JP2004502427A - 異常アルツハイマー病病理と関連する新規app突然変異 - Google Patents
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Abstract
本発明は、アルツハイマー病(AD)の分野に属する。特に、本発明は、非常に攻撃的な形態のADをもたらす、アミロイド前駆体タンパク(APP)に同定された新規な突然変異(T714I)、APP714を提供する。この突然変異は、推定γ42セクレターゼ切断部位に相当するアミロイドβペプチド(Aβ)の43番目のコドンに関与する。この新規な突然変異は、Aβ40及びAβ42の両方の分泌を変更し、インビトロでAβ42/Aβ40比を10倍上昇させる。さらに、これらの患者の脳における主要なアミロイド斑病理学は、主にN短縮型Aβ42から構成された拡散「プレアミロイド」タイプのものである。密にコア形成した斑は、欠如はしていないが、有意に低減していた。また、Aβ40が主に沈着する脳内の通常の部位、例えば脳アミロイド血管障害(CAA)又は老人斑コアの血管内は、完全にAβ42形態から構成されていた。一緒にすると、これらは、脳内に最も早く沈着するアミロイドのひとつにおけるN短縮型Aβ42の沈着、すなわち拡散斑は、充分に確立された「アミロイドカスケード」を通じて又は未だ未知のメカニズムによって、充分にADを引き起こすことができることを示す。
Description
【0001】
発明の分野
本発明は、アルツハイマー病(AD)の分野に関する。特に、本発明は、アミロイド前駆体タンパク(APP)であるAPP714中に同定され、非常に悪性の形態のADをもたらす新規突然変異(T714I)を提供する。この突然変異は、推定γ42−セクレターゼ切断部位に相当するアミロイドβペプチド(Aβ)の43番目のコドンに関与する。この新規な突然変異は、Aβ40及びAβ42分泌の両方を変更し、インビトロでAβ42/Aβ40比を10倍上昇させる。さらに、これらの患者の脳における主要アミロイド斑病理は、主にN−短縮型Aβ42から構成される拡散「プレアミロイド」タイプのものである。密にコアを形成した(dense−cored)斑は、存在しないわけではないが、有意に低減している。また、Aβ42が優勢に沈着する脳内の通常の部位、例えば脳アミロイド血管障害(CAA)又は老人斑コアとしての血管内においては、完全にAβ42形態から構成されていた。一緒にすると、これらは、脳内の最も早く沈着するアミロイドのひとつにおけるN短縮型Aβ42の沈着(拡散斑)が、よく確立された「アミロイドカスケード」を通じて又は未だ未知のメカニズムによって、ADを引き起こすのに充分な能力があることを示す。
【0002】
発明の背景
アルツハイマー病(AD)は、脳内の細胞内神経原線維濃縮体及び細胞外アミロイド沈着の形成によって組織学的に定義される進行性の神経変性障害である。アミロイドβタンパク(Aβ)がADの発症において果たす役割に対して、特別の注意が向けられていた。実際、ADの皮質及び脳血管アミロイド沈着の主要タンパク成分は、Aβである1−3。蓄積する証拠が、アミロイド前駆体タンパク(APP)1−3からのAβ産生、原線維へのその凝集及びその沈着がADにおいて鍵となる原因学的事象であることを示唆している4。これらの重要な工程の理解は、治療標的を決定することにおいて重要である。少なくとも5つの別個のAPPアイソフォームが存在し、それぞれ、563、695、714、751及び770アミノ酸である(Wirakら(1991) Science 253:323)。これらのAPPのアイソフォームは、ヒト第21番染色体に位置するAPP遺伝子の一次転写物の選択的スプライシングによって生成される。
【0003】
APPタンパクは、βセクレターゼ(BACE)5及び未だ未同定のαセクレターゼによってプロセッシングされ、可溶性APP(APPS α及びAPPS β)及び膜結合C末端フラグメントがもたらされる(α及びβCTFs;総説については参考文献を参照のこと6)。β及び1又は多数のγ−セクレターゼ(γ40及びγ42)による切断は、40〜42アミノ酸のAβペプチド(Aβ1−40及びAβ1−42)を放出する一方、主要分泌経路は、Aβのアミノ酸16及び17の間でAβ配列を切断するαセクレターゼを利用する。γ40又はγ42セクレターゼによるαCTFsのさらなるプロセッシングは、N末端切断型Aβ17−40又はAβ17−42ペプチド(p3)を放出する。Aβ17− Xに加えて、βセクレターゼの活性から生じる2つのその他の主要ペプチドがトランスフェクトされた細胞によって分泌され、アミノ酸5(Aβ5− X)及び11(Aβ11− X)から開始して脳内に沈着することが注目される6 , 7。
【0004】
さらに、8つのミスセンス突然変異が常染色体優性若年発症型ADを有する家族のAPPにおいて同定された8 , 9。すべてのこれらの突然変異は、セクレターゼ切断部位のすぐ近くにクラスターを形成しており、2つの異なる方法でAPP代謝に影響している。βセクレターゼ切断部位の近くに位置するK670N/M671L突然変異10は、Aβ40及びAβ42の両方の産生を増大させる11−13。これに対し、γ−セクレターゼ切断部位の近くに位置する突然変異は、Aβ42の絶対的又は相対的産生の増大をもたらし、一方、Aβの総量は、APP V717I12−14の場合のように影響されないか、又はAPP V715M15の場合のように低減する。これに対し、常染色体優性若年発症型AD8 , 9を引き起こすプレゼニリン遺伝子(PSEN1及び2)内の突然変異は、Aβ42の優先的増大をもたらす。これは、インビトロAβ42がAβ40よりも原線維生成的であり、かつ速く凝集することが明らかにされていたことから、AD病理にとって重要である16。
【0005】
免疫組織化学は、Aβ42はAD及びダウン症候群(DS)患者において拡散斑として最初に沈着するが17、Aβ40は斑のさらなる成長に寄与し、密にコアを形成した老人斑の形成をもたらすことを示した18。Aβ40はまた、血管壁におけるアミロイド沈着の主要構成成分である19−22。コンゴフィリック(congophilic)な密にコアを形成した斑に沈着するアミロイドは、チオフラビン−T及びコンゴレッド結合を証明するので、たしかに線維性である。脳内の軸索(neuriticな)病理学のほとんどは密にコアを形成した斑と関連しているので、このようなコンゴフィリックな沈着は、AD及びDSにおいて病原性であると考えられる23−26。しかし、疾患の病因論ならびにAD及びDS患者における認知的低下に対する非原線維性拡散斑の正確な意義は、その非コンゴフィリックな性質により示唆されるように、あまりよくわかっていない。これらの2つの斑形態はまた、それらの正確なAβ含量に関しても異なっている。全長Aβが主な構成成分であるコンパクトな斑とは対照的に、拡散斑は、p3又はその他のN短縮型Aβ形態から構成されている19 、 27。AβのこれらのN短縮型形態の穏和な性質は、マイクログリア活性化及びアポリポタンパクE(APOE)結合に関与するドメインの欠如によっても示唆される28 , 29。これに関して、APOEのアイソフォームは、この対立遺伝子のキャリアの、この疾患の一般的遅発性形態に対する素因となる。
【0006】
現在、アルツハイマー病のためには、既知の有効な治療法はない。AD病因論に関与する根底の生化学的事象をさらに定義するために用いることができるADの実験モデルを開発することは重要である。このようなモデルは、ひとつの適用において、ADの進行を阻害、防止又は逆行させる分子をスクリーニングするために用いることができる。
【0007】
本発明は、コドン714の核酸がスレオニン(T)の代わりにイソロイシン(I)をコードする、ヒトアミロイド前駆体タンパク770をコードする新規な突然変異核酸を提供する。この突然変異(APPT714I)は、APPにおける、これまでのところ記載された最も「劇的な」突然変異である。この突然変異を有するAD患者の脳においては、主要なアミロイド斑病理学はAβ40の不在下でN短縮型Aβ42(AβX −42)から主に構成される非コンゴフィリックなプレアミロイド性のものである。これらの観察は、AD患者における神経毒性及び認知低下における、Aβ42及びAβ40の原線維全長形態より、又はそれに加えての、拡散プレアミロイドAβX −42についての鍵となる役割を意味する。T714IがADを引き起こす正確な病理学的メカニズムが何であろうと、この異常なAPP突然変異はADが起こるメカニズムを解明するために役立つであろう可能性が高い。
【0008】
本発明の目的
本発明は、アルツハイマー病の非常に攻撃的な形態を患う患者において同定されたヒトアミロイド前駆体タンパク770のコドン714突然変異体をコードする単離されたポリヌクレオチド配列を提供することを目的とする。具体的には、APP770のコドン714はロイシンをコードする。本発明は、APP770のコドン714突然変異体を含むトランスジェニック真核初代細胞、胚性幹細胞株又は不死化細胞株をさらに提供する。本発明は、APPのコドン714突然変異を発現する非ヒトトランスジェニック動物を提供することをも目的とする。本発明の別の目的は、細胞又は動物における、(N短縮型)β−アミロイド42ペプチドの形成を低減することができる分子のスクリーニングのための方法を提供することである。本発明は、さらに、「曇り」拡散斑の形成の分析及び/又は干渉のために非ヒトトランスジェニック動物を用いることをも目的とする。最後に、本発明は、アミロイドβの代替的プロテアーゼ、γ−セクレターゼホモログ及び/又はγ−セクレターゼモジュレーターのスクリーニングのためのアッセイを提供することを目的とする。
【0009】
発明の詳細な説明
本発明は、アルツハイマー病のモデル系を提供する。ここで、このモデル系は、APP770のアミノ酸残基位置714に相当するアミノ酸位置にスレオニン以外のアミノ酸を有するアミロイド前駆体タンパク(APP)アイソフォーム又はフラグメントをコードするDNA配列を含む。
【0010】
あるオーストリアの家系におけるAPP T714I突然変異は、γ42セクレターゼ切断部位に直接位置するAβのアミノ酸43に関与する、現在までに報告された最初のAPP突然変異である。この突然変異を担持する患者は、だいたい34〜35歳の非常に早いADの発病を有し、これはAPPにおける突然変異と関連する常染色体優性ADについてこれまでに報告された最も早い発病年齢である。この早い発病年齢、ならびに疾患の急速な進行及び早期の死亡は、PSEN1における突然変異によって引き起こされるADに匹敵する9。
【0011】
インビトロでは、T714I突然変異は、APPのγ−セクレターゼ切断に劇的に影響し、有意にAβ40を低減させ、Aβ42を増大させた。この効果は、全長Aβに限定されず、N短縮型Aβペプチドにも関与した。AβX −40及びAβX −42の分泌を変更することにおける主要な効果に加えて、T714I突然変異は、残基G38(Aβ38)及びV39(Aβ39)で終わるAβペプチドへのAPPの有意な選択的プロセッシングをももたらす。2.5倍までの総Aβ(AβX − X)の増大及び不変のAPPS α及びAPPS βは、CTFsのプロセッシングがAPPプロセッシングにおいて律速段階であり得ることを示す。
【0012】
多数の用語及び表現が詳細な説明を通じて用いられ、それらの理解を容易にするために、以下の定義が提供される:
【0013】
ここで用いる場合、「単離されたポリヌクレオチド配列」という用語は、Yoshikaiら(1990) Gene 87:257によって詳述されているようなDNA及びcDNA配列を、Salbaumら(1988) EMBO J. 7(9):2807によって記載されているようなプロモーターDNA配列と一緒に、意味すると解釈することができる。
【0014】
ここで用いる場合、「アイソフォーム」、「APP」及び「APPアイソフォーム」は、APP遺伝子の少なくとも1つのエクソンによってコードされるポリペプチドを指す(Kitaguchiら(1988) Nature 331:530; de Sauvage及びOctave(1989) Science245:651; Goldeら(1990) Neuron4:253)。APPアイソフォームは、ADのある形態と関連する又はAD疾患フェノタイプと関連しないAPP対立遺伝子(又はそのエクソン)によってコードされていてもよい。
【0015】
ここで用いる場合、「フラグメント」は、少なくとも約9アミノ酸、典型的には50〜75、又はそれ以上のポリペプチドであって、そのポリペプチドがあるアミノ酸コア配列を含むポリペプチドを指す。フラグメントは、短縮形態のAPPアイソフォーム、改変APPアイソフォーム(例えばコア配列の外でのアミノ酸置換、欠失、又は付加等による)、又は他の変異ポリペプチド配列であることができるが、ADに罹患しているといないとに関わらず、ヒト個体に存在する天然のAPPアイソフォームではない。望ましい場合、フラグメントは、いずれかの末端で付加的なアミノ酸に融合されていてもよく、それは1〜20、典型的には50〜100の数であってよく、250〜500まで又はそれ以上であることができる。
【0016】
ここで用いる場合、「APP770」は、ヒトAPP遺伝子によってコードされる770アミノ酸残基の長さのポリペプチドを指す。
【0017】
ここで用いる場合、「コドン714」は、APP770の714番目のアミノ酸位置、又はAPP770の714番目に相当するAPPアイソフォームもしくはフラグメント中のアミノ酸位置をコードするコドン(すなわちトリヌクレオチド配列)を指す。例えば、これに限らないが、100個のN末端アミノ酸を除去することによってAPP770を短縮して生成された670残基の長さのフラグメントは、コドン714に相当する614番目のアミノ酸位置を有する。
【0018】
ここで用いる場合、「ヒトAPPアイソフォーム又はフラグメント」は、ヒト個体に自然に生じるヒトAPP770、APP751又はAPP695タンパク中の配列と同一の少なくとも9個の連続するアミノ酸の配列を含むAPPアイソフォーム又はフラグメントを指し、ここで、同一の配列は、非ヒト種に自然に生じるAPPタンパク中には存在しない。
【0019】
核酸は、別の核酸配列と機能的な関係に置かれている場合、「作動可能に連結されている」。例えば、プロモーター又はエンハンサーは、そのコード配列の転写に影響する場合、その配列と作動可能に連結されている。転写調節配列に関しては、作動可能な連結は、連結されているDNA配列が、連続しており、2つのタンパクコード領域を結合することが必要な場合には連続しかつリーディングフレーム内にあることを意味する。
【0020】
ここで用いる場合、「突然変異体」という用語は、ADを発症する遺伝的素因について疾病特徴的なミスセンス突然変異を有するAPP対立遺伝子を指す。具体的には、APP遺伝子の(APP770中のアミノ酸配列によって参照されるように)コドン714の突然変異であり、コドン714がスレオニンではない19のアミノ酸(すなわち、バリン、グリシン、メチオニン、アラニン、セリン、イソロイシン、ロイシン、プロリン、ヒスチジン、システイン、チロシン、フェニルアラニン、グルタミン酸、トリプトファン、アルギニン、アスパラギン酸、アスパラギン、リシン、及びグルタミン)のうちの一つ、好ましくはイソロイシンをコードするようになったものである。したがって、本発明の突然変異APP770ポリペプチドは、位置714にスレオニンではないアミノ酸残基を有するAPP770ポリペプチドである。他の突然変異APPアイソフォームは、コドン714に相当する(すなわちコドン714によってコードされる)アミノ酸残基位置に非スレオニンアミノ酸を含む。同様に、突然変異APP対立遺伝子又は変異APPコドン714対立遺伝子は、コドン714(「コドン714」の定義に記載されているようにヒトAPP770推定翻訳を参照)にスレオニン以外のアミノ酸、好ましくはイソロイシンをコードするAPP対立遺伝子である。したがって、コドン714にスレオニンをコードするAPP対立遺伝子は、「野生型」APP対立遺伝子である。APPT714Iの配列は、配列番号1に示す。
【0021】
第一の態様においては、本発明は、APP770のアミノ酸残基位置714に相当するアミノ酸位置にスレオニン以外のアミノ酸を有するAPPアイソフォーム又はフラグメントをコードする単離されたポリヌクレオチド配列を提供し、本発明の1つの具体的な態様においては、このアミノ酸は、イソロイシンである。
別の態様においては、前記突然変異APPアイソフォーム又はフラグメントをコードする単離されたポリヌクレオチド配列は、プロモーターに作動可能に連結されている。
【0022】
