JP2004331761A - 感温性樹脂及びこれを用いた金属イオン吸着剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】金属イオンを吸着する感温性樹脂を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表されるN−アルキル(メタ)アクリルアミドと、下記一般式(2)で表される(メタ)アクリル基を有するホスフィン酸系単量体を、架橋剤の存在下で重合させてなるポリマーからなる感温性樹脂。
【化1】
Figure 2004331761

(R は水素原子またはメチル基を示し、R 、R は水素原子または炭素数1〜6の直鎖状または分岐状のアルキル基を示す。ただし、R 、R は同時に水素原子であることはない。R はメチル基又は水素原子、Aは炭素数1〜10の直鎖状または分岐状のアルキレン基、R は水素原子、水酸基、炭素数1〜10の直鎖状または分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、置換フェニル基又はベンジル基を示す。)
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、感温性を有する樹脂に関するものであり、さらにこれを用いた金属イオン吸着剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、外部の刺激(温度、光、電気、磁性、pHなど)の変化に応答して様々な機能を発現する高分子の研究が活発に行われている。外部刺激の中で温度は比較的制御の容易な刺激の一つである。N−置換(メタ)アクリルアミドポリマーの一部が温度変化により水中で鋭敏な相転移を示すことが見出され、その中でもポリN−イソプロピルアクリルアミド(NIPAAm)は、相転移温度(下限臨界溶液温度:Lower critical solution temperature(LCST))が室温または体温に近い32℃であり、更に相転移挙動は濃度や重合度には依存せず敏感である。また、構造が比較的単純でその重合が比較的容易であることから、感温性高分子として多く用いられている。
【0003】
また、リン酸基、ホスホン酸基およびホスフィン酸基はリンと結合した酸素が強いルイス塩基として働くことを利用して、金属イオンの抽出剤やイオン交換樹脂に用いられ、金属の捕捉、回収に利用されている。特に、ホスフィン酸基を有するキレート樹脂や溶媒抽出法を用いて、ランタノイド系金属イオンの回収やコバルトイオンとニッケルイオンの分離など数多くの研究が行われている。
【0004】
本発明者らは、先に、感温性を有するN−アルキル(メタ)アクリルアミドと金属イオン吸着能を有するホスフィン酸を共重合することにより得られる水溶性金属イオン吸着剤及び凝集剤を提案した(特許文献1)。この金属イオン吸着剤は水溶性であり、水溶液中で金属イオンを吸着後温度変化により凝集させて分離し、水溶液から金属イオンを除去するものである。
【0005】
一方で、感温性、金属イオン吸着能を有しながら水に不溶の樹脂を得ることができれば、材料として使用するのに便利である。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−31723号公報(第1頁)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような従来技術に鑑みてなされたものであり、両親媒性であるN−アルキル(メタ)アクリルアミドと水に難溶性であるホスフィン酸系単量体を架橋剤の存在下で重合させて得られるポリマーからなる水に不溶の感温性樹脂を得ることを目的とし、さらにこれを用いた金属イオン吸着剤を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記問題に鑑み鋭意研究の結果、N−アルキル(メタ)アクリルアミドとホスフィン酸系単量体を架橋剤の存在下で懸濁重合させ、金属イオン吸着能を有する感温性樹脂を開発するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の第一の発明は、下記一般式(1)
【0010】
【化3】
Figure 2004331761
