JP2004351106A - 繊維製面ファスナー及びその製造方法 - Google Patents

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光久 大川
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Abstract

【課題】マンドレルなどを使わずに、表面がソフト感に優れ、雌の係合素子としての係脱機能を十分に発揮し、しかも他面側に形成される雌又は雄の係合素子の存在と相まって多様な用途に適用可能な繊維製の面ファスナーを提供する。
【解決手段】地組織から構成される基材織物(2) の織成と同時に織り込まれ、同織物(2) の表裏両面に多数の係合素子を有する繊維製の面ファスナー(1) である。前記地組織を構成する経糸(11 〜17) の一部経糸(15,15’)を前記地組織の一表面側に浮き上がらせて織成する。前記一部経糸(15,15’) 以外の経糸(11 〜14,16,17) の熱収縮率を一部経糸(15,15’) のそれよりも大きく設定し、その熱収縮差を利用して、前記一部の経糸(15,15’) を除く経糸(11 〜14,16,17) の加熱収縮により、前記一部経糸(15,15’) の浮上り部分を前記地組織の一表面にループ状に突出して多数のループ(4) を形成する。また、同時に前記地組織の他表面にも、多数の雄及び/又は雌用のループ(3,4) を突出させる。
【選択図】図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は地組織の織成と同時に織り込まれ、その一表面に突出する多数のループからなる雌係合素子を有する繊維製面ファスナーに関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の繊維製面ファスナーは、一般に繊維製の織物の地組織からなる平板状の基材織物の一表面に立設する多数のループをもつ、いわゆるパイル織編物から製造される。通常は、モノフィラメントからなるループ糸を地組織を構成する基材織物の織成と同時に織り込んだのちに、前記各ループの側部を一部切断してフック片を作り、又はループの頂部を切断してから、その先端を球状(又は半球状)に加熱溶融してきのこ片を作り、雄係合素子を成形する。
【0003】
雌の係合素子の場合には、基材織物の織成と同時に織り込まれるループ糸にはマルチフィラメントが使われ、前記織成の終了後に熱セットや染色を行い、続いてループ形状はそのままとしてループにナッピングを施して、マルチフィラメントを単繊維に分離するとともに各単繊維のループを多方向を向かせる。ところで、雄の係合素子であれ、雌の係合素子であれ、上述のようにループを形成するには、通常、レノヘルド織機もしくはゲートフック織機などの特殊な織機が使われる。これらの織機によりループを形成しようとすると、ループを形成するための、例えば針金状のマンドレルなどの専用部品を使わなければならない。
【0004】
そのため、その準備工程が煩雑となり、特に雌の係合素子を形成するには多数の細いフィラメントの集合体であるマルチフィラメント糸が使われるため、他の経糸とマンドレルを跨いでループを形成するときに強い張力がかかるため、ここのフィラメント単繊維が切断しやすく、マンドレルなどの専用部品の不要な通常の織機をもってループ、特に雌係合素子用のループを形成することが望まれている。かかる要望に応える提案が、例えば特公昭50−20634号公報や特公平4−58323号公報によりなされている。
【0005】
前記特公昭50−20634号公報では、繊維製面ファスナーの地組織の経糸の一部にマルチフィラメント嵩高糸を使って斜紋織りに織成し、このマルチフィラメント嵩高糸を除く経糸の熱収縮率をマルチフィラメント嵩高糸の熱収縮率よりも大きくし、加熱処理後にマルチフィラメント嵩高糸を除く経糸を収縮させてマルチフィラメント嵩高糸をループ状の雌係合素子を形成することを開示している。
【0006】
一方の特公平4−58323号公報では、バッキング材(面ファスナーの基材)として一方向に熱収縮性を有する合成樹脂薄膜が使われ、このバッキング材の一表面に、その長さ方向に沿って多数のフィラメントを配したのち、長さ方向に所要の間隔をおいて前記フィラメントをバッキング材に接着や溶着により固定し、これに加熱処理を加えてバッキング材を収縮させることにより、バッキング材の一表面に多数のフィラメントをループ状に突出させて雌係合素子を形成する。
【0007】
ところで、前述のモノフィラメトからなるループの切断やマルチフィラメントからなるループのナッピングを行う前には、熱セットによりループ形状を固定しているが、ループに対する切断時やナッピング時の外部応力により、ループが引き出され或いは基材織編物から引き抜かれてしまい、面ファスナーとしての機能を失ってしまう。これを防ぐため、通常は一表面にループの形成された基材織物の背面、すなわちループの形成されていない他表面にバックコーティングがなされる。
【0008】
このバックコーティングは、溶剤により溶解したナイロン、ポリエステル、ポリウレタンなどの樹脂溶液を塗工することにより行われる。これらの樹脂溶液は溶剤が除去されると固化して硬くなる。更に、これらの樹脂は溶剤とともに基材織物の構成糸の交絡部間に形成される空隙に浸入して基材織編物の構成糸条間及び同構成糸とループ糸との間を接着固化する。また同時に、前記構成糸を構成する多数の繊維間にも浸入して固化するため、基材織編物の背面だけが硬くなるのではなく、基材織編物全体が硬くなってしまう。
