JP2004307239A - 層状構造を有する酸化アルミニウム耐摩耗性部材及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】異方性を有する結晶から構成される高破壊靱性材料の表面に、粒径の小さな等軸晶の結晶からなる耐摩耗層を配した少なくとも2層構造を有する耐摩耗層/高破壊靱性層の複層酸化アルミニウム焼結体を製造する方法であって、(1)不純物レベルを上回る酸化マグネシウムを含有しない酸化アルミニウム分が少なくとも90%の酸化アルミニウム粉末を、成形、又は、成形の後、仮焼結することにより成形体を作製する、(2)耐摩耗層形成部分に、マグネシウムイオン、又はマグネシウム化合物の少なくとも1種類を含む成分を付着させる、(3)これらを本焼結する、ことを特徴とする複層酸化アルミニウム焼結体の製造方法、該方法により作製された複層酸化アルミニウム焼結体、及び耐摩耗性構造部材。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、層状構造を有する耐摩耗性酸化アルミニウム部材の製造方法に関するものであり、更に詳しくは、部材の表面層の、粒径の小さな等軸晶の結晶からなる耐摩耗層と、内部の、異方性を有する結晶から構成される高破壊靱性層との少なくとも2層構造を有する耐摩耗/高破壊靱性の複層酸化アルミニウム部材の製造方法及び該方法により作製された耐摩耗層/高破壊靱性層の複層酸化アルミニウム焼結体に関するものである。本発明により作製された酸化アルミニウム耐摩耗性部材は、例えば、耐摩耗性と高い破壊靱性が要求される機械の摺動部品、鉱石や粉体、あるいは、スラリー等の移送管内張、ブラストノズル、メカニカルシール、切削工具、金型、粉砕機部品などの構造材料のみならず、高い機械的信頼性と耐摩耗性、及び生体的、化学的に不活性なことが要求される人工関節、歯科材料などの生体代替部品や半導体製造装置等の構造部材として有用である。
【0002】
【従来の技術】
一般に、酸化アルミニウムは、化学的に安定であり、優れた硬さと適度な機械的強度を有しており、かつ資源が豊富で安価であるとともに、他の構造用セラミックスと比べて耐摩耗性に優れている。また、酸化アルミニウムは、生体毒性が無く、食品工業用機械部材、人工関節等の生体材料としても問題がない。また、酸化アルミニウムは、極めて安定な化合物であるため、半導体製造用機械部品などの極端に活性不純物を嫌う用途にも使用可能である。更に、酸化アルミニウムは、窯業製品などの製造機械部品としても、酸化アルミニウムが若干混入しても着色等の欠陥の原因とならないため、使用することができる。金属工業においても、酸化アルミニウムは、鉱石中の不純物として多量に含有されているため、鉱石に混入しても容易に除去可能である。
【0003】
以上のような理由により、酸化アルミニウムは、多種の耐摩耗材料として広く使用されている。しかし、酸化アルミニウム焼結体は、材料の信頼性の指標である破壊靱性が劣るため、大きな衝撃の加わる部材や高い信頼性を要求される部材には、耐摩耗性は、酸化アルミニウムよりも劣るものの、窒化ケイ素や酸化ジルコニウムなどの構造用セラミックスが使用されてきている。
【0004】
酸化アルミニウム焼結体の耐摩耗性を更に向上させる手段として、例えば、焼結体全体に添加物を加えた材料が報告されている(例えば、特許文献1〜3参照)が、これらは、耐摩耗性に主眼を置いたものであり、材料の信頼性の指標である破壊靱性を考慮していない。
【0005】
