JP2004315607A - インクセットおよび画像形成方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】色再現性および諧調性に優れ、各種の色が精確にかつ濃淡なく均一に再現され、全体の色合いのバランスが取れ、さらに画像濃度が高く、色鮮やかで、優れた堅牢性を有するカラー記録画像を得ることができるインクセットおよび画像形成方法を提供する。
【解決手段】色度が92≦L*≦97、−1≦a*≦4、−11≦b*≦2である被記録材に、該被記録材との色度差が30≦ΔL*≦52、15≦Δa*≦30、30≦Δb*≦65であるシアン単色画像を形成するシアンインクと、該被記録材との色度差が30≦ΔL*≦50、−85≦Δa*≦−45、−2≦Δb*≦15であるマゼンタ単色画像を形成するマゼンタインクと、該被記録材との色度差が1≦ΔL*≦11、−2≦Δa*≦13、−105≦Δb*≦−40であるイエローインクとを含むインクジェット記録用インクセットを用いて記録画像を形成する。
【選択図】 なし
【解決手段】色度が92≦L*≦97、−1≦a*≦4、−11≦b*≦2である被記録材に、該被記録材との色度差が30≦ΔL*≦52、15≦Δa*≦30、30≦Δb*≦65であるシアン単色画像を形成するシアンインクと、該被記録材との色度差が30≦ΔL*≦50、−85≦Δa*≦−45、−2≦Δb*≦15であるマゼンタ単色画像を形成するマゼンタインクと、該被記録材との色度差が1≦ΔL*≦11、−2≦Δa*≦13、−105≦Δb*≦−40であるイエローインクとを含むインクジェット記録用インクセットを用いて記録画像を形成する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクセットおよび画像形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ハードコピー用の画像形成装置としては、種々の方式のものが提案され、実用化されている。中でも、インクジェット方式(液滴噴射記録方式)の画像形成装置(インクジェットプリンタ)は、近年、広い範囲で用いられている。
【0003】
インクジェット方式では、速乾性の水性インクを力学的作用または熱エネルギーの作用によって紙などの被記録材に吐出し、該被記録材上に画像を形成している。そのため、電子写真方式のように、静電潜像の現像およびトナーの定着といったプロセスを必要とせず、ダイレクトに画像を形成(記録)することができるので、装置の構成が簡略化され、小型化および低コスト化が達成されるとともに、低騒音での記録が可能になっている。
【0004】
しかも、インクジェット方式はカラー化が容易であり、高集積ヘッドを用いることにより、高速記録で銀塩写真の品質に迫る高画質の画像を形成することが可能であるため、今後、この方式による画像形成は、応用分野も含めてその用途がますます拡大すると考えられている。
【0005】
現在インクジェット方式では、インクの着色剤として各種の水溶性染料が使用されている例が多い。しかしながら、水溶性染料は一般に耐光性および耐水性が低いので、水溶性染料を用いて形成される記録画像も、光に晒されて退色し、または水に接触して滲みなどを生じ、耐光性および耐水性を含めた堅牢性の点に問題がある。
【0006】
記録画像の堅牢性を改善するために、水溶性染料に代えて耐光性および耐水性に優れる顔料を水に分散させた水性顔料インクが提案されている。水性顔料インクを用いると、確かに、堅牢性に優れる記録画像が得られる。しかしながら、顔料は、染料に比べて、色相(色味)を微妙に調整し、かつ高い彩度(鮮明度)を発現するという点で劣っている。したがって、水性顔料インクによるフルカラー印字では、色の再現域が狭くなり、画像濃度ひいては彩度が低い記録画像しか得られない。しかも、色によって再現性の程度が異なるので、全体の色合いのバランスが悪くなる。また、同一色の記録画像内において、濃淡が生じ、色が不均一になることもある。
【0007】
従来から、記録媒体上に形成される記録画像の色度または色相角を適宜調整し、所望の色相を有する記録画像を得ようとする提案がなされている。たとえば、記録媒体上に、色度が−10≦a*≦0、60≦b*≦80であるイエロー画像を形成するイエローインクと、色度が50≦a*、−15≦b*<0であるマゼンタ画像を形成するマゼンタインクと、色度が−20≦a*<0、−40≦b*≦−20であるシアン画像を形成するシアンインクとを用いる、インクジェット記録方法が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。しかしながら、特許文献1のインクジェット記録方法は、インクの平面座標における色度(a*およびb*)のみを規定し、立体座標における明度(L*)、すなわち3次元的な色の再現についての考慮がなされていない。したがって、インクの着色剤として、特許文献1の実施例で用いられる水溶性染料ではなく、顔料を用いる場合には、色の再現域が狭くなり、かつ彩度が低くなるのを避けることができない。しかも、特許文献1のシアンインクは、緑色の再現域が狭いので、色合いのバランスが取れていない記録画像が得られる。
【0008】
また、着色剤として顔料を含むインクであって、布帛上に特定範囲のL*、a*およびb*を有する画像を形成する、それぞれ2種のイエローインク、マゼンタインク、シアンインクおよびブラックインクを用いるインクジェット捺染方法が提案されている(たとえば、特許文献2参照)。しかしながら、この方法の記録媒体である布帛は、紙などの一般的な記録媒体とは、異なる構造を有する。すなわち布帛は、各種の糸を用いて、編物、織物、不織布などの一定の繊維組織を形成したものであり、その表面には凹凸および空白があり、平滑でないのが一般的である。これに対し、紙は、糸よりもはるかに微細なパルプを均一に分散させて抄造した成形体であり、その表面は凹凸がなく、平滑である。このような構造的な違いによって、布帛と紙の着色法はおのずと異なったものになる。さらに布帛は、洗濯を行うことが想定されるので、布帛を構成する糸の内部にまで色素を浸透させ、固着することが必要である。ところが、紙は、色素が内部まで浸透すると、画像の色濃度が低下して画像が不鮮明になるので、その表面のみに色素が付着するように着色が行われる。このように、布帛への捺染と紙への印刷とでは、色素が付着する形態が異なるので、色の出方に大きな差が生じ、同じ顔料を用いても、色再現域は一致しない。したがって、特許文献2に記載のインクを用いて紙に記録を行っても、良好な色再現性は得られず、記録される画像の彩度も充分ではない。
【0009】
さらに、紙に特定範囲の色相角を有する画像を形成するイエローインク、マゼンタインクおよびシアンインクを含むインクセット、ならびにこのインクセットを用いる画像形成方法が提案されている(たとえば、特許文献3参照)。しかしながら、特許文献3に開示のインクは、いずれも着色剤として染料を含有するものである。染料は、前述のように、顔料とは異なる色再現性を示すものであるので、特許文献3に開示の色相角の範囲から、顔料による色相角の範囲を類推することはできない。しかも、特許文献3のインクセットは染料を含んでいるにもかかわらず、堅牢性を向上させる手段は一切開示されていない。
【0010】
最近では、インクジェット記録方式においても、銀塩写真方式と同レベルの高い画質の記録画像、すなわち、種々の色が精確にかつ濃淡なく均一に再現され、高い画像濃度および彩度を有し、色合いのバランスが良好で、しかも堅牢性に優れる記録画像を得ることに対する技術的な要求が非常に高くなっている。
【0011】
【特許文献1】
特開平9−76623号公報
【特許文献2】
特開2001−181987号公報
【特許文献3】
特開平10−329403号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、種々の色が精確にかつ濃淡なく均一に再現され、全体の色合いのバランスがとれ、高い画像濃度および彩度を有し、しかも堅牢性に優れるカラー記録画像を形成することができるインクセットおよび画像形成方法を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、少なくともシアンインク、マゼンタインクおよびイエローインクを含むインクジェット記録用インクセットであって、色度が92≦L*≦97、−1≦a*≦4および−11≦b*≦2である被記録材に、シアンインクは該被記録材との色度差が30≦ΔL*≦52、15≦Δa*≦30および30≦Δb*≦65であるシアン単色画像を形成し、マゼンタインクは該被記録材との色度差が30≦ΔL*≦50、−85≦Δa*≦−45および−2≦Δb*≦15であるマゼンタ単色画像を形成し、ならびに、イエローインクは該被記録材との色度差が1≦ΔL*≦11、−2≦Δa*≦13および−105≦Δb*≦−40であるイエロー単色画像を形成することを特徴とするインクセットである。
【0014】
