JP2005003368A - 空力音源探査システム及び空力音源探査方法 - Google Patents

空力音源探査システム及び空力音源探査方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2005003368A
JP2005003368A JP2003163569A JP2003163569A JP2005003368A JP 2005003368 A JP2005003368 A JP 2005003368A JP 2003163569 A JP2003163569 A JP 2003163569A JP 2003163569 A JP2003163569 A JP 2003163569A JP 2005003368 A JP2005003368 A JP 2005003368A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
sound source
distribution
calculation
velocity
aerodynamic
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2003163569A
Other languages
English (en)
Other versions
JP3958711B2 (ja
Inventor
Takehisa Takaishi
武久 高石
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Railway Technical Research Institute
Original Assignee
Railway Technical Research Institute
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Railway Technical Research Institute filed Critical Railway Technical Research Institute
Priority to JP2003163569A priority Critical patent/JP3958711B2/ja
Publication of JP2005003368A publication Critical patent/JP2005003368A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3958711B2 publication Critical patent/JP3958711B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Aerodynamic Tests, Hydrodynamic Tests, Wind Tunnels, And Water Tanks (AREA)
  • Measurement Of Mechanical Vibrations Or Ultrasonic Waves (AREA)

Abstract

【課題】流体騒音の理論に基づいて空力音の音源分布を解析する空力音源探査システム及び空力音源探査方法を提供する。
【解決手段】空力音源探査システムは、流れ場における速度ベクトルを算出する範囲として、所定の有限な計算領域を設定し、この計算領域外の渦の影響を領域内の渦の影響に置き換えたうえで、Howeの渦音の式と物体形状に適したコンパクトグリーン関数を組み合わせた式を用い、二重極音源の分布を求めるように構成されている。
【選択図】 図6