一方、破壊靱性の向上を目的とし、例えば、焼結体の微細組織を制御した材料が報告されている(例えば、特許文献4〜9参照)。また、異常粒成長抑制の目的で、市販の多くの酸化アルミニウム焼結体に酸化マグネシウムが添加されているが、逆に、マグネシウム無添加で異常粒を均一に生成させた焼結体は、強度は低いが、破壊靱性が大幅に向上し、欠陥許容性の向上のみならず、加工の際の欠け、チッピングが減少することが知られている(非特許文献1参照)。しかし、これらの材料は、アスペクト比が大きく、かつ粒径の比較的大きな結晶粒から構成される組織を特徴とするため、比較的高い温度での焼結が必要となり、耐摩耗性が悪化する。
【0006】
また、耐摩耗性と破壊靱性の両立を目指した材料として、例えば、酸化アルミニウム焼結体の表面から周期律表の3a、4a、5a、6a族元素、Fe、Ni、Co、Siなどの元素を拡散させた材料(特許文献10参照)、焼結体全体に鉄等を添加し、雰囲気制御下での熱処理により、表面改質層を形成した材料(特許文献11、12参照)などが知られている。また、表面層と内部層で異なる酸化物を添加した粉末を積層し、同時に焼結する方法(特願平2002−173188)が知られている。しかし、これらは、表面改質処理の工程数の増加や高価な雰囲気制御を必要とする。酸化アルミニウム焼結体は、構造用セラミックスとしては比較的安価な材料であるため、当該技術分野では、簡便、かつ安価な方法により作製できる、耐摩耗性と高い破壊靱性を同時に満足する構造部材の開発が強く求められていた。
【0007】
【特許文献1】
特開平7−206514号公報
【特許文献2】
特開平7−237961号公報
【特許文献3】
特開2001−302336号公報
【特許文献4】
特開平7−257963号公報
【特許文献5】
特開平7−277814号公報
【特許文献6】
特開平10−158055号公報
【特許文献7】
特開平11−071168号公報
【特許文献8】
特開平11−1365号公報
【特許文献9】
特開2001−322865号公報
【特許文献10】
特開平6−16468号公報
【特許文献11】
特開平9−328447号公報
【特許文献12】
特開2001−316171号公報
【非特許文献1】
Y. Yoshizawa et. al., J. Ceram. Soc. Jpn., 108 (2000) 558
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、上記従来技術の諸問題を抜本的に解決することを可能とする新しい酸化アルミニウム部材の製造方法を開発することを目標として鋭意研究を積み重ねた結果、部材の表面層と内部層に対する要求特性の違いに着目し、耐摩耗性や強度が要求される表面層には、微細な結晶粒から構成される微細組織を有し、内部層には、高い破壊靱性が得られる、アスペクト比が大きく、かつ粒径の比較的大きな結晶粒から構成される微細組織を有する耐摩耗部材を開発し、種々実験を試みた結果、結晶粒成長抑制剤をほとんど含有しない酸化アルミニウム成形体、又は、その仮焼結体の耐摩耗性を付与したい部分に、安価なマグネシウムイオンを塗布した後、通常の焼結を行うという極めて簡便な操作のみで、高い耐摩耗性と破壊靱性を高いレベルで両立させることが可能であることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、安価で耐摩耗性と破壊靱性が高いレベルで両立した酸化アルミニウム耐摩耗性部材の製造方法を提供することを目的とするものである。