JP2004291669A - 車両用吸着式空調装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】冷却液および熱媒体の温度に基づいて送水手段の動力を調整させることで送水手段の省動力を図る車両用吸着式空調装置を実現する。
【解決手段】エンジン500により温められた冷却水を吸着器100の脱離工程に流入する第4ポンプ404と、室外器200で冷却された第2熱媒体を吸着器100の吸着工程に流入する第1、第2ポンプ401、402と、吸着器100の吸着工程時の蒸発熱により冷却された第3熱媒体を室内器300に流入する第3ポンプ403と、上記冷却水、第2熱媒体および第3熱媒体の温度情報を検出する水温センサ412、413、414とが設けられ、第1〜第4ポンプ401〜404は、水温センサ412、413、414により検出された温度情報に基づいて送水動力を調整するように制御される。これにより、送水手段の省動力を図る。
【選択図】 図1
【解決手段】エンジン500により温められた冷却水を吸着器100の脱離工程に流入する第4ポンプ404と、室外器200で冷却された第2熱媒体を吸着器100の吸着工程に流入する第1、第2ポンプ401、402と、吸着器100の吸着工程時の蒸発熱により冷却された第3熱媒体を室内器300に流入する第3ポンプ403と、上記冷却水、第2熱媒体および第3熱媒体の温度情報を検出する水温センサ412、413、414とが設けられ、第1〜第4ポンプ401〜404は、水温センサ412、413、414により検出された温度情報に基づいて送水動力を調整するように制御される。これにより、送水手段の省動力を図る。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、吸着器を有し吸着と脱離を交互に繰り返して冷凍能力を発揮する車両用吸着式空調装置に関するものであって、特に、吸着器に冷却液などの熱媒体を送水する送水手段に関する。
【0002】
【従来の技術】
液冷式内燃機関を有する車両に搭載され、液冷式内燃機関の廃熱を利用して吸着式冷凍装置を稼働させて冷凍能力を発揮する車両用吸着式空調装置が知られている。この車両用吸着式空調装置では、冷却液を冷却するラジエータを有する液冷式内燃機関と、蒸気冷媒を吸着するとともに、加熱されることにより吸着した蒸気冷媒を脱離する吸着剤及び液冷媒が封入され、冷凍能力を発揮する吸着器と、この吸着器内を循環する熱媒体を冷却する車室外熱交換器と、吸着器にて冷却された熱媒体が循環する室内熱交換器とを備えている。
【0003】
そして、液冷式内燃機関にて温められた冷却液が吸着器の脱離工程に流入されるように送水手段を有し、車室外熱交換器にて冷却された熱媒体が吸着器の脱離工程に流入されるように送水手段を有し、さらに、吸着器にて冷却された熱媒体が室内熱交換器に流入されるように送水手段を有している(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−185548号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、吸着器に流入する冷却液および熱媒体の水温によりこの種の吸着器の冷凍能力が大きく左右される。例えば、吸着器の脱離工程に流入する冷却液は概して水温が高いことが要求される。また、車室外熱交換器にて冷却される熱媒体と室内熱交換器に流入される熱媒体は概して水温が低いことが要求されるが、この水温が所定温度を満たしたときにはそれ以上の送水動力は必要としない。所定温度を満たしていてもそのまま運転を継続させることは無駄な送水動力を消費してしまう。
【0006】
しかも、この種の吸着式冷凍装置では、冷却液および熱媒体を送水する複数の送水手段を運転させているため周知の冷媒方式を用いた車両用空調装置よりも消費電力が大きくなるという問題がある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、上記点に鑑みたことであり、冷却液および熱媒体の温度に基づいて送水手段の動力を調整させることで送水手段の省動力を図る車両用吸着式空調装置を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記、目的を達成するために、請求項1ないし請求項4に記載の技術的手段を採用する。すなわち、請求項1に記載の発明では、高温熱交換媒体の第1冷却液を供給する熱交換媒体供給手段(500、408)と、この熱交換媒体供給手段(500、408)側からの第1冷却液を受けて、蒸気冷媒を吸着するとともに、加熱されることにより吸着した蒸気冷媒を脱離する吸着剤(Si)及び液冷媒が封入され、冷凍能力を発揮する吸着器(100)と、この吸着器(100)に設けられ、吸着剤(Si)と第2熱媒体とを熱交換する吸着コア(120、130)と、吸着器(100)に設けられ、吸着剤(Si)から脱離した蒸気冷媒と第2熱媒体とを熱交換して蒸気冷媒を凝縮する凝縮器(150)と、吸着コア(120、130)および凝縮器(150)内を循環する第2熱媒体を冷却する車室外熱交換器(200)と、吸着器(100)にて冷却された第3熱媒体が循環する室内熱交換器(300)とを備えて、蒸気冷媒を吸着させて吸着器(100)にて冷凍能力を発揮させる吸着工程と第1冷却液にて前記吸着剤(Si)を加熱して蒸気冷媒を脱離させる脱離工程とを切り替え運転する車両用吸着式空調装置において、
熱交換媒体供給手段(500、408)により温められた第1冷却液を吸着器(100)の脱離工程に流入する第1送水手段(404、407)と、車室外熱交換器(200)で冷却された第2熱媒体を前記吸着器(100)の吸着工程に流入する第2送水手段(401、402)と、吸着器(100)の吸着工程時の蒸発熱により冷却された第3熱媒体を室内熱交換器(300)に流入する第3送水手段(403)と、第1冷却液、第2熱媒体および第3熱媒体の温度情報を検出する水温検出手段(412、413、414)とが設けられ、
第1送水手段(404、407)、第2送水手段(401、402)および第3送水手段(403)の少なくともいずれかの一つは、水温検出手段(412、413、414)により検出された温度情報に基づいて送水動力を調整するように制御されることを特徴としている。
【0009】
請求項1の発明によれば、この種の吸着器(100)の冷凍能力は、これに流入する第1冷却液、第2熱媒体および第3熱媒体の水温により大きく左右される。そこで、本発明では、各送水手段(404、407、401、402、403)を第1冷却液、第2熱媒体および第3熱媒体の温度情報に基づいて送水動力を調整するように制御することにより、例えば、所定温度を超えるときは送水動力を降下させることで無駄な動力を消費することがなくなる。しかも、所定温度に未達のときはに送水動力を上昇させることで所定の能力が確保できる。これにより、各送水手段(404、407、401、402、403)の省動力が図れる。
【0010】
