JP2004330266A - 積層型熱交換器の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】伝熱管/タンク結合部にろう引けが発生せず、かつ、フィン端とタンクとの間に確実な耐食性を付与できる熱交換器の製造方法を提供すること。
【解決手段】アルミニウム製で、伝熱管に亜鉛による儀性陽極効果が付与される積層型熱交換器の製造方法。伝熱フィン14を間に介在させた伝熱管12をヘッダタンク16の結合孔に挿入して組み付ける。ここで、フィン端/タンク間距離Sを伝熱管/タンク結合部にろう引けが発生しない距離とする。そして、伝熱管/タンク結合部(タンク根付部)18に、亜鉛含有フラックスまたはZn含有フラックスとろう材との混合物を塗布して、加熱によりろう付けを行う。
【選択図】図1
【解決手段】アルミニウム製で、伝熱管に亜鉛による儀性陽極効果が付与される積層型熱交換器の製造方法。伝熱フィン14を間に介在させた伝熱管12をヘッダタンク16の結合孔に挿入して組み付ける。ここで、フィン端/タンク間距離Sを伝熱管/タンク結合部にろう引けが発生しない距離とする。そして、伝熱管/タンク結合部(タンク根付部)18に、亜鉛含有フラックスまたはZn含有フラックスとろう材との混合物を塗布して、加熱によりろう付けを行う。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンデンサ、エバポレータ、ラジエータ等に適用されるいわゆる積層型熱交換器の製造方法に関する。特に、パラレルフロー型の熱交換器に好適な積層型熱交換器の製造方法に係る発明である。
【0002】
【従来の技術】
パラレルフロー型の積層型熱交換器は、図1に示すように、チューブ形状(通常、断面扁平)の複数の伝熱管12と、これらの伝熱管12の間に接触して介在させる複数の伝熱フィン14と、伝熱管12の両端を結合させる一対のへッダタンク16との各構成要素を備えたものである。
【0003】
そして、各構成要素間、すなわち、伝熱管12、伝熱フィン14及びヘッダタンク16の各部材の一体化(結合)は、生産的見地からろう付けが一般的である。
【0004】
他方、これらの素材は、通常、伝熱性および軽量化の見地からアルミニウム(アルミニウム合金を含む。)製とされることが多い。
【0005】
そして、上記伝熱管12は、通常、ヘッダタンク16(通常、1〜2mm)に比して薄肉(0.2〜0.3mm)であるため、耐食性を確保する見地から、例えば、伝熱管の表面に亜鉛接触層を形成して犠牲陽極効果による耐食性の付与を行っている(特許文献1〜3等参照)。なお、本来亜鉛は、アルミニウムに比してイオン化傾向が小さい(電極電位が高い。金属としてアルミニウムより貴である。)。ところが、アルミニウムは酸化皮膜を表面に有して、見かけ上、亜鉛より電極電位が高い。したがって、表面亜鉛層が犠牲陽極効果を有することとなる。
【0006】
上記犠牲陽極効果を付与するための処理は、▲1▼チューブに亜鉛拡散層を形成する亜鉛含有塗膜を形成する、及び、▲2▼伝熱フィンの基材をZn添加アルミニウム合金とする伝熱フィンを使用する、の一方又は双方で行っていた(前記特許文献等参照)。
【0007】
しかし、上記▲2▼の方法の場合、伝熱フィンとタンク間の距離(以下「伝熱フィン/タンク間距離」)Sを短くする(例えば、5mm以下、望ましくは、2.5
mm以下)必要があるとされている(特許文献2
【0028】参照)。
【0008】
これは、伝熱フィンと伝熱管との接触による犠牲陽極効果の場合、フィン接触点1つで5mm(好ましくは2.5mm)の範囲内で耐食性を発揮するためである。
【0009】
ところが、フィン端/タンク間距離Sが短いと、ろう付け時に、タンク/伝熱管結合部18におけるろう材が引き寄せられて、該伝熱管のタンク根付け部20にろう引けが発生し易いことを発見した。他方、ろう材のタンク/伝熱管結合部及びフイン/伝熱管結合部への移動により、亜鉛も同時にそれらの結合部側へ引き寄せられ、犠牲陽極効果を付与可能な高濃度亜鉛層を、フィン端/タンク間の伝熱管の表面に形成できない場合があることを発見した。
【0010】
【特許文献1】
特開2000−351062公報
【特許文献2】
特開平9−203597号公報
【特許文献3】
特開昭61−202772号公報
【0011】
【発明の課題】
本発明は、上記にかんがみて、伝熱管/タンク結合部にろう引けが発生せず、かつ、フィン端とタンクとの間に確実な耐食性を付与できる熱交換器の製造方法を提供することを課題
(目的)とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の熱交換器の製造方法は、上記目的を下記構成により達成するものである。
【0013】
アルミニウム製でろう付けにより一体化され、伝熱管に亜鉛による犠牲陽極効果が付与される積層型熱交換器の製造方法であって、
伝熱フィンを介在させて前記伝熱管の両端をヘッダタンクの結合孔に挿入し、前記伝熱フィン端/タンク間距離が伝熱管/タンク結合部にろう引けが発生しない距離として組み付けた後、
亜鉛含有フラックス組成物を伝熱管/タンク結合部又はその近傍に塗布して、加熱によりろう付けを行うことを特徴とする。
【0014】
