JP2004516410A - 燃料噴射弁 - Google Patents
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Abstract
特に内燃機関の燃料噴射装置のための燃料噴射弁(1)は、アクチュエータ(27)と、該アクチュエータ(27)によって操作可能であって、弁座面(6)と共にシール座を形成している弁閉鎖体(4)を操作するための弁ニードル(3)と、少なくとも1つの渦流通路(35)を備えた渦流装置(34)とを有しており、前記渦流通路(35)を、燃料噴射弁(1)の長手方向軸線(38)に関する接線方向成分を有する燃料が貫流するようになっている。押圧部材(36)の軸方向位置は、少なくとも1つの迂回通路(37)の横断面を決定し、該迂回通路(37)が、少なくとも1つの渦流通路(35)を、接線方向成分なしに迂回している。
Description
【0001】
従来技術
本発明は請求項1の上位概念部に記載されている形式の燃料噴射弁に関する。
【0002】
ドイツ連邦共和国特許公開第19736682号明細書により公知の、混合気圧縮火花点火式内燃機関の燃焼室に燃料を直接噴射するための燃料噴射弁は、燃料噴射弁の下流側の端部に、3つのディスク状の部材により形成されているガイド領域及び座領域を有している。その際渦流部材は、ガイド部材と弁座部材との間に埋設されている。ガイド部材が、その中を貫通していて軸方向に可動な弁ニードルを、ガイドする働きをしている一方で、弁ニードルの弁閉鎖区分は弁座部材の弁座面と協働している。渦流部材は、複数の渦流通路を備えた内部の開口領域を有しており、これらの渦流通路は、渦流部材の外周には連通していない。全開口領域は、渦流部材の軸方向厚さを完全に貫通している。
【0003】
上記明細書により公知の燃料噴射弁において、特に固定的に調節された渦流角度は欠点であり、この渦流角度が、内燃機関の部分負荷運転及び全負荷運転のような種々異なる運転状態に適合することは不可能である。これにより、噴射された混合気噴霧(Gemischwolke)のコーン開放角(Kegeloeffnungswinkel)αもまた、異なる運転状態に適合することは不可能であり、このことは燃焼時の不均質性、燃費の悪化ならびに排気ガスの増加に至る。
【0004】
発明の利点
請求項1に記載された特徴を有する本発明による燃料噴射弁は、上記の欠点に対して、渦流が内燃機関の運転状態に応じて調節可能であるという利点を有しており、これにより内燃機関の運転状態に適した噴射形状を生ぜしめることが可能である。これにより混合気組成ならびに燃焼手段を最適化し得る。
【0005】
従来の渦流化処理に対して、弁ニードルに被せ嵌め可能であって簡単に製作可能な押圧部材のみが追加される、渦流を生ぜしめる構成部分の簡単な構造は、特に有利である。その際、押圧部材の操作は、適当な制御ユニットによって、例えば圧電式や電磁式または液圧式に実施され得る。
【0006】
旧来の渦流化処理の渦流ディスクを変更せずに引き続き利用できることも有利である。
【0007】
請求項2以下に記載されている手段により、請求項1に記載した燃料噴射弁の有利な変化実施例および改良が可能である。
【0008】
さらに、渦流ディスクの弾性的な変形ひいては渦流の調節を可能にする、弁座体の漏斗状に凹欠した形状は、簡単に製作可能である。
【0009】
有利には、押圧部材の流出側の端部が半径方向の傾斜部を有していて、その傾斜部の傾きは、漏斗状の弁座体の傾きに一致しており、これにより渦流ディスクは均一に変形されて不均等が避けられる。
【0010】
その他に、押圧部材を、弁ニードルのストロークとは無関係に、その時々の燃料噴射弁の運転状態に適応した位置に切り換え得ることは有利である。
【0011】
図面
以下に、本発明の実施例が簡単に示されている図面を参照しながら、本発明の実施例について詳説する。
【0012】
図1 本発明による燃料噴射弁の第1の実施例を示す、軸方向の断面図である。
【0013】
図2 本発明による燃料噴射弁の、図1の領域IIを示す拡大図である。
【0014】
図3A−図3B 燃料噴射弁の異なる運転状態に応じて燃焼室内に噴射された混合気噴霧の噴射角αを示す概略図である。
【0015】
図4 本発明による燃料噴射弁の渦流ディスクの実施例を示す概略図である。
