JP2004514636A - 金属反射用の薄層を含む多層皮膜を有する透明基板 - Google Patents

Abstract

本発明は、高耐熱性を示す金属反射層システムを提供する窓ガラス板に関する。層システムは、誘電体基膜、クロムまたは少なくとも４５重量％クロムを含有する金属合金の高反射を有する金属層、および窒化物最上層を含む。誘電体基膜は、ガラス表面に最も近い、少なくとも部分酸化されたＳｎＯ_２、ＺｎＯおよび／またはＴｉＯ_２層、および金属層に最も近い部分的に窒化された皮膜から成る。

Description

【０００１】
本発明は金属反射用の薄層を含む多層皮膜を有する透明な基板に関し、この基板は、高耐熱性のため、これらの基板は層の外見および光学的性質が有意に劣化することなく熱処理（曲げ、強靭化、焼きなまし）されるのに特に適している。多層皮膜は、誘電体基層、クロムまたは少なくとも４５重量％のクロムを含有する金属合金から作製される高反射を有する金属層、および誘電性窒化物カバー層を含む。しかし、本発明は、また、多層皮膜を担持する基板が中で透明であるがしかしガラス製でない特にポリエチレンテレフタレート（ＰＥＴ）型の剛性基板、従って有機ポリマーに基づく「グレージング」に関する。
【０００２】
高金属反射および比較的低い光透過を有するこのように被覆された基板は、極めて装飾的である。建築において、それらは、多くの場合、鏡要素として、半透明鏡として、または装飾ガラス・シートとして化粧壁、またはカーテン・ウォール、（グレージング・パネルまたは化粧タイル）用に用いられる。それらは、また、付加的な装飾印刷を提供することが可能であり、および／または適切な場合曲線状または変形形態をとって用いることも可能である。それらが一枚ものの窓ガラス板として用いられる場合、表面層は、何の保護もなく、それが大気の作用に対抗する特に高い能力を持たねばならないというような方法で大気に曝される。安全上の理由および／またはそれらの曲げ強度およびそれらの衝撃強度を増大させる目的のため、これら用途用に意図された被覆ガラス基板は、多くの場合、熱的にプレストレス化される、すなわち、５００℃、５５０℃または６００℃を超える温度まで加熱され、次に、極めて急速に冷却される。薄層を含む反射性多層皮膜は、また、この熱応力に劣化されることなく耐えられねばならず、被覆されたガラスグレージングの特性、特に美的、光学的、熱的およびエネルギー的特性はそれによって乱されてはならない。
【０００３】
高耐熱性を有する窓ガラス板は、最初に記載した種類の多層皮膜を有し、これらの要求事項に合致するＥＰ０９６２４２９Ａ１の記述から公知である。この公知の多層皮膜の場合において、誘電体基層はＳｉＯ_２、Ａｌ_２Ｏ_３、ＳｉＯＮ、Ｓｉ_３Ｎ_４またはＡｌＮ、あるいは少なくとも二つのこれら材料の混合物から成る。すべてのこれら材料は、比較的低いスパッタリング速度によってのみ、および／または供給される比較的高い技術努力によってのみ窓ガラス板に塗布することができる。商業規模の被覆工場は、経済的な理由のため、できるだけ高い運転速度で操作されるので、基層は、標準的な工場において、比較的小さな厚さによってのみ適用することができる。しかし、基層のより大きな厚さは、ガラス側の光反射条件および光透過条件の両方において、窓ガラス板の光反射の外見（色および色の強度）を修正するための干渉層として望ましい場合がある。
【０００４】
反射層としてクロム層を有し、前もって曲げられおよび／または応力をかけられることができる多層皮膜も、ＥＰ０４３６０４５Ａ１の記述から公知である。しかし、この場合において、カバー層はＡｌＴｉおよび／またはＺｒとの合金から成る。この種類の最上層のゆえに、この層側でのクロム層の高反射は失われ、ガラス側での反射率は最大値５０％に達する。この場合における基層は、ＴｉＯ_２、Ｔａ_２Ｏ_５、ＺｒＯ_２またはＳｉＯ_２から成る。明らかに、基層は、この場合において、それが色修正干渉層として作用するような厚さで成膜することができねばならないが、しかし、層厚さの増加は技術的および経済的な理由のためこれらの材料に対して限定される。
【０００５】
ＥＰ０５３６６０７Ｂ１の記述には金属外見を有する被覆された窓ガラス板が記載されており、それらの透明皮膜も熱処理に適する。しかし、この場合において、金属特性を有する層は、金属化合物、すなわち金属ホウ化物、金属炭化物、金属窒化物または金属酸窒化物から成る。これらの金属化合物は、純粋な金属層と同じ光反射の光沢を持たない。この層に堆積するものは、保護金属層であり例えば、クロム製であるが、これは熱処理の間に酸化される。この文献に記載される多層皮膜は、第一に高透明性を有する皮膜であって、装飾的な理由のための窓ガラス板両側上での金属反射の使用は、これらの多層皮膜の場合においては何の役割も果たさない。
【０００６】
基層の干渉作用により反射された光の色の印象が、この場合において技術的な偉業を達成するとか、または連続的に操業している被覆工場で窓ガラス板の運転速度を落とすとかを必要とすることなく、狙い通りのやり方で調整可能であることを確実にすることは望ましい。この種類の多層皮膜は、高耐食性（機械的、化学的）および高硬度を有することが好ましく、曲げ、強靭化またはアニール型の熱処理加工後、その特性、特に層側で本質的に色中性であり、且つ２〜１５％間の範囲にある透過率を有する高い光反射を維持することは好ましい。
