JP2004293754A - 歯付ベルト - Google Patents
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Abstract
【課題】高雰囲気温度下での耐屈曲疲労性を飛躍的に向上させる方法を提供するものである。
【解決手段】長手方向に沿って所定間隔で配置した複数の歯部2表面を歯布5で被覆し、背部4に心線3を埋設した歯付ベルトであり、上記心線3がガラス繊維を撚糸したコードを、フェノール樹脂と水素化ニトリルゴムラテックスおよびビニルピリジンゴムラテックスを含むレゾルシン・ホルムアルデヒド・ラテックス液にて処理し、その上よりクロロスルホン化ポリエチレンゴム配合物を溶液で溶かしたゴム糊で処理したものである。
【選択図】 図1
【解決手段】長手方向に沿って所定間隔で配置した複数の歯部2表面を歯布5で被覆し、背部4に心線3を埋設した歯付ベルトであり、上記心線3がガラス繊維を撚糸したコードを、フェノール樹脂と水素化ニトリルゴムラテックスおよびビニルピリジンゴムラテックスを含むレゾルシン・ホルムアルデヒド・ラテックス液にて処理し、その上よりクロロスルホン化ポリエチレンゴム配合物を溶液で溶かしたゴム糊で処理したものである。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、自動車用エンジンのカム軸又はカム軸とインジェクションポンプの駆動用あるいは、一般産業用機械の同期伝動用等に使用される歯布被覆の歯付ベルトに係るものであり、高温、高負荷に適するベルトであって、特に耐熱性を改善し、高雰囲気温度下での耐屈曲疲労性を改善したガラス心線を用いた歯付ベルトに関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車用エンジンのカム軸、インジェクションポンプ、オイルポンプ、ウォータポンプ等を駆動する歯付ベルトは、エンジンの高出力化に伴い、ベルトへの負荷の増大及びエンジンルームのコンパクト化に伴う雰囲気温度の上昇など歯付ベルトの使用環境は近年特に厳しくなってきている為、さらなる耐久性の向上が要求されている。さらに、長寿命、静粛性に優れたサイレントチェーンの登場により、歯付ベルトに求められる性能は、年々厳しくなってきている。また、一般産業用に使用される歯付ベルトについても、射出成形機等の高負荷駆動用等取替え周期の延長を要求されている。
【0003】
歯付ベルトの故障形態は、心線の屈曲疲労及びゴムの耐熱性不足による亀裂発生からのベルト切断と過負荷や歯布及び歯ゴムの耐熱性不足、歯布の摩耗による歯欠けに大別される。心線の屈曲疲労及びゴムの耐熱性不足によるベルト切断に対しては、心線材質、心線構成の太径化等の改良、心線処理剤の耐熱性改良が実施されている。また、ゴムの耐熱性改良についても水素添加ニトリルゴムの使用等により故障は減少している。
【0004】
このため耐熱性ポリマーとして開発された水素化ニトリルゴムが最近では歯付ベルトに利用されている。また加硫系に過酸化物を用いたゴムや、水素化ニトリルゴムに不飽和カルボン酸金属塩を使用したゴム配合も歯付ベルトのマトリックスとして使用されている。これに応じて、過酸化物加硫系に対する繊維コードの処理方法も改善されつつある。
【0005】
例えば、繊維コードと水素化ニトリルゴム組成物の処理方法において、特許文献1には、ニトリルゴム変性エポキシ樹脂とフェノール樹脂を含む前処理液で処理し、続いてニトリルゴム配合物もしくは水素化ニトリルゴムラテックスからなるRFL液で処理する方法、特許文献2には、カルボキシル基含有アクリロニトリル・ブタジエンゴムラテックスからなるRFL液で処理する方法が開示されている。
【0006】
また、繊維コードと水素化ニトリルゴム組成物の接着方法において、ビニルピリジンゴムラッテクス、クロロスルホン化ポリエチレンゴムラッテクス、スチレン・ブタジエンゴムラッテクスからなるRFL液にて処理する方法が開示されている。
【0007】
【特許文献1】
特開2000−212878公報
【特許文献2】
