー法、ソフトリソグラフィー法、また、マスキング等を利用することができる。また、インクジェット法を利用して固定剤あるいは固定阻害剤を含む溶液を対抗面に噴射してパターン状に形成することも可能である。
【0067】
接着固定部および非接着部を対向面に形成する順番は特に限定されず、いずれを先に実施してもよいが、接着固定部を形成する工程および非接着部を形成する工程の前後や、両工程の間に上記したようなパターニング方法を少なくとも1回以上利用して、対向面に接着固定部と非接着部とを選択的に形成できる領域を設けることが好ましい。
【0068】
例えば、接着固定部を形成するために固定剤を用い、非接着部を形成するために固定阻害剤を用いる場合には、第1の本発明の光学素子は、少なくとも対向面に固定阻害剤を付与する固定阻害剤付与工程と、対向面に固定剤を付与する固定剤付与工程と、対向面に、固定阻害剤および固定剤から選択される少なくとも1種を選択的に付与可能な領域を形成するパターニング工程と、を少なくとも経て作製されることが好ましい。
【0069】
この場合、これら3つの工程の順序は特に限定されないが、例えば、以下のように実施することができる。まず、▲1▼対向面にフォトレジストを塗布してパターニングし、レジストが除去された領域Aと、レジストで覆われた領域Bを形成する。次に、▲2▼領域Aに固定阻害剤を含む溶液を塗布して非接着固定部を対向面上に選択的に形成し、▲3▼さらに、領域Bを覆うレジストを除去してこの領域に固定剤を付与することにより接着固定部を対向面上に選択的に形成することができる。
【0070】
(第2の本発明)
次に、第2の本発明の光学素子について説明する。
第2の本発明の光学素子は、対向配置された一対の基板と、該一対の基板の対向面間に封入された液体および該液体を電界の付与により吸収・放出して膨張・収縮する帯電性高分子ゲルと、を少なくとも含み、前記一対の基板の少なくとも一方の対向面が、前記帯電性高分子ゲルを固定する接着固定部を少なくとも有し、前記帯電性高分子ゲルが前記接着固定部を介して前記少なくとも一方の対向面に固定された光学素子において、(3)前記接着固定部の面積が、前記帯電性高分子ゲルの最大膨張時の最大断面積よりも小さく、且つ、(4)前記対向面に凸部が設けられ、前記接着固定部が前記凸部表面に設けられたことを特徴とする。
【0071】
従って、第2の本発明の光学素子は、電界により帯電性高分子ゲルを繰り返し膨潤・収縮させても経時的に安定した体積変化量を維持することができる。
なお、上記(3)項における「最大膨潤時」とは、高分子ゲルの膨潤・収縮に際し、何らの制限も受けない状態(溶媒中に分散した状態、あるいは、これに相当する状態で、基板等、なんらかの固体表面に固定されたり、接着されたりしていない状態)で最大限に膨潤した状態を意味する。
【0072】
既述したように、高分子ゲルが光学素子作製時において固定された領域(接着固定部)以外で、少なくとも高分子ゲルが最大限に膨潤した際に接触可能な基板表面の領域では、経時的な貼り付きが起こらないようにすることが極めて重要である。
本発明者らは、この条件を達成することが可能であり、且つ、既述した第1の本発明の光学素子以外の構成について更に鋭意検討した結果、上記(4)項を満たすことが必要であることを見出した。
【0073】
この場合、高分子ゲルが膨潤・収縮を繰り返しても、高分子ゲルが対向面に設けられた凸部表面の接着固定部に固定されているため、高分子ゲルが、対向面の凸部以外の領域(平坦部)と接触することができない。このため、仮に平坦部が高分子ゲルとの接触により貼り付きを引き起こすような領域であったとしても、第2の本発明においては、高分子ゲルと平坦部との接触が起こらないために貼り付きが起こらない。このため、高分子ゲルは経時的に安定した体積変化量を維持することができる。
【0074】
なお、本発明において、対向面に設けられる「凸部」とは、もう一方の対向面側に出っ張っている凸形状であれば、光学素子の厚み方向および平面方向のいずれの形状も特に限定されないが、凸部表面への接着固定部の形成や、高分子ゲルの固定の容易さ等から、凸部の頂上部は平坦であることが好ましい。また、平面方向の形状も任意に選択できるが、円形であることが好ましい。
【0075】
凸部の高さ(当該高さとは、凸部が設けられる対抗面の凸部以外の領域(平坦部)を基準高さ(0μm)として規定されるものである)は特に限定されないが、高分子ゲルの膨潤・収縮に際して、高分子ゲルが対向面の凸部以外の領域(平坦部)と接触するのを確実に防止するために、少なくとも1μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、15μm以上であることが特に好ましい。また、凸部高さの上限は特に限定されないが、実用上は100μm以下であることが好ましい。
【0076】
このような対向面への凸部の形成は、基板(あるいは基板の対向面側に設けられる電極)を印刷法、エッチング法、圧力スタンパ法、射出成形法、等の公知の方法を利用することで容易に作製することができる。
【0077】
また、第2の本発明においては、上記(4)項と共に、上記(3)項の条件も同時に満たす必要がある。上記(3)項の条件が満たされない場合には、光学素子を作製した時点で高分子ゲルが広い面積の接着固定部を介して基板表面に固定されることになるため、十分な体積変化量を得ることが出来なくなり、結果として光学素子として必要なコントラスト比等の光学特性を十分に確保できなくなるためである。
【0078】
なお、凸部表面に形成される接着固定部は、凸部の頂上部が平坦である場合には頂上部に選択的に形成されることが好ましい。また、凸部の頂上部が平坦でない場合には、接着固定部は凸部以外の領域(平坦部)からの高さが1μm以上の領域に形成されていることが好ましい。
【0079】
なお、第2の本発明において、凸部表面に設けられる接着固定部は、既述した第1の本発明の場合と全く同様である。一方、凸部以外の領域(平坦部)の表面の高分子ゲルに対する接着性能/固定性能は特に限定されないが、光学素子の作製に際して、凸部以外の領域(平坦部)に高分子ゲルが固定されるのを防ぐために、少なくとも接着固定部のような、固定性能を有していないことが好ましい。具体的には、この領域が、対向面を構成する本来の材料が剥き出しの状態としておいてもよいし、あるいは、既述したような非接着部としてもよい。
【0080】
−光学素子の構成−
次に、第2の本発明の光学素子の具体的な構成例を図面を用いて説明するが、第2の本発明の光学素子は、以下に示す例のみに限定されるものではない。
図3は、第2の本発明の光学素子の一例を示す模式断面図である。図3において、22は凸部を表し、これ以外の符号で表される部材は、図1に示した部材と同様である。
図3に示す光学素子は、基本的には、図1に示す光学素子とほぼ同様の構成を有するものであるが、基板2の対向面に頂上部が平坦な凸部22が設けられており、この凸部の頂上部に設けられた不図示の接触固定部を介して高分子ゲル6が固定されているところに特徴がある。また、凸部以外の領域(平坦部)の表面は、電極10を構成する材料が剥き出しとなっている。
【0081】
図3に示す光学素子の接着固定部が設けられた領域(凸部22の頂上部)の、平面方向(光学素子の厚み方向に対して垂直に交わる面)の形状および配列パターンは、特に限定されないが図2に示した例と同様であってもよい。
【0082】
なお、図3に示した例では高分子ゲル6は、一方の基板(基板2)の対向面(電極2表面)に設けた凸部22表面にのみ固定されているが、もう一方の基板(透明基板4)の対向面(透明電極14表面)にも凸部を設け、この表面に接着固定部を介して固定されていてもよい。また、電極は一方の基板上のみに形成されていても構わない。
【0083】
−光学素子の作製方法−
次に第2の本発明の光学素子の作製方法について、接着固定部の形成を中心に説明する。
対向面に設けられた凸部表面への接着固定部の形成は、化学気相成長法、真空蒸着、イオンプレーティング法などにより気相中から接着固定部を形成する材料を成膜することにより対抗面に直接形成して行なうこともできるし、固定剤を含む溶液を用いて塗布法や、浸漬法、ゾルゲル法、バイロゾル法を利用して行なうこともできる。
なお、このような処理を行わなくても、凸部を元々構成する材料が、そのまま接着固定部として機能する場合には、凸部をそのまま接着固定部として利用することも可能である。
【0084】
また、接着固定部を凸部表面に選択的に形成するために、公知のパターニング方法、例えば、各種印刷法やリソグラフィー法、ソフトリソグラフィー法、また、マスキング等を利用することができる。また、インクジェット法を利用して固定剤を含む溶液を対抗面に噴射して凸部表面に選択的に形成することも可能である。
【0085】
対向面に設けられた凸部表面に接着固定部を形成する場合、凸部表面にパターニングを利用して選択的に接着固定部を形成することが好ましい。例えば、接着固定部を形成するために固定剤を用いる場合には、第2の本発明の光学素子は、少なくとも凸部表面にパターニングを利用して選択的に前記固定剤を付与する固定剤付与工程を少なくとも経て作製されることが好ましい。
【0086】
具体的には、頂上部が平坦な円柱状の凸部表面に接着固定部を形成する場合を例に説明すれば、凸部が設けられた対向面全面をレジストで覆ったのち、露光・現像することにより凸部の頂上部が露出するようにレジストを除去し、露出した頂上部に固定剤を含む溶液を塗布することにより凸部頂上部に選択的に接着固定部を形成することができる。
【0087】
(第1および第2の本発明に共通する事項)
次に、以上に説明した第1および第2の本発明に共通する事項について以下に説明する。
本発明において用いられる帯電性高分子ゲルは、(A)イオン性高分子ゲル、(B)帯電性粒子を含有させたイオン性高分子ゲル、および、(C)帯電性粒子を含有させた非イオン性高分子ゲルのいずれかが用いられる。以下に本発明において使用することのできる帯電性高分子ゲルの構成具体例を示す。
【0088】
(A)イオン性高分子ゲル
イオン性高分子ゲルの例としては、ポリ(メタ)アクリル酸の架橋物やその塩、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物やその塩、ポリマレイン酸の架橋物やその塩、マレイン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物やその塩、ポリビニルスルホン酸の架橋物やビニルスルホン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物、ポリビニルベンゼンスルホン酸の架橋物やその塩、ビニルベンゼンスルホン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物やその塩、ポリアクリルアミドアルキルスルホン酸の架橋物やその塩、アクリルアミドアルキルスルホン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物やその塩、ポリジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドの架橋物やその塩酸塩、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドと(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物やその4級化物や塩、ポリジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドとポリビニルアルコールとの複合体の架橋物やその4級化物や塩、ポリビニルアルコールとポリ(メタ)アクリル酸との複合体の架橋物やその塩、カルボキシアルキルセルロース塩の架橋物、ポリ(メタ)アクリロニトリルの架橋物の部分加水分解物やその塩などが挙げられる。
【0089】
なお、例示した化合物の表記において(メタ)アクリレート等の記述は、アクリルレートおよびメタアクリレート(メタクリレート)のいずれをも含む表現である。
これらの高分子ゲルは、高分子に架橋剤を添加したり、あるいは高分子に電子線、γ線などの放射線を照射する、加熱する、さらには過酸化物を添加することによって三次元架橋することで作製することができる。
【0090】
(B)帯電剤粒子を含有させたイオン性高分子ゲル
帯電剤粒子を含有させたイオン性高分子ゲルを構成するイオン性高分子ゲルとしては、上記(B)項に記載したイオン性高分子ゲルと同様なイオン性高分子ゲルが使用できる。
【0091】
イオン性高分子ゲル中に含有させる帯電性粒子としては、各種両親媒性(高)分子、ニグロシン系化合物、アルコキシ化アミン類、第四級アンモニウム塩、アルキルアミド、リンおよびタングステンの単体および化合物、モリブデンキレート顔料、疎水性シリカ、ホウ素類、ハロゲン化合物、モノアゾ染料の金属錯塩、サリチル酸、アルキルサリチル酸、ジアルキルサリチル酸、ナフトエ酸の金属錯塩、塩素化ポリオレフィン、塩素化ポリエステル、酸基過剰のポリエステル、銅フタロシアニンのスルホニルアミン、オイルブラック、ナフテン酸金属塩、脂肪酸金属塩、樹脂酸石けんなどが挙げられる。
【0092】
イオン性高分子ゲル中に含有させる帯電性粒子の添加量は、2重量%から70重量%の範囲が好ましい。
また帯電性粒子が後で述べる調光用材料を兼ねるものであっても構わない。このときイオン性高分子ゲル中に含有させる調光用材料の好ましい濃度は、2重量%から70重量%の範囲であり、特に好ましくは5重量%から50重量%の範囲である。さらにイオン性高分子ゲルの電界に対する応答性を向上させるために、調光用材料以外の帯電性粒子を別途イオン性高分子ゲル中に含有させても構わない。このときイオン性高分子ゲル中に含有させる調光用材料以外の帯電性粒子の添加量は、2重量%から70重量%の範囲が好ましい。
【0093】
(C)帯電性粒子を含有させた非イオン性高分子ゲル
次に、帯電性粒子を含有させた非イオン性高分子ゲルについて説明する。なお、本発明において、「非イオン性高分子ゲル」とは高分子ゲルを構成する高分子鎖がイオン解離基を持たない高分子ゲルを意味する。
具体的な非イオン性高分子ゲルを例示すれば、下記に列挙するモノマーから選択される1種以上のモノマーからなる単独重合体の架橋体や2種以上のモノマ−からなる共重合体の架橋体が好ましく使用できる。
このようなモノマーとしては、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルエステル、(メタ)アクリルアミド、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレン、N−ジアルキル置換(メタ)アクリルアミド、ビニルピリジン、ビニルアミン、アリルアミン、スチレン、ビニルカルバゾール、ビニルピロリドン、スチレン、スチレン誘導体、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、塩化ビニル、塩化ビニリデン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、メチレンビスアクリルアミド、イソプレン、ブタジエン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0094】
その他にも、ポリエステル系高分子の架橋体、ポリビニルアセタール誘導体の架橋体、ポリウレタン系高分子の架橋体、ポリウレア系高分子の架橋体、ポリエーテル系高分子の架橋体、ポリアミド系高分子の架橋体、ポリカーボネート系高分子の架橋体などが好ましく使用できる。
【0095】
これらの高分子ゲルは、高分子への架橋剤の添加、あるいは高分子に電子線、γ線などの放射線を照射する、加熱する、さらには過酸化物を添加することによって三次元架橋することで作製することができる。
上記非イオン性高分子ゲル中に含有させる帯電性粒子としては、上記〈2〉項に説明した帯電剤を含有させたイオン性高分子ゲルで記載したものと同様のものが挙げられる。
【0096】
非イオン性高分子ゲル中に含有させる帯電性粒子の添加量は、2重量%から70重量%の範囲が好ましい。
また帯電性粒子が後述する調光用材料を兼ねるものであっても構わない。このとき非イオン性高分子ゲル中に含有させる調光用材料の好ましい濃度は、2重量%から70重量%の範囲であり、特に好ましくは5重量%から50重量%の範囲である。さらに非イオン性高分子ゲルの電界に対する応答性を向上させるために、調光用材料以外の帯電性粒子を別途非イオン性高分子ゲル中に含有させても構わない。このとき非イオン性高分子ゲル中に含有させる調光用材料以外の帯電性粒子の添加量は、2重量%から70重量%の範囲が好ましい。
【0097】
本発明において使用される高分子ゲルの体積変化量は、高分子ゲルが、基板表面に固定されたり、固定されないまでも粘着性の表面と接触して体積変化挙動が制限されていない状態(すなわち、溶媒中に分散した状態、あるいは、これに等しい状態)において、少なくとも体積比(最大膨張時の体積/最大収縮時の体積)が5以上、好ましくは10以上であることが望ましい。体積比が5未満であると十分な調光コントラストが得られない可能性がある。
【0098】
本発明に用いられる高分子ゲル粒子の形状には特に制限はなく、球体、楕円体、立方体、多面体、多孔質体、星状、針状、中空状などのものが適用できる。この中でも等方的に高分子ゲル粒子を膨潤・収縮させることができる観点から球形であることが特に好ましい。また、高分子ゲル粒子の形状が球形である場合の好ましい大きさは、最大収縮状態時において平均粒子径で0.1μm〜5mmの範囲、より好ましくは1μm〜1mmの範囲である。平均粒子径が0.1μm以下であると、高分子ゲル粒子の扱いが困難になる、優れた光学特性が得られないなどの問題が生じる場合がある。一方、平均粒子径が5mmよりも大きくなると、体積変化に要する応答時間が大幅に遅くなってしまうなどの問題が生じる場合がある。
【0099】
また、高分子ゲル粒子は、高分子ゲルを物理的粉砕方法によって粉砕する方法や、架橋前の高分子ゲルを化学的粉砕方法によって粒子化した後に架橋して高分子ゲルとする方法、あるいは乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法などの粒子化重合法の一般的な方法によって作製することができる。
【0100】
また、高分子ゲル粒子の電界変化による体積変化速度をより高速にするために、従来技術と同様に高分子ゲルを多孔質化して液体の出入り易さを向上させることも好ましい。このような多孔質化した高分子ゲルは、一般に膨潤した高分子ゲルを凍結乾燥する方法等を利用して作製することができる。
【0101】
−高分子ゲルを構成するその他の材料−
また高分子ゲルには、調光用材料を添加・含有させることが好適である。なお、上述したが、この調光用材料は、帯電性粒子としての性質を兼ね備えたものであっても構わない。
【0102】
調光用材料の具体例としては、染料、顔料や光散乱材などが挙げられる。また調光用材料は帯電性高分子ゲル中に物理的あるいは化学的に固定化されることが好ましい。
【0103】
染料の好適な具体例としては、例えば、黒色のニグロシン系染料や赤、緑、青、シアン、マゼンタ、イエローなどのカラー染料であるアゾ染料、アントラキノン系染料、インジゴ系染料、フタロシアニン系染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ベンゾキノン染料、ナフトキノン染料、ナフタルイミド染料、ベリノン染料などが挙げられ、特に光吸収係数が高いものが望ましい。
【0104】
