JP2004301276A - 変速機のグリース封止構造 - Google Patents
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Abstract
【課題】ケーシング内に封入されるグリースの種類によらず、オイルシールの耐久性を向上させることができる変速機のグリース封止構造を提供する
【解決手段】グリース封止構造12は、軸受32の転動体38と、オイルシール40と、の間におけるグリースの移動を規制するためのシールド状部材42を、軸受32の空きスペース32Aに備える。
【選択図】 図2
【解決手段】グリース封止構造12は、軸受32の転動体38と、オイルシール40と、の間におけるグリースの移動を規制するためのシールド状部材42を、軸受32の空きスペース32Aに備える。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば産業機器、輸送機器等の分野で用いられる変速機のグリース封止構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、産業機器、輸送機器等では例えば歯車伝達機構等の変速機構等をケーシングに収容した構造の変速機が多く用いられている。このような変速機は一般的に、変速機構を潤滑するための潤滑剤がケーシング内に封入されている。潤滑剤としては、液状の潤滑油又はグリースが用いられ、このような潤滑剤は一般的に良好な潤滑を実現するための様々な添加剤を含有している。
【0003】
変速機は、潤滑剤をケーシング内に封止するためにオイルシールが備えられている。オイルシールはそのリップ部において変速機構の軸等の部材と摺接しつつ潤滑剤の漏れを防止するものであり、リップ部の摩耗を低減するためには、摺接する相手部材の振れを極力小さくすることが重要である。
【0004】
従って、オイルシールは一般的に、オイルシールが摺接する相手部材を回転自在に支持するための軸受の近傍に配設されている。言い換えれば、一般的にオイルシールの近傍には、オイルシールが摺接する相手部材を回転自在に支持するための軸受が配設されている(例えば、特許文献1参照。)。軸受としては内輪、外輪及び転動体を有する、例えば、ころ軸受、玉軸受等が多く用いられる。尚、一般的に、軸受の潤滑にも変速機構と共通の潤滑油又はグリースが使用される。
【0005】
このようなオイルシールを用いた潤滑剤の封止構造は、潤滑油、グリースの種類を問わず多くの変速機に広く採用されている。
【0006】
【特許文献1】
特開2002―130390号公報(第2図)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、近年、変速機に要求される性能は非常に厳しくなっており、変速機の動力伝達部(歯車、軸、軸受)のコンパクト化、長寿命化と共にオイルシールのリップ部についても耐久性向上が求められている。
【0008】
ところが、動力伝達部の性能向上のためのグリースの特性(ベースとなるオイル増ちょう剤、添加剤等により決まる)と、オイルシールの性能向上のためのグリースの特性は必ずしも一致しないという問題がある。即ち、動力伝達部の長寿命化に寄与するグリースを用いてもオイルシールのリップ部の耐久性は必ずしも向上しない。
【0009】
尚、オイルシールのリップ部の長寿命化に寄与するグリースを用いると、変速機構について所望の潤滑が得られず、動力伝達部の耐久性が低下することがある。
【0010】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであって、ケーシング内に封入されるグリースの種類によらず、オイルシールの耐久性を向上させることができる変速機のグリース封止構造を提供することをその課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、変速機構及び該変速機構を潤滑するためのグリースを収容するためのケーシングと、前記グリースを前記ケーシング内に封止するためのオイルシールと、内輪、外輪及び転動体を有してなり、前記オイルシールの近傍で前記変速機構を回転自在に支持する軸受と、を含んでなる変速機のグリース封止構造において、前記軸受として、前記内輪及び外輪の一方が他方よりも前記オイルシール側に突出した、空きスペースを有する軸受を備え、且つ、前記軸受の転動体と、前記オイルシールと、の間における前記グリースの移動を規制するためのシールド状部材を前記軸受の空きスペースに備えたことにより上記課題を解決したものである。
【0012】
即ち、グリースの移動を規制するためのシールド状部材を軸受の転動体と、オイルシールと、の間に、備えることで、グリースと共にオイルシールに到達する摩耗粉等の量を低減することができ、グリースが含有する添加剤の種類に拘わらずグリースによるオイルシールのリップ部の劣化を抑制し、オイルシールの耐久性を向上させることができる。
【0013】
更に、変速機構の潤滑のために好適なグリースを使用することができるので、変速機構についても耐久性を向上させることができる。
【0014】
又、軸受の転動体よりもオイルシール側にシールド状部材を配設するので軸受には充分にグリースが給脂されると共に、グリースはシールド状部材に堰き止められて軸受の周囲に留まりやすくなり、軸受の耐久性を向上させる効果も得られる。
【0015】
又、軸受の空きスペースを利用してシールド状部材を取付けているので、シールド状部材のためのスペースを特別に設ける必要がなく、それだけ変速機のコンパクト化を図ることができる。
【0016】
尚、前記シールド状部材を、前記軸受の外輪及び内輪のいずれか一方に連結された部材に近接して相対的に回転し、ラビリンスを構成するように、前記軸受の外輪及び内輪の他方に取付けるとよい。
【0017】
このように、ラビリンスを構成するようにシールド状部材を配設することにより、オイルシールに触れるグリースと、変速機の潤滑に使用され、摩耗粉を含んだグリースと、を確実に分離することができ、オイルシールの耐久性を確実に向上させることができる。更に、シールド状部材は他方側の部材に接触しないので、シールド状部材自体の耐久性も向上する。又、シールド状部材が近接する相手部材として、軸受の一部ではなく、例えば、軸受の外輪又は内輪に結合されたケーシング等の部材を利用することにより、シールド状部材の設計の自由度が高くなるので、それだけグリースの移動を規制するために好適な構成のシールド状部材を配設することができる。
