JP2004359478A - 繊維状カーボンの形態・位置制御方法、その方法を用いて位置制御された繊維状カーボン素子、及びその素子を用いたデバイス - Google Patents
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Abstract
【課題】ナノメートルオーダー精度で繊維状カーボンの成長位置を制御することができる繊維状カーボンの形態・位置制御方法を提供し、併せて位置制御された繊維状カーボン素子及びその素子を用いたデバイスを提供する。
【解決手段】イオン注入法、集束イオンビーム法又はシングルイオン注入法のいずれかによって、触媒金属イオン4を基板1表面上の所定位置に注入し、触媒金属を触媒として繊維状カーボン5を形成する。また、この繊維状カーボン5を用いて種々のデバイスを形成する。
【選択図】 図1
【解決手段】イオン注入法、集束イオンビーム法又はシングルイオン注入法のいずれかによって、触媒金属イオン4を基板1表面上の所定位置に注入し、触媒金属を触媒として繊維状カーボン5を形成する。また、この繊維状カーボン5を用いて種々のデバイスを形成する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、繊維状カーボンの形態・位置制御方法、その方法を用いて位置制御された繊維状カーボン素子、及び素子を用いたデバイスに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
単層又は多層カーボンナノチューブ、カーボンファイバー等の他、炭素又は異種物質を内包する炭素の繊維構造である繊維状カーボンは、ゆらぎのないナノメートルスケール構造、グラファイトの巻き方や太さによって変化する半導体から金属に渡る幅広い電気伝導度、高い許容電流密度、軽量かつ優れた機械的強度、ダイヤモンドを上回る熱伝導度など、ボトムアップのナノマテリアルとして多くの魅力的な物性を有し、電子放出デバイス、探針、大規模集積回路を構成するデバイス、ナノデバイス、分子デバイス、単電子デバイス、薄膜(2次元)・量子細線(1次元)・量子ドット(0次元)系デバイス、フォトニックデバイス、量子コンピューティングデバイス、あるいはデバイス間をつなぐ配線、などの分野に対して、性能改善、歩留まり向上が期待されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなデバイスを製造する方法としては、予め電極が形成された領域に、別途形成した繊維状カーボンをランダムにばらまき、電極に繊維状カーボンの一端あるいは両端が位置しているのを確認した後、デバイスを形成するものがある。また、ランダムにばらまいた後、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM)の単針で所定の位置まで移動させてデバイスを形成するものもある。また、リソグラフィー技術によって触媒をパターニングし、繊維状カーボンの成長位置を制御してデバイスを形成するものもある(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開2003−123623号公報 (第2頁、図1)
【特許文献2】
特開2002−118248号公報 (第3頁、第5頁、図3)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、予め電極が形成された領域に繊維状カーボンをランダムにばらまく方法では、たまたま電極に繊維状カーボンの一端又は両端が位置したときにしかデバイスを形成することができない他、デバイス間、配線間がショートしてしまう虞があり、繊維状カーボンの位置制御性が極めて乏しかった。また、原子間力顕微鏡の単針で所定の位置まで移動させる方法では、スループットが低くコストが掛かるという問題があった。また、リソグラフィー技術を用いる方法は、未だに制御の精度は数十nmである上、高価な高精度マスクを必要とするという問題があった。
【0006】
この発明は、上記事情に鑑みなされたもので、低コストで固体表面上に自在にナノメートルオーダー精度で繊維状カーボンの成長位置を制御することができると共に、スループット及び歩留まりの向上を図ることができる繊維状カーボンの形態・位置制御方法を提供し、併せて位置制御された繊維状カーボン素子及びその素子を用いたデバイスを提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1記載の繊維状カーボンの形態・位置制御方法は、イオン注入法、集束イオンビーム法又はシングルイオン注入法のいずれかによって、触媒元素を基材表面上の所定位置に注入し、前記触媒元素を触媒として繊維状カーボンを形成することを特徴とするものである。
【0008】
これにより、固体表面上に自在にナノメートルオーダー精度で繊維状カーボンの成長位置を制御することができるので、従来のものに比較してスループット及び歩留まりの向上を図ることができると共に、低コスト化を図ることができる。
【0009】
本発明の請求項2記載の繊維状カーボンの形態・位置制御方法は、前記請求項1において、前記触媒元素を注入する前に、注入されるイオンが基材表面に位置するように調節する保護膜を基材表面上に形成することを特徴とするものである。
【0010】
これにより、触媒元素の深さ方向の位置を制御することができるので、繊維状カーボンの形態・位置を確実に制御して、歩留まりの向上を図ることができる。
【0011】
本発明の請求項3記載の繊維状カーボン素子は、イオン注入法、集束イオンビーム法又はシングルイオン注入法のいずれかによって、基材表面上に位置制御された触媒元素の位置に一端が固定されていることを特徴とするものである。
【0012】
これにより、位置が正確に制御された繊維状カーボン素子を種々のデバイスに応用することができるので、デバイスの高機能化及び低コスト化を図ることができる。
【0013】
本発明の請求項4記載の繊維状カーボン素子は、イオン注入法、集束イオンビーム法又はシングルイオン注入法のいずれかによって、基材表面上に位置制御された触媒元素の位置に両端が固定されていることを特徴とするものである。
【0014】
これにより、両端の位置が正確に制御された繊維状カーボン素子を種々のデバイスに応用することができるので、デバイスの高機能化及び低コスト化を図ることができる。
【0015】
本発明の請求項5記載のデバイスは、電子を放出可能な電子放出部を有するデバイスにおいて、前記電子放出部は、イオン注入法、集束イオンビーム法又はシングルイオン注入法のいずれかによって、基材表面上に位置制御された触媒元素の位置に一端が固定されている繊維状カーボン素子からなることを特徴とするものである。
【0016】
これにより、正確に位置制御された繊維状カーボン素子を、電子放出部を有するデバイスに適用するので、低消費電力で安定した電子放出を行うことができる。
【0017】
本発明の請求項6記載のデバイスは、変位を検出可能な探針を有するデバイスにおいて、前記探針は、イオン注入法、集束イオンビーム法又はシングルイオン注入法のいずれかによって、基材表面上に位置制御された触媒元素の位置に一端が固定されている繊維状カーボン素子からなることを特徴とするものである。
【0018】
これにより、正確に位置制御された繊維状カーボン素子を、変位を検出可能な探針を有するデバイスに適用するので、高い分解能の下で再現性の高い観察を行うことができる。
【0019】
本発明の請求項7記載のデバイスは、キャリヤを供給するソースと、キャリヤを受け取るドレインと、それらの間の電流通路であるチャネルの導電率を変化させることによりチャネルを流れる電流を制御するゲートとからなるデバイスにおいて、前記チャネルは、イオン注入法、集束イオンビーム法又はシングルイオン注入法のいずれかによって、前記ソース及びドレインに位置制御された触媒元素の位置に両端が固定されている繊維状カーボン素子からなることを特徴とするものである。
【0020】
これにより、正確に位置制御された繊維状カーボン素子をチャネルに適用するので、デバイスの微細化を図ることができ、計算速度の向上や低消費電力化を図ることができる。
【0021】
本発明の請求項8記載のデバイスは、複数の電子素子と、前記電子素子をつなぐ配線とを有するデバイスにおいて、前記配線は、イオン注入法、集束イオンビーム法又はシングルイオン注入法のいずれかによって、前記電子素子に位置制御された触媒元素の位置に両端が固定されている繊維状カーボン素子からなることを特徴とするものである。
