JP2004344807A - 写真廃液の処理方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高濃度のCOD寄与物質及びアンモニア性窒素成分を含んでいる写真廃液に対しても効果的にCOD及びアンモニア性窒素を低減できる写真廃液処理方法を提示すること。
【解決手段】写真廃液に電解酸化処理を施したのち、物理化学的酸化処理を施すことを特徴とする写真廃液の処理方法。とくに電解酸化処理と物理化学的酸化処理を施したのち、さらに生物処理をも行う写真廃液の処理方法。
【選択図】 なし
【解決手段】写真廃液に電解酸化処理を施したのち、物理化学的酸化処理を施すことを特徴とする写真廃液の処理方法。とくに電解酸化処理と物理化学的酸化処理を施したのち、さらに生物処理をも行う写真廃液の処理方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は写真廃液の処理方法に関するもので、より具体的には写真処理廃液のCOD及びアンモニア性窒素を下水道排水基準を満たすレベルまで処理可能な実用的且つ経済的な処理方法に関する。とくに現像所において実施可能な写真廃液のCOD及びアンモニア性窒素低減処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
写真廃液は高濃度のBOD 、COD 、窒素、リンを含み、且つ、生物処理または化学処理によっても難分解性成分が多量に含まれている。写真廃液特にカラー現像液は種々の工業廃液の中でも最も処理が困難なものの1つであって、従来から多くの処理法が開示されているが、除去率・処理コストの両面で尚多くの問題がある。
【0003】
写真廃液処理に関して従来開示されている方法は、主として生物処理、化学処理及び物理処理である。生物処理法は、例えば活性汚泥法によるもので、通常廃液を10〜50倍に希釈したものを処理期間15〜50日でCOD の50〜80%、及びBOD の50〜80%が分解除去出来るとされている。
化学処理は、オゾン酸化法、過酸化水素−第一鉄塩法(フェントン法)、過硫酸酸化法、ハロゲン酸酸化法、電解酸化法等がある。オゾン酸化法は無機COD 成分の分解除去及び現像主剤である芳香族化合物のベンゼン環分解に有効であるが、有機BOD 成分を除去する効果は殆どない。フェントン法は有機・無機成分いずれに対しても効果があるが、処理コストが高い点に問題がある。一般に化学処理によるCOD の除去率は50%程度とされている。
【0004】
物理処理には高圧加熱法、噴霧焼却法、蒸発乾燥法等がある。写真廃液中には多量のハロゲン化物イオンが含まれているので、反応装置の応力腐食が問題となる。また、熱回収のための熱交換器のスケール、残渣、廃ガス等の処理にも問題がある。
【0005】
これらの開示された写真廃液処理手段は、難生分解性のものも含む無機、有機の多種の化合物が混在した写真処理廃液に対しては、COD値の低減を実現してはいるが、排水基準を満たすレベルまで低減させるにはなお酸化活性が十分ではない。そのため、上記した処理手段を組み合わせた複合処理、とりわけ酸化処理と生物処理を組み合わせた処理方法が提示されている。
【0006】
例えば、特許文献1には、過酸化水素酸化処理(フェントン法)と生物処理、特許文献2に電解酸化処理と生物処理、また特許文献3にオゾンガスによる光化学酸化と生物処理、特許文献4には、活性汚泥処理の被処理水を濾別して電解処理、などのそれぞれ組み合わせにより、写真廃液のBOD及びCODの低減できることが開示されている。しかしながら、特許文献1及び2に記載の生物処理は通常行われる生物処理であって、微生物が活動可能となる状態にするには大量の水希釈を必要とし、したがって装置が大型で、広い設置スペースも必要となり、かつ特許文献2では、生物処理を2度行う不利も伴う。また、特許文献3に開示された方法は、特殊な微生物(海洋微生物)を用いなければならないという問題を含んでいる。特許文献4の方法は、限外ろ過による返送汚泥量の引抜き操作を必要としていて現像所では実施が困難であるなどのそれぞれ欠点も含んでいる。
【0007】
また、特許文献5には、写真廃液にオゾンによる酸化処理を施した後電解酸化処理(2段電解も含む)を施すCOD低減方法が開示されている。この特許文献によれば、COD低減率は50%程度であり、この方法でも日本における下水道法の一律排水基準を満たすことはできない。
【0008】
一方、写真廃水中のアンモニア性窒素の電解による除去法に関しては、特許文献6に塩素イオン存在下、塩基性条件でアンモニア性窒素含有廃水の電解酸化を行い、発生する次亜塩素酸イオンによってアンモニア性窒素を硝酸化して除去する方法が記載されている。しかしながら、この方法は、化学量論以上の塩素化合物を必要とすることと処理済み排水が強酸化性となることのために写真排水に適用することは実際的でない。
【0009】
以上に述べたように従来開示されているCOD低減を目的とする単独あるいは複合処理方法も、またアンモニア性窒素除去を目的とする電解酸化方法も、いずれも対象となるCOD又はアンモニア性窒素の分解能力、排出環境への影響、作業の容易さ、処理スペース、設備や処理のコストなどの何らかの点で実用上の制約がある。したがって、写真廃液に対して、BOD及びCODのいずれをも排水基準値以下に低減させ得る、かつ実用的な、特に現像所においても実施できる廃液処理手段が強く望まれている。
【0010】
この出願の発明に関連する前記の先行技術には、次ぎの文献がある。
【特許文献1】
特開平3−262594号公報
【特許文献2】
特開平4−235786号公報
【特許文献3】
特開平5−96298号公報
【特許文献4】
特開平6−320184号公報
【特許文献5】
特開平10−290987号公報
【特許文献6】
特開平7−100466号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記した背景からなされたものであり、その目的は、高濃度のCOD寄与物質及びアンモニア性窒素成分を含んでいる写真廃液に対しても下水道への排出基準を満たすレベルまで効果的にCOD及びアンモニア性窒素を低減できる写真廃液処理方法を提示することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的の解決方法を見出すために、写真廃液の酸化・無害化法を鋭意研究する中で、とくに電解酸化中のCOD寄与物質及びアンモニア性窒素成分の被酸化挙動や性質について検討を重ねたところ、これらは電解酸化に続いて物理化学的酸化を行なうときには相乗効果による顕著な分解が進行することが判明し、この発見に基づいて本発明に到達することができた。すなわち、本発明は以下の通りである。
【0013】
・ 写真廃液に電解酸化処理を施したのち、物理化学的酸化処理を施すことを特徴とする写真廃液の処理方法。
ここにいう物理化学的酸化処理とは、化学酸化処理の中で、酸化剤が処理済み廃液中に水、酸素、水素、炭酸ガス又は炭酸イオン以外の反応性生物として残ることのない処理を指す。
(2)該廃液のpHが9〜12のもとで物理化学的酸化処理を施すことを特徴とする上記(1)に記載の写真廃液の処理方法。
(3)物理化学的酸化処理がオゾンによる酸化処理であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の写真廃液の処理方法。
(4)オゾンによる酸化処理を紫外線の照射のもとで行うことを特徴とする上記(3)に記載の写真廃液の処理方法。
(5)電解酸化処理及び物理化学的酸化処理を施したのち、さらに生物処理を施すことを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の写真廃液の処理方法。
【0014】
本発明の写真廃液の処理方法の要諦は、写真廃液に電解酸化を施した後に物理化学的酸化を施したときに発現する顕著な相乗作用を利用したことにある。
従来、写真廃液を電解酸化したときのCODやアンモニア性窒素の低減効果は、直接酸化による直接の低減作用のみか、これに電解によって生じる化学的酸化剤(特開平7−323290号記載の過硫酸や特開平7−100466号記載の次亜塩素酸)による低減作用が加わると考えられており、これら両作用が加わる後者の場合でも、CODやアンモニア性窒素の低減作用は、排水基準を満たすには不十分であったことを考えると、電解酸化手段と化学酸化手段とを組み合わせた本発明の方法がCODとアンモニア性窒素のいずれにおいても排水基準を満たすことができることは予想外のことである。
この相乗効果は、COD寄与物質及びアンモニア性窒素成分の物理化学的酸化を阻害する、写真廃液中の成分が電解酸化によって除去されるためと推定している。
【0015】
以下、本発明をさらに具体的に詳述する。
なお、本明細書では「写真処理廃液」とその簡略表現である「写真廃液」は、同義である。
【0016】
【発明の実施の形態】
[被処理廃液]
本発明の実施の形態の説明に先だって、発明の対象である写真処理廃液について述べる。写真処理廃液は、カラー写真或いはモノクローム写真の現像廃液の他、定着廃液または写真製版等写真工業で発生した多くの種類の廃液が含まれている。定着廃液は溶存している銀を回収した残液が処理の対象となる。通常これら種々の写真処理工程からの廃液は混合された状態で回収されて、処理される。
写真廃液を構成する現像廃液は、現像処理の各工程から排出された廃液であって、処理中に感光材料から溶出した例えばゼラチンや感光色素などの成分、処理中に生じた反応生成物、及び処理液処方に含まれて消費されなかった構成薬品(処理液処方の詳細は後述する)などを含んでいる廃液である。
【0017】
したがって、現像廃液には、現像主薬及びその酸化生成物、アルカリ化合物及び緩衝剤、亜硫酸塩やヒドロキシルアミン誘導体などから選択される補恒剤、アルカリハライドなどを主体としており、定着廃液は、チオ硫酸のアンモニウム塩、ナトリウム塩及び/又は亜硫酸のアンモニウム塩及び/又はナトリウム塩、アルカリハライドなどを主体としており、漂白廃液は、ポリアミノポリカルボン酸鉄(III)錯塩などの漂白剤とそれに由来する反応生成物、アルカリハライド(再ハロゲン化剤)、緩衝塩などを主体としており、漂白定着廃液は、定着廃液と漂白廃液に含まれるものとほぼ同様の成分を主体としており、その他の各工程から排出される廃液もそれらの工程液の機能性化合物とそれに由来する化合物を含有している。したがって、処理される写真廃液の成分は、現像液由来の成分や漂白液・定着液・漂白定着液由来の成分などが感光材料溶出物や処理中の反応生成物と混在しており、例えば緩衝剤(炭酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、四ホウ酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩など)、発色現像主薬、亜硫酸塩、ヒドロキシルアミン塩、炭酸塩、硬水軟化剤、アルキレングリコール類、ベンジルアルコール類、界面活性剤(アルキルホスホン酸、アリールホスホン酸、脂肪酸カルボン酸、芳香族カルボン酸等)酸化剤(鉄(III)のEDTA錯塩、1,3−ジアミノ−プロパン四酢酸錯塩など)、ハロゲン化物(臭化アルカリ、臭化アンモニウムなど)、チオ硫酸塩(ナトリウム塩、アンモニウム塩)、酢酸塩など多岐に亘る化学成分を含んでいて、この多様性が効果的な廃液処理手段を見出すことを困難にしている。
【0018】
写真廃液の組成は、処理の種類及びその処理の各工程からの廃液の混合比率によりかなり変動するが、おおよそCOD 30,000〜50,000 mg/l、BOD 5,000 〜15,000 mg/l、TOC(Total Organic Carbon) 10,000〜25,000 mg/l、ケルダール窒素 10,000 〜15,000 mg/l、トータル燐 100〜500mg/l の範囲である。COD:BOD:TOC の比率は概ね 4:1:1.5でCOD が高い特徴があり、またC:N:P の元素比率はほぼ 100:100:1でN の含有率が高い特徴がある。
【0019】
[廃液処理工程]
<電解酸化処理>
電解酸化法について述べる。写真廃液中には、一般的に若干量のハロゲン化イオンが存在するので電解により塩素(ハロゲン)イオンは陽極で酸化されて更に水と反応して次亜塩素酸(次亜ハロゲン酸)イオンが生成するが、廃液中の高濃度のCOD寄与成分やアンモニア性窒素化合物の量には化学量論的に到底及ばない。その反面、写真廃液は高い腐食性をもっているので、電解槽はこれらの成分に耐える耐食性材料である白金、フェライト、ステンレス、酸化皮膜が速やかに形成される鉄、硬質プラスチック等を選択する必要がある。
【0020】
陽極は、酸化され難い耐蝕材質である白金、ステンレス、カーボン(とくにグラファイトや基板上に層形成されたダイヤモンド)、チタン、酸化皮膜が速やかに形成される鉄等が好ましい。
陰極は、電解酸化反応には直接関与しないが、廃液に対して不活性な材質である白金、ステンレス、チタン、カーボン等が好ましい。
