JP2004301047A - エンジンの始動装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】所定のエンジン停止条件が成立したときに自動的に燃料供給を停止してエンジン1を停止させるとともに、再始動条件成立時に、膨張行程にある気筒3に対して燃焼を行わせ、再始動させるエンジンの始動装置において、エンジン1の駆動力の一部を、クランクシャフト6の回転角に応じて周期的に変動する仕事として取り出し、燃料圧力を高める高圧燃料ポンプ126を備え、クランクシャフト6の回転角が各気筒3の略上死点にあるとき、高圧燃料ポンプ126の瞬間的な仕事が最大となるように構成する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アイドリング時等に自動的にエンジンを一旦停止させ、その後に自動的に再始動させるエンジンの始動装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、燃費低減およびCO2排出量抑制等のため、アイドリング時に自動的にエンジンを一旦停止させ、その後に発進操作等の再始動条件が成立したときに自動的にエンジンを再始動させる(以下アイドルストップ又はI/Sという)ようにしたエンジンの始動装置が開発されてきている。
【0003】
アイドルストップにおける再始動は、発進操作等に応じて即座に始動させることが要求されるため、スタータ(始動用のモータ)によりエンジン出力軸を駆動するクランキングを経てエンジンを始動させるような、始動完了までにかなりの時間を要する従来の一般的な始動の方法は好ましくない。
【0004】
そこで、停止状態のエンジンの特定気筒(膨張行程にある気筒)に燃料を供給して着火、燃焼を行わせ、そのエネルギーでエンジンが即時的に始動されるようにすることが望ましい。しかし、膨張行程にある気筒に燃料を供給して着火させ、燃焼させてもエンジン始動のための充分なトルクが得られるとは限らない。円滑に再始動を行うためには一定以上の着火性と発生トルクの大きさが求められる。
【0005】
このような問題の対策として、例えば特許文献1に示されるように、IG OFF(点火停止)後、排気弁の閉時期を制御してピストンが適正位置にある状態でエンジンを停止させ易くしたもの、あるいは特許文献2に示されるように、エンジンのクランク軸に対して制動装置を設け、エンジン停止時に膨張行程となる気筒のピストンが行程途中の適正位置で停止するように制動装置を制御するようにしたものなどが提案されている。
【0006】
再始動するためのピストンの適正停止位置とは、一般的には上死点後90°CA(クランク角)前後、即ち上死点と下死点の中間付近であり、この位置でピストンを停止させると、適度に存在する筒内空気と再始動時に供給される燃料とで良好な燃焼が得られ、再始動に充分なトルクを発生させ易い。即ち、特許文献1及び特許文献2は、燃焼によって充分な再始動トルクが得られるように、ピストンの停止位置を規制しようとするものである。
【0007】
【特許文献1】
WO 01/44636 A2号公報
【特許文献2】
実開昭60−128975号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記特許文献1に示された始動装置は、排気弁を制御することによる筒内ガス圧の変化を利用した間接的な方法であるため、ばらつきが生じ易いものであった。従って、再始動を円滑に行うため、より高い確率でピストンを適正位置に停止させる技術が求められていた。また、上記特許文献2に示された始動装置によると、車両の制動装置とは別にクランク軸を制動し得る装置が必要になるとともに、ピストンが適正位置に停止するように制動装置を精度良くコントロールすることが非常に難しいものであった。
【0009】
本発明は上記の事情に鑑み、別途特別な制動装置等を設けることなく、ピストンの停止位置ばらつきを削減し、より高い確率で適正位置に停止し得るようにしたエンジンの始動装置、即ち簡単な構造でエンジンの再始動性を高めることによって、一層の燃費低減およびCO2排出量抑制等を図ることができるエンジンの始動装置を提供するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、所定のエンジン停止条件が成立したときに自動的に燃料供給を停止してエンジンを停止させるとともに、エンジン停止後における再始動条件成立時に、膨張行程にある気筒に対して燃料を噴射させて点火、燃焼を行わせ、エンジンを再始動させるエンジンの始動装置において、エンジンの駆動力の一部を、クランクシャフトの回転角に応じて周期的に変動する仕事として取り出し、燃料を噴射するための燃料圧力を高める機械式の高圧燃料ポンプを備え、上記クランクシャフトの回転角が一部又は全部の気筒の略上死点にあるとき、上記高圧燃料ポンプの瞬間的な仕事が最大となるように、かつ上記クランクシャフトの回転角が一部又は全部の気筒の上死点と下死点の略中間にあるとき、上記高圧燃料ポンプの瞬間的な仕事が最小となるように構成されていることを特徴とする。
【0011】
アイドルストップによるエンジン停止の際、燃料供給の停止後、エンジンは慣性で数回転して停止する。その停止時のピストン位置は、従来の構造であっても比較的適正位置(上死点と下死点の略中間位置)に近くなる傾向がある。それは、燃焼を行わなくても吸排気弁は開閉するため、ピストンが圧縮上死点付近にあるとき、筒内の空気圧が高くなるためである。つまり、ピストンが上死点に近づくと筒内空気圧によって上死点から遠ざける方向に作用する力が大きくなるので、ピストンは上死点付近で停止しにくいのである。そして、通常複数気筒のエンジンでは、ある気筒のピストンが上死点から遠ざかると他の気筒のピストンが上死点に近づく。従って、全ての気筒のピストンが上死点からできるだけ遠ざかった位置、即ち上死点と下死点の中間付近で停止し易くなる。
【0012】
本発明の構成によると、上記傾向を更に強めることができる。即ち、エンジン停止時のピストン位置が適正位置となる確率を更に高めることができる。それは、ピストンが上死点と下死点の略中間にあるとき、高圧燃料ポンプの瞬間的な仕事が最小となるように構成されているからである。高圧燃料ポンプはエンジンによって駆動される、つまりエンジンの負荷として作用する。従って、エンジン停止時にはその負荷(高圧燃料ポンプの瞬間的な仕事)を最小にする方向、即ちピストンを上死点と下死点の略中間に移動させる方向に力が働き、結果的にその位置でピストンが停止し易くなる。
【0013】
更に、高圧燃料ポンプの瞬間的な仕事が最小となる上記クランクシャフトの回転角を、一部又は全部の気筒の行程における上死点と下死点の中間よりもやや遅れ側となるように設定(請求項2)すれば、ピストンがより適正な位置(膨張行程における上死点と下死点の中間位置よりやや下死点寄り)に停止する確率を高めることができる。
【0014】
ピストンの停止位置が、上死点と下死点の略中間にあるときに再始動性を高められることは従来知られているが、本発明の発明者は、鋭意研究により、そのなかでも膨張行程における上死点と下死点の中間位置よりやや遅れ側、即ち下死点寄りに停止させた場合に最も再始動性を高められることを確認している。これは、再始動時には膨張行程にある気筒で燃焼を行わせるところ、気筒内に多めに空気を入れておくことで多くの燃料を燃焼させ、高い再始動トルクを得られることによる。一方、この場合、単に燃焼させたのでは空気の圧縮率が低い(エンジン停止中の筒内空気圧はほぼ大気圧と等しくなっている)上に、下死点までのピストンストロークが小さくなって充分に仕事を取り出すことができないという懸念があるが、それは、膨張行程にある気筒で燃焼を行わせる前にエンジンを瞬間的に逆転させ(他の圧縮行程にある気筒で燃焼を行わせる)、一旦ピストンを上死点側に移動させてから燃焼させることにより解決可能である。