別の態様においては、本発明は、APP770のアミノ酸残基位置714に相当するアミノ酸位置にスレオニン以外のアミノ酸を有する、他のヒトタンパクを含まない、ヒトAPPアイソフォーム又はフラグメントを提供する。発現系の非制限的な例として、バキュロウイルス発現系は真核細胞における異種遺伝子の高レベル発現について有用であり、Knopsら(1991)J. Biol. Chem. 266(11): 7285は、前記発現系を用いたAPPの発現を記載している。
【0023】
別の態様においては、本発明は、上記のAPP714突然変異を含む異種DNA配列で形質転換又はトランスフェクトされた、又はトランスジェニック非ヒト動物から由来した、組換え細菌及び細胞、典型的には真核細胞、そして好ましくは哺乳類細胞、及びより優先的には神経、グリア、又は星状細胞系統の細胞であって、細胞が、APP770のアミノ酸残基位置714に相当するアミノ酸位置にスレオニン以外のアミノ酸を有するAPPアイソフォーム又はフラグメントを発現するものを提供する。標準的なプロトコールによれば、培養されたヒト細胞が突然変異体APP714ポリペプチドを発現するように、培養されたヒト細胞(初代培養又は不死化細胞株のいずれか)を、突然変異体APP714対立遺伝子で一過性又は安定にトランスフェクトすることができる。
【0024】
ある具体的な態様においては、細胞は、天然から由来することもできる。これについて、例えばエプスタイン−バーウイルスを用いてリンパ芽球腫細胞株へと永久に形質転換され得る必要な細胞を提供するためには、APP714突然変異を有すると診断された罹患個体由来の血液試料又は線維芽細胞を入手しなければならない。いったん樹立されると、このような細胞株は、懸濁培養において連続的に生育することができ、突然変異体APP714発現及びプロセッシングを研究するための種々のインビトロ実験のために用いることができる。
【0025】
APP714突然変異は優性なので、細胞株を構築する代替的な方法は、突然変異遺伝子又はコドン714にわたるその部分を遺伝的に操作し、選択した樹立(安定又は一過性)細胞株にすることである。Sisodia (1990) Science 248:492は、トランスフェクションによる哺乳類細胞への正常APP遺伝子の挿入を記載している。Oltersdorfら(1990) J. Biol. Chem. 265:4492は、不死化真核細胞株へのAPPの挿入を記載している。
【0026】
別の態様においては、本発明は、その体細胞及び生殖細胞に、APP770のアミノ酸残基位置714に相当するアミノ酸位置にスレオニン以外のアミノ酸を有するAPPアイソフォーム又はフラグメントをコードするヒトDNA配列の少なくとも1つの組み込まれたコピーを担持するトランスジェニック非ヒト動物を提供する。
【0027】
トランスジェニック非ヒト動物、例えばトランスジェニックマウスは、APP714突然変異を有するAD患者のヒト脳におけるのと同様にAβ42の排他的な沈着が期待されるので、特別の価値を有するであろうことが期待される。マウスにおける突然変異体プレゼニリン1有り又は無しでの突然変異体APPの過剰発現は、密にコア形成した斑へのAβ40沈着の優性性を示す(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?cmd=Retrieve&db=PubMed&list uids=10448051&dopt=Abstract)。また、げっ歯類脳においては、Aβ42ではなくAβ40が、コンゴフィリックアミロイド沈着物として容易に沈着可能であるようであり(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?cmd=Retrieve&db=PubMed&list uids=9334394&dopt=Abstract)、それは、Aβ42ではなくAβ42が、ADの原因学について中心的であると提案されていることに関して重要である(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?cmd=Retrieve&db=PubMed&list uids=10196523&dopt=Abstract)。本発明においては、突然変異体APP714についてニューロン及び非ニューロンの組換え細胞の両方が、Aβ42の分泌を増大し、一方、Aβ40が低減する。罹患患者の脳においては、ほとんど全くAβ40又はAβ39の沈着がなく、斑が完全にAβ42から構成されている。結論として、この新規なトランスジェニックマウスは、ヒトにおいてはAβ42の沈着が常にAβ40の沈着に取って代わるので、ADのヒト疾患フェノタイプをよりよく模倣するであろう。
【0028】
好ましい例においては、突然変異した遺伝子を含むトランスジェニック動物の創出における使用のために突然変異APP714遺伝子を切り出すことが可能である可能性がある。別の例においては、ヒトAPP714対立遺伝子全体を、クローニングベクター(例えばコスミド又は酵母又はヒト人工染色体)中に、部分で又は全体として、クローニング及び単離することができる。部分又は全体としてのヒト変異体APP714遺伝子は、マウス又はラットのような宿主非ヒト動物に移入することができる。移入の結果として、得られたトランスジェニック非ヒト動物は、好ましくは1つ又はそれ以上の突然変異体APP714ポリペプチドを発現する。最も好ましくは、本発明のトランスジェニック非ヒト動物は、1つ又はそれ以上の突然変異体APP714ポリペプチドを、ニューロン特異的な方式で発現する(Wirakら(1991) EMBO J. 10:289)。これは、最初の主要APP転写開始部位の上流の、それに隣接する4.5キロベース配列を含む、実質的にヒトAPP遺伝子全体(コドン714突然変異体をコードする)を移入することによって達成することができる。
【0029】
あるいは、変異体APPコドン714ポリペプチドをコードするミニ遺伝子を設計することができる。このようなミニ遺伝子は、下流のポリアデニル化シグナル配列及び上流のプロモーター(及び好ましくはエンハンサー)に連結された、(好ましくは全長の)変異体APPコドン714ポリペプチド、APP遺伝子エクソンの組み合わせ、又はそれらの組み合わせをコードするcDNA配列を含んでいてもよい。このようなミニ遺伝子構築物は、適切なトランスジェニック宿主(例えばマウス又はラット)に導入された場合、コードされる変異体APPコドン714ポリペプチド、最も好ましくはAPP770のコドン714又はAPPアイソフォームもしくはフラグメントの相当する位置にイソロイシンを含む変異体APPコドン714ポリペプチドを発現する。
【0030】
トランスジェニック動物を作製するための別のアプローチは、インビトロでの胚性幹(ES)細胞株における相同組換え、及びそれに続く宿主胞胚への改変されたES細胞のマイクロインジェクション及びその後の養母中でのインキュベーションによって所望の遺伝子に突然変異をターゲティングすることである(Frohman及びMartin(1989) Cell 56:145を参照されたい)。あるいは、一細胞胚への突然変異遺伝子又はその一部分のマイクロインジェクション及びそれに続く養母中でのインキュベーションの技術を用いることができる。トランスジェニック動物、特に野生型APPアイソフォーム又はフラグメントを発現するトランスジェニック動物の種々の用途は、Wirakら(1991) EMBO J. 10(2):289; Schillingら (1991) Gene 98(2):225; Quonら (1991) Nature 352:239; Wirakら(1991)Science 253:323; 及びKawabataら(1991) Nature 354:476に開示されている。トランスジェニック動物を作製するための更なる方法は当業界において公知である。
【0031】
あるいは、部位特異的突然変異誘発及び/又は遺伝子変換を用いて、内在性又はトランスフェクトされた、マウス(又は他の非ヒト)APP対立遺伝子を突然変異させ、突然変異した対立遺伝子がヒトAPP遺伝子のコドン714(APP770の)に相当するマウスAPP遺伝子中のコドン位置にスレオニンをコードしないようにすることができる(このような位置は、ヒトAPP遺伝子又はAPP770タンパクに対するマウスAPP遺伝子又はAPPタンパクの相同性マッチングによって容易に同定することができる)。好ましくは、このような突然変異したマウス対立遺伝子は、相当するコドン位置にイソロイシンをコードする。
トランスジェニックラットを作製するための手順は、マウスのものと同様である(Hammerら、Cell 63:1099−112(1990))。30日齢の雌ラットに、20IUのPMSG(0.1cc)の皮下注射を与え、48時間後、各雌を証明された雄と一緒に置く。同時に、40〜80日齢の雌を精管切除された雄と一緒にケージ内に置く。これらは、胚移入のための養母を提供することになる。翌朝、雌を膣栓について調べる。精管切除された雄と交配させた雌は、移入時までとっておく。交配したドナー雌を犠牲死させ(CO2窒息)、それらの卵管を取り出し、0.5%BSAを含有するDPBS(Dulbeccoのリン酸緩衝生理食塩水)中に置き、胚を集める。胚を囲んでいる丘細胞をヒアルロニダーゼ(1mg/ml)で除去する。次に胚を洗浄し、マイクロインジェクションの時まで0.5%BSAを含有するEBSS(Earleのバランス塩類溶液)中、37.5℃インキュベーター内に置く。
【0032】
いったん胚を注入すると、生きている胚は養母への移入のためにDPBSに移動する。養母は、ケタミン(40mg/kg、腹腔内)及びキシラジン(5mg/kg、腹腔内)で麻酔する。皮膚を通じて腹側中線切開を作製し、卵巣及び卵管を、卵巣を直接覆う筋肉層を通る切開によって露出する。卵嚢を破き、胚を移入ピペット中に拾い上げ、この移入ピペットの先端を漏斗内に挿入する。約10〜12個の胚を、漏斗を通じて各ラットの卵管内に移入する。次に切開を縫合で閉じ、養母を単独で巣に入れる。
【0033】
本発明の別の態様においては、ヒトアミロイド前駆体タンパク770のコドン714突然変異体をコードするポリヌクレオチド配列又はそのアイソフォームもしくはフラグメントでトランスフェクトしたトランスジェニック細胞株を、分子のスクリーニング及びその分子の有効性のモニタリングのための薬剤スクリーニングアッセイにおいて使用することができる。更に、このようなモデル系は、根底にあるAPP及びβ−アミロイド代謝の生化学を定義するための道具を提供し、それによって合理的な薬剤設計の基礎を提供する。分子の特異的有効性は、その分子の投与なしでのAβ42ペプチド又はN短縮型Aβ42ペプチドの量と比較して、より低いAβ42ペプチド又はN短縮型Aβ42ペプチドの形成を測定することによってモニタリングすることができる。好適な分子は、小さい分子、生物学的ポリマー、例えばポリペプチド、多糖類、ポリヌクレオチド等である可能性がある。小さい分子(例えば小さい有機分子)及び他の薬剤候補は、例えばコンビナトリアル及び天然生成物ライブラリーから得ることができる。試験化合物は、典型的には約1nM〜1mM、通常約10μM〜1mMの範囲の濃度で培地に投与される。
【0034】
Aβ42ペプチド形成及び/又はその短縮型形態のモニタリングは、標準的生化学的技術を用いて測定することができるが、優先的にはELISAアッセイで行う。これらのアッセイは、スクリーニングの経過中にこれらの目的のために開発された従来の技術を用いて行うことができる。
【0035】
薬剤スクリーニングアッセイを行うために、アッセイの自動化に適応させることが可能である。組換え細胞及び標的分子の間の相互作用(例えば結合)は、反応物質を含有させるために好適な任意の容器内で達成することができる。このような容器の例としては、マイクロタイタープレート、試験管、及び微量遠心管が挙げられる。
【0036】
同様にスクリーニングアッセイの範囲内にあるのは、組換え細胞株において特異的mRNA標的の翻訳を阻害するように機能するアンチセンスRNA及びDNA分子を含むオリゴヌクレオチド配列である。このような標的が、例えばβ−セクレターゼホモログ又は前記β−セクレターゼ(ホモログ)もしくはN短縮型Aβ42ペプチドのようなAβ42ペプチドの短縮形態の生成に関与するプロテアーゼのモジュレーターであろうことは、非常に充分な可能性がある。例えば、アンチセンスRNA分子は、遺伝子ライブラリーの合成の技術分野において公知の任意の方法によって調製されたライブラリーにおいて生成してもよい。あるいは、前記アンチセンス配列は、誘導可能又は構成的プロモーターの発現下でアンチセンスcDNAライブラリー中に構築することができる。
【0037】
別の態様においては、上述のような非ヒトトランスジェニック動物は、「曇り」拡散斑の阻害及び形成について分析することができる。APP714中の本発明の突然変異は、主にN短縮型Aβ42から構成される異常な斑組成を有する重症のAD病理学及び形態学をもたらす。Aβ40形態は、ヒト脳におけるアミロイド沈着にはほとんど存在せず、典型的な密にコア形成した斑の形成が遅延することが見出されている。優性なアミロイド沈着は、ジストロフィ的(distrophic)軸索及び反応性グリオーシスと関連する拡散した非コンゴフィリックアミロイド斑である。本発明においては、拡散した非コンゴフィリック(及びそのため非原線維性)Aβ斑が病原性でありADを引き起こすという新規な病理学的知見が提示される。更に、罹患患者においては、ジストロフィ的軸索及び神経原線維の病理学は、斑非依存性の方法で発症することができることが示される。これは、非原線維性プレアミロイド沈着がニューロン毒性を引き起こす潜在能力を有すること、及び軸策性(neuritic)及びアミロイド病理学の発症がAD疾患のある段階で分離され得ることを証明する。更に、本発明は、N短縮型Aβ42がニューロン毒性及びAD患者における認知低下を引き起こすのに必要かつ十分な役割を果たすという証拠を初めて提示する。具体的な態様においては、上述のような非ヒトトランスジェニック動物は、分子のスクリーニング及び脳内でのAβ沈着に対するその分子の効果についてのその動物のモニタリングに用いることができる。優先的には、細胞性スクリーニングアッセイにおいて同定され、N短縮型Aβ42の形成及びAβ42形成に対する効果を有する分子が非ヒトトランスジェニック動物に投与される。トランスジェニック動物のモニタリングは、脳内の斑の量の測定、異常リン酸化タウタンパクの量及び/又はグリア細胞の数の増加の測定を含むがそれらに限定されない病理学的研究によって行うことができる。用いることができる別の手順は、行動活性試験における減少の測定である。学習及び記憶の欠陥を評価するために設計された行動試験が利用される。このような試験の一例は、Morris Water迷路(Morris, Learn. Motivat. 12:239−260(1981))である。この手順においては、動物を、水の表面のすぐ下に沈めた避難プラットフォームを備えた、水で満たした円形プールに置く。プラットフォーム上には視認できるマーカーを置いて、動物が近位の視覚的な手掛かりに向かって進むことによってそれを見つけることができるようにする。あるいは、プラットフォームの位置をマークする形式的な手掛かりがない、より複雑な形態の試験を動物に与える。この形態においては、動物は、遠位の視覚的な手掛かりに対する相対的なプラットフォームの位置を学習しなければならない。
【0038】
試験トランスジェニックマウスに適用される手順は、トランスジェニックラットについても同様である。
【0039】
最後に、最後の態様においては、APP770のアミノ酸残基位置714に相当するアミノ酸位置にスレオニン以外のアミノ酸(好ましくはイソロイシン)を有するAPPアイソフォーム又はフラグメント(これはγ−セクレターゼの好ましい基質である)をコードするポリヌクレオチド配列は、γ−セクレターゼモジュレーター、及び/又はAβ42のN短縮型形態及びC短縮型形態をもたらす選択的プロセッシング酵素の同定のために用いることができる。最近、γ−セクレターゼの活性がアスパルチルプロテアーゼの新規なクラスであるプレゼニリンによってコードされるという説得力のある証拠が提供された(Liら (2000) Nature 405:689)。前記の同定は、検出可能なγ−セクレターゼ活性がもはや存在しない二重プレゼニリンノックアウトES細胞株中で優先的に行うことができる(Herreman Aら (2000) Nat.Cell Biology 2:461)。したがって、本発明のAPP714突然変異と一緒での二重プレゼニリン突然変異体ES細胞株は、γ−セクレターゼホモログ、γ−セクレターゼ活性の遺伝的モジュレーター及びAPPタンパクの代替的プロセッシング酵素を単離及び同定するための優れたコンビナトリアルツールである。単離によって、補充、スクリーニング、又はゲノムもしくはcDNAライブラリーを用いる選択クローニング法のような標準的分子生物学のツールを用いて細胞をトランスフェクトし、γ−セクレターゼ活性を誘導することが意味される。アデノウイルス、レンチウイルス又はレトロウイルスライブラリーのような組換えウイルスライブラリーもまた使用し得ることは明らかである。先に述べた方法論は単なる例であり、潜在的な候補をもたらし得る他の可能なアプローチを排除するものではない。タンパク分解活性の回復に続いて異なる手段を行うことができ、少数の例を挙げると、ELISAアッセイ又はアミロイドペプチド産生を測定する他のアッセイ、又はルシフェラーゼレポーター系もしくは他のものを用いるノッチ切断を測定するアッセイがある。このようなアッセイの感度を増大するために、APP714突然変異体又は他のタンパク及びこのようなアッセイに有用なレポーターをコードするcDNAでES細胞を安定にトランスフェクトすることを考慮することができる。
