JP2004330015A - 給水装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】水の供給源から水の利用系に対し、安全性を確認しながら給水できるようにする。
【解決手段】給水装置100は、水の利用系、例えば食品の調理や加工をするための食品加工設備101に対し、水の供給源、例えば給水タンク102から水を供給するためのものであり、給水タンク102から食品加工設備101に向かう給水経路103および当該給水経路103から分岐して設けられた判定装置104を備えている。判定装置104は、給水中に大腸菌が含まれているものと判定した場合、給水遮断弁107を閉鎖し、給水タンク102から食品加工設備101への給水を遮断する。
【選択図】 図1
【解決手段】給水装置100は、水の利用系、例えば食品の調理や加工をするための食品加工設備101に対し、水の供給源、例えば給水タンク102から水を供給するためのものであり、給水タンク102から食品加工設備101に向かう給水経路103および当該給水経路103から分岐して設けられた判定装置104を備えている。判定装置104は、給水中に大腸菌が含まれているものと判定した場合、給水遮断弁107を閉鎖し、給水タンク102から食品加工設備101への給水を遮断する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、給水装置、特に、水の供給源から水の利用系に対して水を供給するための給水装置に関する。
【0002】
【従来の技術とその課題】
例えば食品工場は、食品加工工程や調理工程において水を多用しているため、食品加工設備に対して安定に水を供給するための給水装置を用いている。この給水装置は、一般に、上水道からの水を貯蔵するための給水タンクと、当該給水タンクから所要の食品加工設備に対して水を供給するための給水経路とを備えている。ところが、このような給水装置を用いて食品加工設備に対して供給される食品加工水は、給水タンクでの貯蔵中等において、大腸菌による汚染を受ける可能性がある。食品加工水が大腸菌を含む場合、当該食品加工水は、単に汚物で汚染されているということだけではなく、病原菌類も含んでいる可能性があることを示唆することになるため、食品加工設備での使用を直ちに中止する必要がある。
【0003】
このため、食品加工水は、厳格な衛生管理が不可欠であり、大腸菌による汚染の有無を定期的に検査して安全性を図る必要がある。ところが、食品加工水が大腸菌により汚染されているか否かの検査は、複雑かつ専門的な作業を必要とすることから、通常は保健所等の専門機関に試料を提出して委託する必要があり、検査結果の判明までに最低でも数日間を要する。
【0004】
本発明の目的は、水の供給源から水の利用系に対し、安全性を確認しながら給水できるようにすることにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の給水装置は、水の供給源から水の利用系に対して水を供給するためのものであり、供給源から利用系に水を供給するための給水経路と、給水経路を通じて利用系に供給される水中における大腸菌の存否を判定するための大腸菌判定手段を有する判定装置とを備えている。
【0006】
このような給水装置は、供給源から供給される水中における大腸菌の存否を判定装置により判定することができるので、供給源からの水の安全性を確認しながら利用系に対して給水することができる。
【0007】
この給水装置において、判定装置は、例えば、水中における大腸菌群の存否を判定するための大腸菌群判定手段をさらに備えていてもよい。この場合、給水装置は、供給源から供給される水中における大腸菌群の存否を判定装置によりさらに判定することができるので、供給源からの水の安全性をより厳正に確認しながら利用系に対して給水することができる。
【0008】
また、この給水装置において、給水経路は、例えば、判定装置での判定結果に基づいて作動する。水を利用系に供給するのを遮断するための遮断装置を有している。ここで、遮断装置は、通常、判定装置において水中に大腸菌または大腸菌群が含まれるものと判定された場合に作動する。また、この給水装置は、例えば、判定装置での判定結果を継続的に記録するよう設定されている。ここで、判定結果は、水中における大腸菌または大腸菌群の存否に関する判定結果である。
【0009】
また、判定装置は、通常、容器と、給水経路から分岐しかつ利用系に供給される水の一部を容器に供給するための供給路と、容器に供給された水の温度を調節するための温度調節装置と、容器に供給された水に対し、β−グルクロニダーゼと反応した場合に発色物質および蛍光物質のうちの一つを生成する合成酵素基質を含む合成酵素基質培地を供給するための試薬供給装置と、合成酵素基質培地の供給後における、合成酵素基質とβ−グルクロニダーゼとの反応による発色物質および蛍光物質のうちの一つの生成を判定するための判定手段とを備えている。
【0010】
また、他の形態に係る判定装置は、通常、容器と、給水経路から分岐しかつ利用系に供給される水の一部を容器に供給するための供給路と、容器に供給された水の温度を調節するための温度調節装置と、容器に供給された水に対し、β−グルクロニダーゼと反応した場合に蛍光物質を生成する第一合成酵素基質およびβ−ガラクトシダーゼと反応した場合に発色物質を生成する第二合成酵素基質を含む合成酵素基質培地を供給するための試薬供給装置と、合成酵素基質培地の供給後における、第一合成酵素基質とβ−グルクロニダーゼとの反応による蛍光物質の生成を判定するための第一判定手段と、第二合成酵素基質とβ−ガラクトシダーゼとの反応による発色物質の生成を判定するための第二判定手段とを備えている。
【0011】
なお、判定装置は、例えば、容器に供給された水を容器の外部に排出するための排出路と、供給路を通じて容器に洗浄液を供給するための洗浄液供給装置とをさらに備えていてもよい。この場合、洗浄液は、例えば殺菌剤を含んでいてもよい。また、判定装置は、例えば、容器に供給された水に対して試薬供給装置が合成酵素基質培地を供給する前に、容器の洗浄状態を確認するための洗浄確認手段をさらに備えていてもよい。
【0012】
【発明の実施の形態】
実施の形態1
図1を参照して、本発明の実施の形態1に係る給水装置を説明する。図において、給水装置100は、例えば、食品の調理や加工をするための食品加工設備101(水の利用系の一例)に対し、給水タンク102(水の供給源の一例)から食品加工用の水を供給するためのものであり、給水経路103および判定装置104を主に備えている。給水タンク102は、上水道や地下水などの原水を一時的に貯留するためのものであり、原水を供給するための原水供給路105が連絡している。
【0013】
給水経路103は、給水タンク102と食品加工設備101とを連絡しており、給水タンク102内に貯留された原水を食品加工設備101に対して供給するためのものである。給水経路103は、給水タンク102内の水を送り出すための給水ポンプ106と給水遮断弁107(遮断装置の一例)とを有している。給水遮断弁107は、電磁弁であり、給水経路103を閉鎖して給水タンク102から食品加工設備101への給水を遮断するためのものである。
【0014】
判定装置104は、合成酵素基質培地法により、給水タンク102から食品加工設備101へ供給される給水中における大腸菌の存否を自動的に判定するためのものである。判定装置104の詳細を説明するに当り、先ず、合成酵素基質培地法について説明する。
【0015】
大腸菌は、グラム陰性無芽胞の桿菌であり、β−グルクロニダーゼ(β−glucuronidase)を特異酵素として有している。このため、飲料水等の被試験水を大腸菌の培養環境に設定し、そこからβ−グルクロニダーゼを検出することができると、間接的に大腸菌の存在を証明することができる。そこで、このような大腸菌の性状を利用した、飲料水等の被試験水中における大腸菌の存否を迅速に判定するための方法として、合成酵素基質培地法が知られている(例えば、社団法人日本水道協会発行「上水試験方法 2001年版」参照)。合成酵素基質培地法とは、発色物質または蛍光物質を結合させた合成酵素基質を培地に使用し、目的とする細菌がもつ特異酵素により当該合成酵素基質が加水分解されて発色物質または蛍光物質が生成することを利用した検査方法(判定方法)をいう。この方法では、発色物質による被試験水の変色若しくは蛍光物質による蛍光を観測することができれば、被試験水中に大腸菌が存在するものと判断することができる。因みに、発色物質を生成する合成酵素基質として、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−グルクロニド(X−GLUC)が知られている。また、蛍光物質を生成する合成酵素基質として、4−メチルウンベリフェリル−β−D−グルクロニド(MUG)が知られている。
【0016】
このうち、X−GLUCを用いた合成酵素基質培地法では、X−GLUC、大腸菌の栄養素となるペプトン等およびピルビン酸ナトリウム等の炭素源、塩類、界面活性剤並びにpH調整剤等を所定の濃度で含む合成酵素基質培地を一定量の被試験水中に所定量添加し、その被試験水を所定時間、大腸菌の培養に適した温度に保つ。ここで、被試験水中に大腸菌が含まれている場合は、大腸菌が栄養素により培養され、β−グルクロニダーゼが生成する。生成したβ−グルクロニダーゼは、合成酵素基質であるX−GLUCを加水分解し、青〜青緑色を呈する発色物質である5,5−ジブロモ−4,4−ジクロロインジゴを生成させる。これにより、被試験水は青〜青緑色に変色するので、大腸菌を含むものと判定することができる。一方、被試験水中に大腸菌が含まれていない場合は、上述の合成酵素基質培地を添加しても大腸菌が培養されることはないので、β−グルクロニダーゼが生成することはなく、被試験水は上述のような青〜青緑色に変色しない。したがって、被試験水には大腸菌が含まれないものと判定することができる。
【0017】
また、MUGを用いた合成酵素基質培地法では、同じく、MUG、大腸菌の栄養素となるペプトン等およびピルビン酸ナトリウム等の炭素源、塩類、界面活性剤並びにpH調整剤等を所定の濃度で含む合成酵素基質培地を一定量の被試験水中に所定量添加し、その被試験水を所定時間、大腸菌の培養に適した温度に保つ。ここで、被試験水中に大腸菌が含まれている場合は、大腸菌が栄養素により培養され、β−グルクロニダーゼが生成する。生成したβ−グルクロニダーゼは、合成酵素基質であるMUGを加水分解し、蛍光物質である4−メチルウンベリフェロンを生成する。この結果、被試験水は、紫外線の照射を受けて蛍光するので、大腸菌を含むものと判定することができる。一方、被試験水中に大腸菌が含まれていない場合は、上述の合成酵素基質培地を添加しても大腸菌が培養されることはないので、β−グルクロニダーゼが生成することはなく、被試験水は紫外線の照射を受けても蛍光しない。したがって、被試験水には大腸菌が含まれないものと判定することができる。
【0018】
この実施の形態1において用いられる判定装置104は、X−GLUCを合成酵素基質として含む合成酵素基質培地を用いて大腸菌の存否を自動的に判定するためのものであり、図2に示すように、容器2、温度調節装置3、試薬供給装置4、洗浄液供給装置5、透過率測定装置6および制御装置7を主に備えている。
【0019】
容器2は、大腸菌の存否の判定対象となる給水試料(後述)を貯留するためのものであり、例えば、石英ガラスなどの透光性を有する無色透明の材料を用いて形成された、底部を有する円筒状のものである。容器2の上端部は、栓27により気密に封止されている。また、この容器2は、給水試料を内部に供給するための供給路20と、容器2に貯留された給水試料を外部に排出するための排出路21とを備えている。供給路20は、給水経路103から分岐しており、給水試料の流通を制御するための第一電磁弁22を備えている。また、供給路20の先端は、栓27を通じて容器2内の底部に向けて延びている。排出路21は、容器2内に貯留された給水試料を排出するためのものであり、栓27から容器2の外部に向けて延びている。
【0020】
上述の容器2は、マグネチックスターラー25上に配置されており、また、内部の底部には磁石を内蔵した攪拌子26が配置されている。
【0021】
温度調節装置3は、容器2内に貯留された給水試料の温度を大腸菌の培養に適した温度に調節するためのものであり、容器2の上部外周に配置された、例えばアルミニウム等の良伝熱性材料からなるブロック30と、このブロック30を加熱するためのヒーター31とを備えている。
【0022】
試薬供給装置4は、容器2内に貯留された給水試料に対して試薬としての合成酵素基質培地を供給するためのものであり、当該合成酵素基質培地を貯蔵するための試薬タンク40と、試薬タンク40から容器2内に延びる試薬供給路41とを備えている。試薬供給路41は、試薬タンク40内の合成酵素基質培地を容器2内に送り出すための試薬ポンプ42と、逆止弁43とを有している。
【0023】
洗浄液供給装置5は、容器2および供給路20の一部を洗浄するためのものであり、洗浄液を貯蔵するための洗浄液タンク50と、洗浄液タンク50から延びる洗浄液供給路51とを備えている。洗浄液供給路51は、洗浄液タンク50内の洗浄液を送り出すための洗浄液ポンプ52と、洗浄液の流量を制御するための第二電磁弁53とを有しており、供給路20において、第一電磁弁22の給水経路103側に連絡している。
【0024】
透過率測定装置6は、容器2の底部近傍に配置された、第一透過率測定部61と第二透過率測定部62とを主に備えている。第一透過率測定部61は、緑色ダイオード等の緑色光を発光する第一発光素子63と、容器2を挟んで第一発光素子63と対向する、例えばフォトトランジスタ等の第一受光素子64とを主に備えており、第一発光素子63から照射されかつ容器2を通過する緑色光の透過率を測定するためのものである。一方、第二透過率測定部62は、赤色ダイオード等の赤色光を発光する第二発光素子65と、容器2を挟んで第二発光素子65と対向する、例えばフォトトランジスタ等の第二受光素子66とを主に備えており、第二発光素子65から照射されかつ容器2を通過する赤色光の透過率を測定するためのものである。
【0025】
制御装置7は、判定装置104を含む給水装置100全体の動作を制御するためのものであり、図3に示すように、中央処理装置(CPU)70、判定装置104の動作プログラムを記憶している読出し専用メモリー(ROM)71、各種の電子情報を記憶するためのランダムアクセスメモリー(RAM)72および入出力ポート73を主に備えている。入出力ポート73の入力側には、オペレータが給水装置100および判定装置104に対して各種の動作指令を入力するためのスイッチ類74、第一受光素子64、第二受光素子66およびその他の装置が接続されている。一方、入出力ポート73の出力側には、第一発光素子63、第二発光素子65、各電磁弁22,53,107、各ポンプ42,52,106、マグネチックスターラー25、ヒーター31、大腸菌の存否の判定結果等を表示するための表示装置75、当該判定結果等を時刻と共に記録するための記録装置、当該判定結果等を印字するためのプリンタおよびその他の装置が接続されている。
【0026】
なお、この制御装置7に記憶された動作プログラムは、第一透過率測定部61で測定する緑色光の透過率に基づいて給水試料の変色を確認する確認プログラム(確認手段の一例)、第二透過率測定部62で測定する赤色光の透過率に基づいて給水試料の変色の有無を判定する判定プログラム(大腸菌判定手段の一例)並びに第一透過率測定部61で測定する緑色光の透過率および第二透過率測定部62で測定する赤色光の透過率にそれぞれ基づいて容器2の洗浄状態を確認するための洗浄確認プログラム(洗浄確認手段の一例)を含んでいる。
【0027】
上述の判定装置104において用いられる合成酵素基質培地、すなわち、試薬タンク40内に貯蔵される合成酵素基質培地は、既述の通り、X−GLUC(5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−グルクロニド)を合成酵素基質として含むものである。X−GLUCを含む合成酵素基質培地は、市販のものが用いられてもよいが、この実施の形態では、例えば、上水などの被試験水中に含まれる大腸菌群および大腸菌を検査(検出)するための合成酵素基質培地法において用いられるXGal−MUG培地に含まれる、大腸菌群の特異酵素であるβ−ガラクトシダーゼ(β−glactosidase)と反応して発色する発色合成酵素基質であるXGal(5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトピラノシド)および大腸菌検出のための合成酵素基質であるMUG(4−メチルウンベリフェリル−β−グルクロニド)の全量を所定量のX−GLUCにより置換したもの(以下、便宜上、“X−GLUC培地”という)を用いることができる。
【0028】
ここで、XGal−MUG培地の種類は特に限定されるものではないが、例えば、ピルビン酸添加XGal−MUG培地が好ましい。ピルビン酸添加XGal−MUG培地は、例えば、社団法人日本水道協会発行、「上水試験方法 解説編2001年版」842〜843頁の表に詳細が示されており、それによると、1リットル中において次のような酵素基質、大腸菌培養のための栄養成分、塩類、界面活性剤およびpH調製剤を含みかつpHが7.1±0.2に調整されている。
【0029】
酵素基質
XGalを0.10g、大腸菌群酵素誘導剤であるIPTG(1−イソプロピル−β−D−1−チオガラクトピラノシド)を0.10gおよびMUGを0.10g。
大腸菌培養のための栄養成分
ペプトンを5.0gおよびその他の炭素源としてピルビン酸ナトリウムを1.0g。
塩類
塩化物として塩化ナトリウムを5.0g、硝酸塩として硝酸カリウムを1.0g。
界面活性剤
ラウリル硫酸ナトリウムを0.10g。
pH調整剤
リン酸二水素カリウムを1.0g、リン酸水素二カリウムを4.0g。
【0030】
なお、上述のようなピルビン酸添加XGal−MUG培地は市販されており、一例として日水製薬株式会社の商品名“ECブルー”を挙げることができる。また、上述のようなピルビン酸添加XGal−MUG培地は、全量が1リットルになるよう上述の各成分の所定量を水に加えて混合すると、容易に調製することができる。したがって、X−GLUC培地は、このようなピルビン酸添加XGal−MUG培地の調製工程において、0.10gのXGalおよび0.10gのMUGに代えて所定量(通常は0.05〜1.0g、好ましくは0.1g)のX−GLUCを用いると、容易に調製することができる。
【0031】
但し、この判定装置104では、上述の合成酵素基質培地として、各成分の濃度が規定濃度の少なくとも2倍、好ましくは少なくとも6倍、より好ましくは少なくとも11倍に設定されているものを用いるのが好ましい。ここで、規定濃度とは、通常、X−GLUCを含む市販の合成酵素基質培地の場合はそれに含まれる各成分の濃度をいい、また、上述のX−GLUC培地の場合は上述のようにして調製したものに含まれる各成分の濃度をいう。
