JP2004346446A - 調湿性ガス吸着シート - Google Patents
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Abstract
【課題】吸放湿性能を損なうことなくガス吸着性能を高めた、耐久性のある調湿性ガス吸着シートを提供することを課題とする。
【解決手段】製紙用繊維25〜80質量部、熱融着性物質5〜15質量部、含鉄アルミニウム水和物15〜60質量部からなる基紙、あるいは、この基紙に接着剤が基紙質量に対して5〜35質量%含まれ、必用に応じて防黴剤を付与させる。含鉄アルミニウム水和物はシリカ、アルミナ、酸化鉄を主成分としている。少なくとも片面に、化粧層を設けることもできる。
【選択図】 図2
【解決手段】製紙用繊維25〜80質量部、熱融着性物質5〜15質量部、含鉄アルミニウム水和物15〜60質量部からなる基紙、あるいは、この基紙に接着剤が基紙質量に対して5〜35質量%含まれ、必用に応じて防黴剤を付与させる。含鉄アルミニウム水和物はシリカ、アルミナ、酸化鉄を主成分としている。少なくとも片面に、化粧層を設けることもできる。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、吸放湿性能とガス吸着性能に優れたシートに関するものである。詳しくは、湿気のこもり易い下駄箱や押入れ、またはクローゼット等の建材用として使用し、準密閉空間内における脱臭と湿度調節に好適な調湿性ガス吸着シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、住宅環境の高気密度化に伴って、身の回りの生活環境が大幅に変化してきていることは周知の事実である。即ち、自動車や工場からの排出ガスに含まれる硫黄酸化物や窒素酸化物による大気汚染物質や、建材・内装材等から発生するホルマリン等による室内空気の悪化によって健康障害が起こったり、湿気がこもって結露や黴が発生する等の問題を抱えているのが現状である。
【0003】
最近になって、前述した問題を解決するために、天然の珪藻土やゼオライトを用いたタイルや石膏ボード等を内装下地材及び/または仕上げ材として使用し、室内の湿度調節と空気質の清浄化を図ろうとする動きも出てきた。しかしながら、これらの材料は、簡単に切断したり、貼合したりすることが難しく、下駄箱や押入れ等の家具として使用される各種の木材や加工木材(合板やMDP等)と複合して使用するには難点があった。
【0004】
一方、本出願人等は塩基性、酸性、中性ガスのいずれにもガス吸着性能のある貝化石紛体を見出し、吸放湿性能を有する非結晶性無機紛体と併用した物品保存用紙を提案(特許文献1参照)した。しかしながら、貝化石自身には吸放湿性能が殆んど無く、高充填するとガス吸着性能は向上するが、吸放湿量が低下するために一定量以上は使用できないという難点があった。
【0005】
また、本出願人等は、裁断や打ち抜き時及びその使用に際して、粉落ちや刃の磨耗を可能な限り軽減した防塵性調湿紙と該調湿紙を用いた調湿方法を提案(特許文献2参照)した。しかし、これはガス吸着性能を副次的に有するものの、下駄箱等の悪臭を積極的に除去するためのものではなかった。
【0006】
また、本出願人等は、製紙用繊維と熱融着性物質と含鉄アルミナ水和物からなる、優れた調湿性能と各種の汚染ガスを吸着する調湿性ガス吸着シートを提案(特許文献3参照)した。これは高い比表面積を有するアルミナ水和物に極微細に分散された鉄分を含有しており、この高分散化された鉄分が硫化水素やメルカプタン等の各種の悪臭成分を素速く大量に捕らえて吸着、分解するという優れた消臭性能を発揮し、かつシリカゲルに代表される非結晶性無機粉体と同等の調湿性能を有するものであるが、含有される鉄分のために茶系統に着色しているという問題があり、純白系あるいは鮮やかな色調を希望する用途には難点があった。
【0007】
消臭効果を有する材料を使用してシート状物にする提案には、カテキン類で処理した提案(特許文献4参照)、竹炭微粉末を含有させる提案(特許文献5参照)、茶葉、どくだみ、よもぎ、たで、わさび、桧の葉等の消臭性を有する天然物を含有させる提案(特許文献6参照)等があるが、いずれも消臭剤自体が高価であったり、あるいは着色していたり、またはそれ自体が独特の臭気を有していたりする問題があった。
【0008】
【特許文献1】
特許第1823632号公報
【特許文献2】
特許第3276873号公報
【特許文献3】
特願2003−010079号公報
【特許文献4】
特開2002−017828号公報
【特許文献5】
特開2002−069895号公報
【特許文献6】
特開2002−114617号公報
【0009】
更に、建材として使用される場合、実用上で使用に耐える耐久性と意匠性があり且つ、吸放湿性能とガス吸着性能を阻害しない化粧層の必要性が求められていた。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記したような問題を解決することを目的とする。即ち、前記した本出願人等の提案を更に改良し、吸放湿性能を損なうことなくガス吸着性能を高めた、耐久性のある調湿性ガス吸着シートを提供することを課題とし、具体的には下記の通り6点を課題とした。
▲1▼ 優れた調湿性能を有すること。(密閉系内部または準密閉系内部における湿度の変化を抑える)
▲2▼ 汚染ガスの吸着性能に優れていること。
▲3▼ 作業性に優れていること。
▲4▼ 安価であること。
▲5▼ 繰り返し使用が可能であること。
▲6▼ 容易に廃棄処理が可能なこと。
▲7▼ 着色していないこと。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は鋭意検討の結果、これらの問題を解決した調湿性ガス吸着シートを開発し、本発明を完成させた。
【0012】
即ち、製紙用繊維と熱融着性物質及び二酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物と非結晶性無機粉体との混合物を配合した紙料を原料として抄紙した基紙に、接着剤と必要に応じて防黴剤を付与し、優れた吸放湿性能とガス吸着性能を有するものとした。更に、シートの少なくとも片面に透湿性と通気性、場合によってはガス吸着性を有する化粧層を設け、さらにはこの化粧層をパターン化して部分的に設けることで意匠性も考慮し、且つ実用的な強度を保ち加工しやすい調湿性ガス吸着シートを提供することで本発明を完成させた。
【0013】
上記したような問題を解決するためには、まず優れた吸放湿性能を有し、さらには表1に示すような汚染ガスの吸着性能を有する物質を見出し、これを使用して作業性に優れた形態にするためにシート状にし、且つ繰り返し使用が可能であり、最終的には可燃物として一般ゴミとして処理可能なものを目指した。
表1 代表的な汚染ガスの種類
【0014】
本出願人等は、二酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物と非結晶性無機粉体との混合物を使用することで、調湿性能と悪臭をもたらす各種汚染ガスの吸着性能を確保することができることを見出し、これと熱融着性物質を利用して製紙用繊維に合体させ、シート状物の形状とすることで作業性に優れた形にすることに成功した。
【0015】
酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物は水澤化学工業(株)からミズカナイトの商品名で市販されており、その化学式は8〜9SiO2・Al2O3・4〜5ZnO・nH2Oである。この複合物における汚染ガス吸着は、物理吸着と化学吸着の2つの吸着理論に考えられる。
【0016】
物理吸着としては、この複合物が多孔質で、比表面積が非常に高く、悪臭成分である汚染ガスがその表面に速やかに吸着されるためであると考える。
【0017】
化学吸着は二酸化珪素(個体酸)による中和反応と、酸化亜鉛による配位子交換反応の2つに分けることができる。中和反応ではアンモニア、トリメチルアミン、ピリジン、ホルムアルデヒドのような塩基性ガスが吸着するもので、下記のような反応で表されるものである。
▲1▼ アンモニア: NH3+H2O+−Si−O(−)−→NH4 ( + )SiO( − )+OH( − )
▲2▼ ホルムアルデヒド: CH3NO+H2O+Si−O( − )−→NH3 ( + )CHO・SiO( − )+OH( − )
また配位子交換反応による吸着は、硫化水素、酢酸、メチルメルカプタンのような酸性ガスと酸化亜鉛成分とが下記のように直接化学反応によるものと考えられる。
▲3▼ 硫化水素: H2S+−ZnO−→ZnS+H2O
▲4▼ 酢酸: 2CH3COOH+−ZnO−→Zn(OCOCH3)2+H2O
【0018】
また、本発明においては調湿材として非結晶性無機粉体を使用した。非結晶性無機粉体はシリカゲルが代表的な物であるが、その調湿性能には図1に示すように低湿度領域で優れた吸放湿性能を示すシリカゲルA型と、高湿度領域で優れた吸放湿性能を示すシリカゲルB型がある。必要な調湿条件に即した状態にするには、このシリカゲルA型とシリカゲルB型を単独で、あるいは適度にブレンドして使用すれば良い。
【0019】