例えば、C.I.ダイレクトイエロー1、8、11、12、24、26、27、28、33、39、44、50、58、85、86、87、88、89、98、157、C.I.アシッドイエロー1、3、7、11、17、19、23、25、29、38、44、79、127、144、245、C.I.ベイシックイエロー1、2、11、34、C.I.フードイエロー4、C.I.リアクティブイエロー37、C.I.ソルベントイエロー6、9、17、31、35、100、102、103、105、C.I.ダイレクトレッド1、2、4、9、11、13、17、20、23、24、28、31、33、37、39、44、46、62、63、75、79、80、81、83、84、89、95、99、113、197、201、218、220、224、225、226、227、228、229、230、231、C.I.アシッドレッド1、6、8、9、13、14、18、26、27、35、37、42、52、82、85、87、89、92、97、106、111、114、115、118、134、158、186、249、254、289、C.I.ベイシックレッド1、2、9、12、14、17、18、37、C.I.フードレッド14、C.I.リアクティブレッド23、180、C.I.ソルベントレッド5、16、17、18、19、22、23、143、145、146、149、150、151、157、158、C.I.ダイレクトブルー1、2、6、15、22、25、41、71、76、78、86、87、90、98、163、165、199、202、C.I.アシッドブルー1、7、9、22、23、25、29、40、41、43、45、78、80、82、92、93、127、249、C.I.ベイシックブルー1、3、5、7、9、22、24、25、26、28、29、C.I.フードブルー2、C.I.ソルベントブルー22、63、78、83〜86、191、194、195、104、C.I.ダイレクトブラック2、7、19、22、24、32、38、51、56、63、71、74、75、77、108、154、168、171、C.I.アシッドブラック1、2、7、24、26、29、31、44、48、50、52、94、C.I.ベイシックブラック2、8、C.I.フードブラック1、2、C.I.リアクティブブラック31、C.I.フードバイオレット2、C.I.ソルベントバイオレット31、33、37、C.I.ソルベントグリーン24、25、C.I.ソルベントブラウン3、9等が挙げられる。これらの染料は、単独で使用してもよく、さもなければ所望とする色を得るために混合して使用してもよい。
【0105】
また高分子ゲルに染料を固定するために、不飽和二重結合基などの重合可能な基を有した構造の染料や高分子ゲルと反応可能ないわゆる反応性染料などが好ましく使用される。高分子ゲル中に含有させる染料の好ましい濃度は、3質量%から95質量%の範囲であり、特に好ましくは5質量%から80質量%の範囲である。3質量%よりも少ない場合は調光作用が低下し、95質量%よりも多い場合は良好な強度を有する材料を得ることが難しくなる場合がある。
【0106】
顔料の具体例としては、黒色顔料であるブロンズ粉、チタンブラック、各種カーボンブラック(チャネルブラック、ファーネスブラック等)、カラー顔料である例えばフタロシアニン系のシアン顔料、ベンジジン系のイエロー顔料、ローダミン系のマゼンタ顔料、あるいはこの他にもアントラキノン系、アゾ系、アゾ金属錯体、フタロシアニン系、キナクリドン系、ペリレン系、インジゴ系、イソインドリノン系、キナクリドン系、アリルアミド系、硫化亜鉛などの各種顔料を挙げることができる。
【0107】
例えば、イエロー系顔料としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が用いられる。
より詳細には、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、168等が好適に用いられる。
【0108】
また、マゼンタ系顔料としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アンスラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が用いられる。より詳細には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48;2、48;3、48;4、57;1、81;1、144、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、254が特に好ましい。
【0109】
また、シアン系顔料としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アンスラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が利用できる。具体的には、例えば顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15;3、15:4、60、62、66等が特に好適に利用できる。
【0110】
これらの顔料及び染料は、単独で使用してもよく、さもなければ所望とする色を得るために混合して使用してもよい。ただし、耐候性の観点からは染料よりも顔料を用いるほうが好ましい。
【0111】
光散乱材の好適な具体例としては、光散乱部材としては、高分子ゲルの体積変化に用いられる液体の屈折率と異なる屈折率を有する材料が好ましいが、それ以外には特に制限はなく、各種の無機化合物および有機化合物が適用できる。
【0112】
無機化合物の具体例としては、酸化亜鉛、塩基性炭酸鉛、塩基性硫酸鉛、硫酸鉛、リトボン、白雲母、硫化亜鉛、酸化チタン、酸化アンモチモン、鉛白、酸化ジルコニウム、アルミナ、マイカナイト、マイカレックス、石英、炭酸カルシウム、石膏、クレー、シリカ、ケイ酸、珪素土、タルク、塩基性炭酸マグネシウム、アルミナホワイト、グロスホワイト、サチン白等の無機酸化物や、亜鉛、アルメル、アンチモン、アルミニウム、アルミニウム合金、イリジウム、インジウム、オスミウム、クロム、クロメル、コバルト、ジルコニウム、ステンレス鋼、金、銀、洋銀、銅、青銅、すず、タングステン、タングステン鋼、鉄、鉛、ニッケル、ニッケル合金、ニッケリン、白金、白金ロジウム、タンタル、ジュラルミン、ニクロム、チタン、クルップ・オーステナイト鋼、コンスタンタン、真鍮、白金イリジウム、パラジウム、パラジウム合金、モリブデン、モリブデン鋼、マンガン、マンガン合金、ロジウム、ロジウム金などの金属材料、ITO(インジウム・スズ酸化物)等の無機導電性材料などが挙げられる。
【0113】
また、有機化合物の具体例としては、フェノール樹脂、フラン樹脂、キシレン・ホルムアルデヒド樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アニリン樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ−p−キシリレン、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フッ素系プラスチック、ポリアクリロニトリル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、ポリエーテル、ポリカーボネート、熱可塑性ポリエステル、ポリアミド、ジエン系プラスチック、ポリウレタン系プラスチック、ポリフェニレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、芳香族ヘテロ環ポリマー、シリコーン、天然ゴム系プラスチック、セルロース系プラスチック等やこれら2種類以上の高分子材料の混合材料(ポリマーブレンド)などの高分子材料、これらの樹脂からなる中空微粒子、等が挙げられる。
【0114】
さらに、上記に列挙した光散乱性材料を含有した高分子材料を、光散乱部材として適用できる。この高分子材料としては特に制限がなく、各種の高分子樹脂を使用することができる。好ましい高分子樹脂の具体例としては、光散乱性材料が有機化合物である場合に列挙された具体例が挙げられる。
【0115】
また、上記の顔料および光散乱部材の形状には特に制限はなく、粒子状、ブロック状、フイルム状、不定形状、繊維状などの種々のものが使用可能である。中でも特に、粒子状の形態は発色性・光散乱性が高いことや応用範囲が広いなどの特徴から特に好ましい。粒子状における形態にも特に制限はないが、球体、立方体、楕円体、多面体、多孔質体、星状、針状、中空状、りん片状などのものが適用できる。
【0116】
顔料および光散乱部材の形状が粒子状である場合の好ましい大きさは、平均粒子径で0.01μm〜500μmの範囲、より好ましくは0.05μm〜100μmの範囲である。これは、平均粒子径で0.01μm以下または500μm以上になると、顔料および光散乱部材に求められる発色効果および光散乱効果が低くなる場合があるためである。さらに、平均粒子径0.01μm以下では、高分子ゲル内部からの外部への顔料および光散乱部材の流出が起こりやすい。また、これらの粒子は、一般的な物理的粉砕方法や化学的粉砕方法によって製造することができる。
【0117】
また、これらの顔料および光散乱部材において、分子内にカルボキシル基やスルホン酸基などの酸基、水酸基、アミノ基、チオール基、ハロゲン基、ニトロ基、カルボニル基など極性基をもち、高分子ゲル内において光散乱部材の濃度が高い場合に凝集体を形成し易い特性のものも好ましく使用される。
【0118】
顔料および光散乱部材は高分子ゲル中に安定して固定された状態で含有され、高分子ゲル内部から外部へ流出しないことが好ましい。顔料および光散乱部材の流出を防止するためには、使用する高分子ゲルの網目よりも大きな粒子径の顔料および光散乱部材を用いることや、高分子ゲルとの電気的、イオン的、その他物理的な相互作用が高い顔料および光散乱部材を用いること、また、表面を化学修飾した顔料および光散乱部材を用いることが挙げられる。
表面を化学修飾した色材および光散乱部材として例えば、表面に高分子ゲルとの化学結合する基を導入したものや、高分子材料をグラフトした顔料および光散乱部材などが挙げられる。
【0119】
高分子ゲル中に含有される色材の濃度は、高分子ゲルが収縮した時に、少なくとも高分子ゲルの一部分で飽和吸収濃度以上の濃度に達することが望ましい。ここで、飽和吸収濃度以上とは、色材濃度が十分に濃い状態において、単位色材当たりの光吸収効率が低下する濃度である。また、飽和吸収濃度以上という定義を別な特性で表現すれば、特定の光路長のもとにおける色材濃度と光吸収量の関係が1次直線の関係から大きく外れるような色材濃度である。
【0120】
つまり色材濃度が飽和吸収濃度以上になると、色材の1粒子または1分子あたりの光吸収効率が下がることで、光吸収量が色材濃度に比例しなくなり、1次直線の関係から予想される光吸収量と比べて低くなる。一方、飽和吸収濃度以下では、光吸収量が色材濃度に比例しており、色材1粒子または1分子あたりの光吸収効率は殆ど一定になる。したがって、飽和吸収濃度以上に色材を高分子ゲル中に含有させた場合、膨潤時に光を効率よく吸収することができ、収縮時と比べて光吸収量を大きくすることができる。
【0121】
高分子ゲルが収縮した時に、色材を飽和吸収濃度以上になるように含有させる場合、この高分子ゲルが膨潤すると、色材濃度が下がり色材1粒子または1分子あたりの光吸収効率を上げることができる。その結果、膨潤時に光吸収量を大きく上げ、収縮時に光吸収量を大きく下げることができる。
一方、含有させる色材の濃度を飽和吸収濃度以下にすると、膨潤時の色材1粒子あたりの光吸収効率は収縮時とほとんど同程度となる。その結果、膨潤時に光吸収量を大きく上げ、収縮時に光吸収量を大きく下げることができなくなる。以上のことから、飽和吸収濃度とは膨潤・収縮による光吸収量変化を大きくするために必要な濃度であり、色材濃度を飽和吸収濃度以上に設定することで表示コントラストを高くすることができる。
【0122】
このような特性を有するために必要な高分子ゲルに含有させる色材の濃度は、色材の粒子径、屈折率、吸光係数や比重等にも依存するが、一般的には乾燥状態の刺激応答性高分子ゲルに色材を3重量%〜95重量%の範囲で含有させることが好ましく、より好ましくは5重量〜80重量%の範囲である。色材の濃度が3重量%以下であると、調光材料の高分子ゲルの体積変化による発色量変化が現れなくなり、さらに十分な調光コントラストを得るためには、光学素子の厚みが厚くなるなどの問題が生じる。一方、色材の濃度が95重量%以上の場合、高分子ゲルの膨潤・収縮が応答よく進行しにくくなり、光学素子の電界応答特性や体積変化量が低下してしまう。
【0123】
また、高分子ゲル中に含有される光散乱部材の濃度も、色材の濃度と類似した議論のもとに、高分子ゲルが収縮した時に、少なくとも高分子ゲルの一部分で飽和散乱濃度以上の濃度に達することが望ましい。ここで、飽和散乱濃度以上とは、ひとつの指標として各々の光散乱部材同士の平均間隔が十分に短くなることで、光散乱部材の光散乱の働きが1次粒子的なものから、集合体的なものに変化し、光散乱の効率が減少する濃度である。このような光散乱部材が集合体的な光散乱特性を示す状態を、光散乱部材の濃度が飽和散乱濃度以上にある状態と呼ぶ。また、飽和散乱濃度以上という定義を別な特性で表現すれば、特定の光路長のもとにおける光散乱部材濃度と光散乱量の関係が1次直線の関係から大きく外れるような光散乱部材濃度である。
【0124】
高分子ゲルの収縮状態でこのような飽和散乱濃度以上の状態を達成するためには、光散乱部材の粒子径、屈折率、導電率や比重等にも依存するが、一般的には乾燥状態の高分子ゲルに光散乱部材を2重量%〜95重量%の範囲で含有させることが好ましく、より好ましくは5重量〜95重量%の範囲である。光散乱部材の濃度が2重量%以下であると、高分子ゲルの体積変化による光散乱量変化が現れなくなり、さらに十分なコントラストを得るためには、光学素子の厚みが厚くなるなどの問題が生じる。一方、光散乱部材の濃度が95重量%以上の場合、高分子ゲルの膨潤・収縮が応答よく進行しにくくなり、光学素子の電界応答特性や体積変化量が低下してしまう。
【0125】
高分子ゲルに色材および光散乱部材を含有させる方法は、架橋前の高分子に色材および光散乱部材を均一に分散、混合した後に架橋する方法や重合時に高分子前駆体組成物に色材および光散乱部材を添加して重合する方法等が適用できる。重合時において色材および光散乱部材を添加する場合には前記したように重合性基や不対電子(ラジカル)をもつ色材および光散乱部材を使用し、化学結合することも好ましい。また、色材および光散乱部材は高分子ゲル中に極力均一に分散されていることが望ましい。特に、高分子への分散に際して、機械的混練法、攪拌法やあるいは分散剤などを利用して均一に分散させることが望ましい。
【0126】
このような調光用材料を含む帯電性高分子ゲルは、架橋前の高分子に調光用材料を均一に分散、混合した後に架橋する方法や重合時に高分子前駆体モノマ組成物に調光用材料を添加して重合する方法によって製造することができる。重合時において顔料や光散乱材を添加する場合には前記したように重合性基や不対電子(ラジカル)をもつ顔料や光散乱材を使用し、帯電性高分子ゲルに化学結合することも好ましく実施される。
【0127】
また、調光用材料は帯電性高分子ゲル中に極力均一に分散されていることが好ましい。特に、高分子への分散に際して、機械的混練法、攪拌法やあるいは分散剤などを利用して均一に分散させることが望ましい。
さらに、先に説明したように、上記に列挙した調光用材料を帯電性高分子ゲル中に含有させる帯電剤として用いることも可能である。帯電性高分子ゲルに含有させる調光用材料と溶媒との接触帯電によっても帯電性高分子ゲルへの帯電付与は可能であるが、調光用材料表面に帯電付与機能を持たせることがより好ましい。調光用材料表面に帯電付与機能を持たせる方法としては、調光用材料表面をアミノ基、アンモニウム基、ハロゲン基、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アミド基、チオール基などを導入することが考えられる。
【0128】
−液体−
帯電性高分子ゲルの膨潤時における液体の吸収量は、高分子ゲル1g当り、2g/g〜200g/gの範囲が好ましい。2g/g未満では帯電性高分子ゲル粒子間の凝集抑制や色純度が低減し易くなる恐れがあり、200g/gを超えると帯電性高分子ゲル中の調光用材料の濃度が低下し、調光コントラストが低下する恐れがある。
【0129】
高分子ゲルに吸収・放出される液体は、その電気的な特性は特に限定されないが、絶縁性の高い液体であることが特に好ましい。この場合、その体積抵抗率が103Ωcm以上であることが好ましく、より好ましくは107Ωcmから1019Ωcmであり、さらに好ましくは1010Ωcmから1019Ωcmである。このような体積抵抗率とすることで、より効果的に、電極反応に起因する液体の電気分解による気泡の発生が抑制され、通電の繰り返しよっても調光特性が損なわれることがなく、優れた繰り返し安定性を付与することができる。
【0130】
なお液体や高分子ゲルには、酸、アルカリ、塩、分散安定剤、酸化防止や紫外線吸収などを目的とした安定剤、抗菌剤、防腐剤などを添加することができるが、上記に示した特定の体積抵抗率の範囲となるような添加量であることが好ましい。
【0131】
液体としては脂肪族類、芳香族類、エーテル類、ケトン類、エステル類、アルコール類、シリコーン類、などが使用可能である。具体的には、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、デカン、ヘキサデカン、ケロセン、パラフィン、イソパラフィン、シリコーンオイル、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、高純度石油、エチレングリコール、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、グリセリン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、高級エステル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、2−ピロリドン、N−メチルホルムアミド、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ベンジン、ジイソプロピルナフタレン、オリーブ油、イソプロパノール、トリクロロトリフルオロエタン、テトラクロロエタン、ジブロモテトラフルオロエタンなどや、それらの混合物が好適に使用できる。また、上記示した体積抵抗率の範囲となるよう不純物を除去することで、水(所謂、純水)も好適に使用することができる。
【0132】
また、本発明において液体と帯電性高分子ゲル(調光用材料を含む帯電性高分子ゲル)との屈折率の差が0.01以下であるものを用いると、粒子界面での光散乱性が低減し、色純度を向上できることから望ましい。このような屈折差が低いもの同士を組み合わせて用いることで、着色した帯電性高分子ゲル粒子を用いた場合に、発色時においても入射される光が散乱されず、透過することから、透過型の光学素子に利用することも可能となる。
【0133】
また、本発明に使用する高分子ゲルや液体には必要に応じて各種色材、各種高分子、酸、アルカリ、塩、界面活性剤、分散安定剤や消泡剤、あるいは酸化防止剤、紫外線吸収剤、防腐剤や抗菌剤などの安定剤などを添加しても構わない。
【0134】
−電極、基板等−
