JP2004322511A - 印刷方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】印刷機上で湿し水またはインクによって少なくとも一部が除去されうる層を有する印刷版材料の印刷方法において、少なくとも決められたステップ(a)〜(f)により印刷を行うことを特徴とする印刷方法。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、印刷版材料の印刷方法に関し、特にコンピューター・トゥー・プレート(CTP)方式により画像形成が可能な印刷版材料の印刷方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
印刷データのデジタル化に伴い、安価で取扱いが容易でPS版と同等の印刷適性を有したCTPが求められている。特に近年、特別な薬剤による現像処理が不要であって、近赤外〜赤外線の波長を有するレーザーで画像記録が可能であり、ダイレクトイメージング(DI)機能を備えた印刷機に適用可能であるサーマルプロセスレスプレート、またさらには、PS版と同等の使い勝手を有する、汎用タイプのサーマルプロセスレスプレートへの期待が高まっている。
【0003】
サーマルプロセスレスプレートには画像形成の原理により、大きく分けて、アブレーションタイプと熱融着画像層機上現像タイプが存在する。しかし、アブレーションタイプのプレートは記録原理上感度が低く、また、レーザー露光時に画像形成層の一部が飛散する懸念があるため、露光装置に吸引装置を取り付ける必要がある等の問題がある。
【0004】
これに対して、熱融着画像層機上現像タイプのプレートは一般的に感度が高く、また、レーザー露光時に画像形成層が飛散する懸念もないという点でアブレーションタイプよりも有利な方式であると言える。
【0005】
しかし、機上現像タイプの場合、湿し水供給ローラー、インクローラー、ブランケット胴との接触によって除去可能となるように、水溶性成分や水膨潤性成分を含有する画像形成層を最表層、もしくは、水溶性保護層の下の層とした層構成とする必要がある。このため、水溶液や溶剤が画像形成層中にまで浸透しやすく、その中に含有される成分によっては、ちょっとした水濡れや溶剤の付着が画像形成不良や機上現像性不良の原因となるという欠点を有している。
【0006】
熱融着画像層機上現像タイプとしては、親水性層もしくはアルミ砂目上に、熱可塑性微粒子と水溶性の結合剤とを含有する画像形成層を形成したものが挙げられる(例えば、特許文献1、2参照。)が、このような構成においても、上記のような水濡れや溶剤付着による画像形成不良や機上現像性不良を生じる懸念を有している。
【0007】
一般的に、印刷版もしくは印刷版材料を印刷機の版胴に取り付ける際には、版の先端部を版胴の版先端くわえ部で固定した後に、版胴とブランケット胴とをニップさせて、版胴を版巻き付け方向に回転させ、版をブランケット胴表面により版胴表面に密着するように圧接しながら巻き付け、次いで版後端部を版胴の版後端くわえ部で固定するといった方法を取る。これは、印刷機上でレーザー露光を行うDI印刷機においても同じである。
【0008】
が、このような取り付け方法においては、版が機上現像タイプの印刷版材料である場合には、ブランケット胴表面の水分残りや親油性素材を含有する溶剤残りの印刷版材料への移行による画像形成不良や機上現像性劣化が生じる懸念がある。
【0009】
特に、ブランケット胴表面は、印刷の1ジョブが終了するごとに溶剤や水溶液を用いて洗浄されるため、機上現像タイプの印刷版材料を用いて安定した品質の印刷を行うには、ブランケット胴の表面の状態を常に管理しておくことが重要なポイントとなる。
【0010】
しかし、これまでは機上現像タイプの印刷版材料を用いる際のブランケット胴表面の状態については全く考慮されていなかった。
【0011】
【特許文献1】
特開平9−123387号公報 (特許請求の範囲、実施例)
【0012】
【特許文献2】
特開平9−123388号公報 (特許請求の範囲、実施例)
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、機上現像タイプの印刷版材料を用いた際の、安定した良好な機上現像性の確保が可能であり、印刷機上で露光を行う場合にも画像形成不良を生じさせない印刷方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、以下の構成によって達成された。
【0015】
1.印刷機上で湿し水またはインクによって少なくとも一部が除去されうる層を有する印刷版材料の印刷方法において、少なくとも下記のステップ(a)〜(f)により印刷を行うことを特徴とする印刷方法。
(a)印刷版材料を印刷機の版胴に取り付けるステップ
(b)印刷を行うステップ(機上現像を行って印刷版材料を印刷版とするステップを含む)
(c)洗浄液を用いてブランケット胴の洗浄を行うステップ
(d)ブランケット胴表面の乾燥を行うステップ
(e)ステップ(c)あるいは(d)の前後、もしくは、(c)あるいは(d)のステップと同時に印刷版の排出を行うステップ
(f)新たな印刷版材料を印刷機の版胴に取り付けるステップ。
【0016】
2.ブランケット胴の乾燥を行うステップが、ブランケット表面に残存する洗浄液を乾燥した布で拭き取ることにより行われることを特徴とする前記1記載の印刷方法。
【0017】
3.ブランケット胴の乾燥を行うステップが、ブランケット表面に温風もしくは冷風を吹きつけて、残存する洗浄液を乾燥させることにより行われることを特徴とする前記1記載の印刷方法。
【0018】
4.ブランケット胴の乾燥を行うステップが、印刷を行って、ブランケット表面に残存する洗浄液を印刷用紙に付着もしくは吸収させることにより行われることを特徴とする前記1記載の印刷方法。
【0019】
5.ステップ(a)と(b)との間に、印刷版材料の画像形成を行うステップを有することを特徴とする前記1〜4のいずれか1項記載の印刷方法。
【0020】
6.画像形成が赤外線レーザーによって行われることを特徴とする前記5記載の印刷方法。
【0021】
本発明を更に詳しく説明する。本発明は、印刷機上で湿し水またはインクによって少なくとも一部が除去されうる層を有する印刷版材料を印刷する方法において、少なくとも下記のステップ(a)〜(f)により印刷を行う印刷方法である。
(a)印刷版材料を印刷機の版胴に取り付けるステップ、
(b)印刷を行うステップ(機上現像を行って印刷版材料を印刷版とするステップを含む)、
(c)洗浄液を用いてブランケット胴の洗浄を行うステップ、
(d)ブランケット胴表面の乾燥を行うステップ、
(e)ステップ(c)あるいは(d)の前後、もしくは、(c)あるいは(d)のステップと同時に印刷版の排出を行うステップ、
(f)新たな印刷版材料を印刷機の版胴に取り付けるステップ。
【0022】
上記のように、洗浄液を用いたブランケット胴の洗浄ステップの後にブランケット胴表面の乾燥ステップを設けることで、その次に行う印刷の機上現像性を良好な状態となるように管理できるようになる。
【0023】
ブランケット胴の洗浄方法としては、公知の種々の方法を用いることができる。例えば、
(1)ブランケット胴表面に洗浄液を吹き付け、回転ブラシを接触させて汚れをこすり落とす方法、
(2)不織布に洗浄液を吹き付け、洗浄液が含浸した不織布をブランケット胴表面に押し付けて汚れを拭き取る方法、
(3)揮発性の低い洗浄液をあらかじめ含浸させた不織布を胴表面に押し付けて汚れを拭き取る方法などである。
【0024】
この中で(3)のように揮発性の低い洗浄液を用いた場合に、ブランケット胴表面の洗浄液残りが顕著になり、ブランケット胴表面の乾燥ステップを設けないと、次回の印刷において機上現像不良を生じる懸念が高くなる。
【0025】
本発明の態様のひとつとして、ブランケット胴の乾燥を行うステップが、ブランケット表面に残存する洗浄液を乾燥した布で拭き取ることにより行われる印刷方法が挙げられる。
【0026】
例えば、印刷機にロール状の不織布の巻出し機構と巻取り機構、および両機構の間にブランケット胴表面に不織布を押し当てる機構を有するブランケット洗浄装置を有している場合は、ロール状の不織布を未使用時は乾燥状態としておき、未使用の不織布を押し当て機構に送り出す際に不織布に洗浄液を供給して含浸させ、洗浄液を含浸した不織布をブランケット胴表面に押し当てることで洗浄ステップを行い、次いで、さらに未使用の不織布を洗浄液を含浸させずに押し当て機構に送り出し、乾燥した不織布をブランケット胴に押し当てることにより乾燥ステップを行うことができる。
【0027】