請求項2に記載の発明では、第1送水手段(404、407)は、第1冷却液の温度情報が所定温度以上のときに、送水動力を降下するように制御されることを特徴としている。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、第1冷却液においては吸着器(100)の脱離工程に流入させるため、水温が高めの所定温度を満たしたときが送水手段の最適な送水動力である。これ以上であれば送水動力を降下するように制御されることにより、第1送水手段(404、407)の省動力が図れる。
【0012】
請求項3に記載の発明では、第2送水手段(401、402)および第3送水手段(403)は、第2熱媒体および第3熱媒体の温度情報が所定温度以下のときに、送水動力を降下するように制御されることを特徴としている。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、逆に、第2熱媒体および第3熱媒体においては吸着器(100)の吸着工程、および室内熱交換器(300)に流入させるため、水温が低めの所定温度を満たしたときが送水手段の最適な送水動力である。これ以下であれば送水動力を降下するように制御されることにより、第2送水手段(401、402)および第3送水手段(403)の省動力が図れる。
【0014】
請求項4に記載の発明では、熱交換媒体供給手段(500、408)は、液冷式内燃機関(500)または液冷式内燃機関(500)の第1冷却水を加熱する燃焼式ヒータ(408)であることを特徴としている。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、始動時などに液冷式内燃機関(500)の廃熱が不足しているときは燃焼式ヒータ(408)により廃熱の不足分を補うことで吸着器(100)の所定の冷凍能力が確保できる。
【0016】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態の車両用吸着式空調装置を、ガソリン又は軽油を燃料とする液冷式内燃機関を有する車両に搭載される空調装置に適用したものであり、図1ないし図7に基づいて説明する。
【0018】
まず、図1は車両用吸着式空調装置の全体構成を示す模式図である。図1に示すように、100は吸着式冷凍機である吸着器であり、200は吸着器100内を循環した第2熱媒体と室外空気とを熱交換する車室外熱交換器(以下、室外器と略す。)である。300は吸着器100にて発生した冷凍能力により冷却された第3熱媒体と室内に吹き出す空気とを熱交換し、空調風を冷却する室内熱交換器(以下、室内器と略す。)である。
【0019】
因みに、本実施形態の第2、第3熱媒体は、水にエチレングリコールを添加した流体であって、液冷式内燃機関の第1冷却液である冷却水と同じものである。500は吸着器100に供給する熱の熱源であり、本実施形態では、液冷式内燃機関である水冷式エンジン(以下、エンジンと略す。)の廃熱と、後述するが燃焼式ヒータ408とを熱源としている。従って、これらのエンジン100および燃焼式ヒータ408は、請求項で述べた高温熱交換媒体である第1冷却液を供給する熱交換媒体供給手段である。
【0020】
次に、401は室外器200と吸着器100の第1、第2吸着コア120、130との間で第2熱媒体を循環させる電動式の第1ポンプであり、402は室外器200と凝縮器150との間で第2熱媒体を循環させる電動式の第2ポンプであり、403は室内器300と蒸発器140との間で第3熱媒体を循環させる電動式の第3ポンプであり、404はエンジン500より流出した第1冷却液である冷却水を吸着式空調装置側に循環させる電動式の第4ポンプである。
【0021】
なお、第1ポンプ401および第2ポンプ402は第2送水手段であり、第3ポンプ403は第3送水手段であり、第4ポンプ404は第1送水手段である。また、405、406は冷却水の循環経路を切り換える切換弁(四方弁)であり、これらの切換弁405、406および第1〜第4ポンプ401〜404は図示しない電子制御装置により制御されている。
【0022】
また、400はエンジン500から流出する冷却水を熱源として室内に吹き出す空気を加熱するヒータコアであり、407は暖機系回路410を循環させる電動式の第5ポンプであり、後述するメカニカルポンプ501が停止したとき、または後述する暖房切換弁409が暖房バイパス回路411側に切り換えたときのいずれかのときに作動するようにしている。
【0023】
408は、暖機系回路410を循環する冷却水を加熱する燃焼式ヒータであって、冷えたエンジン500の予熱、ヒータコア400の暖房のための熱源、および上記吸着器100への熱源である。なお、暖房切換弁409は、燃焼式ヒータ408によってヒータコア400の暖房能力を確保しているときに、暖房バイパス回路411側に冷却水を流して、冷えたエンジン500に冷却水の熱が奪われるのを防ぐように暖機系回路410の上流側に設けられている。これらの第5ポンプ407、燃焼式ヒータ408および暖房切換弁409は図示しない電子制御装置により制御されている。
【0024】
そして、503はエンジン500から流出した冷却水と外気とを熱交換して冷却水を冷却するエンジン500用のラジエータである。なお、ラジエータ503は周知のように、図示しないラジエータファンによって室外空気が送風されて冷却水を冷却する。また、420は冷却系回路であって、エンジン500から流出した冷却水をラジエータ503に循環供給する冷却水の回路である。421はエンジン500から流出した冷却水をラジエータ503に迂回させてエンジン500に戻すバイパス回路であり、422はラジエータ200に流す水量とバイパス回路421に流す水量とを調節することにより冷却水温度(エンジン温度)を調節するサーモスタットである。
【0025】
501はエンジン500から駆動力を得てエンジン冷却水を循環させる機械式のメカニカルポンプ501であり、エンジン500が運転すると図中に示す矢印方向の流れ方向に冷却水を循環する。これにより、エンジン500を循環した冷却水が暖機系回路410と冷却系回路420とに循環することができる。502は、エンジン500から流出した冷却水温度Twを検出する水温センサであり、検出された温度情報を図示しない電子制御装置に出力するようにしている。
【0026】
412は、室外器200から流出した第2熱媒体の水温T1を検出する水温センサであり、413は、吸着器100から流出した第3熱媒体の水温T2を検出する水温センサであり、414は、燃焼式ヒータ408から流出した冷却水の水温T3を検出する水温センサであり請求項で述べる水温検出手段である。なお、これらの水温センサ412、413、414においても検出された温度情報を図示しない電子制御装置に出力するようにしている。
【0027】
次に、吸着器100の構成について説明する。吸着器100は、内部が略真空に保たれた状態で熱冷媒(本実施形態では、水)が封入されたステンレス(例えば、SUS304)製のケーシング110を4つの空間(第1〜第4空間)101〜104に区画するとともに、各空間101〜104に第2熱媒体が流通する熱交換器120、130、140、150を収納したものである。