本発明の光学素子に使用可能な基板としては、ポリエステル、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリ(メタ)アクリル酸メチル等のアクリル樹脂、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエーテルスルフォン、ナイロン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のフイルムや板状基板、ガラス基板、金属、金属フイルム、セラミックス等が使用可能である。前記基板の厚みは10μm〜2mmが好ましいが、この大きさは目的によって種々選択可能で、特に限定はされない。
【0135】
本発明の光学素子では電界を付与するために、一対の基板の少なくとも一方に電極が設けられていることが特に好ましい。基板上に設けられる電極の構成は、基板表面全体を覆う電極(いわゆる“べた電極”)であっても、セグメントやパターン状に分割されていても構わない。
【0136】
電極を構成する材料としては、少なくとも通電可能な材料であれば特に限定されないが、具体的には銅、アルミニウム、銀、金、ニッケル、プラチナなどに代表される金属膜からなる電極、酸化スズ、酸化スズ−酸化インジウム(ITO)に代表される金属酸化物、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアニリン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアセン類、ポリアセチレン類などに代表される導電性高分子からなる電極、高分子と前述の金属や金属酸化物の粒子との複合材料からなる電極などが好ましく用いられる。
【0137】
またこれらの電極構成は、単純マトリクス駆動用に配線されていてもよいが、薄膜トランジスタ(TFT)素子あるいは、MIM素子やバリスタなどの二端子素子などのスイッチング素子を設けることもできる。
【0138】
封止材としては、調光材料からの溶媒の蒸発または揮発を抑制する能力を有すること、基板に対する接着性を有すること、調光材料の特性に悪影響を与えないこと、実使用条件においてこれらの条件を長期間満たすものであれば、どのような材料を用いてもよい。また複数の封止材を組み合わせて構成することも可能である。具体的には各種樹脂、硬化性樹脂、無機物、ゾル−ゲル材、例えば無機フィラーを添加した無機物と有機物との混合物などが使用できる。
【0139】
本発明の光学素子の対向面間には、高分子ゲル粒子やこの高分子ゲルの体積変化に際して高分子ゲルに吸収あるいは高分子ゲルから排出される液体を挟持するために十分に均一な間隙を安定して確保し、必要に応じて画像欠陥が生じないようにスペーサを配置することが好ましい。なお、用いるスペーサーの量はできるだけ少ない方が好ましい。
【0140】
スペーサーによる基板間の間隔(2つの対向面の間隔)は1μm〜5mm程度の範囲内で調整されることが好ましく、小型光学素子においては10μm〜200μmの範囲がより好ましい。対向面の間隔が1μmよりも小さいと調光量が小さくなり、5mm以上では光学素子の応答特性が低下するなどの問題が発生する場合がある。
【0141】
なお、スペーサの形状は安定して2つの対向面の間隙を維持できるものであれば特に限定されないが、スペーサは例えば球、立方体、柱状のものなどの独立した形状のものが好ましく用いられる。また、連続した形状を有するスペーサを使用することも出来る。この場合スペーサは、間隙を保持することと同時に、網目状にすることで調光層(対向面間に封入された高分子ゲルおよび液体を含む層)の内部をセグメント化する働きを持たせてもよい。そうすることにより、隣接画素の誤動作を抑制する効果が得られ、より表示画質を向上させることができる。
【0142】
連続した形状からなるスペーサーは、安定して間隙を維持できるものであれば特に限定されず、主に格子状、ハニカム状などの多角形を始めとして、様々な形状のものを利用することが出来る。なお、スペーサーを利用して光学素子の内部をセグメント化する場合、画素の形状や刺激付与手段の形状を考慮すると、中でも格子状が最も好ましい。これらのスペーサは、調光組成物を構成する液体に安定な材料であれば特に限定されず、例えば、樹脂、金属、金属酸化物、ガラスなどが適用できる。
【0143】
また、本発明の光学素子には上記した他にも、カラーフィルター層、反射防止層、保護層、紫外線吸収層、緩衝層、防汚層、封止層(材)などを必要に応じて形成しても構わない。
【0144】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0145】
(実施例1)
[帯電性高分子ゲルの作成]
顔料を含有した帯電性高分子ゲル粒子を以下に示すように逆相懸濁重合によって製造した。
N−イソプロピルアクリルアミド0.79g、アクリル酸0.2ml、トリエチルアミン0.43ml、蒸留水2.28g、黒色顔料分散水溶液2.25g、架橋剤であるメチレンビスアクリルアミド2.5mg、過硫酸アンモニウム0.020gを純水0.5gに溶解した溶液を攪拌混合した水溶液Aを調製した。なお、上記の操作は窒素下にて行なった。
次に、ビーカー中でシクロヘキサン300gに分散安定剤であるソルビトール系界面活性剤(第一工業製薬製:ソルゲン50)1.5gを溶解させ、さらに窒素置換した状態で水溶液Aを添加し、回転式攪拌羽根を用いて1400回転で10分間高速攪拌して乳化させた。
【0146】
次に、ビーカー内の溶液の温度を25℃に調節し、溶液を攪拌しながらN、N、N’、N’−テトラメチルエチレンジアミンを50重量%含むシクロヘキサン溶液を添加し、重合を行なった。重合後、生成した高分子ゲル粒子を回収し、メタノール中に分散させた。
【0147】
[基板の表面処理]
次に、透明基板として縦横が50mm×50mm、厚さが3mmで、片面にITO膜(透明電極)が形成されたITO膜付きガラス(松浪硝子工業(株)製)の表面を、アセトンおよび2NのNaOH水溶液で順次洗浄した。その後ネガ型フォトレジスト材料を透明基板のITO膜が形成された面側に塗布した。
次に、直径約3μmの大きさの円孔が規則的に配列したパターン型を透明基板のレジストが塗布された側の面にのせて紫外線露光を行なった後、現像を行い、高分子ゲルの固定を阻害させる領域(円孔に対応した以外の領域)を覆うレジストのみを除去し露出させた。露出させた領域に対して、トルエンに(ヘプタデカフルオロ‐1、1、2、2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシランを攪拌しながら添加し、その溶解量を25重量%に調整した溶液を塗布し、30分反応させた。
【0148】
乾燥後、透明基板のITO膜上に残っている円形状のレジストパターンをエッチング処理により全て除去することで、円形パターン以外の部分が固定阻害剤で表面処理された透明基板を作製した。
さらに、エタノール95重量%水溶液に固定剤としてγ−アミノプロピルトリエトキシシランを攪拌しながら添加し、その溶解量を25重量%に調整した溶液を、スプレーにより固定阻害剤で部分的に表面処理された側の面に吹き付けた。なお、吹き付けの際には、上記のパターン型を透明基板表面に、パターン型の円孔と、透明基板表面のレジストが除去された円形パターンとが一致するように設置して、固定剤を含む溶液がレジストが除去された円形パターン部に選択的に吹き付けられるようにした。
吹き付け処理後の透明基板を乾燥させた後、透明基板表面からパターン型を取り除くことによって、ITO膜が設けられた側の面に直径約3μmの円形パターンが規則的に配列した領域に固定剤が表面処理され、それ以外の領域に固定阻害剤が表面処理されている透明基板を得た。
【0149】
次に得られた高分子ゲルを分散させたメタノール分散液中に、固定剤および固定素材剤で表面処理された透明基板を約10時間浸漬させることにより、固定剤で処理された円形パターン部分にのみ規則的に高分子ゲル粒子が固定された。
【0150】
さらに、縦横50mm×50mmの大きさで、片面にITO膜が形成されたITO膜付き電極基板の電極面(ITO膜表面)に、直径500μmの樹脂スペーサを配置して、上記の高分子ゲル粒子を固定した透明基板を、電極同士が対向するように貼り合わせた。この状態で1対の基板の外周部を、一部の溶液注入開口部を除いて熱接着剤で封止した。次に、溶液注入開口部から、高分子ゲルの膨潤・収縮に用いられる液体としてDMFのみを注入後、開口部を封止し光学素子(調光セル)を作製した。
【0151】
[評価]
この光学素子の電極間に40Vの直流電圧を印加することで、高分子ゲル粒子の体積変化が起こることが確認された。高分子ゲル粒子が固定されている電極がアノードとなるときには高分子ゲル粒子は収縮し、逆にカソードとなるときには膨張した。これにより、電界に応じて高分子ゲル粒子は膨潤・収縮することがわかった。この時の反射率から求めたコントラスト比は30あり、視認性に優れていることが確認された。
次に、40Vの直流電圧の印加を、極性を反転しながら10万回繰り返し実施した後に再び同様の評価を行なったところ、コントラスト比は30であり、初期と同様に視認性に優れていることが確認された。
以上のことから、コントラスト比や視認性は、経時的に殆ど劣化しておらず、繰り返し高分子ゲルを膨潤・収縮(体積変化)させても、高分子ゲルの体積変化量の低下や応答性の低下が殆ど起こっておらず、高分子ゲルが固定剤によって処理された領域(接着固定部)以外の基板表面に接触して貼り付きが殆ど起こっていないことがわかった。結果を表1に示す。
【0152】
(実施例2)
−光学素子の作成−
[帯電性高分子ゲルの作成]
顔料を含有した帯電性高分子ゲル粒子を以下に示すように逆相懸濁重合によって製造した。
N−イソプロピルアクリルアミド0.79g、アクリル酸0.2ml、トリエチルアミン0.43ml、蒸留水2.28g、黒色顔料分散水溶液2.25g、架橋剤であるメチレンビスアクリルアミド2.5mg、過硫酸アンモニウム0.020gを純水0.5gに溶解した溶液を攪拌混合した水溶液Aを調製した。なお、上記の操作は窒素下にて行なった。
次に、ビーカー中でシクロヘキサン300gに分散安定剤であるソルビトール系界面活性剤(第一工業製薬製:ソルゲン50)1.5gを溶解させ、さらに窒素置換した状態で水溶液Aを添加し、回転式攪拌羽根を用いて1400回転で10分間高速攪拌して乳化させた。
次に、ビーカー内の溶液の温度を25℃に調節し、溶液を攪拌しながらN、N、N’、N’−テトラメチルエチレンジアミンを50重量%含むシクロヘキサン溶液を添加し、重合を行なった。重合後、生成した高分子ゲル粒子を回収し、メタノール中に分散させた。
【0153】
[基板の表面処理]
次に、透明基板として縦横が50mm×50mm、厚さが3mmで、片面にITO膜(透明電極)が形成されたITO膜付きガラス(松浪硝子工業(株)製)の表面を、アセトンおよび2NのNaOH水溶液で順次洗浄した。その後ネガ型フォトレジスト材料を透明基板のITO膜が形成された面側に塗布した。
次に、直径約3μmの大きさの円孔が規則的に配列したパターン型を透明基板のレジストが塗布された側の面にのせて紫外線露光を行なった後、現像を行い、高分子ゲルの固定を阻害させる領域(円孔に対応した以外の領域)を覆うレジストのみを除去し露出させた。露出させた領域に対して、トルエンにn−オクタデシルトリエトキシシランを攪拌しながら添加し、その溶解量を20重量%に調整した溶液を塗布し、30分反応させた。
【0154】
乾燥後、透明基板のITO膜上に残っている円形状のレジストパターンをエッチング処理により全て除去することで、円形パターン以外の部分が固定阻害剤で表面処理された透明基板を作製した。
さらに、エタノール95重量%水溶液に固定剤としてγ−アミノプロピルトリエトキシシランを攪拌しながら添加し、その溶解量を25重量%に調整した溶液を、スプレーにより固定阻害剤で部分的に表面処理された側の面に吹き付けた。なお、吹き付けの際には、上記のパターン型を透明基板表面に、パターン型の円孔と、透明基板表面のレジストが除去された円形パターンとが一致するように設置して、固定剤を含む溶液がレジストが除去された円形パターン部に選択的に吹き付けられるようにした。
吹き付け処理後の透明基板を乾燥させた後、透明基板表面からパターン型を取り除くことによって、ITO膜が設けられた側の面に直径約3μmの円形パターンが規則的に配列した領域に固定剤が表面処理され、それ以外の領域に固定阻害剤が表面処理されている透明基板を得た。
【0155】
次に得られた高分子ゲルを分散させたメタノール分散液中に、固定剤および固定素材剤で表面処理された透明基板を約10時間浸漬させることにより、固定剤で処理された円形パターン部分にのみ規則的に高分子ゲル粒子が固定された。
【0156】
さらに、縦横50mm×50mmの大きさで、片面にITO膜が形成されたITO膜付き電極基板の電極面(ITO膜表面)に、直径500μmの樹脂スペーサを配置して、上記の高分子ゲル粒子を固定した透明基板を、電極同士が対向するように貼り合わせた。この状態で1対の基板の外周部を、一部の溶液注入開口部を除いて熱接着剤で封止した。次に、溶液注入開口部から、高分子ゲルの膨潤・収縮に用いられる液体としてDMFのみを注入後、開口部を封止し光学素子(調光セル)を作製した。
【0157】
[評価]
この光学素子の電極間に40Vの直流電圧を印加することで、高分子ゲル粒子の体積変化が起こることが確認された。高分子ゲル粒子が固定されている電極がアノードとなるときには高分子ゲル粒子は収縮し、逆にカソードとなるときには膨張した。これにより、電界に応じて高分子ゲル粒子は膨潤・収縮することがわかった。この時の反射率から求めたコントラスト比は30あり、視認性に優れていることが確認された。
次に、40Vの直流電圧の印加を、極性を反転しながら10万回繰り返し実施した後に再び同様の評価を行なったところ、コントラスト比は30であり、初期と同様に視認性に優れていることが確認された。
以上のことから、コントラスト比や視認性は、経時的に殆ど劣化しておらず、繰り返し高分子ゲルを膨潤・収縮(体積変化)させても、高分子ゲルの体積変化量の低下や応答性の低下が殆ど起こっておらず、高分子ゲルが固定剤によって処理された領域(接着固定部)以外の基板表面に接触して貼り付きが殆ど起こっていないことがわかった。結果を表1に示す。
【0158】
(比較例1)
実施例1と同様な方法で、顔料を含有した高分子ゲル粒子を作製した後、これをメタノール溶液に分散させた高分子ゲル分散溶液を作製した。
次に、透明基板として縦横が50mm×50mm、厚さが3mmで、片面にITO膜(透明電極)が形成されたITO膜付きガラス(松浪硝子工業(株)製)の表面を、アセトンおよび2NのNaOH水溶液で順次洗浄した。
エタノール95重量%水溶液200mlに固定剤としてγ‐アミノプロピルトリエトキシシラン4mlを攪拌しながら添加して調整した溶液中に、上記の透明基板を30分間浸漬させた。次に、溶液から取り出した透明基板をエタノールで軽く洗浄した後、110℃のオーブン中にて30分放置し、透明基板表面に形成された固定剤からなる層を硬化させた。
【0159】
その後、全面に固定剤が表面処理された透明基板上に、高分子ゲル分散溶液を均一に塗布した後、約10時間浸漬させることにより、固定化処理を行った。高分子ゲル粒子は固定剤によって表面処理された透明基板全面に均一に固定された。
さらに、縦横50mm×50mmの大きさで、片面にITO膜が形成されたITO膜付き電極基板の電極面(ITO膜表面)に、直径500μmの樹脂スペーサを配置して、上記の高分子ゲル粒子を固定した透明基板を、電極同士が対向するように貼り合わせた。この状態で1対の基板の外周部を、一部の溶液注入開口部を除いて熱接着剤で封止した。次に、溶液注入開口部から、高分子ゲルの膨潤・収縮に用いられる液体としてDMFのみを注入後、開口部を封止し光学素子(調光セル)を作製した。
【0160】
[評価]
この光学素子の電極間に40Vの直流電圧を印加することで、高分子ゲル粒子の体積変化が起こることが確認された。高分子ゲル粒子が固定されている電極がアノードとなるときには高分子ゲル粒子は収縮し、逆にカソードとなるときには膨張した。これにより、電界に応じて高分子ゲル粒子は膨潤・収縮することがわかった。この時の反射率から求めたコントラスト比は30あり、視認性に優れていることが確認された。
次に、40Vの直流電圧の印加を、極性を反転しながら10万回繰り返し実施した後に再び同様の評価を行なったところ、コントラスト比は15まで低下した。視認性も初期と比べると低下した。
以上のことから、コントラスト比や視認性は、経時的に劣化しており、繰り返し高分子ゲルを膨潤・収縮(体積変化)させると、高分子ゲルの体積変化量の低下や応答性の低下が発生し、光学素子作製時に高分子ゲルが固定剤によって固定された領域以外の基板表面に高分子ゲルが接触して変形し貼り付きが起こっていることがわかった。結果を表1に示す。
【0161】
(実施例3)
本実施例では、基板面に設けた凸部上に高分子ゲル粒子を固定した光学素子を以下のように作製した。
まず、縦横50mm×50mm、厚み2mmのガラス基板表面にネガ型フォトレジストを塗布した後、直径約5μmの大きさの円形パターンが規則的に配列したフォトマスクをガラス基板上に設置して、露光、現像し、ガラス基板表面にレジストからなる円形パターンを形成した。
次に凸部を形成するために、ガラス基板のパターニングされた面をエッチング処理して、円柱状の凸部をガラス基板の表面に形成した。この円柱部の直径は約5μm、凸部の高さは約10μmであり、各々の凸部の間隔は約40μmである。凸部を形成した後、凸部頂上部に残留するレジスト膜を有機溶媒により除去した。
【0162】
上記基板の凸部が形成された側の面にITO(Indium Tin Oxide)電極層をスパッタリング法により約0.1μmの厚みで均一に形成した。その後、凸部が設けられた側の面をパターニングを利用して、凸部頂上部にのみ実施例1で用いたものと同様のγ−アミノプロピルトリエトキシシラン溶液をスプレーにより吹き付け、これを乾燥させた。
【0163】
次に、上記の固定化剤で凸部頂上部を表面処理した基板を、実施例1で用いた高分子ゲル粒子を分散させたメタノール分散液中に約10時間浸漬させることにより、凸部頂上部にのみ規則的にゲル粒子が固定化された。
さらに、縦横50mm×50mmの大きさで、片面にITO膜が形成されたITO膜付き電極基板の電極面(ITO膜表面)に、直径500μmの樹脂スペーサを配置して、上記の高分子ゲル粒子を固定した透明基板を、電極同士が対向するように貼り合わせた。この状態で1対の基板の外周部を、一部の溶液注入開口部を除いて熱接着剤で封止した。次に、溶液注入開口部から、高分子ゲルの膨潤・収縮に用いられる液体としてDMFのみを注入後、開口部を封止し光学素子(調光セル)を作製した。
【0164】
[評価]
この光学素子の電極間に40Vの直流電圧を印加することで、高分子ゲル粒子の体積変化が起こることが確認された。高分子ゲル粒子が固定されている電極がアノードとなるときには高分子ゲル粒子は収縮し、逆にカソードとなるときには膨張した。これにより、電界に応じて高分子ゲル粒子は膨潤・収縮することがわかった。この時の反射率から求めたコントラスト比は30あり、視認性に優れていることが確認された。
次に、40Vの直流電圧の印加を、極性を反転しながら10万回繰り返し実施した後に再び同様の評価を行なったところ、コントラスト比は30であり、初期と同様に視認性に優れていることが確認された。
以上のことから、コントラスト比や視認性は、経時的に殆ど劣化しておらず、繰り返し高分子ゲルを膨潤・収縮(体積変化)させても、高分子ゲルの体積変化量の低下や応答性の低下が殆ど起こっておらず、高分子ゲルが固定剤によって処理された領域(接着固定部)以外の基板表面に接触して貼り付きが殆ど起こっていないことがわかった。結果を表1に示す。