特公昭60−24131号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従来に比べてガラス繊維コードと水素化ニトリルゴムとの耐熱性は、十分改善された。しかし、これらの処理コードを心線に用いた歯付ベルトを高い雰囲気温度下で耐熱屈曲走行させた場合には、早期にRFL層が劣化して心線が屈曲疲労することが分かっている。更に、水素化ニトリルゴムの加硫系に硫黄を用いた場合には、過酸化物のそれに比べ早期に背ゴムクラックが発生し、ベルト寿命に至ることが指摘されている。
【0009】
特に、ベルトに高温、高負荷が掛かるエンジン用では、過酸化物加硫系からなる水素化ニトリルゴム配合物を用いる例が増えてきているが、水素化ニトリルゴムの過酸化物加硫系では従来のRFL液の場合には、RFLが加硫剤の過酸化物と反応して早期にデヒド・ラテックスの劣化が早くなり、心線自体の高雰囲気温度下での耐屈曲疲労性が低く要求寿命に対し満足するものが得られていないのが現状である。
【0010】
本発明は、過酸化物加硫系の水素化ニトリルゴムを用い、歯付ベルト用ガラス繊維コードに、フェノール樹脂と水素化ニトリルゴムラテックスおよびビニルピリジンゴムラテックスを含むレゾルシン・ホルムアルデヒド・ラテックス液にて処理し、その上よりクロロスルホン化ポリエチレンゴム配合物を溶液で溶かしたゴム糊で処理した心線を用いることにより、高雰囲気温度下での耐屈曲疲労性を飛躍的に向上させる方法を提供するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
即ち、本願請求項1記載の発明は、長手方向に沿って所定間隔で配置した複数の歯部表面を歯布で被覆し、背部に心線を埋設した歯付ベルトにおいて、上記心線がガラス繊維を撚糸したコードを、フェノール樹脂と水素化ニトリルゴムラテックスおよびビニルピリジンゴムラテックスを含むレゾルシン・ホルムアルデヒド・ラテックス液にて処理し、その上よりクロロスルホン化ポリエチレンゴム配合物を溶液で溶かしたゴム糊で処理したものである歯付ベルトにある。
【0012】
本願請求項2記載の発明は、心線の処理液においてフェノール樹脂を含むレゾルシン・ホルムアルデヒドの初期縮合物とゴムラテックスとの固形分の質量比が、5/95から40/60である歯付ベルトにある。
【0013】
本願請求項3記載の発明は、心線の処理液においてラテックスとして水素化ニトリルゴムラテックスとビニルピリジンゴムラテックスを混合し、その固形分の質量比が60/40から95/5である歯付ベルトにある。
【0014】
本願請求項4記載の発明は、歯部および背部に、過酸化物加硫系からなる水素化ニトリルゴム配合物を使用した歯付ベルトにある。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
図1は本実施形態に係る歯付ベルトの部分正面図であり、歯付ベルト1は長手方向に沿って所定間隔で配置した複数の歯部2と、歯部2と連続する背部4と、背部4に埋設された心線3と、歯部2の表面に被覆された歯布5を有している。歯布5はベルトの長手方向に延在する緯糸と、ベルトの幅方向に延在する経糸とを織成して成る繊維材料を基材として構成される。
【0016】
心線3のガラス繊維の材質としては、無アルカリガラス(Eガラス)あるいは、Si成分の多い高強度ガラス(K,U,Sガラス)のどちらを用いてもかまわない。ガラス心線の組成はEガラス(無アルカリガラス)、Sガラス(高強度ガラス)あるいは、Si成分の多い高強度ガラス(K,U,Sガラス)の何れでも良く、フィラメントの太さ及びフィラメントの収束本数及びストランド本数に制限されない。
【0017】
前記RFL処理液は、レゾルシンとホルムアルデヒドの初期縮合物とゴムラテックスとを混合したものであり、この場合レゾルシンとホルムアルデヒドのモル比は3/1〜1/3にすることが接着力を高めるうえで好適である。また、レゾルシンとホルムアルデヒドの初期縮合物は、これをゴムラテックスのゴム分100質量部に対して樹脂分が5〜50質量部になるようにゴムラテックスと混合し、更にフェノール樹脂を含むレゾルシンとホルムアルデヒドの初期縮合物とゴムラテックスとの固形分の質量比が5/95〜40/60に調節する。5/95未満では接着性が著しく低下し、また40/60を超えるとゴムラテックス分が少なくなり、耐熱性が悪くなって屈曲疲労性が低下する。