例えば、陽極にはステンレス、ダイヤモンド層、酸化皮膜が速やかに形成される鉄を、陰極にはステンレス、チタンなどの電極が好ましい。また、反応液中には多量の懸濁成分が含まれているため、電極への懸濁物の沈澱を防止して均一な酸化反応を起こさせ、電流効率を高めるためには回転電極を用いることも好ましい。
【0021】
本発明においては、電解槽の構造は公知の各種の構成で用いることができる。すなわち、単一室セルであってもよく、又は陽極と陰極が膜で仕切られた分割セルであってもよい。最も簡単な実施態様は、単一室セルである。単一室セルでは、陽極と陰極を隔てるバリヤーがなく、したがって溶質は陽極と陰極間を移動するのに制限を受けない。このような単一室方式は、一般的には陽極で酸化された成分がその後陰極で還元されるという可能性を持っているが、写真廃液成分の電気的酸化分解反応の場合は、酸化種の大半は非可逆的な酸化を受けるのでそのリスクの可能性は殆どない。
【0022】
2室セルにおいては、イオン交換膜、ミクロろ過膜、半透膜、多孔性膜例えば多孔性セラミックスなどの通電性隔膜を陽極と陰極の間に挿入する。イオン交換膜はあるタイプのイオン種のみを陽極液から陰極液へ又はその逆方向へ通過させることができる。膜の機能は、陽極液と陰極液が混合することなく電気的中性を保持することである。また、適当な膜を用いれば、その膜を通過して移動するイオンの性質を制御することができる。例えば、陰極室でチオ硫酸イオンや亜硫酸イオンが還元されて生成した硫黄イオンにとって硫化銀が生成して沈殿し、陰極室内で捕集する本発明の好ましい態様が可能である。なかでもイオン交換膜、半透膜、セラミックスなどが両極を分ける隔膜として好ましい。
【0023】
電解酸化処理の温度は常温或いはこれよりやや高い温度が好ましく、また、電圧は5.0 〜8.0 V 、電流密度は、0.5〜100 A/dm2が好ましく、より好ましくは5 〜50 A/dm2がよい。
また、電解は回分法でも連続法の何れでもよい。回分式の好ましい電圧印加方式としては、電解初期(COD低減目標値の2〜10%相当の間)は4〜6A/dm2の比較的低電流密度を適用し、電解の進行と共に電流密度を高めてCOD低減目標値の10%相当程度に電解した後は、定常的な電流密度、例えば12〜20A/dm2 の電流密度を適用することによって電気分解を続けるのも好ましい態様である。
【0024】
写真廃液には、写真処理液由来の界面活性剤が含まれているが、電解酸化中の発泡を抑制するために、さらにノニオン性界面活性剤のような消泡剤を使用することができる。例えば、BASF社によって上市されているPluronic(登録商標)シリーズからのもの、好ましくはPluronic−31R1Polyol(登録商標)(メタノール溶液のポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドとの序列コポリマー)を用いてもよい。しかし、消泡剤を使用する場合、泡の形成を避けるために必要な最低量で使用する。例えば、Pluronic−31R1Polyol(登録商標)消泡剤ではその添加量は、0.15mL/処理廃液L以下でよい。
電解酸化処理の程度にもよるが、好ましい条件ではこの処理過程で廃液中のCOD が10〜60%、多くの場合10〜40%まで低減される。しかしながら、電解酸化処理の大きな利点は、COD の低減効果以上に、前記したように電解酸化処理後の廃液は物理化学的酸化処理による分解率が向上することにある。実際に、物理化学的酸化処理では分解性がない現像主薬成分、EDTA、Fe+3−EDTA錯塩等の化合物の大部分が電解酸化処理によって物理化学的に酸化分解可能な物質に変化する。
【0025】
本発明の廃水処理方法における電解酸化処理では、高速度攪拌の電解酸化処理装置を用いると効果が増加する。本発明に適用される高速度電解酸化処理装置には、振動板を備えた攪拌装置を用いて電解液を振動板の振動のよって攪拌させて電解酸化を行なう処理方式も好ましく、振動周波数を適当に選択することによって、極めて高い電解酸化速度とCOD低減効果が得られる。
【0026】
本発明に好ましく用いられる攪拌装置の例としては、振動板を電動機と結合させて電動機の回転を振動板の振動に変換させ、その振動によって電解液に攪拌作用を及ぼさせる方式のものが挙げられる。その振動周波数は、10cycle/sec以上100cycle/sec以下であり、好ましくは15cycle/sec以上80cycle/sec以下であり、より好ましくは20cycle/sec以上60cycle/sec以下である。
【0027】
また、前記の好ましい攪拌装置は、少なくとも1個の振動板を有するものであるが、好ましくは複数個の振動板を配列させた構成である。複数個の振動板からなる攪拌装置の場合は、振動板の配列の形態は、好ましくは振動板の板面が一平面内になるように一列に並べた形態、振動板を板面を並行にして板面方向に直角方向に重ね合わせた多段式の形態、あるいは振動板の板面同士は並行であるが、板面が重ね方向と斜めになるように重ね合わせた斜め多段式形態のいずれであってもよいが、いずれの場合も各振動板の間に液流が確保されるように振動板同士は互いに一定間隔を置いて配列される。その間隔は、1〜200mmであり、好ましくは2〜150mm、より好ましくは、3〜100mmである。
【0028】
また、振動板の形状は矩形、楕円形、梯形、正方形、矩形又は正方形の各稜に丸みを持たせた形のいずれでもよいが、好ましくは矩形又はその稜に丸みを与えた形である。振動板のサイズは、電解酸化槽の大きさに応じて適宜選択することができる。目安としては振動板の片面の面積が電解槽断面積の1/1000〜1/5であり、好ましくは1/50〜1/5である。その厚みは振動板が金属板の場合はその長辺(長径)の1/100〜1/5であり、好ましくは1/10〜1/20であり、振動板が樹脂板の場合は、1/50〜1/5であり、好ましくは1/20〜1/10である。
【0029】
<物理化学的酸化処理>
上記の電解酸化された写真廃液には、物理化学的酸化処理が施される。
本明細書において、物理化学的酸化処理は、化学酸化処理の中で、酸化剤が処理済み廃液中に水、酸素、水素、炭酸ガス又は炭酸イオン以外の反応性生物として残ることのない処理を指す。具体的には、酸素、オゾン、過酸化水素、過炭酸から選択される酸化剤による酸化処理、これらの酸化剤存在下での紫外線などの活性光照射処理、電解酸化処理、及び活性光照射を伴う電解酸化処理が挙げられる。
好ましい物理化学的酸化処理は、電解酸化処理、オゾン酸化処理、過酸化水素酸化処理、及びこれらと紫外線照射の組み合わせ処理である。特に好ましい処理は、電解酸化処理及びオゾンと紫外線照射の組み合わせ処理である。
【0030】
物理化学的酸化は、主にヒドロキシラジカル、パーヒドロキシラジカル、活性酸素基などの酸化作用によって進行すると考えられ、廃液に物理化学的酸化を施すに当たって、予めこれらの酸化性基の作用に好都合なpH領域に調整することが酸化処理を効率的に進めるのに好都合である。好ましいpH領域は、8〜12である。
【0031】
オゾン曝気処理について述べる。
オゾン酸化法は、オゾナイザー(オゾン発生装置)から導かれるオゾン含有空気を写真廃液に注入して行われる。この際にオゾン含有空気の注入とともに紫外光による照射処理を行なうことが好ましい。注入方法の一態様としては、紫外光を効率良く透過する容器に処理水を導びき入れオゾンを容器底部に設けたガラスボールフィルター(気孔径40〜50μm)を通して送気する形式が挙げられる。
【0032】
オゾンを発生させるには無声放電を行わせたり、コロナ放電を利用したりあるいは電解反応を利用するなどの方法が採られているが、本発明に用いるオゾン発生装置は、いずれであっても特に制約はなく通常市販されているオゾン発生装置から選択して使用することができる。その中では無声放電を利用する方法が好ましい。無声放電は2つの電極の間に誘電体を介して交流高電圧をかけたとき、その間隙に起る放電現象を指すもので、放電の際にその空間に介在する酸素の一部がオゾンに変化する。誘電体は普通ガラスを用い、空間々隙は数mm、電圧は交流50〜500サイクル数千ボルトから場合によっては2万ボルトぐらいまでが使われる。
【0033】
オゾン発生装置は、平板型の相対する電極群からなるものや、筒状のオゾン発生管を縦型又は横型に配置したものなどがあるが、本発明にはそのいずれも使用できる。また原料は酸素、空気いずれでもよいが、本発明においては空気を使用する方が安価で好ましい。
【0034】
このオゾン送気と同時に紫外光を照射するとオゾンが活性化されて酸化効率が向上する。紫外光は容器底部または内部または周囲に設置した水銀ランプ等の光源より照射される。水銀ランプはランプ内部の水銀蒸気圧により低圧、高圧、超高圧に分類されていてそれぞれ遠紫外の輝線,近遠紫外の輝線,紫外連続スペクトルを発するが、本発明の目的にはどの型のものでも使用できるが低圧または高圧が好ましく、低圧が特に好ましい。そのランプの電力量は、COD値と廃液成分の分解性によって異なるが、目安として廃液量100kgに対して5WHrから600WHrが好ましく、中でも20WHrから500WHrがより好ましい。
【0035】
オゾン酸化処理装置からの排気ガスは、オゾン捕集液で処理してオゾンを吸収除去してから排出する方法、触媒によって分解除去する方法などがあるが、触媒による除去が好ましい。触媒としては、活性炭や金属酸化物などを用いる事ができるが、触媒の損失を伴わない点で、金属酸化物が好ましい。オゾンガスによって排水基準を満たすまで分解するのに要する通気量は、化学両論的COD量の1.1〜3倍、好ましくは1.3〜2倍であるので、通気したオゾン含有ガスは、そのまま排気してもよいが、循環使用して利用率を高めるのが好ましい。
オゾンガス酸化により分解される適当な量は、廃液の組成や濃度によって、またこの段階で排水基準を満たすようにするか生物処理を後続させるかによって、適宜選択されるが、生物処理を伴わないときは、電解酸化処理済み廃液のCOD及びアンモニア性窒素が排水基準以下になるまでの量であり、後者の場合は電解酸化処理の電解量と同じく廃液中のCOD が10〜40%まで,多くは10〜20%までに低減される程度が適切である。
【0036】
上記のオゾンおよび紫外光による処理については水処理技術第32巻1号3頁(1991)、工業用水第349号15頁(1987)、ACS Symposium Ser.(Am. Chem. Soc.) 第259号195頁(1984)などに記載されている。
【0037】
<生物処理>
廃液の希釈
物理化学的酸化処理が施された写真廃液の生分解を行なうには、直接生物処理することも可能な場合もあるが、廃液を微生物が生存して活動するのに好ましい環境、とくに塩濃度が低い環境にするために、好ましくは生物処理に先だって希釈倍率が10〜50程度の希釈が行なわれる。しかし、本発明の方法では、10〜50倍程度の希釈倍率でも良いが、希釈倍率を10以下、あるいは5以下、さらには希釈することなく行なうことも可能である。低希釈条件とすれば、現像所において処理することも可能となる。
【0038】
生物処理の形態
本発明の一つの態様としては、上記のように電解酸化と物理化学的酸化処理を施した写真廃液に、さらに生物処理を行う態様が好ましい態様として挙げられる。この方法では、電解酸化と物理化学的酸化処理の過程で十分に生分解性の良い化合物にまで分解された液を生物処理の対象とするので、処理は極めて円滑に行われる。処理の方法としては好気性処理法、嫌気性処理法とも特に限定されるものではなく、またそれらの組み合わせでも良い。具体的な処理方法としては活性汚泥法、嫌気性消化法もしくはスポンジ担体法等の微生物浮遊懸濁法、生物濾過法、浸漬濾床法、流動床法、回転円板法もしくは散水濾床法等の生物膜法または自己増粒法等を使用することができる。生物膜法での担体としては、例えば砂利、砂、軽石、アンスラサイト、多孔性セラミックス、活性炭、スポンジ、キトサン(粒状)、ひも状担体、プラスチック、ハニカム状担体、波状担体、網状担体等の1種または2種以上を使用することができる。生物膜法で使われる上記の担体は製造元により多種多様であり、微生物が付着して生物膜を形成するものであれば種類を問わない。また上記の処理は連続式であっても回分式であっても良い。生物処理の際、窒素、リン等の栄養塩類が不足する場合は適宜加える必要がある。加え方は生物処理槽へ直接でもよいし、生物処理槽に入る前で加えてもよい。窒素形態としては生物が利用できるものならば何でもよくアンモニウム塩又は尿素などがあり、リンの形態としては、生物が利用できるものなら何でもよく、例えばK2 HPO4、KH2 PO4 、Na2 HPO4 等を挙げることができる。窒素の濃度は好ましくはBODの1から5%、リンの濃度は好ましくは0.5%から3%がよい。また生物処理の際のpHは6.0から9.0が好ましい。
【0039】
これらの処理により電解酸化と物理化学的酸化処理において生成したギ酸や酢酸等の生分解性の良い低級脂肪酸は微生物の作用によってすみやかに二酸化炭素や水等に分解される。これにより液中のCOD、BOD負荷となる成分はほぼ完全に消滅し極めて良好な無害化が達成される。本工程における生物処理は生物の活性を利用して処理を行うので、要するエネルギーは極めて小さい。したがって電解酸化と物理化学的酸化において適当な反応時間(あるいはCOD低減率)を選択することにより高無害化度と省エネルギーを両立させた処理を行うことができる。