【0018】
又、前記シールド状部材を前記軸受の外輪及び内輪のいずれか一方に連結された部材に摺接して相対的に回転するように、前記軸受の外輪及び内輪の他方に取付けてもよい。尚、この場合、シールド状部材の摺接部分をゴム部材で構成するとよい。
【0019】
このように、他の部材に摺接するようにシールド状部材を配設することにより、グリースの移動を一層確実に低減することができ、オイルシールの耐久性を一層向上させることができる。特に、摺接部分をゴム部材とすることで、より大きなシールド効果を得てグリースの移動を著しく低減でき、更に、摺接部分の磨耗を低減する効果も得られる。尚、この場合も、シールド状部材が摺接する相手部材として、軸受の一部ではなく、例えば、軸受の外輪又は内輪に結合されたケーシング等の部材を利用することで、シールド状部材の設計の自由度が高くなり、それだけグリースの移動を規制するために好適な構成のシールド状部材を配設することができる。
【0020】
ここで、シールド状部材を他の部材に近接するように配設するか、或いは他の部材に摺接するように配設するかは、オイルシール、シールド状部材の材質、形状、グリースとの相性等を考慮して、オイルシール、シールド状部材の耐久性を考慮し、適宜選択すればよい。
【0021】
又、前記シールド状部材を前記ケーシングに取付けてもよい。
【0022】
このように、ケーシングにシールド状部材を取付けるようにすることで、シールド状部材の設計の自由度を更に高めることができる。更に、この場合、軸受の内輪及び外輪のうち、ケーシングに対して相対的に回転する方に近接又は摺接するようにシールド状部材を取付けてもよい。
【0023】
又、前記シールド状部材は、前記軸受の転動体及び前記オイルシールを隔てるためのリング板状の隔壁部と、該隔壁部の内周及び外周のいずれか一方から軸方向に突出する円筒部と、を有してなる断面L字形状の環状体とするとよい。
【0024】
断面L字形状の環状体であれば、例えば、円筒部を利用して軸受の外輪又は内輪に嵌着することができ、変速機への装着が容易である。又、軸受の外輪又は内輪に結合されたケーシング等の部材に嵌着することも容易である。更に、断面L字形状の環状体は、例えばプレス加工等により容易に製造することができるので、生産性が良く、低コストである。
【0025】
又、前記シールド状部材は、前記軸受の転動体及び前記オイルシールを隔てるためのリング板状の隔壁部と、該隔壁部の内周から軸方向の前記転動体側に突出する内側円筒部と、前記隔壁部の外周から軸方向の前記転動体側に突出する外側円筒部と、を有してなる断面コ字形状の環状体としてもよい。
【0026】
断面コ字形状の環状体も、例えば、内側円筒部又は外側円筒部を利用して軸受の外輪又は内輪に嵌着することができ、変速機への装着が容易である。又、軸受の外輪又は内輪に結合されたケーシング等の部材に嵌着することも容易である。更に、コ字が転動体側に開口しているので、シールド状部材の内側にグリースが収容され、それだけグリースの移動を規制する効果が大きい。更に、内側円筒部及び外側円筒部の非固定側がケーシング等の部材に近接又は摺接するように配設することにより、近接面積又は摺接面積が大きくなり、これによりグリースの移動を一層確実に規制することができる。尚、断面コ字形状の環状体も、例えばプレス加工等により容易に製造することができるので、生産性が良く、低コストである。
【0027】
又、前記グリースを第1のグリースとして封入すると共に、前記シールド状部材と、前記オイルシールと、の間に第2のグリースを封入するとよい。
【0028】
このようにシールド状部材と、オイルシールと、の間に第2のグリースを封入することで第1のグリースが殆ど侵入できなくなるので、オイルシールに到達する第1のグリースの量を著しく低減することができる。
【0029】
又、第2のグリースでオイルシールのリップ部を潤滑することができるので、オイルシールの耐久性を大幅に向上させることができる。特に、第1のグリースとして変速機構の潤滑のために好適なグリースを選択し、第2のグリースとしてオイルシールの潤滑のために好適なグリースを選択すれば、変速機全体の耐久性を大幅に向上させることができる。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0031】
図1は、本実施形態に係る変速機10の全体構造を示す側断面図である。図2は、同変速機のグリース封止構造12を拡大して示す側断面図である。
【0032】
変速機10は、グリース封止構造12に特徴を有しているが、本発明の理解のため、まず変速機10の全体構造について簡単に説明することとする。
【0033】
変速機10は、変速機構として、偏心体14を有する偏心体軸16と、偏心体14に回転自在に取付けられた外歯部材18と、該外歯部材18に内接噛合する内歯部材19と、前記外歯部材18の両側に配置され、該外歯部材18の自転成分のみを伝達する手段を介して該外歯部材18に連結されたキャリヤ部材20と、を備えた偏心揺動型内接噛合遊星歯車機構を備えており、内部には潤滑剤としてグリースが封入されている。
【0034】
偏心体軸16は、外歯部材18の軸方向両側に配置された2つの軸受21を介してキャリヤ部材20に回転自在に支持されている。
【0035】
偏心体軸16には位相差120°の3つの偏心体14が一体化して形成されている。それぞれの偏心体14には軸受22を介して外歯部材18が取付けられている。尚、外歯部材18は3枚複列で備えられ、これにより伝達容量の増大、強度の維持、回転バランスの保持が図られている。
【0036】
外歯部材18の外周にはトロコイド歯形や円弧歯形等の外歯(図示省略)が設けられている。この外歯には内歯部材19が内接噛合している。
【0037】
内歯部材19は、ピン状体でケーシング24に回転し易く保持されている。
【0038】
各外歯部材18にはそれぞれ円周方向適宜な間隔で複数の内ローラ孔26が形成され、各内ローラ孔26にはそれぞれ内ローラ28及び内ピン30が挿入されている。
【0039】
