JP2004287269A - 現像剤及び画像形成方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】結晶性ポリエステルを含有するトナーとトリクル現像方式を用いた現像方法において、二成分現像剤の電気抵抗値及び帯電量の双方が大きく変化することなく適正な範囲内に維持され、長期にわたって安定した画質を得ることができる現像方法と補給用現像剤の提供。
【解決手段】トナーとキャリアとからなる二成分現像剤を収容した現像機を用いて潜像担持体上の潜像を現像するに際して、補給用現像剤を補給しながら現像を行なうトリクル現像方式用の補給用現像剤であって、該補給用現像剤のキャリアが、予め現像機に収容されている初期現像剤のキャリアよりも高い帯電量をトナーに付与し、該補給用現像剤のキャリアと初期現像剤のキャリアの電気抵抗が等しく、前記トナーが融点50〜110℃の結晶性ポリエステル樹脂を主成分とする結着樹脂と着色剤とを含むことを特徴とする補給用現像剤。
【選択図】 なし
【解決手段】トナーとキャリアとからなる二成分現像剤を収容した現像機を用いて潜像担持体上の潜像を現像するに際して、補給用現像剤を補給しながら現像を行なうトリクル現像方式用の補給用現像剤であって、該補給用現像剤のキャリアが、予め現像機に収容されている初期現像剤のキャリアよりも高い帯電量をトナーに付与し、該補給用現像剤のキャリアと初期現像剤のキャリアの電気抵抗が等しく、前記トナーが融点50〜110℃の結晶性ポリエステル樹脂を主成分とする結着樹脂と着色剤とを含むことを特徴とする補給用現像剤。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は電子写真法、静電記録法等により形成される静電潜像を2成分現像剤で現像する際に、現像剤を現像機に断続的または連続的に補給し、且つ現像機から過剰になる現像剤を回収しながら現像を行なう、いわゆるトリクル現像方式に用いる現像剤及び該現像剤を用いる画像形成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子写真方式の複写機、またはプリンター等の画像形成方法に使用される二成分現像装置においては、その現像剤収容部に収容される二成分現像剤のトナーとキャリアを攪拌して摩擦帯電させた後、現像ロール等の現像剤担持搬送体により感光体等の潜像担持体に供給する事により、潜像担持体上の潜像を現像するが、この際、トナーは消費されて減るのに対し、キャリアは消費されず現像剤収容部内に残る。このためトナー成分が移行するなどのキャリア汚染や、キャリアそのものが現像機内のストレスを受け、その樹脂被覆層が破壊されるなどのキャリア劣化をおこして、帯電性等の現像剤特性に悪影響を与え、画質の低下を誘発するという不具合が生じる。
【0003】
そこで、従来、このキャリアの劣化を抑制するために、トナーのみではなくキャリアも現像剤収容部に適宜補給するとともに、このキャリア補給により現像剤収容部内で徐々に過剰となる二成分現像剤を回収することにより、消費により減るトナーを補充すると同時に、現像剤収容部内の劣化したキャリアを補給される新しいキャリアに置き換えるようにする方法、いわゆる「トリクル現像方式」が提案されている(特許文献1)。
【0004】
しかしながら、補給されるキャリアは現像機内に収容されているキャリアと同一のものである為、コピー操作を繰り返し実施して行く間に劣化キャリアが増え、画像密度の上昇を押させることができなくなる。
【0005】
一方、(特許文献2)には、予め現像機内に収容されているキャリアに比べて高い抵抗値を有するキャリアにトナーを含有させて帯電性を維持、画質低下を抑制することが開示されている。しかしながら、この方法では、長期の使用により現像剤収容部にすでに収容されている二成分現像剤の初期収容キャリア表面にトナーが付着して、電気抵抗値が徐々に上昇してしまい、このような状態になったところへ電気抵抗値が高い新しい補給用キャリアを補給したとしても、その上昇した電気抵抗値は初期の状態のもどらず必要以上に高い電気抵抗値の状態のまま推移する結果、現像される画像の濃度が低下したり不均一になると言う問題がある。
【0006】
一方、このような電気抵抗値の高い補給用キャリアを補給するトリクル現像方式における問題を解消するため、(特許文献3)には、キャリア抵抗値又は帯電量を徐々に高くした補給用キャリアを含む補給用の二成分現像剤を複数種用意し、その各現像剤を順次補給する方法が開示されている。
【0007】
しかし、この抵抗値又は帯電量を徐々に高くした補給用キャリアを含む二成分現像剤を順次補給するトリクル現像方式は、例えば、補給用の現像剤カートリッジが頻繁に交換使用されるカラー画像形成装置に適用した場合、その1本のカートリッジを使い終わって次の新しカートリッジを交換して使用すると、先のカートリッジから最も高い抵抗値又は帯電量のキャリアが補給された後に新しいカートリッジから最も低い抵抗値又は帯電量のキャリアが補給されることになり、この結果、現像剤収容部内における現像剤の抵抗値や帯電量が急激に変化して、画質が不安定になってしまうという不具合がある。そして、この現象は、そのカートリッジを交換する度に繰り返されることになる。
一方、低温定着性を持たせた結晶性樹脂を用いたトナーが知られている。しかしながら、このようなトナーでは、結晶性に由来する、長時間の攪拌による帯電の低下が問題となっている。
【0008】
【特許文献1】
特公平2−215915号公報
【特許文献2】
特開平3‐145678号公報
【特許文献3】
特開平8−234550号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は上記のような種々の問題点を解決する事を目的としてなされたものである。すなわち、結晶性を有するトナーとトリクル現像方式を用いた現像方法において、比較的少量のキャリア補給であっても、長期の使用により現像剤収容部内における二成分現像剤の電気抵抗値及び帯電量の双方が大きく変化することなく適正な範囲内に維持され、長期にわたって安定した画質を得ることができる現像方法であり、耐ホットオフセットと低温定着性に優れ、省エネルギーを実現し、生産性の高い高速複写機にも対応可能なトナーを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成し得る本発明の補給用現像剤は、
<1>トナーとキャリアとからなる二成分現像剤を収容した現像機を用いて潜像担持体上の潜像を現像するに際して、補給用現像剤を補給しながら現像を行なうトリクル現像方式用の補給用現像剤であって、該補給用現像剤のキャリアが予め現像機に収容されている初期現像剤のキャリアよりも高い帯電量をトナーに付与し、該補給用現像剤のキャリアと初期現像剤のキャリアの電気抵抗が等しく、該トナーが融点50〜110℃の結晶性ポリエステル樹脂を主成分とする結着樹脂と着色剤とを含むことを特徴とする補給用現像剤。
<2> 前記補給用現像剤の帯電量が予め現像機に収容されている初期現像剤の帯電量の1.2倍〜3.0倍であることを特徴とする<1>に記載の補給用現像剤。
<3> 前記補給現像剤がキャリアを5〜30質量%含有することを特徴とする<1>または<2>に記載の補給用現像剤。
<4> 前記トナーが融点50〜110℃の結晶性ポリエステル樹脂と無定形高分子を主成分とする結着樹脂と着色剤とを含むことを特徴とする<1>乃至<3>に記載の補給用現像剤。
<5> 前記トナーが少なくとも結晶性ポリエステル微粒子を含む分散液中で少なくとも結晶性ポリエステル微粒子を含む凝集粒子を形成する凝集工程と、該凝集粒子を融合させる融合工程を経て調整されてなることを特徴とする<1>乃至<4>のいずれかに記載の補給用現像剤。
さらに上記目的を達成するための画像形成方法は、
<6>トナーとキャリアとからなる二成分現像剤を収容した現像機を用いて潜像担持体上の潜像を現像するに際して、補給用現像剤を補給しながら現像を行なうトリクル現像方法であって、該補給用現像剤が<1>に記載の補給用現像剤であることを特徴とする画像形成方法。
【0011】
ここで、補給用キャリアのトナーへの付与帯電量の絶対値は、初期使用キャリアよりも高くなるように設定されるが、具体的には、初期使用キャリアのトナーへの付与帯電量の絶対値に対して1.2倍以上の付与帯電量、好ましくは1.2倍〜3.0倍になるように設定されるのが望ましい。より詳しくは、少なくとも、トナーとの一定期間の攪拌により摩擦帯電されて得られる補給用キャリアを用いた際のトナーの飽和帯電量の絶対値が、初期使用キャリアを用いた際のトナーの飽和帯電量の絶対値の1.2倍以上となる帯電量に設定される。
この際、初期使用キャリアを用いた際のトナーの帯電量の絶対値は、通常の初期段階で使用される二成分現像剤におけるキャリアの帯電量の絶対値であればよいが、その飽和帯電量は画質上の問題が発生する上限帯電量を上回らないように設定することが望ましい。補給用キャリアを用いた際のトナーの帯電量の絶対値が初期使用キャリアを用いた際のトナーの飽和帯電量の絶対値に対して1.2倍よりも低い値に設定した場合には、その補給用キャリアを、ひいてはそのキャリアを含む現像剤を多量に補給しなければならなくなり、また、従来技術において既述したように、長期にわたる使用により、結晶性樹脂を含有するトナーの帯電の低下が著しくなり、その結果画質不良が発生しやすくなり、結果的に、前記した目的を達成することができない。
【0012】
一方、補給用現像剤に使用されるキャリアの電気抵抗値は、予め現像機に収容されている現像剤中のキャリアの電気抵抗値と等しいことが好ましい。なお、本発明において、「キャリアと電気抵抗が等しい」とは、キャリアの電気抵抗(Ω・cm)が1桁以内にあることを意味する。
補給用現像剤に使用されるキャリアの電気抵抗値が初期使用キャリアと同等で、よりトナーへの帯電量の絶対値が高いキャリアにする為には、該補給用キャリアの樹脂被覆層におけるトナー帯電性能の高い帯電制御材料の混合比が、初期収容キャリアの同混合比よりも高く設定する事が好ましい。
さらに、本発明においては、補給する二成分現像剤〈補給用現像剤)における補給用キャリアの含有率を5〜30質量%の範囲内に設定することが好ましく、6〜25質量%がより好ましい。
なお、本発明において、電気抵抗は現像剤中のトナーをブローオフして得られたキャリアを500μmの厚さにして1000Vの電界下で測定した抵抗率(Ω・cm)である。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を示して、本発明を詳細に説明する。
<キャリア>
本発明に用いられるキャリアは、磁性粒子を被覆材料で被覆したいわゆるコートキャリアである。キャリアの芯材については特に制限はなく、鉄、鋼、ニッケル、コバルト等の磁性金属、これらとマンガン、クロム、希土類元素等との合金、及び、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物等を挙げることができるが、現像方式として磁気ブラシ法を用いる観点からは磁性キャリアであることが望ましい。また、磁性粉を樹脂中に分散した磁性粉分散型粒子を用いても良い。磁性粒子の平均粒子径は10〜50μmの範囲が好ましい。平均粒子径が50μmを越えると、現像機内ストレスにより被覆層の剥がれが生じ、キャリア抵抗が低下する。逆に10μmよりも小さくなると、現像剤担持体のマグロ−ルの磁界で捉え切れず、感光体上へのキャリアスペントが顕著になり、転写不良をもたらす。
【0014】
また、磁性粒子の磁力は、3000エルストレッドにおける飽和磁化が50emu/g以上である必要があり、より好ましくは60emu/g以上が必要である。飽和磁化が50emu/gより弱い磁力では、キャリアがトナーと共に、感光体上に現像されてしまう。
【0015】
磁性粒子を被覆する被覆材料は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル及びポリビニルケトン等のポリビニル系樹脂及びポリビニリデン系樹脂;塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体;スチレン−アクリル酸共重合体:オルガノシロキサン結合からなるストレートシリコーン樹脂又はその変性品;ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン等のフッ素系樹脂;シリコーン樹脂:ポリエステル;ポリウレタン;ポリカーボネート;フェノール樹脂;尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアミド樹脂等のアミノ樹脂;エポキシ樹脂など、それ自体の公知の樹脂を挙げることができる。
【0016】
これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。本発明においては、これらの樹脂の中でも、フッ素系樹脂及び/又はシリコーン樹脂を少なくとも使用することが好ましい。それらの樹脂を使用すると、トナーや外添剤によるキャリア汚染(インパクション)を防止する効果があるので有利である。
【0017】
樹脂被覆層には樹脂粒子及び/又は導電性粒子を分散することができる。前記樹脂粒子としては、例えば、熱可塑性樹脂粒子、熱硬化性樹脂粒子等が挙げられる。その中でも、硬度を上げることが比較的容易な熱硬化性樹脂が好適であり、また、トナーに負帯電性を付与するためには、窒素原子を含有する樹脂粒子を用いることが好ましい。なお、これらの樹脂粒子は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0018】
樹脂粒子の平均粒径は、例えば0.1〜2μmの範囲が好ましく、0.2〜1μmの範囲がより好ましい。平均粒径が0.1μm未満であると、樹脂被覆層における樹脂粒子の分散性が非常に悪く、2μmを超えると、樹脂被覆層から樹脂粒子が脱落し易く、本来の効果を発揮しなくなることがある。
【0019】
前記導電性粒子としては、金、銀、銅等の金属粒子、カーボンブラック粒子、酸化チタン、酸化亜鉛等の半導電性酸化物粒子、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム粉末等の表面を酸化スズ、カーボンブラック、金属等で覆った粒子などを使用できる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、製造安定性、コスト、導電性などの点からカーボンブラック粒子が好適である。カーボンブラックの種類には特に制限はないが、DBP吸油量が50〜250ml/100gの範囲のカーボンブラックが製造安定性の上から特に優れている。
【0020】
本発明のキャリアの樹脂被覆中に含有され、キャリアの帯電量を制御するのに好適な帯電制御材料としては、メチルメタクリレート樹脂、含窒素系アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、メラミン樹脂、アクリロニトリル樹脂等の樹脂微粒子が好ましく、特にメラミン樹脂微粒子が高い帯電性能をトナーに付与できる点から好ましい。
【0021】
樹脂被覆層の形成方法には特に制限はない。例えば、架橋性樹脂粒子等の前記樹脂粒子及び/又は前記導電性粒子、並びにマトリックス樹脂としてのスチレンアクリル樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂等を溶剤中に含む樹脂被覆層形成用液を用いる方法などが挙げられる。具体的には、キャリア芯材を樹脂被覆層形成用液に浸漬する浸漬法、樹脂被覆層形成用液をキャリア芯材の表面に噴霧するスプレー法、キャリア芯材を流動エアーにより浮遊させた状態で樹脂被覆層形成用液と混合し、溶剤を除去するニーダーコーター法等が挙げられる。これらの中でもニーダーコーター法が特に好ましい。
【0022】
上記の樹脂被覆層を形成する装置は、攪拌エネルギーを付与するための攪拌翼を有するものであれば特に制限はない。例えば、プラネタリーミキサー、ニーダーコーター、ヘンシェルミキサー、コンティニュアスミキサー、エクストルーダー、クリプトロン、フィッツミル、レディゲミキサーなどが挙げられる。また、樹脂被覆装置が攪拌翼を有する場合、脱溶剤後、そのまま攪拌をし続け攪拌エネルギーを与えることも可能である。
【0023】
前記樹脂被覆層形成用液に用いる溶剤は、マトリックス樹脂としての前記樹脂のみを溶解できればよく、特に制限はなく、それ自体公知の溶剤の中から選択することができる。例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類などを使用することができる。
【0024】
樹脂被覆層に樹脂粒子を分散するときに、その厚み方向及びキャリア表面の接線方向に、前記樹脂粒子及びマトリックス樹脂が均一に混合していることが重要である。このような混合状態は、キャリアを長期間使用して樹脂被覆層が摩耗しても、常に未使用時と同様な表面構造を保持でき、トナーに対する良好な帯電付与能力を長期間にわたって安定して維持することができる。また、樹脂被覆層に導電性粒子を分散させるときにも、その厚み方向及びキャリア表面の接線方向に、導電性粒子及びマトリックス樹脂が均一に混合しているため、キャリアを長期間使用して樹脂被覆層が摩耗しても、常に未使用時と同様な表面構造を保持でき、キャリア劣化を長期間防止することができる。なお、樹脂被覆層に前記樹脂粒子と前記導電性粒子を同時に分散させるときにも上記の効果を同時に奏することができる。
【0025】
本発明の画像形成方法において、初期現像剤のキャリアと、補給用現像剤のキャリアとの組成上異なる点は、補給用現像剤のキャリアと初期現像剤のキャリアとの電気抵抗値は同等とし、補給用現像剤のキャリアを用いた際のトナーの帯電量の絶対値を初期現像剤のキャリアを用いた際のトナーの帯電量の絶対値よりも高くするために、補給用現像剤のキャリア樹脂被覆層中の帯電制御剤含有量を初期現像剤のキャリア樹脂被覆層中より高くすることが望ましい。
しかし、上記の点以外は、トリクル現像方式では、初期現像剤と補給用現像剤とは、順次混合して使用されるため、上記の点以外は、初期現像剤のキャリアと補給用現像剤のキャリアとは実質的に同一材料からなることが望ましい。
【0026】
<トナー>
一方、本発明におけるトナーは、結着樹脂と着色剤とを主成分として構成される。トナーにおける結着樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂を含み、好ましくは結晶性ポリエステル樹脂と無定形高分子を主成分として含むものであるが、ここで「主成分」とは、前記結着樹脂を構成する成分のうち、主たる成分のことを指し、具体的には、前記結着樹脂の50質量%以上を構成する成分を指す。ただし、本発明において、前記結着樹脂のうち、特定の結晶性ポリエステル樹脂が50質量%以上であることが好ましく、結晶性ポリエステル樹脂と無定形高分子を含む場合、これらの樹脂の合計が結着樹脂の50質量%以上であることがより好ましい。
【0027】
前記結着樹脂の主成分を構成する樹脂が結晶性ポリエステル樹脂を含まない場合、すなわち非晶性である場合には、良好な低温定着性を確保しつつ、耐トナーブロッキング性、画像保存性を保つことができない。なお、本発明において、『結晶性樹脂』とは示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱量変化ではなく、明確な吸熱ピークを有するものを指す。
【0028】
本発明に用いられる結着樹脂の主成分である結晶性ポリエステル樹脂の融点は、50〜110℃の範囲であることが好ましく、60〜100℃の範囲がより好ましい。前記融点が50℃より低い場合、トナーの保存性や定着後のトナー画像の保存性が問題となる場合がある。前記融点が120℃より高い場合、従来のトナーに比べて十分な低温定着性が得られない場合がある。
【0029】
