JP2004291162A - 表面被覆切削工具 - Google Patents

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Abstract

【課題】特に金属の断続切削等の工具切刃に強い衝撃がかかるような過酷な切削条件においても、Ti系被覆層とAl層との間で剥離が発生することなく硬質被覆層の密着性を高めることができ、優れた耐欠損性および耐摩耗性を有する長寿命の切削工具を提供する。
【解決手段】WC基超硬合金からなる母材2の表面に、TiN、TiCNおよびTiCの群から選ばれる少なくとも1種の単層または2層以上の複数層のTi系被覆層7と、Ti系被覆層7の表面に、結晶系がκ型をなし平均粒径が1μm以下の微粒のAl粒子からなる下側Al層6と、結晶系がα型をなし平均粒径が2μm以上の粗粒のAl粒子からなる上側Al層6との多層Al層4を順次形成した表面被覆超硬合金製切削工具である。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた耐チッピング性および耐摩耗性を有する硬質被覆層を表面に被着形成した表面被覆切削工具に関し、特に鋳鉄等難削材の断続切削等の大きな衝撃が切刃にかかるような切削に際しても、優れた耐欠損性および耐摩耗性を有する表面被覆切削工具に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、金属の切削加工に広く用いられている切削工具は、超硬合金やサーメット、セラミックス等の母材の表面に、TiC層、TiN層、TiCN層等のTi系被覆層およびAl層等の硬質被覆層を順次被着形成した表面被覆切削工具が多用されている。
【0003】
一方、鋳物の断続切削等の大きな衝撃が切刃にかかるような過酷な切削においては、従来の工具では硬質被覆層が大きな衝撃に耐えきれずすくい面においてチッピングや硬質被覆層の剥離から切刃の欠損や異常摩耗の発生等の突発的な工具損傷により工具寿命の長寿命化ができないという問題があった。
【0004】
上記硬質被覆層として、特許文献1には、上側に結晶系がα型をなすAl層を形成し、かつ下側に結晶系がκ型をなすAl層を形成することによって、成膜速度が速くできるとともに工具の耐欠損性を高める効果をもつことが記載されている。
【0005】
【特許文献1】
特開平9−125250号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1に記載されるように、Al層を下層がκ型結晶で上層がα型結晶の結晶構成とした場合でも、特に前記Al層とTi系被覆層との層界面付近で硬質被覆層の剥離が発生しやすいという問題を解消できずに、鋳鉄のような難削材の断続切削等の大きな衝撃がかかるような切削においては依然として前記Al層の前記界面にてチッピングや硬質被覆層の剥離の発生をなくすことができなかった。すなわち、特許文献1には下側層と上側層でAl粒子の粒径が異なることとAl層の下にTi系被覆層を設けることは記載されているものの、Al層の層厚やAl粒子の粒径についての記載はない。
【0007】
従って、本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、その目的は、特に金属の断続切削等の工具切刃に強い衝撃がかかるような過酷な切削条件においても、硬質被覆層中のTiC、TiNおよびTiCN層の少なくとも1種のTi系被覆層とAl層との層界面付近でチッピングや被覆層の剥離が発生することなく硬質被覆層全体にわたっての密着性を高めることができるとともに、優れた耐欠損性および耐摩耗性を有する長寿命の切削工具を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題に対し、Al層とTi系被覆層との層間密着性を高める方法について検討した結果、Al層の構成を、結晶系がκ型をなし、粒径を1μm以下の微粒としたAl粒子からなる下側Al層と、結晶系がα型をなし、粒径を2μm以上の粗粒としたAl粒子からなる上側Al層との多層構造とすることで、Al層のTi系被覆層との界面における残留応力を低減できるとともにAl層の靭性も高めることができることから、前記Ti系被覆層と前記Al層との層間密着性を向上させることができる結果、特に鋳鉄等の難削材に対して断続切削するような工具切刃に強い衝撃がかかるような過酷な切削条件においても、前記Al層と前記Ti系被覆層との層界面付近のチッピングや層剥離が発生することなく硬質被覆層の強固な密着性を維持でき、高い耐摩耗性および耐欠損性を有する切削工具が得られることを知見した。
