JP2004309268A - 加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水系脱塩塔 - Google Patents
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Abstract
【課題】加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水系統のゲル型強酸性陽イオン交換樹脂を充填した脱塩塔において、ゲル型強酸性陽イオン交換樹脂の一次冷却水を浄化する寿命が長く、その結果、使用済みのゲル型強酸性陽イオン交換樹脂から成る放射性廃棄物の量を低減することが出来る一次冷却水系脱塩塔を提供する。
【解決手段】加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水が流れる化学体積制御系とホウ酸回収系および使用済み燃料ピット系の脱塩塔に、水分保有能力30〜40%および架橋度12〜16重量%のゲル型強酸性ゲル型強酸性陽イオン交換樹脂を充填してなることを特徴とする加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水系脱塩塔。
【選択図】 図1
【解決手段】加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水が流れる化学体積制御系とホウ酸回収系および使用済み燃料ピット系の脱塩塔に、水分保有能力30〜40%および架橋度12〜16重量%のゲル型強酸性ゲル型強酸性陽イオン交換樹脂を充填してなることを特徴とする加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水系脱塩塔。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水系脱塩塔に関し、詳しくは、加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水系の、ゲル型強酸性陽イオン交換樹脂を充填した脱塩塔であって、ゲル型強酸性陽イオン交換樹脂の一次冷却水を浄化する寿命が長く、その結果、使用済みのゲル型強酸性陽イオン交換樹脂から成る放射性廃棄物の量を低減することが出来る脱塩塔に関する。
【0002】
【従来の技術】
加圧水型原子力発電プラントの冷却水が流れる系統としては、一次冷却水系と二次冷却水系がある。そして、一次冷却水系において、原子炉冷却水に含まれる無機イオンおよび陽イオン放射性核種を除去するために、一次冷却水の一部を原子炉格納容器の外部に導き出して、化学体積制御系(CVCS系)およびホウ酸回収系(BRS系)の脱塩塔によって処理している。また、使用済み燃料ピット系(SFP系)においても、冷却水に含まれる無機イオンおよび陽イオン放射性核種を脱塩塔によって除去している。
【0003】
上述のCVCS系、BRS系およびSFP系の脱塩塔で使用されているゲル型強酸性陽イオン交換樹脂として、現在、水分保有能力43〜50%且つ架橋度8重量%のゲル型強酸性陽イオン交換樹脂が使用されている。しかしながら、その様な水分保有能力43〜50%のゲル型強酸性陽イオン交換樹脂は、イオン交換容量が小さく、通水時間が比較的短いという欠点がある。さらに、加圧水型原子力発電プラントの一次炉水内で生じる過酸化水素により、ゲル型強酸性陽イオン交換樹脂は酸化され易いため、経時的にイオン交換容量が減少する欠点がある。また、ゲル型強酸性陽イオン交換樹脂の酸化に伴ってポリスチレンスルホン酸を主体とする不純物がゲル型強酸性陽イオン交換樹脂から溶出し、処理された一次冷却水の水質の低下が起こり、長期間の使用が出来ないという欠点がある。
【0004】
他方、一次冷却水系の脱塩塔のゲル型強酸性陽イオン交換樹脂は、定期点検の際に、使用限界に達していなくても、新品のゲル型強酸性陽イオン交換樹脂と交換されている。交換された使用済みのゲル型強酸性陽イオン交換樹脂は、放射性物質を高濃度で吸着しているため、原子力発電所の敷地内の貯蔵タンクに貯蔵されている。しかしながら、その貯蔵量が増大して貯蔵タンクの容量不足が大きな問題となっており、一次冷却水の浄化寿命の長いゲル型強酸性陽イオン交換樹脂の使用が求められている。
【0005】
沸騰水型原子力発電プラントの復水脱塩塔で使用されるゲル型強酸性陽イオン交換樹脂として、水分保有能力30〜43%で且つ架橋度9〜16重量%のゲル型強酸性陽イオン交換樹脂が提案されている(特許文献1参照)。沸騰水型原子力発電プラントにおいては、炉水に酸素を注入するために、その一次冷却水は酸化雰囲気であるが、脱塩塔入口の一次冷却水の過酸化水素は殆ど検出されない。これに対して、加圧水型原子力発電プラントにおいては、運転中炉水に水素を注入するため、その一次冷却水は還元雰囲気である。他方、加圧水型原子力発電プラントの定期点検時には、水素の注入が停止されると共に放射線の作用により過酸化水素が発生して、その一次冷却水は酸化雰囲気になる。そして、脱塩塔入口の一次冷却水の過酸化水素の濃度は5ppm程度である。
【0006】