【０００７】
本発明の目的は、このように被覆された窓ガラス板両側での高金属反射を有する、最初に記載した種類の改善された多層皮膜を提供することである。
【０００８】
この目的は請求項１に記載の態様により本発明により達成される。二次的な請求項は本発明の主題に対する有利な改善を提供する。
【０００９】
誘電体基層は、その結果、ガラス表面に近接する反射指数≧２．０を有する少なくとも一つの酸化物部分層、および金属層と隣接してもよくしなくてもよい窒化物部分層から成る。
【００１０】
単純にスパッタリングにより皮膜で容易に覆うことが可能な酸化物に基づく基層は、結局、この場合にクロム金属層が熱処理の間に色変化が起きると共に破壊までされてしまうことが判明し、その能力を発揮してこなかった。このリスクは、金属層の直下に金属窒化物製の薄い部分層が置かれる基層での本発明による多層の形成により、完全に排除される。ガラス表面に隣接するように配置されると共に、反射指数少なくとも２．０を有し、スパッタリングにより皮膜で容易に覆うことが可能な金属酸化物に基づく第二部分層のために、多層皮膜の耐熱性は乱されない。反射光の光反射の外見（色および色強度）は、広範囲にわたり簡単なやり方で修正することが可能である。しかし、被覆工場を通しての窓ガラス板の運転速度は、実質的に低下されないに違いない。この種類の酸化物部分層は、得ることが可能である光反射の外見に関してかなりな遊びがあるように、９０ｎｍまでの範囲の厚さまで何の問題もなく成膜することが可能である。
【００１１】
本発明の改善として、誘電体基層の窒化物部分層はＳｉ_３Ｎ_４および／またはＡｌＮから成る（これは場合によりターゲットのドーパットである少数の元素（Ａｌ、ホウ素など）を含有することが可能である）と共に、少なくとも１０ｎｍの層を有する。酸化物部分層または誘電体基層の多層は、好ましくは、ＳｎＯ_２および／またはＺｎＯおよび／またはＴｉＯ_２および／またはＮｂ_２Ｏ_５および／またはＺｎＯ_２に基づき、３０〜９０ｎｍ範囲の厚さを有する。
【００１２】
被覆された窓ガラス板の特に高度な光沢は、高反射を有する金属層用に純粋なクロムを用いることにより得られる。純粋クロム層のゆえに、６０％まで広がる可視領域のスペクトルにおける反射度を達成することが可能である。しかし、Ｃｒ７５〜８０重量％を含有するＣｒＡｌ合金、Ｃｒ４５〜８５重量％を含有するＣｒＳｉ合金およびＣｒ７０〜８０重量％を含有するＣｒＡｌＳｉ合金は、また、クロム含有金属合金として適切である。
【００１３】
一例として、以下の操作方法は金属酸化物層および窒化物層を得るために用いることができる：
−堆積物が反応性である場合、亜酸化金属ターゲットを用いる（金属層の場合において）ことによるか、Ｓｉ金属ターゲット（できればＡｌまたはホウ素によりドープ処理した）を用いるかまたは亜窒化物ターゲットを用いる（窒化物層の場合において）ことによる；
−堆積物が非反応性である場合、セラミック目的物を用いることが可能である（金属層の場合において）かまたは窒化物ターゲットを用いる（窒化物層の場合において）ことによる。
【００１４】
本発明の有利な改善において、Ｚｒ、Ｔｉ、ＴｉＣｒ、ＺｒＣｒまたはＴｉＮｉなどの金属または金属合金製の１〜３ｎｍ厚さの保護層が、多層皮膜の窒化物カバー層上に置かれる。この保護金属層は熱処理の間に変換されて対応する酸化物層を形成する。
【００１５】
本発明による多層皮膜は、それらの全部分にわたって互いに接着する一体層として窓ガラス板に貼り付けることができる。特に美的効果は、反射性多層皮膜が装飾または模様の形態をとる不連続層としてガラスの表面に塗布される時か、または例えばベークされるべき色から作製される模様または装飾が被覆された方の窓ガラス板側上に印刷される場合に得ることができる。ベークされるべき色は熱処理工程後にアニールをすることが可能である。
【００１６】
〔実施例〕
本発明のさらなる利点および詳細は、従来技術による二つの比較例と比較される本発明の三実施例を追跡していく記載から明らかとなる。
【００１７】
多層皮膜の耐食性を評価するために意図された試験として、以下が行われた：ＩＳＯ９２２７標準による「塩水噴霧」試験、ＤＩＮ５００１８標準による「ＳＯ_２」試験、ＤＩＮ・ＥＮ１０９６−１；−２標準による「テーバー（Ｔａｂｅｒ）磨耗」試験、ＤＩＮ５００１７標準による「汗」試験およびＩＳＯ９２２７標準による「カス（Ｃａｓｓ）」試験。可視領域のスペクトルにおける透過率Ｔ_ｖｉｓおよび反射率Ｒ_ｖｉｓ、および反射における色を決定する目的のための色座標ａ＊およびｂ＊の測定をＤＩＮ５０３３標準により行った。
【００１８】
比較例１
６×３．２１ｍ^２の表寸法を有する６ｍｍ厚さのフルート・ガラスの窓枠に、磁気強化スパッタリング処理による商業用スパッタリング工場において、ガラス／１０ｎｍのＳｉＯ_２／３５ｎｍのＣｒ／６ｎｍのＳｉ_３Ｎ_４を含む多層皮膜を被覆した。窓ガラス板の幅にわたって取った試料は、以下の反射率値Ｒ_ｖｉｓおよび透過率値Ｔ_ｖｉｓを与えた。
Ｒ_ｖｉｓ：
−皮膜側　　　　　　　　　　５７．０％
−ガラス側　　　　　　　　　４８．７％
Ｔ_ｖｉｓ：　　　　　　　　　　　２．５％
反射における色（実験室系）：