【0040】
以下の実施例は、本発明の好ましい特徴をより充分に説明するが、いかなる方法においても本発明を制限することを意図されていない。以下に開示されている出発物質及び試薬のすべては、当業者には公知であり、商業的に入手可能であるか、又は周知の技術を用いて調製することができる。
【0041】
実施例
APP T714I突然変異
家族AD156(図1A)は、早期発症型ADの常染色体優性遺伝と一致するオーストリアの家族であり、DNA診断のために調べられた。発端者、その姉妹、及び彼女らの母は、それぞれ38歳、38歳及び44歳の時にNINCDS−ADRDA基準にしたがっておそらくADであるとして診断された。しかし、認知障害及び行動障害の兆候は、3人の患者すべてにおいて数年前から明らかであり、この家族における34歳までの平均発症年齢が示唆された。発端者のゲノムDNAを、APP、PS1及びPS2中の突然変異について検査した。APPのエクソン17中に(図1B)、ヘテロ接合性のCからTへのトランジション(転置)が位置2208に同定され、コドン714のThr(T)がIle(I)に置換されていた(T714I、番号付けはAPP770アイソフォームにしたがう)。この突然変異は、TspRI制限部位を失わせており、これは発端者(156.1)及びその姉妹(156.2)におけるこの突然変異の存在を確認するために用いられた(図1C)。この突然変異は、その父ならびに50人の健康なオーストリア人においては欠如していた。他の突然変異は検出されなかった。
このオーストリアT714I突然変異は、γ42−セクレターゼ切断部位に直接位置するAβのアミノ酸43に関与する、現在までに報告された最初のAPP突然変異である。早い発症年齢、ならびに疾患の急速な進行、及び早期の死亡は、PS1における突然変異によって引き起こされるADに匹敵する(http://molgen−www.uia.ac.be/ADMutations)。
【0042】
インビトロで劇的に変更されたAPPプロセッシング
γ42−セクレターゼの切断特異性に対するT714I突然変異の影響を理解するために、非ニューロン及びニューロン細胞におけるAPPのプロセッシングを研究した。ヒト胚性腎臓(HEK)293T細胞を、T714I APP cDNAで一過性にトランスフェクトし、分泌されたAβ1−42及びAβ1−40レベルをコンディションド培地中で酵素結合免疫吸収アッセイ(ELISA)によって測定した(De Jongheら、1999; De Strooperら、1998)。野生型(WT)及びロンドンV717I(Goateら、1991)APP cDNAを過剰発現する細胞を対照として用いた。T714I突然変異は、Aβ42を増大させ、同時にAβ40を低減させて、有意に増大したAβ1−42/Aβ1−40比(p<0.001)をもたらし、これはWT APPにおけるものより4倍高かった。同じ実験において、V717Iは、Aβ1−42の増大のみによって1.8倍増大したAβ1−42/Aβ1−40比をもたらし、これらの結果は以前発表されたデータに匹敵する(Suzukiら、1994)。本発明者らは、ELISAによって患者(156.2)、その罹患していない父(156.3)及び5人の無関係な年齢適合対照の血漿中のAβ1−42及びAβ1−40もまた測定した。Aβ1−42/Aβ1−40比は、罹患していない父と比較して2.5倍増大しており、対照と比較して1.7倍であった。T714I及びWT APPでトランスフェクトされたHEK293T細胞のコンディションド培地もまた、レーザーイオン化飛行時間型(MALDI−TOF)質量分析法によって分析した(図2)(Haassら、1992;Sisodiaら、1990)。この方法は、全長及びN短縮型の両方のAβを評価することを可能にした。WTと比較して、T714Iは、6.4倍(p<0.001)のAβ1−42の有意な上昇を示したが、同時に、Aβ1−40は有意に43%減少した(p<0.001)。これは、ほぼ等しいレベルの分泌Aβ1−40及びAβ1−42をもたらし、Aβ1−42/Aβ1−40比を10.8倍増大した。同様の影響は、p3に対しても見られ、等しいレベルの分泌Aβ17−40及びAβ17−42、及びWTに対して10.7倍増大したAβ17−42/Aβ17−40比を有していた。T714I突然変異の1つの他の顕著な影響は、N末端残基に関わらずV39及びG38で終わるAβペプチドの増大である。同様の影響は、G37で終わるp3ペプチド及び全長Aβについても見られた。これらのペプチドは、Aβ1−40及びAβ1−42ペプチドが非トランスフェクト細胞の培地に添加された場合には分解しなかったことから、全長Aβのタンパク分解によって人工的に生成されたのではない(Wangら、1996)。Aβ40の劇的な増大にもかかわらず、N又はC末端に関係のない総Aβ(AβX − X)は、T714Iについて2.5倍増大した。γ42−セクレターゼ切断部位の近傍に位置する他のAPP突然変異(Ancolioら、1999; Caiら、1993; Goateら、1991; Suzukiら、1994)と比較して、T714Iは、Aβ42/Aβ40において最高の増大を有する。興味深いことに、Aβ40のインビトロでの減少もまた、T714Iの1アミノ酸下流であるフランスI715M突然変異について最近報告された(Ancolioら、1999)。これらの突然変異がAβ40及びAβ42分泌に影響する又はAβ38もしくはAβ39への代替的切断をもたらすメカニズムは、未だ解明されていない。別個のγ−セクレターゼ(Citronら、1996)は、この領域においてα−へリックス構造を有する(Lichtenthalerら、1997)これらの突然変異CTFsに対して異なる結合親和性/切断効率を有する可能性があり(Klafkiら、1996)、3又は4位置離れたアミノ酸残基が空間的に近づくことを可能にする。これは、なぜT714I及びV715Fが同様にγ40−セクレターゼ活性にも影響するかを説明する可能性がある。総Aβの増大がγ−セクレターゼの更なる作用によるCTFsの増大したプロセッシングによるのか、あるいはα及びβ−セクレターゼが存在する細胞の区画へのAPPの増大した往来によるのか、を分析するために、本発明者らは、APPS α及びAPPS βを定量した。有意な変化は記録されなかった(図3)。総Aβ(AβX − X)の増大と一緒に考慮すると、APPS α及びAPPS βの不変のレベルは、CTFsのプロセッシングがAPPプロセッシングの律速段階であろうことを示した。次の段階において、本発明者らは、一次ニューロンにおけるAPPのγ−セクレターゼ切断部位の近くの一連の臨床的突然変異の影響を系統的に分析した。この目的のため、本発明者らは、ヒトWT APP、又はオーストリアT714I(Kumar−Singh S (2000) Hum. Mol. Genet. 9:2589)、フランスV715M(Ancolio K(1999) PNAS 96:4119)、ドイツV715A(Van Broeckhoven、未発表データ)フロリダI716V(Eckman C(1997) Hum. Mol. Genet. 6:2087)、インディアナV717L(Murrell JR(2000) Arch. Neurol. 57:885)又はロンドンV717I(Goate A (1991) Nature 349:709)突然変異のいずれかを含むAPPを、ニューロンの初代培養物中で発現させた。本発明者らは、抗体FCA3340又は抗体FCA3542を用いて(Barelli H(1997) Mol. Med. 3:695)、それぞれAβ40 〜又はAβ42を馴化培地から特異的に免疫沈降させた。V715Mを除いてすべてのAPPのC末端突然変異は、Aβ1−42の分泌を増大させた。Aβ1−42の増大は、T714Iについての1.54倍からV717Lについての2.71倍までにわたった。これは、残基42で終わるN短縮型Aβアイソフォーム(AβX −42)の増大が伴っていた。これらのアイソフォームはゲル中を二重のバンドとして泳動し、おそらく、アミノ酸残基11での代替的β−セクレターゼ活性によって、又はAβ配列のアミノ酸残基17でのα−セクレターゼ活性によって、生成されている。一方、Aβ1−40は、ほとんどの突然変異について減少する。T714I、V715M及びV715A突然変異は、Aβ1−40分泌を、それぞれ野生型レベルの20%、30%及び55%まで最も劇的に減少させる。V717I及びV717L突然変異は、それより少ない程度でAβ40分泌に影響し、I716V突然変異は見かけ上Aβ40分泌に影響しない。N短縮型Aβ40アイソフォーム(AβX −40)の分泌は、Aβ1−40に匹敵する程度で減少した。したがって、Aβ1−42/Aβ1−40比を各突然変異についてWT APP(任意に、1に等しいと設定した)と比較する場合、この比は、すべてのAPP突然変異において増大する。この増大は、V717Iについての1.89倍からT714Iについての8.20倍までにわたる。更に、Aβ1−42/Aβ1−40比は、異なる突然変異についての平均発症年齢と逆に相関する(r=−0.86)。
【0043】
異常斑形態学及び構成
発端者(156.1)の神経病理学的検査により、拡散グリオーシス、アミロイド斑及び神経原線維濃縮体を伴う広範なニューロン損失が示され、ADの診断が確認された。本発明者らは、3つの選択した脳領域、すなわちエントリナル(entorhinal)皮質(ERC)を含む海馬(viz. hippocampus)、側頭皮質及び前頭皮質由来の連続切片についての組織及び免疫組織化学によって徹底的な分析を行った。全長Aβ及びp3の両方を認識する抗体(mAb 4G8)を用いた免疫染色により、しばしば中心裂孔(central lacuna)に封入された「雲様」拡散斑として巨大な斑負荷が優勢に顕著に染色された。歯状回の分子層においては、アミロイド斑は、PS1Δ9患者について記載されたのと同じ非軸索「綿毛(cotton wool)」斑を有していた(Crookら、1998)。本発明者らは、コンゴレッド及びチオフラビン染色によってアミロイド斑の線維性の性質を決定した。密にコア形成した斑は、コンゴフィリックであり、チオフラビンで蛍光性であったが、一方、拡散斑の大部分は非コンゴフィリックであった。チオフラビンについて弱い陽性の少数の拡散斑においては、線維性アミロイドは、免疫組織化学的に認識された総アミロイドのほんの小さい部分のみを占めていた。ERCの第III層においては、アミロイド斑はコンゴフィリックであったが、一方、その表面及び深部の層においては、拡散斑はここでも非線維性であった。強い軸索病理は、CA1、及び海馬及びERCの鉤状回分野において顕著であった。軸索は、過リン酸化タウ(AT8)、ユビキチン、及びAPPを、斑病理学にかかわらず蓄積した。アミロイド染色とともに内皮細胞マーカー(CD31及びCD34)を用いると、拡散斑ではなく老人斑コアは、血管と密接に関連していた。この特徴は、終板において最も顕著であり、ここではすべての線維性アミロイド沈着物が血管と関連していた。次に、本発明者らは、インビボでこの突然変異がAPPプロセッシングに対して同様の影響を有するかどうかを検査した。C末端Aβ40特異的モノクローナル抗体(mAb)であるJRF/cAb40/10に対する反応性は、同皮質中の血管壁及びアミロイド斑の両方において完全に欠如していたが、一方、海馬の終板領域においては弱い免疫反応性が時々存在した(各0.7mm2の10視野当り2〜3のアミロイド沈着物)。対照的に、C末端Aβ42特異的mAbであるJRF/cAb42/12は、拡散斑、血管壁及び「非頻発性」の密にコア形成した斑を含むすべてのアミロイド沈着物に強い反応性を付与した。4G8で切片を染色し、画像解析によってAβ40及びAβ42に対して特異的な抗体についての免疫反応性と比較した。海馬においては、Aβ40は、アミロイド沈着物の1〜7%しか構成していなかったが、新皮質においては完全に欠如していた。共焦点レーザー走査顕微鏡(CLSM)による多スペクトル分析もまた、Aβ40の欠如及び4G8及びAβ42特異的抗体についての完全な組織化学的重複を明らかにした。これらの観察は、他のAβ40特異的(FCA3340; Clementsら、1993、及びR209; Mehtaら、2000)及びAβ42特異的抗体(21F12、Johnson−Woodら、1997; FCA3542、Clementsら、1993; R226、Mehtaら、2000)を用いて確認された。本発明者らは、Val39(Aβ39)及びThr43(Aβ43)で終わるAβの存在についてもチェックしたが、これらのペプチドのいずれもがAPP714脳に有意に沈着していなかった。本発明者らは、これらのアミロイド沈着物におけるAβのN短縮を研究し、拡散斑が何らかのグリア反応を起こすことができるかどうかを確認した。N末端Aβに対する抗体のパネル(6E10、6F/3D及びJRF/AβN/11)についての反応性は、4G8反応性と比較した場合、拡散斑はN短縮型Aβから構成され、一方、全長Aβは血管壁、密なアミロイドコア及びERC第III層のアミロイド斑に封入されており、深部皮質層については顕著に陰性であることを示した。豊富なグリア及び炎症性病理が、大グリア細胞(GFAP)、ミクログリア細胞(CD68、HLA−DR)及び補体(C1q)マーカーを用いて拡散斑ならびにコンパクト斑に関連して記録された。強いグリア活性化は白質におけるのと同様に斑病理無しの多くの領域において記録されたが、ミクログリアはコンパクト斑の近傍に存在した。
【0044】
トランスジェニックマウスの作製
本発明者らは、現在トランスジェニックマウスを作製している。突然変異体APP714が血小板由来成長因子(PDGF)プロモーターの制御下にある構築物の配列を、配列番号2として示す(配列番号2におけるヌクレオチド番号付けを有する構築物、114〜1576 PDGFプロモーター;1676〜1905 Gormanの合成イントロン;1648〜1932 pIRES−EYFPから由来する、Gormanのイントロンに隣接する配列;1938〜4022 APPコード配列(1938−ATG、4023−TAG);4026〜4678 APP 3′UTR;4691〜4899 SV40 pA付加;3853 CからTへの転置(APP714突然変異))。線状化された配列番号2のような構築物を精製し、4種のF1雑種株(C57/Bl/6 × CBA,C57/Bl/6 × DBA、C57/Bl/6 × D2、C57/Bl/6 × C3H)の過剰***させた雌から単離された1.5日齢の前核胚にマイクロインジェクションする。
【0045】
材料及び方法
AD診断
家族AD156の患者を、神経学的検査、神経心理学的試験、神経イメージング及び神経病理学に基づいてADと診断した(Kleinertら、準備中)。その母親は44歳の時に診断された。彼女は、進行性記憶障害を有し、そのうち分別を失った。EEGは、中程度であるが一般化された非特異的変化を示したが、一方、CTは脳萎縮を示した。この発端者ならびに彼女の姉妹は、38歳の時に神経学的検査を受けた。彼女らはともに重症のうつ病を患っていた。ミニメタルステート検査(MMSE)は、痴呆の存在を確認した。SPECTは明確な活動低下を示し、一方、CTは脳萎縮の存在を確認した。MMSEによって繰り返し測定されると、姉妹の両方において痴呆は急速に進行していた。例えば、39歳の時、発端者は18/30の得点を示し、彼女の姉妹は11/30であり、40歳の時、得点は既にそれぞれ10/30及び3/30に低下していた。症状の発症の実際の年齢は、患者らを処置した神経学者によれば数年前であった。母親の発症年齢は、5〜7年前、娘たちでは4〜5年前と見積もられた。したがって、家族AD156における平均発症年齢は、34歳までと見積もられた。発端者のAPOEゲノタイプはE3E3、姉妹のそれはE2E3であった。母親のAPOEゲノタイプ、E2E3は、父親及び同胞のそれから推定された。発端者は41歳で死亡し、脳の剖検を受け、その姉妹は42歳でまだ生きている。脳の巨視的検査は、ひどい萎縮を示し、1000gまでの重さであった。前脳、中脳及び後脳由来の切片を、ヘマトキシリン−エオシン(HE)、Nissl、コンゴレッド、及び改変Bielshowskyで染色した。初老性ADの決定的な診断が下された。