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、空力音の音源分布を解析するシステム及び方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、車、鉄道、航空機といった交通手段の高速化により、騒音に占める空力音の寄与率が大きくなってきている。
【0003】
例えば、新幹線騒音についてみると、騒音の要因としては、レールと車輪等の接触・振動によって発生する振動音、パンタグラフが架線から離線した際に発生するアークによるスパーク音、車両下部等の周りに生じた気流の乱れが直接空気を揺さぶることによって発生する空力音が考えられる。このうち、列車速度の増加に伴い、空力音の騒音に対する寄与率が急激に大きくなってきている。
【0004】
従来、空力音低減のための対策としては、実際の車両で問題となっている現象について、条件を変えた模型を用いた風洞実験により、放射音の比較検討を行う手探り的なものであった。放射音を測定する方法については、例えば、下記特許文献1、2に記載されている。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−311656号公報
【0006】
【特許文献2】
特開2002−267569号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述した方法は、現実の問題を解決するためには優れた方法である。しかし、反面、実験を行う者の経験によるところが大きい。また、どういった物理現象が起こっているかを正しく捉えないと、改良の方向性を誤り、有効な低減効果を見込めない。また、近年の新幹線の高速化に伴い、経験則による手探り的な空力音低減対策法の限界も見えてきている。
【0008】
このような事情から、流体騒音の理論に基づいた空力音低減対策法に対する期待が高まっている。
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、流体騒音の理論に基づいて空力音の音源分布を解析する空力音源探査システム及び空力音源探査方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明に係る空力音源探査システムは、流れ場に位置する物体の周りに発生する空力音の音源分布を求める空力音源探査システムであって、所定の有限な計算領域内の速度ベクトルの分布を算出する流速分布算出手段と、前記速度ベクトルの分布から前記計算領域外の渦の影響も考慮した前記物体周りの音源分布を算出する演算手段と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る空力音源探査方法は、流れ場に位置する物体の周りに発生する空力音の音源分布を求める空力音源探査方法であって、前記流れ場に所定の有限な計算領域を設定する設定工程と、前記計算領域内の速度ベクトルの分布を算出する速度ベクトル算出工程と、前記速度ベクトルの分布から、前記計算領域外の渦の影響も考慮した前記物体周りの音源分布を算出する演算工程と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る空力音源探査プログラムは、コンピュータに、流れ場に位置する物体の周りに発生する空力音の音源分布を求める処理を実行させる空力音源探査プログラムであって、前記流れ場に所定の有限な計算領域を設定するステップと、前記計算領域内の速度ベクトルの分布を算出するステップと、
【0012】
前記速度ベクトルの分布から、前記計算領域外の渦の影響も考慮した前記物体周りの音源分布を算出するステップと、をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
まず、本発明に先立って、本出願人が開発した空力音源探査システムについて説明する。図1は、本発明に先立って開発した空力音源探査システム10の全体構成を概略的に示す図である。なお、この空力音源探査システムは、PIVと呼ばれる手法により流れの速度分布を計測するPIVシステムを用いている。このPIVシステムに関しては、例えば、『可視化情報学会編,「PIVハンドブック」,森北出版株式会社,2002年7月』に詳細に説明されている。
【0014】
図1に示すように、空力音源探査システム10は、煙発生装置11、シート照明装置12、CCDカメラ13、及び音源解析装置20から構成される。音源解析装置20は、パーソナルコンピュータ(以下、「PC」とする)21とディスプレイ22を含み、PC21は図示しない演算装置と記録装置を含む。
【0015】
また、図1に示すように空力音源探査システムの測定対象は、円柱模型14である。円柱模型14は上下面を地面に平行に配置されており、そのサイズは、直径50mm、長さ600mmである。また、空力音源探査システム10は、図示しない風洞装置の中に配置されている。そして、風洞装置を作動させると、図中左側から右側に向けて風が吹き、円柱模型14の周囲には流れ場が構成されるようになっている。この風洞装置の風速は、150km/h(41.7m/s)である。この流れ場によって、円柱模型14の周囲に空力音が発生しており、空力音源探査システム10によって、この空力音源の空間分布を解析することになる。