非結晶性無機粉体であるシリカゲル自体も良好な汚染ガス吸着物質であるが、硫化水素ガスが吸着できないように、汚染ガスの種類によって吸着される物質が異なる場合があるので、必要な汚染ガス吸着性能を得るためには汚染ガス吸着物質の性質を良く検討する必要がある。その点で酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物は塩基性ガスと酸性ガスの両方を吸着する性能があり、吸着する汚染ガスの種類の多いことが特徴である。
【0020】
本発明のように二酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物と非結晶性無機粉体との混合物を使用すると、非結晶性無機粉体であるシリカゲル自体も酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物自体もその色調が純白であり、これをシート状にした際にもシート自体が純白となり、それ自体でも、あるいは着色した際にも鮮やかな色調にすることが可能となって、商品価値が向上する。
【0021】
本発明では、製紙用繊維25〜80質量部、熱融着性物質5〜15質量部、及び二酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物と非結晶性無機粉体との混合物15〜60質量部からなる基紙、あるいはこの基紙に接着剤が基紙重量に対して5〜35質量%含まれ、必要に応じて防黴剤を付与した調湿性ガス吸着シートを提供することで、上記したような課題を解決するに至った。さらには、シートの少なくとも片面に透湿性と通気性、場合によってはさらにガス吸着性を有する化粧層を設け、あるいはこの化粧層を部分的に設けることで作業性や意匠性をも考慮した。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明で使用する製紙用繊維としては、一般に製紙用繊維として使用されるものが使用できる。例えば針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の木材パルプの単独若しくは混合物を主体とし、これに麻、竹、藁、ケナフ、楮、三椏や木綿等の非木材パルプ、さらにはカチオン化パルプ、マーセル化パルプ等の変性パルプ、ミクロフィブリル化パルプ、またレーヨン、ビニロン、ナイロン、アクリル、ポリエステル等の合成繊維や化学繊維あるいはガラス繊維やロックウール等の無機繊維を必要に応じて単独で、あるいは混合して使用することができる。製紙用繊維の増減は、二酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物と非結晶性無機粉体との混合物の使用量によって左右されるが25〜80質量部であることが必要である。25質量部以下であると二酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物と非結晶性無機粉体との混合物の含有量が多くなりすぎ、吸放湿性能及び汚染ガスの吸着性能は向上するが、シート状物としての強度が不足して作業性が悪くなる。また、80質量部以上になると二酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物と非結晶性無機粉体との混合物の含有量が少なくなりすぎ、作業性は向上するが必要とする吸放湿性能や汚染ガスの吸着性能が不足する。
【0023】
本発明の基紙には、ガス吸着性能の優れた二酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物と調湿性能の優れた非結晶性無機粉体との混合物を使用し、その配合量は15〜60質量部である。15質量部以下であると二酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物と非結晶性無機粉体との混合物の含有量が少なくなりすぎ、作業性は向上するが必要とする吸放湿性能や汚染ガスの吸着性能が不足する。また、二酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物と非結晶性無機粉体との混合物は極めて保水性が良いため、60質量部以上になると抄紙機のワイヤーパートにおける脱水が困難となり、紙匹に潰れが発生し連続して製造できないという問題が発生する。
【0024】
二酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物と非結晶性無機粉体との混合物の比率は3〜10:12〜50質量部である。二酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物の比率が3質量部以下であると調湿性能は向上するが各種汚染ガスの吸着性能が減少して好ましくなく、また10質量部以上であると各種汚染ガスの吸着性能は向上するが調湿性能が劣り、好ましくない。
【0025】
二酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物の化学式は、8〜9SiO2・Al2O3・4〜5ZnO・nH2Oであり、その成分比はSiO2が48.5〜55.8質量%、ZnOが31.0〜44.8質量%、Al2O3が9.7〜11.2質量%である。
【0026】
本発明に使用する非結晶性無機粉体とは、シリカゲル、シリカアルミナゲル、アルミナゲル、活性アルミナ、ゼオライトゲル等のような白色の合成無機粉体が好ましく、特にシリカゲルはその吸放湿性能が大きいことから好ましく使用できる。また、アロフェン、イモゴナイト、モンモリロナイト等の天然の無機粉体も着色のレベルを考慮しながら、必要に応じて併用することもできる。
【0027】
本発明による二酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物と非結晶性無機粉体との混合物と非結晶性無機粉体との混合物は、非結晶性無機粉体の汚染ガスの吸着性能に加えて、二酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物による物理的及び化学的な汚染ガス吸着効果を有しており、単に物理的な吸着効果を目的としたものや、香料の添加による消臭剤とは異なったものである。
【0028】
本発明では上記したような製紙用繊維に二酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物と非結晶性無機粉体との混合物を混合した中に、熱融着性物質を5〜15質量部添加する。熱融着性物質としてはポリエチレン、合成パルプ、ポリプロピレン等のポリオレフィン繊維及びこれらのミクロフィブリル化繊維、ポリビニルアルコール繊維のような熱水溶解型繊維、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等を複合させた低融点の繊維のような熱融着性繊維や、熱可塑性エラストマー、アイオノマー、変性アイオノマー、酢ビ系共重合ポリオレフィン、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、エチレンビスステアリン酸アミド、カルナバワックス、マイクロクリスタリンワックス、蜜ロウ等のオレフィン、脂肪酸、脂肪酸の金属石鹸やワックスのエマルション、あるいはディスパージョンを単独であるいは組み合わせて混合したものを使用する。熱融着性物質の融点は、抄紙における乾燥工程中で熱融着が可能な140℃以下であることが好ましい。
【0029】
上記したように、製紙用繊維に二酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物と非結晶性無機粉体との混合物を混合させた混合物に熱融着性物質を添加すると、繊維の交絡部や繊維間に二酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物と非結晶性無機粉体との混合物を融着せしめ、紙層間の強度を向上させ、粉落ちを大幅に改善できる。また、ポリオレフィンやワックスは断裁時の刃の磨耗抵抗を和らげ、断裁しやすくなると共に刃の耐磨耗性を向上させるので好ましい。熱融着性物質の添加量が5質量部以下であるとこれらの効果が現れず、15質量部以上だと効果が頭打ちとなる上、ドライヤーやキャンバスへの熱融着が激しくなり連続製造が困難になるので好ましくない。
【0030】
本発明では、必要に応じて基紙に接着剤を内添若しくは含浸処理を行うこともできる。使用する接着剤としてはSBR、MBR等の合成ゴムラテックス、アクリルエマルション、エチレン酢ビエマルション、及びこれらの共重合エマルション、カゼイン、澱粉、ポリビニルアルコール等を適宜組み合わせて使用する。さらに、防黴剤を使用する場合は、含浸液の中にベンズイミダゾールやPBZ系の防黴剤を100〜2000ppm程度混合して使用する。また、接着剤を内添させる場合には、前述した基紙の材料を混合したスラリーに接着剤を添加し、定着剤を用いて二酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物と非結晶性無機粉体との混合物と共に繊維上に定着させる。
【0031】
定着剤としてはポリアクリアミド類等の高分子定着剤、硫酸アルミニウム等のアルミニウム塩類、ポリエチレンイミン等の公知の製紙用定着剤が適宜1種類以上使用できる。
【0032】