上記の如く、フィン端/タンク間距離を、伝熱管のタンク根付部にろう引けが発生しない距離とし、かつ、亜鉛含有フラックス組成物を、伝熱管/タンク結合部又はその近傍に塗布することにより、伝熱フィン端/タンク間距離における伝熱管部位に耐食性に必要な高濃度亜鉛層を確保することが容易となる。
【0015】
すなわち、従来においては、亜鉛含有塗膜層を伝熱管の全面に形成しておいても、ろう付け時にろう材が、毛管現象でフィン/伝熱管及び伝熱管/タンクの各接合部位に引き寄せられるときに、亜鉛含有塗膜層の亜鉛も同時に各接合部位に引き寄せられる。このため、耐食性を付与可能な犠牲陽極効果を付与可能なZn濃度を有する亜鉛高濃度層を、フィン端/タンク間に形成し難い。しかし、本発明では、伝熱管/タンク結合部又はその近傍に、流れが良好な亜鉛含有フラックス組成物を塗布することにより、フィン端/タンク間に亜鉛が補給されて、伝熱管表面に亜鉛高濃度層が形成される(残存する)ものと推定される。
【0016】
そして、上記伝熱管のタンク根付部20にろう引けが発生しない距離とは、通常、フィン端/タンク間距離Sが1.5mm以上になるものとする。
【0017】
また、亜鉛含有フラックス組成物としては、亜鉛フッ化物系フラックス、又はフッ化物系フラックスと亜鉛を含有するアルミニウム合金ろう材との混合物を使用することが望ましい。フッ化物系フラックスは、塩化物系フラックスの如く、アルミニウムに対して腐食性を有しないためである。
【0018】
ここで、上記亜鉛を含有するアルミニウム合金ろう材としては、通常、Si:5〜15%、Zn:0.5〜3%のAl−Si−Zn系合金からなるろう材を使用する。
【0019】
亜鉛含有フラックス組成物の塗布により形成される塗膜中におけるZn含有量は、1〜5g/m2とすることが望ましい。塗膜中のZn含有量が過少では、伝熱フィン端とタンク間における伝熱管部位に耐食性を付与し難く、逆に、過多では、タンク根付部20に形成されるフィレット中のZn含有量が過多となり、フィレットの腐食が局部的に進むおそれがある。
【0020】
亜鉛含有フラックスの塗布は、液状バインダーを用いてスラリー状にして、伝熱管/タンク結合部に塗布することが望ましい。加圧塗布ガン等で塗布可能となり塗布作業性が良好となるとともに、被塗布面に対する密着性も確保し易くなる。
【0021】
さらに、伝熱管/タンク結合部の近傍に対する塗布は、ヘッダタンクとして、亜鉛含有フラックス組成物を液状バインダーでスラリー状にして予め塗布したものを使用して行ってもよい。組付け後のろう付け加熱前の亜鉛含有フラックス組成物を塗布する手間が省ける。
【0022】
上記のようにして製造した熱交換器は、下記のような構成となる。
【0023】
アルミニウム製で、伝熱管に亜鉛による犠牲陽極効果が付与されてなる積層型熱交換器であって、
積層型熱交換器は、扁平チューブ形状の複数の伝熱管と、複数の伝熱フィンと、伝熱管の両端が挿入される結合孔を備えた一対のヘッダタンクとを備え、ろう付けにより一体化され、伝熱管に犠牲陽極効果を付与する処理がなされており、伝熱フィン端/タンク間距離が伝熱管/タンク結合部にろう引けが発生しない距離であるとともに、ろう付後に伝熱フィン端/タンク間の伝熱管部位の亜鉛含有層における亜鉛濃度が0.8質量%以上であり、伝熱管のタンク部根付部フィレットにおけるZn濃度が4%以下であることを特徴とする。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の熱交換器の製造方法の実施形態について説明する。以下の説明で、含有量を示す「%」及び「混合比」は、特に断らない限り、質量基準である。
【0025】
パラレルフロー型の積層型熱交換器は、前述の如く、複数の伝熱管12と、複数の伝熱フィン14と、一対のへッダタンク16との各構成要素を備え、ろう付けで一体化されるものである。各構成要素はアルミニウム製であるとともに、伝熱管の耐食性の見地から亜鉛による犠牲陽極効果が付与される。
【0026】
犠牲陽極効果の付与の態様は、前述と同様、▲1▼チューブにろう付け加熱時に亜鉛拡散層となる亜鉛系塗膜を形成する、及び、▲2▼伝熱フィンの基材をZn添加アルミニウム合金とする伝熱フィンを使用する、の双方又は一方により行うものである。
【0027】
ここで、亜鉛系塗膜の形成態様としては、亜鉛溶射、後述の亜鉛系フラックス塗布等がある。
【0028】
亜鉛溶射及び亜鉛系フラックスの双方とも、溶射層ないし塗膜中のZn含有量が1〜5g/m2、望ましくは2〜4g/m2となるように塗布する。亜鉛量が過少では、耐食性に十分な犠牲陽極効果を伝熱管表面に付与できず、逆に、過多であると、伝熱管のタンク根付部フィレットの犠牲陽極効果が強すぎてフィレット自体が早期に自己腐食してしまうおそれがある。
【0029】
ここで、上記伝熱フィン14を形成する亜鉛添加アルミニウム合金としては、通常JISのA3000番台のAl−Mn系合金(例えばA3003)に亜鉛を0.5〜5.5%(例えば2.5%前後)添加したもので、肉厚0.05〜0.1mm(例えば0.07mm)のものを使用する。そして、通常、それらを心材としてろう材をクラッドしたブレージングシートを用いる。ろう材としては、JIS番号の4343、4045等を使用可能である。