また、電解酸化と物理化学的酸化処理後にも残留するアンモニア性窒素(途中まで酸化分解したものも含む)には、好気性処理と嫌気性処理、嫌気性処理と好気性処理を適宜組み合わせて脱窒処理を行うことにより、除去することができる。
好気性・嫌気性同時処理の具体的方法としては、生物濾過法があり、例えば散水濾床法、好気性固定床法、好気性流動床法が用いられる。生物濾過法は濾床、固定床、流動床または円板が微生物の担体となりその上に形成される生物膜によって廃水が処理される方法である。
【0040】
担体上に形成される生物膜は担体に近づく程嫌気的な雰囲気になっていることが知られている。この生物膜内部の嫌気的な雰囲気を本発明の対象となる廃液の脱窒に用いることを検討したところ、生物処理装置内液の溶存酸素濃度を0.3〜3mg/リットルにすれば硫化水素の発生なく脱窒が行なわれることを見い出した。
【0041】
即ち、好気性処理槽中に局部的にできた嫌気的な雰囲気を積極的に利用することによって目的を達成することができる。なお生物濾過に用いられる担体としては、砂利、砂、活性炭、アンスラサイト、プラスチック材等の粒状媒体の1種または2種以上、またはプラスチックろ材を用いることができる。
【0042】
このように好気性処理槽中の一部分に嫌気的雰囲気を作ることは活性汚泥処理における曝気槽内においても可能である。即ち、曝気槽内を自由に移動できるような微生物用の担体を曝気槽内に添加した状態で、曝気槽内の溶存酸素濃度を0.3〜3mg/リットル、好ましくは0.5〜2mg/リットル、更に好ましくは0.5〜1mg/リットルにすることにより、担体内の生物膜内部が嫌気的雰囲気になり脱窒が行なわれる。脱窒のための水素源としては廃液中のCOD成分が用いられるが、COD成分のみでは水素源が不足する場合はメタノールなどの有機物を加えてもよい。
【0043】
これらの生物処理のより具体的方法については、「活性汚泥法の維持管理技術」桜井敏郎、須藤隆一著(化学技術開発センター刊)、「新しい活性汚泥法」橋本奨、須藤隆一著(産業用水調査会刊)等に記載されている。
【0044】
以上の電解酸化と物理化学的酸化又はさらに生物処理の追加によって廃液を環境への負荷が小さい極めて良好な処理済み排水とすることができ、しかも一連のプロセスを継続して安定に稼働させることができる。
現像所において廃液処理を行うには、廃液流入系と汚泥の分離・返送系と処理済み廃液排出系を備えた曝気槽からなるコンパクトなバイオリアクターが好ましい。これらの生物処理のより具体的方法については「廃水処理プロセス、設計理論と実験法」W.W.エッケンフェルダー、D.L.フォード著、松井三郎訳 技報堂出版および「生物学的水処理技術と装置」、化学工学協会編、培風館に記載されている。
本発明に特に好ましい生物処理方法は、微生物を担体に 担持・固定化させた形態で行う処理方法である。固定化処理の中でも、包括処理が特に好ましい。
【0045】
固定化処理のための担持・固定化方法、使用する担体、微生物などについて説明する。
本発明の微生物固定化担体の製造方法において、微生物の 担持・固定化方法としては、担体から生分解菌が流出しないように固定される方法ならばその種類、形式を問わない。具体的な 担持・固定化法としては、例えば、微生物が付着して生物膜を形成するような担体を用いる付着生物膜法、担体と培地を混合して微生物を培養する担持培養法、水不溶性の担体に微生物を結合させる担体結合法、減圧下で担体の孔隙内に微生物を封入する方法、2個以上の官能基を持つ試薬によって菌体内に架橋を形成させて固定化する方法、微生物を高分子のゲル内部や皮膜などに閉じ込める包括固定化法、さらに結合手段により共有結合法、物理的吸着法、イオン結合法及び生化学的特異結合法などと分類される担体結合法が知られているが、本発明には、これらの公知の方法を用いることができる。中でも、付着生物膜法及び包括固定化法が好ましく,とりわけ包括固定化法が優れている。
【0046】
付着微生物膜法の特徴は、微生物を高濃度化することができ、処理効率を向上させることができる。また、通常は系外に洗い出されてしまうような増殖速度が遅い菌を系内に留めることができる。また、微生物が安定して棲息できる状態に保てることも特徴としてあげられる。
【0047】
包括固定化法の特徴は、菌体を高濃度に保持できるため、処理効率を向上させることができ、増殖の遅い菌を固定化できる。また、pH、温度等の条件変化に対する耐性が広く、高負荷状態にも耐えることができる。包括固定化法としては、アクリルアミド法、寒天−アクリルアミド法、PVA−ホウ酸法、PVA−冷凍法、光硬化性樹脂法、アクリル系合成高分子樹脂法、ポリアクリル酸ソーダ法、アルギン酸ナトリウム法、K−カラギーナン法等、微生物を閉じ込めることができ、系の中で微生物の活性を維持しつつ、物理的強度が大きく長時間の使用に耐え得るものならば種類を問わない。
【0048】
包括固定化法の代表例としてアクリルアミド法の場合の微生物固定化ゲルの調製法について説明する。固定化ゲルは、架橋剤(例えば、N,N’−メチレンビスアクリルアミド)を含有したアクリルアミドモノマー溶液と細菌(MLSS 20,000ppm程度の濃縮菌体)とを懸濁し、重合促進剤(例えば、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン)、重合開始剤(例えば、過硫酸カリウム)を添加し、3mm径の塩化ビニル製チューブ等の成型形に入れ、20℃で重合し、重合終了後、成型形から押し出し、一定の長さに切断して得られる。固定化ゲルの表面の細孔は、細菌より小さいため、包括固定化した細菌はリークしにくく、内部で増殖し、自己分解する。廃液中の汚染成分のみが細孔よりゲル内部に入り込み、内部の細菌により処理される。
【0049】
これらの固定化法のより具体的な方法については、「生物触媒としての微生物」100頁、福井三郎著(共立出版、1979),「微生物固定化法による排水処理」須藤隆一編著(産業用水調査会)、稲森悠平の「生物膜法による排水処理の高度・効率化の動向」,水質汚濁研究, 13巻,9号(1990),563−574頁、稲森悠平らの「高度水処理技術開発の動向・課題・展望」,用水と廃水, 34巻,10号(1992),829−835頁 などに記載されている。
【0050】
次ぎに、微生物担持用担体としては、微生物の活性を維持しつつ、物理的強度が大きく長時間の使用に耐え得るものならば、いずれの公知材料をも使用できるが、有用微生物の効果的な担持という点から、担体表面に微生物が強く吸着するもの、微生物を微小孔隙中へ侵入させることにより保持力を高めることができるような多孔性のもの、ミクロ粒子が凝集して実質的に吸着あるいは吸蔵表面を増大させたものが望ましい。
また、膨潤性の担体材料は、微生物が利用できる空間が広い点では、好ましい材料ではあるが、微生物を 担持・固定化した後、長期に亘って安定に使用するためには、物理的な強度が必要であり、その点では非膨潤性の担体材料を用いることが好ましい。非膨潤性であっても後述するようなサイズ効果や形状効果を利用して利用空間を維持させることができる。
また、被処理水と担体とが激しく相対運動する微生物処理環境においては、担体の物理的強度が特に重要であり、さらに活性汚泥槽のように担持担体が流動する流動床の場合には、比重の制御ができることが必要で、シリカなどの比重制御剤を用いて比重値を約1.1程度に調整するので、この点からも物理的強度が大きいことが好ましい。
【0051】
これらの理由から、本発明に好ましい担持用担体としては、具体的には、セルロース、デキストラン、アガロースのような多糖類;コラーゲン、ゼラチン、アルブミンなどの不活化蛋白質;イオン交換樹脂、ポリビニルクロライドのような合成高分子化合物;セラミックスや多孔性ガラスなどの無機物;寒天、アルギン酸、カラギーナンなどの天然炭水化物;さらにはセルロースアセテート、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、エポキシ樹脂、光硬化性樹脂、ポリエステル、ポリスチレン、ポリウレタンなどがあげられる。また、リグニン、デンプン、キチン、キトサン、濾紙、木片等などの天然物も利用できる。
中でも、上記した好ましい要件に特に適合する材料としてポリプロピレン及びポリエチレンで代表されるポリオレフィン系の合成高分子化合物材料が好ましい。
これらの材料は、市販されており、例えばバイオステージ(ポリプロピレン製、筒中プラスチック工業(株)製)、ゼビオバイオチューブ(ポリエチレン製、ゼビオプラスト(株)製)などを挙げることが出来る。
【0052】
好ましい担体の形状としては、ほぼ球状、ほぼ立方体状、ほぼ直方体状、円筒状あるいはチューブ状であり、なかでも製造し易いほぼ球状、あるいは比面積を大きくできるほぼ直方体状又はチューブ状であることが好ましい。担体の製造方法としては、既知の任意の方法を用いることができる。例えば微生物と担体物質(又はその前駆体)の混合溶液を不溶解性液体中に滴下して液体中で液滴を固化させて微生物 担持担体粒子の分散物を作る方法、微生物と担体物質(又はその前駆体)の混合溶液を低温化、ゲル化剤や固化剤の添加などの方法で固化させた後、固化体を適当なサイズに裁断して微生物を 担持した直方体粒子を得る方法、微生物と担体物質(又はその前駆体)の混合溶液を押し出しノズルから不溶解性液体中に注入して液体中で固化させて微生物 担持担体の糸状の固化物を得てこれを適当に裁断して円筒状粒子を作る方法、またこのときの押し出し成形のダイを環状として円環状(チューブ状)の微生物 担持担体粒子を得る方法を挙げることができる。
【0053】
担体粒子の大きさは、外径0.1〜70mm、好ましくは0.5〜40mm、より好ましくは1.0〜10mmであり、粒子サイズが大きければ比面積が少なくなって非効率となり、小さいとすぐに分解・消滅して 担持体の意味をなさなくなる。したがって、適用対象に応じて好ましいサイズが選択される。
【0054】
本発明の方法では、固定化される微生物としては一般的に難分解性である写真廃液に対しても通常用いられている活性汚泥を用いることができる。馴化処理が行われるので、活性汚泥中の微生物の履歴・由来などは問わない。
【0055】
本発明では、微生物を 担持・固定化する際に、該微生物用の栄養物を供給してやることが、 担持・固定化される微生物の増殖を促進して速やかに該微生物が優先的に生育する環境が確立されるので、好ましい。また、廃液処理装置の稼動中に微生物の活性が低下した場合にも栄養物の供給により賦活してやることが好ましい。
栄養物としては、炭素、窒素、リンを含むものが好ましく、微生物の生育に適した培養液などが挙げられる。培養液としては、例えば、肉汁、酵母エキス、麦芽エキス、バクトペプトン、グルコース、無機塩類、ミネラルなどが適当な割合で混合したものが良く用いられているが、微生物の種類に応じて適当な配合比のものを選べば良い。また、本発明に用いる栄養物としては、上記の培養液以外にも有機、無機栄養物を適当に含むものであれば、どのようなものでも利用可能である。例えば、自然界より採取した、あるいは培養を加えた任意の微生物を乾燥、粉砕し、粉砕微粉体を栄養物として用いてもよい。
活性汚泥の馴化が進むに伴い、あるいは活性汚泥の活性の回復に伴い、栄養物の供給を減らして物理化学的酸化処理済みの廃液量を増やして、栄養物をごく僅か又は殆ど供給しない定常処理に近づける。
【0056】
その他の調整条件
微生物処理の温度は、微生物の活動に適した温度であることが必要で、3〜50℃、好ましくは10〜45℃、より好ましくは18〜40℃である。この温度に維持するためには、状況に応じて温水を撒布又は注入するなどの加温を行なってもよい。また、寒冷地などでは、熱伝導体をバイオリアクターに装備して熱源からの伝熱あるいは直接の通電によって加温することもできる。熱伝導体としては、金属、セラミックスなど熱を伝えることができる物質であれば材質は問わない。
【0057】
被処理廃水のpHは、通常2〜10であり、好ましくは3〜9、より好ましくは4〜8.5であって、微生物の至適pHであれば最も好ましい。
【0058】
[写真処理液]
写真処理液は、カラー感光材料と黒白感光材料の処理に用いられるが、処理されるカラー感光材料としてはカラーペーパー、カラー反転ペーパー、撮影用カラーネガフィルム、カラー反転フィルム、映画用ネガもしくはポジフィルム、直接ポジカラー感光材料などを挙げることができ、黒白感光材料としては、Xレイフィルム、印刷用感光材料、マイクロフィルム、撮影用黒白フィルムなどを挙げることができる。
【0059】
本発明に適用される写真処理廃液は、写真処理液成分を主成分としているが、写真処理廃液には、写真処理液に添加されている素材のほか写真処理過程で生成した現像主薬の酸化体、硫酸塩、ハライドなどの反応生成物や、感光材料から溶け出した微量のゼラチン、感光色素、界面活性剤などの成分が含まれている。
【0060】
写真処理液にはカラー処理液、黒白処理液、製版作業に伴う減力液、現像処理タンク洗浄液などがあり、黒白現像液、カラー現像液、定着液、漂白液、漂白定着液、画像安定化液などが挙げられる。