【0022】
これにより、正確に位置制御された繊維状カーボン素子を配線に適用するので、デバイスの微細化を図ることができ、低消費電力化や低コスト化を図ることができる。
【0023】
本発明の請求項9記載のデバイスは、キャリヤを供給するソースと、キャリヤを受け取るドレインと、それらの間の電流通路であるチャネルの導電率を変化させることによりチャネルを流れる電流を制御するゲートとからなる複数の電子素子と、前記電子素子をつなぐ配線とを具備するデバイスにおいて、前記チャネルは、イオン注入法、集束イオンビーム法又はシングルイオン注入法のいずれかによって、前記ソース及びドレインに位置制御された触媒元素の位置に両端が固定されている繊維状カーボン素子からなり、前記配線は、イオン注入法、集束イオンビーム法又はシングルイオン注入法のいずれかによって、前記電子素子に位置制御された触媒元素の位置に両端が固定されている繊維状カーボン素子からなることを特徴とするものである。
【0024】
これにより、正確に位置制御された繊維状カーボン素子をチャネル及び配線に適用するので、デバイスの微細化を図ることができ、計算速度の向上や、低消費電力化、低コスト化を図ることができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明における繊維状カーボンとは、単層及び多層カーボンナノチューブ、カーボンファイバーの他、炭素又は異種物質を内包する炭素の繊維構造をいい、炭素以外の不純物を含むこともある。この繊維状カーボンは、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ランタン(La)、イットリウム(Y)等の元素を、繊維状カーボンの成長を促す触媒として選択的に成長するため、繊維状カーボンの形態・位置を制御するためには、触媒金属の量・位置の制御が鍵となる。
【0026】
触媒を基板等の基材の所定位置にナノメートルオーダ精度で制御する方法には、ドースの制御可能なイオン注入法、特にイオン源から放出される触媒金属をイオン化し集束した集束イオンビーム法や、集束イオンビーム又はマイクロイオンビーム等を利用し、イオンの個数及び位置を制御して基板(基材)に導入するシングルイオン注入法がある。これらの方法によれば、繊維状カーボンは導入された原子を触媒として選択的に成長するため、マスクレスで、かつ基板表面上に自在にナノメートルオーダー精度で繊維状カーボンの位置を制御することが可能である。
【0027】
以下に、この発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0028】
この発明の第1実施形態は、イオン注入法によって、触媒元素を基材表面上の所定位置に注入し、触媒元素を触媒として繊維状カーボンを形成する繊維状カーボンの形態・位置制御方法である。
【0029】
まず、繊維状カーボンを成長させたい基材、例えばシリコン基板1の表面に保護膜、例えば酸化膜2を熱酸化によって形成する(図1(a)、(b)参照)。これは、エネルギーを持った触媒金属イオン4を固体中に打ち込む場合、触媒金属イオン4が基板1深くに導入され、かつ深さ方向にガウス分布に従って分散し、基板1の最表面に触媒金属イオン4が存在しなくなるのを防止するためである。例えば、Niイオンを30kVで注入する場合、Niイオンの飛程に相当する膜厚30nmの酸化膜2を持つシリコン基板1を用いる。これにより、Niイオンの分布の中心が基板1表面に位置するように調節することができる。なお、保護膜は酸化膜である必要はなく、触媒金属イオン4の分布の中心を基板1表面に調節することができるものであれば、他のものを用いることも可能である。また、深さ方向の制御が不要な場合は、保護膜を必要としない場合もある。
【0030】
次に、フォトリソグラフィー又は電子線リソグラフィー法によって、酸化膜2の表面にレジストパターン3を形成し(図3(c)参照)、レジストパターン3をマスクとして、イオン注入法によって触媒元素例えばNiイオン等の触媒金属イオン4を基板1に注入する(図3(d)参照)。
【0031】
その後、レジストを除去し(図3(e))、酸化膜2を除去して(図3(f))、最後に繊維状カーボン5を成長させる(図3(g))。繊維状カーボンの成長法には、アーク放電法、レーザーアブレーション法、化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition:CVD)等の種々の方法を用いることが可能である。これにより、基板1の所定位置に一端を固定された繊維状カーボン5を形成することができる。
【0032】
なお、上記説明では触媒金属イオンとしてNiを用いる場合について説明したが、イオン源として構成可能な触媒金属なら全て適用することが可能であり、例えば鉄(Fe)、コバルト(Co)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ランタン(La)、イットリウム(Y)等を用いることができる。
【0033】
この発明の第2実施形態は、シングルイオン注入法によって、触媒元素を基材表面上の所定位置に注入し、触媒元素を触媒として繊維状カーボンを形成する繊維状カーボンの形態・位置制御方法である。
【0034】
シングルイオン注入法については、1991年に、大泊巌らによってシングルイオンを抽出することに世界で初めて成功し、特公平7−75156号「イオン照射装置及び方法」(特許第2051859号)、および米国特許第5,331,161号明細書に開示されている。また、1993年に大泊巌らにより集束イオンビームもしくはマイクロイオンビームを利用したイオン注入装置において、狙った部位に所定のイオンを1個ずつ注入可能なシングルイオン注入装置が開発され、日本国特許第2731886号「シングルイオン注入装置及び方法」、および米国特許第5,539,203号明細書に開示されている。また、上記2件の先行技術に引き続いて、イオンビームをチョッピングしてシングルイオンを抽出する方法に代わって、シングルイオン抽出用アパチャーにパルス電圧を印加してシングルイオンを抽出する方法についても大泊巌らによって発明され、特願平11−187323号「高精細シングルイオン抽出方法及び該方法を適用した高精細シングルイオン注入装置及び方法」に開示されている。
【0035】
図2に、シングルイオン注入装置11の模式的構成図を示す。シングルイオン注入装置11の動作原理は次の通りである。イオン源12から放出するイオンビーム13は、図示しないコンデンサーレンズによって集束され、チョッピング電極14の中心に像を結ぶ。チョッピング電極14にはチョッパコントローラ20によって制御された電圧が印加され、イオンビーム13は孔15aを有する対物アパチャー15の片側に遮られる。チョッピング電極14に印加されている電圧の極性を瞬時に反転させることによって、イオンビーム13は対物アパチャー15上を孔15aを横切って、再び遮られる。イオンビーム13が孔15aを横切るときに、イオンが通過するが、通過するイオンの数は、ビーム電流、対物アパチャーの孔径に比例し、チョッピング速度に反比例する。これらを最適化することによって、イオンビーム13から1個のイオンを抽出することが可能となる。対物アパチャー15を通過したイオンビーム13は図示しない対物レンズによって集束され、試料16の表面上に像を結ぶ。試料16に打ち込まれたシングルイオン17は、イオン17が打ち込まれた際に試料16から放出する2次電子18を検出器19により検出して確認される。ビーム径は約20nmである。
【0036】
図3は、シングルイオン注入法によってCR・39と呼ばれる固体飛跡検出器にシングルイオンを打ち込み、化学エッチング処理を施した後、原子間力顕微鏡で観察した像である。注入されたシングルイオンがエッチピット38として観察されている。シングルイオン入射部位に繊維状カーボンが選択的に成長する。白十字39は照準マークであり、照準精度は狙った部位からの平均の誤差として60nmである。図3では、1μm間隔でシングルイオンが注入されたが、サブ100nm間隔で打ち込むことが可能である。
【0037】
図4は、シングルイオン注入法を用いて繊維状カーボン5の位置を制御するためのプロセスを示す図である。
【0038】