【0016】
PC21は、CCDカメラ13に接続されており、CCDカメラ13で撮影された画像は、PC21内の記録装置に格納される。PC21内の演算装置は、この記録装置に格納された画像データに対して、処理・解析を行うよう構成されている。また、その解析結果は、ディスプレイ22に表示される。
【0017】
シート照明装置12は、流れ場の所定の二次元測定領域(図1参照)を、4Hz周期でシート状の照明光により照明しており、CCDカメラ13は、この照明に同期させて撮影を行っている。シート照明装置12とCCDカメラ13の同期は、これらに接続された図示しない同期装置により取られている。よって、PC21内の記録装置には、微小時間間隔で時系列に撮影された画像が複数枚格納されることになる。
【0018】
図2は、CCDカメラ13と円柱模型14の位置関係を示す図であり、図2(a)は図1の手前からみた位置関係を示す図、図2(b)は図1の上側からみた位置関係を示す図である。
【0019】
同図に示すように、CCDカメラ13は、測定領域面に対して垂直方向の位置であって、円柱模型14周囲の所定の測定領域を撮影できる位置に配置されている。本実施の形態では、図中、円柱模型14の右側(下流側)を撮影できる位置に配置されている。また、x軸、y軸、z軸の原点は、円柱模型14の重心付近の位置に設定している。
【0020】
次に、この空力音源探査システム10により、空力音源の空間分布を解析する際の動作について説明する。
【0021】
まず、風洞装置を作動させてから、煙発生装置11により煙を発生させる。この煙発生装置11は、図中、円柱模型14よりも流れの上流側である左側に設置されており、発生した煙は、円柱模型14周囲の流れ場に混入されることになる。これにより、流れ場が可視化される。この煙は、流れに追従できるような粒子を入れる必要がある。粒子の径が大き過ぎたり、粒子の質量が重過ぎたりすると、流れに追従できなくなるからである。
【0022】
煙が混入された後、シート照明装置12によりシート状照明光が円柱模型14付近の測定領域に照射される。続いて、照明された瞬間の流れ場の画像をCCDカメラ13により撮影する。CCDカメラ13により撮影された画像は、音源解析装置20のPC21に転送され、PC21内の記録装置に保存される。
【0023】
次に、音源解析装置20において、記録装置に保存された画像を解析する処理について、図3を参照しながら説明する。図3は、音源解析装置20での解析処理について説明するためのフローチャートである。
【0024】
まず、PC21は、ステップ1(以下、「ステップ」を「S」とする)において、記録装置に保存された時系列的に隣り合う2枚の画像間での粒子の移動を解析することで、速度ベクトルの分布(流速分布)を算出する。この画像解析では、各画像を35×38=1330個のセルに分割し、各セルごとに速度ベクトルuを算出している。この処理は、上述した一般的なPIVシステムにおける処理と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0025】
得られる速度ベクトルとしては、例えば、x=100mm、y=150mm、z=0mmの点で、x方向の瞬時流速=10m/s、y方向の瞬時流速=−5m/s、また、x=100mm、y=100mm、z=0mmの点で、x方向の瞬時流速=20m/s、y方向の瞬時流速=10m/s、といった速度ベクトルを得ることができる。
【0026】
図4は、S1の画像解析により求められた速度ベクトルuの分布を示す図である。図4(a)は、時刻tにおける瞬時の速度分布を示す図であり、図4(b)は、時刻tにおける瞬時の速度分布を示す図である。図4において、矢印が速度ベクトルを示しており、矢印の長さが速度ベクトルの大きさ、矢印の向きが速度ベクトルの向きを表す。図中、上下端に位置し、水平を向いている速度ベクトルの大きさが、上述した風洞装置の風速150km/hとなる。図4に示す速度ベクトルの分布から、円柱模型14の下流側にカルマン渦が発生していることが分かる。
【0027】
次に、S2において、S1で求めた速度ベクトルuから、渦度ベクトルω(ω=rot u)を求める。そして、S3において、下記(1)式に、速度ベクトルu及び渦度ベクトルωを代入することで、空力音の二重極音源(m/s)を求める。
【0028】
【数5】
Figure 2005003368
また、ベクトルxは観測点の位置ベクトルであり、ベクトルyは速度ベクトルuの位置ベクトルであり、Y(y)は、無限遠方でj方向に単位速度を持ち、
【数6】
Figure 2005003368
を満たす、仮想的な非圧縮流れの速度ポテンシャルである。さらに、Y(y)は、ラプラス方程式∇(y)=0を満たす。
【0029】
また、jは、制約のない空間では、j=1,2,3の値をとり、それぞれx,y,z成分を示す。ただし、本実施の形態では、図1に示すように、x−y平面における二次元の音源分布を求めているので、j=1,2となっている。
【0030】