これら内ピン30は、両端においてキャリヤ部材20に連結されている。キャリヤ部材20は、軸受32を介してケーシング24に回転自在に支持されている。
【0040】
キャリヤ部材20とケーシング24との間の隙間における、軸受32よりも外側には、グリース封止構造12を構成するオイルシール40が装着され、これによりグリースがケーシング24内に封止されている。
【0041】
軸受32は、内輪34、外輪36及び転動体38を有してなる円錐ころ軸受で、内輪34の一部が外輪36よりもオイルシール40側に突出し、内輪34とケース24との間に空きスペース32Aを有している。尚、外輪36もその一部が内輪34よりも軸方向内側に突出している。
【0042】
次に、グリース封止構造12について説明する。
【0043】
グリース封止構造12は、軸受32の転動体38と、オイルシール40と、の間におけるグリースの移動を規制するためのシールド状部材42を、軸受32の空きスペース32Aに備えたことを特徴としている。
【0044】
シールド状部材42は、転動体38及びオイルシール40を隔てるためのリング板状の隔壁部44と、該隔壁部44から軸方向に突出する円筒部46と、を有してなる断面L字形状の環状体とされている。
【0045】
このシールド状部材42は、軸受32の外輪36に連結されたケーシング24に隔壁部44の外周において近接して相対的に回転し、ラビリンスを構成するように、円筒部46の内周において軸受32の内輪34に嵌着されている。
【0046】
尚、円筒部46の内周には径方向内側に突出する環状突起46Aが形成されており、該環状突起46Aは軸受32の内輪34の外周に形成された環状溝部に嵌合している。これにより、軸受32からのシールド状部材42の軸方向への脱落が防止されている。
【0047】
次に、変速機10の作用について説明する。
【0048】
偏心体軸16が1回転すると、各偏心体14も1回転する。これら偏心体14が1回転することにより、各外歯部材18も偏心体軸14の周りで揺動回転を行おうとするが、内歯部材19によりその自転が拘束されるため、各外歯部材18は、内歯部材19に内接しながら僅かに自転しつつ公転することになる。
【0049】
いま、例えば外歯部材18の歯数をN、内歯部材19の歯数をN+1とした場合、その歯数差は1である。そのため、偏心体軸14の1回転毎に外歯部材18はケーシング24と一体化された内歯部材19に対して1歯分だけずれることとなる。即ち、偏心体軸16の1回転は外歯部材18の−1/Nの回転に減速されて伝達されたこととなる。
【0050】
各外歯部材18の回転は、内ローラ孔26と内ローラ28との隙間によってその公転成分が吸収され、自転成分のみが内ピン30を介してキャリヤ部材20に伝達される。
【0051】
この結果、偏心体軸16とキャリヤ部材20との間で減速比1/Nの減速又は増速比Nの変速が実現される。
【0052】
尚、キャリヤ部材20を固定して、偏心体軸16及びケーシング24の間で増減速する変速機として使用することもできる。又、偏心体軸16を固定して、キャリヤ部材20及びケーシング24間で増減速する変速機として使用することもできる。
【0053】
変速機10内に封入されたグリースは、外歯部材18等の回転に伴って変速機10内に飛沫、分散し、オイルシール40の近傍にも一部のグリースが移動する。
【0054】
次に、グリース封止構造12の作用について説明する。
【0055】
グリース封止構造12は、軸受32の転動体38と、オイルシール40と、の間であって軸受32に、グリースの移動を規制するためのシールド状部材42を備えているので、軸受32からオイルシール40に移動するグリースの量が低減されている。
【0056】
特に、シールド状部材42はラビリンス効果を奏するようにケーシング24に近接して配設されているので、オイルシール40に到達するグリースの量が確実に低減されている。従って、グリースに含まれる摩耗粉に起因するオイルシール40の劣化を抑制することができ、変速機10はオイルシール40の耐久性が高い。
【0057】
又、外歯部材18、軸受32等の変速機構の潤滑のために好適なグリースを使用することができるので、変速機10は、外歯部材18、軸受32等の変速機構の耐久性も高い。
【0058】
更に、シールド状部材42はケーシング24に接触しないので、シールド状部材42自体の耐久性も高い。
【0059】
又、シールド状部材42は軸受32の転動体38よりもオイルシール40側に配設されているので、シールド状部材42のために軸受32に到達するグリースの量が減少することがなく、却ってグリースがシールド状部材42に堰き止められて軸受32の周囲に留まりやすくなるので、変速機10は軸受32の耐久性も高い。
【0060】
即ち、オイルシール40、シールド状部材42、外歯部材18、軸受32等の変速機構はいずれも耐久性が高く、変速機10は信頼性が高い。
【0061】
又、シールド状部材42が近接する相手部材として、軸受32自体ではなく、軸受32の外輪36に結合されたケーシング24を利用しているので、シールド状部材42は設計の自由度が高い。
【0062】
又、軸受32の空きスペース32Aを利用してシールド状部材42を取付けており、シールド状部材34Aのために特別なスペースを設けていないので、それだけ変速機10はコンパクトである。
【0063】
又、シールド状部材42は断面L字形状の環状体であるので、円筒部46において軸受32の内輪34への嵌着が容易である。
【0064】
更に、シールド状部材42は断面L字形状の環状体であるので、例えばプレス加工等により容易に製造することができ、生産性が良く、変速機10は低コストである。
【0065】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
【0066】
図3は、本第2実施形態に係る変速機のグリース封止構造60を拡大して示す側断面図である。
【0067】
グリース封止構造60は、前記第1実施形態に係るグリース封止構造12に対し、シールド状部材62の隔壁部62Aの外周にゴム部材62Bが備えられ、シールド状部材62がゴム部材62Bにおいてケーシング24に摺接するように配設されたことを特長としている。他の構成については前記第1実施形態のグリース封止構造12と同様であるので説明を省略する。