上述の様に沸騰水型原子力発電プラントと加圧水型原子力発電プラントとでは、一次冷却水の雰囲気が異なっており、且つ、酸化雰囲気においても、過酸化水素の濃度が大きく異なっている。そのため、定期点検時に強い酸化雰囲気となる加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水の脱塩処理に沸騰水型原子力発電プラントの脱塩塔で使用されているゲル型強酸性陽イオン交換樹脂を使用すると、ゲル型強酸性陽イオン交換樹脂の激しい劣化が起ると従来考えられていた。それ故、沸騰水型原子力発電プラントの脱塩塔で使用されているゲル型強酸性陽イオン交換樹脂を加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水の脱塩処理に転用すること自体、全く考えられないことであった。
【0007】
【特許文献1】
特開9―184899号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水系統のゲル型強酸性陽イオン交換樹脂を充填した脱塩塔において、ゲル型強酸性陽イオン交換樹脂の一次冷却水を浄化する寿命が長く、その結果、使用済みのイオン交換樹脂から成る放射性廃棄物の量を低減することが出来る一次冷却水系脱塩塔を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水系統の脱塩塔に使用されるゲル型強酸性陽イオン交換樹脂として、沸騰水型原子力発電プラントの脱塩塔で使用される、水分保有能力が低いけれども架橋度が高いゲル型強酸性陽イオン交換樹脂を使用したところ、意外にもゲル型強酸性陽イオン交換樹脂の予想された劣化は認められず、しかも、イオン交換容量が大きく、且つ、イオン交換容量の低下が抑制されて一次冷却水を浄化するゲル型強酸性陽イオン交換樹脂の寿命が長くなるとの知見を得た。
【0010】
本発明は、上記の知見に基づき完成されたものであり、その要旨は、加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水が流れる化学体積制御系とホウ酸回収系および使用済み燃料ピット系の脱塩塔に、水分保有能力30〜40%および架橋度12〜16重量%のゲル型強酸性陽イオン交換樹脂を充填してなることを特徴とする加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水系脱塩塔に存する。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を添付図面に基づいて説明する。図1は、加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水の浄化ラインを示す概略図である。尚、本発明の加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水系脱塩塔は、基本的には従来公知の加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水が流れるCVCS系統、BRS系統およびSFP系統で使用されている脱塩塔と同じである。
【0012】
一次冷却水は、原子炉(12)を冷却して高温、高圧(例えば、温度322℃、圧力15.4MPa)になっている。その様な高温、高圧の一次冷却水は、ポンプ(13p)によって一次冷却材循環ライン(13)を矢印で示す方向に循環しており、当該循環ライン(13)に設けられている蒸気発生器(14)で、二次冷却水との熱交換により発電用二次冷却水の蒸気を発生させる。
【0013】
一次冷却水を化学的に浄化すると共にその体積を一定に維持するためのCVCS系において、循環する一次冷却水の一部は、ライン(30)を経由して再生熱交換器(32)で冷却した後、化学体積制御循環ライン(31)で原子炉格納容器の外部に取出される。次いで、取出された一次冷却水は、化学体積制御循環ライン(31)に設けられているゲル型強酸性陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂とを混合充填した混床脱塩塔(33)、ゲル型強酸性陽イオン交換樹脂を充填した単床脱塩塔(34)および陰イオン交換樹脂を充填した単床脱塩塔(35)で浄化処理され、含有する無機イオンおよび陽イオン放射性核種が除去される。無機イオンおよび陽イオン放射性核種が除去された一次冷却水は、体積制御タンク(36)に供給された後、ポンプ(31p)を経由し、再生熱交換器(32)で昇温して一次冷却材循環ライン(13)へ戻される。
【0014】
原子炉に供給される冷却材中のホウ酸濃度を維持するためのホウ酸回収系において、無機イオンおよび陽イオン放射性核種が除去された一次冷却水は、体積制御タンク(36)に供給される前に、ホウ酸回収ライン(41)を経由してホールドアップタンク(42)に間欠的に供給される。次いで、ホールドアップタンク(42)の一次冷却水は、ゲル型強酸性陽イオン交換樹脂を充填した単床脱塩塔(43)およびゲル型強酸性陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂とを混合充填した混床脱塩塔(44)で浄化処理された後、ホウ酸濃縮装置(45)で濃縮され、ホウ酸濃縮タンク(46)に供給される。ホウ酸濃縮タンク(46)のホウ酸濃縮溶液は、燃料棒燃焼制御の必要に応じて、ホウ酸・純水注入ライン(56)を経由して化学体積制御循環ライン(31)に注入され、ポンプ(31p)および再生熱交換器(32)を経由して一次冷却材循環ライン(13)に供給される。また、ホウ酸濃縮装置(45)で発生した蒸気は、復水ライン(51)および熱交換器(52)を経由して、ゲル型強酸性陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂とを混合充填した混床脱塩塔(53)で浄化処理した後、純水タンク(54)に供給される。純水タンク(54)の純水は、ホウ酸濃度が高い場合、希釈水として、ホウ酸・純水注入ライン(56)を経由して化学体積制御ライン(31)に注入され、ポンプ(31p)および再生熱交換器(32)を経由して一次冷却材循環ライン(13)に供給される。