【0028】
具体的には、第1、第2空間101、102には、第2熱媒体と吸着剤とを熱交換する熱交換器120、130(以下、第1、第2吸着コア120、130と称す。)が収納され、第3空間103には、液相冷媒と室内器300を循環する第3熱媒体とを熱交換して液相冷媒を蒸発させる蒸発器140が収納され、第4空間104には、蒸気冷媒と室外器200を循環する第2熱媒体とを熱交換して蒸気冷媒を凝縮させる凝縮器150が収納されている。
【0029】
なお、第1、第2吸着コア120、130の表面には、蒸気冷媒を吸着するとともに、加熱されることにより吸着していた冷媒を脱離(再生)する吸着剤(例えば、シリカゲル)Siが接着剤(例えば、エポキン樹脂)によって接着固定されている。
【0030】
また、160aは第1空間101と第3空間103との連通状態を制御する水蒸気バルブ(液体バルブ)であり、160bは第1空間101と第4空間104との連通状態を制御する水蒸気バルブ(液体バルブ)であり、160cは第2空間102と第3空間103との連通状態を制御する水蒸気バルブ(液体バルブ)であり、160dは第2空間102と第4空間104との連通状態を制御する水蒸気バルブ(液体バルブ)である。
【0031】
ここで、水蒸気バルブ160a〜160dは全て同じ構造であるので、これら水蒸気バルブ160a〜160dを総称するときには、水蒸気バルブ160と表記する。また、170は凝縮器150にて液化(凝縮)された冷媒を第3空間103に導くための冷媒戻し回路であり、171は冷媒戻し回路170を開閉するバルブである。
【0032】
ここで、水蒸気バルブ160について図2に基づいて説明する。161は冷媒(流体)が存在する第1の空間(例えば、第1空間101)Aと第2の空間(例えば、第3空間103)Bとに区画する区画部材(シールプレート)であり、この区画部材161には、両空間A、Bを連通させる連通口(弁口)162が設けられている。なお、本実施形態では、区画部材(シールプレート)161はケーシング110に固定されている。
【0033】
そして、連通口162は第1の空間Aから第2の空間B側に向かうほど開口面積が縮小するように円錐テーパ状に形成され、連通口162を開閉する弁体163は、第2の空間B側が凸となるような曲面163aを有する殻(シェル、膜)状に形成されて連通口162に配置されている。
【0034】
なお、164は連通口162が開いたときに、第2の空間Bから第1の空間Aに流通する冷媒の動圧により、弁体163が流されてしまうことを防止するバルブガイドである。
【0035】
ここで、上記水蒸気バルブ160の作動について説明する。第1の空間Aの圧力が第2の空間Bの圧力よりも高いときには、その差圧により弁体163が第2の空間Bに押し付けられるため、区画部材(シールプレート)161の円錐テーパ面161aに弁体163が密着し、連通口162が弁体163により閉じられる。
【0036】
一方、第2の空間Bの圧力が第1の空間Aの圧力よりも高いときには、弁体163を円錐テーパ面161aに押し付ける力が作用しないので、第2の空間Bから第1の空間Aに流通する冷媒の動圧により、弁体163が区画部材(シールプレート)161に対して浮いた(離れた)状態となり、連通口162が開くようになっている。
【0037】
次に、以上の構成による吸着式空調装置の作動について図3および図4に基づいて説明する。まず、吸着式空調装置を稼動するときは、切換弁405、406を図3に示す流れ方向となるように作動させるとともに、第1〜第4ポンプ401〜404を作動させて、図中に太い破線で示す循環回路が形成され、蒸発器140と室内器300との間、第1吸着コア120と室外器200との間、ならびに凝縮器150と室外器200との間に熱媒体を循環させる。
【0038】
これにより、第3空間103内の液相冷媒が蒸発器140を介して室内器300に供給される第3熱媒体から熱を奪って蒸発し第3熱媒体を冷却するとともに蒸発した蒸気冷媒の圧力により水蒸気バルブ160aを開いて第1空間101内に流入し、第1吸着コア120により蒸気冷媒が吸着される。なお、蒸気冷媒を吸着する吸着コアを吸着工程にある吸着コアと呼ぶ。
【0039】
一方、第2吸着コア130は、図中に太い実線で示す循環回路が形成され、エンジン500から供給される高温の冷却水により加熱されて吸着していた冷媒を脱離する(以下、この工程を脱離工程と称す。)ので、第2空間102内の圧力が高まり、水蒸気バルブ160dが開いて脱離した蒸気冷媒が第4空間104内に流入して凝縮器150にて冷却される。なお、凝縮した液相冷媒は冷媒戻し回路170を経由して第3空間103内に戻り、再び、室内器300に供給される第3熱媒体から熱を奪って蒸発する。
【0040】
そして、この状態(以下、この状態を第1状態と称す。)で所定時間(例えば、60秒〜100秒)が経過したときに、第1〜第4ポンプ401〜404を作動させたまま、切換弁405、406を図4に示すように作動させて、図中に太い破線で示す循環回路が形成され、蒸発器140と室内器300との間、第2吸着コア130と室外器200との間、ならびに凝縮器150と室外器200との間、および図中に太い実線で示す循環回路が形成され、第1吸着コア120とエンジン500との間に冷却水を循環させる。
【0041】
これにより、第1状態とは逆に、第2吸着コア130が吸着工程となり、第1吸着コア120が脱離工程となる。具体的には、第3空間103内の液相冷媒が蒸発器140を介して室内器300に供給される第3熱媒体から熱を奪って蒸発し第3熱媒体を冷却するとともに、蒸発した蒸気冷媒の圧力により水蒸気バルブ160cを開いて第2空間102内に流入し、第2吸着コア130により蒸気冷媒が吸着される。
【0042】
一方、第1吸着コア120はエンジン500から供給される高温の冷却水により、水蒸気バルブ160bが開いて脱離した蒸気冷媒が第4空間104内に流入して凝縮器150が冷却される。そして、この状態(以下、第2状態と称す。)で所定時間が経過したとき、切換弁405、406を作動させて再び上述の第1状態とする。このように、第1状態および第2状態を所定時間ごとに交互に繰り返して空調装置を連続的に稼動させる。
【0043】
なお、所定時間は、ケーシング110内に存在する液相冷媒の残量や第1、第2吸着コア120、130に接着された吸着剤Siの吸着能力に基づいて適宜選定されるものである。
【0044】
次に、本発明の要部である第1〜第4ポンプ401〜404の作動について、図5ないし図7に基づいて説明する。図5ないし図7は、図示しない電子制御装置における水温センサ412、413、414の温度情報に基づいて第1〜第4ポンプ401〜404の送水動力を制御する制御処理を示すフローチャートである。
【0045】