上記の機構に揮発性の低い洗浄液をあらかじめ含浸させた不織布を用いた洗浄装置(A)を用いる場合には、同様の機構のもうひとつのブランケット洗浄装置(B)を用意し、その(B)には乾燥した不織布をセットして、(A)を用いて洗浄ステップを行い、次いで、(B)を用いて乾燥ステップを行うこともできる。
【0028】
また、本発明の別の態様として、ブランケット胴の乾燥を行うステップが、ブランケット表面に温風もしくは冷風を吹きつけて、残存する洗浄液を乾燥させることにより行われる印刷方法を挙げることができる。
【0029】
この方法は印刷機にブランケット胴表面に当たるような構成で温風または冷風の吹き出し機構を設けることで達成可能である。上述の洗浄ステップの後、ブランケット胴表面を乾燥させるのに適正な温度、風量で温風または冷風を供給すればよい。
【0030】
ブランケット胴の洗浄ステップの後に、ブランケット胴を回転させて相対的に空気の流れ(冷風)を作ってブランケット胴表面を乾燥させることもできるが、印刷の切り替え時間の増大につながるため効率的ではない。
【0031】
本発明のもうひとつの態様は、ブランケット胴の乾燥を行うステップが、印刷を行って、ブランケット表面に残存する洗浄液を印刷用紙に付着もしくは吸収させることにより行われる印刷方法である。
【0032】
この態様の場合には、印刷を行う必要があるため、乾燥ステップ、つまりは印刷ステップには、前のジョブで用いた印刷版が版胴に残っていることが好ましく、ブランケット胴とともに印刷版表面も洗浄されていることが好ましい。印刷版表面の洗浄は、ブランケット胴の洗浄ステップにおいて、版胴とブランケット胴とをニップさせておくことで行うことができる。
【0033】
この態様における乾燥ステップは、印刷版に湿し水およびインクを供給せずに印刷を行うことで行われる。この際、用いる印刷用紙は、ブランケット胴表面全面に接触して、ブランケット胴表面の洗浄液残りを吸収除去できるようなサイズとすることが好ましく、用いる印刷機の最大用紙サイズとすることが好ましい。印刷の際、版胴とブランケット胴とはニップされるため、印刷版表面に残る洗浄液もブランケット胴を介して印刷用紙に吸収される。
【0034】
この態様における乾燥ステップの印刷枚数は1〜50枚であり、1〜10枚とすることがより好ましい。具体的な方法として、特開2002−59089号に記載された方法も用いることができる。
【0035】
本発明はまた、上述のステップ(a)と(b)との間に、印刷版材料の画像形成を行うステップを有する印刷方法を含む。
【0036】
画像形成方法としては、特開2001−232746号に記載されているような、インクジェット方式により画像形成が可能な機上現像タイプの印刷版材料を用いて、インクジェット方式で画像形成を行う方法を用いることもできるが、本発明においては、赤外線レーザーによって画像形成する方法を用いることが好ましい。
【0037】
本発明に関する露光に関し、より具体的には、赤外および/または近赤外領域で発光する、すなわち700〜1500nmの波長範囲で発光するレーザーを使用した走査露光が好ましい。レーザーとしてはガスレーザーを用いてもよいが、近赤外領域で発光する半導体レーザーを使用することが特に好ましい。
【0038】
本発明の走査露光に好適な装置としては、該半導体レーザーを用いてコンピュータからの画像信号に応じて印刷版材料表面に画像を形成可能な装置であればどのような方式の装置であってもよい。
【0039】
本発明に用いられる機上現像タイプの印刷版材料の好ましい態様としては、後述する親水性表面基材上に疎水化前駆体粒子を含有する画像形成層を設けたもの、もしくは、基材上に後述する親水性層を設け、さらにその上に疎水化前駆体粒子を含有する画像形成層を設けたものが挙げられる。
【0040】
本発明に用いることのできる基材としては、印刷版の基板として使用される公知の材料を使用することができる。例えば、金属板、プラスチックフィルム、ポリオレフィン等で処理された紙、上記材料を適宜貼り合わせた複合基材等が挙げられる。基材の厚さとしては、印刷機に取り付け可能であれば特に制限されるものではないが、50〜500μmのものが一般的に取り扱いやすい。
【0041】
金属板としては、鉄、ステンレス、アルミニウム等が挙げられるが、比重と剛性との関係から特にアルミニウムが好ましい。アルミニウム板は、通常その表面に存在する圧延・巻取り時に使用されたオイルを除去するためにアルカリ、酸、溶剤等で脱脂した後に使用される。脱脂処理としては特にアルカリ水溶液による脱脂が好ましい。また、塗布層との接着性を向上させるために、塗布面に易接着処理や下塗り層塗布を行うことが好ましい。例えば、ケイ酸塩やシランカップリング剤等のカップリング剤を含有する液に浸漬するか、液を塗布した後、十分な乾燥を行う方法が挙げられる。陽極酸化処理も易接着処理の一種と考えられ、使用することができる。また、陽極酸化処理と上記浸漬または塗布処理を組み合わせて使用することもできる。また、公知の方法で粗面化されたアルミニウム基材、いわゆるアルミ砂目を、親水性表面を有する基材として使用することもできる。
【0042】
プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、セルロースエステル類等を挙げることができる。特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましい。これらプラスチックフィルムは塗布層との接着性を向上させるために、塗布面に易接着処理や下塗り層塗布を行うことが好ましい。易接着処理としては、コロナ放電処理や火炎処理、プラズマ処理、紫外線照射処理等が挙げられる。また、下塗り層としては、ゼラチンやラテックスを含む層等が挙げられる。下塗り層に、ATOゾルといった導電性素材を含有させることもできる。また、公知のバックコート層が設けられた基材を用いることもできる。
【0043】
また、複合基材としては、上記材料を適宜貼り合わせて使用するが、塗布層を形成する前に貼り合わせても良く、また、塗布層を形成した後に貼り合わせても良く、印刷機に取り付ける直前に貼り合わせても良い。
【0044】
本発明に用いられるアルミニウム基材としては、下記のようなものが好ましい。
【0045】
本発明の印刷版材料に使用されるアルミニウム基板には、純アルミニウムおよびアルミニウム合金よりなる基板が含まれる。アルミニウム合金としては種々のものが使用でき、例えば珪素、銅、マンガン、マグネシウム、クロム、亜鉛、鉛、ビスマス、ニッケル、チタン、ナトリウム、鉄等の金属とアルミニウムの合金が用いられる。
【0046】
アルミニウム基板は、粗面化処理に先立ってアルミニウム表面の圧延油を除去するために脱脂処理を施すことが好ましい。脱脂処理としては、トリクレン、シンナー等の溶剤を用いる脱脂処理、ケシロン、トリエタノール等のエマルジョンを用いたエマルジョン脱脂処理等が用いられる。また、脱脂処理には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等のアルカリの水溶液を用いることもできる。脱脂処理にアルカリ水溶液を用いた場合、上記脱脂処理のみでは除去できない汚れや酸化皮膜も除去することができる。
【0047】
脱脂処理にアルカリ水溶液を用いた場合には、燐酸、硝酸、塩酸、硫酸、クロム酸等の酸、あるいはそれらの混酸に浸漬し中和処理を施すことが好ましい。中和処理の次に電解粗面化を行う場合は、中和に使用する酸を電解粗面化に使用する酸に合わせることが特に好ましい。
【0048】
基板の粗面化としては公知の方法での電解粗面化処理を行うが、その前処理として、適度な処理量の化学的粗面化や機械的粗面化を適宜くみあわせた粗面化処理を行なってもかまわない。
【0049】
化学的粗面化は脱脂処理と同様に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等のアルカリの水溶液を用いる。処理後には燐酸、硝酸、塩酸、硫酸、クロム酸等の酸、あるいはそれらの混酸に浸漬し中和処理を施すことが好ましい。中和処理の次に電解粗面化を行う場合は、中和に使用する酸を電解粗面化に使用する酸に合わせることが特に好ましい。
【0050】
機械的粗面化処理方法は特に限定されないがブラシ研磨、ホーニング研磨が好ましい。
【0051】
ブラシ研磨では、例えば毛径0.2〜1mmのブラシ毛を植毛した円筒状ブラシを回転し、接触面に研磨材を水に分散させたスラリーを供給しながら、基板表面に押しつけて粗面化を行う。
【0052】
ホーニング研磨では、研磨材を水に分散させたスラリーをノズルより圧力をかけ射出し、基板表面に斜めから衝突させて粗面化を行う。
【0053】
研磨材としては、火山灰、アルミナ、炭化珪素等の一般に研磨に使用されるものがあげられ、その粒度は#200〜#3000、好ましくは#400〜#2000、さらに好ましくは#600〜#1000である。