【0032】
上述のような高濃度の合成酵素基質培地は、所要の成分をその含有量が規定濃度の少なくとも2倍になるよう水中に溶解するか、あるいは、規定濃度に調製された既存の合成酵素基質培地を液量が少なくとも1/2になるまで濃縮すると調製することができる。
【0033】
因みに、規定濃度の合成酵素基質培地は、上述のような栄養素を含んでいるため、試薬タンク40での貯蔵中において各種の雑菌が繁殖し易く、これらの雑菌により短時間のうちに汚染される可能性が極めて高い。したがって、判定装置104において規定濃度の合成酵素基質培地を試薬タンク40で貯蔵しながら用いると、給水試料における大腸菌の存否の判定が不正確で信頼性を欠く可能性がある。これに対し、上述のような高濃度の合成酵素基質培地は、高濃度の塩類を含むため、試薬タンク40内で貯蔵しても雑菌の繁殖が抑制されるので、すなわち、雑菌により汚染される可能性が小さくなるので、給水試料における大腸菌の存否を正確に判定することができる。
【0034】
また、上述のような高濃度の合成酵素基質培地を用いると、規定濃度のものを用いる場合に比べて試薬タンク40の容量を小さく設定することができるので、判定装置104を小型化することもできる。
【0035】
判定装置104において用いられる合成酵素基質培地は、上述のような高濃度の合成酵素基質培地であって、所定の色素をさらに含むものである。ここで用いられる色素は、緑色光の透過率が低下するように給水試料を着色させることができるものであり、また、発色物質である5,5−ジブロモ−4,4−ジクロロインジゴが呈する青〜青緑色の波長領域である600〜700nmの波長領域に吸収ピークを示さないものである。このような色素としては、例えば、520nm付近に極大吸収ピークを示す赤色の色素を用いることができる。但し、ここで用いる色素は、大腸菌の存否の判定結果の信頼性を損ね難いもの、すなわち、大腸菌の培養を妨げ難いものが好ましい。大腸菌の培養を妨げ難い赤色の色素の具体例としては、エオシンYを挙げることができる。
【0036】
合成酵素基質培地における上述の色素の含有量は、給水試料に合成酵素基質培地を添加したときに、給水試料が当該色素の色に変色可能なように設定されていれば特に限定されるものではないが、通常、1〜40mg/l、好ましくは4〜20mg/lに設定されているのが好ましい。
【0037】
なお、上述の色素を含む合成酵素基質培地は、例えば、上述の合成酵素基質培地の調製時において、上述の各成分と共に色素を混合すると調製することができる。
【0038】
一方、判定装置104において用いられる洗浄液、すなわち、洗浄液タンク50に貯蔵される洗浄液は、容器2内および給水試料の供給路20を洗浄するためのものであり、通常、界面活性剤、酸類(有機酸類若しくは無機酸類またはこれらの任意の混合物)、アルカリ類(例えば、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、リン酸塩若しくはケイ酸塩またはこれらの任意の混合物)および酵素(例えば、アミラーゼ、プロテアーゼ若しくはリパーゼまたはこれらの任意の混合物)のうちの一つまたは二つ以上を洗浄剤として含む水溶液である。特に、この洗浄液は、供給路20および容器2内が各種の細菌類により汚染されていない清浄な状態に維持するために、殺菌剤を含むのが好ましい。ここで利用可能な殺菌剤は、特に限定されるものではないが、通常、次亜塩素酸ナトリウム等の塩素系殺菌剤、過酸化水素、逆性石鹸および両性石鹸のうちの一つまたは二つ以上のものが好ましく用いられる。
【0039】
なお、殺菌剤として特に好ましいものは、次亜塩素酸ナトリウム等の塩素系殺菌剤である。塩素系殺菌剤は、各種の菌類に対して殺菌作用を示すだけではなく、漂白剤としても機能するため、後述する容器2の洗浄工程において、容器2の透明性を高めることができる。特に、合成酵素基質培地として色素を含むX−GLUC培地を用いると、給水試料中に大腸菌が含まれる場合は当該給水試料が青〜青緑色に変色し、また、給水試料中に大腸菌が含まれていない場合であっても当該給水試料が色素のために変色するため、容器2の内面がそのような色で着色する場合があるが、塩素系殺菌剤を用いると、そのような着色も洗浄工程において容易に除去することができる。そして、その結果、後述する確認工程や判定工程における結果の信頼性を高めることができる。
【0040】
次に、図4〜図8に示す動作プログラムのフローチャートに基づいて、給水装置100の動作を説明する。なお、ここでは、判定装置104で用いる合成酵素基質培地として、赤色の色素を含むX−GLUC培地を用いる場合について説明する。
【0041】
オペレータが制御装置7において給水装置100の電源をONにすると、プログラムは、ステップS1において、給水遮断弁107を開放状態に設定し、また、第一電磁弁22および第二電磁弁53を閉鎖する等の初期設定動作を実施する。
【0042】
次に、プログラムは、ステップS2において、オペレータが給水開始スイッチをONしたか否かを判断する。ここで、オペレータが給水開始スイッチをONにしない場合、プログラムはそのまま待機状態を維持する。一方、オペレータが給水開始スイッチをONにすると、プログラムはステップS3に移行し、給水ポンプ106を作動させる。これにより、給水タンク102内に貯留された給水は、給水経路103を通じて食品加工設備101に対して連続的に供給される。
【0043】
次に、ステップS4において、プログラムは、判定装置104の第一電磁弁22を開放状態に設定する。これにより、給水経路103を食品加工設備101に向けて流れる給水の一部は、供給路20を通じて容器2内に連続的に供給され、容器2内には当該給水が貯留される。なお、給水装置100の先の運転終了時において、容器2内に給水が貯留されたままの状態である場合、当該給水は、新たに供給される給水により排出路21を通じて外部に押し出される。すなわち、容器2内に残留している給水は、新たに供給される給水により置換されることになる。このような給水(以下、給水試料という場合がある)の採水工程において、所定量の給水(通常は50mlまたは100ml)が容器2内に供給されると、次のステップS5において、第一電磁弁22が閉鎖される。
【0044】
次に、プログラムは、ステップS6において、第一透過率測定部61の第一発光素子63を点灯する。そして、次のステップS7において、容器2を通過する、第一発光素子63からの緑色光を第一受光素子64で受光し、その透過率を測定する。続いて、次のステップS8において、ステップS7で測定した透過率が、一定の基準値Cより大きいか否かを判断する(第一洗浄確認工程)。なお、基準値Cは、例えば、容器2内に蒸留水が貯留されている場合における緑色光の透過率を100%とした場合、当該透過率の90%以上の範囲において任意に設定される透過率である。
【0045】
ここで、透過率が基準値C以下の場合、容器2において緑色光の透過を妨げるような汚れがあるか、若しくは容器2内に貯留された給水試料が異常に濁っているものと判断することができるので、プログラムは、ステップS12に移行して給水ポンプ106を停止し、次のステップS13において、表示装置75を通じて給水装置100に異常が発生したことを通知する。さらに、プログラムは、ステップS13からステップS2に移行し、オペレータが給水開始スイッチを再度ONにしない限り、待機状態を維持する。
【0046】
一方、ステップS7において測定した緑色光の透過率が基準値Cより大きい場合、プログラムはステップS8からステップS9に移行する。ステップS9において、プログラムは、第二透過率測定部62の第二発光素子65を点灯する。そして、次のステップS10において、容器2を通過する、第二発光素子65からの赤色光を第二受光素子66で受光し、その透過率を測定する。続いて、次のステップS11において、ステップS10で測定した赤色光の透過率が、一定の基準値Aより大きいか否かを判断する(第二洗浄確認工程)。なお、基準値Aは、例えば、容器2内に蒸留水が貯留されている場合における赤色光の透過率を100%とした場合、当該透過率の90%以上の範囲において任意に設定される透過率である。
【0047】
ここで、透過率が基準値A以下の場合、容器2において赤色光の透過を妨げるような汚れがあるか、若しくは容器2内に貯留された給水試料が異常に濁っているものと判断することができるので、プログラムはステップS12に移行し、ステップS13を経由してステップS2に戻る。一方、ステップS11において測定した赤色光の透過率が基準値Aより大きい場合、プログラムはステップS11からステップS14に移行する。
【0048】
ステップS14において、プログラムは、試薬供給工程を実施する。ここでは、試薬供給装置4において、試薬ポンプ42を作動させる。この結果、試薬タンク40内に貯留されている合成酵素基質培地が試薬ポンプ42により送り出され、試薬供給路41を通じて容器2内に貯留されている給水試料中に注入される。ここで、合成酵素基質培地は、上述のように濃縮されている場合、給水試料中に溶解したときの濃度が給水試料に対して規定濃度の合成酵素基質培地を規定量注入した場合の濃度と等しくなるよう注入量が設定される。この注入量は、試薬ポンプ42の動作により制御される。また、このような合成酵素基質培地の注入時には、同時にマグネチックスターラー25が作動し、容器2内の給水試料が攪拌子26により攪拌される。この結果、注入された合成酵素基質培地は、給水試料中において均等に分散することになる。所定量の合成酵素基質培地が給水試料に注入されると、試薬ポンプ42が停止し、試薬供給工程は終了する。また、マグネチックスターラー25が停止し、給水試料の攪拌が停止される。
【0049】
ステップS14の終了後、プログラムは、ステップS15に移行し、第一透過率測定部61の第一発光素子63を点灯する。そして、次のステップS16において、容器2を通過する、第一発光素子63からの緑色光を第一受光素子64で受光し、その透過率を測定する。ここで、給水試料は、合成酵素基質培地に含まれる色素により赤色に着色(変色)しているため、緑色光の透過率が低下することになる。そこで、プログラムは、次のステップS17において、ステップS16で測定した透過率が一定の基準値Dより小さいか否かを判断する(確認工程)。なお、基準値Dは、例えば、容器2内に蒸留水が貯留されている場合における緑色光の透過率を100%とした場合、当該透過率の90%未満の範囲において任意に設定される透過率である。
【0050】
ここで、透過率が基準値D以上の場合、給水試料は、合成酵素基質培地に含まれる色素により赤色に変色していないものと判断することができる。すなわち、ステップS14において、試薬ポンプ42の作動不良等の原因により、試薬タンク40から給水試料に対して合成酵素基質培地が正常に添加されなかったものと判断することができる。この場合、プログラムは、ステップS12に移行し、ステップS13を経由してステップS2に戻る。
【0051】
一方、透過率が基準値Dよりも小さい場合、給水試料は、合成酵素基質培地に含まれる色素により正常に赤色に変色したものと判断することができる。すなわち、ステップS14において、試薬ポンプ42が正常に作動し、試薬タンク40から給水試料に対して合成酵素基質培地が正常に添加されたものと判断することができる。この場合、プログラムは、ステップS18に移行する。
【0052】
ステップS18において、プログラムは培養設定工程を実施する。ここでは、温度調節装置3においてヒーター31を作動させ、また、マグネチックスターラー25を作動させる。この結果、容器2がブロック30により加熱され、容器2内の給水試料は撹拌されながら加熱される。そして、プログラムは、次のステップS19において、給水試料の温度が大腸菌の培養に適した温度、例えば36±1℃に達したか否かを判断する。給水試料が当該温度に達していない場合、プログラムは給水試料の加熱を継続する。一方、給水試料の温度が当該温度に達すると、プログラムは、ステップS20において内部タイマーを作動させる(すなわち、経過時間tを0に設定する)。続いて、プログラムは、次のステップS21において、CPU70内の測定回数カウンタnを0に設定し、また、次のステップS22において、測定回数カウンタnの値に1を加える。
【0053】
ステップS22の終了後、プログラムはステップS23に移行し、所要の時間、すなわち、ステップS22で設定した測定カウンタ数(n)に1時間を掛けた時間(すなわち、n時間)が経過したか否か(すなわち、ステップS20で0に設定した経過時間tがn時間になったか否か)を判断する。経過時間がn時間に達していない場合、プログラムは引続き給水試料の加熱状態を維持する。
【0054】
一方、経過時間tがn時間に達すると、プログラムはステップS24に移行し、第二透過率測定部62の第二発光素子65を点灯する。そして、次のステップS25において、容器2を通過する、第二発光素子65からの赤色光を第二受光素子66で受光し、当該赤色光の透過率を測定する。
【0055】
ここで、容器2を通過する赤色光の透過率について説明する。合成酵素基質培地(以下、試薬という場合がある)が供給されかつ培養された給水試料は、大腸菌を含まない場合、X−GLUC培地が加水分解されないため、発色物質である5,5−ジブロモ−4,4−ジクロロインジゴによる青〜青緑色への変色が起こらず、赤色光の透過率は低下しにくい。これに対し、試薬が供給されかつ培養された給水試料は、大腸菌を含む場合、β−グルクロニダーゼによりX−GLUC培地が加水分解され、発色物質である5,5−ジブロモ−4,4−ジクロロインジゴを生成するため青〜青緑色に変色するので、赤色光の透過率が急激に低下する。したがって、一般には、赤色光の透過率の大小により、給水試料の青〜青緑色への変色を判定することができる。すなわち、一般に、赤色光の透過率が低下すれば、給水試料が青〜青緑色に変色している(すなわち、給水試料が大腸菌を含んでいる)ものと判断することができる。
【0056】
但し、給水試料は、大腸菌以外の他の細菌を含む場合、青〜青緑色に変色せずに濁るため、赤色光の透過率はやはり低下することになる。したがって、給水試料が濁っているだけ(便宜上、「濁り」という)なのか、或いは青〜青緑色に変色している(便宜上、「変色」という)のかの判別が必要になる。
【0057】
そこで、濁りと変色とを判別するために、濁り時の赤色光の透過率と変色時の赤色光の透過率との差に基づいて、赤色光の透過率に判別のための基準値を設定する。そして、赤色光の透過率が当該基準値よりも低下している場合は変色と判定し、当該基準値より大きい場合は濁りと判定する。具体的には、給水試料が大腸菌を含まず、他の細菌を含む場合、給水試料は、X−GLUC培地の存在下、36±1℃で24時間培養されると、図9に点線で示すように、赤色光の透過率が12時間を経過したあたりから濁りのために低下するが、その低下の程度は一定レベルで維持される。これに対し、給水試料が大腸菌を含む場合、図9に実線で示すように、赤色光の透過率は15時間を経過したあたりから急激に低下し続ける。このため、培養開始から24時間後では、濁りの場合と変色の場合とでは赤色光の透過率に大きな差(E)が生じる。したがって、この差Eの範囲内において、赤色光の透過率についての任意の基準値Bを設定すれば、赤色光の透過率が当該基準値Bよりも大きい側にあるか小さい側にあるかを判定することにより、濁りか変色かを判別することができる。
【0058】
なお、上述の差Eは、第二発光素子65および第二受光素子66の種類や感度により異なるので、判別のための基準値Bは、これらの種類や感度等に応じて適宜設定するのが好ましい。但し、この実施の形態では、後述するように、培養開始から24時間経過するのを待ってから変色を判定するのではなく、培養開始から1時間毎に変色を判定することになるので、基準値Bは、図9に点線で示す透過率曲線の最小値(図9のM)よりも小さい値に設定するのが好ましい。
【0059】
そこで、プログラムは、次のステップS26において、ステップS25で測定した赤色光の透過率が基準値Bより小さいか否かを判断する。透過率が基準値B以上の場合(すなわち、給水試料が変色していない場合)、プログラムはステップS27に移行し、測定回数カウンタnが24であるか否かを判断する。ここで、測定回数カウンタnが24ではない場合、プログラムはステップS22に戻り、上述のステップS22〜S26を繰返す。一方、ステップS27において、測定回数カウンタnが24であると判断した場合(すなわち、ステップS20で0に設定した経過時間tが24時間になった場合)、プログラムはステップS28に移行し、判定結果処理を実行する。判定結果処理では、表示装置75において、給水試料に大腸菌が含まれていない旨を表示すると共に、そのような判定結果と当該判定をした時刻とを記録装置に記録する。ステップS28の終了後、プログラムはステップS31に移行する。
【0060】
これに対し、ステップS26において、ステップS25で測定した透過率が基準値Bよりも小さい場合(すなわち、給水試料が変色している場合)、プログラムはステップS29に移行し、給水停止工程を実施する。ここでは、給水遮断弁107を閉鎖する。これにより、給水タンク102から食品加工設備101に対する給水が停止される。すなわち、食品加工設備101には、大腸菌を含む危険な給水の供給が自動的に中断されることになる。
【0061】
また、ステップS29の終了後、プログラムはステップS30に移行し、判定結果処理を実行する。この判定結果処理では、表示装置75において、給水試料に大腸菌が含まれている旨を表示すると共に、そのような判定結果と当該判定をした時刻とを記録装置に記録する。ステップS30の終了後、プログラムはステップS31に移行する。
【0062】
なお、ステップS22からステップS31までの工程は、プログラムがステップS26からステップS29へ移行しない限り、測定回数カウンタnが24になるまで、すなわち、経過時間tが24時間になるまで、1時間毎に繰り返し実施されることになる。すなわち、この実施の形態では、培養開始から1時間毎に、給水試料の変色を判定することになる。したがって、この実施の形態では、大腸菌判定のための合成酵素基質培地法において要請されている24時間の培養時間になる前に給水試料の変色を判定した場合(すなわち、給水試料に大腸菌が含まれるものと判定した場合)、速やかに給水停止工程を実施することができ、食品加工設備101への危険な給水を迅速に中断することができる。
【0063】
ステップS31では、容器2内の給水試料を殺菌するための殺菌設定工程を実施する。ここでは、ヒーター31を作動して容器2を更に加熱し、給水試料の温度を高める。続くステップS32では、給水試料温度が、大腸菌の殺菌に適した温度である80℃以上に達したか否かを判断する。給水試料温度が80℃未満の場合、プログラムは容器2の加熱を継続する。一方、給水試料温度が80℃以上の場合、プログラムは、ステップS33において内部タイマーを作動させる(すなわち、経過時間tを0に設定する)。そして、次のステップS34において、所要の時間t1が経過したか否か(すなわち、ステップS33で0に設定した経過時間tがt1になったか否か)を判断する。経過時間がt1に達していない場合、プログラムは引続き給水試料の加熱状態を維持する。一方、経過時間tがt1に達していると、プログラムはステップS35に移行する。なお、時間t1は、給水試料中に含まれる大腸菌を死滅させるのに十分な時間であり、給水試料の温度を80℃で維持する場合は通常30分である。このような殺菌工程により、容器2は、給水試料中に含まれる大腸菌による汚染が防止されることになる。