【0030】
また、伝熱管12は、JISのA1000番台の純アルミニウム系又はCu―Mnを微量に含むAl−0.5Cu−0.15Mn等の合金で、肉厚0.2〜0.3mmのものを使用できる。
【0031】
さらに、ヘッダタンク16は、通常、JISのA3000番台のAl−Mn系合金(例えばA3003)で、肉厚1〜2mmに押出たものを使用する。なお、タンクはブレージングシートを成型加工したものでもよい。
【0032】
上記各構成要素のうち、タンク材に押出材を用いた場合、ろう付け(溶接)部位には、ろう材が付与されていないため、フラックスを含有させた固形ろう材を配置ないし液状ろう材を塗布する。
【0033】
また、ブレージングシートには、通常、フラックスは配合されていないので、フラックスまたはフラックスとろう材の混合物(フラックス組成物)を、液状バインダーでスラリー状にして塗布する。ここで、フラックスとしては、塩素系フラックス等でもよいが、通常、アルミニウムに対して腐食作用のないふっ素系フラックスを用いる。ふっ素系フラックスとしては、KAlF4、K2AlF5・H2O又はK3AlF6等と使用可能である。このときの塗布量は、0.5〜10g/m2、望ましくは1〜8g/m2とする。
【0034】
そして、本実施の形態では、フィン端/タンク間距離Sを、伝熱管12のタンク根付部(以下「タンク根付部」という。)20に引けが発生しない距離とするとともに、さらに、伝熱管/タンク結合部又はその近傍に亜鉛含有フラックス組成物を塗布する。
【0035】
通常、上記タンク根付部20に引けが発生しない距離とは、ろう材の種類、配置態様(ブレージングシートを用いるか組付け後ろう材を配置するか、更には、ろう材の配置量)等により異なるが、通常、フィン端/タンク間距離Sが1.5mm以上になるものとする(表1比較例1〜5参照)。
【0036】
ここで、亜鉛含有フラックス組成物としては、▲1▼亜鉛化合物フラックス(KZnF3等)又は▲2▼亜鉛粉末とフラックス(▲1▼または前述のフッ化物系フラックス等)との混合物、更には、▲3▼これら▲1▼又は▲2▼とAl合金ろう材との混合物を挙げることができる。特に、亜鉛フッ化物系フラックス、又はフッ化物系フラックスと亜鉛を含有するアルミニウム合金ろう材との混合物を使用することが望ましい。フッ化物系フラックスは、塩化物系フラックスの如く、アルミニウムに対して腐食性を有しないためである。
【0037】
そして、上記Al合金ろう材としては、Si:5〜15%、Zn:0.5〜3%のAl−Si−Zn系合金からなるろう材を好適に使用可能である。例えば、合金番号4N43・4N45等を使用可能である。
【0038】
▲2▼の場合のフラックス/亜鉛粉末の混合質量比=5/95〜50/50、望ましくは、10/90〜40/60とする。また、ろう材を混合する場合の、ろう材/フラックスの混合比=5/95〜50/50、望ましくは10/90〜40/60とする。
【0039】
なお、伝熱管/タンク結合部の近傍に直接、亜鉛亜鉛含有フラックス組成物を塗布する代わりに、タンク16として、亜鉛含有フラックス組成物を、水系バインダーでスラリー状として、予め、表面に塗布したものを使用してもよい。フィン/伝熱管/タンク組付け後、伝熱管/タンク結合部18のまたはその近傍に直接亜鉛含有フラックス組成物を直接塗布するのと同様の効果が得られる。
【0040】
そして、これらの亜鉛含有フラックス組成物の塗布は、塗布に際して、熱可塑性のアクリル樹脂やブチル系ポリマー等をベースとする液状バインダー(水系ポリマー分散液又は溶剤溶液)と混合して、スラリー状として塗布することが望ましい。塗布粘度の調整が容易で、加圧塗布ガン等で塗布作業が可能となるとともに、被塗膜面に対する密着性が良好となる。なおバインダー(固形分)/フラックス類の混合比=5/95〜50/50、望ましくは10/90〜30/70とする。
【0041】
塗布手段としては、通常、シーラント等当に使用されている加圧塗布ガンを使用するが、刷毛塗り、スプレー等であってもよい。
【0042】
ここで、亜鉛含有フラックス組成物の塗布条件は、塗膜中のZn含有量が約1〜5g/m2、望ましくは、約2〜4g/m2となるようなものとする。Zn含有量が過少であると、フィン端とタンクとの間の伝熱管表面に犠牲陽極効果を付与し難く、Zn含有量が過多であると、ろう付けにより形成されたタンク根付部20のフィレットに多量の亜鉛(Zn)が残存して、当該フィレットがタンク根付部20の腐食を促進させるおそれがある。
【0043】
また、ろう付けの加熱条件は、通常、窒素雰囲気等の非酸化雰囲気下で、ろう材の種類、フラックス類の種類・混合比率等により異なるが、通常、600℃前後×2〜10分の範囲で適宜選定する。
【0044】
このとき、伝熱管/タンク結合部18に塗布した亜鉛含有フラックス組成物は、ろう材に比して融点が低くかつ流動性も良好であるため、ろう付け加熱時に、伝熱管12のタンク根付部20から伝熱フィン端14a側に流れて、伝熱フィン端14aとタンク16との間の伝熱管12表面に、耐食に必要な亜鉛高濃度層22が形成される。換言するなら、伝熱管12の表面に予め、亜鉛層が形成されている場合は、タンク根付部20に形成されたフィレットの外側に亜鉛高濃度層22が残存することになる。