また、本発明は、優れた耐摩耗性を有する表面層と破壊靱性が5MPa・m1/2以上の内部層との少なくとも2層からなる酸化アルミニウムを主成分とする耐摩耗部材であって、マグネシウムをほとんど含有しない酸化アルミニウム成形体、又は仮焼結体に、マグネシウムを塗布した後、本焼結を行うことによって作製される酸化アルミニウムを主成分とする耐摩耗部材を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)異方性を有する結晶から構成される高破壊靱性材料の表面に、粒径の小さな等軸晶の結晶からなる耐摩耗層を配した少なくとも2層構造を有する耐摩耗層/高破壊靱性層の複層酸化アルミニウム焼結体を製造する方法であって、(a)不純物レベルを上回る酸化マグネシウムを含有しない酸化アルミニウム分が少なくとも90%の酸化アルミニウム粉末を、成形、又は、成形の後、仮焼結することにより成形体を作製する、(b)耐摩耗層形成部分に、マグネシウムイオン、又はマグネシウム化合物の少なくとも1種類を含む成分を付着させる、(c)これらを本焼結する、ことを特徴とする複層酸化アルミニウム焼結体の製造方法。
(2)酸化アルミニウム粉末の成形体、又は、仮焼結体をマグネシウム化合物を含む粉末に埋没させ、本焼結を行うことを特徴とする前記(1)記載の複層酸化アルミニウム焼結体の製造方法。
(3)酸化アルミニウム粉末の成形体、又は、仮焼結体に、マグネシウムイオン、又はマグネシウム化合物の少なくとも1種類を含む溶液、又はスラリーを塗布、又は含浸させることを特徴とする前記(1)記載の複層酸化アルミニウム焼結体の製造方法。
(4)酸化アルミニウム粉末の成形体、又は仮焼結体に、加速器を用いてマグネシウムイオンを打ち込むことを特徴とする前記(1)記載の複層酸化アルミニウム焼結体の製造方法。
(5)上記マグネシウムイオン、又はマグネシウム化合物を付着させた成形体、又は仮焼結体を、常圧焼結、ホットプレス、又は熱間静水圧プレスの内から選ばれた1種類以上の方法によって焼結することを特徴とする前記(1)記載の複層酸化アルミニウム焼結体の製造方法。
(6)前記(1)から(5)のいずれかに記載の方法で作製された、乾式のピン・オン・ディスク法で測定される比摩耗量が1×10−9mm2 /Nまでの高い耐摩耗性を有する表面層と、破壊靱性が少なくとも5MPa・m1/2 の内部層との少なくとも2層からなる耐摩耗層/高破壊靱性層の複層酸化アルミニウム焼結体。
(7)切断面の組織観察において、結晶粒のアスペクト比が1.5までで粒径が3μmまでの結晶粒が少なくとも80面積%を占める表面層と、アスペクト比が少なくとも1.5で粒径が少なくとも3μmの粒子が少なくとも30面積%含まれる内部層とを有する前記(6)記載の複層酸化アルミニウム焼結体。
(8)前記(6)又は(7)記載の複層酸化アルミニウム焼結体を構成要素として含む耐摩耗性構造部材。
【0011】
【発明の実施の形態】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、材料の表面と内部に要求される特性を考慮し、材料表面は、耐摩耗性に優れる、アスペクト比が小さく微細な結晶粒組織とし、内部は、破壊靱性に優れる、アスペクト比が大きく、かつ粒径の大きな結晶粒から構成される微細組織としたことを特徴とする複層酸化アルミニウム焼結体の製造方法に係るものである。通常、単一組成の焼結体では、微細な結晶粒から構成される組織が得られる焼結温度と、アスペクト比が大きく、かつ粒径の大きな結晶粒から構成される組織が得られる焼結温度は、大きく異なっており、これらを同一焼結温度で同時に焼結することは困難である。
このため、本発明では、通常、高強度酸化アルミニウム焼結体の作製の際に添加される結晶粒成長抑制剤を含有しない酸化アルミニウム分が90%以上の粉末を使用する。本発明において、原料の酸化アルミニウム材料としては、高純度酸化アルミニウム粉末、低ソーダ酸化アルミニウム粉末、普通純度酸化アルミニウム粉末などが使用されるが、望ましくは、焼結体にアスペクト比の大きな粒子が生成するための酸化物を添加した高純度酸化アルミニウム粉末、あるいは、マグネシウム分を含有しない低ソーダ酸化アルミニウム粉末を使用する。