【0018】
RFL処理液に使用するゴムラテックスとしては、水素化ニトリルゴムラテックス(H−NBRラテックス)、スチレン−ブタジエン−ビニルピリジン三元共重合体(VPラテックス)の一種又は二種以上のブレンド物が使用される。水素化ニトリルゴムラテックスとビニルピリジンゴムラテックスとは、固形分の質量比が60/40〜95/5で混合される。その水素化ニトリルゴムの質量比が60未満であれば、耐熱性が悪くなり屈曲疲労性が低下し、95を超えると、耐水性が著しく低下する。
【0019】
前述したフェノール樹脂は、ノボラック系及びレゾール系のいずれも用いることができる。レゾール系フェノール樹脂は多くのメチロール基を有し、RFL液との良好な接着を有する。
【0020】
使用するガラス繊維コードは下記方法によって処理される。まず未処理無撚りコードを、フェノール樹脂を含むレゾルシンとホルムアルデヒドの初期縮合物とゴムラテックスとの固形分の質量比が5/95〜40/60になるように調節したRFL処理液で処理し、その後、200〜280℃に調節したオ−ブンに通して熱処理する。
【0021】
続いて、上記処理コードを、オーバーコート処理液としてクロロスルホン化ポリエチレン配合物をトルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素などの溶剤に溶かしたゴム糊に浸漬する。この後、130〜180℃前後に調節したオ−ブンに通して熱処理する。
【0022】
歯部2と背部4を形成するゴム配合物の原料ゴムには、水素化ニトリルゴム(H−NBR)、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)以外に、NBR、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)、エチレンプロピレン共重合体(EPR)、SBR、イソプレンゴム(IR)、天然ゴム(NR)、フッ素ゴム、シリコンゴム等何れの場合も使用可能である。
【0023】
前記ベルト背面硬度は少なくとも67度以上、好ましくは73度以上(JISA)である。また、背面硬度を83度以上とする為には、ゴム配合物としては、、耐熱性の観点から水素添加率が少なくとも90%以上、好ましくは92〜98%の水素化ニトリルゴムを使用するか、水素化ニトリルゴムに不飽和カルボン酸金属塩を総ポリマーに対して20〜60質量部添加したものが好ましい。これにより、モジュラス(引張弾性率)や切断伸度、さらに高い引き裂き強度や硬度を確保することができる。不飽和カルボン酸金属塩の量が20質量部未満であるとゴム硬度が所定の硬度にならず、一方60質量部を越えるとゴム硬度が大きくなりすぎ、ベルト剛性が高くなり、屈曲疲労性に劣りベルト寿命が短くなる。
【0024】
更に、耐熱性を高めるためには水素化ニトリルゴムあるいは水素化ニトリルゴムに不飽和カルボン酸金属塩を添加したものを主成分とし、過酸化物加硫系を配合することが望ましい。
【0025】
上記有機過酸化物としては、例えばジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、2,5−ジメチル−2,5−(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−モノ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン等を挙げることができる。この有機過酸化物は、単独もしくは混合物として、通常原料ゴム100gに対して0.005〜0.02モルgの範囲で使用される
【0026】
