JP2004288497A - 固体高分子電解質とその製造方法、およびそれを用いた膜、触媒電極層、膜/電極接合体及び燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】固体高分子電解質として有用なフッ素系電解質膜が高価であることから、代替品として用いられているスルホン酸化された芳香族高分子化合物の有する耐酸化性に劣るという欠点を解消し、フッ素系電解質膜に比して安価なスルホン酸化された芳香族高分子化合物を用いて実用上十分な高耐久特性を有し、しかも製造容易な固体高分子電解質、該固体高分子電解質からなる固体高分子電解質膜、さらには該個体高分子電解質からなる触媒電極層、該電極層を用いた膜/電極接合体と該膜/電極接合体を用いた燃料電池を提供する。
【解決手段】主鎖に下記式(1)で表される構造を有する繰り返し単位からなり該繰り返し単位中の硫黄原子の酸化度xが1.2〜2.0である芳香族炭化水素系高分子の側鎖にプロトン伝導性置換基として下記式(2)のスルホン酸や下記式(3)のスルホンアミドスルホン酸を用いて導入して固体高分子電解質を得る。
(Arは2価の芳香族及びその誘導体,xは硫黄原子の酸化度を示す)
(式2,式3のR1,R2はアルキル基及びその誘導体,芳香族基及びそれらの誘導体等をあらわす)
【選択図】 なし
【解決手段】主鎖に下記式(1)で表される構造を有する繰り返し単位からなり該繰り返し単位中の硫黄原子の酸化度xが1.2〜2.0である芳香族炭化水素系高分子の側鎖にプロトン伝導性置換基として下記式(2)のスルホン酸や下記式(3)のスルホンアミドスルホン酸を用いて導入して固体高分子電解質を得る。
(Arは2価の芳香族及びその誘導体,xは硫黄原子の酸化度を示す)
(式2,式3のR1,R2はアルキル基及びその誘導体,芳香族基及びそれらの誘導体等をあらわす)
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料電池、水電解、ハロゲン化水素酸電解、食塩電解、酸素濃縮器、湿度センサー、ガスセンサー等に用いられる電解質膜等に好適な耐酸化性等に優れた低コスト高耐久性固体高分子電解質、それを用いた触媒電極層、固体高分子電解質膜及び該固体高分子膜を用いた燃料電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
固体高分子電解質は高分子鎖中にスルホンアミド基、スルホン酸基等の電解質基を有する固体高分子材料であり、特定のイオンと強固に結合して、陽イオン又は陰イオンを選択的に透過する性質を有していることから、粒子、繊維、あるいは膜状に成形し、電気透析、拡散透析、電池隔膜等、各種の用途に利用されている。
【0003】
燃料電池はプロトン伝導性の固体高分子電解質膜の両面に一対の電極を設け、水素ガスやメタノールなどを燃料として一方の電極(燃料極)へ供給し、酸素ガスあるいは空気を酸化剤として他方の電極(空気極)へ供給し、起電力を得るものである。また、水電解は、固体高分子電解質膜を用いて水を電気分解することにより水素と酸素を製造するものである。
【0004】
ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)の商品名で知られる高いプロトン伝導性を有するパーフルオロスルホン酸膜に代表されるフッ素系電解質膜は化学的安定性に優れていることから燃料電池や水電解等の固体高分子電解質膜として、広く使用されている。
【0005】
また、食塩電解は固体高分子電解質膜を用いて塩化ナトリウム水溶液を電気分解することにより、水酸化ナトリウム、塩素と水素を製造するものである。この場合、固体高分子電解質膜は塩素と高温、高濃度の水酸化ナトリウム水溶液にさらされるので、これらに対する耐性の乏しい炭化水素系電解質膜を使用することができない。そのため、食塩電解用の固体高分子電解質膜には、一般に、塩素及び高温、高濃度の水酸化ナトリウム水溶液に対して耐性があり、さらに、発生するイオンの逆拡散を防ぐために表面に部分的にカルボン酸基を導入したパーフルオロスルホン酸膜が用いられている。
【0006】
ところで、パーフルオロスルホン酸膜に代表されるフッ素系電解質は、C−F結合を有しているために化学的安定性が非常に大きく、上述した燃料電池用、水電解用、あるいは食塩電解用の固体高分子電解質膜の他、ハロゲン化水素酸電解用の固体高分子電解質膜としても用いられ、さらにはプロトン伝導性を利用して、湿度センサー、ガスセンサー、酸素濃縮器等にも広く応用されている。
【0007】
しかしながら、フッ素系電解質は製造が困難で、非常に高価であるという欠点がある。そのため、フッ素系電解質膜は、宇宙用あるいは軍用の固体高分子型燃料電池等、限られた用途に用いられ、自動車用の低公害動力源としての固体高分子型燃料電池等、民生用への応用を困難なものとしていた。
【0008】
そこで、安価な固体高分子電解質膜として、エンジニアリングプラスチックに代表される芳香族炭化水素系高分子をスルホン酸化した電解質膜が提案された。(例えば、特許文献1、2、3、4、5参照)。これらエンジニアリングプラスチックをスルホン酸化した芳香族炭化水素系電解質膜をナフィオンに代表されるフッ素系電解質膜と比較すると、製造が容易で低コストという利点がある。しかし、耐酸化性という面で非常に弱いという欠点も有している。
【0009】
非特許文献1によると、例えばスルホン酸化ポリエーテルエーテルケトンやポリエーテルスルホンはスルホン酸に隣接したエーテル部位から劣化すると報告している。このことから、スルホン酸の近傍に電子供与性基が存在すると、そこから酸化劣化が開始すると考えられる。そこで耐酸化性の向上を目的として、特許文献6に主鎖が電子吸引性基と芳香族環のみからなるスルホン酸化ポリフェニレンスルホンが、非特許文献2にスルホン基の隣接部位にスルホン酸を導入したスルホン酸化ポリスルホンが提案された。
【0010】
だが、特許文献7によると、芳香族炭化水素系電解質膜の劣化は酸化劣化以外にも、芳香族環に直接結合しているプロトン伝導性置換基であるスルホン酸基が、強酸、高温下において脱離してイオン伝導率が低下することも一因として考えられ、特許文献6や非特許文献2にあるようなスルホン酸化ポリフェニレンスルホンやスルホン酸化ポリスルホンではスルホン酸の脱離による劣化が避けられない。従って、プロトン伝導性置換基がスルホン酸であることは望ましくなく、特許文献7ではスルホン酸の代わりにアルキルスルホン酸を用いることを提案している。こちらはスルホン酸の脱離によるイオン伝導率の低下の改善には有効だが、使用する芳香族高分子の主鎖に電子供与性基が含まれ、耐酸化性に劣っている。
【0011】
【特許文献1】
特開平6−93114号公報
【0012】
【特許文献2】
特開平9−245818号公報
【0013】
【特許文献3】
特開平11−116679号公報
【0014】
【特許文献4】
特表平11−510198号公報
【0015】
【特許文献5】
特表平11−515040号公報
【0016】
【特許文献6】
特開2000−80166号公報
【0017】
【特許文献7】
特開2002−110174号公報
【0018】
【非特許文献1】
高分子論文集 Vol.59、No.8、460〜473頁
【0019】
【非特許文献2】
Journal of Polymer Science:PartA:Polymer Chemistry,Vol.34、2421−2438(1996)
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、固体高分子電解質として有用なフッ素系電解質膜が高価であることから、代替品として用いられているスルホン酸化された芳香族高分子化合物の有する耐酸化性に劣るという欠点を解消し、フッ素系電解質膜に比して安価なスルホン酸化された芳香族高分子化合物を用いて実用上十分な高耐久特性を有し、しかも製造容易な固体高分子電解質、該固体高分子電解質からなる固体高分子電解質膜、さらには該個体高分子電解質からなる触媒電極層、該電極層を用いた膜/電極接合体と該膜/電極接合体を用いた燃料電池を提供することにある。
【0021】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、主鎖に下記式(1)で表される構造を有する繰り返し単位からなり該繰り返し単位中の硫黄原子の酸化度xが1.2〜2.0である芳香族炭化水素系高分子の側鎖にプロトン伝導性置換基として、下記式(2)のR1で表される基を有するスルホン酸や下記式(3)のスルホンアミドとスルホンの間にR2で表される基を有するスルホンアミドスルホン酸を用いることで可能になることが明らかになった。
【0022】
【化5】
【0023】
【化6】
【0024】
【化7】
【0025】
これは、芳香族炭化水素系高分子の主鎖に耐酸化性の高いスルホン基を含み、かつ劣化を受けやすいエーテル結合などの電子供与性基を含まないため、芳香族炭化水素系高分子が酸化劣化しにくく、かつ芳香族系炭化水素系高分子の主鎖に直接スルホン酸が導入されていないので、すなわちR1やR2がいわゆるスペーサーとしての機能を果たし、スルホン酸が脱離しにくいことを要旨とするもので、実用上十分な耐久性を有し、しかも経済的な固体高分子電解質を得ることが可能となる。