【0016】
図5A−図5B 図2の領域Vにおける、本発明による燃料噴射弁の作動形式を示す概略図である。
【0017】
実施例の説明
本発明による燃料噴射弁1の実施例について、図2〜図5を用いて詳説する前に、本発明をより理解し易くするために、まず最初に図1を用いて本発明による燃料噴射弁1の全体像を、その主要な構成部分に関連して簡単に説明する。
【0018】
この燃料噴射弁1は、混合気圧縮火花点火式内燃機関の燃料噴射装置のための燃料噴射弁の形式で構成されている。この燃料噴射弁1は、図示されていない内燃機関の燃焼室に燃料を直接噴射するのに特に適している。
【0019】
燃料噴射弁1はノズル体2を有しており、このノズル体2内には、弁ニードル3が配置されている。弁ニードル3は、弁閉鎖体4と作用結合しており、弁閉鎖体4は、弁座体5上に配置されている弁座面6と共に、シール座を形成するように協働する。この燃料噴射弁1は、本実施例においては、少なくとも1つの噴射開口7を備えていて内側に向かって開放する燃料噴射弁1である。ノズル体2は、シール部材8により磁石コイル10の外極9に対してシールされている。磁石コイル10は、コイルケーシング11内にカプセル状に収納されており、また磁石コイル10の内極13に当接しているコイル支持体12に巻き付けられている。内極13と外極9とは、ギャップ26によって互いに分離されており、接続構成部分29に支持されている。磁石コイル10は、電気的な差込接続部17を介して供給可能な電流によって、導線19を介して作動される。差込接続部17は、内極13に射出成形され得るプラスチック被覆部18によって取り囲まれている。
【0020】
弁ニードル3は、ディスク状に構成されている弁ニードルガイド14内でガイドされている。対を成している調節ディスク15は、ストローク調節の働きをしている。調節ディスク15のもう一方の側には、可動子20が位置している。この可動子20は、第1のフランジ21を介して、摩擦接続(kraftschluessig:摩擦による束縛)的に、弁ニードル3に結合しており、弁ニードル3は、溶接継目22によって第1のフランジ21に結合されている。第1のフランジ21上には戻しばね23が支持されており、この戻しばね23には、このような構成の燃料噴射弁1では、スリーブ24によって予圧がかけられる。
【0021】
弁ニードル3に溶接継目33を介して結合されている第2のフランジ31は、下側の可動子ストッパとして機能している。この第2のフランジ31上に位置している弾性的な中間リング32は、燃料噴射弁1の閉鎖時における衝突を防止する。シール座の流入側には、少なくとも1つの渦流通路35を有している渦流ディスク34が配置されている。渦流ディスク34は、本実施例においてはスリーブ状の押圧部材36と共に、燃料噴射弁1の運転状態に応じた、燃料噴射の渦流化処理を行う。押圧部材36は、本実施例において、中空円筒状に形成されており、かつ弁ニードル3に被せ嵌められている。図示されていない制御装置ならびに同様に図示されていない例えば電磁式や液圧式または圧電式に押圧スリーブ36に作用する操作装置を介して、渦流ディスク34は燃料噴射弁1の運転中に弾性的に変形され得るので、迂回通路37(バイパス)は閉鎖され、ひいては渦流ディスク34を貫流している燃料に渦流が付加され得る。
【0022】
これにより、燃料噴射弁1を環流している燃料は、部分負荷運転時においては、あまり渦流を付加されないことから、内燃機関の図示されていない燃焼室内に噴射される混合気噴霧の噴射開放角αは小さく保たれる一方で、全負荷運転時においては大きな渦流によって、また大きな噴射開放角αが得られる。それらに応じて混合気がリッチ又はリーンに保たれることによって、最適な燃焼が実現され得る。渦流ディスク34及び押圧部材は、図2及び図4に詳しく示されており、また構成部分の作動形式は、図5A及び図5Bに示されている。
【0023】
弁ニードルガイド14と可動子20とガイドディスク42内には、燃料通路30a〜30cが延在している。燃料は、中央の燃料供給部16を介して供給され、フィルタエレメント25によって濾過される。燃料噴射弁1は、シール部材28によって、図示されていない燃料導管に対してシールされている。
【0024】
