JP2005001601A - ガス発生器 - Google Patents
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Abstract
【課題】ガス発生器作動時におけるヘッダの抜け出しを確実に防止することができるガス発生器を提供する。
【解決手段】イニシエータ１０は、反応薬剤１４を充填したカップ１２と、カップ１２を閉鎖するヘッダ１６と、電極ピン１８，２０とを有している。ヘッダ１６と各電極ピン１８，２０の根元側とを囲むように樹脂モールド２４’が形成され、該モールド２４’のヘッダ１６から遠い側が断面楕円形状の差込部２４ｂ’となっている。略々環状のホルダ３０の内周側には、断面楕円形状のイニシエータ保持孔３４’が設けられている。この保持孔３４’に差込部２４ｂ’が挿入保持される。ヘッダ１６の断面積Ｓ２に対する保持孔３４’の開口面積Ｓ１の比Ｓ１／Ｓ２は０．５以下である。
【選択図】 図１
【解決手段】イニシエータ１０は、反応薬剤１４を充填したカップ１２と、カップ１２を閉鎖するヘッダ１６と、電極ピン１８，２０とを有している。ヘッダ１６と各電極ピン１８，２０の根元側とを囲むように樹脂モールド２４’が形成され、該モールド２４’のヘッダ１６から遠い側が断面楕円形状の差込部２４ｂ’となっている。略々環状のホルダ３０の内周側には、断面楕円形状のイニシエータ保持孔３４’が設けられている。この保持孔３４’に差込部２４ｂ’が挿入保持される。ヘッダ１６の断面積Ｓ２に対する保持孔３４’の開口面積Ｓ１の比Ｓ１／Ｓ２は０．５以下である。
【選択図】 図１
Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エアバッグ装置やシートベルトプリテンショナ等のガス発生器に組み込むのに好適なイニシエータと、このイニシエータを備えたガス発生器に関する。
【０００２】
【従来の技術】
自動車等の高速移動体に設けられるエアバッグ装置は、袋状のエアバッグをインフレータと称されるガス発生器によって急速に膨張させるよう構成されている。このガス発生器は、ガス発生剤と、このガス発生剤のガス発生反応を開始させるイニシエータとを備えている。従来、このイニシエータは、反応薬剤と、この反応薬剤の反応を開始させるための抵抗発熱体としてのフィラメント状の電橋線（ブリッジワイヤ）とを備えている。
【０００３】
この従来例に係るガス発生器の一例（例えば、特開２０００−２９２１００号の従来技術に同様の構造が記載されている。）について図３を参照して説明する。図３（ａ）はこのガス発生器のイニシエータ挿入方向に沿う断面図、図３（ｂ）は図３（ａ）のＢ−Ｂ線断面図、図３（ｃ）は図３（ｄ）のＣ−Ｃ線断面図、図３（ｄ）はイニシエータとホルダとの係合説明図である。
【０００４】
イニシエータ１０は、後部が開放した略有底円筒形状のカップ１２を有している。このカップ１２内に反応薬剤１４が収容されている。カップ１２の後部はヘッダ１６によって閉鎖されている。このカップ１２内には、該ヘッダ１６を貫通した電極ピン１８の先端側が臨んでいる。このカップ１２、反応薬剤１４及びヘッダ１６によって点火反応部が構成されている。
【０００５】
この電極ピン１８の先端とヘッダ１６との間に電橋線２２が架設されている。この電橋線２２の両端はそれぞれ電極ピン１８とヘッダ１６とに溶接されている。この電橋線２２は、カップ１２内において反応薬剤１４に接している。
【０００６】
なお、該電極ピン１８とヘッダ１６とは、ガラス等の絶縁材２６により、電気的に接触しないよう互いに離間して配置されている。
【０００７】
ヘッダ１６から電極ピン（グランドピン）２０が突設されている。ヘッダ１６と各電極ピン１８，２０の根元側とを囲むように樹脂モールド２４が形成されている。この樹脂モールド２４は、ヘッダ１６に近い側が大径部２４ａとなっており、ヘッダ１６から遠い側が小径の差込部２４ｂとなっている。