なお、本発明において、前記結晶性ポリエステル樹脂の融点の測定には、示差走査熱量計(DSC)を用い、室温から150℃まで毎分10℃の昇温速度で測定を行なった時の、JIS K―7121に示す入力補償示差走査熱量測定の融解ピーク温度として求めることができる。又、一般に結晶性樹脂は複数の融解ピークを示す場合があるが、本発明においては、最大のピークをもって融点とみなす。
【0030】
本発明に用いられる結晶性ポリエステル樹脂は、酸(ジカルボン酸)成分(以下、「酸由来構成成分」と称する場合がある)と、アルコール(ジオール)成分(以下、「アルコール由来構成成分」と称する場合がある)とから合成されるものである。以下、酸由来構成成分、及びアルコール由来構成成分について、さらに詳しく説明する。なお、本発明では、前記結晶性ポリエステル樹脂主鎖に対して、他成分を50質量%以下の割合で共重合した共重合体も結晶性ポリエステル樹脂とする。
【0031】
<酸由来構成成分>
前記酸由来構成成分は、脂肪族ジカルボン酸が好ましく、中でも脂肪族ジカルボン酸が望ましく、特に直鎖型のカルボン酸が望ましい。
【0032】脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼリン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸、など、或いはその低級アルキルエステルや酸無水物が挙げられるが、この限りではない。これらのうち、入手容易性を考慮すると、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸が好ましい。
【0033】
前記酸由来構成成分としては、前述の脂肪族ジカルボン酸由来構成成分の他、二重結合をもつジカルボン酸由来構成成分、スルホン酸基を持つジカルボン酸由来構成成分等の構成成分が含まれていることが好ましい。
【0034】
前記2重結合を持つジカルボン酸由来構成成分には、2重結合を持つジカルボン酸に由来する構成成分のほか、2重結合を持つジカルボン酸の低級アルキルエステルまたは酸無水物等に由来する構成成分も含まれる。また、前記スルホン酸基を持つジカルボン酸由来構成成分には、スルホン酸基を持つジカルボン酸に由来する構成成分のほか、スルホン酸基を持つジカルボン酸の低級アルキルエステルまたは酸無水物等に由来する構成成分も含まれる。
【0035】
前記2重結合を持つジカルボン酸は、その2重結合を利用して樹脂全体を架橋させ得る点で、定着時のホットオフセットを防ぐために好適に用いることができる。このようなジカルボン酸としては、例えば、フマル酸、マレイン酸、3−ヘキセンジオイック酸、3−オクテンジオイック酸等が挙げられるが、これらに限定されない。また、これらの低級アルキルエステル、酸無水物等も挙げられる。これらの中でも、コストの点で、フマル酸、マレイン酸等が好ましい。
【0036】
前記スルホン酸基を持つジカルボン酸は、顔料等の色材の分散を良好にできる点で有効である。また樹脂全体を水に乳化或いは懸濁して、微粒子を作製する際に、スルホン酸基があれば、後述するように、界面活性剤を使用しないで乳化或いは懸濁が可能である。このようなスルホン基を持つジカルボン酸としては、例えば、2−スルホテレフタル酸ナトリウム塩、5−スルホイソフタル酸ナトリウム塩、スルホコハク酸ナトリウム塩等が挙げられるが、これらに限定されない。また、これらの低級アルキルエステル、酸無水物等も挙げられる。これらの中でも、コストの点で、5−スルホイソフタル酸ナトリウム塩等が好ましい。
【0037】
これらの脂肪族ジカルボン酸由来構成成分以外の酸由来構成成分(2重結合を持つジカルボン酸由来構成成分および/又はスルホン酸基を持つジカルボン酸由来構成成分)の、全酸由来構成成分における含有量としては、1〜20構成モル%が好ましく、2〜10構成モル%がより好ましい。
【0038】
前記含有量が、1構成モル%未満の場合には、顔料分散が良くなかったり、乳化粒子径が大きくなり、凝集によるトナー径の調整が困難となることがある一方、20構成モル%を超えると、ポリエステル樹脂の結晶性が低下し、融点が降下して、画像の保存性が悪くなったり、乳化粒子径が小さ過ぎて水に溶解し、ラテックスが生じないことがある。
尚、本明細書において「構成モル%」とは、ポリエステル樹脂における各構成成分(酸由来構成成分またはアルコール由来構成成分)を1単位(モル)としたときの百分率を指す。
【0039】
<アルコール由来構成成分>
アルコール由来構成成分となるためのアルコールとしては、脂肪族ジオールが好ましく、鎖炭素数が7〜20である直鎖型脂肪族ジオールがより好ましい。前記脂肪族ジオールが、分岐型では、ポリエステル樹脂の結晶性が低下し、融点が降下するため、耐トナーブロッキング性、画像保存性、および、低温定着性が悪化してしまう場合がある。また、前記鎖炭素数が、7未満であると、芳香族ジカルボン酸と縮重合させる場合、融点が高くなり、低温定着が困難となることがある一方、20を超えると、実用上の材料の入手が困難となり易い。前記鎖炭素数としては、14以下であることがより好ましい。
【0040】
また、芳香族ジカルボン酸と縮重合させてポリエステルを得る場合、前記鎖炭素数としては、奇数であるのが好ましい。前記鎖炭素数が、奇数である場合には、偶数である場合よりポリエステル樹脂の融点が低くなり、該融点が、後述の数値範囲内の値となり易い。
【0041】
脂肪族ジオールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオール、などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのうち、入手容易性を考慮するとエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールが好ましい。
【0042】
前記アルコール由来構成成分は、脂肪族ジオール由来構成成分の含有量が80構成モル%以上であって、必要に応じてその他の成分を含む。前記アルコール由来構成成分としては、前記脂肪族ジオール由来構成成分の含有量が90構成モル%以上であるのが好ましい。
【0043】
前記脂肪族ジオール由来構成成分の含有量が、80構成モル%未満では、ポリエステル樹脂の結晶性が低下し、融点が降下するため、耐トナーブロッキング性、画像保存性および、低温定着性が悪化してしまう場合がある。
一方、必要に応じて含まれるその他の成分としては、2重結合を持つジオール由来構成成分、スルホン酸基を持つジオール由来構成成分等の構成成分が挙げられる。
【0044】
前記2重結合を持つジオールとしては、2−ブテン−1,4−ジオール、3−ブテン−1,6−ジオール、4−ブテン−1,8−ジオール等が挙げられる。 前記スルホン酸基を持つジオールとしては、1,4−ジヒドロキシ−2−スルホン酸ベンゼンナトリウム塩、1,3−ジヒドロキシメチル−5−スルホン酸ベンゼンナトリウム塩、2−スルホ−1,4−ブタンジオールナトリウム塩等が挙げられる。
【0045】
これらの、脂肪族ジオール由来構成成分以外のアルコール由来構成成分を加える場合(2重結合を持つジオール由来構成成分および/又はスルホン酸基を持つジオール由来構成成分)、これらのアルコール由来構成成分における含有量としては、1〜20構成モル%が好ましく、2〜10構成モル%がより好ましい。
前記脂肪族ジオール由来構成成分以外のアルコール由来構成成分の含有量が、1構成モル%未満の場合には、顔料分散が良くなかったり、乳化粒子径が大きくなり、凝集によるトナー径の調整が困難となることがある一方、20構成モル%を超えると、ポリエステル樹脂の結晶性が低下し、融点が降下して、画像の保存性が悪くなったり、乳化粒子径が小さ過ぎて水に溶解し、ラテックスが生じないことがある。
【0046】
前記結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)としては、3,000〜30000であることが好ましく、3500〜20000以下であることがより好ましい。重量平均分子量が3000より小さい場合、高温定着時における耐ホットオフセット性が悪化し、30000より大きい場合、樹脂の乳化や乳化粒子の融合が進みにくくなるばかりではなく、トナー粒子の低温定着性が悪化する。
【0047】
一方、本発明のトナーに使用することができる無定形高分子としては、例えば、従来公知の熱可塑性結着樹脂などが挙げられ、具体的には、スチレン、パラクロロスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類の単独重合体又は共重合体(スチレン系樹脂);アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のビニル基を有するエステル類の単独重合体又は共重合体(ビニル系樹脂);アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルニトリル類の単独重合体又は共重合体(ビニル系樹脂);ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類の単独重合体又は共重合体(ビニル系樹脂);ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類の単独重合体又は共重合体(ビニル系樹脂);エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類の単独重合体又は共重合体(オレフィン系樹脂);エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂等の非ビニル縮合系樹脂、及びこれらの非ビニル縮合系樹脂とビニル系モノマーとのグラフト重合体などが挙げられる。これらの樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0048】
これらの樹脂の中でもビニル系樹脂やポリエステル樹脂が特に好ましい。ビニル系樹脂の場合、イオン性界面活性剤などを用いて乳化重合やシード重合により樹脂粒子分散液を容易に調製することができる点で有利である。前記ビニル系モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、ケイ皮酸、フマル酸、ビニルスルフォン酸、エチレンイミン、ビニルピリジン、ビニルアミンなどのビニル系高分子酸やビニル系高分子塩基の原料となるモノマー挙げられる。本発明においては、前記樹脂粒子が、前記ビニル系モノマーをモノマー成分として含有するのが好ましい。本発明においては、これらのビニル系モノマーの中でも、ビニル系樹脂の形成反応の容易性等の点でビニル系高分子酸がより好ましく、具体的にはアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、ケイ皮酸、フマル酸などのカルボキシル基を解離基として有する解離性ビニル系モノマーが、重合度やガラス転移点の制御の点で特に好ましい。
【0049】
なお、前記解離性ビニル系モノマーにおける解離基の濃度は、例えば、高分子ラテックスの化学(高分子刊行会)に記載されているような、トナー粒子等の粒子を表面から溶解して定量する方法などにより決定することができる。なお、前記方法等により、粒子の表面から内部にかけての樹脂の分子量やガラス転移点を決定することもできる。
【0050】
一方、本発明のトナーにおいて無定形高分子として用いることができるポリエステル樹脂は、樹脂の酸価の調整やイオン性界面活性剤などを用いて乳化分散することにより、樹脂粒子分散液を容易に調製することができる点で有利である。乳化分散に用いる無定形のポリエステル樹脂は多価カルボン酸と多価アルコールとを脱水縮合して合成される。
【0051】
多価カルボン酸の例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、などの芳香族カルボン酸類、無水マレイン酸、フマール酸、コハク酸、アルケニル無水コハク酸、アジピン酸などの脂肪族カルボン酸類、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式カルボン酸類が挙げられる。これらの多価カルボン酸を1種又は2種以上用いることができる。これら多価カルボン酸の中、芳香族カルボン酸を使用することが好ましく、また良好なる定着性を確保するために架橋構造あるいは分岐構造をとるためにジカルボン酸とともに3価以上のカルボン酸(トリメリット酸やその酸無水物等)を併用することが好ましい。
【0052】
多価アルコールの例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、などの脂肪族ジオール類、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAなどの脂環式ジオール類、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの芳香族ジオール類が挙げられる。これら多価アルコールの1種又は2種以上用いることができる。これら多価アルコールの中、芳香族ジオール類、脂環式ジオール類が好ましく、このうち芳香族ジオールがより好ましい。また良好なる定着性を確保するため、架橋構造あるいは分岐構造をとるためにジオールとともに3価以上の多価アルコール(グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール)を併用してもよい。
【0053】
なお、多価カルボン酸と多価アルコールとの重縮合によって得られたポリエステル樹脂に、さらにモノカルボン酸、および/またはモノアルコールを加えて、重合末端のヒドロキシル基、および/またはカルボキシル基をエステル化し、ポリエステル樹脂の酸価を調整しても良い。モノカルボン酸としては酢酸、無水酢酸、安息香酸、トリクロル酢酸、トリフルオロ酢酸、無水プロピオン酸等を挙げることができ、モノアルコールとしてはメタノール、エタノール、プロパノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、トリフルオロエタノール、トリクロロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、フェノールなどを挙げることができる。
【0054】
結晶性ポリエステル樹脂及び無定形高分子のポリエステル樹脂は上記多価アルコールと多価カルボン酸を常法に従って縮合反応させることによって製造することができる。例えば、上記多価アルコールと多価カルボン酸、必要に応じて触媒を入れ、温度計、撹拌器、流下式コンデンサを備えた反応容器に配合し、不活性ガス(窒素ガス等)の存在下、150〜250℃で加熱し、副生する低分子化合物を連続的に反応系外に除去し、所定の酸価に達した時点で反応を停止させ、冷却し、目的とする反応物を取得することによって製造することができる。
【0055】
このポリエステル樹脂の合成に使用する触媒としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド等の有機金属やテトラブチルチタネート等の金属アルコキシドなどのエステル化触媒が挙げられる。このような触媒の添加量は、原材料の総量に対して0.01〜1質量%とすることが好ましい。
【0056】
本発明のトナーに使用することができる無定形高分子は、テトラヒドロフラン(THF)可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフイー(GPC)法による分子量測定で、重量平均分子量(Mw)が5000〜1000000であることが好ましく、更に好ましくは7000〜500000であり、数平均分子量(Mn)は2000〜100000であることが好ましく、分子量分布Mw/Mnが1.5〜100であることが好ましく、更に好ましくは2〜60で重量質量平均分子量及び数平均分子量が上記範囲より小さい場合には、低温定着性には効果的ではある一方で、耐ホットオフセット性が著しく悪くなるばかりでなく、トナーのガラス転移点を低下させる為、トナーのブロッキング等保存性にも悪影響を及ぼす。一方、上記範囲より分子量が大きい場合には、耐ホットオフセット性は充分付与できるものの、低温定着性は低下する他、トナー中に存在する結晶性ポリエステル相の染み出しを阻害する為、ドキュメント保存性に悪影響を及ぼす可能性がある。したがって、上述の条件を満たすことによって低温定着性と耐ホットオフセット性、ドキュメント保存性を両立し得る。
【0057】
結着樹脂の分子量は、THF可溶物を、東ソー製GPC・HLC−8120、東ソー製カラム・TSKgel SuperHMーM(15cm)を使用し、THF溶媒で測定し、単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して分子量を算出したものである。
【0058】
ポリエステル樹脂の酸価(樹脂1gを中和するに必要なKOHのmg数)は、前記のような分子量分布を得やすいことや、乳化分散法によるトナー粒子の造粒性を確保しやすいことや、得られるトナーの環境安定性(温度・湿度が変化した時の帯電性の安定性)を良好なものに保ちやすいことなどから、1〜30mgKOH/gであることが好ましい。ポリエステル樹脂の酸価は、原料の多価カルボン酸と多価アルコールの配合比と反応率により、ポリエステルの末端のカルボキシル基を制御することによって調整することができる。あるいは多価カルボン酸成分として無水トリメリット酸を使用することによってポリエステルの主鎖中にカルボキシル基を有するものが得られる。
【0059】
トナーに使用される結晶性ポリエステル樹脂およびトナーに使用することができる無定形高分子のガラス転移温度は、35〜100℃であることが好ましく、貯蔵安定性とトナーの定着性のバランスの点から、50〜80℃であることがより好ましい。ガラス転移温度が35℃未満であると、トナーが貯蔵中又は現像機中でブロッキング(トナーの粒子が凝集して塊になる現象)を起こしやすい傾向にある。一方、ガラス転移温度が100℃を超えると、トナーの定着温度が高くなってしまい好ましくない。
【0060】
本発明のトナーに用いられる着色剤は、特に制限はなく、公知の着色剤が挙げられ、目的に応じて適宜選択することができる。顔料を1種単独で用いても良いし、同系統の顔料を2種以上混合して用いても良い。又、異系統の顔料を2種以上混合して用いても良い。前記着色剤としては、具体的には例えばファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック、ベンガラ、アニリンブラック、紺青、酸化チタン、磁性粉等の無機顔料、ファストイエロー、モノアゾイエロー、ジスアゾイエロー、ピラゾロンレッド、キレートレッド、ブリリアントカーミン(3B、6B等)、パラブラウン等のアゾ顔料、銅フタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニンが、フラパントロンイエロー、ジブロモアントロンオレンジ、ペリレンレッド、キナクリドンレッド、ジオキサジンバイオレット等の縮合多環系顔料等が挙げられる。
【0061】
また、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、パーマネントオレンジGTR,ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチャンレッド、パーマネントレッド、デュポンオイルレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ローズベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオキサレート、パラブラウン、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー180、C.I.ピグメント・イエロー12、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3等の種々の顔料をあげることができる。