【0015】
請求項3の発明は、請求項1または2記載の構成において、上記高圧燃料ポンプの仕事がクランクシャフトの回転角に対応した回転角を有する燃料ポンプ用カムの回転によって取り出されるように構成され、上記燃料ポンプ用カムのカム半径が大なるカムノーズにおいて上記高圧燃料ポンプの瞬間的な仕事が大であるように構成されていることを特徴とする。
【0016】
気筒内に燃料を噴射する、いわゆる直噴エンジンにおいてはエンジンの駆動力の一部をクランクシャフトの回転角に応じて周期的に変動する仕事として取り出し、燃料圧力を高める機械式の高圧燃料ポンプは既存の構造であり、その仕事の取り出しは燃料ポンプ用カムの回転によってなされるのが一般的である。このような機構では、クランクシャフトの回転角がカムノーズの位置に相当するときに高圧燃料ポンプの瞬間的な仕事が大となり、カムノーズとカムノーズの間の位置では小となる。結局、燃料圧力を高めるために取り出される仕事はそれを時間平均したものとなる。なお従来機構では、このカムノーズの位置とクランクシャフトの回転角との関係は任意であり、特に規定されていない。
【0017】
請求項3の構成によれば、カムノーズの位置を上死点付近に合わせることにより、また必然的にカム半径の小さい位置(カムノーズとカムノーズの間)を上死点と下死点の間であるピストンの適正な停止位置に合わせることにより、請求項1または2に記載の構成を実現することができる。
【0018】
即ち、既存の構造を利用しつつ、カムノーズの位置を工夫することによって、容易に、しかも装置全体を複雑化、大型化或いは高コスト化することなくピストンが適正位置で停止する確率を高めることができる。
【0019】
そして、カムノーズの数は、エンジンの気筒数の2分の1の倍数(例えば4気筒エンジンでは2、4、6、・・・の何れか)にすると良く(請求項3)、更にはエンジンの気筒数と等しい数とする(請求項4)ことが望ましい。
【0020】
カムノーズの数をエンジンの気筒数と等しく、或いはその1.5倍、2倍・・・とすると、各気筒の圧縮上死点に対し、少なくとも1箇所のカムノーズを対応させることができるので、どの気筒がエンジン停止の際に膨張行程となる気筒(以下膨張行程気筒という)になっても、ピストンが適正位置に停止する確率を高めることができる。また、本発明の発明者は、カムノーズの数をエンジンの気筒数の2分の1としても、その確率が高められることを実験的に確認している。
【0021】
請求項6の発明は、請求項1または5のいずれか1項に記載の構成において、上記燃料ポンプ用カムの回転によって上記高圧燃料ポンプの仕事が有効となり、燃料圧力を高めるポンプON状態と、上記燃料ポンプ用カムが回転しても上記高圧燃料ポンプによる仕事が有効になされず、燃料圧力が高くならないポンプOFF状態とに切換え可能なポンプ切換え手段を備え、少なくとも上記所定のエンジン停止条件成立後のエンジン停止直前からエンジンが完全に停止するまでの間、上記ポンプ切換え手段は、ポンプON状態とすることを特徴とする。
【0022】
この構成によると、エンジン停止の直前においてはポンプON状態とすることによってエンジンに負荷がかかり、ピストンが適正位置に停止し易くなる。そして、少なくともエンジンが完全に停止するまでの間、ポンプON状態を維持することによって、再始動時の燃料圧力を確保し易くなる。即ち、再始動時に適切な燃料噴射を行い、良好な燃焼によって再始動性を高めることができる。
【0023】
なお、所定のエンジン停止条件成立後におけるエンジン停止直前までの所定期間、上記ポンプ切換え手段は、ポンプOFF状態とする(請求項7)ことが望ましい。
【0024】
このようにすると、エンジン停止中の燃料漏れを防止したり再始動時の燃料圧力が必要以上に高くなることを防止したりすることができる。つまり、エンジン停止条件成立後、燃料噴射弁からの噴射が停止(燃料供給の停止)されるところ、この状態でポンプON状態を継続すると、燃料圧力が必要以上に高くなってしまう。その結果、燃料漏れが発生し易くなったり、再始動時の燃料圧力が高くなり過ぎ、かえって再始動時に良好な燃焼が得難くなったりする懸念がある。
【0025】
しかし上記構成によれば、エンジン停止直前まではポンプOFF状態として燃料圧力が高くならないようにしているので、上記のような懸念がない。なお、本構成においても、エンジン停止直前にポンプON状態とすることにより、上記のようなピストンの適正位置での停止確率向上や再始動時における燃料圧力確保などの効果を得ることができる。
【0026】
また、上記ポンプ切換え手段は、上記エンジン再始動時の燃料圧力が所定の圧力となるように、上記ポンプON状態とポンプOFF状態とを切換える(請求項8)ようにしても良く、燃料圧力を検知する燃料圧力検知手段を備え、上記ポンプON状態とポンプOFF状態との切換えがフィードバック制御によってなされるようにする(請求項9)と更に望ましい。
【0027】
このようにすると、エンジン停止時の燃料圧力を再始動時に好適な値に調整することができるので、一層再始動性を高めることができる。再始動に好適な燃料圧力はエンジンの特性等によって異なるが、例えば通常の燃料圧力が3〜7MPa、再始動時には3MPa付近となるように設定すると良い。その際、必要に応じてエンジン停止中の圧力降下を加味するようにしても良い。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。図1及び図2は本発明の実施形態によるエンジンの概略構成を示している。これらの図において、エンジン1の本体はシリンダヘッド2a及びシリンダブロック2で構成される。当実施形態ではエンジン1は4気筒4サイクルエンジンであり、4つの気筒3(詳しくは、図2に示す状態で左から順に1番気筒3A、2番気筒3B、3番気筒3C、4番気筒3D)を有している。各気筒3にはピストン4が嵌挿され、ピストン4の上方に燃焼室5が形成されている。上記ピストン4はコンロッドを介してクランクシャフト6に連結されている。
【0029】
各気筒3の燃焼室5の頂部には点火プラグ7が装備され、そのプラグ先端が燃焼室5内に臨んでいる。
【0030】
更に、燃焼室5の側方部には、燃焼室5内に燃料を直接噴射する燃料噴射弁8が設けられている。この燃料噴射弁8は、図略のニードル弁及びソレノイドを内蔵し、パルス信号が入力されることにより、そのパルス入力時期にパルス幅に対応する時間だけ駆動されて開弁し、その開弁時間に応じた量の燃料を噴射するように構成されている。そして、点火プラグ7付近に向けて燃料を噴射するように燃料噴射弁8の噴射方向が設定されている。そして、この燃料噴射弁8には後述するようにカムシャフト26付近に設けられた高圧燃料ポンプ126により燃料通路等を介して燃料が供給され、かつ、圧縮行程での燃焼室内の圧力よりも高い燃料圧力を与え得るように燃料供給系統が構成されている。
【0031】
また、各気筒3の燃焼室5に対して吸気ポート9及び排気ポート10が開口し、これらのポート9,10に吸気弁11及び排気弁12が装備されている。これら吸気弁11及び排気弁12は、カムシャフト26,27等からなる動弁機構により駆動される。そして、後に詳述するように各気筒3が所定の位相差をもって燃焼サイクルを行うように、各気筒の吸・排気弁の開閉タイミングが設定されている。
【0032】
