図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
(第1実施形態)図1は、本発明の第1実施形態に係わる画像記録装置のブロック図である。図1において、画像入力部1(例えば、スキャナや画像メモリ)は、中間調画像の画像信号、すなわち、各画素が多値の画素濃度値を有する画像信号、を出力する。この画像信号は、加算器2に入力される。加算器2は、入力された画像濃度値に補正濃度値を加えることにより補正された画素濃度値を出力する。
第1の信号変換部3は、加算器2から出力された画素濃度値を後述する記録部5において、画素形成が可能な第1の記録制御信号、具体的には、記録画素の記録幅や記録位置などの記録量を規定する第1の記録制御信号に変換する。この第1の記録制御信号の詳細な決め方は後述するが、第1の記録制御信号は、おおむね、入力した画素濃度値に応じて画像を記録するための仮の信号であり、第2の信号変換部4に入力される。
第2の信号変換部4は、記録量を規定する第1の記録制御信号から、注目画素に隣接する周辺画素の記録制御信号を参照し、記録部5において安定した画素の形成が可能なように、補正された記録制御信号(第2の記録制御信号)を出力する。この第2の記録制御信号の決定方法は後述する。この第2の記録制御信号は記録部5に入力されると共に、制御信号バッファ6と、減算器7に入力される。
記録部5は、例えば、レーザ光を感光体上に露光走査して、静電潜像を形成し、これをトナーで現像して記録画像を得る電子写真方式の記録手段が使用される。また、他の記録方式による例えば、サーマルヘッドを用いたサーマル記録や液体インクを飛翔させるインクジェット記録にも適用できるが、本実施形態では、以下、電子写真方式の記録手段により説明する。
制御信号バッファ6は、第2の記録制御信号を一時的に保持するためのバッファであり、シフトレジスタやラインメモリなどにより構成され、注目画素に対して隣接する画素に対する第2の記録制御信号を保持し、図示しないタイミング制御信号により、適時注目画素に対応する隣接画素の記録制御信号を第2の信号変換部4に出力する。
減算器7には、第2の記録制御信号のうち、記録量を代表して、記録幅に相当する信号が入力され、加算器2から出力される補正濃度値から減算されることにより、誤差信号が形成される。この際、減算器7に入力される値は、図示しない規格化回路により、第1の信号変換部3へ入力される画素濃度値と同等のデータ幅に規格化されている。この誤差信号は誤差拡散部8に入力される。
誤差拡散部8は、誤差信号を一時保存する誤差バッファ8aと、この誤差バッファ8aから読みだされる誤差信号を所定の重み付け係数を乗じて積算する重み付け部8bにより構成され、重み積算した結果を加算器2に供給することにより、画像入力部1からの画像信号に対して誤差拡散を行う。
以下、図1の上記の各部のうち、特に、画像入力部1と記録部5の機能を詳細に説明する。画像入力部1は、例えば、画像メモリに格納された中間調の画像のビットマップの画素濃度値をラスタスキャンの画像信号として出力する。ここで、ビットマップとは画像を画素に相当する矩形の升目に細かく分割したものであり、各升目には画素濃度値が格納されている。画素濃度値は、例えば、1画素当たり8ビット(すなわち、256階調)のデジタル値として表される。このビットマップの画素濃度値は、例えば、ホスト計算機からシェークハンド方式で画像メモリに書き込まれる。また、記録装置内にCPUを持ち、ホスト計算機から、書き込まれるページ記述言語で表された情報をビットマップに展開しても良い。
図2は、記録部5の概略構成を示す図である。本実施形態の記録部5は、電子写真方式を採用した記録部を例にとる。記録部5では、感光体ドラム24の周囲に沿って、帯電器41、露光部22、現像器42、転写ローラ43、除電ランプ46、クリーナ47が配設される。感光体ドラム24は図示しないモータなどから伝達される駆動力に基づいて、図中矢印の方向(時計まわり)に一定の速度で回転する。各所の構成及び動作は従来の電子写真プリンタを参照できるので、ここでは、簡単に動作を説明する。
記録紙45への画像形成に先立ち、感光体ドラム24の回転が開始する。まず、帯電器41により感光体ドラム24の表面は一様に帯電される。次に、露光部22により画像信号に基づいて生成された記録制御信号によってレーザダイオードの発光が制御され、光学結像系を介して、帯電された感光体ドラム24上をレーザダイオードが露光走査する。
この露光により、光の照射された部位では、感光体ドラム24の表面電位が変化し、光の照射されなかった部位に対して、或いは、光の照射量の強弱に応じて、表面電位に差を生じさせ、画像信号に応じた静電潜像が形成される。
図3に、感光体ドラム24の露光量と表面電位の関係の一例を示す。図3より、感光体ドラム24上には、記録制御信号に応じた分布の電位パターン(つまり静電潜像)が形成される。
現像器42では、現像ローラ42aの回転に伴い、静電潜像に対応して、現像器42の内部に収納されたトナーが感光体ドラム24上に付着されて、可視像が得られる。
感光体ドラム24の表面電位とトナー付着量の関係の一例を図4に示す。更に、記録紙45は、図示しない搬送機構によりタイミングを制御されて転写ローラ43と感光体ドラム24の間に搬送され、現像器42によって現像されたトナーが記録紙45上に転写される。更に、記録紙45はヒートローラなどで構成される定着器44に搬送され、加熱及び加圧されて記録紙45上にトナーが定着され、露光部22に供給した画像信号に応じた画像パターンが記録紙45上に得られる。
一方、感光体ドラム24は、除電ランプ46によって除電され、記録紙45側に転写されずに残った残留トナーはクリーナ47によって除去される。図5に、感光体ドラム24上の露光量とトナー付着量の関係を示す。両者の関係は帯電量や温度などの要因により変動し、例えば図の実線から破線のような特性に変化する。露光量が小さい領域(2)では、これらの変動によるトナー量の変動は0か又は小さいが、中間領域(T1〜T2)では、これらの変動によりトナー付着量が影響を受けやすい。従って、中程度の露光量の領域(T1〜T2)が広いと、記録濃度の再現性が不安定になる。具体的には、このような変動がページ間で生ずると濃度変動となり、ページ内で生ずるとざらつき、濃度むらなどの原因となる。前者のざらつきは濃度再現性(カラーの場合は色再現性)を損ない、後者の濃度むらは画質低下をもたらすので、これらの変動は小さく抑えることが望ましい。
図6は、露光部22の概略構成を示す図である。各要素の構成は従来のレーザ露光系が参照できる。信号変換部の出力である記録制御信号に応じて、パルス幅変換部51において、レーザダイオードの駆動時間が変調される。パルス幅変調により階調画像が記録できる。この変調信号に応じて駆動されるレーザダイオード52からの光ビームはコリメートレンズ、スリット、シリンダレンズからなる集光レンズ53を介して、ポリゴンミラー54によって偏向され、光学結像系55としてのf−θレンズを介して感光体24上に露光走査される。
次に、処理の手順に従い、各部の動作を説明する。第1の信号変換部3に入力された注目画素に対する画素濃度値は、その濃度値の大きさに応じて、記録部5での記録に適した第1の記録制御信号に変換される。例えば、記録部5が図7のように0から4までの5値で記録する場合について説明すると、256階調の入力画素濃度値を5段階のレベルのうちのいずれかに変換された第1の記録制御信号を出力する。この変換は、等間隔な量子化動作で実現でき、図8に示すような第1の信号変換部3をROMなどを用いたルックアップテーブルとすることができる。図8は、その一例を示すブロック図、図9は処理テーブルの一例である。
第2の信号変換部4は、注目画素に隣接する周辺画素の少なくとも1つの画素の記録制御信号である隣接画素制御信号を参照して、入力された第1の記録制御信号を注目画素に対して安定な記録が可能な第2の記録制御信号に変換する。図10は、第2の信号変換部4と制御信号バッファ6の一例を示すブロック図である。第2の信号変換部4は、第1の信号変換部3と同様にROMなどを用いたルックアップテーブルで実現できる。
例えば、参照する隣接画素として、注目画素の左隣すなわち前画素を用いる場合には、図11に示すテーブルが参照されて出力される第2の記録制御信号が決定される。すなわち、図11において、注目画素に対する第1の記録制御信号(現画素)が「1」又は「2」であり、前画素に対応する第2の記録制御信号(前画素)が「0」〜「3」の場合(図中、囲みの中)では、補正処理が行われる。これは、図7に示す「1」又は「2」のような記録パターンが選択される場合であり、この例では、記録制御信号として「1」や「2」程度の微少な値が単独で選択された場合の記録安定性が不十分であるため、この値を用いた記録を避けるように補正処理を行っている。しかし、現画素が「1」や「2」の記録制御信号であっても、前画素の記録制御信号が「4」の場合には、図12に示すよう隣接画素の記録パターンは連続的に画素形成が行われるため、安定に記録できる。そこで、この場合には、補正処理を行わず、現画素に対する第1の記録制御信号をそのまま第2の記録制御信号としている。
第1の記録制御信号から第2の記録制御信号への変換は、第1の記録制御信号の値に最も近く、かつ安定して記録が可能な記録制御信号の値が選択される。第1の記録制御信号の値に最も近い値を選択する理由は、注目画素に対する記録濃度との誤差を最小に抑えて忠実な階調再現を実現するためである。不安定性に変動がある場合には、変動の許容幅を考慮して、いつでも安定した画素形成が得られる記録制御信号が選択される。
この変換の仕方は、予め実験によって不安定な記録が行われる微小画素の大きさを求めておけば良い。安定な記録が行われる最小の記録制御量をDstableとし、注目画素に対する第1の記録制御信号に対応する画素濃度値をD1とすれば、D1を参照して補正処理を行う。この補正処理は例えば、Dstable/2のしきい値で第1の記録制御信号を2値化して第2の記録制御信号が得られる。
この際、当初の第1の記録制御信号と異なる値が選択された場合においても、誤差拡散部8を介して、最終的な出力である第2の記録制御信号を入力画素濃度値との差を誤差として、他の画素に拡散させるので、入力画素のマクロな濃度が保存される。
また、記録安定性を求める実験から、図13や図14のようなテーブルを見いだして適用しても良い。図13のテーブルは、前画素の記録制御信号が「3」の場合には、注目画素に対する「2」程度の記録制御信号で微小画素の記録が安定に行われる場合の例である。この場合には、前画素と現画素とが完全に連続したパターンを与えないが、記録系での画素形成動作において、例えば、レーザ光による露光パターンがある程度ぼけることを考慮するなど、画素形成動作を総合的に勘案したときに記録パターンの連続性が得られる場合の例である。図14のテーブルは、比較的不安定性の大きい記録系に適用する場合の例である。すなわち、現画素の記録制御信号として、図7に示す「3」程度の記録パターンまで単独で選択した場合に不安定な画素形成を生じることを想定した例である。
上記のように、第1の記録制御信号から第2の記録制御信号への変換の仕方は種々選択されるが、本発明の主旨は不安定な微小画素のみを形成するような記録制御信号(この場合は、第2の記録制御信号)を除去することにある。
このように、不安定な微小画素を全く選択しないのではなく、周辺画素との画素形成状態を参照することにより、画素形成状態に応じて微小画素の形成を選択するので、特に中高濃度領域においてはなめらかな階調特性が維持できる。また、ハイライト領域においては、表現できない制御レベルがあるため、階調性に乏しくなるが、安定でノイズの少ない画像が得られるため、全体として画質が向上するメリットがある。
また、図11や図14に示す参照テーブルを適用する場合には、前画素の記録制御信号の情報として、前画素が「4」であるか、又はそれ以外であるかを示す2値の信号、すなわち、データ量として1ビットの情報を用いれば良いので、制御信号バッファ6は、簡単な構成が実現できる。すなわち、隣接する画素として、注目画素の前画素に対する第2の記録制御信号を一時的に保持する場合には、1ビットのラッチ(図10参照)などの簡易な構成で実現できる。
次に、誤差拡散部8の機能を詳細に説明する。減算器7からの誤差信号はラインメモリからなる誤差バッファ8aに記憶される。誤差バッファ8aに記憶された誤差信号は順次読みだされて、重み付け部8bに入力され、図15に示す注目画素Xの周辺画素(すなわち、1ライン前の3画素A、B、Cと左隣の前画素D)の誤差信号にそれぞれ重み付け係数(Wa、Wb、Wc、Wd)を掛けて積算した値が得られる。重み付け係数は、例えば、Wa=1/16、Wb=5/16、Wc=3/16、Wd=7/16が選ばれる。簡単な例としてWa=2/16、Wb=4/16、Wc=2/16、Wd=8/16のように分子を2のべき乗に設定してもよい。この場合には、重み付け部8bはビットシフトと加算のみで構成可能となるため、回路が簡略される。こうして、重み付け積算された信号は加算器2により入力された画像信号に加算されることにより、記録時の量子化誤差が拡散される。
上記説明では、参照する周辺画素として注目画素に対する前画素を用いたが、参照する周辺画素として、前画素に加えて、前ラインの画素(注目画素に対する前ラインに位置する画素)を含めるとより細かな制御が可能になる。
図16は、第2の信号変換部4と制御信号バッファ6の具体例を示すブロック図である。第2の信号変換部4は、ROM4によって構成され、制御信号バッファ6は1ライン分の画素数に対応したラインメモリ6aと1画素分のラッチ6bによって構成される。すなわち、第2の記録制御信号のうち、記録量の代表として、記録幅を示す値がラッチ6bに入力される。i番目の画素を注目画素とすれば、(i−1)番目の画素に対する第2の記録制御信号がラッチ6bに格納されている。このラッチ6bの出力値とラインメモリ6aのi番目に該当するアドレスに格納されている前ラインの画素に対する記録制御信号とが、同時に読みだされて、第1の信号変換部の出力である第1の記録制御信号と同時に第2の信号変換部4であるROM4に入力される。これらのデータは、ROM4のアドレスを選択し、このアドレスに対応した第2の記録制御信号が出力される。また、ラッチ6bの出力は、ラインメモリ6aの(i−1)番目のアドレスに格納され、同様の動作を繰り返して処理が進む。ここで、上記ラインメモリ6aに替えてFIFOを用いた構成とすることもできる。この場合には、ラインメモリのアドレス選択の制御回路が不要になる利点がある。
図17は、第1の記録制御信号に対する第2の記録制御信号の決定の仕方の一例を示す参照テーブルである。図17に示す例では、前画素が「0」から「3」であり、前ラインが「0」の場合には、不安定な画素形成となるため、補正処理をしている。前画素が「4」又は前ラインが「1」から「4」の場合には、安定な画素形成がなされるとして、第1の記録制御信号を第2の記録制御信号としてそのまま出力している。これらの参照テーブルは、前画素と前ラインの画素と注目画素との連続性又は連結の度合いを考慮して決定されるものであり、予め行う実験により正確に決定することができる。
以上の説明では、第1の信号変換手段により、第1の記録制御信号を出力し、これに基づいて、第2の信号変換手段によって第2の記録制御信号を得る例を述べたが、これらは、一連の動作として、一つの処理でまとめて行うこともできる。すなわち、隣接画素制御信号を参照し、画素入力信号に応じた第2の記録制御信号を出力するように設定したROMなどの回路構成とすれば良い。この場合でも、ROMのテーブルの決定は、上記の説明に準じて行うことができる。
また、上記説明では、「0」から「4」の5値の記録について説明したが、本発明は、記録の多値化数に制限されるものではなく、特に多値化数が多いほどなめらかな階調性を実現できる。従来、不安定な画素形成を避けるため、多値化数を大きく設定できなかった記録装置においても、本発明を適用することによって、より大きい多値化数を用いた階調性豊かな安定な画像を記録できるメリットがある。
(第2実施形態)図18は、第2実施形態に係る画像記録装置のブロック図である。第1実施形態と同じ部分には同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。第2実施形態では、第1実施形態の制御信号バッファ6がなく、記録濃度推定部9を備えた構成となっている。なお、信号変換部は、第1実施形態の第1の信号変換部3に相当する信号変換部3のみを有する。
画像入力部1及び加算器2は、第1実施形態と同様の機能を有する。信号変換部3は、第1実施形態の第1の信号変換部3に対応する部分であって、加算器2から出力された画素濃度値を量子化し、当該画素の記録幅や記録位置などの記録量を規定する記録制御信号に変換する。この記録制御信号の詳細な決め方は後述するが、概ね、入力した画素濃度値を記録するための信号であって、記録部5と記録濃度推定部9に入力される。
記録部5の機能は、第1実施形態と同じであるので、説明を省略する。本第2実施形態の特徴である記録濃度推定部9は、信号変換部3から出力される記録制御信号に基づいて記録部5での実際の記録濃度を推定し、その推定結果である記録濃度推定値を出力する。この記録濃度推定値は減算器7に入力し、減算記7において、加算器2から出力される補正濃度値から記録濃度推定値が減算されて、誤差信号が生成される。この誤差信号は誤差拡散部8に入力される。
誤差拡散部8は、第1実施形態と同様である。以下、図18の各部の機能の詳細を説明する。図19に、記録部5の構成を示す。第1実施形態では記録部5としてスキャン型の記録部を示したが、本実施形態の記録部5は、アレイ型の記録部である。記録部5は、駆動回路部21によって駆動される主走査方向に配列された固体発光素子アレイ22からの光をファイバ型レンズアレイ23により、副走査方向(記録紙の送り方向)に機械的に回転される感光体ドラム24上に結像する構成となっている。駆動回路部21は、信号変換部3から入力される時系列の記録制御信号を固体発光素子アレイ22の各発光素子を同時に駆動するための信号に変換するものである。固体発光素子アレイ22は、感光体ドラム24の回転軸と平行に、かつドラム24の表面に近接して配置される。ファイバ型レンズアレイ23は、固体発光素子アレイ22と感光体ドラム24の間に、発光素子の発光面を感光体ドラム24上に結像させるように配置されている。これにより、固体発光素子アレイ22からの光が感光体ドラム24上に露光光として照射され、感光体ドラム24の表面が露光される。固体発光素子アレイ22としては、LEDを列状に配設したLEDプリントヘッドや蛍光体の発光を利用したものなどが利用できる。
図20に、固体発光素子アレイ22の駆動回路部21の構成を示す。信号変換部3からの記録制御信号は、まず1ライン分ずつシフトレジスタ31に順次書込まれる。シフトレジスタ31は、5ビットパラレルのシフトレジスタ素子を複数個縦続接続して構成される。シフトレジスタ31の内容は、ラッチ32に並列に出力される。なお、本実施形態ではシフトレジスタ31及びラッチ32はそれぞれ複数個のICチップからなり、それら複数個のICチップを縦続接続している。
ラッチ32にラッチされた記録制御信号のデータのうち、記録幅(露光パルス幅)を表わす4ビットのデータは2つの比較器33、34において極性の異なる2つの鋸歯状波信号S3、S4と比較される。これらの比較器33、34の出力信号のいずれかがセレクタ37で選択され、セレクタ37で選択された信号が固体発光素子アレイ22の対応する素子への駆動信号となる。なお、セレクタ37はラッチ32にラッチされた記録制御信号のデータのうち、記録位置(露光パルス開始タイミング)を表わす1ビットのデータにより比較器33、34の出力のうちのいずれの出力を選択するかが制御される。
このようにして発光素子アレイ22は、発光素子毎に記録制御信号の記録位置データにより規定される露光パルス開始タイミングで、かつ記録制御信号の記録幅データにより規定される露光パルス幅の時間だけ発光するように制御される。
信号変換部3を詳細に説明する。記録部5においては、副走査(感光体ドラム24の回転)に合わせて固体発光素子アレイ22の発光時間(露光パルス幅)が制御されることにより、1画素内の副走査方向の記録幅を可変して記録濃度を変え、また固体発光素子アレイ22の発光開始タイミング(露光パルス開始タイミング)が制御されて記録位置が変えられることにより、濃度の安定した階調画像の記録を可能とする。信号変換部3は、加算器2から入力される画像信号の画素濃度値を記録部5での記録幅及び記録位置を規定する記録制御信号、つまり固体発光素子アレイ22での各画素の露光パルス幅及び露光パルス開始タイミングの情報に変換する。
この信号変換部3の働きについて、更に詳細に説明する。信号変換部3は、大きく分けて次の2つの機能を有する。第1の機能は、画素単位では数レベル程度にレベル数が限られた記録制御信号により、例えば256階調といったレベル数の記録濃度を表現する機能である。第2の機能は、感光体ドラム24上に形成されるトナー像における連結した画点の大きさがあまり小さくならないようにする機能である。
まず、256階調の記録濃度を表現するメカニズムについて説明する。本第2実施形態においては、記録濃度を感光体ドラム24上の潜像分布の大きさ、つまり感光体ドラム24上に照射する露光光のパルス幅(露光パルス幅)により制御する。しかし、一般に1画素を記録するための露光パルス幅は通常、数μ秒又はそれ以下のオーダーであり、これより細かく分割した単位で露光パルス幅を制御すると、その分割数だけ高速な制御が必要となり、回路コストが高くなったり動作が不安定になるため、通常は分割数をあまり大きくとることができない。例えば露光パルス幅を15分割すると、1画素当たり16通りにしか露光パルス幅の制御を行うことができず、256階調の記録濃度を表現することはできない。また、実際には露光パルス幅と記録濃度の関係は非線形であることから、仮に露光パルス幅を256分割したとしても、記録濃度を均等に1/256レベルのステップで制御することはできない。
このように制御レベル数(この場合は、露光パルス幅の分割数)が限られている場合に十分な階調を表現する方法として、本実施形態では誤差拡散法が用いられる。誤差拡散法は、よく知られているように高解像度では階調分解能が低いという人間の視覚特性を利用した方法で、注目画素における量子化誤差を隣接画素に分配することにより、複数画素の組の単位で所望の記録濃度を再現するものである。この誤差拡散は、加算器2において誤差拡散部8の出力に基づいて行われる。
図21は、記録部5により記録紙45上に記録される画像の画素配列を示している。図21において、横方向が主走査方向(固体発光素子アレイ22の配列方向)、縦方向が副走査方向(感光体ドラム24の回転方向=記録紙45の送り方向)を表わす。主走査方向及び副走査方向にそれぞれ並んだ数字は、主走査方向及び副走査方向における画素位置(X)、(Y)を表わし、また各画素を副走査方向に複数(図の例では4個)に分割した領域内に示した数字は領域の位置を表わしている。
この場合、信号変換部3から出力される記録制御信号により、奇数番目(1、3、…)の主走査ラインと偶数番目(2、4、…)の主走査ラインとで、それぞれ発光開始タイミングを異ならせ、奇数番目の主走査ラインでは画素の図中上端を基準(以下、「前基準」という)として記録幅を増加させ、偶数番目の主走査ラインでは画素の図中下端を基準(以下、「後基準」という)として記録幅を増加させることにより、階調画像を記録するようにする。
このように1画素内の記録幅の制御により多階調の表現を可能とし、かつ記録位置の制御によって低濃度領域では画点を集中的に配置することにより、濃度の安定化とばらつきノイズの低減を図ることができる。
図22に、図18の信号変換部3と記録濃度推定部9の詳細な構成を示す。信号変換部3は、図22中に示されるようにROMによって実現することができる。この信号変換部3に用いるROMには、例えば図23に示すようなテーブルが格納されている。図23において、「画素濃度値」は信号変換部3に画像入力部1から加算器2を介して入力される画像信号の各画素の画素濃度値であり、256レベルの値を持つ。「画素位置」は図21のX、Yを表わし、この場合は副走査方向の画素位置Yのみが用いられる。「出力」は信号変換部3から出力される記録制御信号であり、図23に示す例では図21に示した画素配列に対応して、例えば0〜4の記録幅を表わす3ビットの記録幅情報(図23において「幅」で示す)と、1〜4の記録位置を表わす2ビットの記録位置情報(図23において「位置」で示す)とからなっている。すなわち、記録幅情報は図21において1画素内の4つの領域のいくつを記録に用いるかを表わす情報であり、記録位置情報はこれら4つの領域のどの位置から記録を開始するかを表わす情報である。
記録濃度推定部9について説明する。記録濃度推定部9は、前述したように信号変換部3から出力される記録制御信号に基づいて記録部5での記録濃度を推定し、記録濃度推定値を出力する。一般に、電子写真方式のように記録画像に多少滲みが生じる記録系では、各画素の記録濃度が隣接画素の影響を受ける。そこで、記録濃度推定部9では例えば図22中に示されるように、信号変換部3のROMから出力される記録制御信号の隣接する4画素のデータから、推定した記録濃度を決定する。
すなわち、記録制御信号をラインメモリ56と1画素遅延用のラッチ57に入力し、ラインメモリ56から取り出した、現画素(注目画素)が属する主走査ラインの1ライン前のラインの2画素のデータD1、D2と、ラッチ57から取り出した1画素前のデータD3と、現画素のデータD4の計4画素のデータから、記録濃度決定部58により現画素の記録濃度を計算により求めて決定する。
この記録濃度の決定において最も正確な方法は、4画素のデータD1〜D4の全ての組み合わせで実際に記録実験を行い、その実験結果に基づいて記録濃度を測定し、この記録濃度測定結果をROMに格納する方法である。しかし、この例では記録制御信号を1画素当たり5ビットのデータで表現しているため、記録濃度の決定に4画素のデータを用いると、ROMに格納する記録濃度データは20ビットの組み合わせになり、ROMの規模がかなり大きくなる。本実施形態では図21に示したように1画素を4つの領域に分割しているため、工夫次第で16ビットの組み合わせも可能となるが、それでもROMの規模は依然として大きなものとなる。
実際に記録実験を行った結果によると、記録画像において各画素の記録位置(画点位置)が微妙に変化しても記録濃度はあまり大きな変化を示さない。そこで、記録制御信号を記録幅情報と記録位置情報とに分離し、記録幅情報については各々4画素のデータD1〜D4の記録幅情報の和(4画素の濃度和に相当する)を求め、記録位置情報については各画素当たり1ビット、つまり前基準と後基準とを区別する情報のみを抽出し、4画素で4ビットの情報として4画素の記録幅情報の和を補正することでも、かなり正確な記録濃度の推定が可能となる。
図24は、このような方法により簡略化した記録濃度推定部9の構成を示す図である。記録制御信号の4画素のデータD1〜D4(図22参照)を5ビット入力のROM(論理回路でもよい)61〜64に入力し、3ビットの記録幅情報と、記録位置情報のうちの前基準と後基準とを区別する1ビットデータとを分離して取り出す。なお、ROM61〜64から出力されるべき記録位置情報の1ビットデータは、図23の「幅」と「位置」の情報から求められる。すなわち、記録位置情報の1ビットデータは、「位置」が1であれば「幅」に関係なく1、「位置」が2で「幅」が1又は2であれば1、「位置」が3で「幅」が1であれば0、「位置」と「幅」との和が5であれば0、「位置」が1でかつ「位置」と「幅」との和が5であれば“0”又は1のように設定される。
そして、記録幅情報の3ビットデータを加算器65で加算した4ビットデータと、4画素の記録位置情報の1ビットデータを8ビット入力のROM66に入力し、前者のデータを後者のデータで補正した8ビットの記録濃度データを得る。ROM66は、4画素での前基準、後基準の16通りの組み合わせに対してそれぞれ16レベルの組み合わせ、すなわち256回の記録実験を行って記録濃度を測定したものを格納することで作成することができる。なお、実際には対称形の組み合わせは記録濃度が同じとなるため、全ての組み合わせで記録実験を行う必要はなく、1/4の64回の記録実験を行えばよい。
この方法は1画素の分割数を4より増やした場合でも同様に適用することが可能であり、例えば8分割した場合では記録位置の基準は同じで、記録幅情報が1ビット増えるのみであるため、記録濃度決定のためのROMは9ビット入力のものでよく、また1画素を9分割した場合でも10ビット入力のROMでよいことになり、記録濃度の推定精度を上げた場合でもハードウェア規模の増大はほとんどない。
上記のようにして記録濃度推定部9で得られた濃度推定値は、減算器7により加算器2から出力される補正後の画素濃度値との誤差が求められ、この誤差信号が注目画素の近傍画素に拡散され、その総和が次の画素の画素濃度値に加算器2で加算される。このような誤差拡散処理により、ある画素で画素濃度値と記録濃度値との間に誤差が生じても、その誤差は隣接する画素に繰り込まれるので、マクロな領域での濃度は再現される。
一般的に、記録濃度推定値と実際の記録濃度との間には誤差が生ずる。この原因は、一つには記録制御信号により規定される記録幅(露光パルス幅)の制御レベル数が必要階調数に比べ少ないことによるが、もう一つの原因として記録制御信号を記録濃度が画像濃度値に近くなるような値を選ばないことによるものである。これは後述するように、信号変換部3では画点の大きさがある程度の大きさになるような記録制御信号を出力するため、ミクロ的に最も近い記録濃度を再現するような記録幅を必ずしも選ばないためである。しかし、このような記録濃度推定値と実際の記録濃度との間の誤差は、誤差拡散により次の画素に繰り込まれるため、マクロな領域での記録濃度は正しく再現できる。
このように本実施形態では、各画素毎に入力画像信号の画素濃値に応じて微細パターン情報、すなわち記録幅と記録位置を決めているため、画像信号の急峻な変化に対しても十分な応答が可能となり、高精細な画像の表現が可能となる。
一方、記録濃度については隣接画素の影響及び1画点内での位置に依存する濃度変化も加味して推定しているため、高精度に記録濃度情報をフィードバックして誤差拡散を行うことが可能となり、極めて正確な濃度を表現可能となる。
図25は、信号変換部3を構成するROMに格納するテーブルの他の例を示す図である。図25は、副走査方向の画素位置Yのみでなく、主走査方向の画素位置Xによっても記録幅情報及び記録位置情報を変えている点が図23と異なる。信号変換部3を図23に示したテーブルを格納したROMにより実現した場合、Xが奇数である奇数列、Xが偶数である偶数列とも記録幅情報及び記録位置情報は同じであり、記録画像の微細パターンは同じ配列となるから、記録画像は均一濃度の中間調を表現するときは主走査方向に連なった線条のパターン、すなわち横線基調のパターンとなる。
これに対し、信号変換部3を構成するROMに図25に示すように奇数列と偶数列とで記録幅情報及び記録位置情報が異なり、記録画像の微細パターンの配列が異なるようなテーブルを格納すると、記録画像は低濃度では副走査方向に延びた線条のパターンとなり、高濃度になると十字パターンが連なったパターンとなる。すなわち、図26(a)に示されるように低濃度では副走査方向に少し延びた線条パターンであり、中濃度では図26(b)に示されるように副走査方向に連続した線条パターン、つまり縦線基調のパターンとなる。
図2中に示したような感光体ドラム24と現像器42の現像ローラ42aとが接触する、いわゆる接触現像系では、感光体ドラム24と現像ローラ42aとに周速差があるため、現像ローラ42aから感光体ドラム24に供給されたトナーが現像ローラ42aからの影響を受け易く、微細パターンが変形・欠落することがある。しかし、図26(b)に示されるように副走査方向、つまり現像ローラと感光体ドラム24とがすれる方向に連なったパターンでは、微細パターンの変形や欠落が少なく、ザラツキノイズの小さい記録が可能となる。中濃度以上では図26(c)に示されるように十字状のパターンとなり、この場合も安定にトナーが付着される。
このような微細パターンによると、一成分非磁性トナーによる接触現像のように感光体ドラム24と現像ローラ42aが接触するような現像系でも、比較的安定した階調表現が可能となる。また、感光体ドラム24の偏心による記録画点のむらなどに対しても強いという特性があり、ザラツキノイズも小さくなるなどの特徴がある。なお、図26(b)のパターンから図26(c)のパターンに移行するときに記録濃度が急に上昇する傾向があるが、完全に副走査方向に連結する少し手前で主走査方向に画点を増加することで、このような記録濃度の急上昇を緩和することが可能となる。
図27は、図25のテーブルを用いた場合の記録画像の微細パターンの種々の組み合わせの例であり、偶数列と奇数列の画点幅の関係をそれぞれ縦軸、横軸に表わしている。図27のP2に示す経線図によると、まず始めに奇数列で副走査方向に4分割された領域のうち3領域にわたる記録幅分を記録し、次に偶数列で残りの1領域の記録幅分を記録する。次に再び奇数列で1領域の記録幅分記録し、更に偶数列で1領域の記録幅分記録する。このようにすることで、階調の急激な変化を軽減することが可能となる。
また、図26(b)〜図26(d)に示されるように副走査方向が完全に連なった場合は、図27のP1の経線図となる。すなわち奇数列で4領域の記録幅分線条に記録し、その後偶数列で4領域の記録幅分ベタ濃度まで記録する。また、図27のP3は図23のテーブルで記録した例である。
このように奇数列と偶数列での記録レベルを組み合わせることで、種々の微細パターンの組み合わせが可能となり、画素形成の記録特性に合わせてザラツキノイズの低減や階調特性の安定化を図ることが可能となる。
なお、本実施形態ではモノクロ画像の画像記録装置について説明したが、カラー画像記録装置も適用することができ、その場合より顕著な効果が得られる。その場合、記録部は例えばイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の4色のインクを用いてカラー画像を記録するが、記録制御信号はこれらの各色についてそれぞれ独立に生成される。また、カラープリンタの位置ずれが1画点前後もしくは1画点以下程度と小さい場合には、Y、M、C、Kの色毎に図23や図25のテーブルにおける「位置」の情報を変化させることで、安定な色再現が可能となる。しかし、実際のカラープリンタの記録系では、1.5画素程度の位置ずれが生じることが多く、各色同一の記録位置の制御であっても実際に記録された色再現は平均的な記録画点位置で決定されるため、特に大きく色再現色の変動することは少ない。
(第3実施形態)本実施形態では、中間調画像と文字及び線画像が全て中間調データとして処理され入力されるケースについて、中間調画像は中間調の再現を忠実に、文字及び線画像は鮮鋭感を優先して再現する例について説明する。
画像信号源(つまり画像入力部1の出力)としては、スキャナの出力信号や、中間調の多値画素データはそのまま出力し文字や線画のコード信号に対してビットマップの画素データを発生するプリンタコントローラ出力を仮定している。例えば、図28のように線が斜めに記録される場合には、それぞれの画点での面積率の中間調データを発生するものを画像信号源とする。すなわち、図28で△、○、□をそれぞれ小さな印字率、中間印字率、ベタ印字率とする。
この場合、画像はもともと線図形であるので、第2実施形態のように単純に奇数ラインと偶数ラインにおいてそれぞれ前基準、後基準で記録幅を増加することは、線分をシャープに表現する上では好ましくない。そこで、本実施形態では入力画像信号のパターン(種類)を調査することで、線画像の一部もしくは鮮鋭感を向上出来るパターンであるかどうかを判別し、線画像の一部もしくは鮮鋭感の向上が可能なパターンであれば線画像の再現がより忠実になるように、具体的にはよりシャープに再現されるように前基準、後基準を決定する。また、線画像の一部でないか、もしくは鮮鋭感を向上出来ないパターンであれば、第2実施形態と同様に奇数ライン及び偶数ラインにより、前基準、後基準を決定する。すなわち、第2実施形態で決定した記録位置の変更は行わないものとする。
図29は、このような機能を有する本実施形態に係る画像記録装置の構成を示すブロック図であり、図18と相対応する部分に同一符号を付してある。図29においては、画像入力部1からの画像信号の種類を判別する画像判別部11と、この画像判別部11の判別結果に従って、信号変換部3から出力される記録制御信号の記録位置情報を変えることによって記録位置を変更する記録位置変更部12が設けられている。
画像判別部11では、画像入力部1からの画像信号の種類を画像のパターンから判別し、その判別結果に基づいて前基準とするか後基準とするかの判定を行う。すなわち、画像判別部11により画像信号が線画像の一部かもしくは鮮鋭感を向上できるパターンであると判定された場合には、信号変換部3から出力される量子化された記録制御信号の記録位置情報の内容が記録位置変更部12で書き換えられる。線画像の一部もしくは鮮鋭感を向上出来るパターンであると判定されなかった場合には、このような記録位置情報の書き換えは行われない。
また、記録位置変更部12で記録位置情報が書き換えられた場合には、記録濃度推定部9から出力される記録濃度推定値が修正される。すなわち、記録画像の鮮鋭さが強調されて濃度が変化した場合には、信号変換部3から記録位置変更部12を経て記録濃度推定部9に入力される記録制御信号の記録位置情報が変化するので、その分だけ図22のROMに入力されるアドレス値が変わり、記録濃度推定値が修正されることにより、誤差拡散のループによって全体的な記録濃度は保たれることとなる。
図30に、画像判別部11の詳細な構成を示す。画像入力部1から入力される画像信号をラインメモリ71、72、73、74により遅延させ、1ライン目から5ライン目までの同列の画像データを並列に取り出す。3ライン目の遅延された画像データは、図29の加算器2にも入力される。1ライン目〜5ライン目の画像データは、ROM又は論理回路により構成される多値/2値判定回路75、76、77、78、79により濃度0(x=0)、中間調(0(x=1)の識別が行われ、2ビットのデータに変換される。鮮鋭感強調判定ROM80では、多値/2値判定回路75、76、77、78、79からの各ラインの2ビットデータにより鮮鋭感が強調可能かどうかの判定を行い、強調が可能であったなら前基準、後基準のデータを出力する。
図31は、鮮鋭感強調判定ROM80に格納されるテーブルの例であり、入力値p(p1〜p5)と出力値dとの関係を示している。また、図32に上下3画素内又は5画素内で記録位置の変更を行う様子を示す。図32において、破線は記録しない領域、実線は記録する領域を示す。
図31の例では画像信号が中間調であるときのみ(p3=1)、記録位置が変更される。画像信号が白もしくはベタでは、記録位置は必ず画素の端部であり、その変更は不可能であるためである。また、2値データの近傍の中間調で反対側が白の場合は、線分のエッジであるため、その中間調はベタ側に寄せる。すなわち、隣接する2つの画点の一方がベタで、他方が白の場合(図31でa及びbの場合、つまりp2=2でp4=0か、又はp4=2でp2=0の場合)は、図32において(a1)を(a2)のように、また(b1)を(b2)のように、記録位置をベタ画点側に変更する。こうすると線がぼけることなく、エッジがシャープになり、主走査方向に平行に近い斜め線ではザラツキノイズが小さくなる。
また、隣接する画点の一方が中間調で他方が白、その更に両側に隣接する画点が白の場合、つまり細い線分が2画点にまたがって走査されるか、もしくはラスタライズされた画像の場合(図31でc及びdの場合)は、線分が細くなるように記録位置を変更する。すなわち、図32において(c1)を(c2)に、また(d1)を(d2)に記録位置を変更する。これら以外では、記録位置の変更は行わない。このようにすることで斜め線のザラツキノイズを低減し、更にシャープな画像を再現することが可能となる。
なお、記録位置の変更は再現画像がよりシャープに更にザラツキノイズを低減するように選択すれば良く、図31のテーブルに従って記録位置の変更を行うことには限定されない。また、鮮鋭感強調判定部は必ずしもROMで構成する必要はなく、論理回路で構成してもよい。
また、本実施形態では入力画像信号の画像の種別を入力画像信号から直接判定して記録位置の変更の有効性を判定したが、信号変換部3から出力される記録制御信号、すなわち量子化された画像信号から入力画像信号の画像の種別を判定し、それに基づいて記録位置の変更を行ってもよい。この場合にも、記録位置の変更処理は図30と同様の構成で実現することが可能となる。但し、この場合には画像入力部1からの入力画像信号に代えて、量子化された記録制御信号中の記録幅情報のみを用いればよいため、ラインメモリ71〜74の記憶容量は小さくてよい。
更に、本実施形態では入力画像信号の種類(画像パターンの配列)により記録位置の変更を行うことで鮮鋭感を得る処理を説明したが、入力画像信号に対して良く知られた高域成分の強調を行ってから本実施形態の処理を行うと、更に効果的となる。すなわち、第2実施形態及び第3実施形態では多値の誤差拡散が基本となっており、このような処理を行うと一般に画像データはぼけ画像に変換される。しかし、このぼけを補う意味で高域強調を行うと、よりシャープな画像を得ることができる。更に、その場合には高域強調を行って記録位置の変更が必要かどうかの識別が行われることとなるので、エッジの検出がより容易となり、鮮鋭感を有効に強調することが可能となる。
(第4実施形態)図33は、本実施形態に係る画像記録装置の構成を示す図であり、図18に示した第3実施形態において記憶部13が追加されている。記憶部13はラインメモリによって構成され、信号変換部3から出力される記録制御信号を1ライン分記憶する。記憶部13の出力は信号変換部3と記録濃度推定部9に入力される。
この場合、信号変換部3は記憶部13から出力される注目画素以前に既に変換された画素の記録制御信号を参照して、注目画素の記録制御信号を決定する。具体的な決定方法は後述する。こうして決定された記録制御信号は、制御信号変換部3の出力信号となるとともに、記憶部13に記憶される。
一方、記録濃度推定部9では注目画素の近傍の記録制御信号の組より、注目画素での記録濃度を推定し、記録濃度推定値を出力する。記録濃度推定部9から出力される記録濃度推定値は、第2実施形態と同様に減算器7により加算器2から出力される補正後の画素濃度値から減算され、これにより誤差信号が生成される。そして、この誤差信号が誤差拡散部8に入力されることにより、画像入力部1からの画像信号に対して誤差拡散が行われる。
本実施形態における記録濃度推定部9は、ラインメモリからなる記憶部13に記憶された、注目画素とその近傍画素の記録制御信号の組より注目画素近傍の記録濃度を推定する。これは必ずしも記録制御信号により規定される記録幅(露光パルス幅)が記録濃度に比例せず、露光パルスの位置関係によっても記録濃度が異なるからである。例えば、注目画素の周辺の画素の記録制御信号(露光パルス)が図34に示すような分布であるとすると、感光体ドラム24上の光の分布は図35のようになる。これより電位分布及びトナー量分布を計算することによって、記録濃度を推定することができる。露光量と現像されるトナー量の関係は前記の図5にしたような非線形な特性を持つので、図34(a)(b)のように同じデューティ50%の露光パルス幅でも、露光パルス開始時間が異なると、記録濃度も異なることがある。
本実施形態は、記録画像の画点がある程度の大きさになるように制御を行うことが特徴である。画点とは、感光体ドラム24上でトナーが付着される連結した領域のことである。前述したように、露光パルス幅が短いと感光体ドラム24上の電位は中程度の電位の領域が多くなり、濃度安定性が悪くなったり、ざらつきノイズが増えたりする。従って、これらを防ぐには、露光制御信号のオン・オフの境界がなるべく少なくなるようにすればよい。しかし、この境界を大きくし過ぎると粒状性が強くなり、かえって画質が低下するので、適当な値に制御する必要がある。
特に、低濃度領域では全体の面積に対する画点面積の比率を小さくする必要があるが、1つの画点を小さくすると露光量が低くなり、濃度安定性が著しく悪化する。このため、低濃度領域ではある程度粒状性が目立っても、画点間を大きくし、画点の大きさが小さくなり過ぎないように制御する必要がある。
このように記録幅つまり画点の大きさが小さくなり過ぎないようにするため、本実施形態では信号変換部3において注目画素と既に決定したその周辺画素での記録制御信号を参照して、注目画素の記録制御信号を決定する。図36に、信号変換部3で注目画素の記録制御信号を決定する際の参照範囲を示す。図中でX印は注目画素である。斜線部分は既に記録制御信号が決定された画素であり、これらの画素の記録制御信号は記憶部13に記憶されている。本実施形態では注目画素Xの上及び左の隣接画素の記録制御信号と、注目画素Xの記録濃度値から注目画素Xの記録制御信号を決定する。この決定手順について説明する。
まず、注目画素Xの記録濃度値より記録制御信号の暫定的な記録幅情報、つまり露光パルス幅Tを決定する。これは単に比例計算により決めてもよいが、本実施形態では記録系の特性を考慮して、図37に示す感光体ドラム上の記録濃度と露光パルス幅との非線形の関係を用いている。
次に、表1に示すように、注目画素Xの隣接画素A、Bの記録制御信号によって、注目画素Xの記録制御信号を決定する。表1は、隣接画素A、Bの記録制御信号(記録幅情報=パルス幅、記録位置情報=パルス位置)の16通りの組み合わせに対する注目画素Xの記録制御信号を示している。表1に対応する16通りの記録パターンを図38に示す。図38は、図36と同様に横方向が主走査方向、縦方向が副走査方向をそれぞれ表わし、右下の画素が記録制御信号を決定すべき注目画素X、注目画素Xの上方及び左方の画素が参照される隣接画素A、Bを表わす。隣接画素A、B内の斜線部分がその画素の記録制御信号の記録幅情報と記録位置情報を表わす。
表1に示す記録制御信号の決定規則の考え方について説明する。ここでは、次の3つの考え方に基づいている。第1に、注目画素Xの隣接画素に画点がない場合、又は左方の隣接画素に画点がなく、上方の隣接画素の上方に画点がある場合には、注目画素Xは孤立点となり易いので、これを防ぐために露光パルス幅を本来の露光パルス幅よりも小さくし、なおかつ露光パルス位置を後方にする。この場合、注目画素Xの記録濃度は本来の計算値より小さくなるため、誤差拡散処理の効果により隣接画素には大きな画点が記録され易くなる。これにより、小さい画点が形成されにくくなる。
第2に、注目画素Xの左方の隣接画素に画点がある場合は、その画点に連結するようにパルス位置を決定する。すなわち、注目画素Xの露光パルス位置を左方の隣接画素の露光パルス位置に合わせる。但し、この露光パルス幅が狭いと孤立的になるので、ある程度以上の露光パルス幅が得られない場合は、露光パルス幅を広くするか、あるいは0にする。
第3に、注目画素Xの上方の隣接画素の下方に画点がある場合、その画点に連結するように注目画素Xの画点を前方に配置する。この場合、画点が大きい方が安定となるので、露光パルス幅は本来の値より大きくする。
実際には、これらの3つの条件は排他的ではないので、これらの組合わせの条件も生ずるが、この場合はそのパターンの形状から適当なものを選んでいる。図39に、信号変換部3での処理の具体例を示す。図39における画素の配置及び斜線部分の意味は図38と同様であり、注目画素X内の斜線部分が決定された記録制御信号の記録幅と記録位置を表わす。
図39(a)は、注目画素Xの上方向及び左方向の2つの隣接画素A、Bの画点がない場合、すなわち注目画素Xの記録制御信号が共に0で、注目画素Xの露光パルス幅の暫定値がT=0.7の場合である。この場合は、条件1に従い注目画素Xの記録制御信号は露光パルス位置が下方で露光パルス幅が0.2の信号となる。このように注目画素Xの上方及び下方の隣接画素A、Bに画点が形成されない場合は、注目画素X内の下部に画点が形成されるので、画点間の距離が広がるとともに、誤差拡散処理による濃度保存のメカニズムにより画点が大きくなり、孤立点となりにくくなる。
図39(b)は、注目画素Xの左方の隣接画素Bに画点があり、上方の隣接画素Aに画点がない場合で、注目画素Xのパルス幅暫定値が0.5の場合である。この場合は、条件5に従い注目画素Xの記録制御信号は露光パルス位置が上方で露光パルス幅が0.5の信号となる。これにより注目画素Xの画点は、左方の隣接画素の画点と連結し、画点の孤立化が防止される。
図39(c)は、注目画素Xの上方の参照画素Aに画点があり、左方の隣接画素Bに画点がない場合で、注目画素Xの露光パルス幅の暫定値が0.3の場合である。この場合は、条件3に従い注目画素Xの記録制御信号は露光パルス位置が上方で露光パルス幅が0.5の信号となる。これにより、注目画素Xの画点は上方の隣接画素Aの画点と連結し、画点の孤立化が防止される。
上記のように本実施形態では、注目画素Xの隣接画素A、Bの画点とその位置から注目画素Xの記録制御信号を決定することにより、画点のつながりを制御でき、従って現像時に記録濃度が不安定になりやすい感光体ドラム上の中間電位の領域を小さくすることができる。
なお、本実施形態では注目画素Xの記録制御信号の決定に用いる参照画素として注目画素Xに隣接する2つの隣接画素を用いたが、参照画素を更に多くとることによって、注目画素Xの画点の大きさをより精度よく制御することが可能となる。
このように本実施形態によれば、記録制御信号を決定する際に、注目画素の周囲の画素の記録制御信号をも参照することにより、注目画素の画点を適正な大きさとなるように制御することができる。これにより、濃度安定性を高めたまま粒状性の低い画像を記録することができる。
(第5実施形態)本実施形態では、感光体ドラムの露光に第2実施形態〜第4実施形態の固体発光素子アレイによる走査に代えて、第1実施形態と同様に、レーザによる走査光学系を用いた例について説明する。
図6と重複するが、図40に、本実施形態に係る画像記録装置における記録部の構成を示す。図40において、パルス幅変換部51には信号変換部3から出力される記録制御信号S1が入力される。パルス幅変換部51は、デジタル信号で表現された記録幅情報と記録位置情報からなる記録制御信号S1を該信号S1の値に応じたパルス幅の露光制御信号S2に変換する。この露光制御信号S2は、感光体ドラムに照射される露光光の発光開始時間と発光時間を制御する信号である。本実施形態では記録制御信号S1を5ビットとし、これらのうちの4ビットを発光時間制御ビットとし、1ビットを発光開始時間制御ビットとしている。4ビットの発光時間制御ビットは16値の数を表わし、この値がxの場合、発光時間はa・x/15で与えられる。ここで、aは1画素の時間幅である。また、1ビットの発光開始時間制御ビットの“0”は、1画素の最初に発光を開始し、“1”は1画素の最後に発光を終了することを意味する。
図41は、パルス幅変換部51での実際の信号変換の例であり、(a)が発光開始時間制御ビット、(b)が発光時間制御ビット、そして(c)が露光制御信号S2である。1画素目では発光時間制御ビット(b)の値が“15”なので、その間、露光記録制御信号(c)は1となる。また、2画素目では発光時間制御ビット(b)の値が“7”、発光開始時間制御ビット(a)が“1”なので、1画素の最後の7/15の期間だけ露光記録制御信号(c)は“1”となる。
このようにしてパルス幅変換部51から出力される露光記録制御信号S2はレーザダイオード52に入力され、レーザダイオード52から出射される光をオン・オフ制御する。そして、レーザダイオード52から出射された光は、集光レンズ53を介してポリゴンミラー54で反射された後、レンズによる結像光学系55により感光体ドラム24に集束されることにより、感光体ドラム24の表面に静電潜像を形成する。ポリゴンミラー54は回転しているので、その集束点は感光体ドラム24の軸に平行に移動する。この際、感光体ドラム24の軸上のどの位置でも光が集束するように、結像光学系55にはf−θレンズ系を用いている。
感光体ドラム24の表面は感光体材料よりなっており、露光前に図示しない帯電器により一様に帯電されている。感光体ドラム24の表面は、光が照射されるとその点に逆極性の電荷が発生し、帯電電位が打消されることにより露光量に応じた電位分布が静電潜像として形成される。感光体ドラム24の露光量と表面電位の関係は、例えば図3に示した通りである。
レーザダイオード52の発光は、露光制御信号S2により制御される。この場合、露光制御信号S2の1ラスタの長さとポリゴンミラー54の回転を同期させ、露光制御信号S2のラスタ間隔に感光体ドラム24の回転速度を合わせることにより、入力画像信号に対応した静電潜像が形成されることになる。
次に、図示しない現像ローラにより感光体ドラム24上の静電電位に応じたトナーが感光体ドラム24に付着され、これが記録紙に転写・定着されることにより、画像が記録紙上に形成される。現像系の構成は図2と同様であるので、詳細な説明は省略する。
ここで、図42(a)に示す露光制御信号S2が与えられた場合の感光体ドラム24上の露光光量分布を図42(b)に示す。図42(b)において、斜線で示した領域が露光部分であり、これは図42(a)の露光制御信号に光のスポット形状を畳み込んだ形となる。
レーザダイオード52が点光源でないことや、結像光学系のボケなどにより、露光部分と非露光部分の境では、露光量がなだらかに変化するので、図42(b)の線A−A′上の露光光量分布は図42(c)のようになる。境界付近には中間の露光量の領域があり、特に露光光のオン・オフの変化の多い部分では、この中間露光量の領域の面積は多くなる。
ここで、第2実施形態〜第4実施形態においては記録幅の変調方向が主走査方向(感光体ドラムの回転軸に平行な方向)であったのに対し、本実施形態は副走査方向(感光体ドラム24の回転方向)と平行である点が異なる。そのため、信号変換部3ではそれに適したような記録制御信号を出力する。すなわち、本実施形態の信号変換部3は基本的には第2実施形態〜第4実施形態とほぼ同じであるが、制御信号の決定方法が第2実施形態〜第4実施形態と異なっている。
表2は信号変換部3での記録制御信号決定方法を示したものであり、表1に示した第4実施形態における記録制御信号決定方法における隣接画素AとBの位置を交換したものとなっている。
このように、本実施形態では露光系にレーザによる走査光学系を用いた場合において、第4実施形態と同様に画点が適正な大きさになるような制御を行うことができるので、濃度安定性を高めたまま粒状性の低い画像を記録することができるという第4実施形態と同様の効果を得ることができる。
なお、第3実施形態〜第5実施形態についても第2実施形態と同様にカラー画像記録装置への応用が可能であることはいうまでもない。加えて、第1実施形態に、第2実施形態〜第4実施形態の記録濃度推定部9等を適用することも可能である。本発明は、上記の発明の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々変形して実施できるのは勿論である。