【0064】
次に、ステップS35において、プログラムは洗浄液供給操作を実施する。ここでは、ヒーター31を停止した後、第一電磁弁22および洗浄液供給装置5の第二電磁弁53を開放状態に設定すると共に、洗浄液ポンプ52を一定時間作動させる。これにより、洗浄液タンク50内の洗浄液は、洗浄液供給路51から供給路20を経由して容器2内に連続的に供給され、容器2内の給水試料を排出路21を通じて外部に押出す。そして、洗浄液ポンプ52が一定時間作動した後、第一電磁弁22および第二電磁弁53が閉鎖される。この結果、容器2内の給水試料は洗浄液により置換され、容器2内には洗浄液が貯留されることになる。貯留された洗浄液は、攪拌子26により攪拌されながら容器2内を洗浄、殺菌する。なお、洗浄液は、供給路20を通過して容器2内に供給されることになるため、その際に供給路20を洗浄、殺菌することもできる。
【0065】
ステップS35の終了後、ステップS36において、プログラムは内部タイマーを作動させる(すなわち、経過時間tを0に設定する)。そして、次のステップS37において、所要の時間t2が経過したか否か(すなわち、ステップS36で0に設定した経過時間tがt2になったか否か)を判断する。経過時間がt2に達してしていない場合、プログラムはそのままの状態を維持する。一方、経過時間tがt2に達していると、プログラムはステップS38に移行する。この結果、容器2は、時間t2の間洗浄液が貯留され、洗浄、殺菌されることになる。なお、時間t2は、容器2内を十分に洗浄、殺菌することができる時間であり、通常は少なくとも60分である。
【0066】
次に、プログラムは、ステップS38において、第一電磁弁22を開放状態に設定する。そして、続くステップS39において、給水遮断弁107が開放状態であるか否かを判断する。ここで、プログラムがステップS26からステップS27およびステップS28を経由してステップS31に移行している場合、すなわち、給水試料中に大腸菌が含まれていなかった場合、給水遮断弁107は開放状態であるため、プログラムは一定の経過時間後にステップS5に移行する。この間、容器2内には給水経路103を通過中の給水の一部が連続的に供給されることになる。これにより、容器2内に貯留された洗浄液は給水により置換され、容器2内には新たな給水試料が貯留されることになる。そして、新たな給水試料は、ステップS6〜S11による容器2の洗浄確認工程を経た後、容器2の洗浄状態に問題がなければ、ステップS14以降において大腸菌の存否が判定される。一方、プログラムがステップS26からステップS29およびステップS30を経由してステップS31に移行している場合、すなわち、給水試料中に大腸菌が含まれていた場合、給水遮断弁107はステップS29において閉鎖されているため、プログラムは、ステップS40に移行して第一電磁弁22を閉鎖した後、ステップS2に移行して待機状態になる。
【0067】
以上のように、この給水装置100は、上述のような判定装置104を備えているため、給水タンク102から食品加工設備101に給水を供給しながら当該給水中に大腸菌が含まれるか否かを連続的に自動的に判断することができ、また、給水中に大腸菌が含まれると判断した場合は食品加工設備101への給水を自動的に中断することができる。したがって、この給水装置100によれば、水の供給源である給水タンク102から水の利用系である食品加工設備101に対し、安全性を確認しながら給水することができる。
【0068】
また、この実施の形態では、ステップS28およびS30において、大腸菌の存否の判定結果を時刻と共に記録装置に継続的に記録しているので、食品加工設備101に供給中の給水における大腸菌の存否の判定結果を時系列的に管理することができる。
【0069】
この実施の形態1においては、例えば、次のような変更が可能である。
[変更例1]
実施の形態1において用いられる判定装置104では、確認工程において、給水試料に合成酵素基質培地が添加されたか否かのみを確認するようにしたが、この判定装置104は、給水試料に合成酵素基質培地の所定量が適切に添加されたか否かをさらに確認するように設定することもできる。
【0070】
この場合は、図10に示すように、給水試料における緑色光の透過率が給水試料中における赤色の色素の濃度が高まるに従って低下することから、緑色光の特定の透過率(X)と当該透過率(X)が達成される場合の給水試料における色素の濃度(Y)との関係を予め調べておく。そして、試薬タンク40内に貯留する合成酵素基質培地において、給水試料に上述の所定量が注入された場合における給水試料中の色素の濃度が上記濃度(Y)になるよう色素の添加量を設定し、また、特定の透過率(X)のデータを制御装置7に記憶しておく。さらに、動作プログラムのステップS17において、緑色光の透過率が特定の透過率(X)に到達したか否かを判定するようように設定しておく。
【0071】
このように設定しておくと、ステップS16で測定した緑色光の透過率が特定の透過率(X)に到達している場合、ステップS17において、給水試料に所定量の合成酵素基質培地が適切に注入されたものと判断することができる。一方、ステップS16で測定した緑色光の透過率が特定の透過率(X)に到達していない場合、ステップS17において、給水試料には所定量の合成酵素基質培地が注入されなかったものと(すなわち、ステップS14の試薬供給工程に異常が発生したものと)判断することができる。
【0072】
したがって、この場合、給水試料中に含まれる大腸菌をより適切な環境で培養することができるようになるので、大腸菌の存否をより正確に判断することができる。
【0073】
[変更例2]
実施の形態1では、合成酵素基質培地としてX−GLUCを含むものを利用し、また、当該合成酵素基質培地に添加する色素として赤色の色素を用いたが、ここで利用する色素はこれに限定されるものではない。すなわち、実施の形態1において、合成酵素基質培地に添加する色素は、既述の条件を満たすものであれば他の色素であってもよい。そのような色素としては、例えば、給水試料を黄色に着色するo−ニトロフェノールを挙げることができる。但し、o−ニトロフェノールを色素として用いる場合、第一透過率測定部61は、緑色光を発光する第一発光素子63に代えて、赤色光以外であって給水試料が黄色に変色した場合に透過率が低下する色の光を発光可能な発光装置を用いる必要がある。このような発光装置としては、例えば、可視紫外光を照射可能な光源と、当該光源からの可視紫外光から特定の波長の光を選択するためのフイルタとを備たものを利用することができる。
【0074】
[変更例3]
実施の形態1では、合成酵素基質培地として、X−GLUCを発色合成酵素基質として含む合成酵素基質培地を利用する場合を例に説明したが、β−グルクロニダーゼにより加水分解された場合に5,5−ジブロモ−4,4−ジクロロインジゴ若しくは他の発色物質を生成する発色合成酵素基質を含む他の合成酵素基質培地を用いる場合も本発明は同様に実施することができる。
【0075】
[変更例4]
実施の形態1において用いた判定装置104では、試薬供給装置4から合成酵素基質培地が確実に給水試料に対して供給されたことを確認するため、合成酵素基質培地として、合成酵素基質と共に色素を含むものを用いたが、色素を含まない合成酵素基質培地を用いた場合も本発明を同様に実施することができる。
【0076】
この場合、判定装置104は、透過率測定装置6に代えて、図11に示すような吸光度測定装置160を用いることができる。図において、吸光度測定装置160は、容器2を通過する可視紫外光の吸光度を測定するためのものであり、容器2の底部近傍に配置された光源161と、容器2を挟んで光源161と対向する受光装置162とを主に備えている。受光装置162は、光源161からの可視紫外光のうち、特定の波長の光(後述)を選択するための切り替え可能な複数のフイルタ163を備えている。ここで、光源161は、制御装置7の入出力ポート73の出力側に接続されており、受光装置162は、入出力ポート73の入力側に接続されている。
【0077】
また、制御装置7は、透過率測定装置6に代えて吸光度測定装置160が用いられることに伴い、吸光度測定装置160で測定された吸光度にそれぞれ基づいて給水試料の変色の有無を判定する判定プログラム(大腸菌判定手段の一例)および容器2の洗浄状態を確認するための洗浄確認プログラム(洗浄確認手段の一例)を含んでいる。
【0078】
ここで、判定プログラムによる給水試料の変色の有無(すなわち、給水試料中における大腸菌の存否)の判定原理および洗浄確認プログラムによる容器2の洗浄の確認原理を説明する。
【0079】
給水試料は、大腸菌を含む場合(ケース1)、上述のような合成酵素基質培地(すなわち、X−GLUCを含む合成酵素基質培地)の存在下で培養処理が施されると、給水試料を青〜青緑色に変色させる。したがって、給水試料の可視紫外光吸収スペクトルは、図12に実線で示すように、青〜青緑色に対応する650nm付近に吸収ピークを有することになる。これに対し、給水試料が大腸菌および大腸菌以外の細菌を含まない場合(ケース2)、給水試料は、上述のような培養処理後であっても青〜青緑色には変色しないことになる。従って、この場合における給水試料の可視紫外光吸収スペクトルは、図12に点線で示すように高波長側に向けてなだらかに減少し、特定の波長での吸収ピークを示さない。
【0080】
一方、給水試料が大腸菌を含まず、大腸菌以外の細菌を含む場合(ケース3)、給水試料は、上述のような培養処理後に青〜青緑色には変色しないが、大腸菌以外の細菌の増殖のために白濁する。このため、この場合における給水試料の可視紫外光吸収スペクトルは、図12に一点鎖線で示すように高波長側に向けてなだらかに減少し、ケース2の場合と同じく特定の波長での吸収ピークを示さないが、全波長領域における吸光度がケース2の場合に比べて上昇することになる。
【0081】
したがって、培養処理後の給水試料は、青〜青緑色に対応する650nm付近の吸光度の測定結果からだけでは、大腸菌の存在を示す青〜青緑色に変色しているのか、大腸菌以外の細菌により単に白濁しているだけなのかの判別が困難である。すなわち、給水試料は、ケース1に該当するのかケース3に該当するのかの判別が困難である。しかし、ケース1の吸収スペクトルは650nm付近に吸収ピークを有しているのに対し、ケース3の吸収スペクトルは当該波長付近において吸収ピークを有していない。したがって、ケース1の場合、650nm付近の高波長側の吸光度に比べ、当該波長付近の吸収ピークの低波長側の裾にあたる550nm付近の吸光度が小さくなるのに対し、ケース3の場合、給水試料は、650nm付近の吸光度が550nm付近の吸光度よりも小さくなる。これによると、550nm付近の吸光度と650nm付近の吸光度とを比較し、前者が後者に比べて小さい場合は、給水試料が大腸菌の存在のために青〜青緑色に変色しているものと判断することができる。逆に、前者が後者に比べて大きい場合は、給水試料が青〜青緑色に変色しておらず、給水試料に大腸菌が含まれていないものと判断することができる。
【0082】
また、容器2の洗浄状態は、培養前の給水試料または洗浄液が貯留された状態において、550nmの波長の光の吸光度と650nmの波長の光の吸光度とを比較すると、確認することができる。すなわち、650nmの吸光度が550nmの吸光度よりも大きい場合、容器2は、青〜青緑色に変色した給水試料により着色しており、洗浄が不十分なことになる。一方、650nmの吸光度が550nmの吸光度よりも小さい場合、容器2は、青〜青緑色に変色した給水試料により着色しておらず、十分に洗浄されていることになる。
【0083】
次に、上述のような吸光度測定装置160および制御装置7を備えた判定装置104を用いた給水装置100の動作を説明する。この給水装置100の動作プログラムのフローチャートは、図4〜図8に示された上述の動作プログラムのフローチャートにおいて、図13および図14に示す点が異なっている。そこで、ここでは、既述の給水装置100と動作の異なる部分を中心に説明する。なお、以下の説明および図13および図14において、既述の動作と同じ動作の部分には、同じ符号(ステップの番号)を用いている。
【0084】
ステップS5の終了後、プログラムは、ステップS100に移行する(図13)。ステップS100において、プログラムは、吸光度測定装置160を作動させ、光源161から受光素子162に向けて可視紫外光を照射する。そして、ステップS100〜ステップS102において、上述の確認原理に従い、容器2の洗浄状態を確認する。具体的には、先ず、ステップS100において、プログラムは、フイルタ163を選択して550nmの波長の光の吸光度を測定し、そのデータを記録する。また、次のステップS101において、他のフイルタ163を選択して650nmの波長の光の吸光度を測定し、そのデータを記録する。そして、ステップS102において、記録した550nmの光の吸光度と650nmの光の吸光度とを比較する。
【0085】
ステップS102において、550nmの吸光度が650nmの吸光度に比べて小さいと判断した場合、容器2は、青〜青緑色に着色しており、洗浄が不十分なことになる。したがって、この場合、プログラムは、ステップS12に移行し、既述のような動作を実施する。一方、ステップS102において、550nmの吸光度が650nmの吸光度に比べて大きいと判断した場合、プログラムは、ステップS103に移行し、試薬供給工程を実施する。ここでの動作は、先のステップS14の場合と同じである。
【0086】
次に、プログラムは上述のステップS18に移行し、ステップS18〜ステップS23を実施する。そして、ステップS23において経過時間tがn時間に達すると、プログラムはステップS104に移行する(図14)。プログラムは、ステップS104において、フイルタ163を選択して550nmの波長の光の吸光度を測定し、そのデータを記録する。また、次のステップS105において、他のフイルタ163を選択して650nmの波長の光の吸光度を測定し、そのデータを記録する。そして、ステップS106において、記録した550nmの光の吸光度と650nmの光の吸光度とを比較する。
【0087】
ステップS106において、550nmの吸光度が650nmの吸光度に比べて小さいと判断した場合、給水試料中に大腸菌が存在していることになるので、プログラムはステップS29に移行し、既述の動作を実施する。
【0088】
一方、ステップS106において、550nmの吸光度が650nmの吸光度に比べて大きいと判断した場合、給水試料中には大腸菌が存在しないので、プログラムはステップS106からステップS27に移行し、既述の動作を実施する。
【0089】
この変更例4では、給水試料の変色を判定するために、可視紫外光の低波長側である550nmの光の吸光度と高波長側である650nmの光の吸光度とを比較したが、これは一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。一般には、X−GLUC培地を用いる場合、500〜590nmの低波長側の光の吸光度と、600〜680nmの高波長側の光の吸光度とを比較し、後者が前者に比べて大きければ給水試料が青〜青緑色に変色しているものと判定することができる。
【0090】
[変更例5]
上述の給水装置100では、給水経路103に対して1台の判定装置104を配置しているが、給水経路103には複数台の判定装置104を配置することもできる。例えば、給水経路103に24台の判定装置104を配置し、各判定装置104に給水経路103からの給水試料を1時間毎に順番に採取するようにすれば、給水経路103を通じて食品加工設備101に供給される給水について、1時間毎に大腸菌の存否を連続的に判定することができる。したがって、このようにすれば、より確実に安全性を確認しながら給水タンク102から食品加工設備101に対して給水することができる。
【0091】
[変更例6]
上述の給水装置100では、食品加工設備101を水の利用系の例に挙げたが、水の利用系としては、その他にも、集合住宅やビルにおける飲用水の供給経路、水耕栽培施設および遊泳用プールなどを例示することができる。また、水の供給源は、給水タンク102に限定されるものではなく、上水道や地下水そのものであってもよい。
【0092】
実施の形態2
上述の実施の形態1では、主に、判定装置104においてX−GLUC培地を用いる場合について説明したが、判定装置104は、利用する合成酵素基質培地の種類に応じて変更することができる。例えば、合成酵素基質培地として、大腸菌が存在する場合に蛍光物質を生成するものを用いる場合、判定装置104は、次のように一部を変更することができる。
【0093】
この場合の判定装置104は、透過率測定装置6に代えて、図15に示すような蛍光認識装置260および着色確認装置270を用いる。図において、蛍光認識装置260は、紫外線ランプ261と蛍光受光素子262とを備えている。紫外線ランプ261は、容器2内に紫外線を照射可能なものであり、容器2の底部近傍に配置されている。なお、紫外線ランプ261が照射する紫外線は、長波長のもの、例えば、360nm〜370nmの波長のものが好ましい。また、蛍光受光素子262は、容器2内から照射される蛍光を受光した場合に電気信号を発信するものであり、紫外線ランプ261からの紫外線を直接受光しないようにするため、紫外線ランプ261に隣接して配置されている。なお、紫外線ランプ261は、制御装置7の入出力ポート73の出力側に接続されており、蛍光受光素子262は、入出力ポート73の入力側に接続されている。
【0094】
一方、着色確認装置270は、緑色ダイオード等の緑色光を発光する発光素子271と、容器2を挟んで発光素子271と対向する、例えばフォトトランジスタ等の受光素子272とを主に備えており、発光素子271から照射されかつ容器2を通過する緑色光の透過率を測定するためのものである。なお、発光素子271は、制御装置7の入出力ポート73の出力側に接続されており、受光素子272は、入出力ポート73の入力側に接続されている。
【0095】
また、制御装置7は、透過率測定装置6に代えて蛍光認識装置260および着色確認装置270が用いられていることに伴い、給水試料の蛍光を判定するための判定プログラム(大腸菌判定手段の一例)および緑色光の透過率に基づいて被試験水の変色を確認する確認プログラム(確認手段の一例)を含んでいる。
【0096】