【0165】
【表1】
【0166】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明によれば、、電界により帯電性高分子ゲルを繰り返し膨潤・収縮させても経時的に安定した体積変化量を維持することができる光学素子およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の本発明の光学素子の一例を示す模式断面図である。
【図2】図1に示す光学素子の対向面(電極10表面)に設けられた接着固定部20の、平面方向(光学素子の厚み方向に対して垂直に交わる面)の形状および配列パターンの一例について示す模式図である。
【図3】第2の本発明の光学素子の一例を示す模式断面図である。
【符号の説明】
2 基板
4 透明基板
6 高分子ゲル
8 液体
10 電極
10’ 電極10表面の一領域
12 透明電極
14 スペーサー
16 封止材
20 接着固定部
22 凸部
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気的な刺激に応じて可逆的に光の透過率、吸収や光散乱性などを制御できる光学素子及びその製造方法に関する。より詳しくは、電気的な刺激にを利用する調光素子、表示素子、記録素子、センサー等に利用可能な光学素子およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
pH変化、イオン強度変化、化学物質の吸脱着、溶媒組成変化、あるいは熱、光、電気刺激などの付与によって可逆的に膨潤・収縮(体積変化)を起こす刺激応答性高分子ゲルを利用して、光の透過量や散乱性を制御することで調光・発色を行う光学素子技術が知られている。
例えば、温度変化によって液体を吸脱する高分子ゲルの膨潤・収縮による溶媒との屈折率差を変化させることによる光散乱性を制御して表示を行う素子が提案されている(例えば、特許文献1、2等参照)。また、電気刺激によって液体を吸収・放出する高分子ゲルの光散乱性の変化によって表示を行う素子(特許文献3参照)や、含有される導電性高分子のイオンドープ・脱ドープによるpH変化によって、高分子ゲルの光散乱性を変化させて表示を行う素子(特許文献4参照)、あるいは、電場の作用で液体を吸収・放出する高分子ゲルの膨潤・収縮により、光を遮光・反射・散乱あるいは透過状態を制御して、白濁・透明の表示を行う素子(特許文献5参照)が提案されている。
【0003】
一方、本発明者らは、飽和吸収濃度以上の顔料あるいは飽和散乱濃度以上の光散乱部材を刺激応答性高分子ゲル中に含有させた調光材料を提案している(例えば、特許文献6参照)。この調光材料は可逆的な大きな色変化が得られることや、多色化が容易であることなどの特長をもっている。また、この調光材料の粒子(高分子ゲル粒子)を多数個、基板上に固定することで、これを調光層とした光学素子を提案している(例えば、特許文献7参照)。このように高分子ゲル粒子を基板上に固定することは、膨潤・収縮の繰り返しによる高分子ゲルの凝集を防止することができ、さらには、高分子ゲルが膨潤した時の発色特性あるいは光散乱特性に優れた、良好なコントラスト比をもった素子を作製することができる。
【0004】
さらには、本発明者らは特定の構成からなる帯電性高分子ゲルが絶縁性有機系膨潤溶液中において電界に応答して繰り返し膨潤・収縮するという現象を見出し、これを利用した素子を作製した(例えば、特許文献8参照)。このような電界に応答する帯電性高分子ゲルは従来知られていた電流応答系高分子ゲルの課題であった消費電力の高さ、耐久性の低さ、膨潤液体の電気分解による気泡の発生等を改善するもので、表示素子、調光素子や光スイッチなどの光学素子、あるいはマイクロマシーンとして応用が期待できる。この特定の帯電性高分子ゲルの電界応答挙動は、帯電性高分子ゲル粒子が電極等の基材上に固定化されている場合において生じることがわかっている。つまり、帯電性高分子ゲル粒子が基板上に固定されていることが重要である。
【0005】
【特許文献1】
特開昭61−151621号公報
【特許文献2】
特開昭62−925号公報
【特許文献3】
特開平4−134325号公報
【特許文献4】
特公平7−95172号公報
【特許文献5】
特開平5−188354号公報
【特許文献6】
特開平11−236559号公報
【特許文献7】
特開2001−350163号公報
【特許文献8】
特開2003−147221号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような電界に応答する帯電性高分子ゲル粒子を基板表面に固定した光学素子について、本発明者らが更に検討したところ、帯電性高分子ゲルが電界によって膨潤・収縮(体積変化)を繰り返す過程で高分子ゲルが変形して基板表面に接触し貼り付いてしまうことで、経時的にその体積変化量が劣化するという問題があることを見出した。
本発明は、上記問題点を解決することを課題とする。すなわち、本発明は、電界により帯電性高分子ゲルを繰り返し膨潤・収縮させても経時的に安定した体積変化量を維持することができる光学素子およびその製造方法を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を達成するために、帯電性高分子ゲル(以下、「高分子ゲル」と略す場合がある)を用いた従来の光学素子において、体積変化量や応答性が経時的に劣化する原因について鋭意検討した。
その結果、従来の電界応答型の光学素子は、その作製に際し高分子ゲルを固定する基板表面全体にシランカップリング剤等の高分子ゲルを固定するための材料を付与し、この表面に高分子ゲルを固定していることが問題であることを見出した。
【0008】
すなわち、この場合、光学素子の作製時に基板表面に最初に接触した領域が高分子ゲルの固定に利用されるが、それ以外の全ての領域も高分子ゲルを固定する能力を有したままである。このため、従来の帯電性高分子ゲルを用いた光学素子においては、高分子ゲルの固定に関与しなかった領域に、高分子ゲルが膨潤・収縮を繰り返す過程で接触した際に貼り付きが起こってしまう可能性が非常に高い。
従って、本発明者らは、高分子ゲルが光学素子作製時において固定された領域以外で、少なくとも高分子ゲルが最大限に膨潤した際に接触可能な基板表面の領域では、経時的な貼り付きが起こらないようにすることが極めて重要であると考え、以下の本発明を想到するに到った。
すなわち、本発明は、
【0009】
<1> 対向配置された一対の基板と、該一対の基板の対向面間に封入された液体および該液体を電界の付与により吸収・放出して膨張・収縮する帯電性高分子ゲルと、を少なくとも含み、
前記一対の基板の少なくとも一方の対向面が、前記帯電性高分子ゲルを固定する接着固定部を少なくとも有し、前記帯電性高分子ゲルが前記接着固定部を介して前記少なくとも一方の対抗面に固定された光学素子において、
(1)前記接着固定部の面積が、前記帯電性高分子ゲルの最大膨張時の最大断面積よりも小さく、且つ、
(2)前記接着固定部の周囲に非接着部が設けられ、前記非接着部が、少なくとも前記帯電性高分子ゲルの最大膨張時の最長外周線および該最長外周線よりも内側に設けられていることを特徴とする光学素子。
【0010】
<2> 前記帯電性高分子ゲルが、水素結合、イオン結合、および、共有結合から選択される1種以上の化学結合により前記接着固定部を介して前記少なくとも一方の対向面に固定されていることを特徴とする<1>に記載の光学素子。
【0011】
<3> 前記接着固定部表面が、シランカップリング剤を含むことを特徴とする<1>に記載の光学素子。
【0012】
<4> 前記非接着部表面の表面張力が30mN/m以下であることを特徴とする<1>に記載の光学素子。
【0013】
<5> 前記非接触部表面が、フッ素系材料で覆われていることを特徴とする<1>に記載の光学素子。
【0014】
<6> 前記液体が、絶縁性液体であることを特徴とする<1>に記載の光学素子
【0015】
<7> 前記一対の基板の少なくとも一方の基板の対向面に、電極が設けられていることを特徴とする<1>に記載の光学素子。
【0016】
<8> 前記帯電性高分子ゲルが、調光用材料を含むことを特徴とする<1>に記載の光学素子。
【0017】
<9> 前記帯電性高分子ゲルが、帯電性粒子を含むことを特徴とする<1>に記載の光学素子。
【0018】
<10> 前記帯電性粒子が、調光用材料であることを特徴とする<5>に記載の光学素子。
【0019】
<11> 前記帯電性高分子ゲルが、少なくとも前記帯電性微粒子を含む非イオン性高分子ゲルであること特徴とする<9>に記載の光学素子。
【0020】
<12> 前記帯電性高分子ゲルが、少なくとも前記帯電性微粒子を含むイオン性高分子ゲルであることを特徴とする<9>に記載の光学素子。
【0021】
<13> 前記帯電性高分子ゲルが、イオン性高分子ゲルでることを特徴と<1>する光学素子。
【0022】
<14> 対向配置された一対の基板と、該一対の基板の対向面間に封入された液体および該液体を電界の付与により吸収・放出して膨張・収縮する帯電性高分子ゲルと、を少なくとも含み、
前記一対の基板の少なくとも一方の対向面が、固定剤を含み、前記帯電性高分子ゲルを固定する接着固定部を少なくとも有し、前記帯電性高分子ゲルが前記接着固定部を介して前記一方の対抗面に固定され、
(1)前記接着固定部の面積が、前記帯電性高分子ゲルの最大膨張時の最大断面積よりも小さく、且つ、
(2)前記接着固定部の周囲に固定阻害剤を含む非接着部が設けられ、前記非接着部が、少なくとも前記帯電性高分子ゲルの最大膨張時の最長外周線および該最長外周線よりも内側に設けられている光学素子を作製する光学素子製造方法であって、
前記対向面に前記固定阻害剤を付与する固定阻害剤付与工程と、前記対向面に前記固定剤を付与する固定剤付与工程と、前記対向面に、前記固定阻害剤および前記固定剤から選択される少なくとも1種を選択的に付与可能な領域を形成するパターニング工程と、を少なくとも含むことを特徴とする光学素子製造方法。
【0023】
<15> 対向配置された一対の基板と、該一対の基板の対向面間に封入された液体および該液体を電界の付与により吸収・放出して膨張・収縮する帯電性高分子ゲルと、を少なくとも含み、
前記一対の基板の少なくとも一方の対向面が、前記帯電性高分子ゲルを固定する接着固定部を少なくとも有し、前記帯電性高分子ゲルが前記接着固定部を介して前記少なくとも一方の対向面に固定された光学素子において、
(3)前記接着固定部の面積が、前記帯電性高分子ゲルの最大膨張時の最大断面積よりも小さく、且つ、
(4)前記対向面に凸部が設けられ、前記接着固定部が前記凸部表面に設けられたことを特徴とする光学素子。
【0024】
<16> 前記凸部の高さが、1μm〜100μmの範囲内であることを特徴とする<15>に記載の光学素子。
【0025】
<17> 前記帯電性高分子ゲルが、水素結合、イオン結合、および、共有結合から選択される1種以上の化学結合により前記接着固定部を介して前記凸部表面に固定されていることを特徴とする<15>に記載の光学素子。
【0026】
<18> 前記接着固定部表面が、シランカップリング剤を含むことを特徴とする<15>に記載の光学素子。
【0027】
<19> 前記液体が、絶縁性液体であることを特徴とする<15>に記載の光学素子
【0028】
<20> 前記一対の基板の少なくとも一方の基板の対向面に、電極が設けられていることを特徴とする<15>に記載の光学素子。
【0029】
<21> 前記帯電性高分子ゲルが、調光用材料を含むことを特徴とする<15>に記載の光学素子。
【0030】
<22> 前記帯電性高分子ゲルが、帯電性粒子を含むことを特徴とする<15>に記載の光学素子。
【0031】
<23> 前記帯電性粒子が、調光用材料であることを特徴とする<15>に記載の光学素子。
【0032】
<24> 前記帯電性高分子ゲルが、少なくとも前記帯電性微粒子を含む非イオン性高分子ゲルであること特徴とする<22>に記載の光学素子。
【0033】
<25> 前記帯電性高分子ゲルが、少なくとも前記帯電性微粒子を含むイオン性高分子ゲルであることを特徴とする<22>に記載の光学素子。
【0034】
<26> 前記帯電性高分子ゲルが、イオン性高分子ゲルでることを特徴とする<15>に記載の光学素子。
【0035】
<27> 対向配置された一対の基板と、該一対の基板の対向面間に封入された液体および該液体を電界の付与により吸収・放出して膨張・収縮する帯電性高分子ゲルと、を少なくとも含み、
前記一対の基板の少なくとも一方の対向面が、固定剤を含み、前記帯電性高分子ゲルを固定する接着固定部を少なくとも有し、前記帯電性高分子ゲルが前記接着固定部を介して前記少なくとも一方の対向面に固定され、
(3)前記接着固定部の面積が、前記帯電性高分子ゲルの最大膨張時の最大断面積よりも小さく、且つ、
(4)前記対向面に凸部が設けられ、前記接着固定部が前記凸部表面に設けられた光学素子を作製する光学素子作製方法であって、
前記凸部表面にパターニングを利用して選択的に前記固定剤を付与する固定剤付与工程を少なくとも含むことを特徴とする光学素子製造方法。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を第1の本発明と、第2の本発明と、第1および第2の本発明に共通する事項と、に大きく分けて、順に説明する。
【0037】
(第1の本発明)
本発明の光学素子は、対向配置された一対の基板と、該一対の基板の対向面間に封入された液体および該液体を電界の付与により吸収・放出して膨張・収縮する帯電性高分子ゲルと、を少なくとも含み、前記一対の基板の少なくとも一方の対向面が、前記帯電性高分子ゲルを固定する接着固定部を少なくとも有し、前記帯電性高分子ゲルが前記接着固定部を介して前記少なくとも一方の対抗面に固定された光学素子において、(1)前記接着固定部の面積が、前記帯電性高分子ゲルの最大膨張時の最大断面積よりも小さく、且つ、(2)前記接着固定部の周囲に非接着部が設けられ、前記非接着部が、少なくとも前記帯電性高分子ゲルの最大膨張時の最長外周線および該最長外周線よりも内側に設けられていることを特徴とする。
【0038】
従って、第1の本発明の光学素子は、電界により帯電性高分子ゲルを繰り返し膨潤・収縮させても経時的に安定した体積変化量を維持することができる。
なお、上記(1)および(2)項における「最大膨潤時」とは、高分子ゲルの膨潤・収縮に際し、何らの制限も受けない状態(溶媒中に分散した状態、あるいは、これに相当する状態で、基板等、なんらかの固体表面に固定されたり、接着されたりしていない状態)で最大限に膨張した状態を意味する。
また、上記(2)項において「最長外周線」とは、高分子ゲルが接着固定部を介して対抗面に固定された状態で、高分子ゲルが上記に説明したように接着固定部等、対向面から何らの束縛も受けない状態で最大限に膨潤した状態を仮定した際に、対向面と平行な面における高分子ゲルの外周長さが最も長くなる輪郭線を意味する。この際、「非接着部が、少なくとも高分子ゲルの最大膨張時の最長外周線および該最長外周線よりも内側に設けられている」とは、対向面に対して垂直方向に最大外周線を投影した場合を基準にして定められるものである。
【0039】
上記に説明したように、高分子ゲルが光学素子作製時において固定された領域(接着固定部)以外で、少なくとも高分子ゲルが最大限に膨潤した際に接触可能な基板表面の領域では、経時的な貼り付きが起こらないようにすることが極めて重要である。
本発明者らは、この条件を達成するために、上記(2)項を満たすことが必要であることを見出した。この場合、高分子ゲルが膨潤・収縮を繰り返して接着固定部以外の領域に接触しても、この領域が非接着部からなるために貼り付きが起こらない。このため、高分子ゲルは経時的に安定した体積変化量を維持することができる。
【0040】
なお、本発明において、「接着固定部」とは、基板の対向面(以下、「基板表面」と略す場合がある)に設けられ、この部分に高分子ゲルが接触した際に恒久的に1つの高分子ゲルを固定することが可能な微小な領域を意味し、対向面に少なくとも1つ以上設けられるものである。また、「非接着部」とは、この領域に高分子ゲルが繰り返し接触しても、貼り付きが起きない領域を意味する。なお、これらの領域の詳細については後述する。
【0041】
また、第1の本発明においては、上記(2)項と共に、上記(1)項の条件も同時に満たす必要がある。上記(1)項の条件が満たされない場合には、光学素子を作製した時点で高分子ゲルが広い面積の接着固定部を介して基板表面に固定されることになるため、十分な体積変化量を得ることが出来なくなり、結果として光学素子として必要なコントラスト比等の光学特性を十分に確保できなくなるためである。
【0042】
−接着固定部−
なお、「接着固定部」は、上記に説明したように恒久的に1つの高分子ゲルを固定することができる微小な領域であれば特に限定されないが、具体的には、高分子ゲルと基板表面との間を化学結合(当該化学結合とは、水素結合、イオン結合、共有結合から選択される1種以上を意味する)を利用して化学的に接着・固定できるものであることが好ましい。また、化学結合としては、結合力が強く安定性に優れたイオン結合や共有結合であることがより好ましい。
このような化学結合を形成するためには、接着固定部表面が、例えば、高分子ゲル中の官能基と反応して化学結合の形成が可能な基を有する接着剤、多官能化合物、シランカップリング剤やチオール化合物、セレン化合物、無機物や高分子化合物等の固定剤により処理されていることが好ましい。
なお、接着固定部を介した高分子ゲルの基板表面への固定はこのような化学反応を伴わないものであっても、高分子ゲルを基板表面に恒久的に固定できるのであれば、例えば、微小なフックを接着固定部に形成して高分子ゲルを引っ掛けて固定する等の機械的固定など、他の方法を利用あるいは併用することも可能である。
【0043】
基板表面の接着固定部において、高分子ゲルとの間で化学結合を形成するために用いられる材料としては、多官能性化合物やシランカップリング剤等の各種反応性化学物を用いることができ、例えば、重合性不飽和基や反応性官能基などを2個以上有する化合物を挙げることができる。
【0044】
上記重合性不飽和基を2個以上有する化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリンポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリグリセリンなどのポリオール類のジ(メタ)アクリル酸エステル類またはトリ(メタ)アクリル酸エステル類、前記ポリオール類とマレイン酸、フマル酸などの不飽和酸類とを反応させて得られる不飽和ポリエステル類、N、N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミドなどのビス(メタ)アクリルアミド類、トリレジンイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどのポリイソシアネートと(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルとを反応させて得られるジ(メタ)アクリル酸カルバミン酸エステル類、アリル化澱粉、アリル化セルロース、ジアリルフタレート、その他のテトラアリロキシエタン、ペンタンエリスリトールトリアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、ジエチレングリコールジアリルエーテル、トリアリルトリメチルエーテルなどの多価アリル系を挙げることができる。
【0045】