【0009】
こうした不具合を排除するため、例えば実公平1−33656号公報や特開2001−309805号公報では、一重又は二重パイル(ループ)織物の緯糸又は経糸の一部に熱溶着糸を使い、ループ織物を織成したのち加熱して前記熱溶着糸を溶融させて、基材織物の内部で熱溶着糸と他の構成糸間を接着固化することを提案している。こうすることにより、格別に接着剤が使われず、しかも基材織物の表面に表出する固化樹脂部分が殆どなくなるため、面ファスナー全体の柔軟性が確保できるとしている。
【0010】
更に、例えば特開2001−238708号公報によれば、地組織を構成する基材織物の経糸が緯糸を一本跨ぐたびにループ糸の左右に振って絡ませる、いわゆるレノ組織で織成し、ループ糸の抜けを防いでいる。同公報によれば、更に前記ループ糸に絡められた経糸とループ糸の左右両側に配される経糸に上記公報と同様の熱溶融糸を使うことも開示されており、この場合には前記レノ組織と熱溶融糸の溶着とが相まって、ループ糸の抜けや織組織の崩れを効果的に防いでいる。
【0011】
更に、例えば特開2003−61714号公報には、地組織の上下両面に多数の係合素子を有する繊維製面ファスナーの全構成糸条よりも低い融点を有するパウダー状の樹脂粉末を、面ファスナーの係合素子が形成されている面から付与したのち、前記樹脂粉末を溶融させて、地組織の構成糸条とループ糸条との間を融着固定することが開示されている。
【0012】
【特許文献1】
特公昭50−20634号公報
【特許文献2】
特公平4−58323号公報
【特許文献3】
実公平1−33656号公報
【特許文献4】
特開2001−309805号公報
【特許文献5】
特開2001−238708号公報
【特許文献6】
特開2003−61714号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、この種の面ファスナーの用途の多様化は更に細分化を続けており、例えば単なる一般の衣料分野や日用品、或いは産業機材の固着具としての用途に限らず、各種スポーツ用品、衛生用品、医療用具などでは面ファスナー自体が直接使われるようになってきている。その代表的な例としては、各種の結束バンドや上記特許文献によっても提案されているような各種の吸湿ベルト、或いは直接肌に触れる包帯や時計バンドなどがある。これらの製品には、柔軟性が要求されると同時に、肌に触れる部分の感触が重視されることが多い。
【0014】
しかるに、上記特許文献4及び5により提案された繊維製の面ファスナーは、なるほどその背面に各種樹脂によるバックコーティングがなされていないため、全体的には柔軟性が増し、背面側の感触も多少の改善はされるものの、その背面には従来と同様に緯糸を跨いで屈曲する経糸の屈曲回数が多いため、背面がざらつくだけでなく、糸の種類によってはごつごつ感を払拭することができない。これは、特に面ファスナーの背面が直接肌に触れる用途には致命的な欠点となる。
【0015】
また、上記特許文献6に開示された繊維製の面ファスナーは、特許文献4及び5と同様に、背面には各種樹脂によるバックコーティングがなされないため、全体的には柔軟性が増しはするものの、その背面には通常の背の高いマルチフィラメントのループからなる雌の係合素子が突出して形成されており、表面におけるモノフィラメントからなるループの形成と同様に、その形成には既述したようなレノヘルド織機等の特殊織機を使わざるを得ないだけでなく、その背面にもモノフィラメントからなるループと同様のループを形成するために、特殊器具である既述したようなマンドレルを背面側にも配する必要があり、機構の複雑化に加えて織成準備作業がより煩雑化し、更には柔軟性をもつとは言え、背の高いマルチフィラメントのループからなる雌の係合素子では相変わらず肌触りなどの点で違和感が残されている。
【0016】
本発明は、こうした従来の課題を解決すべくなされたものであり、具体的な目的はバックコーティングを施すことなく、同時に係合素子が抜け落ちたり、引き出されたりせずに、その形態を長期にわたって維持でき、しかも地組織の一表面に形成される雌係合素子の触感がソフトで肌にも優しい繊維製の面ファスナーを提供することにある。
本発明の他の目的は、以下の説明によって更に明らかにされる。
【0017】
【発明を解決するための手段及び作用効果】
上記課題は、本件の請求項1〜請求項11に係る発明によって達成できる。
これらの発明にあって、第1の基本的な構成は、地組織から構成される基材織物の織成と同時に織り込まれ、同織物の表面に多数の係合素子を有する繊維製の面ファスナーであって、前記地組織を構成する経糸の一部経糸が、前記地組織の一表面側に浮き上がらせて織成され、前記一部経糸とそれ以外の経糸との熱収縮差を利用して、前記一部経糸を除く経糸の加熱収縮により、前記一部経糸の浮上り部分を前記地組織の一表面にループ状に突出して形成された多数のループと、前記地組織の織成と同時に織り込まれ、前記地組織の他表面に突出する多数のループからなる雌係合素子、又は前記地組織の他表面に突出するモノフィラメントからなる多数の各ループの一部を切断して形成された多数の雄係合素子とを備えていることを特徴としている。
【0018】