【0015】
原子炉で使用された使用済み燃料棒を浸漬するSFP系においては、使用済みの燃料棒は、放射線レベルが低下する間、燃料ピット内に貯められた冷却水中に保管される。そして、この冷却水は、ゲル型強酸性陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂とを混合充填した混床脱塩塔に循環通液して浄化処理される。
【0016】
本発明において、CVCS系、BRS系およびSFP系の脱塩塔で使用するゲル型強酸性陽イオン交換樹脂としては、水分保有能力が通常30〜40%で且つ架橋度が通常12〜16重量%のゲル型強酸性陽イオン交換樹脂が挙げられる。水分保有能力が40%を超えた場合、ゲル型強酸性陽イオン交換樹脂の酸化が進むと、分子量5000以上の高分子ポリスチレンスルホン酸が溶出し易くなる。この高分子ポリスチレンスルホン酸は陰イオン交換樹脂に吸着されないため、処理された一次冷却水の水質低下が起こる。また、水分保有能力が32%未満の場合、無機硫酸イオンが溶出し易くなり、処理された一次冷却水の水質低下が起こる。架橋度が16重量%を超えた場合、無機硫酸イオンが溶出し易くなり、処理された一次冷却水の水質低下が起こる。また、架橋度が12重量%未満の場合、分子量5000以上の高分子ポリスチレンスルホン酸が溶出し易くなる。この高分子ポリスチレンスルホン酸は陰イオン交換樹脂に吸着されないため、処理された一次冷却水の水質低下が起こる。高分子ポリスチレンスルホン酸および無機硫酸イオンの溶出の抑制を考慮すると、水分保有能力が33〜36%で且つ架橋度が12〜14重量%のゲル型強酸性陽イオン交換樹脂の使用が好ましい。
【0017】
本発明において、ゲル型強酸性陽イオン交換樹脂の水分保有能力とは、樹脂の細孔中の水分を飽和平衡状態に調節して測定した場合の水分であり、イオン形が基準形(ナトリウム形)のゲル型強酸性カチオン交換樹脂に対して、以下の方法によって測定された値で示す。
【0018】
(a ) 水分が平衡状態にある基準形(ナトリウム形)の試料樹脂を調製する。
(b ) あらかじめ恒量にしてある平型はかり瓶2 個にそれぞれ(a )で調製した試料樹脂約5g を計り取る。
(c ) これを105 ±2 ℃にあらかじめ調節してある乾燥容器中に入れ、4時間乾燥する。
(d ) デシケーター中で約30 分間放冷する。
(e ) 次いで、はかり瓶の蓋をしてその質量を計り、はかり瓶の前後、即ち、水分が平衡状態にある樹脂の重さと、乾燥後の樹脂の重さの差(ag )を求め、式:M 1 =a /W × 100(但し、M 1 :水分保有能力(%)、W :水分が平衡状態にある樹脂(g ))によって水分保有能力(%)を算出する。
【0019】
なお、上記水分が平衡状態にある樹脂と乾燥後の樹脂の秤量は、同じ樹脂について2 個づつ同時に行い、2 個の結果が0 .5 %以上変動する場合には、試験を繰り返し、0 .5 %以内で一致した時に、2 個の平均値を試験結果として示す。
【0020】
本発明において、架橋度とは、ポリビニルモノマーによる架橋の度合いであり、全ビニルモノマーに対するジビニルベンゼンの重量比(%)で表す。
【0021】
水分保有能力が通常30〜40%で且つ架橋度が通常12〜16重量%であるゲル型強酸性陽イオン交換樹脂としては、例えば、ローム アンド ハース社製、アンバーライトIR124 、三菱化学社製ダイアイオンSK 112 およびSK114 、ダウケミカル社製Dowex HX −4 が例示される。他方、本発明の脱塩塔で使用する陰イオン交換樹脂については何ら制限がなく、ゲル型またはMR 型の任意の公知のものが使用できる。
【0022】
本発明によれば、水分保有能力30〜40%および架橋度12〜16重量%のゲル型強酸性陽イオン交換樹脂は、酸化による影響が少ないので、イオン交換容量の低下が抑制される。従って、従来使用されているゲル型強酸性陽イオン交換樹脂よりも長期間(例えば、水分保有能力43〜50%および架橋度8重量%のゲル型強酸性陽イオン交換樹脂の通水可能期間の2〜3倍)の通水を可能とすることが出来る。そして、使用済みのゲル型強酸性陽イオン交換樹脂等の放射性廃棄物の量を低減することも出来る。加えて、ゲル型強酸性陽イオン交換樹脂で処理された一次冷却水中には、分子量5000以上の高分子ポリスチレンスルホン酸を主体とする不純物が殆ど含まれていないため、一次冷却水の水質低下の問題も発生しない。
【0023】
【実施例】
以下、循環水の硫酸イオン量およびゲル型強酸性陽イオン交換樹脂のイオン交換容量とそれから溶出したポリスチレンスルホン酸量の測定により、本発明で使用するゲル型強酸性陽イオン交換樹脂の効果を明らかにする。以下の諸例におけるイオン交換容量、硫酸イオン量およびポリスチレンスルホン酸量の測定は、次の方法で行った。
【0024】
<ポリスチレンスルホン酸量の測定>
4mlサンプル液を10mm石英セルに入れて、(株)島津製作所製分光光度計「UV−160A」によりUV225nmにおける紫外線吸収値を測定した。既知のポリスチレンスルホン酸濃度の溶液を使用して得た吸光度検量線により、ポリスチレンスルホン酸量を求めた。
