JP2004526142A - 電気泳動析出の改良 - Google Patents
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Abstract
セラミックの電気泳動析出において、陽極が、溶媒中に溶けている金属塩における金属と同じ金属であるか、或いはそのような金属を含んでいる。好ましくは、上記の塩は硝酸マグネシウムである。
Description
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気泳動析出の改良方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気泳動析出は、リン光体のセラミック粉コーティングの析出や他の電子工学的応用に、益々利用されるようになっている。基本的にこの技術は、ステンレス鋼の陽極を使用することを含んでおり、導通用の陰極を、少量の硝酸マグネシウムの溶解されたイソプロパノールのような有機液体中に浸漬する。この電解質にセラミック粉を添加し、高いDC電圧を印加して、陰極にセラミック粉を析出させる。電圧を印加すると、セラミック粉は正に荷電され、陰極へ向けて引き付けられる。同時に、陰極で Mg(OH)2が形成され、これがセラミック粉の結合剤として作用する。
【0003】
Mg(NO3)2はMg(NO3)2・6H2O として添加され、かつ、イソプロパノールは完全に無水ではないので、有機液体内の少量の水が幾らかのイオン電導性を提供することになる。電気泳動に関するほとんどの研究では、以下のように、水が電気分解を受けて酸素と水素を生成するものと考えられている。
陽極反応: 2H2O = O2 + 4H+ + 4e-
陰極反応: 4H+ + 4e- = 2H2
実際には、陽極電位を金属陽極に印加すると、酸素が発生する前に、まず金属(M)が陽極酸化されて、陽極表面で以下が起こる。
M + H2O = MOH + H+ + e-
相当に限られた量の水を含有しているイソプロパノールの場合、電解質の抵抗が非常に高くなるため、電解槽(cell)に300〜350Vを印加した時でさえ、その電解槽を介して流れる電流が1mA/cm2 以下に制限され、陽極電流のほとんどが陽極酸化に使用される。陽極では不可避的な溶解が生じることとなり、これがイソプロパノール電解質の汚染につながる。陽極からの陽イオンは、次に陰極にセラミック粉を析出させる。グリニッジ大学での以前の研究(Carol Gibbons, Xiping Jing, Jack Silver, Aron Vecht,and Robert Withnall, Electrochemical and Solid State Letters,(1999),2(7),357)によれば、一般に使用されているステンレス鋼の陽極は、鉄の析出が析出リン光体のフォトルミネッセンス特性を減少させるという理由で、リン光体の析出には適切でないということが明らかにされている。
【発明の開示】
【0004】
我々は、陽極にステンレス鋼の代わりに銅を使用すると、銅添加の硫化亜鉛リン光体の不活性が防止され、これは、ZnS:Cu リン光体中の Cu2+ イオン が減少せず、その代わりに電解質中の Cu2+ イオン が減少するためである、ということを明らかにした。硝酸マグネシウムは電気泳動析出プロセス中に消費されるが、マグネシウム陽極を使用することで、 Mg2+ 陽イオンを溶液中に確実に連続供給することができる。これにより、Mg2+ 陽イオンの量が一定になり、連続生成プロセスによる、より一定した電気泳動析出コーティングが可能となる。また、陰極反応は、水素の発生だけでなく、析出リン光体の還元をも含む。陰極での水素発生は、析出効率を減少させ、そして陰極電位でのセラミック粉の還元は、有害な成分変化につながる。更に、水素発生が陰極反応の中の1つであるとすると、そのプロセス中に水が消費され、これは電解質の成分及び導電性の変化へとつながる。
【0005】
それに代わる好ましい方法は、少量の空気又は酸素を泡立たせるか、或いは希釈された過酸化水素を加えることにより、酸素のような還元可能な種(species)を電解質中に導入することであり、この結果、陰極反応は酸素の還元反応となる。