【0009】
すなわち、本発明の表面被覆切削工具は、WC基超硬合金からなる母材の表面に、TiN、TiCNおよびTiCの群から選ばれる少なくとも1種の単層または2層以上の複数層のTi系被覆層と、該Ti系被覆層の表面に、結晶系がκ型をなし平均粒径が1μm以下の微粒のAl粒子からなる下側Al層と、結晶系がα型をなし平均粒径が2μm以上の粗粒のAl粒子からなる上側Al層との多層Al層を順次形成することを特徴とするものである。
【0010】
ここで、前記上側Al層の膜厚を2〜5μm、前記下側Al層の膜厚を0.5〜3μmとすることが望ましい。
【0011】
また、前記上側Al層と前記下側Al層の間にTiCO、TiNOおよびTiCNOから選ばれる中間層を1層形成することが望ましい。
【0012】
さらに、前記中間層の膜厚を0.05〜0.3μmとすることが望ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の表面被覆切削工具の一例としての断面模式図である図1を基に説明する。
【0014】
図1によれば、表面被覆切削工具(以下、単に工具と略す。)1は、WC基超硬合金からなる母材2の表面に硬質被覆層3を被着形成したものである。なお、WC基超硬合金としては、炭化タングステン(WC)と、所望により周期律表第4a、5a、6a族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物の群から選ばれる少なくとも1種からなる硬質相をコバルト(Co)および/またはニッケル(Ni)の鉄属金属から成る結合相にて結合した構成からなる。
【0015】
本発明によれば、工具1に成膜される硬質被覆層3の構成として、少なくとも母材2の表面に、TiC層、TiN層およびTiCN層の群から選ばれるいずれかの単層または2層以上の複層で構成したTi系被覆層7を被着形成して、その表面に結晶系がκ型でAl粒子の粒径が1μm以下、特に0.7μm以下の下側Al層6と、結晶系がα型でAl粒子の粒径が2μm以上、特に2〜5μmからなる上側Al層5との多層構造からなるAl層4を被着形成することで、優れた耐摩耗性および耐欠損性を発揮し、長寿命の工具1を得ることができる。
【0016】
すなわち、耐摩耗性の高いα型の結晶系をもつAl層(以下α型Alと称する)の単層にてAl層4を形成すると耐摩耗性を向上することができるものの、Al層4とTi系被覆層7との層間密着性が悪くなりAl層4が剥離してしまい、その剥離した部分を起点とした異常摩耗や切刃の欠損等が発生してしまう恐れがある。一方、κ型の結晶系を持つAl層(以下κ型Alと称する)の単層にてAl層4を形成すると、Ti系被覆層7との層間密着性がよくて層間の剥離をある程度防ぐことができるが、鋳鉄等の重断続切削等のような衝撃の大きな切削に耐えるために十分な層間密着性を有することはできず、また、α型Al層4に対して耐摩耗性が劣るという問題点がある。さらに、Al層を、下側がκ型Al層、上側がα型Al層で上下層とも同じ粒径からなる多層構造とした場合には、下側κ型Al層に残存する残留応力の影響によってTi系被覆層との層間密着性が不十分であり、切削条件によっては欠損しやくなるという不具合が生じる。
【0017】
そこで、本発明の工具1では、図1に示すようにAl層4を結晶系がα型でAl粒子の平均粒径が2μm以上、特に2〜5μmからなる上側Al層5と、結晶系がκ型でAl粒子の平均粒径が1μm以下の下側Al層6からなる多層構造のAl層とすることを特徴とするものである。
【0018】
