JP2004294936A - 感光性組成物および感光性平版印刷版材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐薬品性に優れ、オーバー層を必要とせず、酸素の影響を受けにくい高感度な感光性組成物を提供すること。特に750nmから1100nmの波長範囲のレーザー光源に充分高い感光性を有する感光性組成物及び感光性平版印刷版を提供すること。
【解決手段】側鎖にスチレン性二重結合を有する重合体及び不飽和ポリエステル樹脂を含有することを特徴とする感光性組成物を用いる。
【選択図】 無し。
【解決手段】側鎖にスチレン性二重結合を有する重合体及び不飽和ポリエステル樹脂を含有することを特徴とする感光性組成物を用いる。
【選択図】 無し。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は感光性組成物に関し、更にこれを利用した感光性平版印刷版材料に関する。更に詳しくは、レーザー等の走査露光装置を用いて画像形成可能な感光性組成物および感光性平版印刷版材料に関する。更に、プリント配線基板作成用レジストや、カラーフィルター、蛍光体パターンの形成等に好適な感光性組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、コンピューター上で作成したデジタルデータをもとにフィルム上に出力せずに直接印刷版上に出力するコンピュータートゥープレート(CTP)技術が開発され、出力機として種々のレーザーを搭載した各種プレートセッターとこれらに適合する感光性平版印刷版の開発が盛んに行われている。なかでも750nm以上の近赤外領域に発光する半導体レーザーやYAGレーザーを利用した出力機においては光源の出力が数100mWから数ワットクラスの高出力レーザーが搭載されているため、極めて高いエネルギーでの画像形成が可能となっている。例えば、特開平6−186750号、同6−199064号、同7−164773号公報等にはレーザー光照射による記録層のアブレーション(溶融除去)を利用する画像記録方式に関する出願がなされているが、アブレーションにより気散したカスが光学系を汚染し、次第に記録層に到達するレーザー光強度が低下するなどの問題が発生し、むしろアブレーションを起こさないことが出力機側から求められていた。
【0003】
高出力近赤外半導体レーザーを利用する他の画像記録方式として、例えば特開平7−20629号、同7−271029号、同9−185160号、同9−197671号、同9−222731号、同9−239945号、同10−142780号公報等には潜在的酸発生剤と近赤外吸収色素の組み合わせにおいて光熱変換により発生する熱を利用した潜在的酸発生剤の分解と、このレーザー照射部において生成する酸を利用した酸触媒熱架橋を用いてネガ型の画像形成方法が開示されている。これらの系においては、酸触媒架橋反応によりバインダー樹脂を架橋するためには、レーザー露光後にオーブン等を用いて100数十度の加熱処理を施す必要があり、重大な問題点として、この露光後の熱処理条件を記録画像面全体にわたり均一に行う必要があることであり、熱処理が不十分であれば現像時に画像の欠落が発生し、或いは、加熱処理温度が部分的に高い場合や、加熱時間が長引くなどした場合には、現像進行性が低下し、残膜残りや溶出不良の問題が発生した。実用的にはこうした熱処理を均一に行うことは、特に記録面積が広い場合などでは極めて困難であり、露光後の加熱処理を回避する手段が強く求められていた。
【0004】
従来技術に於けるネガ型の記録材料に求められていたのは、アブレーションの発生がなく、高感度でありかつ露光後の加熱処理が不要であるような材料であった。高感度化に関しては、上記の光熱変換を利用したヒートモード記録ではなく、従来からの高感度フォトポリマー技術の応用であるフォトンモード記録を近赤外光に応用した系として、例えば特開2000−122274号、同2000−131833号、同2000−181059号、同2000−194124号公報などには光重合開始剤とエチレン性不飽和化合物を含むフォトポリマー系において、光重合開始剤を近赤外光において分光増感する種々の色素を用いることにより高感度なネガ型記録材料が与えられている。しかしながら、これらの場合においても、従来技術の高感度フォトポリマーの場合と同様に、感光層上部にポリビニルアルコール等を用いた保護層(オーバー層)を形成し、重合連鎖反応を阻害する酸素の影響を遮断する必要があった。しかしながら、こうした酸素バリヤー層は高湿度雰囲気下で水分を吸収し、記録材料が重ねられている場合に容易にブロッキングを発生し、記録材料同士あるいは記録材料間に挿入される合紙等に張り付くことで、出力機への記録材料の二重送りや合紙除去不良等のトラブルの発生原因ともなっていた。さらには、オーバー層の存在によりレーザー露光の際に光の散乱等による画質の低下の問題や、現像の際に、アルカリ現像に先立ってオーバー層除去のためのプレ水洗工程が必要となること、および製造にあたって感光層塗布後に更にオーバー層を塗布する工程が必要である等の問題があった。
【0005】
特開2001−290271号(特許文献1)、同2002−278066号(特許文献2)、同2003−043687号(特許文献3)、同2003−29408号(特許文献4)、同2003−26744号公報(特許文献5)等には側鎖にスチレン性二重結合を有するポリマーを感光層に使用することで、オーバー層を用いることなく、高感度でかつ耐刷性に優れたCTPに適合する印刷版の例が開示されている。これらの場合には有機ホウ素塩を光重合開始剤として使用することで、感光性組成物として高感度で、印刷版として耐刷性に優れた印刷版を与えることが示されている。
【0006】
上記のような従来技術において大きな問題となっている点は、形成される画像部の耐薬品性が不十分である点であり、これは現像時に使用するアルカリ性現像液が画像部に浸透することで画像部膜強度が低下し、印刷時に画像部が脱落し耐刷性が不良になる問題や、或いは印刷に際して特に紫外線硬化型インキなどを使用した場合に画像部がインキ中に含まれるアクリレートモノマー等の成分により膨潤することで、同様に耐刷性が低下する問題が発生していた。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−290271号公報(第1頁〜第4頁)
【特許文献2】
特開2002−278066号公報(第1頁〜第4頁)
【特許文献3】
特開2003−043687号公報(第1頁〜第4頁)
【特許文献4】
特開2003−29408号公報(第1頁〜第4頁)
【特許文献5】
特開2003−26744号公報(第1頁〜第4頁)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、耐薬品に優れた、オーバー層を必要とせず、酸素の影響を受けにくい高感度なネガ型感光性組成物を提供することにある。特に750nm以上の近赤外レーザー光源に充分高い感光性を有する感光性組成物及び感光性平版印刷版を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、下記1または2の構成により達成できることを見出した。
1.側鎖にスチレン性二重結合を有する重合体及び不飽和ポリエステル樹脂を含有することを特徴とする感光性組成物。
2.分子内にスチレン性二重結合を2個以上有する化合物及び不飽和ポリエステル樹脂を含有することを特徴とする感光性組成物。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明に用いられる側鎖にスチレン性二重結合を有するポリマーとは、ポリマーを構成する繰り返し単位中に置換基として下記化1で示される官能基を含むものである。
【0011】
【化1】
【0012】
式中、R1は水素またはメチル基を表す。R2は置換可能な任意の基または原子を表す。kは0〜4の整数を表す。
【0013】
化1で示される基は任意の基または原子によりポリマー主鎖を構成する原子、基と結合しており、結合の仕方は問わない。化1で示される基を有する繰り返し単位として好ましい例を化2〜4に示すが、これらの例に限定されるものではない。
【0014】
【化2】
【0015】
【化3】
【0016】
【化4】
【0017】
上記の例に見られるように、主鎖との連結の様式に依らず、側鎖にスチレン性二重結合(スチレンおよびα−メチルスチレン系二重結合)を有する繰り返し単位を有するポリマーを不飽和ポリエステル樹脂とともに用いることが本発明の特徴の一つである。
【0018】
上記の例で示されるような基を有する重合体としては、アルカリ性水溶液に可溶性を有することが好ましく、そのためにカルボキシル基含有モノマーを共重合成分として含む重合体であることが特に好ましい。この場合、共重合体組成に於ける化1で示される基の割合として、トータル組成100質量%中に於いて化1で示される基は1質量%以上95質量%以下であることが好ましく、これ以下の割合ではその導入の効果が認められない場合がある。また、95質量%以上含まれる場合に於いては、共重合体がアルカリ水溶液に溶解しない場合がある。さらに、共重合体中に於けるカルボキシル基含有モノマーの割合は同じく5質量%以上99質量%以下であることが好ましく、これ以下の割合では共重合体がアルカリ水溶液に溶解しない場合がある。
【0019】
上記のカルボキシル基含有モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸2−カルボキシエチルエステル、メタクリル酸2−カルボキシエチルエステル、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル、4−カルボキシスチレン等のような例が挙げられる。
【0020】