大腸菌が存在する場合に蛍光物質を生成する合成酵素基質培地としては、例えば、大腸菌群を検出するためのXGal−MUG培地を用いることができる。XGal−MUG培地は、MUGが大腸菌の特異酵素であるβ−グルクロニダーゼにより加水分解され、蛍光物質である4−メチルウンベリフェロンを生成する。4−メチルウンベリフェロンは、360〜370nmの波長の紫外線の照射を受けた場合、460nmの波長の蛍光を発する。
【0097】
XGal−MUG培地として好ましいものは、例えば、実施の形態1において挙げた、社団法人日本水道協会発行、「上水試験方法 解説編 2001年版」842〜843頁の表に挙げられたピルビン酸添加XGal−MUG培地である。
【0098】
但し、この実施の形態において用いるXGal−MUG培地、特に、ピルビン酸添加XGal−MUG培地は、実施の形態1において用いる合成酵素基質培地の場合と同様の理由により、各成分の濃度が規定濃度の少なくとも2倍、好ましくは少なくとも6倍、より好ましくは少なくとも11倍に設定されているものを用いるのが好ましい。ここで、規定濃度とは、例えば、上述の「上水試験方法 解説編 2001年版」842〜843頁の表等において規定された、ピルビン酸添加XGal−MUG培地等の各種のXGal−MUG培地の濃度をいう。因みに、ピルビン酸添加XGal−MUG培地の規定濃度は、既述のような各成分の含有量により規定されている。
【0099】
上述のような高濃度のXGal−MUG培地は、所要の成分をその含有量が規定濃度の少なくとも2倍になるよう水中に溶解するか、あるいは、規定濃度の既存の合成酵素基質培地を液量が少なくとも1/2になるまで濃縮すると調製することができる。
【0100】
また、ここで用いるXGal−MUG培地は、実施の形態1において用いる合成酵素基質培地の場合と同様に、色素(例えば赤色の色素)を含んでいるのが好ましい。
【0101】
次に、上述のような蛍光認識装置260、着色確認装置270および制御装置7を備えた判定装置104を含む給水装置100の動作を説明する。この給水装置100の動作プログラムのフローチャートは、図4〜図8に示された実施の形態1に係る給水装置100の動作プログラムのフローチャートにおいて、図16〜図18に示す点が異なっている。そこで、ここでは、上述の実施の形態1に係る給水装置100と動作の異なる部分を中心に説明する。なお、以下の説明および図16〜図18において、実施の形態1に係る給水装置100と同じ動作の部分には、同じ符号(ステップの番号)を用いている。
【0102】
給水装置100において、ステップS1〜ステップS5の動作後、プログラムは、ステップS200に移行する(図16)。ステップS200において、プログラムは、着色確認装置270の発光素子271を点灯する。そして、次のステップS201において、容器2を通過する、発光素子271からの緑色光を受光素子272で受光し、その透過率を測定する。続いて、次のステップS202において、ステップS201で測定した透過率が、一定の基準値Cより大きいか否かを判断する(第一洗浄確認工程)。なお、基準値Cは、実施の形態1の場合と同様である。
【0103】
ここで、透過率が基準値C以下の場合、容器2において緑色光の透過を妨げるような汚れがあるか(すなわち、合成酵素基質培地に含まれる赤色の色素により容器2が着色しているか)、若しくは容器2内に貯留された給水試料が異常に濁っているものと判断することができるので、プログラムはステップS12に移行し、実施の形態1の場合と同様に作動する。一方、ステップS201において測定した緑色光の透過率が基準値Cより大きい場合、プログラムはステップS202からステップS203に移行する。
【0104】
ステップS203において、プログラムは、蛍光認識装置260の紫外線ランプ261を点灯する。そして、次のステップS204において、蛍光受光素子262が蛍光を受光したか否かを判断する(第二洗浄確認工程)。ここで、蛍光受光素子262が蛍光を受光した場合、容器2内に蛍光物質が存在しているものと判断することができるので、プログラムはステップS12に移行して実施の形態1の場合と同様に作動する。一方、ステップS204において、蛍光受光素子262が蛍光を受光していないと判断した場合、プログラムはステップS204からステップS14に移行する。
【0105】
次に、プログラムは、ステップS15に代えてステップS205を実行する点を除き、実施の形態1の場合と同様にステップS14〜S23を実行する。なお、実施の形態1でのステップS15に代わるステップS205(図17)では、着色確認装置270の発光素子271を点灯する。
【0106】
ステップS23の後、プログラムは、ステップS206に移行する(図18)。プログラムは、ステップS206において紫外線ランプ261を点灯し、続くステップS207において、蛍光受光素子262が蛍光を受光したか否かを判定する。
【0107】
ここで、上記蛍光について説明する。合成酵素基質培地(以下、試薬という場合がある)が供給されかつ培養された給水試料は、大腸菌を含まない場合、XGal−MUG培地がβ−グルクロニダーゼにより加水分解されないため、蛍光物質である4−メチルウンベリフェロンが生成しない。したがって、給水試料は、紫外線を照射しても蛍光しない。このため、蛍光受光素子262は、蛍光を受光しない。これに対し、試薬が供給されかつ培養された給水試料は、大腸菌を含む場合、そのβ−グルクロニダーゼによりXGal−MUG培地が加水分解され、蛍光物質である4−メチルウンベリフェロンが生成する。したがって、給水試料は、紫外線の照射により蛍光を発し、この蛍光は、蛍光受光素子262により受光される。このため、蛍光受光素子262が蛍光を受光した場合、給水試料が大腸菌を含んでいるものと判断することができる。
【0108】
そこで、蛍光受光素子262が蛍光を受光した場合、プログラムは、ステップS207からステップS29に移行し、実施の形態1の場合と同様に作動する。一方、蛍光受光素子262が蛍光を受光しない場合、プログラムは、ステップS207からステップS27に移行し、実施の形態1の場合と同様に作動する。
【0109】
ステップS29またはステップS27の後、プログラムは、実施の形態1の場合と同じく、判定結果処理工程および洗浄工程を含むステップS28およびステップS30〜ステップS40を実行する。そして、ステップS40の後、プログラムはステップS2に戻り、待機状態になる。
【0110】
この実施の形態2は、例えば、実施の形態1に係る大腸菌判定装置1の場合における変更例1、変更例2、変更例5および変更例6と同様の変更が可能である。また、この実施の形態2は、実施の形態1の変更例4と同様に、色素を含まない合成酵素基質培地を用いて実施することもできる。この場合、制御装置7において、確認手段を省略し、それに合わせて動作フローチャートを変更する必要がある。
【0111】
実施の形態3
上述の実施の形態1および2に係る給水装置100は、それぞれ、給水中に大腸菌が含まれる場合に給水動作が停止するよう設定されているが、本発明の給水装置は、大腸菌群が含まれる場合においても給水を停止するよう設定することができる。ここで、大腸菌群とは、好気性または通気嫌気性のグラム陰性無芽胞の桿菌であり、乳糖を分解して酸とガスとを生じるか、β―ガラクトシダーゼを特異酵素として有する細菌群をいい(上述の社団法人日本水道協会発行、「上水試験方法 解説編 2001年版」845頁参照)、大腸菌そのものとは異なる。しかし、大腸菌群は大腸菌を含む細菌群であるため、大腸菌群を含む給水は、大腸菌による汚染を疑うことができる。したがって、本発明の給水装置において、給水に大腸菌群が含まれる場合に給水を停止するようにすると、食品加工設備101等の水の利用系に対し、大腸菌汚染の危険性のある水の供給をより確実に停止することができる。
【0112】
この場合は、例えば、実施の形態1に係る給水装置100において、判定装置104に対して実施の形態2で用いる蛍光認識装置260を付加する。また、判定装置104の制御装置7において、蛍光認識装置260が付加されたことに伴い、給水試料の蛍光を判定するための判定プログラム(大腸菌判定手段の一例)を付加する。さらに、そのような判定装置104において、合成酵素基質培地として、実施の形態2の場合と同様にXGal−MUG培地を用いる。XGal−MUG培地は、給水試料中に大腸菌群が含まれる場合、大腸菌群の特異酵素であるβ−ガラクトシダーゼによりXGal(第二合成酵素基質の一例)が加水分解され、青〜青緑色を呈する発色物質である5,5−ジブロモ−4,4−ジクロロインジゴを生成する。また、XGal−MUG培地は、給水試料中に大腸菌が含まれる場合、実施の形態2において説明した通り、大腸菌の特異酵素であるβ−グルクロニダーゼによりMUG(第二合成酵素基質の一例)が加水分解され、蛍光物質である4−メチルウンベリフェロンを生成する。
【0113】
次に、このような給水装置100の動作を説明する。この給水装置100の動作プログラムのフローチャートは、図4〜図8に示された実施の形態1に係る給水装置100の動作プログラムのフローチャートにおいて、図19〜図21に示す点が異なっている。そこで、ここでは、上述の実施の形態1に係る給水装置100と動作の異なる部分を中心に説明する。なお、以下の説明および図19〜図21において、実施の形態1に係る給水装置100と同じ動作の部分には、同じ符号(ステップの番号)を用いている。
【0114】
この給水装置100では、ステップS11において測定した赤色光の透過率が基準値Aより大きい場合(すなわち、容器2において赤色光の透過を妨げるような汚れが無く、また、容器2内に貯留された給水試料が異常に濁っていない場合)、プログラムはステップS11からステップS300に移行する(図19)。ステップS300において、プログラムは、蛍光認識装置260の紫外線ランプ261を点灯する。そして、次のステップS301において、蛍光受光素子262が蛍光を受光したか否かを判断する(第三洗浄確認工程)。ここで、蛍光受光素子262が蛍光を受光した場合、大腸菌判定の支障となる蛍光物質が容器2内に存在しているものと判断することができるので、プログラムはステップS12に移行して実施の形態1の場合と同様に作動する。一方、ステップS301において、蛍光受光素子262が蛍光を受光しないと判断した場合、プログラムはステップS301からステップS14に移行し、実施の形態1の場合と同様にステップS14〜ステップS23を実施する。
【0115】
ステップS23において、経過時間tがn時間に到達した場合、プログラムは、ステップS23からステップS302に移行し(図20)、蛍光認識装置260の紫外線ランプ261を点灯する。そして、次のステップS303において、蛍光受光素子262が蛍光を受光したか否かを判断する。なお、ここでの蛍光は、実施の形態2において説明した通りである。
【0116】
ここで、蛍光受光素子262が蛍光を受光した場合、給水試料中に大腸菌が存在していることになるため、プログラムはステップS303からステップS29に移行し、それ以降、実施の形態1の場合と同様に作動する。一方、蛍光受光素子262が蛍光を受光していない場合、給水試料中には大腸菌が存在していないと考えられるため、プログラムは、ステップS303からステップS24に移行し、それ以降、実施の形態1の場合と同様に作動する。
【0117】
但し、実施の形態1のステップS24〜ステップS26では、大腸菌の特異酵素であるβ−グルクロニダーゼによるX−GLUC培地の加水分解により、発色物質である5,5−ジブロモ−4,4−ジクロロインジゴが生成しているか否か、すなわち、当該発色物質により給水試料が青〜青緑色へ変色しているか否かを判定しているが、この実施の形態では、大腸菌群の特異酵素であるβ−ガラクトシダーゼがXGalを加水分解することにより生成する5,5−ジブロモ−4,4−ジクロロインジゴにより給水試料が青〜青緑色に変色しているか否かを判定する。すなわち、この実施の形態では、ステップS24〜ステップS26において、給水試料に大腸菌群が含まれるか否かを判定することになる。したがって、実施の形態1における給水試料の変色の有無を判定する判定プログラム(大腸菌判定手段)は、この実施の形態3において、大腸菌群判定手段として機能する。そして、ステップS26において、赤色光の透過率が基準値Bよりも小さい場合、給水試料中に大腸菌の存在を疑わせる大腸菌群が存在していることになるので、プログラムは、ステップS26からステップS304に移行する(図21)。ステップS304において、プログラムは、実施の形態1のステップS29と同様に給水を停止し、続くステップS305において、判定結果処理を実行する。但し、この判定結果処理では、表示装置75において、給水試料に大腸菌群が含まれている旨を表示すると共に、そのような判定結果と当該判定をした時刻とを記録装置に記録する。ステップS305の終了後、プログラムはステップS31に移行し、それ以降、実施の形態1の場合と同様に作動する。
【0118】
一方、ステップS26において、赤色光の透過率が基準値Bよりも大きい場合、給水試料中には大腸菌群が存在しないことになるので、プログラムは、ステップS26からステップS27に移行し、それ以降、実施の形態1の場合と同様に作動する。
【0119】
上述のように、この実施の形態に係る給水装置100は、給水が大腸菌群を含む場合にも給水を停止することができるので、給水試料中に大腸菌が含まれるか否かの判定工程において仮に誤作動があったとしても、食品加工設備101等の水の利用系に対して大腸菌汚染の危険性のある水の供給をより確実に停止することができる。
【0120】
この実施の形態3は、例えば、実施の形態1に係る大腸菌判定装置1の場合における変更例1、変更例2、変更例5および変更例6と同様の変更が可能である。また、この実施の形態3では、合成酵素基質培地としてXGal−MUG培地を用いる場合を例に説明したが、第一合成酵素基質としてβ−グルクロニダーゼにより加水分解された場合に他の蛍光物質を生成するものおよび第二合成酵素基質としてβ−ガラクトシダーゼにより加水分解された場合に5,5−ジブロモ−4,4−ジクロロインジゴ若しくは他の発色物質を生成する発色合成酵素基質を含む合成酵素基質培地を用いる場合も本発明は同様に実施することができる。さらに、この実施の形態3は、実施の形態1の変更例4と同様に、色素を含まない合成酵素基質培地を用いて実施することもできる。この場合、制御装置7において、確認手段を省略し、それに合わせて動作フローチャートを変更する必要がある。
【0121】
[合成酵素基質培地濃度の実験例]
規定濃度のピルビン酸添加XGal−MUG培地と、その数種類の濃縮物(濃縮培地)とを用意した。そして、各培地に大腸菌(グラム陰性菌)、緑膿菌(グラム陰性菌)および黄色ブドウ球菌(グラム陽性菌)を濃度が102個/mlになるよう個別に添加して9日間培養し、菌類の生育の有無を確認した。結果を表1〜表3に示す。なお、各表において、+は菌が生育したことを示し、−は菌が生育しなかったことを示している。
【0122】
【表1】
【0123】
【表2】
【0124】
【表3】
【0125】
また、各培地に各菌を濃度が107個/mlになるよう個別に添加して同様に培養し、菌類の生育の有無を確認した。結果を表4〜表6に示す。各表における+,−は表1〜表3の場合と同様である。
【0126】
【表4】
【0127】
【表5】
【0128】
【表6】
【0129】
表1〜表6によると、規定濃度のピルビン酸添加XGal−MUG培地は、培養開始後1日で添加した菌が生育している。これに対し、濃縮した培地は、濃縮倍率が高い程、高濃度の菌を含む場合でも菌の生育を効果的に抑制できる。これによれば、上述の判定装置104において用いる合成酵素基質培地は、給水試料中に含まれる可能性のある大腸菌が一般には102個/ml以下の比較的低濃度で微量であるため、濃縮倍率が2倍以上であれば、試薬タンク40内に貯蔵しても雑菌が生育しにくく、判定結果の信頼性を損ないにくくなることがわかる。
【0130】
【発明の効果】
本発明の給水装置は、給水経路を通じて水の供給源から水の利用系に水を供給するに当り、当該水中における大腸菌の存否を判定装置を用いて判定することができるため、水の供給源から水の利用系に対し、安全性を確認しながら給水することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1に係る給水装置の概略構成図。
【図2】実施の形態1において採用された判定装置の概略構成図。
【図3】前記判定装置において用いられる制御装置の概略図。
【図4】実施の形態1の動作フローチャート。
【図5】実施の形態1の動作フローチャート。
【図6】実施の形態1の動作フローチャート。
【図7】実施の形態1の動作フローチャート。
【図8】実施の形態1の動作フローチャート。
【図9】給水試料における赤色光の一般的な経時的透過率変化を示す図。
【図10】給水試料における緑色光の透過率と、給水試料中における赤色の色素の濃度との一般的な関係を示す図。
【図11】実施の形態1の変更例4において用いられる吸光度測定装置の概略図。
【図12】給水試料における一般的な可視紫外光吸収スペクトルを示す図。
【図13】前記変更例4の動作フローチャートの一部。
【図14】前記変更例4の動作フローチャートの一部。
【図15】本発明の実施の形態2に係る給水装置において用いられる判定装置の部分概略平面図。
【図16】実施の形態2の動作フローチャートの一部。
【図17】実施の形態2の動作フローチャートの一部。
【図18】実施の形態2の動作フローチャートの一部。
【図19】実施の形態3の動作フローチャートの一部。
【図20】実施の形態3の動作フローチャートの一部。
【図21】実施の形態3の動作フローチャートの一部。
【符号の説明】
100 給水装置
101 食品加工設備
102 給水タンク
103 給水経路
104 判定装置
107 給水遮断弁
2 容器
3 温度調節装置
4 試薬供給装置
5 洗浄液供給装置
6 透過率測定装置
7 制御装置
20 供給路
21 排出路
160 吸光度測定装置
260 蛍光認識装置
【発明の属する技術分野】
本発明は、給水装置、特に、水の供給源から水の利用系に対して水を供給するための給水装置に関する。
【0002】
【従来の技術とその課題】
例えば食品工場は、食品加工工程や調理工程において水を多用しているため、食品加工設備に対して安定に水を供給するための給水装置を用いている。この給水装置は、一般に、上水道からの水を貯蔵するための給水タンクと、当該給水タンクから所要の食品加工設備に対して水を供給するための給水経路とを備えている。ところが、このような給水装置を用いて食品加工設備に対して供給される食品加工水は、給水タンクでの貯蔵中等において、大腸菌による汚染を受ける可能性がある。食品加工水が大腸菌を含む場合、当該食品加工水は、単に汚物で汚染されているということだけではなく、病原菌類も含んでいる可能性があることを示唆することになるため、食品加工設備での使用を直ちに中止する必要がある。
【0003】
このため、食品加工水は、厳格な衛生管理が不可欠であり、大腸菌による汚染の有無を定期的に検査して安全性を図る必要がある。ところが、食品加工水が大腸菌により汚染されているか否かの検査は、複雑かつ専門的な作業を必要とすることから、通常は保健所等の専門機関に試料を提出して委託する必要があり、検査結果の判明までに最低でも数日間を要する。