【0046】
遺伝子解析
APPのエクソン16及び17を、患者156.1のゲノムDNAから、発表されたプライマーセット及びPCR条件を用いて(Bakkerら、1991)PCR増幅し、PCRフラグメントを、「Ready Reaction ローダミン ダイターミネーター サイクルシークエンシング」キット(Applied Biosystems, Foster City, USA)を用いて配列決定した。生成物を、ABI310キャピラリDNAシークエンサー(Applied Biosystems)で解析した。APP T714I突然変異は、PCR増幅されたAPPエクソン17のTspRI消化によって解析された。354bpの野生型(WT)フラグメントは、それぞれ232bpと122bpとの2つのフラグメントに切断され、一方、T714I突然変異フラグメントは切断されない(図1)。PS1及びPS2のすべてのコードエクソンを、発表されたプライマーセット(Crutsら、1998)を用いてゲノムDNAからPCR増幅し、記載されたような(Crutsら、1998)一本鎖DNA高次構造多型(SSCP)解析によって突然変異についてスクリーニングした。APOEゲノタイプは、記載されたように決定した(van Duijnら、1994; Wenhanら、1991)。
【0047】
インビトロ突然変異誘発
部位特異的突然変異誘発を、「QuikChange 部位特異的突然変異誘発」系(Stratagene, La Jolla, CA, USA)を用いてpCDNA3にクローニングされたWT APP695 cDNAについて行った。プライマーapp714s(5′−CGGTGTTGTCATAGCGATAGTGATCGTCATCACC−3′)及びapp714as(5′−GGTGATGACGATCACTATCGCTATGACAACACCG−3′)を用いて、構築物中にAPP T714I突然変異を挿入した。構築物の配列は、「Taq ダイターミネーターシークエナーゼIIシークエンシング」キット(Applied Biosystems, Foster City, USA)を用いて挿入フラグメントの直接PCR配列決定によって確認した。生成物を、ABI373自動DNAシークエンサー(Applied Biosystems)で解析した。突然変異体APP V717Iは、以前記載されたように構築した(Hendriksら、1995)。
【0048】
cDNAトランスフェクション
ヒト胚腎臓(HEK−293T)細胞を、製造者の手順にしたがってFugene(Roche Diagnostics)を用いて、T714I、V717I又はWT APP695 cDNA構築物を含むpCDNA3ベクターで一過性にトランスフェクトした。細胞中の構築物の存在は、ウェスタンブロッティングによって確認した。APP発現について正規化するために、細胞を、300IRIPA緩衝液(50mM トリス、pH8.0、150mM NaCl、1%NP−40,0.5%デオキシコール酸ナトリウム、0.1%SDS+完全プロテアーゼ阻害剤)中で溶解した。5μlアリコートの希釈系列を、4〜12%NuPAGEポリアクリルアミドゲル上で分離した。タンパク質をPVDF膜上にブロッティングし、Western Star 化学発光システム(Tropix)を用いて抗体10B4(Senetek)で免疫検出を行った。全長APP免疫反応性バンドを、NIHイメージソフトウェアパッケージを用いて定量した。
【0049】
Aβ ELISA
HEK293T細胞を、6ウェルプレート中でWT又はT714I APP cDNAで三連でトランスフェクトした。トランスフェクションの1日後、1mlの添加物を含まないOPTIMEM培地をHEK293T細胞に添加し、24時間、馴化した。6回のトランスフェクションから培地を集め、プールした。Aβ ELISAのために1mlアリコートを用いた。Aβ42濃度を、Aβ42ペプチドを検出するINNOTEST β−アミロイド1−42 HS ELISAのプロトタイプ版を用いて、ELISAによって馴化培地中で測定した(De Strooperら、1998)。記載されたように(De Jongheら、1999; De Strooperら、1998)、ウサギ抗血清R209(Mehtaら、2000)を捕獲抗体とし、ビオチン化3D6(Johnson−Woodら、1997)を検出抗体として用いて、ELISAによってAβ40を測定した。各実験は三連で行って、結果を平均化した。両側独立t検定を用いて、WT及び突然変異体トランスフェクタントによって産生されたAβの平均レベルを比較した。
【0050】
質量分析Aβ解析
上記のように集めた上清の第二のアリコートに、プロテアーゼ阻害剤(2mM EDTA−Na、10μM ロイペプチン、1μM ペプスタチンA、1mM PMSF、0.1mM TLCK、0.2mM TPCK)を添加した。Aβペプチドを、以前記載されたように(Wangら、1996)免疫沈降/質量分析Aβアッセイ(IP/MS)によって解析した。Aβペプチドを、mAb 4G8(Senetek, Maryland Heights, MO)及びプロテインG Plus/プロテインA−アガロースビーズ(Oncogene Science, Inc., Cambridge, MA)を用いて1.0mlのコンディションド培地から免疫沈降し、MALDI−TOF質量分析計(Voyager−DE STR BioSpectrometry Workstation、PE/PerSeptive Biosystem)を用いて解析した。各質量スペクトルを256の測定値から平均し、内部質量較正物質としてウシインシュリンを用いて較正した。コンディションド培地中のペプチドレベルを比較するために、合成Aβ(12−28)ペプチド(10nM)を内部標準として用い、相対ピーク強度を用いた。ELISA及びMALDI−TOF質量分光分析の両方を、試料の正体について「目隠しされた」実験者によって行った。
【0051】
APP S α 及びAPP S β の定量
5μlの馴化培地を4〜12%NuPageゲル(Novex)上で分離した。タンパク質をPVDF膜上に転写し、この膜をPBS+0.2%I−ブロック+0.1%Tween20中でブロッキングし、一次抗体である1:2000希釈された6E10(APPS αについて)又は1/500希釈された53/4(APPS βについて)とともに4℃で一晩インキュベートし、アルカリホスファターゼ標識二次抗体(1/4000希釈)とともにインキュベートし、Western Star化学発光試薬(Tropix)又はECL(Amersham)のいずれかで検出した。
【0052】
免疫組織化学
それぞれAβ40及びAβ42のC末端に対して特異的なmAbであるJRF/cAb40/10及びJRF/cAb42/12を、Aβ残基36〜40(VGGVV)又は残基33〜42(GLMVGGVVIA)に相当する合成ペプチドでマウスを免疫することによって作製した(Merckenら、未発表データ)。Aβ40及びAβ42 mAbの特異性は、交差反応性を示さないELISA及びウェスタンブロッティングによって確認した。同様に、AβのN末端に対して特異的なmAb JRF/AβN/11を、Aβ残基1〜7(DAEFRHD)に対して生じさせ、全長Aβを認識する。免疫組織化学に加えて、以下のmAbを用いた:mAb 6E10(Senetek;Aβ1〜17に対して誘起、Aβ5〜13を認識、Rong Wang,私信)、mAb 4G8(Senetek;Aβ残基17〜24)、6F3D(Dako;Aβ残基7〜17に対して誘起)、mAb 21F12(Aβ42について、Innogenetics, Belgium)、ウサギ抗血清FCA3542及びFCA3340(Barelliら、1997)、ウサギAβ40抗血清R209(Mehtaら、2000)及びAβ42 R226(Mehtaら、2000)、ウサギ抗Aβ1−40(Sigma, St.Louis, MO, USA)、ウサギ抗Aβ39及び抗Aβ43(T.Saido, Laboratory for Proteolytic Neuroscience,RIKEN Brain Science Institute, Wako−shi 351−0198 Japan)、mAb 22C11(N末端APP;Roche)、mAb AT8(異常リン酸化タウ;Innogenetics)、及び抗グリア原線維性酸性タンパク(GFAP;Dako、Glostrup, Denmark),CD68(マクロファージ;Dako)、ウサギ抗ユビキチン(Dako)、C1q補体(Dako)、HLA−DR(HLA−DP,DQ,DR;Dako)、CD31(Dako)、及びCD34(QBEnd;Dako)。Aβ免疫組織化学のための抗原取り出しは、98%ギ酸で10分間処理した切片について行い、他の抗体については供給者によって推奨されるように行った。単一抗原についての染色は、ストレプトアビジン−ビオチン−西洋ワサビペルオキシダーゼ(ABC/HRP)又はペルオキシダーゼ−抗ペルオキシダーゼ(PAP)を用いて、クロモゲンとして3′3′ジアミノベンジジン(DAB)を利用して、ほかに記載されたように(Kumar−Singhら、1997)行った。2以上の抗原の検出に関与する免疫組織化学は、ビオチン、HRP、アルカリホスファターゼ又はガラクトシダーゼ(Southern Biotechnology, Birmingham, USA)に直接コンジュゲート化した種特異的又はIgGサブタイプ特異的二次抗体を用いて行った。これに続いて、以下のクロモゲン(Roche)のいずれかを用いて発色させた:DAB,3−アミノ−9−エチルカルバゾール(AEC)、ファストレッド、5−ブロモー4−クロロ−3−インドリルホスフェート/ニトロブルーテトラゾリウム溶液(BCIP/NBT)又は5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトピラノシド(X−gal)。Aβ40免疫組織化学については、高感度のチラミド増幅系(NEN,MA,USA)を利用した。
【0053】
濃度計測解析
濃度計測解析は、21F12、JRF/cAb42/12及びFCA3542(Aβ42について)、JRF/cAb40/10、R209(Methaら、2000)及びFCA3340(Aβ40について)及び4G8で染色された5μm厚の連続切片について行い、Vidas画像解析系(Kontron)を用いて行い、得られた結果を、偶発性AD症例及びPS1(I143T)関連家族性ADの患者の同様の脳領域の染色と比較した。免疫組織化学染色を表す画素をカウントし、各斑のサイズを算出した。また、0.7mm2の面積を認識する最も強度の高い染色を有する海馬又はERC由来の5つの視野におけるAβ染色によって占有された相対面積を、ほかに記載されたように決定した(Kumar−Singhら、1997)。
【0054】
蛍光顕微鏡観察
CLSMの多標識のために、10μm切片をmAb 21F12及びJRF/cAb42/12とともに一晩インキュベートし、洗浄し、抗マウスTRITCコンジュゲート化及び抗ウサギFITC抗体(Molecular Probes, Oregon, USA)で標識した。488nmラインのアルゴンシングルレーザー又は632nmのヘリウム/ネオンダブルレーザーのいずれかを励起のために用いて、Zeiss CLM−410で画像を得た。1μm厚の連続光学スライスを両フルオロクロームについて別個に捕獲し、アミロイド斑中の相対Aβ42/Aβ40含量及び比を決定した。
【0055】
組換えSFVウイルスの調製
オーストリアT714I、ドイツV715A,フランスV715M,フロリダI716V及びインディアナV717L突然変異を、適切なオリゴヌクレオチド及びQuick−change突然変異誘発系(Stratagene, La Jolla, CA)を用いて部位特異的突然変異誘発によってヒトWT APP cDNA(695アイソフォーム)中に導入した。突然変異体APP cDNAを、続いてpSFV−1(Gibco BRL, Bethesda、MD)のSmaI部位にクローニングした。組換えセムリキ森林ウイルスを、記載されたように作製した(Annaert WGら(1999)J.Cell Biol.147、277)。
【0056】
初代ニューロン培養
初代皮質ニューロンを、記載されたように(Annaert WGら(1999) J. Cell Biol. 147、277)E14胚性マウスから単離した。手短に述べると、脳の解剖及びトリプシン処理による細胞の分離の後、細胞をポリリジンでコートした皿に置き、ニューロベーサル培地+B27サプリメント中でインキュベートした。非ニューロン細胞の増殖は、5μMシトシンアラビノシドを添加することによって防止した。
【0057】
初代ニューロンの感染
組換えSFVを培地で1:10に希釈し、3〜5日経過した初代皮質ニューロンに添加した。1時間の吸着の後、ウイルスベクター含有溶液を通常培地で取り替えて、形質導入を2時間継続した。次に培地を100μCi35S−メチオニン(ICN、Irvine、CA)を含む、メチオニン無含有培地に取り替えた。4時間の代謝標識の後、培養上清を集め、細胞をPBS中で洗浄し、最後にプロテアーゼ阻害剤(5mM EDTA、トラシロール、1μg/mlペプスタチン)を含有するDIP緩衝液(20mM トリス−HCl、pH7.4、150mM NaCl、1%Triton X−100、1%デオキシコール酸ナトリウム、0.1%SDS)中で溶解した。
【図面の簡単な説明】
【図1】
(A)APP T714I突然変異を分離するAD156の家系。無地の印は罹患した個体を示す。+:死亡時の年齢;矢印は剖検が行われた発端者を示す。(B)156.1及び156.2についての配列分析、APPのエクソン17におけるコドン714でのスレオニン(T)からイソロイシン(I)へのアミノ酸置換をもたらすcDNAの位置2208でのヘテロ接合性CのTへの転置を示す(番号付けはAPP770アイソフォームにしたがう)。C.PCR増幅APPエクソン17生成物のTspRI消化後のPCR−RFLP分析。
【図2】
可溶性APP(APPS α及びAPPS β)の分析。上清を、NuPAGEゲル上で解像し、APPS αについてはmAb 6E10(A)又はAPPS βについては53/4(B)を用いてイムノブロッティングした。T714I及びWTについてのバンドを、NIHイメージソフトウェアパッケージを用いて定量した(データは示していない)。
【図3A】
APP WT及びT714Iについての代表的なMALDI−TOF質量分析スペクトル。T714I及びWT APPでトランスフェクトされたHEK293T細胞のコンディションド培地を、IP/MSによってmAb 4G8を用いて研究した。相対ピーク強度を、合成Aβ(12−28)ペプチド(印:std)を用いて標準化し、観察されたピークの正体を、方法に記載したように解釈した。残基40で終わるペプチドについての優勢ピークは、T714Iについては明確に失われていることに注意されたい。
【図3B】
異なるN及びC末端を有する分泌されたAβに対する効果を、詳細に分析した。これらは、Aβ42、Aβ40、Aβ39、Aβ38及びAβ37で終わり、E1(Aβ1− X)、R5(Aβ5− X)、E11(Aβ11− X)、及びL17(Aβ17− X)で開始するペプチドであった。棒はパネル間の比較を可能にするために等しく目盛をつけてある。WTにおけるいくつかの棒の欠如は、低すぎて測定できないピークのためである。*:WTに対して少なくとも<0.001の統計学的有意。
発明の分野
本発明は、アルツハイマー病(AD)の分野に関する。特に、本発明は、アミロイド前駆体タンパク(APP)であるAPP714中に同定され、非常に悪性の形態のADをもたらす新規突然変異(T714I)を提供する。この突然変異は、推定γ42−セクレターゼ切断部位に相当するアミロイドβペプチド(Aβ)の43番目のコドンに関与する。この新規な突然変異は、Aβ40及びAβ42分泌の両方を変更し、インビトロでAβ42/Aβ40比を10倍上昇させる。さらに、これらの患者の脳における主要アミロイド斑病理は、主にN−短縮型Aβ42から構成される拡散「プレアミロイド」タイプのものである。密にコアを形成した(dense−cored)斑は、存在しないわけではないが、有意に低減している。また、Aβ42が優勢に沈着する脳内の通常の部位、例えば脳アミロイド血管障害(CAA)又は老人斑コアとしての血管内においては、完全にAβ42形態から構成されていた。一緒にすると、これらは、脳内の最も早く沈着するアミロイドのひとつにおけるN短縮型Aβ42の沈着(拡散斑)が、よく確立された「アミロイドカスケード」を通じて又は未だ未知のメカニズムによって、ADを引き起こすのに充分な能力があることを示す。