【0068】
このように、ケーシング24に摺接するようにシールド状部材62を配設することにより、ラビリンス効果による場合よりも一層確実にオイルシール40へのグリースの移動を低減することができ、オイルシール40の耐久性を一層向上させることができる。特に、摺接部分がゴム部材62Bであるので、グリースの移動を著しく低減でると共に、摺接しても磨耗しにくく耐久性が高い。
【0069】
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
【0070】
図4は、本第2実施形態に係る変速機のグリース封止構造70を拡大して示す側断面図である。
【0071】
グリース封止構造70は、前記第1実施形態に係るグリース封止構造12に対し、シールド状部材72が、軸受32の転動体38及びオイルシール40を隔てるためのリング板状の隔壁部72Aと、隔壁部72Aの内周から軸方向の転動体38側に突出する内側円筒部72Bと、隔壁部72Aの外周から軸方向の転動体38側に突出する外側円筒部72Cと、を有してなる断面コ字形状の環状体とされたことを特徴としている。他の構成については前記第1実施形態のグリース封止構造12と同様であるので説明を省略する。
【0072】
シールド状部材72は、転動体38側に開口するように配設され、シールド状部材72の内側にグリースを収容することができるので、それだけグリースの移動を規制する効果が大きい。更に、外側円筒部72Cにおいてケーシング24に近接するように配設され、近接面積が大きいので、それだけグリースの移動を規制するラビリンス効果が大きく、この点でもグリースの移動を規制する効果が大きい。
【0073】
又、断面コ字形状の環状体も断面L字形状の環状体と同様に、例えばプレス加工等により容易に製造することができるので、シールド状部材72もシールド状部材42と同様に生産性が良く、低コストである。
【0074】
尚、上記第1〜第3実施形態は、それぞれシールド状部材42、62、72だけでオイルシール40へのグリースの移動を規制しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、変速機構を潤滑するためのグリースを第1のグリースとしてシールド状部材42、62、72よりも歯側の噛合い側に封入し、更にシールド状部材42、62、72と、オイルシール40と、の間に第2のグリースを封入してもよい。
【0075】
このようにシールド状部材42、62、72と、オイルシールと、の間に第2のグリースを封入することでシールド状部材42、62、72と、オイルシールと、の間には第1のグリースが殆ど侵入できなくなるので、オイルシール40に到達する第1のグリースの量を著しく低減することができる。又、第2のグリースでオイルシール40のリップ部を潤滑することができるので、オイルシール40の耐久性を大幅に向上させることができる。
【0076】
特に、第1のグリースとして変速機構の潤滑のために好適なグリースを選択し、第2のグリースとしてオイルシールの潤滑のために好適なグリースを選択すれば、変速機10の耐久性を全体として大幅に向上させることができる。
【0077】
又、上記第1〜第3実施形態において、軸受32は円錐ころ軸受であるが、本発明はこれに限定されるものではなく、内輪及び外輪の一方が他方よりもオイルシール側に突出した、空きスペースを有する軸受であれば、例えば玉軸受等の他のタイプの軸受を用いてもよい。
【0078】
又、上記第1〜第3実施形態は、変速機構として偏心揺動型内接噛合遊星歯車機構を備える変速機10にグリース封止構造12、60、70を、適用した例を示したものであるが、本発明はこれに限定されるものではなく、潤滑剤としてグリースが封入される変速機であれば、例えば、遊星ギヤ、スパーギヤ、ヘルカルギヤ、ベベルギヤ、ハイポイドギヤ、ウォームギヤ等の他のタイプのギヤで構成される変速機構、摩擦ローラで構成された変速機構、チェーン及びスプロケットで構成された変速機構等の他のタイプの変速機構を備える変速機に対しても適用可能である。
【0079】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ケーシング内に封入されるグリースの種類によらず、オイルシールの耐久性を向上させることが可能となるという優れた効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る変速機の全体構造を示す側断面図
【図2】同変速機のグリース封止構造を拡大して示す側断面図
【図3】本発明の第2実施形態に係る変速機のグリース封止構造を拡大して示す側断面図
【図4】本発明の第3実施形態に係る変速機のグリース封止構造を拡大して示す側断面図
【符号の説明】
10…変速機
12、60、70…変速機のグリース封止構造
18…外歯歯車(変速機構)
20…キャリヤ部材(変速機構)
22…内歯歯車(変速機構)
24…ケーシング
32…軸受
32A…空きスペース
34…内輪
36…外輪
38…転動体
40…オイルシール
42、62、72…シールド状部材
44、62A、72A…隔壁部
46…円筒部
62B…ゴム部材
72B…内側円筒部
72C…外側円筒部
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば産業機器、輸送機器等の分野で用いられる変速機のグリース封止構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、産業機器、輸送機器等では例えば歯車伝達機構等の変速機構等をケーシングに収容した構造の変速機が多く用いられている。このような変速機は一般的に、変速機構を潤滑するための潤滑剤がケーシング内に封入されている。潤滑剤としては、液状の潤滑油又はグリースが用いられ、このような潤滑剤は一般的に良好な潤滑を実現するための様々な添加剤を含有している。
【0003】
変速機は、潤滑剤をケーシング内に封止するためにオイルシールが備えられている。オイルシールはそのリップ部において変速機構の軸等の部材と摺接しつつ潤滑剤の漏れを防止するものであり、リップ部の摩耗を低減するためには、摺接する相手部材の振れを極力小さくすることが重要である。
【0004】