【0045】
したがって、フィン端/タンク間距離Sが1.5mm以上と大きくても、後述の実施例で示す如く、伝熱フィン端14aとタンク18との間の伝熱管に耐食性を付与できる。
【0046】
【実施例】
以下、本発明の効果を確認するために行なった実施例について、比較例とともに説明をする。
【0047】
下記各構成の材料で形成した伝熱管、伝熱フィン及びヘッダタンクを用いて、表1に示すフィン端/タンク間距離を有して組付け後、ろう材(A4343)を、伝熱管/タンク結合部に配置した後、フラックス(KAlF4)を、伝熱管の全面に塗布後(塗布量10g/m2)、さらに、表示の亜鉛量となるように亜鉛含有フラックス組成物である亜鉛化合物フラックス(KZnF3)を伝熱管/タンク結合部にZn含有量が表示量となるように塗布した。
【0048】
その後、窒素雰囲気中で、600℃×3minの条件で加熱してろう付けを行った。
【0049】
伝熱管…Al−0.5Cu−0.15Mnの合金材料で形成した肉厚0.2mmの押出しチューブを用いた。なお、当該押出チューブには、フラックス(KZnF3)を、バインダー(ブチル系)で希釈して10g/m2にとなるよう全面に塗布したものを使用した。
【0050】
伝熱フィン…A3003にZn2.5%を添加した合金材料を心材とし両面にA4343をクラッドしたブレージングシートを用いた。
【0051】
ヘッダタンク…A1050の合金材料で形成した肉厚1mmの押出しチューブを用いた。
【0052】
こうして調製した各実施例・比較例の熱交換器について、下記各項目の評価(測定)を行なった。
【0053】
(1)タンク根付部ろう付け性:
タンク根付部(伝熱管/チューブ接合部)を目視観察して、未接合部の有無により評価した。評価基準は、ろう引け無し:○、ろう引け有り:×とした。
【0054】
(2)伝熱管表面Zn濃度:
フィン端/タンク間のタンク面から0.5mmの位置(比較例1・2の場合は中央位置)における伝熱管表面のZn濃度を電子プローブX線マイクロアナライザー(EPMA)により測定した。評価基準は、Zn濃度0.8%以上:○、Zn濃度1%未満:×とした。
【0055】
(3)タンク根付部フィレット中のZn濃度:
タンク根付部フィレットのZn濃度を、上記と同様にして測定した。評価基準は、Zn濃度4%未満:○、Zn濃度4%以上:×とした。
【0056】
それらの結果を表1から下記のことが分かる。
【0057】
フィン端/タンク間距離が長い場合は(1.5mm以上)は、タンク根付部にろう引けが発生しない(実施例1〜5参照)。これに対して、フィン端/タンク間距離が短い場合(1.5mm未満)、いずれもろう引けが発生する(比較例1〜5参照)。
【0058】
また、Zn系フラックスの塗膜Zn含有量が、1〜5g/m2の場合、フィン端/タンク間の伝熱間部位表面に、耐食に必要なZn0.8%以上のZn高濃度層が形成され、かつ、タンク根付部フィレットのZn濃度も、フィレットの腐食が進み過ぎないZn濃度4%未満に形成される(実施例1〜5参照)。
【0059】
他方、Zn系フラックスの塗膜Zn含量が、1.5g/m2未満の場合、フィン端/タンク間の伝熱間部位表面に、耐食に必要なZn濃度0.8%以上のZn高濃度層を得難い(比較例1・7参照)。また、1.5g/m2を超える場合、タンク根付部フィレットのZn濃度も、フィレットの腐食が進み過ぎるZn濃度4%以上になり易い(比較例6・8参照)。
【0060】
なお、実施例・比較例の同じZn含量塗膜でも、距離が長くなると、相対的に伝熱間表面Zn濃度/根付部フィレットZn濃度の比が小さくなり、伝熱管/タンク結合部に塗布されたZnフラックス類は、フィン端に向かって流れていることが伺える。例えば、実施例2と4では、距離がそれぞれ4mmと7mmに対して、濃度比がそれぞれ0.80、0.65である。また、比較例3、実施例1と実施例5では、距離がそれぞれ1mm、3mm、10mmに対して、濃度比がそれぞれ0.95、0.89、0.79である。
【0061】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用する積層型熱交換器の概念図およびその拡大図である。
【符号の説明】
12 伝熱管
14 伝熱フィン
16 ヘッダタンク
18 伝熱管/タンク結合部
20 タンク根付部フィレット
22 亜鉛高濃度層
S フィン端/タンク間距離
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンデンサ、エバポレータ、ラジエータ等に適用されるいわゆる積層型熱交換器の製造方法に関する。特に、パラレルフロー型の熱交換器に好適な積層型熱交換器の製造方法に係る発明である。
【0002】
【従来の技術】
パラレルフロー型の積層型熱交換器は、図1に示すように、チューブ形状(通常、断面扁平)の複数の伝熱管12と、これらの伝熱管12の間に接触して介在させる複数の伝熱フィン14と、伝熱管12の両端を結合させる一対のへッダタンク16との各構成要素を備えたものである。
【0003】
そして、各構成要素間、すなわち、伝熱管12、伝熱フィン14及びヘッダタンク16の各部材の一体化(結合)は、生産的見地からろう付けが一般的である。