【0062】
本発明のトナーにおける前記着色剤の含有量としては、前記結着樹脂100質量部に対して、1〜30質量部が好ましいが、定着後における画像表面の平滑性を損なわない範囲で、かかる数値範囲の中でもできるだけ多い方が好ましい。着色剤の含有量を多くすると、同じ濃度の画像を得る際、画像の厚みを薄くすることができ、オフセットの防止に有効な点で有利である。
尚、前記着色剤の種類を適宜選択することにより、イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー、ブラックトナー等の各色トナーが得られる。
【0063】
本発明のトナーに用いられる離型剤としては、公知の離型剤であれば特に限定されないが、例えば、カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックス、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレン、サゾールワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、パラフィンワックス、モンタンワックス等の合成或いは鉱物・石油系ワックス、脂肪酸エステル、モンタン酸エステル等のエステル系ワックスなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。また、これらの離型剤は、1種単独で用いても良く、2種以上併用しても良い。
【0064】
本発明に用いられる離型剤の融点としては、50〜110℃であることが好ましい。融点が上記範囲より低い場合には、トナー粉体の流動性や高温環境下での保管安定性に悪影響を及ぼす他、帯電性が悪化する懸念が生じる、一方、融点が上記範囲より高い場合には、低温定着時に離型剤が溶解せず、定着ロールからの剥離性に対して十分な離型効果が期待できないことが考えられる。
【0065】
離型剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、1から30質量部の範囲内であることが好ましく、2〜20質量部の範囲内であることがより好ましい。離型剤の含有量が1質量部未満であると離型剤添加の効果がなく、高温でのホットオフセットを引き起こす場合がある。一方、30質量部を超えると、帯電性に悪影響を及ぼす他、トナーの機械的強度が低下する為、現像機内でのストレスで破壊されやすくなり、キャリア汚染などを引き起こす場合がある。また、カラートナーとして用いた場合、定着画像中にドメインが残留し易くなり、OHP透明性が悪化するという問題が生じる場合がある。
【0066】
本発明のトナーには、上記必須成分のほかに、目的に応じて公知の添加剤などを適宜選択して用いることができる。例えば、無機微粒子、有機微粒子、帯電制御剤、クリーニング助剤等の公知の各種添加剤が挙げられる。
【0067】
前記無機微粒子は、一般にトナーの流動性を向上させる目的で使用される。前記無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化セリウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素あるいはこれらの表面を疎水化処理したもの等、公知の無機微粒子単独又は二種以上組み合わせて使用することができる。又これら無機微粒子は種々の表面処理を施されてもよく、例えばシランカップリング剤、チタンカップリング剤、シリコーンオイル等で表面処理されたものが好ましい。
【0068】
これら無機微粒子を内添することによりトナーの粘弾性を調整することもでき、その場合、画像光沢度や用紙への染み込みを調整することができる。無機微粒子は原料に対して、0.5〜15質量%含有されることが好ましく、1〜10質量%が更に好ましい。
【0069】
前記有機微粒子は、一般にクリーニング性や転写性を向上させる目的で使用される。前記有機微粒子としては、例えば、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリフッ化ビニリデン等の微粒子が挙げられる。
【0070】
前記無機微粒子または有機微粒子は、これらのうち少なくとも1種の平均一次粒子径は、30nm〜200nmであることが好ましく、30nm〜150nmであることがより好ましい。
【0071】
前記帯電制御剤は、一般に帯電性を向上させる目的で使用される。前記帯電制御剤としては、例えば、クロム系アゾ染料、鉄系アゾ染料等の含金属アゾ化合物、アルミニウムアゾ染料、サリチル酸金属塩、ニグロシンや4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0072】
<トナーの好ましい物性>
以上、本発明に用いられるトナについて詳細に説明したが、当該トナーは更に以下に示す部製であることが好ましい。
本発明に用いられるトナーは角周波数1rad/s、90℃における貯蔵弾性率GL(90)及び損失弾性率GN(90)と角周波数1rad/s、120℃における貯蔵弾性率GL(120)及び損失弾性率GN(120)の全てが1×105Pa以下であり、貯蔵弾性率GL(90)と貯蔵弾性率GL(120)との関係が下記式(1)を満たすことが好ましい。
log GL(90)− log GL(120)< 2 ・・・ 式(1)
【0073】
貯蔵弾性率GL、損失弾性率GNは、回転平板型レオメーター(RDA 2RHIOSシステム Ver.4.3.2,レオメトリックス・サイエンテイフィック・エフ・イー(株)製)を用いて測定したものである。
測定は、試料をサンプルホルダーにセッティングし、昇温速度1℃/min、周波数1rad/s、歪み20%以下、測定保証値の範囲内の検出トルクで測定を行った。必要に応じて、サンプルホルダーを8mmと20mmに使い分けて測定を行なう。
【0074】
貯蔵弾性率GL(90)が1×105Pa以下であれば、100付近という低温での定着が可能である。又、log GL(90)− log GL(120)< 2であることは、溶融後の温度変化が小さいことを示し、定着装置に温度むらがあったとしても、定着後の画像に溶融むらやグロスむらの発生しにくいことを意味する、これにより、トナーの用紙に対する過度の染み込みやホットオフセットの発生を防止することにもつながる。
【0075】
また、本発明に用いられるトナーは、耐オフセット性を良好にするために120℃における溶融粘度が100Pa・S以上であることが好ましい。
更に、本発明に用いられるトナーは、常温下で十分な硬さを有することが望まれる。具体的には、その動的粘弾性が、角周波数1rad/sec、30℃において、貯蔵弾性率GL(30)が1×106Pa以上であり、損失弾性率GN(30)が1×106Pa以上であることが望ましい。なお、貯蔵弾性率GLおよび損失弾性率GNは、JIS K−6900にその詳細が規定されている。
【0076】
角周波数1rad/sec、30℃において、貯蔵弾性率GL(30)が1×106Pa未満であったり、損失弾性率GN(30)が1×106Pa未満であると、現像機内でキャリアと混合された時に、キャリアから受ける圧力や剪断力によりトナーの粒子が変形し、安定な帯電現像特性を維持することができないことがある。また、潜像保持体(感光体)上のトナーがクリーニングされる際に、クリーニングブレードから受ける剪断力によって変形し、クリーニング不良をも生ずることがある。
前記角周波数1rad/sec、30℃において貯蔵弾性率GL(30)および損失弾性率GN(30)が上記範囲にある場合には、高速の電子写真装置に用いた場合でも定着時の特性が安定し好ましい。
【0077】
本発明の電子写真用トナーの製造方法は特に限定されるものではないが、湿式造粒法により作製されることが好ましい。前記湿式造粒法としては、公知の溶融懸濁法、乳化凝集法、溶解懸濁法等の方法が挙げられるが、本発明においては、これらの中でも乳化凝集法が好適に用いられる。
【0078】
乳化凝集法を用いる場合、本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法は、少なくとも結晶性ポリエステル微粒子と無定形高分子微粒子を含む分散液中で、前記2種類の樹脂微粒子を含む凝集粒子を形成する凝集工程と、前記凝集を融合させる融合工程と、少なくとも含むものであることが好ましく、さらに、好ましくは結晶性ポリエステル微粒子の凝集粒子を作製後、その表面に無定形高分子微粒子を付着させる付着工程を経て、加熱することにより融合させる融合工程を、含むことがより好ましい。以下、各工程について詳細に説明する。
【0079】
−乳化工程−
前記乳化工程において、原料分散液は、結着樹脂の乳化粒子(以下、「樹脂粒子」と略す)と、水系媒体および必要に応じて着色剤や離型剤を含む分散液とを混合した溶液に、剪断力を与えることにより形成される。したがって結着樹脂は原料分散液中にあらかじめ樹脂粒子として分散させておく必要がある。
【0080】
前記樹脂粒子の平均粒径としては、通常1μm以下であり、0.01〜1μmであるのが好ましい。前記平均粒径が1μmを越えると、最終的に得られる静電荷像現像用トナーの粒径分布が広くなったり、遊離粒子の発生が生じ、性能や信頼性の低下を招き易い。一方、前記平均粒径が前記範囲内にあると前記欠点がない上、トナー間の偏在が減少し、トナー中の分散が良好となり、性能や信頼性のバラツキが小さくなる点で有利である。なお、前期平均粒径は、例えばコールターカウンターなどを用いて測定することができる。
【0081】
前記分散液における分散媒としては、例えば水系媒体や有機溶剤などが挙げられる。
前記水系媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の水、アルコール類などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。本発明においては、前記水系媒体に界面活性剤を添加混合しておくのが好ましい。界面活性剤としては特に限定されるものでは無いが、例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン系界面活性剤などが挙げられる。これらの中でもアニオン界面活性剤、カチオン系界面活性剤が好ましい。前記非イオン系界面活性剤は、前記アニオン界面活性剤又はカチオン系界面活性剤と併用されるのが好ましい。前記界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0082】
なお、前記アニオン界面活性剤の具体例としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウムなどが挙げられる。また、前記カチオン界面活性剤の具体例としては、アルキルベンゼンジメチルアンモニウムクロライド、アルキルトリメチルンモニウムクロライド、ジステアリルアンモニウムクロライドなどが挙げられる。これらの中でもアニオン界面活性剤、カチオン系界面活性剤等のイオン性界面活性剤が好ましい。
前記有機溶剤としては、例えば、酢酸エチル、トルエンが挙げられ、前記結着樹脂に応じて適宜選択して用いる。
【0083】
前記樹脂粒子が、前記ビニル基を有するエステル類、前記ビニルニトリル類、前記ビニルエーテル類、前記ビニルケトン類等のビニル系単量体の単独重合体又は共重合体(ビニル系樹脂)である場合には、前記ビニル系単量体をイオン性界面活性剤中で乳化重合やシード重合等することにより、ビニル系単量体の単独重合体又は共重合体(ビニル系樹脂)製の樹脂粒子をイオン性界面活性剤に分散させてなる分散液が調製される。
【0084】
前記樹脂粒子が、前記ビニル系単量体の単独重合体又は共重合体以外の樹脂である場合には、該樹脂が、水への溶解度が比較的低い油性溶剤に溶解するのであれば、該樹脂を該油性溶剤に溶解させ、この溶液を、ホモジナイザー等の分散機を用いてイオン性界面活性剤や高分子電解質と共に水中に微粒子分散し、その後、加熱又は減圧して該油性溶剤を蒸散させることにより、ビニル系樹脂以外の樹脂製の樹脂粒子をイオン性界面活性剤に分散させてなる分散液が調製される。
【0085】
一方、前記樹脂粒子が、結晶性ポリエステル及び無定形ポリエステル樹脂である場合、中和によりアニオン型となり得る官能基を含有した、自己水分散性をもっており、親水性となり得る官能基の一部又は全部が塩基で中和された、水性媒体の作用下で安定した水分散体を形成できる。結晶性ポリエステル及び無定形ポリエステル樹脂において中和により親水性基と成り得る官能基はカルボキシル基やスルフォン基等の酸性基である為、中和剤としては例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、アンモニア等の無機塩基や、ジエチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミンなどの有機塩基が挙げられる。
【0086】
また、結着樹脂として、それ自体水に分散しない、すなわち自己水分散性を有しないポリエステル樹脂を用いる場合には、後述する離型剤と同様、樹脂溶液及び又はそれと混合する水性媒体に、イオン性界面活性剤、高分子酸、高分子塩基等の高分子電解質と共に分散し、融点以上に加熱し、強い剪断力を印加可能なホモジナイザーや圧力吐出型分散機を用いて処理すると、容易に1μm以下の微粒子にされ得る。このイオン性界面活性剤や高分子電解質を用いる場合には、その水性媒体中における濃度は、0.5〜5重量%程度になるようにするのが適当である。
【0087】
前記乳化工程で、樹脂分散液と混合される着色剤としては、既述した着色剤を用いることができる。
前記着色剤の分散方法としては、任意の方法、例えば回転せん断型ホモジナイザーや、メディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミルなどの一般的な分散方法を使用することができ、なんら制限されるものではない。必要に応じて、界面活性剤を使用してこれら着色剤の水分散液を調製したり、分散剤を使用してこれら着色剤の有機溶剤分散液を調製したりすることもできる。以下、かかる着色剤の分散液のことを、「着色粒子分散液」という場合がある。分散に用いる界面活性剤や分散剤としては、前記結着樹脂を分散させる際に用い得る分散剤と同様のものを用いることができる。
【0088】
前記着色剤の添加量としては、前記ポリマーの総量に対して1〜20質量%とすることが好ましく、1〜10質量%とすることがより好ましく、2〜10質量%とすることがさらに好ましく、2〜7質量%とすることが特に好ましく、定着後における画像表面の平滑性を損なわない範囲でできるだけ多い方が好ましい。着色剤の含有量を多くすると、同じ濃度の画像を得る際、画像の厚みを薄くすることができ、オフセットの防止の点で有利である。
また、これらの着色剤は、その他の微粒子成分と共に混合溶媒中に一度に添加してもよいし、分割して多段回で添加してもよい。
【0089】
前記乳化工程で、樹脂分散液と混合される離型剤としては、既述した離型剤を用いることができる。
離型剤は、自己水分散性をもたないポリエステル樹脂を乳化分散する場合と同様、水中にイオン性界面活性剤等と共に分散し、融点以上に加熱し、強い剪断力を印加可能なホモジナイザーや圧力吐出型分散機を用いて、1μm以下の分散微粒子径に調整にされる。離型剤分散液における分散媒としては、結着樹脂の分散媒と同様のものを用いることができる。
【0090】
本発明において前記結着樹脂や離型剤を水性媒体と混合して、乳化分散させる装置としては、例えばホモミキサー(特殊機化工業株式会社)、あるいはスラッシャー(三井鉱山株式会社)、キャビトロン(株式会社ユーロテック)、マイクロフルイダイザー(みずほ工業株式会社)、マントン・ゴーリンホミジナイザー(ゴーリン社)、ナノマイザー(ナノマイザー株式会社)、スタティックミキサー(ノリタケカンパニー)などの連続式乳化分散機等が挙げられる。
【0091】
前記乳化工程における結着樹脂分散液に含まれる樹脂粒子の含有量及び、着色剤及び離型剤の分散液における、着色剤、離型剤それぞれの含有量は通常、5〜50質量%であり、好ましくは10〜40質量%である。前記含有量が前記範囲外にあると、粒度分布が広がり、特性が悪化する場合がある。
【0092】
なお、本発明において、目的に応じて、前記結着樹脂分散液に、既述したような内添剤、帯電制御剤、無機粉体等のその他の成分が分散させておいても良い。
なお、本発明における帯電制御剤としては、凝集工程や融合工程の安定性に影響するイオン強度の制御と廃水汚染減少の点で、水に溶解しにくい素材のものが好ましい。
【0093】
前記その他の成分の平均粒径としては、通常1μm以下であり、0.01〜1μmであることが好ましい。前記平均径が1μmを超えると、最終的に得られる静電荷像現像用トナーの粒径分布が広くなったり、遊離粒子の発生が生じ、性能や信頼性の低下を招きやすい。一方、前記平均粒径が前記範囲内にあると前記欠点がない上、トナー間の偏在が減少し、トナー中の分散が良好となり性能や信頼性のばらつきが小さくなる点で有利である。
【0094】
−凝集工程−
凝集工程においては、乳化工程で得られた樹脂粒子、及び着色剤、離型剤の分散液を混合し(以下この混合液を「原料分散液」という)、前記結着樹脂の融点付近の温度で、かつ融点以下の温度にて加熱してそれぞれの分散粒子を凝集させた凝集粒子を形成する。
【0095】
凝集粒子の形成は、回転せん断型ホモジナイザーで攪拌下、室温で凝集剤を添加し、原料分散液のpHを酸性にすることによってなされる。当該pHとしては、結着樹脂の無定形高分子としてビニル系共重合体を用いる場合には、3.5〜6が好ましく、4〜6がより好ましい。
【0096】
一方、結着樹脂(無定形高分子)としてポリエステル樹脂を用いる場合、原料分散液を調整する前のポリエステル樹脂の乳化分散液のpHが7〜8である為、pH3〜5である結晶性ポリエステル樹脂の乳化分散液や着色剤、離型剤分散液を混合すると、極性のバランスが崩れて、緩凝集が生じてしまう。そこで、原料分散液を混合した時点で、pHを4〜6に調整して加熱し、凝集粒子を形成させる。
【0097】
前記凝集工程に用いられる凝集剤は、前記分散剤に用いる界面活性剤と逆極性の界面活性剤、無機金属塩の他、2価以上の金属錯体を好適に用いることができる。特に、金属錯体を用いた場合には界面活性剤の使用量を低減でき、帯電特性が向上するため特に好ましい。
【0098】
前記無機金属塩としては、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウムなどの金属塩、および、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシウム等の無機金属塩重合体などが挙げられる。その中でも特に、アルミニウム塩およびその重合体が好適である。よりシャープな粒度分布を得るためには、無機金属塩の価数が1価より2価、2価より3価、3価より4価の方が、また、同じ価数であっても重合タイプの無機金属塩重合体の方が、より適している。
また、凝集工程においては、加熱による急凝集を抑える為に、室温で攪拌混合している段階でpH調整を行ない、必要に応じて分散安定剤を添加することが好ましい(以下、この段階を「プレ凝集工程」という)。このプレ凝集工程に用いる分散安定剤としては、極性を変えないようにする為、公知の非イオン性界面活性剤を1〜3%添加することが好ましい。分散安定剤を添加しない場合、加熱凝集工程において、原料粒子の微粉の取り込みが悪くなり、結果として粒度分布がブロードになってしまうという不具合がある。また、分散安定剤はプレ凝集工程と加熱凝集工程との両方に分けて添加しても効果的である。
−付着工程−