【0026】
さらに、該固体高分子電解質からなる固体高分子電解質膜又は、該固体高分子電解質と触媒電極とからなる触媒電極層、さらにはその触媒電極層と該固体高分子電解質を用いた膜/電極接合体であり、該膜/電極接合体を用いた燃料電池を提供することである。
【0027】
【発明の実施の形態】
本発明の固体高分子電解質は主鎖に主成分としてスルホン基と芳香族環からなる炭化水素系高分子にR1で表されるスペーサー構造を介してスルホン酸基を導入するか、あるいはスルホンアミドとスルホンの間にR2で表されるスペーサー構造を介したスルホンアミドスルホン酸基を導入した固体高分子電解質であれば特に制限は無く、少量の共重合成分やプロトン伝導性置換基として少量のスルホン酸やホスホン酸基を含んでいても構わない。
【0028】
ここで言うスルホン基とは主鎖に含まれる硫黄原子の酸化度xが1.2〜2.0であることを示す。更には、酸化度xが1.5〜2.0であることが好ましい。硫黄原子の酸化度xが1.2以下だと固体高分子電解質が十分な耐酸化性を発揮することができず、酸化劣化してしまう。なお、硫黄原子の酸化度xはNMR、元素分析等で求めることができる。
【0029】
これらを満たす芳香族炭化水素系高分子の具体例としては、下記式(5)で代表される構造単位を有する硫黄原子の酸化度が2.0であるポリフェニレンスルホン(PPSO)がある(以降、スルホン基と芳香族環を主成分とする芳香族炭化水素系高分子をPPSO系高分子と呼ぶ)。
【0030】
【化8】
【0031】
プロトン伝導性置換基には式(2)のR1で表される基を有するスルホン酸基やスルホンアミドとスルホン酸の間に式(3)のR2で表される基を有するスルホンアミドスルホン酸基を用いる。芳香族環に直接スルホン酸基を導入した場合には、強酸、高温下においてスルホン酸基が脱離してイオン交換能が低下するからである。また、これらスルホン酸基やスルホンアミドスルホン酸基のカウンターイオンは必ずしもプロトンに限らず、少量のアンモニウムイオンや金属イオンを含んでいても構わない。
【0032】
ここで言うR1またはR2で表される基は芳香族炭化水素系高分子とスルホン酸基やスルホンアミドスルホン酸基を結合できれば特に構わない。例として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基などのアルキル基や、フェニル基、ナフタレン基などの芳香族置換基が挙げられる。
【0033】
PPSO系高分子に式(2)のスルホン酸や式(3)のスルホンアミドスルホン酸のプロトン伝導性置換基を結合させる際に用いる方法には、特に制限はないが、具体的な手段として、ポリアリーレンスルフィドに、アルキルハロゲンやアリールハロゲンを導入し、ハロゲンをスルホン酸に変換する方法や、フリーデルクラフツ反応でスルトン化合物を反応させる方法でスルホン酸化する方法や、PPSをクロロ硫酸などによって、スルホニルクロリド化した後、アミノスルホン酸と反応させてスルホンアミド結合を作る方法が好適である。なお、アルキル基やフッ素系アルキル基の炭素数は1〜12であることが望ましい。
【0034】
式(2)のスルホン酸を作るのに使用するスルトンには、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、1,5−ペンタンスルトン、1,6−ヘキサンスルトン及び2−メチル−1,3−プロパンスルトンなどの誘導体やスルトンの水素を一部もしくは全部フッ素に置き換えたフルオロスルトン及びその誘導体がある。
【0035】
式(3)のスルホンアミドスルホン酸を作るのに使用するアミノスルホン酸には、アミノメタンスルホン酸、アミノエタンスルホン酸(タウリン)、アミノプロパンスルホン酸、アミノブタンスルホン酸、アミノペンタンスルホン酸、アミノヘキサンスルホン酸などのアミノアルキルスルホン酸及び2−メチルアミノエタンスルホン酸などの誘導体、アミノアルキルスルホン酸の脂肪鎖の水素原子を一部もしくは全部フッ素に置き換えたアミノフルオロアルキルスルホン酸及びその誘導体、アミノベンゼンスルホン酸、アミノナフタレンスルホン酸、ジフェニルアミンスルホン酸などの芳香族アミノスルホン酸及び2−メチル−4−スルホン酸アミノベンゼンなどの誘導体がある。
【0036】
酸化剤に特に制限はなく、オキソン(Du Pont社製)、過酢酸、過酸化水素、次亜塩素酸塩、硫酸、塩素、塩化チオニル、二酸化窒素、三酸化クロム、過マンガン酸アルカリ、硝酸、有機化酸化物などが使用される。
【0037】
また、PPSO系高分子に式(2)のスルホン酸や式(3)のスルホンアミドスルホン酸を導入する方法は、上述のようにポリアリーレンスルフィドから高分子反応を用いる方法に限らず、ジハロゲン化アリーレンスルホンに式(2)のスルホン酸や式(3)のスルホンアミドスルホン酸を導入したものを重合する方法もある。
【0038】
式(2)のスルホン酸や式(3)のスルホンアミドスルホン酸を導入する芳香族炭化水素系高分子化合物は分子量が100〜1000であることが望ましい。分子量が高すぎると溶解への溶解度が低く、溶液重合に適さないからである。なお、ジハロゲン化アリーレンスルホンに式(2)のようなスペーサー構造を挟んだスルホン酸を導入する方法には、特に制限はないが、具体的にはジクロロアリーレンスルホンにアルキルハロゲンやアリールハロゲンを導入し、ハロゲンをスルホン酸に変換する方法や、フリーデルクラフツ反応でスルトン化合物を反応させる方法がある。また、ジハロゲン化アリーレンスルホンをスルホンアミドスルホン酸化する方法には、特に制限はないが、ジハロゲン化アリーレンスルホンをクロロ硫酸などによって、スルホニルクロリド化した後、スペーサーを含むアミノスルホン酸と反応させてスルホンアミド結合を作る方法が好適である。なお、アルキル基やフッ素系アルキル基の炭素数は1〜12であることが望ましい。
【0039】
式(2)のスペーサー構造を挟んだスルホン酸を作るのに使用するスルトンには、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、1,5−ペンタンスルトン、1,6−ヘキサンスルトン及び2−メチル−1,3−プロパンスルトンなどの誘導体やスルトンの水素を一部もしくは全部フッ素に置き換えたフルオロスルトン及びその誘導体がある。
【0040】
式(3)のようなスペーサー構造を挟んだスルホンアミドスルホン酸を作るのに使用するアミノスルホン酸には、アミノメタンスルホン酸、アミノエタンスルホン酸(タウリン)、アミノプロパンスルホン酸、アミノブタンスルホン酸、アミノペンタンスルホン酸、アミノヘキサンスルホン酸などのアミノアルキルスルホン酸及び2−メチルアミノエタンスルホン酸などの誘導体、アミノアルキルスルホン酸の脂肪鎖の水素原子を一部もしくは全部フッ素に置き換えたアミノフルオロアルキルスルホン酸及びその誘導体、アミノベンゼンスルホン酸、アミノナフタレンスルホン酸、ジフェニルアミンスルホン酸などの芳香族アミノスルホン酸及び2−メチル−4−スルホン酸アミノベンゼンなどの誘導体がある。
【0041】
ジハロゲン化アリーレンスルホンには、4、4‘−ジクロロジフェニルスルホン、4、4’−ジブロモジフェニルスルホン、4、4‘−ジヨードジフェニルスルホン、ジクロロジビフェニルスルホン、ジクロロジナフチルスルホン、ジクロロアントラニルニルスルホンなどがある。また、芳香族環にニトロ基や、シアノ基、フッ素化アルキル基などの電子吸引基を導入しても構わない。ジハロゲン化アリーレンスルホンを重合し、PPS系高分子を合成する方法に、特に制限はないが、ニッケル錯体などの金属錯体触媒を用いて重合することができる。
【0042】
芳香族環は2価の芳香族環であれば問題なく、下記式(4)で表されされるような構造をしているのが好ましい。更には、炭素数が6〜18であることが望ましい。また、芳香族環にニトロ基や、シアノ基、フッ素化アルキル基などの電子吸引基を導入しても構わない。
【0043】
【化9】
【0044】
該高分子電解質はこれらのスルホン酸やスルホンアミドスルホン酸をプロトン伝導性置換基として有するPPSO系高分子を主成分とする。すなわち、通常の高分子に使用される可塑剤、安定剤、離型剤等の添加剤を本発明の目的に反しない範囲内で使用できる。また、該高分子電解質の機械的強度の向上のために、スルホン酸化PPSO系高分子やスルホンアミド化スルホン酸PPSO系高分子とPPSO系高分子を混合しても良い。
【0045】
本発明で用いられる高分子電解質のイオン交換基当量重量は150〜2500g/molが好適である。更にはイオン交換基当量重量は200〜1500g/molであることが好適であり、更に300〜1000g/molが好適である。イオン交換基当量重量が2500g/molを越えると該高分子電解質のイオン伝導度が低くなり出力性能が低下し、150g/molより低いと該高分子電解質の耐水性が低下し、それぞれ好ましくない。