従って、オイルシールは一般的に、オイルシールが摺接する相手部材を回転自在に支持するための軸受の近傍に配設されている。言い換えれば、一般的にオイルシールの近傍には、オイルシールが摺接する相手部材を回転自在に支持するための軸受が配設されている(例えば、特許文献1参照。)。軸受としては内輪、外輪及び転動体を有する、例えば、ころ軸受、玉軸受等が多く用いられる。尚、一般的に、軸受の潤滑にも変速機構と共通の潤滑油又はグリースが使用される。
【0005】
このようなオイルシールを用いた潤滑剤の封止構造は、潤滑油、グリースの種類を問わず多くの変速機に広く採用されている。
【0006】
【特許文献1】
特開2002―130390号公報(第2図)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、近年、変速機に要求される性能は非常に厳しくなっており、変速機の動力伝達部(歯車、軸、軸受)のコンパクト化、長寿命化と共にオイルシールのリップ部についても耐久性向上が求められている。
【0008】
ところが、動力伝達部の性能向上のためのグリースの特性(ベースとなるオイル増ちょう剤、添加剤等により決まる)と、オイルシールの性能向上のためのグリースの特性は必ずしも一致しないという問題がある。即ち、動力伝達部の長寿命化に寄与するグリースを用いてもオイルシールのリップ部の耐久性は必ずしも向上しない。
【0009】
尚、オイルシールのリップ部の長寿命化に寄与するグリースを用いると、変速機構について所望の潤滑が得られず、動力伝達部の耐久性が低下することがある。
【0010】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであって、ケーシング内に封入されるグリースの種類によらず、オイルシールの耐久性を向上させることができる変速機のグリース封止構造を提供することをその課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、変速機構及び該変速機構を潤滑するためのグリースを収容するためのケーシングと、前記グリースを前記ケーシング内に封止するためのオイルシールと、内輪、外輪及び転動体を有してなり、前記オイルシールの近傍で前記変速機構を回転自在に支持する軸受と、を含んでなる変速機のグリース封止構造において、前記軸受として、前記内輪及び外輪の一方が他方よりも前記オイルシール側に突出した、空きスペースを有する軸受を備え、且つ、前記軸受の転動体と、前記オイルシールと、の間における前記グリースの移動を規制するためのシールド状部材を前記軸受の空きスペースに備えたことにより上記課題を解決したものである。
【0012】
即ち、グリースの移動を規制するためのシールド状部材を軸受の転動体と、オイルシールと、の間に、備えることで、グリースと共にオイルシールに到達する摩耗粉等の量を低減することができ、グリースが含有する添加剤の種類に拘わらずグリースによるオイルシールのリップ部の劣化を抑制し、オイルシールの耐久性を向上させることができる。
【0013】
更に、変速機構の潤滑のために好適なグリースを使用することができるので、変速機構についても耐久性を向上させることができる。
【0014】
又、軸受の転動体よりもオイルシール側にシールド状部材を配設するので軸受には充分にグリースが給脂されると共に、グリースはシールド状部材に堰き止められて軸受の周囲に留まりやすくなり、軸受の耐久性を向上させる効果も得られる。
【0015】
又、軸受の空きスペースを利用してシールド状部材を取付けているので、シールド状部材のためのスペースを特別に設ける必要がなく、それだけ変速機のコンパクト化を図ることができる。
【0016】
尚、前記シールド状部材を、前記軸受の外輪及び内輪のいずれか一方に連結された部材に近接して相対的に回転し、ラビリンスを構成するように、前記軸受の外輪及び内輪の他方に取付けるとよい。
【0017】
このように、ラビリンスを構成するようにシールド状部材を配設することにより、オイルシールに触れるグリースと、変速機の潤滑に使用され、摩耗粉を含んだグリースと、を確実に分離することができ、オイルシールの耐久性を確実に向上させることができる。更に、シールド状部材は他方側の部材に接触しないので、シールド状部材自体の耐久性も向上する。又、シールド状部材が近接する相手部材として、軸受の一部ではなく、例えば、軸受の外輪又は内輪に結合されたケーシング等の部材を利用することにより、シールド状部材の設計の自由度が高くなるので、それだけグリースの移動を規制するために好適な構成のシールド状部材を配設することができる。
【0018】
又、前記シールド状部材を前記軸受の外輪及び内輪のいずれか一方に連結された部材に摺接して相対的に回転するように、前記軸受の外輪及び内輪の他方に取付けてもよい。尚、この場合、シールド状部材の摺接部分をゴム部材で構成するとよい。
【0019】
このように、他の部材に摺接するようにシールド状部材を配設することにより、グリースの移動を一層確実に低減することができ、オイルシールの耐久性を一層向上させることができる。特に、摺接部分をゴム部材とすることで、より大きなシールド効果を得てグリースの移動を著しく低減でき、更に、摺接部分の磨耗を低減する効果も得られる。尚、この場合も、シールド状部材が摺接する相手部材として、軸受の一部ではなく、例えば、軸受の外輪又は内輪に結合されたケーシング等の部材を利用することで、シールド状部材の設計の自由度が高くなり、それだけグリースの移動を規制するために好適な構成のシールド状部材を配設することができる。
【0020】
ここで、シールド状部材を他の部材に近接するように配設するか、或いは他の部材に摺接するように配設するかは、オイルシール、シールド状部材の材質、形状、グリースとの相性等を考慮して、オイルシール、シールド状部材の耐久性を考慮し、適宜選択すればよい。
【0021】
又、前記シールド状部材を前記ケーシングに取付けてもよい。
【0022】
このように、ケーシングにシールド状部材を取付けるようにすることで、シールド状部材の設計の自由度を更に高めることができる。更に、この場合、軸受の内輪及び外輪のうち、ケーシングに対して相対的に回転する方に近接又は摺接するようにシールド状部材を取付けてもよい。
【0023】