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、R、Rは水素原子または炭素数1〜6の直鎖状または分岐状のアルキル基を示す。ただし、R、Rは同時に水素原子であることはない。)
【0011】
で表されるN−アルキル(メタ)アクリルアミドと、下記一般式(2)
【0012】
【化4】
Figure 2004331761
【0013】
(式中、Rはメチル基又は水素原子、Aは炭素数1〜10の直鎖状または分岐状のアルキレン基、Rは水素原子、水酸基、炭素数1〜10の直鎖状または分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、置換フェニル基又はベンジル基を示す。)で表される(メタ)アクリル基を有するホスフィン酸系単量体を、架橋剤の存在下で重合させてなるポリマーからなることを特徴とする感温性樹脂に関するものである。この感温性樹脂は、破砕して粉末状にして用いることが好ましい。
【0014】
さらに、本発明の第2の発明は、上記の感温性樹脂を含有する金属イオン吸着剤に関するものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の感温性樹脂の原料である、下記一般式(1)
【0016】
【化5】
Figure 2004331761
【0017】
で表されるN−アルキル(メタ)アクリルアミドにおいて、式中のRは水素原子またはメチル基を示す。R、Rは水素原子または炭素数1〜6、好ましくは炭素数2〜3の直鎖状または分岐状のアルキル基を示す。R、Rは同一の基でも、あるいは異なる基でもよい。ただし、R、Rは同時に水素原子であることはない。
【0018】
一般式(1)で表されるN−アルキル(メタ)アクリルアミドの具体例としては、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−シクロプロピルアクリルアミド等が挙げられ、これらの化合物は1種または2種以上で用いられる。
【0019】
本発明の感温性樹脂が、特定の温度を境に膨潤度や金属吸着量が変化する感温性の機能は、主としてこれらのモノマーにより付与される。例えば、N−イソプロピルアクリルアミドは33℃付近、N−イソプロピルメタクリルアミドは44℃付近で感温性を示す。
ここで、感温性とは、温度によって相転移をし、低温で膨潤し、高温で収縮する性質をいう。
【0020】
他の原料成分である、下記一般式(2)
【0021】
【化6】
Figure 2004331761
で表される(メタ)アクリル基を有するホスフィン酸系単量体の式中、Rはメチル基又は水素原子である。
Aは炭素数1〜10の直鎖状または分岐状のアルキレン基であり、具体的には、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、2−メチルブチレン基、3−メチルブチレン基等が挙げられる。
【0022】
は水素原子、水酸基、炭素数1〜10の直鎖状または分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、置換フェニル基、ベンジル基を示す。例えば、水素原子、水酸基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、2−ペンチル基、2−メチル−1−ブチル基、1−ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、イソオクチル基、2,4,4−トリメチルペンチル基、1,1,3,3−テトラメチルブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、フェニル基、置換フェニル基、ベンジル基等が挙げられる。
【0023】
一般式(2)で表される(メタ)アクリル基を有するホスフィン酸系単量体の具体例としては、
(メタクリロイルオキシメチル)ホスフィン酸、
(2−メタクリロイルオキシエチル)ホスフィン酸、
(3−メタクリロイルオキシプロピル)ホスフィン酸、
(4−メタクリロイルオキシブチル)ホスフィン酸、
(5−メタクリロイルオキシペンチル)ホスフィン酸、
(6−メタクリロイルオキシヘキシル)ホスフィン酸、