付着工程では、上記した凝集工程を経て形成された結晶性ポリエステルを含む凝集粒子(以下、「コア凝集粒子」と略す)の表面に無定形高分子粒子を付着させることにより被覆層を形成する(以下、コア凝集粒子表面に被覆層を設けたものを「付着凝集粒子」と略す)。なお、この被覆層は、後述する融合工程を経て形成される本発明のトナーの表面層に相当するものである。
被覆層の形成は、凝集工程においてコア凝集粒子を形成した分散液中に、無定形高分子粒子を含む分散液を追添加することにより行うことができ、必要に応じて他の成分も同時に追添加してもよい。付着工程においても、用いる無定形高分子に応じて凝集工程と同様にpHや凝集剤を選択し、付着凝集粒子中に含まれる2種以上の結着樹脂のうち、最も融点の低い結着樹脂の融点以下の温度にて加熱し付着凝集粒子を得ることができる。また、この付着工程は、プレ凝集の段階で凝集粒子に取り込まれなかった原料微粒子を凝集に導くことにおいても有効である。
【0099】
−融合工程−
融合工程においては、凝集工程と同様の攪拌下で、凝集粒子(結晶性ポリエステル微粒子及び無定形高分子微粒子を含む)または付着凝集粒子(以下これを「(付着)凝集粒子」と略す)の懸濁液のpHを6.5〜8.5の範囲にすることにより、凝集の進行を止めた後、結着樹脂の融点以上の温度で加熱を行うことにより(付着)凝集粒子を融合させる。なお、(付着)凝集粒子を含む分散液の液性にもよるが、凝集を停止するpHが適性なpHでないと、融合させる為の昇温過程で、(付着)凝集粒子がばらけてしまい収率が悪くなる。また、融合工程は、必要に応じて凝集工程を得た後に実施してもよい。
【0100】
融合時の加熱の温度としては、(付着)凝集粒子中に含まれる結着樹脂の融点以上であれば問題無い。前記加熱の時間としては、融合が十分に為される程度行えばよく、0.5〜1.5時間程度行えばよい。それ以上時間を掛けるとコア凝集粒子に含まれる結晶性ポリエステルがトナー表面ヘ露出し易くなってしまう。したがって、定着性、ドキュメント保存性には効果的であるが、帯電性に悪影響を及ぼすため、長時間加熱するのは好ましくない。
【0101】
前記融合工程においては、前記結着樹脂が融点以上に加熱されている時に、あるいは融合が終了した後に、架橋反応を行わせてもよい。また、融合と同時に架橋反応を行うこともできる。架橋反応を行わせる場合には、例えば、結着樹脂として2重結合成分を共重合させた、不飽和スルホン化結晶性ポリエステル樹脂を用い、この樹脂にラジカル反応を起こさせ、架橋構造を導入する。この際、以下に示す重合開始剤を用いる。
【0102】
重合開始剤としては、例えば、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、クミルパーピバレート、t−ブチルパーオキシラウレート、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,4−ビス(t−ブチルパーオキシカルボニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、n−ブチル4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バリレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル‐2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルジパーオキシイソフタレート、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、ジ−t−ブチルパーオキシα−メチルサクシネート、ジ−t−ブチルパーオキシジメチルグルタレート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼラート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジエチレングリコール−ビス(t−ブチルパーオキシカーボネート)、ジ−t−ブチルパーオキシトリメチルアジペート、トリス(t−ブチルパーオキシ)トリアジン、ビニルトリス(t―ブチルパーオキシ)シラン、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジンジハイドロクロライド)、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]、4,4’−アゾビス(4−シアノワレリックアシド)等が挙げられる。
【0103】
これら重合開始剤は、単独で使用することも、または2種以上を併用することもできる。重合開始剤の量や種類は、ポリマー中の不飽和部位量、共存する着色剤の種類や量によって選択される。
重合開始剤は、乳化工程前にあらかじめポリマーに混合しておいてもよいし、凝集工程で凝集塊に取り込ませてもよい。さらには、融合工程、或いは融合工程の後に導入してもよい。凝集工程、付着工程、融合工程、あるいは融合工程の後に導入する場合は、重合開始剤を溶解、または乳化した液を、粒子分散液(樹脂粒子分散液等)に加える。これらの重合開始剤には、重合度を制御する目的で、公知の架橋剤、連鎖移動剤、重合禁止剤等を添加してもよい。
【0104】
融合して得た融合粒子は、ろ過などの固液分離工程や、必要に応じて洗浄工程、乾燥工程を経てトナーの粒子とすることができる。この場合、トナーとして十分な帯電特性、信頼性を確保するために、洗浄工程において、十分に洗浄することが好ましい。
【0105】
乾燥工程では、通常の振動型流動乾燥法、スプレードライ法、凍結乾燥法、フラッシュジェット法など、任意の方法を採用することができる。トナーの粒子は、乾燥後の含水分率を1.0%以下、好ましくは0.5%以下に調整することが望ましい。
【0106】
上述のように乾燥工程を経て造粒されたトナー粒子は、その他の成分として、目的に応じて既述したような無機微粒子、有機微粒子等の公知の各種外添剤を添加することができる。
【0107】
本発明に用いられるトナーの体積平均粒子径としては、1〜20μmが好ましく、3〜10μmがより好ましく、また、数平均粒子径としては、1〜20μmが好ましく、3〜10μmがより好ましい。更に粒度分布の指標である(体積平均粒子径)÷(数平均粒子径)の値は1.6以下が好ましく、1.5以下が更に好ましい。この値が1.6より大きいと粒度分布の広がりが大きくなる為、帯電の分布も広くなってしまい、逆極性のトナーやローチャージトナーが発生する場合がある。
【0108】
前記体積平均粒子径および数平均粒子径は、例えば、コールターカウンター[TA−II]型(コールター社製)を用いて、50μmのアパーチャー径で測定することにより求めることができる。この時、測定はトナーを電解質水溶液(アイソトン水溶液)に分散させ、超音波により30秒以上分散させた後に行う。
【0109】
本発明の画像形成方法において、初期現像剤および補給用現像剤におけるトナーは、上記した範囲で適宜選定して両者とも実質的に同じ成分、特性等を有するように設定される。ただし、初期現像剤および補給用現像剤におけるキャリアとトナーの混合割合は、異なり、補給用現像剤の場合、現像剤中のキャリアは5〜30質量が好ましく、6〜25質量がより好ましい。
補給用現像剤中のキャリア量が5質量%よりも少ないと、繰り返しコピーを行うことによって、現像剤の帯電量が低くなり、画像濃度の低下が生じ、一方、30質量%を超えると、補給される現像剤の帯電付与能が大きすぎて現像剤の帯電量が急激に変化して画質が不安定になりやすい。
【0110】
次に、本発明の上記補給用現像剤を用いる現像装置を備えた画像形成装置について説明する。図1は、ロータリー回転方式の現像装置を搭載した電子写真方式のフルカラー画像形成装置の概略構成図である。まず、静電潜像担持体1は、一様帯電器15によりその表面を負極性に一様に帯電される。次に、レーザー露光器14により、一色目、例えばブラック画像に対応する像露光がなされ、静電潜像担持体1の表面にはブラック画像に対応する静電潜像が形成される。
【0111】
現像装置13は、回転移動式の構成であり、前記ブラック画像に対応する静電潜像の先端が現像位置に到達する以前に、ブラック現像器が静電潜像担持体1に対向し、その後磁気ブラシが静電潜像を摺擦して、前記静電潜像担持体上にブラックトナー像を形成する。
【0112】
上記の現像に用いられる現像装置には、例えば、現像器の内部は、現像スリーブ、供給ロール、マグネットロール、規制部材、スクレーパ等が設けられている。図2は、図1の現像器2、3、4および5の概略構成図である。図2によって現像機内の現像剤が現像されるまでの搬送されていく流れを説明する。
【0113】
現像スリーブ6は、固定したマグネットを内包し、静電潜像担持体1の周面との間に所定の現像間隔を保ち、駆動回転される。なお、現像スリーブ6と静電潜像担持体1とは接触している場合もある。規制部材7は剛性かつ磁性を有し、現像スリーブ6に対し現像剤が介在しない状態で所定の荷重をもって圧接されるものや、現像スリーブ6との間に所定の間隔を保って配されるもの等、種々のものがある。一対の10、11は、スクリュー構造を持ち、互いに逆方向に現像剤を搬送循環させて、トナーとキャリアを十分撹拌混合した上、現像剤として現像スリーブ6に送る作用をするものである。マグネットロール8は、例えば、N極およびS極を交互に等間隔に配置した等磁力の8極の磁石から構成されるもの、或いは、スクレーパに接する部分において反発磁界を形成し、現像剤の剥離を容易にするために、1極欠落させて7極とし、前記現像スリーブ6内で固定した状態で内包させたものであってもよい。
【0114】
上記二本の現像剤撹拌搬送部材10、11は、互いに相反する方向に回転する撹拌部材を兼ねる部材であって、撹拌スクリューの推力によってトナー収容装置9より補給される補給用トナーを搬送すると共に、トナーと磁性キャリアとの混合作用によって、摩擦帯電がなされた均質な二成分の現像剤とされ、現像スリーブ6の周面上にその現像剤を層状に付着する。現像スリーブ6の表面の現像剤は、マグネットロール8の磁極に対向して設けた非磁性材料と磁性材からなる二重構造の規制部材7により、均一な層を形成する。均一に形成された現像剤層は、現像領域において、静電潜像担持体1の周面上の潜像を現像し、トナー像を形成する。
【0115】
図1において、用紙または透明シート等の転写材12は、給紙トレイ26または27から、送り出しロール28または29により搬送され、一度レジストレーションロール25で先端を塞き止められた後、所定のタイミングで転写ドラム24へと送り出される。送り出された転写材12は、吸着装置32と対向ロール30により転写ドラム24へ静電的に保持され、転写ドラム24と静電潜像担持体1が対向する転写領域へ搬送される。そこで前記転写材は、静電潜像担持体1上のブラックトナー像と密着し、転写装置31の作用でブラックトナー像が転写材12上に転写され、前記転写ドラム24は、転写材12を保持したまま次の工程に備える。
【0116】
ブラックトナーの転写を終えた静電潜像担持体1は、その後、必要に応じてクリーニング前処理が施された後、除電コロトロンで除電され、クリーニング装置18により表面に残ったブラックトナーが掻き取られ、さらに除電装置16で表面に残った電荷が除電される。
【0117】
次に、二色目、例えば、イエローの画像形成工程のために、前記静電潜像担持体1は、帯電器15によりその表面を負極性に一様に帯電され、レーザー露光器14により、イエロー画像に対応する像露光がなされ、静電潜像担持体1の表面にはイエロー画像に対応する静電潜像が形成される。また、現像装置13は、ブラックトナー層の形成を終了した後で、イエローの現像器が前記静電潜像担持体1に対向するように切り換えられており、前記イエロー画像に対応する静電潜像は、イエロー用の磁気ブラシで現像される。そして、前記転写ドラム上に保持されていた転写材が、再び転写領域へと搬送され、転写装置31の作用で、今度はブラックトナーの上にイエロートナーが多重転写される。
【0118】
イエロートナーの転写を終えた静電潜像担持体1は、その後、ブラック画像形成工程と同様にして、表面の残留トナーのクリーニングと残留電荷の除電が行われ、一方で、イエロートナーの転写を終えた転写材は、転写ドラム24に保持されたまま、次の工程に備える。
【0119】
その後、イエロー画像形成工程と同様にして、三色目、例えばマゼンタの画像形成工程が行われ、最後に四色目、例えばシアンの画像形成工程が行われる。最後のシアンの画像形成工程では、転写材の搬送が前記三色目までの工程と異なる。すなわち、四色目の転写を終えた転写材は、剥離除電器19および搬送ガイド部材20の先端の図示していない剥離フィンガーにより、転写ドラム24から分離され、定着器21で多重トナー像が転写材に転写された後、画像形成装置の外に搬出される。
【0120】
また、転写材の分離を終えた転写ドラム24は、その表面を除電装置22、33で除電した後、クリーニング装置23で表面クリーニングが行われ、次の転写材12の供給を待つことになる。
【0121】
上記のような複写動作が繰り返されると、図2の現像器内の現像槽17内に収納されている現像剤中のトナーは徐々に消費され、キャリアに対するトナーの比率、すなわちトナー濃度が低下していく。このトナー濃度の変化は、現像槽17に設けられた図示しないトナー濃度センサによりトナー濃度が現像に必要な適性範囲内に常に入るようにフィードバック制御される。上記制御によりトナー補給部(トナー収容装置9)の補給口から、本発明の補給用現像剤が現像器内の現像槽17に供給される。
【0122】
一方、現像槽17内の現像剤中のキャリアは、現像により消費されることはなく、現像槽17内でのトナーと一緒に撹拌されたり、マグネットロールの磁力、および静電潜像担持体1との接触等の影響により、徐々に表面等が汚染されて、劣化していく。このようにキャリアが劣化していくと、トナーに所定の帯電量を付与し得なくなり、画質の低下を生じることになる。そこで、上記の現像器内の消費されない劣化したキャリアを新しいキャリアと置換する必要がある。図1においては、新しいキャリアを現像装置内に補給する手段として、現像により消費されたトナーを補給するためのトナーカートリッジ(トナー収容装置9)の中に補給用のトナーと上記所定の量のキャリアを混した現像剤〈補給用現像剤)を入れ、トナー収容装置9の補給口から、各々の現像器2、3、4、5に補給する。過剰になった現像剤は、下記のように現像器側現像剤排出口34より排出される。
【0123】
そこで、図1に示した回転移動する現像装置13内の回転移動を利用した現像剤の入れ替えについて図3によって説明する。回転移動方式を採用した現像装置13によりフルカラー画像形成装置において、現像器2、3、4、5は、現像装置13の内部で回転移動し、現像時、静電潜像担持体1に対向する位置に回転移動して現像を行い、非現像時は静電潜像担持体1に対向していない位置に回転移動する。
【0124】
図3においては、現像器2が静電潜像担持体1に対向し、現像動作を行っている状態である。この位置で、現像器2に設けられた現像器側現像剤排出口34から溢出した現像剤は、現像器側現像剤排出口34と回転式現像器切換装置の回転中心軸に設けられた現像剤回収口35をつなぐ連通管36の、一次現像剤蓄積部37に蓄積される。この一次現像剤蓄積部37の体積は、単色モードで回転式現像器切替装置の回転なしに、連続で現像操作を行った場合に排出される現像剤量に比較して、十分に大きい必要がある。
【0125】
次に、現像動作が終了した現像器2は、回転式現像器切替装置の回転により、図3に矢印で示した下から上方向へ45°回転し、現像器3の位置に移動する。この時、一次現像剤蓄積部37に排出された現像剤は、回転動作により連通管36内を移動し、回転式現像器切替装置の回転中心軸に設けられた現像剤回収口35から排出される。図4は、その詳細を説明するものであって、回転軸中心には、現像剤回収オーガー38が設置されており、現像剤回収口35から排出された現像剤は、現像剤回収オーガー38により回転軸内を移動して系外へ排出される。さらに現像動作が継続されると、回転式現像器切替装置の回転により、現像器は現像器4の位置に移動し、連通管36内に搬送されていた現像剤は、完全に現像剤回収口35から排出される。
【0126】
ここで、現像器5の位置および現像動作位置である現像器2の位置では、現像剤回収口35から、連通管36へ回収された現像剤が逆流する恐れがある。しかし現像器5および2の位置で現像剤回収口35から逆流した現像剤は、一次現像剤蓄積部37には到達するが、現像器内部へ侵入することはない。逆流が発生しても、現像器3の位置に到達した時点で、再度現像剤回収口35から排出されるため、現像器内部の現像動作に関わる現像剤に混入せず、画質や現像剤寿命には影響を及ぼさない。
【0127】
連通管36は、図4に示すように、現像位置で現像器側現像剤排出口34から排出された現像剤を貯蔵できるように、また現像器側現像剤排出口35から現像剤が逆流した場合でも、現像器側に侵入しないように、現像器側現像剤排出口34に対して下側に広がる形状がよい。また、45°上方向に回転し、図3の現像器3の位置に移動した時に、現像剤の排出がスムーズになるように、傾斜角を有している。逆流した現像剤の現像器への混入を防止するために、現像器側現像剤排出口34の開口面と回転式現像器切替装置の回転中心に設けられた現像剤回収口35の開口面がなす角度は約90°が望ましい。
【0128】
一方、前記定着工程において、定着機による熱定着の際には、オフセット等を防止するため、通常、前記定着機における定着部材に離型剤が供給される。
【0129】
本発明のトナーにおいて、結着樹脂中に架橋構造がある場合には、その効果から離型性に優れ、離型剤の使用量を低減する、若しくは離型剤を使用せずに定着を行うことができる。
【0130】
前記離型剤は、定着後の被転写体および画像へのオイルの付着をなくす観点からは使用しない方が好ましいが、前記離型剤の供給量を0mg/cm2にすると、定着時に前記定着部材と紙等の被転写体とが接触した際に、前記定着部材の磨耗量が増大し、前記定着部材の耐久性が低下してしまう場合があるので、必要ならば、前記離型剤の使用量が8.0×10−3mg/cm2以下の範囲で、前記定着部材に微量に供給されていることが好ましい。
【0131】
前記離型剤の供給量が、8.0×10−3mg/cm2を越えると、定着後に画像表面に付着した離型剤のために画質が低下し、特にOHPのような透過光を利用する場合には、かかる現象が顕著に現れることがある。また、被転写体への離型剤の付着が顕著になり、ベタ付きが発生することもある。さらに、前記離型剤の供給量は、多くなるほど離型剤を貯蔵しておくタンク容量も大きくしなければならず、定着装置自体の大型化を招く要因ともなる。
【0132】
前記離型剤としては、特に制限はないが、例えば、ジメチルシリコーンオイル、フッ素オイル、フロロシリコーンオイルやアミノ変性シリコーンオイル等の変性オイル等の液体離型剤が挙げられる。中でも、前記定着部材の表面に吸着し、均質な離型剤層を形成しうる観点より、アミノ変性シリコーンオイル等の変性オイルが、前記定着部材に対する塗れ性に優れ、好ましい。また、均質な離型剤層を形成しうる観点より、フッ素オイル、フロロシリコーンオイルが好ましい。
【0133】
前記離型剤として、フッ素オイル、フロロシリコーンオイルを使用するのは、本発明の電子写真用トナーを用いない、従来の画像形成方法においては、離型剤自体の供給量を低減し得ないため、コストの面で実用的ではないが、本発明の電子写真用トナーを使用する場合においては、前記離型剤の供給量を激減できるのでコスト面でも実用上問題がない。
【0134】
前記加熱圧着に用いる定着部材であるローラあるいはベルトの表面に、前記離型剤を供給する方法としては、特に制限はなく、例えば、液体離型剤を含浸したパッドを用いるパッド方式、ウエブ方式、ローラ方式、非接触型のシャワー方式(スプレー方式)等が挙げられ、なかでも、ウエブ方式、ローラ方式が好ましい。これらの方式の場合、前記離型剤を均一に供給でき、しかも供給量をコントロールすることが容易な点で有利である。尚、シャワー方式により前記定着部材の全体に均一に前記離型剤を供給するには、別途ブレード等を用いる必要がある。