【0004】
本発明の目的は、水の供給源から水の利用系に対し、安全性を確認しながら給水できるようにすることにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の給水装置は、水の供給源から水の利用系に対して水を供給するためのものであり、供給源から利用系に水を供給するための給水経路と、給水経路を通じて利用系に供給される水中における大腸菌の存否を判定するための大腸菌判定手段を有する判定装置とを備えている。
【0006】
このような給水装置は、供給源から供給される水中における大腸菌の存否を判定装置により判定することができるので、供給源からの水の安全性を確認しながら利用系に対して給水することができる。
【0007】
この給水装置において、判定装置は、例えば、水中における大腸菌群の存否を判定するための大腸菌群判定手段をさらに備えていてもよい。この場合、給水装置は、供給源から供給される水中における大腸菌群の存否を判定装置によりさらに判定することができるので、供給源からの水の安全性をより厳正に確認しながら利用系に対して給水することができる。
【0008】
また、この給水装置において、給水経路は、例えば、判定装置での判定結果に基づいて作動する。水を利用系に供給するのを遮断するための遮断装置を有している。ここで、遮断装置は、通常、判定装置において水中に大腸菌または大腸菌群が含まれるものと判定された場合に作動する。また、この給水装置は、例えば、判定装置での判定結果を継続的に記録するよう設定されている。ここで、判定結果は、水中における大腸菌または大腸菌群の存否に関する判定結果である。
【0009】
また、判定装置は、通常、容器と、給水経路から分岐しかつ利用系に供給される水の一部を容器に供給するための供給路と、容器に供給された水の温度を調節するための温度調節装置と、容器に供給された水に対し、β−グルクロニダーゼと反応した場合に発色物質および蛍光物質のうちの一つを生成する合成酵素基質を含む合成酵素基質培地を供給するための試薬供給装置と、合成酵素基質培地の供給後における、合成酵素基質とβ−グルクロニダーゼとの反応による発色物質および蛍光物質のうちの一つの生成を判定するための判定手段とを備えている。
【0010】
また、他の形態に係る判定装置は、通常、容器と、給水経路から分岐しかつ利用系に供給される水の一部を容器に供給するための供給路と、容器に供給された水の温度を調節するための温度調節装置と、容器に供給された水に対し、β−グルクロニダーゼと反応した場合に蛍光物質を生成する第一合成酵素基質およびβ−ガラクトシダーゼと反応した場合に発色物質を生成する第二合成酵素基質を含む合成酵素基質培地を供給するための試薬供給装置と、合成酵素基質培地の供給後における、第一合成酵素基質とβ−グルクロニダーゼとの反応による蛍光物質の生成を判定するための第一判定手段と、第二合成酵素基質とβ−ガラクトシダーゼとの反応による発色物質の生成を判定するための第二判定手段とを備えている。
【0011】
なお、判定装置は、例えば、容器に供給された水を容器の外部に排出するための排出路と、供給路を通じて容器に洗浄液を供給するための洗浄液供給装置とをさらに備えていてもよい。この場合、洗浄液は、例えば殺菌剤を含んでいてもよい。また、判定装置は、例えば、容器に供給された水に対して試薬供給装置が合成酵素基質培地を供給する前に、容器の洗浄状態を確認するための洗浄確認手段をさらに備えていてもよい。
【0012】
【発明の実施の形態】
実施の形態1
図1を参照して、本発明の実施の形態1に係る給水装置を説明する。図において、給水装置100は、例えば、食品の調理や加工をするための食品加工設備101(水の利用系の一例)に対し、給水タンク102(水の供給源の一例)から食品加工用の水を供給するためのものであり、給水経路103および判定装置104を主に備えている。給水タンク102は、上水道や地下水などの原水を一時的に貯留するためのものであり、原水を供給するための原水供給路105が連絡している。
【0013】
給水経路103は、給水タンク102と食品加工設備101とを連絡しており、給水タンク102内に貯留された原水を食品加工設備101に対して供給するためのものである。給水経路103は、給水タンク102内の水を送り出すための給水ポンプ106と給水遮断弁107(遮断装置の一例)とを有している。給水遮断弁107は、電磁弁であり、給水経路103を閉鎖して給水タンク102から食品加工設備101への給水を遮断するためのものである。
【0014】
判定装置104は、合成酵素基質培地法により、給水タンク102から食品加工設備101へ供給される給水中における大腸菌の存否を自動的に判定するためのものである。判定装置104の詳細を説明するに当り、先ず、合成酵素基質培地法について説明する。
【0015】
大腸菌は、グラム陰性無芽胞の桿菌であり、β−グルクロニダーゼ(β−glucuronidase)を特異酵素として有している。このため、飲料水等の被試験水を大腸菌の培養環境に設定し、そこからβ−グルクロニダーゼを検出することができると、間接的に大腸菌の存在を証明することができる。そこで、このような大腸菌の性状を利用した、飲料水等の被試験水中における大腸菌の存否を迅速に判定するための方法として、合成酵素基質培地法が知られている(例えば、社団法人日本水道協会発行「上水試験方法 2001年版」参照)。合成酵素基質培地法とは、発色物質または蛍光物質を結合させた合成酵素基質を培地に使用し、目的とする細菌がもつ特異酵素により当該合成酵素基質が加水分解されて発色物質または蛍光物質が生成することを利用した検査方法(判定方法)をいう。この方法では、発色物質による被試験水の変色若しくは蛍光物質による蛍光を観測することができれば、被試験水中に大腸菌が存在するものと判断することができる。因みに、発色物質を生成する合成酵素基質として、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−グルクロニド(X−GLUC)が知られている。また、蛍光物質を生成する合成酵素基質として、4−メチルウンベリフェリル−β−D−グルクロニド(MUG)が知られている。
【0016】
このうち、X−GLUCを用いた合成酵素基質培地法では、X−GLUC、大腸菌の栄養素となるペプトン等およびピルビン酸ナトリウム等の炭素源、塩類、界面活性剤並びにpH調整剤等を所定の濃度で含む合成酵素基質培地を一定量の被試験水中に所定量添加し、その被試験水を所定時間、大腸菌の培養に適した温度に保つ。ここで、被試験水中に大腸菌が含まれている場合は、大腸菌が栄養素により培養され、β−グルクロニダーゼが生成する。生成したβ−グルクロニダーゼは、合成酵素基質であるX−GLUCを加水分解し、青〜青緑色を呈する発色物質である5,5−ジブロモ−4,4−ジクロロインジゴを生成させる。これにより、被試験水は青〜青緑色に変色するので、大腸菌を含むものと判定することができる。一方、被試験水中に大腸菌が含まれていない場合は、上述の合成酵素基質培地を添加しても大腸菌が培養されることはないので、β−グルクロニダーゼが生成することはなく、被試験水は上述のような青〜青緑色に変色しない。したがって、被試験水には大腸菌が含まれないものと判定することができる。
【0017】
また、MUGを用いた合成酵素基質培地法では、同じく、MUG、大腸菌の栄養素となるペプトン等およびピルビン酸ナトリウム等の炭素源、塩類、界面活性剤並びにpH調整剤等を所定の濃度で含む合成酵素基質培地を一定量の被試験水中に所定量添加し、その被試験水を所定時間、大腸菌の培養に適した温度に保つ。ここで、被試験水中に大腸菌が含まれている場合は、大腸菌が栄養素により培養され、β−グルクロニダーゼが生成する。生成したβ−グルクロニダーゼは、合成酵素基質であるMUGを加水分解し、蛍光物質である4−メチルウンベリフェロンを生成する。この結果、被試験水は、紫外線の照射を受けて蛍光するので、大腸菌を含むものと判定することができる。一方、被試験水中に大腸菌が含まれていない場合は、上述の合成酵素基質培地を添加しても大腸菌が培養されることはないので、β−グルクロニダーゼが生成することはなく、被試験水は紫外線の照射を受けても蛍光しない。したがって、被試験水には大腸菌が含まれないものと判定することができる。
【0018】
この実施の形態1において用いられる判定装置104は、X−GLUCを合成酵素基質として含む合成酵素基質培地を用いて大腸菌の存否を自動的に判定するためのものであり、図2に示すように、容器2、温度調節装置3、試薬供給装置4、洗浄液供給装置5、透過率測定装置6および制御装置7を主に備えている。
【0019】
容器2は、大腸菌の存否の判定対象となる給水試料(後述)を貯留するためのものであり、例えば、石英ガラスなどの透光性を有する無色透明の材料を用いて形成された、底部を有する円筒状のものである。容器2の上端部は、栓27により気密に封止されている。また、この容器2は、給水試料を内部に供給するための供給路20と、容器2に貯留された給水試料を外部に排出するための排出路21とを備えている。供給路20は、給水経路103から分岐しており、給水試料の流通を制御するための第一電磁弁22を備えている。また、供給路20の先端は、栓27を通じて容器2内の底部に向けて延びている。排出路21は、容器2内に貯留された給水試料を排出するためのものであり、栓27から容器2の外部に向けて延びている。
【0020】
上述の容器2は、マグネチックスターラー25上に配置されており、また、内部の底部には磁石を内蔵した攪拌子26が配置されている。
【0021】
温度調節装置3は、容器2内に貯留された給水試料の温度を大腸菌の培養に適した温度に調節するためのものであり、容器2の上部外周に配置された、例えばアルミニウム等の良伝熱性材料からなるブロック30と、このブロック30を加熱するためのヒーター31とを備えている。
【0022】
試薬供給装置4は、容器2内に貯留された給水試料に対して試薬としての合成酵素基質培地を供給するためのものであり、当該合成酵素基質培地を貯蔵するための試薬タンク40と、試薬タンク40から容器2内に延びる試薬供給路41とを備えている。試薬供給路41は、試薬タンク40内の合成酵素基質培地を容器2内に送り出すための試薬ポンプ42と、逆止弁43とを有している。
【0023】
洗浄液供給装置5は、容器2および供給路20の一部を洗浄するためのものであり、洗浄液を貯蔵するための洗浄液タンク50と、洗浄液タンク50から延びる洗浄液供給路51とを備えている。洗浄液供給路51は、洗浄液タンク50内の洗浄液を送り出すための洗浄液ポンプ52と、洗浄液の流量を制御するための第二電磁弁53とを有しており、供給路20において、第一電磁弁22の給水経路103側に連絡している。
【0024】
透過率測定装置6は、容器2の底部近傍に配置された、第一透過率測定部61と第二透過率測定部62とを主に備えている。第一透過率測定部61は、緑色ダイオード等の緑色光を発光する第一発光素子63と、容器2を挟んで第一発光素子63と対向する、例えばフォトトランジスタ等の第一受光素子64とを主に備えており、第一発光素子63から照射されかつ容器2を通過する緑色光の透過率を測定するためのものである。一方、第二透過率測定部62は、赤色ダイオード等の赤色光を発光する第二発光素子65と、容器2を挟んで第二発光素子65と対向する、例えばフォトトランジスタ等の第二受光素子66とを主に備えており、第二発光素子65から照射されかつ容器2を通過する赤色光の透過率を測定するためのものである。
【0025】
制御装置7は、判定装置104を含む給水装置100全体の動作を制御するためのものであり、図3に示すように、中央処理装置(CPU)70、判定装置104の動作プログラムを記憶している読出し専用メモリー(ROM)71、各種の電子情報を記憶するためのランダムアクセスメモリー(RAM)72および入出力ポート73を主に備えている。入出力ポート73の入力側には、オペレータが給水装置100および判定装置104に対して各種の動作指令を入力するためのスイッチ類74、第一受光素子64、第二受光素子66およびその他の装置が接続されている。一方、入出力ポート73の出力側には、第一発光素子63、第二発光素子65、各電磁弁22,53,107、各ポンプ42,52,106、マグネチックスターラー25、ヒーター31、大腸菌の存否の判定結果等を表示するための表示装置75、当該判定結果等を時刻と共に記録するための記録装置、当該判定結果等を印字するためのプリンタおよびその他の装置が接続されている。
【0026】
なお、この制御装置7に記憶された動作プログラムは、第一透過率測定部61で測定する緑色光の透過率に基づいて給水試料の変色を確認する確認プログラム(確認手段の一例)、第二透過率測定部62で測定する赤色光の透過率に基づいて給水試料の変色の有無を判定する判定プログラム(大腸菌判定手段の一例)並びに第一透過率測定部61で測定する緑色光の透過率および第二透過率測定部62で測定する赤色光の透過率にそれぞれ基づいて容器2の洗浄状態を確認するための洗浄確認プログラム(洗浄確認手段の一例)を含んでいる。
【0027】
上述の判定装置104において用いられる合成酵素基質培地、すなわち、試薬タンク40内に貯蔵される合成酵素基質培地は、既述の通り、X−GLUC(5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−グルクロニド)を合成酵素基質として含むものである。X−GLUCを含む合成酵素基質培地は、市販のものが用いられてもよいが、この実施の形態では、例えば、上水などの被試験水中に含まれる大腸菌群および大腸菌を検査(検出)するための合成酵素基質培地法において用いられるXGal−MUG培地に含まれる、大腸菌群の特異酵素であるβ−ガラクトシダーゼ(β−glactosidase)と反応して発色する発色合成酵素基質であるXGal(5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトピラノシド)および大腸菌検出のための合成酵素基質であるMUG(4−メチルウンベリフェリル−β−グルクロニド)の全量を所定量のX−GLUCにより置換したもの(以下、便宜上、“X−GLUC培地”という)を用いることができる。
【0028】
ここで、XGal−MUG培地の種類は特に限定されるものではないが、例えば、ピルビン酸添加XGal−MUG培地が好ましい。ピルビン酸添加XGal−MUG培地は、例えば、社団法人日本水道協会発行、「上水試験方法 解説編2001年版」842〜843頁の表に詳細が示されており、それによると、1リットル中において次のような酵素基質、大腸菌培養のための栄養成分、塩類、界面活性剤およびpH調製剤を含みかつpHが7.1±0.2に調整されている。
【0029】
酵素基質
XGalを0.10g、大腸菌群酵素誘導剤であるIPTG(1−イソプロピル−β−D−1−チオガラクトピラノシド)を0.10gおよびMUGを0.10g。
大腸菌培養のための栄養成分
ペプトンを5.0gおよびその他の炭素源としてピルビン酸ナトリウムを1.0g。
塩類
塩化物として塩化ナトリウムを5.0g、硝酸塩として硝酸カリウムを1.0g。
界面活性剤
ラウリル硫酸ナトリウムを0.10g。
pH調整剤
リン酸二水素カリウムを1.0g、リン酸水素二カリウムを4.0g。
【0030】
なお、上述のようなピルビン酸添加XGal−MUG培地は市販されており、一例として日水製薬株式会社の商品名“ECブルー”を挙げることができる。また、上述のようなピルビン酸添加XGal−MUG培地は、全量が1リットルになるよう上述の各成分の所定量を水に加えて混合すると、容易に調製することができる。したがって、X−GLUC培地は、このようなピルビン酸添加XGal−MUG培地の調製工程において、0.10gのXGalおよび0.10gのMUGに代えて所定量(通常は0.05〜1.0g、好ましくは0.1g)のX−GLUCを用いると、容易に調製することができる。
【0031】
但し、この判定装置104では、上述の合成酵素基質培地として、各成分の濃度が規定濃度の少なくとも2倍、好ましくは少なくとも6倍、より好ましくは少なくとも11倍に設定されているものを用いるのが好ましい。ここで、規定濃度とは、通常、X−GLUCを含む市販の合成酵素基質培地の場合はそれに含まれる各成分の濃度をいい、また、上述のX−GLUC培地の場合は上述のようにして調製したものに含まれる各成分の濃度をいう。
【0032】
上述のような高濃度の合成酵素基質培地は、所要の成分をその含有量が規定濃度の少なくとも2倍になるよう水中に溶解するか、あるいは、規定濃度に調製された既存の合成酵素基質培地を液量が少なくとも1/2になるまで濃縮すると調製することができる。
【0033】
因みに、規定濃度の合成酵素基質培地は、上述のような栄養素を含んでいるため、試薬タンク40での貯蔵中において各種の雑菌が繁殖し易く、これらの雑菌により短時間のうちに汚染される可能性が極めて高い。したがって、判定装置104において規定濃度の合成酵素基質培地を試薬タンク40で貯蔵しながら用いると、給水試料における大腸菌の存否の判定が不正確で信頼性を欠く可能性がある。これに対し、上述のような高濃度の合成酵素基質培地は、高濃度の塩類を含むため、試薬タンク40内で貯蔵しても雑菌の繁殖が抑制されるので、すなわち、雑菌により汚染される可能性が小さくなるので、給水試料における大腸菌の存否を正確に判定することができる。
【0034】
また、上述のような高濃度の合成酵素基質培地を用いると、規定濃度のものを用いる場合に比べて試薬タンク40の容量を小さく設定することができるので、判定装置104を小型化することもできる。
【0035】
判定装置104において用いられる合成酵素基質培地は、上述のような高濃度の合成酵素基質培地であって、所定の色素をさらに含むものである。ここで用いられる色素は、緑色光の透過率が低下するように給水試料を着色させることができるものであり、また、発色物質である5,5−ジブロモ−4,4−ジクロロインジゴが呈する青〜青緑色の波長領域である600〜700nmの波長領域に吸収ピークを示さないものである。このような色素としては、例えば、520nm付近に極大吸収ピークを示す赤色の色素を用いることができる。但し、ここで用いる色素は、大腸菌の存否の判定結果の信頼性を損ね難いもの、すなわち、大腸菌の培養を妨げ難いものが好ましい。大腸菌の培養を妨げ難い赤色の色素の具体例としては、エオシンYを挙げることができる。
【0036】
合成酵素基質培地における上述の色素の含有量は、給水試料に合成酵素基質培地を添加したときに、給水試料が当該色素の色に変色可能なように設定されていれば特に限定されるものではないが、通常、1〜40mg/l、好ましくは4〜20mg/lに設定されているのが好ましい。
【0037】
なお、上述の色素を含む合成酵素基質培地は、例えば、上述の合成酵素基質培地の調製時において、上述の各成分と共に色素を混合すると調製することができる。
【0038】