【0061】
カラー現像液は、通常、芳香族第一級アミンカラー現像主薬を主成分として含有する。それは主にp−フェニレンジアミン誘導体であり、代表例はN,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン、2−アミノ−5−ジエチルアミノトルエン、2−メチル−4−〔N−エチル−N−(β−ヒドロキシエチル)アミノ〕アニリン、N−エチル−N−(β−メタンスルホンアミドエチル)−3−メチル−4−アミノアニリンである。また、これらのp−フェニレンジアミン誘導体は硫酸塩、塩酸塩、亜硫酸塩、p−トルエンスルホン酸塩などの塩である。該芳香族第一級アミン現像主薬の含有量は現像液1リットル当り約0.5g〜約10gの範囲である。
【0062】
また黒白現像液中には、1−フェニル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4−ヒドロキシメチル−4−メチル−3−ピラゾリドン、N−メチル−p−アミノフェノール及びその硫酸塩、ヒドロキノン及びそのスルホン酸塩などが含まれている。
【0063】
カラー及び黒白現像液には保恒剤として、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウム、メタ亜硫酸ナトリウム、メタ亜硫酸カリウム等の亜硫酸塩や、カルボニル亜硫酸付加物を含有するのが普通で、これらの含有量は現像液1リットル当たりカラー現像液では5g以下、多くは3g以下(無添加も含む)、黒白現像液では0g〜50gである。
【0064】
カラー及び黒白現像液中には、保恒剤として種々のヒドロキシルアミン類を含んでいる。ヒドロキシルアミン類は置換又は無置換いずれも用いられる。置換体としてはヒドロキシアルミン類の窒素原子が低級アルキル基によって置換されているもの、とくに2個のアルキル基(例えば炭素数1〜3)によって置換されたN,N−ジアルキル置換ヒドロキシルアミン類が挙げられる。またN,N−ジアルキル置換ヒドロキシルアミンとトリエタノールアミンなどのアルカノールアミンの組合せも用いられる。ヒドロキシルアミン類の含有量は現像液1リットル当り0〜5gである。
【0065】
カラー及び黒白現像液は、pH9〜12である。上記pHを保持するためには、各種緩衝剤が用いられる。緩衝剤としては、炭酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、四ホウ酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、グリシン塩、N,N−ジメチルグリシン塩、ロイシン塩、ノルロイシン塩、グアニン塩、3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン塩、アラニン塩、アミノ酪酸塩、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール塩、バリン塩、プロリン塩、トリスヒドロシアミノメタン塩、リシン塩などを用いることができる。特に炭酸塩、リン酸塩、四ホウ酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩は、溶解性やpH9.0以上の高pH領域での緩衝能に優れ、現像液に添加しても写真性能面への悪影響(カブリなど)がなく、安価であるといった利点を有し、これらの緩衝剤が多く用いられる。該緩衝剤の現像液への添加量は通常現像液1リットル当たり0.1モル〜1モルである。
【0066】
その他、現像液中にはカルシウムやマグネシウムの沈澱防止剤として、或いは現像液の安定性向上のために各種キレート剤が添加される。その代表例としてニトリロ三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、ニトリロ−N,N,N−トリメリメチレンホスホン酸、エチレンジアミン−N,N,N′,N′−テトラメチレンホスホン酸、1,3−ジアミノ−2−プロパノール四酢酸、トランスシクロヘキサンジアミン四酢酸、1,3−ジアミノプロパン四酢酸、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸等を挙げることができる。これらのキレート剤は必要に応じて2種以上併用されることもある。
【0067】
現像液は、各種の現像促進剤を含有する。現像促進剤としては、チオエーテル系化合物、p−フェニレンジアミン系化合物、4級アンモニウム塩類、p−アミノフェノール類、アミン系化合物、ポリアルキレンオキサイド、1−フェニル−3−ピラゾリドン類、ヒドラジン類、メソイオン型化合物、チオン型化合物、イミダゾール類等である。
【0068】
多くのカラーペーパー用カラー現像液は、上記のカラー現像主薬、亜硫酸塩、ヒドロキシルアミン塩、炭酸塩、硬水軟化剤などと共にシルキレングリコール類やベンジルアルコール類を含んでいる。一方カラーネガ用現像液、カラーポジ用現像液、一部のカラーペーパー用現像液は、これらのアルコール類を含んでいない。
【0069】
また、現像液中には、カブリ防止の目的で、臭素イオンを含有することが多いが、塩化銀を主体とする感光材料に対しては臭素イオンを含まない現像液を用いることもある。その他、無機カブリ防止剤としてNaClやKClなどの塩素イオンを与える化合物を含有していることがある。また各種有機カブリ防止剤を含有していていることも多い。有機カブリ防止剤としては、例えば、アデニン類、ベンズイミダゾール類、ベンズトリアゾール類及びテトラゾール類を含有していてせよい。これらのカブリ防止剤の含有量は現像液1リットル当り0.010g〜2gである。これらのカブリ防止剤は処理中に感光材料中から溶出し、現像液中に蓄積するものも含まれる。特に本発明において上記したような臭素イオンや塩素イオン等の総ハロゲンイオン濃度が混合液1リットル当たり1ミリモル以上であるような廃液においても有効に処理することができる。特に臭素イオン濃度が混合液1リットル当たり1ミリモル以上の場合に有効である。
【0070】
また、現像液中には、アルキルホスホン酸、アリールホスホン酸、脂肪酸カルボン酸、芳香族カルボン酸等の各種界面活性剤を含有している。
【0071】
黒白写真処理においては、現像処理の後に定着処理が行なわれる。カラー写真処理においては、現像処理と定着処理の間に通常漂白処理が行なわれ、漂白処理は定着処理と同時に漂白定着(ブリックス)で行なわれることもある。漂白液には、酸化剤として鉄(III) 又はCo(III) のEDTA、ジエチレントリアミン五酢酸、ニトリロトリ酢酸、1,3−ジアミノ−プロパン四酢酸塩、ホスホノカルボン酸塩そのほか過硫酸塩、キノン類などが含まれている。そのほか、臭化アルカリ、臭化アンモニウムなどの再ハロゲン化剤、硼酸塩類、炭酸塩類、硝酸塩類を適宜含有する場合もある。定着液や漂白定着液には通常チオ硫酸塩(ナトリウム塩、アンモニウム塩)、酢酸塩、ホウ酸塩、アンモニウム又はカリ明ばん亜硫酸塩などを含有していている。
【0072】
ハロゲン化銀写真感光材料の処理においては、定着処理あるいは漂白定着処理行なった後、水洗及び/又は安定処理を行なうことが一般的である。水洗処理においては、その処理槽にバクテリアが繁殖し、生成した浮遊物が感光材料に付着する等の問題が生じることがある。このような問題の解決策として、水洗水に特開昭61−131632号に記載のカルシウムイオン、マグネシウムイオンを低減させる方法を用いることができる。また、特開昭57−8542号に記載のイソチアゾロン化合物やサイアベンダゾール類、塩素化イソシアヌール酸ナトリウム等の塩素系殺菌剤、その他ベンゾトリアゾール等、堀口博著「防菌防黴剤の化学」、衛生技術会編「微生物の滅菌、殺菌、防黴技術」、日本防菌防黴学会編「防菌防黴剤事典」に記載の殺菌剤を用いることもある。
【0073】
【実施例】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、これらは本発明の範囲をなんら限定するものではない。
[実施例1]
(廃液の調整)
銀回収系廃液(カラー写真処理CN−16 の定着液、CN−16Qの漂白液と定着液の混合液、CP−20の漂白定着液、CP−23の漂白定着液、および水を各々4、1、3、2、2の体積比で混合した後銀回収処理を施したもの)と現像液系廃液(カラー写真処理CN−16、CN−16Q、CP−20、CP−23各々の現像液および水を各々4、1、3、2、2の体積比で混合したもの)とを体積比で1対1で混合した。このように調製された廃液のpHは7.5であった。この液のCODは45000mg/L、NH4 −Nは8000mg/Lであった。上記した各液CN−16、CN−16Q、CP−20、CP−23、はいずれも富士写真フイルム(株)製の処理液の商品名である。
【0074】
(廃液の処理)
本実施例においては以下A〜Dの処理を行った。
A.電気分解
純粋な白金でコーティングしたSHOWA金属チタン陽極((株)昭和製)と、交互に積層したチタン陰極からなる小型電解槽に、上記調整廃液1Lを、600mL/分の速度で電極に直角に循環させた。電流密度は3.5A/dm2 であった。電気分解を定電流電解方式で実施し、電流の強さを10Aに設定した。温度を25℃に維持した。開始時のpHは水酸化ナトリウム水溶液を添加することで9に調整し、24時間電気分解処理を行った。
【0075】
B.オゾン/紫外線照射
中心部に450W高圧水銀灯(UM−452型、安定器としてUM−453BA型使用、ウシオ製)が設置された容量2リットルの光化学反応用石英セルに1リットル分注入し、セル上部より差し込まれた2個のボールフィルター(孔径グレード2G、25mmφ、木下理化工業製)付ガラス管からオゾン発生装置(FM−300N、ニッコー金属製)で発生させたオゾンを100mg/hrの速度で通気しながら紫外光を照射し、10時間の処理を行なった。反応中の処理液は、pHスタット(FC−10東京理化製)を設置してpHが一定値に維持されるようにした。
B2.オゾン処理
B.の処理時に紫外線の照射を行わない以外は、Bと同じ条件と操作によってオゾン処理を行なった。
【0076】
C.生物処理
硝化処理:処理液中の沈殿物(硫化銀、鉄酸化物、担体硫黄など)を濾過除去した後、硝化菌をアクリルアミドゲルにより包括固定化したアクリルアミドゲルペレットを浮遊流動させた硝化槽を用いて処理した。該アクリルアミドゲルは「微生物固定化法による排水処理」須藤隆一著(産業用水調査会)196〜199頁に記載の方法で調製した。一片約3mmの立方体に成形した該アクリルアミドゲルを曝気槽容量の約10%添加し曝気槽内に浮遊流動させて用いた。硝化槽のpHは約7.5に調節しながら、滞留時間0.5日の連続式処理で行った。
硝化菌は、都市下水処理場の廃汚泥の硝化・脱窒槽処理用の硝化菌を馴養したものである。
【0077】
脱窒:上記硝化処理を施した液を、さらに粒状多孔性セラミクスを担体として充填した固定床式生物脱窒塔に通液し、(馴化したのち)滞留時間12時間で処理した。
好気性生物濾過:脱窒処理後の液に5%硫酸約4mlを加えてpH8に調整後、この液を好気的に保った生物濾過塔に通液させることにより、滞留時間を4時間として処理した。
使用した微生物は、富士写真フイルム(株)足柄工場の端末処理場の返送汚泥を本明細書で前記した方法で馴化させたものである。
前記調製済みの写真廃液試料に対して、上記の3通りの廃液処理手段を表記載のように組み合わせを変えて実施した。実施内容と処理後のCOD及びアンモニア性窒素(NH4 −Nと記す)の測定濃度値を表1に示した。COD及びアンモニア性窒素の測定方法は、いずれもJIS K0102 (工業排水の試験方法)記載の方法によった。
【0078】
(試験結果)
試験結果を表1に示す。表1の結果から電解酸化、オゾン処理、オゾン/紫外線照射、生物処理はいずれも単独ではCOD低減効果も不十分であるだけでなくアンモニア性窒素をほとんど除去できていない。また、これらを組み合わせた方法においても電解酸化を後段の処理に用いた処理では組み合わせることによる効果は見られない。しかし、電解酸化処理を行った後にオゾンによる物理化学的酸化処理を組み合わせた複合処理では、単独の効果からは予測できないレベルまでCODを除去できると同時にアンモニア性窒素の除去に対して予想外の大きな効果が見られることが分かる。
この効果は、電解酸化後のオゾン処理の際に紫外線照射を併用したときに効果が増大し、さらに電解酸化とオゾン酸化処理ののち、最終処理としてpHを9に調整して生物処理を加えることでいっそう大きなものとなり、ここに写真廃液の溶存CODとアンモニアを同時に除去できる有効な手段を提供することが可能となった。
【0079】
【表1】
【0080】
【発明の効果】
写真廃液に電解酸化処理を施したのち、物理化学的酸化処理を施すこと、さらには上記に加えて生物処理をも行なうことを特徴とする本発明の写真廃液の処理方法によって、高濃度のCOD寄与物質及びアンモニア性窒素成分を含んでいる写真廃液に対しても効果的にCOD及びアンモニア性窒素を低減できる。
【産業上の利用分野】