【０００８】
このイニシエータ１０は、略々環状のイニシエータホルダ（以下ホルダと略）３０に挿入保持されている。このホルダ３０の内周には、内向き鍔状の係止段部３２が設けられており、この係止段部３２の内周側がイニシエータ保持孔３４となっている。イニシエータ１０の樹脂モールド２４の差込部２４ｂが該イニシエータ保持孔３４に挿入され、大径部２４ａが該係止段部３２に係止される。
【０００９】
このホルダ３０には第１筒部３６と第２筒部３８とが同軸状に設けられている。内周側の第１筒部３６にイニシエータ１０の樹脂モールド２４を内嵌し、該第１筒部３６の先端を内方に折曲することにより、イニシエータ１０がホルダ３０に固定され、両者が一体化される。この第１筒部３６に対し、ケーシング４０が外嵌される。このケーシング４０は、一端が閉じ他端が開放した有低円筒状であり、該他端側が第１筒部３６に外嵌され、さらに該他端側は、第１筒部３６と第２筒部３８との間に差し込まれる。
【００１０】
このケーシング４０の該他端側の縁部は、外方に向って拡張したフランジ部４０ａとなっている。このフランジ部４０ａを第１筒部３６と第２筒部３８との間に差し込んだ後、第２筒部３８の先端を内方に折曲することにより、ケーシング４０とホルダ３０とが固定され、一体化される。なお、ケーシング４０内には予めガス発生剤４２が充填されている。
【００１１】
この従来例に係るガス発生器にあっては、イニシエータ１０のヘッダ１６とイニシエータ保持孔３４とは略同径となっている。即ち、イニシエータ保持孔３４の開口面積をＳ１とし、ヘッダ１６の該イニシエータ保持孔３４への挿入方向と直交方向の断面積をＳ２とした場合、Ｓ１／Ｓ２は約１程度となっている。
【００１２】
このように構成されたガス発生器においては、車両衝突時等の緊急時には、各電極ピン１８，２０を介してバッテリから電橋線２２に電圧が印加される。これにより、該電橋線２２が発熱して反応薬剤１４が点火され、反応を開始する。そして、この反応薬剤１４の反応により高圧ガスや熱が生じ、これによりガス発生器のガス発生剤４２がガス発生反応を引き起こす。なお、この反応に伴ってカップ１２は破れ、熱いガス等が放出される。
【００１３】
なお、反応薬剤１４としては、例えば電橋線２２を囲むように配置されたスチフ酸鉛とアルミニウム粉末の混合物よりなる第１反応薬剤、及び該第１反応薬剤を取り囲むように配置されたＢＫＮＯ３又は黒色火薬よりなる第２反応薬剤が用いられる。第１反応薬剤は急速に発熱反応し、第２反応薬剤は第１反応薬剤の熱により反応を開始して高圧の熱いガス及び微粒子を発生させる。
【００１４】
このイニシエータ１０の作動により、ガス発生剤４２がガス発生反応を開始し、ケーシング４０を破って多量のガスが噴出する。
【００１５】
【特許文献１】
特開２０００−２９２１００号
【００１６】
【発明が解決しようとする課題】
上記構成のガス発生器にあっては、一般に、ガス噴出作動したときに、イニシエータ１０に対し図３の右方に大きなガス圧が加えられる。従来のガス発生器にあっては、図３の通り、イニシエータ１０のヘッダ１６はイニシエータ保持孔３４と略同径となっている。このイニシエータ１０に対して図３の右方向に加えられるガス圧が著しく高くなった場合であっても、イニシエータ１０のヘッダ１６が樹脂モールド２４を圧壊させつつイニシエータ保持孔３４から図３の右方向に抜け出すことを防止するために、樹脂モールド２４を高強度にする必要があった。
【００１７】
本発明は、樹脂モールド２４の強度を高める等の対策を採るまでもなくガス発生器作動時におけるヘッダの抜け出しを確実に防止することができるガス発生器を提供することを目的とする。