図5は、第2送水手段である第1ポンプ401および第2ポンプ402の制御処理を示したものであって、ステップ11にて、水温センサ412により検出された第2熱媒体の水温T1を読み込んで、次のステップ12にて、読み込まれた水温T1が所定温度以下か否かを判定する。そして、ステップ12にて、水温T1が所定温度以下であれば、ステップ13において、電圧を低下させるなどの送水動力を降下するように制御する。逆に、水温T1が所定温度に未達であれば、電圧を上昇させるなどの送水動力を上昇するように制御する。
【0046】
これにより、室外器200により冷却された第2熱媒体の水温T1が所定温度を満たしておれば吸着器100の所定の冷凍能力を確保できるため、例えば、室外器200の風量や外気温度などにより所定温度以下のときに送水動力を降下することにより無駄な動力を消費することがなくなる。逆に、所定温度に未達のときに送水動力を上昇するにより室外器200の放熱が増加して吸着器100の所定の冷凍能力を確保できる。
【0047】
また、図6は、第3送水手段である第3ポンプ403の制御処理を示したものであって、ステップ11aにて、水温センサ413により検出された第3熱媒体の水温T2を読み込んで、次のステップ12aにて、読み込まれた水温T2が所定温度以下か否かを判定する。そして、ステップ12aにて、水温T2が所定温度以下であれば、ステップ13aにおいて、電圧を低下させるなどの送水動力を降下するように制御する。逆に、水温T2が所定温度に未達であれば、電圧を上昇させるなどの送水動力を上昇するように制御する。
【0048】
これにより、吸着器100により冷却された第3熱媒体の水温T2が所定温度を満たしておれば室内器300の所定の冷凍能力を確保できるため、所定温度以下のときに送水動力を降下することにより無駄な動力を消費することがなくなる。逆に、所定温度に未達のときに送水動力を上昇するにより吸着器100の吸熱が増加して室内器300の所定の冷凍能力を確保できる。
【0049】
また、図7は、第1送水手段である第4ポンプ404の制御処理を示したものであって、ステップ11bにて、水温センサ414により検出された冷却水の水温T3を読み込んで、次のステップ12bにて、読み込まれた水温T3が所定温度以上か否かを判定する。そして、ステップ12bにて、水温T3が所定温度以上であれば、ステップ13bにおいて、電圧を低下させるなどの送水動力を降下するように制御する。逆に、水温T3が所定温度に未達であれば、電圧を上昇させるなどの送水動力を上昇するように制御する。
【0050】
これにより、エンジン100および燃焼式ヒータ408より供給された冷却水の水温T3が所定温度を満たしておれば吸着器100の所定の脱離能力を確保できるため、所定温度以上のときに送水動力を降下することにより無駄な動力を消費することがなくなる。逆に、所定温度に未達のときに送水動力を上昇するにより吸着器100の脱離能力が確保できる。
【0051】
以上の一実施形態の車両用吸着式空調装置によれば、吸着式冷凍機の吸着器100の冷凍能力は、これに流入する高温の冷却水、低温の第2熱媒体および第3熱媒体の水温により大きく左右される。そこで、本発明では、第1〜第4ポンプ401〜404を水温センサ412、413、414の温度情報に基づいて送水動力を調整するように制御することにより、例えば、所定温度を超えるときは送水動力を降下させることで無駄な動力を消費することがなくなる。しかも、所定温度に未達のときはに送水動力を上昇させることで所定の能力が確保できる。これにより、第1〜第4ポンプ401〜404の省動力が図れる。
【0052】
また、第1冷却液である冷却水は吸着器100の脱離工程に流入させるため、冷却水温度が高めの所定温度を満たしたときが第4ポンプ404の最適な送水動力である。所定温度を超えるときは送水動力を降下するように制御されることにより、第4ポンプ404の省動力が図れる。
【0053】
逆に、第2熱媒体および第3熱媒体においては吸着器100の吸着工程、および室内器300に流入させるため、水温が低めの所定温度を満たしたときが第1、第2ポンプ401、402の最適な送水動力である。これ以下であれば送水動力を降下するように制御されることにより、第1、第2ポンプ401、402の省動力が図れる。
【0054】
また、始動時などにエンジン500の廃熱が不足しているときは燃焼式ヒータ408により廃熱の不足分を補うことで吸着器100の所定の冷凍能力が確保できる。
【0055】
(他の実施形態)
以上の一実施形態では、第1〜第4ポンプ401〜404を水温センサ412、413、414の温度情報に基づいて送水動力を調整するように制御させたが、これに限らず、加熱された空気を吹き出すヒータコア400に冷却水を流入する第5ポンプ407においても第1送水手段である第4ポンプ404と同じように水温センサ414により検出された温度情報に基づいて送水動力を調整するように制御しても良い。
【0056】
また、以上の実施形態では、吸着剤Siとしてシリカゲルを用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、吸着剤Siとして活性炭、ゼオライト、活性アルミナなどを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態における車両用吸着式空調装置の全体構成を示す模式図である。
【図2】本発明の一実施形態における水蒸気バルブ160の作動を示す模式図である。
【図3】本発明の一実施形態における吸着器100の作動を示す模式図である。
【図4】本発明の一実施形態における吸着器100の作動を示す模式図である。
【図5】本発明の一実施形態における第1、第2ポンプの制御処理を示すフローチャートである。
【図6】本発明の一実施形態における第3ポンプの制御処理を示すフローチャートである。
【図7】本発明の一実施形態における第4ポンプの制御処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
100…吸着器
120…第1吸着コア(吸着コア)
130…第2吸着コア(吸着コア)
150…凝縮器
200…車室外熱交換器、室外器、
300…室内熱交換器、室内器、
401…第1ポンプ(第2送水手段)
402…第2ポンプ(第2送水手段)
403…第3ポンプ(第3送水手段)
404…第4ポンプ(第1送水手段)
407…第5ポンプ(第1送水手段)
408…燃焼式ヒータ(熱交換媒体供給手段)
412、413、414…水温センサ(水温検出手段)
500…水冷式エンジン、エンジン(液冷式内燃機関、熱交換媒体供給手段)
Si…吸着剤
【発明の属する技術分野】
本発明は、吸着器を有し吸着と脱離を交互に繰り返して冷凍能力を発揮する車両用吸着式空調装置に関するものであって、特に、吸着器に冷却液などの熱媒体を送水する送水手段に関する。
【0002】
【従来の技術】
液冷式内燃機関を有する車両に搭載され、液冷式内燃機関の廃熱を利用して吸着式冷凍装置を稼働させて冷凍能力を発揮する車両用吸着式空調装置が知られている。この車両用吸着式空調装置では、冷却液を冷却するラジエータを有する液冷式内燃機関と、蒸気冷媒を吸着するとともに、加熱されることにより吸着した蒸気冷媒を脱離する吸着剤及び液冷媒が封入され、冷凍能力を発揮する吸着器と、この吸着器内を循環する熱媒体を冷却する車室外熱交換器と、吸着器にて冷却された熱媒体が循環する室内熱交換器とを備えている。