(7−メタクリロイルオキシヘブチル)ホスフィン酸、
(8−メタクリロイルオキシオクチル)ホスフィン酸、
(9−メタクリロイルオキシノニル)ホスフィン酸、
(10−メタクリロイルオキシデシル)ホスフィン酸、
(3−メタクリロイルオキシプロピル)エチルホスフィン酸、
(3−メタクリロイルオキシプロピル)ブチルホスフィン酸、
(3−メタクリロイルオキシプロピル)オクチルホスフィン酸、
(3−メタクリロイルオキシプロピル)デシルホスフィン酸、
(3−メタクリロイルオキシプロピル)フェニルホスフィン酸、
(3−メタクリロイルオキシプロピル)ホスホン酸、
(アクリロイルオキシメチル)ホスフィン酸、
(2−アクリロイルオキシエチル)ホスフィン酸、
(3−アクリロイルオキシプロピル)ホスフィン酸、
(4−アクリロイルオキシブチル)ホスフィン酸、
(5−アクリロイルオキシペンチル)ホスフィン酸、
(6−アクリロイルオキシヘキシル)ホスフィン酸、
(7−アクリロイルオキシヘブチル)ホスフィン酸、
(8−アクリロイルオキシオクチル)ホスフィン酸、
(9−アクリロイルオキシノニル)ホスフィン酸、
(10−アクリロイルオキシデシル)ホスフィン酸、
(3−アクリロイルオキシプロピル)エチルホスフィン酸、
(3−アクリロイルオキシプロピル)ブチルホスフィン酸、
(3−アクリロイルオキシプロピル)オクチルホスフィン酸、
(3−アクリロイルオキシプロピル)デシルホスフィン酸、
(3−アクリロイルオキシプロピル)フェニルホスフィン酸、
等が挙げられる。
【0024】
かかる(メタ)アクリル基を有するホスフィン酸系単量体の製造方法としては、広く公知の方法を用いることができるが、その一例を示すと、オルガノホスフィン酸化合物と不飽和アルコールとをラジカル開始剤の存在下で反応させて、ヒドロキシオルガノホスフィン酸化合物を得、次いで該ヒドロキシオルガノホスフィン酸化合物とメタクリル酸またはアクリル酸とを酸触媒、相間移動触媒の存在下で反応させる方法が挙げられる(特開平11−35588号公報)。
【0025】
本発明の感温性樹脂の金属イオンの吸着能は、上記の(メタ)アクリル基を有するホスフィン酸系単量体により付与される。前記単量体のホスフィン酸基はリンと結合した酸素が強いルイス塩基として働くために、金属イオン吸着の機能を有する。
【0026】
もう一つの原料である架橋剤は、ポリマーを三次元に架橋する役割を果たす。架橋剤は、重合可能な二重結合を二つ以上持つ多官能性モノマーが用いられ、例えば、ジビニルベンゼン、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。これらの中でも、親水性の多官能モノマーが適しており、ポリエチレングリコールジメタクリレート、CH=C(CH)COO(CHCHO)CO−C(CH)=CH(n=1〜9)が好ましく、特にn=4のテトラエチレングリコールジメタクリレート(4G)を主成分とする架橋モノマーが好ましい。
【0027】
本発明の感温性樹脂は、上記一般式(1)で表されるN−アルキル(メタ)アクリルアミドと、一般式(2)で表される(メタ)アクリル基を有するホスフィン酸とを架橋剤の存在下で重合させて得られるポリマーからなる。
【0028】
下記に重合の反応式を示す。なお、架橋剤としてポリエチレングリコールジメタクリレート(CH=C(CH)COO(CHCHO)CO−C(CH)=CH)を用いた反応を示す。
【0029】
【化7】
Figure 2004331761
【0030】
上記の反応において、一般式(1)、一般式(2)及び架橋剤の配合割合は、モノマーの種類や樹脂の用途により異なり、任意に設計できるが、好ましくは、モル比で(メタ)アクリル基を有するホスフィン酸系単量体(以降、APPOとも称す):N−アルキル(メタ)アクリルアミド(以降、NIPAAmとも称す):架橋剤=1〜50:50〜99:1〜20モルであり、さらに好ましくは5〜20:90〜99:1〜10モルである。この配合割合によれば、適度な感温性、金属イオンの吸着能を有する樹脂を得ることができる。
【0031】
また、本発明の感温性樹脂においては、上記の含有割合において、(メタ)アクリル基を有するホスフィン酸系単量体の含有量が例えば1モル%未満の場合は、樹脂の金属イオン吸着量が不十分となり、逆に上記該ホスフィン酸系単量体の含有量が増加すると、金属イオン吸着量も高くなるが、40モル%を超えると膨潤が大きくなりすぎるため、好ましくない。