【0004】
他方、これらの素材は、通常、伝熱性および軽量化の見地からアルミニウム(アルミニウム合金を含む。)製とされることが多い。
【0005】
そして、上記伝熱管12は、通常、ヘッダタンク16(通常、1〜2mm)に比して薄肉(0.2〜0.3mm)であるため、耐食性を確保する見地から、例えば、伝熱管の表面に亜鉛接触層を形成して犠牲陽極効果による耐食性の付与を行っている(特許文献1〜3等参照)。なお、本来亜鉛は、アルミニウムに比してイオン化傾向が小さい(電極電位が高い。金属としてアルミニウムより貴である。)。ところが、アルミニウムは酸化皮膜を表面に有して、見かけ上、亜鉛より電極電位が高い。したがって、表面亜鉛層が犠牲陽極効果を有することとなる。
【0006】
上記犠牲陽極効果を付与するための処理は、▲1▼チューブに亜鉛拡散層を形成する亜鉛含有塗膜を形成する、及び、▲2▼伝熱フィンの基材をZn添加アルミニウム合金とする伝熱フィンを使用する、の一方又は双方で行っていた(前記特許文献等参照)。
【0007】
しかし、上記▲2▼の方法の場合、伝熱フィンとタンク間の距離(以下「伝熱フィン/タンク間距離」)Sを短くする(例えば、5mm以下、望ましくは、2.5
mm以下)必要があるとされている(特許文献2
【0028】参照)。
【0008】
これは、伝熱フィンと伝熱管との接触による犠牲陽極効果の場合、フィン接触点1つで5mm(好ましくは2.5mm)の範囲内で耐食性を発揮するためである。
【0009】
ところが、フィン端/タンク間距離Sが短いと、ろう付け時に、タンク/伝熱管結合部18におけるろう材が引き寄せられて、該伝熱管のタンク根付け部20にろう引けが発生し易いことを発見した。他方、ろう材のタンク/伝熱管結合部及びフイン/伝熱管結合部への移動により、亜鉛も同時にそれらの結合部側へ引き寄せられ、犠牲陽極効果を付与可能な高濃度亜鉛層を、フィン端/タンク間の伝熱管の表面に形成できない場合があることを発見した。
【0010】
【特許文献1】
特開2000−351062公報
【特許文献2】
特開平9−203597号公報
【特許文献3】
特開昭61−202772号公報
【0011】
【発明の課題】
本発明は、上記にかんがみて、伝熱管/タンク結合部にろう引けが発生せず、かつ、フィン端とタンクとの間に確実な耐食性を付与できる熱交換器の製造方法を提供することを課題
(目的)とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の熱交換器の製造方法は、上記目的を下記構成により達成するものである。
【0013】
アルミニウム製でろう付けにより一体化され、伝熱管に亜鉛による犠牲陽極効果が付与される積層型熱交換器の製造方法であって、
伝熱フィンを介在させて前記伝熱管の両端をヘッダタンクの結合孔に挿入し、前記伝熱フィン端/タンク間距離が伝熱管/タンク結合部にろう引けが発生しない距離として組み付けた後、
亜鉛含有フラックス組成物を伝熱管/タンク結合部又はその近傍に塗布して、加熱によりろう付けを行うことを特徴とする。
【0014】
上記の如く、フィン端/タンク間距離を、伝熱管のタンク根付部にろう引けが発生しない距離とし、かつ、亜鉛含有フラックス組成物を、伝熱管/タンク結合部又はその近傍に塗布することにより、伝熱フィン端/タンク間距離における伝熱管部位に耐食性に必要な高濃度亜鉛層を確保することが容易となる。
【0015】
すなわち、従来においては、亜鉛含有塗膜層を伝熱管の全面に形成しておいても、ろう付け時にろう材が、毛管現象でフィン/伝熱管及び伝熱管/タンクの各接合部位に引き寄せられるときに、亜鉛含有塗膜層の亜鉛も同時に各接合部位に引き寄せられる。このため、耐食性を付与可能な犠牲陽極効果を付与可能なZn濃度を有する亜鉛高濃度層を、フィン端/タンク間に形成し難い。しかし、本発明では、伝熱管/タンク結合部又はその近傍に、流れが良好な亜鉛含有フラックス組成物を塗布することにより、フィン端/タンク間に亜鉛が補給されて、伝熱管表面に亜鉛高濃度層が形成される(残存する)ものと推定される。
【0016】
そして、上記伝熱管のタンク根付部20にろう引けが発生しない距離とは、通常、フィン端/タンク間距離Sが1.5mm以上になるものとする。
【0017】
また、亜鉛含有フラックス組成物としては、亜鉛フッ化物系フラックス、又はフッ化物系フラックスと亜鉛を含有するアルミニウム合金ろう材との混合物を使用することが望ましい。フッ化物系フラックスは、塩化物系フラックスの如く、アルミニウムに対して腐食性を有しないためである。
【0018】
ここで、上記亜鉛を含有するアルミニウム合金ろう材としては、通常、Si:5〜15%、Zn:0.5〜3%のAl−Si−Zn系合金からなるろう材を使用する。
【0019】
亜鉛含有フラックス組成物の塗布により形成される塗膜中におけるZn含有量は、1〜5g/m2とすることが望ましい。塗膜中のZn含有量が過少では、伝熱フィン端とタンク間における伝熱管部位に耐食性を付与し難く、逆に、過多では、タンク根付部20に形成されるフィレット中のZn含有量が過多となり、フィレットの腐食が局部的に進むおそれがある。
【0020】