【００１９】
ガラス側上および多層皮膜側上の反射における色は殆ど同一であるが、しかし、多層皮膜側は常に１．４３という正のｂ＊値により証明されるように、わずかに黄色の色合いを有する。
【００２０】
多層皮膜の耐食性および硬度に関する試験により以下の結果が得られた。
塩水噴霧試験：　　　　　　合格
ＳＯ_２試験：　　　　　　 　合格
テーバー磨耗試験：　　　　合格
汗試験：　　　　　　　　　合格
カス試験：　　　　　　　　合格
【００２１】
比較例２
基層がガラス側上の反射における色がブルーであるような厚さを有する場合について、比較例１の場合において用いられるのと同じスパッタリング工場で同じ多層皮膜により窓ガラス板を被覆する試みがなされた。この目的のため、１００ｎｍの厚さを持つＳｉＯ_２基層を適用することが必要であった。特定のＳｉカソードの使用にも拘わらず、窓ガラス板の実質的に低下した運転速度によってのみ１００ｎｍ厚さの基層を製造することが可能であった。
【００２２】
光学的性質の測定により以下の値が得られた。
Ｒ_ｖｉｓ：
−皮膜側　　　　　　　　　　５７．３％
−ガラス側　　　　　　　　　２８．３％
Ｔ_ｖｉｓ：　　　　　　　　　　　３．０％
反射における色（実験室系）：