【0025】
<硫酸イオン量の測定>
循環タンク内の循環水50mlを100ml三角フラスコに採取し、次いで、グリセリン10mlと24g/リットル塩化ナトリウム溶液5mlを添加し、磁性スターラーで攪拌した。更に、塩化バリウム0.3gを添加して4分間放置した後、15秒攪拌した。得られた溶液15mlを50mmガラスセルに採取し、(株)島津製作所製分光光度計「UV−160A」を使用して、420nmにおける吸光度を測定した。既知の硫酸イオン濃度の溶液を使用して得た吸光度検量線により、硫酸量を求めた。
【0026】
<イオン交換容量の測定>
ガラス製カラムより抜出したゲル型強酸性陽イオン交換樹脂10mlを正確に計り取り、別のガラス製カラムに充填し、2N−HCl溶液280mlをSV70の流量で流して再生し、脱塩水1リットルをSV70の流量で流して洗浄した。次いで、5%NaCl溶液をSV70の流量で流して250mlメスフラスコに受容した。250mlメスフラスコから得られた溶液を50ml正確に計り取り、メチルレッド−メチレンブルー混合指示薬を用いて0.1N−NaOH溶液で滴定し、使用した0.1N−NaOH溶液量をもとに、式:(0.1N−NaOH(ml)×NaOHの力価×0.1×250/50)/10によりイオン交換容量を求めた。
【0027】
試験例1
架橋度が16%のゲル型強酸性陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)「ダイヤイオン USK116」)(水分保有能力が30.0%)300mlをガラスビーカーに水切りした状態で入れ、これに4倍量の純水を加えた。次いで、ゲル型強酸性陽イオン交換樹脂1リットル当り10mgのFe負荷量となるように0.01N−塩化第二鉄溶液を添加し、Fe3+負荷形のゲル型強酸性陽イオン交換樹脂とした。このゲル型強酸性陽イオン交換樹脂をガラス製カラムに充填し、50ppmの過酸化水素溶液50リットルが入っている循環タンクと閉ループ循環ラインを形成した。そして、閉ループ循環ラインに定量ポンプによりSV30の流量で過酸化水素溶液を670時間通液した後、循環タンク内の循環液中のポリスチレンスルホン酸量および硫酸イオン量を測定した。結果を表1に示す。
【0028】
別に、ゲル型強酸性陽イオン交換樹脂をガラス製カラムから取出し、イオン交換容量を測定した。また、取出したゲル型強酸性陽イオン交換樹脂100mlを三角フラスコに入れて、溶離水を100ml注ぎ込み、振とう機付き恒温槽で40℃、70spmにて48時間振盪した。そして、ゲル型強酸性陽イオン交換樹脂から溶離水へ溶出されたポリスチレンスルホン酸の分子量分布を東ソー(株)製GPC測定装置で調べ、溶離水に含まれるポリスチレンスルホン酸中の分子量5000を超える高分子ポリスチレンスルホン酸の割合を求めた。結果を表1および表2に示す。
【0029】
試験例2
架橋度が14%のゲル型強酸性陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)「ダイヤイオン USK114」(試作品))(水分保有能力が33.3%)を使用した以外は試験例1と同様にして、循環タンク内の循環液中のポリスチレンスルホン酸量および硫酸イオン量、ゲル型強酸性陽イオン交換樹脂のイオン交換容量を測定し、且つ高分子ポリスチレンスルホン酸の割合を求めた。結果を表1および表2に示す。
【0030】
試験例3
架橋度が12%のゲル型強酸性陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)「ダイヤイオン USK112」(試作品))(水分保有能力が35.8%)を使用した以外は試験例1と同様にして、循環タンク内の循環液中のポリスチレンスルホン酸量および硫酸イオン量、ゲル型強酸性陽イオン交換樹脂のイオン交換容量を測定し、且つ高分子ポリスチレンスルホン酸の割合を求めた。結果を表1および表2に示す。
【0031】
比較試験例1
架橋度が8%のゲル型強酸性陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)「ダイヤイオン SKN1」)(水分保有能力が48.7%)を使用した以外は試験例1と同様にして、循環タンク内の循環液中のポリスチレンスルホン酸量および硫酸イオン量、ゲル型強酸性陽イオン交換樹脂のイオン交換容量を測定し、且つ高分子ポリスチレンスルホン酸の割合を求めた。結果を表1および表2に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
【発明の効果】
以上説明した本発明によれば、加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水系の脱塩塔において、一次冷却水を浄化するゲル型強酸性陽イオン交換樹脂の使用寿命を著しく長くすることが出来、その結果、放射性廃棄物量を低減することが出来る脱塩塔が提供され、本発明の工業的な価値は顕著である。
【図面の簡単な説明】
【図1】加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水の浄化ラインを示す概略図
【符号の説明】
12:原子炉
13:一次冷却材循環ライン
14:蒸気発生器
31:化学体積制御循環ライン
33:混床脱塩塔
34:単床脱塩塔
35:単床脱塩塔
36:体積制御タンク
41:ホウ酸回収ライン
43:単床脱塩塔
44:混床脱塩塔
45:ホウ酸濃縮装置
46:ホウ酸濃縮タンク