【0135】
前記離型剤の供給量は、以下のようにして測定できる。即ち、その表面に離型剤を供給した定着部材に、一般の複写機で使用される普通紙(代表的には、富士ゼロックス(株)製の複写用紙、商品名J紙)を通過させると、該普通紙上に離型剤が付着する。この付着した離型剤をソックスレー抽出器を用いて抽出する。ここで、溶媒にはヘキサンを用いる。
このヘキサン中に含まれる離型剤の量を、原子吸光分析装置にて定量することで、普通紙に付着した離型剤の量を定量できる。この量を離型剤の定着部材への供給量と定義する。
【0136】
トナー像を転写する被転写体(記録材)としては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンター等に使用される普通紙、OHPシート等が挙げられる。
定着後における画像表面の平滑性をさらに向上させるには、前記被転写体の表面もできるだけ平滑であることが好ましく、例えば、普通紙の表面を樹脂等でコーティングしたコート紙、印刷用のアート紙等を好適に使用することができる。
【0137】
本発明の画像形成方法は、本発明の補給用現像剤を用いているため、長期の使用により現像剤収容部内における二成分現像剤の電気抵抗値及び帯電量の双方が大きく変化することなく適正な範囲内に維持され、長期にわたって安定した画質を得ることができる。
【0138】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
−結晶性ポリエステル樹脂分散液(1)の調製−
加熱乾燥した三口フラスコに、セバシン酸ジメチル92.5mol%、および、5−t−ブチルイソフタル酸7.5mol%の酸成分と、エチレングリコール(酸成分に対し2mol倍量)と、触媒としてTi(OBu)4(酸成分に対し、0.012質量%)と、を入れた後、減圧操作により容器内の空気を減圧し、さらに窒素ガスにより不活性雰囲気下とし、機械攪拌にて180℃で5時間還流を行った。その後、減圧蒸留にて過剰なエチレングリコールを除去し、230℃まで徐々に昇温を行い2時間攪拌し、粘稠な状態となったところでGPCにて分子量を確認し、重量平均分子量12000になったところで、減圧蒸留を停止、空冷し結晶性ポリエステル樹脂(1)を得た。
またこの樹脂の融点を、示差走査熱量計(マックサイエンス社製:DSC3110、熱分析システム001)(以下、「DSC」と略記する。)の熱分析装置を用いて測定した。測定は、室温から150℃まで毎分10℃の昇温速度で行い、融点をJIS規格(JIS K−7121参照)により解析したところ、明瞭なピークを有し、ピークトップの温度は69℃であった。
【0139】
ついで、この結晶性ポリエステル(1)80質量部及び脱イオン水720質量部をステンレスビーカーに入れ、温浴につけ、95℃に加熱する。結晶性ポリエステル樹脂が溶融した時点で、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて8000rpmで攪拌した。ついでアニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株):ネオゲンRK)1.6質量部を希釈した水溶液20質量部を滴下しながら、乳化分散を行ない、平均粒径が0.20μmの結晶性ポリエステル樹脂分散液(1)〔樹脂粒子濃度:10質量%〕を調製した。
【0140】
−結晶性ポリエステル樹脂分散液(2)の調製
加熱乾燥した三口フラスコに、セバシン酸ジメチル85mol%、n−オクタデセニルコハク酸無水物15mol%、および、エチレングリコール(酸成分に対し1.5mol倍量)と、触媒としてTi(OBu)4(酸成分に対し、0.012質量%)と、を入れた後、減圧操作により容器内の空気を減圧し、さらに窒素ガスにより不活性雰囲気下とし、機械攪拌にて180℃で6時間還流を行った。その後、減圧蒸留にて過剰なエチレングリコールを除去し、230℃まで徐々に昇温を行い4時間攪拌し、粘稠な状態となったところでGPCにて分子量を確認し、重量平均分子量72000になったところで、減圧蒸留を停止、空冷し結晶性ポリエステル(2)を得た。この融点をDSCを用いて測定したところ、明瞭なピークを有し、ピークトップは67℃であった。
【0141】
ついで、この結晶性ポリエステル(2)80質量部及び脱イオン水720質量部をステンレスビーカーに入れ、温浴につけ、95℃に加熱する。結晶性ポリエステル樹脂が溶融した時点で、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて8000rpmで攪拌する。ついでアニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株):ネオゲンRK)1.6質量部を希釈した水溶液20質量部を滴下しながら、乳化分散を行ない、平均粒径が0.22μmの結晶性ポリエステル樹脂分散液(2)〔樹脂粒子濃度:10質量%〕を調製した。
【0142】
−結晶性ポリエステル樹脂分散液(3)の調製−
加熱乾燥した三口フラスコに、1,10ドデカン二酸90.5mol%、及びイソフタル酸ジメチル−5−スルホン酸ナトリウム2mol%、5−t−ブチルイソフタル酸7.5mol%の酸成分、および、1,9ノナンジオール100mol%と、触媒としてTi(OBu)4(酸成分に対し、0.014質量%)と、を入れた後、減圧操作により容器内の空気を減圧し、さらに窒素ガスにより不活性雰囲気下とし、機械攪拌にて180℃で6時間還流を行った。その後、減圧蒸留にて留出物を除去し、220℃まで徐々に昇温を行い4時間攪拌し、粘稠な状態となったところでGPCにて分子量を確認し、重量平均分子量13000になったところで、減圧蒸留を停止、空冷し結晶性ポリエステル(3)を得た。この融点をDSCを用いて測定したところ、明瞭なピークを示し、ピークトップは72℃であった。
【0143】
ついで、この結晶性ポリエステル(3)80質量部及び脱イオン水720質量部をステンレスビーカーに入れ、温浴につけ、95℃に加熱する。結晶性ポリエステル樹脂が溶融した時点で、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて8000rpmで攪拌する。ついでアニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株):ネオゲンRK)1.6質量部を希釈した水溶液20質量部を滴下しながら、乳化分散を行ない、平均粒径が0.24μmの結晶性ポリエステル樹脂分散液(3)〔樹脂粒子濃度:10質量%〕を調製した。
【0144】
−結晶性ポリエステル樹脂分散液(4)の調製−
加熱乾燥した三口フラスコに、セバシン酸ジメチル95mol%、イソフタル酸ジメチル−5−スルホン酸ナトリウム5mol%、1,3‐プロパンジオール120mol%、触媒としてTi(OBu)4(酸成分に対し、0.02質量%)と、を入れた後、減圧操作により容器内の空気を減圧し、さらに窒素ガスにより不活性雰囲気下とし、機械攪拌にて180℃で6時間還流を行った。その後、減圧蒸留に留出物を除去し、230℃まで徐々に昇温を行い3時間攪拌し、粘稠な状態となったところでGPCにて分子量を確認し、重量平均分子量10800になったところで、減圧蒸留を停止、空冷し結晶性ポリエステル(4)を得た。この融点をDSCを用いて測定したところ、明瞭なピークを示し、ピークトップは48℃であった。
【0145】
ついでこの結晶性ポリエステル(4)80質量部及び脱イオン水720質量部をステンレスビーカーに入れ、温浴につけ、95℃に加熱する。結晶性ポリエステル樹脂が溶融した時点で、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて8000rpmで攪拌する。ついでアニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株):ネオゲンRK)1.6質量部を希釈した水溶液20質量部を滴下し、更にアンモニア水溶液でpHを7.0に調整しながら、乳化分散を行ない、平均粒径が0.26μmの結晶性ポリエステル樹脂分散液(4)〔樹脂粒子濃度:10質量%〕を調製した。
【0146】
−結晶性ポリエステル樹脂分散液(5)の調製−
加熱乾燥した三口フラスコに、テレフタル酸90mol%、イソフタル酸ジメチル−5−スルホン酸ナトリウム10mol%、1,8‐オクタンジオール110mol%、触媒としてTi(OBu)4(酸成分に対し、0.018質量%)とを入れた後、減圧操作により容器内の空気を減圧し、さらに窒素ガスにより不活性雰囲気下とし、機械攪拌にて180℃で6時間還流を行った。その後、減圧蒸留に留出物を除去し、220℃まで徐々に昇温を行い3時間攪拌し、粘稠な状態となったところでGPCにて分子量を確認し、重量平均分子量14300になったところで、減圧蒸留を停止、空冷し結晶性ポリエステル(5)を得た。この融点をDSCを用いて測定したところ、明瞭なピークを示し、ピークトップは128℃であった。
【0147】
ついでこの結晶性ポリエステル(5)80質量部及び脱イオン水720質量部をステンレスビーカーに入れ、温浴につけ、95℃に加熱する。結晶性ポリエステル樹脂が溶融した時点で、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて8000rpmで攪拌する。ついでアニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株):ネオゲンRK)1.6質量部を希釈した水溶液20質量部を滴下し、更にアンモニア水溶液でpHを7.0に調整しながら、乳化分散を行ない、平均粒径が0.22μmの結晶性ポリエステル樹脂分散液(5)〔樹脂粒子濃度:10質量%〕を調製した。
【0148】
−無定形高分子分散液(1)の調整−
・スチレン :370質量部
・nブチルアクリレート : 30質量部
・アクリル酸 : 4質量部
・ドデカンチオール : 24質量部
・四臭化炭素 : 4質量部
以上を混合し、溶解したものを、非イオン性界面活性剤(三洋化成(株)製:ノニポール400)6質量部及びアニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製:ネオゲンSC)10質量部をイオン交換水560質量部に溶解したものに、フラスコ中で分散し、乳化し、10分ゆっくりと混合しながら、これに過硫酸アンモニウム4質量部を溶解したイオン交換水50質量部を投入し、窒素置換を行った後、前記フラスコ内を攪拌しながら内容物が70℃になるまでオイルバスで加熱し、5時間そのまま乳化重合を継続した。こうして、平均粒径が180nm、重量平均分子量(Mw)が15,500である樹脂粒子を分散させてなる無定形高分子分散液(1)(樹脂粒子濃度:40質量%)を調製した。なおこの樹脂分散液を乾燥させ、樹脂の融点をDSCを用いて測定したところ、明瞭なピークは確認できず、ガラス転移点は59℃を示した。
【0149】
−無定形高分子分散液(2)の調整−
・エチレングリコ−ル :486質量部
・ネオペンチルグリコール :650質量部
・テレフタル酸 :957質量部
攪拌装置、窒素導入管、温度センサー、精留塔を備えた内容量5リットルのフラスコに上記のモノマーのを仕込み、1時間を要して温度を190℃まで上げ、反応系内が均一に攪拌されていることを確認した後、ジブチル錫オキサイドの1.2質量部を投入した。さらに生成する水を留去しながら同温度から6時間を要して240℃まで温度を上げ、240℃でさらに3時間脱水縮合反応を継続し、酸価が6.5mgKOH/g、重量平均分子量9700である無定形ポリエステル樹脂(2)を得た。この樹脂の融点をDSCで測定したところ、明瞭なピークは確認できず、ガラス転移点は66℃を示した。
【0150】
ついで、これを溶融状態のまま、キャビトロンCD1010(株式会社ユーロテック製)に毎分100gの速度で移送した。別途準備した水性媒体タンクには試薬アンモニア水をイオン交換水で希釈した0.37質量%濃度の希アンモニア水を入れ、熱交換器で120℃に加熱しながら毎分0.1リットルの速度で、上記ポリエステル樹脂熔融体と同時に上記キャビトロン(株式会社ユーロテック製)に移送した。
回転子の回転速度が60Hz、圧力が5Kg/cm2の条件でキャビトロンを運転し、平均粒径0.14μmのポリエステル樹脂からなる無定形高分子分散液(2)(樹脂粒子濃度:30質量%)を得た。
【0151】
前記無定形ポリエステル樹脂(1)と全く同様にして、酸価が6.0mgKOH/g、軟化点が105℃になるまで、反応をさせた。次いで、温度を190℃まで下げ無水フタル酸の497部を徐々に投入し、同温度で1時間反応を継続し、酸価が51mgKOH/gで重量平均分子量が32000である無定形ポリエステル樹脂を得た。この樹脂の融点をDSCを用いて測定したところ、明瞭なピークは確認できず、ガラス転移点は、67℃であった。
ついでこれを無定形ポリエステル樹脂分散液(2)の調製条件と同様にキャビトロンで乳化分散させ、平均粒径0.23μmのポリエステル樹脂からなる無定形高分子分散液(3)(樹脂粒子濃度:30質量%)を得た。
【0152】
−離型剤分散液の調製−
以上を95℃に加熱して、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて分散した後、マントンゴーリン高圧ホモジナイザ(ゴーリン社)で分散処理し、平均粒径が230nmである離型剤を分散させてなる離型剤分散液(離型剤濃度:20質量%)を調製した。
【0153】
以上を混合し、溶解し、高圧衝撃式分散機アルティマイザー((株)スギノマシン製、HJP30006)を用いて約1時間分散して着色剤(シアン顔料)を分散させてなる着色剤分散液を調製した。着色剤分散液における着色剤(シアン顔料)の平均粒径は、0.15μm、着色剤粒子濃度は23質量%であった。
【0154】
(実施例1)
−トナー母粒子(1)の製造−
・結晶性ポリエステル樹脂分散液(1) :500質量部
・無定形高分子分散液(1) : 75質量部
・着色剤分散液 :22.87質量部
・離型剤分散液 :40質量部
・ノニオン性界面活性剤(IGEPAL CA897):1.05質量部
上記原料を5Lの円筒ステンレス容器に入れ、Ultraturraxにより8000rpmでせん断力を加えながら30分間分散混合する。ついで、凝集剤としてポリ塩化アルミニウムの10%硝酸水溶液0.14質量部を滴下しはじめ、プレ凝集を促進した。それぞれの分散粒子が凝集しはじめると、原料分散液自体の粘度が上昇するので、増粘をはじめたら光学顕微鏡で凝集粒子の大きさを確認しながら、前記凝集剤水溶液を滴下した。またこの際、原料分散液のpHは4.2〜4.5の範囲に制御するのが好ましく、必要に応じて、0.3Nの硝酸や1Nの水酸化ナトリウム水溶液でpH調整を行なう。pHが4.0以下になると凝集粒子径が成長し始めるので、凝集粒子径を大きすぎないようにするには上記範囲が好ましい。上記pH範囲で約2時間保持し、コア凝集粒子を形成した。この際コールターカウンター[TA−II]型(アパーチャー径:50μm;コールター社製)を用いて測定したコア凝集粒子の体積平均粒子径は2〜3μm程度であった。次に、無定形高分子分散液(1)17.5質量部を追添加し、また、形成される付着凝集粒子を安定化させる為にノニオン性界面活性剤(IGEPAL CA897)0.45質量部を添加し、コア凝集粒子表面に無定形高分子粒子を付着させた。
【0155】
その後、攪拌装置、温度計を備えた重合釜に原料分散液を移し、マントルヒーターにて加熱し始め、40℃にて付着凝集粒子の成長を促進させた。その後、光学顕微鏡及びコールターカウンターで付着凝集粒子の大きさ及び形態を確認しながら造粒を進め、体積平均粒子径が6〜7μmになった時点で、付着凝集粒子を融合させるために、pHを9.0に上げた後、90℃まで昇温させた。顕微鏡で粒子が融合したのを確認した後90℃で保持したまま、再度pHを6.5まで下げて、1時間後に加熱を止め、放冷した。その後45μmメッシュで篩分し、水洗を繰り返した後、真空乾燥機で乾燥した。以上のように造粒したトナー母粒子(1)の体積平均粒子径は7.3μmであった。
【0156】
このトナー母粒子に、外添剤としてチタニア微粉末(商品名STT−100H:チタン工業社製)をトナー100質量部に対して1.0質量部、シリカ微粉末(商品名RY50:日本アエロジル社製)0.6質量部添加し、ヘンシェルミキサーで混合して静電荷像現像用トナー(1)を得た。
【0157】
フェライト粒子を除く上記成分を攪拌機を分散させ、被覆形成用塗布液を作製した。この被覆層形成用液とフェライトを真空脱気型ニーダーに入れ、60℃で30分間攪拌した後、減圧してトルエン溶媒を留去して、該フェライト粒子表面上に被膜を形成して、キャリア(1)を得た。上記キャリア100質量部に対して、上記静電荷現像用トナー(1)6質量部をVブレンダーで混合して、あらかじめ現像機内に収容する初期現像剤を調製した。この初期現像剤のトナーの帯電量は−27μC/g、キャリア抵抗値は2.4×109Ω・cmであった。
【0158】
−補給用現像剤の調製−
帯電付与剤であるメラミン樹脂の配合量を0.8質量部、及びパーフルオロオクチルエチルアクリレート‐メチルメタクリレート共重合体の量を2.6質量部に変更した以外は、上記と同様にして補給用現像剤用キャリア(1)を作製した。このキャリア100質量部に対して上記静電荷現像用トナー(1)6質量部をVブレンダーで混合して、帯電量を測定した。このキャリアによる現像剤のトナーの帯電量は−31μC/g、キャリア抵抗値は2.8×109Ω・cmであった。上記補給現像用キャリア1質量部に対して、上記静電荷現像用トナー(1)10質量部の割合で混合して補給用現像剤(1)を調製した。
【0159】
(比較例1)
実施例1において、カーボンブラック量を0.1質量部に変えた以外は同様にして補給用現像剤に添加するキャリア(2)を調製した。このキャリア100質量部に対して上記静電荷現像用トナー(1)6質量部をVブレンダーで混合して、帯電量を測定した。このキャリア(2)による現像剤のトナーの帯電量は−32μC/g、キャリア抵抗値は3.2×1014Ω・cmであった。このキャリア(2)を用い、実施例1の場合と同様にして補給用現像剤を調製した。
【0160】
前記図1に示す画像形成装置における2つの現像器を用い、各々実施例1および比較例1のあらかじめ現像器内に入れておく現像剤を入れた。一方、追加用キャリアを含んだ補給用トナーをトナーカートリッジ(トナー収容装置)に入れて現像器に装着し、供給しながら、回転式現像器切替装置にて10枚ごとに現像器を切り替えてコピー操作を行い、評価した。その際、A4サイズの用紙1枚当たりのトナー消費量が20mg、60mgの場合について、ランニングテストを実施した。その結果を図5および図6に示す。図5は、コピー枚数に対するキャリア抵抗値の変動を示すグラフであり、図6は、コピー枚数に対する帯電量の変動を示すグラフである。これらの図から明らかなように、本発明の実施例の場合は、キャリア抵抗値および帯電量の変動は殆どなく、安定した状態を維持したのに対して、比較例の場合は、帯電量は安定していたが、キャリア抵抗値はランニングと共に上昇し、画像濃度が低いものとなった。なお、キャリア抵抗値は、現像剤中のトナーをブローオフすることによって求めた。
【0161】
(実施例2)
−トナー母粒子(2)の製造−
・結晶性ポリエステル樹脂分散液(1) :550質量部
・無定形高分子分散液(1) : 75質量部
・着色剤分散液 :22.87質量部
・ノニオン性界面活性剤(IGEPAL CA897) :1.0質量部
原料として上記各分散液を用いたこと以外は、実施例1と同様の条件でプレ凝集まで進め、コア凝集粒子を2〜3μmまで成長させた。
【0162】