【0002】
発明の背景
アルツハイマー病(AD)は、脳内の細胞内神経原線維濃縮体及び細胞外アミロイド沈着の形成によって組織学的に定義される進行性の神経変性障害である。アミロイドβタンパク(Aβ)がADの発症において果たす役割に対して、特別の注意が向けられていた。実際、ADの皮質及び脳血管アミロイド沈着の主要タンパク成分は、Aβである1−3。蓄積する証拠が、アミロイド前駆体タンパク(APP)1−3からのAβ産生、原線維へのその凝集及びその沈着がADにおいて鍵となる原因学的事象であることを示唆している4。これらの重要な工程の理解は、治療標的を決定することにおいて重要である。少なくとも5つの別個のAPPアイソフォームが存在し、それぞれ、563、695、714、751及び770アミノ酸である(Wirakら(1991) Science 253:323)。これらのAPPのアイソフォームは、ヒト第21番染色体に位置するAPP遺伝子の一次転写物の選択的スプライシングによって生成される。
【0003】
APPタンパクは、βセクレターゼ(BACE)5及び未だ未同定のαセクレターゼによってプロセッシングされ、可溶性APP(APPS α及びAPPS β)及び膜結合C末端フラグメントがもたらされる(α及びβCTFs;総説については参考文献を参照のこと6)。β及び1又は多数のγ−セクレターゼ(γ40及びγ42)による切断は、40〜42アミノ酸のAβペプチド(Aβ1−40及びAβ1−42)を放出する一方、主要分泌経路は、Aβのアミノ酸16及び17の間でAβ配列を切断するαセクレターゼを利用する。γ40又はγ42セクレターゼによるαCTFsのさらなるプロセッシングは、N末端切断型Aβ17−40又はAβ17−42ペプチド(p3)を放出する。Aβ17− Xに加えて、βセクレターゼの活性から生じる2つのその他の主要ペプチドがトランスフェクトされた細胞によって分泌され、アミノ酸5(Aβ5− X)及び11(Aβ11− X)から開始して脳内に沈着することが注目される6 , 7。
【0004】
さらに、8つのミスセンス突然変異が常染色体優性若年発症型ADを有する家族のAPPにおいて同定された8 , 9。すべてのこれらの突然変異は、セクレターゼ切断部位のすぐ近くにクラスターを形成しており、2つの異なる方法でAPP代謝に影響している。βセクレターゼ切断部位の近くに位置するK670N/M671L突然変異10は、Aβ40及びAβ42の両方の産生を増大させる11−13。これに対し、γ−セクレターゼ切断部位の近くに位置する突然変異は、Aβ42の絶対的又は相対的産生の増大をもたらし、一方、Aβの総量は、APP V717I12−14の場合のように影響されないか、又はAPP V715M15の場合のように低減する。これに対し、常染色体優性若年発症型AD8 , 9を引き起こすプレゼニリン遺伝子(PSEN1及び2)内の突然変異は、Aβ42の優先的増大をもたらす。これは、インビトロAβ42がAβ40よりも原線維生成的であり、かつ速く凝集することが明らかにされていたことから、AD病理にとって重要である16。
【0005】
免疫組織化学は、Aβ42はAD及びダウン症候群(DS)患者において拡散斑として最初に沈着するが17、Aβ40は斑のさらなる成長に寄与し、密にコアを形成した老人斑の形成をもたらすことを示した18。Aβ40はまた、血管壁におけるアミロイド沈着の主要構成成分である19−22。コンゴフィリック(congophilic)な密にコアを形成した斑に沈着するアミロイドは、チオフラビン−T及びコンゴレッド結合を証明するので、たしかに線維性である。脳内の軸索(neuriticな)病理学のほとんどは密にコアを形成した斑と関連しているので、このようなコンゴフィリックな沈着は、AD及びDSにおいて病原性であると考えられる23−26。しかし、疾患の病因論ならびにAD及びDS患者における認知的低下に対する非原線維性拡散斑の正確な意義は、その非コンゴフィリックな性質により示唆されるように、あまりよくわかっていない。これらの2つの斑形態はまた、それらの正確なAβ含量に関しても異なっている。全長Aβが主な構成成分であるコンパクトな斑とは対照的に、拡散斑は、p3又はその他のN短縮型Aβ形態から構成されている19 、 27。AβのこれらのN短縮型形態の穏和な性質は、マイクログリア活性化及びアポリポタンパクE(APOE)結合に関与するドメインの欠如によっても示唆される28 , 29。これに関して、APOEのアイソフォームは、この対立遺伝子のキャリアの、この疾患の一般的遅発性形態に対する素因となる。
【0006】
現在、アルツハイマー病のためには、既知の有効な治療法はない。AD病因論に関与する根底の生化学的事象をさらに定義するために用いることができるADの実験モデルを開発することは重要である。このようなモデルは、ひとつの適用において、ADの進行を阻害、防止又は逆行させる分子をスクリーニングするために用いることができる。
【0007】
本発明は、コドン714の核酸がスレオニン(T)の代わりにイソロイシン(I)をコードする、ヒトアミロイド前駆体タンパク770をコードする新規な突然変異核酸を提供する。この突然変異(APPT714I)は、APPにおける、これまでのところ記載された最も「劇的な」突然変異である。この突然変異を有するAD患者の脳においては、主要なアミロイド斑病理学はAβ40の不在下でN短縮型Aβ42(AβX −42)から主に構成される非コンゴフィリックなプレアミロイド性のものである。これらの観察は、AD患者における神経毒性及び認知低下における、Aβ42及びAβ40の原線維全長形態より、又はそれに加えての、拡散プレアミロイドAβX −42についての鍵となる役割を意味する。T714IがADを引き起こす正確な病理学的メカニズムが何であろうと、この異常なAPP突然変異はADが起こるメカニズムを解明するために役立つであろう可能性が高い。
【0008】
本発明の目的
本発明は、アルツハイマー病の非常に攻撃的な形態を患う患者において同定されたヒトアミロイド前駆体タンパク770のコドン714突然変異体をコードする単離されたポリヌクレオチド配列を提供することを目的とする。具体的には、APP770のコドン714はロイシンをコードする。本発明は、APP770のコドン714突然変異体を含むトランスジェニック真核初代細胞、胚性幹細胞株又は不死化細胞株をさらに提供する。本発明は、APPのコドン714突然変異を発現する非ヒトトランスジェニック動物を提供することをも目的とする。本発明の別の目的は、細胞又は動物における、(N短縮型)β−アミロイド42ペプチドの形成を低減することができる分子のスクリーニングのための方法を提供することである。本発明は、さらに、「曇り」拡散斑の形成の分析及び/又は干渉のために非ヒトトランスジェニック動物を用いることをも目的とする。最後に、本発明は、アミロイドβの代替的プロテアーゼ、γ−セクレターゼホモログ及び/又はγ−セクレターゼモジュレーターのスクリーニングのためのアッセイを提供することを目的とする。
【0009】
発明の詳細な説明
本発明は、アルツハイマー病のモデル系を提供する。ここで、このモデル系は、APP770のアミノ酸残基位置714に相当するアミノ酸位置にスレオニン以外のアミノ酸を有するアミロイド前駆体タンパク(APP)アイソフォーム又はフラグメントをコードするDNA配列を含む。
【0010】
あるオーストリアの家系におけるAPP T714I突然変異は、γ42セクレターゼ切断部位に直接位置するAβのアミノ酸43に関与する、現在までに報告された最初のAPP突然変異である。この突然変異を担持する患者は、だいたい34〜35歳の非常に早いADの発病を有し、これはAPPにおける突然変異と関連する常染色体優性ADについてこれまでに報告された最も早い発病年齢である。この早い発病年齢、ならびに疾患の急速な進行及び早期の死亡は、PSEN1における突然変異によって引き起こされるADに匹敵する9。
【0011】
インビトロでは、T714I突然変異は、APPのγ−セクレターゼ切断に劇的に影響し、有意にAβ40を低減させ、Aβ42を増大させた。この効果は、全長Aβに限定されず、N短縮型Aβペプチドにも関与した。AβX −40及びAβX −42の分泌を変更することにおける主要な効果に加えて、T714I突然変異は、残基G38(Aβ38)及びV39(Aβ39)で終わるAβペプチドへのAPPの有意な選択的プロセッシングをももたらす。2.5倍までの総Aβ(AβX − X)の増大及び不変のAPPS α及びAPPS βは、CTFsのプロセッシングがAPPプロセッシングにおいて律速段階であり得ることを示す。
【0012】
多数の用語及び表現が詳細な説明を通じて用いられ、それらの理解を容易にするために、以下の定義が提供される:
【0013】
ここで用いる場合、「単離されたポリヌクレオチド配列」という用語は、Yoshikaiら(1990) Gene 87:257によって詳述されているようなDNA及びcDNA配列を、Salbaumら(1988) EMBO J. 7(9):2807によって記載されているようなプロモーターDNA配列と一緒に、意味すると解釈することができる。
【0014】
ここで用いる場合、「アイソフォーム」、「APP」及び「APPアイソフォーム」は、APP遺伝子の少なくとも1つのエクソンによってコードされるポリペプチドを指す(Kitaguchiら(1988) Nature 331:530; de Sauvage及びOctave(1989) Science245:651; Goldeら(1990) Neuron4:253)。APPアイソフォームは、ADのある形態と関連する又はAD疾患フェノタイプと関連しないAPP対立遺伝子(又はそのエクソン)によってコードされていてもよい。
【0015】
ここで用いる場合、「フラグメント」は、少なくとも約9アミノ酸、典型的には50〜75、又はそれ以上のポリペプチドであって、そのポリペプチドがあるアミノ酸コア配列を含むポリペプチドを指す。フラグメントは、短縮形態のAPPアイソフォーム、改変APPアイソフォーム(例えばコア配列の外でのアミノ酸置換、欠失、又は付加等による)、又は他の変異ポリペプチド配列であることができるが、ADに罹患しているといないとに関わらず、ヒト個体に存在する天然のAPPアイソフォームではない。望ましい場合、フラグメントは、いずれかの末端で付加的なアミノ酸に融合されていてもよく、それは1〜20、典型的には50〜100の数であってよく、250〜500まで又はそれ以上であることができる。
【0016】
ここで用いる場合、「APP770」は、ヒトAPP遺伝子によってコードされる770アミノ酸残基の長さのポリペプチドを指す。
【0017】
ここで用いる場合、「コドン714」は、APP770の714番目のアミノ酸位置、又はAPP770の714番目に相当するAPPアイソフォームもしくはフラグメント中のアミノ酸位置をコードするコドン(すなわちトリヌクレオチド配列)を指す。例えば、これに限らないが、100個のN末端アミノ酸を除去することによってAPP770を短縮して生成された670残基の長さのフラグメントは、コドン714に相当する614番目のアミノ酸位置を有する。
【0018】
ここで用いる場合、「ヒトAPPアイソフォーム又はフラグメント」は、ヒト個体に自然に生じるヒトAPP770、APP751又はAPP695タンパク中の配列と同一の少なくとも9個の連続するアミノ酸の配列を含むAPPアイソフォーム又はフラグメントを指し、ここで、同一の配列は、非ヒト種に自然に生じるAPPタンパク中には存在しない。
【0019】
核酸は、別の核酸配列と機能的な関係に置かれている場合、「作動可能に連結されている」。例えば、プロモーター又はエンハンサーは、そのコード配列の転写に影響する場合、その配列と作動可能に連結されている。転写調節配列に関しては、作動可能な連結は、連結されているDNA配列が、連続しており、2つのタンパクコード領域を結合することが必要な場合には連続しかつリーディングフレーム内にあることを意味する。
【0020】
ここで用いる場合、「突然変異体」という用語は、ADを発症する遺伝的素因について疾病特徴的なミスセンス突然変異を有するAPP対立遺伝子を指す。具体的には、APP遺伝子の(APP770中のアミノ酸配列によって参照されるように)コドン714の突然変異であり、コドン714がスレオニンではない19のアミノ酸(すなわち、バリン、グリシン、メチオニン、アラニン、セリン、イソロイシン、ロイシン、プロリン、ヒスチジン、システイン、チロシン、フェニルアラニン、グルタミン酸、トリプトファン、アルギニン、アスパラギン酸、アスパラギン、リシン、及びグルタミン)のうちの一つ、好ましくはイソロイシンをコードするようになったものである。したがって、本発明の突然変異APP770ポリペプチドは、位置714にスレオニンではないアミノ酸残基を有するAPP770ポリペプチドである。他の突然変異APPアイソフォームは、コドン714に相当する(すなわちコドン714によってコードされる)アミノ酸残基位置に非スレオニンアミノ酸を含む。同様に、突然変異APP対立遺伝子又は変異APPコドン714対立遺伝子は、コドン714(「コドン714」の定義に記載されているようにヒトAPP770推定翻訳を参照)にスレオニン以外のアミノ酸、好ましくはイソロイシンをコードするAPP対立遺伝子である。したがって、コドン714にスレオニンをコードするAPP対立遺伝子は、「野生型」APP対立遺伝子である。APPT714Iの配列は、配列番号1に示す。
【0021】
第一の態様においては、本発明は、APP770のアミノ酸残基位置714に相当するアミノ酸位置にスレオニン以外のアミノ酸を有するAPPアイソフォーム又はフラグメントをコードする単離されたポリヌクレオチド配列を提供し、本発明の1つの具体的な態様においては、このアミノ酸は、イソロイシンである。
別の態様においては、前記突然変異APPアイソフォーム又はフラグメントをコードする単離されたポリヌクレオチド配列は、プロモーターに作動可能に連結されている。
【0022】
別の態様においては、本発明は、APP770のアミノ酸残基位置714に相当するアミノ酸位置にスレオニン以外のアミノ酸を有する、他のヒトタンパクを含まない、ヒトAPPアイソフォーム又はフラグメントを提供する。発現系の非制限的な例として、バキュロウイルス発現系は真核細胞における異種遺伝子の高レベル発現について有用であり、Knopsら(1991)J. Biol. Chem. 266(11): 7285は、前記発現系を用いたAPPの発現を記載している。
【0023】
別の態様においては、本発明は、上記のAPP714突然変異を含む異種DNA配列で形質転換又はトランスフェクトされた、又はトランスジェニック非ヒト動物から由来した、組換え細菌及び細胞、典型的には真核細胞、そして好ましくは哺乳類細胞、及びより優先的には神経、グリア、又は星状細胞系統の細胞であって、細胞が、APP770のアミノ酸残基位置714に相当するアミノ酸位置にスレオニン以外のアミノ酸を有するAPPアイソフォーム又はフラグメントを発現するものを提供する。標準的なプロトコールによれば、培養されたヒト細胞が突然変異体APP714ポリペプチドを発現するように、培養されたヒト細胞(初代培養又は不死化細胞株のいずれか)を、突然変異体APP714対立遺伝子で一過性又は安定にトランスフェクトすることができる。
【0024】
ある具体的な態様においては、細胞は、天然から由来することもできる。これについて、例えばエプスタイン−バーウイルスを用いてリンパ芽球腫細胞株へと永久に形質転換され得る必要な細胞を提供するためには、APP714突然変異を有すると診断された罹患個体由来の血液試料又は線維芽細胞を入手しなければならない。いったん樹立されると、このような細胞株は、懸濁培養において連続的に生育することができ、突然変異体APP714発現及びプロセッシングを研究するための種々のインビトロ実験のために用いることができる。
【0025】
APP714突然変異は優性なので、細胞株を構築する代替的な方法は、突然変異遺伝子又はコドン714にわたるその部分を遺伝的に操作し、選択した樹立(安定又は一過性)細胞株にすることである。Sisodia (1990) Science 248:492は、トランスフェクションによる哺乳類細胞への正常APP遺伝子の挿入を記載している。Oltersdorfら(1990) J. Biol. Chem. 265:4492は、不死化真核細胞株へのAPPの挿入を記載している。