本発明に従えば、特定の色度を有する被記録材に対して、特定の色度(L*、a*およびb*)差を有する単色画像を形成することができるシアンインク、マゼンタインクおよびイエローインクを組み合わせて用いることによって、該被記録材において、画像が形成された部位と、画像が形成されていない部位との色度の差を所定の範囲内とすることができ、特に色再現性に優れ、画像濃度および彩度が高く、色鮮やかで目視印象の好ましい画像を形成することができる。
【0015】
本発明のインクセットは、インクジェット記録方式において、被記録材の種類を問わず、種々の色が精確にかつ濃淡なく均一に再現され、全体の色合いのバランスがとれ(諧調性が良好で)、高い画像濃度および彩度を有し、堅牢性に優れるカラー記録画像を記録媒体上に形成することができる。
【0016】
本発明において、L*、a*およびb*を用いて表す「色度」とは、国際照明委員会により推奨されている、CIELABと呼ばれている知覚的にほぼ均等な歩度をもつ色空間のパラメーターであり、JIS Z 8722およびJIS Z8727に規定されている。
【0017】
また本発明のインクセットは、シアンインクが240°〜260°の色相角をもつシアン単色画像を形成し、マゼンタインクが340°〜355°の色相角をもつマゼンタ単色画像を形成し、およびイエローインクが90°〜100°の色相角をもつイエロー単色画像を形成することを特徴とする。
【0018】
本発明に従えば、前述の特定の色度差を有し、かつ特定の色相角を有する単色画像を形成できるシアンインク、マゼンタインクおよびイエローインクを用いることによって、本発明インクセットの色再現性が一層向上する。
【0019】
本発明において、「色相角」とは、CIELAB色空間において、a*≧0かつb*≧0(第一象限)ではtan−1(b*/a*)、a*≦0かつb*≧0(第二象限)では180°+tan−1(b*/a*)、a*≦0かつb*≦0(第三象限)では180°+tan−1(b*/a*)、a*≧0かつb*≦0(第四象限)では360°+tan−1(b*/a*)で表される角度をいう。
【0020】
また本発明のインクセットは、シアンインクが少なくともシアン顔料と水溶性有機溶剤と界面活性剤と水とを含むインク組成物であり、マゼンタインクが少なくともマゼンタ顔料と水溶性有機溶剤と界面活性剤と水とを含むインク組成物であり、イエローインクが少なくともイエロー顔料と水溶性有機溶剤と界面活性剤と水とを含むインク組成物であることを特徴とする。
【0021】
本発明に従えば、本発明インクセットに必須成分であるシアンインク、マゼンタインクおよびイエローインクの着色剤として顔料を用いることによって、顔料が紙の表面にとどまって発色し、紙の裏まで浸透しないので、さらに画像濃度および彩度が高いカラー記録画像を形成することができ、その他の好ましい性能も保持される。
【0022】
また本発明のインクセットは、シアン顔料、マゼンタ顔料およびイエロー顔料から選ばれる1種または2種以上の顔料が、その表面に親水基を導入することによってインク組成物中での自己分散性を付与されているか、または高分子分散剤によってインク組成物中に分散処理されていることを特徴とする。
【0023】
本発明に従えば、顔料に水への分散性を付与するかまたは顔料を水に分散させるための補助剤である高分子分散剤を用いることによって、顔料をインク中に一層均一に分散させ、記録画像の単色部分における濃淡の発生がさらに少なくなり、一層の高画質化が達成される。
【0024】
また本発明のインクセットは、シアン顔料が、C.I.Pigment Blue1、2、3、15、15:1、15:3、15:4、16および22から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする。
【0025】
また本発明のインクセットは、マゼンタ顔料が、C.I.Pigment Red 5、7、12、48、48:1、57、112、122、123、146、168、184、185、202、221およびC.I.Pigment Violet19から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする。
【0026】
また本発明のインクセットは、イエロー顔料が、C.I.Pigment Yellow 1、2、3、12、13、14、16、17、73、74、75、83、93、95、97、98、114、128、129、151、154、176および180から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする。
【0027】
本発明に従えば、特定のシアン顔料、マゼンタ顔料およびイエロー顔料を用いることによって、前述の色度差または色度差と色相角とを示す画像を形成できるシアンインク、マゼンタインクおよびイエローインクを得ることができる。
【0028】
本発明は、前述のうちのいずれかのインクセットを用い、インクジェット記録方式によって、被記録材上に画像を形成することを特徴とする画像形成方法である。
【0029】
本発明に従えば、前述のインクセットを用いてインクジェット記録を行うことによって、銀塩写真方式に匹敵するような、高画質の記録画像を形成することができる。本発明の画像形成方法は、カラー画像、特にカラー写真画像の形成に、好適に利用できる。
【0030】
【発明の実施の形態】
本発明のインクセットは、少なくともシアンインク、マゼンタインクおよびイエローインクを含んでいる。
【0031】
このシアンインク、マゼンタインクおよびイエローインクは、色度が92≦L*≦97、−1≦a*≦4および−11≦b*≦2である被記録材に単色画像を形成した場合に、該被記録材の画像が形成されていない領域の色度(すなわち該被記録材そのものの色度)から該単色画像が形成された領域の色度(すなわち該単色画像そのものの色度)を差し引いた色度差が、シアンインクは30≦ΔL*≦52、15≦Δa*≦30および30≦Δb*≦6であり、マゼンタインクは30≦ΔL*≦50、−85≦Δa*≦−45および−2≦Δb*≦15であり、かつイエローインクは1≦ΔL*≦11、−2≦Δa*≦13および−105≦Δb*≦−40であることを特徴にしている。
【0032】
上記のシアンインク、マゼンタインクおよびイエローインクにおいて、色度の差(ΔL*、Δa*およびΔb*)が上記規定範囲内にあれば、写真画像を形成した場合にも、見た目の色濃度及び色再現性が良好で、単色インクのドットを形成してもまたは複数のインクを重ねても、裏抜けの少ない、良好な画像を作成することが可能である。
【0033】
上記のシアンインク、マゼンタインクおよびイエローインクにおいて、ΔL*値が規定の範囲を下回るときは、画像濃度が高くなりすぎ、画像が全体に暗い色を呈する。記録媒体が普通紙である場合には、着色剤が裏まで浸透する裏抜けが起こる。また規定の範囲を超えると、画像濃度ひいては彩度が低くなり、被記録材そのもののかすかな模様などを隠蔽することができない。
【0034】
上記のシアンインク、マゼンタインクおよびイエローインクにおいて、Δa*値およびΔb*値が規定の範囲を下回る場合および超える場合は、カラーバランスの良好な記録画像を形成することができない。特に写真画像を形成するときに、その傾向が顕著である。
【0035】
上記シアンインクの中でも、シアン単色画像の色相角が240°〜260°であるものが好ましい。240°を著しく下回ると、インクが緑味を帯びる可能性があり、260°を大幅に超えると、青味が強くなるおそれがある。上記マゼンタインクの中でも、マゼンタ単色画像の色相角が340°〜355°であるものが好ましい。340°を著しく下回ると、インクが青味を帯びる可能性があり、350°を大幅に越えると、赤味を帯びるおそれがある。上記イエローインクの中でも、イエロー単色画像の色相角が90°〜100°であるものが好ましい。90°を著しく下回ると、インクが赤味を帯びる可能性があり、100°を大幅に超えると、緑味を帯びるおそれがある。
【0036】
上記シアンインク、マゼンタインクおよびイエローインクとしては、上記に規定の色度差または上記に規定の色度差と色相角とを有するインクであれば特に制限されることなく、公知のものをいずれも使用できるけれども、通常は、顔料と水溶性有機溶剤と界面活性剤と水とを含む水性インク組成物が用いられる。
【0037】
顔料は、上記に規定の色度差、さらには色度差と色相角とを満たすことができる公知のものをいずれも使用できる。顔料の具体例をカラーインデックスナンバー(CI)で示すと、シアンインクに含まれるシアン顔料としては、たとえば、C.I.Pigment Blue1、2、3、15、15:1、15:3、15:4、16、22などが挙げられる。マゼンタインクに含まれるマゼンタ顔料としては、たとえば、C.I.Pigment Red 5、7、12、48、48:1、57、112、122、123、146、168、184、185、202、221、C.I.Pigment Violet19などが挙げられる。イエローインクに含まれるイエロー顔料としては、たとえば、C.I.Pigment Yellow 1、2、3、12、13、14、16、17、73、74、75、83、93、95、97、98、114、128、129、151、154、176、180などが挙げられる。シアン顔料、マゼンタ顔料およびイエロー顔料は、それぞれ、1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