次に、実施例1と同様に、コア凝集粒子の表面に無定形高分子粒子を付着させて付着凝集粒子を形成するために無定形高分子分散液(1)25質量部を追添加した後、加熱し始めた。加熱開始から3時間後の付着凝集粒子の体積平均径が6.5μmになったところで、融合させる為、pHを8.3に調整してから温度を90℃まで昇温させた。顕微鏡で付着凝集粒子が融合したのを確認した後90℃で保持したまま再度pHを6.5まで下げて1時間後に加熱を止め、放冷した。その後実施例1と同様の条件で、篩分、洗浄、乾燥し、体積平均径が7.5μmのトナー母粒子(2)を得た。
【0163】
(実施例3)
−トナー母粒子(3)の製造−
・結晶性ポリエステル樹脂分散液(2) :600質量部
・無定形高分子分散液(1) :50.0質量部
・着色剤分散液: 22.87質量部
・離型剤分散液 :50質量部
・ノニオン性界面活性剤(IGEPAL CA897):1.0質量部
原料として上記各分散液を用い、凝集剤(ポリ塩化アルミニウム10%硝酸水溶液)の添加量を0.18質量部に変更した以外は、実施例1と同様の条件でプレ凝集まで進めた。次に、原料分散液のpHを4.6〜5.0に調整しながら、コア凝集粒子を2〜3μmまで成長させた。
【0164】
次に、コア凝集粒子の表面に無定形高分子粒子を付着させて付着凝集粒子を形成するために無定形高分子分散液(1)12.5質量部を追添加し、また、形成される付着凝集粒子を安定化させる為にノニオン性界面活性剤(アンタロックスCA897)1.0質量部を添加した。凝集状態を光学顕微鏡とコールターカウンターで確認しながら加熱開始から3時間後に付着凝集粒子の体積平均径が6.2μmになったところで、融合させる為、pH9.0に調整してから温度を95℃まで昇温させた。顕微鏡で付着凝集粒子が融合するのを確認した後95℃で保持したまま再度pHを6.5まで下げて1時間後に加熱を止め、放冷した。その後実施例1と同様の条件で、篩分、洗浄、乾燥し、体積平均径が6.9μmのトナー母粒子(3)を得た。
【0165】
(実施例4)
−トナー母粒子(4)の製造−
・結晶性ポリエステル樹脂分散液(3) :400質量部
・無定形高分子分散液(2) : 90質量部
・着色剤分散液 :22.87質量部
・離型剤分散液 :50質量部
・ノニオン性界面活性剤(IGEPAL CA897):1.50質量部
原料として上記各分散液を用い、凝集剤(ポリ塩化アルミニウム10%硝酸水溶液)の添加量を0.24質量部に変更した以外は実施例1と同様の条件でプレ凝集まで進めた。次に原料分散液のpHを5.0〜5.4に調整しながらコア凝集粒子を2〜3μmまで成長させた。
【0166】
次に、コア凝集粒子の表面に無定形高分子粒子を付着させて付着凝集粒子を形成するために無定形高分子分散液(2)22.5質量部を追添加し、また、形成される付着凝集粒子を安定化させる為にノニオン性界面活性剤(IGEPALCA897)1.0質量部を添加した後、40℃で加熱凝集させた。凝集状態を光学顕微鏡とコールターカウンターで確認しながら加熱開始から3時間後に付着凝集粒子の体積平均径が6.9μmになったところで、融合させる為、pHを7に調整してから温度を95℃まで昇温させた。顕微鏡で付着凝集粒子が融合するのを確認した後、95℃で保持したまま再度pHを6.3まで下げて1時間後、加熱を止め、放冷した。その後実施例1と同様の条件で、篩分、洗浄、乾燥し、体積平均径が7.6μmのトナー母粒子(4)を得た。
【0167】
(実施例5)
−トナー母粒子(5)の製造−
・結晶性ポリエステル樹脂分散液(3) :1000質量部
・着色剤分散液 :22.87質量部
・離型剤分散液 :50質量部
・ノニオン性界面活性剤(IGEPAL CA897):2.0質量部
上記原料を5Lの円筒ステンレス容器に入れ、Ultraturraxにより6000rpmでせん断力を加えながら5分間分散混合する。ついで凝集剤としてポリ塩化アルミニウムの10%硝酸水溶液0.32質量部を添加する。この時、増粘する為、十分原料をUltraturraxにて攪拌し、均一になったところで、実施例1と同様の重合釜にセットする。マントルヒーターで一度40℃に昇温させ、pHを4.6に設定する。その後、昇温とともに起こる急凝集を抑える為に1Nの水酸化ナトリウムを加えて、phを上げながら、粒径を制御しつつ55℃まで徐々に昇温させる。55℃のときの粒径は5.7μmであった。さらに微粉を凝集粒子に取り込む為に、60℃まで昇温させる。ついで、この凝集粒子を融合させるとともに、凝集粒子がばらけるのを防ぐ為に、ph6.9、攪拌速度を200rpmから120rpmに落としてから80℃に昇温させる。
顕微鏡で粒子が融合したのを確認した(以下、「コア融合粒子」と略す)後、80℃に保持したまま、pH6.5まで下げ、コア粒子径の成長を停止させる為に、氷水を注入して降温速度100℃/分で急冷した。
【0168】
このようにして作製したコア融合粒子分散液を固体濃度20 重量%になるように一度遠心分離器で濃縮した。ついで、このコア融合粒子表面に凝集剤成分を含侵させる目的で、凝集剤(ポリ塩化アルミニウム10%硝酸水溶液)を0.12質量部加え、約12時間保持した。その後、コア融合粒子分散液を50℃まで昇温し、コア融合粒子表面に無定形高分子で被覆する目的で、無定形高分子分散液(1)を60質量部添加し、pHを3.5まで下げて、コア融合粒子表面への無定形高分子微粒子の付着を促進させた。続いてコア融合粒子表面上の無定形高分子粒子の融合を促進させる為に、50℃のまま24時間保持したのち、pH7.0まであげて中和させた。その後実施例1と同様の条件で、篩分、洗浄、乾燥し、体積平均粒径7.4μmのトナー母粒子(5)を得た。
【0169】
(比較例2)
−トナー母粒子(6)の製造−
原料として結晶性ポリエステル樹脂分散液(4)に替えたこと以外は、実施例1と同様の条件で造粒し、篩分、洗浄、乾燥して、体積平均粒径7.1μmのトナー母粒子(6)を得た。
【0170】
(比較例3)
−トナー母粒子(7)の製造−
原料として結晶性ポリエステル樹脂分散液(1)の代わりに(5)を用い、凝集剤(ポリ塩化アルミニウム10%硝酸水溶液)の添加量を0.20質量部に変更した以外は実施例1と同様の条件でプレ凝集まで進めた。次に原料分散液のpHを4.8〜5.1に調整しながらコア凝集粒子を2〜3μmまで成長させた。
【0171】
次に、コア凝集粒子の表面に無定形高分子粒子を付着させて付着凝集粒子を形成するために無定形高分子分散液(2)22.5質量部を追添加し、また、形成される付着凝集粒子を安定化させる為にノニオン性界面活性剤(IGEPALCA897)0.5質量部を添加した後、40℃で加熱凝集させた。凝集状態を光学顕微鏡とコールターカウンターで確認しながら加熱開始から3時間後に付着凝集粒子の体積平均径が7.0μmになったところで、融合させる為、pHを7.2に調整してから温度を95℃まで昇温させた。顕微鏡で付着凝集粒子が融合するのを確認した後、95℃で保持したまま再度pHを6.3まで下げて1時間後、加熱を止め、放冷した。その後実施例1と同様の条件で、篩分、洗浄、乾燥し、体積平均径が7.7μmのトナー母粒子(7)を得た。
【0172】
(比較例4)
−トナー母粒子(8)の製造−
・無定形高分子分散液(1) :150質量部
・無定形高分子分散液(3) :100質量部
・着色剤分散液 :22.87質量部
・離型剤分散液 :50質量部
原料として上記各分散液を用いたこと以外は、実施例1と同様の条件でプレ凝集まで進めた。次に原料分散液のpHを5.0〜5.5に調整しながら、凝集粒子を2〜3μmまで成長させ、実施例1と同様、凝集粒子を安定化させる為にノニオン性界面活性剤(IGEPAL CA897)2.0質量部を添加した後、加熱し始めた。加熱開始から2時間後の凝集粒子の体積平均径が6.5μmになったところで、融合させる為、pHを7.5に調整してから温度を90℃まで昇温させた。顕微鏡で粒子が融合したのを確認したが、一部融合粒子が融着し始めたので、再度pHを6.5まで下げ、更に氷水を投入して100℃/分の降温速度で急冷した。その後、実施例1と同様の条件で、篩分、洗浄、乾燥し、体積平均粒子径が7.8μmのトナー母粒子(8)を得た。
【0173】
<トナーの諸特性評価>
(定着性及びドキュメント保存性の評価)
トナー母粒子(1)〜(8)にそれぞれに外添剤として、静電荷現像用トナー(1)と同様、チタニア微粉末をトナー100質量部に対して1.0質量部、シリカ微粉末0.6質量部添加し、ヘンシェルミキサーで混合して静電荷像現像用トナー(1)〜(8)を得た。
ついで、静電荷現像用トナー(1)〜(8)をそれぞれ8質量部と実施例(1)で作製したキャリア(1)100質量部を混合して二成分現像剤を調整し、これを市販の電子写真複写機(富士ゼロックス社製 A−Color 635)を用いて画像出しを行い、未定着画像を得た。
【0174】
ついで、ベルトニップ方式の外部定着機を用いて、定着温度を90℃から220℃の間で段階的に上昇させながら画像の定着性、ホットオフセット性を評価した。なお、低温定着性は、未定着のソリッド画像(25mm×25mm)を定着した後、一定荷重の錘を用いて折り曲げ、その部分の画像欠損度合いグレード付けし、ある一定のグレード以上になる定着温度を最低定着温度として、低温定着性の指標とした。
【0175】
一方、ドキュメント保存性の評価については、上記定着評価の際に作成した未定着像2枚を、外部定着機で150℃にて定着した後、画像部と、非画像部及び画像部とが重なるように向かい合わせて重ね、重ねた部分に対して80g/cm2相当になるように重りを載せ、60℃湿度50%の恒温恒湿槽で3日間放置した。放置後、重ねた2枚の定着像の画像欠損度合いを以下に示す「G1」〜「G5」の5段階でグレード付けした。
【0176】
G1:互いの画像部が接着した為、画像が定着されている紙ごと剥がれて、画像欠損が激しく、また非画像部へ明らかな画像の移行が見られる。
G2:画像同士が接着していた為、画像部のところどころに画像欠損の白抜けが発生している。
G3:重ねた2枚の画像を離す際、互いの定着表面に画像のあれやグロス低下は発生するが、画像としては画像欠損は殆どなく許容できるレベル。非画像部に若干の移行が見られる。
G4:重ねた2枚の画像を離す時に、パリッと音がし、非画像部にもわずかに画像移行が見られるが、画像欠損はなく、全く問題無いレベル
G5:画像部、非画像ともに全く画像欠損や画像移行が見られない。
【0177】
(帯電の経時安定性の評価)
実施例(1)と同様、あらかじめ現像器に収容される現像剤に使用するキャリア(1)100質量部に対して、上記静電荷現像用トナー(2)〜(8)6質量部をVブレンダーで混合して、あらかじめ現像機内に収容する現像剤(2)〜(8)を調製した。さらに、補給用キャリア(1)1質量部に対して、静電荷現像用トナー(2)〜(8)10質量部の割合で混合して補給用現像剤(2)〜(8)を調製した。
【0178】
実施例(1)と同様、図1に示す画像形成装置における2つの現像器を用い、各々実施例(2)〜(5)および比較例(2)〜(4)のあらかじめ現像器内に入れておく現像剤を入れた。一方、追加用キャリアを含んだ補給用現像剤をトナーカートリッジ(トナー収容装置)に入れて現像器に装着し、供給しながら、回転式現像器切替装置にて10枚ごとに現像器を切り替えてコピー操作を行い、評価した。その際、A4サイズの用紙1枚当たりのトナー消費量が20mg、60mgの場合について、ランニングテストを実施した。
以上の様に作製したトナーの諸特性を表1に示す。また、帯電の経時安定性評価結果については図7および図8にコピー枚数に対する帯電量の変動を示す。
【0179】
【表1】
【0180】
表1が示すように、本発明の実施例の場合は、広い定着ラチチュードと優れたドキュメント保存性を示しているのに対して、比較例の場合は、いずれかの特性が悪化し、トナー特性を両立し得なかった。また帯電の経時安定性の観点からでは、図7および図8から明らかなように、本発明の実施例の場合は、帯電量の変動は殆どなく、安定した状態を維持したのに対して、比較例の場合は、帯電量の経時安定性は見出せず、経時後のコピーは濃度低下やかぶりが見られ画質が著しく悪化していた。
【0181】
【発明の効果】
以上のように、本発明の補給用現像剤及びこれを用いた画像形成方法は、結晶性樹脂を含有するトナーとトリクル現像方式を用いた現像方法において、比較的少量のキャリア補給であっても、長期の使用により現像剤収容部内における二成分現像剤の電気抵抗値及び帯電量の双方が大きく変化することなく適正な範囲内に維持され、長期にわたって安定した画質を得ることができる。
さらに、耐ホットオフセットと低温定着性に優れ、省エネルギーを実現し、生産性の高い高速複写機にも対応可能な補給用現像剤である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の画像形成方法を実施するためのロータリー回転方式の現像装置を搭載した電子写真方式のフルカラー画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】図1の要部概略的構成図である。
【図3】図1に示す回転移動する現像装置における現像剤の入れ替えを説明するための説明図である。
【図4】図3の詳細説明図である。
【図5】実施例1と比較例1のランニングテストにおけるコピー枚数に対するキャリア抵抗値の変動を示すグラフである。
【図6】実施例1と比較例1のランニングテストにおけるコピー枚数に対する帯電量の変動を示すグラフである。
【図7】実施例2〜実施例5のランニングテストにおけるコピー枚数に対する帯電量の変動を示すグラフである。
【図8】比較例2〜比較例4のランニングテストにおけるコピー枚数に対する帯電量の変動を示すグラフである。
【符号の説明】
1 潜像担持体
2、3、4、5 現像器
6 現像スリーブ
9 トナー収納装置
10,11 現像剤攪拌搬送部材
14 レーザー露光器
15 一様帯電器
16 除電装置
17 現像槽
18 クリニング装置
21 定着器
24 転写ドラム
34 現像剤側現像剤排出口
【発明の属する技術分野】
本発明は電子写真法、静電記録法等により形成される静電潜像を2成分現像剤で現像する際に、現像剤を現像機に断続的または連続的に補給し、且つ現像機から過剰になる現像剤を回収しながら現像を行なう、いわゆるトリクル現像方式に用いる現像剤及び該現像剤を用いる画像形成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子写真方式の複写機、またはプリンター等の画像形成方法に使用される二成分現像装置においては、その現像剤収容部に収容される二成分現像剤のトナーとキャリアを攪拌して摩擦帯電させた後、現像ロール等の現像剤担持搬送体により感光体等の潜像担持体に供給する事により、潜像担持体上の潜像を現像するが、この際、トナーは消費されて減るのに対し、キャリアは消費されず現像剤収容部内に残る。このためトナー成分が移行するなどのキャリア汚染や、キャリアそのものが現像機内のストレスを受け、その樹脂被覆層が破壊されるなどのキャリア劣化をおこして、帯電性等の現像剤特性に悪影響を与え、画質の低下を誘発するという不具合が生じる。
【0003】
そこで、従来、このキャリアの劣化を抑制するために、トナーのみではなくキャリアも現像剤収容部に適宜補給するとともに、このキャリア補給により現像剤収容部内で徐々に過剰となる二成分現像剤を回収することにより、消費により減るトナーを補充すると同時に、現像剤収容部内の劣化したキャリアを補給される新しいキャリアに置き換えるようにする方法、いわゆる「トリクル現像方式」が提案されている(特許文献1)。
【0004】
しかしながら、補給されるキャリアは現像機内に収容されているキャリアと同一のものである為、コピー操作を繰り返し実施して行く間に劣化キャリアが増え、画像密度の上昇を押させることができなくなる。
【0005】
一方、(特許文献2)には、予め現像機内に収容されているキャリアに比べて高い抵抗値を有するキャリアにトナーを含有させて帯電性を維持、画質低下を抑制することが開示されている。しかしながら、この方法では、長期の使用により現像剤収容部にすでに収容されている二成分現像剤の初期収容キャリア表面にトナーが付着して、電気抵抗値が徐々に上昇してしまい、このような状態になったところへ電気抵抗値が高い新しい補給用キャリアを補給したとしても、その上昇した電気抵抗値は初期の状態のもどらず必要以上に高い電気抵抗値の状態のまま推移する結果、現像される画像の濃度が低下したり不均一になると言う問題がある。
【0006】
一方、このような電気抵抗値の高い補給用キャリアを補給するトリクル現像方式における問題を解消するため、(特許文献3)には、キャリア抵抗値又は帯電量を徐々に高くした補給用キャリアを含む補給用の二成分現像剤を複数種用意し、その各現像剤を順次補給する方法が開示されている。
【0007】
しかし、この抵抗値又は帯電量を徐々に高くした補給用キャリアを含む二成分現像剤を順次補給するトリクル現像方式は、例えば、補給用の現像剤カートリッジが頻繁に交換使用されるカラー画像形成装置に適用した場合、その1本のカートリッジを使い終わって次の新しカートリッジを交換して使用すると、先のカートリッジから最も高い抵抗値又は帯電量のキャリアが補給された後に新しいカートリッジから最も低い抵抗値又は帯電量のキャリアが補給されることになり、この結果、現像剤収容部内における現像剤の抵抗値や帯電量が急激に変化して、画質が不安定になってしまうという不具合がある。そして、この現象は、そのカートリッジを交換する度に繰り返されることになる。
一方、低温定着性を持たせた結晶性樹脂を用いたトナーが知られている。しかしながら、このようなトナーでは、結晶性に由来する、長時間の攪拌による帯電の低下が問題となっている。
【0008】
【特許文献1】
特公平2−215915号公報
【特許文献2】
特開平3‐145678号公報
【特許文献3】
特開平8−234550号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は上記のような種々の問題点を解決する事を目的としてなされたものである。すなわち、結晶性を有するトナーとトリクル現像方式を用いた現像方法において、比較的少量のキャリア補給であっても、長期の使用により現像剤収容部内における二成分現像剤の電気抵抗値及び帯電量の双方が大きく変化することなく適正な範囲内に維持され、長期にわたって安定した画質を得ることができる現像方法であり、耐ホットオフセットと低温定着性に優れ、省エネルギーを実現し、生産性の高い高速複写機にも対応可能なトナーを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成し得る本発明の補給用現像剤は、
<1>トナーとキャリアとからなる二成分現像剤を収容した現像機を用いて潜像担持体上の潜像を現像するに際して、補給用現像剤を補給しながら現像を行なうトリクル現像方式用の補給用現像剤であって、該補給用現像剤のキャリアが予め現像機に収容されている初期現像剤のキャリアよりも高い帯電量をトナーに付与し、該補給用現像剤のキャリアと初期現像剤のキャリアの電気抵抗が等しく、該トナーが融点50〜110℃の結晶性ポリエステル樹脂を主成分とする結着樹脂と着色剤とを含むことを特徴とする補給用現像剤。
<2> 前記補給用現像剤の帯電量が予め現像機に収容されている初期現像剤の帯電量の1.2倍〜3.0倍であることを特徴とする<1>に記載の補給用現像剤。
<3> 前記補給現像剤がキャリアを5〜30質量%含有することを特徴とする<1>または<2>に記載の補給用現像剤。
<4> 前記トナーが融点50〜110℃の結晶性ポリエステル樹脂と無定形高分子を主成分とする結着樹脂と着色剤とを含むことを特徴とする<1>乃至<3>に記載の補給用現像剤。
<5> 前記トナーが少なくとも結晶性ポリエステル微粒子を含む分散液中で少なくとも結晶性ポリエステル微粒子を含む凝集粒子を形成する凝集工程と、該凝集粒子を融合させる融合工程を経て調整されてなることを特徴とする<1>乃至<4>のいずれかに記載の補給用現像剤。