【0026】
別の態様においては、本発明は、その体細胞及び生殖細胞に、APP770のアミノ酸残基位置714に相当するアミノ酸位置にスレオニン以外のアミノ酸を有するAPPアイソフォーム又はフラグメントをコードするヒトDNA配列の少なくとも1つの組み込まれたコピーを担持するトランスジェニック非ヒト動物を提供する。
【0027】
トランスジェニック非ヒト動物、例えばトランスジェニックマウスは、APP714突然変異を有するAD患者のヒト脳におけるのと同様にAβ42の排他的な沈着が期待されるので、特別の価値を有するであろうことが期待される。マウスにおける突然変異体プレゼニリン1有り又は無しでの突然変異体APPの過剰発現は、密にコア形成した斑へのAβ40沈着の優性性を示す(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?cmd=Retrieve&db=PubMed&list uids=10448051&dopt=Abstract)。また、げっ歯類脳においては、Aβ42ではなくAβ40が、コンゴフィリックアミロイド沈着物として容易に沈着可能であるようであり(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?cmd=Retrieve&db=PubMed&list uids=9334394&dopt=Abstract)、それは、Aβ42ではなくAβ42が、ADの原因学について中心的であると提案されていることに関して重要である(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?cmd=Retrieve&db=PubMed&list uids=10196523&dopt=Abstract)。本発明においては、突然変異体APP714についてニューロン及び非ニューロンの組換え細胞の両方が、Aβ42の分泌を増大し、一方、Aβ40が低減する。罹患患者の脳においては、ほとんど全くAβ40又はAβ39の沈着がなく、斑が完全にAβ42から構成されている。結論として、この新規なトランスジェニックマウスは、ヒトにおいてはAβ42の沈着が常にAβ40の沈着に取って代わるので、ADのヒト疾患フェノタイプをよりよく模倣するであろう。
【0028】
好ましい例においては、突然変異した遺伝子を含むトランスジェニック動物の創出における使用のために突然変異APP714遺伝子を切り出すことが可能である可能性がある。別の例においては、ヒトAPP714対立遺伝子全体を、クローニングベクター(例えばコスミド又は酵母又はヒト人工染色体)中に、部分で又は全体として、クローニング及び単離することができる。部分又は全体としてのヒト変異体APP714遺伝子は、マウス又はラットのような宿主非ヒト動物に移入することができる。移入の結果として、得られたトランスジェニック非ヒト動物は、好ましくは1つ又はそれ以上の突然変異体APP714ポリペプチドを発現する。最も好ましくは、本発明のトランスジェニック非ヒト動物は、1つ又はそれ以上の突然変異体APP714ポリペプチドを、ニューロン特異的な方式で発現する(Wirakら(1991) EMBO J. 10:289)。これは、最初の主要APP転写開始部位の上流の、それに隣接する4.5キロベース配列を含む、実質的にヒトAPP遺伝子全体(コドン714突然変異体をコードする)を移入することによって達成することができる。
【0029】
あるいは、変異体APPコドン714ポリペプチドをコードするミニ遺伝子を設計することができる。このようなミニ遺伝子は、下流のポリアデニル化シグナル配列及び上流のプロモーター(及び好ましくはエンハンサー)に連結された、(好ましくは全長の)変異体APPコドン714ポリペプチド、APP遺伝子エクソンの組み合わせ、又はそれらの組み合わせをコードするcDNA配列を含んでいてもよい。このようなミニ遺伝子構築物は、適切なトランスジェニック宿主(例えばマウス又はラット)に導入された場合、コードされる変異体APPコドン714ポリペプチド、最も好ましくはAPP770のコドン714又はAPPアイソフォームもしくはフラグメントの相当する位置にイソロイシンを含む変異体APPコドン714ポリペプチドを発現する。
【0030】
トランスジェニック動物を作製するための別のアプローチは、インビトロでの胚性幹(ES)細胞株における相同組換え、及びそれに続く宿主胞胚への改変されたES細胞のマイクロインジェクション及びその後の養母中でのインキュベーションによって所望の遺伝子に突然変異をターゲティングすることである(Frohman及びMartin(1989) Cell 56:145を参照されたい)。あるいは、一細胞胚への突然変異遺伝子又はその一部分のマイクロインジェクション及びそれに続く養母中でのインキュベーションの技術を用いることができる。トランスジェニック動物、特に野生型APPアイソフォーム又はフラグメントを発現するトランスジェニック動物の種々の用途は、Wirakら(1991) EMBO J. 10(2):289; Schillingら (1991) Gene 98(2):225; Quonら (1991) Nature 352:239; Wirakら(1991)Science 253:323; 及びKawabataら(1991) Nature 354:476に開示されている。トランスジェニック動物を作製するための更なる方法は当業界において公知である。
【0031】
あるいは、部位特異的突然変異誘発及び/又は遺伝子変換を用いて、内在性又はトランスフェクトされた、マウス(又は他の非ヒト)APP対立遺伝子を突然変異させ、突然変異した対立遺伝子がヒトAPP遺伝子のコドン714(APP770の)に相当するマウスAPP遺伝子中のコドン位置にスレオニンをコードしないようにすることができる(このような位置は、ヒトAPP遺伝子又はAPP770タンパクに対するマウスAPP遺伝子又はAPPタンパクの相同性マッチングによって容易に同定することができる)。好ましくは、このような突然変異したマウス対立遺伝子は、相当するコドン位置にイソロイシンをコードする。
トランスジェニックラットを作製するための手順は、マウスのものと同様である(Hammerら、Cell 63:1099−112(1990))。30日齢の雌ラットに、20IUのPMSG(0.1cc)の皮下注射を与え、48時間後、各雌を証明された雄と一緒に置く。同時に、40〜80日齢の雌を精管切除された雄と一緒にケージ内に置く。これらは、胚移入のための養母を提供することになる。翌朝、雌を膣栓について調べる。精管切除された雄と交配させた雌は、移入時までとっておく。交配したドナー雌を犠牲死させ(CO2窒息)、それらの卵管を取り出し、0.5%BSAを含有するDPBS(Dulbeccoのリン酸緩衝生理食塩水)中に置き、胚を集める。胚を囲んでいる丘細胞をヒアルロニダーゼ(1mg/ml)で除去する。次に胚を洗浄し、マイクロインジェクションの時まで0.5%BSAを含有するEBSS(Earleのバランス塩類溶液)中、37.5℃インキュベーター内に置く。
【0032】
いったん胚を注入すると、生きている胚は養母への移入のためにDPBSに移動する。養母は、ケタミン(40mg/kg、腹腔内)及びキシラジン(5mg/kg、腹腔内)で麻酔する。皮膚を通じて腹側中線切開を作製し、卵巣及び卵管を、卵巣を直接覆う筋肉層を通る切開によって露出する。卵嚢を破き、胚を移入ピペット中に拾い上げ、この移入ピペットの先端を漏斗内に挿入する。約10〜12個の胚を、漏斗を通じて各ラットの卵管内に移入する。次に切開を縫合で閉じ、養母を単独で巣に入れる。
【0033】
本発明の別の態様においては、ヒトアミロイド前駆体タンパク770のコドン714突然変異体をコードするポリヌクレオチド配列又はそのアイソフォームもしくはフラグメントでトランスフェクトしたトランスジェニック細胞株を、分子のスクリーニング及びその分子の有効性のモニタリングのための薬剤スクリーニングアッセイにおいて使用することができる。更に、このようなモデル系は、根底にあるAPP及びβ−アミロイド代謝の生化学を定義するための道具を提供し、それによって合理的な薬剤設計の基礎を提供する。分子の特異的有効性は、その分子の投与なしでのAβ42ペプチド又はN短縮型Aβ42ペプチドの量と比較して、より低いAβ42ペプチド又はN短縮型Aβ42ペプチドの形成を測定することによってモニタリングすることができる。好適な分子は、小さい分子、生物学的ポリマー、例えばポリペプチド、多糖類、ポリヌクレオチド等である可能性がある。小さい分子(例えば小さい有機分子)及び他の薬剤候補は、例えばコンビナトリアル及び天然生成物ライブラリーから得ることができる。試験化合物は、典型的には約1nM〜1mM、通常約10μM〜1mMの範囲の濃度で培地に投与される。
【0034】
Aβ42ペプチド形成及び/又はその短縮型形態のモニタリングは、標準的生化学的技術を用いて測定することができるが、優先的にはELISAアッセイで行う。これらのアッセイは、スクリーニングの経過中にこれらの目的のために開発された従来の技術を用いて行うことができる。
【0035】
薬剤スクリーニングアッセイを行うために、アッセイの自動化に適応させることが可能である。組換え細胞及び標的分子の間の相互作用(例えば結合)は、反応物質を含有させるために好適な任意の容器内で達成することができる。このような容器の例としては、マイクロタイタープレート、試験管、及び微量遠心管が挙げられる。
【0036】
同様にスクリーニングアッセイの範囲内にあるのは、組換え細胞株において特異的mRNA標的の翻訳を阻害するように機能するアンチセンスRNA及びDNA分子を含むオリゴヌクレオチド配列である。このような標的が、例えばβ−セクレターゼホモログ又は前記β−セクレターゼ(ホモログ)もしくはN短縮型Aβ42ペプチドのようなAβ42ペプチドの短縮形態の生成に関与するプロテアーゼのモジュレーターであろうことは、非常に充分な可能性がある。例えば、アンチセンスRNA分子は、遺伝子ライブラリーの合成の技術分野において公知の任意の方法によって調製されたライブラリーにおいて生成してもよい。あるいは、前記アンチセンス配列は、誘導可能又は構成的プロモーターの発現下でアンチセンスcDNAライブラリー中に構築することができる。
【0037】
別の態様においては、上述のような非ヒトトランスジェニック動物は、「曇り」拡散斑の阻害及び形成について分析することができる。APP714中の本発明の突然変異は、主にN短縮型Aβ42から構成される異常な斑組成を有する重症のAD病理学及び形態学をもたらす。Aβ40形態は、ヒト脳におけるアミロイド沈着にはほとんど存在せず、典型的な密にコア形成した斑の形成が遅延することが見出されている。優性なアミロイド沈着は、ジストロフィ的(distrophic)軸索及び反応性グリオーシスと関連する拡散した非コンゴフィリックアミロイド斑である。本発明においては、拡散した非コンゴフィリック(及びそのため非原線維性)Aβ斑が病原性でありADを引き起こすという新規な病理学的知見が提示される。更に、罹患患者においては、ジストロフィ的軸索及び神経原線維の病理学は、斑非依存性の方法で発症することができることが示される。これは、非原線維性プレアミロイド沈着がニューロン毒性を引き起こす潜在能力を有すること、及び軸策性(neuritic)及びアミロイド病理学の発症がAD疾患のある段階で分離され得ることを証明する。更に、本発明は、N短縮型Aβ42がニューロン毒性及びAD患者における認知低下を引き起こすのに必要かつ十分な役割を果たすという証拠を初めて提示する。具体的な態様においては、上述のような非ヒトトランスジェニック動物は、分子のスクリーニング及び脳内でのAβ沈着に対するその分子の効果についてのその動物のモニタリングに用いることができる。優先的には、細胞性スクリーニングアッセイにおいて同定され、N短縮型Aβ42の形成及びAβ42形成に対する効果を有する分子が非ヒトトランスジェニック動物に投与される。トランスジェニック動物のモニタリングは、脳内の斑の量の測定、異常リン酸化タウタンパクの量及び/又はグリア細胞の数の増加の測定を含むがそれらに限定されない病理学的研究によって行うことができる。用いることができる別の手順は、行動活性試験における減少の測定である。学習及び記憶の欠陥を評価するために設計された行動試験が利用される。このような試験の一例は、Morris Water迷路(Morris, Learn. Motivat. 12:239−260(1981))である。この手順においては、動物を、水の表面のすぐ下に沈めた避難プラットフォームを備えた、水で満たした円形プールに置く。プラットフォーム上には視認できるマーカーを置いて、動物が近位の視覚的な手掛かりに向かって進むことによってそれを見つけることができるようにする。あるいは、プラットフォームの位置をマークする形式的な手掛かりがない、より複雑な形態の試験を動物に与える。この形態においては、動物は、遠位の視覚的な手掛かりに対する相対的なプラットフォームの位置を学習しなければならない。
【0038】
試験トランスジェニックマウスに適用される手順は、トランスジェニックラットについても同様である。
【0039】
最後に、最後の態様においては、APP770のアミノ酸残基位置714に相当するアミノ酸位置にスレオニン以外のアミノ酸(好ましくはイソロイシン)を有するAPPアイソフォーム又はフラグメント(これはγ−セクレターゼの好ましい基質である)をコードするポリヌクレオチド配列は、γ−セクレターゼモジュレーター、及び/又はAβ42のN短縮型形態及びC短縮型形態をもたらす選択的プロセッシング酵素の同定のために用いることができる。最近、γ−セクレターゼの活性がアスパルチルプロテアーゼの新規なクラスであるプレゼニリンによってコードされるという説得力のある証拠が提供された(Liら (2000) Nature 405:689)。前記の同定は、検出可能なγ−セクレターゼ活性がもはや存在しない二重プレゼニリンノックアウトES細胞株中で優先的に行うことができる(Herreman Aら (2000) Nat.Cell Biology 2:461)。したがって、本発明のAPP714突然変異と一緒での二重プレゼニリン突然変異体ES細胞株は、γ−セクレターゼホモログ、γ−セクレターゼ活性の遺伝的モジュレーター及びAPPタンパクの代替的プロセッシング酵素を単離及び同定するための優れたコンビナトリアルツールである。単離によって、補充、スクリーニング、又はゲノムもしくはcDNAライブラリーを用いる選択クローニング法のような標準的分子生物学のツールを用いて細胞をトランスフェクトし、γ−セクレターゼ活性を誘導することが意味される。アデノウイルス、レンチウイルス又はレトロウイルスライブラリーのような組換えウイルスライブラリーもまた使用し得ることは明らかである。先に述べた方法論は単なる例であり、潜在的な候補をもたらし得る他の可能なアプローチを排除するものではない。タンパク分解活性の回復に続いて異なる手段を行うことができ、少数の例を挙げると、ELISAアッセイ又はアミロイドペプチド産生を測定する他のアッセイ、又はルシフェラーゼレポーター系もしくは他のものを用いるノッチ切断を測定するアッセイがある。このようなアッセイの感度を増大するために、APP714突然変異体又は他のタンパク及びこのようなアッセイに有用なレポーターをコードするcDNAでES細胞を安定にトランスフェクトすることを考慮することができる。
【0040】
以下の実施例は、本発明の好ましい特徴をより充分に説明するが、いかなる方法においても本発明を制限することを意図されていない。以下に開示されている出発物質及び試薬のすべては、当業者には公知であり、商業的に入手可能であるか、又は周知の技術を用いて調製することができる。
【0041】
実施例
APP T714I突然変異
家族AD156(図1A)は、早期発症型ADの常染色体優性遺伝と一致するオーストリアの家族であり、DNA診断のために調べられた。発端者、その姉妹、及び彼女らの母は、それぞれ38歳、38歳及び44歳の時にNINCDS−ADRDA基準にしたがっておそらくADであるとして診断された。しかし、認知障害及び行動障害の兆候は、3人の患者すべてにおいて数年前から明らかであり、この家族における34歳までの平均発症年齢が示唆された。発端者のゲノムDNAを、APP、PS1及びPS2中の突然変異について検査した。APPのエクソン17中に(図1B)、ヘテロ接合性のCからTへのトランジション(転置)が位置2208に同定され、コドン714のThr(T)がIle(I)に置換されていた(T714I、番号付けはAPP770アイソフォームにしたがう)。この突然変異は、TspRI制限部位を失わせており、これは発端者(156.1)及びその姉妹(156.2)におけるこの突然変異の存在を確認するために用いられた(図1C)。この突然変異は、その父ならびに50人の健康なオーストリア人においては欠如していた。他の突然変異は検出されなかった。