歯布4を構成する緯糸、経糸の材質としては、それぞれポリアミド、アラミド、ポリエステル、ポリベンゾオキサゾール繊維の何れか又は組み合わせが採用できる。繊維の形態は、フィラメント糸及び紡績糸の何れでも良く、単独組成の撚糸又は混撚糸、混紡糸の何れであっても良い。RFL液を繊維内部にまで含浸できる程度に紡績糸又はフィラメントが集まった糸が好ましい。また、アラミド繊維又はポリベンゾオキサゾール繊維は、それ自体が低摩擦係数の繊維であるため、少なくともベルト長手方向の緯糸7に含ませることにより、耐歯欠け性を向上させる。また、織成構成は綾織り、繻子織り、平織り等何れであっても良い。
【0027】
【実施例】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。
無撚のガラス繊維(K−ガラス)を3本引き揃えたものを表1に示すRFL処理液に浸漬した後、200〜280℃で熱処理した。これを撚り数8回/cmでSおよびZ方向に片撚りコードを準備した。これを11本引き揃え、12回/cmで上撚りした。更に、これを表1に示す2次処理液に浸漬し、130〜180℃の範囲で熱処理した。
【0028】
【表1】
【0029】
歯部と背部用のゴムシートとして、表2に示すH−NBR配合からなるゴムを通常の方法で混練してカレンダーロールによって所定の厚さに調整した。
【0030】
【表2】
【0031】
歯布としては、経糸に6,6ナイロン、緯糸に6,6ナイロンとウレタン弾性糸を混撚した糸を用いて綾織し、これを表3に示すRFL処理液に浸漬し、120°Cにて乾燥後180°Cにて2分間熱処理し、更に表3に示す第1ゴム糊に浸漬して120°で乾燥し、更に第2ゴム糊に浸漬して120°で乾燥したものである。
【0032】
【表3】
【0033】
【表4】
【0034】
次に、ベルト作製用のMY歯形105歯数の金型に上記歯布を巻き付け、SZ撚一対のRFL液及びクロロスルホン化ポリエチレンゴムをトルエン等の溶剤にて溶かしたゴム糊にて接着処理された心線をピッチ(1.2mm/本)にてスパイラルに所定の張力で巻き付けた。この心線の上に、表2のゴムシートを巻き付けた後、ジャケットを被せて加硫缶に投入し、通常の圧入方式により加圧加硫して歯形を形成させた。その後、ベルト背面を一定厚さに研磨し一定幅(19mm)にカットして走行用歯付ベルトを得た。
【0035】
作製したベルトのサイズは、ベルト幅19mm、ベルト歯形MY、歯数105歯、歯ピッチ8.00mmであり、通常105MY19と表示される。走行試験装置としては、21歯のクランクプーリ11、42歯のカムプーリ13、アイドラー21からなるレイアウトの試験装置を使用する。クランクプーリ回転数7200rpmで従動側負荷を3.6kWとし、初張力を150Nにて走行試験を行った。試験終了後、取り外したベルトを250〜300mmの長さに切り取って短冊状にした引張試験片のベルト強力を引張速度50mm/minで測定し、走行試験前のベルト強力で除して強力保持率を求めた。これを屈曲疲労後強力保持率とした。その結果を表5に示す。
【0036】
【表5】
【0037】
表5の結果から、比較例1は走行後強力の保持率が50%を大きく割っているのに対し、H−NBRゴムラテックスを混合したRFL液にて処理を実施した実施例1,2では、ベルト走行後強力保持率が大幅に改善できていることが判る。また、実施例3では、フェノール樹脂を含むレゾルシン・ホルムアルデヒドとゴムラテックスとの固形分の質量比が0.88と高いために、走行後強力の保持率が低下している。
【0038】
【発明の効果】
上記のように、本発明は、心線がガラス繊維を撚糸したコードを、フェノール樹脂と水素化ニトリルゴムラテックスおよびビニルピリジンゴムラテックスを含むレゾルシン・ホルムアルデヒド・ラテックス液にて処理し、その上よりクロロスルホン化ポリエチレンゴム配合物を溶液で溶かしたゴム糊で処理したものであり、これによって高雰囲気温度下での耐屈曲疲労性を飛躍的に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態に係る歯付ベルトの部分正面図である。
【符号の説明】
1 歯付ベルト
2 歯部