吸気弁11及び排気弁12の開閉時期は、カム位相可変機構26a,27aによって可変となっている。カム位相可変機構26a,27aは、カムシャフト26,27の回転位相をクランクシャフトの回転位相に対して変動させる、従来から知られた機構である。図2に示すように吸気弁11側のカムシャフト26にはカム位相可変機構26aが、排気弁12側のカムシャフト27にはカム位相可変機構27aが設けられており、それぞれ独立して制御されている。従って、吸気弁11及び排気弁12の開閉時期は、カム位相可変機構26a,27aによってそれぞれ独立して全体的に前後に変動させることができる。
【0033】
吸気ポート9及び排気ポート10には吸気通路15及び排気通路16が接続されている。吸気通路15は、サージタンク15bの下流に気筒別の分岐吸気通路15aを有し、各分岐吸気通路15aの下流端が各気筒の吸気ポート9に連通するが、その各分岐吸気通路15aの下流端近傍に、各分岐吸気通路15aを同時に絞り調節する多連型のロータリバルブからなるスロットル弁17が配設されている。このスロットル弁17はスロットル弁アクチュエータ18により駆動されるようになっている。
【0034】
上記吸気通路15におけるサージタンク15bの上流の共通吸気通路15cには、吸気量を検出するエアフローセンサ20が設けられている。また、上記クランクシャフト6に対し、その回転角を検出するクランク角センサが設けられており、当実施形態では、後に詳述するように、互いに一定量だけ位相のずれたクランク角信号を出力する2つのクランク角センサ21,22が設けられている。さらにカムシャフト26,27に対し、その特定回転位置を検出することで気筒識別信号を与えることのできるカム角センサ23が設けられている。また、エンジン1を始動させるためのモータであるスタータ28が設けられており、このスタータ28の駆動力が図外のスタータギヤを介してクランクシャフト6に直接伝達されることにより、エンジン1が始動するように構成されている。
【0035】
なお、この他にもエンジン1の制御に必要な検出要素として、エンジン冷却水の温度を検出する水温センサ24、アクセル開度(アクセル操作量)を検出するアクセル開度センサ25(図6参照)等が装備されている。
【0036】
図3乃至図5は、燃料供給系120の説明図である。図3に示すように、燃料タンク121から燃料噴射弁8に至る燃料通路122には、上流側から下流側に向かって、低圧ポンプ123、低圧レギュレータ124、燃料フィルタ125、高圧燃料ポンプ126及び燃料分配管119が順に配設されており、燃料分配管119から各気筒の燃料噴射弁8に燃料が供給されるように構成されている。
【0037】
そして、低圧ポンプ123により燃料タンク121から吸い上げられた燃料が、低圧レギュレータ124により調圧された後、燃料フィルタ125により濾過された状態で高圧燃料ポンプ126に圧送されるようになっている。
【0038】
高圧燃料ポンプ126は、燃料フィルタ125を介して供給された燃料を高圧(例えば略3MPa〜略13MPa、好ましくは3MPa〜7MPa程度)に加圧して燃料分配管119に圧送するものである。燃料分配管119には燃料圧力検知手段として燃圧センサ69(図4参照)が設けられている。高圧燃料ポンプ126は、図4にその内部構造を示すように燃料の吸入部151および吐出部152が設けられたポンプ室153と、このポンプ室153内の燃料を加圧する加圧手段154とを有している。
【0039】
ポンプ室153の燃料吸入部151には、この燃料吸入部151を開閉する吸入弁155と、この吸入弁155を閉止方向に付勢する第1付勢手段156と、プッシュロッド157を介して上記吸入弁155を開放方向に付勢する圧縮コイルばねからなる第2付勢手段158と、この第2付勢手段158の付勢力に抗して上記プッシュロッド157を、ソレノイドケース159内に引き込むことにより吸入弁155から離間させる方向に駆動する高圧ポンプ用ソレノイド160とが設けられている。
【0040】
第1付勢手段156の付勢力は、第2付勢手段158の付勢力よりも小さな値に設定され、通常の状態(高圧ポンプ用ソレノイド160がOFF)では上記第2付勢手段158の付勢力に応じて吸入弁155が開放状態に保持されている。そして、高圧ポンプ用ソレノイド160が通電状態(ON)となってプッシュロッド157がソレノイドケース159内に引き込まれると、第1付勢手段156の付勢力およびポンプ室153内の燃料圧力に応じ、吸入弁155が閉止状態となるようになっている。
【0041】
従って、高圧ポンプ用ソレノイド160をONとすると、吸入弁155は、燃料が燃料タンク121から燃料噴射弁8方向に流れるときのみ開放し、逆流時には閉止するので、吸入弁155よりも下流側の燃料圧力を保持する。即ち高圧燃料ポンプ126の仕事を有効とするポンプON状態となる。一方、高圧ポンプ用ソレノイド160をOFFとすると、吸入弁155は常時開放となるので、ポンプ室153で燃料圧力を高めても、燃料は燃料タンク121へ逆流し、燃料噴射弁8での燃料圧力は高くならない。即ちポンプOFF状態となる。このように、吸入弁155及び高圧ポンプ用ソレノイド160は、ポンプON状態とポンプOFF状態とを切換える、ポンプ切換え手段として機能する。
【0042】
ポンプ室153の燃料吐出部152には、この燃料吐出部152を開閉する吐出弁161と、この吐出弁161を閉止方向に付勢する圧縮コイルばねからなる吐出弁付勢手段162とが設けられ、通常の状態では上記吐出弁付勢手段162の付勢力に応じて吐出弁161が閉止状態に保持されている。そして、上記加圧手段154によりポンプ室153内の燃料が加圧されてその燃料圧力が一定値以上に上昇すると、上記吐出弁付勢手段162の付勢力に抗して吐出弁161が開放方向に駆動されることにより、燃料が燃料噴射弁8に圧送されるように構成されている。
【0043】
また、上記加圧手段154は、ポンプ室153内の燃料に加圧力を付与するプランジャ163と、このプランジャ163を昇降駆動する燃料ポンプ用カム164と、プランジャ163の下端部を下方に付勢して燃料ポンプ用カム164に圧接させるプランジャ付勢手段166とを有し、上記燃料ポンプ用カム164が回転駆動されるのに対応してプランジャ163が昇降駆動されることにより、ポンプ室153内に燃料が供給されて加圧されるようになっている。すなわち、上記吸入弁155の開放状態でプランジャ163が下降することにより、燃料吸入部151からポンプ室153内に燃料が吸入された後、上記吸入弁155の閉止状態でプランジャ163が上昇することにより、ポンプ室153内の燃料が加圧されるように構成されている。
【0044】
燃料ポンプ用カム164は、90°の角度で突設された4箇所のカムノーズ165を有するとともに、カムシャフト26に一体に取り付けられることにより、このカムシャフト26が一回転する間に、上記プランジャ163を4回昇降駆動するように構成されている。また、カムシャフト26は、図5に示すように、エンジン本体1のクランクシャフト6により駆動されるチェーン伝動機構167(ベルト伝動機構としても良い)を介して回転駆動され、これによってクランクシャフト6が2回転(1サイクル)するのに応じ、カムシャフト26が1回転するとともに、上記プランジャ163が4回昇降するように構成されている。
【0045】
このように、プランジャ163の昇降によってポンプ室153内の燃料圧力が高められるが、そのポンプ仕事を瞬間的に見れば、プランジャ163の上昇時には仕事量が大であり、下降時には小となる。そして、周期的に仕事量が大の状態と小の状態を繰り返しつつ、結局その時間平均の仕事として燃料圧力の上昇がなされるようになっている。
【0046】