一方、判定装置104において用いられる洗浄液、すなわち、洗浄液タンク50に貯蔵される洗浄液は、容器2内および給水試料の供給路20を洗浄するためのものであり、通常、界面活性剤、酸類(有機酸類若しくは無機酸類またはこれらの任意の混合物)、アルカリ類(例えば、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、リン酸塩若しくはケイ酸塩またはこれらの任意の混合物)および酵素(例えば、アミラーゼ、プロテアーゼ若しくはリパーゼまたはこれらの任意の混合物)のうちの一つまたは二つ以上を洗浄剤として含む水溶液である。特に、この洗浄液は、供給路20および容器2内が各種の細菌類により汚染されていない清浄な状態に維持するために、殺菌剤を含むのが好ましい。ここで利用可能な殺菌剤は、特に限定されるものではないが、通常、次亜塩素酸ナトリウム等の塩素系殺菌剤、過酸化水素、逆性石鹸および両性石鹸のうちの一つまたは二つ以上のものが好ましく用いられる。
【0039】
なお、殺菌剤として特に好ましいものは、次亜塩素酸ナトリウム等の塩素系殺菌剤である。塩素系殺菌剤は、各種の菌類に対して殺菌作用を示すだけではなく、漂白剤としても機能するため、後述する容器2の洗浄工程において、容器2の透明性を高めることができる。特に、合成酵素基質培地として色素を含むX−GLUC培地を用いると、給水試料中に大腸菌が含まれる場合は当該給水試料が青〜青緑色に変色し、また、給水試料中に大腸菌が含まれていない場合であっても当該給水試料が色素のために変色するため、容器2の内面がそのような色で着色する場合があるが、塩素系殺菌剤を用いると、そのような着色も洗浄工程において容易に除去することができる。そして、その結果、後述する確認工程や判定工程における結果の信頼性を高めることができる。
【0040】
次に、図4〜図8に示す動作プログラムのフローチャートに基づいて、給水装置100の動作を説明する。なお、ここでは、判定装置104で用いる合成酵素基質培地として、赤色の色素を含むX−GLUC培地を用いる場合について説明する。
【0041】
オペレータが制御装置7において給水装置100の電源をONにすると、プログラムは、ステップS1において、給水遮断弁107を開放状態に設定し、また、第一電磁弁22および第二電磁弁53を閉鎖する等の初期設定動作を実施する。
【0042】
次に、プログラムは、ステップS2において、オペレータが給水開始スイッチをONしたか否かを判断する。ここで、オペレータが給水開始スイッチをONにしない場合、プログラムはそのまま待機状態を維持する。一方、オペレータが給水開始スイッチをONにすると、プログラムはステップS3に移行し、給水ポンプ106を作動させる。これにより、給水タンク102内に貯留された給水は、給水経路103を通じて食品加工設備101に対して連続的に供給される。
【0043】
次に、ステップS4において、プログラムは、判定装置104の第一電磁弁22を開放状態に設定する。これにより、給水経路103を食品加工設備101に向けて流れる給水の一部は、供給路20を通じて容器2内に連続的に供給され、容器2内には当該給水が貯留される。なお、給水装置100の先の運転終了時において、容器2内に給水が貯留されたままの状態である場合、当該給水は、新たに供給される給水により排出路21を通じて外部に押し出される。すなわち、容器2内に残留している給水は、新たに供給される給水により置換されることになる。このような給水(以下、給水試料という場合がある)の採水工程において、所定量の給水(通常は50mlまたは100ml)が容器2内に供給されると、次のステップS5において、第一電磁弁22が閉鎖される。
【0044】
次に、プログラムは、ステップS6において、第一透過率測定部61の第一発光素子63を点灯する。そして、次のステップS7において、容器2を通過する、第一発光素子63からの緑色光を第一受光素子64で受光し、その透過率を測定する。続いて、次のステップS8において、ステップS7で測定した透過率が、一定の基準値Cより大きいか否かを判断する(第一洗浄確認工程)。なお、基準値Cは、例えば、容器2内に蒸留水が貯留されている場合における緑色光の透過率を100%とした場合、当該透過率の90%以上の範囲において任意に設定される透過率である。
【0045】
ここで、透過率が基準値C以下の場合、容器2において緑色光の透過を妨げるような汚れがあるか、若しくは容器2内に貯留された給水試料が異常に濁っているものと判断することができるので、プログラムは、ステップS12に移行して給水ポンプ106を停止し、次のステップS13において、表示装置75を通じて給水装置100に異常が発生したことを通知する。さらに、プログラムは、ステップS13からステップS2に移行し、オペレータが給水開始スイッチを再度ONにしない限り、待機状態を維持する。
【0046】
一方、ステップS7において測定した緑色光の透過率が基準値Cより大きい場合、プログラムはステップS8からステップS9に移行する。ステップS9において、プログラムは、第二透過率測定部62の第二発光素子65を点灯する。そして、次のステップS10において、容器2を通過する、第二発光素子65からの赤色光を第二受光素子66で受光し、その透過率を測定する。続いて、次のステップS11において、ステップS10で測定した赤色光の透過率が、一定の基準値Aより大きいか否かを判断する(第二洗浄確認工程)。なお、基準値Aは、例えば、容器2内に蒸留水が貯留されている場合における赤色光の透過率を100%とした場合、当該透過率の90%以上の範囲において任意に設定される透過率である。
【0047】
ここで、透過率が基準値A以下の場合、容器2において赤色光の透過を妨げるような汚れがあるか、若しくは容器2内に貯留された給水試料が異常に濁っているものと判断することができるので、プログラムはステップS12に移行し、ステップS13を経由してステップS2に戻る。一方、ステップS11において測定した赤色光の透過率が基準値Aより大きい場合、プログラムはステップS11からステップS14に移行する。
【0048】
ステップS14において、プログラムは、試薬供給工程を実施する。ここでは、試薬供給装置4において、試薬ポンプ42を作動させる。この結果、試薬タンク40内に貯留されている合成酵素基質培地が試薬ポンプ42により送り出され、試薬供給路41を通じて容器2内に貯留されている給水試料中に注入される。ここで、合成酵素基質培地は、上述のように濃縮されている場合、給水試料中に溶解したときの濃度が給水試料に対して規定濃度の合成酵素基質培地を規定量注入した場合の濃度と等しくなるよう注入量が設定される。この注入量は、試薬ポンプ42の動作により制御される。また、このような合成酵素基質培地の注入時には、同時にマグネチックスターラー25が作動し、容器2内の給水試料が攪拌子26により攪拌される。この結果、注入された合成酵素基質培地は、給水試料中において均等に分散することになる。所定量の合成酵素基質培地が給水試料に注入されると、試薬ポンプ42が停止し、試薬供給工程は終了する。また、マグネチックスターラー25が停止し、給水試料の攪拌が停止される。
【0049】
ステップS14の終了後、プログラムは、ステップS15に移行し、第一透過率測定部61の第一発光素子63を点灯する。そして、次のステップS16において、容器2を通過する、第一発光素子63からの緑色光を第一受光素子64で受光し、その透過率を測定する。ここで、給水試料は、合成酵素基質培地に含まれる色素により赤色に着色(変色)しているため、緑色光の透過率が低下することになる。そこで、プログラムは、次のステップS17において、ステップS16で測定した透過率が一定の基準値Dより小さいか否かを判断する(確認工程)。なお、基準値Dは、例えば、容器2内に蒸留水が貯留されている場合における緑色光の透過率を100%とした場合、当該透過率の90%未満の範囲において任意に設定される透過率である。
【0050】
ここで、透過率が基準値D以上の場合、給水試料は、合成酵素基質培地に含まれる色素により赤色に変色していないものと判断することができる。すなわち、ステップS14において、試薬ポンプ42の作動不良等の原因により、試薬タンク40から給水試料に対して合成酵素基質培地が正常に添加されなかったものと判断することができる。この場合、プログラムは、ステップS12に移行し、ステップS13を経由してステップS2に戻る。
【0051】
一方、透過率が基準値Dよりも小さい場合、給水試料は、合成酵素基質培地に含まれる色素により正常に赤色に変色したものと判断することができる。すなわち、ステップS14において、試薬ポンプ42が正常に作動し、試薬タンク40から給水試料に対して合成酵素基質培地が正常に添加されたものと判断することができる。この場合、プログラムは、ステップS18に移行する。
【0052】
ステップS18において、プログラムは培養設定工程を実施する。ここでは、温度調節装置3においてヒーター31を作動させ、また、マグネチックスターラー25を作動させる。この結果、容器2がブロック30により加熱され、容器2内の給水試料は撹拌されながら加熱される。そして、プログラムは、次のステップS19において、給水試料の温度が大腸菌の培養に適した温度、例えば36±1℃に達したか否かを判断する。給水試料が当該温度に達していない場合、プログラムは給水試料の加熱を継続する。一方、給水試料の温度が当該温度に達すると、プログラムは、ステップS20において内部タイマーを作動させる(すなわち、経過時間tを0に設定する)。続いて、プログラムは、次のステップS21において、CPU70内の測定回数カウンタnを0に設定し、また、次のステップS22において、測定回数カウンタnの値に1を加える。
【0053】
ステップS22の終了後、プログラムはステップS23に移行し、所要の時間、すなわち、ステップS22で設定した測定カウンタ数(n)に1時間を掛けた時間(すなわち、n時間)が経過したか否か(すなわち、ステップS20で0に設定した経過時間tがn時間になったか否か)を判断する。経過時間がn時間に達していない場合、プログラムは引続き給水試料の加熱状態を維持する。
【0054】
一方、経過時間tがn時間に達すると、プログラムはステップS24に移行し、第二透過率測定部62の第二発光素子65を点灯する。そして、次のステップS25において、容器2を通過する、第二発光素子65からの赤色光を第二受光素子66で受光し、当該赤色光の透過率を測定する。
【0055】
ここで、容器2を通過する赤色光の透過率について説明する。合成酵素基質培地(以下、試薬という場合がある)が供給されかつ培養された給水試料は、大腸菌を含まない場合、X−GLUC培地が加水分解されないため、発色物質である5,5−ジブロモ−4,4−ジクロロインジゴによる青〜青緑色への変色が起こらず、赤色光の透過率は低下しにくい。これに対し、試薬が供給されかつ培養された給水試料は、大腸菌を含む場合、β−グルクロニダーゼによりX−GLUC培地が加水分解され、発色物質である5,5−ジブロモ−4,4−ジクロロインジゴを生成するため青〜青緑色に変色するので、赤色光の透過率が急激に低下する。したがって、一般には、赤色光の透過率の大小により、給水試料の青〜青緑色への変色を判定することができる。すなわち、一般に、赤色光の透過率が低下すれば、給水試料が青〜青緑色に変色している(すなわち、給水試料が大腸菌を含んでいる)ものと判断することができる。
【0056】
但し、給水試料は、大腸菌以外の他の細菌を含む場合、青〜青緑色に変色せずに濁るため、赤色光の透過率はやはり低下することになる。したがって、給水試料が濁っているだけ(便宜上、「濁り」という)なのか、或いは青〜青緑色に変色している(便宜上、「変色」という)のかの判別が必要になる。
【0057】
そこで、濁りと変色とを判別するために、濁り時の赤色光の透過率と変色時の赤色光の透過率との差に基づいて、赤色光の透過率に判別のための基準値を設定する。そして、赤色光の透過率が当該基準値よりも低下している場合は変色と判定し、当該基準値より大きい場合は濁りと判定する。具体的には、給水試料が大腸菌を含まず、他の細菌を含む場合、給水試料は、X−GLUC培地の存在下、36±1℃で24時間培養されると、図9に点線で示すように、赤色光の透過率が12時間を経過したあたりから濁りのために低下するが、その低下の程度は一定レベルで維持される。これに対し、給水試料が大腸菌を含む場合、図9に実線で示すように、赤色光の透過率は15時間を経過したあたりから急激に低下し続ける。このため、培養開始から24時間後では、濁りの場合と変色の場合とでは赤色光の透過率に大きな差(E)が生じる。したがって、この差Eの範囲内において、赤色光の透過率についての任意の基準値Bを設定すれば、赤色光の透過率が当該基準値Bよりも大きい側にあるか小さい側にあるかを判定することにより、濁りか変色かを判別することができる。
【0058】
なお、上述の差Eは、第二発光素子65および第二受光素子66の種類や感度により異なるので、判別のための基準値Bは、これらの種類や感度等に応じて適宜設定するのが好ましい。但し、この実施の形態では、後述するように、培養開始から24時間経過するのを待ってから変色を判定するのではなく、培養開始から1時間毎に変色を判定することになるので、基準値Bは、図9に点線で示す透過率曲線の最小値(図9のM)よりも小さい値に設定するのが好ましい。
【0059】
そこで、プログラムは、次のステップS26において、ステップS25で測定した赤色光の透過率が基準値Bより小さいか否かを判断する。透過率が基準値B以上の場合(すなわち、給水試料が変色していない場合)、プログラムはステップS27に移行し、測定回数カウンタnが24であるか否かを判断する。ここで、測定回数カウンタnが24ではない場合、プログラムはステップS22に戻り、上述のステップS22〜S26を繰返す。一方、ステップS27において、測定回数カウンタnが24であると判断した場合(すなわち、ステップS20で0に設定した経過時間tが24時間になった場合)、プログラムはステップS28に移行し、判定結果処理を実行する。判定結果処理では、表示装置75において、給水試料に大腸菌が含まれていない旨を表示すると共に、そのような判定結果と当該判定をした時刻とを記録装置に記録する。ステップS28の終了後、プログラムはステップS31に移行する。
【0060】
これに対し、ステップS26において、ステップS25で測定した透過率が基準値Bよりも小さい場合(すなわち、給水試料が変色している場合)、プログラムはステップS29に移行し、給水停止工程を実施する。ここでは、給水遮断弁107を閉鎖する。これにより、給水タンク102から食品加工設備101に対する給水が停止される。すなわち、食品加工設備101には、大腸菌を含む危険な給水の供給が自動的に中断されることになる。
【0061】
また、ステップS29の終了後、プログラムはステップS30に移行し、判定結果処理を実行する。この判定結果処理では、表示装置75において、給水試料に大腸菌が含まれている旨を表示すると共に、そのような判定結果と当該判定をした時刻とを記録装置に記録する。ステップS30の終了後、プログラムはステップS31に移行する。
【0062】
なお、ステップS22からステップS31までの工程は、プログラムがステップS26からステップS29へ移行しない限り、測定回数カウンタnが24になるまで、すなわち、経過時間tが24時間になるまで、1時間毎に繰り返し実施されることになる。すなわち、この実施の形態では、培養開始から1時間毎に、給水試料の変色を判定することになる。したがって、この実施の形態では、大腸菌判定のための合成酵素基質培地法において要請されている24時間の培養時間になる前に給水試料の変色を判定した場合(すなわち、給水試料に大腸菌が含まれるものと判定した場合)、速やかに給水停止工程を実施することができ、食品加工設備101への危険な給水を迅速に中断することができる。
【0063】
ステップS31では、容器2内の給水試料を殺菌するための殺菌設定工程を実施する。ここでは、ヒーター31を作動して容器2を更に加熱し、給水試料の温度を高める。続くステップS32では、給水試料温度が、大腸菌の殺菌に適した温度である80℃以上に達したか否かを判断する。給水試料温度が80℃未満の場合、プログラムは容器2の加熱を継続する。一方、給水試料温度が80℃以上の場合、プログラムは、ステップS33において内部タイマーを作動させる(すなわち、経過時間tを0に設定する)。そして、次のステップS34において、所要の時間t1が経過したか否か(すなわち、ステップS33で0に設定した経過時間tがt1になったか否か)を判断する。経過時間がt1に達していない場合、プログラムは引続き給水試料の加熱状態を維持する。一方、経過時間tがt1に達していると、プログラムはステップS35に移行する。なお、時間t1は、給水試料中に含まれる大腸菌を死滅させるのに十分な時間であり、給水試料の温度を80℃で維持する場合は通常30分である。このような殺菌工程により、容器2は、給水試料中に含まれる大腸菌による汚染が防止されることになる。
【0064】
次に、ステップS35において、プログラムは洗浄液供給操作を実施する。ここでは、ヒーター31を停止した後、第一電磁弁22および洗浄液供給装置5の第二電磁弁53を開放状態に設定すると共に、洗浄液ポンプ52を一定時間作動させる。これにより、洗浄液タンク50内の洗浄液は、洗浄液供給路51から供給路20を経由して容器2内に連続的に供給され、容器2内の給水試料を排出路21を通じて外部に押出す。そして、洗浄液ポンプ52が一定時間作動した後、第一電磁弁22および第二電磁弁53が閉鎖される。この結果、容器2内の給水試料は洗浄液により置換され、容器2内には洗浄液が貯留されることになる。貯留された洗浄液は、攪拌子26により攪拌されながら容器2内を洗浄、殺菌する。なお、洗浄液は、供給路20を通過して容器2内に供給されることになるため、その際に供給路20を洗浄、殺菌することもできる。
【0065】
ステップS35の終了後、ステップS36において、プログラムは内部タイマーを作動させる(すなわち、経過時間tを0に設定する)。そして、次のステップS37において、所要の時間t2が経過したか否か(すなわち、ステップS36で0に設定した経過時間tがt2になったか否か)を判断する。経過時間がt2に達してしていない場合、プログラムはそのままの状態を維持する。一方、経過時間tがt2に達していると、プログラムはステップS38に移行する。この結果、容器2は、時間t2の間洗浄液が貯留され、洗浄、殺菌されることになる。なお、時間t2は、容器2内を十分に洗浄、殺菌することができる時間であり、通常は少なくとも60分である。
【0066】