これらの中でも本発明においては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、N、N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミドなどが好ましく使用される。
【0046】
また、反応性官能基を2個以上有する化合物としては、ジグリシジルエーテル化合物、ハロエポキシ化合物、ジイソシアネート化合物およびトリイソシアネート化合物などを挙げることができる。
ジグリシジルエーテル化合物の具体例としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ポリグリセリンジグリシジルエーテルなどを挙げることができる。
その他、ハロエポキシ化合物の具体例としては、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、β−メチルエピクロロヒドリンなどを挙げることができる。また、ジイソシアネート化合物の具体例としては、2、4−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどを挙げることができる。
【0047】
また、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのビニル系シランカップリング剤、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系シランカップリング剤、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ系シランカップリング剤など、各種シランカップリング剤なども適用できる。
【0048】
これらの中でも本発明には、特にN−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系シランカップリング剤が好ましく使用される。
【0049】
基板表面に部分的に形成される接着固定部の形状は、その面積が基板表面に対して平行な面における高分子ゲルの最大膨張時の最大断面積よりも小さければ特に限定されないが、例えば円形、楕円形、三角形、多角形、長方形、正方形、不定形、ストライプ状などが適用できる。
【0050】
これらの形状の中でも特に接着固定部の形状が円形であることが、高分子ゲル粒子がより安定して固定できると共に、固定前の高分子ゲルと比較して固定後の高分子ゲルの体積変化特性の劣化が少ないという利点がある。また、接着固定部の形状が円形である場合、使用する高分子ゲルの大きさにもよるが、円形パターンの大きさはその直径が1μm〜50μmの範囲内であることが好ましい。
【0051】
また、接着固定部の面積は、上記(1)項に説明したように高分子ゲルの最大膨張時の最大断面積よりも小さければよいが、絶対的な体積変化量をより大きくするためには高分子ゲルの最大収縮時の最大断面積よりも小さい方がより好ましい。但し、当該最大収縮時とは、高分子ゲルの膨潤・収縮に際し、何らの制限も受けない状態(溶媒中に分散した状態、あるいは、これに相当する状態で、基板等、なんらかの固体表面に固定されたり、接着されたりしていない状態)で最大限に収縮した状態を意味する。
【0052】
なお、基板表面に設けられる接着固定部の配置は規則的・周期的なものであっても、ランダムなものであっても構わない。また、基板表面の接着固定部の占める面積割合は、基板表面上において、高分子ゲルを(固定できるか否かは別として)配置可能な領域の全面積に対して5%〜50%の範囲内であることが望ましい。
【0053】
−非接着部−
一方、「非接着部」の表面の特性は、この領域に高分子ゲルが繰り返し接触しても、貼り付きが起きない領域であれば特に限定されないが、具体的には高分子ゲルとの間で、高分子ゲルを固定できる程の化学結合(水素結合、イオン結合、共有結合)を実質的に形成できない領域であることが好ましい。
なお、非接着部が、既述したような固定剤により覆われていないものであったとしても、基板本体として使用されるガラス基板の表面や、基板の表面に設けられるITO(Indium Tin Oxide)等の透明導電性セラミックス表面等のように、反応性を有しないにせよ、比較的に化学的親和性が高い場合には経時的に高分子ゲルの貼り付きが発生し易くなる場合がある。
【0054】
以上のことから非接着部表面は、高分子ゲルに対して化学的親和性が低いことがより好ましい。具体的には、非接着部表面の表面張力が30mN/m以下であることが好ましく、20mN/m以下であることがより好ましい。
【0055】
このような観点から、非接着部表面は、反応性を有する官能基は勿論、ヒドロキシル基等の水素結合の形成が可能な官能基や部位(例えば、エーテル結合を構成する酸素等)をその分子中に殆ど含まないあるいは全く含まない材料、例えば、炭化水素系の材料(樹脂や、カップリング剤等)や、炭化水素系化合物よりも表面エネルギーの小さいフッ素系の材料(樹脂や、カップリング剤等)等で覆われていることが好ましい。
このような材料としては、炭化水素系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、アルキル系シランカップリング剤、フッ素化アルキル系シランカップリング剤、アルキル系チオール、フッ素化アルキル系チオール等の固定阻害剤が挙げられる。この場合、固定阻害剤を基板表面の非接着部となる領域に付与すればよい。
勿論、これらの材料に相当するような高分子ゲルに対して化学的親和性の低い材料を、基板表面(例えば、ガラス基板表面や、ITO等の透明セラミックス電極等)に蒸着やスパッタリング等を利用して直接形成することもできる。
【0056】
なお、シランカップリング剤やアルキル系チオールのように反応性官能基を有する固定阻害剤を用いる場合には、分子中に含まれる反応性官能基は、1つであるか、あるいは分子の一方の端にのみ偏在しているものが、これら反応性官能基が基板表面との結合のみに確実に用いられ、これら分子中の高分子ゲルとの化学的親和性の低い部位(アルキル基やフッ素化アルキル基等)が基板表面側に配向することになるために好適である。
【0057】
具体的には、フッ化アルキル基を持つ固定阻害剤としては、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ四フッ化エチレン、エチレン−四フッ化エチレン共重合体、四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体等のフッ素系樹脂が挙げられる。シロキサン基などを持つ固定阻害剤としては、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、シリコーンのアミノ変性体、エポキシ変性体、カルボキシル変性体、メタクリル変性体、フェノール変性体、アルキル変性体等のシリコーン系樹脂が挙げられる。
これらの反応性官能基を有する固定阻害剤を用いる場合には、これを溶媒に溶解または分散させ、この溶液中に基板を浸漬させるなどして基板表面に固定阻害剤を塗布する処理を行なう。
【0058】
材料自体が高分子ゲルと接着性の低い性質をもつ固定阻害剤(樹脂材料)としては、ウレア樹脂、エポキシ樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリル酸エチル、ポリ酢酸ビニル、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられる。
【0059】
また、基板表面に設けられる非接着部は、高分子ゲルを固定する接着固定部の周囲に必ず設けられ、且つ、その領域は、少なくとも基板表面に対して平行な面における(接着固定部に固定された)高分子ゲルの最大膨張時の最長外周線および該最長外周線よりも内側であれば特に限定されない。
例えば、簡略には、基板表面を接着固定部および非接着固定部の2つの領域のみで構成することができる。あるいは、(接着固定部に固定された)高分子ゲルの最大膨張時の最長外周線よりも外側の領域であれば、体積変化量の経時劣化を引き起こす材料(例えば、基板あるいは基板表面を本来構成するような材料であるガラス表面やITO電極表面等)が剥き出しのままであってもよい。
なお、基板表面の非接着部の占める面積割合は、基板表面上において、高分子ゲルを(固定できるか否かは別として)配置可能な領域の全面積に対して50%〜95%の範囲内であることが望ましい。
【0060】
−光学素子の構成−
次に、第1の本発明の光学素子の具体的な構成例を図面を用いて説明するが、第1の本発明の光学素子は、以下に示す例のみに限定されるものではない。
図1は、第1の本発明の光学素子の一例を示す模式断面図である。図1において、2は基板、4は透明基板、6は高分子ゲル(粒子)、8は液体、10、12は電極、14はスペーサー、16は封止材、20は接着固定部を表す。
図1に示す光学素子は、対向配置された一対の基板(基板2および透明基板4)と、対向面間に封入された高分子ゲル6、液体8およびスペーサー14と、対向配置された一対の基板(基板2および透明基板4)の両端を封止するために、基板2の端部と透明基板4の端部との間を覆うように設けられた封止材16と、から構成される。
【0061】
基板2の対向面には電極10が、また、透明基板4の対向面には透明電極12がそれぞれ設けられている。また、2つの対向面の間隔を一定に維持するために、これら2つの対向面(電極10および透明電極12)と接してスペーサー14が配置されている。
【0062】
高分子ゲル6は、基板2の対向面に設けられた電極10表面に設けられた接着固定部20を介して、基板2上に固定されている。なお、図1において、接着固定部20は、説明を容易とする都合上、基板2の厚み方向に対して高さを有しているように描いているが、実質的には厚みを有さないものである(基板2の厚み方向に対して電極10が成す平面と同じ高さである)。一方、電極10表面の接着固定部20が設けられていない領域は、非接着部から構成されている。なお、図1に示す高分子ゲルは、最大膨潤時の状態を示したものである。
【0063】
図2は、図1に示す光学素子の対向面(電極10表面)に設けられた接着固定部20の、平面方向(光学素子の厚み方向に対して垂直に交わる面)の形状および配列パターンの一例について示す模式図である。
図2において、点線で囲まれた符号10’で示される領域は電極10表面の一領域を表す。図2において、接着固定部20の形状は円形であり、電極10表面には、高分子ゲル6が規則的に配置可能なように接着固定部20が千鳥配列で配置されている。また、各々の接着固定部の間の領域は、非接着部からなる。
【0064】
なお、図1に示した例では高分子ゲル6は、一方の基板(基板2)の対向面(電極10表面)にのみ固定されているが、もう一方の基板(透明基板4)の対向面(透明電極12表面)に固定されていてもよい。この場合、透明電極12の表面に更に接着固定部が設けられる。また、電極は一方の基板上のみに形成されていても構わない。
【0065】
−光学素子の作製方法−
次に第1の本発明の光学素子の作製方法について、接着固定部および非接着部の形成を中心に説明する。
対向面への接着固定部や非接着部の形成は、化学気相成長法、真空蒸着、イオンプレーティング法などにより気相中から接着固定部や非接着部を形成する材料を成膜することにより対抗面に直接形成して行なうこともできるし、固定剤や固定阻害剤を含む溶液を用いて塗布法や、浸漬法、ゾルゲル法、バイロゾル法を利用して行なうこともできる。
なお、このような処理を行わなくても、対向面を元々構成する材料が、そのまま接着固定部や非接着部として機能する場合には、対向面をそのまま接着固定部や非接着部として利用することも可能である。
【0066】
また、接着固定部および非接着部を対向面に選択的に形成するために、公知のパターニング方法、例えば、各種印刷法やリソグラフィー法、ソフトリソグラフィー法、また、マスキング等を利用することができる。また、インクジェット法を利用して固定剤あるいは固定阻害剤を含む溶液を対抗面に噴射してパターン状に形成することも可能である。
【0067】
接着固定部および非接着部を対向面に形成する順番は特に限定されず、いずれを先に実施してもよいが、接着固定部を形成する工程および非接着部を形成する工程の前後や、両工程の間に上記したようなパターニング方法を少なくとも1回以上利用して、対向面に接着固定部と非接着部とを選択的に形成できる領域を設けることが好ましい。
【0068】
例えば、接着固定部を形成するために固定剤を用い、非接着部を形成するために固定阻害剤を用いる場合には、第1の本発明の光学素子は、少なくとも対向面に固定阻害剤を付与する固定阻害剤付与工程と、対向面に固定剤を付与する固定剤付与工程と、対向面に、固定阻害剤および固定剤から選択される少なくとも1種を選択的に付与可能な領域を形成するパターニング工程と、を少なくとも経て作製されることが好ましい。
【0069】
この場合、これら3つの工程の順序は特に限定されないが、例えば、以下のように実施することができる。まず、▲1▼対向面にフォトレジストを塗布してパターニングし、レジストが除去された領域Aと、レジストで覆われた領域Bを形成する。次に、▲2▼領域Aに固定阻害剤を含む溶液を塗布して非接着固定部を対向面上に選択的に形成し、▲3▼さらに、領域Bを覆うレジストを除去してこの領域に固定剤を付与することにより接着固定部を対向面上に選択的に形成することができる。
【0070】
(第2の本発明)
次に、第2の本発明の光学素子について説明する。
第2の本発明の光学素子は、対向配置された一対の基板と、該一対の基板の対向面間に封入された液体および該液体を電界の付与により吸収・放出して膨張・収縮する帯電性高分子ゲルと、を少なくとも含み、前記一対の基板の少なくとも一方の対向面が、前記帯電性高分子ゲルを固定する接着固定部を少なくとも有し、前記帯電性高分子ゲルが前記接着固定部を介して前記少なくとも一方の対向面に固定された光学素子において、(3)前記接着固定部の面積が、前記帯電性高分子ゲルの最大膨張時の最大断面積よりも小さく、且つ、(4)前記対向面に凸部が設けられ、前記接着固定部が前記凸部表面に設けられたことを特徴とする。
【0071】
従って、第2の本発明の光学素子は、電界により帯電性高分子ゲルを繰り返し膨潤・収縮させても経時的に安定した体積変化量を維持することができる。
なお、上記(3)項における「最大膨潤時」とは、高分子ゲルの膨潤・収縮に際し、何らの制限も受けない状態(溶媒中に分散した状態、あるいは、これに相当する状態で、基板等、なんらかの固体表面に固定されたり、接着されたりしていない状態)で最大限に膨潤した状態を意味する。
【0072】
既述したように、高分子ゲルが光学素子作製時において固定された領域(接着固定部)以外で、少なくとも高分子ゲルが最大限に膨潤した際に接触可能な基板表面の領域では、経時的な貼り付きが起こらないようにすることが極めて重要である。
本発明者らは、この条件を達成することが可能であり、且つ、既述した第1の本発明の光学素子以外の構成について更に鋭意検討した結果、上記(4)項を満たすことが必要であることを見出した。
【0073】
この場合、高分子ゲルが膨潤・収縮を繰り返しても、高分子ゲルが対向面に設けられた凸部表面の接着固定部に固定されているため、高分子ゲルが、対向面の凸部以外の領域(平坦部)と接触することができない。このため、仮に平坦部が高分子ゲルとの接触により貼り付きを引き起こすような領域であったとしても、第2の本発明においては、高分子ゲルと平坦部との接触が起こらないために貼り付きが起こらない。このため、高分子ゲルは経時的に安定した体積変化量を維持することができる。
【0074】
なお、本発明において、対向面に設けられる「凸部」とは、もう一方の対向面側に出っ張っている凸形状であれば、光学素子の厚み方向および平面方向のいずれの形状も特に限定されないが、凸部表面への接着固定部の形成や、高分子ゲルの固定の容易さ等から、凸部の頂上部は平坦であることが好ましい。また、平面方向の形状も任意に選択できるが、円形であることが好ましい。
【0075】
凸部の高さ(当該高さとは、凸部が設けられる対抗面の凸部以外の領域(平坦部)を基準高さ(0μm)として規定されるものである)は特に限定されないが、高分子ゲルの膨潤・収縮に際して、高分子ゲルが対向面の凸部以外の領域(平坦部)と接触するのを確実に防止するために、少なくとも1μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、15μm以上であることが特に好ましい。また、凸部高さの上限は特に限定されないが、実用上は100μm以下であることが好ましい。
【0076】
このような対向面への凸部の形成は、基板(あるいは基板の対向面側に設けられる電極)を印刷法、エッチング法、圧力スタンパ法、射出成形法、等の公知の方法を利用することで容易に作製することができる。
【0077】
また、第2の本発明においては、上記(4)項と共に、上記(3)項の条件も同時に満たす必要がある。上記(3)項の条件が満たされない場合には、光学素子を作製した時点で高分子ゲルが広い面積の接着固定部を介して基板表面に固定されることになるため、十分な体積変化量を得ることが出来なくなり、結果として光学素子として必要なコントラスト比等の光学特性を十分に確保できなくなるためである。
【0078】
なお、凸部表面に形成される接着固定部は、凸部の頂上部が平坦である場合には頂上部に選択的に形成されることが好ましい。また、凸部の頂上部が平坦でない場合には、接着固定部は凸部以外の領域(平坦部)からの高さが1μm以上の領域に形成されていることが好ましい。
【0079】
なお、第2の本発明において、凸部表面に設けられる接着固定部は、既述した第1の本発明の場合と全く同様である。一方、凸部以外の領域(平坦部)の表面の高分子ゲルに対する接着性能/固定性能は特に限定されないが、光学素子の作製に際して、凸部以外の領域(平坦部)に高分子ゲルが固定されるのを防ぐために、少なくとも接着固定部のような、固定性能を有していないことが好ましい。具体的には、この領域が、対向面を構成する本来の材料が剥き出しの状態としておいてもよいし、あるいは、既述したような非接着部としてもよい。
【0080】
−光学素子の構成−
次に、第2の本発明の光学素子の具体的な構成例を図面を用いて説明するが、第2の本発明の光学素子は、以下に示す例のみに限定されるものではない。
図3は、第2の本発明の光学素子の一例を示す模式断面図である。図3において、22は凸部を表し、これ以外の符号で表される部材は、図1に示した部材と同様である。
図3に示す光学素子は、基本的には、図1に示す光学素子とほぼ同様の構成を有するものであるが、基板2の対向面に頂上部が平坦な凸部22が設けられており、この凸部の頂上部に設けられた不図示の接触固定部を介して高分子ゲル6が固定されているところに特徴がある。また、凸部以外の領域(平坦部)の表面は、電極10を構成する材料が剥き出しとなっている。
【0081】
図3に示す光学素子の接着固定部が設けられた領域(凸部22の頂上部)の、平面方向(光学素子の厚み方向に対して垂直に交わる面)の形状および配列パターンは、特に限定されないが図2に示した例と同様であってもよい。
【0082】
なお、図3に示した例では高分子ゲル6は、一方の基板(基板2)の対向面(電極2表面)に設けた凸部22表面にのみ固定されているが、もう一方の基板(透明基板4)の対向面(透明電極14表面)にも凸部を設け、この表面に接着固定部を介して固定されていてもよい。また、電極は一方の基板上のみに形成されていても構わない。
【0083】
−光学素子の作製方法−
次に第2の本発明の光学素子の作製方法について、接着固定部の形成を中心に説明する。