【0012】
上記の粉末を、金型成形、冷間静水圧成形、鋳込み成形、排泥成形、ドクターブレード、押し出し等によって成形、又は、成形の後、仮焼結することにより成形体を作製する。このようにして作製した成形体、生加工を施した成形体、脱脂した成形体、あるいは、アスペクト比の大きな粒子が生成する温度以下で仮焼結した成形体に対し、表面耐摩耗層を形成したい箇所、又は全体に、高温での焼結過程で酸化マグネシウムとなる化合物、イオンを含有する成分を適宜の手段で付着させるが、好適には、これらの溶液、イオン、ガス、スラリー、あるいは粉末を塗布、打ち込み、あるいは含浸させる。成形体、仮焼結体の気孔率は、特に限定されず、内部層にアスペクト比の大きな粒子が生成する温度以下の仮焼結であれば良い。溶液、スラリーとしては、塩化マグネシウム水溶液、硝酸マグネシウム水溶液、マグネシウムエトキシドアルコール溶液、微粒酸化マグネシウム粉末のスラリーなどが例示される。しかし、本発明は、これらの材料に制限にされるものではなく、これらと同効のものであれば同様に使用することができる。
【0013】
上記の溶液、スラリーの塗布、含浸方法としては、例えば、噴霧、刷毛塗り、ディッピング、スクリーン印刷、インクジェット印刷、滴下等の方法が例示される。しかし、本発明は、これらの方法に制限にされるものではなく、これらと同効のものであれば同様に使用することができる。マグネシウム化合物、ないしイオンを含有する溶液、あるいはスラリーを塗布あるいは含浸させる方法以外にも、成形体、仮焼結体に加速器を用いてマグネシウムイオンを打ち込んだもの、マグネシウムを含有するガス中で処理し、成形体、あるいは、仮焼結体の表面層に、高温で処理することで酸化マグネシウムとなる化合物などを析出したものも同様に使用することができる。また、酸化アルミニウム粉末とマグネシウム化合物、あるいは、イオンを含有するスラリーを塗布し、成形体表面に肉盛りすることも可能である。焼結後の耐摩耗性表面層に含有されるマグネシウム量が少なすぎると十分な結晶粒成長抑制効果が出現しないため、焼結後の耐摩耗性表面層に含有されるマグネシウム量が、酸化マグネシウム換算で0.005重量%以上になるように溶液などの濃度、粘性、粒子径、塗布量、含浸量、塗布回数、含浸回数、本焼結条件などで調整する。表面層の厚さも、同様に調整可能である。
【0014】
上記の方法でマグネシウムを表面に塗布、あるいは、表面層に含浸させた成形体、仮焼結体を、内部層にアスペクト比の大きな粒子が十分に生成する温度で常圧焼結、ホットプレス、又は熱間静水圧プレスの内から選ばれた1種類以上の方法によって焼結することにより、表面層の、粒径の小さな等軸晶の結晶からなる耐摩耗層と、内部の、異方性を有する結晶から構成される高破壊靱性層との少なくとも2層構造を有する耐摩耗層/高破壊靱性層の複層酸化アルミニウム焼結体を製造する。焼結は、使用する原料粉末により適正な温度は異なるが、好適には、1400℃から1700℃の範囲である。また、上記のマグネシウムを表面に塗布などした成形体などを用いず、マグネシウムを含有しない酸化アルミニウム成形体、又は仮焼結体をマグネシウム化合物を含む粉末に埋没させ、あるいは、マグネシウムを含む雰囲気中で本焼結を行うことにより、同様の複層酸化アルミニウム焼結体を製造することも可能である。これらの方法により作製される複層焼結体の層境界は、明確な境界を有する必要はなく、連続的に変化するものでも同じ特性が得られる。