【００２３】
比較例１と比べて、ガラス側上の実質的な反射率の減少があった。さらに、生産性は被覆の間にかなり低下した。しかし、すべての腐食および硬度試験は、比較例１の場合のように何の問題もなく合格した。
【００２４】
本発明の説明のための実施例１
本発明による以下の多層皮膜：ガラス／５８ｎｍのＳｎＯ_２／１７ｎｍのＳｉ_３Ｎ_４／３５ｎｍのＣｒ／６ｎｍのＳｉ_３Ｎ_４／２ｎｍのＺｒを同じ大きなスパッタリング工場で製造した。種々の試料を窓ガラスの幅にわたって被覆された窓ガラス板から抽出した。試料を熱処理にかけた。圧縮応力を受けた試料に関する光学的性質の測定により以下の結果が得られた。
Ｒ_ｖｉｓ：
−皮膜側　　　　　　　　　　５７．４％
−ガラス側　　　　　　　　　３０．０％
Ｔ_ｖｉｓ：　　　　　　　　　　　３．５％
反射における色（実験室系）：

【００２５】
すべての腐食および硬度試験は何の問題もなく合格した。ガラス側上の反射における色は中性であり、多層皮膜側は明るい黄色の感じのよい色合いを持つ特定の高反射を有した。
【００２６】
本発明の実施例２
本発明による以下の多層皮膜：ガラス／４２ｎｍのＳｎＯ_２／８ｎｍのＺｎＯ／１７ｎｍのＳｉ_３Ｎ_４／１７ｎｍのＣｒ／１８．５ｎｍのＳｉ_３Ｎ_４／２ｎｍのＺｒをさらに同一の試験条件下で同じ試験サイクルにおいて製造した。
【００２７】
以下の光学的性質が測定された。
Ｒ_ｖｉｓ：
−皮膜側　　　　　　　　　　３８．４％
−ガラス側　　　　　　　　　１９．０％
Ｔ_ｖｉｓ：　　　　　　　　　　１４．０％
反射における色（実験室系）：
Ｔ_ｖｉｓ：