さらに上記目的を達成するための画像形成方法は、
<6>トナーとキャリアとからなる二成分現像剤を収容した現像機を用いて潜像担持体上の潜像を現像するに際して、補給用現像剤を補給しながら現像を行なうトリクル現像方法であって、該補給用現像剤が<1>に記載の補給用現像剤であることを特徴とする画像形成方法。
【0011】
ここで、補給用キャリアのトナーへの付与帯電量の絶対値は、初期使用キャリアよりも高くなるように設定されるが、具体的には、初期使用キャリアのトナーへの付与帯電量の絶対値に対して1.2倍以上の付与帯電量、好ましくは1.2倍〜3.0倍になるように設定されるのが望ましい。より詳しくは、少なくとも、トナーとの一定期間の攪拌により摩擦帯電されて得られる補給用キャリアを用いた際のトナーの飽和帯電量の絶対値が、初期使用キャリアを用いた際のトナーの飽和帯電量の絶対値の1.2倍以上となる帯電量に設定される。
この際、初期使用キャリアを用いた際のトナーの帯電量の絶対値は、通常の初期段階で使用される二成分現像剤におけるキャリアの帯電量の絶対値であればよいが、その飽和帯電量は画質上の問題が発生する上限帯電量を上回らないように設定することが望ましい。補給用キャリアを用いた際のトナーの帯電量の絶対値が初期使用キャリアを用いた際のトナーの飽和帯電量の絶対値に対して1.2倍よりも低い値に設定した場合には、その補給用キャリアを、ひいてはそのキャリアを含む現像剤を多量に補給しなければならなくなり、また、従来技術において既述したように、長期にわたる使用により、結晶性樹脂を含有するトナーの帯電の低下が著しくなり、その結果画質不良が発生しやすくなり、結果的に、前記した目的を達成することができない。
【0012】
一方、補給用現像剤に使用されるキャリアの電気抵抗値は、予め現像機に収容されている現像剤中のキャリアの電気抵抗値と等しいことが好ましい。なお、本発明において、「キャリアと電気抵抗が等しい」とは、キャリアの電気抵抗(Ω・cm)が1桁以内にあることを意味する。
補給用現像剤に使用されるキャリアの電気抵抗値が初期使用キャリアと同等で、よりトナーへの帯電量の絶対値が高いキャリアにする為には、該補給用キャリアの樹脂被覆層におけるトナー帯電性能の高い帯電制御材料の混合比が、初期収容キャリアの同混合比よりも高く設定する事が好ましい。
さらに、本発明においては、補給する二成分現像剤〈補給用現像剤)における補給用キャリアの含有率を5〜30質量%の範囲内に設定することが好ましく、6〜25質量%がより好ましい。
なお、本発明において、電気抵抗は現像剤中のトナーをブローオフして得られたキャリアを500μmの厚さにして1000Vの電界下で測定した抵抗率(Ω・cm)である。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を示して、本発明を詳細に説明する。
<キャリア>
本発明に用いられるキャリアは、磁性粒子を被覆材料で被覆したいわゆるコートキャリアである。キャリアの芯材については特に制限はなく、鉄、鋼、ニッケル、コバルト等の磁性金属、これらとマンガン、クロム、希土類元素等との合金、及び、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物等を挙げることができるが、現像方式として磁気ブラシ法を用いる観点からは磁性キャリアであることが望ましい。また、磁性粉を樹脂中に分散した磁性粉分散型粒子を用いても良い。磁性粒子の平均粒子径は10〜50μmの範囲が好ましい。平均粒子径が50μmを越えると、現像機内ストレスにより被覆層の剥がれが生じ、キャリア抵抗が低下する。逆に10μmよりも小さくなると、現像剤担持体のマグロ−ルの磁界で捉え切れず、感光体上へのキャリアスペントが顕著になり、転写不良をもたらす。
【0014】
また、磁性粒子の磁力は、3000エルストレッドにおける飽和磁化が50emu/g以上である必要があり、より好ましくは60emu/g以上が必要である。飽和磁化が50emu/gより弱い磁力では、キャリアがトナーと共に、感光体上に現像されてしまう。
【0015】
磁性粒子を被覆する被覆材料は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル及びポリビニルケトン等のポリビニル系樹脂及びポリビニリデン系樹脂;塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体;スチレン−アクリル酸共重合体:オルガノシロキサン結合からなるストレートシリコーン樹脂又はその変性品;ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン等のフッ素系樹脂;シリコーン樹脂:ポリエステル;ポリウレタン;ポリカーボネート;フェノール樹脂;尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアミド樹脂等のアミノ樹脂;エポキシ樹脂など、それ自体の公知の樹脂を挙げることができる。
【0016】
これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。本発明においては、これらの樹脂の中でも、フッ素系樹脂及び/又はシリコーン樹脂を少なくとも使用することが好ましい。それらの樹脂を使用すると、トナーや外添剤によるキャリア汚染(インパクション)を防止する効果があるので有利である。
【0017】
樹脂被覆層には樹脂粒子及び/又は導電性粒子を分散することができる。前記樹脂粒子としては、例えば、熱可塑性樹脂粒子、熱硬化性樹脂粒子等が挙げられる。その中でも、硬度を上げることが比較的容易な熱硬化性樹脂が好適であり、また、トナーに負帯電性を付与するためには、窒素原子を含有する樹脂粒子を用いることが好ましい。なお、これらの樹脂粒子は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0018】
樹脂粒子の平均粒径は、例えば0.1〜2μmの範囲が好ましく、0.2〜1μmの範囲がより好ましい。平均粒径が0.1μm未満であると、樹脂被覆層における樹脂粒子の分散性が非常に悪く、2μmを超えると、樹脂被覆層から樹脂粒子が脱落し易く、本来の効果を発揮しなくなることがある。
【0019】
前記導電性粒子としては、金、銀、銅等の金属粒子、カーボンブラック粒子、酸化チタン、酸化亜鉛等の半導電性酸化物粒子、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム粉末等の表面を酸化スズ、カーボンブラック、金属等で覆った粒子などを使用できる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、製造安定性、コスト、導電性などの点からカーボンブラック粒子が好適である。カーボンブラックの種類には特に制限はないが、DBP吸油量が50〜250ml/100gの範囲のカーボンブラックが製造安定性の上から特に優れている。
【0020】
本発明のキャリアの樹脂被覆中に含有され、キャリアの帯電量を制御するのに好適な帯電制御材料としては、メチルメタクリレート樹脂、含窒素系アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、メラミン樹脂、アクリロニトリル樹脂等の樹脂微粒子が好ましく、特にメラミン樹脂微粒子が高い帯電性能をトナーに付与できる点から好ましい。
【0021】
樹脂被覆層の形成方法には特に制限はない。例えば、架橋性樹脂粒子等の前記樹脂粒子及び/又は前記導電性粒子、並びにマトリックス樹脂としてのスチレンアクリル樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂等を溶剤中に含む樹脂被覆層形成用液を用いる方法などが挙げられる。具体的には、キャリア芯材を樹脂被覆層形成用液に浸漬する浸漬法、樹脂被覆層形成用液をキャリア芯材の表面に噴霧するスプレー法、キャリア芯材を流動エアーにより浮遊させた状態で樹脂被覆層形成用液と混合し、溶剤を除去するニーダーコーター法等が挙げられる。これらの中でもニーダーコーター法が特に好ましい。
【0022】
上記の樹脂被覆層を形成する装置は、攪拌エネルギーを付与するための攪拌翼を有するものであれば特に制限はない。例えば、プラネタリーミキサー、ニーダーコーター、ヘンシェルミキサー、コンティニュアスミキサー、エクストルーダー、クリプトロン、フィッツミル、レディゲミキサーなどが挙げられる。また、樹脂被覆装置が攪拌翼を有する場合、脱溶剤後、そのまま攪拌をし続け攪拌エネルギーを与えることも可能である。
【0023】
前記樹脂被覆層形成用液に用いる溶剤は、マトリックス樹脂としての前記樹脂のみを溶解できればよく、特に制限はなく、それ自体公知の溶剤の中から選択することができる。例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類などを使用することができる。
【0024】
樹脂被覆層に樹脂粒子を分散するときに、その厚み方向及びキャリア表面の接線方向に、前記樹脂粒子及びマトリックス樹脂が均一に混合していることが重要である。このような混合状態は、キャリアを長期間使用して樹脂被覆層が摩耗しても、常に未使用時と同様な表面構造を保持でき、トナーに対する良好な帯電付与能力を長期間にわたって安定して維持することができる。また、樹脂被覆層に導電性粒子を分散させるときにも、その厚み方向及びキャリア表面の接線方向に、導電性粒子及びマトリックス樹脂が均一に混合しているため、キャリアを長期間使用して樹脂被覆層が摩耗しても、常に未使用時と同様な表面構造を保持でき、キャリア劣化を長期間防止することができる。なお、樹脂被覆層に前記樹脂粒子と前記導電性粒子を同時に分散させるときにも上記の効果を同時に奏することができる。
【0025】
本発明の画像形成方法において、初期現像剤のキャリアと、補給用現像剤のキャリアとの組成上異なる点は、補給用現像剤のキャリアと初期現像剤のキャリアとの電気抵抗値は同等とし、補給用現像剤のキャリアを用いた際のトナーの帯電量の絶対値を初期現像剤のキャリアを用いた際のトナーの帯電量の絶対値よりも高くするために、補給用現像剤のキャリア樹脂被覆層中の帯電制御剤含有量を初期現像剤のキャリア樹脂被覆層中より高くすることが望ましい。
しかし、上記の点以外は、トリクル現像方式では、初期現像剤と補給用現像剤とは、順次混合して使用されるため、上記の点以外は、初期現像剤のキャリアと補給用現像剤のキャリアとは実質的に同一材料からなることが望ましい。
【0026】
<トナー>
一方、本発明におけるトナーは、結着樹脂と着色剤とを主成分として構成される。トナーにおける結着樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂を含み、好ましくは結晶性ポリエステル樹脂と無定形高分子を主成分として含むものであるが、ここで「主成分」とは、前記結着樹脂を構成する成分のうち、主たる成分のことを指し、具体的には、前記結着樹脂の50質量%以上を構成する成分を指す。ただし、本発明において、前記結着樹脂のうち、特定の結晶性ポリエステル樹脂が50質量%以上であることが好ましく、結晶性ポリエステル樹脂と無定形高分子を含む場合、これらの樹脂の合計が結着樹脂の50質量%以上であることがより好ましい。
【0027】
前記結着樹脂の主成分を構成する樹脂が結晶性ポリエステル樹脂を含まない場合、すなわち非晶性である場合には、良好な低温定着性を確保しつつ、耐トナーブロッキング性、画像保存性を保つことができない。なお、本発明において、『結晶性樹脂』とは示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱量変化ではなく、明確な吸熱ピークを有するものを指す。
【0028】
本発明に用いられる結着樹脂の主成分である結晶性ポリエステル樹脂の融点は、50〜110℃の範囲であることが好ましく、60〜100℃の範囲がより好ましい。前記融点が50℃より低い場合、トナーの保存性や定着後のトナー画像の保存性が問題となる場合がある。前記融点が120℃より高い場合、従来のトナーに比べて十分な低温定着性が得られない場合がある。
【0029】
なお、本発明において、前記結晶性ポリエステル樹脂の融点の測定には、示差走査熱量計(DSC)を用い、室温から150℃まで毎分10℃の昇温速度で測定を行なった時の、JIS K―7121に示す入力補償示差走査熱量測定の融解ピーク温度として求めることができる。又、一般に結晶性樹脂は複数の融解ピークを示す場合があるが、本発明においては、最大のピークをもって融点とみなす。
【0030】
本発明に用いられる結晶性ポリエステル樹脂は、酸(ジカルボン酸)成分(以下、「酸由来構成成分」と称する場合がある)と、アルコール(ジオール)成分(以下、「アルコール由来構成成分」と称する場合がある)とから合成されるものである。以下、酸由来構成成分、及びアルコール由来構成成分について、さらに詳しく説明する。なお、本発明では、前記結晶性ポリエステル樹脂主鎖に対して、他成分を50質量%以下の割合で共重合した共重合体も結晶性ポリエステル樹脂とする。
【0031】
<酸由来構成成分>
前記酸由来構成成分は、脂肪族ジカルボン酸が好ましく、中でも脂肪族ジカルボン酸が望ましく、特に直鎖型のカルボン酸が望ましい。
【0032】脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼリン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸、など、或いはその低級アルキルエステルや酸無水物が挙げられるが、この限りではない。これらのうち、入手容易性を考慮すると、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸が好ましい。
【0033】
前記酸由来構成成分としては、前述の脂肪族ジカルボン酸由来構成成分の他、二重結合をもつジカルボン酸由来構成成分、スルホン酸基を持つジカルボン酸由来構成成分等の構成成分が含まれていることが好ましい。
【0034】
前記2重結合を持つジカルボン酸由来構成成分には、2重結合を持つジカルボン酸に由来する構成成分のほか、2重結合を持つジカルボン酸の低級アルキルエステルまたは酸無水物等に由来する構成成分も含まれる。また、前記スルホン酸基を持つジカルボン酸由来構成成分には、スルホン酸基を持つジカルボン酸に由来する構成成分のほか、スルホン酸基を持つジカルボン酸の低級アルキルエステルまたは酸無水物等に由来する構成成分も含まれる。
【0035】
前記2重結合を持つジカルボン酸は、その2重結合を利用して樹脂全体を架橋させ得る点で、定着時のホットオフセットを防ぐために好適に用いることができる。このようなジカルボン酸としては、例えば、フマル酸、マレイン酸、3−ヘキセンジオイック酸、3−オクテンジオイック酸等が挙げられるが、これらに限定されない。また、これらの低級アルキルエステル、酸無水物等も挙げられる。これらの中でも、コストの点で、フマル酸、マレイン酸等が好ましい。
【0036】
前記スルホン酸基を持つジカルボン酸は、顔料等の色材の分散を良好にできる点で有効である。また樹脂全体を水に乳化或いは懸濁して、微粒子を作製する際に、スルホン酸基があれば、後述するように、界面活性剤を使用しないで乳化或いは懸濁が可能である。このようなスルホン基を持つジカルボン酸としては、例えば、2−スルホテレフタル酸ナトリウム塩、5−スルホイソフタル酸ナトリウム塩、スルホコハク酸ナトリウム塩等が挙げられるが、これらに限定されない。また、これらの低級アルキルエステル、酸無水物等も挙げられる。これらの中でも、コストの点で、5−スルホイソフタル酸ナトリウム塩等が好ましい。
【0037】
これらの脂肪族ジカルボン酸由来構成成分以外の酸由来構成成分(2重結合を持つジカルボン酸由来構成成分および/又はスルホン酸基を持つジカルボン酸由来構成成分)の、全酸由来構成成分における含有量としては、1〜20構成モル%が好ましく、2〜10構成モル%がより好ましい。
【0038】
前記含有量が、1構成モル%未満の場合には、顔料分散が良くなかったり、乳化粒子径が大きくなり、凝集によるトナー径の調整が困難となることがある一方、20構成モル%を超えると、ポリエステル樹脂の結晶性が低下し、融点が降下して、画像の保存性が悪くなったり、乳化粒子径が小さ過ぎて水に溶解し、ラテックスが生じないことがある。
尚、本明細書において「構成モル%」とは、ポリエステル樹脂における各構成成分(酸由来構成成分またはアルコール由来構成成分)を1単位(モル)としたときの百分率を指す。
【0039】
<アルコール由来構成成分>
アルコール由来構成成分となるためのアルコールとしては、脂肪族ジオールが好ましく、鎖炭素数が7〜20である直鎖型脂肪族ジオールがより好ましい。前記脂肪族ジオールが、分岐型では、ポリエステル樹脂の結晶性が低下し、融点が降下するため、耐トナーブロッキング性、画像保存性、および、低温定着性が悪化してしまう場合がある。また、前記鎖炭素数が、7未満であると、芳香族ジカルボン酸と縮重合させる場合、融点が高くなり、低温定着が困難となることがある一方、20を超えると、実用上の材料の入手が困難となり易い。前記鎖炭素数としては、14以下であることがより好ましい。
【0040】
また、芳香族ジカルボン酸と縮重合させてポリエステルを得る場合、前記鎖炭素数としては、奇数であるのが好ましい。前記鎖炭素数が、奇数である場合には、偶数である場合よりポリエステル樹脂の融点が低くなり、該融点が、後述の数値範囲内の値となり易い。
【0041】
脂肪族ジオールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオール、などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのうち、入手容易性を考慮するとエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールが好ましい。
【0042】
前記アルコール由来構成成分は、脂肪族ジオール由来構成成分の含有量が80構成モル%以上であって、必要に応じてその他の成分を含む。前記アルコール由来構成成分としては、前記脂肪族ジオール由来構成成分の含有量が90構成モル%以上であるのが好ましい。
【0043】
前記脂肪族ジオール由来構成成分の含有量が、80構成モル%未満では、ポリエステル樹脂の結晶性が低下し、融点が降下するため、耐トナーブロッキング性、画像保存性および、低温定着性が悪化してしまう場合がある。
一方、必要に応じて含まれるその他の成分としては、2重結合を持つジオール由来構成成分、スルホン酸基を持つジオール由来構成成分等の構成成分が挙げられる。
【0044】
前記2重結合を持つジオールとしては、2−ブテン−1,4−ジオール、3−ブテン−1,6−ジオール、4−ブテン−1,8−ジオール等が挙げられる。 前記スルホン酸基を持つジオールとしては、1,4−ジヒドロキシ−2−スルホン酸ベンゼンナトリウム塩、1,3−ジヒドロキシメチル−5−スルホン酸ベンゼンナトリウム塩、2−スルホ−1,4−ブタンジオールナトリウム塩等が挙げられる。
【0045】
これらの、脂肪族ジオール由来構成成分以外のアルコール由来構成成分を加える場合(2重結合を持つジオール由来構成成分および/又はスルホン酸基を持つジオール由来構成成分)、これらのアルコール由来構成成分における含有量としては、1〜20構成モル%が好ましく、2〜10構成モル%がより好ましい。
前記脂肪族ジオール由来構成成分以外のアルコール由来構成成分の含有量が、1構成モル%未満の場合には、顔料分散が良くなかったり、乳化粒子径が大きくなり、凝集によるトナー径の調整が困難となることがある一方、20構成モル%を超えると、ポリエステル樹脂の結晶性が低下し、融点が降下して、画像の保存性が悪くなったり、乳化粒子径が小さ過ぎて水に溶解し、ラテックスが生じないことがある。