【0046】
なお、本発明でイオン交換基当量重量とは、導入されたスルホン酸基やスルホンアミドスルホン酸基単位モルあたりのPPSO系高分子の分子量を表し、値が小さいほどスルホン酸化が多く導入されていることを示す。イオン交換基当量重量は、1H−NMRスペクトロスコピー、元素分析、特表平1−52866号公報明細書に記載の酸塩基滴定、非水酸塩基滴定(規定液はカリウムメトキシドのベンゼン・メタノール溶液)等により測定が可能である。
【0047】
スルホン酸やスルホンアミドスルホン酸を導入した該高分子電解質のイオン交換基当量重量を150〜2500g/molに制御する方法としては、芳香族炭化水素系高分子のスルホン酸化率やスルホニルクロリド化率を制御することによって可能となる。これはスルホン酸化剤、もしくはスルホニルクロリド剤の添加比、反応温度、反応時間などを制御すればよい。なお、スルホニルクロリド化する際に、溶媒は使用してもしなくても構わない。
【0048】
本発明で用いられる高分子電解質を燃料電池用として使用する際には、通常膜の状態で使用される。スルホン酸もしくはスルホンアミド化スルホン酸を導入したPPSO系高分子を膜へ転化する方法に特に制限はないが、溶液状態より製膜する方法(溶液キャスト法)、溶融状態より製膜する方法(溶融プレス法もしくは溶融押し出し法)、PPS系高分子膜に酸化剤を用いて酸化する方法(後酸化法)等が可能である。具体的に溶液キャスト法については、例えばポリマー溶液をガラス板上に流延塗布し、溶媒を除去することにより製膜する。製膜に用いる溶媒は、高分子を溶解し、その後に除去し得るものであるならば特に制限はなく、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒、あるいはエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル、ジクロロメタン、トリクロロエタン等のハロゲン系溶媒、i−プロピルアルコール、t−ブチルアルコール等のアルコールが好適に用いられる。また、後酸化法に付いては、溶液キャスト法で製膜したPPS系高分子を酸化剤を溶かした溶液に含浸することで酸化する。ここで用いられる酸化剤には特に制限はなく、オキソン(Du Pont社製)、過酢酸、過酸化水素、次亜塩素酸塩、硫酸、塩素、塩化チオニル、二酸化窒素、三酸化クロム、過マンガン酸アルカリ、硝酸、有機化酸化物などが使用される。
【0049】
該高分子電解質膜の厚みは特に制限はないが10〜200μmが好ましい。特に30〜100μmが好ましい。実用に耐える膜の強度を得るには10μmより厚い方が好ましく、膜抵抗の低減つまり発電性能向上のためには200μmより薄い方が好ましい。溶液キャスト法の場合、膜厚は溶液濃度あるいは基板上への塗布厚により制御できる。溶融状態より製膜する場合、膜厚は溶融プレス法あるいは溶融押し出し法等で得た所定厚さのフィルムを所定の倍率に延伸することで膜厚を制御できる。
【0050】
触媒電極層は、スルホン酸もしくはスルホンアミド化スルホン酸を導入したPPSO系高分子を電解質膜作成に使用した溶媒に溶解させ、これを用いて触媒電極同士を接合することで作成する。
【0051】
ここでの触媒電極は、触媒金属の微粒子を導電材に担持することで作成できる。触媒電極に使用される触媒金属としては、水素の酸化反応および酸素の還元反応を促進する金属であればいずれのものでもよく、例えば、白金、金、銀、パラジウム、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、鉄、コバルト、ニッケル、クロム、タングステン、マンガン、バナジウム、あるいはそれらの合金が挙げられる。特に白金が多くの場合用いられる。触媒となる金属の粒径は、通常は10〜300オングストロームである。これらの触媒はカーボン等の担体に付着させた方が触媒の使用量が少なくコスト的に有利である。触媒の担持量は電極が成形された状態で0.01〜10mg/cm2 が好ましい。
【0052】
導電材としては、電子伝導性物質であればいずれのものでも良く、例えば各種金属や炭素材料などが挙げられる。炭素材料としては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、およびアセチレンブラック等のカーボンブラック、活性炭、黒鉛等が挙げられ、これらが単独あるいは混合して使用される。
【0053】
これら導電材に触媒金属を担持させる方法としては、触媒金属を還元法により導電材(主に炭素材料の場合に使用)の表面に析出させる方法や、溶剤に触媒金属を懸濁させ、これを導電材表面に塗布する方法などがある。
【0054】
膜/電極接合体は、スルホン酸もしくはスルホンアミド化スルホン酸を導入したPPSO系高分子を電解質膜作成に使用した溶媒に溶解させた溶液を触媒電極層に塗布し、電解質膜と接合させることで作成する。
【0055】
燃料電池は、以上のように形成された膜/電極接合体の外側にセパレータと呼ばれる燃料流路もしくは酸化剤流路を形成する溝付きの集電体を配したものを単セルとし、この様な単セルを複数個、冷却板等を介して積層することにより構成される。燃料電池は高い温度で作動させる方が電極の触媒活性が上がり電極過電圧が減少するため望ましいが、電解質膜は水分がないと機能しないため、水分管理が可能な温度で作動させる必要がある。燃料電池の作動温度の好ましい範囲は室温〜100℃である。
【0056】
以下実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、各物性の測定条件は次の通りである。
[イオン交換基当量重量測定]
イオン交換基当量重量測定しようとする本発明のスルホン酸もしくはスルホンアミド化スルホン酸を導入したPPSO系高分子を密閉できるガラス容器中に精秤(a(グラム))し、そこに過剰量の塩化カルシウム水溶液を添加して一晩撹拌した。系内に発生した塩化水素を0.1Nの水酸化ナトリウム標準水溶液(力価f)にて、指示薬にフェノールフタレインを用いて滴定(b(ml))した。イオン交換基当量重量(g/mol)は下式より求めた。
イオン交換基当量重量=(1000×a)/(0.1×b×f)
[イオン伝導度測定]
本発明の電解質膜を、電気化学インピーダンス測定装置(ソーラトロン製、SI1287)を用いて周波数0.1Hz〜65kHzの領域で4端子インピーダンス測定をし、イオン伝導度を測定した。なお、上記測定で電解質膜は水蒸気雰囲気下、75℃にて保存された。
[耐酸化性試験]
本発明の電解質膜を、30%過酸化水素水20mlに硫酸鉄7水和物1.9mgを加えることからなる60℃に加熱したフェントン試薬(鉄40ppmを含む)に浸漬させ、電解質膜がフェントン試薬に溶解するに至る時間を求めた。
[耐湿熱試験]
本発明の電解質膜を、1mol/lの硫酸に浸漬させ、100℃で30日間還流保存し、試験前と試験後でイオン交換基当量が変化したかを測定した。
[燃料電池単セル性能評価]
膜/電極接合体を評価セルに組み込み、燃料電池出力性能を評価した。反応ガスには、水素/酸素を用い、共に1気圧の圧力にて、70℃の水バブラーを通して加湿した後、評価セルに供給した。ガス流量は水素60ml/min、酸素40ml/min、セル温度は75℃とした。電池出力性能は、H201B充放電装置(北斗電工製)により評価した。
【0057】
【実施例】
[実施例1]
(1)プロピルスルホン酸化ポリフェニレンスルホンの合成
撹拌機、温度計、塩化カルシウム管を接続した還流冷却器をつけた500mlの四つ口丸底フラスコの内部を窒素置換した後、乾燥した10.8gのポリフェニレンスルフィド(PPS)(ポリプラスチック社製フォートロン)、乾燥した100mlのクロロホルム、の3.6gの1,3−プロパンスルトンを入れた。容器を60℃に保ち撹拌しながら約30分かけて4.0gの無水塩化アルミニウムを加えた。添加終了後、60℃で5時間還流攪拌した。生じた沈殿物をミキサーによる脱イオン水洗浄と吸引濾過による回収操作を、濾液が中性になるまで繰り返した後、120℃にて一晩減圧乾燥してプロピルスルホン酸化ポリフェニレンスルフィドを得た。
【0058】
得られたプロピルスルホン酸化ポリフェニレンスルフィドを160gのオキソン(Du Pont社製)、500gの水、37gの酢酸からなる酸化液に入れ、80℃で8時間攪拌した。生じた沈殿物をミキサーによる脱イオン水洗浄と吸引濾過による回収操作を、濾液が中性になるまで繰り返した後、120℃にて一晩減圧乾燥した。
【0059】
得られたプロピルスルホン酸化ポリフェニレンスルホンのイオン交換基当量重量は590g/molであった。硫黄原子の酸化度xは1.9であった。
(2)電解質膜の作製
前記(1)で得られた生成物を10重量%の濃度になるようにN−メチルピロリドンに溶解した。この溶液をドクターナイフによりガラス上に展開し、乾燥することで、膜厚40μmの電解質膜を作成した。
(3)触媒電極層、膜/電極接合体、燃料電池の作製