【００１８】
【課題を解決するための手段】
本発明（請求項１）のガス発生器は、点火反応部を有したイニシエータと、該イニシエータを保持するホルダと、該イニシエータの該点火反応部の外側に配置されたガス発生剤と、該ガス発生剤を囲んでおり、前記ホルダに固着された外殻体とを備えてなり、該ホルダには、該イニシエータが挿入され係止されているイニシエータ保持孔が設けられているガス発生器において、該イニシエータ保持孔の開口面積Ｓ１と該点火反応部のイニシエータ挿入方向と直交方向の断面積Ｓ２の比Ｓ１／Ｓ２が０．５以下であることを特徴とする。
【００１９】
かかる本発明のガス発生器によると、イニシエータ保持孔の開口面積Ｓ１と点火反応部のイニシエータ挿入方向と直交方向の断面積Ｓ２の比Ｓ１／Ｓ２が０．５以下と小さいため、ガス発生器作動時におけるイニシエータの点火反応部の抜け出しを確実に防止することができる。
【００２０】
なお、上記比Ｓ１／Ｓ２は０．２〜０．５であることが好ましい。
【００２１】
本発明の一態様では、イニシエータは、盤状のヘッダと、該ヘッダの一方の面から延出する通電用のピンと、該ヘッダの他方の面を囲むケーシングと、該ヘッダとケーシングとの間に充填された反応薬剤と、該ピンによって通電され、該反応薬剤の反応を開始させる電橋線とを備えており、前記断面積Ｓ２は該ヘッダの断面積である。
【００２２】
かかる構成のガス発生器によると、イニシエータのヘッダがイニシエータ保持孔にしっかりと保持されるので、ガス発生器の作動時にイニシエータに加えられるガス圧が高くても、イニシエータを確実に保持しておくことができる。
【００２３】
なお、イニシエータの点火反応部の断面形状とイニシエータ保持孔の断面形状が異なるようにした場合、ガス発生器作動時におけるイニシエータの抜け出しを確実に防止することができる。この形状の一例として、上記点火反応部のイニシエータ挿入方向と直交方向の断面形状が円形であり、上記イニシエータ保持孔のイニシエータ挿入方向と直交方向の断面形状が非円形であってもよい。
【００２４】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。図１（ａ）は本発明の実施の形態に係るガス発生器のイニシエータ挿入方向と直交する方向に沿う断面図、図１（ｂ）は図１（ａ）のガス発生器においてイニシエータを係合する前の状態を示す断面図である。
【００２５】
この実施の形態に係るイニシエータの長手方向即ち図１のＡ−Ａ線に沿う断面は、前記図３と全く同一となるので、図示を省略する。この実施の形態では、イニシエータを保持するホルダ３０’の係止段部３２’に設けられたイニシエータ保持孔３４’と、このイニシエータ保持孔３４’に差し込まれるイニシエータ差込部２４’の形状が上記従来例と相違している。
【００２６】
即ち、この実施の形態に係るホルダ３０’にあっては、係止段部３２’の中央部に、断面楕円形状のイニシエータ保持孔３４’が設けられている。ヘッダ１６（図３参照）の断面積Ｓ２に対するこのイニシエータ保持孔３４’の開口面積Ｓ１の比Ｓ１／Ｓ２は０．５以下、好ましくは０．２〜０．５である。
【００２７】
樹脂モールド２４’のヘッダ１６から遠い側が、断面楕円形状の差込部２４ｂ’となっている。
【００２８】
この差込部２４ｂ’が、ホルダ３０’の上記イニシエータ保持孔３４’に挿入保持されている。
【００２９】
本実施の形態に係るガス発生器のその他の構成は図３に示す従来のガス発生器と同様であり、同一符号は同一部分を示している。
【００３０】
このように構成されたガス発生器においても、車両衝突時等の緊急時には、各電極ピン１８，２０を介してバッテリから電橋線２２（図３参照）に電圧が印加される。これにより、該電橋線２２が発熱してカップ１２内の反応薬剤１４（図３参照）が点火され、反応を開始する。そして、この反応薬剤１４の反応により高圧ガスや熱が生じ、これによりガス発生器のガス発生剤がガス発生反応を引き起こす。なお、この反応に伴ってカップ１２は破れ、熱いガス等が放出される。