具体的には、まず、S1及びS2で求めた位置ベクトルyのセルでの速度ベクトルuと渦度ベクトルωを、(1)式にそれぞれ代入する。次に、別途求めてあるgradY(y)を掛け合わせ、さらに時間微分することで、音源を求めることができる。そして、1330個全てのセルに対して、この処理を実行すると、音源分布を求めることができる。
【0031】
図5は、S3により求められた、二重極音源のy成分の分布を示す図である(Δt=t−t)。図中、色の濃い部分が絶対値の大きな音源が存在する部分である。このように、二重極音源が解析できれば、空力音低減のために有効な対策を施すことが可能となる。
【0032】
ここで、式(1)の算出方法について説明する。下記式(2)に示すHoweの渦音の式と、物体形状に適したコンパクトグリーン関数を組み合わせることで、下記式(3)が算出される。そして、式(3)の被積分関数を時間微分したものが、式(1)である。
【0033】
【数7】
Figure 2005003368
【数8】
Figure 2005003368
【0034】
ここで、pは位置ベクトルxの観測点における音圧(Pa)であり、G(x,y,t−τ)はグリーン関数である。
そして、Howeの渦音の式である(2)式は、以下のようにして求められる。
Lighthillは、連続の式(4)とNavier−Stokes方程式(5)から、Lighthillの流体音響の基礎方程式(6)を導いた。これは、音速cと密度ρが一定である均一な流体の無限の広がりの中で、その一部を占める比較的小さな不均一領域から発生する音場の非同次波動方程式である。
【0035】
【数9】
Figure 2005003368
【数10】
Figure 2005003368
【数11】
Figure 2005003368
ここで、pは瞬時圧力変動、ρは流体密度である。
【0036】
また、τijは、粘性応力テンソルであり、粘性係数をμとすると、下記式(7)で表わされる。
【数12】
Figure 2005003368
但し、δijはディラック関数である。
【0037】
また、TijはLighthillの応力テンソルと呼ばれ、式(8)で表わされる。
【数13】
Figure 2005003368
ここで、pは均一な流体の基準圧力である。
【0038】
そして、Howeは、マッハ数が小さい場合について、上記Lighthillの式(6)を近似して、次式(9)を導いた。
【数14】
Figure 2005003368
ここで、Bは次式(10)で表わされる。
【数15】
Figure 2005003368
【0039】
式(9)の右辺は、流れの中の渦が音源となることを示している。静止した固体面S(本実施の形態では、円柱模型の表面が該当)が存在するとき、式(9)の解は、グリーンの定理を用いて次式(11)により求めることができる。
【数16】
Figure 2005003368
ただし、nは固体面Sの法線ベクトルを表わし、流体域に向かう方向を正とする。グリーン関数G(x,y,t−τ)は、次式(12)を満たし、また固体面S上で法線方向の微分が0、すなわち、式(13)を満たす、物体形状に適したものを選ぶものとする。
【0040】
【数17】
Figure 2005003368
【数18】
Figure 2005003368
また、発散定理を用いて、次式(14)が得られる。
【数19】
Figure 2005003368
【0041】
一方、上記Navie−Stokes方程式(5)を、渦度を用いて表わし、さらに高レイノルズ数流れとして、粘性項を無視すると、式(15)となる。
【数20】
Figure 2005003368
式(14)と式(15)を、式(11)に入れて整理すると、次式(16)になる。
【数21】
Figure 2005003368
【0042】
このとき、式(16)の第2項は、固体面Sが剛体であるならば0となる。
次に、観測点xが音源領域から十分離れているとして、式(10)を次式(17)のように近似すると、渦と固体面Sの干渉による圧力変動(空力音)pは、式(2)で表わされる。この式(2)が、Howeの渦音の式である。
【数22】
Figure 2005003368
【0043】
次に、この空力音源探査システム10では、音源がコンパクトであり、また、観測点が音源から十分遠方にあるという条件を満たすように構成されており、グリーン関数Gを、次式(18)で表わされるコンパクトグリーン関数Gに置き換えることができる。
【数23】
Figure 2005003368
【0044】
ここで、音源がコンパクトとは、音波の波長の範囲内に音源が集まっていることをいい、観測点が音源から十分遠方であるとは、音波の波長の1/4以上離れていることをいう。
このコンパクトグリーン関数(18)を、Howeの渦音の式(2)に代入することで、上述した式(3)を得ることができる。式(3)によって抽出される音は、物体形状によって四重極音が散乱されたことに伴う二重極音に相当する。よって、式(3)の被積分関数から二重極音源の分布を求めることができる。
【0045】
以上、本発明に先立って開発した空力音源探査システム10について説明したが、本出願人によるその後の開発により、より高精度に二重極音の音源分布を求めるための手法を得ることができた。以下、本発明の実施の形態に係る空力音源探査システムについて、詳細に説明する。