40重量%の白金担持カーボンに、前記(2)の10重量%濃度のN−メチ、ルピロリドン溶液を、白金担持カーボンと高分子電解質との重量比が2:1となるように添加し、均一に分散させてペースト(電極触媒被覆用溶液)を調整した。この電極触媒被覆用溶液を前記(2)で得られた電解質膜の両側に塗布した後、乾燥して白金担持量0.25mg/cm2の膜/電極接合体を作製した。これを用いて、燃料電池単セル性能評価をしたところ40mWの出力を示した。
【0060】
[比較例1]
(1)プロピルスルホン酸化ポリフェニレンスルフィドの合成
実施例1に示した方法でプロピルスルホン酸化ポリフェニレンスルフィドを合成した。得られたプロピルスルホン酸化ポリフェニレンスルフィドのイオン交換基当量重量は490g/molであった。硫黄原子の酸化度xは0であった。
(2)電解質膜の作製
実施例1と同様にして、膜厚40μmの電解質膜を作成した。
【0061】
[比較例2]
(1)スルホン酸化ポリフェニレンスルホンの合成
撹拌機、温度計、塩化カルシウム管を接続した還流冷却器をつけた500mlの四つ口丸底フラスコの内部を窒素置換した後、200mlのクロロ硫酸をいれた。5℃に維持して撹拌しながら10.8gのPPSを溶解させた。30分の攪拌後、反応溶液を10lの脱イオン水にゆっくりと滴下することでスルホニルクロリド化ポリフェニレンスルフィドを析出させ、濾過回収した。生じた沈殿物をミキサーによる脱イオン水洗浄と吸引濾過による回収操作を、濾液が中性になるまで繰り返した後、120℃にて一晩減圧乾燥した。
【0062】
実施例1に示す酸化法でスルホニルクロリド化ポリフェニレンスルフィドを酸化し、同時にスルホニルクロリド基をスルホン酸基に加水分解することでスルホン酸化ポリフェニレンスルホンを得た。得られたスルホン酸化ポリフェニレンスルホンのイオン交換基当量重量は540g/molであった。硫黄原子の酸化度xは1.9であった。
(2)電解質膜の作製
実施例1と同様にして、膜厚40μmの電解質膜を作成した。
【0063】
[実施例2]
(1)ブチルスルホン酸化ポリフェニレンスルホンの合成
実施例1の1,3−プロパンスルトンの代わりに1,4−ブタンスルトンを使用した以外は実施例1と同様に合成した。得られたブチルスルホン酸化ポリフェニレンスルホンのイオン交換基当量重量は600g/molであった。硫黄原子の酸化度xは1.9であった。
(2)電解質膜の作製
実施例1と同様にして、膜厚40μmの電解質膜を作成した。
(3)触媒電極層、膜/電極接合体、燃料電池の作製
実施例1と同様にして、白金担持量0.25mg/cm2の膜/電極接合体を作製した。これを用いて、燃料電池単セル性能評価をしたところ40mWの出力を示した。
【0064】
[実施例3]
(1)エチルスルホン酸スルホンアミド化ポリフェニレンスルホンの合成
撹拌機、温度計、塩化カルシウム管を接続した還流冷却器をつけた500mlの四つ口丸底フラスコの内部を窒素置換した後、200mlのクロロ硫酸をいれた。5℃に維持して撹拌しながら10.8gのPPSを溶解させた。30分の攪拌後、反応溶液を10lの脱イオン水にゆっくりと滴下することでスルホニルクロリド化ポリフェニレンスルフィドを析出させ、濾過回収した。生じた沈殿物をミキサーによる脱イオン水洗浄と吸引濾過による回収操作を、濾液が中性になるまで繰り返した後、120℃にて一晩減圧乾燥した。
【0065】
得られたスルホニルクロリド化ポリフェニレンスルフィドを100mlの水、20gの炭酸カリウム、3.75gのタウリンからなる反応液に入れ、70℃で48時間攪拌した。ここに1N塩酸を中和されるまで加えた。生じた沈殿物をミキサーによる脱イオン水洗浄と吸引濾過による回収操作を、濾液が中性になるまで繰り返した後、120℃にて一晩減圧乾燥し、エチルスルホン酸スルホンアミド化ポリフェニレンスルフィドを得た。
【0066】
実施例1に示す酸化法でエチルスルホン酸スルホンアミド化ポリフェニレンスルフィドを酸化し、エチルスルホン酸スルホンアミド化ポリフェニレンスルホンを得た。得られたエチルスルホン酸スルホンアミド化ポリフェニレンスルホンのイオン交換基当量重量は610g/molであった。また、硫黄原子の酸化度xは1.9であった。
(2)電解質膜の作製
実施例1と同様にして、膜厚40μmの電解質膜を作成した。
(3)触媒電極層、膜/電極接合体、燃料電池の作製
実施例1と同様にして、白金担持量0.25mg/cm2の膜/電極接合体を作製した。これを用いて、燃料電池単セル性能評価をしたところ40mWの出力を示した。
【0067】
[実施例4]
(1)プロピルスルホン酸化ポリビフェニレンスルホンの合成
撹拌機、温度計、塩化カルシウム管を接続した還流冷却器をつけた500mlの四つ口丸底フラスコの内部を窒素置換した後、28.7gの4,4‘−ジクロロジフェニルスルホン、乾燥した100mlのクロロホルム、9.6gの1,3−プロパンスルトンを入れた。容器を60℃に保ち撹拌しながら約30分かけて13.2gの無水塩化アルミニウムを加えた。添加終了後、60℃で5時間還流攪拌した。生じた沈殿物をミキサーによる脱イオン水洗浄と吸引濾過による回収操作を、濾液が中性になるまで繰り返した後、120℃にて一晩減圧乾燥してプロピルスルホン酸化4,4‘−ジクロロジフェニルスルホンを得た。
【0068】
4.1gのプロピルスルホン酸化4,4‘−ジクロロジフェニルスルホンを70mlの乾燥したジメチルホルムアミドに溶解させ、2.8gのニッケル(シクロオクタジエン)錯体と1.6gのビピリジンと1.5gのシクロオクタジエンを加え、60℃で8時間攪拌した。生じた沈殿物をミキサーによる脱イオン水洗浄と吸引濾過による回収操作を繰り返した後、120℃にて一晩減圧乾燥した。
得られたプロピルスルホン酸化ポリビフェニレンスルホンのイオン交換基当量重量は340g/molであった。硫黄原子の酸化度xは2.0であった。
【0069】
(2)電解質膜の作製
前記(1)で得られた生成物を10重量%の濃度になるようにN−メチルピロリドンに溶解した。この溶液をドクターナイフによりガラス上に展開し、乾燥することで、膜厚40μmの電解質膜を作成した。
【0070】
(3)触媒電極層、膜/電極接合体、燃料電池の作製
40重量%の白金担持カーボンに、前記(2)の10重量%濃度のN−メチ、ルピロリドン溶液を、白金担持カーボンと高分子電解質との重量比が2:1となるように添加し、均一に分散させてペースト(電極触媒被覆用溶液)を調整した。この電極触媒被覆用溶液を前記(2)で得られた電解質膜の両側に塗布した後、乾燥して白金担持量0.25mg/cm2の膜/電極接合体を作製した。これを用いて、燃料電池単セル性能評価をしたところ40mWの出力を示した。
【0071】
[実施例5]
(1)エチルスルホン酸スルホンアミド化ポリフェニレンスルホンの合成
撹拌機、温度計、塩化カルシウム管を接続した還流冷却器をつけた500mlの四つ口丸底フラスコの内部を窒素置換した後、28.7gの4,4‘−ジクロロジフェニルスルホンと200mlのクロロ硫酸を加えた。容器を60℃に保ちながら10時間還流攪拌した。反応溶液を10lの脱イオン水にゆっくりと滴下することでスルホニルクロリド化4,4’−ジクロロジフェニルスルホンを析出させ、濾過回収した。生じた沈殿物をミキサーによる脱イオン水洗浄と吸引濾過による回収操作を、濾液が中性になるまで繰り返した後、120℃にて一晩減圧乾燥した。
【0072】
4.0gのスルホニルクロリド化4,4’−ジクロロジフェニルスルホンを100mlの水、40gの炭酸カリウム、1.25gのタウリンからなる反応液に入れ、70℃で48時間攪拌した。ここに1N塩酸を中和されるまで加えた。生じた沈殿物をミキサーによる脱イオン水洗浄と吸引濾過による回収操作を、濾液が中性になるまで繰り返した後、120℃にて一晩減圧乾燥し、エチルスルホン酸スルホンアミド化4,4’−ジクロロジフェニルスルホンを得た。
【0073】
実施例4に示したの重合法と同じ方法でエチルスルホン酸スルホンアミド化4,4’−ジクロロジフェニルスルホンを重合し、エチルスルホン酸スルホンアミド化ポリビフェニレンスルホンを得た。得られたエチルスルホン酸スルホンアミド化ポリビフェニレンスルホンのイオン交換基当量重量は410g/molであった。硫黄原子の酸化度xは2.0であった。
【0074】
(2)電解質膜の作製
実施例1と同様にして、膜厚40μmの電解質膜を作成した。
【0075】
(3)触媒電極層、膜/電極接合体、燃料電池の作製
実施例1と同様にして、白金担持量0.25mg/cm2の膜/電極接合体を作製した。これを用いて、燃料電池単セル性能評価をしたところ40mWの出力を示した。
【0076】
以上の実施例1〜5、比較例1〜2に関して、耐酸化性試験、耐湿熱試験、イオン伝導度測定を行なった。この評価結果を表1に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
【発明の効果】