【００３１】
このガス発生器にあっては、ヘッダ１６の断面積Ｓ２に対するイニシエータ保持孔３４’の開口面積Ｓ１の比Ｓ１／Ｓ２が０．５以下、好ましくは０．２〜０．５と小さい。このため、ガス発生器作動時にヘッダ１６に１７０ＭＰａ〜２００ＭＰａ程度の高圧力が負荷され、ヘッダ１６が樹脂モールド２４’を圧壊させつつイニシエータ保持孔３４’から抜け出そうとしても、イニシエータ保持孔３４’の開口面積Ｓ１がヘッダ１６の断面積Ｓ２よりも十分に小さいために抜け出すことができず、ヘッダ１６はホルダ３０’によって保持される。従って、ヘッダ１６がイニシエータ保持孔３４’から抜け出すことが確実に防止される。
【００３２】
本実施の形態では、ヘッダ１６の断面形状が円形であるのに対し、イニシエータ保持孔３４’の開口形状が楕円形であり、両者は異なる形状となっている。このため、ヘッダ１６がイニシエータ保持孔３４’から抜け出すことが、一層確実に防止される。
【００３３】
上記実施の形態では、イニシエータ保持孔３４’の断面形状及び樹脂モールド２４’の差込部２４ｂ’の断面形状を楕円形としたが、これらの形状は非円形であれば特に限定はなく、四角形や、多角形あるいは十字形等であってもよい。例えば、図２に示す通り、係止段部３２”に設けられたイニシエータ保持孔３４”及び該保持孔３４”に差し込まれる樹脂モールド２４”の差込部２４ｂ”のように、断面形状を長方形としてもよい。
【００３４】
かかるガス発生器にあっても、ヘッダ１６の断面積Ｓ２に対するイニシエータ保持孔３４”の開口面積Ｓ１の比Ｓ１／Ｓ２が０．５以下、好ましくは０．２〜０．５と小さく、且つイニシエータ保持孔３４”及び差込部２４ｂ”の断面形状がヘッダ１６の断面形状と異なるため、ヘッダ１６の抜け出しが確実に防止される。さらに、イニシエータ保持孔３４”が長方形であるため、該イニシエータ保持孔３４”をプレス加工により形成することが可能となり、ホルダ３０の製造コストの削減を図ることができる。
【００３５】
なお、図２（ａ）は本発明の別の実施の形態に係るガス発生器のイニシエータ挿入方向と直交する方向に沿う断面図、図２（ｂ）は図２（ａ）のガス発生器においてイニシエータを係合する前の状態を示す断面図である。
【００３６】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明によると、イニシエータの樹脂モールドの強度を高める等の対策を採るまでもなくガス発生器作動時におけるヘッダの抜け出しを確実に防止することができるガス発生器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図１】（ａ）図は本発明の実施の形態に係るガス発生器のイニシエータ挿入方向と直交する方向に沿う断面図、（ｂ）図は（ａ）図のガス発生器においてイニシエータを係合する前の状態を示す断面図である。
【図２】（ａ）図は本発明の別の実施の形態に係るガス発生器のイニシエータ挿入方向と直交する方向に沿う断面図、（ｂ）図は（ａ）図のガス発生器においてイニシエータを係合する前の状態を示す断面図である。
【図３】（ａ）図は従来のガス発生器のイニシエータ挿入方向に沿う断面図、（ｂ）図は（ａ）図のＢ−Ｂ線断面図、（ｃ）図は（ｄ）図のＣ−Ｃ線断面図、（ｄ）図はイニシエータとホルダとの係合説明図である。
【符号の説明】
１０ イニシエータ
１２ カップ
１４ 反応薬剤
１６ ヘッダ
１８，２０ 電極ピン
２２ 電橋線
２４，２４’，２４” 樹脂モールド
２４ａ 大径部
２４ｂ，２４ｂ’，２４ｂ” 差込部