接着剤を含浸する場合は、湿式含浸法か乾式含浸法のいずれかを選択する。湿式含浸法は、基紙の混合材料を一旦抄紙し、濡れたままの紙匹をワイヤー上に乗せ、水分を絞り出すと同時に含浸液を紙内部に含浸する方法である。また、乾式含浸法は、基紙を乾燥した後、オフマシンの含浸機で含浸する方法である。通気性と透湿性の良い調湿性ガス吸着シートを得るには湿式含浸法が好ましい。接着剤の使用量は基紙重量に対して5〜35質量%である。5質量%以下では粉落ち防止効果と強度の向上効果が乏しくなり、35質量%以上では接着剤が二酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物と非結晶性無機粉体との混合物の表面を覆ってしまうため、吸放湿性能やガス吸着性能が低下するので好ましくない。また、湿式および乾式含浸法では、二酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物と非結晶性無機粉体との混合物の含有量が多すぎると、35質量%以上の含浸量を得るのが困難になる場合がある。
【0033】
本発明による調湿性ガス吸着シートは、上記したような製紙用繊維に二酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物と非結晶性無機粉体との混合物を混合し、これに熱融着性物質を添加して200〜450C.F.S.mlに叩解し、これに必要に応じて接着剤、防黴剤を添加して混合スラリーを調製し、これに一般に製紙用として使用される各種の製紙用填料、例えば各種のクレー、タルク、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化チタン等、さらには湿潤紙力増強剤、乾燥紙力増強剤、サイズ剤、着色剤、定着剤、歩留まり向上剤、スライムコントロール剤等を必要に応じて適宜添加する。次いで公知・既存の長網抄紙機、円網抄紙機、短網抄紙機、長網と円網のコンビネーション抄紙機等で抄造して調湿性ガス吸着シートを得る。
【0034】
本発明では必要に応じて、上記した調湿性ガス吸着シートの少なくとも片面に、透湿性と通気性、場合によってはガス吸着性を有する化粧層を設けることもできる。これにより、調湿性ガス吸着シート表面の粉落ち防止効果が向上し、調湿性ガス吸着シート表面の美観や耐久性も向上するので好ましい。
【0035】
本発明では必要に応じて、上記した調湿性ガス吸着シートの少なくとも片面に、部分的に化粧層を設けることもできる。これにより、調湿性ガス吸着シート表面に意匠性を付与することが可能となり、調湿性ガス吸着シート表面の粉落ち防止効果や耐久性と共に美観も向上する。また、この方法では、化粧層を部分的に設けて調湿性ガス吸着シートの全面を覆わないため、化粧層には特に透湿性や通気性、あるいはガス吸着性は必須ではない。但し、当然の事ながら調湿性ガス吸着シート表面に対する化粧層の塗工面積が問題であり、化粧層の調湿性ガス吸着シート表面における面積比率が80%以上である場合には化粧層に透湿性や通気性を付与することが好ましい。
【0036】
本発明でいう化粧層とは、例えば非水系の塩化ビニル樹脂または水系樹脂と無機粉体を主材とし、発泡性若しくは非発泡性の塗料を20〜250g/m2塗工するものである。化粧層を発泡させることは、透湿性や通気性、さらには意匠性の向上となるので好ましい。以下に発泡性水系樹脂化粧層の一例を述べる。水系樹脂としては、アクリルエマルション、エチレン酢酸ビニルエマルション、アクリル塩ビエマルション、ウレタンエマルション等の各種の合成樹脂エマルションの1種以上を用い、これに熱発泡性のマイクロスフェアや、無機あるいは有機の発泡剤を添加混合し、これに必要に応じて着色剤、消泡剤、流動性改良剤等を添加する。熱発泡性のマイクロスフェアは米国特許第2797201号、特公昭42−26524号公報、特公昭44−7344号公報等に開示されているように、メタクリル酸とスチレンとの共重合体や塩化ビニリデン等の樹脂微粒子中にブタンガス等のガスを内包したものがよく知られている。本発明では取扱いの容易さから発泡剤としてこれらの熱発泡性マイクロスフェアを使用することが好ましい。また、不透明度や難燃性の向上を図るため、クレー、カオリン、タルク、二酸化チタン、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム等を含有させたり、透湿性と通気性およびガス吸着性能を付与するために、非結晶性無機粉体、二酸化珪素・酸化亜鉛・酸化アルミニウムの複合物、含鉄アルミニウム水和物、活性炭等を必要に応じて1種類以上含有させた塗工液を調整する。
【0037】
次いで、グラビアコーターやロータリースクリーン印刷機を用いて、シート塗工、あるいは絵柄、紋様等を部分的に塗工した後、120〜170℃で20〜30秒間熱処理して発泡させ、場合によってはその後エンボス加工を施して化粧層を得る。この方法は階調感あふれた調湿性ガス吸着シートを得るのに適した方法である。
【0038】
【実施例】
以下に実施例をあげて具体的に説明するが、本発明はこれらに制約されないことは言うまでもない。
実施例1
製紙用繊維として針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)30質量部と広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)25質量部、二酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物(商品名「ミズカナイトHP」、水澤化学工業(株)製造)3質量部と非結晶性無機粉体(商品名「シリカゲルPA−270B」、富士シリシア化学(株)製造)32質量部との混合物に熱融着性物質(商品名「TJ04CN」、帝人(株)製造)を10質量部混合し離解して得られた均一なスラリーに、固形分換算で紙力増強剤(商品名「ネオタックL−1」、日本食品化工(株)製造)を0.5質量%添加して分散し、更に高分子アニオン性凝集剤(商品名「ハイホルダー351」、栗田工業(株)製造)を0.006質量%添加した後、常法により長網抄紙機で坪量800g/m2の調湿性ガス吸着シートを得た。
【0039】
実施例2
製紙用繊維として針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)30質量部と広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)30質量部と、二酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物(商品名「ミズカナイトHP」、水澤化学工業(株)製造)10質量部と非結晶性無機粉体(商品名「シリカゲルPA−270B」、富士シリシア化学(株)製造)25質量部との混合物に熱融着性物質(商品名「TJ04CN」、帝人(株)製造)を5質量部混合し離解して得られた均一なスラリーに、固形分にして紙力増強剤(商品名「ネオタックL−1」、日本食品化工(株)製造)を0.5質量%添加して分散し、更に高分子アニオン性凝集剤(商品名「ハイホルダー351」、栗田工業(株)製造)を0.006質量%添加した後、常法により長網抄紙機で抄紙した紙匹に、湿式含浸法により基紙重量に対し接着剤(商品名「スマ−テックスPA1013」、日本エイアンドエル(株)製造)を25質量%付着させて、坪量800g/m2の調湿性ガス吸着シートを得た。
【0040】
実施例3
エチレン酢ビエマルジョン(商品名「スミカフレックス−401」、住友化学工業(株)製造)100質量部に対して、二酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物(商品名「ミズカナイトHP」、水澤化学工業(株)製造)5質量部と非結晶性無機粉体(商品名「シリカゲルPA−270B」、富士シリシア化学(株)製造)95質量部との混合物を添加し、分散剤(商品名「スミレッツレジンDS−10」、住友化学工業(株)製造)2質量部を加え、更に発泡剤(商品名「F−85」、松本油脂化学工業(株)製造)15質量部、保水剤、防黴剤、難燃剤、着色剤等を合計3質量部添加し、濃度45〜60%、粘度5000〜7000cpsの水系樹脂塗工液を調製した。次いで、実施例2で得られた坪量800g/m2の調湿性ガス吸着シートの片面に、ロータリースクリーン印刷機を用いて上記の塗工液を部分的に印刷した後、120〜170℃で20〜30秒間熱処理して発泡剤を発泡させ、塗工量80g/m2、塗工面が占める面積比率55%の化粧層を設け、坪量880g/m2の調湿性ガス吸着シートを得た。
【0041】
比較例1
製紙用繊維として針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)45質量部と広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)40質量部、酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物(商品名「ミズカナイトHP」、水澤化学工業(株)製造)2質量部と非結晶性無機粉体(商品名「シリカゲルPA−270B」、富士シリシア化学(株)製造)8質量部との混合物に熱融着性物質(商品名「TJ04CN」、帝人(株)製造)を5質量部混合し、離解して均一なスラリーを得た他は実施例2と同様にして、坪量800g/m2のシートを得た。
【0042】
比較例2