【0038】
顔料は、水性インク組成物中に均一に分散させて使用するのが好ましい。そのためには、顔料の表面に親水基を導入することによって水中での分散性を付与するか、または、顔料を水中に分散させるための高分子分散剤を用いるのがよい。
【0039】
顔料の表面に親水基を導入したものは、自己分散型顔料として知られている。親水基は、適当なカチオンまたはアニオンと結合して、塩を形成していてもよい。親水基としては、たとえば、スルホン酸基とその塩、カルボン酸基とその塩、ホスホン酸基とその塩、水酸基、第4級アンモニウム塩などが挙げられる。親水基は1種または2種以上が付与されている。顔料に親水基を導入するには、公知の方法を利用できる。たとえば、酸化処理、スルホン化処理などの表面処理法、芳香族アゾ化合物、アルキルアゾ化合物などのアゾ化合物と顔料とを反応させ、フェニル基またはアルキル基を連結基としてカルボン酸基、スルホン酸基などを顔料表面に導入する方法、シラン化合物などのカップリング剤による処理、ポリマーグラフト化処理、プラズマ処理などを挙げることができる。
【0040】
高分子分散剤としては、公知のものを使用でき、たとえば、スチレン−アクリル酸樹脂、スチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル樹脂、スチレン−マレイン酸樹脂、スチレン−マレイン酸半エステル樹脂、アクリル酸−アクリル酸エステル樹脂、イソブチレン−マレイン酸樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂などが挙げられる。高分子分散剤は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。高分子分散剤を用いる顔料の分散は、従来から知られている方法にしたがって実施することができる。たとえば、顔料と高分子分散剤とを混合し、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータミル、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、ジェットミル、オングミルなどの分散機を用いて顔料を分散させればよい。高分子分散剤の使用量は特に制限されず、広い範囲から適宜選択できるが、通常は顔料100重量部に対して高分子分散剤を0.1〜15重量部程度使用すればよい。
【0041】
顔料の粒子径は特に制限されず、広い範囲から適宜選択できるけれども、平均粒子径が20〜200nmであることが好ましい。顔料の平均粒子径が200nmを超えると、顔料の沈降を生じることが多くなり、インク組成物の保存安定性が低下する。また、20nm未満では、被記録材の表面に顔料が沈み込んでしまい、画像濃度が低下する。また、顔料粒子間の凝集も生じやすく、安定な分散が困難となる傾向がある。
【0042】
顔料の配合量は、顔料の種類、インク組成物中における顔料の配合量、顔料とともに使用する他成分の種類および配合量などの各種条件に応じて広い範囲から適宜選択できるけれども、通常はインク組成物の全重量に対して1〜10重量%、好ましくは2〜8重量%である。顔料の配合量が1重量%を著しく下回ると、画像濃度が低下するおそれがあり、10重量%を大幅に超えると、インク組成物のインク吐出ノズルからの吐出性が悪化し、インク吐出ノズルの目詰まりなどが起こる可能性がある。
【0043】
なお本発明においては、顔料の種類に応じて、上記に規定の顔料配合量の範囲から、ΔL*、Δa*およびΔb*である3種の色度差に関する本発明の規定を満たす配合量を適宜選択するのが好ましい。3種の色度差を満たす各顔料の配合量の目安は、たとえば、シアン顔料ではシアンインク全量の1.5〜5.0重量%程度、マゼンタ顔料ではマゼンタインク全量の2.5〜8.0重量%程度、イエロー顔料ではイエローインク全量の3.5〜8.0重量%程度である。あるいは、この範囲外であっても、インクジェット記録を行う際の、1ドットあたりの液滴量を適宜変更することによって、3種の色度差を満足させることもできる。
【0044】
水溶性有機溶剤は、たとえば、インクの粘度などの物性を調整し、インクの乾燥を防止し、溶解安定性を向上させるためなどの目的で使用される。水溶性有機溶剤としては、公知のものをいずれも使用でき、たとえば、2−ピロリドン、N−メチル―ピロリド―2−オン(NMP)、1,3−ジメチルイミダゾリド−2−オン、オクチル―ピロリドンなどの窒素含有複素環式ケトン類、エタンジオール(たとえば1,2−エタンジオール)、プロパンジオール(たとえば1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ヒドロキシ―メチル―1,3−プロパンジオール、エチルヒドロキシプロパンジオール(EHP))、ブタンジオール(たとえば1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール)、ペンタンジオール(たとえば1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール)、ヘキサンジオール(たとえば1,6−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール)、ヘプタンジオール(たとえば1,2−へプタンジオール、1,7−へプタンジオール)、オクタンジオール(たとえば1,2−オクタンジオール、1,8−オクタンジオール)などのジオール類、ポリエチレングリコール(たとえばジエチレングリコール(DEG)、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール)、ポリプロピレングリコール(たとえばジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール)などのポリアルキレングリコール類、高分子グリコール類(たとえばPEG200、PEG300、PEG400、PPG400)、チオジグリコールなどのグリコールエーテル類またはチオグリコールエーテル類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエ−テルなどの多価アルコールアルキルエーテル類、グリセリンなどが挙げられる。水溶性有機溶剤は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。水溶性有機溶剤の配合量は、特に制限されず広い範囲から適宜選択できるけれども、通常はインク組成物の全重量に対して20〜60重量%、好ましくは20〜50重量%である。
【0045】
界面活性剤は、たとえば、インク組成物のノズルからの吐出性を向上させるために使用される。界面活性剤は、インク組成物の他の成分との相溶性がよく、液中で安定しているものが好ましい。その具体例としては、非イオン界面活性剤が挙げられる。非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレン系界面活性剤、ポリオキシプロピレン系界面活性剤、ポリオキシ(エチレン−プロピレン)系ノニオン界面活性剤、ポリオキシアセチレン系界面活性剤、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどのエーテル系、ポリオキシエチレンオレイン酸、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレートなどのエステル系、その他フッ素アルキルエステル、パーフルオロアルキルカルボン酸塩などの含フッ素系界面活性剤などを挙げることができる。界面活性剤は1種が単独で使用されまたは2種以上が併用される。界面活性剤の配合量は特に制限されず、広い範囲から適宜選択できるけれども、通常はインク組成物の全重量に対して0.5〜2.0重量%である。
【0046】
さらに上記インク組成物は、アルコール類を含んでいてもよい。アルコール類は、たとえば、インク組成物の記録媒体に対する浸透性を高めるために用いられる。アルコール類としては一価および二価の低級アルコールが好ましく、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ベンジルアルコールなどの一価アルコールが特に好ましい。アルコール類は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。アルコール類の配合量は特に制限されず、広い範囲から適宜選択できるけれども、通常はインク組成物の全重量に対して1〜8重量%である。
【0047】
さらに上記インク組成物は、水溶性有機アミン化合物を含んでいてもよい。水溶性有機化合物は、たとえば、インク組成物中での顔料の分散性をさらに向上させるために用いられる。水溶性有機アミン化合物としては公知のものを使用でき、たとえば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンなどの、炭素数1〜3の直鎖もしくは分岐鎖状のアルカノール基が1〜3個置換している水溶性有機アミン化合物などを挙げることができる。