カムノーズ165の4箇所の各頂点は、それぞれ各気筒3A〜3Dに対し、クランクシャフト6の回転角(CA)で圧縮行程上死点又はそれよりやや遅れ側(例えば10°CA程度)となるように調整されている。
【0047】
その結果、ポンプON状態においては、何れかの気筒3が圧縮上死点付近となる180°CA周期でプランジャ163の上昇が最大(プランジャストローク最大)となり、高圧燃料ポンプ126の瞬間的な仕事(クランクシャフト6に対しては負荷)が最大となる。(図7参照)。
【0048】
図6は、エンジン1の制御ブロック図であり、ECU(エンジンコントロールユニット)30を中心に、信号を入力するスイッチやセンサと、出力する装置やアクチュエータ等を示す。なお、このブロック図は、アイドルストップ制御に関するものなので、その他の制御に関する部分については省略している。
【0049】
ECU30の入力側には、上記エアフローセンサ20、クランク角センサ21,22、カム角センサ23、水温センサ24、アクセル開度センサ25及び燃圧センサ69に加え、I/S(アイドルストップ)を行うためのセンサ類として、ブレーキの踏み込み深さを検出するブレーキセンサ62、車速を検出する車速センサ63、AT(自動変速機)のシフトレバー位置を検出するインヒビタスイッチ64、パーキングブレーキのON/OFFを検出するパーキングブレーキスイッチ65、ウインカのON/OFFを検出するウインカスイッチ66、エアコンのON/OFFを検出するエアコンスイッチ67及びブレーキ負圧を検出するブレーキ負圧センサ68がそれぞれ接続され、各検出信号が入力される。
【0050】
またECU30の出力側には、上記点火プラグ7、燃料噴射弁8、高圧ポンプ用ソレノイド160、スロットル弁アクチュエータ18、カム位相可変機構26a,27a及びスタータ28に加え、アイドルストップ表示ランプ71、電動オイルポンプ72、ATF切換弁73及びヒルホルダ用ソレノイド弁74が接続され、各装置類への駆動信号を出力する。
【0051】
アイドルストップ表示ランプ71は、I/Sの実施状況を運転者に示すためのランプで、詳細は後述するが、I/Sによるエンジンの停止中であることや、I/Sが禁止中であること、或いはエンジンを再始動すること等を表示するランプの総称である。
【0052】
電動オイルポンプ72は、I/Sによるエンジン停止中に、ATへの油圧を供給する電動のオイルポンプである。通常運転時、AT内部のクラッチは、クランクシャフト6に直結して駆動される図外の機械式オイルポンプを油圧供給源として作動する。従って、I/Sによってエンジンが停止すると、油圧が低下し、クラッチは解放する。これではエンジン再始動後、クラッチを再締結させるための時間ロスが発生し、発進性が悪化する。それを防止するため、エンジンの停止中には別途電動オイルポンプ72によってATに油圧を供給するように構成されている。
【0053】
ATF切換弁73は、油圧供給源からATへのATF(自動変速機油)の通路を切換える切換え弁である。通常の運転時には機械式オイルポンプからATにATFを導き、I/Sによるエンジン停止中には電動オイルポンプ72から導くように切換えられる。
【0054】
ヒルホルダ用ソレノイド弁74は、ブレーキオイルの供給通路を遮断する図略のヒルホルダーを駆動するためのソレノイド弁である。通常運転時にはエンジンに連動する倍力装置が作動し、ブレーキ油圧が高められている。しかしエンジン停止中にはこの倍力装置が作動しないため、ブレーキ油圧が低下し、制動力が減少する。従って、例えば坂道等でアイドルストップを行った場合、制動力不足によって車両が動く可能性がある。それを防止するため、ヒルホルダは、ヒルホルダ用ソレノイド弁74でブレーキオイルの供給通路を遮断することによってブレーキ油圧を高い状態で保持するように構成されている。
【0055】
ECU30は、内部にスロットル弁制御手段31、燃料噴射弁制御手段32、点火制御手段33、気筒識別手段40、高圧ボンプ制御手段41、アイドルストップ制御手段34、カム位相制御手段35、表示制御手段36、AT制御手段37及びヒルホルダ制御手段38を含む。
【0056】
スロットル弁制御手段31は、アクセル開度センサ25からのアクセル開度情報や、クランク角センサ21,22からのクランク角速度情報に基づくエンジン回転数等から、必要なスロットル弁17の開度を演算し、スロットル弁アクチュエータ18を制御する。
【0057】
燃料噴射弁制御手段32及び点火制御手段33は、上記アクセル開度情報やエンジン回転数情報に加え、エアフローセンサ20による吸気量情報や水温センサ24による冷却水温度情報等から、必要な燃料噴射量とその噴射時期及び適正な点火時期を演算し、燃料噴射弁8及び点火プラグ7に制御信号を出力する。
【0058】
スロットル弁制御手段31および燃料噴射弁制御手段32によって、アイドル時にはエンジン回転数が所定の目標回転数(例えば温間時には650±50rpm)となるようにフィードバック制御されている(スロットル弁17をバイパスする吸気経路を形成するISC(アイドルスピードコントロール)バルブを設けてアイドル回転数の制御を行うようにしても良い)。
【0059】
気筒識別手段40は、エンジン1の始動時にクランク角センサ21,22から入力されたクランク角信号およびカム角センサ23から入力されたカム角信号に基づいて気筒を識別する。
【0060】
高圧ボンプ制御手段41は、高圧ポンプ用ソレノイド160に対する通電タイミングを制御して、ポンプON状態とポンプOFF状態との切換えを行う。通常運転時は、断続的にポンプON状態とポンプOFF状態とを繰り返すことにより、燃料圧力が予め設定された所定の圧力となるように調節する。その際、燃圧センサ69による燃料圧力の測定値に基づき、フィードバック制御するようにしても良い。そして、アイドルストップによるエンジン1の自動停止の際には、燃料供給の停止とともにポンプOFF状態として燃料圧力が高くなり過ぎるのを防ぎつつ、エンジン停止直前にポンプON状態として再始動時の燃料圧力を確保する。その際、フィードバック制御を行うことにより、再始動に適した燃料圧力(3MP程度)となるようにしても良い。
【0061】
また、エンジン停止直前にポンプON状態とすると、そのポンプ仕事はクランクシャフト6の負荷となるため、エンジン1は、その負荷が最小となる位置、つまりプランジャ163の上昇が最小(プランジャストローク最小)の位置で停止し易くなる。当実施形態では、それを各行程の中間位置、或いはそれよりも10°CA程度遅れ側に設定しているので、エンジン停止時に膨張行程となる気筒(説明の都合上、これを1番気筒3Aであると想定し、以下膨張行程気筒3Aと記す。同様に、エンジン停止時に圧縮行程となる気筒を3番気筒3Cであると想定し、以下圧縮行程気筒3Cと記す。)におけるピストン4の停止位置は、上死点と下死点の中間或いはそれよりも10°CA程度下死点寄り付近となる確率が高くなる。
【0062】
アイドルストップ制御手段34は、I/Sの実行条件を判定したり、ECU30内の各手段にI/Sを実行するために必要な情報を提供したりする。
【0063】
I/Sの実行条件としては、基本停止条件、基本再始動条件及びI/S禁止条件に類別される。各条件は適宜設定して良いが、例えばブレーキセンサ62から得られるブレーキの踏み込み深さが所定値以上、かつ車速センサ63から得られる車速がゼロ、かつインヒビタスイッチ64から得られるATのシフトレバー位置が非走行レンジ、かつパーキングブレーキスイッチ65の信号がON、かつウインカスイッチ66の信号がOFF、かつエアコンスイッチ67がOFFの場合に基本停止条件が成立とされる。
【0064】
