JP2004511593A - ゴム変性熱可塑性成形材料製造用の改良された弾性−熱可塑性グラフトポリマー - Google Patents
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Abstract
本発明は、分子量調整性化合物の添加を伴う特定の反応条件における乳化重合によって得られる改良された弾性−熱可塑性グラフトポリマーに関する。本発明は、該ポリマーに基づく熱可塑性組成物と成形体および弾性−熱可塑性グラフトポリマーの製法にも関する。
Description
【0001】
(技術分野)
本発明は、分子量を調整する化合物の添加中における特定の反応条件に従う乳化重合によって得られる改良された弾性−熱可塑性グラフトポリマー、該グラフトポリマーに基づく熱可塑性組成物および造形品、並びに弾性−熱可塑性グラフトポリマーの製法に関する。
【0002】
(背景技術)
弾性−熱可塑性グラフトポリマー、例えばビニルモノマーとゴムから得られるグラフトゴム等を乳化重合によって製造することは既知であり、多数の特許文献に記載されている(例えばヨーロッパ特許公報EP−A 154244参照)。
【0003】
グラフトポリマーから調製される熱可塑性成形材料のより好適な加工条件に関連して該グラフトポリマーの特性を改良するために、1種または複数種の分子量を調整する化合物をグラフト重合中に添加することがしばしば行われている。
【0004】
分子量を調整する化合物は、コスト高であることおよびこれらの化合物は常に最適な組込み特性(incorporation property)をもたらすとは限らないという点で不利である。
【0005】
(発明の開示)
(発明が解決しようとする技術的課題)
本発明の目的は、分子量を調整する化合物が、所定量で使用された時に、非常に高い取込み速度において最適な活性を示す熱可塑性成形材料を製造するための弾性−熱可塑性グラフトポリマーを提供することである。
【0006】
(その解決方法)
即ち、本発明は、ビニル基を有する1種または数種のモノマーおよび分子量を調整する少なくとも1種の化合物を少なくとも1種のラテックス形態のゴムの存在下で遊離基重合させることによって得られる弾性−熱可塑性グラフトポリマーにおいて、グラフト重合中にモノマー(M)と分子量を調整する化合物(MWR)との混合物を次の条件を満たすようにしてゴムラテックスへ添加することを特徴とする弾性−熱可塑性グラフトポリマーを提供する:
(i)M:MWRの重量比を第1反応セクション(RS)、第2反応セクションおよび第3反応セクションにおいてそれぞれ50:1〜400:1(好ましくは75:1〜350:1、特に好ましくは100:1〜300:1)、100:1〜800:1(好ましくは150:1〜700:1、特に好ましくは200:1〜600:1)および200:1〜2000:1(好ましくは300:1〜1800:1、特に好ましくは400:1〜1500:1)とし、
(ii)グラフト重合反応の開始時および/または終了時(好ましくはグラフト重合反応の終了時)における少なくとも1つの別の反応セクションにおいて、分子量を調整する化合物を添加せずに、モノマーのみをゴムラテックス中へ添加し、(iii)M:MWRの重量比が下記の関係式を満たすようにする:
M:MWR(第1RS)≦M:MWR(第2RS)<M:MWR(第3RS)。
【0007】
(発明を実施するための最良の形態)
3つの連続的な反応セクションの継続時間(3つの反応セクションにおける全反応時間に対する各反応セクションにおける反応時間の割合)は次の通りである:・第1反応セクション:好ましくは10〜80%、特に好ましくは15〜70%、非常に好ましくは20〜60%、
・第2反応セクション:好ましくは5〜60%、特に好ましくは10〜50%、非常に好ましくは15〜40%、
・第3反応セクション:好ましくは10〜50%、特に好ましくは15〜45%、非常に好ましくは20〜40%。
グラフト重合反応の開始時および/または終了時において分子量を調整する化合物を添加しない反応セクションの継続時間(グラフト重合の全反応時間に対する割合)は好ましくは5〜50%、特に好ましくは10〜45%、非常に好ましくは15〜40%である。
【0008】
従来から知られている弾性−熱可塑性グラフトポリマーに比べて、本発明によるポリマーは、後者に基づく、例えばABS型のゴム変性熱可塑性成形材料が改良された加工性と高い靱性を示す点で区別される。
【0009】
本発明による弾性−熱可塑性グラフトポリマーを製造するために適したゴムは、原則的には0℃よりも低いガラス転移温度を有するエマルション形態の全てのゴム状ポリマーである。
【0010】
使用できるゴムとしては次のものが例示される:
(i)ジエンゴム。即ち、炭素原子数が4〜8の共役ジエン、例えば、ブタジエン、イソプレンまたはクロロプレンのホモポリマーまたは60重量%まで(好ましくは30重量%まで)の以下に例示する好ましいビニルモノマーと該共役ジエンとのコポリマー:アクリロニトリル、メタクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレン、ハロゲノスチレン、C1〜C4−アルキルスチレン、C1〜C8−アルキルアクリレート、C1〜C8−アルキルメタクリレート、アルキレングリコールジアクリレート、アルキレングリコールジメタクリレートおよびジビニルベンゼン。
【0011】
(ii)アクリレートゴム。即ち、C1〜C10−アルキルアクリレートのホモポリマーおよびコポリマー。例えば、以下の好ましいポリマーが挙げられる:エチルアクリレートまたはブチルアクリレートのホモポリマーまたは該アクリレートと40重量%まで(好ましくは10重量%未満)のビニルモノマー(例えば、好ましくはスチレン、アクリロニトリル、ビニルブチルエーテル、アクリル酸(エステル)、メタクリル酸(エステル)、またはビニルスルホン酸等)とのコポリマー。これらのアクリレートゴムであるホモポリマーまたは以下の成分を0.001〜8重量%まで含有するコポリマーは好ましく使用される:ジビニルもしくはポリビニル化合物および/またはN−メチロールアクリルアミドもしくはN−メチロールメタクリルアミドまたは架橋剤として作用する他の化合物(例えば、好ましくはジビニルベンゼンまたはトリアリルシアヌレート)。
【0012】
好ましいゴムはポリブタジエンゴム、30重量%までのスチレンが重合化されたSBRゴムまたはアクリレートゴム、特に、例えば独国特許公報DE−A 3006804に記載のようなコア−セル構造を有するアクリレートゴム、またはこれらのゴムの混合物である。
【0013】
平均粒径(d50)が0.05〜2μm、好ましくは0.08〜1μm、特に好ましくは0.1〜0.5μmのラテックスは、本発明によるグラフトポリマーの調製に使用することができる。使用されるゴム中のゲル含有量は広範囲に変化させてもよく、好ましくは30〜95重量%である(トルエン中でのワイヤー・ケージ法によって測定した値)。この方法に関しては、次の文献を参照されたい:フーベン−ヴェイル、「メトーデン・デア・オーガニッシェン・ケミー;マクロモレキュラーレ・シュトッフ」パート1、第307頁(1961年)、ティーメ・フェアラーク、シュツッガルト。
【0014】
下記の粒径とゲル含有量を有するゴムラテックス(a)および(b)を有するゴムラテックス混合物は特に好ましい:
(a)平均粒径(d50):320nm以下、好ましくは260〜310nm
ゲル含有量:70重量%以下、好ましくは40〜65重量%
(b)平均粒径(d50):370nm以上、好ましくは380〜450nm
ゲル含有量:70重量%以上、好ましくは75〜90重量%
【0015】
好ましくは、ゴムラテックス(a)の粒径分布は30〜100nm(特に好ましくは40〜80nm)であり、ゴムラテックス(b)の粒径分布は50〜500nm(特に好ましくは100〜400nm)である(いずれの場合も、積分粒径分布からd90〜d10値として測定した値である)。
【0016】
混合物はゴムラテックス(a)および(b)を90:10〜10:90の重量比、特に好ましくは60:40〜30:70の重量比で含有するのが好ましい(いずれの場合も、ラテックスの特定の固形分含有量に基づくものである)。
【0017】
平均粒径は超遠心分離法によって測定される。これについては次の文献を参照されたい:W.ショルタン、H.ランゲ、「コロイド−Z.u.Z.ポリマー」、第250巻、第782〜796頁(1972年)。
【0018】
使用するゴムラテックスは乳化重合によって調製することができ、これに必要な反応条件、助剤および処理法は原則的には既知である。
【0019】
最初に微細に分割されたゴムポリマーを既知の方法によって調製した後、該ゴムポリマーを既知の方法によって必要な粒径が得られるように凝集させることも可能である。これに関連する技術は次の特許文献に記載されているので参照されたい:EP−A 0029613、EP−A 0007810、DE−A 144415、DE−A 1233131、DE−A 1258076、DE−A 2101650およびUS−A 1379391。
【0020】
所謂「播種重合法」も使用することができる。例えば、最初に微細に分割されたブタジエンポリマーを調製し、次いで、該ポリマーにブタジエン含有モノマーを反応させることによってより大きな粒径を有するポリマーを得てもよい。
【0021】
使用できる乳化剤は常套のアニオン性乳化剤、例えば、アルキルスルフェート、アルキルスルホネート、アラルキルスルホネート、飽和もしくは不飽和脂肪酸(例えば、オレイン酸またはステアリン酸)の石けんまたはアルカリ性の不均化もしくは水素化アビエチン酸もしくはタル油酸の石けん等であるが、カルボキシル基を有する乳化剤(例えば、C10〜C18−脂肪酸もしくは不均化アビエチン酸の塩類またはDE−A 3639904およびDE−A 3913509に記載されている乳化剤等)が好ましく使用される。
【0022】
ゴムポリマーラテックスは原則的には、最終的なゴムポリマーの水性媒体中での乳化によっても調製することができる。これに関しては日本国特許公報JP−A 55−125102を参照されたい。
【0023】
エマルション形態で存在するゴム状ポリマーの存在下で重合する適当なグラフトモノマーとしては、実用上はエマルション中で重合して熱可塑性樹脂をもたらす全ての化合物が該当し、例えば、下記の一般式(I)で表されるビニル芳香族化合物、一般式(II)で表される化合物またはこれらの混合物が挙げられる:
【0024】
【化1】