つまり、Ti系被覆層7と接する下側Al層6の結晶系をκ型とすることに加えて、Al粒子の平均粒径を1μm以下と微粒とすることでAl層4のTi系被覆層7との層間密着性をさらに向上させることができると共に、Al層4の耐摩耗性を向上させることができ、かつ、上側に平均粒径2μm以上のα型Al粒子からなる上側Al層5を配置することで、Al層4の耐摩耗性を向上することができるとともに残留応力を開放しやすくすることができてAl層4全体の耐チッピング性や耐膜剥離性を向上させることができる。
【0019】
ここで、上側Al層5の膜厚を2〜5μmとすることがAl層4の耐剥離性を低下させずに耐摩耗性を向上させることができるため望ましい。
【0020】
さらに、下側Al層6の膜厚を0.5〜3μmとすることがAl層4の付着力を高めるとともにAl層の耐摩耗性を向上させることができる点で望ましい。
【0021】
なお、上側Al層5と下側Al層6との間に結晶系がα型とκ型の混在する中間Al層(図示せず)を形成してもよい。
【0022】
なお、Al層4全体の総膜厚は2.5〜8μmであることが、Al層4の耐剥離性を低下させずに耐摩耗性を向上させることができるため望ましい。
【0023】
また、上側Al層5と下側Al層6の間にTiCO、TiNOまたはTiCNOからなる中間層8を形成することによって、上側Al層5を安定してα型Al結晶とすることができる。なお、中間層8の膜厚は0.05〜0.3μmであることが、耐摩耗性を劣化させずにα型Alを安定して作製でき、上側Al層5の耐摩耗性を安定させることができる点で望ましい。
【0024】
また、Al層4の下に設けるTi系被覆層7は、TiC、TiNおよびTiCNから選ばれる単層、もしくは2層以上からなる複層とすることで、耐欠損性および耐摩耗性に優れるとともに、チッピングや膜剥離等の発生を抑止することができる。特に、Ti系被覆層7を母材表面に垂直な方向に縦長に成長した筋状結晶を成す筋状TiCN層とすることでより耐欠損性、耐摩耗性に優れた硬質被覆層となる。なお、Ti系被覆層7の総膜厚は、5〜12μmとすることが膜剥離を抑えて耐欠損性、耐摩耗性を向上させる点で望ましい。
【0025】
ここで、下側Al層6とTi系被覆層7との間にTiN、TiCN、TiC、TiCNO、TiCO、TiNOの群から選ばれた少なくとも1層の下地層9を有することが、よりAl層4とTi系被覆層7との層間密着性を高めることができ、Al層の剥離を抑えることができ、強い衝撃のかかる切削においての耐欠損性が向上できるため望ましい。
【0026】
また、硬質被覆層3の表層10としてTiN層を形成することによって、工具1が金色を呈するため、工具1を使用したときに変色して工具1が使用済みかどうかの判別がつきやすくなり、また、摩耗の進行を容易に確認できるため望ましい。
【0027】
(製造方法)
上述した工具1を製造するには、まず、上述した硬質合金を焼成によって形成しうる金属炭化物、窒化物、炭窒化物、酸化物等の無機物粉末に、金属粉末、カーボン粉末等を適宜添加、混合し、プレス成形、鋳込成形、押出成形、冷間静水圧プレス成形等の公知の成形方法によって所定の工具形状に成形した後、真空中または非酸化性雰囲気中にて焼成することによって上述した硬質合金母材2を作製する。
【0028】
次に、上記母材2の表面に例えば化学気相蒸着法によって硬質被覆層3を成膜する。Ti系被覆層7として例えばTiCNを成膜する場合の成膜条件は、反応ガス組成として、体積%でTiClガスを0.1〜10体積%、Nガスを0〜60体積%、CHガスを0〜0.1体積%、CHCNガスを0.1〜3体積%、残りがHガスからなる混合ガスを調整して反応チャンバ内に導入し、チャンバ内を800〜1100℃、5〜85kPaにて成膜することにより、母材2の表面に垂直な方向に向かって縦長に成長する筋状結晶を成す筋状TiCN層を形成することができる。
【0029】
また、本発明によれば、引き続き、Al層4を成膜する。
【0030】
まず、下側Al層を成膜するには、AlClガスを3〜20体積%、HClガスを0.5〜3.5体積%、COガスを0.01〜2.0体積%、HSガスを0〜0.01体積%、残りがHガスからなる混合ガスを用い、800〜1000℃、5〜10kPaの条件とすることが望ましい。