また、例えばブレーキの踏み込み深さが所定値以下、又は車速が所定値以上、又はATのシフトレバー位置が走行レンジ、又はウインカスイッチ66の信号がON、又はエアコンスイッチ67がON、又はブレーキ負圧センサ68から得られるブレーキ負圧(制動力を補う倍力装置を構成するブースター内の負圧)が所定値以下の場合に基本再始動条件が成立とされる。
【0065】
そして、例えばエンジン冷却水温度Tcが所定値以下(例えばTc<60℃)、又はバッテリのモニタ電圧が所定値以下、又は前回の再始動からの経過時間が所定値以下の場合にI/S禁止条件が成立とされる。
【0066】
基本停止条件が成立し、かつI/S禁止条件が成立しないとき、最終的にエンジンの停止条件が成立(当明細書では、これをエンジン停止条件の成立という)したとされ、I/Sによるエンジンの自動停止が行われる。即ち燃料噴射弁8からの燃料噴射を停止させるとともに、点火プラグ7の点火を停止させる。
【0067】
エンジン停止の際の制御としては、上記高圧ボンプ制御手段41による制御の他に、膨張行程気筒3A及び圧縮行程気筒3Cにおいてピストン上死点方向の移動に対する抵抗を大きくすべく少なくともこれらの気筒に対する吸気量を増大させ、特に膨張行程気筒3Aにより多く吸気を供給するように、上記スロットル弁17をエンジン停止動作期間中の所定期間だけ所定の開弁状態とする。
【0068】
こうしてエンジン1が自動停止した後、基本再始動条件またはI/S禁止条件が成立すると、最終的に再始動条件が成立(当明細書では、これを再始動条件の成立という)したとされ、再始動がなされる。即ち燃料噴射弁8からの燃料噴射と点火プラグ7の点火を復帰させる。
【0069】
再始動の際の制御としては、先ず圧縮行程気筒3Cに対して初回の燃焼を実行してエンジンを少し逆転させることにより、膨張行程気筒3Aのピストン上昇によって筒内圧力を高めるようにしてから、当該膨張行程気筒3Aで燃焼を行わせるようにする。
【0070】
当実施形態では、上述のように圧縮行程気筒3Cでの初回燃焼、膨張行程気筒3Aでの燃焼を行わせるとともに、初回燃焼後の圧縮行程気筒3Cの筒内に燃焼用空気を残存させて圧縮行程気筒3Cのピストン4が上昇に転じてから上死点付近に達したときに再燃焼を行わせる第1再始動制御モードと、圧縮行程気筒3Cでの初回燃焼及び膨張行程気筒3Aでの燃焼は行わせるが圧縮行程気筒3Cでの再燃焼を行わせない第2再始動制御モードと、圧縮行程気筒3Cでの初回燃焼を行わずにスタータ28でアシストしつつ膨張行程気筒3Aでの燃焼及びその次の圧縮行程気筒3Cでの燃焼により始動を行う第3再始動制御モードとを、ピストン4の停止位置に応じて選択的に実行するようになっている。
【0071】
カム位相制御手段35は、クランクシャフト6に対するカムシャフト26,27の位相変動信号をカム位相可変機構26a,27aに出力し、吸気弁11及び排気弁12の開閉時期を制御する。これにより、エンジンの回転数に応じた最適な吸排気弁の開閉時期を設定し、広回転域に亘って高出力を得るための制御等を行う。
【0072】
表示制御手段36は、I/Sの実行状況に応じてアイドルストップ表示ランプ71のON/OFF制御を行う。アイドルストップ表示ランプ71は、図外の自動停止中ランプ、アイドルストップ禁止中ランプ及び再始動ランプによって構成されている。I/Sによるエンジンの自動停止中は、自動停止中ランプを点灯させ、I/S禁止条件が成立中はアイドルストップ禁止中ランプを点灯させ、エンジンの再始動時には再始動ランプを点灯させる。このようにして、運転者がアイドルストップの制御状況を認識できるようにしている。
【0073】
AT制御手段37は、アイドルストップが実行されることにより、自動変速機に供給される作動油の圧力が低下した場合に、ATF切換弁73に切換指令信号を出力して上記作動油の供給経路をエンジン1によって駆動される図外の機械式オイルポンプ側から電動オイルポンプ72側に切換えるとともに、電動オイルポンプ72を作動させる作動指令信号を出力して、この電動オイルポンプ72から自動変速機に所定圧力の作動油を供給するように構成されている。
【0074】
ヒルホルダ制御手段38は、I/Sによるエンジン停止中に、ヒルホルダ用ソレノイド弁74によってヒルホルダの制御を行う。
【0075】
以上のような当実施形態の装置の作用を次に説明する。
【0076】
4気筒4サイクルエンジンであるエンジン1では、各気筒3が所定の位相差をもって吸気、圧縮、膨張、排気の各行程からなるサイクルを行うようになっており、図7に示すように、上記サイクルが1番気筒3A、3番気筒3C、4番気筒3D、2番気筒3Bの順にクランク角で180°(180°CA)ずつの位相差をもって行われるようになっている。
【0077】
また、同様に180°CA周期で燃料ポンプ用カム164のカムノーズ165がプランジャ163を昇降させ、カムノーズ165の頂点に相当する位置を圧縮上死点付近としているので、プランジャストロークは図示のように各行程の境界付近で最大となり、各行程の中間付近で最小となっている。なお、高圧ポンプ用ソレノイド160をONとしたポンプON状態において、クランクシャフト6の高圧燃料ポンプ126による負荷は、その増減がプランジャストロークの増減に対応したものとなっている。
【0078】
エンジン1が運転されている状態においてエンジン1の出力を要しない所定のアイドリング状態となった場合には、エンジン停止条件の成否判定に基づき、アイドルストップが実行される。
【0079】
エンジン停止条件が時点t1で成立するとアイドルストップによるエンジン停止のための一連の制御が行われる。エンジンを停止させるため、まず燃料供給が停止(燃料カット)される。燃料カットを行うにあたり、燃料カット許容回転数(燃料供給停止許容回転数)域が設けられており、エンジン回転数が燃料カット許容回転数域内にある時を狙って燃料カットを行うように構成されている。例えばアイドル回転数の目標回転数域が650±50rpmに設定されており、これに対し燃料カット許容回転数域が650±10rpmに設定されている。つまり、アイドル時には650±50rpmの範囲でエンジン回転数にふらつきが発生するところ、その中で650±10rpmの範囲に入った瞬間を狙って燃料カットを行うのである。
【0080】
これは、ピストン4を再始動のための好ましい範囲内(図8の範囲A)で停止させるためになされるもので、燃料カット許容回転数域で燃料カットを行うと、ピストン4が好ましい範囲内で停止する確率が高くなることが確認されている。なお、エンジン停止条件が成立した時のエンジン回転数が、燃料カット許容回転数域内にあれば直ちに燃料カットされる。
【0081】
エンジン回転数が燃料カット許容回転数域に入ると燃料カットを行う(燃料カット時点t2)。それとともに、それまで断続的にON−OFFを繰り返していた高圧ポンプ用ソレノイド160の駆動信号が図示のように一旦OFFに固定される。こうすることでプランジャ163が昇降してもその仕事が有効でなくなる、即ち燃料噴射弁8に燃料が圧送されなくので、必要以上に燃料圧力が上昇せず、再始動直後の噴射量が過大となったり燃料漏れが発生したりすることが効果的に防止される。
【0082】
そして、燃料カット時点t2で燃料カットするとともに、スロットル弁17を所定開度に開き、その後、エンジン回転数が予め設定された所定回転数N3(当実施形態ではN3=500rpm)まで低下した時点t3でスロットル弁17を閉じるように制御する。これにより、気筒3内の空気の圧力を利用してエンジン停止位置が好ましい範囲内となる確率を高めるようにしている。
【0083】