本発明は写真廃液の処理方法に関するもので、より具体的には写真処理廃液のCOD及びアンモニア性窒素を下水道排水基準を満たすレベルまで処理可能な実用的且つ経済的な処理方法に関する。とくに現像所において実施可能な写真廃液のCOD及びアンモニア性窒素低減処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
写真廃液は高濃度のBOD 、COD 、窒素、リンを含み、且つ、生物処理または化学処理によっても難分解性成分が多量に含まれている。写真廃液特にカラー現像液は種々の工業廃液の中でも最も処理が困難なものの1つであって、従来から多くの処理法が開示されているが、除去率・処理コストの両面で尚多くの問題がある。
【0003】
写真廃液処理に関して従来開示されている方法は、主として生物処理、化学処理及び物理処理である。生物処理法は、例えば活性汚泥法によるもので、通常廃液を10〜50倍に希釈したものを処理期間15〜50日でCOD の50〜80%、及びBOD の50〜80%が分解除去出来るとされている。
化学処理は、オゾン酸化法、過酸化水素−第一鉄塩法(フェントン法)、過硫酸酸化法、ハロゲン酸酸化法、電解酸化法等がある。オゾン酸化法は無機COD 成分の分解除去及び現像主剤である芳香族化合物のベンゼン環分解に有効であるが、有機BOD 成分を除去する効果は殆どない。フェントン法は有機・無機成分いずれに対しても効果があるが、処理コストが高い点に問題がある。一般に化学処理によるCOD の除去率は50%程度とされている。
【0004】
物理処理には高圧加熱法、噴霧焼却法、蒸発乾燥法等がある。写真廃液中には多量のハロゲン化物イオンが含まれているので、反応装置の応力腐食が問題となる。また、熱回収のための熱交換器のスケール、残渣、廃ガス等の処理にも問題がある。
【0005】
これらの開示された写真廃液処理手段は、難生分解性のものも含む無機、有機の多種の化合物が混在した写真処理廃液に対しては、COD値の低減を実現してはいるが、排水基準を満たすレベルまで低減させるにはなお酸化活性が十分ではない。そのため、上記した処理手段を組み合わせた複合処理、とりわけ酸化処理と生物処理を組み合わせた処理方法が提示されている。
【0006】
例えば、特許文献1には、過酸化水素酸化処理(フェントン法)と生物処理、特許文献2に電解酸化処理と生物処理、また特許文献3にオゾンガスによる光化学酸化と生物処理、特許文献4には、活性汚泥処理の被処理水を濾別して電解処理、などのそれぞれ組み合わせにより、写真廃液のBOD及びCODの低減できることが開示されている。しかしながら、特許文献1及び2に記載の生物処理は通常行われる生物処理であって、微生物が活動可能となる状態にするには大量の水希釈を必要とし、したがって装置が大型で、広い設置スペースも必要となり、かつ特許文献2では、生物処理を2度行う不利も伴う。また、特許文献3に開示された方法は、特殊な微生物(海洋微生物)を用いなければならないという問題を含んでいる。特許文献4の方法は、限外ろ過による返送汚泥量の引抜き操作を必要としていて現像所では実施が困難であるなどのそれぞれ欠点も含んでいる。
【0007】
また、特許文献5には、写真廃液にオゾンによる酸化処理を施した後電解酸化処理(2段電解も含む)を施すCOD低減方法が開示されている。この特許文献によれば、COD低減率は50%程度であり、この方法でも日本における下水道法の一律排水基準を満たすことはできない。
【0008】
一方、写真廃水中のアンモニア性窒素の電解による除去法に関しては、特許文献6に塩素イオン存在下、塩基性条件でアンモニア性窒素含有廃水の電解酸化を行い、発生する次亜塩素酸イオンによってアンモニア性窒素を硝酸化して除去する方法が記載されている。しかしながら、この方法は、化学量論以上の塩素化合物を必要とすることと処理済み排水が強酸化性となることのために写真排水に適用することは実際的でない。
【0009】
以上に述べたように従来開示されているCOD低減を目的とする単独あるいは複合処理方法も、またアンモニア性窒素除去を目的とする電解酸化方法も、いずれも対象となるCOD又はアンモニア性窒素の分解能力、排出環境への影響、作業の容易さ、処理スペース、設備や処理のコストなどの何らかの点で実用上の制約がある。したがって、写真廃液に対して、BOD及びCODのいずれをも排水基準値以下に低減させ得る、かつ実用的な、特に現像所においても実施できる廃液処理手段が強く望まれている。
【0010】
この出願の発明に関連する前記の先行技術には、次ぎの文献がある。
【特許文献1】
特開平3−262594号公報
【特許文献2】
特開平4−235786号公報
【特許文献3】
特開平5−96298号公報
【特許文献4】
特開平6−320184号公報
【特許文献5】
特開平10−290987号公報
【特許文献6】
特開平7−100466号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記した背景からなされたものであり、その目的は、高濃度のCOD寄与物質及びアンモニア性窒素成分を含んでいる写真廃液に対しても下水道への排出基準を満たすレベルまで効果的にCOD及びアンモニア性窒素を低減できる写真廃液処理方法を提示することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的の解決方法を見出すために、写真廃液の酸化・無害化法を鋭意研究する中で、とくに電解酸化中のCOD寄与物質及びアンモニア性窒素成分の被酸化挙動や性質について検討を重ねたところ、これらは電解酸化に続いて物理化学的酸化を行なうときには相乗効果による顕著な分解が進行することが判明し、この発見に基づいて本発明に到達することができた。すなわち、本発明は以下の通りである。
【0013】
・ 写真廃液に電解酸化処理を施したのち、物理化学的酸化処理を施すことを特徴とする写真廃液の処理方法。
ここにいう物理化学的酸化処理とは、化学酸化処理の中で、酸化剤が処理済み廃液中に水、酸素、水素、炭酸ガス又は炭酸イオン以外の反応性生物として残ることのない処理を指す。
(2)該廃液のpHが9〜12のもとで物理化学的酸化処理を施すことを特徴とする上記(1)に記載の写真廃液の処理方法。
(3)物理化学的酸化処理がオゾンによる酸化処理であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の写真廃液の処理方法。
(4)オゾンによる酸化処理を紫外線の照射のもとで行うことを特徴とする上記(3)に記載の写真廃液の処理方法。
(5)電解酸化処理及び物理化学的酸化処理を施したのち、さらに生物処理を施すことを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の写真廃液の処理方法。
【0014】
本発明の写真廃液の処理方法の要諦は、写真廃液に電解酸化を施した後に物理化学的酸化を施したときに発現する顕著な相乗作用を利用したことにある。
従来、写真廃液を電解酸化したときのCODやアンモニア性窒素の低減効果は、直接酸化による直接の低減作用のみか、これに電解によって生じる化学的酸化剤(特開平7−323290号記載の過硫酸や特開平7−100466号記載の次亜塩素酸)による低減作用が加わると考えられており、これら両作用が加わる後者の場合でも、CODやアンモニア性窒素の低減作用は、排水基準を満たすには不十分であったことを考えると、電解酸化手段と化学酸化手段とを組み合わせた本発明の方法がCODとアンモニア性窒素のいずれにおいても排水基準を満たすことができることは予想外のことである。
この相乗効果は、COD寄与物質及びアンモニア性窒素成分の物理化学的酸化を阻害する、写真廃液中の成分が電解酸化によって除去されるためと推定している。
【0015】
以下、本発明をさらに具体的に詳述する。
なお、本明細書では「写真処理廃液」とその簡略表現である「写真廃液」は、同義である。
【0016】
【発明の実施の形態】
[被処理廃液]
本発明の実施の形態の説明に先だって、発明の対象である写真処理廃液について述べる。写真処理廃液は、カラー写真或いはモノクローム写真の現像廃液の他、定着廃液または写真製版等写真工業で発生した多くの種類の廃液が含まれている。定着廃液は溶存している銀を回収した残液が処理の対象となる。通常これら種々の写真処理工程からの廃液は混合された状態で回収されて、処理される。
写真廃液を構成する現像廃液は、現像処理の各工程から排出された廃液であって、処理中に感光材料から溶出した例えばゼラチンや感光色素などの成分、処理中に生じた反応生成物、及び処理液処方に含まれて消費されなかった構成薬品(処理液処方の詳細は後述する)などを含んでいる廃液である。
【0017】
したがって、現像廃液には、現像主薬及びその酸化生成物、アルカリ化合物及び緩衝剤、亜硫酸塩やヒドロキシルアミン誘導体などから選択される補恒剤、アルカリハライドなどを主体としており、定着廃液は、チオ硫酸のアンモニウム塩、ナトリウム塩及び/又は亜硫酸のアンモニウム塩及び/又はナトリウム塩、アルカリハライドなどを主体としており、漂白廃液は、ポリアミノポリカルボン酸鉄(III)錯塩などの漂白剤とそれに由来する反応生成物、アルカリハライド(再ハロゲン化剤)、緩衝塩などを主体としており、漂白定着廃液は、定着廃液と漂白廃液に含まれるものとほぼ同様の成分を主体としており、その他の各工程から排出される廃液もそれらの工程液の機能性化合物とそれに由来する化合物を含有している。したがって、処理される写真廃液の成分は、現像液由来の成分や漂白液・定着液・漂白定着液由来の成分などが感光材料溶出物や処理中の反応生成物と混在しており、例えば緩衝剤(炭酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、四ホウ酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩など)、発色現像主薬、亜硫酸塩、ヒドロキシルアミン塩、炭酸塩、硬水軟化剤、アルキレングリコール類、ベンジルアルコール類、界面活性剤(アルキルホスホン酸、アリールホスホン酸、脂肪酸カルボン酸、芳香族カルボン酸等)酸化剤(鉄(III)のEDTA錯塩、1,3−ジアミノ−プロパン四酢酸錯塩など)、ハロゲン化物(臭化アルカリ、臭化アンモニウムなど)、チオ硫酸塩(ナトリウム塩、アンモニウム塩)、酢酸塩など多岐に亘る化学成分を含んでいて、この多様性が効果的な廃液処理手段を見出すことを困難にしている。
【0018】
写真廃液の組成は、処理の種類及びその処理の各工程からの廃液の混合比率によりかなり変動するが、おおよそCOD 30,000〜50,000 mg/l、BOD 5,000 〜15,000 mg/l、TOC(Total Organic Carbon) 10,000〜25,000 mg/l、ケルダール窒素 10,000 〜15,000 mg/l、トータル燐 100〜500mg/l の範囲である。COD:BOD:TOC の比率は概ね 4:1:1.5でCOD が高い特徴があり、またC:N:P の元素比率はほぼ 100:100:1でN の含有率が高い特徴がある。
【0019】
[廃液処理工程]
<電解酸化処理>
電解酸化法について述べる。写真廃液中には、一般的に若干量のハロゲン化イオンが存在するので電解により塩素(ハロゲン)イオンは陽極で酸化されて更に水と反応して次亜塩素酸(次亜ハロゲン酸)イオンが生成するが、廃液中の高濃度のCOD寄与成分やアンモニア性窒素化合物の量には化学量論的に到底及ばない。その反面、写真廃液は高い腐食性をもっているので、電解槽はこれらの成分に耐える耐食性材料である白金、フェライト、ステンレス、酸化皮膜が速やかに形成される鉄、硬質プラスチック等を選択する必要がある。
【0020】
陽極は、酸化され難い耐蝕材質である白金、ステンレス、カーボン(とくにグラファイトや基板上に層形成されたダイヤモンド)、チタン、酸化皮膜が速やかに形成される鉄等が好ましい。
陰極は、電解酸化反応には直接関与しないが、廃液に対して不活性な材質である白金、ステンレス、チタン、カーボン等が好ましい。
例えば、陽極にはステンレス、ダイヤモンド層、酸化皮膜が速やかに形成される鉄を、陰極にはステンレス、チタンなどの電極が好ましい。また、反応液中には多量の懸濁成分が含まれているため、電極への懸濁物の沈澱を防止して均一な酸化反応を起こさせ、電流効率を高めるためには回転電極を用いることも好ましい。
【0021】
本発明においては、電解槽の構造は公知の各種の構成で用いることができる。すなわち、単一室セルであってもよく、又は陽極と陰極が膜で仕切られた分割セルであってもよい。最も簡単な実施態様は、単一室セルである。単一室セルでは、陽極と陰極を隔てるバリヤーがなく、したがって溶質は陽極と陰極間を移動するのに制限を受けない。このような単一室方式は、一般的には陽極で酸化された成分がその後陰極で還元されるという可能性を持っているが、写真廃液成分の電気的酸化分解反応の場合は、酸化種の大半は非可逆的な酸化を受けるのでそのリスクの可能性は殆どない。
【0022】