【0031】
次に、上側Al層を成膜する前に、中間層8を成膜する。中間層8として例えばTiCNOを成膜する場合は、TiClガスを0.1〜3体積%、CHガスを0.1〜10体積%、COガスを0.01〜5体積%、Nガスを0〜60体積%、残りがHガスからなる混合ガスを順次調整して反応チャンバ内に導入し、チャンバ内を800〜1100℃、5〜85kPaとすればよい。
【0032】
その後、AlClガスを3〜20体積%、HClガスを0.5〜3.5体積%、COガスを0.01〜5.0体積%、HSガスを0〜0.01体積%、残りがHガスからなる混合ガスを用い、1000〜1200℃、5〜10kPaの条件にて下側Al層を成膜する。すなわち、本発明によれば、上側Al層を上記各条件に合わせて下側Al層よりも成膜温度が1000〜1200℃と高い条件とすることが重要であり、また、上記のように中間層8を成膜することがα型Al結晶を安定して生成させることができる点で望ましいものである。
【0033】
また、工具1に表層10を成膜する場合、例えば表層9としてTiN層を成膜するには、反応ガス組成としてTiClガスを0.1〜10体積%、Nガスを0〜60体積%、残りがHガスからなる混合ガスを順次調整して反応チャンバ内に導入し、チャンバ内を800〜1100℃、5〜85kPaとすればよい。
【0034】
【実施例】
(実施例1)
平均粒径1.5μmの炭化タングステン(WC)粉末、平均粒径1.2μmの金属コバルト(Co)粉末および平均粒径2.0μmの周期律表第4a、5a、6a族金属の無機化合物粉末を添加、混合して、プレス成形により切削工具形状(CNMA120412)に成形した後、脱バインダ処理を施し、さらに、1000℃以上を3℃/分の速度で昇温して、0.01Paの真空中、1500℃で1時間焼成して超硬合金を作製した。
【0035】
そして、上記超硬合金に対して、CVD法により表1に示す条件で各種の硬質被覆層を成膜して表2に示す膜構成からなる試料No.1〜10の表面被覆切削工具を作製した。なお、全ての試料においてAl層の表面に表層として表1の条件にてTiN層を膜厚1μmで成膜したが、表2への記載は省略した。
【0036】
また、各試料の各硬質被覆層の膜厚は、試料の破断面を走査型電子顕微鏡写真にて観察し、測定した。さらに、Al層の結晶系の確認は、試料に角度をつけて斜めに研磨し、Al層の各層を微小X線にてXRDをとることによって確認した。さらにまた、斜めに研磨した試料をサーマルエッチングして粒界部分の輪郭を浮き出させた状態で画像解析処理することによりAl層中のAl粒子の平均粒径を測定した。
【0037】
【表1】
Figure 2004291162
【0038】
【表2】
Figure 2004291162
【0039】
そして、この切削工具を用いて下記の条件によりダクタイル鋳鉄の切削を25分間行い、切削工具の切刃の観察を行うとともにフランク摩耗量および先端摩耗量を測定した。
【0040】
(摩耗試験)
被削材 :ダクタイル鋳鉄(FCD450)
工具形状:CNMA120412
切削速度:350m/分
送り速度:0.4mm/rev
切り込み:2mm
その他 :水溶性切削液使用
さらに、溝付き鋼材を用いて下記切削条件により断続試験および膜剥離試験を各試料10個ずつについて行い、欠損時の衝撃回数の平均を比較した。なお、下記断続試験において衝撃回数が1000回に達した時の切刃の状態を顕微鏡にて確認して硬質被覆層の剥離状況を確認し、各試料10個中の剥離した個数をパーセンテージで示した。そして、引き続き切削テストを継続して欠損に至るまでの衝撃回数を測定した。結果は表3に示した。
【0041】
(断続試験)
被削材 :ダクタイル鋳鉄(FCD700)
工具形状:CNMA120412
切削速度:200m/分
送り速度:0.3〜0.5mm/rev
切り込み:2.0mm
その他 :水溶性切削液使用
【0042】
【表3】
Figure 2004291162
【0043】