すなわち、上記時点t2からt3の間、スロットル弁17が所定開度に開かれることにより、多少の時間的遅れをもって一時的に吸気負圧が減少(吸気量が増大)し、その後に吸気圧負圧が増大(吸気量が減少)するが、一時的に吸気負圧が減少する期間が、膨張行程気筒3Aの吸気行程の期間に概ね対応するように予め上記所定回転数等が設定されている。これにより、スロットル弁17が開かれない場合と比べ、エンジン停止前に各気筒3に吸入される空気量が増加し、そのうちでも特に膨張行程気筒3Aに流入する吸気量が多くなる。
【0084】
そして、エンジン停止に至るときには、圧縮行程気筒3Cではピストン4が上死点に近づくにつれて当該気筒3C内の空気が圧縮されてピストン4を押し返す方向に圧力が作用し、これによりエンジン1が逆転して圧縮行程気筒3Cのピストン4が下死点側に押し返されると、膨張行程気筒3Aのピストン4が上死点側に移動し、それに伴い当該気筒3A内の空気が圧縮され、その圧力で膨張行程気筒3Aのピストン4が下死点側に押し返される。このようにしてピストン4がある程度振動してから停止し、この際、圧縮行程及び膨張行程においてそれぞれピストン4が上死点に近いほどこれを押し戻す力が大きいため、ピストン4の停止位置は行程中間部に近い位置(図6の範囲A)となる場合が多い。
【0085】
上記のようにエンジン停止前に吸気量が増加されることにより、上死点に近づいたときにピストン4を押し戻す力が増大するので、ピストン4が上記範囲A内に停止する確率が高くなる。さらに、上記のようなスロットル弁17の制御により膨張行程気筒3Aの吸気量が圧縮行程気筒3Cと比べて多くなるようにすれば、膨張行程気筒3Aにおいてピストン4が行程中間部に近い範囲のうちでも多少下死点寄り(図6の範囲A2)に停止することが多くなる。
【0086】
そして、上記のように燃料カット時点t2でのエンジン回転数N2が燃料カット許容回転数域83内にあるようにするとともに、燃料カット後の発生トルクを抑制することにより、一層高い確率でピストン4を範囲A2に停止させ易くなっている。
【0087】
なお、燃料カットからエンジン1が完全に停止するまでに慣性でエンジン1が数回転するため、既燃ガスは排出され、膨張行程といえども筒内は殆ど新気となる。また、エンジン1が停止すると圧縮行程気筒3Cでも圧力は直ぐにリークする。従って、エンジン停止後は、いずれの気筒も筒内には略大気圧の新気が存在する状態となる。
【0088】
また、スロットル弁17をエンジン停止まで閉弁しないようにしても良いが、そうするとエンジン停止までずっと吸気量が多い状態が続くので、吸気の圧縮によるピストン4の押し下げ力が減衰し難く、ピストン4の振動回数が増加してエンジン停止時に揺れ戻しが大きくなる場合がある。従って、当実施形態に示すように好適な時点t3でスロットル弁17を閉弁するのが望ましい。
【0089】
そしてエンジン回転数が低下して停止直前となったとき、図示のように高圧ポンプ用ソレノイド160を再びONとしてポンプON状態とする。こうすることで、再始動時の燃料圧力を確保するようにしている。ポンプON状態とするタイミングは、エンジン停止中の圧力低下を考慮したうえで再始動時の燃料圧力が適正値(3MP程度)となるように設定される。その際、燃圧センサ69による燃料圧力をフィードバックしつつ決定するようにしても良い。
【0090】
エンジン停止時のピストン4の停止位置は、クランク角センサ21,22からの信号によって以下のように検出される。図9はクランクシャフト6が回転することによって得られるパルス信号であり、クランク角センサ21からの第1クランク角信号CA1と、クランク角センサ22からの第2クランク角信号CA2とを示す。図9(a)は正転時(図1の状態で右回り)のもの、図9(b)は逆転時のものを示す。エンジンの正転時には、図9(a)のように、第1クランク角信号CA1に対して第2クランク角信号CA2が半パルス幅程度の位相遅れをもって生じることにより、第1クランク角信号CA1の立ち上がり時に第2クランク角信号CA2がLow、第1クランク角信号CA1の立ち下がり時に第2クランク角信号CA2がHighとなる。一方、エンジンの逆転時には、図9(b)のように、第1クランク角信号CA1に対して第2クランク角信号CA2が半パルス幅程度の位相の進みをもって生じることにより、エンジンの正転時とは逆に第1クランク角信号CA1の立ち上がり時に第2クランク角信号CA2がHigh、第1クランク角信号CA1の立ち下がり時に第2クランク角信号CA2がLowとなる。ECU30は、この差異を検出して、クランクシャフト6が正転中か逆転中かを判定しつつパルス信号をカウントする。カウントした値はCAカウンタ値として記憶され、エンジン1が作動中は常時更新される。そして、CAカウンタ値の増減がなくなった状態がエンジン1の停止であり、そのときのCAカウンタ値によってピストン4の停止位置が検出される。
【0091】
図10は、CAカウンタ値の積算フローチャートである。スタート後、ステップS51で、第1クランク角信号CA1の立ち上がり時に第2クランク角信号CA2がLowとなっているか、或いは第1クランク角信号CA1の立ち下がり時に第2クランク角信号CA2がHighとなっているかの判定がなされ、YESであればエンジン1は正転していることを示すので、ステップS52に移行して計測したパルス数をCAカウンタ値に加算する(CAカウンタup)。ステップS51でNOであれば、エンジン1が逆転していることを示すので、ステップS53に移行して計測したパルス数をCAカウンタ値から減算する(CAカウンタdown)。
【0092】
次にエンジンの再始動について説明する。エンジン停止後に上記基本再始動条件またはI/S禁止条件が成立すると、再始動条件が成立したとされ、自動的にエンジン1を再始動する制御が行われる。この際、ピストン4の停止位置が膨張行程気筒3Aにおいて行程中間部付近の所定範囲内で、かつ、上死点寄りの範囲A1(図8)にある場合は、第1再始動制御モードが実行される。
【0093】
図11は上記第1再始動制御モードによる場合のエンジンの各気筒の行程と始動制御開始時点からの各気筒における燃焼(図中に燃焼の順序に従って▲1▼,▲2▼,▲3▼……で示す)との関係を示すとともに、各燃焼によるエンジンの動作方向を矢印で示しており、また図12は、上記第1再始動制御モードによる場合のエンジン回転速度、クランク角、角気筒の筒内圧及び図示トルクの時間的変化を示している。
【0094】
これらの図に示すように、上記第1再始動制御モードによる場合には、先ず圧縮行程気筒3Cにおいて燃焼空燃比は理論空燃比よりもリーンとされつつ初回燃焼(図11中の▲1▼)が行われ、この初回燃焼による燃焼圧(図12中のa部分)で圧縮行程気筒のピストン4が下死点側に押し下げられてエンジン1が逆転方向に駆動され、それに伴い、膨張行程気筒3Aのピストン4が上死点に近づくことにより当該気筒3A内の空気が圧縮されて筒内圧が上昇する(図12中のb部分)。そして、膨張行程気筒3Aのピストン4が上死点に充分に近づいた時点で当該気筒3Aに対する点火が行われて、予め当該気筒3Aに噴射されている燃料が燃焼し(図11中の▲2▼)、その燃焼圧(図12中のc部分)でエンジン1が正転方向に駆動される。さらに、上記圧縮行程気筒3Cに対して適当なタイミングで燃料が噴射されることにより、圧縮行程気筒3Cの上死点付近で当該気筒3Cにおける2回目の燃焼が行われる(図11中の▲3▼)。その燃焼圧(図12中のd部分)でエンジン駆動力が高められる。
【0095】