又、前記シールド状部材は、前記軸受の転動体及び前記オイルシールを隔てるためのリング板状の隔壁部と、該隔壁部の内周及び外周のいずれか一方から軸方向に突出する円筒部と、を有してなる断面L字形状の環状体とするとよい。
【0024】
断面L字形状の環状体であれば、例えば、円筒部を利用して軸受の外輪又は内輪に嵌着することができ、変速機への装着が容易である。又、軸受の外輪又は内輪に結合されたケーシング等の部材に嵌着することも容易である。更に、断面L字形状の環状体は、例えばプレス加工等により容易に製造することができるので、生産性が良く、低コストである。
【0025】
又、前記シールド状部材は、前記軸受の転動体及び前記オイルシールを隔てるためのリング板状の隔壁部と、該隔壁部の内周から軸方向の前記転動体側に突出する内側円筒部と、前記隔壁部の外周から軸方向の前記転動体側に突出する外側円筒部と、を有してなる断面コ字形状の環状体としてもよい。
【0026】
断面コ字形状の環状体も、例えば、内側円筒部又は外側円筒部を利用して軸受の外輪又は内輪に嵌着することができ、変速機への装着が容易である。又、軸受の外輪又は内輪に結合されたケーシング等の部材に嵌着することも容易である。更に、コ字が転動体側に開口しているので、シールド状部材の内側にグリースが収容され、それだけグリースの移動を規制する効果が大きい。更に、内側円筒部及び外側円筒部の非固定側がケーシング等の部材に近接又は摺接するように配設することにより、近接面積又は摺接面積が大きくなり、これによりグリースの移動を一層確実に規制することができる。尚、断面コ字形状の環状体も、例えばプレス加工等により容易に製造することができるので、生産性が良く、低コストである。
【0027】
又、前記グリースを第1のグリースとして封入すると共に、前記シールド状部材と、前記オイルシールと、の間に第2のグリースを封入するとよい。
【0028】
このようにシールド状部材と、オイルシールと、の間に第2のグリースを封入することで第1のグリースが殆ど侵入できなくなるので、オイルシールに到達する第1のグリースの量を著しく低減することができる。
【0029】
又、第2のグリースでオイルシールのリップ部を潤滑することができるので、オイルシールの耐久性を大幅に向上させることができる。特に、第1のグリースとして変速機構の潤滑のために好適なグリースを選択し、第2のグリースとしてオイルシールの潤滑のために好適なグリースを選択すれば、変速機全体の耐久性を大幅に向上させることができる。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0031】
図1は、本実施形態に係る変速機10の全体構造を示す側断面図である。図2は、同変速機のグリース封止構造12を拡大して示す側断面図である。
【0032】
変速機10は、グリース封止構造12に特徴を有しているが、本発明の理解のため、まず変速機10の全体構造について簡単に説明することとする。
【0033】
変速機10は、変速機構として、偏心体14を有する偏心体軸16と、偏心体14に回転自在に取付けられた外歯部材18と、該外歯部材18に内接噛合する内歯部材19と、前記外歯部材18の両側に配置され、該外歯部材18の自転成分のみを伝達する手段を介して該外歯部材18に連結されたキャリヤ部材20と、を備えた偏心揺動型内接噛合遊星歯車機構を備えており、内部には潤滑剤としてグリースが封入されている。
【0034】
偏心体軸16は、外歯部材18の軸方向両側に配置された2つの軸受21を介してキャリヤ部材20に回転自在に支持されている。
【0035】
偏心体軸16には位相差120°の3つの偏心体14が一体化して形成されている。それぞれの偏心体14には軸受22を介して外歯部材18が取付けられている。尚、外歯部材18は3枚複列で備えられ、これにより伝達容量の増大、強度の維持、回転バランスの保持が図られている。
【0036】
外歯部材18の外周にはトロコイド歯形や円弧歯形等の外歯(図示省略)が設けられている。この外歯には内歯部材19が内接噛合している。
【0037】
内歯部材19は、ピン状体でケーシング24に回転し易く保持されている。
【0038】
各外歯部材18にはそれぞれ円周方向適宜な間隔で複数の内ローラ孔26が形成され、各内ローラ孔26にはそれぞれ内ローラ28及び内ピン30が挿入されている。
【0039】
これら内ピン30は、両端においてキャリヤ部材20に連結されている。キャリヤ部材20は、軸受32を介してケーシング24に回転自在に支持されている。
【0040】
キャリヤ部材20とケーシング24との間の隙間における、軸受32よりも外側には、グリース封止構造12を構成するオイルシール40が装着され、これによりグリースがケーシング24内に封止されている。
【0041】
軸受32は、内輪34、外輪36及び転動体38を有してなる円錐ころ軸受で、内輪34の一部が外輪36よりもオイルシール40側に突出し、内輪34とケース24との間に空きスペース32Aを有している。尚、外輪36もその一部が内輪34よりも軸方向内側に突出している。
【0042】
次に、グリース封止構造12について説明する。
【0043】
グリース封止構造12は、軸受32の転動体38と、オイルシール40と、の間におけるグリースの移動を規制するためのシールド状部材42を、軸受32の空きスペース32Aに備えたことを特徴としている。
【0044】
シールド状部材42は、転動体38及びオイルシール40を隔てるためのリング板状の隔壁部44と、該隔壁部44から軸方向に突出する円筒部46と、を有してなる断面L字形状の環状体とされている。
【0045】
このシールド状部材42は、軸受32の外輪36に連結されたケーシング24に隔壁部44の外周において近接して相対的に回転し、ラビリンスを構成するように、円筒部46の内周において軸受32の内輪34に嵌着されている。
【0046】
尚、円筒部46の内周には径方向内側に突出する環状突起46Aが形成されており、該環状突起46Aは軸受32の内輪34の外周に形成された環状溝部に嵌合している。これにより、軸受32からのシールド状部材42の軸方向への脱落が防止されている。
【0047】
次に、変速機10の作用について説明する。
【0048】