３０ ホルダ
３２，３２’，３２” 係止段部
３４，３４’，３４” イニシエータ保持孔
３６ 第１筒部
３８ 第２筒部
【発明の属する技術分野】
本発明は、エアバッグ装置やシートベルトプリテンショナ等のガス発生器に組み込むのに好適なイニシエータと、このイニシエータを備えたガス発生器に関する。
【０００２】
【従来の技術】
自動車等の高速移動体に設けられるエアバッグ装置は、袋状のエアバッグをインフレータと称されるガス発生器によって急速に膨張させるよう構成されている。このガス発生器は、ガス発生剤と、このガス発生剤のガス発生反応を開始させるイニシエータとを備えている。従来、このイニシエータは、反応薬剤と、この反応薬剤の反応を開始させるための抵抗発熱体としてのフィラメント状の電橋線（ブリッジワイヤ）とを備えている。
【０００３】
この従来例に係るガス発生器の一例（例えば、特開２０００−２９２１００号の従来技術に同様の構造が記載されている。）について図３を参照して説明する。図３（ａ）はこのガス発生器のイニシエータ挿入方向に沿う断面図、図３（ｂ）は図３（ａ）のＢ−Ｂ線断面図、図３（ｃ）は図３（ｄ）のＣ−Ｃ線断面図、図３（ｄ）はイニシエータとホルダとの係合説明図である。
【０００４】
イニシエータ１０は、後部が開放した略有底円筒形状のカップ１２を有している。このカップ１２内に反応薬剤１４が収容されている。カップ１２の後部はヘッダ１６によって閉鎖されている。このカップ１２内には、該ヘッダ１６を貫通した電極ピン１８の先端側が臨んでいる。このカップ１２、反応薬剤１４及びヘッダ１６によって点火反応部が構成されている。
【０００５】
この電極ピン１８の先端とヘッダ１６との間に電橋線２２が架設されている。この電橋線２２の両端はそれぞれ電極ピン１８とヘッダ１６とに溶接されている。この電橋線２２は、カップ１２内において反応薬剤１４に接している。
【０００６】
なお、該電極ピン１８とヘッダ１６とは、ガラス等の絶縁材２６により、電気的に接触しないよう互いに離間して配置されている。
【０００７】
ヘッダ１６から電極ピン（グランドピン）２０が突設されている。ヘッダ１６と各電極ピン１８，２０の根元側とを囲むように樹脂モールド２４が形成されている。この樹脂モールド２４は、ヘッダ１６に近い側が大径部２４ａとなっており、ヘッダ１６から遠い側が小径の差込部２４ｂとなっている。
【０００８】
このイニシエータ１０は、略々環状のイニシエータホルダ（以下ホルダと略）３０に挿入保持されている。このホルダ３０の内周には、内向き鍔状の係止段部３２が設けられており、この係止段部３２の内周側がイニシエータ保持孔３４となっている。イニシエータ１０の樹脂モールド２４の差込部２４ｂが該イニシエータ保持孔３４に挿入され、大径部２４ａが該係止段部３２に係止される。
【０００９】
このホルダ３０には第１筒部３６と第２筒部３８とが同軸状に設けられている。内周側の第１筒部３６にイニシエータ１０の樹脂モールド２４を内嵌し、該第１筒部３６の先端を内方に折曲することにより、イニシエータ１０がホルダ３０に固定され、両者が一体化される。この第１筒部３６に対し、ケーシング４０が外嵌される。このケーシング４０は、一端が閉じ他端が開放した有低円筒状であり、該他端側が第１筒部３６に外嵌され、さらに該他端側は、第１筒部３６と第２筒部３８との間に差し込まれる。
【００１０】
このケーシング４０の該他端側の縁部は、外方に向って拡張したフランジ部４０ａとなっている。このフランジ部４０ａを第１筒部３６と第２筒部３８との間に差し込んだ後、第２筒部３８の先端を内方に折曲することにより、ケーシング４０とホルダ３０とが固定され、一体化される。なお、ケーシング４０内には予めガス発生剤４２が充填されている。
【００１１】