【0003】
そして、液冷式内燃機関にて温められた冷却液が吸着器の脱離工程に流入されるように送水手段を有し、車室外熱交換器にて冷却された熱媒体が吸着器の脱離工程に流入されるように送水手段を有し、さらに、吸着器にて冷却された熱媒体が室内熱交換器に流入されるように送水手段を有している(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−185548号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、吸着器に流入する冷却液および熱媒体の水温によりこの種の吸着器の冷凍能力が大きく左右される。例えば、吸着器の脱離工程に流入する冷却液は概して水温が高いことが要求される。また、車室外熱交換器にて冷却される熱媒体と室内熱交換器に流入される熱媒体は概して水温が低いことが要求されるが、この水温が所定温度を満たしたときにはそれ以上の送水動力は必要としない。所定温度を満たしていてもそのまま運転を継続させることは無駄な送水動力を消費してしまう。
【0006】
しかも、この種の吸着式冷凍装置では、冷却液および熱媒体を送水する複数の送水手段を運転させているため周知の冷媒方式を用いた車両用空調装置よりも消費電力が大きくなるという問題がある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、上記点に鑑みたことであり、冷却液および熱媒体の温度に基づいて送水手段の動力を調整させることで送水手段の省動力を図る車両用吸着式空調装置を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記、目的を達成するために、請求項1ないし請求項4に記載の技術的手段を採用する。すなわち、請求項1に記載の発明では、高温熱交換媒体の第1冷却液を供給する熱交換媒体供給手段(500、408)と、この熱交換媒体供給手段(500、408)側からの第1冷却液を受けて、蒸気冷媒を吸着するとともに、加熱されることにより吸着した蒸気冷媒を脱離する吸着剤(Si)及び液冷媒が封入され、冷凍能力を発揮する吸着器(100)と、この吸着器(100)に設けられ、吸着剤(Si)と第2熱媒体とを熱交換する吸着コア(120、130)と、吸着器(100)に設けられ、吸着剤(Si)から脱離した蒸気冷媒と第2熱媒体とを熱交換して蒸気冷媒を凝縮する凝縮器(150)と、吸着コア(120、130)および凝縮器(150)内を循環する第2熱媒体を冷却する車室外熱交換器(200)と、吸着器(100)にて冷却された第3熱媒体が循環する室内熱交換器(300)とを備えて、蒸気冷媒を吸着させて吸着器(100)にて冷凍能力を発揮させる吸着工程と第1冷却液にて前記吸着剤(Si)を加熱して蒸気冷媒を脱離させる脱離工程とを切り替え運転する車両用吸着式空調装置において、
熱交換媒体供給手段(500、408)により温められた第1冷却液を吸着器(100)の脱離工程に流入する第1送水手段(404、407)と、車室外熱交換器(200)で冷却された第2熱媒体を前記吸着器(100)の吸着工程に流入する第2送水手段(401、402)と、吸着器(100)の吸着工程時の蒸発熱により冷却された第3熱媒体を室内熱交換器(300)に流入する第3送水手段(403)と、第1冷却液、第2熱媒体および第3熱媒体の温度情報を検出する水温検出手段(412、413、414)とが設けられ、
第1送水手段(404、407)、第2送水手段(401、402)および第3送水手段(403)の少なくともいずれかの一つは、水温検出手段(412、413、414)により検出された温度情報に基づいて送水動力を調整するように制御されることを特徴としている。
【0009】
請求項1の発明によれば、この種の吸着器(100)の冷凍能力は、これに流入する第1冷却液、第2熱媒体および第3熱媒体の水温により大きく左右される。そこで、本発明では、各送水手段(404、407、401、402、403)を第1冷却液、第2熱媒体および第3熱媒体の温度情報に基づいて送水動力を調整するように制御することにより、例えば、所定温度を超えるときは送水動力を降下させることで無駄な動力を消費することがなくなる。しかも、所定温度に未達のときはに送水動力を上昇させることで所定の能力が確保できる。これにより、各送水手段(404、407、401、402、403)の省動力が図れる。
【0010】
請求項2に記載の発明では、第1送水手段(404、407)は、第1冷却液の温度情報が所定温度以上のときに、送水動力を降下するように制御されることを特徴としている。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、第1冷却液においては吸着器(100)の脱離工程に流入させるため、水温が高めの所定温度を満たしたときが送水手段の最適な送水動力である。これ以上であれば送水動力を降下するように制御されることにより、第1送水手段(404、407)の省動力が図れる。
【0012】
請求項3に記載の発明では、第2送水手段(401、402)および第3送水手段(403)は、第2熱媒体および第3熱媒体の温度情報が所定温度以下のときに、送水動力を降下するように制御されることを特徴としている。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、逆に、第2熱媒体および第3熱媒体においては吸着器(100)の吸着工程、および室内熱交換器(300)に流入させるため、水温が低めの所定温度を満たしたときが送水手段の最適な送水動力である。これ以下であれば送水動力を降下するように制御されることにより、第2送水手段(401、402)および第3送水手段(403)の省動力が図れる。
【0014】
請求項4に記載の発明では、熱交換媒体供給手段(500、408)は、液冷式内燃機関(500)または液冷式内燃機関(500)の第1冷却水を加熱する燃焼式ヒータ(408)であることを特徴としている。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、始動時などに液冷式内燃機関(500)の廃熱が不足しているときは燃焼式ヒータ(408)により廃熱の不足分を補うことで吸着器(100)の所定の冷凍能力が確保できる。
【0016】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態の車両用吸着式空調装置を、ガソリン又は軽油を燃料とする液冷式内燃機関を有する車両に搭載される空調装置に適用したものであり、図1ないし図7に基づいて説明する。
【0018】
まず、図1は車両用吸着式空調装置の全体構成を示す模式図である。図1に示すように、100は吸着式冷凍機である吸着器であり、200は吸着器100内を循環した第2熱媒体と室外空気とを熱交換する車室外熱交換器(以下、室外器と略す。)である。300は吸着器100にて発生した冷凍能力により冷却された第3熱媒体と室内に吹き出す空気とを熱交換し、空調風を冷却する室内熱交換器(以下、室内器と略す。)である。