【0046】
本実施の形態に係る空力音源探査システムは、速度ベクトルuを算出する範囲として、所定の有限な計算領域を設定し、この計算領域外の渦の影響を領域内の渦の影響に置き換えたうえで、二重極音源の分布を求めるように構成したことを特徴とする。上述した先の空力音源探査システムでは、有限な領域の速度ベクトルをPIVシステムにより測定しているが、その領域外の渦の影響を考慮しないで、式(1)により音源分布を求めている。これに対して、領域外の渦の影響を考慮した本実施の形態に係る空力音源探査システムによれば、その分、高精度に二重極音の音源分布を求めることができる。
【0047】
本実施の形態に係る空力音源探査システムの構成は、基本的に先の空力音源探査システム10とほぼ同様の構成であり、速度ベクトルu及び渦度ベクトルωから二重音源を求める際に用いる式(図3のS3)が異なる点を特徴としている。よって、共通の構成については説明を省略し、異なる構成について説明する。
具体的には、二重極音源を求める際に、下記式(19)を用いる。
【数24】
Figure 2005003368
【0048】
また、式(1)の場合と同様に、ベクトルxは観測点の位置ベクトル、ベクトルyは速度ベクトルuの位置ベクトルである。ψ(y)は、静止理想流体中をj方向に単位速度で等速運動する物体周りの速度ポテンシャルであり、式(1)のY(y)との間には、下記式(20)の関係が成り立つ。なお、yは、位置ベクトルyのj方向成分である。
【数25】
Figure 2005003368
【0049】
次に、式(19)の算出方法について説明する。まず、図6に示す有限な計算領域、すなわち速度ベクトルuの分布を求める領域を設定する。この計算領域の外部境界面をΣtrunとし、計算領域内の領域をΩint、計算領域外の領域をΩext、円柱模型14境界面をSとする。また、図示しないが、円柱模型から無限遠方の境界面をΣinfとし、全領域は、Ωall≡Ωint∪Ωextとする。また、Σtrunは、ψ≒0、∇ψ≒0(すなわち、Y≒y、∇≒δji)とみなせるほど、十分に物体(円柱模型14)から遠くに位置しているとする。
【0050】
無限遠方の境界面Σinfにおいては、流れが一様であるとみなすことができ、粘性の影響が小さい高レイノルズ流れの中で物体が静止しているとみなすことができるので、物体が非圧縮流体に及ぼす力Fに関する釣り合いから、次式(21)の関係が成り立つ。
【数26】
Figure 2005003368
【0051】
なお、この式(20)を式(3)に適用すると、次式(22)が得られる。この式(22)は、Lighthill−Curleの式(23)右辺第2項の二重極音源項と一致することになる。但し、式(21)において、nは境界面Sの法線ベクトルで、Ωallに向かう方向を正とする。このことから、コンパクトな音源から発生する音は、物体が非圧縮流体に及ぼす力の時間微分を用いて記述できることが解る。
【数27】
Figure 2005003368
【数28】
Figure 2005003368
【0052】
そして、式(21)を変形して、式(24)が得られる。
【数29】
Figure 2005003368
よって、この式(24)の右辺第2項のΩextにおける寄与(以下、δFとする)を考慮すれば、より正確に二重極音源の分布を求められることができる。そして、Σtrunにおいては、Y≒yとみなせるから、δFjは、下記式(25)と近似できる。
【0053】
【数30】
Figure 2005003368
ここで、一般に、下記式(26)の関係が成り立つ。
【数31】
Figure 2005003368
【0054】
この式(26)について、全領域Ωallで発散定理を適用すると下記式(27)が導かれる。
【数32】
Figure 2005003368
【0055】
ここで、本実施の形態のように、物体境界面Sにおいて、すべりなし、すなわち、物体の速度と流体の速度が一致(本実施の形態では、物体は静止しているので、流体の速度が0)していれば、上記式(27)の右辺第1項は0である。また、Σinfにおいて、流れが一様であるので、右辺第2項も0となる。よって、式(27)から、下記式(28)が導かれる。
【数33】
Figure 2005003368
【0056】
上記式(28)を式(25)に代入すると、δFは、下記式(29)で表される。
【数34】
Figure 2005003368
この式(29)を、式(24)に代入すると、結局、下記式(30)が得られる。
【数35】
Figure 2005003368
【0057】
この式(30)と式(21)を対比すると、全領域ΩallについてのFが、計算領域内Ωintの値のみを用いて記述できることが解る。
ここまでは、物体が非圧縮流体に及ぼす力Fについて説明したが、力Fとの間に式(21)、式(22)の関係を有する音圧pについても、より高精度に評価するためには、同様に計算領域外Ωextの渦の影響を考慮する必要がある。すなわち、式(3)では、全領域Ωallにおいて積分する必要があるが、上記式(30)の関係を用いて、計算領域内Ωintにおける下記積分式(31)に置き換えれば良い。