燃料噴射弁1の休止状態において、可動子20は、戻しばね23によってストローク方向に抗して、弁閉鎖体4を弁座6に密に当接した状態に保持するように負荷される。磁石コイル10を励磁すると、磁石コイル10が磁界を形成して、この磁界が、可動子20を戻しばね23のばね力に抗してストローク方向に動かす。この場合、ストロークは、休止状態において内極13と可動子20との間に位置している作業ギャップ27によって定められている。可動子20は、弁ニードル3に溶接されているフランジ21を同様にストローク方向に連行する。弁ニードル3と作用結合している弁閉鎖体4は弁座面6から持ち上がり、そして燃料が噴射される。その際、押圧部材36は、弁ニードル3のストロークとは無関係に制御され、かつ各運転状態に応じた軸方向位置に摺動され得る。
【0025】
コイル電流が遮断されると、磁界が十分に解消された後で、可動子20は戻しばね23の圧力によって内極13から離れる。これにより、弁ニードル3と作用結合しているフランジ21がストローク方向とは反対に動く。これにより弁ニードル3が同一方向に移動するために、弁閉鎖体4は弁座面6に戴着され、そして燃料噴射弁1は閉鎖される。
【0026】
図2は、本発明に従って構成されている燃料噴射弁1の、図1の領域IIを抜粋して示す概略的な軸方向断面図である。上述した部材については、全図面中で、同一の符号が付与されている。
【0027】
上述した渦流の調節を実現するために、本発明に従って構成されている燃料噴射弁1は、押圧部材36の他に、漏斗状の凹部43を、弁座体5の上流側の端面39に有している。その際、この凹部43は、半径方向外側から半径方向内側に向かって延在しており、それゆえ弁座面6は凹部43を噴射開口7に対して閉鎖している。
【0028】
押圧部材36は、下流側の端部40に、傾斜部44を有しており、その傾きは漏斗状の凹部43の傾きに相当している。
【0029】
燃料噴射弁1の開放状態において、燃料が、ガイドディスク42内に形成されている燃料通路30cを通って流れる時、燃料は、押圧部材36の位置に応じて、強い渦流または弱い渦流を獲得する。
【0030】
図2において、押圧部材36は、渦流ディスク34上に作用を及ぼさない切換位置に、つまり渦流ディスク34が弾性的に変形していない切換位置にある。これにより迂回通路37は開放されて、この迂回通路37によって、燃料が渦流を受容することなく、渦流ディスク34を半径方向外側から半径方向内側に向かって貫流し得るようになる。このことは、弁座体5の流入側の端面39に設けられている漏斗状の凹部43によって可能となる。というのも、これによって渦流ディスク34と弁座体5との間にギャップ45が生じるからである。それゆえ燃料流の接線方向成分は非常に小さく、これにより燃焼室に噴射される混合気噴霧の噴射広がりは狭小であり、噴射開放角αは小さいままであり、かつ混合気噴霧は高い貫徹力を有している。
【0031】
図3A及び図3Bはそれぞれ、燃料噴射弁1の2つの異なる運転状態、つまり部分負荷領域及び全負荷領域に応じた、燃焼室に噴射される混合気噴霧への要求について説明するために、理想的に形成された混合気噴霧を示している。
【0032】
混合気圧縮火花点火式内燃機関は、部分負荷運転において、燃焼室内に噴射される混合気噴霧の形状と理論空燃比と貫徹力とに対して、全負荷運転時とは異なる要求をする。部分負荷運転時において混合気噴霧は、図3Aに示すように、比較的小さな開放角αと、高い貫徹力と、この小さな開放角αによって生ぜしめられたリッチな混合気を有する細い中心領域と、非常にリーンな外側領域とを有しているべきである一方で、全負荷運転時においては、図3Bに示されている大きな開放角αと、ひいては着火能力のある混合気によってシリンダがほぼ均質に満たされることとが必要である。
【0033】
混合気噴霧のパラメータのモデリングは、前述の本発明による手段により、渦流に影響を及ぼすことによって可能にされ得る。すなわち燃料がわずかな渦流でもって噴射開口7から流出すると、混合気噴霧は小さな開放角αで噴射される。その一方で強い渦流は、大きな噴射広がりと、それゆえに大きな開放角αを有する混合気噴霧とを生ぜしめる。その際、渦流の強さは、押圧部材36の軸方向位置によって調節可能である。
【0034】
図4は、本発明による燃料噴射弁1の渦流ディスク34の実施例を示す概略図である。