3 心線
4 背部
5 歯布
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、自動車用エンジンのカム軸又はカム軸とインジェクションポンプの駆動用あるいは、一般産業用機械の同期伝動用等に使用される歯布被覆の歯付ベルトに係るものであり、高温、高負荷に適するベルトであって、特に耐熱性を改善し、高雰囲気温度下での耐屈曲疲労性を改善したガラス心線を用いた歯付ベルトに関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車用エンジンのカム軸、インジェクションポンプ、オイルポンプ、ウォータポンプ等を駆動する歯付ベルトは、エンジンの高出力化に伴い、ベルトへの負荷の増大及びエンジンルームのコンパクト化に伴う雰囲気温度の上昇など歯付ベルトの使用環境は近年特に厳しくなってきている為、さらなる耐久性の向上が要求されている。さらに、長寿命、静粛性に優れたサイレントチェーンの登場により、歯付ベルトに求められる性能は、年々厳しくなってきている。また、一般産業用に使用される歯付ベルトについても、射出成形機等の高負荷駆動用等取替え周期の延長を要求されている。
【0003】
歯付ベルトの故障形態は、心線の屈曲疲労及びゴムの耐熱性不足による亀裂発生からのベルト切断と過負荷や歯布及び歯ゴムの耐熱性不足、歯布の摩耗による歯欠けに大別される。心線の屈曲疲労及びゴムの耐熱性不足によるベルト切断に対しては、心線材質、心線構成の太径化等の改良、心線処理剤の耐熱性改良が実施されている。また、ゴムの耐熱性改良についても水素添加ニトリルゴムの使用等により故障は減少している。
【0004】
このため耐熱性ポリマーとして開発された水素化ニトリルゴムが最近では歯付ベルトに利用されている。また加硫系に過酸化物を用いたゴムや、水素化ニトリルゴムに不飽和カルボン酸金属塩を使用したゴム配合も歯付ベルトのマトリックスとして使用されている。これに応じて、過酸化物加硫系に対する繊維コードの処理方法も改善されつつある。
【0005】
例えば、繊維コードと水素化ニトリルゴム組成物の処理方法において、特許文献1には、ニトリルゴム変性エポキシ樹脂とフェノール樹脂を含む前処理液で処理し、続いてニトリルゴム配合物もしくは水素化ニトリルゴムラテックスからなるRFL液で処理する方法、特許文献2には、カルボキシル基含有アクリロニトリル・ブタジエンゴムラテックスからなるRFL液で処理する方法が開示されている。
【0006】
また、繊維コードと水素化ニトリルゴム組成物の接着方法において、ビニルピリジンゴムラッテクス、クロロスルホン化ポリエチレンゴムラッテクス、スチレン・ブタジエンゴムラッテクスからなるRFL液にて処理する方法が開示されている。
【0007】
【特許文献1】
特開2000−212878公報
【特許文献2】
特公昭60−24131号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従来に比べてガラス繊維コードと水素化ニトリルゴムとの耐熱性は、十分改善された。しかし、これらの処理コードを心線に用いた歯付ベルトを高い雰囲気温度下で耐熱屈曲走行させた場合には、早期にRFL層が劣化して心線が屈曲疲労することが分かっている。更に、水素化ニトリルゴムの加硫系に硫黄を用いた場合には、過酸化物のそれに比べ早期に背ゴムクラックが発生し、ベルト寿命に至ることが指摘されている。
【0009】
特に、ベルトに高温、高負荷が掛かるエンジン用では、過酸化物加硫系からなる水素化ニトリルゴム配合物を用いる例が増えてきているが、水素化ニトリルゴムの過酸化物加硫系では従来のRFL液の場合には、RFLが加硫剤の過酸化物と反応して早期にデヒド・ラテックスの劣化が早くなり、心線自体の高雰囲気温度下での耐屈曲疲労性が低く要求寿命に対し満足するものが得られていないのが現状である。
【0010】