この場合、圧縮行程気筒3Cの初回燃焼では空燃比がリーンとされたことにより初回燃焼後も当該気筒3Cに空気が残存するため、上記2回目の燃焼が可能となる。そして、上記初回燃焼により圧縮行程気筒3C内の温度が高くなっている状態で燃料が噴射されるとともに圧縮が行われるため、当該気筒3Cでの2回目の燃焼は圧縮自己着火により行われる。
【0096】
このようにして上記2回目の燃焼が行われてから、当該気筒3Cの次に圧縮行程を迎える気筒(4番気筒3D)の圧縮上死点に達した後は、通常制御により各気筒で順次燃焼が行われ、再始動が完了する。
【0097】
以上のような再始動の初期における燃料噴射を適正に行うには、燃料圧力が所定値(例えば3MP程度)であることが望ましい。当実施形態では、そうなるようにエンジン停止直前にポンプON状態として燃料圧力を高めている。また、エンジン停止中もポンプON状態を維持しているので、再始動時における燃料圧力の上昇も速やかになされ、良好な燃焼が得られ易くなっている。このことは、以下に述べる第2再始動制御モード及び第3再始動制御モードにおいても同様である。
【0098】
ピストン4の停止位置が膨張行程気筒3Aにおいて行程中間部付近の所定範囲内で、かつ、下死点寄りの範囲A2(図8参照)にある場合の再始動時には、第2再始動制御モードによる制御が行われる。
【0099】
この第2再始動制御モードによる制御としては、先ず圧縮行程気筒3Cにおいて燃焼空燃比が略理論空燃比もしくはそれよりリッチとされつつ初回燃焼(図11中の▲1▼に相当する燃焼)が行われる。そして、初回燃焼により圧縮行程気筒3Cのピストン4が押し下げられてエンジン1が逆転方向に駆動され、それに伴い膨張行程気筒3Aのピストン4が上死点に近づくことにより当該気筒3A内の空気が圧縮されて筒内圧が上昇し、膨張行程気筒3Aのピストンが上死点に充分に近づいた時点で当該気筒3Aに対する点火が行われて、予め当該気筒3Aに噴射されている燃料が燃焼すること(図11中の▲2▼に相当)によりエンジン1が正転方向に駆動されることは、第1再始動制御モードによる制御と同様である。ただし、第2再始動制御モードでは、膨張行程気筒3Aの燃焼後に圧縮行程気筒3Cが上死点を過ぎるときに燃焼(図11中の▲3▼の燃焼)は行われず、次に圧縮行程を迎える気筒(4番気筒3D)の圧縮上死点に達するまでエンジンの回転が慣性で維持され、その後は通常制御に移行して再始動が完了する。
【0100】
上述のように第1再始動制御モードと第2再始動制御モードとがピストン4の停止位置によって使い分けられることにより、エンジン1の再始動が効果的に行われる。この点を図13も参照しつつ説明する。
【0101】
図13はエンジン停止時のピストン位置と圧縮行程気筒3Cの初回燃焼(逆転用)における要求空燃比、圧縮行程気筒3Cの空気量、膨張行程気筒3Aの空気量及び発生頻度との関係を示しており、この図のように、エンジン停止時に膨張行程気筒3Aのピストン4が上死点寄り(圧縮行程気筒3Cのピストン4が下死点寄り)となるほど膨張行程気筒3Aの空気量が少なくて圧縮行程気筒3Cの空気量が多くなり、逆に膨張行程気筒3Aのピストン4が下死点寄り(圧縮行程気筒3Cのピストン4が上死点寄り)となるほど膨張行程気筒3Aの空気量が多くて圧縮行程気筒3Cの空気量が少なくなる。
【0102】
また、圧縮行程気筒3Cでの初回燃焼では、圧縮行程気筒3Cのピストン4が下死点より少し手前(膨張行程気筒3Aのピストン4が上死点より少し手前)となる所定位置までエンジンを逆転させるだけのトルクを生じさせることが要求されるが、圧縮行程気筒3Cのピストン4が上死点寄りにあれば、圧縮行程気筒3C内の空気量が少なく、かつ、上記所定位置までの逆転に要求されるトルクが比較的大きいので、要求空燃比がリッチとなり、一方、圧縮行程気筒3Cのピストン4が下死点寄りにあれば圧縮行程気筒内3Cの空気量が多く、かつ、上記所定位置までの逆転に要求されるトルクが比較的小さいので、要求空燃比がリーンとなる。
【0103】
膨張行程気筒3Aにおいては、ピストン4が下死点寄りにある程空気量が多いため燃料を多く燃焼させることができる。
【0104】
従って、エンジン停止時に膨張行程気筒3Aのピストン位置が中間部より下死点寄り(圧縮行程気筒3Cのピストン位置が上死点寄り)の所定範囲A2にある場合、圧縮行程気筒3Cでは初回燃焼時の空燃比が上記要求に適合するようにリッチとされ、初回燃焼後に燃焼用空気が残存しないため圧縮上死点付近での2回目の燃焼は行われないが、膨張行程気筒3Aでは空気量が比較的多くて、それに応じた燃料が噴射された上で、圧縮されてから着火、燃焼が行われるため、比較的大きなトルクが得られ、上記圧縮行程気筒3Cの圧縮上死点を過ぎてさらに次の気筒の圧縮上死点を越えるまでエンジンを回転させることができ、再始動を達成することができる。
【0105】
一方、エンジン停止時に膨張行程気筒3Aのピストン位置が中間部より上死点寄り(圧縮行程気筒3Cのピストン位置が下死点寄り)の所定範囲A1にある場合、範囲A2にある場合と比べると、膨張行程気筒内3Aの空気量が少ないため膨張行程での燃焼により得られるトルクが小さくなるが、圧縮行程気筒3Cでは初回燃焼時の空燃比が上記要求に対応してリーンとされ、それにより初回燃焼後も残存する余剰空気が利用されて圧縮上死点付近での2回目の燃焼が行われるため、エンジン正転方向の駆動のためのトルクが補われ、膨張行程気筒3Aでの燃焼と圧縮行程気筒3Cにおける2回目の燃焼の両方により、再始動を達成するに足るトルクが得られる。
【0106】
ところで、当実施形態では、前述のようにエンジン停止の際、燃料供給停止後に所定期間だけスロットル弁17を所定の開弁状態として吸気量を増加させることにより、圧縮行程気筒3C及び膨張行程気筒3Aにおいてピストン4の上死点方向への移動に対する抵抗を大きくし、かつ、膨張行程気筒3Aの吸気量をより多くしているため、図12中にも示すように、エンジン停止時の膨張行程気筒3Aにおけるピストン位置は行程中間部付近の所定範囲A内となることが殆どであり、そのうちでも多少下死点寄りの範囲A2内となることが多く、このように停止位置が調整されることで効果的に再始動が行われる。
【0107】
すなわち、ピストン停止位置が上記範囲Aよりも膨張行程気筒3Aの上死点側(圧縮行程気筒3Cの下死点側)に近づきすぎた場合には、エンジン逆転方向の移動量を充分にとることができなくなるとともに、膨張行程気筒3Aの空気量が少なくなるので膨張行程気筒3Aでの燃焼により得られるトルクが少なくなり、また、上記範囲よりも膨張行程気筒3Aの下死点側(圧縮行程気筒3Cの上死点側)に近づきすぎた場合には、圧縮行程気筒3Cの空気量が少なくなるのでエンジン逆転のためのトルクが充分に得られなくなる。これに対し、ピストン停止位置が上記範囲A内にあれば、圧縮行程気筒3Cでの初期燃焼による逆転駆動が可能で、かつ、膨張行程気筒3Aでの燃焼が良好に行われてその燃焼エネルギーを充分にピストンに作用させることができ、とくにピストン停止位置が膨張行程気筒3Aの下死点寄りの範囲A2にあれば膨張行程気筒3Aの空気量を充分に多く確保でき、膨張行程気筒3Aでの燃焼エネルギーを増大させ、始動性を高めることができる。
【0108】
なお、稀にエンジン停止時のピストン位置が上記範囲Aから外れた場合や、エンジン停止中に筒内温度が低下し、冷却水温度TcがTc<60℃となった場合には、第3再始動制御モードが実行されてスタータ28により始動がアシストされる。
【0109】
本発明の装置の具体的構成は上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲内で種々変更可能である。例えば、カムノーズ165の数を4個としたが、同様の4気筒エンジンにおいて、カムノーズ165の数を2個(プランジャストロークが360°CA周期)としても良い。或いは6個、8個、・・・としても良いが、あまり多くし過ぎると高圧燃料ポンプ126による負荷の振幅が小さくなるので、ピストン4を適正位置に停止させる効果が小さくなる。