【0035】
図4に示された渦流ディスク34の形状は、6つの渦流通路35が星状に等間隔に配置されている形になっている。これらの渦流通路35は、半径方向外側の端部46に拡張部47を有している。弁ニードル3が渦流ディスク34に差し込まれていることによって、弁ニードル3と渦流ディスク34との間に渦流室48が生じており、この渦流室48に渦流通路35が開口している。
【0036】
その際拡張部47は、以下のように構成及び配置されている。すなわち、燃料通路30cを通って流れる燃料は、渦流を受容することなく、弁座体5と渦流ディスク34との間のギャップ45に流入して、それゆえ渦流通路35の代わりに迂回通路37を使用する。これにより燃料が接線方向成分なしに噴射されることから、噴射は、要求されている高い貫徹力を有している。
【0037】
図5A及び図5Bは、渦流化処理のための押圧部材36の作動形式を概略的に示す、図2の領域Vを抜粋した断面図である。
【0038】
その際図5Aは、すでに図2において説明した、押圧部材36の位置を示しており、この位置では渦流ディスク34は作用を受けないし、それゆえに燃料に渦流は生じない。特に、押圧部材36の下流側の端部40に設けられた楔形の傾斜部44の傾きと、弁座体5の流入側の端面39に設けられた漏斗状の凹部43とが合致していることが、図5Aから見て取れる。
【0039】
燃料噴射弁1が、アクチュエータ10の操作及び弁ニードル3を弁座面6から持ち上げることによって開放されると、燃料は燃料通路30cを通って渦流ディスク34に流れる。押圧部材36の非操作時において、渦流ディスク34は、ギャップ45によって弁座体5から引き離されており、これにより燃料は、渦流ディスク34内に形成されている渦流通路35を迂回して、渦流通路35の半径方向外側の拡張部47を介して、さらにギャップ45もしくはそのように形成された迂回通路37を通って、渦を巻くことなくシール座に流れ得る。燃料流は図5Aに矢印で示してある。
【0040】
図5Bも同様に、開放状態にある本発明による燃料噴射弁1を示している。押圧部材36は、図5Aに比べて下流方向に移動していて、渦流ディスク34を押圧している。傾斜部44の傾きと凹部43の傾きとが合致していることにより、渦流ディスク34は、押圧部材36によって均一に弾性変形させられて、弁座体5に圧接する。これにより、迂回通路37もしくはギャップ45は閉鎖され、燃料は渦流通路35を通って流れる。これにより燃料流が接線方向の成分を獲得することによって、シール座を通過した後で、この渦巻いた燃料は噴射開口7から噴射される。このことは、図5Bに同様に矢印で示されている。
【0041】
本発明は、図示の実施例に限定されたものではなく、そして特に圧電式または磁気ひずみ式のアクチュエータ27を有する燃料噴射弁1及び燃料噴射弁1の任意の構造変化実施例に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明による燃料噴射弁の第1の実施例を示す、軸方向の断面図である。
【図2】
本発明による燃料噴射弁の、図1の領域IIを示す拡大図である。
【図3】
燃料噴射弁の異なる運転状態に応じて燃焼室内に噴射された混合気噴霧の噴射角αを示す概略図である。
【図4】
本発明による燃料噴射弁の渦流ディスクの実施例を示す概略図である。
【図5】
図2の領域Vにおける、本発明による燃料噴射弁の作動形式を示す概略図である。
従来技術
本発明は請求項1の上位概念部に記載されている形式の燃料噴射弁に関する。
【0002】
ドイツ連邦共和国特許公開第19736682号明細書により公知の、混合気圧縮火花点火式内燃機関の燃焼室に燃料を直接噴射するための燃料噴射弁は、燃料噴射弁の下流側の端部に、3つのディスク状の部材により形成されているガイド領域及び座領域を有している。その際渦流部材は、ガイド部材と弁座部材との間に埋設されている。ガイド部材が、その中を貫通していて軸方向に可動な弁ニードルを、ガイドする働きをしている一方で、弁ニードルの弁閉鎖区分は弁座部材の弁座面と協働している。渦流部材は、複数の渦流通路を備えた内部の開口領域を有しており、これらの渦流通路は、渦流部材の外周には連通していない。全開口領域は、渦流部材の軸方向厚さを完全に貫通している。
【0003】