本発明の方法により、乾式のピン・オン・ディスク法で測定される比摩耗量が1×10−9mm2 /Nまでの高い耐摩耗性を有する表面層と、破壊靱性が少なくとも5MPa・m1/2 の内部層との少なくとも2層からなる耐摩耗層/高破壊靱性層の複層酸化アルミニウム焼結体、また、切断面の組織観察において、結晶粒のアスペクト比が1.5までで粒径が3μmまでの結晶粒が少なくとも80面積%を占める表面層と、アスペクト比が少なくとも1.5で粒径が少なくとも3μmの粒子が少なくとも30面積%含まれる内部層とを有する請求項6記載の複層酸化アルミニウム焼結体、及びこれらの複層酸化アルミニウム焼結体を構成要素として含む耐摩擦性構造部材を作製し、提供することができる。
【0015】
【実施例】
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
実施例
高靱性層の素材として、市販の高純度酸化アルミニウム粉末に粒成長促進剤を0.01重量%添加(実施例1、比較例1)した粉末と、市販の酸化マグネシウム無添加の低ソーダ酸化アルミニウム粉末(実施例2−1〜2−3、比較例2)を用いた。湿式で解砕、混合した粉末30gを52mm×44mmの超硬合金製の金型を使用し、40MPaの圧力で一軸成形した。その後、ゴム袋に封入し、冷間静水圧成形を行った。成形体の気孔率は、実施例1が46%、実施例2−1が43%であった。一部の成形体は、大気中、1000℃(実施例1、実施例2−2)、及び1500℃(実施例2−3)で仮焼結した。仮焼結体の気孔率は、実施例1、実施例2−2、実施例2−3がそれぞれ、29%、39%、3%であった。
【0016】
成形体、仮焼結体に硝酸マグネシウムの水溶液をハンドスプレーを用いて試料から30cmの距離から2回噴霧した(実施例1、2−1〜3)。なお、実施例2−3は、開気孔がほとんど存在しないため、噴霧した溶液は、仮焼結体に浸透せず、表面に堆積した。他の試料は、噴霧後、直ちに内部に浸透した。マグネシウム溶液を噴霧した成形体、仮焼結体を十分に乾燥の後、マグネシウム溶液を噴霧していない成形体(比較例1、2)とともに、大気中、1500〜1600℃で2時間、本焼結を行った。
【0017】
続いて、板状の焼結体から27×30mmの板状の試験片を機械加工により作製し、回転半径10mm、回転数172rpm、加重24.5N、試験時間10minの乾式ピン・オン・ディスク摩耗試験を行った。ボールには、市販の酸化アルミニウム焼結体ボールを使用した。また、焼結体から4×3×20mmの試験片を切り出し、JIS−R1607で制定される破壊靱性試験を行った。微細組織は、鏡面研磨、熱腐食した試験片を走査電子顕微鏡で観察し、0.4mm2の面積の酸化アルミニウム粒子の形態を写真に撮影した。そして、粒子径、アスペクト比、アスペクト比が1.5以上の粒子の面積割合を計測した。また、比較例として、市販の純度99%(比較例3)、99.9%(比較例4)の耐摩耗用酸化アルミニウム焼結体を同様に試験した。
【0018】
図1に、実施例2−1〜3の破面の走査電子顕微鏡写真を示す。写真左側が表面である。成形体、仮焼温度の上下に関係なく、ほぼ同一厚さの表面層が形成されていることが観察される。また、内部層との境界近傍を除き、表面層内は、表面からの距離によらず、均一な組織である。実施例2−3は、噴霧した溶液が内部に浸透せず、表面のみにマグネシウムが存在してたため、スピネルなどの化合物の生成や、表面から内部に向かって組織が連続的に変化することが予想されるが、実施例では、浸透させた試料と同等の組織を示しており、表面層の形成、厚さが仮焼結体の気孔率に依存しないことを示している。図2に、実施例2−2の表面層と内部層の境界部の破面の電子顕微鏡写真を示す。両層の境界には、反応層の形成も見られず、表面層が微細な結晶粒で構成され、内部層は、アスペクト比の大きな粗粒で構成される健全な複層焼結体であることが分かる。
表1に、作製した部材の破壊靱性、ボール・オン・ディスクによる摩耗率と組織観察による粒子の割合を示す。
【0019】