【００２８】
すべての腐食および硬度試験は何の問題もなく合格した。ガラス側上で、反射における色は強いブルーであり、一方多層皮膜側上で色は黄色であった。この種類の窓ガラス要素は半透明の鏡として、例えば、一体ガラス戸として用いることができ、一方の側は反射においてブルーに見え、他方の側は黄色に見える。
【００２９】
本発明の実施例３
本発明による以下の多層皮膜：ガラス／５６ｎｍのＳｎＯ_２／３４ｎｍのＳｉ_３Ｎ_４／３５ｎｍのＣｒ／６ｎｍのＳｉ_３Ｎ_４／２ｎｍのＺｒをさらに同一の試験条件下で大きなスパッタリング工場において製造し、層の性質を測定した。
【００３０】
光学的性質の測定により以下の値が得られた。
Ｒ_ｖｉｓ：
−皮膜側　　　　　　　　　　５５．５％
−ガラス側　　　　　　　　　３９．５％
Ｔ_ｖｉｓ：　　　　　　　　　　　２．５％
反射における色（実験室系）：

【００３１】
すべての腐食および硬度試験は何の問題もなく合格した。ガラス要素は反射においてガラス側上でグリーン・ブルーとして現れ、多層皮膜側上でそれは黄色の色合いを持つ高反射を有した。この種類のガラス要素は、例えば、外部に面するガラス側と共にカーテン・ウォール要素として用いることができ、多層皮膜側はこの場合に装飾的機能を全く満たす必要がない。

Claims (12)

1. 金属反射用および高耐熱性用の薄層を含む多層皮膜を有する透明な基板であって、該基板は、誘電体基層、クロムまたは少なくとも４５重量％のクロムを含有する金属合金から作製される高反射を有する金属層、および誘電体窒化物カバー層を含み、熱処理（曲げ、強靭化、焼きなまし）されるのに特に適し、かつ該誘電体基層は反射指数≧２．０を有する透明基板と隣接してもしなくてもよい少なくとも一つの酸化物部分層および金属層と隣接する窒化物部分層から成ることを特徴とする透明基板。
2. 酸化物部分層または誘電体基層の多層がＳｎＯ_２および／またはＺｎＯおよび／またはＴｉＯ_２に基づくことを特徴とする、請求項１に記載の基板。
3. 酸化物部分層または誘電体基層の多層が、３０〜９０ｎｍの全体厚さを有することを特徴とする、請求項１または２に記載の基板。
4. 誘電体基層の窒化物部分層がＳｉ_３Ｎ_４および／またはＡｌＮ、および場合により少数の元素に基づくことを特徴とする、請求項１〜３のいずれか一つに記載の基板。
5. 誘電体基層の窒化物部分層が少なくとも１０ｎｍの厚さを有することを特徴とする、請求項１〜４のいずれか一つに記載の基板。
6. クロム含有合金がＣｒ７５〜８０重量％を含有するＣｒＡｌ合金、Ｃｒ４５〜８５重量％を含有するＣｒＳｉ合金またはＣｒ７０〜８０重量％を含有するＣｒＡｌＳｉ合金であることを特徴とする、請求項１〜５のいずれか一つに記載の基板。
7. クロムまたはクロム合金金属層が１５〜５０ｎｍの厚さを有することを特徴とする、請求項１〜６のいずれか一つに記載の基板。
8. Ｚｒ、Ｔｉ、ＴｉＣｒ、ＺｒＣｒまたはＴｉＮｉなどの金属または金属合金製の１〜３ｎｍ厚さの保護層が窒化物カバー層上に置かれ、この保護層がこうして被覆された基板の熱処理後対応する酸化物層に変換されることを特徴とする、請求項１〜７のいずれか一つに記載の基板。
9. 窒化物カバー層がＳｉ_３Ｎ_４および／またはＡｌＮに基づき、少なくとも６ｎｍの厚さを有することを特徴とする、請求項１〜８のいずれか一つに記載の基板。
10. 多層皮膜が連続皮膜として基板に塗布されることを特徴とする、請求項１〜９のいずれか一つに記載の基板。
11. 多層皮膜が装飾または模様の形態をとる不連続層として基板に塗布されることを特徴とする、請求項１〜９のいずれか一つに記載の基板。
12. こうして被覆された基板が機械的または化学的処理において熱処理されることを特徴とする、請求項１〜１１のいずれか一つに記載の基板。