【0019】
因みに、本実施形態の第2、第3熱媒体は、水にエチレングリコールを添加した流体であって、液冷式内燃機関の第1冷却液である冷却水と同じものである。500は吸着器100に供給する熱の熱源であり、本実施形態では、液冷式内燃機関である水冷式エンジン(以下、エンジンと略す。)の廃熱と、後述するが燃焼式ヒータ408とを熱源としている。従って、これらのエンジン100および燃焼式ヒータ408は、請求項で述べた高温熱交換媒体である第1冷却液を供給する熱交換媒体供給手段である。
【0020】
次に、401は室外器200と吸着器100の第1、第2吸着コア120、130との間で第2熱媒体を循環させる電動式の第1ポンプであり、402は室外器200と凝縮器150との間で第2熱媒体を循環させる電動式の第2ポンプであり、403は室内器300と蒸発器140との間で第3熱媒体を循環させる電動式の第3ポンプであり、404はエンジン500より流出した第1冷却液である冷却水を吸着式空調装置側に循環させる電動式の第4ポンプである。
【0021】
なお、第1ポンプ401および第2ポンプ402は第2送水手段であり、第3ポンプ403は第3送水手段であり、第4ポンプ404は第1送水手段である。また、405、406は冷却水の循環経路を切り換える切換弁(四方弁)であり、これらの切換弁405、406および第1〜第4ポンプ401〜404は図示しない電子制御装置により制御されている。
【0022】
また、400はエンジン500から流出する冷却水を熱源として室内に吹き出す空気を加熱するヒータコアであり、407は暖機系回路410を循環させる電動式の第5ポンプであり、後述するメカニカルポンプ501が停止したとき、または後述する暖房切換弁409が暖房バイパス回路411側に切り換えたときのいずれかのときに作動するようにしている。
【0023】
408は、暖機系回路410を循環する冷却水を加熱する燃焼式ヒータであって、冷えたエンジン500の予熱、ヒータコア400の暖房のための熱源、および上記吸着器100への熱源である。なお、暖房切換弁409は、燃焼式ヒータ408によってヒータコア400の暖房能力を確保しているときに、暖房バイパス回路411側に冷却水を流して、冷えたエンジン500に冷却水の熱が奪われるのを防ぐように暖機系回路410の上流側に設けられている。これらの第5ポンプ407、燃焼式ヒータ408および暖房切換弁409は図示しない電子制御装置により制御されている。
【0024】
そして、503はエンジン500から流出した冷却水と外気とを熱交換して冷却水を冷却するエンジン500用のラジエータである。なお、ラジエータ503は周知のように、図示しないラジエータファンによって室外空気が送風されて冷却水を冷却する。また、420は冷却系回路であって、エンジン500から流出した冷却水をラジエータ503に循環供給する冷却水の回路である。421はエンジン500から流出した冷却水をラジエータ503に迂回させてエンジン500に戻すバイパス回路であり、422はラジエータ200に流す水量とバイパス回路421に流す水量とを調節することにより冷却水温度(エンジン温度)を調節するサーモスタットである。
【0025】
501はエンジン500から駆動力を得てエンジン冷却水を循環させる機械式のメカニカルポンプ501であり、エンジン500が運転すると図中に示す矢印方向の流れ方向に冷却水を循環する。これにより、エンジン500を循環した冷却水が暖機系回路410と冷却系回路420とに循環することができる。502は、エンジン500から流出した冷却水温度Twを検出する水温センサであり、検出された温度情報を図示しない電子制御装置に出力するようにしている。
【0026】
412は、室外器200から流出した第2熱媒体の水温T1を検出する水温センサであり、413は、吸着器100から流出した第3熱媒体の水温T2を検出する水温センサであり、414は、燃焼式ヒータ408から流出した冷却水の水温T3を検出する水温センサであり請求項で述べる水温検出手段である。なお、これらの水温センサ412、413、414においても検出された温度情報を図示しない電子制御装置に出力するようにしている。
【0027】
次に、吸着器100の構成について説明する。吸着器100は、内部が略真空に保たれた状態で熱冷媒(本実施形態では、水)が封入されたステンレス(例えば、SUS304)製のケーシング110を4つの空間(第1〜第4空間)101〜104に区画するとともに、各空間101〜104に第2熱媒体が流通する熱交換器120、130、140、150を収納したものである。
【0028】
具体的には、第1、第2空間101、102には、第2熱媒体と吸着剤とを熱交換する熱交換器120、130(以下、第1、第2吸着コア120、130と称す。)が収納され、第3空間103には、液相冷媒と室内器300を循環する第3熱媒体とを熱交換して液相冷媒を蒸発させる蒸発器140が収納され、第4空間104には、蒸気冷媒と室外器200を循環する第2熱媒体とを熱交換して蒸気冷媒を凝縮させる凝縮器150が収納されている。
【0029】
なお、第1、第2吸着コア120、130の表面には、蒸気冷媒を吸着するとともに、加熱されることにより吸着していた冷媒を脱離(再生)する吸着剤(例えば、シリカゲル)Siが接着剤(例えば、エポキン樹脂)によって接着固定されている。
【0030】
また、160aは第1空間101と第3空間103との連通状態を制御する水蒸気バルブ(液体バルブ)であり、160bは第1空間101と第4空間104との連通状態を制御する水蒸気バルブ(液体バルブ)であり、160cは第2空間102と第3空間103との連通状態を制御する水蒸気バルブ(液体バルブ)であり、160dは第2空間102と第4空間104との連通状態を制御する水蒸気バルブ(液体バルブ)である。
【0031】
ここで、水蒸気バルブ160a〜160dは全て同じ構造であるので、これら水蒸気バルブ160a〜160dを総称するときには、水蒸気バルブ160と表記する。また、170は凝縮器150にて液化(凝縮)された冷媒を第3空間103に導くための冷媒戻し回路であり、171は冷媒戻し回路170を開閉するバルブである。
【0032】
ここで、水蒸気バルブ160について図2に基づいて説明する。161は冷媒(流体)が存在する第1の空間(例えば、第1空間101)Aと第2の空間(例えば、第3空間103)Bとに区画する区画部材(シールプレート)であり、この区画部材161には、両空間A、Bを連通させる連通口(弁口)162が設けられている。なお、本実施形態では、区画部材(シールプレート)161はケーシング110に固定されている。
【0033】
そして、連通口162は第1の空間Aから第2の空間B側に向かうほど開口面積が縮小するように円錐テーパ状に形成され、連通口162を開閉する弁体163は、第2の空間B側が凸となるような曲面163aを有する殻(シェル、膜)状に形成されて連通口162に配置されている。