【0048】
さらに上記インク組成物は、その好ましい特性を損なわない範囲で、従来からインクジェット用水性顔料インクに用いられてきた添加剤の1種または2種以上を含んでいてもよい。該添加剤としては、たとえば、プロキセルなどの防黴剤、殺菌剤、pH調製剤、溶解助剤、酸化防止剤などが挙げられる。
【0049】
上記インク組成物は、顔料、水溶性有機溶剤および界面活性剤の適量を用い、必要に応じて高分子分散剤、アルコール類、水溶性有機アミン化合物およびその他の添加剤の1種または2種以上を加え、さらに水を加えて全量を100重量%とし、公知の方法にしたがって全成分を混合することによって製造できる。
【0050】
これによって、少なくともシアンインク、マゼンタインクおよびイエローインクを含む本発明のインクセットを得ることができる。
【0051】
本発明のインクセットは、オリフィス内のインクを力学的作用または熱エネルギーによる作用を用いて吐出し、紙などの被記録材に対して飛翔させ、該被記録材に画像を形成するインクジェット記録方式の画像形成(画像記録)に用いられる。
【0052】
本発明のインクセットは、インクジェット記録方式のインクとして用いられるだけでなく、水性インクが用いられる実質的に全ての用途に用いることができる。該用途の具体例としては、たとえば、グラビアインクなどの印刷インク、水性塗料、化粧品、筆記具用インク、トナー、液体現像剤、電子写真用材料などが挙げられる。
【0053】
本発明の画像形成方法は、本発明のインクセットを、インクジェット記録方式の記録装置によって、記録媒体上に吐出することによって、行われる。
【0054】
本発明の画像形成方法は、本発明のインクセットを使用する以外は、従来のインクジェット記録方法と同様に実施できる。
【0055】
記録媒体としては、従来から使用されているものを用いることができ、たとえば、普通紙、葉書、カラーコピー用紙、インクジェット用紙、プラスチックシート、プラスチックフィルムなどが挙げられる。
【0056】
【実施例】
以下に実施例および比較例を挙げ、本発明をさらに詳細に説明する。
【0057】
実施例1〜5および比較例1〜5
表1または表2に記載の割合(重量%)で各成分を用い、さらにイオン交換水を加えて全量を100重量%とした。これを1時間撹拌して混合し、次いで0.8μmメンブランフィルタを用いて加圧ろ過し、本発明のインクセットおよび比較用のインクセットを製造した。
【0058】
実施例1〜3で用いた、C.I.Pigment Yellow 74、C.I.Pigment Red 185およびC.I.Pigment Blue15:3には、その表面にスルホン酸基を導入し、水中での自己分散性を有する自己分散型顔料とした。
【0059】
実施例4〜5および比較例4では、0.8μmメンブランフィルタを用いて加圧ろ過を行う前に、超音波照射下に、ホモジナイザーにて1時間分散処理を行った。
【0060】
表1において、サーフィノール465(商品名)およびサーフィノールTG(商品名)は、いずれも、エアープロダクツ社製の非イオン界面活性剤である。ポリエステル系樹脂は結着樹脂であり、具体的には、商品名:バイロナール、東洋紡(株)製である。
【0061】
表1において、「Y」はイエローインク、「M」はマゼンタインクおよび「C」はシアンインクをそれぞれ示し、以後の表においても同様とする。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
比較例6
シアンインクのシアン顔料をC.I.Pigment Blue 60に変更する以外は、実施例4と同様にして、比較用インクセットを製造した。
【0065】
実施例1〜5および比較例1〜6で得られたインクセットを用い、記録媒体上に単色画像および写真画像を形成した。記録媒体としては、実施例1〜3及び比較例1〜6では普通紙(商品名:NM−4A3、シャープ(株)製)、実施例4ではコート紙(商品名:MCマット紙、セイコーエプソン(株)製)、実施例5ではコート紙(商品名:LC−301、キャノン(株)製)を用いた。各記録媒体の色度を表3に示す。
【0066】
【表3】
【0067】
単色画像および写真画像は、下記の方法により評価した。
[単色画像]
インクジェットプリンタ(商品名:AJ−1100、シャープ(株)製)を改造して用い、イエロー、マゼンタ、シアンインクをそれぞれ100%領域充填(印字濃度を100%に設定)した1cm2の単色画像を印刷し、該画像の色の印象を目視により評価した。30人の評価者のうち、好ましいと答えた評価者の割合が8割(24人)以上のものを〇、8割未満のものを×として評価した。結果を表4に示す。
【0068】
[写真画像]
改造したAJ−1100を用いて、各種被記録材にISO/JIS−SCIDの高精細カラーデジタル標準画像データに指定されている写真画像を印刷し、該写真画像の印象を目視により評価した。30人の評価者のうち、好ましいと答えた評価者の割合が9割(24人)以上のものを〇、9割未満8割以上のものを△、8割未満のものを×として評価した。結果を表4に示す。
【0069】
上記した単色画像および写真画像は、適宜1ドットあたりの液適量を6、9、12plと3段階に変化させて作成した。各インクの液滴量は、表1および表2に示した。
【0070】
記録媒体ならびに記録媒体上に形成された単色画像および写真画像の色度は、分光色差測色計(商品名:X−Rite938、X−Rite社製)を用い、D50光源で標準のカラー測定手順に従って測定した。また単色画像の色相角は、分光色差測色計(商品名:X−Rite938、X−Rite(株)製)を用いて測定した。結果を表4に示す。
【0071】
【表4】
【0072】
表4から、イエローインク、マゼンタインクおよびシアンインクの3種のインクがすべて本発明に規定の範囲を満たしている場合に、優れた多色記録画像が得られることが判る。
【0073】
【発明の効果】
本発明によれば、特定の色度差を有するシアンインクとマゼンタインクとイエローインクとを組み合わせたインクセットを用いることによって、色再現性に優れ、画像濃度が高く、色鮮やかで、全体の色合いのバランスがとれ(諧調性が良好で)、目視印象の好ましく、堅牢性に優れるカラー記録画像を形成することができる。
【0074】
本発明によれば、前述の特定の色度差を有し、かつ特定の色相角を有する単色画像を形成できるシアンインク、マゼンタインクおよびイエローインクを含むインクセットを用いることによって、記録画像の色再現性が一層向上する。
【0075】
本発明によれば、本発明インクセットの必須成分であるシアンインク、マゼンタインクおよびイエローインクの着色剤として顔料を用いることによって、顔料が紙の表面にとどまって発色し、紙の裏まで浸透しないので、さらに画像濃度および彩度が高いカラー記録画像を形成することができ、その他の好ましい性能も保持される。
【0076】
本発明によれば、特定のシアン顔料、マゼンタ顔料およびイエロー顔料を用いることによって、前述の色度差または色度差と色相角とを示す画像を形成できるシアンインク、マゼンタインクおよびイエローインクを得ることができる。
【0077】
本発明によれば、顔料に水への分散性を付与するかまたは顔料を水に分散させるための補助剤である高分子分散剤を用いることによって、顔料をインク中に一層均一に分散させ、記録画像の単色部分における濃淡の発生がさらに少なくなり、一層の高画質化が達成される。
【0078】
本発明によれば、前述のインクセットを用いてインクジェット記録を行うことによって、銀塩写真方式に迫るような、高画質の記録画像を形成することができる。本発明の画像形成方法は、カラー画像、特にカラー写真画像の形成に、好適に利用できる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクセットおよび画像形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ハードコピー用の画像形成装置としては、種々の方式のものが提案され、実用化されている。中でも、インクジェット方式(液滴噴射記録方式)の画像形成装置(インクジェットプリンタ)は、近年、広い範囲で用いられている。
【0003】
インクジェット方式では、速乾性の水性インクを力学的作用または熱エネルギーの作用によって紙などの被記録材に吐出し、該被記録材上に画像を形成している。そのため、電子写真方式のように、静電潜像の現像およびトナーの定着といったプロセスを必要とせず、ダイレクトに画像を形成(記録)することができるので、装置の構成が簡略化され、小型化および低コスト化が達成されるとともに、低騒音での記録が可能になっている。
【0004】
しかも、インクジェット方式はカラー化が容易であり、高集積ヘッドを用いることにより、高速記録で銀塩写真の品質に迫る高画質の画像を形成することが可能であるため、今後、この方式による画像形成は、応用分野も含めてその用途がますます拡大すると考えられている。