53:混床脱塩塔
54:純水タンク
【発明の属する技術分野】
本発明は、加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水系脱塩塔に関し、詳しくは、加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水系の、ゲル型強酸性陽イオン交換樹脂を充填した脱塩塔であって、ゲル型強酸性陽イオン交換樹脂の一次冷却水を浄化する寿命が長く、その結果、使用済みのゲル型強酸性陽イオン交換樹脂から成る放射性廃棄物の量を低減することが出来る脱塩塔に関する。
【0002】
【従来の技術】
加圧水型原子力発電プラントの冷却水が流れる系統としては、一次冷却水系と二次冷却水系がある。そして、一次冷却水系において、原子炉冷却水に含まれる無機イオンおよび陽イオン放射性核種を除去するために、一次冷却水の一部を原子炉格納容器の外部に導き出して、化学体積制御系(CVCS系)およびホウ酸回収系(BRS系)の脱塩塔によって処理している。また、使用済み燃料ピット系(SFP系)においても、冷却水に含まれる無機イオンおよび陽イオン放射性核種を脱塩塔によって除去している。
【0003】
上述のCVCS系、BRS系およびSFP系の脱塩塔で使用されているゲル型強酸性陽イオン交換樹脂として、現在、水分保有能力43〜50%且つ架橋度8重量%のゲル型強酸性陽イオン交換樹脂が使用されている。しかしながら、その様な水分保有能力43〜50%のゲル型強酸性陽イオン交換樹脂は、イオン交換容量が小さく、通水時間が比較的短いという欠点がある。さらに、加圧水型原子力発電プラントの一次炉水内で生じる過酸化水素により、ゲル型強酸性陽イオン交換樹脂は酸化され易いため、経時的にイオン交換容量が減少する欠点がある。また、ゲル型強酸性陽イオン交換樹脂の酸化に伴ってポリスチレンスルホン酸を主体とする不純物がゲル型強酸性陽イオン交換樹脂から溶出し、処理された一次冷却水の水質の低下が起こり、長期間の使用が出来ないという欠点がある。
【0004】
他方、一次冷却水系の脱塩塔のゲル型強酸性陽イオン交換樹脂は、定期点検の際に、使用限界に達していなくても、新品のゲル型強酸性陽イオン交換樹脂と交換されている。交換された使用済みのゲル型強酸性陽イオン交換樹脂は、放射性物質を高濃度で吸着しているため、原子力発電所の敷地内の貯蔵タンクに貯蔵されている。しかしながら、その貯蔵量が増大して貯蔵タンクの容量不足が大きな問題となっており、一次冷却水の浄化寿命の長いゲル型強酸性陽イオン交換樹脂の使用が求められている。
【0005】
沸騰水型原子力発電プラントの復水脱塩塔で使用されるゲル型強酸性陽イオン交換樹脂として、水分保有能力30〜43%で且つ架橋度9〜16重量%のゲル型強酸性陽イオン交換樹脂が提案されている(特許文献1参照)。沸騰水型原子力発電プラントにおいては、炉水に酸素を注入するために、その一次冷却水は酸化雰囲気であるが、脱塩塔入口の一次冷却水の過酸化水素は殆ど検出されない。これに対して、加圧水型原子力発電プラントにおいては、運転中炉水に水素を注入するため、その一次冷却水は還元雰囲気である。他方、加圧水型原子力発電プラントの定期点検時には、水素の注入が停止されると共に放射線の作用により過酸化水素が発生して、その一次冷却水は酸化雰囲気になる。そして、脱塩塔入口の一次冷却水の過酸化水素の濃度は5ppm程度である。
【0006】
上述の様に沸騰水型原子力発電プラントと加圧水型原子力発電プラントとでは、一次冷却水の雰囲気が異なっており、且つ、酸化雰囲気においても、過酸化水素の濃度が大きく異なっている。そのため、定期点検時に強い酸化雰囲気となる加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水の脱塩処理に沸騰水型原子力発電プラントの脱塩塔で使用されているゲル型強酸性陽イオン交換樹脂を使用すると、ゲル型強酸性陽イオン交換樹脂の激しい劣化が起ると従来考えられていた。それ故、沸騰水型原子力発電プラントの脱塩塔で使用されているゲル型強酸性陽イオン交換樹脂を加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水の脱塩処理に転用すること自体、全く考えられないことであった。
【0007】
【特許文献1】
特開9―184899号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水系統のゲル型強酸性陽イオン交換樹脂を充填した脱塩塔において、ゲル型強酸性陽イオン交換樹脂の一次冷却水を浄化する寿命が長く、その結果、使用済みのイオン交換樹脂から成る放射性廃棄物の量を低減することが出来る一次冷却水系脱塩塔を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水系統の脱塩塔に使用されるゲル型強酸性陽イオン交換樹脂として、沸騰水型原子力発電プラントの脱塩塔で使用される、水分保有能力が低いけれども架橋度が高いゲル型強酸性陽イオン交換樹脂を使用したところ、意外にもゲル型強酸性陽イオン交換樹脂の予想された劣化は認められず、しかも、イオン交換容量が大きく、且つ、イオン交換容量の低下が抑制されて一次冷却水を浄化するゲル型強酸性陽イオン交換樹脂の寿命が長くなるとの知見を得た。
【0010】