カルボキシル基を有するモノマー以外にも共重合体中に他のモノマー成分を導入して多元共重合体として合成、使用することも好ましく行うことが出来る。こうした場合に共重合体中に組み込むことが出来るモノマーとして、スチレン、4−メチルスチレン、4−ヒドロキシスチレン、4−アセトキシスチレン、4−カルボキシスチレン、4−アミノスチレン、クロロメチルスチレン、4−メトキシスチレン等のスチレン誘導体、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ドデシル等のメタクリル酸アルキルエステル類、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル等のメタクリル酸アリールエステル或いはアルキルアリールエステル類、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸メトキシジエチレングリコールモノエステル、メタクリル酸メトキシポリエチレングリコールモノエステル、メタクリル酸ポリプロピレングリコールモノエステル等のアルキレンオキシ基を有するメタクリル酸エステル類、メタクリル酸2−ジメチルアミノエチル、メタクリル酸2−ジエチルアミノエチル等のアミノ基含有メタクリル酸エステル類、或いはアクリル酸エステルとしてこれら対応するメタクリル酸エステルと同様の例、或いは、リン酸基を有するモノマーとしてビニルホスホン酸等、或いは、アリルアミン、ジアリルアミン等のアミノ基含有モノマー類、或いは、ビニルスルホン酸およびその塩、アリルスルホン酸およびその塩、メタリルスルホン酸およびその塩、スチレンスルホン酸およびその塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびその塩等のスルホン酸基を有するモノマー類、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルカルバゾール等の含窒素複素環を有するモノマー類、或いは4級アンモニウム塩基を有するモノマーとして4−ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドのメチルクロライドによる4級化物、N−ビニルイミダゾールのメチルクロライドによる4級化物、4−ビニルベンジルピリジニウムクロライド等、或いはアクリロニトリル、メタクリロニトリル、またアクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メトキシエチルアクリルアミド、4−ヒドロキシフェニルアクリルアミド等のアクリルアミドもしくはメタクリルアミド誘導体、さらにはアクリロニトリル、メタクリロニトリル、フェニルマレイミド、ヒドロキシフェニルマレイミド、酢酸ビニル、クロロ酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類、またメチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、その他、N−ビニルピロリドン、アクリロイルモルホリン、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アリルアルコール、ビニルトリメトキシシラン、グリシジルメタクリレート等各種モノマーを適宜共重合モノマーとして使用することが出来る。これらのモノマーの共重合体中に占める割合としては、先に述べた共重合体組成中に於ける化1で示す基およびカルボキシル基含有モノマーの好ましい割合が保たれている限りに於いて任意の割合で導入することが出来る。
【0021】
上記のような重合体の分子量については好ましい範囲が存在し、質量平均分子量で1000から100万の範囲であることが好ましく、さらに1万から30万の範囲にあることが特に好ましい。
【0022】
本発明に係わる化1で示される基を有する重合体の例を下記に示す。式中、数字は共重合体トータル組成100質量%中に於ける各繰り返し単位の質量%を表す。
【0023】
【化5】
【0024】
【化6】
【0025】
【化7】
【0026】
【化8】
【0027】
【化9】
【0028】
本発明は、上記した重合体と併せて、不飽和ポリエステル樹脂を含む。不飽和ポリエステル樹脂とは、主鎖に不飽和二重結合を有するポリエステル樹脂を意味し、不飽和ポリエステル樹脂の原料として用いられる二塩基酸としては、具体的には、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸等のα,β−不飽和二塩基酸;フタル酸、無水フタル酸、ハロゲン化無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸無水物、4,4’−ビスフェニルジカルボン酸、および、これらのジアルキルエステル等の飽和二塩基酸等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら二塩基酸は、一種類のみを用いてもよいし、適宜、二種類以上を混合して用いてもよい。
【0029】
上記不飽和ポリエステル樹脂の原料として用いられる多価アルコール類としては、具体的には、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、ビスフェノールAとプロピレンオキシドまたはエチレンオキシドの付加物、1,2,3,4−テトラヒドロキシブタン、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,3−プロパンジオール、1,2−シクロヘキサングリコール、1,3−シクロヘキサングリコール、1,4−シクロヘキサングリコール、パラキシレングリコール、ビシクロヘキシル−4,4’−ジオール、2,6−デカリングリコール、2,7−デカリングリコール等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら多価アルコール類は、一種類のみを用いてもよいし、適宜、二種類以上を混合して用いてもよい。
【0030】
従来技術として、上記のような不飽和ポリエステル樹脂は主としてスチレンモノマーとともに用いることによってFRP(Fiber−reinforcedplastics)として利用されたり、或いは木工コート用塗料として床材等の表面加工に用いられてきた。本発明の目的とする感光性組成物およびこれを利用した印刷版としての用途においては、スチレンモノマーは揮発性が高く有害であり、光硬化する前の状態で取り扱いが行われることからスチレンモノマーを使用することは極めて好ましくなく、また光硬化後の被膜の性質も、印刷版としての用途については耐刷性やインキ受容性において不十分であり、特にレーザーを用いた露光に対しては十分な感度が得られないという問題があった。
【0031】
本発明においては、従来から知られている不飽和ポリエステル樹脂と、側鎖にスチレン性二重結合を有する重合体を用いることで初めて良好な印刷適性を示す感光性組成物を見出したものであり、またレーザー露光に対しても高感度である系を構築することが出来ることを見出したことが本発明の特徴である。
【0032】
上記した側鎖にスチレン性二重結合を有する重合体の添加量は、不飽和ポリエステル樹脂1質量部に対して0.01質量部から20質量部の範囲で含まれることが好ましく、さらに0.05質量部から20質量部の範囲で含まれることが特に好ましい。
【0033】
本発明においてさらに、分子内にスチレン性二重結合を2個以上有する化合物及び不飽和ポリエステル樹脂を含有することを特徴とする感光性組成物を用いても、本発明の目的が達成されることを見出した。ここで、分子内にスチレン性二重結合を2個以上有する化合物とは、前記化1で示す置換基を分子内に2個以上有する化合物(以降、本発明のモノマーと称す)を含有することでより高感度で硬調な調子再現性を示す感光性組成物を与えることから好ましい。本発明のモノマーを使用した場合、不飽和ポリエステル樹脂と併せて用いることにより、効果的に架橋を行うため、高感度のネガ型感光材料を作成することができる。本発明のモノマーは、代表的には下記一般式で表される。
【0034】
【化10】
【0035】
式中、Zは連結基を表し、n2は0または1を表す。R3は水素原子またはメチル基を表す。R4は置換可能な基または原子を表す。k2は0〜4の整数を表し、m2は2以上の整数を表す。
【0036】
化10について更に詳細に説明する。Zの連結基としては、酸素原子、硫黄原子、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、−N(R5)−、−C(O)−O−、−C(R6)=N−、−C(O)−、スルホニル基、複素環基等の単独もしくは2以上が複合した基が挙げられる。ここでR5及びR6は、水素原子、アルキル基、アリール基等を表す。更に、上記した連結基には、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。
【0037】
上記複素環基としては、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、イソオキサゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、イソチアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、チアトリアゾール環、インドール環、インダゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、ベンズオキサゾール環、ベンズチアゾール環、ベンズセレナゾール環、ベンゾチアジアゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、キノリン環、キノキサリン環等の含窒素複素環、フラン環、チオフェン環等が挙げられ、これらには置換基が結合していても良い。
【0038】
上記化10で表される化合物の中でも好ましい化合物が存在する。以下に化10で表される化合物の好ましい具体例を示すが、これらの例に限定されるものではない。
【0039】
【化11】
【0040】
【化12】
【0041】
【化13】
【0042】
上記した本発明のモノマーの添加量は、不飽和ポリエステル樹脂1質量部に対して0.01質量部から1質量部の範囲で含まれることが好ましく、さらに0.05質量部から1質量部の範囲で含まれることが特に好ましい。
【0043】
本発明は、上記した重合体あるいは本発明のモノマーと併せて、光重合開始剤を含有する。本発明に用いられる光重合開始剤とは、光照射によりラジカルを発生し得る化合物であれば任意の化合物を用いることができる。例えば有機ホウ素塩、トリハロアルキル置換された化合物(例えばトリハロアルキル置換された含窒素複素環化合物としてs−トリアジン化合物およびオキサジアゾール誘導体、トリハロアルキルスルホニル化合物)、ヘキサアリールビスイミダゾール、チタノセン化合物、ケトオキシム化合物、チオ化合物、有機過酸化物等が挙げられる。これらの光重合開始剤の中でも、特に有機ホウ素塩、トリハロアルキル置換化合物が好ましく用いられる。更に好ましくは、有機ホウ素塩とトリハロアルキル置換化合物を組み合わせて用いることである。
【0044】
有機ホウ素塩を構成する有機ホウ素アニオンは、下記化14で表される。
【0045】
【化14】
【0046】
式中、R11、R12、R13およびR14は各々同じであっても異なっていてもよく、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、複素環基を表す。これらの内で、R11、R12、R13およびR14の内の一つがアルキル基であり、他の置換基がアリール基である場合が特に好ましい。