【0005】
現在インクジェット方式では、インクの着色剤として各種の水溶性染料が使用されている例が多い。しかしながら、水溶性染料は一般に耐光性および耐水性が低いので、水溶性染料を用いて形成される記録画像も、光に晒されて退色し、または水に接触して滲みなどを生じ、耐光性および耐水性を含めた堅牢性の点に問題がある。
【0006】
記録画像の堅牢性を改善するために、水溶性染料に代えて耐光性および耐水性に優れる顔料を水に分散させた水性顔料インクが提案されている。水性顔料インクを用いると、確かに、堅牢性に優れる記録画像が得られる。しかしながら、顔料は、染料に比べて、色相(色味)を微妙に調整し、かつ高い彩度(鮮明度)を発現するという点で劣っている。したがって、水性顔料インクによるフルカラー印字では、色の再現域が狭くなり、画像濃度ひいては彩度が低い記録画像しか得られない。しかも、色によって再現性の程度が異なるので、全体の色合いのバランスが悪くなる。また、同一色の記録画像内において、濃淡が生じ、色が不均一になることもある。
【0007】
従来から、記録媒体上に形成される記録画像の色度または色相角を適宜調整し、所望の色相を有する記録画像を得ようとする提案がなされている。たとえば、記録媒体上に、色度が−10≦a*≦0、60≦b*≦80であるイエロー画像を形成するイエローインクと、色度が50≦a*、−15≦b*<0であるマゼンタ画像を形成するマゼンタインクと、色度が−20≦a*<0、−40≦b*≦−20であるシアン画像を形成するシアンインクとを用いる、インクジェット記録方法が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。しかしながら、特許文献1のインクジェット記録方法は、インクの平面座標における色度(a*およびb*)のみを規定し、立体座標における明度(L*)、すなわち3次元的な色の再現についての考慮がなされていない。したがって、インクの着色剤として、特許文献1の実施例で用いられる水溶性染料ではなく、顔料を用いる場合には、色の再現域が狭くなり、かつ彩度が低くなるのを避けることができない。しかも、特許文献1のシアンインクは、緑色の再現域が狭いので、色合いのバランスが取れていない記録画像が得られる。
【0008】
また、着色剤として顔料を含むインクであって、布帛上に特定範囲のL*、a*およびb*を有する画像を形成する、それぞれ2種のイエローインク、マゼンタインク、シアンインクおよびブラックインクを用いるインクジェット捺染方法が提案されている(たとえば、特許文献2参照)。しかしながら、この方法の記録媒体である布帛は、紙などの一般的な記録媒体とは、異なる構造を有する。すなわち布帛は、各種の糸を用いて、編物、織物、不織布などの一定の繊維組織を形成したものであり、その表面には凹凸および空白があり、平滑でないのが一般的である。これに対し、紙は、糸よりもはるかに微細なパルプを均一に分散させて抄造した成形体であり、その表面は凹凸がなく、平滑である。このような構造的な違いによって、布帛と紙の着色法はおのずと異なったものになる。さらに布帛は、洗濯を行うことが想定されるので、布帛を構成する糸の内部にまで色素を浸透させ、固着することが必要である。ところが、紙は、色素が内部まで浸透すると、画像の色濃度が低下して画像が不鮮明になるので、その表面のみに色素が付着するように着色が行われる。このように、布帛への捺染と紙への印刷とでは、色素が付着する形態が異なるので、色の出方に大きな差が生じ、同じ顔料を用いても、色再現域は一致しない。したがって、特許文献2に記載のインクを用いて紙に記録を行っても、良好な色再現性は得られず、記録される画像の彩度も充分ではない。
【0009】
さらに、紙に特定範囲の色相角を有する画像を形成するイエローインク、マゼンタインクおよびシアンインクを含むインクセット、ならびにこのインクセットを用いる画像形成方法が提案されている(たとえば、特許文献3参照)。しかしながら、特許文献3に開示のインクは、いずれも着色剤として染料を含有するものである。染料は、前述のように、顔料とは異なる色再現性を示すものであるので、特許文献3に開示の色相角の範囲から、顔料による色相角の範囲を類推することはできない。しかも、特許文献3のインクセットは染料を含んでいるにもかかわらず、堅牢性を向上させる手段は一切開示されていない。
【0010】
最近では、インクジェット記録方式においても、銀塩写真方式と同レベルの高い画質の記録画像、すなわち、種々の色が精確にかつ濃淡なく均一に再現され、高い画像濃度および彩度を有し、色合いのバランスが良好で、しかも堅牢性に優れる記録画像を得ることに対する技術的な要求が非常に高くなっている。
【0011】
【特許文献1】
特開平9−76623号公報
【特許文献2】
特開2001−181987号公報
【特許文献3】
特開平10−329403号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、種々の色が精確にかつ濃淡なく均一に再現され、全体の色合いのバランスがとれ、高い画像濃度および彩度を有し、しかも堅牢性に優れるカラー記録画像を形成することができるインクセットおよび画像形成方法を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、少なくともシアンインク、マゼンタインクおよびイエローインクを含むインクジェット記録用インクセットであって、色度が92≦L*≦97、−1≦a*≦4および−11≦b*≦2である被記録材に、シアンインクは該被記録材との色度差が30≦ΔL*≦52、15≦Δa*≦30および30≦Δb*≦65であるシアン単色画像を形成し、マゼンタインクは該被記録材との色度差が30≦ΔL*≦50、−85≦Δa*≦−45および−2≦Δb*≦15であるマゼンタ単色画像を形成し、ならびに、イエローインクは該被記録材との色度差が1≦ΔL*≦11、−2≦Δa*≦13および−105≦Δb*≦−40であるイエロー単色画像を形成することを特徴とするインクセットである。
【0014】
本発明に従えば、特定の色度を有する被記録材に対して、特定の色度(L*、a*およびb*)差を有する単色画像を形成することができるシアンインク、マゼンタインクおよびイエローインクを組み合わせて用いることによって、該被記録材において、画像が形成された部位と、画像が形成されていない部位との色度の差を所定の範囲内とすることができ、特に色再現性に優れ、画像濃度および彩度が高く、色鮮やかで目視印象の好ましい画像を形成することができる。
【0015】
本発明のインクセットは、インクジェット記録方式において、被記録材の種類を問わず、種々の色が精確にかつ濃淡なく均一に再現され、全体の色合いのバランスがとれ(諧調性が良好で)、高い画像濃度および彩度を有し、堅牢性に優れるカラー記録画像を記録媒体上に形成することができる。
【0016】
本発明において、L*、a*およびb*を用いて表す「色度」とは、国際照明委員会により推奨されている、CIELABと呼ばれている知覚的にほぼ均等な歩度をもつ色空間のパラメーターであり、JIS Z 8722およびJIS Z8727に規定されている。
【0017】
また本発明のインクセットは、シアンインクが240°〜260°の色相角をもつシアン単色画像を形成し、マゼンタインクが340°〜355°の色相角をもつマゼンタ単色画像を形成し、およびイエローインクが90°〜100°の色相角をもつイエロー単色画像を形成することを特徴とする。
【0018】
本発明に従えば、前述の特定の色度差を有し、かつ特定の色相角を有する単色画像を形成できるシアンインク、マゼンタインクおよびイエローインクを用いることによって、本発明インクセットの色再現性が一層向上する。
【0019】
本発明において、「色相角」とは、CIELAB色空間において、a*≧0かつb*≧0(第一象限)ではtan−1(b*/a*)、a*≦0かつb*≧0(第二象限)では180°+tan−1(b*/a*)、a*≦0かつb*≦0(第三象限)では180°+tan−1(b*/a*)、a*≧0かつb*≦0(第四象限)では360°+tan−1(b*/a*)で表される角度をいう。
【0020】
また本発明のインクセットは、シアンインクが少なくともシアン顔料と水溶性有機溶剤と界面活性剤と水とを含むインク組成物であり、マゼンタインクが少なくともマゼンタ顔料と水溶性有機溶剤と界面活性剤と水とを含むインク組成物であり、イエローインクが少なくともイエロー顔料と水溶性有機溶剤と界面活性剤と水とを含むインク組成物であることを特徴とする。
【0021】
本発明に従えば、本発明インクセットに必須成分であるシアンインク、マゼンタインクおよびイエローインクの着色剤として顔料を用いることによって、顔料が紙の表面にとどまって発色し、紙の裏まで浸透しないので、さらに画像濃度および彩度が高いカラー記録画像を形成することができ、その他の好ましい性能も保持される。
【0022】
また本発明のインクセットは、シアン顔料、マゼンタ顔料およびイエロー顔料から選ばれる1種または2種以上の顔料が、その表面に親水基を導入することによってインク組成物中での自己分散性を付与されているか、または高分子分散剤によってインク組成物中に分散処理されていることを特徴とする。