本発明は、上記の知見に基づき完成されたものであり、その要旨は、加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水が流れる化学体積制御系とホウ酸回収系および使用済み燃料ピット系の脱塩塔に、水分保有能力30〜40%および架橋度12〜16重量%のゲル型強酸性陽イオン交換樹脂を充填してなることを特徴とする加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水系脱塩塔に存する。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を添付図面に基づいて説明する。図1は、加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水の浄化ラインを示す概略図である。尚、本発明の加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水系脱塩塔は、基本的には従来公知の加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水が流れるCVCS系統、BRS系統およびSFP系統で使用されている脱塩塔と同じである。
【0012】
一次冷却水は、原子炉(12)を冷却して高温、高圧(例えば、温度322℃、圧力15.4MPa)になっている。その様な高温、高圧の一次冷却水は、ポンプ(13p)によって一次冷却材循環ライン(13)を矢印で示す方向に循環しており、当該循環ライン(13)に設けられている蒸気発生器(14)で、二次冷却水との熱交換により発電用二次冷却水の蒸気を発生させる。
【0013】
一次冷却水を化学的に浄化すると共にその体積を一定に維持するためのCVCS系において、循環する一次冷却水の一部は、ライン(30)を経由して再生熱交換器(32)で冷却した後、化学体積制御循環ライン(31)で原子炉格納容器の外部に取出される。次いで、取出された一次冷却水は、化学体積制御循環ライン(31)に設けられているゲル型強酸性陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂とを混合充填した混床脱塩塔(33)、ゲル型強酸性陽イオン交換樹脂を充填した単床脱塩塔(34)および陰イオン交換樹脂を充填した単床脱塩塔(35)で浄化処理され、含有する無機イオンおよび陽イオン放射性核種が除去される。無機イオンおよび陽イオン放射性核種が除去された一次冷却水は、体積制御タンク(36)に供給された後、ポンプ(31p)を経由し、再生熱交換器(32)で昇温して一次冷却材循環ライン(13)へ戻される。
【0014】
原子炉に供給される冷却材中のホウ酸濃度を維持するためのホウ酸回収系において、無機イオンおよび陽イオン放射性核種が除去された一次冷却水は、体積制御タンク(36)に供給される前に、ホウ酸回収ライン(41)を経由してホールドアップタンク(42)に間欠的に供給される。次いで、ホールドアップタンク(42)の一次冷却水は、ゲル型強酸性陽イオン交換樹脂を充填した単床脱塩塔(43)およびゲル型強酸性陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂とを混合充填した混床脱塩塔(44)で浄化処理された後、ホウ酸濃縮装置(45)で濃縮され、ホウ酸濃縮タンク(46)に供給される。ホウ酸濃縮タンク(46)のホウ酸濃縮溶液は、燃料棒燃焼制御の必要に応じて、ホウ酸・純水注入ライン(56)を経由して化学体積制御循環ライン(31)に注入され、ポンプ(31p)および再生熱交換器(32)を経由して一次冷却材循環ライン(13)に供給される。また、ホウ酸濃縮装置(45)で発生した蒸気は、復水ライン(51)および熱交換器(52)を経由して、ゲル型強酸性陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂とを混合充填した混床脱塩塔(53)で浄化処理した後、純水タンク(54)に供給される。純水タンク(54)の純水は、ホウ酸濃度が高い場合、希釈水として、ホウ酸・純水注入ライン(56)を経由して化学体積制御ライン(31)に注入され、ポンプ(31p)および再生熱交換器(32)を経由して一次冷却材循環ライン(13)に供給される。
【0015】
原子炉で使用された使用済み燃料棒を浸漬するSFP系においては、使用済みの燃料棒は、放射線レベルが低下する間、燃料ピット内に貯められた冷却水中に保管される。そして、この冷却水は、ゲル型強酸性陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂とを混合充填した混床脱塩塔に循環通液して浄化処理される。
【0016】
本発明において、CVCS系、BRS系およびSFP系の脱塩塔で使用するゲル型強酸性陽イオン交換樹脂としては、水分保有能力が通常30〜40%で且つ架橋度が通常12〜16重量%のゲル型強酸性陽イオン交換樹脂が挙げられる。水分保有能力が40%を超えた場合、ゲル型強酸性陽イオン交換樹脂の酸化が進むと、分子量5000以上の高分子ポリスチレンスルホン酸が溶出し易くなる。この高分子ポリスチレンスルホン酸は陰イオン交換樹脂に吸着されないため、処理された一次冷却水の水質低下が起こる。また、水分保有能力が32%未満の場合、無機硫酸イオンが溶出し易くなり、処理された一次冷却水の水質低下が起こる。架橋度が16重量%を超えた場合、無機硫酸イオンが溶出し易くなり、処理された一次冷却水の水質低下が起こる。また、架橋度が12重量%未満の場合、分子量5000以上の高分子ポリスチレンスルホン酸が溶出し易くなる。この高分子ポリスチレンスルホン酸は陰イオン交換樹脂に吸着されないため、処理された一次冷却水の水質低下が起こる。高分子ポリスチレンスルホン酸および無機硫酸イオンの溶出の抑制を考慮すると、水分保有能力が33〜36%で且つ架橋度が12〜14重量%のゲル型強酸性陽イオン交換樹脂の使用が好ましい。