まず、シングルイオン注入装置11を用いて、繊維状カーボン5を成長させたい基板1(基材)上の位置、例えば2次元の格子点の位置に触媒金属イオン4(触媒元素)、例えばNiイオンを注入する(図4(a))。この際、Niイオンの分布の中心を基板1表面に調節するため、図示しない酸化膜(保護膜)を通してイオン注入を行う。これにより、Niイオンの分布の中心が基板1表面に位置するように調節することができる。
【0039】
触媒金属イオン4の注入後、酸化膜をエッチングして除去することにより注入イオン分布のピークが表面に現れる。この基板1を、例えばプラズマCVDで流量CH4:0.45sccm、H2:4.5sccmの混合気体を600℃、5分間熱処理した後、600℃10分間保持し、基板1上に繊維状カーボン5を成長させる。これにより、基板1の所定位置に一端を固定された繊維状カーボン5を形成することができる(図4(b))。
【0040】
この発明の第3実施形態は、繊維状カーボンの形態・位置制御方法を用いて一端が位置制御された繊維状カーボン素子の基本的な製造プロセスを示すものである。
【0041】
まず、触媒金属イオン4、例えばNiイオンの分布の中心を基板1(基材)表面に調節するため、基板1表面に図示しない酸化膜(保護膜)を形成し、この酸化膜を通して所定の位置に、シングルイオン注入装置11を用いてNiイオンの注入を行う(図5(a))。
【0042】
次に、酸化膜をエッチング除去した後、イオン照射によってアルカリ溶液によるSiのエッチング(溶解)速度が著しく低下する現象を利用して、頂点にNi原子を含む錐体、例えばピラミッド6を形成する(図5(b))。図6(a)、(b)は、シリコン基板に加速電圧30kVで1価のNiイオンを2μm間隔で2次元の格子点位置に1点につき2×1016cm−2ずつ注入した場合の例であるが、注入する不純物の種類と量により自由にピラミッド6の頂点の電気伝導性等を制御することができる。
【0043】
最後に、プラズマCVD処理等を施すことによって、ピラミッド6の頂点に繊維状カーボン5を成長させる(図5(c))。これにより、頂点にのみ繊維状カーボン5を有するピラミッド6をマスクレスでわずか数工程で作製することができる。勿論、アーク放電法、レーザーアブレーション法を用いて繊維状カーボン5を成長させることも可能である。
【0044】
なお、上記説明では、触媒金属イオン4の注入に、シングルイオン注入法を用いる場合について説明したが、触媒イオンの量・位置を制御できるものであれば、集束イオンビーム法等の種々の方法を用いることができる。
【0045】
この発明の第4実施形態は、繊維状カーボンの形態・位置制御方法を用いて一端が位置制御された繊維状カーボン素子を、光源、フラットパネルディスプレイ、電界放出源、電子銃等の電子放出素子に適用したものである。
【0046】
以下に、電子放出デバイスの製造プロセスについて説明する。
【0047】
まず、シリコンなどの基板1(基材)上に酸化膜2(保護膜)を形成し、リソグラフィーによって電子放出サイト7を有するレジストパターン3を形成する(図7(a))。続いて、イオン注入法により触媒金属イオン4(触媒元素)を注入し(図7(b))、レジストパターン3(マスク)の除去(図7(c))、酸化膜2の除去を行った後、イオン照射領域におけるシリコンエッチング減速現象を用いることによってピラミッド6を形成する(図7(d))。形成されたピラミッド6の先端部には触媒金属(触媒元素)が存在しており、プラズマCVD成長法等によって先端部にのみ選択的に繊維状カーボン5を成長させる(図7(e))。これにより、光源、フラットパネルディスプレイ、電界放出源、電子銃等の電子放出素子を形成することができる(図7(f))。
【0048】
このように基板1上に繊維状カーボン5を成長させた電子放出素子は、電界集中効果により、主として繊維状カーボン5の先端から電子が放出される。このとき、繊維状カーボン5の有する微小な先端半径、高アスペクト形状、および高電気伝導性によって、低消費電力下での電子放出を実現することができる。また、繊維状カーボン5の化学的安定性は、放出電子の時間安定性を増加することもできる。
【0049】
なお、上記説明では、触媒金属イオン4の注入に、イオン注入法を用いる場合について説明したが、シングルイオン注入法、集束イオンビーム法を用いることも勿論可能である。
【0050】
この発明の第5実施形態は、繊維状カーボンの形態・位置制御方法を用いて一端が位置制御された繊維状カーボン素子を、走査型プローブ顕微鏡の探針先端に応用したものである。
【0051】
この場合も、電子放出デバイスの製造プロセスと同様、シリコンなどの基板1上に酸化膜2(保護膜)を形成し、リソグラフィーによって電子放出サイト7をパターニングし(図8(a))、イオン注入法により触媒金属(触媒元素)をイオン注入し(図8(b))、レジストパターン3(マスク)の除去(図8(c))、酸化膜2の除去(図8(d))を行った後、イオン照射領域におけるシリコンエッチング減速現象を用いることによってピラミッド6を形成する(図8(d))。その後、プラズマCVD成長法等によって先端部にのみ選択的に繊維状カーボン5を成長させる(図8(e))。これにより、走査型プローブ顕微鏡の探針を形成することができる(図8(f))。
【0052】
このように形成された繊維状カーボン5は、微小な先端半径および高アスペクト比を有し、試料の様々な形状表面を高い分解能の下で観察するのに適し、機械的に柔軟かつ強靭な特徴は、探針劣化を防止し再現性の高い観察に適する。また、繊維状カーボン5の高い電気伝導性は、走査プローブ顕微鏡の探針において、電磁気学的な測定に適する。更に、繊維状カーボン5の熱伝導性は、走査プローブ顕微鏡において、熱力学的な測定にも適している。
【0053】
なお、上記説明では、触媒金属イオン4の注入に、イオン注入法を用いる場合について説明したが、シングルイオン注入法、集束イオンビーム法を用いることも勿論可能である。
【0054】
この発明の第6実施形態は、キャリヤを供給するソースと、キャリヤを受け取るドレインと、それらの間の電流通路であるチャネルの導電率を変化させることによりチャネルを流れる電流を制御するゲートとからなるデバイスにおいて、繊維状カーボンの形態・位置制御方法を用いて両端が位置制御された繊維状カーボン素子をチャネル及び配線に適用したものである。
【0055】
以下に、FET等の3端子デバイスの製造プロセスについて図9ないし図12を用いて説明する。ここで、図9(a)〜(n)は、図11のA−A線上の製造プロセスを示す断面図であり、図10(a)〜(l)は、図11のB−B線上の製造プロセスを示す断面図である。
【0056】
基板21(基材)には、数〜10nmの厚さを持つ酸化膜22とその表面にシリコン層23が形成されたものを用いる(図9(a)、図10(a))。基板1を洗浄した後、上部シリコン層23を酸化して酸化膜24を形成する(図9(b)、図10(b))。続いて、表面電位を基板1側から制御するバックゲート領域を形成するために、レジスト25を塗布して最初のリソグラフィーを行い(図9(c)、図10(c))、酸化膜24、シリコン層23をエッチング除去する(図9(d)、図10(d))。そして、シリコンを低抵抗化したイオン注入層26を形成するため、酸化膜22を通してイオン注入を行う(図9(e)、図10(e))。次に、電極を形成するために、レジスト27を塗布して第2回目のリソグラフィーを行い(図9(f)、図10(f))、酸化膜24、シリコン層23をエッチング除去する(図9(g)、図10(g))。更に、コンタクトを形成するために、レジスト28を塗布して第3回目のリソグラフィーを行い(図9(h)、図10(h))、酸化膜24をエッチング除去する(図9(i)、図10(i))。その後、電極材料29として、リンもしくはボロンドープの多結晶シリコン、および金属を堆積し(図9(j)、図10(j))、レジスト30を塗布して第4回目のリソグラフィーを行い(図9(k)、図10(k))、電極を形成する(図9(l)、図10(l))。形成された電極の所定の位置にシングルイオン注入法によって触媒金属31を打ち込み(図9(m)、図12(a))、続くプラズマCVD成長法によって半導体カーボンナノチューブ32(繊維状カーボン)を形成する(図9(n)、図11(a)、図12(b))。最後に、ゲート電極の所定の位置にイオン注入法によって触媒金属を打ち込み、これを起点として金属カーボンナノチューブ33(繊維状カーボン)を半導体カーボンナノチューブ32の上を跨ぐ様に成長させる(図11(b))。これにより、超微細なFET等の3端子デバイスを構築することができる。