【0023】
本発明に従えば、顔料に水への分散性を付与するかまたは顔料を水に分散させるための補助剤である高分子分散剤を用いることによって、顔料をインク中に一層均一に分散させ、記録画像の単色部分における濃淡の発生がさらに少なくなり、一層の高画質化が達成される。
【0024】
また本発明のインクセットは、シアン顔料が、C.I.Pigment Blue1、2、3、15、15:1、15:3、15:4、16および22から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする。
【0025】
また本発明のインクセットは、マゼンタ顔料が、C.I.Pigment Red 5、7、12、48、48:1、57、112、122、123、146、168、184、185、202、221およびC.I.Pigment Violet19から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする。
【0026】
また本発明のインクセットは、イエロー顔料が、C.I.Pigment Yellow 1、2、3、12、13、14、16、17、73、74、75、83、93、95、97、98、114、128、129、151、154、176および180から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする。
【0027】
本発明に従えば、特定のシアン顔料、マゼンタ顔料およびイエロー顔料を用いることによって、前述の色度差または色度差と色相角とを示す画像を形成できるシアンインク、マゼンタインクおよびイエローインクを得ることができる。
【0028】
本発明は、前述のうちのいずれかのインクセットを用い、インクジェット記録方式によって、被記録材上に画像を形成することを特徴とする画像形成方法である。
【0029】
本発明に従えば、前述のインクセットを用いてインクジェット記録を行うことによって、銀塩写真方式に匹敵するような、高画質の記録画像を形成することができる。本発明の画像形成方法は、カラー画像、特にカラー写真画像の形成に、好適に利用できる。
【0030】
【発明の実施の形態】
本発明のインクセットは、少なくともシアンインク、マゼンタインクおよびイエローインクを含んでいる。
【0031】
このシアンインク、マゼンタインクおよびイエローインクは、色度が92≦L*≦97、−1≦a*≦4および−11≦b*≦2である被記録材に単色画像を形成した場合に、該被記録材の画像が形成されていない領域の色度(すなわち該被記録材そのものの色度)から該単色画像が形成された領域の色度(すなわち該単色画像そのものの色度)を差し引いた色度差が、シアンインクは30≦ΔL*≦52、15≦Δa*≦30および30≦Δb*≦6であり、マゼンタインクは30≦ΔL*≦50、−85≦Δa*≦−45および−2≦Δb*≦15であり、かつイエローインクは1≦ΔL*≦11、−2≦Δa*≦13および−105≦Δb*≦−40であることを特徴にしている。
【0032】
上記のシアンインク、マゼンタインクおよびイエローインクにおいて、色度の差(ΔL*、Δa*およびΔb*)が上記規定範囲内にあれば、写真画像を形成した場合にも、見た目の色濃度及び色再現性が良好で、単色インクのドットを形成してもまたは複数のインクを重ねても、裏抜けの少ない、良好な画像を作成することが可能である。
【0033】
上記のシアンインク、マゼンタインクおよびイエローインクにおいて、ΔL*値が規定の範囲を下回るときは、画像濃度が高くなりすぎ、画像が全体に暗い色を呈する。記録媒体が普通紙である場合には、着色剤が裏まで浸透する裏抜けが起こる。また規定の範囲を超えると、画像濃度ひいては彩度が低くなり、被記録材そのもののかすかな模様などを隠蔽することができない。
【0034】
上記のシアンインク、マゼンタインクおよびイエローインクにおいて、Δa*値およびΔb*値が規定の範囲を下回る場合および超える場合は、カラーバランスの良好な記録画像を形成することができない。特に写真画像を形成するときに、その傾向が顕著である。
【0035】
上記シアンインクの中でも、シアン単色画像の色相角が240°〜260°であるものが好ましい。240°を著しく下回ると、インクが緑味を帯びる可能性があり、260°を大幅に超えると、青味が強くなるおそれがある。上記マゼンタインクの中でも、マゼンタ単色画像の色相角が340°〜355°であるものが好ましい。340°を著しく下回ると、インクが青味を帯びる可能性があり、350°を大幅に越えると、赤味を帯びるおそれがある。上記イエローインクの中でも、イエロー単色画像の色相角が90°〜100°であるものが好ましい。90°を著しく下回ると、インクが赤味を帯びる可能性があり、100°を大幅に超えると、緑味を帯びるおそれがある。
【0036】
上記シアンインク、マゼンタインクおよびイエローインクとしては、上記に規定の色度差または上記に規定の色度差と色相角とを有するインクであれば特に制限されることなく、公知のものをいずれも使用できるけれども、通常は、顔料と水溶性有機溶剤と界面活性剤と水とを含む水性インク組成物が用いられる。
【0037】
顔料は、上記に規定の色度差、さらには色度差と色相角とを満たすことができる公知のものをいずれも使用できる。顔料の具体例をカラーインデックスナンバー(CI)で示すと、シアンインクに含まれるシアン顔料としては、たとえば、C.I.Pigment Blue1、2、3、15、15:1、15:3、15:4、16、22などが挙げられる。マゼンタインクに含まれるマゼンタ顔料としては、たとえば、C.I.Pigment Red 5、7、12、48、48:1、57、112、122、123、146、168、184、185、202、221、C.I.Pigment Violet19などが挙げられる。イエローインクに含まれるイエロー顔料としては、たとえば、C.I.Pigment Yellow 1、2、3、12、13、14、16、17、73、74、75、83、93、95、97、98、114、128、129、151、154、176、180などが挙げられる。シアン顔料、マゼンタ顔料およびイエロー顔料は、それぞれ、1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
【0038】
顔料は、水性インク組成物中に均一に分散させて使用するのが好ましい。そのためには、顔料の表面に親水基を導入することによって水中での分散性を付与するか、または、顔料を水中に分散させるための高分子分散剤を用いるのがよい。
【0039】
顔料の表面に親水基を導入したものは、自己分散型顔料として知られている。親水基は、適当なカチオンまたはアニオンと結合して、塩を形成していてもよい。親水基としては、たとえば、スルホン酸基とその塩、カルボン酸基とその塩、ホスホン酸基とその塩、水酸基、第4級アンモニウム塩などが挙げられる。親水基は1種または2種以上が付与されている。顔料に親水基を導入するには、公知の方法を利用できる。たとえば、酸化処理、スルホン化処理などの表面処理法、芳香族アゾ化合物、アルキルアゾ化合物などのアゾ化合物と顔料とを反応させ、フェニル基またはアルキル基を連結基としてカルボン酸基、スルホン酸基などを顔料表面に導入する方法、シラン化合物などのカップリング剤による処理、ポリマーグラフト化処理、プラズマ処理などを挙げることができる。
【0040】
高分子分散剤としては、公知のものを使用でき、たとえば、スチレン−アクリル酸樹脂、スチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル樹脂、スチレン−マレイン酸樹脂、スチレン−マレイン酸半エステル樹脂、アクリル酸−アクリル酸エステル樹脂、イソブチレン−マレイン酸樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂などが挙げられる。高分子分散剤は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。高分子分散剤を用いる顔料の分散は、従来から知られている方法にしたがって実施することができる。たとえば、顔料と高分子分散剤とを混合し、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータミル、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、ジェットミル、オングミルなどの分散機を用いて顔料を分散させればよい。高分子分散剤の使用量は特に制限されず、広い範囲から適宜選択できるが、通常は顔料100重量部に対して高分子分散剤を0.1〜15重量部程度使用すればよい。
【0041】
顔料の粒子径は特に制限されず、広い範囲から適宜選択できるけれども、平均粒子径が20〜200nmであることが好ましい。顔料の平均粒子径が200nmを超えると、顔料の沈降を生じることが多くなり、インク組成物の保存安定性が低下する。また、20nm未満では、被記録材の表面に顔料が沈み込んでしまい、画像濃度が低下する。また、顔料粒子間の凝集も生じやすく、安定な分散が困難となる傾向がある。