製紙用繊維として針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)15質量部と広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)15質量部と、二酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物(商品名「ミズカナイトHP」、水澤化学工業(株)製造)5質量部と非結晶性無機粉体(商品名「シリカゲルPA−270B」、富士シリシア化学(株)製造)60質量部との混合物に熱融着性物質(商品名「TJ04CN」、帝人(株)製造)を5質量部混合し、離解して均一なスラリーを得た他は実施例1と同様にして坪量800g/m2のシートを得ようと試みた。しかしながら、保水性が抄紙の際に於ける管理限界以上となって抄紙機のワイヤーパートにおける脱水が困難となり、潰れが発生し製造が不可能であった。
【0043】
比較例3
製紙用繊維として針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)33質量部と広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)30質量部と、二酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物(商品名「ミズカナイトHP」、水澤化学工業(株)製造)2質量部と非結晶性無機粉体(商品名「シリカゲルPA−270B」、富士シリシア化学(株)製造)33質量部との混合物に熱融着性物質(商品名「TJ04CN」、帝人(株)製造)を2質量部混合し、離解して得られた均一なスラリーを得た他は実施例1と同様にして、坪量800g/m2のシートを得た。
【0044】
比較例4
製紙用繊維として針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)25質量部と広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)23質量部と、二酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物(商品名「ミズカナイトHP」、水澤化学工業(株)製造)3質量部と非結晶性無機粉体(商品名「シリカゲルPA−270B」、富士シリシア化学(株)製造)32質量部との混合物に熱融着性物質(商品名「TJ04CN」、帝人(株)製造)を17質量部混合し、離解して得られた均一なスラリーを得た他は実施例1と同様にして坪量800g/m2のシートを得ようと試みた。しかしながら、抄紙機のドライヤーやキャンバスに熱融着性物質が融着して汚れが発生し、連続して製造することが困難であった。
【0045】
比較例5
製紙用繊維として針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)34質量部と広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)30質量部と、二酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物(商品名「ミズカナイトHP」、水澤化学工業(株)製造)3質量部と非結晶性無機粉体(商品名「シリカゲルPA−270B」、富士シリシア化学(株)製造)32質量部との混合物に熱融着性物質(商品名「TJ04CN」、帝人(株)製造)を1質量部混合し、離解して得られた均一なスラリーに、固形分にして紙力増強剤(商品名「ネオタックL−1」、日本食品化工(株)製造)を0.5質量%添加して分散し、更に高分子アニオン性凝集剤(商品名「ハイホルダー351」、栗田工業(株)製造)を0.006質量%添加した後、常法により長網抄紙機で抄紙した紙匹に、湿式含浸法により基紙重量に対し接着剤(商品名「スマ−テックスPA1013」、日本エイアンドエル(株)製造)を3質量%付着させて、坪量800g/m2の吸着シートを得た。
【0046】
比較例6
実施例2と全く同一の配合と薬品添加を行ったスラリーを、長網抄紙機で抄紙した紙匹に湿式含浸法により基紙重量に対し接着剤(商品名「スマ−テックスPA1013」、日本エイアンドエル(株)製造)を40質量%付着させ坪量800g/m2のシートを得ようと試みた。しかしながら、接着剤の含浸が困難となり40質量%の付着量を得ることができなかった。
【0047】
実施例1〜3及び比較例1、3、5について以下のような評価を行い、その結果を表2に示した。
【0048】
(1)調湿性能:密閉容器内における、温度変化による湿度の変動を図2に示した。この実験結果から平衡湿度差を読み取り5段階評価を行い、4以上を適とした。なお、実験条件は各サンプルの使用量2.0kg/m3、温度変化は20→10→40→20℃の順で行った。また、各サンプルは温度20℃、相対湿度65%の環境下で5時間放置して前処理したものを使用した。
5:平衡湿度差: ±5%RH以下
4:平衡湿度差: ±5〜10%RH
3:平衡湿度差: ±10〜20%RH
2:平衡湿度差: ±20〜30%RH
1:平衡湿度差: ±30%RH以上
【0049】
(2)汚染ガス吸着性能
実施例1で得たサンプルを温度が23℃、相対湿度が50%の環境下で24時間放置して前処理した。次にこのサンプル(試料サイズ6cm2)をテドラーバッグに入れて脱気し、既知の濃度に調製した汚染ガス2Lを注入して封入し、直ちに検知管(ガステック(株)製造)を用いて濃度を測定し、これを初期濃度とした。汚染ガスは酸性汚染ガスの例として硫化水素、塩基性汚染ガスの例としてアンモニアガス、中性汚染ガスの例としてホルムアルデヒドガス、有機溶媒性汚染ガスの例としてキシレンガスを使用し、各汚染ガスの濃度測定時間は15分毎に行い60分迄測定した。その結果を図3〜図6に示した。また、実施例1〜3、比較例1、3、5の各サンプルについて汚染ガスを硫化水素ガスとして測定し、その吸着量を比較した。評価は測定開始から60分後の測定値を用いて各種汚染ガスの吸着量を算出し残存率で示した。残存率に対して3段階評価を行い、2以上を適とした。
3: 残存率10%以下
2: 残存率10〜30%以内
1: 残存率40%以上
【0050】
(3)断裁時の粉落ち:各サンプルをギロチンカッターで断裁し、断裁した端面を指でこすった際の指に付着した粉の量を目視観察して4段階評価し、3以上を適とした。
4: ほとんど付着しない
3: 少々の付着はあるが脱落するほどではない
2: 付着があり脱落する
1: 真っ白になり、脱落する
【0051】
(4)断裁時の端面の状態:各サンプルをギロチンカッターで断裁し、その切断面の状態を目視観察して4段階評価を行い、3以上を適とした。
4: シャープできれいな切断面
3: シャープではないが、つぶれ等はない
2: 多少のつぶれ、ささくれが観察される
1: つぶれ、ささくれ等が観察される
【0052】
(5)ホルムアルデヒドガスによる繰り返し吸着と汚染ガスの脱着試験:実施例1で得たサンプルを温度が23℃、相対湿度が50%の環境下で24時間放置して前処理した。次にこのサンプル(試料サイズ6cm2)をテドラーバッグに入れて脱気し、初期濃度8ppmに調製したホルムアルデヒドガス2Lを注入して封入し、直ちに検知管(ガステック(株)製造)を用いて濃度を測定した。30分後、1時間後に検知管でホルムアルデヒドガス濃度を測定し、ホルムアルデヒドガスの残存率を求めた。1時間後に初期濃度と同じ濃度になるようにホルムアルデヒドガスを注入し、同様に30分後、1時間後のホルムアルデヒドガスの残存率を求めた。これを10回繰り返した後、テドラーバッグを40℃で1時間加温した際のホルムアルデヒドガスの脱着レベルを測定した。その結果を図7に示した
【0053】
表2 評価結果
【発明の効果】
【0054】以上説明したように、本発明による調湿性ガス吸着シートによれば、以下に述べる顕著な効果を示した。
▲1▼ 図2より、密閉系の条件下において、温度を一定にして相対湿度を変化させても、逆に相対湿度を一定にして温度を変化させても湿度変化を一定の範囲内に抑える効果が著しく、従来の調湿材と比較しても遜色のない調湿性を有した。
▲2▼ 図3〜図6より、酸性、塩基性、中性あるいは有機溶媒性の汚染ガスについていずれも優れたガス吸着性を示した。特に酸性ガスである硫化水素ガスの吸着性能は著しく、従来のガス吸着シートでは得られない数値を示した。
▲3▼ シート状物として提供できるので作業性に優れ、箱や棚等への組み込みも容易である。
▲4▼ 従来から使用されている類似機能材料としてある「桐」と比較して安価であり、かつ機能的にも優れている。
▲5▼ 図7より、繰り返し試験を行っても半永久的に使用可能であり、加温しても吸着された汚染ガスを放出することがない。
▲6▼ 素材として有害物質を含まず、製紙用繊維を主体としているので不用となった調湿性ガス吸着シートは可燃ゴミとして処分することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】等温吸着曲線(平衡水分吸着量)
【図2】密閉容器内における温度変化による湿度の変動
【図3】硫化水素ガスの吸着
【図4】アンモニアガスの吸着
【図5】ホルムアルデヒドガスの吸着
【図6】キシレンガスの吸着
【図7】ホルムアルデヒドガスによる繰り返し吸着と汚染ガスの脱着
【発明の属する技術分野】
本発明は、吸放湿性能とガス吸着性能に優れたシートに関するものである。詳しくは、湿気のこもり易い下駄箱や押入れ、またはクローゼット等の建材用として使用し、準密閉空間内における脱臭と湿度調節に好適な調湿性ガス吸着シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、住宅環境の高気密度化に伴って、身の回りの生活環境が大幅に変化してきていることは周知の事実である。即ち、自動車や工場からの排出ガスに含まれる硫黄酸化物や窒素酸化物による大気汚染物質や、建材・内装材等から発生するホルマリン等による室内空気の悪化によって健康障害が起こったり、湿気がこもって結露や黴が発生する等の問題を抱えているのが現状である。