【0032】
架橋剤の含有量は、上記の含有割合において、例えば1モル%未満の場合は、三次元架橋構造とならないため水不溶性の樹脂が得られず、逆に架橋剤の含有量が10モル%を超えると三次元化が進み、膨潤に伴う高分子鎖の拡張が抑制され感温性を阻害するため好ましくない。
【0033】
本発明の感温性樹脂の製造方法は、N−アルキル(メタ)アクリルアミドと、(メタ)アクリル基を有するホスフィン酸系単量体と、架橋剤とを溶媒に溶解し、分散媒に無機塩の飽和水溶液を用い、APPO、NIPAAm、及び架橋剤を上記比率になるように調整したモノマー混合物を分散媒に仕込み、開始剤を加えて攪拌下で重合を行う。
【0034】
分散媒としては、飽和硫酸ナトリウム水溶液、飽和塩化ナトリウム水溶液、飽和塩化カルシウム水溶液等の無機塩の飽和水溶液を用いることができる。
【0035】
開始剤としては、過酸化水素、過酸化ベンゾイル、ベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシジイソブチレート、t−ブチルパーオキシビバレート、t−ブチルパーオキシジイソブチレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ラウロイルパーオキサイド等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレリアル酸、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス(2−アミノプロパン)塩酸塩等のラジカル重合開始剤や、これらと亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸アンモニウム、L−アスコルビン酸、第一鉄塩等の還元剤との組み合わせによるレドックス系開始剤を用いることができる。
【0036】
また、重合溶媒中での分散性を向上させることを目的として、界面活性剤を用いることができる。用いることのできる界面活性剤としては、特に制限はないが、HLBが10〜20のアニオン性もしくはノニオン性界面活性剤が安定な有機溶媒液滴を形成するために好ましい。HLBが20を越えると界面活性剤では有機溶媒が水に完全に乳化し、HLBが10未満では液滴を形成しない。中でも、アニオン性界面活性剤であるスルホこはく酸ジアルキルエステル塩が好ましく、特にジイソオクチルスルホこはく酸ナトリウム(AOT)が好ましい。
【0037】
反応温度は、モノマーや開始剤の種類等によっても異なるが、25〜90℃、好ましくは40〜60℃が望ましい。反応時間は、2〜8時間、好ましくは3〜5時間である。攪拌速度は、モノマー滴が安定的に分散される速度であることが必要であり、200〜500rpm、300〜400rpmが好ましい。
【0038】
感温性樹脂は、ゲル状ポリマーとして得られるが、その水分含有量は2g/g−樹脂〜10g/g−樹脂であり、例えばAPPO−NIPAAm−4G(架橋剤:テトラエチレングリコールジメタクリレート)が5:97:3(モル比)の共重合体ゲルの場合、10℃で約5g/g−樹脂、15:99:1(モル比)の共重合体ゲルの場合で、10℃で約6g/g−樹脂である。なお、温度が上昇すると水分量は低下し、約1/2.5程度となる。
【0039】
得られる感温性樹脂が塊状である場合は、破砕して使用することができる。破砕は乳鉢、ボールミル等の通常の方法を用いることができる。
破砕する場合には、乾燥した樹脂の平均粒径10〜10000μmの無定形粉末状とすると、材料として用いる際に利用しやすいことから、好ましい。
【0040】
本発明の感温性樹脂は、金属イオンを吸着することができる。本発明の感温性樹脂が吸着することができる金属イオンとしては、例えば、銅、コバルト、ニッケル等の貴金属イオンや、サマリウム、ランタン、ネオジウム、ユウロピウム、イットリウム等の希土類元素等が挙げられる。
【0041】