亜鉛含有フラックスの塗布は、液状バインダーを用いてスラリー状にして、伝熱管/タンク結合部に塗布することが望ましい。加圧塗布ガン等で塗布可能となり塗布作業性が良好となるとともに、被塗布面に対する密着性も確保し易くなる。
【0021】
さらに、伝熱管/タンク結合部の近傍に対する塗布は、ヘッダタンクとして、亜鉛含有フラックス組成物を液状バインダーでスラリー状にして予め塗布したものを使用して行ってもよい。組付け後のろう付け加熱前の亜鉛含有フラックス組成物を塗布する手間が省ける。
【0022】
上記のようにして製造した熱交換器は、下記のような構成となる。
【0023】
アルミニウム製で、伝熱管に亜鉛による犠牲陽極効果が付与されてなる積層型熱交換器であって、
積層型熱交換器は、扁平チューブ形状の複数の伝熱管と、複数の伝熱フィンと、伝熱管の両端が挿入される結合孔を備えた一対のヘッダタンクとを備え、ろう付けにより一体化され、伝熱管に犠牲陽極効果を付与する処理がなされており、伝熱フィン端/タンク間距離が伝熱管/タンク結合部にろう引けが発生しない距離であるとともに、ろう付後に伝熱フィン端/タンク間の伝熱管部位の亜鉛含有層における亜鉛濃度が0.8質量%以上であり、伝熱管のタンク部根付部フィレットにおけるZn濃度が4%以下であることを特徴とする。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の熱交換器の製造方法の実施形態について説明する。以下の説明で、含有量を示す「%」及び「混合比」は、特に断らない限り、質量基準である。
【0025】
パラレルフロー型の積層型熱交換器は、前述の如く、複数の伝熱管12と、複数の伝熱フィン14と、一対のへッダタンク16との各構成要素を備え、ろう付けで一体化されるものである。各構成要素はアルミニウム製であるとともに、伝熱管の耐食性の見地から亜鉛による犠牲陽極効果が付与される。
【0026】
犠牲陽極効果の付与の態様は、前述と同様、▲1▼チューブにろう付け加熱時に亜鉛拡散層となる亜鉛系塗膜を形成する、及び、▲2▼伝熱フィンの基材をZn添加アルミニウム合金とする伝熱フィンを使用する、の双方又は一方により行うものである。
【0027】
ここで、亜鉛系塗膜の形成態様としては、亜鉛溶射、後述の亜鉛系フラックス塗布等がある。
【0028】
亜鉛溶射及び亜鉛系フラックスの双方とも、溶射層ないし塗膜中のZn含有量が1〜5g/m2、望ましくは2〜4g/m2となるように塗布する。亜鉛量が過少では、耐食性に十分な犠牲陽極効果を伝熱管表面に付与できず、逆に、過多であると、伝熱管のタンク根付部フィレットの犠牲陽極効果が強すぎてフィレット自体が早期に自己腐食してしまうおそれがある。
【0029】
ここで、上記伝熱フィン14を形成する亜鉛添加アルミニウム合金としては、通常JISのA3000番台のAl−Mn系合金(例えばA3003)に亜鉛を0.5〜5.5%(例えば2.5%前後)添加したもので、肉厚0.05〜0.1mm(例えば0.07mm)のものを使用する。そして、通常、それらを心材としてろう材をクラッドしたブレージングシートを用いる。ろう材としては、JIS番号の4343、4045等を使用可能である。
【0030】
また、伝熱管12は、JISのA1000番台の純アルミニウム系又はCu―Mnを微量に含むAl−0.5Cu−0.15Mn等の合金で、肉厚0.2〜0.3mmのものを使用できる。
【0031】
さらに、ヘッダタンク16は、通常、JISのA3000番台のAl−Mn系合金(例えばA3003)で、肉厚1〜2mmに押出たものを使用する。なお、タンクはブレージングシートを成型加工したものでもよい。
【0032】
上記各構成要素のうち、タンク材に押出材を用いた場合、ろう付け(溶接)部位には、ろう材が付与されていないため、フラックスを含有させた固形ろう材を配置ないし液状ろう材を塗布する。
【0033】
また、ブレージングシートには、通常、フラックスは配合されていないので、フラックスまたはフラックスとろう材の混合物(フラックス組成物)を、液状バインダーでスラリー状にして塗布する。ここで、フラックスとしては、塩素系フラックス等でもよいが、通常、アルミニウムに対して腐食作用のないふっ素系フラックスを用いる。ふっ素系フラックスとしては、KAlF4、K2AlF5・H2O又はK3AlF6等と使用可能である。このときの塗布量は、0.5〜10g/m2、望ましくは1〜8g/m2とする。
【0034】
そして、本実施の形態では、フィン端/タンク間距離Sを、伝熱管12のタンク根付部(以下「タンク根付部」という。)20に引けが発生しない距離とするとともに、さらに、伝熱管/タンク結合部又はその近傍に亜鉛含有フラックス組成物を塗布する。
【0035】
通常、上記タンク根付部20に引けが発生しない距離とは、ろう材の種類、配置態様(ブレージングシートを用いるか組付け後ろう材を配置するか、更には、ろう材の配置量)等により異なるが、通常、フィン端/タンク間距離Sが1.5mm以上になるものとする(表1比較例1〜5参照)。
【0036】