O2 + 4e + 4H+ = 2H2O
従って、陽極反応で消費されたいずれの H2O も元に戻り、これにより、そのような系において電解質が確実に一定に維持される。また、酸素の還元は電気泳動析出コーティングにおける他の還元可能な種よりも非常に高い電位で起こるので、析出粉の還元は生じず、また、リン光体コーティングの基板としてよく使用されるインジウム添加の酸化錫ガラスの還元も生じない。
【0006】
本発明によれば、セラミックの電気泳動析出のための方法が提供され、この方法は、セラミックの懸濁している液体に電流を流すことを備えており、前記液体は金属塩の溶解した溶媒からなり、陽極は前記金属塩における金属と同じ陽極金属を含んでいる。
【0007】
全ての金属陽極が酸化されて、有機液体中に陽イオンが放出されることになる。
【0008】
例えば、それぞれ硝酸塩のようなマグネシウム塩又はアルミニウム塩を含む有機液体中での電気泳動析出においては、マグネシウム及び/又はアルミニウムが好ましい陽極である。
【0009】
他の金属成分を電気泳動コーティングに採用する必要がある場合は、酸素又は空気を泡立てるような形態により、或いは例えば希釈過酸化水素等のように酸素を遊離させる化合物を添加することにより、電解質に酸素を導入することで、例えばリン光体コーティングによく使用される導電用インジウム添加の酸化錫ガラス基板等の基板の還元だけでなく、電気泳動コーティングの還元も防止される。
【0010】
実際には、過酸化水素のように溶液又は懸濁液中の酸素を遊離させることの可能な化合物を電解質中に導入することが好ましい。その理由は、それが全体に渡って均一に分布可能であり、また、泡が存在しないために効率良く電気泳動析出が行われるからである。
【0011】
仮に少量の水が有機液体中に存在するとすれば、酸素の還元がただ可能になるわけだが。従って、過酸化水素を添加すると、むしろ過酸化水素を含有する水という形態をとることになる。空気又は酸素を使用する場合は、有機液体に少量の水を加える必要がある。
【0012】
途中、セラミックが、結合剤としての金属水酸化物と共に陰極に析出される。
【0013】
溶媒は、例えばイソプロパノールのような従来から使用されている溶媒のいずれかを使用可能である。
【0014】
陽極は、陽極金属又は陽極金属合金で形成可能であり、或いは、陽極金属よりも高い電位を有する指示金属(support metal)の表面に、陽極を少なくとも部分的に被覆する陽極金属の層又は細片を設けたもので形成することも可能であり、このようにすることで、陽極金属が指示金属よりも優先的に溶液中に溶け出すようになる。指示体は、炭素のような導電材料でもかまわない。
【0015】
電流が流れると陽極金属が溶け出して金属イオンを生成するので、これにより、陰極で中和されて金属を析出することになる金属イオンがセラミックと置換される。これにより、溶液中の金属イオン濃度がいっそう一定したレベルに維持され、このことは電気泳動コーティングのいっそうの終始一貫した析出へとつながる。より好ましい系では、溶媒としてイソプロパノールが使用され、塩として硝酸マグネシウムが使用され、また、陽極は金属マグネシウムを含んでいる。
【0016】
溶媒中の金属塩濃度は、従来の電気泳動プロセスにおいて使用されるものと同じである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明について、実例に基づき説明する。
例1−インジウム添加酸化錫ガラス陰極における効果
イソプロパノール中に硝酸マグネシウムを含有させた標準的な電解質を用い、350ボルトの電位で、ルミネッセンスを示すリン光体粉を、インジウム添加酸化錫の透明皮膜で被覆されたガラス上に電気泳動析出させた。
【0018】
電解質中に過酸化水素又は他の還元可能な種を添加しない場合は、インジウム添加酸化錫コーティングが還元されて錫となり、その結果、電気泳動析出の期間中にガラスの光沢が曇ってしまった。これは、ガラスの透明度に対して有害な影響を及ぼすことになり、また、表示輝度の品質に悪影響を与えることになる。