本発明は、過酸化物加硫系の水素化ニトリルゴムを用い、歯付ベルト用ガラス繊維コードに、フェノール樹脂と水素化ニトリルゴムラテックスおよびビニルピリジンゴムラテックスを含むレゾルシン・ホルムアルデヒド・ラテックス液にて処理し、その上よりクロロスルホン化ポリエチレンゴム配合物を溶液で溶かしたゴム糊で処理した心線を用いることにより、高雰囲気温度下での耐屈曲疲労性を飛躍的に向上させる方法を提供するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
即ち、本願請求項1記載の発明は、長手方向に沿って所定間隔で配置した複数の歯部表面を歯布で被覆し、背部に心線を埋設した歯付ベルトにおいて、上記心線がガラス繊維を撚糸したコードを、フェノール樹脂と水素化ニトリルゴムラテックスおよびビニルピリジンゴムラテックスを含むレゾルシン・ホルムアルデヒド・ラテックス液にて処理し、その上よりクロロスルホン化ポリエチレンゴム配合物を溶液で溶かしたゴム糊で処理したものである歯付ベルトにある。
【0012】
本願請求項2記載の発明は、心線の処理液においてフェノール樹脂を含むレゾルシン・ホルムアルデヒドの初期縮合物とゴムラテックスとの固形分の質量比が、5/95から40/60である歯付ベルトにある。
【0013】
本願請求項3記載の発明は、心線の処理液においてラテックスとして水素化ニトリルゴムラテックスとビニルピリジンゴムラテックスを混合し、その固形分の質量比が60/40から95/5である歯付ベルトにある。
【0014】
本願請求項4記載の発明は、歯部および背部に、過酸化物加硫系からなる水素化ニトリルゴム配合物を使用した歯付ベルトにある。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
図1は本実施形態に係る歯付ベルトの部分正面図であり、歯付ベルト1は長手方向に沿って所定間隔で配置した複数の歯部2と、歯部2と連続する背部4と、背部4に埋設された心線3と、歯部2の表面に被覆された歯布5を有している。歯布5はベルトの長手方向に延在する緯糸と、ベルトの幅方向に延在する経糸とを織成して成る繊維材料を基材として構成される。
【0016】
心線3のガラス繊維の材質としては、無アルカリガラス(Eガラス)あるいは、Si成分の多い高強度ガラス(K,U,Sガラス)のどちらを用いてもかまわない。ガラス心線の組成はEガラス(無アルカリガラス)、Sガラス(高強度ガラス)あるいは、Si成分の多い高強度ガラス(K,U,Sガラス)の何れでも良く、フィラメントの太さ及びフィラメントの収束本数及びストランド本数に制限されない。
【0017】
前記RFL処理液は、レゾルシンとホルムアルデヒドの初期縮合物とゴムラテックスとを混合したものであり、この場合レゾルシンとホルムアルデヒドのモル比は3/1〜1/3にすることが接着力を高めるうえで好適である。また、レゾルシンとホルムアルデヒドの初期縮合物は、これをゴムラテックスのゴム分100質量部に対して樹脂分が5〜50質量部になるようにゴムラテックスと混合し、更にフェノール樹脂を含むレゾルシンとホルムアルデヒドの初期縮合物とゴムラテックスとの固形分の質量比が5/95〜40/60に調節する。5/95未満では接着性が著しく低下し、また40/60を超えるとゴムラテックス分が少なくなり、耐熱性が悪くなって屈曲疲労性が低下する。
【0018】
RFL処理液に使用するゴムラテックスとしては、水素化ニトリルゴムラテックス(H−NBRラテックス)、スチレン−ブタジエン−ビニルピリジン三元共重合体(VPラテックス)の一種又は二種以上のブレンド物が使用される。水素化ニトリルゴムラテックスとビニルピリジンゴムラテックスとは、固形分の質量比が60/40〜95/5で混合される。その水素化ニトリルゴムの質量比が60未満であれば、耐熱性が悪くなり屈曲疲労性が低下し、95を超えると、耐水性が著しく低下する。
【0019】
前述したフェノール樹脂は、ノボラック系及びレゾール系のいずれも用いることができる。レゾール系フェノール樹脂は多くのメチロール基を有し、RFL液との良好な接着を有する。
【0020】