【0003】
最近になって、前述した問題を解決するために、天然の珪藻土やゼオライトを用いたタイルや石膏ボード等を内装下地材及び/または仕上げ材として使用し、室内の湿度調節と空気質の清浄化を図ろうとする動きも出てきた。しかしながら、これらの材料は、簡単に切断したり、貼合したりすることが難しく、下駄箱や押入れ等の家具として使用される各種の木材や加工木材(合板やMDP等)と複合して使用するには難点があった。
【0004】
一方、本出願人等は塩基性、酸性、中性ガスのいずれにもガス吸着性能のある貝化石紛体を見出し、吸放湿性能を有する非結晶性無機紛体と併用した物品保存用紙を提案(特許文献1参照)した。しかしながら、貝化石自身には吸放湿性能が殆んど無く、高充填するとガス吸着性能は向上するが、吸放湿量が低下するために一定量以上は使用できないという難点があった。
【0005】
また、本出願人等は、裁断や打ち抜き時及びその使用に際して、粉落ちや刃の磨耗を可能な限り軽減した防塵性調湿紙と該調湿紙を用いた調湿方法を提案(特許文献2参照)した。しかし、これはガス吸着性能を副次的に有するものの、下駄箱等の悪臭を積極的に除去するためのものではなかった。
【0006】
また、本出願人等は、製紙用繊維と熱融着性物質と含鉄アルミナ水和物からなる、優れた調湿性能と各種の汚染ガスを吸着する調湿性ガス吸着シートを提案(特許文献3参照)した。これは高い比表面積を有するアルミナ水和物に極微細に分散された鉄分を含有しており、この高分散化された鉄分が硫化水素やメルカプタン等の各種の悪臭成分を素速く大量に捕らえて吸着、分解するという優れた消臭性能を発揮し、かつシリカゲルに代表される非結晶性無機粉体と同等の調湿性能を有するものであるが、含有される鉄分のために茶系統に着色しているという問題があり、純白系あるいは鮮やかな色調を希望する用途には難点があった。
【0007】
消臭効果を有する材料を使用してシート状物にする提案には、カテキン類で処理した提案(特許文献4参照)、竹炭微粉末を含有させる提案(特許文献5参照)、茶葉、どくだみ、よもぎ、たで、わさび、桧の葉等の消臭性を有する天然物を含有させる提案(特許文献6参照)等があるが、いずれも消臭剤自体が高価であったり、あるいは着色していたり、またはそれ自体が独特の臭気を有していたりする問題があった。
【0008】
【特許文献1】
特許第1823632号公報
【特許文献2】
特許第3276873号公報
【特許文献3】
特願2003−010079号公報
【特許文献4】
特開2002−017828号公報
【特許文献5】
特開2002−069895号公報
【特許文献6】
特開2002−114617号公報
【0009】
更に、建材として使用される場合、実用上で使用に耐える耐久性と意匠性があり且つ、吸放湿性能とガス吸着性能を阻害しない化粧層の必要性が求められていた。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記したような問題を解決することを目的とする。即ち、前記した本出願人等の提案を更に改良し、吸放湿性能を損なうことなくガス吸着性能を高めた、耐久性のある調湿性ガス吸着シートを提供することを課題とし、具体的には下記の通り6点を課題とした。
▲1▼ 優れた調湿性能を有すること。(密閉系内部または準密閉系内部における湿度の変化を抑える)
▲2▼ 汚染ガスの吸着性能に優れていること。
▲3▼ 作業性に優れていること。
▲4▼ 安価であること。
▲5▼ 繰り返し使用が可能であること。
▲6▼ 容易に廃棄処理が可能なこと。
▲7▼ 着色していないこと。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は鋭意検討の結果、これらの問題を解決した調湿性ガス吸着シートを開発し、本発明を完成させた。
【0012】
即ち、製紙用繊維と熱融着性物質及び二酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物と非結晶性無機粉体との混合物を配合した紙料を原料として抄紙した基紙に、接着剤と必要に応じて防黴剤を付与し、優れた吸放湿性能とガス吸着性能を有するものとした。更に、シートの少なくとも片面に透湿性と通気性、場合によってはガス吸着性を有する化粧層を設け、さらにはこの化粧層をパターン化して部分的に設けることで意匠性も考慮し、且つ実用的な強度を保ち加工しやすい調湿性ガス吸着シートを提供することで本発明を完成させた。
【0013】
上記したような問題を解決するためには、まず優れた吸放湿性能を有し、さらには表1に示すような汚染ガスの吸着性能を有する物質を見出し、これを使用して作業性に優れた形態にするためにシート状にし、且つ繰り返し使用が可能であり、最終的には可燃物として一般ゴミとして処理可能なものを目指した。
表1 代表的な汚染ガスの種類
【0014】
本出願人等は、二酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物と非結晶性無機粉体との混合物を使用することで、調湿性能と悪臭をもたらす各種汚染ガスの吸着性能を確保することができることを見出し、これと熱融着性物質を利用して製紙用繊維に合体させ、シート状物の形状とすることで作業性に優れた形にすることに成功した。
【0015】
酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物は水澤化学工業(株)からミズカナイトの商品名で市販されており、その化学式は8〜9SiO2・Al2O3・4〜5ZnO・nH2Oである。この複合物における汚染ガス吸着は、物理吸着と化学吸着の2つの吸着理論に考えられる。
【0016】
物理吸着としては、この複合物が多孔質で、比表面積が非常に高く、悪臭成分である汚染ガスがその表面に速やかに吸着されるためであると考える。
【0017】
化学吸着は二酸化珪素(個体酸)による中和反応と、酸化亜鉛による配位子交換反応の2つに分けることができる。中和反応ではアンモニア、トリメチルアミン、ピリジン、ホルムアルデヒドのような塩基性ガスが吸着するもので、下記のような反応で表されるものである。
▲1▼ アンモニア: NH3+H2O+−Si−O(−)−→NH4 ( + )SiO( − )+OH( − )
▲2▼ ホルムアルデヒド: CH3NO+H2O+Si−O( − )−→NH3 ( + )CHO・SiO( − )+OH( − )
また配位子交換反応による吸着は、硫化水素、酢酸、メチルメルカプタンのような酸性ガスと酸化亜鉛成分とが下記のように直接化学反応によるものと考えられる。
▲3▼ 硫化水素: H2S+−ZnO−→ZnS+H2O
▲4▼ 酢酸: 2CH3COOH+−ZnO−→Zn(OCOCH3)2+H2O
【0018】
また、本発明においては調湿材として非結晶性無機粉体を使用した。非結晶性無機粉体はシリカゲルが代表的な物であるが、その調湿性能には図1に示すように低湿度領域で優れた吸放湿性能を示すシリカゲルA型と、高湿度領域で優れた吸放湿性能を示すシリカゲルB型がある。必要な調湿条件に即した状態にするには、このシリカゲルA型とシリカゲルB型を単独で、あるいは適度にブレンドして使用すれば良い。
【0019】
非結晶性無機粉体であるシリカゲル自体も良好な汚染ガス吸着物質であるが、硫化水素ガスが吸着できないように、汚染ガスの種類によって吸着される物質が異なる場合があるので、必要な汚染ガス吸着性能を得るためには汚染ガス吸着物質の性質を良く検討する必要がある。その点で酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物は塩基性ガスと酸性ガスの両方を吸着する性能があり、吸着する汚染ガスの種類の多いことが特徴である。
【0020】
本発明のように二酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物と非結晶性無機粉体との混合物を使用すると、非結晶性無機粉体であるシリカゲル自体も酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物自体もその色調が純白であり、これをシート状にした際にもシート自体が純白となり、それ自体でも、あるいは着色した際にも鮮やかな色調にすることが可能となって、商品価値が向上する。
【0021】