【0042】
顔料の配合量は、顔料の種類、インク組成物中における顔料の配合量、顔料とともに使用する他成分の種類および配合量などの各種条件に応じて広い範囲から適宜選択できるけれども、通常はインク組成物の全重量に対して1〜10重量%、好ましくは2〜8重量%である。顔料の配合量が1重量%を著しく下回ると、画像濃度が低下するおそれがあり、10重量%を大幅に超えると、インク組成物のインク吐出ノズルからの吐出性が悪化し、インク吐出ノズルの目詰まりなどが起こる可能性がある。
【0043】
なお本発明においては、顔料の種類に応じて、上記に規定の顔料配合量の範囲から、ΔL*、Δa*およびΔb*である3種の色度差に関する本発明の規定を満たす配合量を適宜選択するのが好ましい。3種の色度差を満たす各顔料の配合量の目安は、たとえば、シアン顔料ではシアンインク全量の1.5〜5.0重量%程度、マゼンタ顔料ではマゼンタインク全量の2.5〜8.0重量%程度、イエロー顔料ではイエローインク全量の3.5〜8.0重量%程度である。あるいは、この範囲外であっても、インクジェット記録を行う際の、1ドットあたりの液滴量を適宜変更することによって、3種の色度差を満足させることもできる。
【0044】
水溶性有機溶剤は、たとえば、インクの粘度などの物性を調整し、インクの乾燥を防止し、溶解安定性を向上させるためなどの目的で使用される。水溶性有機溶剤としては、公知のものをいずれも使用でき、たとえば、2−ピロリドン、N−メチル―ピロリド―2−オン(NMP)、1,3−ジメチルイミダゾリド−2−オン、オクチル―ピロリドンなどの窒素含有複素環式ケトン類、エタンジオール(たとえば1,2−エタンジオール)、プロパンジオール(たとえば1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ヒドロキシ―メチル―1,3−プロパンジオール、エチルヒドロキシプロパンジオール(EHP))、ブタンジオール(たとえば1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール)、ペンタンジオール(たとえば1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール)、ヘキサンジオール(たとえば1,6−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール)、ヘプタンジオール(たとえば1,2−へプタンジオール、1,7−へプタンジオール)、オクタンジオール(たとえば1,2−オクタンジオール、1,8−オクタンジオール)などのジオール類、ポリエチレングリコール(たとえばジエチレングリコール(DEG)、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール)、ポリプロピレングリコール(たとえばジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール)などのポリアルキレングリコール類、高分子グリコール類(たとえばPEG200、PEG300、PEG400、PPG400)、チオジグリコールなどのグリコールエーテル類またはチオグリコールエーテル類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエ−テルなどの多価アルコールアルキルエーテル類、グリセリンなどが挙げられる。水溶性有機溶剤は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。水溶性有機溶剤の配合量は、特に制限されず広い範囲から適宜選択できるけれども、通常はインク組成物の全重量に対して20〜60重量%、好ましくは20〜50重量%である。
【0045】
界面活性剤は、たとえば、インク組成物のノズルからの吐出性を向上させるために使用される。界面活性剤は、インク組成物の他の成分との相溶性がよく、液中で安定しているものが好ましい。その具体例としては、非イオン界面活性剤が挙げられる。非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレン系界面活性剤、ポリオキシプロピレン系界面活性剤、ポリオキシ(エチレン−プロピレン)系ノニオン界面活性剤、ポリオキシアセチレン系界面活性剤、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどのエーテル系、ポリオキシエチレンオレイン酸、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレートなどのエステル系、その他フッ素アルキルエステル、パーフルオロアルキルカルボン酸塩などの含フッ素系界面活性剤などを挙げることができる。界面活性剤は1種が単独で使用されまたは2種以上が併用される。界面活性剤の配合量は特に制限されず、広い範囲から適宜選択できるけれども、通常はインク組成物の全重量に対して0.5〜2.0重量%である。
【0046】
さらに上記インク組成物は、アルコール類を含んでいてもよい。アルコール類は、たとえば、インク組成物の記録媒体に対する浸透性を高めるために用いられる。アルコール類としては一価および二価の低級アルコールが好ましく、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ベンジルアルコールなどの一価アルコールが特に好ましい。アルコール類は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。アルコール類の配合量は特に制限されず、広い範囲から適宜選択できるけれども、通常はインク組成物の全重量に対して1〜8重量%である。
【0047】
さらに上記インク組成物は、水溶性有機アミン化合物を含んでいてもよい。水溶性有機化合物は、たとえば、インク組成物中での顔料の分散性をさらに向上させるために用いられる。水溶性有機アミン化合物としては公知のものを使用でき、たとえば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンなどの、炭素数1〜3の直鎖もしくは分岐鎖状のアルカノール基が1〜3個置換している水溶性有機アミン化合物などを挙げることができる。
【0048】
さらに上記インク組成物は、その好ましい特性を損なわない範囲で、従来からインクジェット用水性顔料インクに用いられてきた添加剤の1種または2種以上を含んでいてもよい。該添加剤としては、たとえば、プロキセルなどの防黴剤、殺菌剤、pH調製剤、溶解助剤、酸化防止剤などが挙げられる。
【0049】
上記インク組成物は、顔料、水溶性有機溶剤および界面活性剤の適量を用い、必要に応じて高分子分散剤、アルコール類、水溶性有機アミン化合物およびその他の添加剤の1種または2種以上を加え、さらに水を加えて全量を100重量%とし、公知の方法にしたがって全成分を混合することによって製造できる。
【0050】
これによって、少なくともシアンインク、マゼンタインクおよびイエローインクを含む本発明のインクセットを得ることができる。
【0051】
本発明のインクセットは、オリフィス内のインクを力学的作用または熱エネルギーによる作用を用いて吐出し、紙などの被記録材に対して飛翔させ、該被記録材に画像を形成するインクジェット記録方式の画像形成(画像記録)に用いられる。
【0052】
本発明のインクセットは、インクジェット記録方式のインクとして用いられるだけでなく、水性インクが用いられる実質的に全ての用途に用いることができる。該用途の具体例としては、たとえば、グラビアインクなどの印刷インク、水性塗料、化粧品、筆記具用インク、トナー、液体現像剤、電子写真用材料などが挙げられる。
【0053】
本発明の画像形成方法は、本発明のインクセットを、インクジェット記録方式の記録装置によって、記録媒体上に吐出することによって、行われる。
【0054】
本発明の画像形成方法は、本発明のインクセットを使用する以外は、従来のインクジェット記録方法と同様に実施できる。
【0055】
記録媒体としては、従来から使用されているものを用いることができ、たとえば、普通紙、葉書、カラーコピー用紙、インクジェット用紙、プラスチックシート、プラスチックフィルムなどが挙げられる。
【0056】
【実施例】
以下に実施例および比較例を挙げ、本発明をさらに詳細に説明する。
【0057】
実施例1〜5および比較例1〜5
表1または表2に記載の割合(重量%)で各成分を用い、さらにイオン交換水を加えて全量を100重量%とした。これを1時間撹拌して混合し、次いで0.8μmメンブランフィルタを用いて加圧ろ過し、本発明のインクセットおよび比較用のインクセットを製造した。
【0058】
実施例1〜3で用いた、C.I.Pigment Yellow 74、C.I.Pigment Red 185およびC.I.Pigment Blue15:3には、その表面にスルホン酸基を導入し、水中での自己分散性を有する自己分散型顔料とした。