【数36】
Figure 2005003368
【0058】
そして、式(1)に対応するものとして、上記式(31)の被積分関数を時間微分することで、上記式(19)が得られる。
なお、本空力音源探査システムの機能は、PC21に、これらの機能を実現するためのプログラムをインストールすることで実現される。
【0059】
以上、詳細に説明したが、本実施の形態に係る空力音源探査システムにおいては、PIVシステムにより計算領域内Ωintの速度ベクトルを測定し、その後、その速度ベクトル及び速度ベクトルから求められる渦度ベクトルを式(19)に代入することで、計算領域外Ωextの渦の影響を考慮した二重極音源の分布を求めることができる。このため、より正確な二重極音源の分布を求めることができる。
【0060】
ここで、本出願人が、下記式(32)を用いた求めた力と、先の空力音源探査システムの手法に相当する下記式(33)を用いて求めた力とを、実験を行って比較すると、両者の値にずれが生じていた。
【数37】
Figure 2005003368
【数38】
Figure 2005003368
【0061】
一方、式(32)を用いて求めた力と、本実施の形態に係る空力音源探査システムの手法に相当する下記式(34)とを、実験により比較すると、よく一致した結果を得ることができ、本発明による効果を確認することができた。
【数39】
Figure 2005003368
【0062】
また、このように物理現象を正確に把握すれば、空力音低減対策において、流体騒音の理論に基づいた低減対策が可能となり、従来の経験則に基づく騒音対策に比較して有効な騒音対策を施すことができる。
【0063】
また、本実施の形態によれば、PIVシステムの測定値を用いて二重極音源分布を解析しており、剥離、乱流遷移、壁面近くでの境界層の挙動など、流体の数値計算等の理論的な方法では精度良く捉えることの困難なものであっても、十分な精度で解析することが可能である。また、PIVシステムの測定値を用いることで、キャビティ音のように、発生した圧縮波が流体の挙動に影響を与えるような現象についても、精度良く解析することができる。
【0064】
なお、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
例えば、本実施の形態においては、二次元の空力音源分布を求めているが、PIVシステムとして、三次元の速度分布を計測可能な公知のステレオPIVシステムを使用すれば、三次元の空力音源分布を求めることも可能である。
【0065】
また、本実施の形態に係るPIVシステムは、4Hz周期で流れ場を撮影しているが、リアルタイムで音源分布を解析するために、リアルタイムPIVシステムを用いても良い。例えば、撮影の周期を1kHz以上とすることで、リアルタイムPIVシステムを実現することができる。
【0066】
また、本実施の形態においては、計算領域内の速度ベクトルの分布をPIVシステムにより測定して求めているが、これに限定されるものではなく、LES法等の数値計算により計算領域内の速度ベクトルを求めるシステムであっても適用できる。LES法による数値計算については、『大宮司久明・三宅裕・吉沢徴編,「乱流の数値流体力学―モデルと計算法 」,東京大学出版会,1998年1月』に詳細に説明されている。
【0067】
また、本実施の形態では、説明を簡単にするため、円柱模型周りの空力音源分布を求めているが、円柱模型に限られるものでなく、列車模型、自動車模型等の、空力音の発生を解析する対象であれば、どのような形状の模型であっても良い。この場合、ラプラス方程式を満たすYを形状に応じて数値的に求め、式(20)からψを求めるようにすれば良い。本出願人は、円柱模型以外でも、良好な結果が得られることを確認した。
【0068】
【発明の効果】
以上、本発明によれば、空力音の音源分布を正確に解析する、空力音源探査システム及び空力音源探査方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る空力音源探査システムの概略構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るCCDカメラと円柱模型との位置関係を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る音源解析装置での画像解析処理を説明するためのフロー図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る先の空力音源探査システムによる速度ベクトルの分布を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る先の空力音源探査システムによる二重極音源の分布を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る計算領域を説明するための図である。
【符号の説明】
10 空力音源探査システム
11 煙発生装置
12 シート照明装置
13 CCDカメラ
14 円柱模型
20 音源解析装置
21 PC
22 ディスプレイ