【0054】
機械的に粗面化された基板は、基板の表面に食い込んだ研磨剤、アルミニウム屑等を取り除いたり、ピット形状をコントロールしたりする等のために、酸またはアルカリの水溶液に浸漬して表面をエッチングすることが好ましい。酸としては、例えば硫酸、過硫酸、弗酸、燐酸、硝酸、塩酸等が含まれ、塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等が含まれる。これらの中でもアルカリの水溶液を用いるのが好ましい。
【0055】
機械的粗面化処理に#400よりも細かい粒度の研磨剤を用い、かつ、機械的粗面化処理の後にアルカリ水溶液によるエッチング処理を行うことで、機械的粗面化処理による入り組んだ粗面化構造を滑らかな凹凸の表面とすることができる。このため、本発明の画像形成層を設けた際にも機上現像性を損なうことなく数μm〜数十μmの比較的長波長のうねりを形成することができ、これに後述する電解粗面化処理を加えることで、印刷性能が良好で、かつ、耐刷性向上にも寄与するアルミニウム基板とすることができる。また、電解粗面化処理時の電気量を低減することもでき、コストダウンにもつながる。
【0056】
上記をアルカリの水溶液で浸漬処理を行った場合には、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸等の酸、あるいはそれらの混酸に浸漬し中和処理を施すことが好ましい。中和処理の次に電解粗面化処理を行う場合は、中和に使用する酸を電解粗面化処理に使用する酸に合わせることが特に好ましい。
【0057】
電解粗面化処理は一般に酸性電解液中で交流電流を用いて粗面化を行うものである。酸性電解液は通常の電解粗面化法に用いられるものが使用できるが、塩酸系または硝酸系電解液を用いるのが好ましく、本発明においては塩酸系電解液を用いるのが特に好ましい。
【0058】
電解に使用する電源波形は、矩形波、台形波、のこぎり波等さまざまな波形を用いることができるが、特に正弦波が好ましい。
【0059】
また、特開平10−869号公報に開示されているような分割電解粗面化処理も好ましく用いることができる。
【0060】
硝酸系電解液を用いての電解粗面化において印加される電圧は、1〜50Vが好ましく、5〜30Vが更に好ましい。電流密度(ピーク値)は、10〜200A/dm2が好ましく、20〜150A/dm2が更に好ましい。
【0061】
電気量は全処理工程を合計して、100〜2000C/dm2、好ましくは200〜1500C/dm2、より好ましくは200〜1000C/dm2である。
【0062】
温度は、10〜50℃が好ましく、15〜45℃が更に好ましい。硝酸濃度は0.1〜5質量%が好ましい。
【0063】
電解液には、必要に応じて硝酸塩、塩化物、アミン類、アルデヒド類、燐酸、クロム酸、ホウ酸、酢酸、蓚酸等を加えることが出来る。
【0064】
塩酸系電解液を用いての電解粗面化において印加される電圧は、1〜50Vが好ましく、5〜30Vが更に好ましい。電流密度(ピーク値)は、10〜200A/dm2が好ましく、20〜150A/dm2が更に好ましい。電気量は全処理工程を合計して、100〜2000C/dm2が好ましく、200〜1000C/dm2が更に好ましい。温度は、10〜50℃が好ましく、15〜45℃が更に好ましい。塩酸濃度は0.1〜5質量%が好ましい。
【0065】
電解液には、必要に応じて硝酸塩、塩化物、アミン類、アルデヒド類、燐酸、クロム酸、ホウ酸、酢酸、蓚酸等を加えることが出来る。
【0066】
本発明においては、電解粗面化処理された基板は、表面のスマット等を取り除いたり、ピット形状をコントロールしたりする等のために、酸あるいはアルカリの水溶液に浸漬して表面のエッチングを行う。
【0067】
酸としては、硫酸、過硫酸、弗酸、燐酸、硝酸、塩酸、その他の有機酸等が含まれる。また、アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等が含まれる。
【0068】
酸またはアルカリによるエッチング量としては、0.05g/m2以上、2.0g/m2以下であることが好ましい。0.05g/m2未満では、表面のスマットを十分に除去しきれない懸念があり、また、2.0g/m2を超えると電解粗面化処理により形成された微細なピット構造が滑らかに溶解され過ぎて、耐刷性が低下する懸念がある。
【0069】
アルカリの水溶液で浸漬処理を行った後には、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸等の酸、あるいはそれらの混酸に浸漬し中和処理を施すことが好ましい。中和処理の次に陽極酸化処理を行う場合は、中和に使用する酸を陽極酸化処理に使用する酸に合わせることが特に好ましい。
【0070】
粗面化処理の次に、陽極酸化処理を行う。本発明で用いられる陽極酸化処理の方法には特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。陽極酸化処理により基板上には酸化皮膜が形成される。本発明において、陽極酸化処理には、硫酸および/または燐酸等を10〜50%の濃度で含む水溶液を電解液として、電流密度1〜10A/dm2で電解する方法が好ましく用いられるが、他に米国特許第1,412,768号に記載されている硫酸中で高電流密度で電解する方法や、米国特許第3,511,661号に記載されている燐酸を用いて電解する方法等を用いることができる。
【0071】
陽極酸化処理された基板は、必要に応じ封孔処理を施してもよい。これら封孔処理は、熱水処理、沸騰水処理、水蒸気処理、重クロム酸塩水溶液処理、亜硝酸塩処理、酢酸アンモニウム処理等公知の方法を用いて行うことができる。
【0072】
また、陽極酸化処理された基板は適宜、上記封孔処理以外の表面処理を行うこともできる。表面処理としては、ケイ酸塩処理、リン酸塩処理、各種有機酸処理、PVPA処理といった公知の処理が挙げられる。また、特開平8−314157号に記載の炭酸水素塩を含有する水溶液による処理や、炭酸水素塩を含有する水溶液による処理に続けてクエン酸のような有機酸処理を行ってもよい。
【0073】
本発明に用いられるの印刷版材料の態様のひとつとして、基材上に親水性層を有する態様が挙げられる。親水性層は一層であっても良いし、複数の層から形成されていても良い。親水性層に用いられる素材としては、金属酸化物が好ましい。
【0074】
金属酸化物としては、金属酸化物微粒子を含むことが好ましい。例えば、コロイダルシリカ、アルミナゾル、チタニアゾル、その他の金属酸化物のゾルが挙げられる。該金属酸化物微粒子の形態としては、球状、針状、羽毛状、その他の何れの形態でも良い。平均粒径としては、3〜100nmであることが好ましく、平均粒径が異なる数種の金属酸化物微粒子を併用することもできる。又、粒子表面に表面処理がなされていても良い。
【0075】
上記金属酸化物微粒子はその造膜性を利用して結合剤としての使用が可能である。有機の結合剤を用いるよりも親水性の低下が少なく、親水性層への使用に適している。
【0076】
本発明には、上記の中でも特にコロイダルシリカが好ましく使用できる。コロイダルシリカは比較的低温の乾燥条件であっても造膜性が高いという利点があり、炭素原子を含まない素材が91質量%以上というような層においても良好な強度を得ることができる。
【0077】
上記コロイダルシリカとしては、後述するネックレス状コロイダルシリカ、平均粒径20nm以下の微粒子コロイダルシリカを含むことが好ましく、さらに、コロイダルシリカはコロイド溶液としてアルカリ性を呈することが好ましい。
【0078】
本発明に用いられるネックレス状コロイダルシリカとは1次粒子径がnmのオーダーである球状シリカの水分散系の総称である。本発明に用いられるネックレス状コロイダルシリカとは1次粒粒子径が10〜50nmの球状コロイダルシリカが50〜400nmの長さに結合した「パールネックレス状」のコロイダルシリカを意味する。パールネックレス状(即ち真珠ネックレス状)とは、コロイダルシリカのシリカ粒子が連なって結合した状態のイメージが真珠ネックレスの様な形状をしていることを意味している。ネックレス状コロイダルシリカを構成するシリカ粒子同士の結合は、シリカ粒子表面に存在する−SiOH基が脱水結合した−Si−O−Si−と推定される。ネックレス状のコロイダルシリカとしては、具体的には日産化学工業(株)製の「スノーテックス−PS」シリーズなどが挙げられる。
【0079】