ここで、亜鉛含有フラックス組成物としては、▲1▼亜鉛化合物フラックス(KZnF3等)又は▲2▼亜鉛粉末とフラックス(▲1▼または前述のフッ化物系フラックス等)との混合物、更には、▲3▼これら▲1▼又は▲2▼とAl合金ろう材との混合物を挙げることができる。特に、亜鉛フッ化物系フラックス、又はフッ化物系フラックスと亜鉛を含有するアルミニウム合金ろう材との混合物を使用することが望ましい。フッ化物系フラックスは、塩化物系フラックスの如く、アルミニウムに対して腐食性を有しないためである。
【0037】
そして、上記Al合金ろう材としては、Si:5〜15%、Zn:0.5〜3%のAl−Si−Zn系合金からなるろう材を好適に使用可能である。例えば、合金番号4N43・4N45等を使用可能である。
【0038】
▲2▼の場合のフラックス/亜鉛粉末の混合質量比=5/95〜50/50、望ましくは、10/90〜40/60とする。また、ろう材を混合する場合の、ろう材/フラックスの混合比=5/95〜50/50、望ましくは10/90〜40/60とする。
【0039】
なお、伝熱管/タンク結合部の近傍に直接、亜鉛亜鉛含有フラックス組成物を塗布する代わりに、タンク16として、亜鉛含有フラックス組成物を、水系バインダーでスラリー状として、予め、表面に塗布したものを使用してもよい。フィン/伝熱管/タンク組付け後、伝熱管/タンク結合部18のまたはその近傍に直接亜鉛含有フラックス組成物を直接塗布するのと同様の効果が得られる。
【0040】
そして、これらの亜鉛含有フラックス組成物の塗布は、塗布に際して、熱可塑性のアクリル樹脂やブチル系ポリマー等をベースとする液状バインダー(水系ポリマー分散液又は溶剤溶液)と混合して、スラリー状として塗布することが望ましい。塗布粘度の調整が容易で、加圧塗布ガン等で塗布作業が可能となるとともに、被塗膜面に対する密着性が良好となる。なおバインダー(固形分)/フラックス類の混合比=5/95〜50/50、望ましくは10/90〜30/70とする。
【0041】
塗布手段としては、通常、シーラント等当に使用されている加圧塗布ガンを使用するが、刷毛塗り、スプレー等であってもよい。
【0042】
ここで、亜鉛含有フラックス組成物の塗布条件は、塗膜中のZn含有量が約1〜5g/m2、望ましくは、約2〜4g/m2となるようなものとする。Zn含有量が過少であると、フィン端とタンクとの間の伝熱管表面に犠牲陽極効果を付与し難く、Zn含有量が過多であると、ろう付けにより形成されたタンク根付部20のフィレットに多量の亜鉛(Zn)が残存して、当該フィレットがタンク根付部20の腐食を促進させるおそれがある。
【0043】
また、ろう付けの加熱条件は、通常、窒素雰囲気等の非酸化雰囲気下で、ろう材の種類、フラックス類の種類・混合比率等により異なるが、通常、600℃前後×2〜10分の範囲で適宜選定する。
【0044】
このとき、伝熱管/タンク結合部18に塗布した亜鉛含有フラックス組成物は、ろう材に比して融点が低くかつ流動性も良好であるため、ろう付け加熱時に、伝熱管12のタンク根付部20から伝熱フィン端14a側に流れて、伝熱フィン端14aとタンク16との間の伝熱管12表面に、耐食に必要な亜鉛高濃度層22が形成される。換言するなら、伝熱管12の表面に予め、亜鉛層が形成されている場合は、タンク根付部20に形成されたフィレットの外側に亜鉛高濃度層22が残存することになる。
【0045】
したがって、フィン端/タンク間距離Sが1.5mm以上と大きくても、後述の実施例で示す如く、伝熱フィン端14aとタンク18との間の伝熱管に耐食性を付与できる。
【0046】
【実施例】
以下、本発明の効果を確認するために行なった実施例について、比較例とともに説明をする。
【0047】
下記各構成の材料で形成した伝熱管、伝熱フィン及びヘッダタンクを用いて、表1に示すフィン端/タンク間距離を有して組付け後、ろう材(A4343)を、伝熱管/タンク結合部に配置した後、フラックス(KAlF4)を、伝熱管の全面に塗布後(塗布量10g/m2)、さらに、表示の亜鉛量となるように亜鉛含有フラックス組成物である亜鉛化合物フラックス(KZnF3)を伝熱管/タンク結合部にZn含有量が表示量となるように塗布した。
【0048】
その後、窒素雰囲気中で、600℃×3minの条件で加熱してろう付けを行った。
【0049】
伝熱管…Al−0.5Cu−0.15Mnの合金材料で形成した肉厚0.2mmの押出しチューブを用いた。なお、当該押出チューブには、フラックス(KZnF3)を、バインダー(ブチル系)で希釈して10g/m2にとなるよう全面に塗布したものを使用した。
【0050】
伝熱フィン…A3003にZn2.5%を添加した合金材料を心材とし両面にA4343をクラッドしたブレージングシートを用いた。
【0051】
ヘッダタンク…A1050の合金材料で形成した肉厚1mmの押出しチューブを用いた。
【0052】
こうして調製した各実施例・比較例の熱交換器について、下記各項目の評価(測定)を行なった。
【0053】
(1)タンク根付部ろう付け性:
タンク根付部(伝熱管/チューブ接合部)を目視観察して、未接合部の有無により評価した。評価基準は、ろう引け無し:○、ろう引け有り:×とした。
【0054】
(2)伝熱管表面Zn濃度:
フィン端/タンク間のタンク面から0.5mmの位置(比較例1・2の場合は中央位置)における伝熱管表面のZn濃度を電子プローブX線マイクロアナライザー(EPMA)により測定した。評価基準は、Zn濃度0.8%以上:○、Zn濃度1%未満:×とした。