【0057】
なお、このような方法は、例えば図13に示すような、入力端子35、出力端子36、電源37を有し、チャネルや配線をカーボンナノチューブで置き換えたCMOS、ナノデバイス、分子デバイス、単電子デバイス、薄膜(2次元)量子細線(1次元)・量子ドット(0次元)、系デバイス、フォトニックデバイス、量子コンピューティングデバイスへの応用も可能である。これにより、現行技術の100分の1以下に相当する超微細な集積回路を構築することができる。
【0058】
なお、上記説明では、触媒金属イオン31の注入に、シングルイオン注入法を用いる場合について説明したが、イオン注入法、集束イオンビーム法を用いることも勿論可能である。
【0059】
【発明の効果】
本発明の請求項1記載の繊維状カーボンの形態・位置制御方法は、イオン注入法、集束イオンビーム法又はシングルイオン注入法のいずれかによって、触媒元素を基材表面上の所定位置に注入し、前記触媒元素を触媒として繊維状カーボンを形成することを特徴とするものであり、これにより、固体表面上に自在にナノメートルオーダー精度で繊維状カーボンの成長位置を制御することができるので、従来のものに比較してスループット及び歩留まりの向上を図ることができると共に、低コスト化を図ることができる。
【0060】
請求項2記載の繊維状カーボンの形態・位置制御方法は、前記請求項1において、前記触媒元素を注入する前に、注入されるイオンが基材表面に位置するように調節する保護膜を基材表面上に形成することを特徴とするものであり、これにより、触媒元素の深さ方向の位置を制御することができるので、繊維状カーボンの形態・位置を確実に制御して、歩留まりの向上を図ることができる。
【0061】
請求項3記載の繊維状カーボン素子は、イオン注入法、集束イオンビーム法又はシングルイオン注入法のいずれかによって、基材表面上に位置制御された触媒元素の位置に一端が固定されていることを特徴とするものであり、これにより、位置が正確に制御された繊維状カーボン素子を種々のデバイスに応用することができるので、デバイスの高機能化及び低コスト化を図ることができる。
【0062】
請求項4記載の繊維状カーボン素子は、イオン注入法、集束イオンビーム法又はシングルイオン注入法のいずれかによって、基材表面上に位置制御された触媒元素の位置に両端が固定されていることを特徴とするものであり、これにより、両端の位置が正確に制御された繊維状カーボン素子を種々のデバイスに応用することができるので、デバイスの高機能化及び低コスト化を図ることができる。
【0063】
請求項5記載のデバイスは、電子を放出可能な電子放出部を有するデバイスにおいて、前記電子放出部は、イオン注入法、集束イオンビーム法又はシングルイオン注入法のいずれかによって、基材表面上に位置制御された触媒元素の位置に一端が固定されている繊維状カーボン素子からなることを特徴とするものであり、これにより、正確に位置制御された繊維状カーボン素子を電子放出部を有するデバイスに適用するので、低消費電力で安定した電子放出を行うことができる。
【0064】
請求項6記載のデバイスは、変位を検出可能な探針を有するデバイスにおいて、前記探針は、イオン注入法、集束イオンビーム法又はシングルイオン注入法のいずれかによって、基材表面上に位置制御された触媒元素の位置に一端が固定されている繊維状カーボン素子からなることを特徴とするものであり、これにより、正確に位置制御された繊維状カーボン素子を、変位を検出可能な探針を有するデバイスに適用するので、高い分解能の下で再現性の高い観察を行うことができる。
【0065】
請求項7記載のデバイスは、キャリヤを供給するソースと、キャリヤを受け取るドレインと、それらの間の電流通路であるチャネルの導電率を変化させることによりチャネルを流れる電流を制御するゲートとからなるデバイスにおいて、前記チャネルは、イオン注入法、集束イオンビーム法又はシングルイオン注入法のいずれかによって、前記ソース及びドレインに位置制御された触媒元素の位置に両端が固定されている繊維状カーボン素子からなることを特徴とするものであり、これにより、正確に位置制御された繊維状カーボン素子をチャネルに適用するので、デバイスの微細化を図ることができ、計算速度の向上や低消費電力化を図ることができる。
【0066】
請求項8記載のデバイスは、複数の電子素子と、前記電子素子をつなぐ配線とを有するデバイスにおいて、前記配線は、イオン注入法、集束イオンビーム法又はシングルイオン注入法のいずれかによって、前記電子素子に位置制御された触媒元素の位置に両端が固定されている繊維状カーボン素子からなることを特徴とするものであり、これにより、正確に位置制御された繊維状カーボン素子を配線に適用するので、デバイスの微細化を図ることができ、低消費電力化や低コスト化を図ることができる。
【0067】
請求項9記載のデバイスは、キャリヤを供給するソースと、キャリヤを受け取るドレインと、それらの間の電流通路であるチャネルの導電率を変化させることによりチャネルを流れる電流を制御するゲートとからなる複数の電子素子と、前記電子素子をつなぐ配線とを具備するデバイスにおいて、前記チャネルは、イオン注入法、集束イオンビーム法又はシングルイオン注入法のいずれかによって、前記ソース及びドレインに位置制御された触媒元素の位置に両端が固定されている繊維状カーボン素子からなり、前記配線は、イオン注入法、集束イオンビーム法又はシングルイオン注入法のいずれかによって、前記電子素子に位置制御された触媒元素の位置に両端が固定されている繊維状カーボン素子からなることを特徴とするものであり、これにより、正確に位置制御された繊維状カーボン素子をチャネル及び配線に適用するので、デバイスの微細化を図ることができ、計算速度の向上や、低消費電力化、低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のイオン注入法による繊維状カーボンの形態・位置制御方法を説明する断面図である。
【図2】シングルイオン注入装置を示す模式的構成図である。
【図3】シングルイオン照射痕を示す原子間力顕微鏡像である。
【図4】本発明のシングルイオン注入法による繊維状カーボンの形態・位置制御方法を説明する概略斜視図である。
【図5】本発明の繊維状カーボン素子の基本的な製造プロセスを説明する概略斜視図である。
【図6】(a)触媒金属を頂点とするピラミッド、及び(b)触媒金属の注入後の基板表面を示す電子顕微鏡写真である。
【図7】本発明の電子放出デバイスの製造プロセスを説明する概略斜視図である。
【図8】本発明の走査型プローブ顕微鏡の探針の製造プロセスを説明する概略斜視図である。
【図9】本発明の繊維状カーボン素子を用いた3端子デバイスのソース及びドレインの製造プロセスを説明する断面図である。
【図10】本発明の繊維状カーボン素子を用いた3端子デバイスのゲートの製造プロセスを説明する断面図である。
【図11】本発明の繊維状カーボン素子を用いた3端子デバイスを示す概略平面図である。
【図12】本発明の繊維状カーボン素子を用いた3端子デバイスの製造プロセスを説明する概略斜視図である。
【図13】本発明の繊維状カーボン素子を用いた集積回路を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
1 基板(基材)
2 酸化膜(保護膜)
4 触媒金属イオン(触媒元素)
5 繊維状カーボン
21 基板(基材)
31 触媒金属イオン(触媒元素)
32 繊維状カーボン
【発明の属する技術分野】
この発明は、繊維状カーボンの形態・位置制御方法、その方法を用いて位置制御された繊維状カーボン素子、及び素子を用いたデバイスに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