本発明の感温性樹脂の金属イオンの吸着量は、温度、pHによって異なる。例えば、ポリN−イソプロピルアクリルアミド(NIPAAm)とアクリロイロキシプロピル−n−オクチルホスフィン酸(APPO)を、テトラエチレングリコールジメタクリレート(4G)を架橋剤として重合して得られるポリマーよりなる感温性樹脂の場合は、20℃以下では金属イオンの吸着量は変化しないが、30℃以上になると吸着量が低下する。これは、感温性樹脂の中のNIPAAmが感温性を有し、30℃以上ではゲルの疎水性が高くなり、脱水収縮するために金属イオンのゲル内部への拡散が抑制されるためであると考えられる。また、pHを変化させた場合は、一般的にpHが高い方が金属イオン吸着量が高くなる。これは、低pH領域では金属イオンの吸着は主に配位によって起こるが、高pH領域では金属イオンの吸着はイオン交換と配位によって起こるためであると考えられる。
【0042】
また、二種類以上の金属イオンを含有する溶液から、選択的に特定の金属イオンを吸着することにより、貴金属イオン、希土類元素等の分離・回収を行うことができる。たとえば、金属イオンとしてNd3+及びLa3+を含有する水溶液からは、Nd3+を選択的に吸着するため、両者を分離することができる。
【0043】
本発明の感温性樹脂は、金属イオン吸着能を有していることから、金属イオン吸着剤として用いることができる。金属イオン吸着剤とする場合は、破砕して乾燥した樹脂の平均粒径を10〜10000μmの無定形粉末としてカラムにつめたり、そのまま金属イオンを含有する水溶液に接触させて用いることができる。
【0044】
また、本発明の感温性樹脂は、N−アルキル(メタ)アクリルアミドを共重合しているため、高い吸水性を有し、吸水性ゲルとして使用することもできる。
【0045】
【実施例】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
【0046】
<球状ゲルの作成>
(実施例1)
攪拌装置、還流管、窒素導入管を備えた500mlのセパラブル三口丸底フラスコに飽和硫酸ナトリウム水溶液を400cmを入れ、30分以上穏やかに窒素置換を行った。アクリロイロキシプロピル−n−オクチルホスフィン酸(以下APPOと記す)、ポリN−イソプロピルアクリルアミド(以下NIPAAmと記す)、テトラエチレングリコールジメタクリレート(以下4Gと記す)のクロロホルム溶液をフラスコに採取し、10分間窒素置換してから開始剤としてα,α’−アゾビスイソブチロニトリル(以下AIBNと記す)を溶解し、攪拌しながらモノマー溶液を注ぎ込み、攪拌速度を360rpmに設定した後、50℃で重合反応を行った。
重合後、得られた重合物を溶液から分離し、アセトンを溶媒としてソックスレー抽出を24時間以上行った後、イオン交換水中で10℃と60℃で温度を上下させ、ゲルを膨潤−収縮することで未反応モノマーを除去した。その後、ゲルをシャーレ上で風乾し、常温真空乾燥機で乾燥し、破砕して、APPO−NIPAAm−4Gゲルを得た。
【0047】
(実施例2〜4)
実施例1と同様にして、表1に示す割合で各種化合物を添加し、ゲルを作成した。なお、実施例2では開始剤としてレドックス系開始剤を使用し、酸化剤として過酸化ベンゾイル、還元剤としてN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンまたはN,N−ジメチルアニリンを用いた。
【0048】
【表1】
Figure 2004331761
【0049】
<物性測定>
▲1▼リン、炭素、窒素、及び水素含量の測定
乾燥状態の共重合体を0.1g秤量し、ケルダールフラスコに入れ、濃硝酸10cmを加え、弱火〜中火で共重合体が分解するまで加熱した。分解後さらに2〜3時間加熱を続け、放冷後ケルダールフラスコ内の溶液をすべて100cmメスフラスコに入れて、イオン交換水で標線まで合わせた。この溶液を50cmメスフラスコに10cmとり、これにフェノールフタレイン2滴を加え、微紅色を示すまで希アンモニア水(体積比でアンモニア水:イオン交換水=1:4)を加えた。次に5mol/ l硝酸5cm、0.25%メタバナジン酸アンモニウム水溶液5ml、5%モリブデン酸アンモニウム水溶液5cmを順次加え、イオン交換水で標線まで合わせた。
【0050】
この溶液の440nmにおける吸光度を紫外可視分光光度計(SIMAZU製UV160A)を用いて測定し、100ppmリン標準液から同様にして調製した検量線を用いて、リン含有量を次式(1)により求めた。