製品名としては「スノーテックス−PS−S(連結した状態の平均粒子径は110nm程度)」、「スノーテックス−PS−M(連結した状態の平均粒子径は120nm程度)」及び「スノーテックス−PS−L(連結した状態の平均粒子径は170nm程度)」があり、これらにそれぞれ対応する酸性の製品が「スノーテックス−PS−S−O」、「スノーテックス−PS−M−O」及び「スノーテックス−PS−L−O」である。
【0080】
ネックレス状コロイダルシリカを添加することにより、層の多孔性を確保しつつ、強度を維持することが可能となり、層の多孔質化材として好ましく使用できる。
【0081】
これらの中でも、アルカリ性である「スノーテックスPS−S」、「スノーテックスPS−M」、「スノーテックスPS−L」を用いると、親水性層の強度が向上し、また、印刷枚数が多い場合でも地汚れの発生が抑制され、特に好ましい。
【0082】
また、コロイダルシリカは粒子径が小さいほど結合力が強くなることが知られており、本発明には平均粒径が20nm以下であるコロイダルシリカを用いることが好ましく、3〜15nmであることが更に好ましい。又、前述のようにコロイダルシリカの中ではアルカリ性のものが地汚れ発生を抑制する効果が高いため、アルカリ性のコロイダルシリカを使用することが特に好ましい。
【0083】
平均粒径がこの範囲にあるアルカリ性のコロイダルシリカとしては日産化学社製の「スノーテックス−20(粒子径10〜20nm)」、「スノーテックス−30(粒子径10〜20nm)」、「スノーテックス−40(粒子径10〜20nm)」、「スノーテックス−N(粒子径10〜20nm)」、「スノーテックス−S(粒子径8〜11nm)」、「スノーテックス−XS(粒子径4〜6nm)」が挙げられる。
【0084】
平均粒径が20nm以下であるコロイダルシリカは前述のネックレス状コロイダルシリカと併用することで、層の多孔質性を維持しながら、強度をさらに向上させることが可能となり、特に好ましい。
【0085】
平均粒径が20nm以下であるコロイダルシリカとネックレス状コロイダルシリカの比率は95:5〜5:95が好ましく、70:30〜20:80がより好ましく、60:40〜30:70が更に好ましい。
【0086】
本発明の印刷版材料の親水性層は金属酸化物として多孔質金属酸化物粒子を含むことが好ましい。多孔質金属酸化物粒子としては、後述する多孔質シリカ又は多孔質アルミノシリケート粒子もしくはゼオライト粒子を好ましく用いることができる。
【0087】
多孔質シリカ粒子は一般に湿式法又は乾式法により製造される。湿式法ではケイ酸塩水溶液を中和して得られるゲルを乾燥、粉砕するか、中和して析出した沈降物を粉砕することで得ることができる。乾式法では四塩化珪素を水素と酸素と共に燃焼し、シリカを析出することで得られる。これらの粒子は製造条件の調整により多孔性や粒径を制御することが可能である。
【0088】
多孔質シリカ粒子としては、湿式法のゲルから得られるものが特に好ましい。多孔質アルミノシリケート粒子は例えば特開平10−71764号に記載されている方法により製造される。即ち、アルミニウムアルコキシドと珪素アルコキシドを主成分として加水分解法により合成された非晶質な複合体粒子である。粒子中のアルミナとシリカの比率は1:4〜4:1の範囲で合成することが可能である。又、製造時にその他の金属のアルコキシドを添加して3成分以上の複合体粒子として製造したものも本発明に使用できる。これらの複合体粒子も製造条件の調整により多孔性や粒径を制御することが可能である。
【0089】
粒子の多孔性としては、分散前の状態で細孔容積で1.0ml/g以上であることが好ましく、1.2ml/g以上であることがより好ましく、1.8〜2.5ml/g以下であることが更に好ましい。
【0090】
細孔容積は塗膜の保水性と密接に関連しており、細孔容積が大きいほど保水性が良好となって印刷時に汚れにくく、水量ラチチュードも広くなるが、2.5ml/gよりも大きくなると粒子自体が非常に脆くなるため塗膜の耐久性が低下する。細孔容積が1.0ml/g未満の場合には、印刷時の汚れにくさ、水量ラチチュードの広さが不充分となる。
【0091】
粒径としては、親水性層に含有されている状態で(例えば分散時に破砕された場合も含めて)、実質的に1μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることが更に好ましい。不必要に粗大な粒子が存在すると親水性層表面に多孔質で急峻な突起が形成され、突起周囲にインクが残りやすくなって非画線部汚れやブランケット汚れが劣化する場合がある。
【0092】
ゼオライトは結晶性のアルミノケイ酸塩であり、細孔径が0.3〜1nmの規則正しい三次元網目構造の空隙を有する多孔質体である。天然及び合成ゼオライトを合わせた一般式は、次のように表される。
【0093】
(M1、M2 1/2)m(AlmSinO2 (m+n))・xH2O
ここで、M1、M2は交換性のカチオンであって、M1はLi+、Na+、K+、Tl+、Me4N+(TMA)、Et4N+(TEA)、Pr4N+(TPA)、C7H15N2+、C8H16N+等であり、M2はCa2+、Mg2+、Ba2+、Sr2+、C8H18N2 2+等である。又、n≧mであり、m/nの値つまりはAl/Si比率は1以下となる。Al/Si比率が高いほど交換性カチオンの量が多く含まれるため極性が高く、従って親水性も高い。好ましいAl/Si比率は0.4〜1.0であり、更に好ましくは0.8〜1.0である。xは整数を表す。
【0094】
本発明で使用するゼオライト粒子としては、Al/Si比率が安定しており、又粒径分布も比較的シャープである合成ゼオライトが好ましく、例えばゼオライトA:Na12(Al12Si12O48)・27H2O;Al/Si比率1.0、ゼオライトX:Na86(Al86Si106O384)・264H2O;Al/Si比率0.811、ゼオライトY:Na56(Al56Si136O384)・250H2O;Al/Si比率0.412等が挙げられる。
【0095】
Al/Si比率が0.4〜1.0である親水性の高い多孔質粒子を含有することで親水性層自体の親水性も大きく向上し、印刷時に汚れにくく、水量ラチチュードも広くなる。又、指紋跡の汚れも大きく改善される。Al/Si比率が0.4未満では親水性が不充分であり、上記性能の改善効果が小さくなる。
【0096】
多孔質無機粒子の粒径としては、親水性層に含有されている状態で、実質的に1μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることが更に好ましい。
【0097】
また、本発明の印刷版材料の親水性層は金属酸化物として、層状粘土鉱物粒子を含んでもよい。該層状鉱物粒子としては、カオリナイト、ハロイサイト、タルク、スメクタイト(モンモリロナイト、バイデライト、ヘクトライト、サボナイト等)、バーミキュライト、マイカ(雲母)、クロライトといった粘土鉱物及び、ハイドロタルサイト、層状ポリケイ酸塩(カネマイト、マカタイト、アイアライト、マガディアイト、ケニヤアイト等)等が挙げられる。中でも、単位層(ユニットレイヤー)の電荷密度が高いほど極性が高く、親水性も高いと考えられる。好ましい電荷密度としては0.25以上、更に好ましくは0.6以上である。このような電荷密度を有する層状鉱物としては、スメクタイト(電荷密度0.25〜0.6;陰電荷)、バーミキュライト(電荷密度0.6〜0.9;陰電荷)等が挙げられる。特に、合成フッ素雲母は粒径等安定した品質のものを入手することができ好ましい。又、合成フッ素雲母の中でも、膨潤性であるものが好ましく、自由膨潤であるものが更に好ましい。
【0098】
又、上記の層状鉱物のインターカレーション化合物(ピラードクリスタル等)や、イオン交換処理を施したもの、表面処理(シランカップリング処理、有機バインダとの複合化処理等)を施したものも使用することができる。
【0099】
平板状層状鉱物粒子のサイズとしては、層中に含有されている状態で(膨潤工程、分散剥離工程を経た場合も含めて)、平均粒径(粒子の最大長)が20μm以下であり、又平均アスペクト比(粒子の最大長/粒子の厚さ)が20以上の薄層状であることが好ましく、平均粒径が5μm以下であり、平均アスペクト比が50以上であることが更に好ましく、平均粒径が1μm以下であり、平均アスペクト比が50以上であることが更に好ましい。粒子サイズが上記範囲にある場合、薄層状粒子の特徴である平面方向の連続性及び柔軟性が塗膜に付与され、クラックが入りにくく乾燥状態で強靭な塗膜とすることができる。また、粒子物を多く含有する塗布液においては、層状粘土鉱物の増粘効果によって、粒子物の沈降を抑制することができる。粒子径が上記範囲をはずれると、引っかきによるキズ抑制効果が低下する場合がある。又、アスペクト比が上記範囲以下である場合、柔軟性が不充分となり、同様に引っかきによるキズ抑制効果が低下する場合がある。