上記明細書により公知の燃料噴射弁において、特に固定的に調節された渦流角度は欠点であり、この渦流角度が、内燃機関の部分負荷運転及び全負荷運転のような種々異なる運転状態に適合することは不可能である。これにより、噴射された混合気噴霧(Gemischwolke)のコーン開放角(Kegeloeffnungswinkel)αもまた、異なる運転状態に適合することは不可能であり、このことは燃焼時の不均質性、燃費の悪化ならびに排気ガスの増加に至る。
【0004】
発明の利点
請求項1に記載された特徴を有する本発明による燃料噴射弁は、上記の欠点に対して、渦流が内燃機関の運転状態に応じて調節可能であるという利点を有しており、これにより内燃機関の運転状態に適した噴射形状を生ぜしめることが可能である。これにより混合気組成ならびに燃焼手段を最適化し得る。
【0005】
従来の渦流化処理に対して、弁ニードルに被せ嵌め可能であって簡単に製作可能な押圧部材のみが追加される、渦流を生ぜしめる構成部分の簡単な構造は、特に有利である。その際、押圧部材の操作は、適当な制御ユニットによって、例えば圧電式や電磁式または液圧式に実施され得る。
【0006】
旧来の渦流化処理の渦流ディスクを変更せずに引き続き利用できることも有利である。
【0007】
請求項2以下に記載されている手段により、請求項1に記載した燃料噴射弁の有利な変化実施例および改良が可能である。
【0008】
さらに、渦流ディスクの弾性的な変形ひいては渦流の調節を可能にする、弁座体の漏斗状に凹欠した形状は、簡単に製作可能である。
【0009】
有利には、押圧部材の流出側の端部が半径方向の傾斜部を有していて、その傾斜部の傾きは、漏斗状の弁座体の傾きに一致しており、これにより渦流ディスクは均一に変形されて不均等が避けられる。
【0010】
その他に、押圧部材を、弁ニードルのストロークとは無関係に、その時々の燃料噴射弁の運転状態に適応した位置に切り換え得ることは有利である。
【0011】
図面
以下に、本発明の実施例が簡単に示されている図面を参照しながら、本発明の実施例について詳説する。
【0012】
図1 本発明による燃料噴射弁の第1の実施例を示す、軸方向の断面図である。
【0013】
図2 本発明による燃料噴射弁の、図1の領域IIを示す拡大図である。
【0014】
図3A−図3B 燃料噴射弁の異なる運転状態に応じて燃焼室内に噴射された混合気噴霧の噴射角αを示す概略図である。
【0015】
図4 本発明による燃料噴射弁の渦流ディスクの実施例を示す概略図である。
【0016】
図5A−図5B 図2の領域Vにおける、本発明による燃料噴射弁の作動形式を示す概略図である。
【0017】
実施例の説明
本発明による燃料噴射弁1の実施例について、図2〜図5を用いて詳説する前に、本発明をより理解し易くするために、まず最初に図1を用いて本発明による燃料噴射弁1の全体像を、その主要な構成部分に関連して簡単に説明する。
【0018】
この燃料噴射弁1は、混合気圧縮火花点火式内燃機関の燃料噴射装置のための燃料噴射弁の形式で構成されている。この燃料噴射弁1は、図示されていない内燃機関の燃焼室に燃料を直接噴射するのに特に適している。
【0019】
燃料噴射弁1はノズル体2を有しており、このノズル体2内には、弁ニードル3が配置されている。弁ニードル3は、弁閉鎖体4と作用結合しており、弁閉鎖体4は、弁座体5上に配置されている弁座面6と共に、シール座を形成するように協働する。この燃料噴射弁1は、本実施例においては、少なくとも1つの噴射開口7を備えていて内側に向かって開放する燃料噴射弁1である。ノズル体2は、シール部材8により磁石コイル10の外極9に対してシールされている。磁石コイル10は、コイルケーシング11内にカプセル状に収納されており、また磁石コイル10の内極13に当接しているコイル支持体12に巻き付けられている。内極13と外極9とは、ギャップ26によって互いに分離されており、接続構成部分29に支持されている。磁石コイル10は、電気的な差込接続部17を介して供給可能な電流によって、導線19を介して作動される。差込接続部17は、内極13に射出成形され得るプラスチック被覆部18によって取り囲まれている。
【0020】