この従来例に係るガス発生器にあっては、イニシエータ１０のヘッダ１６とイニシエータ保持孔３４とは略同径となっている。即ち、イニシエータ保持孔３４の開口面積をＳ１とし、ヘッダ１６の該イニシエータ保持孔３４への挿入方向と直交方向の断面積をＳ２とした場合、Ｓ１／Ｓ２は約１程度となっている。
【００１２】
このように構成されたガス発生器においては、車両衝突時等の緊急時には、各電極ピン１８，２０を介してバッテリから電橋線２２に電圧が印加される。これにより、該電橋線２２が発熱して反応薬剤１４が点火され、反応を開始する。そして、この反応薬剤１４の反応により高圧ガスや熱が生じ、これによりガス発生器のガス発生剤４２がガス発生反応を引き起こす。なお、この反応に伴ってカップ１２は破れ、熱いガス等が放出される。
【００１３】
なお、反応薬剤１４としては、例えば電橋線２２を囲むように配置されたスチフ酸鉛とアルミニウム粉末の混合物よりなる第１反応薬剤、及び該第１反応薬剤を取り囲むように配置されたＢＫＮＯ３又は黒色火薬よりなる第２反応薬剤が用いられる。第１反応薬剤は急速に発熱反応し、第２反応薬剤は第１反応薬剤の熱により反応を開始して高圧の熱いガス及び微粒子を発生させる。
【００１４】
このイニシエータ１０の作動により、ガス発生剤４２がガス発生反応を開始し、ケーシング４０を破って多量のガスが噴出する。
【００１５】
【特許文献１】
特開２０００−２９２１００号
【００１６】
【発明が解決しようとする課題】
上記構成のガス発生器にあっては、一般に、ガス噴出作動したときに、イニシエータ１０に対し図３の右方に大きなガス圧が加えられる。従来のガス発生器にあっては、図３の通り、イニシエータ１０のヘッダ１６はイニシエータ保持孔３４と略同径となっている。このイニシエータ１０に対して図３の右方向に加えられるガス圧が著しく高くなった場合であっても、イニシエータ１０のヘッダ１６が樹脂モールド２４を圧壊させつつイニシエータ保持孔３４から図３の右方向に抜け出すことを防止するために、樹脂モールド２４を高強度にする必要があった。
【００１７】
本発明は、樹脂モールド２４の強度を高める等の対策を採るまでもなくガス発生器作動時におけるヘッダの抜け出しを確実に防止することができるガス発生器を提供することを目的とする。
【００１８】
【課題を解決するための手段】
本発明（請求項１）のガス発生器は、点火反応部を有したイニシエータと、該イニシエータを保持するホルダと、該イニシエータの該点火反応部の外側に配置されたガス発生剤と、該ガス発生剤を囲んでおり、前記ホルダに固着された外殻体とを備えてなり、該ホルダには、該イニシエータが挿入され係止されているイニシエータ保持孔が設けられているガス発生器において、該イニシエータ保持孔の開口面積Ｓ１と該点火反応部のイニシエータ挿入方向と直交方向の断面積Ｓ２の比Ｓ１／Ｓ２が０．５以下であることを特徴とする。
【００１９】
かかる本発明のガス発生器によると、イニシエータ保持孔の開口面積Ｓ１と点火反応部のイニシエータ挿入方向と直交方向の断面積Ｓ２の比Ｓ１／Ｓ２が０．５以下と小さいため、ガス発生器作動時におけるイニシエータの点火反応部の抜け出しを確実に防止することができる。
【００２０】
なお、上記比Ｓ１／Ｓ２は０．２〜０．５であることが好ましい。
【００２１】
本発明の一態様では、イニシエータは、盤状のヘッダと、該ヘッダの一方の面から延出する通電用のピンと、該ヘッダの他方の面を囲むケーシングと、該ヘッダとケーシングとの間に充填された反応薬剤と、該ピンによって通電され、該反応薬剤の反応を開始させる電橋線とを備えており、前記断面積Ｓ２は該ヘッダの断面積である。
【００２２】
かかる構成のガス発生器によると、イニシエータのヘッダがイニシエータ保持孔にしっかりと保持されるので、ガス発生器の作動時にイニシエータに加えられるガス圧が高くても、イニシエータを確実に保持しておくことができる。