偏心体軸16が1回転すると、各偏心体14も1回転する。これら偏心体14が1回転することにより、各外歯部材18も偏心体軸14の周りで揺動回転を行おうとするが、内歯部材19によりその自転が拘束されるため、各外歯部材18は、内歯部材19に内接しながら僅かに自転しつつ公転することになる。
【0049】
いま、例えば外歯部材18の歯数をN、内歯部材19の歯数をN+1とした場合、その歯数差は1である。そのため、偏心体軸14の1回転毎に外歯部材18はケーシング24と一体化された内歯部材19に対して1歯分だけずれることとなる。即ち、偏心体軸16の1回転は外歯部材18の−1/Nの回転に減速されて伝達されたこととなる。
【0050】
各外歯部材18の回転は、内ローラ孔26と内ローラ28との隙間によってその公転成分が吸収され、自転成分のみが内ピン30を介してキャリヤ部材20に伝達される。
【0051】
この結果、偏心体軸16とキャリヤ部材20との間で減速比1/Nの減速又は増速比Nの変速が実現される。
【0052】
尚、キャリヤ部材20を固定して、偏心体軸16及びケーシング24の間で増減速する変速機として使用することもできる。又、偏心体軸16を固定して、キャリヤ部材20及びケーシング24間で増減速する変速機として使用することもできる。
【0053】
変速機10内に封入されたグリースは、外歯部材18等の回転に伴って変速機10内に飛沫、分散し、オイルシール40の近傍にも一部のグリースが移動する。
【0054】
次に、グリース封止構造12の作用について説明する。
【0055】
グリース封止構造12は、軸受32の転動体38と、オイルシール40と、の間であって軸受32に、グリースの移動を規制するためのシールド状部材42を備えているので、軸受32からオイルシール40に移動するグリースの量が低減されている。
【0056】
特に、シールド状部材42はラビリンス効果を奏するようにケーシング24に近接して配設されているので、オイルシール40に到達するグリースの量が確実に低減されている。従って、グリースに含まれる摩耗粉に起因するオイルシール40の劣化を抑制することができ、変速機10はオイルシール40の耐久性が高い。
【0057】
又、外歯部材18、軸受32等の変速機構の潤滑のために好適なグリースを使用することができるので、変速機10は、外歯部材18、軸受32等の変速機構の耐久性も高い。
【0058】
更に、シールド状部材42はケーシング24に接触しないので、シールド状部材42自体の耐久性も高い。
【0059】
又、シールド状部材42は軸受32の転動体38よりもオイルシール40側に配設されているので、シールド状部材42のために軸受32に到達するグリースの量が減少することがなく、却ってグリースがシールド状部材42に堰き止められて軸受32の周囲に留まりやすくなるので、変速機10は軸受32の耐久性も高い。
【0060】
即ち、オイルシール40、シールド状部材42、外歯部材18、軸受32等の変速機構はいずれも耐久性が高く、変速機10は信頼性が高い。
【0061】
又、シールド状部材42が近接する相手部材として、軸受32自体ではなく、軸受32の外輪36に結合されたケーシング24を利用しているので、シールド状部材42は設計の自由度が高い。
【0062】
又、軸受32の空きスペース32Aを利用してシールド状部材42を取付けており、シールド状部材34Aのために特別なスペースを設けていないので、それだけ変速機10はコンパクトである。
【0063】
又、シールド状部材42は断面L字形状の環状体であるので、円筒部46において軸受32の内輪34への嵌着が容易である。
【0064】
更に、シールド状部材42は断面L字形状の環状体であるので、例えばプレス加工等により容易に製造することができ、生産性が良く、変速機10は低コストである。
【0065】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
【0066】
図3は、本第2実施形態に係る変速機のグリース封止構造60を拡大して示す側断面図である。
【0067】
グリース封止構造60は、前記第1実施形態に係るグリース封止構造12に対し、シールド状部材62の隔壁部62Aの外周にゴム部材62Bが備えられ、シールド状部材62がゴム部材62Bにおいてケーシング24に摺接するように配設されたことを特長としている。他の構成については前記第1実施形態のグリース封止構造12と同様であるので説明を省略する。
【0068】
このように、ケーシング24に摺接するようにシールド状部材62を配設することにより、ラビリンス効果による場合よりも一層確実にオイルシール40へのグリースの移動を低減することができ、オイルシール40の耐久性を一層向上させることができる。特に、摺接部分がゴム部材62Bであるので、グリースの移動を著しく低減でると共に、摺接しても磨耗しにくく耐久性が高い。
【0069】
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
【0070】
図4は、本第2実施形態に係る変速機のグリース封止構造70を拡大して示す側断面図である。
【0071】
グリース封止構造70は、前記第1実施形態に係るグリース封止構造12に対し、シールド状部材72が、軸受32の転動体38及びオイルシール40を隔てるためのリング板状の隔壁部72Aと、隔壁部72Aの内周から軸方向の転動体38側に突出する内側円筒部72Bと、隔壁部72Aの外周から軸方向の転動体38側に突出する外側円筒部72Cと、を有してなる断面コ字形状の環状体とされたことを特徴としている。他の構成については前記第1実施形態のグリース封止構造12と同様であるので説明を省略する。
【0072】
シールド状部材72は、転動体38側に開口するように配設され、シールド状部材72の内側にグリースを収容することができるので、それだけグリースの移動を規制する効果が大きい。更に、外側円筒部72Cにおいてケーシング24に近接するように配設され、近接面積が大きいので、それだけグリースの移動を規制するラビリンス効果が大きく、この点でもグリースの移動を規制する効果が大きい。
【0073】
又、断面コ字形状の環状体も断面L字形状の環状体と同様に、例えばプレス加工等により容易に製造することができるので、シールド状部材72もシールド状部材42と同様に生産性が良く、低コストである。
【0074】