【0047】
上記の有機ホウ素アニオンは、これと塩を形成するカチオンが同時に存在する。この場合のカチオンとしては、アルカリ金属イオン、オニウムイオン及びカチオン性増感色素が挙げられる。オニウム塩としては、アンモニウム、スルホニウム、ヨードニウムおよびホスホニウム化合物が挙げられる。アルカリ金属イオンまたはオニウム化合物と有機ホウ素アニオンとの塩を用いる場合には、別に増感色素を添加することで色素が吸収する光の波長範囲での感光性を付与することが行われる。また、カチオン性増感色素の対アニオンとして有機ホウ素アニオンを含有する場合は、該増感色素の吸収波長に応じて感光性が付与される。しかし、後者の場合は更にアルカリ金属もしくはオニウム塩の対アニオンとして有機ホウ素アニオンを併せて含有するのが好ましい。
【0048】
本発明に係わる好ましい様態の一つとして、有機ホウ素塩とこれを増感する色素を併せて含む感光性組成物であり、この場合の有機ホウ素塩は可視光から赤外光の波長領域に感光性を示さず、増感色素の添加によって初めてこうした波長領域の光に感光性を示すものである。
【0049】
本発明に用いられる有機ホウ素塩としては、先に示した化14で表される有機ホウ素アニオンを含む塩であり、塩を形成するカチオンとしてはアルカリ金属イオンおよびオニウム化合物が好ましく使用される。特に好ましい例は、有機ホウ素アニオンとのオニウム塩として、テトラアルキルアンモニウム塩等のアンモニウム塩、トリアリールスルホニウム塩等のスルホニウム塩、トリアリールアルキルホスホニウム塩等のホスホニウム塩が挙げられる。特に好ましい有機ホウ素塩の例を下記に示す。
【0050】
【化15】
【0051】
【化16】
【0052】
本発明において、他の好ましい光ラジカル発生剤としてトリハロアルキル置換化合物が挙げられる。上記トリハロアルキル置換化合物とは、具体的にはトリクロロメチル基、トリブロモメチル基等のトリハロアルキル基を分子内に少なくとも一個以上有する化合物であり、好ましい例としては、該トリハロアルキル基が含窒素複素環基に結合した化合物としてs−トリアジン誘導体およびオキサジアゾール誘導体が挙げられ、或いは、該トリハロアルキル基がスルホニル基を介して芳香族環或いは含窒素複素環に結合したトリハロアルキルスルホニル化合物が挙げられる。
【0053】
トリハロアルキル置換した含窒素複素環化合物やトリハロアルキルスルホニル化合物の特に好ましい例を化17および化18に示す。
【0054】
【化17】
【0055】
【化18】
【0056】
上述したような光重合開始剤の含有量は、不飽和ポリエステル樹脂に対して、1〜90質量%の範囲で含まれることが好ましく、更には1〜40質量%の範囲で含まれることが好ましい。
【0057】
本発明の感光性組成物は、近赤外〜赤外光、即ち700nm以上、更には750〜1100nm可視光から赤外光の各種光源に対応できるように、これらの波長領域に吸収を有し、前述の光重合開始剤を増感する増感剤を併せて含有する。増感剤としては、各種増感色素が好ましく用いられる。このような増感色素として、シアニン、フタロシアニン、メロシアニン、クマリン、ポリフィリン、スピロ化合物、フェロセン、フルオレン、フルギド、イミダゾール、ペリレン、フェナジン、フェノチアジン、ポリエン、アゾ化合物、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、ポリメチンアクリジン、クマリン、ケトクマリン、キナクリドン、インジゴ、スチリル、スクアリリウム化合物、ピリリウム化合物が挙げられ、好ましい増感色素の具体例を以下に示す。
【0058】
【化19】
【0059】
【化20】
【0060】
上記で例示した増感色素の対アニオンを、前述した有機ホウ素アニオンに置換した増感色素も同様に用いることができる。増感色素の含有量は、感光性組成物1m2当たり3〜300mg程度が適当である。好ましくは10〜200mg/m2である。
【0061】
従来のような光ラジカル重合を利用する場合には、大気中の酸素の影響を受けやすく、一般に酸素バリヤ性を有するポリビニルアルコールのような樹脂を感光層の表面にオーバー層として設ける必要がった。また、露光後に重合を促進あるいは完結させるため100℃前後の温度で数分間程度加熱処理を行う必要があった。
【0062】
これに対して、本発明の構成を用いる場合には、上記のようなオーバー層を設けなくとも十分に光硬化する系を与え、かつ、露光後に加熱処理を行う必要がないことが特徴であり、さらに光重合開始剤と増感剤を組み合わせて用いることによって高感度の感光性組成物が得られる点が特徴として挙げられる。また、本発明の感光性組成物は、潜像退行の極めて小さいことが特徴として挙げられる。
【0063】
本発明の効果の一つとして重要な点は、感光特性として硬調な画像再現を与えることであり、レーザー走査露光用感光性組成物として特に好ましく用いることが出来る点である。特に光源として750〜1100nmの範囲に発光するレーザーを光源として用いた場合に、画像のエッジ部が先鋭に再現され、高解像度の画質を与えることから極めて好ましく使用することが出来る。
【0064】
本発明の感光性組成物は、上述した成分以外にも種々の目的で他の成分を添加することも好ましく行われる。特に、スチレン性二重結合基の熱重合あるいは熱架橋を防止し長期にわたる保存性を向上させる目的で種々の重合禁止剤を添加することが好ましく行われる。この場合の重合禁止剤としては、ハイドロキノン類、カテコール類、ナフトール類、クレゾール類等の各種フェノール性水酸基を有する化合物やキノン類化合物、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン塩類等が好ましく使用される。この場合の重合禁止剤の添加量としては、該重合体100質量部に対して0.1質量部から10質量部の範囲で使用することが好ましい。
【0065】
感光性組成物を構成する要素として、他に、画像の視認性を高める目的で種々の染料、顔料を添加することや、感光性組成物のブロッキングを防止する目的等で無機物微粒子あるいは有機物微粒子を添加することも好ましく行われる。
【0066】
平版印刷版材料として使用する場合の感光層自体の厚みに関しては、支持体上に0.5ミクロンから10ミクロンの範囲の乾燥厚みで形成することが好ましく、さらに1ミクロンから5ミクロンの範囲であることが耐刷性を大幅に向上させるために極めて好ましい。感光層は上述の3つの要素を混合した溶液を作成し、公知の種々の塗布方式を用いて支持体上に塗布、乾燥される。支持体については、例えばフィルムやポリエチレン被覆紙を使用しても良いが、より好ましい支持体は、研磨され、陽極酸化皮膜を有するアルミニウム板である。
【0067】
上記のようにして支持体上に形成された感光層を有する材料を印刷版として使用するためには、これに密着露光あるいはレーザー走査露光を行い、露光された部分が架橋することでアルカリ性現像液に対する溶解性が低下することから、後述するアルカリ性現像液により未露光部を溶出することでパターン形成が行われる。
【0068】
アルカリ性現像液としては、本発明の重合体を溶解する液で有れば特に制限は無いが、好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、メタ珪酸ナトリウム、メタ珪酸カリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアンモニウムハイドロキサイド等のようなアルカリ性化合物を溶解した水性現像液が良好に未露光部を選択的に溶解し、下方の支持体表面を露出出来るため極めて好ましい。さらには、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ベンジルアルコール等の各種アルコール類をアルカリ性現像液中に添加することも好ましく行われる。こうしたアルカリ性現像液を用いて現像処理を行った後に、アラビアゴム等を使用して通常のガム引きが好ましく行われる。
【0069】
次に、本発明に係わる代表的な化合物の合成例を以下に示す。
【0070】
合成例1(重合体P−1の合成例)
ビスムチオール(2,5−ジメルカプト−1,3−4−チアジアゾール)150gを600mlのメタノール中に懸濁させ、冷却しながらトリエチルアミン101gを徐々に添加し、均一な溶液を得た。室温下に保ちながらp−クロロメチルスチレン(セイミケミカル製、CMS−14)を10分に亘り滴下し、さらに3時間攪拌を続けた。反応生成物が次第に析出し、攪拌後に氷浴に移し内温を10℃まで冷却した後、吸引濾過により生成物を分離した。メタノールにより洗浄を行い、真空乾燥器内で1昼夜乾燥することで収率75%で化21に示す化合物を得た。
【0071】
【化21】
【0072】
化21のモノマー40gを攪拌機、窒素導入管、温度計、還流冷却管を備えた1リッター4ツ口フラスコ内にとり、メタクリル酸70gおよびエタノール200ml、蒸留水50mlを加え、攪拌しながら水浴上でトリエチルアミン110gを添加した。窒素雰囲気下で内温を70℃になるよう加熱し、この温度でアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を1g添加し、重合を開始した。6時間加熱攪拌を行い、その後重合系を室温まで冷却した。重合体溶液中に1,4−ジオキサン100gおよびp−クロロメチルスチレンを23g加え、室温で更に15時間攪拌を続けた。その後、濃塩酸(35〜37%水溶液)80〜90gを加え、系のpHが4以下になったことを確認後、3リッターの蒸留水中に全体を移した。析出した重合体を濾過により分離し、蒸留水にて洗浄を繰り返した後、真空乾燥器内で1昼夜乾燥した。収率90%で目的とする重合体を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量測定により質量平均分子量9万(ポリスチレン換算)の重合体であり、さらにプロトンNMRによる解析により重合体P−1の構造を支持するものであった。
【0073】
合成例2(モノマーC−5の合成例)
チオシアヌル酸89gをメタノール1.5リッターに懸濁し、冷却しながら水酸化カリウム84gを溶解した30%水溶液を徐々に加え、均一な溶液を得た。これに、室温下でp−クロロメチルスチレン230gを内温が40℃を越えないよう徐々に滴下した。添加後まもなく生成物が析出してくるが攪拌を続け、3時間攪拌を行った後に吸引濾過により生成物を分離した。メタノールにより洗浄を行い、真空乾燥器内で一昼夜乾燥を行った後、90%の収率でモノマーC−5で示される化合物を得た。
【0074】
合成例3(不飽和ポリエステル樹脂(A)の合成例)
