JP2004339449A - ポリアミド樹脂および製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】成型時の金型汚れおよび成形不良等の原因となる低分子量成分が低減されたポリアミド樹脂およびその製造方法を提供する。
【解決手段】回分式溶融重合槽を用いたポリアミド樹脂の製造方法であって、
(1)アジピン酸が60モル%以上であるジカルボン酸成分を溶融する工程、
(2)200℃以下の溶融状態にあるジカルボン酸成分に対し、溶媒の非存在下に、重合圧力における沸点が200℃より高いジアミン成分を、連続的にもしくは間欠的に添加を開始する工程、および
(3)少なくともモル比(ジアミン成分/ジカルボン酸成分)が0.1に達するまで反応系の温度を200℃以下に維持する工程
を含むことを特徴とするポリアミド樹脂の製造方法。
【選択図】 無
【解決手段】回分式溶融重合槽を用いたポリアミド樹脂の製造方法であって、
(1)アジピン酸が60モル%以上であるジカルボン酸成分を溶融する工程、
(2)200℃以下の溶融状態にあるジカルボン酸成分に対し、溶媒の非存在下に、重合圧力における沸点が200℃より高いジアミン成分を、連続的にもしくは間欠的に添加を開始する工程、および
(3)少なくともモル比(ジアミン成分/ジカルボン酸成分)が0.1に達するまで反応系の温度を200℃以下に維持する工程
を含むことを特徴とするポリアミド樹脂の製造方法。
【選択図】 無
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、成型材料、ボトル、シート、フィルム、繊維用に好適に用いられるポリアミド樹脂の製造方法に関する。更に詳しくは、成型時の金型汚れおよび成形不良等の原因となる低分子量成分を低減した、ジカルボン酸成分とジアミン成分から成るポリアミド樹脂およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリアミド樹脂は一般にポリマー生成に関する重縮合平衡以外に、環状−鎖状構造間の化学平衡も存在している。アミノカルボン酸もしくはラクタムを原料とする様なナイロン6タイプのポリアミド樹脂には重合後に相当量の環状構造物を主体とする低分子量成分が含まれるため、抽出操作が必要である。一方、ジアミン成分とジカルボン酸成分から成るポリアミド樹脂は、平衡はかなり鎖状構造に寄っているものの環状構造物は皆無では無く、ある割合で存在する。また、鎖状構造であったとしてもモノマーあるいはオリゴマーと称される低分子量成分は存在する。この様な低分子量成分は、成形加工上様々な不都合をもたらす。例えば射出成形においては、金型の汚れ、成型品のひけ、成型品表面の荒れ等の原因となる。押出成形においては、ダイスのヤケ、成型品表面の荒れ、成型品表面での低分子量成分の析出、冷却ロールの汚染等であり、繊維成形では、糸切れ、糸径の変動等である。また溶融粘度安定性の欠如、成型品の物性低下、溶出による内容物の汚染等、多大な影響を与えるため、環状および鎖状構造のモノマーあるいはオリゴマーの様な低分子量成分はできる限り除去されることが望まれる。
【0003】
アミノカルボン酸もしくはラクタムを原料とする様なナイロン6タイプのポリアミドから重合後に低分子量成分の抽出操作を行う際、一般には熱水抽出塔が用いられ、抽出塔上部に供給されたペレットは、塔下部から送られる熱水にて向流抽出された後、下部から連続的に取り出される。抽出後は乾燥され、製品となる。
低分子量成分を低減するため、溶融重合工程の中に低分子量成分を除去する工程を組み込むことは、商業的にも効率的であり好ましい。一般には重合反応に寄与する未反応のモノマーまで除かれない様に、反応が最も進んだ重合工程の後半において、低分子量成分の除去が実施される。ナイロン6樹脂では未反応モノマーを主体とする低分子量成分を除くため、未反応モノマーの除去と後重合を同時に行う方法が開示されている(特許文献1参照。)。また、薄膜蒸発機を用いて、ナイロン6樹脂からモノマー、オリゴマーを除去する方法も提案されている(特許文献2、および3参照。)。
【0004】
ジアミン成分とジカルボン酸成分から成るナイロン66タイプのポリアミド樹脂では、ナイロン6タイプのポリアミドに比較し環状構造物を主体とする低分子量成分が少ないため、一般にはこの様な抽出操作はとられていない。低分子量成分を低減するためナイロン6の様に抽出を行うことは、品質を向上させる上で極めて有効であるが、経済的理由から抽出操作は省略されてきた。
【0005】
ところで、ジカルボン酸成分とジアミン成分から成るポリアミド樹脂を製造する際に、供給原料としてナイロン塩水溶液を用いることが一般的である。先ずナイロン塩水溶液を加圧下に加熱し、ジアミン成分の留出を抑えながら均一相で重合を進め、ジアミン成分を固定化したのち系内の水蒸気を徐々に放圧し、最終的に常圧もしくは減圧とし重合を完結させる。ナイロン塩を供給原料とする方法(特許文献4、および5参照。)もあるが、ナイロン塩の単離,精製工程が新たに必要であり、効率の良い方法とは言い難い。ナイロン塩およびナイロン塩の水溶液を供給原料としない重合方法として、少量の水を含んだジアミンを常圧下220℃以下の温度で滴下して反応を行う方法がある(特許文献6参照。)。更に、溶媒の非存在下に溶融状態にあるジカルボン酸成分にジアミン成分を常圧下に滴下し、直接反応させる方法が開示されており、熱履歴も少なく経済的にも有利な方法である(特許文献7、および8参照。)。
【0006】
これらいずれの供給原料を用いた場合であっても、基本的には溶融重合には次の3つの工程が含まれる。先ずジアミンの固定化が主目的となる前期重縮合工程、溶媒水および/あるいは縮合水の大部分の留去と重合の促進が目的である中期重縮合工程、そして目標とする重合度(分子量,粘度)を達成する後期重縮合工程の3工程である。
回分式では1つの重合槽を用いて重合条件を調整しながら上記3工程を順次経る。一般に回分式では3工程の全てに対応するため縦型重合槽が用いられるため、単位処理量あたりの蒸発表面積を大きくすることができない。従って、後期重縮合工程で低分子量成分を除去するには、反応混合物の縦型反応槽における滞留時間を長くする必要があり、反応混合物は長い熱履歴を経ることになり、得られる生成物の着色度が高くなる。また、高真空下に保つことは、液面上昇、発泡等の問題から難しい。
【0007】
一方、半連続式あるいは完全連続式では、2つ以上の重合器を用いて3工程毎に最適な重合器と重合条件が選ばれる。後期重縮合工程を担う後期重合器には、低分子量成分の低減と同じ作用効果である水分を除去する性能、つまりポリアミド樹脂の平衡反応をポリマー生成側にずらすための脱気性能の他に、ポリマー鎖の末端アミノ基と末端カルボキシル基の反応を促進するための攪拌混合性能が求められる。従って、半連続式および完全連続式の重合方法の方が、回分式より低分子量成分の低減には有利である。
【0008】
溶融重合後あるいは溶融重合工程の後半で低分子量成分を除去するのではなく、溶融重合における低分子量成分の生成量そのものを低下させることが重要であり、極めて効率的である。ナイロン6では低温で重合することでラクタムモノマーおよび環状オリゴマー量が低下することが判っている(例えば、非特許文献1参照。)。ナイロン66タイプのポリアミド樹脂においても、同様の知見が得られる。しかし、ラクタムモノマー、アミノカルボン酸、ナイロン塩水溶液、およびナイロン塩を供給原料とする溶融重合方法では、反応の開始当初から反応の主生成物は、アミノ基とカルボキシル基のモル比がほぼ一致したポリアミドであり、重合度が約6〜10以上からその融点は最終的に得られるポリアミド樹脂の融点とほぼ一致する。つまり、反応系を均一な液相に保つため、重合反応の開始当初から反応系の温度を得られるポリアミド樹脂の融点近傍、もしくは溶媒水への溶解温度以上に維持する必要があり、限られた範囲で反応温度を低下させる事しかできず、その効果は極めて小さなものである。またその際、非常に厳密な温度管理を必要とする。
【0009】
この様に、低分子量成分が低減されたポリアミド樹脂を得ることを目的として、ポリアミド樹脂に含まれる低分子量成分を除去する方法は、多数考案され、商業的に実施されているものもあり確実な効果が得られている。しかし、抽出搭と乾燥機、薄膜蒸発機等の設備が必要であり、更に低分子量成分の生成そのものを低減する技術は充分なものとは言い難く、より簡便で確実な方法の開発が望まれていた。
【0010】
【特許文献1】
特開昭60−101120号公報
【特許文献2】
特開昭53−111394号公報
【特許文献3】
特開2000−256460号公報
【特許文献4】
特公昭33−15700号公報
【特許文献5】
特公昭43−22874号公報
【特許文献6】
特開昭48−12390号公報
【特許文献7】
特開昭57−200420号公報
【特許文献8】
特開昭58−111829号公報
【非特許文献1】
ポリアミド樹脂ハンドブック 日刊工業新聞社 昭和63年1月 P59〜P61
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解消し、成型時の金型汚れおよび成形不良等の原因となる低分子量成分が低減されたポリアミド樹脂およびその製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討した結果、溶融状態にあるジカルボン酸成分にジアミン成分を直接添加してポリアミド樹脂を製造するに際し、特定のモル比(ジアミン成分/ジカルボン酸成分)に達するまで特定温度に維持することで、低分子量成分が低減されたポリアミド樹脂が得られる事を見出し、本発明を完成させた。
【0013】
すなわち本発明は、回分式溶融重合槽を用いたポリアミド樹脂の製造方法であって、
(1)アジピン酸が60モル%以上であるジカルボン酸成分を溶融する工程、
(2)200℃以下の溶融状態にあるジカルボン酸成分に対し、溶媒の非存在下に、重合圧力における沸点が200℃より高いジアミン成分を、連続的にもしくは間欠的に添加を開始する工程、および
(3)少なくともモル比(ジアミン成分/ジカルボン酸成分)が0.1に達するまで反応系の温度を200℃以下に維持する工程
を含むことを特徴とするポリアミド樹脂の製造方法、
および該製造方法で得られ、水/メタノール=1/9(重量比)による還流下での抽出量が1.6重量%未満であることを特徴とするポリアミド樹脂である。
【0014】
【発明の実施の形態】
ポリアミド樹脂の重合度を制御する上で、モル比を所定の値に保つ事が非常に重要であり、ジアミン成分の固定化が大きな課題である。本発明では、溶媒の非存在下にジカルボン酸成分にジアミン成分を直接添加する方法を取るため、ジカルボン酸成分、重合途中の生成物および最終的に得られるポリアミド樹脂の融点以上の沸点を有するジアミン成分を用いる事が好ましい。なぜならば、気相より液相状態のジアミンの方が固定化する上で効率のよいことは明らかであり、更にジアミンの液化を目的に高度な加圧条件を選択する必要がなく、常圧付近での反応が可能なため設備的にも有利となるためである。
【0015】
本発明で言う、重合途中の生成物および最終的に得られるポリアミド樹脂(以後、ポリアミド樹脂と言うことがある。)の融点とは、DSC測定等で観測される結晶融解熱に起因する吸熱ピーク温度を指し、この融点以上の温度にポリアミド樹脂を加熱することにより均一な攪拌混合が達成される。また、明確な結晶融解を示さない難晶性もしくは非晶性ポリアミド樹脂の場合は、均一な攪拌混合が可能となる温度つまり流動開始温度を指す。
【0016】
ジアミン成分の沸点はポリアミド樹脂の融点より5℃以上、更に好ましくは10℃以上高い沸点を有するジアミンの使用が好ましい。しかし、本発明はジアミン成分が溶融状態にあるジカルボン酸成分に滴下される製造方法によるため、モル比が0.5〜0.6以下であれば、重合途中の生成物の融点はジカルボン酸成分の融点とほぼ一致する。従って、モル比が0.5以下の条件において滴下されれば、上記要件を満たさなくてもジカルボン酸の融点以上の沸点を有するジアミン成分であれば、ジアミン成分の固定化が可能であり、好適に用いられる。本発明では、重合圧力における沸点が200℃より高いジアミン成分を用いる。更に、ジアミン成分の60モル%以上が、ポリアミド樹脂の融点より5℃以上高い沸点を有するジアミンである、キシリレンジアミンおよび/またはビスアミノシクロヘキサンであることが好ましい。キシリレンジアミンはメタ,パラおよびオルソキシリレンジアミンが例示でき、ビスアミノメチルシクロヘキサンは1,2−、1,3−、1,4―ビスアミノメチルシクロヘキサンが例示できる。また、得られるポリアミド樹脂の実用的な物性から考えて、メタキシリレンジアミンを50mol%以上含むジアミン成分の使用が好ましく、より好ましくは70mol%以上である。
【0017】
キシリレンジアミンおよびビスアミノメチルシクロヘキサン以外のジアミン成分としては、テトラメチレンジアミン,ペンタメチレンジアミン,ヘキサメチレンジアミン,ヘプタメチレンジアミン,オクタメチレンジアミン,ノナメチレンジアミン,オルソフェニレンジアミン,メタフェニレンジアミン,パラフェニレンジアミン等が挙げられる。
【0018】
本発明では、全てのジカルボン酸成分をジアミン成分の沸点以下の融点を有するジカルボン酸とする必要は無い。なぜならば、主たるジカルボン酸の融点がジアミン成分の沸点以下であれば、高融点を有するジカルボン酸が存在しても溶解し、均一な液相を示すからである。また、得られるポリアミド樹脂の実用的な物性から考えて、ジカルボン酸成分の60モル%以上がアジピン酸である事が好ましい。更に好ましくは70モル%以上である。
アジピン酸以外のジカルボン酸成分として、琥珀酸,グルタル酸,アジピン酸,スベリン酸,セバシン酸,ドデカン二酸,イソフタル酸,テレフタル酸,フタル酸,2−6−ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。これらは単独でも2種以上混合しても使用可能である。
【0019】
また、ジアミン成分およびジカルボン酸成分以外のポリアミド構成成分は、カプロラクタム,バレロラクタム,ラウロラクタム,ウンデカラクタム等のラクタム、11−アミノウンデカン酸,12−アミノドデカン酸等のアミノカルボン酸を例示することができ、溶融状態にあるジカルボン酸成分に予め溶解する、もしくはジアミン成分とともに滴下することができる。
【0020】
本発明では所望のモルバランスを有するポリアミド樹脂(ジアミン成分過剰,ジカルボン酸成分過剰および等モル)を得るため、仕込みのモルバランスは任意に選択される。仕込みのモルバランスの調整方法は、例えば、粉体のジカルボン酸成分の重量を秤量し重合槽に供給し溶融する、もしくは溶融状態にあるジカルボン酸成分を溶融槽ごと質量計量器で計量し重合槽に供給する、その後、ジアミン成分貯槽を質量計量器で計量しつつ、ジアミン成分を反応系に供給する方法等が例示できる。本発明においてジアミン成分およびジカルボン酸成分の質量を計量する場合、ロードセル、天秤等の質量計量器が好適に利用可能である。
【0021】
ジカルボン酸成分の溶融工程は、酸化着色を避ける目的から窒素等の不活性ガス雰囲気で行われることが好ましい。ジカルボン酸成分の溶融は重合槽もしくは専用の溶融槽で実施可能であるが、重合槽の利用効率を高める目的から、専用の溶融槽の利用が好ましい。
【0022】
ジアミン成分の添加を開始する際の反応系の温度は、当然ジカルボン酸成分が均一な液相を示す温度に昇温されている事が必要であり、主たるジカルボン酸成分であるアジピン酸の融点以上に加熱されている事が好ましい。更に、ジアミン成分は溶融ジカルボン酸成分を攪拌しつつ連続的にもしくは間欠的に添加されるが、実質的にアミド化反応が進行する温度である150℃以上の温度に加熱されることが好ましく、かつ中間体として生成するオリゴマーおよび/または低分子量ポリアミドが溶融状態となって反応系全体が均一な流動状態を保持しうる温度に加熱されていることが好ましい。また、本発明の最大の特徴である、低分子量成分が低減されたポリアミド樹脂を得るため、少なくともモル比が0.1に達するまで反応系の温度は200℃以下に保たれなければならない。更に好ましくは、モル比が0.2に達するまで反応系の温度は200℃以下に保たれなければならない。また、反応系の温度は190℃以下であることがより好ましい。
【0023】
ジアミン成分の添加、つまりモル比の上昇にともない反応系の融点は上昇するが、モル比が0.5〜0.6に達するまでは、反応系の融点はジカルボン酸成分の融点とほぼ一致する。ジアミン成分の滴下後半では、反応系の融点は最終的に得られるポリアミド樹脂の融点に近接してくる。また、添加終了時点での反応系の温度は、熱履歴を抑制するため最終的に得られるポリアミド樹脂の融点以上、(融点+35℃)未満、好ましくは(融点+15℃)未満に調整される。
以上の様な要因を加味して、反応系の温度は設定されなければならない。つまり、反応系の温度制御は、ジアミン成分の添加に伴い反応系の温度を逐次昇温させ、所定の温度に維持することによって行われる。このとき昇温速度は、中和熱、アミド化反応熱,縮合水の蒸発潜熱,供給熱等に依存するため、ジアミン成分の添加速度も適時調整されなければならない。
【0024】
ジアミン成分の添加中の圧力は特に限定されないが、ジアミン成分を固定化する上で常圧以上が好ましい。しかし、ジアミン成分の60モル%以上をポリアミド樹脂の融点より高い沸点を有するジアミンを用いるため、常圧から微加圧で充分であり、極度な加圧は設備的にも高価となるため好ましくない。
【0025】
本発明ではジアミン成分を添加終了後、反応槽内を常圧以上で、少なくとも5分以上保持することが好ましい。更に好ましくは少なくとも10分以上保持する。ジアミン成分の添加初期には、ジアミン成分に対しカルボキシル基が相当過剰に存在し、ジアミン成分の反応速度つまり固定化速度は極めて速い。しかし、添加終了時にはカルボキシル基が相当量消費されており、添加初期と比較しジアミン成分の固定化速度は極めて遅くなる。また、重合度の増加により、反応混合物の攪拌効率が低下しジアミン成分の固定化に一層不利となる。固定化されなかったジアミン成分は、反応混合物中もしくは反応槽内の気相部分に存在し、あるいは分縮器で凝縮したものは、再度反応混合物に添加される。ジアミン成分の添加を終了した後に、常圧以上で少なくとも5分以上保持することで、この様なジアミン成分が固定化され、仕込みのモルバランスが精度良くポリアミドのモルバランスに再現される。
【0026】
反応槽内を常圧以上で少なくとも5分以上保持した後は、反応槽内を減圧状態とし気相部分に存在する水蒸気を反応系外に留去し、アミド化平衡を利用し重合度を更に高めることができる。あるいは、不活性ガスを反応槽の気相に流通したり、反応混合物中に曝気したりして、水蒸気を留去することで重合度を高めることも可能である。
【0027】
反応の進行と共に生成する縮合水は、100〜120℃の温度に制御されている分縮器と冷却器を通して反応系外に留去される。縮合水と共に蒸気として反応系外に留出するジアミン成分、昇華により留出するジカルボン酸成分等は、分縮器で水蒸気と分離され、反応槽に再度戻される。本発明において、公知のナイロン塩水溶液を原料とする加圧法の場合と同様に、反応原料、特にジアミン成分の反応系外への留出は避けがたく、反応槽は分縮器を備えていることが必要である。分縮器を備えることにより、ジアミン成分が留出することを効果的に防止できる。
【0028】
本発明で得られるポリアミド樹脂は、溶融重合によって得られるが、溶融重合後に更に固相状態で乾燥および重合を行っても、低分子量成分の量的な変化は殆ど無く、固相状態での後処理は特に限定されない。
本発明で得られるポリアミド樹脂を更に溶融状態での後処理する場合、高度な脱気能力を備えた重合機を使用することで低分子量成分の更なる低減が図れるため好ましい。高度な脱気能力を備えた重合機として、1本もしくは平行する2本以上の水平回転軸とこの水平回転軸にほぼ直角に取り付けられた相互に不連続な複数の攪拌翼を有しスクリュー部を有しない筒状である横型の連続式重合機、縦型の薄膜蒸発機、ベントを有する一軸もしくは二軸押出し機、等が好適に使用できる。
【0029】
本発明で得られるポリアミド樹脂の相対粘度(96%硫酸で測定した値)は、1.4以上2.7未満であることが好ましい。1.4未満であるとき、粘度が低いため造粒工程での不都合が懸念される。また、2.7以上であるとき、高粘度のため回分式溶融重合槽内での均一な攪拌混合が困難となり、部分的に過剰な熱履歴を受けたポリアミド樹脂が得られる可能性が高くなる。
【0030】
本発明で得られるポリアミド樹脂の低分子量成分の総量は、水/メタノール=1/9(重量比)による還流下での抽出量によって定義される。詳しくは、ポリアミド樹脂20gに対し、抽出溶媒として水/メタノール=1/9(重量比)を600ml加え加熱し、還流状態で4時間抽出する。本発明で得られるポリアミド樹脂の抽出量は1.6重量%以下であり、更に好ましくは1.3重量%以下である。抽出物には環状もしくは鎖状量のモノマー,ダイマー,トリマー等の低分子量成分が含まれる。上記抽出量を1.6重量%以下とすることにより、成型時の金型汚れおよび成形不良等の不具合を低減することができる。
【0031】
また、本発明で得られるポリアミド樹脂は、ナノコンポジットあるいは酸素捕捉性材料に用いられるポリアミド樹脂としても、好適に利用される。
【0032】
【実施例】
以下に実施例および比較例を示し、本発明を具体的に説明する。なお本発明における評価のための測定は以下の方法によった。
(イ)相対粘度
ポリアミド樹脂1gを精秤し、96%硫酸100ccに20〜30℃で攪拌溶解した。完全に溶解した後、速やかにキャノンフェンスケ型粘度計に溶液5ccを取り、25℃±0.03℃の恒温槽中で10分間放置後、落下時間(t)を測定した。また、96%硫酸そのものの落下時間(t0)も同様に測定した。tおよびt0から次式(A)により相対粘度を求めた。
相対粘度=t/t0・・・・・・・・・・(A)
(ロ)水分(重量%)
三菱化学株式会社製カールフィッシャー微量水分測定装置(CA−06型、VA−06型)を用い、ポリアミド樹脂1〜2gを精秤し、140℃で30分間窒素気流下に加熱し、水分濃度(重量%)を測定した。
(ハ)抽出量(重量%)
ポリアミド樹脂を破砕した後、目開き250μmのメッシュスクリーンでふるい、メッシュスクリーンをパスしたポリアミド樹脂粉末20gを精秤する。尚、このとき上記(ロ)の方法でポリアミド樹脂粉末中の水分を測定し、水分濃度(重量%)の補正を加える。この粉末に水/メタノール=1/9(重量比)を600ml加え加熱し、還流状態で4時間加熱する。その後速やかにガラスフィルターで濾過し、その後水/メタノール=1/9(重量比)で充分にポリアミド樹脂粉末を洗い、濾液および洗液を捕集する。捕集された濾液および洗液を、ロータリーエバポレーターを用いて蒸発乾固し、得られた残渣を精秤する。
抽出量(重量%)として次式(B)に基づき算出した。
抽出量(重量%)=残渣量/{ポリアミド樹脂粉末量×(1−水分濃度×100)}×100・・・(B)
【0033】
実施例1〜4,比較例1〜2
攪拌機、熱電対、分縮器、全縮器、窒素ガス導入管および滴下ロートを備えた2Lのステンレス製の容器にアジピン酸(純度=99.85%,水分=0.15%)585.44g(4mol)を仕込み、窒素置換した。その後、少量の窒素を流通させながら、攪拌しつつマントルヒーターで加熱し、アジピン酸を溶融した。次いで溶融したアジピン酸を攪拌しながら、滴下ロートからメタキシリレンジアミン(沸点=274℃,純度=99.90%)545.31g(4mol)を常圧下に連続的に2時間かけて滴下した。メタキシリレンジアミン滴下開始から所定モル比(ジアミン成分/ジカルボン酸成分)に到達するまでの間、反応系の温度を表1の如く制御した。メタキシリレンジアミンの滴下が終了する際に反応系の温度が250℃に到達する様に、所定モル比に到達以降の反応系の温度を調整しつつ連続的に昇温した。メタキシリレンジアミンの滴下とともに留出する水は分縮器および全縮器を通して反応系外に除いた。このとき分縮器塔頂の最高温度は101℃であった。
メタキシリレンジアミンの滴下終了後、引き続き攪拌しながら0.2℃/分の昇温速度で昇温しながら常圧下に20分保持し、更に5分かけて80kPaまで圧力を低下させ、80kPaで15分間保持した。この間反応系の温度は255〜260℃に維持した。その後、窒素常圧とし加熱を中止し、放冷しポリアミドが冷却固化後、抽出量および相対粘度を測定した。結果を表1に示す。尚、得られたポリアミドの融点は、243℃であった。
【0034】
【表1】
【0035】
比較例3
攪拌機、熱電対、圧力計、調圧弁および窒素ガス導入管を備えた5Lのステンレス製のオートクレーブにアジピン酸/メタキシリレンジアミン等モル塩の60%水溶液2000mlを仕込み、窒素置換後、反応系の温度を250℃まで昇温しつつ、内圧を1.5〜1.9MPaに保って2時間加熱した。更に、30分かけて水蒸気を徐々に放圧しながら内圧を80kPaに低下させ、80kPaで15分間保持し、反応系の温度を255〜260℃に維持した。その後、常圧とし加熱を中止し、オートクレーブを放冷しポリアミドが冷却固化後、抽出量および相対粘度を測定した。得られたポリアミド樹脂の抽出量は1.63重量%、相対粘度は2.10であった。一般的なナイロン塩水溶液を原料とする加圧重合方法では、抽出量の低減されたポリアミド樹脂を得ることはできなかった。
【0036】
実施例5,比較例4
実施例1と同じ反応器にアジピン酸(純度=99.85%,水分=0.15%)585.44g(4mol)を仕込み、窒素置換した。その後、少量の窒素を流通させながら、攪拌しつつマントルヒーターで加熱し、アジピン酸を溶融した。次いで溶融したアジピン酸を攪拌しながら、滴下ロートから1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン(沸点=244℃,純度=99.95%)569.00g(4mol)を常圧下に連続的に2時間かけて滴下した。1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン滴下開始から所定モル比(ジアミン成分/ジカルボン酸成分)に到達するまでの間、反応系の温度を表1の如く制御した。1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンの滴下が終了する際に反応系の温度が240℃に到達する様に、所定モル比に到達以降の反応系の温度を調整しつつ連続的に昇温した。1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンの滴下とともに留出する水は分縮器および全縮器を通して反応系外に除いた。このとき分縮器塔頂の最高温度は103℃であった。
1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンの滴下終了後、引き続き攪拌しながら0.4℃/分の昇温速度で昇温しながら常圧下に20分保持し、更に5分かけて80kPaまで圧力を低下させ、80kPaで15分間保持した。この間反応系の温度は255〜260℃に維持した。その後、窒素常圧とし加熱を中止し、放冷しポリアミドが冷却固化後、抽出量および相対粘度を測定した。結果を表2に示す。尚、得られたポリアミドの融点は、228℃であった。
【0037】
【表2】
【0038】
表1および表2から明らかな様に、溶融状態にあるジカルボン酸成分にジアミン成分を添加する溶融重合方法において、少なくともモル比が0.1に達するまでの間、反応系の温度を200℃以下に維持することで、抽出量が低減されたポリアミド樹脂が得られることがわかる。
【0039】
【発明の効果】
本発明に係るポリアミド樹脂および製造方法によって以下の効果が得られる。(イ)成型時の金型汚れおよび成形不良等の原因となる低分子量成分を低減したポリアミド樹脂を簡便に得ることができる。
(ロ)成型材料、ボトル、シート、フィルム、繊維用に好適に用いられるポリアミド樹脂が得られる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、成型材料、ボトル、シート、フィルム、繊維用に好適に用いられるポリアミド樹脂の製造方法に関する。更に詳しくは、成型時の金型汚れおよび成形不良等の原因となる低分子量成分を低減した、ジカルボン酸成分とジアミン成分から成るポリアミド樹脂およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリアミド樹脂は一般にポリマー生成に関する重縮合平衡以外に、環状−鎖状構造間の化学平衡も存在している。アミノカルボン酸もしくはラクタムを原料とする様なナイロン6タイプのポリアミド樹脂には重合後に相当量の環状構造物を主体とする低分子量成分が含まれるため、抽出操作が必要である。一方、ジアミン成分とジカルボン酸成分から成るポリアミド樹脂は、平衡はかなり鎖状構造に寄っているものの環状構造物は皆無では無く、ある割合で存在する。また、鎖状構造であったとしてもモノマーあるいはオリゴマーと称される低分子量成分は存在する。この様な低分子量成分は、成形加工上様々な不都合をもたらす。例えば射出成形においては、金型の汚れ、成型品のひけ、成型品表面の荒れ等の原因となる。押出成形においては、ダイスのヤケ、成型品表面の荒れ、成型品表面での低分子量成分の析出、冷却ロールの汚染等であり、繊維成形では、糸切れ、糸径の変動等である。また溶融粘度安定性の欠如、成型品の物性低下、溶出による内容物の汚染等、多大な影響を与えるため、環状および鎖状構造のモノマーあるいはオリゴマーの様な低分子量成分はできる限り除去されることが望まれる。
【0003】
アミノカルボン酸もしくはラクタムを原料とする様なナイロン6タイプのポリアミドから重合後に低分子量成分の抽出操作を行う際、一般には熱水抽出塔が用いられ、抽出塔上部に供給されたペレットは、塔下部から送られる熱水にて向流抽出された後、下部から連続的に取り出される。抽出後は乾燥され、製品となる。
低分子量成分を低減するため、溶融重合工程の中に低分子量成分を除去する工程を組み込むことは、商業的にも効率的であり好ましい。一般には重合反応に寄与する未反応のモノマーまで除かれない様に、反応が最も進んだ重合工程の後半において、低分子量成分の除去が実施される。ナイロン6樹脂では未反応モノマーを主体とする低分子量成分を除くため、未反応モノマーの除去と後重合を同時に行う方法が開示されている(特許文献1参照。)。また、薄膜蒸発機を用いて、ナイロン6樹脂からモノマー、オリゴマーを除去する方法も提案されている(特許文献2、および3参照。)。
【0004】
ジアミン成分とジカルボン酸成分から成るナイロン66タイプのポリアミド樹脂では、ナイロン6タイプのポリアミドに比較し環状構造物を主体とする低分子量成分が少ないため、一般にはこの様な抽出操作はとられていない。低分子量成分を低減するためナイロン6の様に抽出を行うことは、品質を向上させる上で極めて有効であるが、経済的理由から抽出操作は省略されてきた。
【0005】
ところで、ジカルボン酸成分とジアミン成分から成るポリアミド樹脂を製造する際に、供給原料としてナイロン塩水溶液を用いることが一般的である。先ずナイロン塩水溶液を加圧下に加熱し、ジアミン成分の留出を抑えながら均一相で重合を進め、ジアミン成分を固定化したのち系内の水蒸気を徐々に放圧し、最終的に常圧もしくは減圧とし重合を完結させる。ナイロン塩を供給原料とする方法(特許文献4、および5参照。)もあるが、ナイロン塩の単離,精製工程が新たに必要であり、効率の良い方法とは言い難い。ナイロン塩およびナイロン塩の水溶液を供給原料としない重合方法として、少量の水を含んだジアミンを常圧下220℃以下の温度で滴下して反応を行う方法がある(特許文献6参照。)。更に、溶媒の非存在下に溶融状態にあるジカルボン酸成分にジアミン成分を常圧下に滴下し、直接反応させる方法が開示されており、熱履歴も少なく経済的にも有利な方法である(特許文献7、および8参照。)。
【0006】
これらいずれの供給原料を用いた場合であっても、基本的には溶融重合には次の3つの工程が含まれる。先ずジアミンの固定化が主目的となる前期重縮合工程、溶媒水および/あるいは縮合水の大部分の留去と重合の促進が目的である中期重縮合工程、そして目標とする重合度(分子量,粘度)を達成する後期重縮合工程の3工程である。
回分式では1つの重合槽を用いて重合条件を調整しながら上記3工程を順次経る。一般に回分式では3工程の全てに対応するため縦型重合槽が用いられるため、単位処理量あたりの蒸発表面積を大きくすることができない。従って、後期重縮合工程で低分子量成分を除去するには、反応混合物の縦型反応槽における滞留時間を長くする必要があり、反応混合物は長い熱履歴を経ることになり、得られる生成物の着色度が高くなる。また、高真空下に保つことは、液面上昇、発泡等の問題から難しい。
【0007】
一方、半連続式あるいは完全連続式では、2つ以上の重合器を用いて3工程毎に最適な重合器と重合条件が選ばれる。後期重縮合工程を担う後期重合器には、低分子量成分の低減と同じ作用効果である水分を除去する性能、つまりポリアミド樹脂の平衡反応をポリマー生成側にずらすための脱気性能の他に、ポリマー鎖の末端アミノ基と末端カルボキシル基の反応を促進するための攪拌混合性能が求められる。従って、半連続式および完全連続式の重合方法の方が、回分式より低分子量成分の低減には有利である。
【0008】
溶融重合後あるいは溶融重合工程の後半で低分子量成分を除去するのではなく、溶融重合における低分子量成分の生成量そのものを低下させることが重要であり、極めて効率的である。ナイロン6では低温で重合することでラクタムモノマーおよび環状オリゴマー量が低下することが判っている(例えば、非特許文献1参照。)。ナイロン66タイプのポリアミド樹脂においても、同様の知見が得られる。しかし、ラクタムモノマー、アミノカルボン酸、ナイロン塩水溶液、およびナイロン塩を供給原料とする溶融重合方法では、反応の開始当初から反応の主生成物は、アミノ基とカルボキシル基のモル比がほぼ一致したポリアミドであり、重合度が約6〜10以上からその融点は最終的に得られるポリアミド樹脂の融点とほぼ一致する。つまり、反応系を均一な液相に保つため、重合反応の開始当初から反応系の温度を得られるポリアミド樹脂の融点近傍、もしくは溶媒水への溶解温度以上に維持する必要があり、限られた範囲で反応温度を低下させる事しかできず、その効果は極めて小さなものである。またその際、非常に厳密な温度管理を必要とする。
【0009】
この様に、低分子量成分が低減されたポリアミド樹脂を得ることを目的として、ポリアミド樹脂に含まれる低分子量成分を除去する方法は、多数考案され、商業的に実施されているものもあり確実な効果が得られている。しかし、抽出搭と乾燥機、薄膜蒸発機等の設備が必要であり、更に低分子量成分の生成そのものを低減する技術は充分なものとは言い難く、より簡便で確実な方法の開発が望まれていた。
【0010】
【特許文献1】
特開昭60−101120号公報
【特許文献2】
特開昭53−111394号公報
【特許文献3】
特開2000−256460号公報
【特許文献4】
特公昭33−15700号公報
【特許文献5】
特公昭43−22874号公報
【特許文献6】
特開昭48−12390号公報
【特許文献7】
特開昭57−200420号公報
【特許文献8】
特開昭58−111829号公報
【非特許文献1】
ポリアミド樹脂ハンドブック 日刊工業新聞社 昭和63年1月 P59〜P61
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解消し、成型時の金型汚れおよび成形不良等の原因となる低分子量成分が低減されたポリアミド樹脂およびその製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討した結果、溶融状態にあるジカルボン酸成分にジアミン成分を直接添加してポリアミド樹脂を製造するに際し、特定のモル比(ジアミン成分/ジカルボン酸成分)に達するまで特定温度に維持することで、低分子量成分が低減されたポリアミド樹脂が得られる事を見出し、本発明を完成させた。
【0013】
すなわち本発明は、回分式溶融重合槽を用いたポリアミド樹脂の製造方法であって、
(1)アジピン酸が60モル%以上であるジカルボン酸成分を溶融する工程、
(2)200℃以下の溶融状態にあるジカルボン酸成分に対し、溶媒の非存在下に、重合圧力における沸点が200℃より高いジアミン成分を、連続的にもしくは間欠的に添加を開始する工程、および
(3)少なくともモル比(ジアミン成分/ジカルボン酸成分)が0.1に達するまで反応系の温度を200℃以下に維持する工程
を含むことを特徴とするポリアミド樹脂の製造方法、
および該製造方法で得られ、水/メタノール=1/9(重量比)による還流下での抽出量が1.6重量%未満であることを特徴とするポリアミド樹脂である。
【0014】
【発明の実施の形態】
ポリアミド樹脂の重合度を制御する上で、モル比を所定の値に保つ事が非常に重要であり、ジアミン成分の固定化が大きな課題である。本発明では、溶媒の非存在下にジカルボン酸成分にジアミン成分を直接添加する方法を取るため、ジカルボン酸成分、重合途中の生成物および最終的に得られるポリアミド樹脂の融点以上の沸点を有するジアミン成分を用いる事が好ましい。なぜならば、気相より液相状態のジアミンの方が固定化する上で効率のよいことは明らかであり、更にジアミンの液化を目的に高度な加圧条件を選択する必要がなく、常圧付近での反応が可能なため設備的にも有利となるためである。
【0015】
本発明で言う、重合途中の生成物および最終的に得られるポリアミド樹脂(以後、ポリアミド樹脂と言うことがある。)の融点とは、DSC測定等で観測される結晶融解熱に起因する吸熱ピーク温度を指し、この融点以上の温度にポリアミド樹脂を加熱することにより均一な攪拌混合が達成される。また、明確な結晶融解を示さない難晶性もしくは非晶性ポリアミド樹脂の場合は、均一な攪拌混合が可能となる温度つまり流動開始温度を指す。
【0016】
ジアミン成分の沸点はポリアミド樹脂の融点より5℃以上、更に好ましくは10℃以上高い沸点を有するジアミンの使用が好ましい。しかし、本発明はジアミン成分が溶融状態にあるジカルボン酸成分に滴下される製造方法によるため、モル比が0.5〜0.6以下であれば、重合途中の生成物の融点はジカルボン酸成分の融点とほぼ一致する。従って、モル比が0.5以下の条件において滴下されれば、上記要件を満たさなくてもジカルボン酸の融点以上の沸点を有するジアミン成分であれば、ジアミン成分の固定化が可能であり、好適に用いられる。本発明では、重合圧力における沸点が200℃より高いジアミン成分を用いる。更に、ジアミン成分の60モル%以上が、ポリアミド樹脂の融点より5℃以上高い沸点を有するジアミンである、キシリレンジアミンおよび/またはビスアミノシクロヘキサンであることが好ましい。キシリレンジアミンはメタ,パラおよびオルソキシリレンジアミンが例示でき、ビスアミノメチルシクロヘキサンは1,2−、1,3−、1,4―ビスアミノメチルシクロヘキサンが例示できる。また、得られるポリアミド樹脂の実用的な物性から考えて、メタキシリレンジアミンを50mol%以上含むジアミン成分の使用が好ましく、より好ましくは70mol%以上である。
【0017】
キシリレンジアミンおよびビスアミノメチルシクロヘキサン以外のジアミン成分としては、テトラメチレンジアミン,ペンタメチレンジアミン,ヘキサメチレンジアミン,ヘプタメチレンジアミン,オクタメチレンジアミン,ノナメチレンジアミン,オルソフェニレンジアミン,メタフェニレンジアミン,パラフェニレンジアミン等が挙げられる。
【0018】
本発明では、全てのジカルボン酸成分をジアミン成分の沸点以下の融点を有するジカルボン酸とする必要は無い。なぜならば、主たるジカルボン酸の融点がジアミン成分の沸点以下であれば、高融点を有するジカルボン酸が存在しても溶解し、均一な液相を示すからである。また、得られるポリアミド樹脂の実用的な物性から考えて、ジカルボン酸成分の60モル%以上がアジピン酸である事が好ましい。更に好ましくは70モル%以上である。
アジピン酸以外のジカルボン酸成分として、琥珀酸,グルタル酸,アジピン酸,スベリン酸,セバシン酸,ドデカン二酸,イソフタル酸,テレフタル酸,フタル酸,2−6−ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。これらは単独でも2種以上混合しても使用可能である。
【0019】
また、ジアミン成分およびジカルボン酸成分以外のポリアミド構成成分は、カプロラクタム,バレロラクタム,ラウロラクタム,ウンデカラクタム等のラクタム、11−アミノウンデカン酸,12−アミノドデカン酸等のアミノカルボン酸を例示することができ、溶融状態にあるジカルボン酸成分に予め溶解する、もしくはジアミン成分とともに滴下することができる。
【0020】
本発明では所望のモルバランスを有するポリアミド樹脂(ジアミン成分過剰,ジカルボン酸成分過剰および等モル)を得るため、仕込みのモルバランスは任意に選択される。仕込みのモルバランスの調整方法は、例えば、粉体のジカルボン酸成分の重量を秤量し重合槽に供給し溶融する、もしくは溶融状態にあるジカルボン酸成分を溶融槽ごと質量計量器で計量し重合槽に供給する、その後、ジアミン成分貯槽を質量計量器で計量しつつ、ジアミン成分を反応系に供給する方法等が例示できる。本発明においてジアミン成分およびジカルボン酸成分の質量を計量する場合、ロードセル、天秤等の質量計量器が好適に利用可能である。
【0021】
ジカルボン酸成分の溶融工程は、酸化着色を避ける目的から窒素等の不活性ガス雰囲気で行われることが好ましい。ジカルボン酸成分の溶融は重合槽もしくは専用の溶融槽で実施可能であるが、重合槽の利用効率を高める目的から、専用の溶融槽の利用が好ましい。
【0022】
ジアミン成分の添加を開始する際の反応系の温度は、当然ジカルボン酸成分が均一な液相を示す温度に昇温されている事が必要であり、主たるジカルボン酸成分であるアジピン酸の融点以上に加熱されている事が好ましい。更に、ジアミン成分は溶融ジカルボン酸成分を攪拌しつつ連続的にもしくは間欠的に添加されるが、実質的にアミド化反応が進行する温度である150℃以上の温度に加熱されることが好ましく、かつ中間体として生成するオリゴマーおよび/または低分子量ポリアミドが溶融状態となって反応系全体が均一な流動状態を保持しうる温度に加熱されていることが好ましい。また、本発明の最大の特徴である、低分子量成分が低減されたポリアミド樹脂を得るため、少なくともモル比が0.1に達するまで反応系の温度は200℃以下に保たれなければならない。更に好ましくは、モル比が0.2に達するまで反応系の温度は200℃以下に保たれなければならない。また、反応系の温度は190℃以下であることがより好ましい。
【0023】
ジアミン成分の添加、つまりモル比の上昇にともない反応系の融点は上昇するが、モル比が0.5〜0.6に達するまでは、反応系の融点はジカルボン酸成分の融点とほぼ一致する。ジアミン成分の滴下後半では、反応系の融点は最終的に得られるポリアミド樹脂の融点に近接してくる。また、添加終了時点での反応系の温度は、熱履歴を抑制するため最終的に得られるポリアミド樹脂の融点以上、(融点+35℃)未満、好ましくは(融点+15℃)未満に調整される。
以上の様な要因を加味して、反応系の温度は設定されなければならない。つまり、反応系の温度制御は、ジアミン成分の添加に伴い反応系の温度を逐次昇温させ、所定の温度に維持することによって行われる。このとき昇温速度は、中和熱、アミド化反応熱,縮合水の蒸発潜熱,供給熱等に依存するため、ジアミン成分の添加速度も適時調整されなければならない。
【0024】
ジアミン成分の添加中の圧力は特に限定されないが、ジアミン成分を固定化する上で常圧以上が好ましい。しかし、ジアミン成分の60モル%以上をポリアミド樹脂の融点より高い沸点を有するジアミンを用いるため、常圧から微加圧で充分であり、極度な加圧は設備的にも高価となるため好ましくない。
【0025】
本発明ではジアミン成分を添加終了後、反応槽内を常圧以上で、少なくとも5分以上保持することが好ましい。更に好ましくは少なくとも10分以上保持する。ジアミン成分の添加初期には、ジアミン成分に対しカルボキシル基が相当過剰に存在し、ジアミン成分の反応速度つまり固定化速度は極めて速い。しかし、添加終了時にはカルボキシル基が相当量消費されており、添加初期と比較しジアミン成分の固定化速度は極めて遅くなる。また、重合度の増加により、反応混合物の攪拌効率が低下しジアミン成分の固定化に一層不利となる。固定化されなかったジアミン成分は、反応混合物中もしくは反応槽内の気相部分に存在し、あるいは分縮器で凝縮したものは、再度反応混合物に添加される。ジアミン成分の添加を終了した後に、常圧以上で少なくとも5分以上保持することで、この様なジアミン成分が固定化され、仕込みのモルバランスが精度良くポリアミドのモルバランスに再現される。
【0026】
反応槽内を常圧以上で少なくとも5分以上保持した後は、反応槽内を減圧状態とし気相部分に存在する水蒸気を反応系外に留去し、アミド化平衡を利用し重合度を更に高めることができる。あるいは、不活性ガスを反応槽の気相に流通したり、反応混合物中に曝気したりして、水蒸気を留去することで重合度を高めることも可能である。
【0027】
反応の進行と共に生成する縮合水は、100〜120℃の温度に制御されている分縮器と冷却器を通して反応系外に留去される。縮合水と共に蒸気として反応系外に留出するジアミン成分、昇華により留出するジカルボン酸成分等は、分縮器で水蒸気と分離され、反応槽に再度戻される。本発明において、公知のナイロン塩水溶液を原料とする加圧法の場合と同様に、反応原料、特にジアミン成分の反応系外への留出は避けがたく、反応槽は分縮器を備えていることが必要である。分縮器を備えることにより、ジアミン成分が留出することを効果的に防止できる。
【0028】
本発明で得られるポリアミド樹脂は、溶融重合によって得られるが、溶融重合後に更に固相状態で乾燥および重合を行っても、低分子量成分の量的な変化は殆ど無く、固相状態での後処理は特に限定されない。
本発明で得られるポリアミド樹脂を更に溶融状態での後処理する場合、高度な脱気能力を備えた重合機を使用することで低分子量成分の更なる低減が図れるため好ましい。高度な脱気能力を備えた重合機として、1本もしくは平行する2本以上の水平回転軸とこの水平回転軸にほぼ直角に取り付けられた相互に不連続な複数の攪拌翼を有しスクリュー部を有しない筒状である横型の連続式重合機、縦型の薄膜蒸発機、ベントを有する一軸もしくは二軸押出し機、等が好適に使用できる。
【0029】
本発明で得られるポリアミド樹脂の相対粘度(96%硫酸で測定した値)は、1.4以上2.7未満であることが好ましい。1.4未満であるとき、粘度が低いため造粒工程での不都合が懸念される。また、2.7以上であるとき、高粘度のため回分式溶融重合槽内での均一な攪拌混合が困難となり、部分的に過剰な熱履歴を受けたポリアミド樹脂が得られる可能性が高くなる。
【0030】
本発明で得られるポリアミド樹脂の低分子量成分の総量は、水/メタノール=1/9(重量比)による還流下での抽出量によって定義される。詳しくは、ポリアミド樹脂20gに対し、抽出溶媒として水/メタノール=1/9(重量比)を600ml加え加熱し、還流状態で4時間抽出する。本発明で得られるポリアミド樹脂の抽出量は1.6重量%以下であり、更に好ましくは1.3重量%以下である。抽出物には環状もしくは鎖状量のモノマー,ダイマー,トリマー等の低分子量成分が含まれる。上記抽出量を1.6重量%以下とすることにより、成型時の金型汚れおよび成形不良等の不具合を低減することができる。
【0031】
また、本発明で得られるポリアミド樹脂は、ナノコンポジットあるいは酸素捕捉性材料に用いられるポリアミド樹脂としても、好適に利用される。
【0032】
【実施例】
以下に実施例および比較例を示し、本発明を具体的に説明する。なお本発明における評価のための測定は以下の方法によった。
(イ)相対粘度
ポリアミド樹脂1gを精秤し、96%硫酸100ccに20〜30℃で攪拌溶解した。完全に溶解した後、速やかにキャノンフェンスケ型粘度計に溶液5ccを取り、25℃±0.03℃の恒温槽中で10分間放置後、落下時間(t)を測定した。また、96%硫酸そのものの落下時間(t0)も同様に測定した。tおよびt0から次式(A)により相対粘度を求めた。
相対粘度=t/t0・・・・・・・・・・(A)
(ロ)水分(重量%)
三菱化学株式会社製カールフィッシャー微量水分測定装置(CA−06型、VA−06型)を用い、ポリアミド樹脂1〜2gを精秤し、140℃で30分間窒素気流下に加熱し、水分濃度(重量%)を測定した。
(ハ)抽出量(重量%)
ポリアミド樹脂を破砕した後、目開き250μmのメッシュスクリーンでふるい、メッシュスクリーンをパスしたポリアミド樹脂粉末20gを精秤する。尚、このとき上記(ロ)の方法でポリアミド樹脂粉末中の水分を測定し、水分濃度(重量%)の補正を加える。この粉末に水/メタノール=1/9(重量比)を600ml加え加熱し、還流状態で4時間加熱する。その後速やかにガラスフィルターで濾過し、その後水/メタノール=1/9(重量比)で充分にポリアミド樹脂粉末を洗い、濾液および洗液を捕集する。捕集された濾液および洗液を、ロータリーエバポレーターを用いて蒸発乾固し、得られた残渣を精秤する。
抽出量(重量%)として次式(B)に基づき算出した。
抽出量(重量%)=残渣量/{ポリアミド樹脂粉末量×(1−水分濃度×100)}×100・・・(B)
【0033】
実施例1〜4,比較例1〜2
攪拌機、熱電対、分縮器、全縮器、窒素ガス導入管および滴下ロートを備えた2Lのステンレス製の容器にアジピン酸(純度=99.85%,水分=0.15%)585.44g(4mol)を仕込み、窒素置換した。その後、少量の窒素を流通させながら、攪拌しつつマントルヒーターで加熱し、アジピン酸を溶融した。次いで溶融したアジピン酸を攪拌しながら、滴下ロートからメタキシリレンジアミン(沸点=274℃,純度=99.90%)545.31g(4mol)を常圧下に連続的に2時間かけて滴下した。メタキシリレンジアミン滴下開始から所定モル比(ジアミン成分/ジカルボン酸成分)に到達するまでの間、反応系の温度を表1の如く制御した。メタキシリレンジアミンの滴下が終了する際に反応系の温度が250℃に到達する様に、所定モル比に到達以降の反応系の温度を調整しつつ連続的に昇温した。メタキシリレンジアミンの滴下とともに留出する水は分縮器および全縮器を通して反応系外に除いた。このとき分縮器塔頂の最高温度は101℃であった。
メタキシリレンジアミンの滴下終了後、引き続き攪拌しながら0.2℃/分の昇温速度で昇温しながら常圧下に20分保持し、更に5分かけて80kPaまで圧力を低下させ、80kPaで15分間保持した。この間反応系の温度は255〜260℃に維持した。その後、窒素常圧とし加熱を中止し、放冷しポリアミドが冷却固化後、抽出量および相対粘度を測定した。結果を表1に示す。尚、得られたポリアミドの融点は、243℃であった。
【0034】
【表1】
【0035】
比較例3
攪拌機、熱電対、圧力計、調圧弁および窒素ガス導入管を備えた5Lのステンレス製のオートクレーブにアジピン酸/メタキシリレンジアミン等モル塩の60%水溶液2000mlを仕込み、窒素置換後、反応系の温度を250℃まで昇温しつつ、内圧を1.5〜1.9MPaに保って2時間加熱した。更に、30分かけて水蒸気を徐々に放圧しながら内圧を80kPaに低下させ、80kPaで15分間保持し、反応系の温度を255〜260℃に維持した。その後、常圧とし加熱を中止し、オートクレーブを放冷しポリアミドが冷却固化後、抽出量および相対粘度を測定した。得られたポリアミド樹脂の抽出量は1.63重量%、相対粘度は2.10であった。一般的なナイロン塩水溶液を原料とする加圧重合方法では、抽出量の低減されたポリアミド樹脂を得ることはできなかった。
【0036】
実施例5,比較例4
実施例1と同じ反応器にアジピン酸(純度=99.85%,水分=0.15%)585.44g(4mol)を仕込み、窒素置換した。その後、少量の窒素を流通させながら、攪拌しつつマントルヒーターで加熱し、アジピン酸を溶融した。次いで溶融したアジピン酸を攪拌しながら、滴下ロートから1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン(沸点=244℃,純度=99.95%)569.00g(4mol)を常圧下に連続的に2時間かけて滴下した。1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン滴下開始から所定モル比(ジアミン成分/ジカルボン酸成分)に到達するまでの間、反応系の温度を表1の如く制御した。1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンの滴下が終了する際に反応系の温度が240℃に到達する様に、所定モル比に到達以降の反応系の温度を調整しつつ連続的に昇温した。1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンの滴下とともに留出する水は分縮器および全縮器を通して反応系外に除いた。このとき分縮器塔頂の最高温度は103℃であった。
1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンの滴下終了後、引き続き攪拌しながら0.4℃/分の昇温速度で昇温しながら常圧下に20分保持し、更に5分かけて80kPaまで圧力を低下させ、80kPaで15分間保持した。この間反応系の温度は255〜260℃に維持した。その後、窒素常圧とし加熱を中止し、放冷しポリアミドが冷却固化後、抽出量および相対粘度を測定した。結果を表2に示す。尚、得られたポリアミドの融点は、228℃であった。
【0037】
【表2】
【0038】
表1および表2から明らかな様に、溶融状態にあるジカルボン酸成分にジアミン成分を添加する溶融重合方法において、少なくともモル比が0.1に達するまでの間、反応系の温度を200℃以下に維持することで、抽出量が低減されたポリアミド樹脂が得られることがわかる。
【0039】
【発明の効果】
本発明に係るポリアミド樹脂および製造方法によって以下の効果が得られる。(イ)成型時の金型汚れおよび成形不良等の原因となる低分子量成分を低減したポリアミド樹脂を簡便に得ることができる。
(ロ)成型材料、ボトル、シート、フィルム、繊維用に好適に用いられるポリアミド樹脂が得られる。
Claims (4)
- 回分式溶融重合槽を用いたポリアミド樹脂の製造方法であって、
(1)アジピン酸が60モル%以上であるジカルボン酸成分を溶融する工程、
(2)200℃以下の溶融状態にあるジカルボン酸成分に対し、溶媒の非存在下に、重合圧力における沸点が200℃より高いジアミン成分を、連続的にもしくは間欠的に添加を開始する工程、および
(3)少なくともモル比(ジアミン成分/ジカルボン酸成分)が0.1に達するまで反応系の温度を200℃以下に維持する工程
を含むことを特徴とするポリアミド樹脂の製造方法。 - ジアミン成分の60モル%以上が、キシリレンジアミンおよび/またはビスアミノメチルシクロヘキサンである請求項1に記載のポリアミド樹脂の製造方法。
- ジアミン成分の50モル%以上がメタキシリレンジアミンである請求項1に記載のポリアミド樹脂の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法で得られ、水/メタノール=1/9(重量比)による還流下での抽出量が1.6重量%未満であることを特徴とするポリアミド樹脂。
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