本発明では、製紙用繊維25〜80質量部、熱融着性物質5〜15質量部、及び二酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物と非結晶性無機粉体との混合物15〜60質量部からなる基紙、あるいはこの基紙に接着剤が基紙重量に対して5〜35質量%含まれ、必要に応じて防黴剤を付与した調湿性ガス吸着シートを提供することで、上記したような課題を解決するに至った。さらには、シートの少なくとも片面に透湿性と通気性、場合によってはさらにガス吸着性を有する化粧層を設け、あるいはこの化粧層を部分的に設けることで作業性や意匠性をも考慮した。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明で使用する製紙用繊維としては、一般に製紙用繊維として使用されるものが使用できる。例えば針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の木材パルプの単独若しくは混合物を主体とし、これに麻、竹、藁、ケナフ、楮、三椏や木綿等の非木材パルプ、さらにはカチオン化パルプ、マーセル化パルプ等の変性パルプ、ミクロフィブリル化パルプ、またレーヨン、ビニロン、ナイロン、アクリル、ポリエステル等の合成繊維や化学繊維あるいはガラス繊維やロックウール等の無機繊維を必要に応じて単独で、あるいは混合して使用することができる。製紙用繊維の増減は、二酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物と非結晶性無機粉体との混合物の使用量によって左右されるが25〜80質量部であることが必要である。25質量部以下であると二酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物と非結晶性無機粉体との混合物の含有量が多くなりすぎ、吸放湿性能及び汚染ガスの吸着性能は向上するが、シート状物としての強度が不足して作業性が悪くなる。また、80質量部以上になると二酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物と非結晶性無機粉体との混合物の含有量が少なくなりすぎ、作業性は向上するが必要とする吸放湿性能や汚染ガスの吸着性能が不足する。
【0023】
本発明の基紙には、ガス吸着性能の優れた二酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物と調湿性能の優れた非結晶性無機粉体との混合物を使用し、その配合量は15〜60質量部である。15質量部以下であると二酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物と非結晶性無機粉体との混合物の含有量が少なくなりすぎ、作業性は向上するが必要とする吸放湿性能や汚染ガスの吸着性能が不足する。また、二酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物と非結晶性無機粉体との混合物は極めて保水性が良いため、60質量部以上になると抄紙機のワイヤーパートにおける脱水が困難となり、紙匹に潰れが発生し連続して製造できないという問題が発生する。
【0024】
二酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物と非結晶性無機粉体との混合物の比率は3〜10:12〜50質量部である。二酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物の比率が3質量部以下であると調湿性能は向上するが各種汚染ガスの吸着性能が減少して好ましくなく、また10質量部以上であると各種汚染ガスの吸着性能は向上するが調湿性能が劣り、好ましくない。
【0025】
二酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物の化学式は、8〜9SiO2・Al2O3・4〜5ZnO・nH2Oであり、その成分比はSiO2が48.5〜55.8質量%、ZnOが31.0〜44.8質量%、Al2O3が9.7〜11.2質量%である。
【0026】
本発明に使用する非結晶性無機粉体とは、シリカゲル、シリカアルミナゲル、アルミナゲル、活性アルミナ、ゼオライトゲル等のような白色の合成無機粉体が好ましく、特にシリカゲルはその吸放湿性能が大きいことから好ましく使用できる。また、アロフェン、イモゴナイト、モンモリロナイト等の天然の無機粉体も着色のレベルを考慮しながら、必要に応じて併用することもできる。
【0027】
本発明による二酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物と非結晶性無機粉体との混合物と非結晶性無機粉体との混合物は、非結晶性無機粉体の汚染ガスの吸着性能に加えて、二酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物による物理的及び化学的な汚染ガス吸着効果を有しており、単に物理的な吸着効果を目的としたものや、香料の添加による消臭剤とは異なったものである。
【0028】
本発明では上記したような製紙用繊維に二酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物と非結晶性無機粉体との混合物を混合した中に、熱融着性物質を5〜15質量部添加する。熱融着性物質としてはポリエチレン、合成パルプ、ポリプロピレン等のポリオレフィン繊維及びこれらのミクロフィブリル化繊維、ポリビニルアルコール繊維のような熱水溶解型繊維、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等を複合させた低融点の繊維のような熱融着性繊維や、熱可塑性エラストマー、アイオノマー、変性アイオノマー、酢ビ系共重合ポリオレフィン、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、エチレンビスステアリン酸アミド、カルナバワックス、マイクロクリスタリンワックス、蜜ロウ等のオレフィン、脂肪酸、脂肪酸の金属石鹸やワックスのエマルション、あるいはディスパージョンを単独であるいは組み合わせて混合したものを使用する。熱融着性物質の融点は、抄紙における乾燥工程中で熱融着が可能な140℃以下であることが好ましい。
【0029】
上記したように、製紙用繊維に二酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物と非結晶性無機粉体との混合物を混合させた混合物に熱融着性物質を添加すると、繊維の交絡部や繊維間に二酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物と非結晶性無機粉体との混合物を融着せしめ、紙層間の強度を向上させ、粉落ちを大幅に改善できる。また、ポリオレフィンやワックスは断裁時の刃の磨耗抵抗を和らげ、断裁しやすくなると共に刃の耐磨耗性を向上させるので好ましい。熱融着性物質の添加量が5質量部以下であるとこれらの効果が現れず、15質量部以上だと効果が頭打ちとなる上、ドライヤーやキャンバスへの熱融着が激しくなり連続製造が困難になるので好ましくない。
【0030】
本発明では、必要に応じて基紙に接着剤を内添若しくは含浸処理を行うこともできる。使用する接着剤としてはSBR、MBR等の合成ゴムラテックス、アクリルエマルション、エチレン酢ビエマルション、及びこれらの共重合エマルション、カゼイン、澱粉、ポリビニルアルコール等を適宜組み合わせて使用する。さらに、防黴剤を使用する場合は、含浸液の中にベンズイミダゾールやPBZ系の防黴剤を100〜2000ppm程度混合して使用する。また、接着剤を内添させる場合には、前述した基紙の材料を混合したスラリーに接着剤を添加し、定着剤を用いて二酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物と非結晶性無機粉体との混合物と共に繊維上に定着させる。
【0031】
定着剤としてはポリアクリアミド類等の高分子定着剤、硫酸アルミニウム等のアルミニウム塩類、ポリエチレンイミン等の公知の製紙用定着剤が適宜1種類以上使用できる。
【0032】
接着剤を含浸する場合は、湿式含浸法か乾式含浸法のいずれかを選択する。湿式含浸法は、基紙の混合材料を一旦抄紙し、濡れたままの紙匹をワイヤー上に乗せ、水分を絞り出すと同時に含浸液を紙内部に含浸する方法である。また、乾式含浸法は、基紙を乾燥した後、オフマシンの含浸機で含浸する方法である。通気性と透湿性の良い調湿性ガス吸着シートを得るには湿式含浸法が好ましい。接着剤の使用量は基紙重量に対して5〜35質量%である。5質量%以下では粉落ち防止効果と強度の向上効果が乏しくなり、35質量%以上では接着剤が二酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物と非結晶性無機粉体との混合物の表面を覆ってしまうため、吸放湿性能やガス吸着性能が低下するので好ましくない。また、湿式および乾式含浸法では、二酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物と非結晶性無機粉体との混合物の含有量が多すぎると、35質量%以上の含浸量を得るのが困難になる場合がある。
【0033】
本発明による調湿性ガス吸着シートは、上記したような製紙用繊維に二酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物と非結晶性無機粉体との混合物を混合し、これに熱融着性物質を添加して200〜450C.F.S.mlに叩解し、これに必要に応じて接着剤、防黴剤を添加して混合スラリーを調製し、これに一般に製紙用として使用される各種の製紙用填料、例えば各種のクレー、タルク、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化チタン等、さらには湿潤紙力増強剤、乾燥紙力増強剤、サイズ剤、着色剤、定着剤、歩留まり向上剤、スライムコントロール剤等を必要に応じて適宜添加する。次いで公知・既存の長網抄紙機、円網抄紙機、短網抄紙機、長網と円網のコンビネーション抄紙機等で抄造して調湿性ガス吸着シートを得る。