本発明に係るスルホン酸もしくはスルホンアミド化スルホン酸が導入されたPPSO系高分子電解質はパーフロロスルホン酸膜に代表されるフッ素系電解質膜に比べ、コストは非常に安価で、主鎖にスルホン基と芳香環を主成分に含み、主鎖に直接スルホン酸が導入されていないことによって、耐久性特に耐酸化性と耐湿熱性に優れた高分子電解質が得られる。また本発明に係るPPSO系電解質を用いた膜、触媒電極層、膜/電極接合体、燃料電池は実用上十分な性能を示す。
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料電池、水電解、ハロゲン化水素酸電解、食塩電解、酸素濃縮器、湿度センサー、ガスセンサー等に用いられる電解質膜等に好適な耐酸化性等に優れた低コスト高耐久性固体高分子電解質、それを用いた触媒電極層、固体高分子電解質膜及び該固体高分子膜を用いた燃料電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
固体高分子電解質は高分子鎖中にスルホンアミド基、スルホン酸基等の電解質基を有する固体高分子材料であり、特定のイオンと強固に結合して、陽イオン又は陰イオンを選択的に透過する性質を有していることから、粒子、繊維、あるいは膜状に成形し、電気透析、拡散透析、電池隔膜等、各種の用途に利用されている。
【0003】
燃料電池はプロトン伝導性の固体高分子電解質膜の両面に一対の電極を設け、水素ガスやメタノールなどを燃料として一方の電極(燃料極)へ供給し、酸素ガスあるいは空気を酸化剤として他方の電極(空気極)へ供給し、起電力を得るものである。また、水電解は、固体高分子電解質膜を用いて水を電気分解することにより水素と酸素を製造するものである。
【0004】
ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)の商品名で知られる高いプロトン伝導性を有するパーフルオロスルホン酸膜に代表されるフッ素系電解質膜は化学的安定性に優れていることから燃料電池や水電解等の固体高分子電解質膜として、広く使用されている。
【0005】
また、食塩電解は固体高分子電解質膜を用いて塩化ナトリウム水溶液を電気分解することにより、水酸化ナトリウム、塩素と水素を製造するものである。この場合、固体高分子電解質膜は塩素と高温、高濃度の水酸化ナトリウム水溶液にさらされるので、これらに対する耐性の乏しい炭化水素系電解質膜を使用することができない。そのため、食塩電解用の固体高分子電解質膜には、一般に、塩素及び高温、高濃度の水酸化ナトリウム水溶液に対して耐性があり、さらに、発生するイオンの逆拡散を防ぐために表面に部分的にカルボン酸基を導入したパーフルオロスルホン酸膜が用いられている。
【0006】
ところで、パーフルオロスルホン酸膜に代表されるフッ素系電解質は、C−F結合を有しているために化学的安定性が非常に大きく、上述した燃料電池用、水電解用、あるいは食塩電解用の固体高分子電解質膜の他、ハロゲン化水素酸電解用の固体高分子電解質膜としても用いられ、さらにはプロトン伝導性を利用して、湿度センサー、ガスセンサー、酸素濃縮器等にも広く応用されている。
【0007】
しかしながら、フッ素系電解質は製造が困難で、非常に高価であるという欠点がある。そのため、フッ素系電解質膜は、宇宙用あるいは軍用の固体高分子型燃料電池等、限られた用途に用いられ、自動車用の低公害動力源としての固体高分子型燃料電池等、民生用への応用を困難なものとしていた。
【0008】
そこで、安価な固体高分子電解質膜として、エンジニアリングプラスチックに代表される芳香族炭化水素系高分子をスルホン酸化した電解質膜が提案された。(例えば、特許文献1、2、3、4、5参照)。これらエンジニアリングプラスチックをスルホン酸化した芳香族炭化水素系電解質膜をナフィオンに代表されるフッ素系電解質膜と比較すると、製造が容易で低コストという利点がある。しかし、耐酸化性という面で非常に弱いという欠点も有している。
【0009】
非特許文献1によると、例えばスルホン酸化ポリエーテルエーテルケトンやポリエーテルスルホンはスルホン酸に隣接したエーテル部位から劣化すると報告している。このことから、スルホン酸の近傍に電子供与性基が存在すると、そこから酸化劣化が開始すると考えられる。そこで耐酸化性の向上を目的として、特許文献6に主鎖が電子吸引性基と芳香族環のみからなるスルホン酸化ポリフェニレンスルホンが、非特許文献2にスルホン基の隣接部位にスルホン酸を導入したスルホン酸化ポリスルホンが提案された。
【0010】
だが、特許文献7によると、芳香族炭化水素系電解質膜の劣化は酸化劣化以外にも、芳香族環に直接結合しているプロトン伝導性置換基であるスルホン酸基が、強酸、高温下において脱離してイオン伝導率が低下することも一因として考えられ、特許文献6や非特許文献2にあるようなスルホン酸化ポリフェニレンスルホンやスルホン酸化ポリスルホンではスルホン酸の脱離による劣化が避けられない。従って、プロトン伝導性置換基がスルホン酸であることは望ましくなく、特許文献7ではスルホン酸の代わりにアルキルスルホン酸を用いることを提案している。こちらはスルホン酸の脱離によるイオン伝導率の低下の改善には有効だが、使用する芳香族高分子の主鎖に電子供与性基が含まれ、耐酸化性に劣っている。
【0011】
【特許文献1】
特開平6−93114号公報
【0012】
【特許文献2】
特開平9−245818号公報
【0013】
【特許文献3】
特開平11−116679号公報
【0014】
【特許文献4】
特表平11−510198号公報
【0015】
【特許文献5】
特表平11−515040号公報
【0016】
【特許文献6】
特開2000−80166号公報
【0017】
【特許文献7】
特開2002−110174号公報
【0018】
【非特許文献1】
高分子論文集 Vol.59、No.8、460〜473頁
【0019】
【非特許文献2】
Journal of Polymer Science:PartA:Polymer Chemistry,Vol.34、2421−2438(1996)
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、固体高分子電解質として有用なフッ素系電解質膜が高価であることから、代替品として用いられているスルホン酸化された芳香族高分子化合物の有する耐酸化性に劣るという欠点を解消し、フッ素系電解質膜に比して安価なスルホン酸化された芳香族高分子化合物を用いて実用上十分な高耐久特性を有し、しかも製造容易な固体高分子電解質、該固体高分子電解質からなる固体高分子電解質膜、さらには該個体高分子電解質からなる触媒電極層、該電極層を用いた膜/電極接合体と該膜/電極接合体を用いた燃料電池を提供することにある。
【0021】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、主鎖に下記式(1)で表される構造を有する繰り返し単位からなり該繰り返し単位中の硫黄原子の酸化度xが1.2〜2.0である芳香族炭化水素系高分子の側鎖にプロトン伝導性置換基として、下記式(2)のR1で表される基を有するスルホン酸や下記式(3)のスルホンアミドとスルホンの間にR2で表される基を有するスルホンアミドスルホン酸を用いることで可能になることが明らかになった。
【0022】
【化5】
【0023】
【化6】
【0024】
【化7】
【0025】
これは、芳香族炭化水素系高分子の主鎖に耐酸化性の高いスルホン基を含み、かつ劣化を受けやすいエーテル結合などの電子供与性基を含まないため、芳香族炭化水素系高分子が酸化劣化しにくく、かつ芳香族系炭化水素系高分子の主鎖に直接スルホン酸が導入されていないので、すなわちR1やR2がいわゆるスペーサーとしての機能を果たし、スルホン酸が脱離しにくいことを要旨とするもので、実用上十分な耐久性を有し、しかも経済的な固体高分子電解質を得ることが可能となる。
【0026】
さらに、該固体高分子電解質からなる固体高分子電解質膜又は、該固体高分子電解質と触媒電極とからなる触媒電極層、さらにはその触媒電極層と該固体高分子電解質を用いた膜/電極接合体であり、該膜/電極接合体を用いた燃料電池を提供することである。
【0027】
【発明の実施の形態】
本発明の固体高分子電解質は主鎖に主成分としてスルホン基と芳香族環からなる炭化水素系高分子にR1で表されるスペーサー構造を介してスルホン酸基を導入するか、あるいはスルホンアミドとスルホンの間にR2で表されるスペーサー構造を介したスルホンアミドスルホン酸基を導入した固体高分子電解質であれば特に制限は無く、少量の共重合成分やプロトン伝導性置換基として少量のスルホン酸やホスホン酸基を含んでいても構わない。
【0028】
ここで言うスルホン基とは主鎖に含まれる硫黄原子の酸化度xが1.2〜2.0であることを示す。更には、酸化度xが1.5〜2.0であることが好ましい。硫黄原子の酸化度xが1.2以下だと固体高分子電解質が十分な耐酸化性を発揮することができず、酸化劣化してしまう。なお、硫黄原子の酸化度xはNMR、元素分析等で求めることができる。
【0029】
これらを満たす芳香族炭化水素系高分子の具体例としては、下記式(5)で代表される構造単位を有する硫黄原子の酸化度が2.0であるポリフェニレンスルホン(PPSO)がある(以降、スルホン基と芳香族環を主成分とする芳香族炭化水素系高分子をPPSO系高分子と呼ぶ)。