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、および温度計を備えた3Lの四つ口フラスコに、エチレングリコール310g、ジエチレングリコール300g、およびジプロピレングリコール320gと、無水フタル酸700gおよび無水マレイン酸520gとを加えて攪拌し、窒素気流下210℃で7時間反応させ不飽和ポリエステル樹脂(以下、不飽和ポリエステル樹脂(A)と記す)を得た。
【0075】
合成例4(不飽和ポリエステル樹脂(B)の合成例)
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、および温度計を備えた1Lの四つ口フラスコに、無水マレイン酸58.8g(0.6モル)、テトラヒドロ無水フタル酸60.9g(0.4モル)、ジエチレングリコ−ル63.7g(0.6モル)、トリエチレングリコ−ル75.1g(0.5モル)、ハイドロキノン200ppmをを加えて攪拌し、窒素気流下210℃で7時間反応させ不飽和ポリエステル樹脂(以下、不飽和ポリエステル樹脂(B)と記す)を得た。
【0076】
【実施例】
以下実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、効果はもとより本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0077】
実施例1および比較例1
厚みが0.24mmである砂目立て処理を行った陽極酸化アルミニウム板を使用して、実施例1においては、この上に下記の処方で示される感光性塗工液を乾燥厚みが2.0ミクロンになるよう塗布を行い、75℃の乾燥器内にて6分間乾燥を行った。比較例1においては、下記感光性塗工液配合処方において、不飽和ポリエステル樹脂(A)に代えて、トリメチロールプロパントリアクリレートを同量使用すること以外は全く実施例1と同様にして感光材料を作成した。
<感光性塗工液>
重合体(P−1) 10質量部
不飽和ポリエステル樹脂(A) 5質量部
有機ホウ素塩(BC−6) 2質量部
10%フタロシアニン分散液(着色剤) 0.5質量部
ジオキサン 70質量部
シクロヘキサノン 10質量部
【0078】
実施例1および比較例1で得られた感光材料をフィルムマスクを通して画像様に紫外線露光後、ケイ酸カリウムを2質量%および水酸化カリウム2質量%、ノニオン性界面活性剤0.1質量%を含有するアルカリ性現像液で現像を行った。現像後にアルミ板表面に形成された画像の耐薬品性を評価するため、上記現像液中にさらに一時間浸漬し、画像部の剥離あるいは溶解の有無を観察したが、実施例1で作成した感光材料を用いた場合には、浸漬中において一切の変化を認めなかった。一方、比較例1で作成した感光材料を使用した場合には、浸漬中において僅かに画像部が溶解するのが確認された。同様に、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、トルエン、クロロホルム、酢酸エチル、アセトニトリルおよびエタノール中に浸漬を行い、画像部の変化の有無を観察したが、実施例1で作成した感光材料を使用した場合には、一切の変化を認めず、耐薬品性に優れた硬化物を与えることが確認された。一方比較例1で作成した感光材料を使用した場合には、ジメチルホルムアミド中およびテトラヒドロフラン中に於いて僅かに画像が溶解するのが確認された。
【0079】
実施例2
実施例1と同様に、厚みが0.24mmである砂目立て処理を行った陽極酸化アルミニウム板を使用して、この上に下記の処方で示される感光性塗工液を乾燥厚みが2.0ミクロンになるよう塗布を行い、75℃の乾燥器内にて6分間乾燥を行った。
<感光性塗工液>
不飽和ポリエステル樹脂(B) 10質量部
本発明のモノマー(C−5) 5質量部
有機ホウ素塩(BC−6) 2質量部
10%フタロシアニン分散液(着色剤) 0.5質量部
ジオキサン 70質量部
シクロヘキサノン 10質量部
【0080】
得られた感光材料を実施例1と全く同様にして画像様に紫外線露光後、ケイ酸カリウムを2質量%および水酸化カリウム2質量%、ノニオン性界面活性剤0.1質量%を含有するアルカリ性現像液で現像を行った。現像後にアルミ板表面に形成された画像の耐薬品性を評価するため、上記現像液中にさらに一時間浸漬し、画像部の剥離あるいは溶解の有無を観察したが、浸漬中において一切の変化を認めなかった。同様に、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、トルエン、クロロホルム、酢酸エチル、アセトニトリルおよびエタノール中に浸漬を行い、画像部の変化の有無を観察したが、一切の変化を認めず、耐薬品性に優れた硬化物を与えることが確認された。
【0081】
実施例3
実施例1と同様に、厚みが0.24mmである砂目立て処理を行った陽極酸化アルミニウム板を使用して、この上に下記の処方で示される感光性塗工液を乾燥厚みが2.0ミクロンになるよう塗布を行い、75℃の乾燥器内にて6分間乾燥を行った。
<感光性塗工液>
不飽和ポリエステル樹脂(B) 10質量部
本発明のモノマー(C−5) 5質量部
有機ホウ素塩(BC−6) 2質量部
トリハロアルキル置換化合物(T−2) 1質量部
増感色素(S−33) 0.3質量部
10%フタロシアニン分散液(着色剤) 0.5質量部
ジオキサン 70質量部
シクロヘキサノン 10質量部
【0082】
上記で作成した試料を用いて、波長830nmの半導体レーザー(出力1W)を利用し、レーザースポット径10ミクロンに調整し、版面パワー60mJ/cm2になるよう外面ドラム上で1000rpmの回転速度で走査露光を行った。現像は先の実施例と同様に行い、平版印刷版原版を作成した。原版上の画像は10ミクロン細線が明瞭に再現されており、走査型電子顕微鏡観察においても画線のエッジ部分が切り立った形で先鋭な画線プロファイルを示していた。このものの印刷性能評価を行うため、印刷機はミヤコシビジネスフォーム印刷機を使用し、印刷インキは紫外線硬化型インキBest Cure RNCプロセス紅を使用して、湿し水は市販の湿し水を希釈して使用して印刷を行った。印刷評価項目として耐刷性についてはテスト画像中の微小網点および細線が欠落し始めるまでの刷り枚数を以て評価を行った。また、地汚れの有無は印刷物上の地汚れの有無を以て目視判定を行った。結果として本実施例で作成した感光性平版印刷版を使用した場合には、耐刷性に関しては20万枚の印刷においても良好な印刷物が得られた。また、地汚れの発生もなく良好な結果が得られた。
【0083】
実施例4
実施例3と同様に、下記の処方で示される感光性塗工液を用いた以外は全て同様にして感光性平版印刷版を作成した。
<感光性塗工液>
重合体(P−1) 10質量部
不飽和ポリエステル樹脂(B) 5質量部
有機ホウ素塩(BC−6) 2質量部
トリハロアルキル置換化合物(T−2) 1質量部
増感色素(S−33) 0.3質量部
10%フタロシアニン分散液(着色剤) 0.5質量部
ジオキサン 70質量部
シクロヘキサノン 10質量部
【0084】
上記で作成した試料を用いて、実施例3と全く同様にして、波長830nmの半導体レーザー(出力1W)を利用し、レーザースポット径10ミクロンに調整し、版面パワー60mJ/cm2になるよう外面ドラム上で1000rpmの回転速度で走査露光を行った。現像は先の実施例と同様に行い、平版印刷版原版を作成した。原版上の画像は10ミクロン細線が明瞭に再現されており、走査型電子顕微鏡観察においても画線のエッジ部分が切り立った形で先鋭な画線プロファイルを示していた。このものの印刷性能評価を行うため、印刷機はミヤコシビジネスフォーム印刷機を使用し、印刷インキは紫外線硬化型インキBest Cure RNCプロセス紅を使用して、湿し水は市販の湿し水を希釈して使用して印刷を行った。印刷評価項目として耐刷性についてはテスト画像中の微小網点および細線が欠落し始めるまでの刷り枚数を以て評価を行った。また、地汚れの有無は印刷物上の地汚れの有無を以て目視判定を行った。結果として本実施例で作成した感光性平版印刷版を使用した場合には、耐刷性に関しては20万枚の印刷においても良好な印刷物が得られた。また、地汚れの発生もなく良好な結果が得られた。
【0085】
比較例2
実施例4と同様に、下記の処方で示される感光性塗工液を用いた以外は全て同様にして感光性平版印刷版を作成した。
<感光性塗工液>
重合体(P−1) 10質量部
トリメチロールプロパントリアクリレート 5質量部
有機ホウ素塩(BC−6) 2質量部
トリハロアルキル置換化合物(T−2) 1質量部
増感色素(S−33) 0.3質量部
10%フタロシアニン分散液(着色剤) 0.5質量部
ジオキサン 70質量部
シクロヘキサノン 10質量部
【0086】
上記で作成した試料を用いて、実施例4と全く同様にして、波長830nmの半導体レーザー(出力1W)を利用し、レーザースポット径10ミクロンに調整し、版面パワー60mJ/cm2になるよう外面ドラム上で1000rpmの回転速度で走査露光を行った。現像は先の実施例と同様に行い、平版印刷版原版を作成した。原版上の画像は10ミクロン細線が明瞭に再現されており、走査型電子顕微鏡観察においても画線のエッジ部分が切り立った形で先鋭な画線プロファイルを示していた。このものの印刷性能評価を行うため、印刷機はミヤコシビジネスフォーム印刷機を使用し、印刷インキは紫外線硬化型インキBest Cure RNCプロセス紅を使用して、湿し水は市販の湿し水を希釈して使用して印刷を行った。印刷評価項目として耐刷性についてはテスト画像中の微小網点および細線が欠落し始めるまでの刷り枚数を以て評価を行った。また、地汚れの有無は印刷物上の地汚れの有無を以て目視判定を行った。結果として本比較例で作成した感光性平版印刷版を使用した場合には、耐刷性に関しては5万枚の印刷において画像の欠落およびインキ乗り不良が発生し、耐刷性に劣る結果となった。
【0087】
【発明の効果】
本発明によれば、耐薬品性に優れた、オーバー層を必要とせず、酸素の影響を受けにくい高感度な感光性組成物が得られる。特に750nmから1100nmの波長範囲のレーザー光源に充分高い感光性を有する感光性組成物及び感光性平版印刷版が得られる。
【発明の属する技術分野】