【0034】
本発明では必要に応じて、上記した調湿性ガス吸着シートの少なくとも片面に、透湿性と通気性、場合によってはガス吸着性を有する化粧層を設けることもできる。これにより、調湿性ガス吸着シート表面の粉落ち防止効果が向上し、調湿性ガス吸着シート表面の美観や耐久性も向上するので好ましい。
【0035】
本発明では必要に応じて、上記した調湿性ガス吸着シートの少なくとも片面に、部分的に化粧層を設けることもできる。これにより、調湿性ガス吸着シート表面に意匠性を付与することが可能となり、調湿性ガス吸着シート表面の粉落ち防止効果や耐久性と共に美観も向上する。また、この方法では、化粧層を部分的に設けて調湿性ガス吸着シートの全面を覆わないため、化粧層には特に透湿性や通気性、あるいはガス吸着性は必須ではない。但し、当然の事ながら調湿性ガス吸着シート表面に対する化粧層の塗工面積が問題であり、化粧層の調湿性ガス吸着シート表面における面積比率が80%以上である場合には化粧層に透湿性や通気性を付与することが好ましい。
【0036】
本発明でいう化粧層とは、例えば非水系の塩化ビニル樹脂または水系樹脂と無機粉体を主材とし、発泡性若しくは非発泡性の塗料を20〜250g/m2塗工するものである。化粧層を発泡させることは、透湿性や通気性、さらには意匠性の向上となるので好ましい。以下に発泡性水系樹脂化粧層の一例を述べる。水系樹脂としては、アクリルエマルション、エチレン酢酸ビニルエマルション、アクリル塩ビエマルション、ウレタンエマルション等の各種の合成樹脂エマルションの1種以上を用い、これに熱発泡性のマイクロスフェアや、無機あるいは有機の発泡剤を添加混合し、これに必要に応じて着色剤、消泡剤、流動性改良剤等を添加する。熱発泡性のマイクロスフェアは米国特許第2797201号、特公昭42−26524号公報、特公昭44−7344号公報等に開示されているように、メタクリル酸とスチレンとの共重合体や塩化ビニリデン等の樹脂微粒子中にブタンガス等のガスを内包したものがよく知られている。本発明では取扱いの容易さから発泡剤としてこれらの熱発泡性マイクロスフェアを使用することが好ましい。また、不透明度や難燃性の向上を図るため、クレー、カオリン、タルク、二酸化チタン、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム等を含有させたり、透湿性と通気性およびガス吸着性能を付与するために、非結晶性無機粉体、二酸化珪素・酸化亜鉛・酸化アルミニウムの複合物、含鉄アルミニウム水和物、活性炭等を必要に応じて1種類以上含有させた塗工液を調整する。
【0037】
次いで、グラビアコーターやロータリースクリーン印刷機を用いて、シート塗工、あるいは絵柄、紋様等を部分的に塗工した後、120〜170℃で20〜30秒間熱処理して発泡させ、場合によってはその後エンボス加工を施して化粧層を得る。この方法は階調感あふれた調湿性ガス吸着シートを得るのに適した方法である。
【0038】
【実施例】
以下に実施例をあげて具体的に説明するが、本発明はこれらに制約されないことは言うまでもない。
実施例1
製紙用繊維として針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)30質量部と広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)25質量部、二酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物(商品名「ミズカナイトHP」、水澤化学工業(株)製造)3質量部と非結晶性無機粉体(商品名「シリカゲルPA−270B」、富士シリシア化学(株)製造)32質量部との混合物に熱融着性物質(商品名「TJ04CN」、帝人(株)製造)を10質量部混合し離解して得られた均一なスラリーに、固形分換算で紙力増強剤(商品名「ネオタックL−1」、日本食品化工(株)製造)を0.5質量%添加して分散し、更に高分子アニオン性凝集剤(商品名「ハイホルダー351」、栗田工業(株)製造)を0.006質量%添加した後、常法により長網抄紙機で坪量800g/m2の調湿性ガス吸着シートを得た。
【0039】
実施例2
製紙用繊維として針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)30質量部と広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)30質量部と、二酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物(商品名「ミズカナイトHP」、水澤化学工業(株)製造)10質量部と非結晶性無機粉体(商品名「シリカゲルPA−270B」、富士シリシア化学(株)製造)25質量部との混合物に熱融着性物質(商品名「TJ04CN」、帝人(株)製造)を5質量部混合し離解して得られた均一なスラリーに、固形分にして紙力増強剤(商品名「ネオタックL−1」、日本食品化工(株)製造)を0.5質量%添加して分散し、更に高分子アニオン性凝集剤(商品名「ハイホルダー351」、栗田工業(株)製造)を0.006質量%添加した後、常法により長網抄紙機で抄紙した紙匹に、湿式含浸法により基紙重量に対し接着剤(商品名「スマ−テックスPA1013」、日本エイアンドエル(株)製造)を25質量%付着させて、坪量800g/m2の調湿性ガス吸着シートを得た。
【0040】
実施例3
エチレン酢ビエマルジョン(商品名「スミカフレックス−401」、住友化学工業(株)製造)100質量部に対して、二酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物(商品名「ミズカナイトHP」、水澤化学工業(株)製造)5質量部と非結晶性無機粉体(商品名「シリカゲルPA−270B」、富士シリシア化学(株)製造)95質量部との混合物を添加し、分散剤(商品名「スミレッツレジンDS−10」、住友化学工業(株)製造)2質量部を加え、更に発泡剤(商品名「F−85」、松本油脂化学工業(株)製造)15質量部、保水剤、防黴剤、難燃剤、着色剤等を合計3質量部添加し、濃度45〜60%、粘度5000〜7000cpsの水系樹脂塗工液を調製した。次いで、実施例2で得られた坪量800g/m2の調湿性ガス吸着シートの片面に、ロータリースクリーン印刷機を用いて上記の塗工液を部分的に印刷した後、120〜170℃で20〜30秒間熱処理して発泡剤を発泡させ、塗工量80g/m2、塗工面が占める面積比率55%の化粧層を設け、坪量880g/m2の調湿性ガス吸着シートを得た。
【0041】
比較例1
製紙用繊維として針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)45質量部と広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)40質量部、酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物(商品名「ミズカナイトHP」、水澤化学工業(株)製造)2質量部と非結晶性無機粉体(商品名「シリカゲルPA−270B」、富士シリシア化学(株)製造)8質量部との混合物に熱融着性物質(商品名「TJ04CN」、帝人(株)製造)を5質量部混合し、離解して均一なスラリーを得た他は実施例2と同様にして、坪量800g/m2のシートを得た。
【0042】
比較例2
製紙用繊維として針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)15質量部と広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)15質量部と、二酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物(商品名「ミズカナイトHP」、水澤化学工業(株)製造)5質量部と非結晶性無機粉体(商品名「シリカゲルPA−270B」、富士シリシア化学(株)製造)60質量部との混合物に熱融着性物質(商品名「TJ04CN」、帝人(株)製造)を5質量部混合し、離解して均一なスラリーを得た他は実施例1と同様にして坪量800g/m2のシートを得ようと試みた。しかしながら、保水性が抄紙の際に於ける管理限界以上となって抄紙機のワイヤーパートにおける脱水が困難となり、潰れが発生し製造が不可能であった。
【0043】
比較例3
製紙用繊維として針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)33質量部と広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)30質量部と、二酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物(商品名「ミズカナイトHP」、水澤化学工業(株)製造)2質量部と非結晶性無機粉体(商品名「シリカゲルPA−270B」、富士シリシア化学(株)製造)33質量部との混合物に熱融着性物質(商品名「TJ04CN」、帝人(株)製造)を2質量部混合し、離解して得られた均一なスラリーを得た他は実施例1と同様にして、坪量800g/m2のシートを得た。
【0044】
比較例4