例2−マグネシウム陽極
イソプロパノール中に硝酸マグネシウムを含有させた標準的な電解質に添加物を加えずに、電気防食用のマグネシウム陽極を用い、350ボルトの電位で、インジウム添加酸化錫ガラス基板を、銅及びアルミニウムを添加した硫化亜鉛(ZnS:Cu,Al)で電気泳動コーティングした。
【0019】
ガラス基板を介して、コーティングされたリン光体に波長366nmの紫外光を照射した。同様にガラス基板を介して、フォトルミネッセンスの測定を行った。以下の表1に示した値は、ガラス基板上の12個の測定点を1平方メートル当たりのカンデラで示したものと、それらの平均値である。
【0020】
【表1】
【0021】
例3−過酸化水素の添加
電解質中に0.3%の過酸化水素を添加したことによる、 ZnS:Cu,Al リン光体のフォトルミネッセンスに及ぼす影響:
過酸化水素又は他の適当な還元可能な種が存在しない場合は、リン光体格子中の Cu2+ が還元され、ルミネッセンスが低下する。
【0022】
過酸化水素が存在する場合は、ルミネッセンスの減少は生じない。
【0023】
波長366nmの紫外光を照射して、光沢の曇りのないインジウム添加酸化錫ガラス基板を介して幾つかの測定点で試料のルミネッセンスを測定したところ、曇りの生じた試料よりも極めて高いルミネッセンスを示した。
実験結果:
イソプロパノール中に硝酸マグネシウムを含有させた標準的な電解質に添加物を加え、電気防食用のマグネシウム陽極を用い、350ボルトの電位で、インジウム添加酸化錫ガラス基板を、銅及びアルミニウムを添加した硫化亜鉛(ZnS:Cu,Al)で電気泳動コーティングした。
【0024】
ガラス基板を介して、コーティングされたリン光体に波長366nmの紫外光を照射した。同様にガラス基板を介して、フォトルミネッセンスの測定を行った。以下の表2に示した値は、ガラス基板上の12個の測定点を1平方メートル当たりのカンデラで示したものと、それらの平均値である。
【0025】
【表2】
【0026】
これを図1に図式的に示す。ここで、
A=標準の電解質(ガラス基板が非常に曇った)、
B=標準の電解質に水を加えたもの(ガラス基板の曇りはAよりも少ない)、
C=標準の電解質に過酸化水素を加えたもの(ガラス基板に曇りなし)。
これからわかるように、ガラス基板の曇りはリン光体の性能全体を低下させる。
【0027】
電気泳動析出における従来の全作業は、コーティング及び(インジウム添加酸化錫ガラスのような)基板が陰極還元されることによる影響を何ら考慮していなかったので、本発明は以下への応用を有している。
【0028】
すなわち、リン光体スクリーン、ガスセンサー、セラミック加工、酸化物粉体、合成、燃料電池、電界放出ディスプレイ、超電導薄膜及び超電導厚膜、ゼオライト修飾電極の製造、複合コーティング、第2世代固体燃料電池用の希薄電解質、ポリマー鎖、電界放出ディスプレイにおける析出用の混合材料、触媒担体、炭化シリコン及び窒化シリコンセラミックの反応接合、精製粉末の析出、リチウム電池用電極の製造、セラミック/セラミック及び金属/セラミックの複合コーティングの製造、層コーティング、生体膜設計用の細菌の制御された析出、乳濁水からの電気泳動析出、超電導テープの準備、沈降速度の制御、微小粒子のサイズ制御、粘土膜の析出、及び、多成分セラミック複合体の製造、に使用される電気泳動コーティングへの応用である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】表2を図式的に示す図である。
【0001】
本発明は、電気泳動析出の改良方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気泳動析出は、リン光体のセラミック粉コーティングの析出や他の電子工学的応用に、益々利用されるようになっている。基本的にこの技術は、ステンレス鋼の陽極を使用することを含んでおり、導通用の陰極を、少量の硝酸マグネシウムの溶解されたイソプロパノールのような有機液体中に浸漬する。この電解質にセラミック粉を添加し、高いDC電圧を印加して、陰極にセラミック粉を析出させる。電圧を印加すると、セラミック粉は正に荷電され、陰極へ向けて引き付けられる。同時に、陰極で Mg(OH)2が形成され、これがセラミック粉の結合剤として作用する。