次に、プログラムは、ステップS38において、第一電磁弁22を開放状態に設定する。そして、続くステップS39において、給水遮断弁107が開放状態であるか否かを判断する。ここで、プログラムがステップS26からステップS27およびステップS28を経由してステップS31に移行している場合、すなわち、給水試料中に大腸菌が含まれていなかった場合、給水遮断弁107は開放状態であるため、プログラムは一定の経過時間後にステップS5に移行する。この間、容器2内には給水経路103を通過中の給水の一部が連続的に供給されることになる。これにより、容器2内に貯留された洗浄液は給水により置換され、容器2内には新たな給水試料が貯留されることになる。そして、新たな給水試料は、ステップS6〜S11による容器2の洗浄確認工程を経た後、容器2の洗浄状態に問題がなければ、ステップS14以降において大腸菌の存否が判定される。一方、プログラムがステップS26からステップS29およびステップS30を経由してステップS31に移行している場合、すなわち、給水試料中に大腸菌が含まれていた場合、給水遮断弁107はステップS29において閉鎖されているため、プログラムは、ステップS40に移行して第一電磁弁22を閉鎖した後、ステップS2に移行して待機状態になる。
【0067】
以上のように、この給水装置100は、上述のような判定装置104を備えているため、給水タンク102から食品加工設備101に給水を供給しながら当該給水中に大腸菌が含まれるか否かを連続的に自動的に判断することができ、また、給水中に大腸菌が含まれると判断した場合は食品加工設備101への給水を自動的に中断することができる。したがって、この給水装置100によれば、水の供給源である給水タンク102から水の利用系である食品加工設備101に対し、安全性を確認しながら給水することができる。
【0068】
また、この実施の形態では、ステップS28およびS30において、大腸菌の存否の判定結果を時刻と共に記録装置に継続的に記録しているので、食品加工設備101に供給中の給水における大腸菌の存否の判定結果を時系列的に管理することができる。
【0069】
この実施の形態1においては、例えば、次のような変更が可能である。
[変更例1]
実施の形態1において用いられる判定装置104では、確認工程において、給水試料に合成酵素基質培地が添加されたか否かのみを確認するようにしたが、この判定装置104は、給水試料に合成酵素基質培地の所定量が適切に添加されたか否かをさらに確認するように設定することもできる。
【0070】
この場合は、図10に示すように、給水試料における緑色光の透過率が給水試料中における赤色の色素の濃度が高まるに従って低下することから、緑色光の特定の透過率(X)と当該透過率(X)が達成される場合の給水試料における色素の濃度(Y)との関係を予め調べておく。そして、試薬タンク40内に貯留する合成酵素基質培地において、給水試料に上述の所定量が注入された場合における給水試料中の色素の濃度が上記濃度(Y)になるよう色素の添加量を設定し、また、特定の透過率(X)のデータを制御装置7に記憶しておく。さらに、動作プログラムのステップS17において、緑色光の透過率が特定の透過率(X)に到達したか否かを判定するようように設定しておく。
【0071】
このように設定しておくと、ステップS16で測定した緑色光の透過率が特定の透過率(X)に到達している場合、ステップS17において、給水試料に所定量の合成酵素基質培地が適切に注入されたものと判断することができる。一方、ステップS16で測定した緑色光の透過率が特定の透過率(X)に到達していない場合、ステップS17において、給水試料には所定量の合成酵素基質培地が注入されなかったものと(すなわち、ステップS14の試薬供給工程に異常が発生したものと)判断することができる。
【0072】
したがって、この場合、給水試料中に含まれる大腸菌をより適切な環境で培養することができるようになるので、大腸菌の存否をより正確に判断することができる。
【0073】
[変更例2]
実施の形態1では、合成酵素基質培地としてX−GLUCを含むものを利用し、また、当該合成酵素基質培地に添加する色素として赤色の色素を用いたが、ここで利用する色素はこれに限定されるものではない。すなわち、実施の形態1において、合成酵素基質培地に添加する色素は、既述の条件を満たすものであれば他の色素であってもよい。そのような色素としては、例えば、給水試料を黄色に着色するo−ニトロフェノールを挙げることができる。但し、o−ニトロフェノールを色素として用いる場合、第一透過率測定部61は、緑色光を発光する第一発光素子63に代えて、赤色光以外であって給水試料が黄色に変色した場合に透過率が低下する色の光を発光可能な発光装置を用いる必要がある。このような発光装置としては、例えば、可視紫外光を照射可能な光源と、当該光源からの可視紫外光から特定の波長の光を選択するためのフイルタとを備たものを利用することができる。
【0074】
[変更例3]
実施の形態1では、合成酵素基質培地として、X−GLUCを発色合成酵素基質として含む合成酵素基質培地を利用する場合を例に説明したが、β−グルクロニダーゼにより加水分解された場合に5,5−ジブロモ−4,4−ジクロロインジゴ若しくは他の発色物質を生成する発色合成酵素基質を含む他の合成酵素基質培地を用いる場合も本発明は同様に実施することができる。
【0075】
[変更例4]
実施の形態1において用いた判定装置104では、試薬供給装置4から合成酵素基質培地が確実に給水試料に対して供給されたことを確認するため、合成酵素基質培地として、合成酵素基質と共に色素を含むものを用いたが、色素を含まない合成酵素基質培地を用いた場合も本発明を同様に実施することができる。
【0076】
この場合、判定装置104は、透過率測定装置6に代えて、図11に示すような吸光度測定装置160を用いることができる。図において、吸光度測定装置160は、容器2を通過する可視紫外光の吸光度を測定するためのものであり、容器2の底部近傍に配置された光源161と、容器2を挟んで光源161と対向する受光装置162とを主に備えている。受光装置162は、光源161からの可視紫外光のうち、特定の波長の光(後述)を選択するための切り替え可能な複数のフイルタ163を備えている。ここで、光源161は、制御装置7の入出力ポート73の出力側に接続されており、受光装置162は、入出力ポート73の入力側に接続されている。
【0077】
また、制御装置7は、透過率測定装置6に代えて吸光度測定装置160が用いられることに伴い、吸光度測定装置160で測定された吸光度にそれぞれ基づいて給水試料の変色の有無を判定する判定プログラム(大腸菌判定手段の一例)および容器2の洗浄状態を確認するための洗浄確認プログラム(洗浄確認手段の一例)を含んでいる。
【0078】
ここで、判定プログラムによる給水試料の変色の有無(すなわち、給水試料中における大腸菌の存否)の判定原理および洗浄確認プログラムによる容器2の洗浄の確認原理を説明する。
【0079】
給水試料は、大腸菌を含む場合(ケース1)、上述のような合成酵素基質培地(すなわち、X−GLUCを含む合成酵素基質培地)の存在下で培養処理が施されると、給水試料を青〜青緑色に変色させる。したがって、給水試料の可視紫外光吸収スペクトルは、図12に実線で示すように、青〜青緑色に対応する650nm付近に吸収ピークを有することになる。これに対し、給水試料が大腸菌および大腸菌以外の細菌を含まない場合(ケース2)、給水試料は、上述のような培養処理後であっても青〜青緑色には変色しないことになる。従って、この場合における給水試料の可視紫外光吸収スペクトルは、図12に点線で示すように高波長側に向けてなだらかに減少し、特定の波長での吸収ピークを示さない。
【0080】
一方、給水試料が大腸菌を含まず、大腸菌以外の細菌を含む場合(ケース3)、給水試料は、上述のような培養処理後に青〜青緑色には変色しないが、大腸菌以外の細菌の増殖のために白濁する。このため、この場合における給水試料の可視紫外光吸収スペクトルは、図12に一点鎖線で示すように高波長側に向けてなだらかに減少し、ケース2の場合と同じく特定の波長での吸収ピークを示さないが、全波長領域における吸光度がケース2の場合に比べて上昇することになる。
【0081】
したがって、培養処理後の給水試料は、青〜青緑色に対応する650nm付近の吸光度の測定結果からだけでは、大腸菌の存在を示す青〜青緑色に変色しているのか、大腸菌以外の細菌により単に白濁しているだけなのかの判別が困難である。すなわち、給水試料は、ケース1に該当するのかケース3に該当するのかの判別が困難である。しかし、ケース1の吸収スペクトルは650nm付近に吸収ピークを有しているのに対し、ケース3の吸収スペクトルは当該波長付近において吸収ピークを有していない。したがって、ケース1の場合、650nm付近の高波長側の吸光度に比べ、当該波長付近の吸収ピークの低波長側の裾にあたる550nm付近の吸光度が小さくなるのに対し、ケース3の場合、給水試料は、650nm付近の吸光度が550nm付近の吸光度よりも小さくなる。これによると、550nm付近の吸光度と650nm付近の吸光度とを比較し、前者が後者に比べて小さい場合は、給水試料が大腸菌の存在のために青〜青緑色に変色しているものと判断することができる。逆に、前者が後者に比べて大きい場合は、給水試料が青〜青緑色に変色しておらず、給水試料に大腸菌が含まれていないものと判断することができる。
【0082】
また、容器2の洗浄状態は、培養前の給水試料または洗浄液が貯留された状態において、550nmの波長の光の吸光度と650nmの波長の光の吸光度とを比較すると、確認することができる。すなわち、650nmの吸光度が550nmの吸光度よりも大きい場合、容器2は、青〜青緑色に変色した給水試料により着色しており、洗浄が不十分なことになる。一方、650nmの吸光度が550nmの吸光度よりも小さい場合、容器2は、青〜青緑色に変色した給水試料により着色しておらず、十分に洗浄されていることになる。
【0083】
次に、上述のような吸光度測定装置160および制御装置7を備えた判定装置104を用いた給水装置100の動作を説明する。この給水装置100の動作プログラムのフローチャートは、図4〜図8に示された上述の動作プログラムのフローチャートにおいて、図13および図14に示す点が異なっている。そこで、ここでは、既述の給水装置100と動作の異なる部分を中心に説明する。なお、以下の説明および図13および図14において、既述の動作と同じ動作の部分には、同じ符号(ステップの番号)を用いている。
【0084】
ステップS5の終了後、プログラムは、ステップS100に移行する(図13)。ステップS100において、プログラムは、吸光度測定装置160を作動させ、光源161から受光素子162に向けて可視紫外光を照射する。そして、ステップS100〜ステップS102において、上述の確認原理に従い、容器2の洗浄状態を確認する。具体的には、先ず、ステップS100において、プログラムは、フイルタ163を選択して550nmの波長の光の吸光度を測定し、そのデータを記録する。また、次のステップS101において、他のフイルタ163を選択して650nmの波長の光の吸光度を測定し、そのデータを記録する。そして、ステップS102において、記録した550nmの光の吸光度と650nmの光の吸光度とを比較する。
【0085】
ステップS102において、550nmの吸光度が650nmの吸光度に比べて小さいと判断した場合、容器2は、青〜青緑色に着色しており、洗浄が不十分なことになる。したがって、この場合、プログラムは、ステップS12に移行し、既述のような動作を実施する。一方、ステップS102において、550nmの吸光度が650nmの吸光度に比べて大きいと判断した場合、プログラムは、ステップS103に移行し、試薬供給工程を実施する。ここでの動作は、先のステップS14の場合と同じである。
【0086】
次に、プログラムは上述のステップS18に移行し、ステップS18〜ステップS23を実施する。そして、ステップS23において経過時間tがn時間に達すると、プログラムはステップS104に移行する(図14)。プログラムは、ステップS104において、フイルタ163を選択して550nmの波長の光の吸光度を測定し、そのデータを記録する。また、次のステップS105において、他のフイルタ163を選択して650nmの波長の光の吸光度を測定し、そのデータを記録する。そして、ステップS106において、記録した550nmの光の吸光度と650nmの光の吸光度とを比較する。
【0087】
ステップS106において、550nmの吸光度が650nmの吸光度に比べて小さいと判断した場合、給水試料中に大腸菌が存在していることになるので、プログラムはステップS29に移行し、既述の動作を実施する。
【0088】
一方、ステップS106において、550nmの吸光度が650nmの吸光度に比べて大きいと判断した場合、給水試料中には大腸菌が存在しないので、プログラムはステップS106からステップS27に移行し、既述の動作を実施する。
【0089】
この変更例4では、給水試料の変色を判定するために、可視紫外光の低波長側である550nmの光の吸光度と高波長側である650nmの光の吸光度とを比較したが、これは一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。一般には、X−GLUC培地を用いる場合、500〜590nmの低波長側の光の吸光度と、600〜680nmの高波長側の光の吸光度とを比較し、後者が前者に比べて大きければ給水試料が青〜青緑色に変色しているものと判定することができる。
【0090】
[変更例5]
上述の給水装置100では、給水経路103に対して1台の判定装置104を配置しているが、給水経路103には複数台の判定装置104を配置することもできる。例えば、給水経路103に24台の判定装置104を配置し、各判定装置104に給水経路103からの給水試料を1時間毎に順番に採取するようにすれば、給水経路103を通じて食品加工設備101に供給される給水について、1時間毎に大腸菌の存否を連続的に判定することができる。したがって、このようにすれば、より確実に安全性を確認しながら給水タンク102から食品加工設備101に対して給水することができる。
【0091】
[変更例6]
上述の給水装置100では、食品加工設備101を水の利用系の例に挙げたが、水の利用系としては、その他にも、集合住宅やビルにおける飲用水の供給経路、水耕栽培施設および遊泳用プールなどを例示することができる。また、水の供給源は、給水タンク102に限定されるものではなく、上水道や地下水そのものであってもよい。
【0092】
実施の形態2
上述の実施の形態1では、主に、判定装置104においてX−GLUC培地を用いる場合について説明したが、判定装置104は、利用する合成酵素基質培地の種類に応じて変更することができる。例えば、合成酵素基質培地として、大腸菌が存在する場合に蛍光物質を生成するものを用いる場合、判定装置104は、次のように一部を変更することができる。
【0093】
この場合の判定装置104は、透過率測定装置6に代えて、図15に示すような蛍光認識装置260および着色確認装置270を用いる。図において、蛍光認識装置260は、紫外線ランプ261と蛍光受光素子262とを備えている。紫外線ランプ261は、容器2内に紫外線を照射可能なものであり、容器2の底部近傍に配置されている。なお、紫外線ランプ261が照射する紫外線は、長波長のもの、例えば、360nm〜370nmの波長のものが好ましい。また、蛍光受光素子262は、容器2内から照射される蛍光を受光した場合に電気信号を発信するものであり、紫外線ランプ261からの紫外線を直接受光しないようにするため、紫外線ランプ261に隣接して配置されている。なお、紫外線ランプ261は、制御装置7の入出力ポート73の出力側に接続されており、蛍光受光素子262は、入出力ポート73の入力側に接続されている。
【0094】
一方、着色確認装置270は、緑色ダイオード等の緑色光を発光する発光素子271と、容器2を挟んで発光素子271と対向する、例えばフォトトランジスタ等の受光素子272とを主に備えており、発光素子271から照射されかつ容器2を通過する緑色光の透過率を測定するためのものである。なお、発光素子271は、制御装置7の入出力ポート73の出力側に接続されており、受光素子272は、入出力ポート73の入力側に接続されている。
【0095】
また、制御装置7は、透過率測定装置6に代えて蛍光認識装置260および着色確認装置270が用いられていることに伴い、給水試料の蛍光を判定するための判定プログラム(大腸菌判定手段の一例)および緑色光の透過率に基づいて被試験水の変色を確認する確認プログラム(確認手段の一例)を含んでいる。
【0096】
大腸菌が存在する場合に蛍光物質を生成する合成酵素基質培地としては、例えば、大腸菌群を検出するためのXGal−MUG培地を用いることができる。XGal−MUG培地は、MUGが大腸菌の特異酵素であるβ−グルクロニダーゼにより加水分解され、蛍光物質である4−メチルウンベリフェロンを生成する。4−メチルウンベリフェロンは、360〜370nmの波長の紫外線の照射を受けた場合、460nmの波長の蛍光を発する。
【0097】
XGal−MUG培地として好ましいものは、例えば、実施の形態1において挙げた、社団法人日本水道協会発行、「上水試験方法 解説編 2001年版」842〜843頁の表に挙げられたピルビン酸添加XGal−MUG培地である。
【0098】
但し、この実施の形態において用いるXGal−MUG培地、特に、ピルビン酸添加XGal−MUG培地は、実施の形態1において用いる合成酵素基質培地の場合と同様の理由により、各成分の濃度が規定濃度の少なくとも2倍、好ましくは少なくとも6倍、より好ましくは少なくとも11倍に設定されているものを用いるのが好ましい。ここで、規定濃度とは、例えば、上述の「上水試験方法 解説編 2001年版」842〜843頁の表等において規定された、ピルビン酸添加XGal−MUG培地等の各種のXGal−MUG培地の濃度をいう。因みに、ピルビン酸添加XGal−MUG培地の規定濃度は、既述のような各成分の含有量により規定されている。
【0099】
上述のような高濃度のXGal−MUG培地は、所要の成分をその含有量が規定濃度の少なくとも2倍になるよう水中に溶解するか、あるいは、規定濃度の既存の合成酵素基質培地を液量が少なくとも1/2になるまで濃縮すると調製することができる。
【0100】
また、ここで用いるXGal−MUG培地は、実施の形態1において用いる合成酵素基質培地の場合と同様に、色素(例えば赤色の色素)を含んでいるのが好ましい。
【0101】
次に、上述のような蛍光認識装置260、着色確認装置270および制御装置7を備えた判定装置104を含む給水装置100の動作を説明する。この給水装置100の動作プログラムのフローチャートは、図4〜図8に示された実施の形態1に係る給水装置100の動作プログラムのフローチャートにおいて、図16〜図18に示す点が異なっている。そこで、ここでは、上述の実施の形態1に係る給水装置100と動作の異なる部分を中心に説明する。なお、以下の説明および図16〜図18において、実施の形態1に係る給水装置100と同じ動作の部分には、同じ符号(ステップの番号)を用いている。
【0102】