本発明は感光性組成物に関し、更にこれを利用した感光性平版印刷版材料に関する。更に詳しくは、レーザー等の走査露光装置を用いて画像形成可能な感光性組成物および感光性平版印刷版材料に関する。更に、プリント配線基板作成用レジストや、カラーフィルター、蛍光体パターンの形成等に好適な感光性組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、コンピューター上で作成したデジタルデータをもとにフィルム上に出力せずに直接印刷版上に出力するコンピュータートゥープレート(CTP)技術が開発され、出力機として種々のレーザーを搭載した各種プレートセッターとこれらに適合する感光性平版印刷版の開発が盛んに行われている。なかでも750nm以上の近赤外領域に発光する半導体レーザーやYAGレーザーを利用した出力機においては光源の出力が数100mWから数ワットクラスの高出力レーザーが搭載されているため、極めて高いエネルギーでの画像形成が可能となっている。例えば、特開平6−186750号、同6−199064号、同7−164773号公報等にはレーザー光照射による記録層のアブレーション(溶融除去)を利用する画像記録方式に関する出願がなされているが、アブレーションにより気散したカスが光学系を汚染し、次第に記録層に到達するレーザー光強度が低下するなどの問題が発生し、むしろアブレーションを起こさないことが出力機側から求められていた。
【0003】
高出力近赤外半導体レーザーを利用する他の画像記録方式として、例えば特開平7−20629号、同7−271029号、同9−185160号、同9−197671号、同9−222731号、同9−239945号、同10−142780号公報等には潜在的酸発生剤と近赤外吸収色素の組み合わせにおいて光熱変換により発生する熱を利用した潜在的酸発生剤の分解と、このレーザー照射部において生成する酸を利用した酸触媒熱架橋を用いてネガ型の画像形成方法が開示されている。これらの系においては、酸触媒架橋反応によりバインダー樹脂を架橋するためには、レーザー露光後にオーブン等を用いて100数十度の加熱処理を施す必要があり、重大な問題点として、この露光後の熱処理条件を記録画像面全体にわたり均一に行う必要があることであり、熱処理が不十分であれば現像時に画像の欠落が発生し、或いは、加熱処理温度が部分的に高い場合や、加熱時間が長引くなどした場合には、現像進行性が低下し、残膜残りや溶出不良の問題が発生した。実用的にはこうした熱処理を均一に行うことは、特に記録面積が広い場合などでは極めて困難であり、露光後の加熱処理を回避する手段が強く求められていた。
【0004】
従来技術に於けるネガ型の記録材料に求められていたのは、アブレーションの発生がなく、高感度でありかつ露光後の加熱処理が不要であるような材料であった。高感度化に関しては、上記の光熱変換を利用したヒートモード記録ではなく、従来からの高感度フォトポリマー技術の応用であるフォトンモード記録を近赤外光に応用した系として、例えば特開2000−122274号、同2000−131833号、同2000−181059号、同2000−194124号公報などには光重合開始剤とエチレン性不飽和化合物を含むフォトポリマー系において、光重合開始剤を近赤外光において分光増感する種々の色素を用いることにより高感度なネガ型記録材料が与えられている。しかしながら、これらの場合においても、従来技術の高感度フォトポリマーの場合と同様に、感光層上部にポリビニルアルコール等を用いた保護層(オーバー層)を形成し、重合連鎖反応を阻害する酸素の影響を遮断する必要があった。しかしながら、こうした酸素バリヤー層は高湿度雰囲気下で水分を吸収し、記録材料が重ねられている場合に容易にブロッキングを発生し、記録材料同士あるいは記録材料間に挿入される合紙等に張り付くことで、出力機への記録材料の二重送りや合紙除去不良等のトラブルの発生原因ともなっていた。さらには、オーバー層の存在によりレーザー露光の際に光の散乱等による画質の低下の問題や、現像の際に、アルカリ現像に先立ってオーバー層除去のためのプレ水洗工程が必要となること、および製造にあたって感光層塗布後に更にオーバー層を塗布する工程が必要である等の問題があった。
【0005】
特開2001−290271号(特許文献1)、同2002−278066号(特許文献2)、同2003−043687号(特許文献3)、同2003−29408号(特許文献4)、同2003−26744号公報(特許文献5)等には側鎖にスチレン性二重結合を有するポリマーを感光層に使用することで、オーバー層を用いることなく、高感度でかつ耐刷性に優れたCTPに適合する印刷版の例が開示されている。これらの場合には有機ホウ素塩を光重合開始剤として使用することで、感光性組成物として高感度で、印刷版として耐刷性に優れた印刷版を与えることが示されている。
【0006】
上記のような従来技術において大きな問題となっている点は、形成される画像部の耐薬品性が不十分である点であり、これは現像時に使用するアルカリ性現像液が画像部に浸透することで画像部膜強度が低下し、印刷時に画像部が脱落し耐刷性が不良になる問題や、或いは印刷に際して特に紫外線硬化型インキなどを使用した場合に画像部がインキ中に含まれるアクリレートモノマー等の成分により膨潤することで、同様に耐刷性が低下する問題が発生していた。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−290271号公報(第1頁〜第4頁)
【特許文献2】
特開2002−278066号公報(第1頁〜第4頁)
【特許文献3】
特開2003−043687号公報(第1頁〜第4頁)
【特許文献4】
特開2003−29408号公報(第1頁〜第4頁)
【特許文献5】
特開2003−26744号公報(第1頁〜第4頁)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、耐薬品に優れた、オーバー層を必要とせず、酸素の影響を受けにくい高感度なネガ型感光性組成物を提供することにある。特に750nm以上の近赤外レーザー光源に充分高い感光性を有する感光性組成物及び感光性平版印刷版を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、下記1または2の構成により達成できることを見出した。
1.側鎖にスチレン性二重結合を有する重合体及び不飽和ポリエステル樹脂を含有することを特徴とする感光性組成物。
2.分子内にスチレン性二重結合を2個以上有する化合物及び不飽和ポリエステル樹脂を含有することを特徴とする感光性組成物。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明に用いられる側鎖にスチレン性二重結合を有するポリマーとは、ポリマーを構成する繰り返し単位中に置換基として下記化1で示される官能基を含むものである。
【0011】
【化1】
【0012】
式中、R1は水素またはメチル基を表す。R2は置換可能な任意の基または原子を表す。kは0〜4の整数を表す。
【0013】
化1で示される基は任意の基または原子によりポリマー主鎖を構成する原子、基と結合しており、結合の仕方は問わない。化1で示される基を有する繰り返し単位として好ましい例を化2〜4に示すが、これらの例に限定されるものではない。
【0014】
【化2】
【0015】
【化3】
【0016】
【化4】
【0017】
上記の例に見られるように、主鎖との連結の様式に依らず、側鎖にスチレン性二重結合(スチレンおよびα−メチルスチレン系二重結合)を有する繰り返し単位を有するポリマーを不飽和ポリエステル樹脂とともに用いることが本発明の特徴の一つである。
【0018】
上記の例で示されるような基を有する重合体としては、アルカリ性水溶液に可溶性を有することが好ましく、そのためにカルボキシル基含有モノマーを共重合成分として含む重合体であることが特に好ましい。この場合、共重合体組成に於ける化1で示される基の割合として、トータル組成100質量%中に於いて化1で示される基は1質量%以上95質量%以下であることが好ましく、これ以下の割合ではその導入の効果が認められない場合がある。また、95質量%以上含まれる場合に於いては、共重合体がアルカリ水溶液に溶解しない場合がある。さらに、共重合体中に於けるカルボキシル基含有モノマーの割合は同じく5質量%以上99質量%以下であることが好ましく、これ以下の割合では共重合体がアルカリ水溶液に溶解しない場合がある。
【0019】
上記のカルボキシル基含有モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸2−カルボキシエチルエステル、メタクリル酸2−カルボキシエチルエステル、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル、4−カルボキシスチレン等のような例が挙げられる。
【0020】
カルボキシル基を有するモノマー以外にも共重合体中に他のモノマー成分を導入して多元共重合体として合成、使用することも好ましく行うことが出来る。こうした場合に共重合体中に組み込むことが出来るモノマーとして、スチレン、4−メチルスチレン、4−ヒドロキシスチレン、4−アセトキシスチレン、4−カルボキシスチレン、4−アミノスチレン、クロロメチルスチレン、4−メトキシスチレン等のスチレン誘導体、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ドデシル等のメタクリル酸アルキルエステル類、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル等のメタクリル酸アリールエステル或いはアルキルアリールエステル類、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸メトキシジエチレングリコールモノエステル、メタクリル酸メトキシポリエチレングリコールモノエステル、メタクリル酸ポリプロピレングリコールモノエステル等のアルキレンオキシ基を有するメタクリル酸エステル類、メタクリル酸2−ジメチルアミノエチル、メタクリル酸2−ジエチルアミノエチル等のアミノ基含有メタクリル酸エステル類、或いはアクリル酸エステルとしてこれら対応するメタクリル酸エステルと同様の例、或いは、リン酸基を有するモノマーとしてビニルホスホン酸等、或いは、アリルアミン、ジアリルアミン等のアミノ基含有モノマー類、或いは、ビニルスルホン酸およびその塩、アリルスルホン酸およびその塩、メタリルスルホン酸およびその塩、スチレンスルホン酸およびその塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびその塩等のスルホン酸基を有するモノマー類、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルカルバゾール等の含窒素複素環を有するモノマー類、或いは4級アンモニウム塩基を有するモノマーとして4−ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドのメチルクロライドによる4級化物、N−ビニルイミダゾールのメチルクロライドによる4級化物、4−ビニルベンジルピリジニウムクロライド等、或いはアクリロニトリル、メタクリロニトリル、またアクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メトキシエチルアクリルアミド、4−ヒドロキシフェニルアクリルアミド等のアクリルアミドもしくはメタクリルアミド誘導体、さらにはアクリロニトリル、メタクリロニトリル、フェニルマレイミド、ヒドロキシフェニルマレイミド、酢酸ビニル、クロロ酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類、またメチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、その他、N−ビニルピロリドン、アクリロイルモルホリン、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アリルアルコール、ビニルトリメトキシシラン、グリシジルメタクリレート等各種モノマーを適宜共重合モノマーとして使用することが出来る。これらのモノマーの共重合体中に占める割合としては、先に述べた共重合体組成中に於ける化1で示す基およびカルボキシル基含有モノマーの好ましい割合が保たれている限りに於いて任意の割合で導入することが出来る。