使用するガラス繊維コードは下記方法によって処理される。まず未処理無撚りコードを、フェノール樹脂を含むレゾルシンとホルムアルデヒドの初期縮合物とゴムラテックスとの固形分の質量比が5/95〜40/60になるように調節したRFL処理液で処理し、その後、200〜280℃に調節したオ−ブンに通して熱処理する。
【0021】
続いて、上記処理コードを、オーバーコート処理液としてクロロスルホン化ポリエチレン配合物をトルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素などの溶剤に溶かしたゴム糊に浸漬する。この後、130〜180℃前後に調節したオ−ブンに通して熱処理する。
【0022】
歯部2と背部4を形成するゴム配合物の原料ゴムには、水素化ニトリルゴム(H−NBR)、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)以外に、NBR、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)、エチレンプロピレン共重合体(EPR)、SBR、イソプレンゴム(IR)、天然ゴム(NR)、フッ素ゴム、シリコンゴム等何れの場合も使用可能である。
【0023】
前記ベルト背面硬度は少なくとも67度以上、好ましくは73度以上(JISA)である。また、背面硬度を83度以上とする為には、ゴム配合物としては、、耐熱性の観点から水素添加率が少なくとも90%以上、好ましくは92〜98%の水素化ニトリルゴムを使用するか、水素化ニトリルゴムに不飽和カルボン酸金属塩を総ポリマーに対して20〜60質量部添加したものが好ましい。これにより、モジュラス(引張弾性率)や切断伸度、さらに高い引き裂き強度や硬度を確保することができる。不飽和カルボン酸金属塩の量が20質量部未満であるとゴム硬度が所定の硬度にならず、一方60質量部を越えるとゴム硬度が大きくなりすぎ、ベルト剛性が高くなり、屈曲疲労性に劣りベルト寿命が短くなる。
【0024】
更に、耐熱性を高めるためには水素化ニトリルゴムあるいは水素化ニトリルゴムに不飽和カルボン酸金属塩を添加したものを主成分とし、過酸化物加硫系を配合することが望ましい。
【0025】
上記有機過酸化物としては、例えばジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、2,5−ジメチル−2,5−(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−モノ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン等を挙げることができる。この有機過酸化物は、単独もしくは混合物として、通常原料ゴム100gに対して0.005〜0.02モルgの範囲で使用される
【0026】
歯布4を構成する緯糸、経糸の材質としては、それぞれポリアミド、アラミド、ポリエステル、ポリベンゾオキサゾール繊維の何れか又は組み合わせが採用できる。繊維の形態は、フィラメント糸及び紡績糸の何れでも良く、単独組成の撚糸又は混撚糸、混紡糸の何れであっても良い。RFL液を繊維内部にまで含浸できる程度に紡績糸又はフィラメントが集まった糸が好ましい。また、アラミド繊維又はポリベンゾオキサゾール繊維は、それ自体が低摩擦係数の繊維であるため、少なくともベルト長手方向の緯糸7に含ませることにより、耐歯欠け性を向上させる。また、織成構成は綾織り、繻子織り、平織り等何れであっても良い。
【0027】
【実施例】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。
無撚のガラス繊維(K−ガラス)を3本引き揃えたものを表1に示すRFL処理液に浸漬した後、200〜280℃で熱処理した。これを撚り数8回/cmでSおよびZ方向に片撚りコードを準備した。これを11本引き揃え、12回/cmで上撚りした。更に、これを表1に示す2次処理液に浸漬し、130〜180℃の範囲で熱処理した。
【0028】
【表1】
【0029】
歯部と背部用のゴムシートとして、表2に示すH−NBR配合からなるゴムを通常の方法で混練してカレンダーロールによって所定の厚さに調整した。