弁ニードル3は、ディスク状に構成されている弁ニードルガイド14内でガイドされている。対を成している調節ディスク15は、ストローク調節の働きをしている。調節ディスク15のもう一方の側には、可動子20が位置している。この可動子20は、第1のフランジ21を介して、摩擦接続(kraftschluessig:摩擦による束縛)的に、弁ニードル3に結合しており、弁ニードル3は、溶接継目22によって第1のフランジ21に結合されている。第1のフランジ21上には戻しばね23が支持されており、この戻しばね23には、このような構成の燃料噴射弁1では、スリーブ24によって予圧がかけられる。
【0021】
弁ニードル3に溶接継目33を介して結合されている第2のフランジ31は、下側の可動子ストッパとして機能している。この第2のフランジ31上に位置している弾性的な中間リング32は、燃料噴射弁1の閉鎖時における衝突を防止する。シール座の流入側には、少なくとも1つの渦流通路35を有している渦流ディスク34が配置されている。渦流ディスク34は、本実施例においてはスリーブ状の押圧部材36と共に、燃料噴射弁1の運転状態に応じた、燃料噴射の渦流化処理を行う。押圧部材36は、本実施例において、中空円筒状に形成されており、かつ弁ニードル3に被せ嵌められている。図示されていない制御装置ならびに同様に図示されていない例えば電磁式や液圧式または圧電式に押圧スリーブ36に作用する操作装置を介して、渦流ディスク34は燃料噴射弁1の運転中に弾性的に変形され得るので、迂回通路37(バイパス)は閉鎖され、ひいては渦流ディスク34を貫流している燃料に渦流が付加され得る。
【0022】
これにより、燃料噴射弁1を環流している燃料は、部分負荷運転時においては、あまり渦流を付加されないことから、内燃機関の図示されていない燃焼室内に噴射される混合気噴霧の噴射開放角αは小さく保たれる一方で、全負荷運転時においては大きな渦流によって、また大きな噴射開放角αが得られる。それらに応じて混合気がリッチ又はリーンに保たれることによって、最適な燃焼が実現され得る。渦流ディスク34及び押圧部材は、図2及び図4に詳しく示されており、また構成部分の作動形式は、図5A及び図5Bに示されている。
【0023】
弁ニードルガイド14と可動子20とガイドディスク42内には、燃料通路30a〜30cが延在している。燃料は、中央の燃料供給部16を介して供給され、フィルタエレメント25によって濾過される。燃料噴射弁1は、シール部材28によって、図示されていない燃料導管に対してシールされている。
【0024】
燃料噴射弁1の休止状態において、可動子20は、戻しばね23によってストローク方向に抗して、弁閉鎖体4を弁座6に密に当接した状態に保持するように負荷される。磁石コイル10を励磁すると、磁石コイル10が磁界を形成して、この磁界が、可動子20を戻しばね23のばね力に抗してストローク方向に動かす。この場合、ストロークは、休止状態において内極13と可動子20との間に位置している作業ギャップ27によって定められている。可動子20は、弁ニードル3に溶接されているフランジ21を同様にストローク方向に連行する。弁ニードル3と作用結合している弁閉鎖体4は弁座面6から持ち上がり、そして燃料が噴射される。その際、押圧部材36は、弁ニードル3のストロークとは無関係に制御され、かつ各運転状態に応じた軸方向位置に摺動され得る。
【0025】
コイル電流が遮断されると、磁界が十分に解消された後で、可動子20は戻しばね23の圧力によって内極13から離れる。これにより、弁ニードル3と作用結合しているフランジ21がストローク方向とは反対に動く。これにより弁ニードル3が同一方向に移動するために、弁閉鎖体4は弁座面6に戴着され、そして燃料噴射弁1は閉鎖される。
【0026】
図2は、本発明に従って構成されている燃料噴射弁1の、図1の領域IIを抜粋して示す概略的な軸方向断面図である。上述した部材については、全図面中で、同一の符号が付与されている。
【0027】
上述した渦流の調節を実現するために、本発明に従って構成されている燃料噴射弁1は、押圧部材36の他に、漏斗状の凹部43を、弁座体5の上流側の端面39に有している。その際、この凹部43は、半径方向外側から半径方向内側に向かって延在しており、それゆえ弁座面6は凹部43を噴射開口7に対して閉鎖している。
【0028】
押圧部材36は、下流側の端部40に、傾斜部44を有しており、その傾きは漏斗状の凹部43の傾きに相当している。