このオーストリアT714I突然変異は、γ42−セクレターゼ切断部位に直接位置するAβのアミノ酸43に関与する、現在までに報告された最初のAPP突然変異である。早い発症年齢、ならびに疾患の急速な進行、及び早期の死亡は、PS1における突然変異によって引き起こされるADに匹敵する(http://molgen−www.uia.ac.be/ADMutations)。
【0042】
インビトロで劇的に変更されたAPPプロセッシング
γ42−セクレターゼの切断特異性に対するT714I突然変異の影響を理解するために、非ニューロン及びニューロン細胞におけるAPPのプロセッシングを研究した。ヒト胚性腎臓(HEK)293T細胞を、T714I APP cDNAで一過性にトランスフェクトし、分泌されたAβ1−42及びAβ1−40レベルをコンディションド培地中で酵素結合免疫吸収アッセイ(ELISA)によって測定した(De Jongheら、1999; De Strooperら、1998)。野生型(WT)及びロンドンV717I(Goateら、1991)APP cDNAを過剰発現する細胞を対照として用いた。T714I突然変異は、Aβ42を増大させ、同時にAβ40を低減させて、有意に増大したAβ1−42/Aβ1−40比(p<0.001)をもたらし、これはWT APPにおけるものより4倍高かった。同じ実験において、V717Iは、Aβ1−42の増大のみによって1.8倍増大したAβ1−42/Aβ1−40比をもたらし、これらの結果は以前発表されたデータに匹敵する(Suzukiら、1994)。本発明者らは、ELISAによって患者(156.2)、その罹患していない父(156.3)及び5人の無関係な年齢適合対照の血漿中のAβ1−42及びAβ1−40もまた測定した。Aβ1−42/Aβ1−40比は、罹患していない父と比較して2.5倍増大しており、対照と比較して1.7倍であった。T714I及びWT APPでトランスフェクトされたHEK293T細胞のコンディションド培地もまた、レーザーイオン化飛行時間型(MALDI−TOF)質量分析法によって分析した(図2)(Haassら、1992;Sisodiaら、1990)。この方法は、全長及びN短縮型の両方のAβを評価することを可能にした。WTと比較して、T714Iは、6.4倍(p<0.001)のAβ1−42の有意な上昇を示したが、同時に、Aβ1−40は有意に43%減少した(p<0.001)。これは、ほぼ等しいレベルの分泌Aβ1−40及びAβ1−42をもたらし、Aβ1−42/Aβ1−40比を10.8倍増大した。同様の影響は、p3に対しても見られ、等しいレベルの分泌Aβ17−40及びAβ17−42、及びWTに対して10.7倍増大したAβ17−42/Aβ17−40比を有していた。T714I突然変異の1つの他の顕著な影響は、N末端残基に関わらずV39及びG38で終わるAβペプチドの増大である。同様の影響は、G37で終わるp3ペプチド及び全長Aβについても見られた。これらのペプチドは、Aβ1−40及びAβ1−42ペプチドが非トランスフェクト細胞の培地に添加された場合には分解しなかったことから、全長Aβのタンパク分解によって人工的に生成されたのではない(Wangら、1996)。Aβ40の劇的な増大にもかかわらず、N又はC末端に関係のない総Aβ(AβX − X)は、T714Iについて2.5倍増大した。γ42−セクレターゼ切断部位の近傍に位置する他のAPP突然変異(Ancolioら、1999; Caiら、1993; Goateら、1991; Suzukiら、1994)と比較して、T714Iは、Aβ42/Aβ40において最高の増大を有する。興味深いことに、Aβ40のインビトロでの減少もまた、T714Iの1アミノ酸下流であるフランスI715M突然変異について最近報告された(Ancolioら、1999)。これらの突然変異がAβ40及びAβ42分泌に影響する又はAβ38もしくはAβ39への代替的切断をもたらすメカニズムは、未だ解明されていない。別個のγ−セクレターゼ(Citronら、1996)は、この領域においてα−へリックス構造を有する(Lichtenthalerら、1997)これらの突然変異CTFsに対して異なる結合親和性/切断効率を有する可能性があり(Klafkiら、1996)、3又は4位置離れたアミノ酸残基が空間的に近づくことを可能にする。これは、なぜT714I及びV715Fが同様にγ40−セクレターゼ活性にも影響するかを説明する可能性がある。総Aβの増大がγ−セクレターゼの更なる作用によるCTFsの増大したプロセッシングによるのか、あるいはα及びβ−セクレターゼが存在する細胞の区画へのAPPの増大した往来によるのか、を分析するために、本発明者らは、APPS α及びAPPS βを定量した。有意な変化は記録されなかった(図3)。総Aβ(AβX − X)の増大と一緒に考慮すると、APPS α及びAPPS βの不変のレベルは、CTFsのプロセッシングがAPPプロセッシングの律速段階であろうことを示した。次の段階において、本発明者らは、一次ニューロンにおけるAPPのγ−セクレターゼ切断部位の近くの一連の臨床的突然変異の影響を系統的に分析した。この目的のため、本発明者らは、ヒトWT APP、又はオーストリアT714I(Kumar−Singh S (2000) Hum. Mol. Genet. 9:2589)、フランスV715M(Ancolio K(1999) PNAS 96:4119)、ドイツV715A(Van Broeckhoven、未発表データ)フロリダI716V(Eckman C(1997) Hum. Mol. Genet. 6:2087)、インディアナV717L(Murrell JR(2000) Arch. Neurol. 57:885)又はロンドンV717I(Goate A (1991) Nature 349:709)突然変異のいずれかを含むAPPを、ニューロンの初代培養物中で発現させた。本発明者らは、抗体FCA3340又は抗体FCA3542を用いて(Barelli H(1997) Mol. Med. 3:695)、それぞれAβ40 〜又はAβ42を馴化培地から特異的に免疫沈降させた。V715Mを除いてすべてのAPPのC末端突然変異は、Aβ1−42の分泌を増大させた。Aβ1−42の増大は、T714Iについての1.54倍からV717Lについての2.71倍までにわたった。これは、残基42で終わるN短縮型Aβアイソフォーム(AβX −42)の増大が伴っていた。これらのアイソフォームはゲル中を二重のバンドとして泳動し、おそらく、アミノ酸残基11での代替的β−セクレターゼ活性によって、又はAβ配列のアミノ酸残基17でのα−セクレターゼ活性によって、生成されている。一方、Aβ1−40は、ほとんどの突然変異について減少する。T714I、V715M及びV715A突然変異は、Aβ1−40分泌を、それぞれ野生型レベルの20%、30%及び55%まで最も劇的に減少させる。V717I及びV717L突然変異は、それより少ない程度でAβ40分泌に影響し、I716V突然変異は見かけ上Aβ40分泌に影響しない。N短縮型Aβ40アイソフォーム(AβX −40)の分泌は、Aβ1−40に匹敵する程度で減少した。したがって、Aβ1−42/Aβ1−40比を各突然変異についてWT APP(任意に、1に等しいと設定した)と比較する場合、この比は、すべてのAPP突然変異において増大する。この増大は、V717Iについての1.89倍からT714Iについての8.20倍までにわたる。更に、Aβ1−42/Aβ1−40比は、異なる突然変異についての平均発症年齢と逆に相関する(r=−0.86)。
【0043】
異常斑形態学及び構成
発端者(156.1)の神経病理学的検査により、拡散グリオーシス、アミロイド斑及び神経原線維濃縮体を伴う広範なニューロン損失が示され、ADの診断が確認された。本発明者らは、3つの選択した脳領域、すなわちエントリナル(entorhinal)皮質(ERC)を含む海馬(viz. hippocampus)、側頭皮質及び前頭皮質由来の連続切片についての組織及び免疫組織化学によって徹底的な分析を行った。全長Aβ及びp3の両方を認識する抗体(mAb 4G8)を用いた免疫染色により、しばしば中心裂孔(central lacuna)に封入された「雲様」拡散斑として巨大な斑負荷が優勢に顕著に染色された。歯状回の分子層においては、アミロイド斑は、PS1Δ9患者について記載されたのと同じ非軸索「綿毛(cotton wool)」斑を有していた(Crookら、1998)。本発明者らは、コンゴレッド及びチオフラビン染色によってアミロイド斑の線維性の性質を決定した。密にコア形成した斑は、コンゴフィリックであり、チオフラビンで蛍光性であったが、一方、拡散斑の大部分は非コンゴフィリックであった。チオフラビンについて弱い陽性の少数の拡散斑においては、線維性アミロイドは、免疫組織化学的に認識された総アミロイドのほんの小さい部分のみを占めていた。ERCの第III層においては、アミロイド斑はコンゴフィリックであったが、一方、その表面及び深部の層においては、拡散斑はここでも非線維性であった。強い軸索病理は、CA1、及び海馬及びERCの鉤状回分野において顕著であった。軸索は、過リン酸化タウ(AT8)、ユビキチン、及びAPPを、斑病理学にかかわらず蓄積した。アミロイド染色とともに内皮細胞マーカー(CD31及びCD34)を用いると、拡散斑ではなく老人斑コアは、血管と密接に関連していた。この特徴は、終板において最も顕著であり、ここではすべての線維性アミロイド沈着物が血管と関連していた。次に、本発明者らは、インビボでこの突然変異がAPPプロセッシングに対して同様の影響を有するかどうかを検査した。C末端Aβ40特異的モノクローナル抗体(mAb)であるJRF/cAb40/10に対する反応性は、同皮質中の血管壁及びアミロイド斑の両方において完全に欠如していたが、一方、海馬の終板領域においては弱い免疫反応性が時々存在した(各0.7mm2の10視野当り2〜3のアミロイド沈着物)。対照的に、C末端Aβ42特異的mAbであるJRF/cAb42/12は、拡散斑、血管壁及び「非頻発性」の密にコア形成した斑を含むすべてのアミロイド沈着物に強い反応性を付与した。4G8で切片を染色し、画像解析によってAβ40及びAβ42に対して特異的な抗体についての免疫反応性と比較した。海馬においては、Aβ40は、アミロイド沈着物の1〜7%しか構成していなかったが、新皮質においては完全に欠如していた。共焦点レーザー走査顕微鏡(CLSM)による多スペクトル分析もまた、Aβ40の欠如及び4G8及びAβ42特異的抗体についての完全な組織化学的重複を明らかにした。これらの観察は、他のAβ40特異的(FCA3340; Clementsら、1993、及びR209; Mehtaら、2000)及びAβ42特異的抗体(21F12、Johnson−Woodら、1997; FCA3542、Clementsら、1993; R226、Mehtaら、2000)を用いて確認された。本発明者らは、Val39(Aβ39)及びThr43(Aβ43)で終わるAβの存在についてもチェックしたが、これらのペプチドのいずれもがAPP714脳に有意に沈着していなかった。本発明者らは、これらのアミロイド沈着物におけるAβのN短縮を研究し、拡散斑が何らかのグリア反応を起こすことができるかどうかを確認した。N末端Aβに対する抗体のパネル(6E10、6F/3D及びJRF/AβN/11)についての反応性は、4G8反応性と比較した場合、拡散斑はN短縮型Aβから構成され、一方、全長Aβは血管壁、密なアミロイドコア及びERC第III層のアミロイド斑に封入されており、深部皮質層については顕著に陰性であることを示した。豊富なグリア及び炎症性病理が、大グリア細胞(GFAP)、ミクログリア細胞(CD68、HLA−DR)及び補体(C1q)マーカーを用いて拡散斑ならびにコンパクト斑に関連して記録された。強いグリア活性化は白質におけるのと同様に斑病理無しの多くの領域において記録されたが、ミクログリアはコンパクト斑の近傍に存在した。
【0044】
トランスジェニックマウスの作製
本発明者らは、現在トランスジェニックマウスを作製している。突然変異体APP714が血小板由来成長因子(PDGF)プロモーターの制御下にある構築物の配列を、配列番号2として示す(配列番号2におけるヌクレオチド番号付けを有する構築物、114〜1576 PDGFプロモーター;1676〜1905 Gormanの合成イントロン;1648〜1932 pIRES−EYFPから由来する、Gormanのイントロンに隣接する配列;1938〜4022 APPコード配列(1938−ATG、4023−TAG);4026〜4678 APP 3′UTR;4691〜4899 SV40 pA付加;3853 CからTへの転置(APP714突然変異))。線状化された配列番号2のような構築物を精製し、4種のF1雑種株(C57/Bl/6 × CBA,C57/Bl/6 × DBA、C57/Bl/6 × D2、C57/Bl/6 × C3H)の過剰***させた雌から単離された1.5日齢の前核胚にマイクロインジェクションする。
【0045】
材料及び方法
AD診断
家族AD156の患者を、神経学的検査、神経心理学的試験、神経イメージング及び神経病理学に基づいてADと診断した(Kleinertら、準備中)。その母親は44歳の時に診断された。彼女は、進行性記憶障害を有し、そのうち分別を失った。EEGは、中程度であるが一般化された非特異的変化を示したが、一方、CTは脳萎縮を示した。この発端者ならびに彼女の姉妹は、38歳の時に神経学的検査を受けた。彼女らはともに重症のうつ病を患っていた。ミニメタルステート検査(MMSE)は、痴呆の存在を確認した。SPECTは明確な活動低下を示し、一方、CTは脳萎縮の存在を確認した。MMSEによって繰り返し測定されると、姉妹の両方において痴呆は急速に進行していた。例えば、39歳の時、発端者は18/30の得点を示し、彼女の姉妹は11/30であり、40歳の時、得点は既にそれぞれ10/30及び3/30に低下していた。症状の発症の実際の年齢は、患者らを処置した神経学者によれば数年前であった。母親の発症年齢は、5〜7年前、娘たちでは4〜5年前と見積もられた。したがって、家族AD156における平均発症年齢は、34歳までと見積もられた。発端者のAPOEゲノタイプはE3E3、姉妹のそれはE2E3であった。母親のAPOEゲノタイプ、E2E3は、父親及び同胞のそれから推定された。発端者は41歳で死亡し、脳の剖検を受け、その姉妹は42歳でまだ生きている。脳の巨視的検査は、ひどい萎縮を示し、1000gまでの重さであった。前脳、中脳及び後脳由来の切片を、ヘマトキシリン−エオシン(HE)、Nissl、コンゴレッド、及び改変Bielshowskyで染色した。初老性ADの決定的な診断が下された。
【0046】
遺伝子解析
APPのエクソン16及び17を、患者156.1のゲノムDNAから、発表されたプライマーセット及びPCR条件を用いて(Bakkerら、1991)PCR増幅し、PCRフラグメントを、「Ready Reaction ローダミン ダイターミネーター サイクルシークエンシング」キット(Applied Biosystems, Foster City, USA)を用いて配列決定した。生成物を、ABI310キャピラリDNAシークエンサー(Applied Biosystems)で解析した。APP T714I突然変異は、PCR増幅されたAPPエクソン17のTspRI消化によって解析された。354bpの野生型(WT)フラグメントは、それぞれ232bpと122bpとの2つのフラグメントに切断され、一方、T714I突然変異フラグメントは切断されない(図1)。PS1及びPS2のすべてのコードエクソンを、発表されたプライマーセット(Crutsら、1998)を用いてゲノムDNAからPCR増幅し、記載されたような(Crutsら、1998)一本鎖DNA高次構造多型(SSCP)解析によって突然変異についてスクリーニングした。APOEゲノタイプは、記載されたように決定した(van Duijnら、1994; Wenhanら、1991)。
【0047】
インビトロ突然変異誘発