【００２３】
なお、イニシエータの点火反応部の断面形状とイニシエータ保持孔の断面形状が異なるようにした場合、ガス発生器作動時におけるイニシエータの抜け出しを確実に防止することができる。この形状の一例として、上記点火反応部のイニシエータ挿入方向と直交方向の断面形状が円形であり、上記イニシエータ保持孔のイニシエータ挿入方向と直交方向の断面形状が非円形であってもよい。
【００２４】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。図１（ａ）は本発明の実施の形態に係るガス発生器のイニシエータ挿入方向と直交する方向に沿う断面図、図１（ｂ）は図１（ａ）のガス発生器においてイニシエータを係合する前の状態を示す断面図である。
【００２５】
この実施の形態に係るイニシエータの長手方向即ち図１のＡ−Ａ線に沿う断面は、前記図３と全く同一となるので、図示を省略する。この実施の形態では、イニシエータを保持するホルダ３０’の係止段部３２’に設けられたイニシエータ保持孔３４’と、このイニシエータ保持孔３４’に差し込まれるイニシエータ差込部２４’の形状が上記従来例と相違している。
【００２６】
即ち、この実施の形態に係るホルダ３０’にあっては、係止段部３２’の中央部に、断面楕円形状のイニシエータ保持孔３４’が設けられている。ヘッダ１６（図３参照）の断面積Ｓ２に対するこのイニシエータ保持孔３４’の開口面積Ｓ１の比Ｓ１／Ｓ２は０．５以下、好ましくは０．２〜０．５である。
【００２７】
樹脂モールド２４’のヘッダ１６から遠い側が、断面楕円形状の差込部２４ｂ’となっている。
【００２８】
この差込部２４ｂ’が、ホルダ３０’の上記イニシエータ保持孔３４’に挿入保持されている。
【００２９】
本実施の形態に係るガス発生器のその他の構成は図３に示す従来のガス発生器と同様であり、同一符号は同一部分を示している。
【００３０】
このように構成されたガス発生器においても、車両衝突時等の緊急時には、各電極ピン１８，２０を介してバッテリから電橋線２２（図３参照）に電圧が印加される。これにより、該電橋線２２が発熱してカップ１２内の反応薬剤１４（図３参照）が点火され、反応を開始する。そして、この反応薬剤１４の反応により高圧ガスや熱が生じ、これによりガス発生器のガス発生剤がガス発生反応を引き起こす。なお、この反応に伴ってカップ１２は破れ、熱いガス等が放出される。
【００３１】
このガス発生器にあっては、ヘッダ１６の断面積Ｓ２に対するイニシエータ保持孔３４’の開口面積Ｓ１の比Ｓ１／Ｓ２が０．５以下、好ましくは０．２〜０．５と小さい。このため、ガス発生器作動時にヘッダ１６に１７０ＭＰａ〜２００ＭＰａ程度の高圧力が負荷され、ヘッダ１６が樹脂モールド２４’を圧壊させつつイニシエータ保持孔３４’から抜け出そうとしても、イニシエータ保持孔３４’の開口面積Ｓ１がヘッダ１６の断面積Ｓ２よりも十分に小さいために抜け出すことができず、ヘッダ１６はホルダ３０’によって保持される。従って、ヘッダ１６がイニシエータ保持孔３４’から抜け出すことが確実に防止される。
【００３２】
本実施の形態では、ヘッダ１６の断面形状が円形であるのに対し、イニシエータ保持孔３４’の開口形状が楕円形であり、両者は異なる形状となっている。このため、ヘッダ１６がイニシエータ保持孔３４’から抜け出すことが、一層確実に防止される。
【００３３】
上記実施の形態では、イニシエータ保持孔３４’の断面形状及び樹脂モールド２４’の差込部２４ｂ’の断面形状を楕円形としたが、これらの形状は非円形であれば特に限定はなく、四角形や、多角形あるいは十字形等であってもよい。例えば、図２に示す通り、係止段部３２”に設けられたイニシエータ保持孔３４”及び該保持孔３４”に差し込まれる樹脂モールド２４”の差込部２４ｂ”のように、断面形状を長方形としてもよい。