また、本発明にあって、第2の基本的構成は、地組織から構成される基材織物の織成と同時に織り込まれ、同織物の表面に多数の係合素子を有する面ファスナーの製造方法であって、前記地組織を構成する経糸の一部経糸の熱収縮率を他の経糸の熱収縮率よりも小さく設定すること、前記一部経糸を局部的に地組織に固定し、前記地組織の一表面上に浮き上がらせて織成すること、前記地組織の織成と同時に、前記地組織の他表面に多数の雌係合素子用のループ、又はモノフィラメントからなる多数の雄係合素子用のループを突出させて織成すること、及び次いで加熱処理を行い、主に前記一部経糸以外の経糸を収縮させて、前記一部経糸の各浮上り部分を前記地組織の表面にループ状に突出させることを含んでいることを特徴とする繊維製面ファスナーの製造方法にある。
【0019】
前記一部経糸を基材織編物の一表面に浮き上がらせて織り込むとき、従来のレノヘルド織機などの特殊織機をそのまま使い、一表面に一部経糸を浮き上がらせて織り込むと同時に、他表面に雄の係合素子用ループを形成しながらモノフィラメントを織り込むようにすればよい。一方、上述のように基材織編物の一表面とともに、他表面にも一部経糸を浮き上がらせて雌の係合素子を形成することができ、このときは地組織の両面に同じ構造の雌係合素子が形成されるため、わざわざ表裏を選択する必要がなく、雌の面ファスナー部材として使用できるばかりでなく、通常の織機である各種のドビー織機を使うことができるという利点もある。
【0020】
前記一部経糸としては、柔軟性に優れた各種加工糸を使うことが好ましく、例えばナイロン系やアクリル系などの柔軟性の高い合成樹脂からなる実質的に無撚りのマルチフィラメントを使うこともできるが、更なるソフト感を与えるためにはマルチフィラメントからなる嵩高加工糸を使うことが好ましい。或いは吸湿性が求められる場合には、各種のセルロース繊維からなる加工糸を使うことも可能である。いずれにしても、これらの加工糸として他の経糸よりも太い糸を使うことが基材織編物の裏面を被覆するため好ましい。
【0021】
面ファスナーの地組織を構成する基材織物にあって、加工糸以外の経糸については可能な限り織密度を高くして織成し、その間の適当な箇所に加工糸を織り込むようにする。このとき、一本の緯糸の他表面を跨いだのち、複数本の緯糸の一表面側を跨ぐように飛ばして、面ファスナーの一表面に浮き上がらせる。この一本の緯糸の他表面を跨ぐ加工糸の位置と同加工糸に隣接する加工糸が一本の緯糸の他表面を跨ぐ位置とは同じ位置ではなく、緯糸一本ずつ経糸方向にずらして跨ぐようにさせることが、面ファスナーの裏面の全体を均一に被覆することができるため好ましい。前記緯糸の他表面を跨ぐ加工糸の位置を織物全面にわたってランダムに分散させることもできる。
【0022】
こうして、織成されたループ織物のループが形成された側とは反対側の組織に加工糸の一部が結合されて、加工糸はその結合された一部を除いて面ファスナーの一表面側に全て浮き上がって表出し、面ファスナーの略裏面全体を覆うようになる。その結果、加工糸が表出する面ファスナーの一表面は、柔軟性と嵩高性に優れた極めてソフトな感触が得られる。
【0023】
こうして得られる面ファスナーは、例えば染色や熱セット工程に回されて高熱下での処理を受ける。このとき、前記一部経糸以外の経糸には熱収縮率が前記一部経糸よりも大きい材質から構成されているがため、大きく収縮する。その結果、前記一部経糸は収縮がされないままに、或いは収縮はしても極めて少なく、浮き上がった一部経糸自身は収縮しない状態で地組織との固定部間の距離が大幅に縮まるために、浮き上がり量を大きくしたループ状に突出する。このループ状に突出した浮き上がり部分は、そのまま相手方のフック状やキノコ状の雄係合素子と係合・離脱する雌の係合素子としての機能を有するようになる。
【0024】
本発明にあっては、前述のような雌係合素子を地組織の一表面のみならず、他表面側にも同時に雌係合素子として突出させることができる。その形成手法は前述のとおり、地組織の一表面側に形成する一部経糸の浮き上がり部分と同様に、同様の物性をもつ一部経糸を浮き上がらせて織成したのち、他の経糸を加熱収縮させて雌係合素子を形成し、或いはマンドレルを使った通常のループの形成手法により雌係合素子としてのループを直接形成する。
【0025】
しかし、通常、地組織の一表面に前述のごとき雌係合素子を形成するとともに、他表面側にモノフィラメントからなる雄の係合素子が形成される。このような構成を採用することにより、各種の医療用包帯などとして地組織の一表面を直接肌に接触させても肌に刺激を与えることがなく、ソフト感に優れ好感触をもって使用することができる。勿論、通常の物品結束用のベルトとしても使用が可能である。
【0026】
また本発明にあっては、前記地組織を構成する経糸が他の構成糸材料よりも融点が低い熱溶着糸を更に含んでおり、加熱処理により溶着するその熱溶着糸をもって、その周辺部の糸条同士を接合させることができる。本発明にあって、例えば更に柔軟性と薄さを要求される場合には、上述のごとく、単なる織組織と熱セットだけではループ糸の形態を固定することが難しくなる。このような場合に、経糸として一部に熱溶着糸を配して地組織を織編成したのち、その織編物を加熱して熱溶着糸を溶融し、その溶着糸材料をもって周辺の構成糸間及び単繊維(フィラメント)間を接合する。このとき、熱溶着糸が完全に溶融して液状となって周辺の構成糸間及び単繊維(フィラメント)間を接合させるようにしても、或いは熱溶着糸が半溶融状態となり、その表面の溶融部分を周辺の構成糸間及び単繊維(フィラメント)に溶着させるようにすることもできる。