部位特異的突然変異誘発を、「QuikChange 部位特異的突然変異誘発」系(Stratagene, La Jolla, CA, USA)を用いてpCDNA3にクローニングされたWT APP695 cDNAについて行った。プライマーapp714s(5′−CGGTGTTGTCATAGCGATAGTGATCGTCATCACC−3′)及びapp714as(5′−GGTGATGACGATCACTATCGCTATGACAACACCG−3′)を用いて、構築物中にAPP T714I突然変異を挿入した。構築物の配列は、「Taq ダイターミネーターシークエナーゼIIシークエンシング」キット(Applied Biosystems, Foster City, USA)を用いて挿入フラグメントの直接PCR配列決定によって確認した。生成物を、ABI373自動DNAシークエンサー(Applied Biosystems)で解析した。突然変異体APP V717Iは、以前記載されたように構築した(Hendriksら、1995)。
【0048】
cDNAトランスフェクション
ヒト胚腎臓(HEK−293T)細胞を、製造者の手順にしたがってFugene(Roche Diagnostics)を用いて、T714I、V717I又はWT APP695 cDNA構築物を含むpCDNA3ベクターで一過性にトランスフェクトした。細胞中の構築物の存在は、ウェスタンブロッティングによって確認した。APP発現について正規化するために、細胞を、300IRIPA緩衝液(50mM トリス、pH8.0、150mM NaCl、1%NP−40,0.5%デオキシコール酸ナトリウム、0.1%SDS+完全プロテアーゼ阻害剤)中で溶解した。5μlアリコートの希釈系列を、4〜12%NuPAGEポリアクリルアミドゲル上で分離した。タンパク質をPVDF膜上にブロッティングし、Western Star 化学発光システム(Tropix)を用いて抗体10B4(Senetek)で免疫検出を行った。全長APP免疫反応性バンドを、NIHイメージソフトウェアパッケージを用いて定量した。
【0049】
Aβ ELISA
HEK293T細胞を、6ウェルプレート中でWT又はT714I APP cDNAで三連でトランスフェクトした。トランスフェクションの1日後、1mlの添加物を含まないOPTIMEM培地をHEK293T細胞に添加し、24時間、馴化した。6回のトランスフェクションから培地を集め、プールした。Aβ ELISAのために1mlアリコートを用いた。Aβ42濃度を、Aβ42ペプチドを検出するINNOTEST β−アミロイド1−42 HS ELISAのプロトタイプ版を用いて、ELISAによって馴化培地中で測定した(De Strooperら、1998)。記載されたように(De Jongheら、1999; De Strooperら、1998)、ウサギ抗血清R209(Mehtaら、2000)を捕獲抗体とし、ビオチン化3D6(Johnson−Woodら、1997)を検出抗体として用いて、ELISAによってAβ40を測定した。各実験は三連で行って、結果を平均化した。両側独立t検定を用いて、WT及び突然変異体トランスフェクタントによって産生されたAβの平均レベルを比較した。
【0050】
質量分析Aβ解析
上記のように集めた上清の第二のアリコートに、プロテアーゼ阻害剤(2mM EDTA−Na、10μM ロイペプチン、1μM ペプスタチンA、1mM PMSF、0.1mM TLCK、0.2mM TPCK)を添加した。Aβペプチドを、以前記載されたように(Wangら、1996)免疫沈降/質量分析Aβアッセイ(IP/MS)によって解析した。Aβペプチドを、mAb 4G8(Senetek, Maryland Heights, MO)及びプロテインG Plus/プロテインA−アガロースビーズ(Oncogene Science, Inc., Cambridge, MA)を用いて1.0mlのコンディションド培地から免疫沈降し、MALDI−TOF質量分析計(Voyager−DE STR BioSpectrometry Workstation、PE/PerSeptive Biosystem)を用いて解析した。各質量スペクトルを256の測定値から平均し、内部質量較正物質としてウシインシュリンを用いて較正した。コンディションド培地中のペプチドレベルを比較するために、合成Aβ(12−28)ペプチド(10nM)を内部標準として用い、相対ピーク強度を用いた。ELISA及びMALDI−TOF質量分光分析の両方を、試料の正体について「目隠しされた」実験者によって行った。
【0051】
APP S α 及びAPP S β の定量
5μlの馴化培地を4〜12%NuPageゲル(Novex)上で分離した。タンパク質をPVDF膜上に転写し、この膜をPBS+0.2%I−ブロック+0.1%Tween20中でブロッキングし、一次抗体である1:2000希釈された6E10(APPS αについて)又は1/500希釈された53/4(APPS βについて)とともに4℃で一晩インキュベートし、アルカリホスファターゼ標識二次抗体(1/4000希釈)とともにインキュベートし、Western Star化学発光試薬(Tropix)又はECL(Amersham)のいずれかで検出した。
【0052】
免疫組織化学
それぞれAβ40及びAβ42のC末端に対して特異的なmAbであるJRF/cAb40/10及びJRF/cAb42/12を、Aβ残基36〜40(VGGVV)又は残基33〜42(GLMVGGVVIA)に相当する合成ペプチドでマウスを免疫することによって作製した(Merckenら、未発表データ)。Aβ40及びAβ42 mAbの特異性は、交差反応性を示さないELISA及びウェスタンブロッティングによって確認した。同様に、AβのN末端に対して特異的なmAb JRF/AβN/11を、Aβ残基1〜7(DAEFRHD)に対して生じさせ、全長Aβを認識する。免疫組織化学に加えて、以下のmAbを用いた:mAb 6E10(Senetek;Aβ1〜17に対して誘起、Aβ5〜13を認識、Rong Wang,私信)、mAb 4G8(Senetek;Aβ残基17〜24)、6F3D(Dako;Aβ残基7〜17に対して誘起)、mAb 21F12(Aβ42について、Innogenetics, Belgium)、ウサギ抗血清FCA3542及びFCA3340(Barelliら、1997)、ウサギAβ40抗血清R209(Mehtaら、2000)及びAβ42 R226(Mehtaら、2000)、ウサギ抗Aβ1−40(Sigma, St.Louis, MO, USA)、ウサギ抗Aβ39及び抗Aβ43(T.Saido, Laboratory for Proteolytic Neuroscience,RIKEN Brain Science Institute, Wako−shi 351−0198 Japan)、mAb 22C11(N末端APP;Roche)、mAb AT8(異常リン酸化タウ;Innogenetics)、及び抗グリア原線維性酸性タンパク(GFAP;Dako、Glostrup, Denmark),CD68(マクロファージ;Dako)、ウサギ抗ユビキチン(Dako)、C1q補体(Dako)、HLA−DR(HLA−DP,DQ,DR;Dako)、CD31(Dako)、及びCD34(QBEnd;Dako)。Aβ免疫組織化学のための抗原取り出しは、98%ギ酸で10分間処理した切片について行い、他の抗体については供給者によって推奨されるように行った。単一抗原についての染色は、ストレプトアビジン−ビオチン−西洋ワサビペルオキシダーゼ(ABC/HRP)又はペルオキシダーゼ−抗ペルオキシダーゼ(PAP)を用いて、クロモゲンとして3′3′ジアミノベンジジン(DAB)を利用して、ほかに記載されたように(Kumar−Singhら、1997)行った。2以上の抗原の検出に関与する免疫組織化学は、ビオチン、HRP、アルカリホスファターゼ又はガラクトシダーゼ(Southern Biotechnology, Birmingham, USA)に直接コンジュゲート化した種特異的又はIgGサブタイプ特異的二次抗体を用いて行った。これに続いて、以下のクロモゲン(Roche)のいずれかを用いて発色させた:DAB,3−アミノ−9−エチルカルバゾール(AEC)、ファストレッド、5−ブロモー4−クロロ−3−インドリルホスフェート/ニトロブルーテトラゾリウム溶液(BCIP/NBT)又は5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトピラノシド(X−gal)。Aβ40免疫組織化学については、高感度のチラミド増幅系(NEN,MA,USA)を利用した。
【0053】
濃度計測解析
濃度計測解析は、21F12、JRF/cAb42/12及びFCA3542(Aβ42について)、JRF/cAb40/10、R209(Methaら、2000)及びFCA3340(Aβ40について)及び4G8で染色された5μm厚の連続切片について行い、Vidas画像解析系(Kontron)を用いて行い、得られた結果を、偶発性AD症例及びPS1(I143T)関連家族性ADの患者の同様の脳領域の染色と比較した。免疫組織化学染色を表す画素をカウントし、各斑のサイズを算出した。また、0.7mm2の面積を認識する最も強度の高い染色を有する海馬又はERC由来の5つの視野におけるAβ染色によって占有された相対面積を、ほかに記載されたように決定した(Kumar−Singhら、1997)。
【0054】
蛍光顕微鏡観察
CLSMの多標識のために、10μm切片をmAb 21F12及びJRF/cAb42/12とともに一晩インキュベートし、洗浄し、抗マウスTRITCコンジュゲート化及び抗ウサギFITC抗体(Molecular Probes, Oregon, USA)で標識した。488nmラインのアルゴンシングルレーザー又は632nmのヘリウム/ネオンダブルレーザーのいずれかを励起のために用いて、Zeiss CLM−410で画像を得た。1μm厚の連続光学スライスを両フルオロクロームについて別個に捕獲し、アミロイド斑中の相対Aβ42/Aβ40含量及び比を決定した。
【0055】
組換えSFVウイルスの調製
オーストリアT714I、ドイツV715A,フランスV715M,フロリダI716V及びインディアナV717L突然変異を、適切なオリゴヌクレオチド及びQuick−change突然変異誘発系(Stratagene, La Jolla, CA)を用いて部位特異的突然変異誘発によってヒトWT APP cDNA(695アイソフォーム)中に導入した。突然変異体APP cDNAを、続いてpSFV−1(Gibco BRL, Bethesda、MD)のSmaI部位にクローニングした。組換えセムリキ森林ウイルスを、記載されたように作製した(Annaert WGら(1999)J.Cell Biol.147、277)。
【0056】
初代ニューロン培養
初代皮質ニューロンを、記載されたように(Annaert WGら(1999) J. Cell Biol. 147、277)E14胚性マウスから単離した。手短に述べると、脳の解剖及びトリプシン処理による細胞の分離の後、細胞をポリリジンでコートした皿に置き、ニューロベーサル培地+B27サプリメント中でインキュベートした。非ニューロン細胞の増殖は、5μMシトシンアラビノシドを添加することによって防止した。
【0057】
初代ニューロンの感染
組換えSFVを培地で1:10に希釈し、3〜5日経過した初代皮質ニューロンに添加した。1時間の吸着の後、ウイルスベクター含有溶液を通常培地で取り替えて、形質導入を2時間継続した。次に培地を100μCi35S−メチオニン(ICN、Irvine、CA)を含む、メチオニン無含有培地に取り替えた。4時間の代謝標識の後、培養上清を集め、細胞をPBS中で洗浄し、最後にプロテアーゼ阻害剤(5mM EDTA、トラシロール、1μg/mlペプスタチン)を含有するDIP緩衝液(20mM トリス−HCl、pH7.4、150mM NaCl、1%Triton X−100、1%デオキシコール酸ナトリウム、0.1%SDS)中で溶解した。
【図面の簡単な説明】
【図1】
(A)APP T714I突然変異を分離するAD156の家系。無地の印は罹患した個体を示す。+:死亡時の年齢;矢印は剖検が行われた発端者を示す。(B)156.1及び156.2についての配列分析、APPのエクソン17におけるコドン714でのスレオニン(T)からイソロイシン(I)へのアミノ酸置換をもたらすcDNAの位置2208でのヘテロ接合性CのTへの転置を示す(番号付けはAPP770アイソフォームにしたがう)。C.PCR増幅APPエクソン17生成物のTspRI消化後のPCR−RFLP分析。
【図2】
可溶性APP(APPS α及びAPPS β)の分析。上清を、NuPAGEゲル上で解像し、APPS αについてはmAb 6E10(A)又はAPPS βについては53/4(B)を用いてイムノブロッティングした。T714I及びWTについてのバンドを、NIHイメージソフトウェアパッケージを用いて定量した(データは示していない)。
【図3A】
APP WT及びT714Iについての代表的なMALDI−TOF質量分析スペクトル。T714I及びWT APPでトランスフェクトされたHEK293T細胞のコンディションド培地を、IP/MSによってmAb 4G8を用いて研究した。相対ピーク強度を、合成Aβ(12−28)ペプチド(印:std)を用いて標準化し、観察されたピークの正体を、方法に記載したように解釈した。残基40で終わるペプチドについての優勢ピークは、T714Iについては明確に失われていることに注意されたい。
【図3B】
異なるN及びC末端を有する分泌されたAβに対する効果を、詳細に分析した。これらは、Aβ42、Aβ40、Aβ39、Aβ38及びAβ37で終わり、E1(Aβ1− X)、R5(Aβ5− X)、E11(Aβ11− X)、及びL17(Aβ17− X)で開始するペプチドであった。棒はパネル間の比較を可能にするために等しく目盛をつけてある。WTにおけるいくつかの棒の欠如は、低すぎて測定できないピークのためである。*:WTに対して少なくとも<0.001の統計学的有意。
Claims (16)
- ヒトアミロイド前駆体タンパク質770のコドン714突然変異体をコードする単離されたポリヌクレオチド配列又はそのアイソフォームもしくはそのフラグメント。
- コドン714によってコードされる位置のアミノ酸が、イソロイシンである、請求項1記載の単離されたポリヌクレオチド配列。
- ポリヌクレオチド配列がcDNAである、請求項1又は2記載の単離されたポリヌクレオチド。
- 前記ポリヌクレオチド配列が、プロモーターに作動可能に連結されている、請求項1〜3のいずれか1項記載のポリヌクレオチド。
- ポリヌクレオチドが、コドン714以外の少なくとも1つの置換を取り込んでいる、請求項1〜4のいずれか1項記載のポリヌクレオチド。
- 請求項1〜5のいずれか1項記載のポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質。
- 請求項1〜5のいずれか1項記載のポリヌクレオチドを含むトランスジェニック細胞。
- 真核初代細胞、胚性幹細胞系又は不死化細胞系である、請求項7記載のトランスジェニック細胞。
- 細菌である、請求項7記載のトランスジェニック細胞。
- 請求項1〜5のいずれか1項記載の前記ポリヌクレオチドが、細胞のゲノム中に組み込まれている、請求項7又は8記載のトランスジェニック細胞。
- 体細胞及び生殖細胞が、請求項1〜5のいずれか1項記載のポリヌクレオチドを含む、非ヒトトランスジェニック動物。
- 以下の工程を含む、β−アミロイド42ペプチドの形成を低減させることができる分子のスクリーニング方法:
− 前記分子を請求項7〜10のいずれか1項記載の細胞系に投与する工程;
− 形成されたβ−アミロイド42ペプチドの量を測定する工程;及び
− 前記の量を、前記分子を投与せずに形成されたβ−アミロイド42の量と比較する工程。 - 以下の工程を含む、アルツハイマー病を治療する分子のスクリーニング方法:
− 前記分子を請求項11記載のトランスジェニック動物に投与する工程;及び
− 前記動物を、その脳におけるβ−アミロイドの沈着及び/又は神経細胞死及び/又は異常リン酸化タウタンパク質及び/又はグリア細胞数の増加及び/又は低減した行動活性試験に対する前記分子の効果についてモニタリングする工程。 - 請求項12又は13記載のスクリーニング方法によって得られる分子。
- 「曇り」拡散斑の形成及び阻害を分析するための、請求項11記載の非ヒトトランスジェニック動物の使用。
- 以下の工程:
− 前記配列を、プレゼニリン1及びプレゼニリン2陰性細胞系にトランスフェクションする工程;
− 前記細胞系を遺伝子ライブラリーでスーパートランスフェクションする工程;及び
− β−アミロイド産生の産生をモニタリングする工程
を含む、アミロイドβの代替的プロテアーゼ及び/又はγ−セクレターゼホモログ及び/又はγ−セクレターゼモジュレーターのスクリーニングのためのアッセイを開発するための、請求項1〜5のいずれか1項記載のポリヌクレオチド配列の使用。
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