単層又は多層カーボンナノチューブ、カーボンファイバー等の他、炭素又は異種物質を内包する炭素の繊維構造である繊維状カーボンは、ゆらぎのないナノメートルスケール構造、グラファイトの巻き方や太さによって変化する半導体から金属に渡る幅広い電気伝導度、高い許容電流密度、軽量かつ優れた機械的強度、ダイヤモンドを上回る熱伝導度など、ボトムアップのナノマテリアルとして多くの魅力的な物性を有し、電子放出デバイス、探針、大規模集積回路を構成するデバイス、ナノデバイス、分子デバイス、単電子デバイス、薄膜(2次元)・量子細線(1次元)・量子ドット(0次元)系デバイス、フォトニックデバイス、量子コンピューティングデバイス、あるいはデバイス間をつなぐ配線、などの分野に対して、性能改善、歩留まり向上が期待されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなデバイスを製造する方法としては、予め電極が形成された領域に、別途形成した繊維状カーボンをランダムにばらまき、電極に繊維状カーボンの一端あるいは両端が位置しているのを確認した後、デバイスを形成するものがある。また、ランダムにばらまいた後、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM)の単針で所定の位置まで移動させてデバイスを形成するものもある。また、リソグラフィー技術によって触媒をパターニングし、繊維状カーボンの成長位置を制御してデバイスを形成するものもある(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開2003−123623号公報 (第2頁、図1)
【特許文献2】
特開2002−118248号公報 (第3頁、第5頁、図3)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、予め電極が形成された領域に繊維状カーボンをランダムにばらまく方法では、たまたま電極に繊維状カーボンの一端又は両端が位置したときにしかデバイスを形成することができない他、デバイス間、配線間がショートしてしまう虞があり、繊維状カーボンの位置制御性が極めて乏しかった。また、原子間力顕微鏡の単針で所定の位置まで移動させる方法では、スループットが低くコストが掛かるという問題があった。また、リソグラフィー技術を用いる方法は、未だに制御の精度は数十nmである上、高価な高精度マスクを必要とするという問題があった。
【0006】
この発明は、上記事情に鑑みなされたもので、低コストで固体表面上に自在にナノメートルオーダー精度で繊維状カーボンの成長位置を制御することができると共に、スループット及び歩留まりの向上を図ることができる繊維状カーボンの形態・位置制御方法を提供し、併せて位置制御された繊維状カーボン素子及びその素子を用いたデバイスを提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1記載の繊維状カーボンの形態・位置制御方法は、イオン注入法、集束イオンビーム法又はシングルイオン注入法のいずれかによって、触媒元素を基材表面上の所定位置に注入し、前記触媒元素を触媒として繊維状カーボンを形成することを特徴とするものである。
【0008】
これにより、固体表面上に自在にナノメートルオーダー精度で繊維状カーボンの成長位置を制御することができるので、従来のものに比較してスループット及び歩留まりの向上を図ることができると共に、低コスト化を図ることができる。
【0009】
本発明の請求項2記載の繊維状カーボンの形態・位置制御方法は、前記請求項1において、前記触媒元素を注入する前に、注入されるイオンが基材表面に位置するように調節する保護膜を基材表面上に形成することを特徴とするものである。
【0010】
これにより、触媒元素の深さ方向の位置を制御することができるので、繊維状カーボンの形態・位置を確実に制御して、歩留まりの向上を図ることができる。
【0011】
本発明の請求項3記載の繊維状カーボン素子は、イオン注入法、集束イオンビーム法又はシングルイオン注入法のいずれかによって、基材表面上に位置制御された触媒元素の位置に一端が固定されていることを特徴とするものである。
【0012】
これにより、位置が正確に制御された繊維状カーボン素子を種々のデバイスに応用することができるので、デバイスの高機能化及び低コスト化を図ることができる。
【0013】
本発明の請求項4記載の繊維状カーボン素子は、イオン注入法、集束イオンビーム法又はシングルイオン注入法のいずれかによって、基材表面上に位置制御された触媒元素の位置に両端が固定されていることを特徴とするものである。
【0014】
これにより、両端の位置が正確に制御された繊維状カーボン素子を種々のデバイスに応用することができるので、デバイスの高機能化及び低コスト化を図ることができる。
【0015】
本発明の請求項5記載のデバイスは、電子を放出可能な電子放出部を有するデバイスにおいて、前記電子放出部は、イオン注入法、集束イオンビーム法又はシングルイオン注入法のいずれかによって、基材表面上に位置制御された触媒元素の位置に一端が固定されている繊維状カーボン素子からなることを特徴とするものである。
【0016】
これにより、正確に位置制御された繊維状カーボン素子を、電子放出部を有するデバイスに適用するので、低消費電力で安定した電子放出を行うことができる。
【0017】
本発明の請求項6記載のデバイスは、変位を検出可能な探針を有するデバイスにおいて、前記探針は、イオン注入法、集束イオンビーム法又はシングルイオン注入法のいずれかによって、基材表面上に位置制御された触媒元素の位置に一端が固定されている繊維状カーボン素子からなることを特徴とするものである。
【0018】
これにより、正確に位置制御された繊維状カーボン素子を、変位を検出可能な探針を有するデバイスに適用するので、高い分解能の下で再現性の高い観察を行うことができる。
【0019】
本発明の請求項7記載のデバイスは、キャリヤを供給するソースと、キャリヤを受け取るドレインと、それらの間の電流通路であるチャネルの導電率を変化させることによりチャネルを流れる電流を制御するゲートとからなるデバイスにおいて、前記チャネルは、イオン注入法、集束イオンビーム法又はシングルイオン注入法のいずれかによって、前記ソース及びドレインに位置制御された触媒元素の位置に両端が固定されている繊維状カーボン素子からなることを特徴とするものである。
【0020】
これにより、正確に位置制御された繊維状カーボン素子をチャネルに適用するので、デバイスの微細化を図ることができ、計算速度の向上や低消費電力化を図ることができる。
【0021】
本発明の請求項8記載のデバイスは、複数の電子素子と、前記電子素子をつなぐ配線とを有するデバイスにおいて、前記配線は、イオン注入法、集束イオンビーム法又はシングルイオン注入法のいずれかによって、前記電子素子に位置制御された触媒元素の位置に両端が固定されている繊維状カーボン素子からなることを特徴とするものである。
【0022】
これにより、正確に位置制御された繊維状カーボン素子を配線に適用するので、デバイスの微細化を図ることができ、低消費電力化や低コスト化を図ることができる。
【0023】
本発明の請求項9記載のデバイスは、キャリヤを供給するソースと、キャリヤを受け取るドレインと、それらの間の電流通路であるチャネルの導電率を変化させることによりチャネルを流れる電流を制御するゲートとからなる複数の電子素子と、前記電子素子をつなぐ配線とを具備するデバイスにおいて、前記チャネルは、イオン注入法、集束イオンビーム法又はシングルイオン注入法のいずれかによって、前記ソース及びドレインに位置制御された触媒元素の位置に両端が固定されている繊維状カーボン素子からなり、前記配線は、イオン注入法、集束イオンビーム法又はシングルイオン注入法のいずれかによって、前記電子素子に位置制御された触媒元素の位置に両端が固定されている繊維状カーボン素子からなることを特徴とするものである。
【0024】
これにより、正確に位置制御された繊維状カーボン素子をチャネル及び配線に適用するので、デバイスの微細化を図ることができ、計算速度の向上や、低消費電力化、低コスト化を図ることができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明における繊維状カーボンとは、単層及び多層カーボンナノチューブ、カーボンファイバーの他、炭素又は異種物質を内包する炭素の繊維構造をいい、炭素以外の不純物を含むこともある。この繊維状カーボンは、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ランタン(La)、イットリウム(Y)等の元素を、繊維状カーボンの成長を促す触媒として選択的に成長するため、繊維状カーボンの形態・位置を制御するためには、触媒金属の量・位置の制御が鍵となる。
【0026】