【００３４】
かかるガス発生器にあっても、ヘッダ１６の断面積Ｓ２に対するイニシエータ保持孔３４”の開口面積Ｓ１の比Ｓ１／Ｓ２が０．５以下、好ましくは０．２〜０．５と小さく、且つイニシエータ保持孔３４”及び差込部２４ｂ”の断面形状がヘッダ１６の断面形状と異なるため、ヘッダ１６の抜け出しが確実に防止される。さらに、イニシエータ保持孔３４”が長方形であるため、該イニシエータ保持孔３４”をプレス加工により形成することが可能となり、ホルダ３０の製造コストの削減を図ることができる。
【００３５】
なお、図２（ａ）は本発明の別の実施の形態に係るガス発生器のイニシエータ挿入方向と直交する方向に沿う断面図、図２（ｂ）は図２（ａ）のガス発生器においてイニシエータを係合する前の状態を示す断面図である。
【００３６】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明によると、イニシエータの樹脂モールドの強度を高める等の対策を採るまでもなくガス発生器作動時におけるヘッダの抜け出しを確実に防止することができるガス発生器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図１】（ａ）図は本発明の実施の形態に係るガス発生器のイニシエータ挿入方向と直交する方向に沿う断面図、（ｂ）図は（ａ）図のガス発生器においてイニシエータを係合する前の状態を示す断面図である。
【図２】（ａ）図は本発明の別の実施の形態に係るガス発生器のイニシエータ挿入方向と直交する方向に沿う断面図、（ｂ）図は（ａ）図のガス発生器においてイニシエータを係合する前の状態を示す断面図である。
【図３】（ａ）図は従来のガス発生器のイニシエータ挿入方向に沿う断面図、（ｂ）図は（ａ）図のＢ−Ｂ線断面図、（ｃ）図は（ｄ）図のＣ−Ｃ線断面図、（ｄ）図はイニシエータとホルダとの係合説明図である。
【符号の説明】
１０ イニシエータ
１２ カップ
１４ 反応薬剤
１６ ヘッダ
１８，２０ 電極ピン
２２ 電橋線
２４，２４’，２４” 樹脂モールド
２４ａ 大径部
２４ｂ，２４ｂ’，２４ｂ” 差込部
３０ ホルダ
３２，３２’，３２” 係止段部
３４，３４’，３４” イニシエータ保持孔
３６ 第１筒部
３８ 第２筒部
Claims (4)
- 点火反応部を有したイニシエータと、
該イニシエータを保持するホルダと、
該イニシエータの該点火反応部の外側に配置されたガス発生剤と、
該ガス発生剤を囲んでおり、前記ホルダに固着された外殻体と
を備えてなり、該ホルダには、該イニシエータが挿入され係止されているイニシエータ保持孔が設けられているガス発生器において、
該イニシエータ保持孔の開口面積Ｓ１と該点火反応部のイニシエータ挿入方向と直交方向の断面積Ｓ２の比Ｓ１／Ｓ２が０．５以下であることを特徴とするガス発生器。 - 請求項１において、該比Ｓ１／Ｓ２が０．２〜０．５であることを特徴とするガス発生器。
- 請求項１又は２において、該イニシエータは、盤状のヘッダと、該ヘッダの一方の面から延出する通電用のピンと、該ヘッダの他方の面を囲むケーシングと、該ヘッダとケーシングとの間に充填された反応薬剤と、該ピンによって通電され、該反応薬剤の反応を開始させる電橋線とを備えており、
前記断面積Ｓ２は該ヘッダの断面積であることを特徴とするガス発生器。 - 請求項１ないし３のいずれか１項において、該点火反応部のイニシエータ挿入方向と直交方向の断面形状と、該イニシエータ保持孔のイニシエータ挿入方向と直交方向の断面形状とが異なることを特徴とするガス発生器。
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