2室セルにおいては、イオン交換膜、ミクロろ過膜、半透膜、多孔性膜例えば多孔性セラミックスなどの通電性隔膜を陽極と陰極の間に挿入する。イオン交換膜はあるタイプのイオン種のみを陽極液から陰極液へ又はその逆方向へ通過させることができる。膜の機能は、陽極液と陰極液が混合することなく電気的中性を保持することである。また、適当な膜を用いれば、その膜を通過して移動するイオンの性質を制御することができる。例えば、陰極室でチオ硫酸イオンや亜硫酸イオンが還元されて生成した硫黄イオンにとって硫化銀が生成して沈殿し、陰極室内で捕集する本発明の好ましい態様が可能である。なかでもイオン交換膜、半透膜、セラミックスなどが両極を分ける隔膜として好ましい。
【0023】
電解酸化処理の温度は常温或いはこれよりやや高い温度が好ましく、また、電圧は5.0 〜8.0 V 、電流密度は、0.5〜100 A/dm2が好ましく、より好ましくは5 〜50 A/dm2がよい。
また、電解は回分法でも連続法の何れでもよい。回分式の好ましい電圧印加方式としては、電解初期(COD低減目標値の2〜10%相当の間)は4〜6A/dm2の比較的低電流密度を適用し、電解の進行と共に電流密度を高めてCOD低減目標値の10%相当程度に電解した後は、定常的な電流密度、例えば12〜20A/dm2 の電流密度を適用することによって電気分解を続けるのも好ましい態様である。
【0024】
写真廃液には、写真処理液由来の界面活性剤が含まれているが、電解酸化中の発泡を抑制するために、さらにノニオン性界面活性剤のような消泡剤を使用することができる。例えば、BASF社によって上市されているPluronic(登録商標)シリーズからのもの、好ましくはPluronic−31R1Polyol(登録商標)(メタノール溶液のポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドとの序列コポリマー)を用いてもよい。しかし、消泡剤を使用する場合、泡の形成を避けるために必要な最低量で使用する。例えば、Pluronic−31R1Polyol(登録商標)消泡剤ではその添加量は、0.15mL/処理廃液L以下でよい。
電解酸化処理の程度にもよるが、好ましい条件ではこの処理過程で廃液中のCOD が10〜60%、多くの場合10〜40%まで低減される。しかしながら、電解酸化処理の大きな利点は、COD の低減効果以上に、前記したように電解酸化処理後の廃液は物理化学的酸化処理による分解率が向上することにある。実際に、物理化学的酸化処理では分解性がない現像主薬成分、EDTA、Fe+3−EDTA錯塩等の化合物の大部分が電解酸化処理によって物理化学的に酸化分解可能な物質に変化する。
【0025】
本発明の廃水処理方法における電解酸化処理では、高速度攪拌の電解酸化処理装置を用いると効果が増加する。本発明に適用される高速度電解酸化処理装置には、振動板を備えた攪拌装置を用いて電解液を振動板の振動のよって攪拌させて電解酸化を行なう処理方式も好ましく、振動周波数を適当に選択することによって、極めて高い電解酸化速度とCOD低減効果が得られる。
【0026】
本発明に好ましく用いられる攪拌装置の例としては、振動板を電動機と結合させて電動機の回転を振動板の振動に変換させ、その振動によって電解液に攪拌作用を及ぼさせる方式のものが挙げられる。その振動周波数は、10cycle/sec以上100cycle/sec以下であり、好ましくは15cycle/sec以上80cycle/sec以下であり、より好ましくは20cycle/sec以上60cycle/sec以下である。
【0027】
また、前記の好ましい攪拌装置は、少なくとも1個の振動板を有するものであるが、好ましくは複数個の振動板を配列させた構成である。複数個の振動板からなる攪拌装置の場合は、振動板の配列の形態は、好ましくは振動板の板面が一平面内になるように一列に並べた形態、振動板を板面を並行にして板面方向に直角方向に重ね合わせた多段式の形態、あるいは振動板の板面同士は並行であるが、板面が重ね方向と斜めになるように重ね合わせた斜め多段式形態のいずれであってもよいが、いずれの場合も各振動板の間に液流が確保されるように振動板同士は互いに一定間隔を置いて配列される。その間隔は、1〜200mmであり、好ましくは2〜150mm、より好ましくは、3〜100mmである。
【0028】
また、振動板の形状は矩形、楕円形、梯形、正方形、矩形又は正方形の各稜に丸みを持たせた形のいずれでもよいが、好ましくは矩形又はその稜に丸みを与えた形である。振動板のサイズは、電解酸化槽の大きさに応じて適宜選択することができる。目安としては振動板の片面の面積が電解槽断面積の1/1000〜1/5であり、好ましくは1/50〜1/5である。その厚みは振動板が金属板の場合はその長辺(長径)の1/100〜1/5であり、好ましくは1/10〜1/20であり、振動板が樹脂板の場合は、1/50〜1/5であり、好ましくは1/20〜1/10である。
【0029】
<物理化学的酸化処理>
上記の電解酸化された写真廃液には、物理化学的酸化処理が施される。
本明細書において、物理化学的酸化処理は、化学酸化処理の中で、酸化剤が処理済み廃液中に水、酸素、水素、炭酸ガス又は炭酸イオン以外の反応性生物として残ることのない処理を指す。具体的には、酸素、オゾン、過酸化水素、過炭酸から選択される酸化剤による酸化処理、これらの酸化剤存在下での紫外線などの活性光照射処理、電解酸化処理、及び活性光照射を伴う電解酸化処理が挙げられる。
好ましい物理化学的酸化処理は、電解酸化処理、オゾン酸化処理、過酸化水素酸化処理、及びこれらと紫外線照射の組み合わせ処理である。特に好ましい処理は、電解酸化処理及びオゾンと紫外線照射の組み合わせ処理である。
【0030】
物理化学的酸化は、主にヒドロキシラジカル、パーヒドロキシラジカル、活性酸素基などの酸化作用によって進行すると考えられ、廃液に物理化学的酸化を施すに当たって、予めこれらの酸化性基の作用に好都合なpH領域に調整することが酸化処理を効率的に進めるのに好都合である。好ましいpH領域は、8〜12である。
【0031】
オゾン曝気処理について述べる。
オゾン酸化法は、オゾナイザー(オゾン発生装置)から導かれるオゾン含有空気を写真廃液に注入して行われる。この際にオゾン含有空気の注入とともに紫外光による照射処理を行なうことが好ましい。注入方法の一態様としては、紫外光を効率良く透過する容器に処理水を導びき入れオゾンを容器底部に設けたガラスボールフィルター(気孔径40〜50μm)を通して送気する形式が挙げられる。
【0032】
オゾンを発生させるには無声放電を行わせたり、コロナ放電を利用したりあるいは電解反応を利用するなどの方法が採られているが、本発明に用いるオゾン発生装置は、いずれであっても特に制約はなく通常市販されているオゾン発生装置から選択して使用することができる。その中では無声放電を利用する方法が好ましい。無声放電は2つの電極の間に誘電体を介して交流高電圧をかけたとき、その間隙に起る放電現象を指すもので、放電の際にその空間に介在する酸素の一部がオゾンに変化する。誘電体は普通ガラスを用い、空間々隙は数mm、電圧は交流50〜500サイクル数千ボルトから場合によっては2万ボルトぐらいまでが使われる。
【0033】
オゾン発生装置は、平板型の相対する電極群からなるものや、筒状のオゾン発生管を縦型又は横型に配置したものなどがあるが、本発明にはそのいずれも使用できる。また原料は酸素、空気いずれでもよいが、本発明においては空気を使用する方が安価で好ましい。
【0034】
このオゾン送気と同時に紫外光を照射するとオゾンが活性化されて酸化効率が向上する。紫外光は容器底部または内部または周囲に設置した水銀ランプ等の光源より照射される。水銀ランプはランプ内部の水銀蒸気圧により低圧、高圧、超高圧に分類されていてそれぞれ遠紫外の輝線,近遠紫外の輝線,紫外連続スペクトルを発するが、本発明の目的にはどの型のものでも使用できるが低圧または高圧が好ましく、低圧が特に好ましい。そのランプの電力量は、COD値と廃液成分の分解性によって異なるが、目安として廃液量100kgに対して5WHrから600WHrが好ましく、中でも20WHrから500WHrがより好ましい。
【0035】
オゾン酸化処理装置からの排気ガスは、オゾン捕集液で処理してオゾンを吸収除去してから排出する方法、触媒によって分解除去する方法などがあるが、触媒による除去が好ましい。触媒としては、活性炭や金属酸化物などを用いる事ができるが、触媒の損失を伴わない点で、金属酸化物が好ましい。オゾンガスによって排水基準を満たすまで分解するのに要する通気量は、化学両論的COD量の1.1〜3倍、好ましくは1.3〜2倍であるので、通気したオゾン含有ガスは、そのまま排気してもよいが、循環使用して利用率を高めるのが好ましい。
オゾンガス酸化により分解される適当な量は、廃液の組成や濃度によって、またこの段階で排水基準を満たすようにするか生物処理を後続させるかによって、適宜選択されるが、生物処理を伴わないときは、電解酸化処理済み廃液のCOD及びアンモニア性窒素が排水基準以下になるまでの量であり、後者の場合は電解酸化処理の電解量と同じく廃液中のCOD が10〜40%まで,多くは10〜20%までに低減される程度が適切である。
【0036】
上記のオゾンおよび紫外光による処理については水処理技術第32巻1号3頁(1991)、工業用水第349号15頁(1987)、ACS Symposium Ser.(Am. Chem. Soc.) 第259号195頁(1984)などに記載されている。
【0037】
<生物処理>
廃液の希釈
物理化学的酸化処理が施された写真廃液の生分解を行なうには、直接生物処理することも可能な場合もあるが、廃液を微生物が生存して活動するのに好ましい環境、とくに塩濃度が低い環境にするために、好ましくは生物処理に先だって希釈倍率が10〜50程度の希釈が行なわれる。しかし、本発明の方法では、10〜50倍程度の希釈倍率でも良いが、希釈倍率を10以下、あるいは5以下、さらには希釈することなく行なうことも可能である。低希釈条件とすれば、現像所において処理することも可能となる。
【0038】
生物処理の形態
本発明の一つの態様としては、上記のように電解酸化と物理化学的酸化処理を施した写真廃液に、さらに生物処理を行う態様が好ましい態様として挙げられる。この方法では、電解酸化と物理化学的酸化処理の過程で十分に生分解性の良い化合物にまで分解された液を生物処理の対象とするので、処理は極めて円滑に行われる。処理の方法としては好気性処理法、嫌気性処理法とも特に限定されるものではなく、またそれらの組み合わせでも良い。具体的な処理方法としては活性汚泥法、嫌気性消化法もしくはスポンジ担体法等の微生物浮遊懸濁法、生物濾過法、浸漬濾床法、流動床法、回転円板法もしくは散水濾床法等の生物膜法または自己増粒法等を使用することができる。生物膜法での担体としては、例えば砂利、砂、軽石、アンスラサイト、多孔性セラミックス、活性炭、スポンジ、キトサン(粒状)、ひも状担体、プラスチック、ハニカム状担体、波状担体、網状担体等の1種または2種以上を使用することができる。生物膜法で使われる上記の担体は製造元により多種多様であり、微生物が付着して生物膜を形成するものであれば種類を問わない。また上記の処理は連続式であっても回分式であっても良い。生物処理の際、窒素、リン等の栄養塩類が不足する場合は適宜加える必要がある。加え方は生物処理槽へ直接でもよいし、生物処理槽に入る前で加えてもよい。窒素形態としては生物が利用できるものならば何でもよくアンモニウム塩又は尿素などがあり、リンの形態としては、生物が利用できるものなら何でもよく、例えばK2 HPO4、KH2 PO4 、Na2 HPO4 等を挙げることができる。窒素の濃度は好ましくはBODの1から5%、リンの濃度は好ましくは0.5%から3%がよい。また生物処理の際のpHは6.0から9.0が好ましい。
【0039】
これらの処理により電解酸化と物理化学的酸化処理において生成したギ酸や酢酸等の生分解性の良い低級脂肪酸は微生物の作用によってすみやかに二酸化炭素や水等に分解される。これにより液中のCOD、BOD負荷となる成分はほぼ完全に消滅し極めて良好な無害化が達成される。本工程における生物処理は生物の活性を利用して処理を行うので、要するエネルギーは極めて小さい。したがって電解酸化と物理化学的酸化において適当な反応時間(あるいはCOD低減率)を選択することにより高無害化度と省エネルギーを両立させた処理を行うことができる。
また、電解酸化と物理化学的酸化処理後にも残留するアンモニア性窒素(途中まで酸化分解したものも含む)には、好気性処理と嫌気性処理、嫌気性処理と好気性処理を適宜組み合わせて脱窒処理を行うことにより、除去することができる。
好気性・嫌気性同時処理の具体的方法としては、生物濾過法があり、例えば散水濾床法、好気性固定床法、好気性流動床法が用いられる。生物濾過法は濾床、固定床、流動床または円板が微生物の担体となりその上に形成される生物膜によって廃水が処理される方法である。
【0040】
担体上に形成される生物膜は担体に近づく程嫌気的な雰囲気になっていることが知られている。この生物膜内部の嫌気的な雰囲気を本発明の対象となる廃液の脱窒に用いることを検討したところ、生物処理装置内液の溶存酸素濃度を0.3〜3mg/リットルにすれば硫化水素の発生なく脱窒が行なわれることを見い出した。