Claims (11)

  1. 流れ場に位置する物体の周りに発生する空力音の音源分布を求める空力音源探査システムであって、
    所定の有限な計算領域内の速度ベクトルの分布を算出する流速分布算出手段と、
    前記速度ベクトルの分布から前記計算領域外の渦の影響も考慮した前記物体周りの音源分布を算出する演算手段と、を備えたことを特徴とする空力音源探査システム。
  2. 前記演算手段は、前記計算領域内全体の速度ベクトルの分布から前記計算領域外の渦による空力音への寄与を算出することを特徴とする請求項1記載の空力音源探査システム。
  3. 前記演算手段は、前記計算領域外の渦の影響を、下記関係式を用いて算出することを特徴とする請求項1又は2記載の空力音源探査システム。
    Figure 2005003368
    但し、ベクトルuは、前記速度ベクトル、ベクトルωは、ω=rotuにより求められる渦度ベクトル、Ωextは、前記計算領域外の領域、Ωintは、前記計算領域内の領域を示す。
  4. 前記所定の有限な計算領域は、その境界面において、Y≒yとなるように、前記物体から十分離れた位置に設定されることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の空力音源探査システム。ただし、Yは、j方向に単位速度をもつ理想流体中に置かれた静止物体周りの速度ポテンシャル、yは、その位置の位置ベクトルの大きさを示す。
  5. 前記演算手段は、下記式を用いて、前記物体周りの音源分布を算出することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の空力音源探査システム。
    Figure 2005003368
  6. 前記流速分布算出手段は、PIVシステムにより速度ベクトルを計測することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の空力音源探査システム。
  7. 流れ場に位置する物体の周りに発生する空力音の音源分布を求める空力音源探査方法であって、
    前記流れ場に所定の有限な計算領域を設定する設定工程と、
    前記計算領域内の速度ベクトルの分布を算出する速度ベクトル算出工程と、
    前記速度ベクトルの分布から、前記計算領域外の渦の影響も考慮した前記物体周りの音源分布を算出する演算工程と、を備えたことを特徴とする空力音源探査方法。
  8. 前記演算工程は、前記計算領域外の渦の影響を、下記関係式を用いて算出する工程であることを特徴とする請求項7記載の空力音源探査方法。
    Figure 2005003368
    但し、ベクトルuは前記速度ベクトル、ベクトルωは、ω=rotuにより求められる渦度ベクトル、Ωextは、前記計算領域外の領域、Ωintは、前記計算領域内の領域を示す。
  9. 前記設定工程は、前記計算領域の境界面において、Y≒yとなるような前記物体から十分離れた位置に、前記計算領域を設定する工程であることを特徴とする請求項7又は8に記載の空力音源探査方法。但し、Yはj方向に単位速度をもつ理想流体中に置かれた静止物体周りの速度ポテンシャル、yは、その位置の位置ベクトルの大きさを示す。
  10. 前記演算工程は、下記式を用いて、前記物体周りの音源分布を算出することを特徴とする請求項7乃至9の何れか1項に記載の空力音源探査方法。
    Figure 2005003368
  11. コンピュータに、流れ場に位置する物体の周りに発生する空力音の音源分布を求める処理を実行させる空力音源探査プログラムであって、
    前記流れ場に所定の有限な計算領域を設定するステップと、
    前記計算領域内の速度ベクトルの分布を算出するステップと、
    前記速度ベクトルの分布から、前記計算領域外の渦の影響も考慮した前記物体周りの音源分布を算出するステップと、をコンピュータに実行させることを特徴とする空力音源探査プログラム。
JP2003163569A 2003-06-09 2003-06-09 空力音源探査システム及び空力音源探査方法 Expired - Fee Related JP3958711B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003163569A JP3958711B2 (ja) 2003-06-09 2003-06-09 空力音源探査システム及び空力音源探査方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003163569A JP3958711B2 (ja) 2003-06-09 2003-06-09 空力音源探査システム及び空力音源探査方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2005003368A true JP2005003368A (ja) 2005-01-06
JP3958711B2 JP3958711B2 (ja) 2007-08-15