【0027】
このとき、当然に加工糸は面ファスナーの裏面に浮き上がりその全体を被覆しているため、前記溶着糸材料は加工糸を透過して外部にまで表出することはなく、その面ファスナーの他表面側の織組織と接触する構成繊維の一部が面ファスナ他表面側の織組織と前記溶着糸材料を介して接合されるに過ぎない。このため、製品とされたのちの面ファスナーの一表面は相変わらずソフト感に優れたものとなっている。しかも、従来のバックコーティングと異なり、面ファスナーの基材織物のごとく大量のバックコーティング用樹脂を使用する必要がなく、基材の内部で効率的に構成糸間を接合するため、柔軟性を損なうこともない。
【0028】
ところで、本発明のように面ファスナーの裏面に、例えば嵩高加工が施されたマルチフィラメントからなる加工糸を浮き上がらせて織成したのちに、一部経糸以外の経糸を収縮させて、その浮き上がり量が多くなると、面ファスナーの周辺物や指先などが僅かに引っ掛かっただけでも、簡単に単繊維(フィラメント)に分離して切断しやすい。通常の合成樹脂繊維製の面ファスナーは、量産のために複数本の面ファスナーテープ分を一緒に織成して広幅の織編物からなる原反を得たのち、所要のテープ幅に切断することが多い。この切断には、切断後の糸のほぐれを防ぐため、高周波や超音波を使った溶着切断、或いは加熱による溶着切断が使われるのが一般的である。
【0029】
しかるに、このような溶着切断によると、その切断端が相当に硬くなり、これが肌に当たると、場合によっては傷を付けるとも限らない。そこで、本発明にあっては広幅のループ織編物を面ファスナー単位の幅に切断するにあたり、前述のごとき溶断によらずにカッターなどによる通常の剪断によろうと考えた。しかしながら、上述の織編組織では切断部(耳部)においても裏面の浮き上がり量が多くなりすぎて、指先などが僅かに引っ掛かっただけで浮き上がっている糸が容易にほぐれやすく、毛羽立ちがひどくなり、製品として実用に耐えないものとなってしまう。そこで本発明では、前記基材織編物の緯糸又はコースを屈曲して跨ぎ一表面に浮き上がる加工糸の、耳部における浮上り回数(屈曲)を主体部における浮上り回数(屈曲部)の2倍以上に設定することが好ましい。かかる構成を採用することにより、耳部における裏面の浮き上がり量が少なくなり、簡単にはほぐれないようになる。この場合、既述したように耳部に配される経糸の一部に熱溶着糸を配することにより、更にそのほぐれを無くすことができる。
【0030】
また、本発明にあって、上記熱溶着糸を使うことに代えて、上記特許文献6と同様に、融点の低い熱溶融性の樹脂粉末を使って、地組織と係合素子との間の接合することも可能である。この場合にも、使われる樹脂粉末の量は面ファスナーの離脱時に受ける剥離力により、係合素子が地組織から抜け出すこととのない必要十分な接着力が確保されるに足る量でよい。
【0031】
本発明における地組織の他表面から突出する係合素子は、一表面に形成される上記雌係合素子と同様の構造をもつ雌の係合素子であっても、通常のループからなる雌係合素子であっても、或いはフック状又はきのこ状の雄係合素子であってもよい。更に本発明にあっても、基材織編物の係合素子が形成される地組織として、上記特許文献5と同様に経糸による絡み組織を採用すれば、さらに面ファスナーとしての形態が安定し、所要の係合強度や剥離強度を得ることができるため好ましい。
【0032】
【発明の実施形態】
以下、本発明の好適な実施の形態を図示実施例に基づき具体的に説明する。
図1及び図2は、本発明に係る織成面ファスナーの織物構造を備えた典型的な実施例を模式的に示す織組織図である。同実施例は前記織成面ファスナーが地組織をなす基材織物の一表面に多数のマルチフィラメント糸からなる浮き上がり糸からなる雌の係合素子を形成するとともに、基材織物の他表面に多数のモノフィラメントからなる通常のループからなる雄の係合素子を形成する例を挙げている。
【0033】
同図において、符号10は基材織物、11〜14は通常のループを形成する他表面側の地組織を構成する第1〜第4の4本の経糸、15,15’は本発明の特徴部の一部をなすループ形成側とは反対側の地組織裏面(一表面)に浮き上がらせて織成されるマルチフィラメントからなる低収縮性の嵩高加工糸を示しており、符号16及び17は本発明の特徴部の更に一部を構成し、ループ形成側表面(他表面)の地組織の一部となる第1及び第2の熱溶着糸を示している。また、符号18は地組織の他表面に形成される通常のループ用経糸(ループ糸)を示し、同じくマルチフィラメントから構成される。なお、符号19は緯糸を示している。
【0034】
因みに、本実施例における熱収縮率の高い経糸11〜14と熱収縮率の低い嵩高加工糸15,15’との熱収縮差は1〜3%としている。また、本実施例にあって熱収縮率の低い一部経糸として、マルチフィラメントからなる嵩高加工糸を使っているが、必ずしも嵩高加工糸でなくてもよく、実質的に撚りの無いマルチフィラメント糸であってもよい。ここで、実質的に撚りのないマルチフィラメントとは、1m当たりの撚り数が0〜10個であるようなマルチフィラメント糸を言う。
【0035】