【0017】
本発明において、ゲル型強酸性陽イオン交換樹脂の水分保有能力とは、樹脂の細孔中の水分を飽和平衡状態に調節して測定した場合の水分であり、イオン形が基準形(ナトリウム形)のゲル型強酸性カチオン交換樹脂に対して、以下の方法によって測定された値で示す。
【0018】
(a ) 水分が平衡状態にある基準形(ナトリウム形)の試料樹脂を調製する。
(b ) あらかじめ恒量にしてある平型はかり瓶2 個にそれぞれ(a )で調製した試料樹脂約5g を計り取る。
(c ) これを105 ±2 ℃にあらかじめ調節してある乾燥容器中に入れ、4時間乾燥する。
(d ) デシケーター中で約30 分間放冷する。
(e ) 次いで、はかり瓶の蓋をしてその質量を計り、はかり瓶の前後、即ち、水分が平衡状態にある樹脂の重さと、乾燥後の樹脂の重さの差(ag )を求め、式:M 1 =a /W × 100(但し、M 1 :水分保有能力(%)、W :水分が平衡状態にある樹脂(g ))によって水分保有能力(%)を算出する。
【0019】
なお、上記水分が平衡状態にある樹脂と乾燥後の樹脂の秤量は、同じ樹脂について2 個づつ同時に行い、2 個の結果が0 .5 %以上変動する場合には、試験を繰り返し、0 .5 %以内で一致した時に、2 個の平均値を試験結果として示す。
【0020】
本発明において、架橋度とは、ポリビニルモノマーによる架橋の度合いであり、全ビニルモノマーに対するジビニルベンゼンの重量比(%)で表す。
【0021】
水分保有能力が通常30〜40%で且つ架橋度が通常12〜16重量%であるゲル型強酸性陽イオン交換樹脂としては、例えば、ローム アンド ハース社製、アンバーライトIR124 、三菱化学社製ダイアイオンSK 112 およびSK114 、ダウケミカル社製Dowex HX −4 が例示される。他方、本発明の脱塩塔で使用する陰イオン交換樹脂については何ら制限がなく、ゲル型またはMR 型の任意の公知のものが使用できる。
【0022】
本発明によれば、水分保有能力30〜40%および架橋度12〜16重量%のゲル型強酸性陽イオン交換樹脂は、酸化による影響が少ないので、イオン交換容量の低下が抑制される。従って、従来使用されているゲル型強酸性陽イオン交換樹脂よりも長期間(例えば、水分保有能力43〜50%および架橋度8重量%のゲル型強酸性陽イオン交換樹脂の通水可能期間の2〜3倍)の通水を可能とすることが出来る。そして、使用済みのゲル型強酸性陽イオン交換樹脂等の放射性廃棄物の量を低減することも出来る。加えて、ゲル型強酸性陽イオン交換樹脂で処理された一次冷却水中には、分子量5000以上の高分子ポリスチレンスルホン酸を主体とする不純物が殆ど含まれていないため、一次冷却水の水質低下の問題も発生しない。
【0023】
【実施例】
以下、循環水の硫酸イオン量およびゲル型強酸性陽イオン交換樹脂のイオン交換容量とそれから溶出したポリスチレンスルホン酸量の測定により、本発明で使用するゲル型強酸性陽イオン交換樹脂の効果を明らかにする。以下の諸例におけるイオン交換容量、硫酸イオン量およびポリスチレンスルホン酸量の測定は、次の方法で行った。
【0024】
<ポリスチレンスルホン酸量の測定>
4mlサンプル液を10mm石英セルに入れて、(株)島津製作所製分光光度計「UV−160A」によりUV225nmにおける紫外線吸収値を測定した。既知のポリスチレンスルホン酸濃度の溶液を使用して得た吸光度検量線により、ポリスチレンスルホン酸量を求めた。
【0025】
<硫酸イオン量の測定>
循環タンク内の循環水50mlを100ml三角フラスコに採取し、次いで、グリセリン10mlと24g/リットル塩化ナトリウム溶液5mlを添加し、磁性スターラーで攪拌した。更に、塩化バリウム0.3gを添加して4分間放置した後、15秒攪拌した。得られた溶液15mlを50mmガラスセルに採取し、(株)島津製作所製分光光度計「UV−160A」を使用して、420nmにおける吸光度を測定した。既知の硫酸イオン濃度の溶液を使用して得た吸光度検量線により、硫酸量を求めた。
【0026】
<イオン交換容量の測定>
ガラス製カラムより抜出したゲル型強酸性陽イオン交換樹脂10mlを正確に計り取り、別のガラス製カラムに充填し、2N−HCl溶液280mlをSV70の流量で流して再生し、脱塩水1リットルをSV70の流量で流して洗浄した。次いで、5%NaCl溶液をSV70の流量で流して250mlメスフラスコに受容した。250mlメスフラスコから得られた溶液を50ml正確に計り取り、メチルレッド−メチレンブルー混合指示薬を用いて0.1N−NaOH溶液で滴定し、使用した0.1N−NaOH溶液量をもとに、式:(0.1N−NaOH(ml)×NaOHの力価×0.1×250/50)/10によりイオン交換容量を求めた。
【0027】
試験例1