【表1】
【0020】
上記実施例に示されるように、本発明によって、単一層の焼結体に比べ、破壊靱性と耐摩耗性が高度に両立した焼結体を容易に得ることが可能である。
【0021】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明は、結晶粒成長抑制剤を含有しない純度90%以上の酸化アルミニウム成形体又は仮焼結体に、マグネシウムを含む溶液などを塗布した後、通常の焼結で製造される酸化アルミニウムを主成分とする耐摩耗性部材の製造方法に係るものであり、本発明によれば、(1)簡便、かつ安価な方法により、耐摩耗性と高い破壊靱性を同時に満たす酸化アルミニウム耐摩耗性構造部材を作製できる、(2)通常の焼結で耐摩耗性と破壊靱性が高度に両立した酸化アルミニウム耐摩耗性部材を製造することができる、(3)本発明の酸化アルミニウム耐摩耗性部材は、耐摩耗性と高い破壊靱性が要求される機械の摺動部品、半導体製造装置の部品等として有用である、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例2−1〜3の破面の走査電子顕微鏡写真を示す。
【図2】実施例2−2の表面層と内部層の境界部の破面の電子顕微鏡を示す。
Claims (8)
- 異方性を有する結晶から構成される高破壊靱性材料の表面に、粒径の小さな等軸晶の結晶からなる耐摩耗層を配した少なくとも2層構造を有する耐摩耗層/高破壊靱性層の複層酸化アルミニウム焼結体を製造する方法であって、(1)不純物レベルを上回る酸化マグネシウムを含有しない酸化アルミニウム分が少なくとも90%の酸化アルミニウム粉末を、成形、又は、成形の後、仮焼結することにより成形体を作製する、(2)耐摩耗層形成部分に、マグネシウムイオン、又はマグネシウム化合物の少なくとも1種類を含む成分を付着させる、(3)これらを本焼結する、ことを特徴とする複層酸化アルミニウム焼結体の製造方法。
- 酸化アルミニウム粉末の成形体、又は、仮焼結体をマグネシウム化合物を含む粉末に埋没させ、本焼結を行うことを特徴とする請求項1記載の複層酸化アルミニウム焼結体の製造方法。
- 酸化アルミニウム粉末の成形体、又は、仮焼結体に、マグネシウムイオン、又はマグネシウム化合物の少なくとも1種類を含む溶液、又はスラリーを塗布、又は含浸させることを特徴とする請求項1記載の複層酸化アルミニウム焼結体の製造方法。
- 酸化アルミニウム粉末の成形体、又は仮焼結体に、加速器を用いてマグネシウムイオンを打ち込むことを特徴とする請求項1記載の複層酸化アルミニウム焼結体の製造方法。
- 上記マグネシウムイオン、又はマグネシウム化合物を付着させた成形体、又は仮焼結体を、常圧焼結、ホットプレス、又は熱間静水圧プレスの内から選ばれた1種類以上の方法によって焼結することを特徴とする請求項1記載の複層酸化アルミニウム焼結体の製造方法。
- 請求項1から5のいずれかに記載の方法で作製された、乾式のピン・オン・ディスク法で測定される比摩耗量が1×10−9mm2 /Nまでの高い耐摩耗性を有する表面層と、破壊靱性が少なくとも5MPa・m1/2 の内部層との少なくとも2層からなる耐摩耗層/高破壊靱性層の複層酸化アルミニウム焼結体。
- 切断面の組織観察において、結晶粒のアスペクト比が1.5までで粒径が3μmまでの結晶粒が少なくとも80面積%を占める表面層と、アスペクト比が少なくとも1.5で粒径が少なくとも3μmの粒子が少なくとも30面積%含まれる内部層とを有する請求項6記載の複層酸化アルミニウム焼結体。
- 請求項6又は7記載の複層酸化アルミニウム焼結体を構成要素として含む耐摩耗性構造部材。
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