触媒を基板等の基材の所定位置にナノメートルオーダ精度で制御する方法には、ドースの制御可能なイオン注入法、特にイオン源から放出される触媒金属をイオン化し集束した集束イオンビーム法や、集束イオンビーム又はマイクロイオンビーム等を利用し、イオンの個数及び位置を制御して基板(基材)に導入するシングルイオン注入法がある。これらの方法によれば、繊維状カーボンは導入された原子を触媒として選択的に成長するため、マスクレスで、かつ基板表面上に自在にナノメートルオーダー精度で繊維状カーボンの位置を制御することが可能である。
【0027】
以下に、この発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0028】
この発明の第1実施形態は、イオン注入法によって、触媒元素を基材表面上の所定位置に注入し、触媒元素を触媒として繊維状カーボンを形成する繊維状カーボンの形態・位置制御方法である。
【0029】
まず、繊維状カーボンを成長させたい基材、例えばシリコン基板1の表面に保護膜、例えば酸化膜2を熱酸化によって形成する(図1(a)、(b)参照)。これは、エネルギーを持った触媒金属イオン4を固体中に打ち込む場合、触媒金属イオン4が基板1深くに導入され、かつ深さ方向にガウス分布に従って分散し、基板1の最表面に触媒金属イオン4が存在しなくなるのを防止するためである。例えば、Niイオンを30kVで注入する場合、Niイオンの飛程に相当する膜厚30nmの酸化膜2を持つシリコン基板1を用いる。これにより、Niイオンの分布の中心が基板1表面に位置するように調節することができる。なお、保護膜は酸化膜である必要はなく、触媒金属イオン4の分布の中心を基板1表面に調節することができるものであれば、他のものを用いることも可能である。また、深さ方向の制御が不要な場合は、保護膜を必要としない場合もある。
【0030】
次に、フォトリソグラフィー又は電子線リソグラフィー法によって、酸化膜2の表面にレジストパターン3を形成し(図3(c)参照)、レジストパターン3をマスクとして、イオン注入法によって触媒元素例えばNiイオン等の触媒金属イオン4を基板1に注入する(図3(d)参照)。
【0031】
その後、レジストを除去し(図3(e))、酸化膜2を除去して(図3(f))、最後に繊維状カーボン5を成長させる(図3(g))。繊維状カーボンの成長法には、アーク放電法、レーザーアブレーション法、化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition:CVD)等の種々の方法を用いることが可能である。これにより、基板1の所定位置に一端を固定された繊維状カーボン5を形成することができる。
【0032】
なお、上記説明では触媒金属イオンとしてNiを用いる場合について説明したが、イオン源として構成可能な触媒金属なら全て適用することが可能であり、例えば鉄(Fe)、コバルト(Co)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ランタン(La)、イットリウム(Y)等を用いることができる。
【0033】
この発明の第2実施形態は、シングルイオン注入法によって、触媒元素を基材表面上の所定位置に注入し、触媒元素を触媒として繊維状カーボンを形成する繊維状カーボンの形態・位置制御方法である。
【0034】
シングルイオン注入法については、1991年に、大泊巌らによってシングルイオンを抽出することに世界で初めて成功し、特公平7−75156号「イオン照射装置及び方法」(特許第2051859号)、および米国特許第5,331,161号明細書に開示されている。また、1993年に大泊巌らにより集束イオンビームもしくはマイクロイオンビームを利用したイオン注入装置において、狙った部位に所定のイオンを1個ずつ注入可能なシングルイオン注入装置が開発され、日本国特許第2731886号「シングルイオン注入装置及び方法」、および米国特許第5,539,203号明細書に開示されている。また、上記2件の先行技術に引き続いて、イオンビームをチョッピングしてシングルイオンを抽出する方法に代わって、シングルイオン抽出用アパチャーにパルス電圧を印加してシングルイオンを抽出する方法についても大泊巌らによって発明され、特願平11−187323号「高精細シングルイオン抽出方法及び該方法を適用した高精細シングルイオン注入装置及び方法」に開示されている。
【0035】
図2に、シングルイオン注入装置11の模式的構成図を示す。シングルイオン注入装置11の動作原理は次の通りである。イオン源12から放出するイオンビーム13は、図示しないコンデンサーレンズによって集束され、チョッピング電極14の中心に像を結ぶ。チョッピング電極14にはチョッパコントローラ20によって制御された電圧が印加され、イオンビーム13は孔15aを有する対物アパチャー15の片側に遮られる。チョッピング電極14に印加されている電圧の極性を瞬時に反転させることによって、イオンビーム13は対物アパチャー15上を孔15aを横切って、再び遮られる。イオンビーム13が孔15aを横切るときに、イオンが通過するが、通過するイオンの数は、ビーム電流、対物アパチャーの孔径に比例し、チョッピング速度に反比例する。これらを最適化することによって、イオンビーム13から1個のイオンを抽出することが可能となる。対物アパチャー15を通過したイオンビーム13は図示しない対物レンズによって集束され、試料16の表面上に像を結ぶ。試料16に打ち込まれたシングルイオン17は、イオン17が打ち込まれた際に試料16から放出する2次電子18を検出器19により検出して確認される。ビーム径は約20nmである。
【0036】
図3は、シングルイオン注入法によってCR・39と呼ばれる固体飛跡検出器にシングルイオンを打ち込み、化学エッチング処理を施した後、原子間力顕微鏡で観察した像である。注入されたシングルイオンがエッチピット38として観察されている。シングルイオン入射部位に繊維状カーボンが選択的に成長する。白十字39は照準マークであり、照準精度は狙った部位からの平均の誤差として60nmである。図3では、1μm間隔でシングルイオンが注入されたが、サブ100nm間隔で打ち込むことが可能である。
【0037】
図4は、シングルイオン注入法を用いて繊維状カーボン5の位置を制御するためのプロセスを示す図である。
【0038】
まず、シングルイオン注入装置11を用いて、繊維状カーボン5を成長させたい基板1(基材)上の位置、例えば2次元の格子点の位置に触媒金属イオン4(触媒元素)、例えばNiイオンを注入する(図4(a))。この際、Niイオンの分布の中心を基板1表面に調節するため、図示しない酸化膜(保護膜)を通してイオン注入を行う。これにより、Niイオンの分布の中心が基板1表面に位置するように調節することができる。
【0039】
触媒金属イオン4の注入後、酸化膜をエッチングして除去することにより注入イオン分布のピークが表面に現れる。この基板1を、例えばプラズマCVDで流量CH4:0.45sccm、H2:4.5sccmの混合気体を600℃、5分間熱処理した後、600℃10分間保持し、基板1上に繊維状カーボン5を成長させる。これにより、基板1の所定位置に一端を固定された繊維状カーボン5を形成することができる(図4(b))。
【0040】
この発明の第3実施形態は、繊維状カーボンの形態・位置制御方法を用いて一端が位置制御された繊維状カーボン素子の基本的な製造プロセスを示すものである。
【0041】
まず、触媒金属イオン4、例えばNiイオンの分布の中心を基板1(基材)表面に調節するため、基板1表面に図示しない酸化膜(保護膜)を形成し、この酸化膜を通して所定の位置に、シングルイオン注入装置11を用いてNiイオンの注入を行う(図5(a))。
【0042】
次に、酸化膜をエッチング除去した後、イオン照射によってアルカリ溶液によるSiのエッチング(溶解)速度が著しく低下する現象を利用して、頂点にNi原子を含む錐体、例えばピラミッド6を形成する(図5(b))。図6(a)、(b)は、シリコン基板に加速電圧30kVで1価のNiイオンを2μm間隔で2次元の格子点位置に1点につき2×1016cm−2ずつ注入した場合の例であるが、注入する不純物の種類と量により自由にピラミッド6の頂点の電気伝導性等を制御することができる。
【0043】
最後に、プラズマCVD処理等を施すことによって、ピラミッド6の頂点に繊維状カーボン5を成長させる(図5(c))。これにより、頂点にのみ繊維状カーボン5を有するピラミッド6をマスクレスでわずか数工程で作製することができる。勿論、アーク放電法、レーザーアブレーション法を用いて繊維状カーボン5を成長させることも可能である。