本実施例にあって、前記地組織の熱収縮率の大きい通常の経糸11〜14、経糸の一部を構成する熱収縮率の小さい嵩高加工糸15,15’、及び熱溶着糸16,17、緯糸19の全てがナイロン系樹脂からなるマルチフィラメントから構成されている。また、ループ糸18には同じくナイロン系樹脂からなり、ある程度の剛性を有する太い雄係合素子用のモノフィラメントが使われている。勿論、本発明にあってはナイロン製のマルチフィラメントやモノフィラメントに限らず、例えばポリエステル、ポリアクリル、ポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂を単独で又は組み合わせて使うことができ、或いはこれらの樹脂からなるフィラメントにセルロース繊維などを組み合わせて使うこともできる。更には、係合素子が通常の雌係合素子である場合には、ループ糸18に前述の各種合成樹脂材料からなる柔軟な無撚りのマルチフィラメント糸やマルチフィラメントからなる嵩高加工糸、或いは細いモノフィラメントを使うこともできる。
【0036】
図示例では、地組織に使う経糸としては第1〜第4の収縮率の高い通常経糸11〜14と、前記通常経糸11〜14よりも熱収縮率が著しく低い嵩高加工糸15,15’と、他の構成糸条と比較して低融点の材質からなる第1及び第2の熱溶着糸16,17と、ループ糸18との5種類が使われ、面ファスナーの一単位ごとに表面にループ3,4が形成された主体部Aとその幅方向の両側に形成された耳部Bとから構成される。主体部Aの地組織は、図1に示すように、左から第1の経糸11、第1の熱溶着糸16、第2の経糸12、低収縮性の嵩高加工糸15、第3及び第4の経糸13,14、第2の熱溶着糸17の順に配され、これが幅方向に繰り返し配されている。
【0037】
第1、第2及び第4の経糸11,12,14の経方向の走行は、隣接する緯糸19間を一本ずつ潜ったあとで跨ぐ動作を繰り返しており、第3の経糸13の経方向の走行は、隣接する第4の経糸14とは隣接する緯糸間において、その挙動が逆となり、隣接する緯糸19を一本ずつ潜ったあとで跨ぐ動作を繰り返している。第1及び第2の熱溶着糸16,17は前記第1の経糸11が緯糸19を潜るとき同緯糸19を跨ぎ、第1の経糸11が緯糸19を跨ぐときに潜る動作を繰り返して織成される。
【0038】
上記モノフィラメントからなる雄係合素子用のループ糸18は、第1の熱溶着糸16と第2の経糸12との間を第1の熱溶着糸16と同様に緯糸19の下を潜り、これに隣接する緯糸19を1本跨ぎながらループ3を形成して第2〜第4の3本の経糸12〜14を斜めに跨いだのち、第4の経糸14と第2の熱溶着糸17との間で隣接する緯糸19の下を潜り、次位の緯糸19を跨いだのち次の緯糸19の下を潜り、次いで第4〜第2の3本の経糸14〜12を斜めに跨いだのち、第1の熱溶着糸16と第2の経糸12との間で次位の緯糸19の下を潜ってから次の緯糸19を跨ぎ、更に次位の緯糸19の下を潜り、次いで第2〜第4の経糸12〜14をループ3を形成しながら斜めに跨ぐ動作を繰り返して経糸方向に走行する。
【0039】
上記低収縮性の第1の嵩高加工糸15は、上記第2の経糸12と第3の経糸13との間に配され、1本の緯糸19を潜ったのち、隣接する緯糸19を跨ぎ、更に隣接する緯糸19の下を潜ったのち隣接する緯糸19を跨ぎ、次いで隣接する9本の緯糸19の下を潜ったのちに、その隣接する緯糸19を跨き、これを繰り返して走行する。第2の嵩高加工糸15’は、緯糸19を2回跨ぐ位置が、第1の嵩高加工糸15の2回跨ぐ位置よりも緯糸19の6本分ずれた位置にあり、その他の挙動は第1の嵩高加工糸15と同様の繰り返しである。
【0040】
なお、本実施例では前記第1及び第2の嵩高加工糸15,15’は2本のマルチフィラメントからなる嵩高加工糸から構成されており、その合計の糸太さを、例えば470dtexとしている。因みに、このとき主体部Aにおける通常のマルチフィラメントからなる第1〜第3の各経糸11〜14の糸太さは155dtex、低融点のマルチフィラメントからなる第1及び第2の熱溶着糸16,17の各糸太さは220dtex、モノフィラメントからなるループ糸18の糸太さは360dtexに設定されている。
【0041】
上記耳部の織組織には、上記第1及び第4の経糸11〜14と同様の経糸が使われて平織組織にて織成されており、その第2及び第3の経糸12,13の間に配された上記第1の嵩高加工糸15と同類の1本の加工糸15と、上記第1の熱溶着糸16と同類の1本の熱溶着糸16が隣接して配され、この熱溶着糸16は第3の経糸13とは逆の動作を繰り返して織り込まれており、前記嵩高加工糸15は主体部Aとは異なり、上述の緯糸5本を下に潜ったのち6本目の緯糸19のループ形成側表面を跨ぐ動作を繰り返して織り込まれている。こうして得られる面ファスナーの一単位ごとに使われる地組織を構成する第1〜第4の経糸11〜14の総本数は130本、加工糸の総本数は33本、熱溶着糸16,17の総本数は62本となっている。上記地組織の他表面に突出する上記ループ糸18の織成後に加熱処理がなされたのち、前記ループ糸18により形成されたループ3の側部を一部切断してフック片を形成し、或いはループ3の頂部を切断したのち、その先端部を加熱して半球状又は球状の係合頭部を形成して、雄係合素子を形成する。
【0042】
以上の構成にあって、面ファスナーテープ10の原反が織成されると、図2に示すように、他表面である上面にはモノフィラメントからなるループ糸18により多数の雄係合素子用のループ3が形成され、その一表面である下面には第1及び第2の加工糸15,15’の大部分が下面から浮き上がった状態で織り込まれている。このような浮き組織の織成は、従来の織り模様や織り柄と同様に容易に織成することができる。この織成に続いて、100℃程度の温度からなる染色液に投入されて染色がなされる。この染色時に、熱収縮率の小さい前記第1及び第2の嵩高加工糸15,15’は殆ど収縮しないが、同嵩高加工糸15,15’を除く熱収縮率の大きな通常経糸11〜14は大きく収縮して、第1及び第2の嵩高加工糸15,15’を地組織に固定する固定部分の間の距離が縮まり、その浮き上がり量が大幅に増えて、図3に示すようなループ形状となる。