【0041】
即ち、好気性処理槽中に局部的にできた嫌気的な雰囲気を積極的に利用することによって目的を達成することができる。なお生物濾過に用いられる担体としては、砂利、砂、活性炭、アンスラサイト、プラスチック材等の粒状媒体の1種または2種以上、またはプラスチックろ材を用いることができる。
【0042】
このように好気性処理槽中の一部分に嫌気的雰囲気を作ることは活性汚泥処理における曝気槽内においても可能である。即ち、曝気槽内を自由に移動できるような微生物用の担体を曝気槽内に添加した状態で、曝気槽内の溶存酸素濃度を0.3〜3mg/リットル、好ましくは0.5〜2mg/リットル、更に好ましくは0.5〜1mg/リットルにすることにより、担体内の生物膜内部が嫌気的雰囲気になり脱窒が行なわれる。脱窒のための水素源としては廃液中のCOD成分が用いられるが、COD成分のみでは水素源が不足する場合はメタノールなどの有機物を加えてもよい。
【0043】
これらの生物処理のより具体的方法については、「活性汚泥法の維持管理技術」桜井敏郎、須藤隆一著(化学技術開発センター刊)、「新しい活性汚泥法」橋本奨、須藤隆一著(産業用水調査会刊)等に記載されている。
【0044】
以上の電解酸化と物理化学的酸化又はさらに生物処理の追加によって廃液を環境への負荷が小さい極めて良好な処理済み排水とすることができ、しかも一連のプロセスを継続して安定に稼働させることができる。
現像所において廃液処理を行うには、廃液流入系と汚泥の分離・返送系と処理済み廃液排出系を備えた曝気槽からなるコンパクトなバイオリアクターが好ましい。これらの生物処理のより具体的方法については「廃水処理プロセス、設計理論と実験法」W.W.エッケンフェルダー、D.L.フォード著、松井三郎訳 技報堂出版および「生物学的水処理技術と装置」、化学工学協会編、培風館に記載されている。
本発明に特に好ましい生物処理方法は、微生物を担体に 担持・固定化させた形態で行う処理方法である。固定化処理の中でも、包括処理が特に好ましい。
【0045】
固定化処理のための担持・固定化方法、使用する担体、微生物などについて説明する。
本発明の微生物固定化担体の製造方法において、微生物の 担持・固定化方法としては、担体から生分解菌が流出しないように固定される方法ならばその種類、形式を問わない。具体的な 担持・固定化法としては、例えば、微生物が付着して生物膜を形成するような担体を用いる付着生物膜法、担体と培地を混合して微生物を培養する担持培養法、水不溶性の担体に微生物を結合させる担体結合法、減圧下で担体の孔隙内に微生物を封入する方法、2個以上の官能基を持つ試薬によって菌体内に架橋を形成させて固定化する方法、微生物を高分子のゲル内部や皮膜などに閉じ込める包括固定化法、さらに結合手段により共有結合法、物理的吸着法、イオン結合法及び生化学的特異結合法などと分類される担体結合法が知られているが、本発明には、これらの公知の方法を用いることができる。中でも、付着生物膜法及び包括固定化法が好ましく,とりわけ包括固定化法が優れている。
【0046】
付着微生物膜法の特徴は、微生物を高濃度化することができ、処理効率を向上させることができる。また、通常は系外に洗い出されてしまうような増殖速度が遅い菌を系内に留めることができる。また、微生物が安定して棲息できる状態に保てることも特徴としてあげられる。
【0047】
包括固定化法の特徴は、菌体を高濃度に保持できるため、処理効率を向上させることができ、増殖の遅い菌を固定化できる。また、pH、温度等の条件変化に対する耐性が広く、高負荷状態にも耐えることができる。包括固定化法としては、アクリルアミド法、寒天−アクリルアミド法、PVA−ホウ酸法、PVA−冷凍法、光硬化性樹脂法、アクリル系合成高分子樹脂法、ポリアクリル酸ソーダ法、アルギン酸ナトリウム法、K−カラギーナン法等、微生物を閉じ込めることができ、系の中で微生物の活性を維持しつつ、物理的強度が大きく長時間の使用に耐え得るものならば種類を問わない。
【0048】
包括固定化法の代表例としてアクリルアミド法の場合の微生物固定化ゲルの調製法について説明する。固定化ゲルは、架橋剤(例えば、N,N’−メチレンビスアクリルアミド)を含有したアクリルアミドモノマー溶液と細菌(MLSS 20,000ppm程度の濃縮菌体)とを懸濁し、重合促進剤(例えば、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン)、重合開始剤(例えば、過硫酸カリウム)を添加し、3mm径の塩化ビニル製チューブ等の成型形に入れ、20℃で重合し、重合終了後、成型形から押し出し、一定の長さに切断して得られる。固定化ゲルの表面の細孔は、細菌より小さいため、包括固定化した細菌はリークしにくく、内部で増殖し、自己分解する。廃液中の汚染成分のみが細孔よりゲル内部に入り込み、内部の細菌により処理される。
【0049】
これらの固定化法のより具体的な方法については、「生物触媒としての微生物」100頁、福井三郎著(共立出版、1979),「微生物固定化法による排水処理」須藤隆一編著(産業用水調査会)、稲森悠平の「生物膜法による排水処理の高度・効率化の動向」,水質汚濁研究, 13巻,9号(1990),563−574頁、稲森悠平らの「高度水処理技術開発の動向・課題・展望」,用水と廃水, 34巻,10号(1992),829−835頁 などに記載されている。
【0050】
次ぎに、微生物担持用担体としては、微生物の活性を維持しつつ、物理的強度が大きく長時間の使用に耐え得るものならば、いずれの公知材料をも使用できるが、有用微生物の効果的な担持という点から、担体表面に微生物が強く吸着するもの、微生物を微小孔隙中へ侵入させることにより保持力を高めることができるような多孔性のもの、ミクロ粒子が凝集して実質的に吸着あるいは吸蔵表面を増大させたものが望ましい。
また、膨潤性の担体材料は、微生物が利用できる空間が広い点では、好ましい材料ではあるが、微生物を 担持・固定化した後、長期に亘って安定に使用するためには、物理的な強度が必要であり、その点では非膨潤性の担体材料を用いることが好ましい。非膨潤性であっても後述するようなサイズ効果や形状効果を利用して利用空間を維持させることができる。
また、被処理水と担体とが激しく相対運動する微生物処理環境においては、担体の物理的強度が特に重要であり、さらに活性汚泥槽のように担持担体が流動する流動床の場合には、比重の制御ができることが必要で、シリカなどの比重制御剤を用いて比重値を約1.1程度に調整するので、この点からも物理的強度が大きいことが好ましい。
【0051】
これらの理由から、本発明に好ましい担持用担体としては、具体的には、セルロース、デキストラン、アガロースのような多糖類;コラーゲン、ゼラチン、アルブミンなどの不活化蛋白質;イオン交換樹脂、ポリビニルクロライドのような合成高分子化合物;セラミックスや多孔性ガラスなどの無機物;寒天、アルギン酸、カラギーナンなどの天然炭水化物;さらにはセルロースアセテート、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、エポキシ樹脂、光硬化性樹脂、ポリエステル、ポリスチレン、ポリウレタンなどがあげられる。また、リグニン、デンプン、キチン、キトサン、濾紙、木片等などの天然物も利用できる。
中でも、上記した好ましい要件に特に適合する材料としてポリプロピレン及びポリエチレンで代表されるポリオレフィン系の合成高分子化合物材料が好ましい。
これらの材料は、市販されており、例えばバイオステージ(ポリプロピレン製、筒中プラスチック工業(株)製)、ゼビオバイオチューブ(ポリエチレン製、ゼビオプラスト(株)製)などを挙げることが出来る。
【0052】
好ましい担体の形状としては、ほぼ球状、ほぼ立方体状、ほぼ直方体状、円筒状あるいはチューブ状であり、なかでも製造し易いほぼ球状、あるいは比面積を大きくできるほぼ直方体状又はチューブ状であることが好ましい。担体の製造方法としては、既知の任意の方法を用いることができる。例えば微生物と担体物質(又はその前駆体)の混合溶液を不溶解性液体中に滴下して液体中で液滴を固化させて微生物 担持担体粒子の分散物を作る方法、微生物と担体物質(又はその前駆体)の混合溶液を低温化、ゲル化剤や固化剤の添加などの方法で固化させた後、固化体を適当なサイズに裁断して微生物を 担持した直方体粒子を得る方法、微生物と担体物質(又はその前駆体)の混合溶液を押し出しノズルから不溶解性液体中に注入して液体中で固化させて微生物 担持担体の糸状の固化物を得てこれを適当に裁断して円筒状粒子を作る方法、またこのときの押し出し成形のダイを環状として円環状(チューブ状)の微生物 担持担体粒子を得る方法を挙げることができる。
【0053】
担体粒子の大きさは、外径0.1〜70mm、好ましくは0.5〜40mm、より好ましくは1.0〜10mmであり、粒子サイズが大きければ比面積が少なくなって非効率となり、小さいとすぐに分解・消滅して 担持体の意味をなさなくなる。したがって、適用対象に応じて好ましいサイズが選択される。
【0054】
本発明の方法では、固定化される微生物としては一般的に難分解性である写真廃液に対しても通常用いられている活性汚泥を用いることができる。馴化処理が行われるので、活性汚泥中の微生物の履歴・由来などは問わない。
【0055】
本発明では、微生物を 担持・固定化する際に、該微生物用の栄養物を供給してやることが、 担持・固定化される微生物の増殖を促進して速やかに該微生物が優先的に生育する環境が確立されるので、好ましい。また、廃液処理装置の稼動中に微生物の活性が低下した場合にも栄養物の供給により賦活してやることが好ましい。
栄養物としては、炭素、窒素、リンを含むものが好ましく、微生物の生育に適した培養液などが挙げられる。培養液としては、例えば、肉汁、酵母エキス、麦芽エキス、バクトペプトン、グルコース、無機塩類、ミネラルなどが適当な割合で混合したものが良く用いられているが、微生物の種類に応じて適当な配合比のものを選べば良い。また、本発明に用いる栄養物としては、上記の培養液以外にも有機、無機栄養物を適当に含むものであれば、どのようなものでも利用可能である。例えば、自然界より採取した、あるいは培養を加えた任意の微生物を乾燥、粉砕し、粉砕微粉体を栄養物として用いてもよい。
活性汚泥の馴化が進むに伴い、あるいは活性汚泥の活性の回復に伴い、栄養物の供給を減らして物理化学的酸化処理済みの廃液量を増やして、栄養物をごく僅か又は殆ど供給しない定常処理に近づける。
【0056】
その他の調整条件
微生物処理の温度は、微生物の活動に適した温度であることが必要で、3〜50℃、好ましくは10〜45℃、より好ましくは18〜40℃である。この温度に維持するためには、状況に応じて温水を撒布又は注入するなどの加温を行なってもよい。また、寒冷地などでは、熱伝導体をバイオリアクターに装備して熱源からの伝熱あるいは直接の通電によって加温することもできる。熱伝導体としては、金属、セラミックスなど熱を伝えることができる物質であれば材質は問わない。
【0057】
被処理廃水のpHは、通常2〜10であり、好ましくは3〜9、より好ましくは4〜8.5であって、微生物の至適pHであれば最も好ましい。
【0058】
[写真処理液]
写真処理液は、カラー感光材料と黒白感光材料の処理に用いられるが、処理されるカラー感光材料としてはカラーペーパー、カラー反転ペーパー、撮影用カラーネガフィルム、カラー反転フィルム、映画用ネガもしくはポジフィルム、直接ポジカラー感光材料などを挙げることができ、黒白感光材料としては、Xレイフィルム、印刷用感光材料、マイクロフィルム、撮影用黒白フィルムなどを挙げることができる。
【0059】
本発明に適用される写真処理廃液は、写真処理液成分を主成分としているが、写真処理廃液には、写真処理液に添加されている素材のほか写真処理過程で生成した現像主薬の酸化体、硫酸塩、ハライドなどの反応生成物や、感光材料から溶け出した微量のゼラチン、感光色素、界面活性剤などの成分が含まれている。
【0060】
写真処理液にはカラー処理液、黒白処理液、製版作業に伴う減力液、現像処理タンク洗浄液などがあり、黒白現像液、カラー現像液、定着液、漂白液、漂白定着液、画像安定化液などが挙げられる。
【0061】
カラー現像液は、通常、芳香族第一級アミンカラー現像主薬を主成分として含有する。それは主にp−フェニレンジアミン誘導体であり、代表例はN,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン、2−アミノ−5−ジエチルアミノトルエン、2−メチル−4−〔N−エチル−N−(β−ヒドロキシエチル)アミノ〕アニリン、N−エチル−N−(β−メタンスルホンアミドエチル)−3−メチル−4−アミノアニリンである。また、これらのp−フェニレンジアミン誘導体は硫酸塩、塩酸塩、亜硫酸塩、p−トルエンスルホン酸塩などの塩である。該芳香族第一級アミン現像主薬の含有量は現像液1リットル当り約0.5g〜約10gの範囲である。
【0062】