【0044】
なお、上記説明では、触媒金属イオン4の注入に、シングルイオン注入法を用いる場合について説明したが、触媒イオンの量・位置を制御できるものであれば、集束イオンビーム法等の種々の方法を用いることができる。
【0045】
この発明の第4実施形態は、繊維状カーボンの形態・位置制御方法を用いて一端が位置制御された繊維状カーボン素子を、光源、フラットパネルディスプレイ、電界放出源、電子銃等の電子放出素子に適用したものである。
【0046】
以下に、電子放出デバイスの製造プロセスについて説明する。
【0047】
まず、シリコンなどの基板1(基材)上に酸化膜2(保護膜)を形成し、リソグラフィーによって電子放出サイト7を有するレジストパターン3を形成する(図7(a))。続いて、イオン注入法により触媒金属イオン4(触媒元素)を注入し(図7(b))、レジストパターン3(マスク)の除去(図7(c))、酸化膜2の除去を行った後、イオン照射領域におけるシリコンエッチング減速現象を用いることによってピラミッド6を形成する(図7(d))。形成されたピラミッド6の先端部には触媒金属(触媒元素)が存在しており、プラズマCVD成長法等によって先端部にのみ選択的に繊維状カーボン5を成長させる(図7(e))。これにより、光源、フラットパネルディスプレイ、電界放出源、電子銃等の電子放出素子を形成することができる(図7(f))。
【0048】
このように基板1上に繊維状カーボン5を成長させた電子放出素子は、電界集中効果により、主として繊維状カーボン5の先端から電子が放出される。このとき、繊維状カーボン5の有する微小な先端半径、高アスペクト形状、および高電気伝導性によって、低消費電力下での電子放出を実現することができる。また、繊維状カーボン5の化学的安定性は、放出電子の時間安定性を増加することもできる。
【0049】
なお、上記説明では、触媒金属イオン4の注入に、イオン注入法を用いる場合について説明したが、シングルイオン注入法、集束イオンビーム法を用いることも勿論可能である。
【0050】
この発明の第5実施形態は、繊維状カーボンの形態・位置制御方法を用いて一端が位置制御された繊維状カーボン素子を、走査型プローブ顕微鏡の探針先端に応用したものである。
【0051】
この場合も、電子放出デバイスの製造プロセスと同様、シリコンなどの基板1上に酸化膜2(保護膜)を形成し、リソグラフィーによって電子放出サイト7をパターニングし(図8(a))、イオン注入法により触媒金属(触媒元素)をイオン注入し(図8(b))、レジストパターン3(マスク)の除去(図8(c))、酸化膜2の除去(図8(d))を行った後、イオン照射領域におけるシリコンエッチング減速現象を用いることによってピラミッド6を形成する(図8(d))。その後、プラズマCVD成長法等によって先端部にのみ選択的に繊維状カーボン5を成長させる(図8(e))。これにより、走査型プローブ顕微鏡の探針を形成することができる(図8(f))。
【0052】
このように形成された繊維状カーボン5は、微小な先端半径および高アスペクト比を有し、試料の様々な形状表面を高い分解能の下で観察するのに適し、機械的に柔軟かつ強靭な特徴は、探針劣化を防止し再現性の高い観察に適する。また、繊維状カーボン5の高い電気伝導性は、走査プローブ顕微鏡の探針において、電磁気学的な測定に適する。更に、繊維状カーボン5の熱伝導性は、走査プローブ顕微鏡において、熱力学的な測定にも適している。
【0053】
なお、上記説明では、触媒金属イオン4の注入に、イオン注入法を用いる場合について説明したが、シングルイオン注入法、集束イオンビーム法を用いることも勿論可能である。
【0054】
この発明の第6実施形態は、キャリヤを供給するソースと、キャリヤを受け取るドレインと、それらの間の電流通路であるチャネルの導電率を変化させることによりチャネルを流れる電流を制御するゲートとからなるデバイスにおいて、繊維状カーボンの形態・位置制御方法を用いて両端が位置制御された繊維状カーボン素子をチャネル及び配線に適用したものである。
【0055】
以下に、FET等の3端子デバイスの製造プロセスについて図9ないし図12を用いて説明する。ここで、図9(a)〜(n)は、図11のA−A線上の製造プロセスを示す断面図であり、図10(a)〜(l)は、図11のB−B線上の製造プロセスを示す断面図である。
【0056】
基板21(基材)には、数〜10nmの厚さを持つ酸化膜22とその表面にシリコン層23が形成されたものを用いる(図9(a)、図10(a))。基板1を洗浄した後、上部シリコン層23を酸化して酸化膜24を形成する(図9(b)、図10(b))。続いて、表面電位を基板1側から制御するバックゲート領域を形成するために、レジスト25を塗布して最初のリソグラフィーを行い(図9(c)、図10(c))、酸化膜24、シリコン層23をエッチング除去する(図9(d)、図10(d))。そして、シリコンを低抵抗化したイオン注入層26を形成するため、酸化膜22を通してイオン注入を行う(図9(e)、図10(e))。次に、電極を形成するために、レジスト27を塗布して第2回目のリソグラフィーを行い(図9(f)、図10(f))、酸化膜24、シリコン層23をエッチング除去する(図9(g)、図10(g))。更に、コンタクトを形成するために、レジスト28を塗布して第3回目のリソグラフィーを行い(図9(h)、図10(h))、酸化膜24をエッチング除去する(図9(i)、図10(i))。その後、電極材料29として、リンもしくはボロンドープの多結晶シリコン、および金属を堆積し(図9(j)、図10(j))、レジスト30を塗布して第4回目のリソグラフィーを行い(図9(k)、図10(k))、電極を形成する(図9(l)、図10(l))。形成された電極の所定の位置にシングルイオン注入法によって触媒金属31を打ち込み(図9(m)、図12(a))、続くプラズマCVD成長法によって半導体カーボンナノチューブ32(繊維状カーボン)を形成する(図9(n)、図11(a)、図12(b))。最後に、ゲート電極の所定の位置にイオン注入法によって触媒金属を打ち込み、これを起点として金属カーボンナノチューブ33(繊維状カーボン)を半導体カーボンナノチューブ32の上を跨ぐ様に成長させる(図11(b))。これにより、超微細なFET等の3端子デバイスを構築することができる。
【0057】
なお、このような方法は、例えば図13に示すような、入力端子35、出力端子36、電源37を有し、チャネルや配線をカーボンナノチューブで置き換えたCMOS、ナノデバイス、分子デバイス、単電子デバイス、薄膜(2次元)量子細線(1次元)・量子ドット(0次元)、系デバイス、フォトニックデバイス、量子コンピューティングデバイスへの応用も可能である。これにより、現行技術の100分の1以下に相当する超微細な集積回路を構築することができる。
【0058】
なお、上記説明では、触媒金属イオン31の注入に、シングルイオン注入法を用いる場合について説明したが、イオン注入法、集束イオンビーム法を用いることも勿論可能である。
【0059】
【発明の効果】
本発明の請求項1記載の繊維状カーボンの形態・位置制御方法は、イオン注入法、集束イオンビーム法又はシングルイオン注入法のいずれかによって、触媒元素を基材表面上の所定位置に注入し、前記触媒元素を触媒として繊維状カーボンを形成することを特徴とするものであり、これにより、固体表面上に自在にナノメートルオーダー精度で繊維状カーボンの成長位置を制御することができるので、従来のものに比較してスループット及び歩留まりの向上を図ることができると共に、低コスト化を図ることができる。
【0060】
請求項2記載の繊維状カーボンの形態・位置制御方法は、前記請求項1において、前記触媒元素を注入する前に、注入されるイオンが基材表面に位置するように調節する保護膜を基材表面上に形成することを特徴とするものであり、これにより、触媒元素の深さ方向の位置を制御することができるので、繊維状カーボンの形態・位置を確実に制御して、歩留まりの向上を図ることができる。
【0061】
請求項3記載の繊維状カーボン素子は、イオン注入法、集束イオンビーム法又はシングルイオン注入法のいずれかによって、基材表面上に位置制御された触媒元素の位置に一端が固定されていることを特徴とするものであり、これにより、位置が正確に制御された繊維状カーボン素子を種々のデバイスに応用することができるので、デバイスの高機能化及び低コスト化を図ることができる。
【0062】