【0021】
上記のような重合体の分子量については好ましい範囲が存在し、質量平均分子量で1000から100万の範囲であることが好ましく、さらに1万から30万の範囲にあることが特に好ましい。
【0022】
本発明に係わる化1で示される基を有する重合体の例を下記に示す。式中、数字は共重合体トータル組成100質量%中に於ける各繰り返し単位の質量%を表す。
【0023】
【化5】
【0024】
【化6】
【0025】
【化7】
【0026】
【化8】
【0027】
【化9】
【0028】
本発明は、上記した重合体と併せて、不飽和ポリエステル樹脂を含む。不飽和ポリエステル樹脂とは、主鎖に不飽和二重結合を有するポリエステル樹脂を意味し、不飽和ポリエステル樹脂の原料として用いられる二塩基酸としては、具体的には、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸等のα,β−不飽和二塩基酸;フタル酸、無水フタル酸、ハロゲン化無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸無水物、4,4’−ビスフェニルジカルボン酸、および、これらのジアルキルエステル等の飽和二塩基酸等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら二塩基酸は、一種類のみを用いてもよいし、適宜、二種類以上を混合して用いてもよい。
【0029】
上記不飽和ポリエステル樹脂の原料として用いられる多価アルコール類としては、具体的には、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、ビスフェノールAとプロピレンオキシドまたはエチレンオキシドの付加物、1,2,3,4−テトラヒドロキシブタン、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,3−プロパンジオール、1,2−シクロヘキサングリコール、1,3−シクロヘキサングリコール、1,4−シクロヘキサングリコール、パラキシレングリコール、ビシクロヘキシル−4,4’−ジオール、2,6−デカリングリコール、2,7−デカリングリコール等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら多価アルコール類は、一種類のみを用いてもよいし、適宜、二種類以上を混合して用いてもよい。
【0030】
従来技術として、上記のような不飽和ポリエステル樹脂は主としてスチレンモノマーとともに用いることによってFRP(Fiber−reinforcedplastics)として利用されたり、或いは木工コート用塗料として床材等の表面加工に用いられてきた。本発明の目的とする感光性組成物およびこれを利用した印刷版としての用途においては、スチレンモノマーは揮発性が高く有害であり、光硬化する前の状態で取り扱いが行われることからスチレンモノマーを使用することは極めて好ましくなく、また光硬化後の被膜の性質も、印刷版としての用途については耐刷性やインキ受容性において不十分であり、特にレーザーを用いた露光に対しては十分な感度が得られないという問題があった。
【0031】
本発明においては、従来から知られている不飽和ポリエステル樹脂と、側鎖にスチレン性二重結合を有する重合体を用いることで初めて良好な印刷適性を示す感光性組成物を見出したものであり、またレーザー露光に対しても高感度である系を構築することが出来ることを見出したことが本発明の特徴である。
【0032】
上記した側鎖にスチレン性二重結合を有する重合体の添加量は、不飽和ポリエステル樹脂1質量部に対して0.01質量部から20質量部の範囲で含まれることが好ましく、さらに0.05質量部から20質量部の範囲で含まれることが特に好ましい。
【0033】
本発明においてさらに、分子内にスチレン性二重結合を2個以上有する化合物及び不飽和ポリエステル樹脂を含有することを特徴とする感光性組成物を用いても、本発明の目的が達成されることを見出した。ここで、分子内にスチレン性二重結合を2個以上有する化合物とは、前記化1で示す置換基を分子内に2個以上有する化合物(以降、本発明のモノマーと称す)を含有することでより高感度で硬調な調子再現性を示す感光性組成物を与えることから好ましい。本発明のモノマーを使用した場合、不飽和ポリエステル樹脂と併せて用いることにより、効果的に架橋を行うため、高感度のネガ型感光材料を作成することができる。本発明のモノマーは、代表的には下記一般式で表される。
【0034】
【化10】
【0035】
式中、Zは連結基を表し、n2は0または1を表す。R3は水素原子またはメチル基を表す。R4は置換可能な基または原子を表す。k2は0〜4の整数を表し、m2は2以上の整数を表す。
【0036】
化10について更に詳細に説明する。Zの連結基としては、酸素原子、硫黄原子、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、−N(R5)−、−C(O)−O−、−C(R6)=N−、−C(O)−、スルホニル基、複素環基等の単独もしくは2以上が複合した基が挙げられる。ここでR5及びR6は、水素原子、アルキル基、アリール基等を表す。更に、上記した連結基には、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。
【0037】
上記複素環基としては、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、イソオキサゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、イソチアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、チアトリアゾール環、インドール環、インダゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、ベンズオキサゾール環、ベンズチアゾール環、ベンズセレナゾール環、ベンゾチアジアゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、キノリン環、キノキサリン環等の含窒素複素環、フラン環、チオフェン環等が挙げられ、これらには置換基が結合していても良い。
【0038】
上記化10で表される化合物の中でも好ましい化合物が存在する。以下に化10で表される化合物の好ましい具体例を示すが、これらの例に限定されるものではない。
【0039】
【化11】
【0040】
【化12】
【0041】
【化13】
【0042】
上記した本発明のモノマーの添加量は、不飽和ポリエステル樹脂1質量部に対して0.01質量部から1質量部の範囲で含まれることが好ましく、さらに0.05質量部から1質量部の範囲で含まれることが特に好ましい。
【0043】
本発明は、上記した重合体あるいは本発明のモノマーと併せて、光重合開始剤を含有する。本発明に用いられる光重合開始剤とは、光照射によりラジカルを発生し得る化合物であれば任意の化合物を用いることができる。例えば有機ホウ素塩、トリハロアルキル置換された化合物(例えばトリハロアルキル置換された含窒素複素環化合物としてs−トリアジン化合物およびオキサジアゾール誘導体、トリハロアルキルスルホニル化合物)、ヘキサアリールビスイミダゾール、チタノセン化合物、ケトオキシム化合物、チオ化合物、有機過酸化物等が挙げられる。これらの光重合開始剤の中でも、特に有機ホウ素塩、トリハロアルキル置換化合物が好ましく用いられる。更に好ましくは、有機ホウ素塩とトリハロアルキル置換化合物を組み合わせて用いることである。
【0044】
有機ホウ素塩を構成する有機ホウ素アニオンは、下記化14で表される。
【0045】
【化14】
【0046】
式中、R11、R12、R13およびR14は各々同じであっても異なっていてもよく、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、複素環基を表す。これらの内で、R11、R12、R13およびR14の内の一つがアルキル基であり、他の置換基がアリール基である場合が特に好ましい。
【0047】
上記の有機ホウ素アニオンは、これと塩を形成するカチオンが同時に存在する。この場合のカチオンとしては、アルカリ金属イオン、オニウムイオン及びカチオン性増感色素が挙げられる。オニウム塩としては、アンモニウム、スルホニウム、ヨードニウムおよびホスホニウム化合物が挙げられる。アルカリ金属イオンまたはオニウム化合物と有機ホウ素アニオンとの塩を用いる場合には、別に増感色素を添加することで色素が吸収する光の波長範囲での感光性を付与することが行われる。また、カチオン性増感色素の対アニオンとして有機ホウ素アニオンを含有する場合は、該増感色素の吸収波長に応じて感光性が付与される。しかし、後者の場合は更にアルカリ金属もしくはオニウム塩の対アニオンとして有機ホウ素アニオンを併せて含有するのが好ましい。
【0048】
本発明に係わる好ましい様態の一つとして、有機ホウ素塩とこれを増感する色素を併せて含む感光性組成物であり、この場合の有機ホウ素塩は可視光から赤外光の波長領域に感光性を示さず、増感色素の添加によって初めてこうした波長領域の光に感光性を示すものである。
【0049】