【0100】
層状鉱物粒子の含有量としては、層全体の0.1〜30質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましい。特に膨潤性合成フッ素雲母やスメクタイトは少量の添加でも効果が見られるため好ましい。層状鉱物粒子は、塗布液に粉体で添加してもよいが、簡便な調液方法(メディア分散等の分散工程を必要としない)でも良好な分散度を得るために、層状鉱物粒子を単独で水に膨潤させたゲルを作製した後、塗布液に添加することが好ましい。
【0101】
本発明の親水性層にはその他の添加素材として、ケイ酸塩水溶液も使用することができる。ケイ酸Na、ケイ酸K、ケイ酸Liといったアルカリ金属ケイ酸塩が好ましく、そのSiO2/M2O比率はケイ酸塩を添加した際の塗布液全体のpHが13を超えない範囲となるように選択することが無機粒子の溶解を防止する上で好ましい。
【0102】
また、金属アルコキシドを用いた、いわゆるゾル−ゲル法による無機ポリマーもしくは有機−無機ハイブリッドポリマーも使用することができる。ゾル−ゲル法による無機ポリマーもしくは有機−無機ハイブリッドポリマーの形成については、例えば「ゾル−ゲル法の応用」(作花済夫著/アグネ承風社発行)に記載されているか、又は本書に引用されている文献に記載されている公知の方法を使用することができる。
【0103】
本発明は、親水性層中には親水性有機樹脂を含有させてもよい。親水性有機樹脂としては、例えばポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体ラテックス、ビニル系重合体ラテックス、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の樹脂が挙げられる。
【0104】
又、カチオン性樹脂を含有しても良く、カチオン性樹脂としては、ポリエチレンアミン、ポリプロピレンポリアミン等のようなポリアルキレンポリアミン類又はその誘導体、第3級アミノ基や第4級アンモニウム基を有するアクリル樹脂、ジアクリルアミン等が挙げられる。カチオン性樹脂は微粒子状の形態で添加しても良い。これは、例えば特開平6−161101号に記載のカチオン性マイクロゲルが挙げられる。
【0105】
本発明のより好ましい態様としては、親水性層中に含有される親水性有機樹脂は水溶性であり、かつ、少なくともその一部が水溶性の状態のまま、水に溶出可能な状態で存在することが挙げられる。水溶性の素材であっても、架橋剤等によって架橋し、水に不溶の状態になると、その親水性は低下して印刷性能を劣化させる懸念がある。
【0106】
本発明の親水性層に含有される炭素原子を含む水溶性素材としては、糖類が好ましい。親水性層に糖類を含有させることにより、後述する画像形成能を有する機能層との組み合わせにおいて、画像形成の解像度を向上させたり、耐刷性を向上させたりする効果が得られる。
【0107】
糖類としては、後に詳細に説明するオリゴ糖を用いることもできるが、特に多糖類を用いることが好ましい。
【0108】
多糖類としては、デンプン類、セルロース類、ポリウロン酸、プルランなどが使用可能であるが、特にメチルセルロース塩、カルボキシメチルセルロース塩、ヒドロキシエチルセルロース塩等のセルロース誘導体が好ましく、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩やアンモニウム塩がより好ましい。
【0109】
これは、親水性層に多糖類を含有させることにより、親水性層の表面形状を好ましい状態形成する効果が得られるためである。
【0110】
親水性層の表面は、PS版のアルミ砂目のように0.1〜50μmピッチの凹凸構造を有することが好ましく、この凹凸により保水性や画像部の保持性が向上する。
【0111】
このような凹凸構造は、親水性層に適切な粒径のフィラーを適切な量含有させて形成することも可能であるが、親水性層の塗布液に前述のアルカリ性コロイダルシリカと前述の水溶性多糖類とを含有させ、親水性層を塗布、乾燥させる際に相分離を生じさせて形成することがより良好な印刷性能を有する構造を得ることができ、好ましい。
【0112】
凹凸構造の形態(ピッチ及び表面粗さなど)はアルカリ性コロイダルシリカの種類及び添加量、水溶性多糖類の種類及び添加量、その他添加材の種類及び添加量、塗布液の固形分濃度、ウエット膜厚、乾燥条件等で適宜コントロールすることが可能である。
【0113】
凹凸構造のピッチとしては0.2〜30μmであることがより好ましく、0.5〜20μmであることが更に好ましい。又、ピッチの大きな凹凸構造の上に、それよりもピッチの小さい凹凸構造が形成されているような多重構造の凹凸構造が形成されていてもよい。
【0114】
表面粗さとしては、Raで100〜1000nmが好ましく、150〜600nmがより好ましい。
【0115】
また、親水性層の膜厚としては、0.01〜50μmであり、好ましくは0.2〜10μmであり、更に好ましくは0.5〜3μmである。
【0116】
また、本発明の親水性層(の塗布液)には、塗布性改善等の目的で水溶性の界面活性剤を含有させることができる。Si系、又はF系等の界面活性剤を使用することができるが、特にSi元素を含む界面活性剤を使用することが印刷汚れを生じる懸念がなく、好ましい。該界面活性剤の含有量は親水性層全体(塗布液としては固形分)の0.01〜3質量%が好ましく、0.03〜1質量%が更に好ましい。
【0117】
また、本発明の親水性層はリン酸塩を含むことができる。本発明では親水性層の塗布液がアルカリ性であることが好ましいため、リン酸塩としてはリン酸三ナトリウムやリン酸水素二ナトリウムとして添加することが好ましい。リン酸塩を添加することで、印刷時の網の目開きを改善する効果が得られる。リン酸塩の添加量としては、水和物を除いた有効量として、0.1〜5質量%が好ましく、0.5〜2質量%が更に好ましい。
【0118】
光熱変換素材としては下記のような素材を挙げることができる。
一般的な赤外吸収色素であるシアニン系色素、クロコニウム系色素、ポリメチン系色素、アズレニウム系色素、スクワリウム系色素、チオピリリウム系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素などの有機化合物、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、アゾ系、チオアミド系、ジチオール系、インドアニリン系の有機金属錯体などが挙げられる。具体的には、特開昭63−139191号、特開昭64−33547号、特開平1−160683号、特開平1−280750号、特開平1−293342号、特開平2−2074号、特開平3−26593号、特開平3−30991号、特開平3−34891号、特開平3−36093号、特開平3−36094号、特開平3−36095号、特開平3−42281号、特開平3−97589号、特開平3−103476号等に記載の化合物が挙げられる。これらは一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0119】
また、特開平11−240270号、特開平11−265062号、特開2000−309174号、特開2002−49147号、特開2001−162965号、特開2002−144750号、特開2001−219667号に記載の化合物も好ましく用いることができる。
【0120】
顔料としては、カーボン、グラファイト、金属、金属酸化物等が挙げられる。カーボンとしては特にファーネスブラックやアセチレンブラックの使用が好ましい。粒度(d50)は100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることが更に好ましい。
【0121】
グラファイトとしては粒径が0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下の微粒子を使用することができる。
【0122】
金属としては粒径が0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下の微粒子であれば何れの金属であっても使用することができる。形状としては球状、片状、針状等何れの形状でも良い。特にコロイド状金属微粒子(Ag、Au等)が好ましい。
【0123】
金属酸化物としては、可視光域で黒色を呈している素材、または素材自体が導電性を有するか、半導体であるような素材を使用することができる。
【0124】
前者としては、黒色酸化鉄や二種以上の金属を含有する黒色複合金属酸化物が挙げられる。
【0125】