【0059】
実施例4〜5および比較例4では、0.8μmメンブランフィルタを用いて加圧ろ過を行う前に、超音波照射下に、ホモジナイザーにて1時間分散処理を行った。
【0060】
表1において、サーフィノール465(商品名)およびサーフィノールTG(商品名)は、いずれも、エアープロダクツ社製の非イオン界面活性剤である。ポリエステル系樹脂は結着樹脂であり、具体的には、商品名:バイロナール、東洋紡(株)製である。
【0061】
表1において、「Y」はイエローインク、「M」はマゼンタインクおよび「C」はシアンインクをそれぞれ示し、以後の表においても同様とする。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
比較例6
シアンインクのシアン顔料をC.I.Pigment Blue 60に変更する以外は、実施例4と同様にして、比較用インクセットを製造した。
【0065】
実施例1〜5および比較例1〜6で得られたインクセットを用い、記録媒体上に単色画像および写真画像を形成した。記録媒体としては、実施例1〜3及び比較例1〜6では普通紙(商品名:NM−4A3、シャープ(株)製)、実施例4ではコート紙(商品名:MCマット紙、セイコーエプソン(株)製)、実施例5ではコート紙(商品名:LC−301、キャノン(株)製)を用いた。各記録媒体の色度を表3に示す。
【0066】
【表3】
【0067】
単色画像および写真画像は、下記の方法により評価した。
[単色画像]
インクジェットプリンタ(商品名:AJ−1100、シャープ(株)製)を改造して用い、イエロー、マゼンタ、シアンインクをそれぞれ100%領域充填(印字濃度を100%に設定)した1cm2の単色画像を印刷し、該画像の色の印象を目視により評価した。30人の評価者のうち、好ましいと答えた評価者の割合が8割(24人)以上のものを〇、8割未満のものを×として評価した。結果を表4に示す。
【0068】
[写真画像]
改造したAJ−1100を用いて、各種被記録材にISO/JIS−SCIDの高精細カラーデジタル標準画像データに指定されている写真画像を印刷し、該写真画像の印象を目視により評価した。30人の評価者のうち、好ましいと答えた評価者の割合が9割(24人)以上のものを〇、9割未満8割以上のものを△、8割未満のものを×として評価した。結果を表4に示す。
【0069】
上記した単色画像および写真画像は、適宜1ドットあたりの液適量を6、9、12plと3段階に変化させて作成した。各インクの液滴量は、表1および表2に示した。
【0070】
記録媒体ならびに記録媒体上に形成された単色画像および写真画像の色度は、分光色差測色計(商品名:X−Rite938、X−Rite社製)を用い、D50光源で標準のカラー測定手順に従って測定した。また単色画像の色相角は、分光色差測色計(商品名:X−Rite938、X−Rite(株)製)を用いて測定した。結果を表4に示す。
【0071】
【表4】
【0072】
表4から、イエローインク、マゼンタインクおよびシアンインクの3種のインクがすべて本発明に規定の範囲を満たしている場合に、優れた多色記録画像が得られることが判る。
【0073】
【発明の効果】
本発明によれば、特定の色度差を有するシアンインクとマゼンタインクとイエローインクとを組み合わせたインクセットを用いることによって、色再現性に優れ、画像濃度が高く、色鮮やかで、全体の色合いのバランスがとれ(諧調性が良好で)、目視印象の好ましく、堅牢性に優れるカラー記録画像を形成することができる。
【0074】
本発明によれば、前述の特定の色度差を有し、かつ特定の色相角を有する単色画像を形成できるシアンインク、マゼンタインクおよびイエローインクを含むインクセットを用いることによって、記録画像の色再現性が一層向上する。
【0075】
本発明によれば、本発明インクセットの必須成分であるシアンインク、マゼンタインクおよびイエローインクの着色剤として顔料を用いることによって、顔料が紙の表面にとどまって発色し、紙の裏まで浸透しないので、さらに画像濃度および彩度が高いカラー記録画像を形成することができ、その他の好ましい性能も保持される。
【0076】
本発明によれば、特定のシアン顔料、マゼンタ顔料およびイエロー顔料を用いることによって、前述の色度差または色度差と色相角とを示す画像を形成できるシアンインク、マゼンタインクおよびイエローインクを得ることができる。
【0077】
本発明によれば、顔料に水への分散性を付与するかまたは顔料を水に分散させるための補助剤である高分子分散剤を用いることによって、顔料をインク中に一層均一に分散させ、記録画像の単色部分における濃淡の発生がさらに少なくなり、一層の高画質化が達成される。
【0078】
本発明によれば、前述のインクセットを用いてインクジェット記録を行うことによって、銀塩写真方式に迫るような、高画質の記録画像を形成することができる。本発明の画像形成方法は、カラー画像、特にカラー写真画像の形成に、好適に利用できる。
Claims (8)
- 少なくともシアンインク、マゼンタインクおよびイエローインクを含むインクジェット記録用インクセットであって、色度が92≦L*≦97、−1≦a*≦4および−11≦b*≦2である被記録材に、シアンインクは該被記録材との色度差が30≦ΔL*≦52、15≦Δa*≦30および30≦Δb*≦65であるシアン単色画像を形成し、マゼンタインクは該被記録材との色度差が30≦ΔL*≦50、−85≦Δa*≦−45および−2≦Δb*≦15であるマゼンタ単色画像を形成し、ならびに、イエローインクは該被記録材との色度差が1≦ΔL*≦11、−2≦Δa*≦13および−105≦Δb*≦−40であるイエロー単色画像を形成することを特徴とするインクセット。
- シアンインクが240°〜260°の色相角をもつシアン単色画像を形成し、マゼンタインクが340°〜355°の色相角をもつマゼンタ単色画像を形成し、およびイエローインクが90°〜100°の色相角をもつイエロー単色画像を形成することを特徴とする請求項1記載のインクセット。
- シアンインクが少なくともシアン顔料と水溶性有機溶剤と界面活性剤と水とを含むインク組成物であり、マゼンタインクが少なくともマゼンタ顔料と水溶性有機溶剤と界面活性剤と水とを含むインク組成物であり、イエローインクが少なくともイエロー顔料と水溶性有機溶剤と界面活性剤と水とを含むインク組成物であることを特徴とする請求項1または2記載のインクセット。
- シアン顔料、マゼンタ顔料およびイエロー顔料から選ばれる1種または2種以上の顔料が、その表面に親水基を導入することによってインク組成物中での自己分散性を付与されているか、または高分子分散剤によってインク組成物中に分散処理されていることを特徴とする請求項3記載のインクセット。
- シアン顔料が、C.I.Pigment Blue1、2、3、15、15:1、15:3、15:4、16および22から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする請求項3または4記載のインクセット。
- マゼンタ顔料が、C.I.Pigment Red 5、7、12、48、48:1、57、112、122、123、146、168、184、185、202、221およびC.I.Pigment Violet19から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする請求項3または4記載のインクセット。
- イエロー顔料が、C.I.Pigment Yellow 1、2、3、12、13、14、16、17、73、74、75、83、93、95、97、98、114、128、129、151、154、176および180から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする請求項3または4記載のインクセット。
- 請求項1〜7のうちのいずれかに記載のインクセットを用い、インクジェット記録方式によって、被記録材上に画像を形成することを特徴とする画像形成方法。
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JP2003109276A JP2004315607A (ja) | 2003-04-14 | 2003-04-14 | インクセットおよび画像形成方法 |
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JP2006045521A (ja) * | 2004-06-28 | 2006-02-16 | Canon Inc | シアンインク、インクセット、インクと反応液のセット、及び画像形成方法 |
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2003
- 2003-04-14 JP JP2003109276A patent/JP2004315607A/ja active Pending
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