【0034】
なお、164は連通口162が開いたときに、第2の空間Bから第1の空間Aに流通する冷媒の動圧により、弁体163が流されてしまうことを防止するバルブガイドである。
【0035】
ここで、上記水蒸気バルブ160の作動について説明する。第1の空間Aの圧力が第2の空間Bの圧力よりも高いときには、その差圧により弁体163が第2の空間Bに押し付けられるため、区画部材(シールプレート)161の円錐テーパ面161aに弁体163が密着し、連通口162が弁体163により閉じられる。
【0036】
一方、第2の空間Bの圧力が第1の空間Aの圧力よりも高いときには、弁体163を円錐テーパ面161aに押し付ける力が作用しないので、第2の空間Bから第1の空間Aに流通する冷媒の動圧により、弁体163が区画部材(シールプレート)161に対して浮いた(離れた)状態となり、連通口162が開くようになっている。
【0037】
次に、以上の構成による吸着式空調装置の作動について図3および図4に基づいて説明する。まず、吸着式空調装置を稼動するときは、切換弁405、406を図3に示す流れ方向となるように作動させるとともに、第1〜第4ポンプ401〜404を作動させて、図中に太い破線で示す循環回路が形成され、蒸発器140と室内器300との間、第1吸着コア120と室外器200との間、ならびに凝縮器150と室外器200との間に熱媒体を循環させる。
【0038】
これにより、第3空間103内の液相冷媒が蒸発器140を介して室内器300に供給される第3熱媒体から熱を奪って蒸発し第3熱媒体を冷却するとともに蒸発した蒸気冷媒の圧力により水蒸気バルブ160aを開いて第1空間101内に流入し、第1吸着コア120により蒸気冷媒が吸着される。なお、蒸気冷媒を吸着する吸着コアを吸着工程にある吸着コアと呼ぶ。
【0039】
一方、第2吸着コア130は、図中に太い実線で示す循環回路が形成され、エンジン500から供給される高温の冷却水により加熱されて吸着していた冷媒を脱離する(以下、この工程を脱離工程と称す。)ので、第2空間102内の圧力が高まり、水蒸気バルブ160dが開いて脱離した蒸気冷媒が第4空間104内に流入して凝縮器150にて冷却される。なお、凝縮した液相冷媒は冷媒戻し回路170を経由して第3空間103内に戻り、再び、室内器300に供給される第3熱媒体から熱を奪って蒸発する。
【0040】
そして、この状態(以下、この状態を第1状態と称す。)で所定時間(例えば、60秒〜100秒)が経過したときに、第1〜第4ポンプ401〜404を作動させたまま、切換弁405、406を図4に示すように作動させて、図中に太い破線で示す循環回路が形成され、蒸発器140と室内器300との間、第2吸着コア130と室外器200との間、ならびに凝縮器150と室外器200との間、および図中に太い実線で示す循環回路が形成され、第1吸着コア120とエンジン500との間に冷却水を循環させる。
【0041】
これにより、第1状態とは逆に、第2吸着コア130が吸着工程となり、第1吸着コア120が脱離工程となる。具体的には、第3空間103内の液相冷媒が蒸発器140を介して室内器300に供給される第3熱媒体から熱を奪って蒸発し第3熱媒体を冷却するとともに、蒸発した蒸気冷媒の圧力により水蒸気バルブ160cを開いて第2空間102内に流入し、第2吸着コア130により蒸気冷媒が吸着される。
【0042】
一方、第1吸着コア120はエンジン500から供給される高温の冷却水により、水蒸気バルブ160bが開いて脱離した蒸気冷媒が第4空間104内に流入して凝縮器150が冷却される。そして、この状態(以下、第2状態と称す。)で所定時間が経過したとき、切換弁405、406を作動させて再び上述の第1状態とする。このように、第1状態および第2状態を所定時間ごとに交互に繰り返して空調装置を連続的に稼動させる。
【0043】
なお、所定時間は、ケーシング110内に存在する液相冷媒の残量や第1、第2吸着コア120、130に接着された吸着剤Siの吸着能力に基づいて適宜選定されるものである。
【0044】
次に、本発明の要部である第1〜第4ポンプ401〜404の作動について、図5ないし図7に基づいて説明する。図5ないし図7は、図示しない電子制御装置における水温センサ412、413、414の温度情報に基づいて第1〜第4ポンプ401〜404の送水動力を制御する制御処理を示すフローチャートである。
【0045】
図5は、第2送水手段である第1ポンプ401および第2ポンプ402の制御処理を示したものであって、ステップ11にて、水温センサ412により検出された第2熱媒体の水温T1を読み込んで、次のステップ12にて、読み込まれた水温T1が所定温度以下か否かを判定する。そして、ステップ12にて、水温T1が所定温度以下であれば、ステップ13において、電圧を低下させるなどの送水動力を降下するように制御する。逆に、水温T1が所定温度に未達であれば、電圧を上昇させるなどの送水動力を上昇するように制御する。
【0046】
これにより、室外器200により冷却された第2熱媒体の水温T1が所定温度を満たしておれば吸着器100の所定の冷凍能力を確保できるため、例えば、室外器200の風量や外気温度などにより所定温度以下のときに送水動力を降下することにより無駄な動力を消費することがなくなる。逆に、所定温度に未達のときに送水動力を上昇するにより室外器200の放熱が増加して吸着器100の所定の冷凍能力を確保できる。
【0047】
また、図6は、第3送水手段である第3ポンプ403の制御処理を示したものであって、ステップ11aにて、水温センサ413により検出された第3熱媒体の水温T2を読み込んで、次のステップ12aにて、読み込まれた水温T2が所定温度以下か否かを判定する。そして、ステップ12aにて、水温T2が所定温度以下であれば、ステップ13aにおいて、電圧を低下させるなどの送水動力を降下するように制御する。逆に、水温T2が所定温度に未達であれば、電圧を上昇させるなどの送水動力を上昇するように制御する。
【0048】
これにより、吸着器100により冷却された第3熱媒体の水温T2が所定温度を満たしておれば室内器300の所定の冷凍能力を確保できるため、所定温度以下のときに送水動力を降下することにより無駄な動力を消費することがなくなる。逆に、所定温度に未達のときに送水動力を上昇するにより吸着器100の吸熱が増加して室内器300の所定の冷凍能力を確保できる。
【0049】
また、図7は、第1送水手段である第4ポンプ404の制御処理を示したものであって、ステップ11bにて、水温センサ414により検出された冷却水の水温T3を読み込んで、次のステップ12bにて、読み込まれた水温T3が所定温度以上か否かを判定する。そして、ステップ12bにて、水温T3が所定温度以上であれば、ステップ13bにおいて、電圧を低下させるなどの送水動力を降下するように制御する。逆に、水温T3が所定温度に未達であれば、電圧を上昇させるなどの送水動力を上昇するように制御する。
【0050】