対向面に設けられた凸部表面への接着固定部の形成は、化学気相成長法、真空蒸着、イオンプレーティング法などにより気相中から接着固定部を形成する材料を成膜することにより対抗面に直接形成して行なうこともできるし、固定剤を含む溶液を用いて塗布法や、浸漬法、ゾルゲル法、バイロゾル法を利用して行なうこともできる。
なお、このような処理を行わなくても、凸部を元々構成する材料が、そのまま接着固定部として機能する場合には、凸部をそのまま接着固定部として利用することも可能である。
【0084】
また、接着固定部を凸部表面に選択的に形成するために、公知のパターニング方法、例えば、各種印刷法やリソグラフィー法、ソフトリソグラフィー法、また、マスキング等を利用することができる。また、インクジェット法を利用して固定剤を含む溶液を対抗面に噴射して凸部表面に選択的に形成することも可能である。
【0085】
対向面に設けられた凸部表面に接着固定部を形成する場合、凸部表面にパターニングを利用して選択的に接着固定部を形成することが好ましい。例えば、接着固定部を形成するために固定剤を用いる場合には、第2の本発明の光学素子は、少なくとも凸部表面にパターニングを利用して選択的に前記固定剤を付与する固定剤付与工程を少なくとも経て作製されることが好ましい。
【0086】
具体的には、頂上部が平坦な円柱状の凸部表面に接着固定部を形成する場合を例に説明すれば、凸部が設けられた対向面全面をレジストで覆ったのち、露光・現像することにより凸部の頂上部が露出するようにレジストを除去し、露出した頂上部に固定剤を含む溶液を塗布することにより凸部頂上部に選択的に接着固定部を形成することができる。
【0087】
(第1および第2の本発明に共通する事項)
次に、以上に説明した第1および第2の本発明に共通する事項について以下に説明する。
本発明において用いられる帯電性高分子ゲルは、(A)イオン性高分子ゲル、(B)帯電性粒子を含有させたイオン性高分子ゲル、および、(C)帯電性粒子を含有させた非イオン性高分子ゲルのいずれかが用いられる。以下に本発明において使用することのできる帯電性高分子ゲルの構成具体例を示す。
【0088】
(A)イオン性高分子ゲル
イオン性高分子ゲルの例としては、ポリ(メタ)アクリル酸の架橋物やその塩、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物やその塩、ポリマレイン酸の架橋物やその塩、マレイン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物やその塩、ポリビニルスルホン酸の架橋物やビニルスルホン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物、ポリビニルベンゼンスルホン酸の架橋物やその塩、ビニルベンゼンスルホン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物やその塩、ポリアクリルアミドアルキルスルホン酸の架橋物やその塩、アクリルアミドアルキルスルホン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物やその塩、ポリジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドの架橋物やその塩酸塩、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドと(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどとの共重合体の架橋物やその4級化物や塩、ポリジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドとポリビニルアルコールとの複合体の架橋物やその4級化物や塩、ポリビニルアルコールとポリ(メタ)アクリル酸との複合体の架橋物やその塩、カルボキシアルキルセルロース塩の架橋物、ポリ(メタ)アクリロニトリルの架橋物の部分加水分解物やその塩などが挙げられる。
【0089】
なお、例示した化合物の表記において(メタ)アクリレート等の記述は、アクリルレートおよびメタアクリレート(メタクリレート)のいずれをも含む表現である。
これらの高分子ゲルは、高分子に架橋剤を添加したり、あるいは高分子に電子線、γ線などの放射線を照射する、加熱する、さらには過酸化物を添加することによって三次元架橋することで作製することができる。
【0090】
(B)帯電剤粒子を含有させたイオン性高分子ゲル
帯電剤粒子を含有させたイオン性高分子ゲルを構成するイオン性高分子ゲルとしては、上記(B)項に記載したイオン性高分子ゲルと同様なイオン性高分子ゲルが使用できる。
【0091】
イオン性高分子ゲル中に含有させる帯電性粒子としては、各種両親媒性(高)分子、ニグロシン系化合物、アルコキシ化アミン類、第四級アンモニウム塩、アルキルアミド、リンおよびタングステンの単体および化合物、モリブデンキレート顔料、疎水性シリカ、ホウ素類、ハロゲン化合物、モノアゾ染料の金属錯塩、サリチル酸、アルキルサリチル酸、ジアルキルサリチル酸、ナフトエ酸の金属錯塩、塩素化ポリオレフィン、塩素化ポリエステル、酸基過剰のポリエステル、銅フタロシアニンのスルホニルアミン、オイルブラック、ナフテン酸金属塩、脂肪酸金属塩、樹脂酸石けんなどが挙げられる。
【0092】
イオン性高分子ゲル中に含有させる帯電性粒子の添加量は、2重量%から70重量%の範囲が好ましい。
また帯電性粒子が後で述べる調光用材料を兼ねるものであっても構わない。このときイオン性高分子ゲル中に含有させる調光用材料の好ましい濃度は、2重量%から70重量%の範囲であり、特に好ましくは5重量%から50重量%の範囲である。さらにイオン性高分子ゲルの電界に対する応答性を向上させるために、調光用材料以外の帯電性粒子を別途イオン性高分子ゲル中に含有させても構わない。このときイオン性高分子ゲル中に含有させる調光用材料以外の帯電性粒子の添加量は、2重量%から70重量%の範囲が好ましい。
【0093】
(C)帯電性粒子を含有させた非イオン性高分子ゲル
次に、帯電性粒子を含有させた非イオン性高分子ゲルについて説明する。なお、本発明において、「非イオン性高分子ゲル」とは高分子ゲルを構成する高分子鎖がイオン解離基を持たない高分子ゲルを意味する。
具体的な非イオン性高分子ゲルを例示すれば、下記に列挙するモノマーから選択される1種以上のモノマーからなる単独重合体の架橋体や2種以上のモノマ−からなる共重合体の架橋体が好ましく使用できる。
このようなモノマーとしては、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルエステル、(メタ)アクリルアミド、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレン、N−ジアルキル置換(メタ)アクリルアミド、ビニルピリジン、ビニルアミン、アリルアミン、スチレン、ビニルカルバゾール、ビニルピロリドン、スチレン、スチレン誘導体、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、塩化ビニル、塩化ビニリデン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、メチレンビスアクリルアミド、イソプレン、ブタジエン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0094】
その他にも、ポリエステル系高分子の架橋体、ポリビニルアセタール誘導体の架橋体、ポリウレタン系高分子の架橋体、ポリウレア系高分子の架橋体、ポリエーテル系高分子の架橋体、ポリアミド系高分子の架橋体、ポリカーボネート系高分子の架橋体などが好ましく使用できる。
【0095】
これらの高分子ゲルは、高分子への架橋剤の添加、あるいは高分子に電子線、γ線などの放射線を照射する、加熱する、さらには過酸化物を添加することによって三次元架橋することで作製することができる。
上記非イオン性高分子ゲル中に含有させる帯電性粒子としては、上記〈2〉項に説明した帯電剤を含有させたイオン性高分子ゲルで記載したものと同様のものが挙げられる。
【0096】
非イオン性高分子ゲル中に含有させる帯電性粒子の添加量は、2重量%から70重量%の範囲が好ましい。
また帯電性粒子が後述する調光用材料を兼ねるものであっても構わない。このとき非イオン性高分子ゲル中に含有させる調光用材料の好ましい濃度は、2重量%から70重量%の範囲であり、特に好ましくは5重量%から50重量%の範囲である。さらに非イオン性高分子ゲルの電界に対する応答性を向上させるために、調光用材料以外の帯電性粒子を別途非イオン性高分子ゲル中に含有させても構わない。このとき非イオン性高分子ゲル中に含有させる調光用材料以外の帯電性粒子の添加量は、2重量%から70重量%の範囲が好ましい。
【0097】
本発明において使用される高分子ゲルの体積変化量は、高分子ゲルが、基板表面に固定されたり、固定されないまでも粘着性の表面と接触して体積変化挙動が制限されていない状態(すなわち、溶媒中に分散した状態、あるいは、これに等しい状態)において、少なくとも体積比(最大膨張時の体積/最大収縮時の体積)が5以上、好ましくは10以上であることが望ましい。体積比が5未満であると十分な調光コントラストが得られない可能性がある。
【0098】
本発明に用いられる高分子ゲル粒子の形状には特に制限はなく、球体、楕円体、立方体、多面体、多孔質体、星状、針状、中空状などのものが適用できる。この中でも等方的に高分子ゲル粒子を膨潤・収縮させることができる観点から球形であることが特に好ましい。また、高分子ゲル粒子の形状が球形である場合の好ましい大きさは、最大収縮状態時において平均粒子径で0.1μm〜5mmの範囲、より好ましくは1μm〜1mmの範囲である。平均粒子径が0.1μm以下であると、高分子ゲル粒子の扱いが困難になる、優れた光学特性が得られないなどの問題が生じる場合がある。一方、平均粒子径が5mmよりも大きくなると、体積変化に要する応答時間が大幅に遅くなってしまうなどの問題が生じる場合がある。
【0099】
また、高分子ゲル粒子は、高分子ゲルを物理的粉砕方法によって粉砕する方法や、架橋前の高分子ゲルを化学的粉砕方法によって粒子化した後に架橋して高分子ゲルとする方法、あるいは乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法などの粒子化重合法の一般的な方法によって作製することができる。
【0100】
また、高分子ゲル粒子の電界変化による体積変化速度をより高速にするために、従来技術と同様に高分子ゲルを多孔質化して液体の出入り易さを向上させることも好ましい。このような多孔質化した高分子ゲルは、一般に膨潤した高分子ゲルを凍結乾燥する方法等を利用して作製することができる。
【0101】
−高分子ゲルを構成するその他の材料−
また高分子ゲルには、調光用材料を添加・含有させることが好適である。なお、上述したが、この調光用材料は、帯電性粒子としての性質を兼ね備えたものであっても構わない。
【0102】
調光用材料の具体例としては、染料、顔料や光散乱材などが挙げられる。また調光用材料は帯電性高分子ゲル中に物理的あるいは化学的に固定化されることが好ましい。
【0103】
染料の好適な具体例としては、例えば、黒色のニグロシン系染料や赤、緑、青、シアン、マゼンタ、イエローなどのカラー染料であるアゾ染料、アントラキノン系染料、インジゴ系染料、フタロシアニン系染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ベンゾキノン染料、ナフトキノン染料、ナフタルイミド染料、ベリノン染料などが挙げられ、特に光吸収係数が高いものが望ましい。
【0104】
例えば、C.I.ダイレクトイエロー1、8、11、12、24、26、27、28、33、39、44、50、58、85、86、87、88、89、98、157、C.I.アシッドイエロー1、3、7、11、17、19、23、25、29、38、44、79、127、144、245、C.I.ベイシックイエロー1、2、11、34、C.I.フードイエロー4、C.I.リアクティブイエロー37、C.I.ソルベントイエロー6、9、17、31、35、100、102、103、105、C.I.ダイレクトレッド1、2、4、9、11、13、17、20、23、24、28、31、33、37、39、44、46、62、63、75、79、80、81、83、84、89、95、99、113、197、201、218、220、224、225、226、227、228、229、230、231、C.I.アシッドレッド1、6、8、9、13、14、18、26、27、35、37、42、52、82、85、87、89、92、97、106、111、114、115、118、134、158、186、249、254、289、C.I.ベイシックレッド1、2、9、12、14、17、18、37、C.I.フードレッド14、C.I.リアクティブレッド23、180、C.I.ソルベントレッド5、16、17、18、19、22、23、143、145、146、149、150、151、157、158、C.I.ダイレクトブルー1、2、6、15、22、25、41、71、76、78、86、87、90、98、163、165、199、202、C.I.アシッドブルー1、7、9、22、23、25、29、40、41、43、45、78、80、82、92、93、127、249、C.I.ベイシックブルー1、3、5、7、9、22、24、25、26、28、29、C.I.フードブルー2、C.I.ソルベントブルー22、63、78、83〜86、191、194、195、104、C.I.ダイレクトブラック2、7、19、22、24、32、38、51、56、63、71、74、75、77、108、154、168、171、C.I.アシッドブラック1、2、7、24、26、29、31、44、48、50、52、94、C.I.ベイシックブラック2、8、C.I.フードブラック1、2、C.I.リアクティブブラック31、C.I.フードバイオレット2、C.I.ソルベントバイオレット31、33、37、C.I.ソルベントグリーン24、25、C.I.ソルベントブラウン3、9等が挙げられる。これらの染料は、単独で使用してもよく、さもなければ所望とする色を得るために混合して使用してもよい。
【0105】
また高分子ゲルに染料を固定するために、不飽和二重結合基などの重合可能な基を有した構造の染料や高分子ゲルと反応可能ないわゆる反応性染料などが好ましく使用される。高分子ゲル中に含有させる染料の好ましい濃度は、3質量%から95質量%の範囲であり、特に好ましくは5質量%から80質量%の範囲である。3質量%よりも少ない場合は調光作用が低下し、95質量%よりも多い場合は良好な強度を有する材料を得ることが難しくなる場合がある。
【0106】
顔料の具体例としては、黒色顔料であるブロンズ粉、チタンブラック、各種カーボンブラック(チャネルブラック、ファーネスブラック等)、カラー顔料である例えばフタロシアニン系のシアン顔料、ベンジジン系のイエロー顔料、ローダミン系のマゼンタ顔料、あるいはこの他にもアントラキノン系、アゾ系、アゾ金属錯体、フタロシアニン系、キナクリドン系、ペリレン系、インジゴ系、イソインドリノン系、キナクリドン系、アリルアミド系、硫化亜鉛などの各種顔料を挙げることができる。
【0107】
例えば、イエロー系顔料としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が用いられる。
より詳細には、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、168等が好適に用いられる。
【0108】
また、マゼンタ系顔料としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アンスラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が用いられる。より詳細には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48;2、48;3、48;4、57;1、81;1、144、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、254が特に好ましい。
【0109】
また、シアン系顔料としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アンスラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が利用できる。具体的には、例えば顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15;3、15:4、60、62、66等が特に好適に利用できる。
【0110】
これらの顔料及び染料は、単独で使用してもよく、さもなければ所望とする色を得るために混合して使用してもよい。ただし、耐候性の観点からは染料よりも顔料を用いるほうが好ましい。
【0111】
光散乱材の好適な具体例としては、光散乱部材としては、高分子ゲルの体積変化に用いられる液体の屈折率と異なる屈折率を有する材料が好ましいが、それ以外には特に制限はなく、各種の無機化合物および有機化合物が適用できる。
【0112】
無機化合物の具体例としては、酸化亜鉛、塩基性炭酸鉛、塩基性硫酸鉛、硫酸鉛、リトボン、白雲母、硫化亜鉛、酸化チタン、酸化アンモチモン、鉛白、酸化ジルコニウム、アルミナ、マイカナイト、マイカレックス、石英、炭酸カルシウム、石膏、クレー、シリカ、ケイ酸、珪素土、タルク、塩基性炭酸マグネシウム、アルミナホワイト、グロスホワイト、サチン白等の無機酸化物や、亜鉛、アルメル、アンチモン、アルミニウム、アルミニウム合金、イリジウム、インジウム、オスミウム、クロム、クロメル、コバルト、ジルコニウム、ステンレス鋼、金、銀、洋銀、銅、青銅、すず、タングステン、タングステン鋼、鉄、鉛、ニッケル、ニッケル合金、ニッケリン、白金、白金ロジウム、タンタル、ジュラルミン、ニクロム、チタン、クルップ・オーステナイト鋼、コンスタンタン、真鍮、白金イリジウム、パラジウム、パラジウム合金、モリブデン、モリブデン鋼、マンガン、マンガン合金、ロジウム、ロジウム金などの金属材料、ITO(インジウム・スズ酸化物)等の無機導電性材料などが挙げられる。
【0113】
また、有機化合物の具体例としては、フェノール樹脂、フラン樹脂、キシレン・ホルムアルデヒド樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アニリン樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ−p−キシリレン、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フッ素系プラスチック、ポリアクリロニトリル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、ポリエーテル、ポリカーボネート、熱可塑性ポリエステル、ポリアミド、ジエン系プラスチック、ポリウレタン系プラスチック、ポリフェニレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、芳香族ヘテロ環ポリマー、シリコーン、天然ゴム系プラスチック、セルロース系プラスチック等やこれら2種類以上の高分子材料の混合材料(ポリマーブレンド)などの高分子材料、これらの樹脂からなる中空微粒子、等が挙げられる。
【0114】