後者とては、例えばSbをドープしたSnO2(ATO)、Snを添加したIn2O3(ITO)、TiO2、TiO2を還元したTiO(酸化窒化チタン、一般的にはチタンブラック)などが挙げられる。又、これらの金属酸化物で芯材(BaSO4、TiO2、9Al2O3・2B2O、K2O・nTiO2等)を被覆したものも使用することができる。これらの粒径は、0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下である。これらの光熱変換素材のうち黒色酸化鉄や二種以上の金属を含有する黒色複合金属酸化物がより好ましい素材として挙げられる。
【0126】
黒色酸化鉄(Fe3O4)としては、平均粒子径0.01〜1μmであり、針状比(長軸径/短軸径)が1〜1.5の範囲の粒子であることが好ましく、実質的に球状(針状比1)であるか、もしくは、八面体形状(針状比約1.4)を有していることが好ましい。
【0127】
このような黒色酸化鉄粒子としては、例えば、チタン工業社製のTAROXシリーズが挙げられる。球状粒子としては、BL−100(粒径0.2〜0.6μm)、BL−500(粒径0.3〜1.0μm)等を好ましく用いることができる。また、八面体形状粒子としては、ABL−203(粒径0.4〜0.5μm)、ABL−204(粒径0.3〜0.4μm)、ABL−205(粒径0.2〜0.3μm)、ABL−207(粒径0.2μm)等を好ましく用いることができる。
【0128】
さらに、これらの粒子表面をSiO2等の無機物でコーティングした粒子も好ましく用いることができ、そのような粒子としては、SiO2でコーティングされた球状粒子:BL−200(粒径0.2〜0.3μm)、八面体形状粒子:ABL−207A(粒径0.2μm)が挙げられる。
【0129】
黒色複合金属酸化物としては、具体的には、Al、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sb、Baから選ばれる二種以上の金属からなる複合金属酸化物である。これらは、特開平8−27393号公報、特開平9−25126号公報、特開平9−237570号公報、特開平9−241529号公報、特開平10−231441号公報等に開示されている方法により製造することができる。
【0130】
本発明に用いる複合金属酸化物としては、特にCu−Cr−Mn系またはCu−Fe−Mn系の複合金属酸化物であることが好ましい。Cu−Cr−Mn系の場合には、6価クロムの溶出を低減させるために、特開平8−27393号公報に開示されている処理を施すことが好ましい。これらの複合金属酸化物は添加量に対する着色、つまり、光熱変換効率が良好である。
【0131】
これらの複合金属酸化物は平均1次粒子径が1μm以下であることが好ましく、平均1次粒子径が0.01〜0.5μmの範囲にあることがより好ましい。平均1次粒子径が1μm以下とすることで、添加量に対する光熱変換能がより良好となり、平均1次粒子径が0.01〜0.5μmの範囲とすることで添加量に対する光熱変換能がより良好となる。ただし、添加量に対する光熱変換能は、粒子の分散度にも大きく影響を受け、分散が良好であるほど良好となる。したがって、これらの複合金属酸化物粒子は、層の塗布液に添加する前に、別途公知の方法により分散して、分散液(ペースト)としておくことが好ましい。平均1次粒子径が0.01未満となると分散が困難となるため好ましくない。分散には適宜分散剤を使用することができる。分散剤の添加量は複合金属酸化物粒子に対して0.01〜5質量%が好ましく、0.1〜2質量%がより好ましい。
【0132】
本発明に用いられる印刷版材料の好ましい態様として、親水性表面基材もしくは親水性層上に機上現像可能な画像形成層を有する態様が挙げられる。画像形成層は、赤外線レーザーによる露光によって発生する熱によって画像形成するものであることが好ましい。
【0133】
本発明の画像形成層の好ましい態様のひとつとして、画像形成層が疎水化前駆体を含有する態様が挙げられる。
【0134】
疎水化前駆体としては、熱によって親水性(水溶性または水膨潤性)から疎水性へと変化するポリマーを用いることができる。具体的には、例えば、特開2000−56449号に開示されている、アリールジアゾスルホネート単位を含有するポリマーを挙げることができる。
【0135】
が、本発明においては、疎水化前駆体としては、熱可塑性疎水性粒子、もしくは、疎水性物質を内包するマイクロカプセルを用いることが好ましい。
【0136】
熱可塑性微粒子としては、後述する熱溶融性微粒子および熱融着性微粒子を挙げることができる。
【0137】
本発明に用いられる熱溶融性微粒子とは、熱可塑性素材の中でも特に溶融した際の粘度が低く、一般的にワックスとして分類される素材で形成された微粒子である。物性としては、軟化点40℃以上120℃以下、融点60℃以上150℃以下であることが好ましく、軟化点40℃以上100℃以下、融点60℃以上120℃以下であることが更に好ましい。融点が60℃未満では保存性が問題であり、融点が300℃よりも高い場合はインク着肉感度が低下する。
【0138】
使用可能な素材としては、パラフィン、ポリオレフィン、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、脂肪酸系ワックス等が挙げられる。これらは分子量800から10000程度のものである。又、乳化しやすくするためにこれらのワックスを酸化し、水酸基、エステル基、カルボキシル基、アルデヒド基、ペルオキシド基などの極性基を導入することもできる。更には、軟化点を下げたり作業性を向上させるためにこれらのワックスにステアロアミド、リノレンアミド、ラウリルアミド、ミリステルアミド、硬化牛脂肪酸アミド、パルミトアミド、オレイン酸アミド、米糖脂肪酸アミド、ヤシ脂肪酸アミド又はこれらの脂肪酸アミドのメチロール化物、メチレンビスステラロアミド、エチレンビスステラロアミドなどを添加することも可能である。又、クマロン−インデン樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、アクリル樹脂、アイオノマー、これらの樹脂の共重合体も使用することができる。
【0139】
これらの中でもポリエチレン、マイクロクリスタリン、脂肪酸エステル、脂肪酸の何れかを含有することが好ましい。これらの素材は融点が比較的低く、溶融粘度も低いため、高感度の画像形成を行うことができる。又、これらの素材は潤滑性を有するため、印刷版材料の表面に剪断力が加えられた際のダメージが低減し、擦りキズ等による印刷汚れ耐性が向上する。
【0140】
又、熱溶融性微粒子は水に分散可能であることが好ましく、その平均粒径は0.01〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜3μmである。平均粒径が0.01μmよりも小さい場合、熱溶融性微粒子を含有する層の塗布液を後述する多孔質な親水性層上に塗布した際に、熱溶融性微粒子が親水性層の細孔中に入り込んだり、親水性層表面の微細な凹凸の隙間に入り込んだりしやすくなり、機上現像が不十分になって、地汚れの懸念が生じる。熱溶融性微粒子の平均粒径が10μmよりも大きい場合には、解像度が低下する。
【0141】
又、熱溶融性微粒子は内部と表層との組成が連続的に変化していたり、もしくは異なる素材で被覆されていてもよい。
【0142】
被覆方法は公知のマイクロカプセル形成方法、ゾル−ゲル法等が使用できる。層中の熱溶融性微粒子の含有量としては、層全体の1〜90質量%が好ましく、5〜80質量%がさらに好ましい。
【0143】
本発明の熱融着性微粒子としては、熱可塑性疎水性高分子重合体微粒子が挙げられ、高分子重合体微粒子の軟化温度に特定の上限はないが、温度は高分子重合体微粒子の分解温度より低いことが好ましい。高分子重合体の質量平均分子量(Mw)は10,000〜1,000,000の範囲であることが好ましい。
【0144】