本発明に用いられる有機ホウ素塩としては、先に示した化14で表される有機ホウ素アニオンを含む塩であり、塩を形成するカチオンとしてはアルカリ金属イオンおよびオニウム化合物が好ましく使用される。特に好ましい例は、有機ホウ素アニオンとのオニウム塩として、テトラアルキルアンモニウム塩等のアンモニウム塩、トリアリールスルホニウム塩等のスルホニウム塩、トリアリールアルキルホスホニウム塩等のホスホニウム塩が挙げられる。特に好ましい有機ホウ素塩の例を下記に示す。
【0050】
【化15】
【0051】
【化16】
【0052】
本発明において、他の好ましい光ラジカル発生剤としてトリハロアルキル置換化合物が挙げられる。上記トリハロアルキル置換化合物とは、具体的にはトリクロロメチル基、トリブロモメチル基等のトリハロアルキル基を分子内に少なくとも一個以上有する化合物であり、好ましい例としては、該トリハロアルキル基が含窒素複素環基に結合した化合物としてs−トリアジン誘導体およびオキサジアゾール誘導体が挙げられ、或いは、該トリハロアルキル基がスルホニル基を介して芳香族環或いは含窒素複素環に結合したトリハロアルキルスルホニル化合物が挙げられる。
【0053】
トリハロアルキル置換した含窒素複素環化合物やトリハロアルキルスルホニル化合物の特に好ましい例を化17および化18に示す。
【0054】
【化17】
【0055】
【化18】
【0056】
上述したような光重合開始剤の含有量は、不飽和ポリエステル樹脂に対して、1〜90質量%の範囲で含まれることが好ましく、更には1〜40質量%の範囲で含まれることが好ましい。
【0057】
本発明の感光性組成物は、近赤外〜赤外光、即ち700nm以上、更には750〜1100nm可視光から赤外光の各種光源に対応できるように、これらの波長領域に吸収を有し、前述の光重合開始剤を増感する増感剤を併せて含有する。増感剤としては、各種増感色素が好ましく用いられる。このような増感色素として、シアニン、フタロシアニン、メロシアニン、クマリン、ポリフィリン、スピロ化合物、フェロセン、フルオレン、フルギド、イミダゾール、ペリレン、フェナジン、フェノチアジン、ポリエン、アゾ化合物、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、ポリメチンアクリジン、クマリン、ケトクマリン、キナクリドン、インジゴ、スチリル、スクアリリウム化合物、ピリリウム化合物が挙げられ、好ましい増感色素の具体例を以下に示す。
【0058】
【化19】
【0059】
【化20】
【0060】
上記で例示した増感色素の対アニオンを、前述した有機ホウ素アニオンに置換した増感色素も同様に用いることができる。増感色素の含有量は、感光性組成物1m2当たり3〜300mg程度が適当である。好ましくは10〜200mg/m2である。
【0061】
従来のような光ラジカル重合を利用する場合には、大気中の酸素の影響を受けやすく、一般に酸素バリヤ性を有するポリビニルアルコールのような樹脂を感光層の表面にオーバー層として設ける必要がった。また、露光後に重合を促進あるいは完結させるため100℃前後の温度で数分間程度加熱処理を行う必要があった。
【0062】
これに対して、本発明の構成を用いる場合には、上記のようなオーバー層を設けなくとも十分に光硬化する系を与え、かつ、露光後に加熱処理を行う必要がないことが特徴であり、さらに光重合開始剤と増感剤を組み合わせて用いることによって高感度の感光性組成物が得られる点が特徴として挙げられる。また、本発明の感光性組成物は、潜像退行の極めて小さいことが特徴として挙げられる。
【0063】
本発明の効果の一つとして重要な点は、感光特性として硬調な画像再現を与えることであり、レーザー走査露光用感光性組成物として特に好ましく用いることが出来る点である。特に光源として750〜1100nmの範囲に発光するレーザーを光源として用いた場合に、画像のエッジ部が先鋭に再現され、高解像度の画質を与えることから極めて好ましく使用することが出来る。
【0064】
本発明の感光性組成物は、上述した成分以外にも種々の目的で他の成分を添加することも好ましく行われる。特に、スチレン性二重結合基の熱重合あるいは熱架橋を防止し長期にわたる保存性を向上させる目的で種々の重合禁止剤を添加することが好ましく行われる。この場合の重合禁止剤としては、ハイドロキノン類、カテコール類、ナフトール類、クレゾール類等の各種フェノール性水酸基を有する化合物やキノン類化合物、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン塩類等が好ましく使用される。この場合の重合禁止剤の添加量としては、該重合体100質量部に対して0.1質量部から10質量部の範囲で使用することが好ましい。
【0065】
感光性組成物を構成する要素として、他に、画像の視認性を高める目的で種々の染料、顔料を添加することや、感光性組成物のブロッキングを防止する目的等で無機物微粒子あるいは有機物微粒子を添加することも好ましく行われる。
【0066】
平版印刷版材料として使用する場合の感光層自体の厚みに関しては、支持体上に0.5ミクロンから10ミクロンの範囲の乾燥厚みで形成することが好ましく、さらに1ミクロンから5ミクロンの範囲であることが耐刷性を大幅に向上させるために極めて好ましい。感光層は上述の3つの要素を混合した溶液を作成し、公知の種々の塗布方式を用いて支持体上に塗布、乾燥される。支持体については、例えばフィルムやポリエチレン被覆紙を使用しても良いが、より好ましい支持体は、研磨され、陽極酸化皮膜を有するアルミニウム板である。
【0067】
上記のようにして支持体上に形成された感光層を有する材料を印刷版として使用するためには、これに密着露光あるいはレーザー走査露光を行い、露光された部分が架橋することでアルカリ性現像液に対する溶解性が低下することから、後述するアルカリ性現像液により未露光部を溶出することでパターン形成が行われる。
【0068】
アルカリ性現像液としては、本発明の重合体を溶解する液で有れば特に制限は無いが、好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、メタ珪酸ナトリウム、メタ珪酸カリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアンモニウムハイドロキサイド等のようなアルカリ性化合物を溶解した水性現像液が良好に未露光部を選択的に溶解し、下方の支持体表面を露出出来るため極めて好ましい。さらには、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ベンジルアルコール等の各種アルコール類をアルカリ性現像液中に添加することも好ましく行われる。こうしたアルカリ性現像液を用いて現像処理を行った後に、アラビアゴム等を使用して通常のガム引きが好ましく行われる。
【0069】
次に、本発明に係わる代表的な化合物の合成例を以下に示す。
【0070】
合成例1(重合体P−1の合成例)
ビスムチオール(2,5−ジメルカプト−1,3−4−チアジアゾール)150gを600mlのメタノール中に懸濁させ、冷却しながらトリエチルアミン101gを徐々に添加し、均一な溶液を得た。室温下に保ちながらp−クロロメチルスチレン(セイミケミカル製、CMS−14)を10分に亘り滴下し、さらに3時間攪拌を続けた。反応生成物が次第に析出し、攪拌後に氷浴に移し内温を10℃まで冷却した後、吸引濾過により生成物を分離した。メタノールにより洗浄を行い、真空乾燥器内で1昼夜乾燥することで収率75%で化21に示す化合物を得た。
【0071】
【化21】
【0072】
化21のモノマー40gを攪拌機、窒素導入管、温度計、還流冷却管を備えた1リッター4ツ口フラスコ内にとり、メタクリル酸70gおよびエタノール200ml、蒸留水50mlを加え、攪拌しながら水浴上でトリエチルアミン110gを添加した。窒素雰囲気下で内温を70℃になるよう加熱し、この温度でアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を1g添加し、重合を開始した。6時間加熱攪拌を行い、その後重合系を室温まで冷却した。重合体溶液中に1,4−ジオキサン100gおよびp−クロロメチルスチレンを23g加え、室温で更に15時間攪拌を続けた。その後、濃塩酸(35〜37%水溶液)80〜90gを加え、系のpHが4以下になったことを確認後、3リッターの蒸留水中に全体を移した。析出した重合体を濾過により分離し、蒸留水にて洗浄を繰り返した後、真空乾燥器内で1昼夜乾燥した。収率90%で目的とする重合体を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量測定により質量平均分子量9万(ポリスチレン換算)の重合体であり、さらにプロトンNMRによる解析により重合体P−1の構造を支持するものであった。
【0073】
合成例2(モノマーC−5の合成例)
チオシアヌル酸89gをメタノール1.5リッターに懸濁し、冷却しながら水酸化カリウム84gを溶解した30%水溶液を徐々に加え、均一な溶液を得た。これに、室温下でp−クロロメチルスチレン230gを内温が40℃を越えないよう徐々に滴下した。添加後まもなく生成物が析出してくるが攪拌を続け、3時間攪拌を行った後に吸引濾過により生成物を分離した。メタノールにより洗浄を行い、真空乾燥器内で一昼夜乾燥を行った後、90%の収率でモノマーC−5で示される化合物を得た。
【0074】
合成例3(不飽和ポリエステル樹脂(A)の合成例)
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、および温度計を備えた3Lの四つ口フラスコに、エチレングリコール310g、ジエチレングリコール300g、およびジプロピレングリコール320gと、無水フタル酸700gおよび無水マレイン酸520gとを加えて攪拌し、窒素気流下210℃で7時間反応させ不飽和ポリエステル樹脂(以下、不飽和ポリエステル樹脂(A)と記す)を得た。
【0075】
合成例4(不飽和ポリエステル樹脂(B)の合成例)
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、および温度計を備えた1Lの四つ口フラスコに、無水マレイン酸58.8g(0.6モル)、テトラヒドロ無水フタル酸60.9g(0.4モル)、ジエチレングリコ−ル63.7g(0.6モル)、トリエチレングリコ−ル75.1g(0.5モル)、ハイドロキノン200ppmをを加えて攪拌し、窒素気流下210℃で7時間反応させ不飽和ポリエステル樹脂(以下、不飽和ポリエステル樹脂(B)と記す)を得た。
【0076】
【実施例】
以下実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、効果はもとより本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0077】
実施例1および比較例1