製紙用繊維として針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)25質量部と広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)23質量部と、二酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物(商品名「ミズカナイトHP」、水澤化学工業(株)製造)3質量部と非結晶性無機粉体(商品名「シリカゲルPA−270B」、富士シリシア化学(株)製造)32質量部との混合物に熱融着性物質(商品名「TJ04CN」、帝人(株)製造)を17質量部混合し、離解して得られた均一なスラリーを得た他は実施例1と同様にして坪量800g/m2のシートを得ようと試みた。しかしながら、抄紙機のドライヤーやキャンバスに熱融着性物質が融着して汚れが発生し、連続して製造することが困難であった。
【0045】
比較例5
製紙用繊維として針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)34質量部と広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)30質量部と、二酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物(商品名「ミズカナイトHP」、水澤化学工業(株)製造)3質量部と非結晶性無機粉体(商品名「シリカゲルPA−270B」、富士シリシア化学(株)製造)32質量部との混合物に熱融着性物質(商品名「TJ04CN」、帝人(株)製造)を1質量部混合し、離解して得られた均一なスラリーに、固形分にして紙力増強剤(商品名「ネオタックL−1」、日本食品化工(株)製造)を0.5質量%添加して分散し、更に高分子アニオン性凝集剤(商品名「ハイホルダー351」、栗田工業(株)製造)を0.006質量%添加した後、常法により長網抄紙機で抄紙した紙匹に、湿式含浸法により基紙重量に対し接着剤(商品名「スマ−テックスPA1013」、日本エイアンドエル(株)製造)を3質量%付着させて、坪量800g/m2の吸着シートを得た。
【0046】
比較例6
実施例2と全く同一の配合と薬品添加を行ったスラリーを、長網抄紙機で抄紙した紙匹に湿式含浸法により基紙重量に対し接着剤(商品名「スマ−テックスPA1013」、日本エイアンドエル(株)製造)を40質量%付着させ坪量800g/m2のシートを得ようと試みた。しかしながら、接着剤の含浸が困難となり40質量%の付着量を得ることができなかった。
【0047】
実施例1〜3及び比較例1、3、5について以下のような評価を行い、その結果を表2に示した。
【0048】
(1)調湿性能:密閉容器内における、温度変化による湿度の変動を図2に示した。この実験結果から平衡湿度差を読み取り5段階評価を行い、4以上を適とした。なお、実験条件は各サンプルの使用量2.0kg/m3、温度変化は20→10→40→20℃の順で行った。また、各サンプルは温度20℃、相対湿度65%の環境下で5時間放置して前処理したものを使用した。
5:平衡湿度差: ±5%RH以下
4:平衡湿度差: ±5〜10%RH
3:平衡湿度差: ±10〜20%RH
2:平衡湿度差: ±20〜30%RH
1:平衡湿度差: ±30%RH以上
【0049】
(2)汚染ガス吸着性能
実施例1で得たサンプルを温度が23℃、相対湿度が50%の環境下で24時間放置して前処理した。次にこのサンプル(試料サイズ6cm2)をテドラーバッグに入れて脱気し、既知の濃度に調製した汚染ガス2Lを注入して封入し、直ちに検知管(ガステック(株)製造)を用いて濃度を測定し、これを初期濃度とした。汚染ガスは酸性汚染ガスの例として硫化水素、塩基性汚染ガスの例としてアンモニアガス、中性汚染ガスの例としてホルムアルデヒドガス、有機溶媒性汚染ガスの例としてキシレンガスを使用し、各汚染ガスの濃度測定時間は15分毎に行い60分迄測定した。その結果を図3〜図6に示した。また、実施例1〜3、比較例1、3、5の各サンプルについて汚染ガスを硫化水素ガスとして測定し、その吸着量を比較した。評価は測定開始から60分後の測定値を用いて各種汚染ガスの吸着量を算出し残存率で示した。残存率に対して3段階評価を行い、2以上を適とした。
3: 残存率10%以下
2: 残存率10〜30%以内
1: 残存率40%以上
【0050】
(3)断裁時の粉落ち:各サンプルをギロチンカッターで断裁し、断裁した端面を指でこすった際の指に付着した粉の量を目視観察して4段階評価し、3以上を適とした。
4: ほとんど付着しない
3: 少々の付着はあるが脱落するほどではない
2: 付着があり脱落する
1: 真っ白になり、脱落する
【0051】
(4)断裁時の端面の状態:各サンプルをギロチンカッターで断裁し、その切断面の状態を目視観察して4段階評価を行い、3以上を適とした。
4: シャープできれいな切断面
3: シャープではないが、つぶれ等はない
2: 多少のつぶれ、ささくれが観察される
1: つぶれ、ささくれ等が観察される
【0052】
(5)ホルムアルデヒドガスによる繰り返し吸着と汚染ガスの脱着試験:実施例1で得たサンプルを温度が23℃、相対湿度が50%の環境下で24時間放置して前処理した。次にこのサンプル(試料サイズ6cm2)をテドラーバッグに入れて脱気し、初期濃度8ppmに調製したホルムアルデヒドガス2Lを注入して封入し、直ちに検知管(ガステック(株)製造)を用いて濃度を測定した。30分後、1時間後に検知管でホルムアルデヒドガス濃度を測定し、ホルムアルデヒドガスの残存率を求めた。1時間後に初期濃度と同じ濃度になるようにホルムアルデヒドガスを注入し、同様に30分後、1時間後のホルムアルデヒドガスの残存率を求めた。これを10回繰り返した後、テドラーバッグを40℃で1時間加温した際のホルムアルデヒドガスの脱着レベルを測定した。その結果を図7に示した
【0053】
表2 評価結果
【発明の効果】
【0054】以上説明したように、本発明による調湿性ガス吸着シートによれば、以下に述べる顕著な効果を示した。
▲1▼ 図2より、密閉系の条件下において、温度を一定にして相対湿度を変化させても、逆に相対湿度を一定にして温度を変化させても湿度変化を一定の範囲内に抑える効果が著しく、従来の調湿材と比較しても遜色のない調湿性を有した。
▲2▼ 図3〜図6より、酸性、塩基性、中性あるいは有機溶媒性の汚染ガスについていずれも優れたガス吸着性を示した。特に酸性ガスである硫化水素ガスの吸着性能は著しく、従来のガス吸着シートでは得られない数値を示した。
▲3▼ シート状物として提供できるので作業性に優れ、箱や棚等への組み込みも容易である。
▲4▼ 従来から使用されている類似機能材料としてある「桐」と比較して安価であり、かつ機能的にも優れている。
▲5▼ 図7より、繰り返し試験を行っても半永久的に使用可能であり、加温しても吸着された汚染ガスを放出することがない。
▲6▼ 素材として有害物質を含まず、製紙用繊維を主体としているので不用となった調湿性ガス吸着シートは可燃ゴミとして処分することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】等温吸着曲線(平衡水分吸着量)
【図2】密閉容器内における温度変化による湿度の変動
【図3】硫化水素ガスの吸着
【図4】アンモニアガスの吸着
【図5】ホルムアルデヒドガスの吸着
【図6】キシレンガスの吸着
【図7】ホルムアルデヒドガスによる繰り返し吸着と汚染ガスの脱着
Claims (8)
- 製紙用繊維25〜80質量部、熱融着性物質5〜15質量部、及び二酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物と非結晶性無機粉体との混合物15〜60質量部からなることを特徴とする調湿性ガス吸着シート。
- 接着剤が基紙重量に対して5〜35質量%含まれ、必要に応じて防黴剤を付与したことを特徴とする請求項1に記載の調湿性ガス吸着シート。
- 二酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物の化学式が、8〜9SiO2・Al2O3・4〜5ZnO・nH2Oの組成で構成されることを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項に記載の調湿性ガス吸着シート。
- 二酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物と非結晶性無機粉体との混合物の比率が3〜10:12〜50質量部であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の調湿性ガス吸着シート。
- 非結晶性無機粉体がシリカゲルであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の調湿性ガス吸着シート。
- シートの少なくとも片面に、透湿性と通気性を有する化粧層を設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の調湿性ガス吸着シート。
- シートの少なくとも片面に、化粧層を部分的に設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の調湿性ガス吸着シート。
- シートの少なくとも片面に、ガス吸着性を有する化粧層を設けたことを特徴とする請求項6〜7のいずれか1項に記載の調湿性ガス吸着シート。
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