表2、3より、Al層が単層のκ型Al層からなる試料No.10では、切刃部においてTiCN層とAl層との間での層剥離はある程度抑えられたが、耐摩耗性、耐欠損性共に十分ではなかった。一方、Al層を単層のα型Al層とした試料No.11では、切刃部においてTiCN層とAl層との間での層剥離が発生してしまい、耐欠損性が著しく低下して早期に欠損が発生した。
【0044】
また、下側Al層をκ型、上側Al層をα型として、上側Al層、下側Al層共にAl粒子の粒径を2μm以上の粗粒とした試料No.7では、切刃部の硬質被覆層のうちTiCN層と母材またはAl層との界面で層剥離が発生して耐欠損性が低下し、剥離が起きた場所から異常摩耗が発生して摩耗量も大きくなった。
【0045】
一方、Al層を試料No.7と同じ膜構成として上側Al層、下側Al層共にAl粒子の粒径を1μm以下の微粒とした試料No.8では、TiCN層と母材またはAl層との界面で層剥離はある程度抑えられたが、残留応力によってAl層の強度が低下してしまい、耐欠損性が著しく低下してしまった。
【0046】
また、下側Al層をα型Al、上側Al層をκ型Alとした膜構成をもつ試料No.9では、Al層とTi系被覆層との界面にて膜剥離が発生してしまい、剥離が起きた場所から欠損や異常摩耗が発生してしまい、耐摩耗性、耐欠損性共に悪かった。
【0047】
これに対して、本発明に従い、Al層の下側Al層をκ型、上側Al層をα型として、下側Al層のAl粒子の粒径を1μm以下、上側Al層のAl粒子の粒径を2μm以上とした試料No.1〜6では、いずれも硬質被覆層の剥離が発生せず優れた切削性能を有するものであり、特に、下側Al層と上側Al層の間にTiCNO層を介層した試料No.1〜5では上側Al層がほぼ完全にα型結晶となり、耐欠損性および耐摩耗性も特に高いものであった。
【0048】
【発明の効果】
以上詳述したとおり、本発明の表面被覆切削工具によれば、Al層の構成を、結晶系がκ型をなし、粒径を1μm以下の微粒としたAl粒子からなる下側Al層と、結晶系がα型をなし、粒径を2μm以上の粗粒としたAl粒子からなる上側Al層との多層構造とすることで、Al層のTi系被覆層との界面における残留応力を低減できるとともにAl層の靭性も高めることができることから、前記Ti系被覆層と前記Al層との層間密着性を向上させることができる結果、特に鋳鉄等の難削材に対して断続切削するような工具切刃に強い衝撃がかかるような過酷な切削条件においても、前記Al層と前記Ti系被覆層との層界面付近のチッピングや層剥離が発生することなく硬質被覆層の強固な密着性を維持でき、優れた耐摩耗性および耐欠損性を有する切削工具が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による表面被覆切削工具の膜構成を示す断面模式図である。
【符号の説明】
1: 表面被覆切削工具
2: 母材
3: 硬質被覆層
4: Al
5: 上側Al
6: 下側Al
7: Ti系硬質層
8: 中間層
10: 表層

Claims (4)

  1. WC基超硬合金からなる母材の表面に、TiN、TiCNおよびTiCの群から選ばれる少なくとも1種の単層または2層以上の複数層のTi系被覆層と、該Ti系被覆層の表面に、結晶系がκ型をなし平均粒径が1μm以下のAl粒子からなる下側Al層と、結晶系がα型をなし平均粒径が2μm以上のAl粒子からなる上側Al層との多層Al層を順次形成することを特徴とする表面被覆切削工具。
  2. 前記下側Al層の膜厚を0.5〜3μmとするとともに、前記上側Al層の膜厚を2〜5μmとすることを特徴とする請求項1に記載の表面被覆切削工具。
  3. 前記下側Al層と前記上側Al層の間に、TiCO、TiNOおよびTiCNOの群から選ばれる1種の中間層を1層形成することを特徴とする請求項1または2に記載の表面被覆切削工具。
  4. 前記中間層の膜厚を0.05〜0.3μmとすることを特徴とする請求項3に記載の表面被覆切削工具。
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