【0029】
燃料噴射弁1の開放状態において、燃料が、ガイドディスク42内に形成されている燃料通路30cを通って流れる時、燃料は、押圧部材36の位置に応じて、強い渦流または弱い渦流を獲得する。
【0030】
図2において、押圧部材36は、渦流ディスク34上に作用を及ぼさない切換位置に、つまり渦流ディスク34が弾性的に変形していない切換位置にある。これにより迂回通路37は開放されて、この迂回通路37によって、燃料が渦流を受容することなく、渦流ディスク34を半径方向外側から半径方向内側に向かって貫流し得るようになる。このことは、弁座体5の流入側の端面39に設けられている漏斗状の凹部43によって可能となる。というのも、これによって渦流ディスク34と弁座体5との間にギャップ45が生じるからである。それゆえ燃料流の接線方向成分は非常に小さく、これにより燃焼室に噴射される混合気噴霧の噴射広がりは狭小であり、噴射開放角αは小さいままであり、かつ混合気噴霧は高い貫徹力を有している。
【0031】
図3A及び図3Bはそれぞれ、燃料噴射弁1の2つの異なる運転状態、つまり部分負荷領域及び全負荷領域に応じた、燃焼室に噴射される混合気噴霧への要求について説明するために、理想的に形成された混合気噴霧を示している。
【0032】
混合気圧縮火花点火式内燃機関は、部分負荷運転において、燃焼室内に噴射される混合気噴霧の形状と理論空燃比と貫徹力とに対して、全負荷運転時とは異なる要求をする。部分負荷運転時において混合気噴霧は、図3Aに示すように、比較的小さな開放角αと、高い貫徹力と、この小さな開放角αによって生ぜしめられたリッチな混合気を有する細い中心領域と、非常にリーンな外側領域とを有しているべきである一方で、全負荷運転時においては、図3Bに示されている大きな開放角αと、ひいては着火能力のある混合気によってシリンダがほぼ均質に満たされることとが必要である。
【0033】
混合気噴霧のパラメータのモデリングは、前述の本発明による手段により、渦流に影響を及ぼすことによって可能にされ得る。すなわち燃料がわずかな渦流でもって噴射開口7から流出すると、混合気噴霧は小さな開放角αで噴射される。その一方で強い渦流は、大きな噴射広がりと、それゆえに大きな開放角αを有する混合気噴霧とを生ぜしめる。その際、渦流の強さは、押圧部材36の軸方向位置によって調節可能である。
【0034】
図4は、本発明による燃料噴射弁1の渦流ディスク34の実施例を示す概略図である。
【0035】
図4に示された渦流ディスク34の形状は、6つの渦流通路35が星状に等間隔に配置されている形になっている。これらの渦流通路35は、半径方向外側の端部46に拡張部47を有している。弁ニードル3が渦流ディスク34に差し込まれていることによって、弁ニードル3と渦流ディスク34との間に渦流室48が生じており、この渦流室48に渦流通路35が開口している。
【0036】
その際拡張部47は、以下のように構成及び配置されている。すなわち、燃料通路30cを通って流れる燃料は、渦流を受容することなく、弁座体5と渦流ディスク34との間のギャップ45に流入して、それゆえ渦流通路35の代わりに迂回通路37を使用する。これにより燃料が接線方向成分なしに噴射されることから、噴射は、要求されている高い貫徹力を有している。
【0037】
図5A及び図5Bは、渦流化処理のための押圧部材36の作動形式を概略的に示す、図2の領域Vを抜粋した断面図である。
【0038】
その際図5Aは、すでに図2において説明した、押圧部材36の位置を示しており、この位置では渦流ディスク34は作用を受けないし、それゆえに燃料に渦流は生じない。特に、押圧部材36の下流側の端部40に設けられた楔形の傾斜部44の傾きと、弁座体5の流入側の端面39に設けられた漏斗状の凹部43とが合致していることが、図5Aから見て取れる。
【0039】
燃料噴射弁1が、アクチュエータ10の操作及び弁ニードル3を弁座面6から持ち上げることによって開放されると、燃料は燃料通路30cを通って渦流ディスク34に流れる。押圧部材36の非操作時において、渦流ディスク34は、ギャップ45によって弁座体5から引き離されており、これにより燃料は、渦流ディスク34内に形成されている渦流通路35を迂回して、渦流通路35の半径方向外側の拡張部47を介して、さらにギャップ45もしくはそのように形成された迂回通路37を通って、渦を巻くことなくシール座に流れ得る。燃料流は図5Aに矢印で示してある。