また黒白現像液中には、1−フェニル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4−ヒドロキシメチル−4−メチル−3−ピラゾリドン、N−メチル−p−アミノフェノール及びその硫酸塩、ヒドロキノン及びそのスルホン酸塩などが含まれている。
【0063】
カラー及び黒白現像液には保恒剤として、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウム、メタ亜硫酸ナトリウム、メタ亜硫酸カリウム等の亜硫酸塩や、カルボニル亜硫酸付加物を含有するのが普通で、これらの含有量は現像液1リットル当たりカラー現像液では5g以下、多くは3g以下(無添加も含む)、黒白現像液では0g〜50gである。
【0064】
カラー及び黒白現像液中には、保恒剤として種々のヒドロキシルアミン類を含んでいる。ヒドロキシルアミン類は置換又は無置換いずれも用いられる。置換体としてはヒドロキシアルミン類の窒素原子が低級アルキル基によって置換されているもの、とくに2個のアルキル基(例えば炭素数1〜3)によって置換されたN,N−ジアルキル置換ヒドロキシルアミン類が挙げられる。またN,N−ジアルキル置換ヒドロキシルアミンとトリエタノールアミンなどのアルカノールアミンの組合せも用いられる。ヒドロキシルアミン類の含有量は現像液1リットル当り0〜5gである。
【0065】
カラー及び黒白現像液は、pH9〜12である。上記pHを保持するためには、各種緩衝剤が用いられる。緩衝剤としては、炭酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、四ホウ酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、グリシン塩、N,N−ジメチルグリシン塩、ロイシン塩、ノルロイシン塩、グアニン塩、3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン塩、アラニン塩、アミノ酪酸塩、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール塩、バリン塩、プロリン塩、トリスヒドロシアミノメタン塩、リシン塩などを用いることができる。特に炭酸塩、リン酸塩、四ホウ酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩は、溶解性やpH9.0以上の高pH領域での緩衝能に優れ、現像液に添加しても写真性能面への悪影響(カブリなど)がなく、安価であるといった利点を有し、これらの緩衝剤が多く用いられる。該緩衝剤の現像液への添加量は通常現像液1リットル当たり0.1モル〜1モルである。
【0066】
その他、現像液中にはカルシウムやマグネシウムの沈澱防止剤として、或いは現像液の安定性向上のために各種キレート剤が添加される。その代表例としてニトリロ三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、ニトリロ−N,N,N−トリメリメチレンホスホン酸、エチレンジアミン−N,N,N′,N′−テトラメチレンホスホン酸、1,3−ジアミノ−2−プロパノール四酢酸、トランスシクロヘキサンジアミン四酢酸、1,3−ジアミノプロパン四酢酸、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸等を挙げることができる。これらのキレート剤は必要に応じて2種以上併用されることもある。
【0067】
現像液は、各種の現像促進剤を含有する。現像促進剤としては、チオエーテル系化合物、p−フェニレンジアミン系化合物、4級アンモニウム塩類、p−アミノフェノール類、アミン系化合物、ポリアルキレンオキサイド、1−フェニル−3−ピラゾリドン類、ヒドラジン類、メソイオン型化合物、チオン型化合物、イミダゾール類等である。
【0068】
多くのカラーペーパー用カラー現像液は、上記のカラー現像主薬、亜硫酸塩、ヒドロキシルアミン塩、炭酸塩、硬水軟化剤などと共にシルキレングリコール類やベンジルアルコール類を含んでいる。一方カラーネガ用現像液、カラーポジ用現像液、一部のカラーペーパー用現像液は、これらのアルコール類を含んでいない。
【0069】
また、現像液中には、カブリ防止の目的で、臭素イオンを含有することが多いが、塩化銀を主体とする感光材料に対しては臭素イオンを含まない現像液を用いることもある。その他、無機カブリ防止剤としてNaClやKClなどの塩素イオンを与える化合物を含有していることがある。また各種有機カブリ防止剤を含有していていることも多い。有機カブリ防止剤としては、例えば、アデニン類、ベンズイミダゾール類、ベンズトリアゾール類及びテトラゾール類を含有していてせよい。これらのカブリ防止剤の含有量は現像液1リットル当り0.010g〜2gである。これらのカブリ防止剤は処理中に感光材料中から溶出し、現像液中に蓄積するものも含まれる。特に本発明において上記したような臭素イオンや塩素イオン等の総ハロゲンイオン濃度が混合液1リットル当たり1ミリモル以上であるような廃液においても有効に処理することができる。特に臭素イオン濃度が混合液1リットル当たり1ミリモル以上の場合に有効である。
【0070】
また、現像液中には、アルキルホスホン酸、アリールホスホン酸、脂肪酸カルボン酸、芳香族カルボン酸等の各種界面活性剤を含有している。
【0071】
黒白写真処理においては、現像処理の後に定着処理が行なわれる。カラー写真処理においては、現像処理と定着処理の間に通常漂白処理が行なわれ、漂白処理は定着処理と同時に漂白定着(ブリックス)で行なわれることもある。漂白液には、酸化剤として鉄(III) 又はCo(III) のEDTA、ジエチレントリアミン五酢酸、ニトリロトリ酢酸、1,3−ジアミノ−プロパン四酢酸塩、ホスホノカルボン酸塩そのほか過硫酸塩、キノン類などが含まれている。そのほか、臭化アルカリ、臭化アンモニウムなどの再ハロゲン化剤、硼酸塩類、炭酸塩類、硝酸塩類を適宜含有する場合もある。定着液や漂白定着液には通常チオ硫酸塩(ナトリウム塩、アンモニウム塩)、酢酸塩、ホウ酸塩、アンモニウム又はカリ明ばん亜硫酸塩などを含有していている。
【0072】
ハロゲン化銀写真感光材料の処理においては、定着処理あるいは漂白定着処理行なった後、水洗及び/又は安定処理を行なうことが一般的である。水洗処理においては、その処理槽にバクテリアが繁殖し、生成した浮遊物が感光材料に付着する等の問題が生じることがある。このような問題の解決策として、水洗水に特開昭61−131632号に記載のカルシウムイオン、マグネシウムイオンを低減させる方法を用いることができる。また、特開昭57−8542号に記載のイソチアゾロン化合物やサイアベンダゾール類、塩素化イソシアヌール酸ナトリウム等の塩素系殺菌剤、その他ベンゾトリアゾール等、堀口博著「防菌防黴剤の化学」、衛生技術会編「微生物の滅菌、殺菌、防黴技術」、日本防菌防黴学会編「防菌防黴剤事典」に記載の殺菌剤を用いることもある。
【0073】
【実施例】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、これらは本発明の範囲をなんら限定するものではない。
[実施例1]
(廃液の調整)
銀回収系廃液(カラー写真処理CN−16 の定着液、CN−16Qの漂白液と定着液の混合液、CP−20の漂白定着液、CP−23の漂白定着液、および水を各々4、1、3、2、2の体積比で混合した後銀回収処理を施したもの)と現像液系廃液(カラー写真処理CN−16、CN−16Q、CP−20、CP−23各々の現像液および水を各々4、1、3、2、2の体積比で混合したもの)とを体積比で1対1で混合した。このように調製された廃液のpHは7.5であった。この液のCODは45000mg/L、NH4 −Nは8000mg/Lであった。上記した各液CN−16、CN−16Q、CP−20、CP−23、はいずれも富士写真フイルム(株)製の処理液の商品名である。
【0074】
(廃液の処理)
本実施例においては以下A〜Dの処理を行った。
A.電気分解
純粋な白金でコーティングしたSHOWA金属チタン陽極((株)昭和製)と、交互に積層したチタン陰極からなる小型電解槽に、上記調整廃液1Lを、600mL/分の速度で電極に直角に循環させた。電流密度は3.5A/dm2 であった。電気分解を定電流電解方式で実施し、電流の強さを10Aに設定した。温度を25℃に維持した。開始時のpHは水酸化ナトリウム水溶液を添加することで9に調整し、24時間電気分解処理を行った。
【0075】
B.オゾン/紫外線照射
中心部に450W高圧水銀灯(UM−452型、安定器としてUM−453BA型使用、ウシオ製)が設置された容量2リットルの光化学反応用石英セルに1リットル分注入し、セル上部より差し込まれた2個のボールフィルター(孔径グレード2G、25mmφ、木下理化工業製)付ガラス管からオゾン発生装置(FM−300N、ニッコー金属製)で発生させたオゾンを100mg/hrの速度で通気しながら紫外光を照射し、10時間の処理を行なった。反応中の処理液は、pHスタット(FC−10東京理化製)を設置してpHが一定値に維持されるようにした。
B2.オゾン処理
B.の処理時に紫外線の照射を行わない以外は、Bと同じ条件と操作によってオゾン処理を行なった。
【0076】
C.生物処理
硝化処理:処理液中の沈殿物(硫化銀、鉄酸化物、担体硫黄など)を濾過除去した後、硝化菌をアクリルアミドゲルにより包括固定化したアクリルアミドゲルペレットを浮遊流動させた硝化槽を用いて処理した。該アクリルアミドゲルは「微生物固定化法による排水処理」須藤隆一著(産業用水調査会)196〜199頁に記載の方法で調製した。一片約3mmの立方体に成形した該アクリルアミドゲルを曝気槽容量の約10%添加し曝気槽内に浮遊流動させて用いた。硝化槽のpHは約7.5に調節しながら、滞留時間0.5日の連続式処理で行った。
硝化菌は、都市下水処理場の廃汚泥の硝化・脱窒槽処理用の硝化菌を馴養したものである。
【0077】
脱窒:上記硝化処理を施した液を、さらに粒状多孔性セラミクスを担体として充填した固定床式生物脱窒塔に通液し、(馴化したのち)滞留時間12時間で処理した。
好気性生物濾過:脱窒処理後の液に5%硫酸約4mlを加えてpH8に調整後、この液を好気的に保った生物濾過塔に通液させることにより、滞留時間を4時間として処理した。
使用した微生物は、富士写真フイルム(株)足柄工場の端末処理場の返送汚泥を本明細書で前記した方法で馴化させたものである。
前記調製済みの写真廃液試料に対して、上記の3通りの廃液処理手段を表記載のように組み合わせを変えて実施した。実施内容と処理後のCOD及びアンモニア性窒素(NH4 −Nと記す)の測定濃度値を表1に示した。COD及びアンモニア性窒素の測定方法は、いずれもJIS K0102 (工業排水の試験方法)記載の方法によった。
【0078】
(試験結果)
試験結果を表1に示す。表1の結果から電解酸化、オゾン処理、オゾン/紫外線照射、生物処理はいずれも単独ではCOD低減効果も不十分であるだけでなくアンモニア性窒素をほとんど除去できていない。また、これらを組み合わせた方法においても電解酸化を後段の処理に用いた処理では組み合わせることによる効果は見られない。しかし、電解酸化処理を行った後にオゾンによる物理化学的酸化処理を組み合わせた複合処理では、単独の効果からは予測できないレベルまでCODを除去できると同時にアンモニア性窒素の除去に対して予想外の大きな効果が見られることが分かる。
この効果は、電解酸化後のオゾン処理の際に紫外線照射を併用したときに効果が増大し、さらに電解酸化とオゾン酸化処理ののち、最終処理としてpHを9に調整して生物処理を加えることでいっそう大きなものとなり、ここに写真廃液の溶存CODとアンモニアを同時に除去できる有効な手段を提供することが可能となった。
【0079】
【表1】
【0080】
【発明の効果】
写真廃液に電解酸化処理を施したのち、物理化学的酸化処理を施すこと、さらには上記に加えて生物処理をも行なうことを特徴とする本発明の写真廃液の処理方法によって、高濃度のCOD寄与物質及びアンモニア性窒素成分を含んでいる写真廃液に対しても効果的にCOD及びアンモニア性窒素を低減できる。
Claims (5)
- 写真廃液に電解酸化処理を施したのち、物理化学的酸化処理を施すことを特徴とする写真廃液の処理方法。
ここにいう物理化学的酸化処理とは、化学酸化処理の中で、酸化剤が処理済み廃液中に水、酸素、水素、炭酸ガス又は炭酸イオン以外の反応性生物として残ることのない処理を指す。 - 該廃液のpHが9〜12のもとで物理化学的酸化処理を施すことを特徴とする請求項1に記載の写真廃液の処理方法。
- 物理化学的酸化処理がオゾンによる酸化処理であることを特徴とする請求項1又は2に記載の写真廃液の処理方法。
- オゾンによる酸化処理を紫外線の照射のもとで行うことを特徴とする請求項3に記載の写真廃液の処理方法。
- 電解酸化処理及び物理化学的酸化処理を施したのち、さらに生物処理を施すことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の写真廃液の処理方法。
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