尚、上記第1〜第3実施形態は、それぞれシールド状部材42、62、72だけでオイルシール40へのグリースの移動を規制しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、変速機構を潤滑するためのグリースを第1のグリースとしてシールド状部材42、62、72よりも歯側の噛合い側に封入し、更にシールド状部材42、62、72と、オイルシール40と、の間に第2のグリースを封入してもよい。
【0075】
このようにシールド状部材42、62、72と、オイルシールと、の間に第2のグリースを封入することでシールド状部材42、62、72と、オイルシールと、の間には第1のグリースが殆ど侵入できなくなるので、オイルシール40に到達する第1のグリースの量を著しく低減することができる。又、第2のグリースでオイルシール40のリップ部を潤滑することができるので、オイルシール40の耐久性を大幅に向上させることができる。
【0076】
特に、第1のグリースとして変速機構の潤滑のために好適なグリースを選択し、第2のグリースとしてオイルシールの潤滑のために好適なグリースを選択すれば、変速機10の耐久性を全体として大幅に向上させることができる。
【0077】
又、上記第1〜第3実施形態において、軸受32は円錐ころ軸受であるが、本発明はこれに限定されるものではなく、内輪及び外輪の一方が他方よりもオイルシール側に突出した、空きスペースを有する軸受であれば、例えば玉軸受等の他のタイプの軸受を用いてもよい。
【0078】
又、上記第1〜第3実施形態は、変速機構として偏心揺動型内接噛合遊星歯車機構を備える変速機10にグリース封止構造12、60、70を、適用した例を示したものであるが、本発明はこれに限定されるものではなく、潤滑剤としてグリースが封入される変速機であれば、例えば、遊星ギヤ、スパーギヤ、ヘルカルギヤ、ベベルギヤ、ハイポイドギヤ、ウォームギヤ等の他のタイプのギヤで構成される変速機構、摩擦ローラで構成された変速機構、チェーン及びスプロケットで構成された変速機構等の他のタイプの変速機構を備える変速機に対しても適用可能である。
【0079】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ケーシング内に封入されるグリースの種類によらず、オイルシールの耐久性を向上させることが可能となるという優れた効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る変速機の全体構造を示す側断面図
【図2】同変速機のグリース封止構造を拡大して示す側断面図
【図3】本発明の第2実施形態に係る変速機のグリース封止構造を拡大して示す側断面図
【図4】本発明の第3実施形態に係る変速機のグリース封止構造を拡大して示す側断面図
【符号の説明】
10…変速機
12、60、70…変速機のグリース封止構造
18…外歯歯車(変速機構)
20…キャリヤ部材(変速機構)
22…内歯歯車(変速機構)
24…ケーシング
32…軸受
32A…空きスペース
34…内輪
36…外輪
38…転動体
40…オイルシール
42、62、72…シールド状部材
44、62A、72A…隔壁部
46…円筒部
62B…ゴム部材
72B…内側円筒部
72C…外側円筒部
Claims (8)
- 変速機構及び該変速機構を潤滑するためのグリースを収容するためのケーシングと、前記グリースを前記ケーシング内に封止するためのオイルシールと、内輪、外輪及び転動体を有してなり、前記オイルシールの近傍で前記変速機構を回転自在に支持する軸受と、を含んでなる変速機のグリース封止構造において、
前記軸受として、前記内輪及び外輪の一方が他方よりも前記オイルシール側に突出した、空きスペースを有する軸受が備えられ、且つ、前記軸受の転動体と、前記オイルシールと、の間における前記グリースの移動を規制するためのシールド状部材が前記軸受の空きスペースに備えられた
ことを特徴とする変速機のグリース封止構造。 - 請求項1において、
前記シールド状部材は前記軸受の外輪及び内輪のいずれか一方に連結された部材に近接して相対的に回転し、ラビリンスを構成するように、前記軸受の外輪及び内輪の他方に取付けられた
ことを特徴とする変速機のグリース封止構造。 - 請求項1において、
前記シールド状部材は前記軸受の外輪及び内輪のいずれか一方に連結された部材に摺接して相対的に回転するように、前記軸受の外輪及び内輪の他方に取付けられた
ことを特徴とする変速機のグリース封止構造。 - 請求項3において、
前記シールド状部材は摺接部分がゴム部材で構成された
ことを特徴とする変速機のグリース封止構造。 - 請求項1において、
前記シールド状部材が前記ケーシングに取付けられた
ことを特徴とする変速機のグリース封止構造。 - 請求項1〜5のいずれかにおいて、
前記シールド状部材は、前記軸受の転動体及び前記オイルシールを隔てるためのリング板状の隔壁部と、該隔壁部の内周及び外周のいずれか一方から軸方向に突出する円筒部と、を有してなる断面L字形状の環状体とされた
ことを特徴とする変速機のグリース封止構造。 - 請求項1〜5のいずれかにおいて、
前記シールド状部材は、前記軸受の転動体及び前記オイルシールを隔てるためのリング板状の隔壁部と、該隔壁部の内周から軸方向の前記転動体側に突出する内側円筒部と、前記隔壁部の外周から軸方向の前記転動体側に突出する外側円筒部と、を有してなる断面コ字形状の環状体とされた
ことを特徴とする変速機のグリース封止構造。 - 請求項1〜6のいずれかにおいて、
前記グリースが第1のグリースとして封入されると共に、前記シールド状部材と前記オイルシールとの間に第2のグリースが封入された
ことを特徴とする変速機のグリース封止構造。
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Cited By (1)
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JP2009085267A (ja) * | 2007-09-28 | 2009-04-23 | Nabtesco Corp | 歯車装置 |
-
2003
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