請求項4記載の繊維状カーボン素子は、イオン注入法、集束イオンビーム法又はシングルイオン注入法のいずれかによって、基材表面上に位置制御された触媒元素の位置に両端が固定されていることを特徴とするものであり、これにより、両端の位置が正確に制御された繊維状カーボン素子を種々のデバイスに応用することができるので、デバイスの高機能化及び低コスト化を図ることができる。
【0063】
請求項5記載のデバイスは、電子を放出可能な電子放出部を有するデバイスにおいて、前記電子放出部は、イオン注入法、集束イオンビーム法又はシングルイオン注入法のいずれかによって、基材表面上に位置制御された触媒元素の位置に一端が固定されている繊維状カーボン素子からなることを特徴とするものであり、これにより、正確に位置制御された繊維状カーボン素子を電子放出部を有するデバイスに適用するので、低消費電力で安定した電子放出を行うことができる。
【0064】
請求項6記載のデバイスは、変位を検出可能な探針を有するデバイスにおいて、前記探針は、イオン注入法、集束イオンビーム法又はシングルイオン注入法のいずれかによって、基材表面上に位置制御された触媒元素の位置に一端が固定されている繊維状カーボン素子からなることを特徴とするものであり、これにより、正確に位置制御された繊維状カーボン素子を、変位を検出可能な探針を有するデバイスに適用するので、高い分解能の下で再現性の高い観察を行うことができる。
【0065】
請求項7記載のデバイスは、キャリヤを供給するソースと、キャリヤを受け取るドレインと、それらの間の電流通路であるチャネルの導電率を変化させることによりチャネルを流れる電流を制御するゲートとからなるデバイスにおいて、前記チャネルは、イオン注入法、集束イオンビーム法又はシングルイオン注入法のいずれかによって、前記ソース及びドレインに位置制御された触媒元素の位置に両端が固定されている繊維状カーボン素子からなることを特徴とするものであり、これにより、正確に位置制御された繊維状カーボン素子をチャネルに適用するので、デバイスの微細化を図ることができ、計算速度の向上や低消費電力化を図ることができる。
【0066】
請求項8記載のデバイスは、複数の電子素子と、前記電子素子をつなぐ配線とを有するデバイスにおいて、前記配線は、イオン注入法、集束イオンビーム法又はシングルイオン注入法のいずれかによって、前記電子素子に位置制御された触媒元素の位置に両端が固定されている繊維状カーボン素子からなることを特徴とするものであり、これにより、正確に位置制御された繊維状カーボン素子を配線に適用するので、デバイスの微細化を図ることができ、低消費電力化や低コスト化を図ることができる。
【0067】
請求項9記載のデバイスは、キャリヤを供給するソースと、キャリヤを受け取るドレインと、それらの間の電流通路であるチャネルの導電率を変化させることによりチャネルを流れる電流を制御するゲートとからなる複数の電子素子と、前記電子素子をつなぐ配線とを具備するデバイスにおいて、前記チャネルは、イオン注入法、集束イオンビーム法又はシングルイオン注入法のいずれかによって、前記ソース及びドレインに位置制御された触媒元素の位置に両端が固定されている繊維状カーボン素子からなり、前記配線は、イオン注入法、集束イオンビーム法又はシングルイオン注入法のいずれかによって、前記電子素子に位置制御された触媒元素の位置に両端が固定されている繊維状カーボン素子からなることを特徴とするものであり、これにより、正確に位置制御された繊維状カーボン素子をチャネル及び配線に適用するので、デバイスの微細化を図ることができ、計算速度の向上や、低消費電力化、低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のイオン注入法による繊維状カーボンの形態・位置制御方法を説明する断面図である。
【図2】シングルイオン注入装置を示す模式的構成図である。
【図3】シングルイオン照射痕を示す原子間力顕微鏡像である。
【図4】本発明のシングルイオン注入法による繊維状カーボンの形態・位置制御方法を説明する概略斜視図である。
【図5】本発明の繊維状カーボン素子の基本的な製造プロセスを説明する概略斜視図である。
【図6】(a)触媒金属を頂点とするピラミッド、及び(b)触媒金属の注入後の基板表面を示す電子顕微鏡写真である。
【図7】本発明の電子放出デバイスの製造プロセスを説明する概略斜視図である。
【図8】本発明の走査型プローブ顕微鏡の探針の製造プロセスを説明する概略斜視図である。
【図9】本発明の繊維状カーボン素子を用いた3端子デバイスのソース及びドレインの製造プロセスを説明する断面図である。
【図10】本発明の繊維状カーボン素子を用いた3端子デバイスのゲートの製造プロセスを説明する断面図である。
【図11】本発明の繊維状カーボン素子を用いた3端子デバイスを示す概略平面図である。
【図12】本発明の繊維状カーボン素子を用いた3端子デバイスの製造プロセスを説明する概略斜視図である。
【図13】本発明の繊維状カーボン素子を用いた集積回路を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
1 基板(基材)
2 酸化膜(保護膜)
4 触媒金属イオン(触媒元素)
5 繊維状カーボン
21 基板(基材)
31 触媒金属イオン(触媒元素)
32 繊維状カーボン
Claims (9)
- イオン注入法、集束イオンビーム法又はシングルイオン注入法のいずれかによって、触媒元素を基材表面上の所定位置に注入し、前記触媒元素を触媒として繊維状カーボンを形成することを特徴とする繊維状カーボンの形態・位置制御方法。
- 前記触媒元素を注入する前に、注入されるイオンが基材表面に位置するように調節する保護膜を基材表面上に形成することを特徴とする請求項1記載の繊維状カーボンの形態・位置制御方法。
- イオン注入法、集束イオンビーム法又はシングルイオン注入法のいずれかによって、基材表面上に位置制御された触媒元素の位置に一端が固定されていることを特徴とする繊維状カーボン素子。
- イオン注入法、集束イオンビーム法又はシングルイオン注入法のいずれかによって、基材表面上に位置制御された触媒元素の位置に両端が固定されていることを特徴とする繊維状カーボン素子。
- 電子を放出可能な電子放出部を有するデバイスにおいて、
前記電子放出部は、イオン注入法、集束イオンビーム法又はシングルイオン注入法のいずれかによって、基材表面上に位置制御された触媒元素の位置に一端が固定されている繊維状カーボン素子からなることを特徴とするデバイス。 - 変位を検出可能な探針を有するデバイスにおいて、
前記探針は、イオン注入法、集束イオンビーム法又はシングルイオン注入法のいずれかによって、基材表面上に位置制御された触媒元素の位置に一端が固定されている繊維状カーボン素子からなることを特徴とするデバイス。 - キャリヤを供給するソースと、キャリヤを受け取るドレインと、それらの間の電流通路であるチャネルの導電率を変化させることによりチャネルを流れる電流を制御するゲートとからなるデバイスにおいて、
前記チャネルは、イオン注入法、集束イオンビーム法又はシングルイオン注入法のいずれかによって、前記ソース及びドレインに位置制御された触媒元素の位置に両端が固定されている繊維状カーボン素子からなることを特徴とするデバイス。 - 複数の電子素子と、前記電子素子をつなぐ配線とを有するデバイスにおいて、
前記配線は、イオン注入法、集束イオンビーム法又はシングルイオン注入法のいずれかによって、前記電子素子に位置制御された触媒元素の位置に両端が固定されている繊維状カーボン素子からなることを特徴とするデバイス。 - キャリヤを供給するソースと、キャリヤを受け取るドレインと、それらの間の電流通路であるチャネルの導電率を変化させることによりチャネルを流れる電流を制御するゲートとからなる複数の電子素子と、前記電子素子をつなぐ配線とを具備するデバイスにおいて、
前記チャネルは、イオン注入法、集束イオンビーム法又はシングルイオン注入法のいずれかによって、前記ソース及びドレインに位置制御された触媒元素の位置に両端が固定されている繊維状カーボン素子からなり、
前記配線は、イオン注入法、集束イオンビーム法又はシングルイオン注入法のいずれかによって、前記電子素子に位置制御された触媒元素の位置に両端が固定されている繊維状カーボン素子からなることを特徴とするデバイス。
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