【化2】
【0025】
上記の一般式における符号等の意義は次の通りである。
R1:水素原子またはメチル、
R2:オルト位、メタ位もしくはパラ位の水素原子、ハロゲン原子、または炭素原子数1〜4のアルキル基、
R3:水素原子またはメチル、
X:CN、R4OOC(式中、R4は水素原子または炭素原子数が1〜4のアルキルを示す)またはR5R6NOC(式中、R5およびR6は相互に独立して水素原子、フェニルまたは炭素原子数が1〜4のアルキルを示す)。
【0026】
式(I)で表される化合物としてはスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンおよびビニルトルエン等が例示される。式(II)で表される化合物としてはアクリロニトリルおよびメチルメタクリレートが挙げられる。原則的に適当なその他の好ましいモノマーとしては、酢酸ビニルおよびN−フェニルマレイミドが例示される。
【0027】
好ましいモノマーはスチレンとアクリロニトリルとの混合物、α−メチルスチレンとアクリロニトリルとの混合物、スチレンとアクリロニトリルとメチルメタクリレートとの混合物、およびこれらの3種のモノマーとN−フェニルマレイミドとの混合物である。
【0028】
本発明による好ましいグラフトポリマーは、スチレンとアクリロニトリルを90:10〜50:50、好ましくは80:20〜65:35(この場合、スチレンの全部または一部はα−メチルスチレンまたはメチルメタクリレートで置換えることができる)の重量比で、ゴム(好ましくは、ポリブタジエン)の存在下においてグラフト重合させることによって得られるグラフトポリマーである。この場合、ゴムの量は、グラフトポリマー中のゴム含有量が30〜80重量%、好ましくは35〜75重量%、特に好ましくは35〜70重量%になるように調整する。
【0029】
使用可能な開始剤は無機および有機の過酸化物(例えば好ましいものとしては、H2O2、ジ−t−ブチルパーオキジド、クメンヒドロパーオキシド、ジシクロヘキシルパーカーボネート、p−メンタンヒドロパーオキシドおよびt−ブチルヒドロパーオキシド等が挙げられる)、アゾ開始剤(例えば好ましいものとしてはアゾビスイソブチロニトリルが挙げられる)、有機過酸塩(例えばカリウムパーオキソジスルフィド、ナトリウムパーオキソジスルフェート、アンモニウムパーオキソジスルフェート、カリウムパーホスフェートおよびナトリウムパーボーレート等)、および一般的な有機の酸化剤と還元剤から成るレドックス系等である。この場合、重金属イオンを反応媒体中にさらに存在させてもよい。これらの点に関しては次の文献を参照されたい:H.ローゲマン、フーベン−ヴェイル、「メトーデン・デア・オーガニッシェン・ケミー」、第14/1巻、第263〜397頁。
【0030】
好ましい開始剤はカリウムパーオキソジスルフェート、ナトリウムパーオキソジスルフェート、アンモニウムパーオキソジスルフェートもしくはこれらの混合物、並びにクメンヒドロパーオキシド、p−メンタンヒドロパーオキシド、t−ブチルヒドロパーオキシドまたはこれらの混合物である。
【0031】
本発明において使用してもよい還元剤は、好ましくは還元作用を有する水溶性化合物であり、下記の化合物群から選択するのが好ましい:スルフィン酸の塩、亜硫酸の塩、ジチオン酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、次亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、アスコルビン酸とその塩類、ロンガリットC(ナトリウムホルムアルデヒド−スルホキシレート)、モノ−およびジ−ヒドロキシアセトンおよび糖類(例えば、グルコースまたはデキストロース)。原則的には例えば、鉄(II)塩(例えば硫酸鉄(II))、スズ(II)塩(例えば塩化スズ(II))、チタン(III)塩(例えば硫酸チタン(III))等も使用可能であるが、この種の金属塩は使用しないのが好ましい。
【0032】
特に好ましい還元剤はデキストロース、アスコルビン酸およびその塩またはナトリウムホルムアルデヒド−スルホキシレート(ロンガリットC)である。
【0033】
本発明によるグラフトポリマーの調製における反応温度は広範囲に変化させてもよいが、一般的には25〜160℃、好ましくは40〜90℃、特に好ましくは50〜85℃である。グラフト重合は、反応開始温度と反応終了温度との温度差が少なくとも10℃、特に好ましくは少なくとも15℃、非常に好ましくは少なくとも20℃になるようにしておこなう。
【0034】
本発明による弾性−熱可塑性グラフトポリマーの調製においては、グラフトモノマーと共に、該グラフトモノマー100重量部あたり0.01〜1.00重量部、好ましくは0.03〜0.8重量部、特に好ましくは0.06〜0.5重量部の1種もしくは複数種のメルカプタン類が添加される。
【0035】
適当なメルカプタン類としては脂肪族メルカプタン(例えばエチル−、n−プロピル−、n−ブチル−、t−ブチル−、n−ペンチル−、n−ヘキシル−、n−オクチル−、n−デシル−、n−ドデシル−、t−ドデシル−、n−ヘキサデシル−、およびn−オクタデシル−メルカプタン等)および芳香族メルカプタン(例えばチオフェノール等)等が例示される。好ましいメルカプタンはt−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタンおよびこれらの混合物である。
【0036】
分子量を調整する他の物質、例えば、二量化α−メチルスチレンまたはテルピノール等も原則的には使用可能である。その使用量は、グラフトモノマー100重量部あたり0.5〜5重量部、好ましくは1〜3重量部である。
【0037】
本発明によって改良された特性を有する弾性−熱可塑性グラフトポリマーを調製するためには、グラフト重合反応中において、モノマー(M)と分子量を調整する化合物(MWR)との混合物を次の条件を満たすようにしてゴムラテックスへ添加しなければならない:
(i)M:MWRの重量比を第1反応セクション(RS)、第2反応セクションおよび第3反応セクションにおいてそれぞれ50:1〜400:1(好ましくは75:1〜350:1、特に好ましくは100:1〜300:1)、100:1〜800:1(好ましくは150:1〜700:1、特に好ましくは200:1〜600:1)および200:1〜2000:1(好ましくは300:1〜1800:1、特に好ましくは400:1〜1500:1)とし、
(ii)グラフト重合反応の開始時および/または終了時(好ましくはグラフト重合反応の終了時)における少なくとも1つの別の反応セクションにおいて、分子量を調整する化合物を添加せずに、モノマーのみをゴムラテックス中へ添加し、(iii)M:MWRの重量比が下記の関係式を満たすようにする:
M:MWR(第1RS)≦M:MWR(第2RS)<M:MWR(第3RS)。
【0038】
本発明は分子量を調整する硫黄含有化合物(好ましくはメルカプタン類)を上記の反応条件を満たすようにして使用することによって得られるグラフトポリマーであって、組み込まれた硫黄を不均一に含有する弾性−熱可塑性グラフトポリマーも供給する。硫黄の不均一な組み込みは、例えば、弾性−熱可塑性グラフトポリマーまたは可溶性の非グラフト化ポリマーの分別沈殿および個々のフラクション中の硫黄含有量の分析的決定法によって確認される。この点に関しては次の文献を参照されたい:M.ホフマン、H.クレマー、R.クーン、「ポリマーアナリティックI」第147〜168頁(1977年)、ティーメ・フェアラーク、スツッツガルト。
【0039】
グラフト重合反応においても、乳化剤として前述の化合物を使用することができる。
【0040】
本発明による弾性−熱可塑性グラフトポリマーのゴム含有量は好ましくは30〜80重量%、特に好ましくは35〜75重量%である。
【0041】
ゴムで変性された熱可塑性成形材料を製造するためには、本発明によるグラフトポリマーを、常套の後処理(例えば、塩および/または酸を用いる凝固処理、洗浄処理および乾燥処理もしくは噴霧乾燥)に付した後、少なくとも1種のゴム不含(rubber−free)マトリックス樹脂と混合させる。
【0042】
好ましく使用されるゴム不含コポリマーはスチレンとアクリロニトリルを95:5〜50:50の重量比で含むコポリマーである。この場合、スチレンおよび/またはアクリロニトリルの全部または一部はα−メチルスチレン、メチルメタクリレートまたはN−フェニルマレイミドで置換えられてもよい。
組み込まれたアクリロニトリルユニットが30重量%未満のコポリマーが特に好ましい。
【0043】
これらのコポリマーは、20000〜200000の平均分子量(Mw)(例えば、ゲル透過クロマトグラフィー等による測定値)または20〜110ml/g極限粘度[η](ジメチルホルムアミド中における25℃での測定値)を有するのが好ましい。
【0044】
これらの樹脂の調製に関する詳細は、例えばDE−AS2420358およびDE−AS2724360等の特許文献に記載されている。塊状重合または溶液重合によって調製されるビニル樹脂は特に適当であることが判明した。コポリマーはそれ自体で添加してもよく、あるいは所望の混合物として添加してもよい。
【0045】
本発明による成形材料に配合するゴム不含コポリマーとしては、ビニルモノマーから形成される熱可塑性樹脂のほかに、重縮合物、例えば、芳香族ポリカーボネート、芳香族ポリエステル−カーボネート、ポリエステルまたはポリアミド等も使用可能である。
【0046】
適当な熱可塑性ポリカーボネートおよびポリエステルカーボネートは既知であり(例えば、DE−AS 1495626、DE−A 2232879、DE−A 2703376、DE−A 2714544、DE−A 3000610、DE−A 3832396およびDE−A 3077934等参照)、この種のポリマーは、例えば下記の一般式(III)および(IV)で表されるジフェノール類を炭酸ハライド(好ましくはホスゲン)および/または芳香族ジカルボン酸ジハライド(好ましくはベンゼンジカルボン酸ジハライド)と相間重縮合反応させるか、あるいは該ジフェノール類とホスゲンを均一相中で重縮合反応(いわゆる「ピリジン法」)させることによって調製することができる。この場合、相当する量の既知の連鎖停止剤を用いて既知の方法によって分子量を調整してもよい。
【0047】
【化3】
【化4】
【0048】
上記の一般式における文字と符号の意義は以下の通りである。Aは単結合、C1〜C5−アルキレン、C2〜C5−アルキリデン、C5〜C6−シクロアルキリデン、−O−、−S−、−SO−、−SO2または−CO−、