Family

ID=34090652

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003163569A Expired - Fee Related JP3958711B2 (ja) 2003-06-09 2003-06-09 空力音源探査システム及び空力音源探査方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3958711B2 (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008064692A (ja) * 2006-09-08 2008-03-21 Mitsuba Corp 音源探査方法および装置
WO2011058899A1 (ja) * 2009-11-10 2011-05-19 本田技研工業株式会社 3次元空間の音源分布測定装置
JP2015040723A (ja) * 2013-08-20 2015-03-02 トヨタ自動車株式会社 流体騒音推定方法

Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008064692A (ja) * 2006-09-08 2008-03-21 Mitsuba Corp 音源探査方法および装置
WO2011058899A1 (ja) * 2009-11-10 2011-05-19 本田技研工業株式会社 3次元空間の音源分布測定装置
JPWO2011058899A1 (ja) * 2009-11-10 2013-03-28 本田技研工業株式会社 3次元空間の音源分布測定装置
JP5437389B2 (ja) * 2009-11-10 2014-03-12 本田技研工業株式会社 3次元空間の音源分布測定装置
US8950262B2 (en) 2009-11-10 2015-02-10 Honda Motor Co., Ltd. Device for measuring sound source distribution in three-dimensional space
JP2015040723A (ja) * 2013-08-20 2015-03-02 トヨタ自動車株式会社 流体騒音推定方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP3958711B2 (ja) 2007-08-15

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Ghaemi et al. PIV-based pressure fluctuations in the turbulent boundary layer
KR102248203B1 (ko) 흐름으로 유발된 노이즈의 소스 식별을 위한 시스템 및 방법
Brès et al. Flow and noise predictions for the tandem cylinder aeroacoustic benchmark
Kim et al. Prediction method for tire air-pumping noise using a hybrid technique
De Jong et al. Aeroacoustic simulation of slender partially covered cavities using a Lattice Boltzmann method
Tian et al. Evolution of deep-water waves under wind forcing and wave breaking effects: Numerical simulations and experimental assessment
He et al. Wind noise source filtering and transmission study through a side glass of DrivAer model
Zhu Aerodynamic noise of high-speed train bogies
Sun et al. Modal identification of vibrating structures using singular value decomposition and nonlinear iteration based on high-speed digital image correlation
JP6754738B2 (ja) 空間音響解析方法及びそのシステム
JP3970263B2 (ja) 空力音源探査システム及び空力音源探査方法
He et al. Simulation-based study of turbulent aquatic canopy flows with flexible stems
JP2004156968A (ja) 空力音源探査システム及び空力音源探査方法
Chandramouli et al. Fast 3D flow reconstructions from 2D cross-plane observations
Sterken et al. Numerical implementation of detached-eddy simulation on a passenger vehicle and some experimental correlation
JP3958711B2 (ja) 空力音源探査システム及び空力音源探査方法
CN115541006B (zh) 基于平面piv的预测指定声源远场流致噪声的方法
Smith et al. Comparison of a turbulent boundary layer pressure fluctuation model to hypersonic cone measurements
Kaiser et al. Large-scale volumetric particle tracking using a single camera: analysis of the scalability and accuracy of glare-point particle tracking
Weyna et al. Experimental acoustic flow analysis inside a section of an acoustic waveguide
Nitzkorski A novel porous Ffowcs-Williams and Hawkings acoustic methodology for complex geometries
Wu et al. Numerical study of the installed controlled diffusion airfoil at transitional Reynolds number
Islam et al. Investigations of sunroof buffeting in an idealised generic vehicle model-part II: numerical simulations
Kharazi et al. Prediction of Flow-Induced Vibration of Vehicle Side-View Mirrors by CFD Simulation
Zhang et al. Transient simulation research on automobile aerodynamic lift based on LBM method

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Effective date: 20050819

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

RD02 Notification of acceptance of power of attorney

Effective date: 20060425

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20060511

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20070109

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20070502

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20070510

R150 Certificate of patent (=grant) or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Year of fee payment: 3

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100518

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110518

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120518

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120518

Year of fee payment: 5

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120518

Year of fee payment: 5

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees