JP2004331841A - 表刷り用グラビア印刷インキ組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】アクリル樹脂とポリウレタン樹脂とをバインダーとして含有し、その含有率が重量換算でアクリル樹脂:ポリウレタン樹脂=20:80〜80:20であり、フィルム中の酸化防止剤の変色を低減する事を特徴とする芳香族炭化水素溶剤を含有しない表刷り用グラビア印刷インキ組成物。
【選択図】なし
Description
【産業上の利用分野】
本発明は表刷り用グラビア印刷インキ組成物に関し、より詳しくは、長期高温・多湿下での保存においてフィルム中に含まれる酸化防止剤の変色の低減とテーブルクロスなどに用いられている軟質塩化ビニルシートと印刷物が接着しないための耐塩ビブロッキング性が良好で、さらに環境衛生にも優れた表刷り用グラビア印刷インキ組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、包装容器の多様化に伴い、インキ・印刷業界に対する要望は非常に多岐に渡るようになっている。
【0003】
例えば、従来より食品メーカーが包装容器の印刷に求めてきた機能は、消費者が購入する際に、いかにして、内容物がおいしそうで、また、高級であるという感じを抱かせるかという点であり、これら印刷物の品質の良し悪しがそのまま製品の売り上げに直結するといっても過言ではない。
【0004】
さらに、表刷り印刷の分野では、種々のプラスチック製包装容器の表側にインキが印刷されるため、この分野のインキ性能として、印刷適性の他にもフィルムに対する接着性、印刷物同士が接着しないための耐ブロッキング性、テーブルクロスなどに用いられている軟質塩化ビニルシートと印刷物が接着しないための耐塩ビブロッキング性、こすれに対する耐摩擦性、油に対する耐油性、袋の口を溶封する際の耐熱性などといった各種耐性が要求される。
【0005】
そこで、これらの要求性能を満足するように研究を重ねてきた結果、ポリアミド樹脂とセルロース誘導体をバインダーとし、さらに、バインダー樹脂の溶解性が高くなるように、トルエン等の芳香族化合物系有機溶剤を含むインキが用いられてきた。
【0006】
しかしながら、最近では、地球環境にやさしい材料を用いて製品を構成することが産業界全体の大きなトレンドであり、特に食品メーカーでは、消費者にクリーンなイメージを持ってもらう事を第一とすることから、より積極的に環境問題に取り組む姿勢が見られるようになっている。
【0007】
そこで、これらの要求性能を満足するように研究を重ねてきた結果、特開平9−296143号公報などで開示されているトルエンを含有しないポリアミド樹脂とセルロース誘導体をバインダーとするインキが用いられてきたが、ポリアミド樹脂を主なバインダーするインキは高速での印刷には適さず、印刷機の反転ロールにインキが転移し、印刷物の外観を損ねてしまう問題があった。
【0008】
また、要求性能を満足させるために、特開昭61−37851、特願平7−183039等で開示されているようにインキ組成中にチタネート化合物等のキレート化剤を添加する方法が知られているが、インキの経時安定性が低下するという問題があった。
【0009】
一方、トルエンを含有せずに高速での印刷に適したインキとして、ポリウレタン樹脂とニトロセルロースをバインダーとするインキが用いられてきた。例えば、特開2002−60668などで開示されている。
【0010】
しかしながら、ポリウレタン樹脂とニトロセルロースをバインダーとするインキは、フェノール系酸化防止剤を含有するフィルムを用いた際、火薬学会誌.Vol.63,No.3,2002で報告されているように長期間高温・多湿の状況に置かれるとニトロセルロースの分解が促進されNOxが発生する。この発生したNOxはフェノール系酸化防止剤と反応し、フェノール系酸化防止剤がキノン構造をとりフィルムの変色を引き起こすという問題はよく知られている。
【0011】
さらに、表刷りグラビアインキとしては、テーブルクロスなどに用いられている軟質塩化ビニルシートと印刷物が接着しないための耐塩ビブロッキング性が充分でないという問題があった。
【0012】
【先行文献1】
特開平9−296143号公報
【先行文献2】
特開昭61−37851号公報
【先行文献3】
特願平7−183039号
【先行文献4】
特開2002−60668号公報
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、芳香族炭化水素系溶剤を含有しない溶剤組成であり、長期高温・多湿下での保存においてフィルム中の酸化防止剤の変色を低減し、かつ、光沢、耐油性、耐熱性、耐揉み性、耐ブロッキング性、特に軟質塩ビシートに対する耐ブロッキング性が良好な表刷り用グラビア印刷インキ組成物を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、アクリル樹脂とポリウレタン樹脂とをバインダーとして含有し、その含有率が重量換算でアクリル樹脂:ポリウレタン樹脂=20:80〜80:20であり、かつ非芳香族系溶剤を含有することを特徴とする表刷り用グラビア印刷インキ組成物に関する。
【0015】
また、本発明は、一分子中に炭素炭素不飽和二重結合を有し、かつ架橋性の官能基を有しない単量体(a)からなるアクリル樹脂Aを含有する上記表刷り用グラビア印刷インキ組成物に関する。
【0016】
また、本発明は、一分子中に炭素炭素不飽和二重結合を有し、かつ架橋性の官能基を有しない単量体(a)50〜90重量%と、一分子中に炭素炭素不飽和二重結合を有し、かつ架橋性の官能基を有する単量体(b)10〜50重量%とからなるアクリル樹脂Bを含有する上記表刷り用グラビア印刷インキ組成物に関する。
【0017】
さらに、本発明は、ポリウレタン樹脂が、ポリオール成分と有機ジイソシアネートとを反応して得られるウレタンプレポリマーをジアミン化合物で鎖延長し、末端をC8以上C22以下の長鎖アルキル基またはアルケニル基を有する脂肪族アミン化合物またはC8以上C22以下の長鎖アルキル基またはアルケニル基を有する脂肪族アミド化合物で反応を停止させたものである上記表刷り用グラビア印刷インキ組成物に関する。
【0018】
さらに、本発明は、ハードレジンを含有してなる上記表刷り用グラビア印刷インキ組成物に関する。
【0019】
加えて、本発明は、架橋剤を含有してなる上記表刷り用グラビア印刷インキ組成物、及び上記印刷インキ組成物を基材に印刷してなる印刷物に関する。
【0020】以下、本発明を詳細に説明する。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明では、まず、バインダー樹脂としてアクリル樹脂とポリウレタン樹脂を含有する事を特徴とする。
【0022】
本発明で利用可能なアクリル樹脂AおよびBは、従来からの既知の方法で製造でき、製造方法は特に制限されるものではない。アクリル樹脂Aは、一分子中に炭素炭素不飽和二重結合を有し、かつ架橋性の官能基を有しない単量体(a)を重合開始剤を用いて溶媒中で重合させることで得られる。アクリル樹脂Bは、一分子中に炭素−炭素不飽和二重結合を有し、かつ架橋性の官能基を有しない単量体(a)と一分子中に炭素炭素不飽和二重結合と架橋性の官能基を有する単量体(b)とを重合開始剤を用いて溶媒中で重合させることで得られる。
【0023】
ここで、一分子中に炭素−炭素不飽和二重結合を有し、かつ架橋性の官能基を有しない単量体(a)は、(i)(メタ)アクリル酸誘導体、(ii)芳香族ビニル単量体、(iii)オレフィン系炭化水素単量体、(iv)ビニルエステル単量体、(v)ビニルハライド単量体、(vi)ビニルエーテル単量体等があげられる。
【0024】
(i)(メタ)アクリル酸誘導体の例として、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸塩、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(ii)芳香族ビニル単量体の例として、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、クロロスチレン、モノフルオロメチルスチレン、ジフルオロメチルスチレン、トリフルオロメチルスチレ等の一部の水素がフッ素置換されたスチレン類等が挙げられる。
(iii)オレフィン系炭化水素単量体の例として、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソブチレン、イソプレン、1、4−ペンタジエン等が挙げられる。
(iv)ビニルエステル単量体の例として、酢酸ビニル等が挙げられる。
(v)ビニルハライド単量体の例として、塩化ビニル、塩化ビニリデン等が挙げられる。
(vi)ビニルエーテル単量体の例として、ビニルメチルエーテル等が挙げられる。これらは、2種以上用いても良く、アクリル樹脂A中では、酸価の値は耐油性、耐熱性の両耐性の面から50以上200以下にすることが好ましい。アクリル樹脂B中では、50〜90重量%、好ましくは55〜80重量%、更に好ましくは60〜75重量%の範囲で用いる。この上限を上回った場合には、充分な各種耐性を得ることが困難になる。
【0025】
つぎに、一分子中に炭素炭素不飽和二重結合と架橋性の官能基を有する単量体(b)の官能基としては、ヒドロキシル基、イソシアノ基、エポキシ基等が挙げられる。
ヒドロキシル基を有する単量体(b)の例としては、2ーヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1ーヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2ーヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4ーヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシスチレン等が挙げられる。
【0026】
また、イソシアノ基を有する単量体(b)の例としては、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルイソシアネート等の他、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを、トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のポリイソシアネートと反応させて得られるものが挙げられる。
【0027】
また、エポキシ基を有する単量体(b)の例としては、グリシジルメタクリレート、グリシジルシンナメート、グリシジルアリルエーテル、グリシジルビニルエーテル、ビニルシクロヘキサンモノエポキサイド、1、3−ブタジエンモノエポキサイドなどが挙げられる。
【0028】
要求性能に応じてこれらの内から1種、または2種以上を混合して用いることができる。
【0029】
単量体(b)は、アクリル樹脂B中に、10〜50重量%、好ましくは20〜45重量%、さらに好ましくは25〜40重量%の共重合比率で用いられる。この下限を下回った場合には、充分な各種耐性を得ることが困難になる。
【0030】
重合開始剤としては、通常の過酸化物またはアゾ化合物、例えば、過酸化ベンゾイル、アゾイソブチルバレノニトリル、アゾビスイソブチロニトリル、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルペルベンゾエート、t−ブチルペルオクトエート、クメンヒドロキシペルオキシドなどが用いられ、重合温度は、50〜140℃、好ましくは70〜140℃である。
得られる重合体の好ましい重量平均分子量は、5,000〜100,000である。
【0031】
上記製造方法に使用される非芳香族系溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類などの使用が可能である。溶剤は2種以上の混合物でもよい。
【0032】
次に、本発明で利用可能なポリウレタン樹脂は、従来からの既知の方法で製造でき、製造方法は特に制限されるものではない。例えば、ポリオール化合物と有機ジイソシアネート化合物とをイソシアネート基が過剰となる割合で反応させ、ポリオールの末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを調整し、次いでこれを溶媒中で鎖延長剤、反応停止剤とを反応させる二段法があげられる。二段法は均一な重合体溶液が得られやすい点で好ましい。溶媒としては、エステル系溶剤、ケトン系溶剤およびアルコール系溶剤の単独または2種以上の混合物を用いることができる。
【0033】
ここで、利用可能なポリオール化合物としては、酸化エチレン、酸化プロピレン、テトラヒドロフランなどの重合体または共重合体などのポリエーテルポリオール類;エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタジオール、メチルペンタジオール、ヘキサジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、メチルノナンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどの飽和および不飽和の低分子グリコール類と、n−ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル等のアルキルグリシジルエーテル類、バーサティック酸グリシジルエステル等のモノカルボン酸グリシジルエステルと、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、こはく酸、しゅう酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸などの二塩基酸もしくはこれらの無水物とを脱水縮合せしめて得られるポリエステルポリオール類;その他ポリカーボネートジオール類、ポリブタジエングリコール類、ビスフェノールA酸化エチレンまたは酸化プロピレンを付加して得られるグリコール類;ダイマージオール類などの各種公知のポリオールが挙げることができる。これらのポリオールは、単独で用いても、2種以上併用しても良い。
【0034】
なお、これらのポリオールのうち、グリコール類と二塩基酸から得られるポリオールを用いる場合には、グリコール類のうち5モル%までを各種ポリオールに置換することができる。すなわち、例えばグリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、ペンタエリスリトール等のポリオールに置換してもよい。
【0035】
ポリオールの平均分子量は、得られるポリウレタン樹脂の溶解性、乾燥性、耐ブロッキング性等を考慮して適宜決定されるが、通常は500〜6000が好ましい。分子量が500未満になると溶解性の低下に伴い印刷適性が劣る傾向にあり、また6000を超えると乾燥性および耐ブロッキング性が低下する。
【0036】
次に、利用可能な有機ジイソシアネート化合物としては,芳香族、脂肪族または脂環族の各種公知のジイソシアネート類が挙げることができる。たとえば、1,5ーナフチレンジイソシアネート、4,4’ージフェニルメタンジイソシアネート、4,4’ージフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’ージベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3ーフェニレンジイソシアネート、1,4ーフェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ブタンー1,4ージイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4ートリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンー1,4ージイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンー4、4’ージイソシアネート、1,3ービス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、mーテトラメチルキシリレンジイソシアネートやダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等である。
【0037】
次に、ポリオール化合物と有機ジイソシアネートとを反応させる際のポリウレタン樹脂の製造方法は特に限定されるものではない。たとえば、ポリオール化合物と有機ジイソシアネートとを反応させる際の条件はポリオールを過剰にする他に特に限定はないが、イソシアネート基/水酸基の等量比が1.2/1〜3/1の範囲内にあることが望ましい。イソシアネート基/水酸基の等量比が1.2/1以下であると得られたポリウレタン樹脂が脆弱なため、印刷インキに使用した際にブロッキングが発生し易くなる。一方、イソシアネート基/水酸基の等量比が3/1以上であると樹脂の製造に粘度が高くなってしまい、反応中にゲル化し易くなる。また反応温度は通常80℃〜200℃の間で行われ、好ましくは90℃〜150℃の間で行うのがよい。
【0038】
上記のポリウレタン化反応は、溶剤中で行ってもよいし、無溶剤雰囲気下で行ってもよい。溶剤を使用する場合は、後に示す溶剤を反応時の温度および粘度、副反応の制御の面から適宜選択して用いるとよい。また無溶剤雰囲気下でポリウレタン化反応をする場合は、均一なポリウレタン樹脂を得るために、攪拌が十分可能な程度に温度を上げて粘度を下げて行うことが望ましい。ウレタン化反応は10分〜5時間行うのが望ましく、反応の終点は粘度測定、IR測定によるNCOピーク、滴定によるNCO%測定等により判断される。
【0039】
更に、ポリオール化合物と有機ジイソシアネートを反応させて末端イソシアネート基を有するプレポリマーを合成した後、鎖延長剤および反応停止剤を用いてポリウレタン樹脂中に尿素結合を導入し、ポリウレタン・ウレア樹脂とすることで、塗膜物性は更に向上する。
【0040】
次に、尿素結合を導入する際に利用可能な鎖延長剤としては、各種公知のアミン類を使用することが出来る。たとえばエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジアミンなどが挙げられる。その他、2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン等の分子内に水酸基を有するジアミン類およびダイマー酸のカルボキシル基をアミノ基に転化したダイマージアミン等もその代表例として挙げられる。
【0041】
次に、利用可能な反応停止剤としては、C8以上C22以下の長鎖アルキル基を有する脂肪族アミン化合物またはC8以上C22以下の長鎖アルキル基を有する脂肪族アミド化合物が挙げられる。脂肪族アミン化合物としては、オクチルアミン、ラウリルアミン、ココナットアミン、ミリスチルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、パルミチルアミン等の単独もしくは2種以上混合して用いられる。脂肪酸アミド化合物としては、オクタン酸アミド、デカン酸アミド、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リノール酸アミド、リノレン酸アミド等の単独もしくは2種以上混合して用いられる。
【0042】
C8以上C22以下の長鎖アルキル基を有する脂肪族アミン化合物またはC8以上C22以下の長鎖アルキル基を有する脂肪族アミド化合物をポリウレタン樹脂の末端に導入することにより耐ブロッキング性が向上する。長鎖アルキル基は表面活性な性質を示すため、塗膜形成過程で表面に配向し、ポリウレタン樹脂の耐ブロッキング性を改善していると考えられる。これら脂肪酸アミンまたは脂肪酸アミドをポリウレタン樹脂に導入することにより、塗膜表面の光沢低下も起こらない。
【0043】
なお、ポリウレタン樹脂中に尿素結合を導入する製造方法も、特に限定されるものではないが、プレポリマーの両末端に有する遊離のイソシアネート基の数を1とした場合の鎖延長剤および反応停止剤中のアミノ基の合計数量が0.5〜1.3の範囲内であることが好ましい。アミノ基の合計数量が0.5未満の場合、乾燥性、耐ブロッキング性、塗膜強度が充分でなく、1.3より過剰になると、鎖延長剤および反応停止剤が未反応のまま残存し、印刷物に臭気が残りやすい。
【0044】
上記製造法において使用される溶剤としては、通常、印刷インキ用の溶剤としてよく知られているメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール等のアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の非芳香族炭化水素系溶剤が挙げられ、これらを単独または2種類以上の混合物で用いる。なお反応時に、上記のケトン系溶剤を使用した場合、ケトンと鎖延長剤として使用するアミンとの間でケチミンが生じ、円滑な反応を阻害する。ケチミンの発生を抑え、反応を円滑にするために少量の水を併用することが望ましい。
【0045】
本発明の表刷り用グラビア印刷インキは、長期高温・多湿下での保存においてフィルム中に含有される酸化防止剤の変色の面から、アクリル樹脂とポリウレタン樹脂を、アクリル樹脂:ポリウレタン樹脂を20:80〜80:20の重量比率となる量で併用するものである。さらに、得られるインキ組成物の耐ブロッキング性、特にテーブルクロスなどに用いられている軟質塩化ビニルシートと印刷物が接着しないための耐塩ビブロッキング性と耐油性の面から、アクリル樹脂とポリウレタン樹脂が30:70の重量比率よりアクリル樹脂を多く含有させることが好適であり、また、アクリル樹脂とポリウレタン樹脂が70:30の重量比率よりポリウレタン樹脂を多く含有させることが、接着性の面から好適である。さらに、インキ組成物中における両方の樹脂を合わせた含有量は、5〜30重量%が好適である。
【0046】
次に、本発明で利用可能な顔料は、一般に印刷インキや塗料で使用できる各種の無機顔料としては、酸化チタン、ベンガラ、紺青、群青、カーボンブラック、黒鉛などの有色顔料、および、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、タルク等の体質顔料を挙げることができる。さらに有機顔料としては、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、アゾキレート顔料、縮合アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料、縮合多環顔料などが挙げることができる。これらの顔料の含有量としては、インキ組成物中に0.5〜50重量%が適量である。
【0047】
次に、本発明のインキ組成物で利用する溶剤としては、主に、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール系有機溶剤、アセトン,メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系有機溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどのエステル系有機溶剤、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタンなどの脂肪族炭化水素系有機溶剤、および、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタンなどの脂環族炭化水素系有機溶剤が挙げることができ、バインダー樹脂の溶解性や乾燥性などを考慮して、混合して利用することが好ましい。これらの有機溶剤の使用量としては、通常のインキでは30重量%以上含有される。
【0048】
さらに、本発明では、接着性や各種耐性の向上を目的として、各種ハードレジン、架橋剤、ワックスを添加することができる。
【0049】
ここで、ハードレジンとしては、ダイマー酸系樹脂、マレイン酸系樹脂、石油樹脂、テルペン樹脂、ケトン樹脂、ダンマー樹脂、コーパル樹脂、塩素化ポリプロピレン等が挙げられる。これらのハードレジンを利用すると、特に表面処理の行われていないプラスチックフィルムに対して、接着性の向上効果が期待できる。
【0050】
また、表刷り用グラビア印刷インキでは、耐熱性、耐油性や耐摩擦性の向上を目的として、架橋剤やワックス成分を含有させることができる。
【0051】
主に利用される架橋剤は、アルキルチタネート系、イソシアネート系であり、具体的に、アルキルチタネート系としては、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン、テトラステアリルオキシチタン、トリイソプロポキシチタンモノステアレート、トリ−n−ブトキシチタンモノステアレート、ジイソプロポキシチタンジステアレート、ジ−n−ブトキシチタンジステアレートなどが挙げられる。イソシアネート系としては、脂肪族ポリイソシアネート化合物、脂環族ポリイソシアネート化合物、芳香脂肪族ポリイソシアネート化合物、芳香族ポリイソシアネート、および、各種ビュレット化合物やイソシアネレート化合物などが挙げられる。その中でも、耐熱性の面から、アルコキシチタンセテアレート系化合物がより好適であり、フィルムに対する接着性の向上にはイシシアネート系架橋剤等も有効である。
【0052】
一方、ワックスとしては、ポリオレフィンワックス、パラフィンワックスなどの既知の各種ワックスが利用できる。
【0053】
さらに、顔料分散剤、レベリング剤、界面活性剤、可塑剤等の各種インキ用添加剤の添加は任意である。
【0054】
これらの材料を利用して印刷インキを製造する方法として、まず、顔料、バインダー樹脂、有機溶剤、および必要に応じて顔料分散剤、界面活性剤などを攪拌混合した後、各種練肉機、例えば、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、パールミル等を利用して練肉し、さらに、残りの材料を添加混合する方法がある。
【0055】
以上の材料と製造方法から得られた表刷り用グラビア印刷インキ組成物は、グラビア印刷方式で、各種プラスチックフィルム等の被着体に印刷することができる。具体的に、印刷可能なプラスチックフィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの延伸および無延伸ポリオレフィン、ポリエステル、ナイロン、セロファン、ビニロンなどを挙げることができる。
【0056】
さらに、得られた印刷物は製袋されて、食品などの包装容器に利用される。
【0057】
【実施例】以下,実施例でもって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、本実施例において「部」および「%」は「重量部」および「重量%」を表す。
【0058】<アクリル樹脂の調製>
(アクリル樹脂Aの重合例)
撹拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた四ツ口フラスコに、メチルアクリレート16部、メチルメタクリレート58部、アクリル酸8部、スチレン18部およびメチルエチルケトン200部を仕込み、窒素気流下で、攪拌しながら90℃まで昇温して、アゾビスイソブチロニトリル2部を加えて2時間重合反応を行い、分離・精製したもの42部を、酢酸エチル40部とイソプロピルアルコール18部を添加し、固形分42%、酸価160、重量平均分子量13000のアクリル樹脂ワニス(PAワニスA)を得た。