【0030】
【化8】
【0031】
プロトン伝導性置換基には式(2)のR1で表される基を有するスルホン酸基やスルホンアミドとスルホン酸の間に式(3)のR2で表される基を有するスルホンアミドスルホン酸基を用いる。芳香族環に直接スルホン酸基を導入した場合には、強酸、高温下においてスルホン酸基が脱離してイオン交換能が低下するからである。また、これらスルホン酸基やスルホンアミドスルホン酸基のカウンターイオンは必ずしもプロトンに限らず、少量のアンモニウムイオンや金属イオンを含んでいても構わない。
【0032】
ここで言うR1またはR2で表される基は芳香族炭化水素系高分子とスルホン酸基やスルホンアミドスルホン酸基を結合できれば特に構わない。例として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基などのアルキル基や、フェニル基、ナフタレン基などの芳香族置換基が挙げられる。
【0033】
PPSO系高分子に式(2)のスルホン酸や式(3)のスルホンアミドスルホン酸のプロトン伝導性置換基を結合させる際に用いる方法には、特に制限はないが、具体的な手段として、ポリアリーレンスルフィドに、アルキルハロゲンやアリールハロゲンを導入し、ハロゲンをスルホン酸に変換する方法や、フリーデルクラフツ反応でスルトン化合物を反応させる方法でスルホン酸化する方法や、PPSをクロロ硫酸などによって、スルホニルクロリド化した後、アミノスルホン酸と反応させてスルホンアミド結合を作る方法が好適である。なお、アルキル基やフッ素系アルキル基の炭素数は1〜12であることが望ましい。
【0034】
式(2)のスルホン酸を作るのに使用するスルトンには、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、1,5−ペンタンスルトン、1,6−ヘキサンスルトン及び2−メチル−1,3−プロパンスルトンなどの誘導体やスルトンの水素を一部もしくは全部フッ素に置き換えたフルオロスルトン及びその誘導体がある。
【0035】
式(3)のスルホンアミドスルホン酸を作るのに使用するアミノスルホン酸には、アミノメタンスルホン酸、アミノエタンスルホン酸(タウリン)、アミノプロパンスルホン酸、アミノブタンスルホン酸、アミノペンタンスルホン酸、アミノヘキサンスルホン酸などのアミノアルキルスルホン酸及び2−メチルアミノエタンスルホン酸などの誘導体、アミノアルキルスルホン酸の脂肪鎖の水素原子を一部もしくは全部フッ素に置き換えたアミノフルオロアルキルスルホン酸及びその誘導体、アミノベンゼンスルホン酸、アミノナフタレンスルホン酸、ジフェニルアミンスルホン酸などの芳香族アミノスルホン酸及び2−メチル−4−スルホン酸アミノベンゼンなどの誘導体がある。
【0036】
酸化剤に特に制限はなく、オキソン(Du Pont社製)、過酢酸、過酸化水素、次亜塩素酸塩、硫酸、塩素、塩化チオニル、二酸化窒素、三酸化クロム、過マンガン酸アルカリ、硝酸、有機化酸化物などが使用される。
【0037】
また、PPSO系高分子に式(2)のスルホン酸や式(3)のスルホンアミドスルホン酸を導入する方法は、上述のようにポリアリーレンスルフィドから高分子反応を用いる方法に限らず、ジハロゲン化アリーレンスルホンに式(2)のスルホン酸や式(3)のスルホンアミドスルホン酸を導入したものを重合する方法もある。
【0038】
式(2)のスルホン酸や式(3)のスルホンアミドスルホン酸を導入する芳香族炭化水素系高分子化合物は分子量が100〜1000であることが望ましい。分子量が高すぎると溶解への溶解度が低く、溶液重合に適さないからである。なお、ジハロゲン化アリーレンスルホンに式(2)のようなスペーサー構造を挟んだスルホン酸を導入する方法には、特に制限はないが、具体的にはジクロロアリーレンスルホンにアルキルハロゲンやアリールハロゲンを導入し、ハロゲンをスルホン酸に変換する方法や、フリーデルクラフツ反応でスルトン化合物を反応させる方法がある。また、ジハロゲン化アリーレンスルホンをスルホンアミドスルホン酸化する方法には、特に制限はないが、ジハロゲン化アリーレンスルホンをクロロ硫酸などによって、スルホニルクロリド化した後、スペーサーを含むアミノスルホン酸と反応させてスルホンアミド結合を作る方法が好適である。なお、アルキル基やフッ素系アルキル基の炭素数は1〜12であることが望ましい。
【0039】
式(2)のスペーサー構造を挟んだスルホン酸を作るのに使用するスルトンには、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、1,5−ペンタンスルトン、1,6−ヘキサンスルトン及び2−メチル−1,3−プロパンスルトンなどの誘導体やスルトンの水素を一部もしくは全部フッ素に置き換えたフルオロスルトン及びその誘導体がある。
【0040】
式(3)のようなスペーサー構造を挟んだスルホンアミドスルホン酸を作るのに使用するアミノスルホン酸には、アミノメタンスルホン酸、アミノエタンスルホン酸(タウリン)、アミノプロパンスルホン酸、アミノブタンスルホン酸、アミノペンタンスルホン酸、アミノヘキサンスルホン酸などのアミノアルキルスルホン酸及び2−メチルアミノエタンスルホン酸などの誘導体、アミノアルキルスルホン酸の脂肪鎖の水素原子を一部もしくは全部フッ素に置き換えたアミノフルオロアルキルスルホン酸及びその誘導体、アミノベンゼンスルホン酸、アミノナフタレンスルホン酸、ジフェニルアミンスルホン酸などの芳香族アミノスルホン酸及び2−メチル−4−スルホン酸アミノベンゼンなどの誘導体がある。
【0041】
ジハロゲン化アリーレンスルホンには、4、4‘−ジクロロジフェニルスルホン、4、4’−ジブロモジフェニルスルホン、4、4‘−ジヨードジフェニルスルホン、ジクロロジビフェニルスルホン、ジクロロジナフチルスルホン、ジクロロアントラニルニルスルホンなどがある。また、芳香族環にニトロ基や、シアノ基、フッ素化アルキル基などの電子吸引基を導入しても構わない。ジハロゲン化アリーレンスルホンを重合し、PPS系高分子を合成する方法に、特に制限はないが、ニッケル錯体などの金属錯体触媒を用いて重合することができる。
【0042】
芳香族環は2価の芳香族環であれば問題なく、下記式(4)で表されされるような構造をしているのが好ましい。更には、炭素数が6〜18であることが望ましい。また、芳香族環にニトロ基や、シアノ基、フッ素化アルキル基などの電子吸引基を導入しても構わない。
【0043】
【化9】
【0044】
該高分子電解質はこれらのスルホン酸やスルホンアミドスルホン酸をプロトン伝導性置換基として有するPPSO系高分子を主成分とする。すなわち、通常の高分子に使用される可塑剤、安定剤、離型剤等の添加剤を本発明の目的に反しない範囲内で使用できる。また、該高分子電解質の機械的強度の向上のために、スルホン酸化PPSO系高分子やスルホンアミド化スルホン酸PPSO系高分子とPPSO系高分子を混合しても良い。
【0045】
本発明で用いられる高分子電解質のイオン交換基当量重量は150〜2500g/molが好適である。更にはイオン交換基当量重量は200〜1500g/molであることが好適であり、更に300〜1000g/molが好適である。イオン交換基当量重量が2500g/molを越えると該高分子電解質のイオン伝導度が低くなり出力性能が低下し、150g/molより低いと該高分子電解質の耐水性が低下し、それぞれ好ましくない。
【0046】
なお、本発明でイオン交換基当量重量とは、導入されたスルホン酸基やスルホンアミドスルホン酸基単位モルあたりのPPSO系高分子の分子量を表し、値が小さいほどスルホン酸化が多く導入されていることを示す。イオン交換基当量重量は、1H−NMRスペクトロスコピー、元素分析、特表平1−52866号公報明細書に記載の酸塩基滴定、非水酸塩基滴定(規定液はカリウムメトキシドのベンゼン・メタノール溶液)等により測定が可能である。
【0047】
スルホン酸やスルホンアミドスルホン酸を導入した該高分子電解質のイオン交換基当量重量を150〜2500g/molに制御する方法としては、芳香族炭化水素系高分子のスルホン酸化率やスルホニルクロリド化率を制御することによって可能となる。これはスルホン酸化剤、もしくはスルホニルクロリド剤の添加比、反応温度、反応時間などを制御すればよい。なお、スルホニルクロリド化する際に、溶媒は使用してもしなくても構わない。
【0048】