これにより、エンジン100および燃焼式ヒータ408より供給された冷却水の水温T3が所定温度を満たしておれば吸着器100の所定の脱離能力を確保できるため、所定温度以上のときに送水動力を降下することにより無駄な動力を消費することがなくなる。逆に、所定温度に未達のときに送水動力を上昇するにより吸着器100の脱離能力が確保できる。
【0051】
以上の一実施形態の車両用吸着式空調装置によれば、吸着式冷凍機の吸着器100の冷凍能力は、これに流入する高温の冷却水、低温の第2熱媒体および第3熱媒体の水温により大きく左右される。そこで、本発明では、第1〜第4ポンプ401〜404を水温センサ412、413、414の温度情報に基づいて送水動力を調整するように制御することにより、例えば、所定温度を超えるときは送水動力を降下させることで無駄な動力を消費することがなくなる。しかも、所定温度に未達のときはに送水動力を上昇させることで所定の能力が確保できる。これにより、第1〜第4ポンプ401〜404の省動力が図れる。
【0052】
また、第1冷却液である冷却水は吸着器100の脱離工程に流入させるため、冷却水温度が高めの所定温度を満たしたときが第4ポンプ404の最適な送水動力である。所定温度を超えるときは送水動力を降下するように制御されることにより、第4ポンプ404の省動力が図れる。
【0053】
逆に、第2熱媒体および第3熱媒体においては吸着器100の吸着工程、および室内器300に流入させるため、水温が低めの所定温度を満たしたときが第1、第2ポンプ401、402の最適な送水動力である。これ以下であれば送水動力を降下するように制御されることにより、第1、第2ポンプ401、402の省動力が図れる。
【0054】
また、始動時などにエンジン500の廃熱が不足しているときは燃焼式ヒータ408により廃熱の不足分を補うことで吸着器100の所定の冷凍能力が確保できる。
【0055】
(他の実施形態)
以上の一実施形態では、第1〜第4ポンプ401〜404を水温センサ412、413、414の温度情報に基づいて送水動力を調整するように制御させたが、これに限らず、加熱された空気を吹き出すヒータコア400に冷却水を流入する第5ポンプ407においても第1送水手段である第4ポンプ404と同じように水温センサ414により検出された温度情報に基づいて送水動力を調整するように制御しても良い。
【0056】
また、以上の実施形態では、吸着剤Siとしてシリカゲルを用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、吸着剤Siとして活性炭、ゼオライト、活性アルミナなどを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態における車両用吸着式空調装置の全体構成を示す模式図である。
【図2】本発明の一実施形態における水蒸気バルブ160の作動を示す模式図である。
【図3】本発明の一実施形態における吸着器100の作動を示す模式図である。
【図4】本発明の一実施形態における吸着器100の作動を示す模式図である。
【図5】本発明の一実施形態における第1、第2ポンプの制御処理を示すフローチャートである。
【図6】本発明の一実施形態における第3ポンプの制御処理を示すフローチャートである。
【図7】本発明の一実施形態における第4ポンプの制御処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
100…吸着器
120…第1吸着コア(吸着コア)
130…第2吸着コア(吸着コア)
150…凝縮器
200…車室外熱交換器、室外器、
300…室内熱交換器、室内器、
401…第1ポンプ(第2送水手段)
402…第2ポンプ(第2送水手段)
403…第3ポンプ(第3送水手段)
404…第4ポンプ(第1送水手段)
407…第5ポンプ(第1送水手段)
408…燃焼式ヒータ(熱交換媒体供給手段)
412、413、414…水温センサ(水温検出手段)
500…水冷式エンジン、エンジン(液冷式内燃機関、熱交換媒体供給手段)
Si…吸着剤
Claims (4)
- 高温熱交換媒体の第1冷却液を供給する熱交換媒体供給手段(500、408)と、
前記熱交換媒体供給手段(500、408)側からの前記第1冷却液を受けて、蒸気冷媒を吸着するとともに、加熱されることにより吸着した蒸気冷媒を脱離する吸着剤(Si)及び液冷媒が封入され、冷凍能力を発揮する吸着器(100)と、
前記吸着器(100)に設けられ、前記吸着剤(Si)と第2熱媒体とを熱交換する吸着コア(120、130)と、
前記吸着器(100)に設けられ、前記吸着剤(Si)から脱離した蒸気冷媒と前記第2熱媒体とを熱交換して蒸気冷媒を凝縮する凝縮器(150)と、
前記吸着コア(120、130)および前記凝縮器(150)内を循環する前記第2熱媒体を冷却する車室外熱交換器(200)と、
前記吸着器(100)にて冷却された第3熱媒体が循環する室内熱交換器(300)とを備えて、蒸気冷媒を吸着させて前記吸着器(100)にて冷凍能力を発揮させる吸着工程と前記第1冷却液にて前記吸着剤(Si)を加熱して蒸気冷媒を脱離させる脱離工程とを切り替え運転する車両用吸着式空調装置において、
前記熱交換媒体供給手段(500、408)により温められた前記第1冷却液を前記吸着器(100)の脱離工程に流入する第1送水手段(404、407)と、
前記車室外熱交換器(200)で冷却された前記第2熱媒体を前記吸着器(100)の吸着工程に流入する第2送水手段(401、402)と、
前記吸着器(100)の吸着工程時の蒸発熱により冷却された前記第3熱媒体を前記室内熱交換器(300)に流入する第3送水手段(403)と、
前記第1冷却液、前記第2熱媒体および前記第3熱媒体の温度情報を検出する水温検出手段(412、413、414)とが設けられ、
前記第1送水手段(404、407)、前記第2送水手段(401、402)および前記第3送水手段(403)の少なくともいずれかの一つは、前記水温検出手段(412、413、414)により検出された温度情報に基づいて送水動力を調整するように制御されることを特徴とする車両用吸着式空調装置。 - 前記第1送水手段(404、407)は、前記第1冷却液の温度情報が所定温度以上のときに、送水動力を降下するように制御されることを特徴とする請求項1に記載の車両用吸着式空調装置。
- 前記第2送水手段(401、402)および前記第3送水手段(403)は、前記第2熱媒体および前記第3熱媒体の温度情報が所定温度以下のときに、送水動力を降下するように制御されることを特徴とする請求項1に記載の車両用吸着式空調装置。
- 前記熱交換媒体供給手段(500、408)は、液冷式内燃機関(500)または前記液冷式内燃機関(500)の前記第1冷却水を加熱する燃焼式ヒータ(408)であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の車両用吸着式空調装置。
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