【0003】
Mg(NO3)2はMg(NO3)2・6H2O として添加され、かつ、イソプロパノールは完全に無水ではないので、有機液体内の少量の水が幾らかのイオン電導性を提供することになる。電気泳動に関するほとんどの研究では、以下のように、水が電気分解を受けて酸素と水素を生成するものと考えられている。
陽極反応: 2H2O = O2 + 4H+ + 4e-
陰極反応: 4H+ + 4e- = 2H2
実際には、陽極電位を金属陽極に印加すると、酸素が発生する前に、まず金属(M)が陽極酸化されて、陽極表面で以下が起こる。
M + H2O = MOH + H+ + e-
相当に限られた量の水を含有しているイソプロパノールの場合、電解質の抵抗が非常に高くなるため、電解槽(cell)に300〜350Vを印加した時でさえ、その電解槽を介して流れる電流が1mA/cm2 以下に制限され、陽極電流のほとんどが陽極酸化に使用される。陽極では不可避的な溶解が生じることとなり、これがイソプロパノール電解質の汚染につながる。陽極からの陽イオンは、次に陰極にセラミック粉を析出させる。グリニッジ大学での以前の研究(Carol Gibbons, Xiping Jing, Jack Silver, Aron Vecht,and Robert Withnall, Electrochemical and Solid State Letters,(1999),2(7),357)によれば、一般に使用されているステンレス鋼の陽極は、鉄の析出が析出リン光体のフォトルミネッセンス特性を減少させるという理由で、リン光体の析出には適切でないということが明らかにされている。
【発明の開示】
【0004】
我々は、陽極にステンレス鋼の代わりに銅を使用すると、銅添加の硫化亜鉛リン光体の不活性が防止され、これは、ZnS:Cu リン光体中の Cu2+ イオン が減少せず、その代わりに電解質中の Cu2+ イオン が減少するためである、ということを明らかにした。硝酸マグネシウムは電気泳動析出プロセス中に消費されるが、マグネシウム陽極を使用することで、 Mg2+ 陽イオンを溶液中に確実に連続供給することができる。これにより、Mg2+ 陽イオンの量が一定になり、連続生成プロセスによる、より一定した電気泳動析出コーティングが可能となる。また、陰極反応は、水素の発生だけでなく、析出リン光体の還元をも含む。陰極での水素発生は、析出効率を減少させ、そして陰極電位でのセラミック粉の還元は、有害な成分変化につながる。更に、水素発生が陰極反応の中の1つであるとすると、そのプロセス中に水が消費され、これは電解質の成分及び導電性の変化へとつながる。
【0005】
それに代わる好ましい方法は、少量の空気又は酸素を泡立たせるか、或いは希釈された過酸化水素を加えることにより、酸素のような還元可能な種(species)を電解質中に導入することであり、この結果、陰極反応は酸素の還元反応となる。
O2 + 4e + 4H+ = 2H2O
従って、陽極反応で消費されたいずれの H2O も元に戻り、これにより、そのような系において電解質が確実に一定に維持される。また、酸素の還元は電気泳動析出コーティングにおける他の還元可能な種よりも非常に高い電位で起こるので、析出粉の還元は生じず、また、リン光体コーティングの基板としてよく使用されるインジウム添加の酸化錫ガラスの還元も生じない。
【0006】
本発明によれば、セラミックの電気泳動析出のための方法が提供され、この方法は、セラミックの懸濁している液体に電流を流すことを備えており、前記液体は金属塩の溶解した溶媒からなり、陽極は前記金属塩における金属と同じ陽極金属を含んでいる。
【0007】
全ての金属陽極が酸化されて、有機液体中に陽イオンが放出されることになる。
【0008】
例えば、それぞれ硝酸塩のようなマグネシウム塩又はアルミニウム塩を含む有機液体中での電気泳動析出においては、マグネシウム及び/又はアルミニウムが好ましい陽極である。
【0009】