本発明で用いられる高分子電解質を燃料電池用として使用する際には、通常膜の状態で使用される。スルホン酸もしくはスルホンアミド化スルホン酸を導入したPPSO系高分子を膜へ転化する方法に特に制限はないが、溶液状態より製膜する方法(溶液キャスト法)、溶融状態より製膜する方法(溶融プレス法もしくは溶融押し出し法)、PPS系高分子膜に酸化剤を用いて酸化する方法(後酸化法)等が可能である。具体的に溶液キャスト法については、例えばポリマー溶液をガラス板上に流延塗布し、溶媒を除去することにより製膜する。製膜に用いる溶媒は、高分子を溶解し、その後に除去し得るものであるならば特に制限はなく、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒、あるいはエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル、ジクロロメタン、トリクロロエタン等のハロゲン系溶媒、i−プロピルアルコール、t−ブチルアルコール等のアルコールが好適に用いられる。また、後酸化法に付いては、溶液キャスト法で製膜したPPS系高分子を酸化剤を溶かした溶液に含浸することで酸化する。ここで用いられる酸化剤には特に制限はなく、オキソン(Du Pont社製)、過酢酸、過酸化水素、次亜塩素酸塩、硫酸、塩素、塩化チオニル、二酸化窒素、三酸化クロム、過マンガン酸アルカリ、硝酸、有機化酸化物などが使用される。
【0049】
該高分子電解質膜の厚みは特に制限はないが10〜200μmが好ましい。特に30〜100μmが好ましい。実用に耐える膜の強度を得るには10μmより厚い方が好ましく、膜抵抗の低減つまり発電性能向上のためには200μmより薄い方が好ましい。溶液キャスト法の場合、膜厚は溶液濃度あるいは基板上への塗布厚により制御できる。溶融状態より製膜する場合、膜厚は溶融プレス法あるいは溶融押し出し法等で得た所定厚さのフィルムを所定の倍率に延伸することで膜厚を制御できる。
【0050】
触媒電極層は、スルホン酸もしくはスルホンアミド化スルホン酸を導入したPPSO系高分子を電解質膜作成に使用した溶媒に溶解させ、これを用いて触媒電極同士を接合することで作成する。
【0051】
ここでの触媒電極は、触媒金属の微粒子を導電材に担持することで作成できる。触媒電極に使用される触媒金属としては、水素の酸化反応および酸素の還元反応を促進する金属であればいずれのものでもよく、例えば、白金、金、銀、パラジウム、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、鉄、コバルト、ニッケル、クロム、タングステン、マンガン、バナジウム、あるいはそれらの合金が挙げられる。特に白金が多くの場合用いられる。触媒となる金属の粒径は、通常は10〜300オングストロームである。これらの触媒はカーボン等の担体に付着させた方が触媒の使用量が少なくコスト的に有利である。触媒の担持量は電極が成形された状態で0.01〜10mg/cm2 が好ましい。
【0052】
導電材としては、電子伝導性物質であればいずれのものでも良く、例えば各種金属や炭素材料などが挙げられる。炭素材料としては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、およびアセチレンブラック等のカーボンブラック、活性炭、黒鉛等が挙げられ、これらが単独あるいは混合して使用される。
【0053】
これら導電材に触媒金属を担持させる方法としては、触媒金属を還元法により導電材(主に炭素材料の場合に使用)の表面に析出させる方法や、溶剤に触媒金属を懸濁させ、これを導電材表面に塗布する方法などがある。
【0054】
膜/電極接合体は、スルホン酸もしくはスルホンアミド化スルホン酸を導入したPPSO系高分子を電解質膜作成に使用した溶媒に溶解させた溶液を触媒電極層に塗布し、電解質膜と接合させることで作成する。
【0055】
燃料電池は、以上のように形成された膜/電極接合体の外側にセパレータと呼ばれる燃料流路もしくは酸化剤流路を形成する溝付きの集電体を配したものを単セルとし、この様な単セルを複数個、冷却板等を介して積層することにより構成される。燃料電池は高い温度で作動させる方が電極の触媒活性が上がり電極過電圧が減少するため望ましいが、電解質膜は水分がないと機能しないため、水分管理が可能な温度で作動させる必要がある。燃料電池の作動温度の好ましい範囲は室温〜100℃である。
【0056】
以下実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、各物性の測定条件は次の通りである。
[イオン交換基当量重量測定]
イオン交換基当量重量測定しようとする本発明のスルホン酸もしくはスルホンアミド化スルホン酸を導入したPPSO系高分子を密閉できるガラス容器中に精秤(a(グラム))し、そこに過剰量の塩化カルシウム水溶液を添加して一晩撹拌した。系内に発生した塩化水素を0.1Nの水酸化ナトリウム標準水溶液(力価f)にて、指示薬にフェノールフタレインを用いて滴定(b(ml))した。イオン交換基当量重量(g/mol)は下式より求めた。
イオン交換基当量重量=(1000×a)/(0.1×b×f)
[イオン伝導度測定]
本発明の電解質膜を、電気化学インピーダンス測定装置(ソーラトロン製、SI1287)を用いて周波数0.1Hz〜65kHzの領域で4端子インピーダンス測定をし、イオン伝導度を測定した。なお、上記測定で電解質膜は水蒸気雰囲気下、75℃にて保存された。
[耐酸化性試験]
本発明の電解質膜を、30%過酸化水素水20mlに硫酸鉄7水和物1.9mgを加えることからなる60℃に加熱したフェントン試薬(鉄40ppmを含む)に浸漬させ、電解質膜がフェントン試薬に溶解するに至る時間を求めた。
[耐湿熱試験]
本発明の電解質膜を、1mol/lの硫酸に浸漬させ、100℃で30日間還流保存し、試験前と試験後でイオン交換基当量が変化したかを測定した。
[燃料電池単セル性能評価]
膜/電極接合体を評価セルに組み込み、燃料電池出力性能を評価した。反応ガスには、水素/酸素を用い、共に1気圧の圧力にて、70℃の水バブラーを通して加湿した後、評価セルに供給した。ガス流量は水素60ml/min、酸素40ml/min、セル温度は75℃とした。電池出力性能は、H201B充放電装置(北斗電工製)により評価した。
【0057】
【実施例】
[実施例1]
(1)プロピルスルホン酸化ポリフェニレンスルホンの合成
撹拌機、温度計、塩化カルシウム管を接続した還流冷却器をつけた500mlの四つ口丸底フラスコの内部を窒素置換した後、乾燥した10.8gのポリフェニレンスルフィド(PPS)(ポリプラスチック社製フォートロン)、乾燥した100mlのクロロホルム、の3.6gの1,3−プロパンスルトンを入れた。容器を60℃に保ち撹拌しながら約30分かけて4.0gの無水塩化アルミニウムを加えた。添加終了後、60℃で5時間還流攪拌した。生じた沈殿物をミキサーによる脱イオン水洗浄と吸引濾過による回収操作を、濾液が中性になるまで繰り返した後、120℃にて一晩減圧乾燥してプロピルスルホン酸化ポリフェニレンスルフィドを得た。
【0058】
得られたプロピルスルホン酸化ポリフェニレンスルフィドを160gのオキソン(Du Pont社製)、500gの水、37gの酢酸からなる酸化液に入れ、80℃で8時間攪拌した。生じた沈殿物をミキサーによる脱イオン水洗浄と吸引濾過による回収操作を、濾液が中性になるまで繰り返した後、120℃にて一晩減圧乾燥した。
【0059】
得られたプロピルスルホン酸化ポリフェニレンスルホンのイオン交換基当量重量は590g/molであった。硫黄原子の酸化度xは1.9であった。
(2)電解質膜の作製
前記(1)で得られた生成物を10重量%の濃度になるようにN−メチルピロリドンに溶解した。この溶液をドクターナイフによりガラス上に展開し、乾燥することで、膜厚40μmの電解質膜を作成した。
(3)触媒電極層、膜/電極接合体、燃料電池の作製
40重量%の白金担持カーボンに、前記(2)の10重量%濃度のN−メチ、ルピロリドン溶液を、白金担持カーボンと高分子電解質との重量比が2:1となるように添加し、均一に分散させてペースト(電極触媒被覆用溶液)を調整した。この電極触媒被覆用溶液を前記(2)で得られた電解質膜の両側に塗布した後、乾燥して白金担持量0.25mg/cm2の膜/電極接合体を作製した。これを用いて、燃料電池単セル性能評価をしたところ40mWの出力を示した。
【0060】
[比較例1]
(1)プロピルスルホン酸化ポリフェニレンスルフィドの合成
実施例1に示した方法でプロピルスルホン酸化ポリフェニレンスルフィドを合成した。得られたプロピルスルホン酸化ポリフェニレンスルフィドのイオン交換基当量重量は490g/molであった。硫黄原子の酸化度xは0であった。
(2)電解質膜の作製
実施例1と同様にして、膜厚40μmの電解質膜を作成した。
【0061】
[比較例2]
(1)スルホン酸化ポリフェニレンスルホンの合成
撹拌機、温度計、塩化カルシウム管を接続した還流冷却器をつけた500mlの四つ口丸底フラスコの内部を窒素置換した後、200mlのクロロ硫酸をいれた。5℃に維持して撹拌しながら10.8gのPPSを溶解させた。30分の攪拌後、反応溶液を10lの脱イオン水にゆっくりと滴下することでスルホニルクロリド化ポリフェニレンスルフィドを析出させ、濾過回収した。生じた沈殿物をミキサーによる脱イオン水洗浄と吸引濾過による回収操作を、濾液が中性になるまで繰り返した後、120℃にて一晩減圧乾燥した。
【0062】