給水装置100において、ステップS1〜ステップS5の動作後、プログラムは、ステップS200に移行する(図16)。ステップS200において、プログラムは、着色確認装置270の発光素子271を点灯する。そして、次のステップS201において、容器2を通過する、発光素子271からの緑色光を受光素子272で受光し、その透過率を測定する。続いて、次のステップS202において、ステップS201で測定した透過率が、一定の基準値Cより大きいか否かを判断する(第一洗浄確認工程)。なお、基準値Cは、実施の形態1の場合と同様である。
【0103】
ここで、透過率が基準値C以下の場合、容器2において緑色光の透過を妨げるような汚れがあるか(すなわち、合成酵素基質培地に含まれる赤色の色素により容器2が着色しているか)、若しくは容器2内に貯留された給水試料が異常に濁っているものと判断することができるので、プログラムはステップS12に移行し、実施の形態1の場合と同様に作動する。一方、ステップS201において測定した緑色光の透過率が基準値Cより大きい場合、プログラムはステップS202からステップS203に移行する。
【0104】
ステップS203において、プログラムは、蛍光認識装置260の紫外線ランプ261を点灯する。そして、次のステップS204において、蛍光受光素子262が蛍光を受光したか否かを判断する(第二洗浄確認工程)。ここで、蛍光受光素子262が蛍光を受光した場合、容器2内に蛍光物質が存在しているものと判断することができるので、プログラムはステップS12に移行して実施の形態1の場合と同様に作動する。一方、ステップS204において、蛍光受光素子262が蛍光を受光していないと判断した場合、プログラムはステップS204からステップS14に移行する。
【0105】
次に、プログラムは、ステップS15に代えてステップS205を実行する点を除き、実施の形態1の場合と同様にステップS14〜S23を実行する。なお、実施の形態1でのステップS15に代わるステップS205(図17)では、着色確認装置270の発光素子271を点灯する。
【0106】
ステップS23の後、プログラムは、ステップS206に移行する(図18)。プログラムは、ステップS206において紫外線ランプ261を点灯し、続くステップS207において、蛍光受光素子262が蛍光を受光したか否かを判定する。
【0107】
ここで、上記蛍光について説明する。合成酵素基質培地(以下、試薬という場合がある)が供給されかつ培養された給水試料は、大腸菌を含まない場合、XGal−MUG培地がβ−グルクロニダーゼにより加水分解されないため、蛍光物質である4−メチルウンベリフェロンが生成しない。したがって、給水試料は、紫外線を照射しても蛍光しない。このため、蛍光受光素子262は、蛍光を受光しない。これに対し、試薬が供給されかつ培養された給水試料は、大腸菌を含む場合、そのβ−グルクロニダーゼによりXGal−MUG培地が加水分解され、蛍光物質である4−メチルウンベリフェロンが生成する。したがって、給水試料は、紫外線の照射により蛍光を発し、この蛍光は、蛍光受光素子262により受光される。このため、蛍光受光素子262が蛍光を受光した場合、給水試料が大腸菌を含んでいるものと判断することができる。
【0108】
そこで、蛍光受光素子262が蛍光を受光した場合、プログラムは、ステップS207からステップS29に移行し、実施の形態1の場合と同様に作動する。一方、蛍光受光素子262が蛍光を受光しない場合、プログラムは、ステップS207からステップS27に移行し、実施の形態1の場合と同様に作動する。
【0109】
ステップS29またはステップS27の後、プログラムは、実施の形態1の場合と同じく、判定結果処理工程および洗浄工程を含むステップS28およびステップS30〜ステップS40を実行する。そして、ステップS40の後、プログラムはステップS2に戻り、待機状態になる。
【0110】
この実施の形態2は、例えば、実施の形態1に係る大腸菌判定装置1の場合における変更例1、変更例2、変更例5および変更例6と同様の変更が可能である。また、この実施の形態2は、実施の形態1の変更例4と同様に、色素を含まない合成酵素基質培地を用いて実施することもできる。この場合、制御装置7において、確認手段を省略し、それに合わせて動作フローチャートを変更する必要がある。
【0111】
実施の形態3
上述の実施の形態1および2に係る給水装置100は、それぞれ、給水中に大腸菌が含まれる場合に給水動作が停止するよう設定されているが、本発明の給水装置は、大腸菌群が含まれる場合においても給水を停止するよう設定することができる。ここで、大腸菌群とは、好気性または通気嫌気性のグラム陰性無芽胞の桿菌であり、乳糖を分解して酸とガスとを生じるか、β―ガラクトシダーゼを特異酵素として有する細菌群をいい(上述の社団法人日本水道協会発行、「上水試験方法 解説編 2001年版」845頁参照)、大腸菌そのものとは異なる。しかし、大腸菌群は大腸菌を含む細菌群であるため、大腸菌群を含む給水は、大腸菌による汚染を疑うことができる。したがって、本発明の給水装置において、給水に大腸菌群が含まれる場合に給水を停止するようにすると、食品加工設備101等の水の利用系に対し、大腸菌汚染の危険性のある水の供給をより確実に停止することができる。
【0112】
この場合は、例えば、実施の形態1に係る給水装置100において、判定装置104に対して実施の形態2で用いる蛍光認識装置260を付加する。また、判定装置104の制御装置7において、蛍光認識装置260が付加されたことに伴い、給水試料の蛍光を判定するための判定プログラム(大腸菌判定手段の一例)を付加する。さらに、そのような判定装置104において、合成酵素基質培地として、実施の形態2の場合と同様にXGal−MUG培地を用いる。XGal−MUG培地は、給水試料中に大腸菌群が含まれる場合、大腸菌群の特異酵素であるβ−ガラクトシダーゼによりXGal(第二合成酵素基質の一例)が加水分解され、青〜青緑色を呈する発色物質である5,5−ジブロモ−4,4−ジクロロインジゴを生成する。また、XGal−MUG培地は、給水試料中に大腸菌が含まれる場合、実施の形態2において説明した通り、大腸菌の特異酵素であるβ−グルクロニダーゼによりMUG(第二合成酵素基質の一例)が加水分解され、蛍光物質である4−メチルウンベリフェロンを生成する。
【0113】
次に、このような給水装置100の動作を説明する。この給水装置100の動作プログラムのフローチャートは、図4〜図8に示された実施の形態1に係る給水装置100の動作プログラムのフローチャートにおいて、図19〜図21に示す点が異なっている。そこで、ここでは、上述の実施の形態1に係る給水装置100と動作の異なる部分を中心に説明する。なお、以下の説明および図19〜図21において、実施の形態1に係る給水装置100と同じ動作の部分には、同じ符号(ステップの番号)を用いている。
【0114】
この給水装置100では、ステップS11において測定した赤色光の透過率が基準値Aより大きい場合(すなわち、容器2において赤色光の透過を妨げるような汚れが無く、また、容器2内に貯留された給水試料が異常に濁っていない場合)、プログラムはステップS11からステップS300に移行する(図19)。ステップS300において、プログラムは、蛍光認識装置260の紫外線ランプ261を点灯する。そして、次のステップS301において、蛍光受光素子262が蛍光を受光したか否かを判断する(第三洗浄確認工程)。ここで、蛍光受光素子262が蛍光を受光した場合、大腸菌判定の支障となる蛍光物質が容器2内に存在しているものと判断することができるので、プログラムはステップS12に移行して実施の形態1の場合と同様に作動する。一方、ステップS301において、蛍光受光素子262が蛍光を受光しないと判断した場合、プログラムはステップS301からステップS14に移行し、実施の形態1の場合と同様にステップS14〜ステップS23を実施する。
【0115】
ステップS23において、経過時間tがn時間に到達した場合、プログラムは、ステップS23からステップS302に移行し(図20)、蛍光認識装置260の紫外線ランプ261を点灯する。そして、次のステップS303において、蛍光受光素子262が蛍光を受光したか否かを判断する。なお、ここでの蛍光は、実施の形態2において説明した通りである。
【0116】
ここで、蛍光受光素子262が蛍光を受光した場合、給水試料中に大腸菌が存在していることになるため、プログラムはステップS303からステップS29に移行し、それ以降、実施の形態1の場合と同様に作動する。一方、蛍光受光素子262が蛍光を受光していない場合、給水試料中には大腸菌が存在していないと考えられるため、プログラムは、ステップS303からステップS24に移行し、それ以降、実施の形態1の場合と同様に作動する。
【0117】
但し、実施の形態1のステップS24〜ステップS26では、大腸菌の特異酵素であるβ−グルクロニダーゼによるX−GLUC培地の加水分解により、発色物質である5,5−ジブロモ−4,4−ジクロロインジゴが生成しているか否か、すなわち、当該発色物質により給水試料が青〜青緑色へ変色しているか否かを判定しているが、この実施の形態では、大腸菌群の特異酵素であるβ−ガラクトシダーゼがXGalを加水分解することにより生成する5,5−ジブロモ−4,4−ジクロロインジゴにより給水試料が青〜青緑色に変色しているか否かを判定する。すなわち、この実施の形態では、ステップS24〜ステップS26において、給水試料に大腸菌群が含まれるか否かを判定することになる。したがって、実施の形態1における給水試料の変色の有無を判定する判定プログラム(大腸菌判定手段)は、この実施の形態3において、大腸菌群判定手段として機能する。そして、ステップS26において、赤色光の透過率が基準値Bよりも小さい場合、給水試料中に大腸菌の存在を疑わせる大腸菌群が存在していることになるので、プログラムは、ステップS26からステップS304に移行する(図21)。ステップS304において、プログラムは、実施の形態1のステップS29と同様に給水を停止し、続くステップS305において、判定結果処理を実行する。但し、この判定結果処理では、表示装置75において、給水試料に大腸菌群が含まれている旨を表示すると共に、そのような判定結果と当該判定をした時刻とを記録装置に記録する。ステップS305の終了後、プログラムはステップS31に移行し、それ以降、実施の形態1の場合と同様に作動する。
【0118】
一方、ステップS26において、赤色光の透過率が基準値Bよりも大きい場合、給水試料中には大腸菌群が存在しないことになるので、プログラムは、ステップS26からステップS27に移行し、それ以降、実施の形態1の場合と同様に作動する。
【0119】
上述のように、この実施の形態に係る給水装置100は、給水が大腸菌群を含む場合にも給水を停止することができるので、給水試料中に大腸菌が含まれるか否かの判定工程において仮に誤作動があったとしても、食品加工設備101等の水の利用系に対して大腸菌汚染の危険性のある水の供給をより確実に停止することができる。
【0120】
この実施の形態3は、例えば、実施の形態1に係る大腸菌判定装置1の場合における変更例1、変更例2、変更例5および変更例6と同様の変更が可能である。また、この実施の形態3では、合成酵素基質培地としてXGal−MUG培地を用いる場合を例に説明したが、第一合成酵素基質としてβ−グルクロニダーゼにより加水分解された場合に他の蛍光物質を生成するものおよび第二合成酵素基質としてβ−ガラクトシダーゼにより加水分解された場合に5,5−ジブロモ−4,4−ジクロロインジゴ若しくは他の発色物質を生成する発色合成酵素基質を含む合成酵素基質培地を用いる場合も本発明は同様に実施することができる。さらに、この実施の形態3は、実施の形態1の変更例4と同様に、色素を含まない合成酵素基質培地を用いて実施することもできる。この場合、制御装置7において、確認手段を省略し、それに合わせて動作フローチャートを変更する必要がある。
【0121】
[合成酵素基質培地濃度の実験例]
規定濃度のピルビン酸添加XGal−MUG培地と、その数種類の濃縮物(濃縮培地)とを用意した。そして、各培地に大腸菌(グラム陰性菌)、緑膿菌(グラム陰性菌)および黄色ブドウ球菌(グラム陽性菌)を濃度が102個/mlになるよう個別に添加して9日間培養し、菌類の生育の有無を確認した。結果を表1〜表3に示す。なお、各表において、+は菌が生育したことを示し、−は菌が生育しなかったことを示している。
【0122】
【表1】
【0123】
【表2】
【0124】
【表3】
【0125】
また、各培地に各菌を濃度が107個/mlになるよう個別に添加して同様に培養し、菌類の生育の有無を確認した。結果を表4〜表6に示す。各表における+,−は表1〜表3の場合と同様である。
【0126】
【表4】
【0127】
【表5】
【0128】
【表6】
【0129】
表1〜表6によると、規定濃度のピルビン酸添加XGal−MUG培地は、培養開始後1日で添加した菌が生育している。これに対し、濃縮した培地は、濃縮倍率が高い程、高濃度の菌を含む場合でも菌の生育を効果的に抑制できる。これによれば、上述の判定装置104において用いる合成酵素基質培地は、給水試料中に含まれる可能性のある大腸菌が一般には102個/ml以下の比較的低濃度で微量であるため、濃縮倍率が2倍以上であれば、試薬タンク40内に貯蔵しても雑菌が生育しにくく、判定結果の信頼性を損ないにくくなることがわかる。
【0130】
【発明の効果】
本発明の給水装置は、給水経路を通じて水の供給源から水の利用系に水を供給するに当り、当該水中における大腸菌の存否を判定装置を用いて判定することができるため、水の供給源から水の利用系に対し、安全性を確認しながら給水することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1に係る給水装置の概略構成図。
【図2】実施の形態1において採用された判定装置の概略構成図。
【図3】前記判定装置において用いられる制御装置の概略図。
【図4】実施の形態1の動作フローチャート。
【図5】実施の形態1の動作フローチャート。
【図6】実施の形態1の動作フローチャート。
【図7】実施の形態1の動作フローチャート。
【図8】実施の形態1の動作フローチャート。
【図9】給水試料における赤色光の一般的な経時的透過率変化を示す図。
【図10】給水試料における緑色光の透過率と、給水試料中における赤色の色素の濃度との一般的な関係を示す図。
【図11】実施の形態1の変更例4において用いられる吸光度測定装置の概略図。
【図12】給水試料における一般的な可視紫外光吸収スペクトルを示す図。
【図13】前記変更例4の動作フローチャートの一部。
【図14】前記変更例4の動作フローチャートの一部。
【図15】本発明の実施の形態2に係る給水装置において用いられる判定装置の部分概略平面図。
【図16】実施の形態2の動作フローチャートの一部。
【図17】実施の形態2の動作フローチャートの一部。
【図18】実施の形態2の動作フローチャートの一部。
【図19】実施の形態3の動作フローチャートの一部。
【図20】実施の形態3の動作フローチャートの一部。
【図21】実施の形態3の動作フローチャートの一部。
【符号の説明】
100 給水装置
101 食品加工設備
102 給水タンク
103 給水経路
104 判定装置
107 給水遮断弁
2 容器
3 温度調節装置
4 試薬供給装置
5 洗浄液供給装置
6 透過率測定装置
7 制御装置
20 供給路
21 排出路
160 吸光度測定装置
260 蛍光認識装置
Claims (8)
- 水の供給源から水の利用系に対して水を供給するための給水装置であって、
前記供給源から前記利用系に前記水を供給するための給水経路と、
前記給水経路を通じて前記利用系に供給される前記水中における大腸菌の存否を判定するための大腸菌判定手段を有する判定装置と、
を備えた給水装置。 - 前記判定装置は、前記水中における大腸菌群の存否を判定するための大腸菌群判定手段をさらに備えている、請求項1に記載の給水装置。
- 前記給水経路は、前記判定装置での判定結果に基づいて作動する、前記水を前記利用系に供給するのを遮断するための遮断装置を有している、請求項1または2に記載の給水装置。
- 前記判定装置での判定結果を継続的に記録するよう設定されている、請求項1、2または3に記載の給水装置。
- 前記判定装置は、容器と、前記給水経路から分岐しかつ前記利用系に供給される前記水の一部を前記容器に供給するための供給路と、前記容器に供給された前記水の温度を調節するための温度調節装置と、前記容器に供給された前記水に対し、β−グルクロニダーゼと反応した場合に発色物質および蛍光物質のうちの一つを生成する合成酵素基質を含む合成酵素基質培地を供給するための試薬供給装置と、前記合成酵素基質培地の供給後における、前記合成酵素基質と前記β−グルクロニダーゼとの反応による前記発色物質および前記蛍光物質のうちの一つの生成を判定するための判定手段とを備えている、請求項1に記載の給水装置。
- 前記判定装置は、容器と、前記給水経路から分岐しかつ前記利用系に供給される前記水の一部を前記容器に供給するための供給路と、前記容器に供給された前記水の温度を調節するための温度調節装置と、前記容器に供給された前記水に対し、β−グルクロニダーゼと反応した場合に蛍光物質を生成する第一合成酵素基質およびβ−ガラクトシダーゼと反応した場合に発色物質を生成する第二合成酵素基質を含む合成酵素基質培地を供給するための試薬供給装置と、前記合成酵素基質培地の供給後における、前記第一合成酵素基質と前記β−グルクロニダーゼとの反応による前記蛍光物質の生成を判定するための第一判定手段と、前記第二合成酵素基質と前記β−ガラクトシダーゼとの反応による前記発色物質の生成を判定するための第二判定手段とを備えている、請求項2に記載の給水装置。
- 前記判定装置は、前記容器に供給された前記水を前記容器の外部に排出するための排出路と、前記供給路を通じて前記容器に洗浄液を供給するための洗浄液供給装置とをさらに備えている、請求項5または6に記載の給水装置。
- 前記判定装置は、前記容器に供給された前記水に対して前記試薬供給装置が前記合成酵素基質培地を供給する前に、前記容器の洗浄状態を確認するための洗浄確認手段をさらに備えている、請求項7に記載の給水装置。
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JP2003126639A JP2004330015A (ja) | 2003-05-01 | 2003-05-01 | 給水装置 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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KR101465900B1 (ko) * | 2013-11-29 | 2014-11-26 | 이옥재 | 물 시료 중 대장균 연속 배양 검출 시스템 |
-
2003
- 2003-05-01 JP JP2003126639A patent/JP2004330015A/ja active Pending
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