【0055】
(3)タンク根付部フィレット中のZn濃度:
タンク根付部フィレットのZn濃度を、上記と同様にして測定した。評価基準は、Zn濃度4%未満:○、Zn濃度4%以上:×とした。
【0056】
それらの結果を表1から下記のことが分かる。
【0057】
フィン端/タンク間距離が長い場合は(1.5mm以上)は、タンク根付部にろう引けが発生しない(実施例1〜5参照)。これに対して、フィン端/タンク間距離が短い場合(1.5mm未満)、いずれもろう引けが発生する(比較例1〜5参照)。
【0058】
また、Zn系フラックスの塗膜Zn含有量が、1〜5g/m2の場合、フィン端/タンク間の伝熱間部位表面に、耐食に必要なZn0.8%以上のZn高濃度層が形成され、かつ、タンク根付部フィレットのZn濃度も、フィレットの腐食が進み過ぎないZn濃度4%未満に形成される(実施例1〜5参照)。
【0059】
他方、Zn系フラックスの塗膜Zn含量が、1.5g/m2未満の場合、フィン端/タンク間の伝熱間部位表面に、耐食に必要なZn濃度0.8%以上のZn高濃度層を得難い(比較例1・7参照)。また、1.5g/m2を超える場合、タンク根付部フィレットのZn濃度も、フィレットの腐食が進み過ぎるZn濃度4%以上になり易い(比較例6・8参照)。
【0060】
なお、実施例・比較例の同じZn含量塗膜でも、距離が長くなると、相対的に伝熱間表面Zn濃度/根付部フィレットZn濃度の比が小さくなり、伝熱管/タンク結合部に塗布されたZnフラックス類は、フィン端に向かって流れていることが伺える。例えば、実施例2と4では、距離がそれぞれ4mmと7mmに対して、濃度比がそれぞれ0.80、0.65である。また、比較例3、実施例1と実施例5では、距離がそれぞれ1mm、3mm、10mmに対して、濃度比がそれぞれ0.95、0.89、0.79である。
【0061】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用する積層型熱交換器の概念図およびその拡大図である。
【符号の説明】
12 伝熱管
14 伝熱フィン
16 ヘッダタンク
18 伝熱管/タンク結合部
20 タンク根付部フィレット
22 亜鉛高濃度層
S フィン端/タンク間距離
Claims (9)
- アルミニウム製でろう付け一体化され、伝熱管に亜鉛による犠牲陽極効果が付与される積層型熱交換器の製造方法であって、
伝熱フィンを介在させて伝熱管の両端をヘッダタンクの結合孔に挿入し、フィン端/タンク間距離を伝熱管/タンク結合部にろう引けが発生しない距離として組付けた後、
前記伝熱管/タンク結合部又はその近傍に、亜鉛含有フラックスまたは亜鉛含有フラックスとろう材との混合物(以下「亜鉛含有フラックス組成物」という。)を塗布して、加熱によりろう付けを行うことを特徴とする積層型熱交換器の製造方法。 - 前記伝熱フィン端/タンク間距離を、1.5mm以上とすることを特徴とする請求項1記載の積層型熱交換器の製造方法。
- 前記伝熱管に犠牲陽極効果を付与する態様が、▲1▼チューブに亜鉛拡散層となる亜鉛系塗膜を形成する、及び、▲2▼伝熱フィンの基材を亜鉛添加アルミニウム合金とする伝熱フィンを使用する、の双方又は一方により行うことを特徴とする請求項1記載の積層型熱交換器の製造方法。
- 前記亜鉛含有フラックス組成物を液状バインダーでスラリー状にして、前記伝熱管/タンク結合部に塗布することを特徴とする請求項1記載の積層型熱交換器の製造方法。
- 前記ヘッダタンクとして、前記亜鉛含有フラックス組成物を、予め液状バインダーを用いて塗布したものを使用することを特徴とする請求項1記載の積層型熱交換器の製造方法。
- 前記亜鉛含有フラックス組成物で前記伝熱管/タンク結合部に形成した塗膜中におけるZn含有量が1〜5g/m2であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の積層型熱交換器の製造方法。
- 前記亜鉛含有フラックス組成物として、Si:5〜15%、Zn:0.5〜3%のAl−Si−Zn系合金からなるろう材を含むものを使用することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の積層型熱交換器の製造方法。
- アルミニウム製で、伝熱管に亜鉛による犠牲陽極効果が付与されてなる積層型熱交換器であって、
前記積層型熱交換器は、扁平チューブ形状の複数の伝熱管と、複数の伝熱フィンと、前記伝熱管の両端が挿入される結合孔を備えた一対のヘッダタンクとを備え、ろう付けにより一体化され、前記伝熱管に犠牲陽極効果を付与する処理がなされており、
前記フィン端/タンク間距離が伝熱管/タンク結合部にろう引けが発生しない距離であるとともに、ろう付後に伝熱フィン端とタンクの間の伝熱管部位に形成されるZn拡散層における亜鉛濃度が0.8質量%以上であり、前記伝熱管のタンク部根付部フィレットにおけるZn濃度が4%以下であることを特徴とする積層型熱交換器。 - 前記伝熱フィン端/タンク間距離が、1.5mm以上であることを特徴とする請求項8記載の積層型熱交換器。
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