測定波長の440nmは、リン−モリブデン酸錯体の特性吸収であり、この溶液の最大吸収波長である。
【0051】
【数1】
Figure 2004331761
【0052】
A;検量線から求めた測定液中のリンの含量(mg)
v;比色法に用いた試料溶液量(cm
W;測定に用いた乾燥共重合体の重量(g)
【0053】
また、得られたゲルの炭素、窒素及び水素含量は元素分析装置(Yanaco CHN Corder M−6)を用いて行った。
共重合体中のリン、炭素、窒素、及び水素の含有量の実測値及び計算値を表2及び表3に示した。
【0054】
【表2】
Figure 2004331761
【0055】
【表3】
Figure 2004331761
【0056】
▲2▼膨潤度測定
実施例1で作成した樹脂を乾燥し、0.20gを5cmメスシリンダーに移し、ゲルに対し過剰のイオン交換水を入れ、24時間以上放置した後、温度を変えながらそれぞれの温度で1時間膨潤させ、次式(2)を用いて膨潤度を測定した。結果を表4に示す。
【0057】
【数2】
Figure 2004331761
【0058】
【表4】
Figure 2004331761
【0059】
▲3▼金属イオン吸着試験
金属イオン吸着試験に用いる金属イオン溶液は0.1mol/dm酢酸水溶液及び0.1mol/dm酢酸ナトリウム水溶液を用いた酢酸−酢酸ナトリウム緩衝溶液を用い、pH6.5に調整した。
実施例3で得られた乾燥したゲル0.1gを精秤し、50cm三角フラスコに入れ、pH6.5の緩衝溶液を25cm加え、ゲルが十分に平衡膨潤に達するように所定の温度で24時間振とうした。1.95×10−3mol/dmのSm3+イオン水溶液を25cm加え、さらに各温度で24時間振とうした。その後、ろ過して上澄み液を得た。Sm3+イオン吸着量は、振とう後のSm3+イオン水溶液を適当に希釈し、1000ppmSm3+標準液から調製した検量線を用いて残存Sm3+イオン濃度を高周波誘導結合プラズマ発光分析装置(SIMADZU製シーケンシャル型高周波プラズマ発光分析装置ICPS−5000)で測定することにより求めた。
球状ゲル1グラム当たりの金属イオン吸着量は次式(3)により求めた。
【0060】
【数3】
Figure 2004331761
【0061】
B:ブランクの金属イオン濃度(mg/l)
S:サンプルの金属イオン濃度(mg/l)
A:溶液の希釈倍率
D:金属イオン溶液の量(cm
M:Sm3+の原子量
w:共重合体の重量(g)
【0062】
Sm3+イオンの吸着量は、10℃において0.09mmol/g−樹脂、30℃において0.08mmol/g−樹脂であった。
【0063】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明の感温性樹脂は、感温性、吸水性、金属イオン吸着能といった機能を有し、金属イオン吸着剤に利用することができる。

Claims (3)

  1. 下記一般式(1)
    Figure 2004331761
    (式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、R、Rは水素原子または炭素数1〜6の直鎖状または分岐状のアルキル基を示す。ただし、R、Rは同時に水素原子であることはない。)
    で表されるN−アルキル(メタ)アクリルアミドと、下記一般式(2)
    Figure 2004331761
    (式中、Rはメチル基又は水素原子、Aは炭素数1〜10の直鎖状または分岐状のアルキレン基、Rは水素原子、水酸基、炭素数1〜10の直鎖状または分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、置換フェニル基又はベンジル基を示す。)で表される(メタ)アクリル基を有するホスフィン酸系単量体を、架橋剤の存在下で重合させて得られるポリマーからなることを特徴とする感温性樹脂。
  2. 請求項1に記載の感温性樹脂を破砕して得られる粉末状の感温性樹脂。
  3. 請求項1または2に記載の感温性樹脂を含有することを特徴とする金属イオン吸着剤。
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