R5およびR6は相互に独立して水素原子、メチルまたはハロゲン原子(特に、水素原子、メチル、塩素原子または臭素原子)を示す。
R1およびR2は相互に独立して水素原子、ハロゲン原子(好ましくは、塩素原子または臭素原子)、C1〜C8−アルキル(好ましくはメチルまたはエチル)、C5〜C6−シクロアルキル(好ましくはシクロヘキシル)、C6〜C10−アリール(好ましくはフェニル)またはC7〜C12−アラルキル(好ましくはフェニル−C1〜C4−アルキル、特にベンジル)を示す。
mは4〜7の整数(好ましくは4または5)を示す。
nは0または1を示す。
R3およびR4は各々のXに対して個々に選択され、相互に独立して水素原子またはC1〜C6−アルキルを示す。
Xは炭素原子を示す。
【0049】
式(III)および(IV)で表される適当なジフェノールとしては下記のものが例示される:ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)−プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)−プロパン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルシクロヘキサン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5,5−テトラメチルシクロヘキサンおよび1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−2,4,4−トリメチルシクロペンタン。
【0050】
式(III)で表される好ましいジフェノールは2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンおよび1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサンであり、また、式(IV)で表される好ましいフェノールは1,1−ビス−4(−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンである。
ジフェノールの混合物を使用することもできる。
【0051】
適当な連鎖停止剤としては、次のものが例示される:フェノール、p−t−ブチルフェノール、長鎖アルキルフェノール、例えば4−(1,3−テトラメチル−ブチル)フェノール(DE−OS 2842005参照)、アルキル置換基中の全炭素原子数が8〜20であるモルアルキルフェノールおよびジアルキルフェノール(DE−OS 3506472参照)、例えばp−ノニルフェノール、2,5−ジ−t−ブチルフェノール、p−t−オクチルフェノール、p−ドデシルフェノール、2−(3,5−ジメチルヘプチル)−フェノールおよび4−(3,5−ジメチルヘプチル)−フェノール。連鎖停止剤の必要量は、一般に、ジフェノール(III)および(IV)の合計量に基づいて0.5〜10mol%である。
【0052】
適当なポリカーボネートまたはポリエステル−カーボネートは線状または分枝状であってもよい。分枝状生成物は、使用するジフェノールの合計量に基づいて0.05〜2.0mol%の3官能性またはより高位の官能性化合物(例えば、3個もしくは3個よりも多くのフェノール性OH基を有する化合物)を組込むことによって調製するのが好ましい。
適当なポリカーボネートまたはポリエステルカーボネートは芳香族核に結合したハロゲン原子(好ましくは臭素原子および/または塩素原子)を有していてもよいが、ハロゲン原子を含んでいないのが好ましい。
これらの化合物の重量平均分子量(Mw)は10000〜200000(好ましくは20000〜80000)である(該平均分子量は超遠心分離法または散乱光測定法によって測定した値である)。
【0053】
適当な熱可塑性ポリエステルは、好ましくはポリアルキレンテレフタレート、即ち、芳香族ジカルボン酸またはこれらの反応性誘導体(例えば、ジメチルエステルまたは無水物)と脂肪族ジオール、脂環式ジオールまたはアリールアリファティック(aryaliphatic)ジオールとの反応生成物、およびこのような反応生成物の混合物である。
【0054】
好ましいポリアルキレンテレフタレートは既知の方法に従って、テレフタル酸(またはその反応性誘導体)と炭素原子数2〜10の脂肪族または脂環式ジオールから調製することができる。これに関しては次の文献を参照されたい:クンストストッフ−ハンドブーフ」、第VIII巻、第695頁〜第696頁、カール・ハンザー・フェアラーク、ミュンヘン、1973年。
【0055】
好ましいポリアルキレンテレフタレートにおいては、ジカルボン酸残基の80〜100mol%(好ましくは90〜100mol%)はテレフタル酸残基であり、ジオール残基の80〜100mol%(好ましくは90〜100mol%)はエチレングリコールおよび/またはブタン−1,4−ジオール残基である。
【0056】
好ましいポリアルキレンテレフタレートは、エチレングリコール残基またはブタン−1,4−ジオール残基のほかに、炭素原子数3〜12の他の脂肪族ジオールまたは炭素原子数6〜12の脂環式ジオールの残基、例えば下記のジオール類の残基を0〜20mol%含んでいてもよい:プロパン−1,3−ジオール、2−エチルプロパン−1,3−ジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタン−1,5−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、3−メチルペンタン−1,3−ジオール、3−メチルペンタン−1,6−ジオール、2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、2,2−ジエチルプロパン−1,3−ジオール、ヘキサン−2,5−ジオール、1,4−ジ(β−ヒドロキシエトキシ)−ベンゼン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−プロパン、2,4−ジヒドロキシ−1,1,3,3−テトラメチル−シクロブタン、2,2−ビス−(3−β−ヒドロキシエトキシフェニル)−プロパンおよび2,2−ビス−(4−ヒドロキシプロポキシフェニル)−プロパン(DE−OS 2407647、DE−OS 2407776およびDE−OS 2715932参照)。
【0057】
ポリアルキレンテレフタレートは、比較的少量の3価もしくは4価アルコールまたは3塩基性もしくは4塩基性カルボン酸、例えばDE−A 1900270およびUS−A3692744に記載の化合物を組込むことによって分枝化してもよい。好ましい分枝化剤はトリメシン酸、トリメリット酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンおよびペンタエリスリトールである。酸成分に基づいて1mol%を越えない量の分枝化剤を使用するのが望ましい。
【0058】
テレフタル酸およびその反応性誘導体(例えば、該酸のジアルキルエステル)とエチレングリコールおよび/またはブタン−1,4−ジオールのみから調製されるポリアルキレンテレフタレートおよびこれらのポリアルキレンテレフタレートの混合物は特に好ましい。
【0059】
少なくとも2種の上記のアルコール成分から調製されるコポリエステルも好ましいポリアルキレンテレフタレートであり、特に好ましいコポリエステルはポリ−(エチレングリコール/ブタン−1,4−ジオール)テレフタレートである。一般に、ポリアルキレンテレフタレートは0.4〜1.5dl/g、好ましくは0.5〜1.3dl/g、特に0.6〜1.2dl/gの固有粘度を有する[該粘度はフェノール/o−ジクロロベンゼン(1:1重量部)中において25℃で測定した値である。]。
【0060】
適当なポリアミドは既知のホモポリアミド、コポリアミドおよびこれらのポリアミドの混合物である。これらのポリアミドは部分的結晶性および/または無定形のポリアミドであってもよい。
【0061】
適当な部分的結晶性ポリアミドはポリアミド6、ポリアミド6,6並びにこれらの成分の混合物およびコポリマーである。部分的結晶性ポリアミドであって、酸成分の全部または一部がテレフタル酸および/またはイソフタル酸および/またはスベリン酸および/またはセバシン酸および/またはアゼライン酸および/またはアジピン酸および/またはシクロヘキサンジカルボン酸から成り、ジアミン成分の全部または一部がm−および/またはp−キシレンジアミンおよび/またはヘキサメチレンジアミンおよび/または2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンおよび/または2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンおよび/またはイソホロンジアミンから成り、これらの成分の組成が原則的に既知である部分的結晶性ポリアミドも使用可能である。
【0062】
環の炭素原子数が7〜12のラクタムおよび所望による上記の1種もしくは複数種の出発成分から全部または一部が形成されるポリアミドも使用可能である。
【0063】
特に好ましい部分的結晶性ポリアミドはポリアミド6、ポリアミド6,6およびこれらの混合物である。無定形ポリアミドとしては既知のポリアミドを使用することができる。このようなポリアミドはジアミン(例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、2,2,4−および/または2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、m−および/またはp−キシレンジアミン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)−メタン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)−プロパン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノ−ジシクロヘキシルメタン、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン、2,5−および/または2,6−ビス−(アミノメチル)−ノルボルナンおよび/または1,4−ジアミノメチルシクロヘキサン)とジカルボン酸(例えば、シュウ酸、アジピン酸、アゼライン酸、デカンジカルボン酸、ヘプタデカンジカルボン酸、2,2,4−および/または2,4,4−トリメチルアジピン酸、イソフタル酸およびテレフタル酸)との重縮合反応によって得られる。