(アクリル樹脂Bの重合例)
撹拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた四ツ口フラスコに、2−ヒドロキシエチルメタクリレート25部、メチルメタクリレート40部、ブチルメタクリレート31部、アクリル酸1部、スチレン1部およびメチルイソブチルケトン100部を仕込み、窒素気流下で、攪拌しながら90℃まで昇温して、アゾビスイソブチロニトリル1部を加えて2時間重合反応を行い、分離・精製したもの51部を、酢酸エチル29部とn−プロピルアセテート20部を添加し、固形分51%、酸価3.4、重量平均分子量35000のアクリル樹脂ワニス(PAワニスB)を得た。
【0059】<ポリウレタン樹脂の調製>
(重合例)撹拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた四ツ口フラスコに数平均分子量2000のポリプロピレングリコール313.27部とイソホロンジイソシアネート62.66部および酢酸エチル60.0部を仕込み、窒素気流下に90℃で6時間反応させた。次いでイソホロンジアミン20.70部、ステアリルアミン3.38部、酢酸エチル360.0部、イソプロピルアルコール180.0部を添加し、固形分40%、25℃における粘度200mPaS、数平均分子量9,000のポリウレタン樹脂ワニスA(PUワニスA)を得た。(比較重合例)撹拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた四ツ口フラスコにアジピン酸と3−メチル−1,5−ペンタンジオールから得られる数平均分子量2000のポリエステルジオール315.34部とイソホロンジイソシアネート63.08部および酢酸エチル60.0部を仕込み、窒素気流下に90℃で6時間反応させた。次いでイソホロンジアミン20.83部、アセトアミド0.75部、酢酸エチル360.0部、イソプロピルアルコール 180.0部を添加し、固形分40%、25℃における粘度600mPaS、数平均分子量12,000のポリウレタン樹脂ワニスB(PUワニスB)を得た。
【0060】<ニトロセルロースワニスの調製>ニトロセルロース(1/8H、旭化成(株)製)30部を、酢酸エチル30部とイソプロピルアルコール40部に混合溶解させて、試験用ニトロセルロースワニス(NCワニス)を得た。
【0061】<エチルセルロースワニスの調製>エチルセルロースN7(ダウ・ケミカル(株)製)15部を、酢酸エチル55部とイソプロピルアルコール30部に混合溶解させて、試験用エチルセルロースワニス(ECワニス)を得た。
【0062】<酢酸セルロースワニスの調製>酢酸セルロース(LAC30ダイセル(株)製)10部を、酢酸エチル55部とイソプロピルアルコール30部に混合溶解させて、試験用酢酸セルロースワニス(ACワニス)を得た。
【0063】<ブチラールワニスの調製>ブチラール(エスレックB BL10 積水化学(株)製)25部を、酢酸エチル25部とイソプロピルアルコール50部に混合溶解させて、試験用ブチラールワニス(BLワニス)を得た。
【0064】<塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体ワニスの調製>塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体(ソルバインTA5R 日信化学(株)製 )25部を、酢酸エチル75部に混合溶解させて、試験用塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体ワニス(PVC−PVAcワニス)を得た。
【0065】まず、製造例1〜11の調製表1に示すバインダーを混合し、下記の方法でウレタン樹脂との相溶性の評価を行った。それぞれの評価結果を表1に示した。
【0066】相溶性:2種類の樹脂を攪拌混合し、5℃中で1日静置し外観と状態を評価した。
〇:白濁、ゲル化、分離せずに相溶した。
△:白濁のみした。
×:ゲル化または分離した。
【表1】
【0067】次に、相溶性があった製造例1〜7、10、11の各樹脂を用いて、調製表2に示す材料をサンドミルで混練し、試験用インキ組成物を調製した。なお、顔料、ハードレジン、架橋剤、離型剤、混合溶剤としては下記のものを用いた。
顔料 タイペーク CR67(石原産業(株)製)
ハードレジン ダンマルゴム樹脂(小島化工(株)製)
架橋剤 テトライソプロポキシチタン(日本曹達(株)製)
離型剤 パルメチン酸アミド(花王(株)製)