高分子重合体微粒子を構成する高分子重合体の具体例としては、例えば、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレン−ブタジエン共重合体等のジエン(共)重合体類、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等の合成ゴム類、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート−(2−エチルヘキシルアクリレート)共重合体、メチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体、メチルアクリレート−(N−メチロールアクリルアミド)共重合体、ポリアクリロニトリル等の(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸(共)重合体、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル−プロピオン酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−エチレン共重合体等のビニルエステル(共)重合体、酢酸ビニル−(2−エチルヘキシルアクリレート)共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン等及びそれらの共重合体が挙げられる。これらのうち、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸(共)重合体、ビニルエステル(共)重合体、ポリスチレン、合成ゴム類が好ましく用いられる。
【0145】
高分子重合体微粒子は乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、気相重合法等、公知の何れの方法で重合された高分子重合体からなるものでもよい。溶液重合法又は気相重合法で重合された高分子重合体を微粒子化する方法としては、高分子重合体の有機溶媒に溶解液を不活性ガス中に噴霧、乾燥して微粒子化する方法、高分子重合体を水に非混和性の有機溶媒に溶解し、この溶液を水又は水性媒体に分散、有機溶媒を留去して微粒子化する方法等が挙げられる。又、何れの方法においても、必要に応じ重合あるいは微粒子化の際に分散剤、安定剤として、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール等の界面活性剤やポリビニルアルコール等の水溶性樹脂を用いてもよい。
【0146】
又、熱融着性微粒子は水に分散可能であることが好ましく、その平均粒径は0.01〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜3μmである。平均粒径が0.01μmよりも小さい場合、熱融着性微粒子を含有する層の塗布液を多孔質な親水性層上に塗布した際に、熱融着性微粒子が親水性層の細孔中に入り込んだり、親水性層表面の微細な凹凸の隙間に入り込んだりしやすくなり、機上現像が不十分になって、地汚れの懸念が生じる。熱融着性微粒子の平均粒径が10μmよりも大きい場合には、解像度が低下する。
【0147】
又、熱融着性微粒子は内部と表層との組成が連続的に変化していたり、もしくは異なる素材で被覆されていてもよい。
【0148】
被覆方法は公知のマイクロカプセル形成方法、ゾル−ゲル法等が使用できる。層中の熱可塑性微粒子の含有量としては、層全体の1〜90質量%が好ましく、5〜80質量%がさらに好ましい。
【0149】
本発明の印刷版材料に用いられるマイクロカプセルとしては、例えば特開2002−2135号や特開2002−19317号に記載されている疎水性素材を内包するマイクロカプセルを挙げることができる。
【0150】
マイクロカプセルは平均径で0.1〜10μmであることが好ましく、0.3〜5μmであることがより好ましく、0.5〜3μmであることがさらに好ましい。
【0151】
マイクロカプセルの壁の厚さは径の1/100〜1/5であることが好ましく、1/50〜1/10であることがより好ましい。
マイクロカプセルの含有量は画像形成層全体の5〜100質量%であり、20〜95質量%であることが好ましく、40〜90質量%であることがさらに好ましい。
【0152】
マイクロカプセルの壁材となる素材、およびマイクロカプセルの製造方法は公知の素材および方法を用いることができる。たとえば、「新版マイクロカプセルその製法・性質・応用」(近藤保、小石真純著/三共出版株式会社発行)に記載されているか、引用されている文献に記載されている公知の素材および方法を用いることができる。
【0153】
本発明に用いられる画像形成層にはさらに以下のような素材を含有させることができる。
【0154】
画像形成層には上述の光熱変換素材を含有させることができる。画像形成層は一部が機上現像されるため、可視光での着色の少ない素材を用いることが好ましく、色素を用いることが好ましい。
【0155】
画像形成層には水溶性樹脂、水分散性樹脂を含有させることができる。水溶性樹脂、水分散性樹脂としては、オリゴ糖、多糖類、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体ラテックス、ビニル系重合体ラテックス、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の樹脂が挙げられる。これらのなかでは、オリゴ糖、多糖類、ポリアクリル酸が好ましい。
【0156】
オリゴ糖としては、ラフィノース、トレハロース、マルトース、ガラクトース、スクロース、ラクトースといったものが挙げられるが、特にトレハロースが好ましい。
【0157】
多糖類としては、デンプン類、セルロース類、ポリウロン酸、プルランなどが使用可能であるが、特にメチルセルロース塩、カルボキシメチルセルロース塩、ヒドロキシエチルセルロース塩等のセルロース誘導体が好ましく、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩やアンモニウム塩がより好ましい。
【0158】
ポリアクリル酸としては、分子量3000〜100万であることが好ましく、5000〜50万であることがより好ましい。
【0159】
また、画像形成層には、水溶性の界面活性剤を含有させることができる。Si系、又はF系等の界面活性剤を使用することができるが、特にSi元素を含む界面活性剤を使用することが印刷汚れを生じる懸念がなく、好ましい。該界面活性剤の含有量は親水性層全体(塗布液としては固形分)の0.01〜3質量%が好ましく、0.03〜1質量%が更に好ましい。
【0160】
さらに、pH調整のための酸(リン酸、酢酸等)またはアルカリ(水酸化ナトリウム、ケイ酸塩、リン酸塩等)を含有していても良い。
【0161】
また、画像形成層の付き量としては、0.01〜10g/m2であり、好ましくは0.1〜3g/m2であり、さらに好ましくは0.2〜2g/m2である。
【0162】
画像形成層の上層として保護層を設けることもできる。保護層に用いる素材としては、上述の水溶性樹脂、水分散性樹脂を好ましく用いることができる。また、特開2002−19318号や特開2002−86948号に記載されている親水性オーバーコート層も好ましく用いることができる。
【0163】
保護層の付き量としては、0.01〜10g/m2であり、好ましくは0.1〜3g/m2であり、さらに好ましくは0.2〜2g/m2である。
【0164】
本発明の画像形成層は、赤外線レーザー露光部が親油性の画像部となり、未露光部の層が除去されて非画像部となる。未露光部の除去は、水洗によっても可能であるが、印刷機上で湿し水およびまたはインクを用いて除去する、いわゆる機上現像することも十分に可能である。
【0165】
印刷機上での画像形成層の未露光部の除去は、版胴を回転させながら水付けローラーやインクローラーを接触させて行うことができるが、下記に挙げる例のような、もしくは、それ以外の種々のシークエンスによって行うことができる。また、その際には、印刷時に必要な湿し水水量に対して、水量を増加させたり、減少させたりといった水量調整を行ってもよく、水量調整を多段階に分けて、もしくは、無段階に変化させて行ってもよい。
【0166】
(1)印刷開始のシークエンスとして、水付けローラーを接触させて版胴を1回転〜数十回転回転させ、次いで、インクローラーを接触させて版胴を1回転〜数十回転回転させ、次いで、印刷を開始する。
【0167】
(2)印刷開始のシークエンスとして、インクローラーを接触させて版胴を1回転〜数十回転回転させ、次いで、水付けローラーを接触させて版胴を1回転〜数十回転回転させ、次いで、印刷を開始する。
【0168】
(3)印刷開始のシークエンスとして、水付けローラーとインクローラーとを実質的に同時に接触させて版胴を1回転〜数十回転回転させ、次いで、印刷を開始する。
【0169】
【実施例】
基材1の作製
厚さ0.24mmのアルミニウム板(材質1050、調質H16)を、50℃の1質量%水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬し、溶解量が2g/m2になるように溶解処理を行い水洗した後、25℃の0.1質量%塩酸水溶液中に30秒間浸漬し、中和処理した後水洗した。
【0170】