【0110】
4気筒以外のエンジン、例えば6気筒、8気筒などのエンジンに対しても、その気筒数や気筒の配置形式(直列あるいはV型)に応じてカムノーズ165の数を設定すれば良い。例えば直列6気筒の場合はカムノーズ165の数を6個又は3個とし、V型6気筒の場合は各バンク(直線状に配列された3気筒)毎に高圧燃料ポンプ126を設け、カムノーズ165の数を3個とする、等である。
【0111】
また、高圧燃料ポンプ126の形式は、当実施形態のようなプランジャ163と燃料ポンプ用カム164によるものである必要はなく、クランクシャフト6の回転角に応じて周期的に変動する仕事として取り出すものであれば他の形式、例えばギヤポンプやベーンポンプ等であっても良い。
【0112】
上記実施形態では、エンジン停止時のピストン位置が所定範囲内にあるときのエンジン始動時に、圧縮行程気筒3Cで初回燃焼を行わせてエンジンを少し逆転させてから膨張行程気筒3Aでの燃焼を行わせるようにしているが、上記圧縮行程気筒3Cでの初回燃焼によるエンジン逆転を行わず、エンジン停止状態でいきなり膨張行程気筒3Aに燃料を供給し、所定時間後に点火することにより、膨張行程気筒3Aでの燃焼を最初に行わせるようにしてもよい。
【0113】
【発明の効果】
以上のように本発明のエンジンの始動装置によると、所定のエンジン停止条件が成立したときに自動的に燃料供給を停止してエンジンを停止させるとともに、エンジン停止後における再始動条件成立時に、膨張行程にある気筒に対して燃料を噴射させて点火、燃焼を行わせ、エンジンを再始動させるエンジンの始動装置において、エンジンの駆動力の一部を、クランクシャフトの回転角に応じて周期的に変動する仕事として取り出し、燃料を噴射するための燃料圧力を高める機械式の高圧燃料ポンプを備え、上記クランクシャフトの回転角が一部又は全部の気筒の略上死点にあるとき、上記高圧燃料ポンプの瞬間的な仕事が最大となるように、かつ上記クランクシャフトの回転角が一部又は全部の気筒の上死点と下死点の略中間にあるとき、上記高圧燃料ポンプの瞬間的な仕事が最小となるように構成されているので、別途特別な制動装置等を設けることなく、ピストンの停止位置ばらつきを削減し、より高い確率で適正位置に停止させることができる。即ち簡単な構造でエンジンの再始動性を高めることによって、一層の燃費低減およびCO2排出量抑制等を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による始動装置を備えたエンジンの概略断面図である。
【図2】上記エンジンの概略平面図である。
【図3】燃料供給系の具体的構成を示すブロック図である。
【図4】高圧燃料ポンプの具体的構造を示す説明図である。
【図5】高圧燃料ポンプの設置状態を示す説明図である。
【図6】エンジンの概略制御ブロック図である。
【図7】エンジン停止時のエンジン回転数、スロットル開度、吸気管負圧の変化、プランジャストローク、高圧ポンプ用ソレノイドの駆動信号及び各気筒のサイクルを示す説明図である。
【図8】エンジン停止時のピストン位置に応じた再始動制御モード選択のための範囲の設定を示す説明図である。
【図9】2つのクランク角センサからのクランク角信号を示すものであって、(a)はエンジン正転時の信号、(b)はエンジン逆転時の信号である。
【図10】エンジン停止時のピストン位置を検出するための処理を示すフローチャートである。
【図11】エンジン再始動時の各気筒のサイクル及び燃焼動作を示す説明図である。
【図12】エンジン再始動時のエンジン回転数、クランク角、各気筒の筒内圧及び図示トルクの変化を示す説明図である。
【図13】エンジン停止時のピストン位置と圧縮行程気筒の要求空燃比、圧縮行程気筒の空気量、膨張行程気筒の空気量及び発生頻度との関係を示す説明図である。
【符号の説明】
1,1a エンジン
3(3A,3B,3C,3D) 気筒(1番気筒,・・・,4番気筒)
4 ピストン
6 クランクシャフト
7 点火プラグ
8 燃料噴射弁
11 吸気弁
12 排気弁
17 スロットル弁
30 ECU
69 燃圧センサ(燃料圧力検知手段)
120 燃料供給系
126 高圧燃料ポンプ
155 吸入弁(ポンプ切換え手段)
160 高圧ポンプ用ソレノイド(ポンプ切換え手段)
163 プランジャ
164 燃料ポンプ用カム
165 カムノーズ
Claims (9)
- 所定のエンジン停止条件が成立したときに自動的に燃料供給を停止してエンジンを停止させるとともに、エンジン停止後における再始動条件成立時に、膨張行程にある気筒に対して燃料を噴射させて点火、燃焼を行わせ、エンジンを再始動させるエンジンの始動装置において、
エンジンの駆動力の一部を、クランクシャフトの回転角に応じて周期的に変動する仕事として取り出し、燃料を噴射するための燃料圧力を高める機械式の高圧燃料ポンプを備え、
上記クランクシャフトの回転角が一部又は全部の気筒の略上死点にあるとき、上記高圧燃料ポンプの瞬間的な仕事が最大となるように、かつ上記クランクシャフトの回転角が一部又は全部の気筒の上死点と下死点の略中間にあるとき、上記高圧燃料ポンプの瞬間的な仕事が最小となるように構成されている
ことを特徴とするエンジンの始動装置。 - 上記高圧燃料ポンプの瞬間的な仕事が最小となる上記クランクシャフトの回転角は、一部又は全部の気筒の行程における上死点と下死点の中間よりもやや遅れ側となるように設定されていることを特徴とする請求項1記載のエンジンの始動装置。
- 上記高圧燃料ポンプの仕事は、クランクシャフトの回転角に対応した回転角を有する燃料ポンプ用カムの回転によって取り出されるように構成され、上記燃料ポンプ用カムのカム半径が大なるカムノーズにおいて上記高圧燃料ポンプの瞬間的な仕事が大であるように構成されていることを特徴とする請求項1または2記載のエンジンの始動装置。
- 上記カムノーズの数は、エンジンの気筒数の2分の1の倍数となっていることを特徴とする請求項3記載のエンジンの始動装置。
- 上記カムノーズの数は、エンジンの気筒数と等しいことを特徴とする請求項4記載のエンジンの始動装置。
- 上記燃料ポンプ用カムの回転によって上記高圧燃料ポンプの仕事が有効となり、燃料圧力を高めるポンプON状態と、上記燃料ポンプ用カムが回転しても上記高圧燃料ポンプによる仕事が有効になされず、燃料圧力が高くならないポンプOFF状態とに切換え可能なポンプ切換え手段を備え、
少なくとも上記所定のエンジン停止条件成立後のエンジン停止直前からエンジンが完全に停止するまでの間、上記ポンプ切換え手段は、ポンプON状態とすることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のエンジンの始動装置。 - 上記所定のエンジン停止条件成立後におけるエンジン停止直前までの所定期間、上記ポンプ切換え手段は、ポンプOFF状態とすることを特徴とする請求項6記載のエンジンの始動装置。
- 上記ポンプ切換え手段は、上記エンジン再始動時の燃料圧力が所定の圧力となるように、上記ポンプON状態とポンプOFF状態とを切換えることを特徴とする請求項6または7記載のエンジンの始動装置。
- 燃料圧力を検知する燃料圧力検知手段を備え、上記ポンプON状態とポンプOFF状態との切換えがフィードバック制御によってなされることを特徴とする請求項8記載のエンジンの始動装置。
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