【0043】
このとき、同時に融点の低い熱溶着糸16,17を溶融させて、周辺の構成糸(経糸及び緯糸)とその構成単繊維間に浸入して互いを接合して、ループの基端部及び地組織の織形態を固定することも可能であるが、熱溶着糸16,17の材質を選択することにより染色時には溶融せずに、更に高い熱セット温度110℃程度で溶融接合させることもできる。こうして、熱溶着糸16,17の溶融により周辺糸条と繊維間をを互いに接合することにより、地組織の上下面から突出する多数のループの抜脱や引出しが完全に防がれる。
【0044】
しかして、この接合は面ファスナーの下面(一表面)側に浮き上がって織られた第1及び第2の嵩高加工糸15,15’の表面までは及ばず、そのソフトな感触を阻害することもない。また、耳部Bにおいても、下面側に浮いて織られた加工糸15が6本の緯糸19ごとに屈曲してループ形成側とは反対側の表面にて緯糸19の下に潜り、地組織による結合が主体部Aのそれよりも接合部が1.5倍とされているため、前記熱溶着糸16による溶着と相まって、耳部Bにおける嵩高加工糸15の繊維ほぐれの発生が確実に防止され、長期にわたって安定した形態を維持する。
【0045】
図4は、上記熱溶着糸16,17を通常経糸11〜14と同一の材質の糸条に変更するとともに、別に融点の低い熱溶融性樹脂粉末を使って地組織と各ループとの間の繊維同士を接合固定させる場合の、接合仕上げ工程を概略で示している。この接合仕上げ工程は、上記特許文献6に開示されている仕上げ工程に準じている。本実施例にあっては、特許文献6と同様に、前記熱溶融性樹脂粉末として粉末状のホットメルト接着剤が使われているが、必ずしもホットメルト接着剤に限らない。
【0046】
前記ホットメルト接着剤の主成分となる熱可塑性樹脂としては、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ポリエチレン、アタクチックポリプロピレン、エチレン−アクリル酸コポリマー、飽和共重合ナイロン、飽和共重合ポリエステルなどが挙げられる。また、通常、この種のホットメルト接着剤には、主成分となる熱可塑性樹脂と相溶性を有し、ホットタック性を接着剤に付与する粘着付与剤、接着剤の粘度を下げるワックスが添加される。粘着付与剤としては、ロジン及びロジン誘導体、ピネン系樹脂、或いは石油系の炭化水素樹脂が使われ、ワックスには一般にパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、低分子量PEワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、変性ワックス、アルファオレフィンワックスなどが多く使われる。
【0047】
同図において、上述のごとく熱収縮率の低い一部経糸15,15’を一表面に浮き上がらせて織成するとともに、他表面にはモノフィラメントからなるループ糸18をもって雄係合素子用の多数のループ3を形成して織成された面ファスナー1を、その移送路に沿って、前記雄係合素子用のループ3を上面として移送させている。前記移送路の上方には前記ホットメルト接着剤5が収容されたホッパー6が配されており、そのホッパー6の下端に設けられた接着剤落下口6aから、所要量のホットメルト接着剤5が同落下口6aの直下に配され制御回転する表面がローレット加工がなされた散布ロール7の表面に落下する。
【0048】
落下する粉末状のホットメルト接着剤5は、散布ロール7の溝部に入り、散布ロール7の回転とともに下方へと送られ、面ファスナー1の移送路に沿って連続して移送されてくる、後に雄係合素子とされるループ3が形成され、連続的に移送されてくる長尺の面ファスナー1の係合素子形成面上に散布される。
【0049】
ここで、移送される面ファスナー1は前記粉末状のホットメルト接着剤5が散布される直前で静電気が除去され、上記散布ロール7の下方を通過した直後に帯電されることが好ましい。そのための除電/帯電システムには、ニッカ株式会社製のパウダースプレーイングシステムが採用できる。静電気を帯びた状態で移送されてくる面ファスナー1は、散布ロール7の直下に到達する以前に除電バー8により除電される。また、面ファスナー1は散布ロール7を通過すると、同面ファスナー1の下方直近部に配された帯電バー9からの放電により、前記散布ロール7を一方の電極として電界が形成されており、散布ロール7から散布される粉末状のホットメルト接着剤5は帯電バー9に引っ張られ、このとき面ファスナー1は帯電して、粉末状のホットメルト接着剤5は面ファスナー1の係合素子形成面に均一に吸着する。
【0050】
次いで、面ファスナー1は加熱部10へと導入される。加熱部10は、面ファスナー1の移送路を挟んで上下に配された加熱領域を備えており、面ファスナー1の移送中に、その上下両面から加熱して、ホットメルト接着剤5を溶融状態とし、溶融したホットメルト接着剤5は基材織物の表面とループ3及び基材織物2との間に広がる。この時点で面ファスナー1は加熱部10を通過し、以降は自然冷却されて固化されたホットメルト接着剤5により基材織物2の編織組織の糸条交絡部分で一部が組織内に浸入すると共に、雄係合素子用のループ3及び下面に浮き上がらせて織成された雌係合用ループ4とされる固定部分の基部と基材織物2との交絡部分を接着固定する。その後、前記雄係合素子用のループ3の一部が切断されてフック状の雄係合素子が形成される。