【0064】
数種類のモノマーの重縮合反応によって得られるコポリマーも適当であり、また、アミノカルボン酸(例えば、ε−アミノカプロン酸、ω−アミノウンデカン酸もしくはω−アミノラウリン酸またはこれらのラクタム類)の付加によって調製されるコポリマーも適当である。
【0065】
特に好ましい無定形ポリアミドは、(i)イソフタル酸、ヘキサメチレンジアミン並びにその他のジアミン(例えば、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、イソホロンジアミン、2,2,4−および/または2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンもしくは2,5−および/または2,6−ビス−(アミノメチル)−ノルボルネン)から調製されるポリアミド、(ii)イソフタル酸、4,4’−ジアミノ−ジシクロヘキシルメタンおよびε−カプロラクタムから調製されるポリアミド、(iii)イソフタル酸、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノ−ジシクロヘキシルメタンおよびラウリルラクタムから調製されるポリアミド、および(iv)テレフタル酸と2,2,4−および2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンの異性体混合物から調製されるポリアミドである。
【0066】
純粋な4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンの代りに、ジアミノジシクロヘキシルメタンの位置異性体混合物(4,4’−ジアミノ異性体70〜99mol%、2,4’−ジアミノ異性体1〜30mol%および2,2’−ジアミノ異性体0〜2mol%)および所望によるジアミン(工業用純度のジアミノジフェニルメタンの水素化によって得られる相当する高位の縮合度を有するジアミン)を使用することもできる。イソフタル酸の30%まではテレフタル酸で置き換えることができる。
【0067】
ポリアミドは2.0〜5.0(特に好ましくは2.5〜4.0)の相対粘度(m−クレゾールを溶媒とする1重量%溶液について25℃で測定した値)を有するのが好ましい。組成物は本発明によるグラフトポリマー以外のポリマーをさらに含有していてもよい。
【0068】
本発明によるグラフトポリマーの使用量は、それぞれの全組成物に基づいて1〜80重量%、好ましくは5〜50重量%である。
【0069】
成形材料を調製するためには、本発明による弾性−熱可塑性グラフトポリマーはマトリックス樹脂と種々の方法で混合することができる。マトリックス樹脂を乳化重合によって調製するときには、ラテックスを混合して一緒に沈殿させることができ、あるいは別々に沈殿させて得られる固体状物質を混合させることもできる。
【0070】
マトリックス樹脂を溶液重合または塊状重合によって調製するときには、グラフトポリマーは別々に沈殿させなければならない。この目的のためには、既知の方法が使用される。例えば、塩および/または酸を添加した後、沈殿生成物を洗浄し、次いで乾燥させ、さらに所望により生成物を粉末形態から顆粒状形態に変換する。沈殿した生成物または顆粒物の使用可能な混合装置としては、多重ロールミル、混合押出機および密閉式ニーダーが例示される。
【0071】
調製過程、後処理過程、加工過程および最終的な造形過程においては、本発明による成形材料には必要な添加剤または有利な添加剤を添加してもよい。このような添加剤としては、酸化防止剤、UV安定剤、過酸化物分解剤(peroxide destroyer)、帯電防止剤、潤滑剤、離型剤、防炎加工剤、フィラー、強化剤(ガラス繊維、炭素繊維等)および着色剤等が例示される。
【0072】
最終的な造形加工は、市販の加工装置(processing unit)を用いておこなってもよい。このような造形加工には、射出成形による加工、シートの押出加工と所望によるその後の熱間成形または冷間成形、パイプやプロファイル(profile)の押出加工および圧延加工等が例示される。
【0073】
実施例
実施例1〜5
ポリブタジエンラテックス混合物(平均粒径d50が398nmでゲル含有量が83重量%のポリブタジエンラテックス50重量%と平均粒径d50が282nmでゲル含有量が58重量%のポリブタジエンラテックス50重量%の混合物;いずれのラテックスも遊離基重合によって調製したものである)58重量部(固形分換算)を水に加え、固形分が約20重量%の水性混合物を得た。この混合物を59℃まで加熱し、次いで、水に溶解させたK2S2O8 0.5重量部を添加した。得られた混合物へモノマー混合物(スチレン:アクリロニトリルの重量比=73:27)42重量部およびアルカリ性水に溶解させた樹脂酸混合物のナトリウム塩[「ドレシネート(Dresinate)731」;アビエタ・ケミー社(ゲルスト−フェン)製]1.5重量部(固形分換算)を計量して6時間かけて並行して添加した。
【0074】
分子量調整剤としてのt−ドデシルメルカプタン0.12重量部をモノマー混合物と共に、表1に示すモノマー:分子量調整剤の重量比が達成されるようにして計量供給した。
【0075】
反応温度を6時間かけて82℃まで高め、反応をこの温度で4時間おこなった。フェノール系酸化防止剤を約1重量部添加した後、硫酸マグネシウム/酢酸混合物を用いて反応生成物を凝固させ、得られた粉末を70℃で乾燥させた。
【0076】
実施例6〜8
遊離基重合によって調製したポリブタジエンラテックス(平均粒径d50:127nm;ゲル含有量:90重量%)50重量部(固形分換算)を水に加え、固形分が約20重量%の水性混合物を得た。この混合物を59℃まで加熱し、次いで水に溶解させたK2S2O80.5重量部を添加した。モノマー混合物(スチレン:アクリロニトリルの重量比=73:27)50重量部およびアルカリ性水に溶解させた樹脂酸混合物のナトリウム塩[ドレシネート731」(アビエタ・ケミー社(ゲルスト−フェン)製]1.5重量部(固形分換算)を計量し、6時間かけて並行して該混合物へ添加した。
【0077】
分子量調整剤としてのt−ドデシルメルカプタン0.1重量部を計量してモノマー混合物と共に、モノマー:分子量調整剤の重量比が表2に示すようになるようにして供給した。反応温度を6時間かけて82℃まで高め、次いで反応をこの温度において4時間おこなった。フェノール系酸化防止剤約1重量部を添加した後、硫酸マグネシウム/酢酸混合物を用いて反応生成物を凝固させ、凝固物を水洗し、得られた粉末を70℃で乾燥させた。
【0078】
グラフトポリマー粉末の試験
(a)実施例1〜5で得られたグラフトポリマー粉末40重量部、スチレン/アクリロニトリル(72:28)コポリマー樹脂(平均分子量Mw:約115000)60重量部、エチレンジアミンビスステアリルアミド2重量部およびシリコーン油0.1重量部を密閉式ニーダー内において混合し、混合物を加工して試験試料を調製した(表2参照)。
(b)実施例1〜5で得られたグラフトポリマー粉末15重量部および実施例6〜8で得られたグラフトポリマー粉末15重量部をスチレン/アクリロニトリル(72:28)コポリマー樹脂(平均分子量Mw:約85000)70重量部、エチレンジアミンビスステアリルアミド2重量部およびシリコーン油0.1重量部と密閉式ニーダー内において混合し、混合物を加工して試験試料を調製した。
【0079】
得られた試験試料について、以下のデータを測定した:
(i)ISO180/1Aによる室温におけるノッチ付衝撃強さ(ak RT)および−40℃におけるノッチ付衝撃強さ(ak − 40℃)(単位:kJ/m2)
(ii)DIN53735UによるMVR(単位:cm3/10分間)
【0080】
分子量を調整する化合物の完全な取込み(incorpotation)の尺度としての臭気特性に関しては、射出成形直後の成形体の臭気を下記の基準によって評価した。
「++」:知覚できる臭気なし
「+」 :知覚できる臭気はほとんどなし
「0」 :わずかな臭気
「−」 :かなりの臭気
「−−」:強い臭気
【0081】
表3の試験値が示すように、本発明によって調製された弾性−熱可塑性グラフトポリマーは、改良された靱性値と熱可塑的加工性および非常に好ましい臭気特性を有するゴム変性熱可塑性成形材料をもたらす。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
【表3】
(技術分野)
本発明は、分子量を調整する化合物の添加中における特定の反応条件に従う乳化重合によって得られる改良された弾性−熱可塑性グラフトポリマー、該グラフトポリマーに基づく熱可塑性組成物および造形品、並びに弾性−熱可塑性グラフトポリマーの製法に関する。
【0002】
(背景技術)
弾性−熱可塑性グラフトポリマー、例えばビニルモノマーとゴムから得られるグラフトゴム等を乳化重合によって製造することは既知であり、多数の特許文献に記載されている(例えばヨーロッパ特許公報EP−A 154244参照)。
【0003】
グラフトポリマーから調製される熱可塑性成形材料のより好適な加工条件に関連して該グラフトポリマーの特性を改良するために、1種または複数種の分子量を調整する化合物をグラフト重合中に添加することがしばしば行われている。
【0004】
分子量を調整する化合物は、コスト高であることおよびこれらの化合物は常に最適な組込み特性(incorporation property)をもたらすとは限らないという点で不利である。
【0005】
(発明の開示)
(発明が解決しようとする技術的課題)
本発明の目的は、分子量を調整する化合物が、所定量で使用された時に、非常に高い取込み速度において最適な活性を示す熱可塑性成形材料を製造するための弾性−熱可塑性グラフトポリマーを提供することである。
【0006】
(その解決方法)
即ち、本発明は、ビニル基を有する1種または数種のモノマーおよび分子量を調整する少なくとも1種の化合物を少なくとも1種のラテックス形態のゴムの存在下で遊離基重合させることによって得られる弾性−熱可塑性グラフトポリマーにおいて、グラフト重合中にモノマー(M)と分子量を調整する化合物(MWR)との混合物を次の条件を満たすようにしてゴムラテックスへ添加することを特徴とする弾性−熱可塑性グラフトポリマーを提供する:
(i)M:MWRの重量比を第1反応セクション(RS)、第2反応セクションおよび第3反応セクションにおいてそれぞれ50:1〜400:1(好ましくは75:1〜350:1、特に好ましくは100:1〜300:1)、100:1〜800:1(好ましくは150:1〜700:1、特に好ましくは200:1〜600:1)および200:1〜2000:1(好ましくは300:1〜1800:1、特に好ましくは400:1〜1500:1)とし、
(ii)グラフト重合反応の開始時および/または終了時(好ましくはグラフト重合反応の終了時)における少なくとも1つの別の反応セクションにおいて、分子量を調整する化合物を添加せずに、モノマーのみをゴムラテックス中へ添加し、(iii)M:MWRの重量比が下記の関係式を満たすようにする:
M:MWR(第1RS)≦M:MWR(第2RS)<M:MWR(第3RS)。
【0007】
(発明を実施するための最良の形態)
3つの連続的な反応セクションの継続時間(3つの反応セクションにおける全反応時間に対する各反応セクションにおける反応時間の割合)は次の通りである:・第1反応セクション:好ましくは10〜80%、特に好ましくは15〜70%、非常に好ましくは20〜60%、
・第2反応セクション:好ましくは5〜60%、特に好ましくは10〜50%、非常に好ましくは15〜40%、
・第3反応セクション:好ましくは10〜50%、特に好ましくは15〜45%、非常に好ましくは20〜40%。
グラフト重合反応の開始時および/または終了時において分子量を調整する化合物を添加しない反応セクションの継続時間(グラフト重合の全反応時間に対する割合)は好ましくは5〜50%、特に好ましくは10〜45%、非常に好ましくは15〜40%である。
【0008】
従来から知られている弾性−熱可塑性グラフトポリマーに比べて、本発明によるポリマーは、後者に基づく、例えばABS型のゴム変性熱可塑性成形材料が改良された加工性と高い靱性を示す点で区別される。
【0009】
本発明による弾性−熱可塑性グラフトポリマーを製造するために適したゴムは、原則的には0℃よりも低いガラス転移温度を有するエマルション形態の全てのゴム状ポリマーである。
【0010】
使用できるゴムとしては次のものが例示される:
(i)ジエンゴム。即ち、炭素原子数が4〜8の共役ジエン、例えば、ブタジエン、イソプレンまたはクロロプレンのホモポリマーまたは60重量%まで(好ましくは30重量%まで)の以下に例示する好ましいビニルモノマーと該共役ジエンとのコポリマー:アクリロニトリル、メタクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレン、ハロゲノスチレン、C1〜C4−アルキルスチレン、C1〜C8−アルキルアクリレート、C1〜C8−アルキルメタクリレート、アルキレングリコールジアクリレート、アルキレングリコールジメタクリレートおよびジビニルベンゼン。
【0011】
(ii)アクリレートゴム。即ち、C1〜C10−アルキルアクリレートのホモポリマーおよびコポリマー。例えば、以下の好ましいポリマーが挙げられる:エチルアクリレートまたはブチルアクリレートのホモポリマーまたは該アクリレートと40重量%まで(好ましくは10重量%未満)のビニルモノマー(例えば、好ましくはスチレン、アクリロニトリル、ビニルブチルエーテル、アクリル酸(エステル)、メタクリル酸(エステル)、またはビニルスルホン酸等)とのコポリマー。これらのアクリレートゴムであるホモポリマーまたは以下の成分を0.001〜8重量%まで含有するコポリマーは好ましく使用される:ジビニルもしくはポリビニル化合物および/またはN−メチロールアクリルアミドもしくはN−メチロールメタクリルアミドまたは架橋剤として作用する他の化合物(例えば、好ましくはジビニルベンゼンまたはトリアリルシアヌレート)。
【0012】
好ましいゴムはポリブタジエンゴム、30重量%までのスチレンが重合化されたSBRゴムまたはアクリレートゴム、特に、例えば独国特許公報DE−A 3006804に記載のようなコア−セル構造を有するアクリレートゴム、またはこれらのゴムの混合物である。
【0013】
平均粒径(d50)が0.05〜2μm、好ましくは0.08〜1μm、特に好ましくは0.1〜0.5μmのラテックスは、本発明によるグラフトポリマーの調製に使用することができる。使用されるゴム中のゲル含有量は広範囲に変化させてもよく、好ましくは30〜95重量%である(トルエン中でのワイヤー・ケージ法によって測定した値)。この方法に関しては、次の文献を参照されたい:フーベン−ヴェイル、「メトーデン・デア・オーガニッシェン・ケミー;マクロモレキュラーレ・シュトッフ」パート1、第307頁(1961年)、ティーメ・フェアラーク、シュツッガルト。
【0014】
下記の粒径とゲル含有量を有するゴムラテックス(a)および(b)を有するゴムラテックス混合物は特に好ましい:
(a)平均粒径(d50):320nm以下、好ましくは260〜310nm
ゲル含有量:70重量%以下、好ましくは40〜65重量%
(b)平均粒径(d50):370nm以上、好ましくは380〜450nm
ゲル含有量:70重量%以上、好ましくは75〜90重量%
【0015】
好ましくは、ゴムラテックス(a)の粒径分布は30〜100nm(特に好ましくは40〜80nm)であり、ゴムラテックス(b)の粒径分布は50〜500nm(特に好ましくは100〜400nm)である(いずれの場合も、積分粒径分布からd90〜d10値として測定した値である)。
【0016】
混合物はゴムラテックス(a)および(b)を90:10〜10:90の重量比、特に好ましくは60:40〜30:70の重量比で含有するのが好ましい(いずれの場合も、ラテックスの特定の固形分含有量に基づくものである)。
【0017】
平均粒径は超遠心分離法によって測定される。これについては次の文献を参照されたい:W.ショルタン、H.ランゲ、「コロイド−Z.u.Z.ポリマー」、第250巻、第782〜796頁(1972年)。
【0018】
使用するゴムラテックスは乳化重合によって調製することができ、これに必要な反応条件、助剤および処理法は原則的には既知である。
【0019】
最初に微細に分割されたゴムポリマーを既知の方法によって調製した後、該ゴムポリマーを既知の方法によって必要な粒径が得られるように凝集させることも可能である。これに関連する技術は次の特許文献に記載されているので参照されたい:EP−A 0029613、EP−A 0007810、DE−A 144415、DE−A 1233131、DE−A 1258076、DE−A 2101650およびUS−A 1379391。
【0020】
所謂「播種重合法」も使用することができる。例えば、最初に微細に分割されたブタジエンポリマーを調製し、次いで、該ポリマーにブタジエン含有モノマーを反応させることによってより大きな粒径を有するポリマーを得てもよい。
【0021】
使用できる乳化剤は常套のアニオン性乳化剤、例えば、アルキルスルフェート、アルキルスルホネート、アラルキルスルホネート、飽和もしくは不飽和脂肪酸(例えば、オレイン酸またはステアリン酸)の石けんまたはアルカリ性の不均化もしくは水素化アビエチン酸もしくはタル油酸の石けん等であるが、カルボキシル基を有する乳化剤(例えば、C10〜C18−脂肪酸もしくは不均化アビエチン酸の塩類またはDE−A 3639904およびDE−A 3913509に記載されている乳化剤等)が好ましく使用される。
【0022】
ゴムポリマーラテックスは原則的には、最終的なゴムポリマーの水性媒体中での乳化によっても調製することができる。これに関しては日本国特許公報JP−A 55−125102を参照されたい。
【0023】
エマルション形態で存在するゴム状ポリマーの存在下で重合する適当なグラフトモノマーとしては、実用上はエマルション中で重合して熱可塑性樹脂をもたらす全ての化合物が該当し、例えば、下記の一般式(I)で表されるビニル芳香族化合物、一般式(II)で表される化合物またはこれらの混合物が挙げられる:
【0024】
【化1】
【化2】
【0025】
上記の一般式における符号等の意義は次の通りである。
R1:水素原子またはメチル、
R2:オルト位、メタ位もしくはパラ位の水素原子、ハロゲン原子、または炭素原子数1〜4のアルキル基、
R3:水素原子またはメチル、
X:CN、R4OOC(式中、R4は水素原子または炭素原子数が1〜4のアルキルを示す)またはR5R6NOC(式中、R5およびR6は相互に独立して水素原子、フェニルまたは炭素原子数が1〜4のアルキルを示す)。
【0026】
式(I)で表される化合物としてはスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンおよびビニルトルエン等が例示される。式(II)で表される化合物としてはアクリロニトリルおよびメチルメタクリレートが挙げられる。原則的に適当なその他の好ましいモノマーとしては、酢酸ビニルおよびN−フェニルマレイミドが例示される。
【0027】
好ましいモノマーはスチレンとアクリロニトリルとの混合物、α−メチルスチレンとアクリロニトリルとの混合物、スチレンとアクリロニトリルとメチルメタクリレートとの混合物、およびこれらの3種のモノマーとN−フェニルマレイミドとの混合物である。
【0028】
本発明による好ましいグラフトポリマーは、スチレンとアクリロニトリルを90:10〜50:50、好ましくは80:20〜65:35(この場合、スチレンの全部または一部はα−メチルスチレンまたはメチルメタクリレートで置換えることができる)の重量比で、ゴム(好ましくは、ポリブタジエン)の存在下においてグラフト重合させることによって得られるグラフトポリマーである。この場合、ゴムの量は、グラフトポリマー中のゴム含有量が30〜80重量%、好ましくは35〜75重量%、特に好ましくは35〜70重量%になるように調整する。
【0029】
使用可能な開始剤は無機および有機の過酸化物(例えば好ましいものとしては、H2O2、ジ−t−ブチルパーオキジド、クメンヒドロパーオキシド、ジシクロヘキシルパーカーボネート、p−メンタンヒドロパーオキシドおよびt−ブチルヒドロパーオキシド等が挙げられる)、アゾ開始剤(例えば好ましいものとしてはアゾビスイソブチロニトリルが挙げられる)、有機過酸塩(例えばカリウムパーオキソジスルフィド、ナトリウムパーオキソジスルフェート、アンモニウムパーオキソジスルフェート、カリウムパーホスフェートおよびナトリウムパーボーレート等)、および一般的な有機の酸化剤と還元剤から成るレドックス系等である。この場合、重金属イオンを反応媒体中にさらに存在させてもよい。これらの点に関しては次の文献を参照されたい:H.ローゲマン、フーベン−ヴェイル、「メトーデン・デア・オーガニッシェン・ケミー」、第14/1巻、第263〜397頁。