さらに、上記に列挙した光散乱性材料を含有した高分子材料を、光散乱部材として適用できる。この高分子材料としては特に制限がなく、各種の高分子樹脂を使用することができる。好ましい高分子樹脂の具体例としては、光散乱性材料が有機化合物である場合に列挙された具体例が挙げられる。
【0115】
また、上記の顔料および光散乱部材の形状には特に制限はなく、粒子状、ブロック状、フイルム状、不定形状、繊維状などの種々のものが使用可能である。中でも特に、粒子状の形態は発色性・光散乱性が高いことや応用範囲が広いなどの特徴から特に好ましい。粒子状における形態にも特に制限はないが、球体、立方体、楕円体、多面体、多孔質体、星状、針状、中空状、りん片状などのものが適用できる。
【0116】
顔料および光散乱部材の形状が粒子状である場合の好ましい大きさは、平均粒子径で0.01μm〜500μmの範囲、より好ましくは0.05μm〜100μmの範囲である。これは、平均粒子径で0.01μm以下または500μm以上になると、顔料および光散乱部材に求められる発色効果および光散乱効果が低くなる場合があるためである。さらに、平均粒子径0.01μm以下では、高分子ゲル内部からの外部への顔料および光散乱部材の流出が起こりやすい。また、これらの粒子は、一般的な物理的粉砕方法や化学的粉砕方法によって製造することができる。
【0117】
また、これらの顔料および光散乱部材において、分子内にカルボキシル基やスルホン酸基などの酸基、水酸基、アミノ基、チオール基、ハロゲン基、ニトロ基、カルボニル基など極性基をもち、高分子ゲル内において光散乱部材の濃度が高い場合に凝集体を形成し易い特性のものも好ましく使用される。
【0118】
顔料および光散乱部材は高分子ゲル中に安定して固定された状態で含有され、高分子ゲル内部から外部へ流出しないことが好ましい。顔料および光散乱部材の流出を防止するためには、使用する高分子ゲルの網目よりも大きな粒子径の顔料および光散乱部材を用いることや、高分子ゲルとの電気的、イオン的、その他物理的な相互作用が高い顔料および光散乱部材を用いること、また、表面を化学修飾した顔料および光散乱部材を用いることが挙げられる。
表面を化学修飾した色材および光散乱部材として例えば、表面に高分子ゲルとの化学結合する基を導入したものや、高分子材料をグラフトした顔料および光散乱部材などが挙げられる。
【0119】
高分子ゲル中に含有される色材の濃度は、高分子ゲルが収縮した時に、少なくとも高分子ゲルの一部分で飽和吸収濃度以上の濃度に達することが望ましい。ここで、飽和吸収濃度以上とは、色材濃度が十分に濃い状態において、単位色材当たりの光吸収効率が低下する濃度である。また、飽和吸収濃度以上という定義を別な特性で表現すれば、特定の光路長のもとにおける色材濃度と光吸収量の関係が1次直線の関係から大きく外れるような色材濃度である。
【0120】
つまり色材濃度が飽和吸収濃度以上になると、色材の1粒子または1分子あたりの光吸収効率が下がることで、光吸収量が色材濃度に比例しなくなり、1次直線の関係から予想される光吸収量と比べて低くなる。一方、飽和吸収濃度以下では、光吸収量が色材濃度に比例しており、色材1粒子または1分子あたりの光吸収効率は殆ど一定になる。したがって、飽和吸収濃度以上に色材を高分子ゲル中に含有させた場合、膨潤時に光を効率よく吸収することができ、収縮時と比べて光吸収量を大きくすることができる。
【0121】
高分子ゲルが収縮した時に、色材を飽和吸収濃度以上になるように含有させる場合、この高分子ゲルが膨潤すると、色材濃度が下がり色材1粒子または1分子あたりの光吸収効率を上げることができる。その結果、膨潤時に光吸収量を大きく上げ、収縮時に光吸収量を大きく下げることができる。
一方、含有させる色材の濃度を飽和吸収濃度以下にすると、膨潤時の色材1粒子あたりの光吸収効率は収縮時とほとんど同程度となる。その結果、膨潤時に光吸収量を大きく上げ、収縮時に光吸収量を大きく下げることができなくなる。以上のことから、飽和吸収濃度とは膨潤・収縮による光吸収量変化を大きくするために必要な濃度であり、色材濃度を飽和吸収濃度以上に設定することで表示コントラストを高くすることができる。
【0122】
このような特性を有するために必要な高分子ゲルに含有させる色材の濃度は、色材の粒子径、屈折率、吸光係数や比重等にも依存するが、一般的には乾燥状態の刺激応答性高分子ゲルに色材を3重量%〜95重量%の範囲で含有させることが好ましく、より好ましくは5重量〜80重量%の範囲である。色材の濃度が3重量%以下であると、調光材料の高分子ゲルの体積変化による発色量変化が現れなくなり、さらに十分な調光コントラストを得るためには、光学素子の厚みが厚くなるなどの問題が生じる。一方、色材の濃度が95重量%以上の場合、高分子ゲルの膨潤・収縮が応答よく進行しにくくなり、光学素子の電界応答特性や体積変化量が低下してしまう。
【0123】
また、高分子ゲル中に含有される光散乱部材の濃度も、色材の濃度と類似した議論のもとに、高分子ゲルが収縮した時に、少なくとも高分子ゲルの一部分で飽和散乱濃度以上の濃度に達することが望ましい。ここで、飽和散乱濃度以上とは、ひとつの指標として各々の光散乱部材同士の平均間隔が十分に短くなることで、光散乱部材の光散乱の働きが1次粒子的なものから、集合体的なものに変化し、光散乱の効率が減少する濃度である。このような光散乱部材が集合体的な光散乱特性を示す状態を、光散乱部材の濃度が飽和散乱濃度以上にある状態と呼ぶ。また、飽和散乱濃度以上という定義を別な特性で表現すれば、特定の光路長のもとにおける光散乱部材濃度と光散乱量の関係が1次直線の関係から大きく外れるような光散乱部材濃度である。
【0124】
高分子ゲルの収縮状態でこのような飽和散乱濃度以上の状態を達成するためには、光散乱部材の粒子径、屈折率、導電率や比重等にも依存するが、一般的には乾燥状態の高分子ゲルに光散乱部材を2重量%〜95重量%の範囲で含有させることが好ましく、より好ましくは5重量〜95重量%の範囲である。光散乱部材の濃度が2重量%以下であると、高分子ゲルの体積変化による光散乱量変化が現れなくなり、さらに十分なコントラストを得るためには、光学素子の厚みが厚くなるなどの問題が生じる。一方、光散乱部材の濃度が95重量%以上の場合、高分子ゲルの膨潤・収縮が応答よく進行しにくくなり、光学素子の電界応答特性や体積変化量が低下してしまう。
【0125】
高分子ゲルに色材および光散乱部材を含有させる方法は、架橋前の高分子に色材および光散乱部材を均一に分散、混合した後に架橋する方法や重合時に高分子前駆体組成物に色材および光散乱部材を添加して重合する方法等が適用できる。重合時において色材および光散乱部材を添加する場合には前記したように重合性基や不対電子(ラジカル)をもつ色材および光散乱部材を使用し、化学結合することも好ましい。また、色材および光散乱部材は高分子ゲル中に極力均一に分散されていることが望ましい。特に、高分子への分散に際して、機械的混練法、攪拌法やあるいは分散剤などを利用して均一に分散させることが望ましい。
【0126】
このような調光用材料を含む帯電性高分子ゲルは、架橋前の高分子に調光用材料を均一に分散、混合した後に架橋する方法や重合時に高分子前駆体モノマ組成物に調光用材料を添加して重合する方法によって製造することができる。重合時において顔料や光散乱材を添加する場合には前記したように重合性基や不対電子(ラジカル)をもつ顔料や光散乱材を使用し、帯電性高分子ゲルに化学結合することも好ましく実施される。
【0127】
また、調光用材料は帯電性高分子ゲル中に極力均一に分散されていることが好ましい。特に、高分子への分散に際して、機械的混練法、攪拌法やあるいは分散剤などを利用して均一に分散させることが望ましい。
さらに、先に説明したように、上記に列挙した調光用材料を帯電性高分子ゲル中に含有させる帯電剤として用いることも可能である。帯電性高分子ゲルに含有させる調光用材料と溶媒との接触帯電によっても帯電性高分子ゲルへの帯電付与は可能であるが、調光用材料表面に帯電付与機能を持たせることがより好ましい。調光用材料表面に帯電付与機能を持たせる方法としては、調光用材料表面をアミノ基、アンモニウム基、ハロゲン基、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アミド基、チオール基などを導入することが考えられる。
【0128】
−液体−
帯電性高分子ゲルの膨潤時における液体の吸収量は、高分子ゲル1g当り、2g/g〜200g/gの範囲が好ましい。2g/g未満では帯電性高分子ゲル粒子間の凝集抑制や色純度が低減し易くなる恐れがあり、200g/gを超えると帯電性高分子ゲル中の調光用材料の濃度が低下し、調光コントラストが低下する恐れがある。
【0129】
高分子ゲルに吸収・放出される液体は、その電気的な特性は特に限定されないが、絶縁性の高い液体であることが特に好ましい。この場合、その体積抵抗率が103Ωcm以上であることが好ましく、より好ましくは107Ωcmから1019Ωcmであり、さらに好ましくは1010Ωcmから1019Ωcmである。このような体積抵抗率とすることで、より効果的に、電極反応に起因する液体の電気分解による気泡の発生が抑制され、通電の繰り返しよっても調光特性が損なわれることがなく、優れた繰り返し安定性を付与することができる。
【0130】
なお液体や高分子ゲルには、酸、アルカリ、塩、分散安定剤、酸化防止や紫外線吸収などを目的とした安定剤、抗菌剤、防腐剤などを添加することができるが、上記に示した特定の体積抵抗率の範囲となるような添加量であることが好ましい。
【0131】
液体としては脂肪族類、芳香族類、エーテル類、ケトン類、エステル類、アルコール類、シリコーン類、などが使用可能である。具体的には、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、デカン、ヘキサデカン、ケロセン、パラフィン、イソパラフィン、シリコーンオイル、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、高純度石油、エチレングリコール、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、グリセリン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、高級エステル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、2−ピロリドン、N−メチルホルムアミド、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ベンジン、ジイソプロピルナフタレン、オリーブ油、イソプロパノール、トリクロロトリフルオロエタン、テトラクロロエタン、ジブロモテトラフルオロエタンなどや、それらの混合物が好適に使用できる。また、上記示した体積抵抗率の範囲となるよう不純物を除去することで、水(所謂、純水)も好適に使用することができる。
【0132】
また、本発明において液体と帯電性高分子ゲル(調光用材料を含む帯電性高分子ゲル)との屈折率の差が0.01以下であるものを用いると、粒子界面での光散乱性が低減し、色純度を向上できることから望ましい。このような屈折差が低いもの同士を組み合わせて用いることで、着色した帯電性高分子ゲル粒子を用いた場合に、発色時においても入射される光が散乱されず、透過することから、透過型の光学素子に利用することも可能となる。
【0133】
また、本発明に使用する高分子ゲルや液体には必要に応じて各種色材、各種高分子、酸、アルカリ、塩、界面活性剤、分散安定剤や消泡剤、あるいは酸化防止剤、紫外線吸収剤、防腐剤や抗菌剤などの安定剤などを添加しても構わない。
【0134】
−電極、基板等−
本発明の光学素子に使用可能な基板としては、ポリエステル、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリ(メタ)アクリル酸メチル等のアクリル樹脂、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエーテルスルフォン、ナイロン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のフイルムや板状基板、ガラス基板、金属、金属フイルム、セラミックス等が使用可能である。前記基板の厚みは10μm〜2mmが好ましいが、この大きさは目的によって種々選択可能で、特に限定はされない。
【0135】
本発明の光学素子では電界を付与するために、一対の基板の少なくとも一方に電極が設けられていることが特に好ましい。基板上に設けられる電極の構成は、基板表面全体を覆う電極(いわゆる“べた電極”)であっても、セグメントやパターン状に分割されていても構わない。
【0136】
電極を構成する材料としては、少なくとも通電可能な材料であれば特に限定されないが、具体的には銅、アルミニウム、銀、金、ニッケル、プラチナなどに代表される金属膜からなる電極、酸化スズ、酸化スズ−酸化インジウム(ITO)に代表される金属酸化物、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアニリン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアセン類、ポリアセチレン類などに代表される導電性高分子からなる電極、高分子と前述の金属や金属酸化物の粒子との複合材料からなる電極などが好ましく用いられる。
【0137】
またこれらの電極構成は、単純マトリクス駆動用に配線されていてもよいが、薄膜トランジスタ(TFT)素子あるいは、MIM素子やバリスタなどの二端子素子などのスイッチング素子を設けることもできる。
【0138】
封止材としては、調光材料からの溶媒の蒸発または揮発を抑制する能力を有すること、基板に対する接着性を有すること、調光材料の特性に悪影響を与えないこと、実使用条件においてこれらの条件を長期間満たすものであれば、どのような材料を用いてもよい。また複数の封止材を組み合わせて構成することも可能である。具体的には各種樹脂、硬化性樹脂、無機物、ゾル−ゲル材、例えば無機フィラーを添加した無機物と有機物との混合物などが使用できる。
【0139】
本発明の光学素子の対向面間には、高分子ゲル粒子やこの高分子ゲルの体積変化に際して高分子ゲルに吸収あるいは高分子ゲルから排出される液体を挟持するために十分に均一な間隙を安定して確保し、必要に応じて画像欠陥が生じないようにスペーサを配置することが好ましい。なお、用いるスペーサーの量はできるだけ少ない方が好ましい。
【0140】
スペーサーによる基板間の間隔(2つの対向面の間隔)は1μm〜5mm程度の範囲内で調整されることが好ましく、小型光学素子においては10μm〜200μmの範囲がより好ましい。対向面の間隔が1μmよりも小さいと調光量が小さくなり、5mm以上では光学素子の応答特性が低下するなどの問題が発生する場合がある。
【0141】
なお、スペーサの形状は安定して2つの対向面の間隙を維持できるものであれば特に限定されないが、スペーサは例えば球、立方体、柱状のものなどの独立した形状のものが好ましく用いられる。また、連続した形状を有するスペーサを使用することも出来る。この場合スペーサは、間隙を保持することと同時に、網目状にすることで調光層(対向面間に封入された高分子ゲルおよび液体を含む層)の内部をセグメント化する働きを持たせてもよい。そうすることにより、隣接画素の誤動作を抑制する効果が得られ、より表示画質を向上させることができる。
【0142】
連続した形状からなるスペーサーは、安定して間隙を維持できるものであれば特に限定されず、主に格子状、ハニカム状などの多角形を始めとして、様々な形状のものを利用することが出来る。なお、スペーサーを利用して光学素子の内部をセグメント化する場合、画素の形状や刺激付与手段の形状を考慮すると、中でも格子状が最も好ましい。これらのスペーサは、調光組成物を構成する液体に安定な材料であれば特に限定されず、例えば、樹脂、金属、金属酸化物、ガラスなどが適用できる。
【0143】
また、本発明の光学素子には上記した他にも、カラーフィルター層、反射防止層、保護層、紫外線吸収層、緩衝層、防汚層、封止層(材)などを必要に応じて形成しても構わない。
【0144】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0145】
(実施例1)
[帯電性高分子ゲルの作成]
顔料を含有した帯電性高分子ゲル粒子を以下に示すように逆相懸濁重合によって製造した。
N−イソプロピルアクリルアミド0.79g、アクリル酸0.2ml、トリエチルアミン0.43ml、蒸留水2.28g、黒色顔料分散水溶液2.25g、架橋剤であるメチレンビスアクリルアミド2.5mg、過硫酸アンモニウム0.020gを純水0.5gに溶解した溶液を攪拌混合した水溶液Aを調製した。なお、上記の操作は窒素下にて行なった。
次に、ビーカー中でシクロヘキサン300gに分散安定剤であるソルビトール系界面活性剤(第一工業製薬製:ソルゲン50)1.5gを溶解させ、さらに窒素置換した状態で水溶液Aを添加し、回転式攪拌羽根を用いて1400回転で10分間高速攪拌して乳化させた。
【0146】
次に、ビーカー内の溶液の温度を25℃に調節し、溶液を攪拌しながらN、N、N’、N’−テトラメチルエチレンジアミンを50重量%含むシクロヘキサン溶液を添加し、重合を行なった。重合後、生成した高分子ゲル粒子を回収し、メタノール中に分散させた。
【0147】
[基板の表面処理]
次に、透明基板として縦横が50mm×50mm、厚さが3mmで、片面にITO膜(透明電極)が形成されたITO膜付きガラス(松浪硝子工業(株)製)の表面を、アセトンおよび2NのNaOH水溶液で順次洗浄した。その後ネガ型フォトレジスト材料を透明基板のITO膜が形成された面側に塗布した。
次に、直径約3μmの大きさの円孔が規則的に配列したパターン型を透明基板のレジストが塗布された側の面にのせて紫外線露光を行なった後、現像を行い、高分子ゲルの固定を阻害させる領域(円孔に対応した以外の領域)を覆うレジストのみを除去し露出させた。露出させた領域に対して、トルエンに(ヘプタデカフルオロ‐1、1、2、2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシランを攪拌しながら添加し、その溶解量を25重量%に調整した溶液を塗布し、30分反応させた。
【0148】
乾燥後、透明基板のITO膜上に残っている円形状のレジストパターンをエッチング処理により全て除去することで、円形パターン以外の部分が固定阻害剤で表面処理された透明基板を作製した。
さらに、エタノール95重量%水溶液に固定剤としてγ−アミノプロピルトリエトキシシランを攪拌しながら添加し、その溶解量を25重量%に調整した溶液を、スプレーにより固定阻害剤で部分的に表面処理された側の面に吹き付けた。なお、吹き付けの際には、上記のパターン型を透明基板表面に、パターン型の円孔と、透明基板表面のレジストが除去された円形パターンとが一致するように設置して、固定剤を含む溶液がレジストが除去された円形パターン部に選択的に吹き付けられるようにした。
吹き付け処理後の透明基板を乾燥させた後、透明基板表面からパターン型を取り除くことによって、ITO膜が設けられた側の面に直径約3μmの円形パターンが規則的に配列した領域に固定剤が表面処理され、それ以外の領域に固定阻害剤が表面処理されている透明基板を得た。
【0149】
次に得られた高分子ゲルを分散させたメタノール分散液中に、固定剤および固定素材剤で表面処理された透明基板を約10時間浸漬させることにより、固定剤で処理された円形パターン部分にのみ規則的に高分子ゲル粒子が固定された。
【0150】