【0051】
このとき、面ファスナー1の基材織物2の地組織を構成する下面に形成されている一部経糸15,15’の浮き上がり部分以外の通常経糸11〜14などは、前記加熱部10による加熱により収縮して前記一部経糸15,15’の浮き上がり部分は、図3に示すように大きく浮き上がりループ4を形成する。こうして形成されるループ4は、面ファスナー1における上面に形成される雄係合素子との間において、雌係合素子としての係脱機能を十分に発揮する。
【0052】
面ファスナー1を加熱部10に導入する前に、図示せぬ除電部により再び静電気を除去してもよい。この除電により、ループ3に僅かながら付着するホットメルト接着剤5は、ループ3の表面を滑落しながら、或いはループ3の間を落下して、基材織物2の上面及びループ3の基部に集まる。また、この面ファスナー1の移送中、移送と同時に図示せぬ振動源により面ファスナー1を振動させることもできる。この振動により、ループ3に付着する粉末状のホットメルト接着剤5の滑落を効果的に助ける。
【0053】
前記加熱部10による加熱温度はホットメルト接着剤5の種類により異なるが、設定される加熱温度は、面ファスナー1の構成糸条である熱収縮率の高い通常経糸などの収縮を発現させるに十分な温度であって、且つ少なくとも面ファスナー1の構成材料(糸条及び係合素子材料)の融点より低く、ホットメルト接着剤5の融点よりも高い温度であれば、ホットメルト接着剤5を溶融させると同時に上記一部経糸15,15’のループ4の立ち上がり量を確実に大きくすることができる。また、その好適な加熱時間もホットメルト接着剤5の種類や加熱方法により異なるが、いずれにしてもホットメルト接着剤5が完全に溶融がなされるに十分な時間であり、通常は5〜15分であればよい。
【0054】
ホットメルト接着剤5の付与量は、面ファスナー1の仕様(基材織物組織、糸条太さ、編織密度、マルチフィラメントの繊度、モノフィラメントの太さ等)により異なるが、付与量が多ければ固定が十分になるとは限らない。この点は、加熱時間についても同様である。また、ホットメルト接着剤5の付与量については、当然のことながらフック状係合素子形成面とループ状素子形成面とでは好適な付与量が異なる。
【0055】
ホットメルト接着剤5の散布時や面ファスナー1の移送時に、係合素子形成面上より落下してしまったホットメルト接着剤5は、図示せぬ吸引機で吸引されて回収される。このホットメルト接着剤5はホッパー6に収容され、再び係合素子形成面に向けて散布される。エアレススプレー法に比べて、接着剤の回収が容易で、接着剤を無駄にすることがない。
【0056】
本実施例による仕上げ方法により処理された面ファスナー1では、樹脂粉末を付与した側に存在する雄係合素子自体に付着する余分な樹脂は殆ど見当たらず、従来のエアレススプレー法による処理された面ファスナーでは、フック状係合素子の表面が薄膜で被覆され、その膜の一部が剥がれ落ちて、多数のうろこ片となって接着固化している。しかも、従来法による場合には基布の構成糸条であるマルチフィラメントの全てが樹脂により接着一体化されている。これに対して、本発明のホットメルト接着剤により仕上げられた面ファスナーにあっては、同接着剤の付与側に表出している基布の糸条を構成するフィラメントがホットメルト接着剤により接着一体化されているが、その他の構成フィラメントまでを強固に固着していない。
【0057】
このことは、従来のエアレススプレー法による処理では、特にループ状係合素子の形成面側からの処理は不可能であることを示すものであり、またフック状係合素子の形成面側からの処理であっても、係合素子の表面のざらざら感は拭いがたく、相手方ループ状係合素子との円滑な係脱がなされにくいことを意味する。しかも、係合素子に付着する樹脂量が多くなり、実質的に必要な基布の編織組織及び係合素子の固定に要する樹脂量と比較すると、樹脂の塗布量が大幅に増加し、最終的な面ファスナーの柔軟性の制御が困難である。
【0058】
これに対して、本実施例によれば係合素子に付着する接着剤の量は極めて少なく、その殆どが基布及び係合素子の基部に集まるため、実際の接着剤の付与量と基布の編織組織及び係合素子の固定に要する接着剤の量とが実質的に一致し、効率的な固定を行うことができる。更に、その付与量を制御すれば、基布の柔軟性を損なわずに所要の固定が可能となり、しかも係合素子の表面にザラザラ感がない。また、本発明の処理法に従えば、フック状の雄係合素子及びループ状の雌係合素子のそれぞれの形成面側からの処理が可能となり、基材織物の織組織と係合素子との確実な固定が可能となる。
【0059】
以上の説明は、本発明の好適な実施例を説明したものであり、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、例えば面ファスナーの一表面に一部経糸を浮き上がらせてループ状の雌係合素子を形成するとともに、他表面に雌係合素子又は雄係合素子を単独で形成できるだけでなく、雄係合素子と雌係合素子とを混在させて形成することもできる。その場合には、雄係合素子と雌係合素子とを織物の幅方向に交互に配するようにすると、織成後のループの加工がしやすくなるため好ましい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の代表的な実施例である両面面ファスナーの織構造を模式的に示す部分平面図である。