【0030】
好ましい開始剤はカリウムパーオキソジスルフェート、ナトリウムパーオキソジスルフェート、アンモニウムパーオキソジスルフェートもしくはこれらの混合物、並びにクメンヒドロパーオキシド、p−メンタンヒドロパーオキシド、t−ブチルヒドロパーオキシドまたはこれらの混合物である。
【0031】
本発明において使用してもよい還元剤は、好ましくは還元作用を有する水溶性化合物であり、下記の化合物群から選択するのが好ましい:スルフィン酸の塩、亜硫酸の塩、ジチオン酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、次亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、アスコルビン酸とその塩類、ロンガリットC(ナトリウムホルムアルデヒド−スルホキシレート)、モノ−およびジ−ヒドロキシアセトンおよび糖類(例えば、グルコースまたはデキストロース)。原則的には例えば、鉄(II)塩(例えば硫酸鉄(II))、スズ(II)塩(例えば塩化スズ(II))、チタン(III)塩(例えば硫酸チタン(III))等も使用可能であるが、この種の金属塩は使用しないのが好ましい。
【0032】
特に好ましい還元剤はデキストロース、アスコルビン酸およびその塩またはナトリウムホルムアルデヒド−スルホキシレート(ロンガリットC)である。
【0033】
本発明によるグラフトポリマーの調製における反応温度は広範囲に変化させてもよいが、一般的には25〜160℃、好ましくは40〜90℃、特に好ましくは50〜85℃である。グラフト重合は、反応開始温度と反応終了温度との温度差が少なくとも10℃、特に好ましくは少なくとも15℃、非常に好ましくは少なくとも20℃になるようにしておこなう。
【0034】
本発明による弾性−熱可塑性グラフトポリマーの調製においては、グラフトモノマーと共に、該グラフトモノマー100重量部あたり0.01〜1.00重量部、好ましくは0.03〜0.8重量部、特に好ましくは0.06〜0.5重量部の1種もしくは複数種のメルカプタン類が添加される。
【0035】
適当なメルカプタン類としては脂肪族メルカプタン(例えばエチル−、n−プロピル−、n−ブチル−、t−ブチル−、n−ペンチル−、n−ヘキシル−、n−オクチル−、n−デシル−、n−ドデシル−、t−ドデシル−、n−ヘキサデシル−、およびn−オクタデシル−メルカプタン等)および芳香族メルカプタン(例えばチオフェノール等)等が例示される。好ましいメルカプタンはt−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタンおよびこれらの混合物である。
【0036】
分子量を調整する他の物質、例えば、二量化α−メチルスチレンまたはテルピノール等も原則的には使用可能である。その使用量は、グラフトモノマー100重量部あたり0.5〜5重量部、好ましくは1〜3重量部である。
【0037】
本発明によって改良された特性を有する弾性−熱可塑性グラフトポリマーを調製するためには、グラフト重合反応中において、モノマー(M)と分子量を調整する化合物(MWR)との混合物を次の条件を満たすようにしてゴムラテックスへ添加しなければならない:
(i)M:MWRの重量比を第1反応セクション(RS)、第2反応セクションおよび第3反応セクションにおいてそれぞれ50:1〜400:1(好ましくは75:1〜350:1、特に好ましくは100:1〜300:1)、100:1〜800:1(好ましくは150:1〜700:1、特に好ましくは200:1〜600:1)および200:1〜2000:1(好ましくは300:1〜1800:1、特に好ましくは400:1〜1500:1)とし、
(ii)グラフト重合反応の開始時および/または終了時(好ましくはグラフト重合反応の終了時)における少なくとも1つの別の反応セクションにおいて、分子量を調整する化合物を添加せずに、モノマーのみをゴムラテックス中へ添加し、(iii)M:MWRの重量比が下記の関係式を満たすようにする:
M:MWR(第1RS)≦M:MWR(第2RS)<M:MWR(第3RS)。
【0038】
本発明は分子量を調整する硫黄含有化合物(好ましくはメルカプタン類)を上記の反応条件を満たすようにして使用することによって得られるグラフトポリマーであって、組み込まれた硫黄を不均一に含有する弾性−熱可塑性グラフトポリマーも供給する。硫黄の不均一な組み込みは、例えば、弾性−熱可塑性グラフトポリマーまたは可溶性の非グラフト化ポリマーの分別沈殿および個々のフラクション中の硫黄含有量の分析的決定法によって確認される。この点に関しては次の文献を参照されたい:M.ホフマン、H.クレマー、R.クーン、「ポリマーアナリティックI」第147〜168頁(1977年)、ティーメ・フェアラーク、スツッツガルト。
【0039】
グラフト重合反応においても、乳化剤として前述の化合物を使用することができる。
【0040】
本発明による弾性−熱可塑性グラフトポリマーのゴム含有量は好ましくは30〜80重量%、特に好ましくは35〜75重量%である。
【0041】
ゴムで変性された熱可塑性成形材料を製造するためには、本発明によるグラフトポリマーを、常套の後処理(例えば、塩および/または酸を用いる凝固処理、洗浄処理および乾燥処理もしくは噴霧乾燥)に付した後、少なくとも1種のゴム不含(rubber−free)マトリックス樹脂と混合させる。
【0042】
好ましく使用されるゴム不含コポリマーはスチレンとアクリロニトリルを95:5〜50:50の重量比で含むコポリマーである。この場合、スチレンおよび/またはアクリロニトリルの全部または一部はα−メチルスチレン、メチルメタクリレートまたはN−フェニルマレイミドで置換えられてもよい。
組み込まれたアクリロニトリルユニットが30重量%未満のコポリマーが特に好ましい。
【0043】
これらのコポリマーは、20000〜200000の平均分子量(Mw)(例えば、ゲル透過クロマトグラフィー等による測定値)または20〜110ml/g極限粘度[η](ジメチルホルムアミド中における25℃での測定値)を有するのが好ましい。
【0044】
これらの樹脂の調製に関する詳細は、例えばDE−AS2420358およびDE−AS2724360等の特許文献に記載されている。塊状重合または溶液重合によって調製されるビニル樹脂は特に適当であることが判明した。コポリマーはそれ自体で添加してもよく、あるいは所望の混合物として添加してもよい。
【0045】
本発明による成形材料に配合するゴム不含コポリマーとしては、ビニルモノマーから形成される熱可塑性樹脂のほかに、重縮合物、例えば、芳香族ポリカーボネート、芳香族ポリエステル−カーボネート、ポリエステルまたはポリアミド等も使用可能である。
【0046】
適当な熱可塑性ポリカーボネートおよびポリエステルカーボネートは既知であり(例えば、DE−AS 1495626、DE−A 2232879、DE−A 2703376、DE−A 2714544、DE−A 3000610、DE−A 3832396およびDE−A 3077934等参照)、この種のポリマーは、例えば下記の一般式(III)および(IV)で表されるジフェノール類を炭酸ハライド(好ましくはホスゲン)および/または芳香族ジカルボン酸ジハライド(好ましくはベンゼンジカルボン酸ジハライド)と相間重縮合反応させるか、あるいは該ジフェノール類とホスゲンを均一相中で重縮合反応(いわゆる「ピリジン法」)させることによって調製することができる。この場合、相当する量の既知の連鎖停止剤を用いて既知の方法によって分子量を調整してもよい。
【0047】
【化3】
【化4】
【0048】
上記の一般式における文字と符号の意義は以下の通りである。Aは単結合、C1〜C5−アルキレン、C2〜C5−アルキリデン、C5〜C6−シクロアルキリデン、−O−、−S−、−SO−、−SO2または−CO−、
R5およびR6は相互に独立して水素原子、メチルまたはハロゲン原子(特に、水素原子、メチル、塩素原子または臭素原子)を示す。
R1およびR2は相互に独立して水素原子、ハロゲン原子(好ましくは、塩素原子または臭素原子)、C1〜C8−アルキル(好ましくはメチルまたはエチル)、C5〜C6−シクロアルキル(好ましくはシクロヘキシル)、C6〜C10−アリール(好ましくはフェニル)またはC7〜C12−アラルキル(好ましくはフェニル−C1〜C4−アルキル、特にベンジル)を示す。
mは4〜7の整数(好ましくは4または5)を示す。
nは0または1を示す。
R3およびR4は各々のXに対して個々に選択され、相互に独立して水素原子またはC1〜C6−アルキルを示す。
Xは炭素原子を示す。
【0049】
式(III)および(IV)で表される適当なジフェノールとしては下記のものが例示される:ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)−プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)−プロパン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルシクロヘキサン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5,5−テトラメチルシクロヘキサンおよび1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−2,4,4−トリメチルシクロペンタン。
【0050】
式(III)で表される好ましいジフェノールは2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンおよび1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサンであり、また、式(IV)で表される好ましいフェノールは1,1−ビス−4(−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンである。
ジフェノールの混合物を使用することもできる。
【0051】