次いでこのアルミニウム板を、塩酸10g/L、アルミを0.5g/L含有する電解液により、正弦波の交流を用いて、ピーク電流密度が60A/dm2の条件で電解粗面化処理を行った。この際の電極と試料表面との距離は10mmとした。電解粗面化処理は12回に分割して行い、一回の処理電気量(陽極時)を40C/dm2とし、合計で480C/dm2の処理電気量(陽極時)とした。また、各回の粗面化処理の間に4秒間の休止時間を設けた。
【0171】
電解粗面化後は、50℃に保たれた1質量%水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬して、粗面化された面のスマットを含めた溶解量が0.5g/m2になるようにエッチングし、水洗し、次いで25℃に保たれた10%硫酸水溶液中に10秒間浸漬し、中和処理した後水洗した。次いで、20%硫酸水溶液中で、20Vの定電圧条件で電気量が150C/dm2となるように陽極酸化処理を行い、さらに水洗した。
【0172】
次いで、水洗後の表面水をスクイーズした後、70℃に保たれた0.5質量%のリン酸水素二Na水溶液に30秒間浸漬し、水洗を行った後に80℃で5分間乾燥し、基材1を得た。基材1の表面粗さをWYKO社製RST Plusを使用し、40倍で測定したところ、Raは0.55μmであった。
【0173】
基材2の作製
水系塗布用の下引き層が設けられた厚さ188μmのPETフィルム(HS74:帝人社製)を基材2として用いた。
【0174】
実施例1
印刷版材料1の作製
基材1上に、下記組成の画像形成層(a)を乾燥付量が0.7g/m2となるようにワイヤーバーを用いて塗布し、55℃で3分間乾燥した。次いで、40℃で48時間のエイジングを行って、印刷版材料1を得た。
【0175】
【表1】
【0176】
印刷版材料2の作製
下記の組成の顔料分散ペースト(A)を作製した。純水中に各素材を攪拌しながら添加し、次いで、ホモジナイザで10000rpm、5分間の条件で混合し、固形分30質量%のペーストとした。
【0177】
【表2】
【0178】
下記の各素材を混合攪拌後、濾過して、固形分20質量%の下層塗布液を作製した。
【0179】
【表3】
【0180】
次に、下記素材をホモジナイザを用いて、10000rpmで10分間攪拌混合し、濾過して、固形分10質量%の親水性層塗布液を作製した。
【0181】
【表4】
【0182】
基材2の下引き層上に、下層塗布液を、乾燥質量が2.5g/m2となるようにワイヤーバーを用いて塗布し、100℃で3分間乾燥した。
【0183】
次いで、下層の上に、親水性層塗布液を、乾燥質量が0.6g/m2となるようにワイヤーバーを用いて塗布し、100℃で3分間乾燥した。親水性層までを形成した段階で、60℃24時間のエイジングを行った。
【0184】
次に、親水性層上に下記組成の画像形成層(b)をワイヤーバーを用いて乾燥付量が0.6g/m2となるように塗布し、55℃で3分間乾燥した。さらに、55℃24時間のエイジングを行い、印刷版材料2を得た。
【0185】
【表5】
【0186】
画像形成
印刷版材料を露光ドラムに巻付け固定した。露光には波長830nm、スポット径約18μmのレーザービームを用い、露光エネルギーを300mJ/cm2とした条件で、2400dpi(dpiとは1インチ、即ち2.54cm当たりのドット数を表す)、175線で画像を形成した。露光した画像はベタ画像と1〜99%の網点画像と2400dpiのラインアンドスペース細線画像とを含むものである。
【0187】
印刷方法
印刷機:三菱重工業(株)製DAIYA1F−1を用いて、コート紙、湿し水:アストロマーク3(日研化学研究所製)2質量%、インク(東洋インク社製トーヨーキングハイユニティM紅)を使用して印刷を行った。
【0188】
印刷前準備として、ブランケット胴の洗浄ステップを行った。この際、版胴にはダミー版として全面を非画像部(砂目)としたPS版を取り付けた。ブランケット胴の洗浄には、ボールドウィン社製の胴洗浄装置:インパクトに用いられる、あらかじめ揮発性の低い洗浄液が含浸されている不織布ロール(スーパーパック)を用いた。ブランケット胴をゆっくり回転させながら、この不織布をバー部材でブランケット胴表面に押し当て、15cm送り出しながら使用して3分間の洗浄を行った。
【0189】
次いで、下記のいずれかの乾燥ステップを行った。
乾燥ステップ(0):乾燥ステップを行わなかった。
乾燥ステップ(1):ブランケット胴をゆっくり回転させながら乾燥した不織布をバー部材でブランケット胴表面に押し当て、30cm送り出しながら使用して3分間のふき取り乾燥を行った。
乾燥ステップ(2):ブランケット胴をゆっくり回転させながら、ブランケット表面に70℃の温風を吹きつけ3分間乾燥させた。
乾燥ステップ(3):湿し水、インクの供給なしで、印刷を行い、印刷用紙(コート紙)を5枚通してブランケット胴表面を乾燥させた。印刷用紙は印刷機の用いることのできる最大サイズとした。
【0190】
次いで、印刷版材料を下記のいずれかの方法で取り付けた。
取り付け方法(1):印刷版材料の先端部を版胴の版先端くわえ部に固定した後、版胴とブランケット胴とをニップし、印刷版材料後端部を手で支えながら、版胴を版巻き付け方向に回転させ、印刷版材料表面とブランケット胴表面とが接触した状態で印刷版材料後端部を版胴の版後端くわえ部に固定し、適正なテンションをかけて印刷版材料を版胴に固定した。次いで、版胴とブランケット胴とのニップを離した。
【0191】
取り付け方法(2):印刷版材料の先端部を版胴の版先端くわえ部に固定した後、版胴とブランケット胴とをニップさせずに、印刷版材料後端部を手で引っ張りながら版胴を版巻き付け方向に回転させ、実質的に印刷版材料表面とブランケット胴表面とが接触しない状態を保ちながら印刷版材料を版胴に巻き付けた。次いで、印刷版材料後端部を版胴の版後端くわえ部に固定し、適正なテンションをかけて印刷版材料を版胴に固定した。
【0192】
次いで印刷を行った。印刷開始のシークエンスとしては、版胴を回転させ、最初に湿し水供給ローラーを印刷版材料に接触させて版胴を3回転させ、次いで、インクローラーを印刷版材料に接触させて版胴を2回転させ、次いで版胴とブランケット胴とをニップさせて印刷を開始するというシークエンスを用いた。
【0193】
実施例2〜5及び比較例1および2
表6に示した、印刷版材料、乾燥ステップ、印刷版材料取り付け方法の組み合わせで印刷を行った。
【0194】
[機上現像性]
機上現像性は、印刷物上で非画像部の汚れが完全になくなり、かつ、90%網点画像の網が開いた状態になった時点の刷り出しからの印刷枚数で評価した。結果を表6に示した。
【0195】
【表6】
【0196】
表6から、機上現像タイプの印刷版材料の印刷において本発明の印刷方法を用いることで、ブランケット胴洗浄を行いながら連続して印刷作業を繰り返し続ける場合においても、安定した良好な機上現像性を確保することができることがわかる。
【0197】
【発明の効果】
本発明により、機上現像タイプの印刷版材料を用いた際の、安定した良好な機上現像性の確保が可能であり、印刷機上で露光を行う場合にも画像形成不良を生じさせない印刷方法を提供することができた。
Claims (6)
- 印刷機上で湿し水またはインクによって少なくとも一部が除去されうる層を有する印刷版材料の印刷方法において、少なくとも下記のステップ(a)〜(f)により印刷を行うことを特徴とする印刷方法。
(a)印刷版材料を印刷機の版胴に取り付けるステップ
(b)印刷を行うステップ(機上現像を行って印刷版材料を印刷版とするステップを含む)
(c)洗浄液を用いてブランケット胴の洗浄を行うステップ
(d)ブランケット胴表面の乾燥を行うステップ
(e)ステップ(c)あるいは(d)の前後、もしくは、(c)あるいは(d)のステップと同時に印刷版の排出を行うステップ
(f)新たな印刷版材料を印刷機の版胴に取り付けるステップ。 - ブランケット胴の乾燥を行うステップが、ブランケット表面に残存する洗浄液を乾燥した布で拭き取ることにより行われることを特徴とする請求項1記載の印刷方法。
- ブランケット胴の乾燥を行うステップが、ブランケット表面に温風もしくは冷風を吹きつけて、残存する洗浄液を乾燥させることにより行われることを特徴とする請求項1記載の印刷方法。
- ブランケット胴の乾燥を行うステップが、印刷を行って、ブランケット表面に残存する洗浄液を印刷用紙に付着もしくは吸収させることにより行われることを特徴とする請求項1記載の印刷方法。
- ステップ(a)と(b)との間に、印刷版材料の画像形成を行うステップを有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の印刷方法。
- 画像形成が赤外線レーザーによって行われることを特徴とする請求項5記載の印刷方法。
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