厚みが0.24mmである砂目立て処理を行った陽極酸化アルミニウム板を使用して、実施例1においては、この上に下記の処方で示される感光性塗工液を乾燥厚みが2.0ミクロンになるよう塗布を行い、75℃の乾燥器内にて6分間乾燥を行った。比較例1においては、下記感光性塗工液配合処方において、不飽和ポリエステル樹脂(A)に代えて、トリメチロールプロパントリアクリレートを同量使用すること以外は全く実施例1と同様にして感光材料を作成した。
<感光性塗工液>
重合体(P−1) 10質量部
不飽和ポリエステル樹脂(A) 5質量部
有機ホウ素塩(BC−6) 2質量部
10%フタロシアニン分散液(着色剤) 0.5質量部
ジオキサン 70質量部
シクロヘキサノン 10質量部
【0078】
実施例1および比較例1で得られた感光材料をフィルムマスクを通して画像様に紫外線露光後、ケイ酸カリウムを2質量%および水酸化カリウム2質量%、ノニオン性界面活性剤0.1質量%を含有するアルカリ性現像液で現像を行った。現像後にアルミ板表面に形成された画像の耐薬品性を評価するため、上記現像液中にさらに一時間浸漬し、画像部の剥離あるいは溶解の有無を観察したが、実施例1で作成した感光材料を用いた場合には、浸漬中において一切の変化を認めなかった。一方、比較例1で作成した感光材料を使用した場合には、浸漬中において僅かに画像部が溶解するのが確認された。同様に、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、トルエン、クロロホルム、酢酸エチル、アセトニトリルおよびエタノール中に浸漬を行い、画像部の変化の有無を観察したが、実施例1で作成した感光材料を使用した場合には、一切の変化を認めず、耐薬品性に優れた硬化物を与えることが確認された。一方比較例1で作成した感光材料を使用した場合には、ジメチルホルムアミド中およびテトラヒドロフラン中に於いて僅かに画像が溶解するのが確認された。
【0079】
実施例2
実施例1と同様に、厚みが0.24mmである砂目立て処理を行った陽極酸化アルミニウム板を使用して、この上に下記の処方で示される感光性塗工液を乾燥厚みが2.0ミクロンになるよう塗布を行い、75℃の乾燥器内にて6分間乾燥を行った。
<感光性塗工液>
不飽和ポリエステル樹脂(B) 10質量部
本発明のモノマー(C−5) 5質量部
有機ホウ素塩(BC−6) 2質量部
10%フタロシアニン分散液(着色剤) 0.5質量部
ジオキサン 70質量部
シクロヘキサノン 10質量部
【0080】
得られた感光材料を実施例1と全く同様にして画像様に紫外線露光後、ケイ酸カリウムを2質量%および水酸化カリウム2質量%、ノニオン性界面活性剤0.1質量%を含有するアルカリ性現像液で現像を行った。現像後にアルミ板表面に形成された画像の耐薬品性を評価するため、上記現像液中にさらに一時間浸漬し、画像部の剥離あるいは溶解の有無を観察したが、浸漬中において一切の変化を認めなかった。同様に、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、トルエン、クロロホルム、酢酸エチル、アセトニトリルおよびエタノール中に浸漬を行い、画像部の変化の有無を観察したが、一切の変化を認めず、耐薬品性に優れた硬化物を与えることが確認された。
【0081】
実施例3
実施例1と同様に、厚みが0.24mmである砂目立て処理を行った陽極酸化アルミニウム板を使用して、この上に下記の処方で示される感光性塗工液を乾燥厚みが2.0ミクロンになるよう塗布を行い、75℃の乾燥器内にて6分間乾燥を行った。
<感光性塗工液>
不飽和ポリエステル樹脂(B) 10質量部
本発明のモノマー(C−5) 5質量部
有機ホウ素塩(BC−6) 2質量部
トリハロアルキル置換化合物(T−2) 1質量部
増感色素(S−33) 0.3質量部
10%フタロシアニン分散液(着色剤) 0.5質量部
ジオキサン 70質量部
シクロヘキサノン 10質量部
【0082】
上記で作成した試料を用いて、波長830nmの半導体レーザー(出力1W)を利用し、レーザースポット径10ミクロンに調整し、版面パワー60mJ/cm2になるよう外面ドラム上で1000rpmの回転速度で走査露光を行った。現像は先の実施例と同様に行い、平版印刷版原版を作成した。原版上の画像は10ミクロン細線が明瞭に再現されており、走査型電子顕微鏡観察においても画線のエッジ部分が切り立った形で先鋭な画線プロファイルを示していた。このものの印刷性能評価を行うため、印刷機はミヤコシビジネスフォーム印刷機を使用し、印刷インキは紫外線硬化型インキBest Cure RNCプロセス紅を使用して、湿し水は市販の湿し水を希釈して使用して印刷を行った。印刷評価項目として耐刷性についてはテスト画像中の微小網点および細線が欠落し始めるまでの刷り枚数を以て評価を行った。また、地汚れの有無は印刷物上の地汚れの有無を以て目視判定を行った。結果として本実施例で作成した感光性平版印刷版を使用した場合には、耐刷性に関しては20万枚の印刷においても良好な印刷物が得られた。また、地汚れの発生もなく良好な結果が得られた。
【0083】
実施例4
実施例3と同様に、下記の処方で示される感光性塗工液を用いた以外は全て同様にして感光性平版印刷版を作成した。
<感光性塗工液>
重合体(P−1) 10質量部
不飽和ポリエステル樹脂(B) 5質量部
有機ホウ素塩(BC−6) 2質量部
トリハロアルキル置換化合物(T−2) 1質量部
増感色素(S−33) 0.3質量部
10%フタロシアニン分散液(着色剤) 0.5質量部
ジオキサン 70質量部
シクロヘキサノン 10質量部
【0084】
上記で作成した試料を用いて、実施例3と全く同様にして、波長830nmの半導体レーザー(出力1W)を利用し、レーザースポット径10ミクロンに調整し、版面パワー60mJ/cm2になるよう外面ドラム上で1000rpmの回転速度で走査露光を行った。現像は先の実施例と同様に行い、平版印刷版原版を作成した。原版上の画像は10ミクロン細線が明瞭に再現されており、走査型電子顕微鏡観察においても画線のエッジ部分が切り立った形で先鋭な画線プロファイルを示していた。このものの印刷性能評価を行うため、印刷機はミヤコシビジネスフォーム印刷機を使用し、印刷インキは紫外線硬化型インキBest Cure RNCプロセス紅を使用して、湿し水は市販の湿し水を希釈して使用して印刷を行った。印刷評価項目として耐刷性についてはテスト画像中の微小網点および細線が欠落し始めるまでの刷り枚数を以て評価を行った。また、地汚れの有無は印刷物上の地汚れの有無を以て目視判定を行った。結果として本実施例で作成した感光性平版印刷版を使用した場合には、耐刷性に関しては20万枚の印刷においても良好な印刷物が得られた。また、地汚れの発生もなく良好な結果が得られた。
【0085】
比較例2
実施例4と同様に、下記の処方で示される感光性塗工液を用いた以外は全て同様にして感光性平版印刷版を作成した。
<感光性塗工液>
重合体(P−1) 10質量部
トリメチロールプロパントリアクリレート 5質量部
有機ホウ素塩(BC−6) 2質量部
トリハロアルキル置換化合物(T−2) 1質量部
増感色素(S−33) 0.3質量部
10%フタロシアニン分散液(着色剤) 0.5質量部
ジオキサン 70質量部
シクロヘキサノン 10質量部
【0086】
上記で作成した試料を用いて、実施例4と全く同様にして、波長830nmの半導体レーザー(出力1W)を利用し、レーザースポット径10ミクロンに調整し、版面パワー60mJ/cm2になるよう外面ドラム上で1000rpmの回転速度で走査露光を行った。現像は先の実施例と同様に行い、平版印刷版原版を作成した。原版上の画像は10ミクロン細線が明瞭に再現されており、走査型電子顕微鏡観察においても画線のエッジ部分が切り立った形で先鋭な画線プロファイルを示していた。このものの印刷性能評価を行うため、印刷機はミヤコシビジネスフォーム印刷機を使用し、印刷インキは紫外線硬化型インキBest Cure RNCプロセス紅を使用して、湿し水は市販の湿し水を希釈して使用して印刷を行った。印刷評価項目として耐刷性についてはテスト画像中の微小網点および細線が欠落し始めるまでの刷り枚数を以て評価を行った。また、地汚れの有無は印刷物上の地汚れの有無を以て目視判定を行った。結果として本比較例で作成した感光性平版印刷版を使用した場合には、耐刷性に関しては5万枚の印刷において画像の欠落およびインキ乗り不良が発生し、耐刷性に劣る結果となった。
【0087】
【発明の効果】
本発明によれば、耐薬品性に優れた、オーバー層を必要とせず、酸素の影響を受けにくい高感度な感光性組成物が得られる。特に750nmから1100nmの波長範囲のレーザー光源に充分高い感光性を有する感光性組成物及び感光性平版印刷版が得られる。
Claims (5)
- 側鎖にスチレン性二重結合を有する重合体及び不飽和ポリエステル樹脂を含有することを特徴とする感光性組成物。
- 分子内にスチレン性二重結合を2個以上有する化合物及び不飽和ポリエステル樹脂を含有することを特徴とする感光性組成物。
- 更に、有機ホウ素塩及び/またはトリハロアルキル置換化合物を含有する請求項1または2に記載の感光性組成物。
- 780〜1100nmの長波長レーザー用である請求項1、2または3に記載の感光性組成物。
- 前記請求項のいずれか1つに記載の感光性組成物を利用したことを特徴とする感光性平版印刷版材料。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003089517A JP2004294936A (ja) | 2003-03-28 | 2003-03-28 | 感光性組成物および感光性平版印刷版材料 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2003089517A JP2004294936A (ja) | 2003-03-28 | 2003-03-28 | 感光性組成物および感光性平版印刷版材料 |
Publications (1)
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JP2003089517A Pending JP2004294936A (ja) | 2003-03-28 | 2003-03-28 | 感光性組成物および感光性平版印刷版材料 |
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2003
- 2003-03-28 JP JP2003089517A patent/JP2004294936A/ja active Pending
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