架橋度が16%のゲル型強酸性陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)「ダイヤイオン USK116」)(水分保有能力が30.0%)300mlをガラスビーカーに水切りした状態で入れ、これに4倍量の純水を加えた。次いで、ゲル型強酸性陽イオン交換樹脂1リットル当り10mgのFe負荷量となるように0.01N−塩化第二鉄溶液を添加し、Fe3+負荷形のゲル型強酸性陽イオン交換樹脂とした。このゲル型強酸性陽イオン交換樹脂をガラス製カラムに充填し、50ppmの過酸化水素溶液50リットルが入っている循環タンクと閉ループ循環ラインを形成した。そして、閉ループ循環ラインに定量ポンプによりSV30の流量で過酸化水素溶液を670時間通液した後、循環タンク内の循環液中のポリスチレンスルホン酸量および硫酸イオン量を測定した。結果を表1に示す。
【0028】
別に、ゲル型強酸性陽イオン交換樹脂をガラス製カラムから取出し、イオン交換容量を測定した。また、取出したゲル型強酸性陽イオン交換樹脂100mlを三角フラスコに入れて、溶離水を100ml注ぎ込み、振とう機付き恒温槽で40℃、70spmにて48時間振盪した。そして、ゲル型強酸性陽イオン交換樹脂から溶離水へ溶出されたポリスチレンスルホン酸の分子量分布を東ソー(株)製GPC測定装置で調べ、溶離水に含まれるポリスチレンスルホン酸中の分子量5000を超える高分子ポリスチレンスルホン酸の割合を求めた。結果を表1および表2に示す。
【0029】
試験例2
架橋度が14%のゲル型強酸性陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)「ダイヤイオン USK114」(試作品))(水分保有能力が33.3%)を使用した以外は試験例1と同様にして、循環タンク内の循環液中のポリスチレンスルホン酸量および硫酸イオン量、ゲル型強酸性陽イオン交換樹脂のイオン交換容量を測定し、且つ高分子ポリスチレンスルホン酸の割合を求めた。結果を表1および表2に示す。
【0030】
試験例3
架橋度が12%のゲル型強酸性陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)「ダイヤイオン USK112」(試作品))(水分保有能力が35.8%)を使用した以外は試験例1と同様にして、循環タンク内の循環液中のポリスチレンスルホン酸量および硫酸イオン量、ゲル型強酸性陽イオン交換樹脂のイオン交換容量を測定し、且つ高分子ポリスチレンスルホン酸の割合を求めた。結果を表1および表2に示す。
【0031】
比較試験例1
架橋度が8%のゲル型強酸性陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)「ダイヤイオン SKN1」)(水分保有能力が48.7%)を使用した以外は試験例1と同様にして、循環タンク内の循環液中のポリスチレンスルホン酸量および硫酸イオン量、ゲル型強酸性陽イオン交換樹脂のイオン交換容量を測定し、且つ高分子ポリスチレンスルホン酸の割合を求めた。結果を表1および表2に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
【発明の効果】
以上説明した本発明によれば、加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水系の脱塩塔において、一次冷却水を浄化するゲル型強酸性陽イオン交換樹脂の使用寿命を著しく長くすることが出来、その結果、放射性廃棄物量を低減することが出来る脱塩塔が提供され、本発明の工業的な価値は顕著である。
【図面の簡単な説明】
【図1】加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水の浄化ラインを示す概略図
【符号の説明】
12:原子炉
13:一次冷却材循環ライン
14:蒸気発生器
31:化学体積制御循環ライン
33:混床脱塩塔
34:単床脱塩塔
35:単床脱塩塔
36:体積制御タンク
41:ホウ酸回収ライン
43:単床脱塩塔
44:混床脱塩塔
45:ホウ酸濃縮装置
46:ホウ酸濃縮タンク
53:混床脱塩塔
54:純水タンク
Claims (2)
- 加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水が流れる化学体積制御系とホウ酸回収系および使用済み燃料ピット系の脱塩塔に、水分保有能力30〜40%および架橋度12〜16重量%のゲル型強酸性陽イオン交換樹脂を充填してなることを特徴とする加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水系脱塩塔。
- ゲル型強酸性陽イオン交換樹脂の架橋度が12〜14重量%である請求項1記載の一次冷却水系脱塩塔。
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JP2003102038A JP2004309268A (ja) | 2003-04-04 | 2003-04-04 | 加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水系脱塩塔 |
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JP2007188847A (ja) * | 2006-01-16 | 2007-07-26 | Toshiba Fuel Cell Power Systems Corp | 燃料電池発電システム |
-
2003
- 2003-04-04 JP JP2003102038A patent/JP2004309268A/ja not_active Withdrawn
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