混合溶剤 メチルシクロヘキサン:n−プロピルアセテート:酢酸エチル:イソプロピルアルコール=40:20:20:20(重量比)
【表2】
【0068】調製した試験印刷インキ組成物を用いて、コロナ放電処理したポリプロピレンフィルム(FOH、二村化学(株)製)にグラビア校正機を利用して印刷し、1日経過させた後、下記の方法で光沢、接着性、耐塩ビブロッキング性、耐熱性、耐油性、変色の評価を行った。それぞれの試験印刷インキ組成物の評価結果を表2に示した。
【0069】光沢:印刷物の光沢を光沢計(60゜−60°)にて測定した。
A:光沢値40以上
B:光沢値30以上40未満
C:光沢値30未満
【0070】接着性:印刷面にセロハンテープを貼り付け、すばやく剥がした。テープを貼り付けた面積と、インキがフィルムから剥離した面積との比較から、インキのフィルムに対する接着性を評価した。
A:インキが全く剥離しなかったもの。
B:インキがフィルムから剥離した面積がテープ接着面積の20〜50%のもの。
C:インキがフィルムから剥離した面積がテープ接着面積の50%を超えるもの。
【0071】耐塩ビブロッキング性:印刷物と同じ大きさに切った軟質塩化ビニルシートと印刷面とを重ね合わせて、0.5kg/cm2の荷重をかけ、50℃80%RHの雰囲気で24時間放置後、印刷面と塩化ビニルシートを引き剥がし、インキの剥離の程度から耐塩ビブロッキング性を評価した。
A:インキが全く剥離しなかったもの。
B:インキがフィルムから剥離した面積が20〜50%のもの。
C:インキがフィルムから剥離した面積が50%を超えるもの。
【0072】耐熱性:印刷物と同じ大きさに切ったアルミ箔と印刷面とを重ね合わせ、ヒートシール試験機を用いて2kg/cm2の圧力で1秒間アルミ箔を押圧し、インキがアルミ箔に転移する最低温度からインキ組成物の耐熱性を評価した。
A:最低温度が160℃以上のもの
B:最低温度が140℃以上、160℃未満のもの。
C:最低温度が140℃未満のもの。
【0073】耐油性:印刷面に溶解したバターを全面に塗布し、24時間静置した後、学振型耐摩擦試験機で擦り、印刷面が全体の20%以上取られたときの回数で評価した。
A:50回以上
B:10回以上50回未満
C:10回未満
【0074】変色:印刷物と印刷をしていないフィルムを60℃80%RHで1週間保存し、色彩色差計を用いて10枚重ねた印刷物の未印刷部分と印刷していないフィルムのb値を測定しそのb値の差Δbで変色を評価した。
A: Δbが0.5 以下
B: Δbが0.5以上3未満
C: Δbが3以上
【0075】
【発明の効果】以上、実施例を挙げて具体的に説明したように、本発明の印刷インキ組成物は、長期高温・多湿下での保存においてフィルム中に含まれる酸化防止剤の変色の低減とテーブルクロスなどに用いられている軟質塩化ビニルシートと印刷物が接着しないための耐塩ビブロッキング性が良好で、さらに環境衛生にも優れた表刷り用グラビア印刷インキ組成物である。
Claims (7)
- アクリル樹脂とポリウレタン樹脂とをバインダーとして含有し、その含有率が重量換算でアクリル樹脂:ポリウレタン樹脂=20:80〜80:20であり、かつ非芳香族系溶剤を含有することを特徴とする表刷り用グラビア印刷インキ組成物。
- 一分子中に炭素炭素不飽和二重結合を有し、かつ架橋性の官能基を有しない単量体(a)からなるアクリル樹脂Aを含有する請求項1記載の表刷り用グラビア印刷インキ組成物。
- 一分子中に炭素炭素不飽和二重結合を有し、かつ架橋性の官能基を有しない単量体(a)50〜90重量%と、一分子中に炭素炭素不飽和二重結合を有し、かつ架橋性の官能基を有する単量体(b)10〜50重量%とからなるアクリル樹脂Bを含有する請求項1または2記載の表刷り用グラビア印刷インキ組成物。
- ポリウレタン樹脂が、ポリオール成分と有機ジイソシアネートとを反応して得られるウレタンプレポリマーをジアミン化合物で鎖延長し、末端をC8以上C22以下の長鎖アルキル基またはアルケニル基を有する脂肪族アミン化合物またはC8以上C22以下の長鎖アルキル基またはアルケニル基を有する脂肪族アミド化合物で反応を停止させたものである請求項1〜3いずれか記載の表刷り用グラビア印刷インキ組成物。
- ハードレジンを含有してなる請求項1〜4のいずれか記載の表刷り用グラビア印刷インキ組成物。
- 架橋剤を含有してなる請求項1〜5いずれか記載の表刷り用グラビア印刷インキ組成物。
- 請求項1〜6記載の印刷インキ組成物を基材に印刷してなる印刷物。
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