【0040】
図5Bも同様に、開放状態にある本発明による燃料噴射弁1を示している。押圧部材36は、図5Aに比べて下流方向に移動していて、渦流ディスク34を押圧している。傾斜部44の傾きと凹部43の傾きとが合致していることにより、渦流ディスク34は、押圧部材36によって均一に弾性変形させられて、弁座体5に圧接する。これにより、迂回通路37もしくはギャップ45は閉鎖され、燃料は渦流通路35を通って流れる。これにより燃料流が接線方向の成分を獲得することによって、シール座を通過した後で、この渦巻いた燃料は噴射開口7から噴射される。このことは、図5Bに同様に矢印で示されている。
【0041】
本発明は、図示の実施例に限定されたものではなく、そして特に圧電式または磁気ひずみ式のアクチュエータ27を有する燃料噴射弁1及び燃料噴射弁1の任意の構造変化実施例に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明による燃料噴射弁の第1の実施例を示す、軸方向の断面図である。
【図2】
本発明による燃料噴射弁の、図1の領域IIを示す拡大図である。
【図3】
燃料噴射弁の異なる運転状態に応じて燃焼室内に噴射された混合気噴霧の噴射角αを示す概略図である。
【図4】
本発明による燃料噴射弁の渦流ディスクの実施例を示す概略図である。
【図5】
図2の領域Vにおける、本発明による燃料噴射弁の作動形式を示す概略図である。
Claims (11)
- 内燃機関の燃料噴射装置のための燃料噴射弁(1)であって、アクチュエータ(10)と、該アクチュエータ(10)によって操作可能であって、弁座面(6)と共にシール座を形成している弁閉鎖体(4)を操作するための弁ニードル(3)と、少なくとも1つの渦流通路(35)を備えた渦流ディスク(34)とを有しており、前記渦流通路(35)を、燃料噴射弁(1)の長手方向軸線(38)に関する接線方向成分を有する燃料が貫流するようになっている形式のものにおいて、
渦流ディスク(34)が、押圧部材(36)の作用によって、軸方向に弾性変形可能であることを特徴とする、内燃機関の燃料噴射装置のための燃料噴射弁。 - 押圧部材(36)の軸方向位置が、迂回通路(37)の横断面を決定し、該迂回通路(37)が、少なくとも1つの渦流通路(35)を、接線方向成分なしに迂回している、請求項1記載の燃料噴射弁。
- 押圧部材(36)が、中空円筒状に形成されていて、弁ニードル(3)に被せ嵌め可能である、請求項1又は2記載の燃料噴射弁。
- 弁座体(5)の流入側の端面(39)が、漏斗状の凹部(43)を有している、請求項1から3までのいずれか1項記載の燃料噴射弁。
- シール座が、弁座体(5)の端面(39)の漏斗状の凹部(43)の最深点を形成している、請求項4記載の燃料噴射弁。
- 押圧部材(36)が、噴射側の端部(40)に、楔形の傾斜部(44)を有している、請求項4又は5記載の燃料噴射弁。
- 押圧部材(36)の流出側の端部(40)の楔形の傾斜部(44)が、弁座体(5)の流入側の端面(39)の漏斗状の凹部(43)と同じ傾きを有している、請求項6記載の燃料噴射弁。
- 渦流ディスク(34)が、押圧部材(36)の楔形の傾斜部(44)と弁座体(5)の端面(39)の漏斗状の凹部(43)との間に配置されており、押圧部材(36)の作用時に漏斗状に変形させられる、請求項7記載の燃料噴射弁。
- 渦流ディスク(34)が、半径方向外側の縁部(41)で、弁座体(5)とガイドディスク(42)との間に緊締されている、請求項1から8までのいずれか1項記載の燃料噴射弁。
- 燃料噴射弁(1)を貫流している燃料の渦流が、押圧部材(36)の、軸方向下流への摺動によって強められ、そして押圧部材(36)の、軸方向上流への摺動によって弱められる、請求項1から9までのいずれか1項記載の燃料噴射弁。
- 押圧部材(36)が、弁ニードル(3)のストロークとは無関係に、その軸方向位置に調節可能である、請求項1から10までのいずれか1項記載の燃料噴射弁。
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