実施例1に示す酸化法でスルホニルクロリド化ポリフェニレンスルフィドを酸化し、同時にスルホニルクロリド基をスルホン酸基に加水分解することでスルホン酸化ポリフェニレンスルホンを得た。得られたスルホン酸化ポリフェニレンスルホンのイオン交換基当量重量は540g/molであった。硫黄原子の酸化度xは1.9であった。
(2)電解質膜の作製
実施例1と同様にして、膜厚40μmの電解質膜を作成した。
【0063】
[実施例2]
(1)ブチルスルホン酸化ポリフェニレンスルホンの合成
実施例1の1,3−プロパンスルトンの代わりに1,4−ブタンスルトンを使用した以外は実施例1と同様に合成した。得られたブチルスルホン酸化ポリフェニレンスルホンのイオン交換基当量重量は600g/molであった。硫黄原子の酸化度xは1.9であった。
(2)電解質膜の作製
実施例1と同様にして、膜厚40μmの電解質膜を作成した。
(3)触媒電極層、膜/電極接合体、燃料電池の作製
実施例1と同様にして、白金担持量0.25mg/cm2の膜/電極接合体を作製した。これを用いて、燃料電池単セル性能評価をしたところ40mWの出力を示した。
【0064】
[実施例3]
(1)エチルスルホン酸スルホンアミド化ポリフェニレンスルホンの合成
撹拌機、温度計、塩化カルシウム管を接続した還流冷却器をつけた500mlの四つ口丸底フラスコの内部を窒素置換した後、200mlのクロロ硫酸をいれた。5℃に維持して撹拌しながら10.8gのPPSを溶解させた。30分の攪拌後、反応溶液を10lの脱イオン水にゆっくりと滴下することでスルホニルクロリド化ポリフェニレンスルフィドを析出させ、濾過回収した。生じた沈殿物をミキサーによる脱イオン水洗浄と吸引濾過による回収操作を、濾液が中性になるまで繰り返した後、120℃にて一晩減圧乾燥した。
【0065】
得られたスルホニルクロリド化ポリフェニレンスルフィドを100mlの水、20gの炭酸カリウム、3.75gのタウリンからなる反応液に入れ、70℃で48時間攪拌した。ここに1N塩酸を中和されるまで加えた。生じた沈殿物をミキサーによる脱イオン水洗浄と吸引濾過による回収操作を、濾液が中性になるまで繰り返した後、120℃にて一晩減圧乾燥し、エチルスルホン酸スルホンアミド化ポリフェニレンスルフィドを得た。
【0066】
実施例1に示す酸化法でエチルスルホン酸スルホンアミド化ポリフェニレンスルフィドを酸化し、エチルスルホン酸スルホンアミド化ポリフェニレンスルホンを得た。得られたエチルスルホン酸スルホンアミド化ポリフェニレンスルホンのイオン交換基当量重量は610g/molであった。また、硫黄原子の酸化度xは1.9であった。
(2)電解質膜の作製
実施例1と同様にして、膜厚40μmの電解質膜を作成した。
(3)触媒電極層、膜/電極接合体、燃料電池の作製
実施例1と同様にして、白金担持量0.25mg/cm2の膜/電極接合体を作製した。これを用いて、燃料電池単セル性能評価をしたところ40mWの出力を示した。
【0067】
[実施例4]
(1)プロピルスルホン酸化ポリビフェニレンスルホンの合成
撹拌機、温度計、塩化カルシウム管を接続した還流冷却器をつけた500mlの四つ口丸底フラスコの内部を窒素置換した後、28.7gの4,4‘−ジクロロジフェニルスルホン、乾燥した100mlのクロロホルム、9.6gの1,3−プロパンスルトンを入れた。容器を60℃に保ち撹拌しながら約30分かけて13.2gの無水塩化アルミニウムを加えた。添加終了後、60℃で5時間還流攪拌した。生じた沈殿物をミキサーによる脱イオン水洗浄と吸引濾過による回収操作を、濾液が中性になるまで繰り返した後、120℃にて一晩減圧乾燥してプロピルスルホン酸化4,4‘−ジクロロジフェニルスルホンを得た。
【0068】
4.1gのプロピルスルホン酸化4,4‘−ジクロロジフェニルスルホンを70mlの乾燥したジメチルホルムアミドに溶解させ、2.8gのニッケル(シクロオクタジエン)錯体と1.6gのビピリジンと1.5gのシクロオクタジエンを加え、60℃で8時間攪拌した。生じた沈殿物をミキサーによる脱イオン水洗浄と吸引濾過による回収操作を繰り返した後、120℃にて一晩減圧乾燥した。
得られたプロピルスルホン酸化ポリビフェニレンスルホンのイオン交換基当量重量は340g/molであった。硫黄原子の酸化度xは2.0であった。
【0069】
(2)電解質膜の作製
前記(1)で得られた生成物を10重量%の濃度になるようにN−メチルピロリドンに溶解した。この溶液をドクターナイフによりガラス上に展開し、乾燥することで、膜厚40μmの電解質膜を作成した。
【0070】
(3)触媒電極層、膜/電極接合体、燃料電池の作製
40重量%の白金担持カーボンに、前記(2)の10重量%濃度のN−メチ、ルピロリドン溶液を、白金担持カーボンと高分子電解質との重量比が2:1となるように添加し、均一に分散させてペースト(電極触媒被覆用溶液)を調整した。この電極触媒被覆用溶液を前記(2)で得られた電解質膜の両側に塗布した後、乾燥して白金担持量0.25mg/cm2の膜/電極接合体を作製した。これを用いて、燃料電池単セル性能評価をしたところ40mWの出力を示した。
【0071】
[実施例5]
(1)エチルスルホン酸スルホンアミド化ポリフェニレンスルホンの合成
撹拌機、温度計、塩化カルシウム管を接続した還流冷却器をつけた500mlの四つ口丸底フラスコの内部を窒素置換した後、28.7gの4,4‘−ジクロロジフェニルスルホンと200mlのクロロ硫酸を加えた。容器を60℃に保ちながら10時間還流攪拌した。反応溶液を10lの脱イオン水にゆっくりと滴下することでスルホニルクロリド化4,4’−ジクロロジフェニルスルホンを析出させ、濾過回収した。生じた沈殿物をミキサーによる脱イオン水洗浄と吸引濾過による回収操作を、濾液が中性になるまで繰り返した後、120℃にて一晩減圧乾燥した。
【0072】
4.0gのスルホニルクロリド化4,4’−ジクロロジフェニルスルホンを100mlの水、40gの炭酸カリウム、1.25gのタウリンからなる反応液に入れ、70℃で48時間攪拌した。ここに1N塩酸を中和されるまで加えた。生じた沈殿物をミキサーによる脱イオン水洗浄と吸引濾過による回収操作を、濾液が中性になるまで繰り返した後、120℃にて一晩減圧乾燥し、エチルスルホン酸スルホンアミド化4,4’−ジクロロジフェニルスルホンを得た。
【0073】
実施例4に示したの重合法と同じ方法でエチルスルホン酸スルホンアミド化4,4’−ジクロロジフェニルスルホンを重合し、エチルスルホン酸スルホンアミド化ポリビフェニレンスルホンを得た。得られたエチルスルホン酸スルホンアミド化ポリビフェニレンスルホンのイオン交換基当量重量は410g/molであった。硫黄原子の酸化度xは2.0であった。
【0074】
(2)電解質膜の作製
実施例1と同様にして、膜厚40μmの電解質膜を作成した。
【0075】
(3)触媒電極層、膜/電極接合体、燃料電池の作製
実施例1と同様にして、白金担持量0.25mg/cm2の膜/電極接合体を作製した。これを用いて、燃料電池単セル性能評価をしたところ40mWの出力を示した。
【0076】
以上の実施例1〜5、比較例1〜2に関して、耐酸化性試験、耐湿熱試験、イオン伝導度測定を行なった。この評価結果を表1に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
【発明の効果】
本発明に係るスルホン酸もしくはスルホンアミド化スルホン酸が導入されたPPSO系高分子電解質はパーフロロスルホン酸膜に代表されるフッ素系電解質膜に比べ、コストは非常に安価で、主鎖にスルホン基と芳香環を主成分に含み、主鎖に直接スルホン酸が導入されていないことによって、耐久性特に耐酸化性と耐湿熱性に優れた高分子電解質が得られる。また本発明に係るPPSO系電解質を用いた膜、触媒電極層、膜/電極接合体、燃料電池は実用上十分な性能を示す。
Claims (9)
- ポリアリーレンスルフィド系高分子に式(2)もしくは式(3)に記載の置換基を導入した後、スルフィドをスルホンに酸化する事を特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の固体高分子電解質の製造方法。
- 式(2)もしくは式(3)に記載の置換基を分子量が100〜1000の芳香族炭化水素系化合物に導入した後、該化合物を重合することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の固体高分子電解質の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の固体高分子電解質からなる膜であることを特徴とする固体高分子電解質膜。
- 炭素材からなる導電材の表面に触媒金属の微粒子を担持させた触媒電極と、請求項1〜3のいずれか1項に記載の固体高分子電解質からなる触媒電極層。
- 請求項6に記載の固体高分子電解質膜と請求項7に記載の触媒電極層からなる膜/電極接合体。
- 請求項8に記載の膜/電極接合体を使用した燃料電池。
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