適当な連鎖停止剤としては、次のものが例示される:フェノール、p−t−ブチルフェノール、長鎖アルキルフェノール、例えば4−(1,3−テトラメチル−ブチル)フェノール(DE−OS 2842005参照)、アルキル置換基中の全炭素原子数が8〜20であるモルアルキルフェノールおよびジアルキルフェノール(DE−OS 3506472参照)、例えばp−ノニルフェノール、2,5−ジ−t−ブチルフェノール、p−t−オクチルフェノール、p−ドデシルフェノール、2−(3,5−ジメチルヘプチル)−フェノールおよび4−(3,5−ジメチルヘプチル)−フェノール。連鎖停止剤の必要量は、一般に、ジフェノール(III)および(IV)の合計量に基づいて0.5〜10mol%である。
【0052】
適当なポリカーボネートまたはポリエステル−カーボネートは線状または分枝状であってもよい。分枝状生成物は、使用するジフェノールの合計量に基づいて0.05〜2.0mol%の3官能性またはより高位の官能性化合物(例えば、3個もしくは3個よりも多くのフェノール性OH基を有する化合物)を組込むことによって調製するのが好ましい。
適当なポリカーボネートまたはポリエステルカーボネートは芳香族核に結合したハロゲン原子(好ましくは臭素原子および/または塩素原子)を有していてもよいが、ハロゲン原子を含んでいないのが好ましい。
これらの化合物の重量平均分子量(Mw)は10000〜200000(好ましくは20000〜80000)である(該平均分子量は超遠心分離法または散乱光測定法によって測定した値である)。
【0053】
適当な熱可塑性ポリエステルは、好ましくはポリアルキレンテレフタレート、即ち、芳香族ジカルボン酸またはこれらの反応性誘導体(例えば、ジメチルエステルまたは無水物)と脂肪族ジオール、脂環式ジオールまたはアリールアリファティック(aryaliphatic)ジオールとの反応生成物、およびこのような反応生成物の混合物である。
【0054】
好ましいポリアルキレンテレフタレートは既知の方法に従って、テレフタル酸(またはその反応性誘導体)と炭素原子数2〜10の脂肪族または脂環式ジオールから調製することができる。これに関しては次の文献を参照されたい:クンストストッフ−ハンドブーフ」、第VIII巻、第695頁〜第696頁、カール・ハンザー・フェアラーク、ミュンヘン、1973年。
【0055】
好ましいポリアルキレンテレフタレートにおいては、ジカルボン酸残基の80〜100mol%(好ましくは90〜100mol%)はテレフタル酸残基であり、ジオール残基の80〜100mol%(好ましくは90〜100mol%)はエチレングリコールおよび/またはブタン−1,4−ジオール残基である。
【0056】
好ましいポリアルキレンテレフタレートは、エチレングリコール残基またはブタン−1,4−ジオール残基のほかに、炭素原子数3〜12の他の脂肪族ジオールまたは炭素原子数6〜12の脂環式ジオールの残基、例えば下記のジオール類の残基を0〜20mol%含んでいてもよい:プロパン−1,3−ジオール、2−エチルプロパン−1,3−ジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタン−1,5−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、3−メチルペンタン−1,3−ジオール、3−メチルペンタン−1,6−ジオール、2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、2,2−ジエチルプロパン−1,3−ジオール、ヘキサン−2,5−ジオール、1,4−ジ(β−ヒドロキシエトキシ)−ベンゼン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−プロパン、2,4−ジヒドロキシ−1,1,3,3−テトラメチル−シクロブタン、2,2−ビス−(3−β−ヒドロキシエトキシフェニル)−プロパンおよび2,2−ビス−(4−ヒドロキシプロポキシフェニル)−プロパン(DE−OS 2407647、DE−OS 2407776およびDE−OS 2715932参照)。
【0057】
ポリアルキレンテレフタレートは、比較的少量の3価もしくは4価アルコールまたは3塩基性もしくは4塩基性カルボン酸、例えばDE−A 1900270およびUS−A3692744に記載の化合物を組込むことによって分枝化してもよい。好ましい分枝化剤はトリメシン酸、トリメリット酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンおよびペンタエリスリトールである。酸成分に基づいて1mol%を越えない量の分枝化剤を使用するのが望ましい。
【0058】
テレフタル酸およびその反応性誘導体(例えば、該酸のジアルキルエステル)とエチレングリコールおよび/またはブタン−1,4−ジオールのみから調製されるポリアルキレンテレフタレートおよびこれらのポリアルキレンテレフタレートの混合物は特に好ましい。
【0059】
少なくとも2種の上記のアルコール成分から調製されるコポリエステルも好ましいポリアルキレンテレフタレートであり、特に好ましいコポリエステルはポリ−(エチレングリコール/ブタン−1,4−ジオール)テレフタレートである。一般に、ポリアルキレンテレフタレートは0.4〜1.5dl/g、好ましくは0.5〜1.3dl/g、特に0.6〜1.2dl/gの固有粘度を有する[該粘度はフェノール/o−ジクロロベンゼン(1:1重量部)中において25℃で測定した値である。]。
【0060】
適当なポリアミドは既知のホモポリアミド、コポリアミドおよびこれらのポリアミドの混合物である。これらのポリアミドは部分的結晶性および/または無定形のポリアミドであってもよい。
【0061】
適当な部分的結晶性ポリアミドはポリアミド6、ポリアミド6,6並びにこれらの成分の混合物およびコポリマーである。部分的結晶性ポリアミドであって、酸成分の全部または一部がテレフタル酸および/またはイソフタル酸および/またはスベリン酸および/またはセバシン酸および/またはアゼライン酸および/またはアジピン酸および/またはシクロヘキサンジカルボン酸から成り、ジアミン成分の全部または一部がm−および/またはp−キシレンジアミンおよび/またはヘキサメチレンジアミンおよび/または2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンおよび/または2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンおよび/またはイソホロンジアミンから成り、これらの成分の組成が原則的に既知である部分的結晶性ポリアミドも使用可能である。
【0062】
環の炭素原子数が7〜12のラクタムおよび所望による上記の1種もしくは複数種の出発成分から全部または一部が形成されるポリアミドも使用可能である。
【0063】
特に好ましい部分的結晶性ポリアミドはポリアミド6、ポリアミド6,6およびこれらの混合物である。無定形ポリアミドとしては既知のポリアミドを使用することができる。このようなポリアミドはジアミン(例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、2,2,4−および/または2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、m−および/またはp−キシレンジアミン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)−メタン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)−プロパン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノ−ジシクロヘキシルメタン、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン、2,5−および/または2,6−ビス−(アミノメチル)−ノルボルナンおよび/または1,4−ジアミノメチルシクロヘキサン)とジカルボン酸(例えば、シュウ酸、アジピン酸、アゼライン酸、デカンジカルボン酸、ヘプタデカンジカルボン酸、2,2,4−および/または2,4,4−トリメチルアジピン酸、イソフタル酸およびテレフタル酸)との重縮合反応によって得られる。
【0064】
数種類のモノマーの重縮合反応によって得られるコポリマーも適当であり、また、アミノカルボン酸(例えば、ε−アミノカプロン酸、ω−アミノウンデカン酸もしくはω−アミノラウリン酸またはこれらのラクタム類)の付加によって調製されるコポリマーも適当である。
【0065】
特に好ましい無定形ポリアミドは、(i)イソフタル酸、ヘキサメチレンジアミン並びにその他のジアミン(例えば、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、イソホロンジアミン、2,2,4−および/または2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンもしくは2,5−および/または2,6−ビス−(アミノメチル)−ノルボルネン)から調製されるポリアミド、(ii)イソフタル酸、4,4’−ジアミノ−ジシクロヘキシルメタンおよびε−カプロラクタムから調製されるポリアミド、(iii)イソフタル酸、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノ−ジシクロヘキシルメタンおよびラウリルラクタムから調製されるポリアミド、および(iv)テレフタル酸と2,2,4−および2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンの異性体混合物から調製されるポリアミドである。
【0066】
純粋な4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンの代りに、ジアミノジシクロヘキシルメタンの位置異性体混合物(4,4’−ジアミノ異性体70〜99mol%、2,4’−ジアミノ異性体1〜30mol%および2,2’−ジアミノ異性体0〜2mol%)および所望によるジアミン(工業用純度のジアミノジフェニルメタンの水素化によって得られる相当する高位の縮合度を有するジアミン)を使用することもできる。イソフタル酸の30%まではテレフタル酸で置き換えることができる。
【0067】
ポリアミドは2.0〜5.0(特に好ましくは2.5〜4.0)の相対粘度(m−クレゾールを溶媒とする1重量%溶液について25℃で測定した値)を有するのが好ましい。組成物は本発明によるグラフトポリマー以外のポリマーをさらに含有していてもよい。
【0068】