【0030】
【表2】
【0031】
歯布としては、経糸に6,6ナイロン、緯糸に6,6ナイロンとウレタン弾性糸を混撚した糸を用いて綾織し、これを表3に示すRFL処理液に浸漬し、120°Cにて乾燥後180°Cにて2分間熱処理し、更に表3に示す第1ゴム糊に浸漬して120°で乾燥し、更に第2ゴム糊に浸漬して120°で乾燥したものである。
【0032】
【表3】
【0033】
【表4】
【0034】
次に、ベルト作製用のMY歯形105歯数の金型に上記歯布を巻き付け、SZ撚一対のRFL液及びクロロスルホン化ポリエチレンゴムをトルエン等の溶剤にて溶かしたゴム糊にて接着処理された心線をピッチ(1.2mm/本)にてスパイラルに所定の張力で巻き付けた。この心線の上に、表2のゴムシートを巻き付けた後、ジャケットを被せて加硫缶に投入し、通常の圧入方式により加圧加硫して歯形を形成させた。その後、ベルト背面を一定厚さに研磨し一定幅(19mm)にカットして走行用歯付ベルトを得た。
【0035】
作製したベルトのサイズは、ベルト幅19mm、ベルト歯形MY、歯数105歯、歯ピッチ8.00mmであり、通常105MY19と表示される。走行試験装置としては、21歯のクランクプーリ11、42歯のカムプーリ13、アイドラー21からなるレイアウトの試験装置を使用する。クランクプーリ回転数7200rpmで従動側負荷を3.6kWとし、初張力を150Nにて走行試験を行った。試験終了後、取り外したベルトを250〜300mmの長さに切り取って短冊状にした引張試験片のベルト強力を引張速度50mm/minで測定し、走行試験前のベルト強力で除して強力保持率を求めた。これを屈曲疲労後強力保持率とした。その結果を表5に示す。
【0036】
【表5】
【0037】
表5の結果から、比較例1は走行後強力の保持率が50%を大きく割っているのに対し、H−NBRゴムラテックスを混合したRFL液にて処理を実施した実施例1,2では、ベルト走行後強力保持率が大幅に改善できていることが判る。また、実施例3では、フェノール樹脂を含むレゾルシン・ホルムアルデヒドとゴムラテックスとの固形分の質量比が0.88と高いために、走行後強力の保持率が低下している。
【0038】
【発明の効果】
上記のように、本発明は、心線がガラス繊維を撚糸したコードを、フェノール樹脂と水素化ニトリルゴムラテックスおよびビニルピリジンゴムラテックスを含むレゾルシン・ホルムアルデヒド・ラテックス液にて処理し、その上よりクロロスルホン化ポリエチレンゴム配合物を溶液で溶かしたゴム糊で処理したものであり、これによって高雰囲気温度下での耐屈曲疲労性を飛躍的に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態に係る歯付ベルトの部分正面図である。
【符号の説明】
1 歯付ベルト
2 歯部
3 心線
4 背部
5 歯布
Claims (4)
- 長手方向に沿って所定間隔で配置した複数の歯部表面を歯布で被覆し、背部に心線を埋設した歯付ベルトにおいて、上記心線がガラス繊維を撚糸したコードを、フェノール樹脂と水素化ニトリルゴムラテックスおよびビニルピリジンゴムラテックスを含むレゾルシン・ホルムアルデヒド・ラテックス液にて処理し、その上よりクロロスルホン化ポリエチレンゴム配合物を溶液で溶かしたゴム糊で処理したものであることを特徴とする歯付ベルト。
- 心線の処理液において、フェノール樹脂を含むレゾルシン・ホルムアルデヒドとゴムラテックスとの固形分の質量比が、5/95から40/60である請求項1記載の歯付ベルト。
- 心線の処理液においてラテックスとして水素化ニトリルゴムラテックスとビニルピリジンゴムラテックスを混合し、その固形分の質量比が固形分の質量比が60/40〜95/5で混合される請求項1または2記載の歯付ベルト。
- 歯部および背部に、過酸化物加硫系からなる水素化ニトリルゴム配合物を使用した請求項1〜3の何れかに記載の歯付ベルト。
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