【図2】同両面面ファスナーの各種の構成糸の織上がり時の交絡状態を模式的に示す部分側面図である。
【図3】同両面面ファスナーの各種の構成糸の加熱収縮処理後のループ形態を模式的に示す部分側面図である。
【図4】同両面面ファスナーの仕上加工工程を模式的に示す工程説明図である。
【符号の説明】
1 面ファスナー
2 基材織物
3 (フック状の雄係合素子形成用の)ループ
4 (ループ状の雌係合素子形成用の)ループ
5 ホットメルト接着剤
6 ホッパー
6a 落下口
7 散布ロール
8 除電バー
9 帯電バー
10 加熱部
11〜14 第1〜第4の経糸(通常経糸)
15,15’ (マクチフィラメントからなる)嵩高加工糸
16,17 熱溶着糸
18 ループ糸
19 緯糸

Claims (11)

  1. 地組織から構成される基材織物(2) の織成と同時に織り込まれ、同織物(2) の表面に多数の係合素子を有する繊維製の面ファスナー(1) であって、
    前記地組織を構成する経糸(11 〜17) の一部経糸(15,15’) が、前記地組織の一表面側に浮き上がらせて織成され、前記一部経糸(15,15’) とそれ以外の経糸(11 〜14,16,17) との熱収縮差を利用して、前記一部経糸(15,15’) を除く経糸(11 〜14,16,17) の加熱収縮により、前記一部経糸(15,15’) の浮上り部分を前記地組織の一表面にループ状に突出して形成された多数のループ(4) と、
    前記地組織の織成と同時に織り込まれ、前記地組織の他表面に突出する多数のループ(4) からなる雌係合素子、又は前記地組織の他表面に突出するモノフィラメントからなる多数の各ループ(3) の一部を切断して形成された多数の雄係合素子と、
    を備えてなることを特徴とする繊維製面ファスナー。
  2. 前記地組織の織成と同時に織り込まれ、前記地組織の他表面に突出する多数のループ(4) からなる雌係合素子が、地組織の前記一表面にループ状に突出して形成された多数のループと同様の構造を有してなる請求項1記載の繊維製面ファスナー。
  3. 前記地組織の織成と同時に織り込まれ、前記地組織の他表面に突出する多数のループ(4) からなる雌係合素子が、通常のマンドレルを使って形成される多数のループからなる請求項1記載の繊維製面ファスナー。
  4. 前記一部の経糸(15,15’) が実質的に無撚りのマルチフィラメント糸からなる請求項1又は2に記載の繊維製面ファスナー。
  5. 前記一部の経糸(15,15’) が多数のフィラメントからなる嵩高加工糸からなる請求項1又は2に記載の繊維製面ファスナー。
  6. 地組織から構成される基材織物(2) の織成と同時に織り込まれ、同織物(10)の表面に多数の係合素子を有する面ファスナー(1) の製造方法であって、
    前記地組織を構成する経糸(11 〜17) の一部経糸(15,15’) の熱収縮率を他の経糸(11 〜14,16,17) の熱収縮率よりも小さく設定すること、
    前記一部経糸(15,15’) を局部的に地組織に固定し、前記地組織の一表面上に浮き上がらせて織成すること、
    前記地組織の織成と同時に、前記地組織の他表面に多数の雌係合素子用のループ(4) 、又はモノフィラメントからなる多数の雄係合素子用のループ(3) を突出させて織成すること、及び
    次いで、加熱処理を行い、主に前記一部経糸(15,15’) 以外の経糸(11 〜14,16,17) を収縮させて、前記一部経糸(15,15’) の各浮上り部分を前記地組織の表面にループ状に突出させること、
    を含んでなることを特徴とする繊維製面ファスナーの製造方法。
  7. 前記地組織を構成する経糸(11 〜17) が他の構成糸材料よりも融点の低い材質からなる熱溶着糸(16,17) を更に含み、
    熱溶着糸(16,17) を除く他の経糸(11 〜15,15 ’) の融点より低く、前記熱溶着糸(16,17) の融点よりも高い温度で加熱処理を行い、熱溶着糸(16,17) を溶融させて、その周辺部の糸条同士を接合させることを含んでなる請求項6記載の繊維製面ファスナーの製造方法。
  8. 前記地組織のモノフィラメントがループ状に突出して形成される側の他表面に、面ファスナーの全構成糸条材料よりも低融点の樹脂粉末(5) を付与したのちに、面ファスナーの全構成糸条材料の融点よりも低く、前記樹脂粉末の融点より高い温度で加熱して同樹脂粉末(5) を溶融させて周辺部の糸条同士を接合させることを含んでなる請求項6又は7記載の繊維製面ファスナーの製造方法。
  9. 前記ループ状に織成されたモノフィラメントからなるループ(3) の一部を切断することを更に含んでなる請求項7又は8記載の繊維製面ファスナーの製造方法。
  10. 前記一部の経糸(15,15’) が実質的に無撚りのマルチフィラメント糸からなる請求項6記載の繊維製面ファスナーの製造方法。
  11. 前記一部の経糸(15,15’) がマルチフィラメントからなる嵩高加工糸である請求項6記載の繊維製面ファスナーの製造方法。
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