他の金属成分を電気泳動コーティングに採用する必要がある場合は、酸素又は空気を泡立てるような形態により、或いは例えば希釈過酸化水素等のように酸素を遊離させる化合物を添加することにより、電解質に酸素を導入することで、例えばリン光体コーティングによく使用される導電用インジウム添加の酸化錫ガラス基板等の基板の還元だけでなく、電気泳動コーティングの還元も防止される。
【0010】
実際には、過酸化水素のように溶液又は懸濁液中の酸素を遊離させることの可能な化合物を電解質中に導入することが好ましい。その理由は、それが全体に渡って均一に分布可能であり、また、泡が存在しないために効率良く電気泳動析出が行われるからである。
【0011】
仮に少量の水が有機液体中に存在するとすれば、酸素の還元がただ可能になるわけだが。従って、過酸化水素を添加すると、むしろ過酸化水素を含有する水という形態をとることになる。空気又は酸素を使用する場合は、有機液体に少量の水を加える必要がある。
【0012】
途中、セラミックが、結合剤としての金属水酸化物と共に陰極に析出される。
【0013】
溶媒は、例えばイソプロパノールのような従来から使用されている溶媒のいずれかを使用可能である。
【0014】
陽極は、陽極金属又は陽極金属合金で形成可能であり、或いは、陽極金属よりも高い電位を有する指示金属(support metal)の表面に、陽極を少なくとも部分的に被覆する陽極金属の層又は細片を設けたもので形成することも可能であり、このようにすることで、陽極金属が指示金属よりも優先的に溶液中に溶け出すようになる。指示体は、炭素のような導電材料でもかまわない。
【0015】
電流が流れると陽極金属が溶け出して金属イオンを生成するので、これにより、陰極で中和されて金属を析出することになる金属イオンがセラミックと置換される。これにより、溶液中の金属イオン濃度がいっそう一定したレベルに維持され、このことは電気泳動コーティングのいっそうの終始一貫した析出へとつながる。より好ましい系では、溶媒としてイソプロパノールが使用され、塩として硝酸マグネシウムが使用され、また、陽極は金属マグネシウムを含んでいる。
【0016】
溶媒中の金属塩濃度は、従来の電気泳動プロセスにおいて使用されるものと同じである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明について、実例に基づき説明する。
例1−インジウム添加酸化錫ガラス陰極における効果
イソプロパノール中に硝酸マグネシウムを含有させた標準的な電解質を用い、350ボルトの電位で、ルミネッセンスを示すリン光体粉を、インジウム添加酸化錫の透明皮膜で被覆されたガラス上に電気泳動析出させた。
【0018】
電解質中に過酸化水素又は他の還元可能な種を添加しない場合は、インジウム添加酸化錫コーティングが還元されて錫となり、その結果、電気泳動析出の期間中にガラスの光沢が曇ってしまった。これは、ガラスの透明度に対して有害な影響を及ぼすことになり、また、表示輝度の品質に悪影響を与えることになる。
例2−マグネシウム陽極
イソプロパノール中に硝酸マグネシウムを含有させた標準的な電解質に添加物を加えずに、電気防食用のマグネシウム陽極を用い、350ボルトの電位で、インジウム添加酸化錫ガラス基板を、銅及びアルミニウムを添加した硫化亜鉛(ZnS:Cu,Al)で電気泳動コーティングした。
【0019】
ガラス基板を介して、コーティングされたリン光体に波長366nmの紫外光を照射した。同様にガラス基板を介して、フォトルミネッセンスの測定を行った。以下の表1に示した値は、ガラス基板上の12個の測定点を1平方メートル当たりのカンデラで示したものと、それらの平均値である。
【0020】
【表1】
【0021】
例3−過酸化水素の添加
電解質中に0.3%の過酸化水素を添加したことによる、 ZnS:Cu,Al リン光体のフォトルミネッセンスに及ぼす影響:
過酸化水素又は他の適当な還元可能な種が存在しない場合は、リン光体格子中の Cu2+ が還元され、ルミネッセンスが低下する。
【0022】
過酸化水素が存在する場合は、ルミネッセンスの減少は生じない。
【0023】