本発明によるグラフトポリマーの使用量は、それぞれの全組成物に基づいて1〜80重量%、好ましくは5〜50重量%である。
【0069】
成形材料を調製するためには、本発明による弾性−熱可塑性グラフトポリマーはマトリックス樹脂と種々の方法で混合することができる。マトリックス樹脂を乳化重合によって調製するときには、ラテックスを混合して一緒に沈殿させることができ、あるいは別々に沈殿させて得られる固体状物質を混合させることもできる。
【0070】
マトリックス樹脂を溶液重合または塊状重合によって調製するときには、グラフトポリマーは別々に沈殿させなければならない。この目的のためには、既知の方法が使用される。例えば、塩および/または酸を添加した後、沈殿生成物を洗浄し、次いで乾燥させ、さらに所望により生成物を粉末形態から顆粒状形態に変換する。沈殿した生成物または顆粒物の使用可能な混合装置としては、多重ロールミル、混合押出機および密閉式ニーダーが例示される。
【0071】
調製過程、後処理過程、加工過程および最終的な造形過程においては、本発明による成形材料には必要な添加剤または有利な添加剤を添加してもよい。このような添加剤としては、酸化防止剤、UV安定剤、過酸化物分解剤(peroxide destroyer)、帯電防止剤、潤滑剤、離型剤、防炎加工剤、フィラー、強化剤(ガラス繊維、炭素繊維等)および着色剤等が例示される。
【0072】
最終的な造形加工は、市販の加工装置(processing unit)を用いておこなってもよい。このような造形加工には、射出成形による加工、シートの押出加工と所望によるその後の熱間成形または冷間成形、パイプやプロファイル(profile)の押出加工および圧延加工等が例示される。
【0073】
実施例
実施例1〜5
ポリブタジエンラテックス混合物(平均粒径d50が398nmでゲル含有量が83重量%のポリブタジエンラテックス50重量%と平均粒径d50が282nmでゲル含有量が58重量%のポリブタジエンラテックス50重量%の混合物;いずれのラテックスも遊離基重合によって調製したものである)58重量部(固形分換算)を水に加え、固形分が約20重量%の水性混合物を得た。この混合物を59℃まで加熱し、次いで、水に溶解させたK2S2O8 0.5重量部を添加した。得られた混合物へモノマー混合物(スチレン:アクリロニトリルの重量比=73:27)42重量部およびアルカリ性水に溶解させた樹脂酸混合物のナトリウム塩[「ドレシネート(Dresinate)731」;アビエタ・ケミー社(ゲルスト−フェン)製]1.5重量部(固形分換算)を計量して6時間かけて並行して添加した。
【0074】
分子量調整剤としてのt−ドデシルメルカプタン0.12重量部をモノマー混合物と共に、表1に示すモノマー:分子量調整剤の重量比が達成されるようにして計量供給した。
【0075】
反応温度を6時間かけて82℃まで高め、反応をこの温度で4時間おこなった。フェノール系酸化防止剤を約1重量部添加した後、硫酸マグネシウム/酢酸混合物を用いて反応生成物を凝固させ、得られた粉末を70℃で乾燥させた。
【0076】
実施例6〜8
遊離基重合によって調製したポリブタジエンラテックス(平均粒径d50:127nm;ゲル含有量:90重量%)50重量部(固形分換算)を水に加え、固形分が約20重量%の水性混合物を得た。この混合物を59℃まで加熱し、次いで水に溶解させたK2S2O80.5重量部を添加した。モノマー混合物(スチレン:アクリロニトリルの重量比=73:27)50重量部およびアルカリ性水に溶解させた樹脂酸混合物のナトリウム塩[ドレシネート731」(アビエタ・ケミー社(ゲルスト−フェン)製]1.5重量部(固形分換算)を計量し、6時間かけて並行して該混合物へ添加した。
【0077】
分子量調整剤としてのt−ドデシルメルカプタン0.1重量部を計量してモノマー混合物と共に、モノマー:分子量調整剤の重量比が表2に示すようになるようにして供給した。反応温度を6時間かけて82℃まで高め、次いで反応をこの温度において4時間おこなった。フェノール系酸化防止剤約1重量部を添加した後、硫酸マグネシウム/酢酸混合物を用いて反応生成物を凝固させ、凝固物を水洗し、得られた粉末を70℃で乾燥させた。
【0078】
グラフトポリマー粉末の試験
(a)実施例1〜5で得られたグラフトポリマー粉末40重量部、スチレン/アクリロニトリル(72:28)コポリマー樹脂(平均分子量Mw:約115000)60重量部、エチレンジアミンビスステアリルアミド2重量部およびシリコーン油0.1重量部を密閉式ニーダー内において混合し、混合物を加工して試験試料を調製した(表2参照)。
(b)実施例1〜5で得られたグラフトポリマー粉末15重量部および実施例6〜8で得られたグラフトポリマー粉末15重量部をスチレン/アクリロニトリル(72:28)コポリマー樹脂(平均分子量Mw:約85000)70重量部、エチレンジアミンビスステアリルアミド2重量部およびシリコーン油0.1重量部と密閉式ニーダー内において混合し、混合物を加工して試験試料を調製した。
【0079】
得られた試験試料について、以下のデータを測定した:
(i)ISO180/1Aによる室温におけるノッチ付衝撃強さ(ak RT)および−40℃におけるノッチ付衝撃強さ(ak − 40℃)(単位:kJ/m2)
(ii)DIN53735UによるMVR(単位:cm3/10分間)
【0080】
分子量を調整する化合物の完全な取込み(incorpotation)の尺度としての臭気特性に関しては、射出成形直後の成形体の臭気を下記の基準によって評価した。
「++」:知覚できる臭気なし
「+」 :知覚できる臭気はほとんどなし
「0」 :わずかな臭気
「−」 :かなりの臭気
「−−」:強い臭気
【0081】
表3の試験値が示すように、本発明によって調製された弾性−熱可塑性グラフトポリマーは、改良された靱性値と熱可塑的加工性および非常に好ましい臭気特性を有するゴム変性熱可塑性成形材料をもたらす。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
【表3】
Claims (12)
- ビニル基を有する1種または複数種のモノマーおよび分子量を調整する少なくとも1種の化合物を少なくとも1種のラテックス形態のゴムの存在下で遊離基重合させることによって得られる弾性−熱可塑性グラフトポリマーにおいて、グラフト重合中にモノマー(M)と分子量を調整する化合物(MWR)との混合物を次の条件を満たすようにしてゴムラテックスへ添加することを特徴とする弾性−熱可塑性グラフトポリマー:
(i)M:MWRの重量比を第1反応セクション(RS)、第2反応セクションおよび第3反応セクションにおいてそれぞれ50:1〜400:1、100:1〜800:1および200:1〜2000:1とし、
(ii)グラフト重合の終了時における少なくとも1つの別の反応セクションにおいて、分子量を調整する化合物を添加せずに、モノマーのみをゴムラテックス中へ添加し、
(iii)M:MWRの重量比が下記の関係式を満たすようにする:
M:MWR(第1RS)≦M:MWR(第2RS)<M:MWR(第3RS)。 - (i)M:MWRの重量比を第1RS、第2RSおよび第3RSにおいてそれぞれ100:1〜300:1、200:1〜600:1および400:1〜1500:1とし、(ii)グラフト重合反応の開始時および/または終了時における別の反応セクションにおいて、分子量を調整する化合物を添加せずに、モノマーのみをゴムラテックスへ添加し、(iii)M:MWRの重量比が下記の関係式を満たすようにする請求項1記載の弾性−熱可塑性グラフトポリマー:
M:MWR(第1RS)≦M:MWR(第2RS)<M:MWR(第3RS)。 - 分子量を調整する含硫黄化合物を使用する請求項1記載の弾性−熱可塑性グラフトポリマー。
- ビニル基を有する1種または複数種のモノマーおよび分子量を調整する少なくとも1種の化合物を少なくとも1種のラテックス形態のゴムの存在下で反応させることによる弾性−熱可塑性グラフトポリマーの製法であって、グラフト重合反応中にモノマー(M)と分子量を調整する化合物(MWR)との混合物を次の条件が満たされるようにしてゴムラテックスへ添加することを特徴とする弾性−熱可塑性グラフトポリマーの製法:
(i)M:MWRの重量比を第1反応セクション(RS)、第2反応セクションおよび第3反応セクションにおいてそれぞれ50:1〜400:1、100:1〜800:1および200:1〜2000:1とし、
(ii)グラフト重合の終了時における少なくとも1つの別の反応セクションにおいて、分子量を調整する化合物を添加せずに、モノマーのみをゴムラテックス中へ添加し、
(iii)M:MWRの重量比が下記の関係式を満たすようにする:
M:MWR(第1RS)≦M:MWR(第2RS)<M:MWR(第3RS)。 - (i)M:MWRの重量比を第1RS、第2RSおよび第3RSにおいてそれぞれ100:1〜300:1、200:1〜600:1および400:1〜1500:1とし、(ii)グラフト重合反応の開始時および/または終了時における別の反応セクションにおいて、分子量を調整する化合物を添加せずに、モノマーのみをゴムラテックスへ添加し、(iii)M:MWRの重量比が下記の関係式を満たすようにする請求項4記載の方法:
M:MWR(第1RS)≦M:MWR(第2RS)<M:MWR(第3RS)。 - 分子量を調整する化合物が硫黄を含有する請求項1〜5いずれかに記載のプロセス。
- 請求項1〜6いずれかに記載の弾性−熱可塑性グラフトポリマーを少なくとも1種含有する組成物。
- 少なくとも1種のスチレンとアクリロニトリルとのコポリマーを含有し、スチレンおよび/またはアクリロニトリルの全部または一部がα−メチルスチレン、メチルメタクリレートまたはN−フェニルマレイミドで置換えられていてもよい請求項7記載の組成物。
- 熱可塑性ポリカーボネート、熱可塑性ポリエステル−カーボネート、熱可塑性ポリエステル、熱可塑性ポリアミドおよびこれらの混合物から選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含有する請求項7または8記載の組成物。
- 請求項1〜6いずれかに記載のグラフトポリマーを1〜80重量%含有する請求項7〜9いずれかに記載の組成物。
- 請求項1〜10いずれかに記載の組成物の造形品の製造のための使用。
- 請求項1〜11いずれかに記載の組成物から得られる造形体。
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