さらに、縦横50mm×50mmの大きさで、片面にITO膜が形成されたITO膜付き電極基板の電極面(ITO膜表面)に、直径500μmの樹脂スペーサを配置して、上記の高分子ゲル粒子を固定した透明基板を、電極同士が対向するように貼り合わせた。この状態で1対の基板の外周部を、一部の溶液注入開口部を除いて熱接着剤で封止した。次に、溶液注入開口部から、高分子ゲルの膨潤・収縮に用いられる液体としてDMFのみを注入後、開口部を封止し光学素子(調光セル)を作製した。
【0151】
[評価]
この光学素子の電極間に40Vの直流電圧を印加することで、高分子ゲル粒子の体積変化が起こることが確認された。高分子ゲル粒子が固定されている電極がアノードとなるときには高分子ゲル粒子は収縮し、逆にカソードとなるときには膨張した。これにより、電界に応じて高分子ゲル粒子は膨潤・収縮することがわかった。この時の反射率から求めたコントラスト比は30あり、視認性に優れていることが確認された。
次に、40Vの直流電圧の印加を、極性を反転しながら10万回繰り返し実施した後に再び同様の評価を行なったところ、コントラスト比は30であり、初期と同様に視認性に優れていることが確認された。
以上のことから、コントラスト比や視認性は、経時的に殆ど劣化しておらず、繰り返し高分子ゲルを膨潤・収縮(体積変化)させても、高分子ゲルの体積変化量の低下や応答性の低下が殆ど起こっておらず、高分子ゲルが固定剤によって処理された領域(接着固定部)以外の基板表面に接触して貼り付きが殆ど起こっていないことがわかった。結果を表1に示す。
【0152】
(実施例2)
−光学素子の作成−
[帯電性高分子ゲルの作成]
顔料を含有した帯電性高分子ゲル粒子を以下に示すように逆相懸濁重合によって製造した。
N−イソプロピルアクリルアミド0.79g、アクリル酸0.2ml、トリエチルアミン0.43ml、蒸留水2.28g、黒色顔料分散水溶液2.25g、架橋剤であるメチレンビスアクリルアミド2.5mg、過硫酸アンモニウム0.020gを純水0.5gに溶解した溶液を攪拌混合した水溶液Aを調製した。なお、上記の操作は窒素下にて行なった。
次に、ビーカー中でシクロヘキサン300gに分散安定剤であるソルビトール系界面活性剤(第一工業製薬製:ソルゲン50)1.5gを溶解させ、さらに窒素置換した状態で水溶液Aを添加し、回転式攪拌羽根を用いて1400回転で10分間高速攪拌して乳化させた。
次に、ビーカー内の溶液の温度を25℃に調節し、溶液を攪拌しながらN、N、N’、N’−テトラメチルエチレンジアミンを50重量%含むシクロヘキサン溶液を添加し、重合を行なった。重合後、生成した高分子ゲル粒子を回収し、メタノール中に分散させた。
【0153】
[基板の表面処理]
次に、透明基板として縦横が50mm×50mm、厚さが3mmで、片面にITO膜(透明電極)が形成されたITO膜付きガラス(松浪硝子工業(株)製)の表面を、アセトンおよび2NのNaOH水溶液で順次洗浄した。その後ネガ型フォトレジスト材料を透明基板のITO膜が形成された面側に塗布した。
次に、直径約3μmの大きさの円孔が規則的に配列したパターン型を透明基板のレジストが塗布された側の面にのせて紫外線露光を行なった後、現像を行い、高分子ゲルの固定を阻害させる領域(円孔に対応した以外の領域)を覆うレジストのみを除去し露出させた。露出させた領域に対して、トルエンにn−オクタデシルトリエトキシシランを攪拌しながら添加し、その溶解量を20重量%に調整した溶液を塗布し、30分反応させた。
【0154】
乾燥後、透明基板のITO膜上に残っている円形状のレジストパターンをエッチング処理により全て除去することで、円形パターン以外の部分が固定阻害剤で表面処理された透明基板を作製した。
さらに、エタノール95重量%水溶液に固定剤としてγ−アミノプロピルトリエトキシシランを攪拌しながら添加し、その溶解量を25重量%に調整した溶液を、スプレーにより固定阻害剤で部分的に表面処理された側の面に吹き付けた。なお、吹き付けの際には、上記のパターン型を透明基板表面に、パターン型の円孔と、透明基板表面のレジストが除去された円形パターンとが一致するように設置して、固定剤を含む溶液がレジストが除去された円形パターン部に選択的に吹き付けられるようにした。
吹き付け処理後の透明基板を乾燥させた後、透明基板表面からパターン型を取り除くことによって、ITO膜が設けられた側の面に直径約3μmの円形パターンが規則的に配列した領域に固定剤が表面処理され、それ以外の領域に固定阻害剤が表面処理されている透明基板を得た。
【0155】
次に得られた高分子ゲルを分散させたメタノール分散液中に、固定剤および固定素材剤で表面処理された透明基板を約10時間浸漬させることにより、固定剤で処理された円形パターン部分にのみ規則的に高分子ゲル粒子が固定された。
【0156】
さらに、縦横50mm×50mmの大きさで、片面にITO膜が形成されたITO膜付き電極基板の電極面(ITO膜表面)に、直径500μmの樹脂スペーサを配置して、上記の高分子ゲル粒子を固定した透明基板を、電極同士が対向するように貼り合わせた。この状態で1対の基板の外周部を、一部の溶液注入開口部を除いて熱接着剤で封止した。次に、溶液注入開口部から、高分子ゲルの膨潤・収縮に用いられる液体としてDMFのみを注入後、開口部を封止し光学素子(調光セル)を作製した。
【0157】
[評価]
この光学素子の電極間に40Vの直流電圧を印加することで、高分子ゲル粒子の体積変化が起こることが確認された。高分子ゲル粒子が固定されている電極がアノードとなるときには高分子ゲル粒子は収縮し、逆にカソードとなるときには膨張した。これにより、電界に応じて高分子ゲル粒子は膨潤・収縮することがわかった。この時の反射率から求めたコントラスト比は30あり、視認性に優れていることが確認された。
次に、40Vの直流電圧の印加を、極性を反転しながら10万回繰り返し実施した後に再び同様の評価を行なったところ、コントラスト比は30であり、初期と同様に視認性に優れていることが確認された。
以上のことから、コントラスト比や視認性は、経時的に殆ど劣化しておらず、繰り返し高分子ゲルを膨潤・収縮(体積変化)させても、高分子ゲルの体積変化量の低下や応答性の低下が殆ど起こっておらず、高分子ゲルが固定剤によって処理された領域(接着固定部)以外の基板表面に接触して貼り付きが殆ど起こっていないことがわかった。結果を表1に示す。
【0158】
(比較例1)
実施例1と同様な方法で、顔料を含有した高分子ゲル粒子を作製した後、これをメタノール溶液に分散させた高分子ゲル分散溶液を作製した。
次に、透明基板として縦横が50mm×50mm、厚さが3mmで、片面にITO膜(透明電極)が形成されたITO膜付きガラス(松浪硝子工業(株)製)の表面を、アセトンおよび2NのNaOH水溶液で順次洗浄した。
エタノール95重量%水溶液200mlに固定剤としてγ‐アミノプロピルトリエトキシシラン4mlを攪拌しながら添加して調整した溶液中に、上記の透明基板を30分間浸漬させた。次に、溶液から取り出した透明基板をエタノールで軽く洗浄した後、110℃のオーブン中にて30分放置し、透明基板表面に形成された固定剤からなる層を硬化させた。
【0159】
その後、全面に固定剤が表面処理された透明基板上に、高分子ゲル分散溶液を均一に塗布した後、約10時間浸漬させることにより、固定化処理を行った。高分子ゲル粒子は固定剤によって表面処理された透明基板全面に均一に固定された。
さらに、縦横50mm×50mmの大きさで、片面にITO膜が形成されたITO膜付き電極基板の電極面(ITO膜表面)に、直径500μmの樹脂スペーサを配置して、上記の高分子ゲル粒子を固定した透明基板を、電極同士が対向するように貼り合わせた。この状態で1対の基板の外周部を、一部の溶液注入開口部を除いて熱接着剤で封止した。次に、溶液注入開口部から、高分子ゲルの膨潤・収縮に用いられる液体としてDMFのみを注入後、開口部を封止し光学素子(調光セル)を作製した。
【0160】
[評価]
この光学素子の電極間に40Vの直流電圧を印加することで、高分子ゲル粒子の体積変化が起こることが確認された。高分子ゲル粒子が固定されている電極がアノードとなるときには高分子ゲル粒子は収縮し、逆にカソードとなるときには膨張した。これにより、電界に応じて高分子ゲル粒子は膨潤・収縮することがわかった。この時の反射率から求めたコントラスト比は30あり、視認性に優れていることが確認された。
次に、40Vの直流電圧の印加を、極性を反転しながら10万回繰り返し実施した後に再び同様の評価を行なったところ、コントラスト比は15まで低下した。視認性も初期と比べると低下した。
以上のことから、コントラスト比や視認性は、経時的に劣化しており、繰り返し高分子ゲルを膨潤・収縮(体積変化)させると、高分子ゲルの体積変化量の低下や応答性の低下が発生し、光学素子作製時に高分子ゲルが固定剤によって固定された領域以外の基板表面に高分子ゲルが接触して変形し貼り付きが起こっていることがわかった。結果を表1に示す。
【0161】
(実施例3)
本実施例では、基板面に設けた凸部上に高分子ゲル粒子を固定した光学素子を以下のように作製した。
まず、縦横50mm×50mm、厚み2mmのガラス基板表面にネガ型フォトレジストを塗布した後、直径約5μmの大きさの円形パターンが規則的に配列したフォトマスクをガラス基板上に設置して、露光、現像し、ガラス基板表面にレジストからなる円形パターンを形成した。
次に凸部を形成するために、ガラス基板のパターニングされた面をエッチング処理して、円柱状の凸部をガラス基板の表面に形成した。この円柱部の直径は約5μm、凸部の高さは約10μmであり、各々の凸部の間隔は約40μmである。凸部を形成した後、凸部頂上部に残留するレジスト膜を有機溶媒により除去した。
【0162】
上記基板の凸部が形成された側の面にITO(Indium Tin Oxide)電極層をスパッタリング法により約0.1μmの厚みで均一に形成した。その後、凸部が設けられた側の面をパターニングを利用して、凸部頂上部にのみ実施例1で用いたものと同様のγ−アミノプロピルトリエトキシシラン溶液をスプレーにより吹き付け、これを乾燥させた。
【0163】
次に、上記の固定化剤で凸部頂上部を表面処理した基板を、実施例1で用いた高分子ゲル粒子を分散させたメタノール分散液中に約10時間浸漬させることにより、凸部頂上部にのみ規則的にゲル粒子が固定化された。
さらに、縦横50mm×50mmの大きさで、片面にITO膜が形成されたITO膜付き電極基板の電極面(ITO膜表面)に、直径500μmの樹脂スペーサを配置して、上記の高分子ゲル粒子を固定した透明基板を、電極同士が対向するように貼り合わせた。この状態で1対の基板の外周部を、一部の溶液注入開口部を除いて熱接着剤で封止した。次に、溶液注入開口部から、高分子ゲルの膨潤・収縮に用いられる液体としてDMFのみを注入後、開口部を封止し光学素子(調光セル)を作製した。
【0164】
[評価]
この光学素子の電極間に40Vの直流電圧を印加することで、高分子ゲル粒子の体積変化が起こることが確認された。高分子ゲル粒子が固定されている電極がアノードとなるときには高分子ゲル粒子は収縮し、逆にカソードとなるときには膨張した。これにより、電界に応じて高分子ゲル粒子は膨潤・収縮することがわかった。この時の反射率から求めたコントラスト比は30あり、視認性に優れていることが確認された。
次に、40Vの直流電圧の印加を、極性を反転しながら10万回繰り返し実施した後に再び同様の評価を行なったところ、コントラスト比は30であり、初期と同様に視認性に優れていることが確認された。
以上のことから、コントラスト比や視認性は、経時的に殆ど劣化しておらず、繰り返し高分子ゲルを膨潤・収縮(体積変化)させても、高分子ゲルの体積変化量の低下や応答性の低下が殆ど起こっておらず、高分子ゲルが固定剤によって処理された領域(接着固定部)以外の基板表面に接触して貼り付きが殆ど起こっていないことがわかった。結果を表1に示す。
【0165】
【表1】
【0166】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明によれば、、電界により帯電性高分子ゲルを繰り返し膨潤・収縮させても経時的に安定した体積変化量を維持することができる光学素子およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の本発明の光学素子の一例を示す模式断面図である。
【図2】図1に示す光学素子の対向面(電極10表面)に設けられた接着固定部20の、平面方向(光学素子の厚み方向に対して垂直に交わる面)の形状および配列パターンの一例について示す模式図である。
【図3】第2の本発明の光学素子の一例を示す模式断面図である。
【符号の説明】
2 基板
4 透明基板
6 高分子ゲル
8 液体
10 電極
10’ 電極10表面の一領域
12 透明電極
14 スペーサー
16 封止材
20 接着固定部
22 凸部
Claims (27)
- 対向配置された一対の基板と、該一対の基板の対向面間に封入された液体および該液体を電界の付与により吸収・放出して膨張・収縮する帯電性高分子ゲルと、を少なくとも含み、
前記一対の基板の少なくとも一方の対向面が、前記帯電性高分子ゲルを固定する接着固定部を少なくとも有し、前記帯電性高分子ゲルが前記接着固定部を介して前記少なくとも一方の対抗面に固定された光学素子において、
(1)前記接着固定部の面積が、前記帯電性高分子ゲルの最大膨張時の最大断面積よりも小さく、且つ、
(2)前記接着固定部の周囲に非接着部が設けられ、前記非接着部が、少なくとも前記帯電性高分子ゲルの最大膨張時の最長外周線および該最長外周線よりも内側に設けられていることを特徴とする光学素子。 - 前記帯電性高分子ゲルが、水素結合、イオン結合、および、共有結合から選択される1種以上の化学結合により前記接着固定部を介して前記少なくとも一方の対向面に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
- 前記接着固定部表面が、シランカップリング剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
- 前記非接着部表面の表面張力が30mN/m以下であることを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
- 前記非接触部表面が、フッ素系材料で覆われていることを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
- 前記液体が、絶縁性液体であることを特徴とする請求項1に記載の光学素子
- 前記一対の基板の少なくとも一方の基板の対向面に、電極が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
- 前記帯電性高分子ゲルが、調光用材料を含むことを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
- 前記帯電性高分子ゲルが、帯電性粒子を含むことを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
- 前記帯電性粒子が、調光用材料であることを特徴とする請求項5に記載の光学素子。
- 前記帯電性高分子ゲルが、少なくとも前記帯電性微粒子を含む非イオン性高分子ゲルであること特徴とする請求項9に記載の光学素子。
- 前記帯電性高分子ゲルが、少なくとも前記帯電性微粒子を含むイオン性高分子ゲルであることを特徴とする請求項9に記載の光学素子。
- 前記帯電性高分子ゲルが、イオン性高分子ゲルでることを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
- 対向配置された一対の基板と、該一対の基板の対向面間に封入された液体および該液体を電界の付与により吸収・放出して膨張・収縮する帯電性高分子ゲルと、を少なくとも含み、
前記一対の基板の少なくとも一方の対向面が、固定剤を含み、前記帯電性高分子ゲルを固定する接着固定部を少なくとも有し、前記帯電性高分子ゲルが前記接着固定部を介して前記一方の対抗面に固定され、
(1)前記接着固定部の面積が、前記帯電性高分子ゲルの最大膨張時の最大断面積よりも小さく、且つ、
(2)前記接着固定部の周囲に固定阻害剤を含む非接着部が設けられ、前記非接着部が、少なくとも前記帯電性高分子ゲルの最大膨張時の最長外周線および該最長外周線よりも内側に設けられている光学素子を作製する光学素子製造方法であって、
前記対向面に前記固定阻害剤を付与する固定阻害剤付与工程と、前記対向面に前記固定剤を付与する固定剤付与工程と、前記対向面に、前記固定阻害剤および前記固定剤から選択される少なくとも1種を選択的に付与可能な領域を形成するパターニング工程と、を少なくとも含むことを特徴とする光学素子製造方法。 - 対向配置された一対の基板と、該一対の基板の対向面間に封入された液体および該液体を電界の付与により吸収・放出して膨張・収縮する帯電性高分子ゲルと、を少なくとも含み、
前記一対の基板の少なくとも一方の対向面が、前記帯電性高分子ゲルを固定する接着固定部を少なくとも有し、前記帯電性高分子ゲルが前記接着固定部を介して前記少なくとも一方の対向面に固定された光学素子において、
(3)前記接着固定部の面積が、前記帯電性高分子ゲルの最大膨張時の最大断面積よりも小さく、且つ、
(4)前記対向面に凸部が設けられ、前記接着固定部が前記凸部表面に設けられたことを特徴とする光学素子。 - 前記凸部の高さが、1μm〜100μmの範囲内であることを特徴とする請求項15に記載の光学素子。
- 前記帯電性高分子ゲルが、水素結合、イオン結合、および、共有結合から選択される1種以上の化学結合により前記接着固定部を介して前記凸部表面に固定されていることを特徴とする請求項15に記載の光学素子。
- 前記接着固定部表面が、シランカップリング剤を含むことを特徴とする請求項15に記載の光学素子。
- 前記液体が、絶縁性液体であることを特徴とする請求項15に記載の光学素子
- 前記一対の基板の少なくとも一方の基板の対向面に、電極が設けられていることを特徴とする請求項15に記載の光学素子。
- 前記帯電性高分子ゲルが、調光用材料を含むことを特徴とする請求項15に記載の光学素子。
- 前記帯電性高分子ゲルが、帯電性粒子を含むことを特徴とする請求項15に記載の光学素子。
- 前記帯電性粒子が、調光用材料であることを特徴とする請求項15に記載の光学素子。
- 前記帯電性高分子ゲルが、少なくとも前記帯電性微粒子を含む非イオン性高分子ゲルであること特徴とする請求項22に記載の光学素子。
- 前記帯電性高分子ゲルが、少なくとも前記帯電性微粒子を含むイオン性高分子ゲルであることを特徴とする請求項22に記載の光学素子。
- 前記帯電性高分子ゲルが、イオン性高分子ゲルでることを特徴とする請求項15に記載の光学素子。
- 対向配置された一対の基板と、該一対の基板の対向面間に封入された液体および該液体を電界の付与により吸収・放出して膨張・収縮する帯電性高分子ゲルと、を少なくとも含み、
前記一対の基板の少なくとも一方の対向面が、固定剤を含み、前記帯電性高分子ゲルを固定する接着固定部を少なくとも有し、前記帯電性高分子ゲルが前記接着固定部を介して前記少なくとも一方の対向面に固定され、
(3)前記接着固定部の面積が、前記帯電性高分子ゲルの最大膨張時の最大断面積よりも小さく、且つ、
(4)前記対向面に凸部が設けられ、前記接着固定部が前記凸部表面に設けられた光学素子を作製する光学素子作製方法であって、
前記凸部表面にパターニングを利用して選択的に前記固定剤を付与する固定剤付与工程を少なくとも含むことを特徴とする光学素子製造方法。
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