波長366nmの紫外光を照射して、光沢の曇りのないインジウム添加酸化錫ガラス基板を介して幾つかの測定点で試料のルミネッセンスを測定したところ、曇りの生じた試料よりも極めて高いルミネッセンスを示した。
実験結果:
イソプロパノール中に硝酸マグネシウムを含有させた標準的な電解質に添加物を加え、電気防食用のマグネシウム陽極を用い、350ボルトの電位で、インジウム添加酸化錫ガラス基板を、銅及びアルミニウムを添加した硫化亜鉛(ZnS:Cu,Al)で電気泳動コーティングした。
【0024】
ガラス基板を介して、コーティングされたリン光体に波長366nmの紫外光を照射した。同様にガラス基板を介して、フォトルミネッセンスの測定を行った。以下の表2に示した値は、ガラス基板上の12個の測定点を1平方メートル当たりのカンデラで示したものと、それらの平均値である。
【0025】
【表2】
【0026】
これを図1に図式的に示す。ここで、
A=標準の電解質(ガラス基板が非常に曇った)、
B=標準の電解質に水を加えたもの(ガラス基板の曇りはAよりも少ない)、
C=標準の電解質に過酸化水素を加えたもの(ガラス基板に曇りなし)。
これからわかるように、ガラス基板の曇りはリン光体の性能全体を低下させる。
【0027】
電気泳動析出における従来の全作業は、コーティング及び(インジウム添加酸化錫ガラスのような)基板が陰極還元されることによる影響を何ら考慮していなかったので、本発明は以下への応用を有している。
【0028】
すなわち、リン光体スクリーン、ガスセンサー、セラミック加工、酸化物粉体、合成、燃料電池、電界放出ディスプレイ、超電導薄膜及び超電導厚膜、ゼオライト修飾電極の製造、複合コーティング、第2世代固体燃料電池用の希薄電解質、ポリマー鎖、電界放出ディスプレイにおける析出用の混合材料、触媒担体、炭化シリコン及び窒化シリコンセラミックの反応接合、精製粉末の析出、リチウム電池用電極の製造、セラミック/セラミック及び金属/セラミックの複合コーティングの製造、層コーティング、生体膜設計用の細菌の制御された析出、乳濁水からの電気泳動析出、超電導テープの準備、沈降速度の制御、微小粒子のサイズ制御、粘土膜の析出、及び、多成分セラミック複合体の製造、に使用される電気泳動コーティングへの応用である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】表2を図式的に示す図である。
Claims (11)
- セラミックの電気泳動析出方法であって、前記セラミックの懸濁している液体に電流を流すことを備えており、前記液体は金属塩の溶解した溶媒からなり、陽極は前記金属塩における金属と同じ陽極金属を含んでいる方法。
- 前記陽極金属はマグネシウム又はアルミニウムである請求項1記載の方法。
- 前記金属塩は硝酸塩である請求項2記載の方法。
- 前記陽極は陽極金属又は陽極金属の合金でできている請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
- 前記陽極は、該陽極を少なくとも部分的に被覆する陽極金属の層又は細片が表面に設けられた、陽極金属よりも高い電位を有する指示金属でできている請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
- 前記溶媒はイソプロパノールであり、前記塩は硝酸マグネシウムであり、前記陽極は金属マグネシウムを含んでいる請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
- 前記液体は酸素を遊離可能な化合物を含んでいる先の請求項のいずれか1項に記載の方法。
- 前記化合物は過酸化水素である請求項7記載の方法。
- 陰極の近辺における前記溶媒を介して酸素又は空気を泡立てる請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法。
- 前記セラミックはリン光体である先の請求項のいずれか1項に記載の方法。
- 前記セラミックは銅添加硫化亜鉛のリン光体であり、前記陽極は銅を含む請求項10記載の方法。
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