【0046】
前記結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)としては、3,000〜30000であることが好ましく、3500〜20000以下であることがより好ましい。重量平均分子量が3000より小さい場合、高温定着時における耐ホットオフセット性が悪化し、30000より大きい場合、樹脂の乳化や乳化粒子の融合が進みにくくなるばかりではなく、トナー粒子の低温定着性が悪化する。
【0047】
一方、本発明のトナーに使用することができる無定形高分子としては、例えば、従来公知の熱可塑性結着樹脂などが挙げられ、具体的には、スチレン、パラクロロスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類の単独重合体又は共重合体(スチレン系樹脂);アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のビニル基を有するエステル類の単独重合体又は共重合体(ビニル系樹脂);アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルニトリル類の単独重合体又は共重合体(ビニル系樹脂);ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類の単独重合体又は共重合体(ビニル系樹脂);ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類の単独重合体又は共重合体(ビニル系樹脂);エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類の単独重合体又は共重合体(オレフィン系樹脂);エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂等の非ビニル縮合系樹脂、及びこれらの非ビニル縮合系樹脂とビニル系モノマーとのグラフト重合体などが挙げられる。これらの樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0048】
これらの樹脂の中でもビニル系樹脂やポリエステル樹脂が特に好ましい。ビニル系樹脂の場合、イオン性界面活性剤などを用いて乳化重合やシード重合により樹脂粒子分散液を容易に調製することができる点で有利である。前記ビニル系モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、ケイ皮酸、フマル酸、ビニルスルフォン酸、エチレンイミン、ビニルピリジン、ビニルアミンなどのビニル系高分子酸やビニル系高分子塩基の原料となるモノマー挙げられる。本発明においては、前記樹脂粒子が、前記ビニル系モノマーをモノマー成分として含有するのが好ましい。本発明においては、これらのビニル系モノマーの中でも、ビニル系樹脂の形成反応の容易性等の点でビニル系高分子酸がより好ましく、具体的にはアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、ケイ皮酸、フマル酸などのカルボキシル基を解離基として有する解離性ビニル系モノマーが、重合度やガラス転移点の制御の点で特に好ましい。
【0049】
なお、前記解離性ビニル系モノマーにおける解離基の濃度は、例えば、高分子ラテックスの化学(高分子刊行会)に記載されているような、トナー粒子等の粒子を表面から溶解して定量する方法などにより決定することができる。なお、前記方法等により、粒子の表面から内部にかけての樹脂の分子量やガラス転移点を決定することもできる。
【0050】
一方、本発明のトナーにおいて無定形高分子として用いることができるポリエステル樹脂は、樹脂の酸価の調整やイオン性界面活性剤などを用いて乳化分散することにより、樹脂粒子分散液を容易に調製することができる点で有利である。乳化分散に用いる無定形のポリエステル樹脂は多価カルボン酸と多価アルコールとを脱水縮合して合成される。
【0051】
多価カルボン酸の例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、などの芳香族カルボン酸類、無水マレイン酸、フマール酸、コハク酸、アルケニル無水コハク酸、アジピン酸などの脂肪族カルボン酸類、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式カルボン酸類が挙げられる。これらの多価カルボン酸を1種又は2種以上用いることができる。これら多価カルボン酸の中、芳香族カルボン酸を使用することが好ましく、また良好なる定着性を確保するために架橋構造あるいは分岐構造をとるためにジカルボン酸とともに3価以上のカルボン酸(トリメリット酸やその酸無水物等)を併用することが好ましい。
【0052】
多価アルコールの例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、などの脂肪族ジオール類、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAなどの脂環式ジオール類、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの芳香族ジオール類が挙げられる。これら多価アルコールの1種又は2種以上用いることができる。これら多価アルコールの中、芳香族ジオール類、脂環式ジオール類が好ましく、このうち芳香族ジオールがより好ましい。また良好なる定着性を確保するため、架橋構造あるいは分岐構造をとるためにジオールとともに3価以上の多価アルコール(グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール)を併用してもよい。
【0053】
なお、多価カルボン酸と多価アルコールとの重縮合によって得られたポリエステル樹脂に、さらにモノカルボン酸、および/またはモノアルコールを加えて、重合末端のヒドロキシル基、および/またはカルボキシル基をエステル化し、ポリエステル樹脂の酸価を調整しても良い。モノカルボン酸としては酢酸、無水酢酸、安息香酸、トリクロル酢酸、トリフルオロ酢酸、無水プロピオン酸等を挙げることができ、モノアルコールとしてはメタノール、エタノール、プロパノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、トリフルオロエタノール、トリクロロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、フェノールなどを挙げることができる。
【0054】
結晶性ポリエステル樹脂及び無定形高分子のポリエステル樹脂は上記多価アルコールと多価カルボン酸を常法に従って縮合反応させることによって製造することができる。例えば、上記多価アルコールと多価カルボン酸、必要に応じて触媒を入れ、温度計、撹拌器、流下式コンデンサを備えた反応容器に配合し、不活性ガス(窒素ガス等)の存在下、150〜250℃で加熱し、副生する低分子化合物を連続的に反応系外に除去し、所定の酸価に達した時点で反応を停止させ、冷却し、目的とする反応物を取得することによって製造することができる。
【0055】
このポリエステル樹脂の合成に使用する触媒としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド等の有機金属やテトラブチルチタネート等の金属アルコキシドなどのエステル化触媒が挙げられる。このような触媒の添加量は、原材料の総量に対して0.01〜1質量%とすることが好ましい。
【0056】
本発明のトナーに使用することができる無定形高分子は、テトラヒドロフラン(THF)可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフイー(GPC)法による分子量測定で、重量平均分子量(Mw)が5000〜1000000であることが好ましく、更に好ましくは7000〜500000であり、数平均分子量(Mn)は2000〜100000であることが好ましく、分子量分布Mw/Mnが1.5〜100であることが好ましく、更に好ましくは2〜60で重量質量平均分子量及び数平均分子量が上記範囲より小さい場合には、低温定着性には効果的ではある一方で、耐ホットオフセット性が著しく悪くなるばかりでなく、トナーのガラス転移点を低下させる為、トナーのブロッキング等保存性にも悪影響を及ぼす。一方、上記範囲より分子量が大きい場合には、耐ホットオフセット性は充分付与できるものの、低温定着性は低下する他、トナー中に存在する結晶性ポリエステル相の染み出しを阻害する為、ドキュメント保存性に悪影響を及ぼす可能性がある。したがって、上述の条件を満たすことによって低温定着性と耐ホットオフセット性、ドキュメント保存性を両立し得る。
【0057】
結着樹脂の分子量は、THF可溶物を、東ソー製GPC・HLC−8120、東ソー製カラム・TSKgel SuperHMーM(15cm)を使用し、THF溶媒で測定し、単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して分子量を算出したものである。
【0058】
ポリエステル樹脂の酸価(樹脂1gを中和するに必要なKOHのmg数)は、前記のような分子量分布を得やすいことや、乳化分散法によるトナー粒子の造粒性を確保しやすいことや、得られるトナーの環境安定性(温度・湿度が変化した時の帯電性の安定性)を良好なものに保ちやすいことなどから、1〜30mgKOH/gであることが好ましい。ポリエステル樹脂の酸価は、原料の多価カルボン酸と多価アルコールの配合比と反応率により、ポリエステルの末端のカルボキシル基を制御することによって調整することができる。あるいは多価カルボン酸成分として無水トリメリット酸を使用することによってポリエステルの主鎖中にカルボキシル基を有するものが得られる。
【0059】
トナーに使用される結晶性ポリエステル樹脂およびトナーに使用することができる無定形高分子のガラス転移温度は、35〜100℃であることが好ましく、貯蔵安定性とトナーの定着性のバランスの点から、50〜80℃であることがより好ましい。ガラス転移温度が35℃未満であると、トナーが貯蔵中又は現像機中でブロッキング(トナーの粒子が凝集して塊になる現象)を起こしやすい傾向にある。一方、ガラス転移温度が100℃を超えると、トナーの定着温度が高くなってしまい好ましくない。
【0060】
本発明のトナーに用いられる着色剤は、特に制限はなく、公知の着色剤が挙げられ、目的に応じて適宜選択することができる。顔料を1種単独で用いても良いし、同系統の顔料を2種以上混合して用いても良い。又、異系統の顔料を2種以上混合して用いても良い。前記着色剤としては、具体的には例えばファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック、ベンガラ、アニリンブラック、紺青、酸化チタン、磁性粉等の無機顔料、ファストイエロー、モノアゾイエロー、ジスアゾイエロー、ピラゾロンレッド、キレートレッド、ブリリアントカーミン(3B、6B等)、パラブラウン等のアゾ顔料、銅フタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニンが、フラパントロンイエロー、ジブロモアントロンオレンジ、ペリレンレッド、キナクリドンレッド、ジオキサジンバイオレット等の縮合多環系顔料等が挙げられる。
【0061】
また、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、パーマネントオレンジGTR,ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチャンレッド、パーマネントレッド、デュポンオイルレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ローズベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオキサレート、パラブラウン、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー180、C.I.ピグメント・イエロー12、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3等の種々の顔料をあげることができる。
【0062】
本発明のトナーにおける前記着色剤の含有量としては、前記結着樹脂100質量部に対して、1〜30質量部が好ましいが、定着後における画像表面の平滑性を損なわない範囲で、かかる数値範囲の中でもできるだけ多い方が好ましい。着色剤の含有量を多くすると、同じ濃度の画像を得る際、画像の厚みを薄くすることができ、オフセットの防止に有効な点で有利である。
尚、前記着色剤の種類を適宜選択することにより、イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー、ブラックトナー等の各色トナーが得られる。
【0063】
本発明のトナーに用いられる離型剤としては、公知の離型剤であれば特に限定されないが、例えば、カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックス、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレン、サゾールワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、パラフィンワックス、モンタンワックス等の合成或いは鉱物・石油系ワックス、脂肪酸エステル、モンタン酸エステル等のエステル系ワックスなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。また、これらの離型剤は、1種単独で用いても良く、2種以上併用しても良い。
【0064】
本発明に用いられる離型剤の融点としては、50〜110℃であることが好ましい。融点が上記範囲より低い場合には、トナー粉体の流動性や高温環境下での保管安定性に悪影響を及ぼす他、帯電性が悪化する懸念が生じる、一方、融点が上記範囲より高い場合には、低温定着時に離型剤が溶解せず、定着ロールからの剥離性に対して十分な離型効果が期待できないことが考えられる。
【0065】
離型剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、1から30質量部の範囲内であることが好ましく、2〜20質量部の範囲内であることがより好ましい。離型剤の含有量が1質量部未満であると離型剤添加の効果がなく、高温でのホットオフセットを引き起こす場合がある。一方、30質量部を超えると、帯電性に悪影響を及ぼす他、トナーの機械的強度が低下する為、現像機内でのストレスで破壊されやすくなり、キャリア汚染などを引き起こす場合がある。また、カラートナーとして用いた場合、定着画像中にドメインが残留し易くなり、OHP透明性が悪化するという問題が生じる場合がある。
【0066】
本発明のトナーには、上記必須成分のほかに、目的に応じて公知の添加剤などを適宜選択して用いることができる。例えば、無機微粒子、有機微粒子、帯電制御剤、クリーニング助剤等の公知の各種添加剤が挙げられる。
【0067】
前記無機微粒子は、一般にトナーの流動性を向上させる目的で使用される。前記無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化セリウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素あるいはこれらの表面を疎水化処理したもの等、公知の無機微粒子単独又は二種以上組み合わせて使用することができる。又これら無機微粒子は種々の表面処理を施されてもよく、例えばシランカップリング剤、チタンカップリング剤、シリコーンオイル等で表面処理されたものが好ましい。
【0068】
これら無機微粒子を内添することによりトナーの粘弾性を調整することもでき、その場合、画像光沢度や用紙への染み込みを調整することができる。無機微粒子は原料に対して、0.5〜15質量%含有されることが好ましく、1〜10質量%が更に好ましい。
【0069】
前記有機微粒子は、一般にクリーニング性や転写性を向上させる目的で使用される。前記有機微粒子としては、例えば、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリフッ化ビニリデン等の微粒子が挙げられる。
【0070】
前記無機微粒子または有機微粒子は、これらのうち少なくとも1種の平均一次粒子径は、30nm〜200nmであることが好ましく、30nm〜150nmであることがより好ましい。
【0071】
前記帯電制御剤は、一般に帯電性を向上させる目的で使用される。前記帯電制御剤としては、例えば、クロム系アゾ染料、鉄系アゾ染料等の含金属アゾ化合物、アルミニウムアゾ染料、サリチル酸金属塩、ニグロシンや4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0072】
<トナーの好ましい物性>
以上、本発明に用いられるトナについて詳細に説明したが、当該トナーは更に以下に示す部製であることが好ましい。
本発明に用いられるトナーは角周波数1rad/s、90℃における貯蔵弾性率GL(90)及び損失弾性率GN(90)と角周波数1rad/s、120℃における貯蔵弾性率GL(120)及び損失弾性率GN(120)の全てが1×105Pa以下であり、貯蔵弾性率GL(90)と貯蔵弾性率GL(120)との関係が下記式(1)を満たすことが好ましい。
log GL(90)− log GL(120)< 2 ・・・ 式(1)
【0073】
貯蔵弾性率GL、損失弾性率GNは、回転平板型レオメーター(RDA 2RHIOSシステム Ver.4.3.2,レオメトリックス・サイエンテイフィック・エフ・イー(株)製)を用いて測定したものである。
測定は、試料をサンプルホルダーにセッティングし、昇温速度1℃/min、周波数1rad/s、歪み20%以下、測定保証値の範囲内の検出トルクで測定を行った。必要に応じて、サンプルホルダーを8mmと20mmに使い分けて測定を行なう。
【0074】
貯蔵弾性率GL(90)が1×105Pa以下であれば、100付近という低温での定着が可能である。又、log GL(90)− log GL(120)< 2であることは、溶融後の温度変化が小さいことを示し、定着装置に温度むらがあったとしても、定着後の画像に溶融むらやグロスむらの発生しにくいことを意味する、これにより、トナーの用紙に対する過度の染み込みやホットオフセットの発生を防止することにもつながる。
【0075】
また、本発明に用いられるトナーは、耐オフセット性を良好にするために120℃における溶融粘度が100Pa・S以上であることが好ましい。
更に、本発明に用いられるトナーは、常温下で十分な硬さを有することが望まれる。具体的には、その動的粘弾性が、角周波数1rad/sec、30℃において、貯蔵弾性率GL(30)が1×106Pa以上であり、損失弾性率GN(30)が1×106Pa以上であることが望ましい。なお、貯蔵弾性率GLおよび損失弾性率GNは、JIS K−6900にその詳細が規定されている。
【0076】
角周波数1rad/sec、30℃において、貯蔵弾性率GL(30)が1×106Pa未満であったり、損失弾性率GN(30)が1×106Pa未満であると、現像機内でキャリアと混合された時に、キャリアから受ける圧力や剪断力によりトナーの粒子が変形し、安定な帯電現像特性を維持することができないことがある。また、潜像保持体(感光体)上のトナーがクリーニングされる際に、クリーニングブレードから受ける剪断力によって変形し、クリーニング不良をも生ずることがある。
前記角周波数1rad/sec、30℃において貯蔵弾性率GL(30)および損失弾性率GN(30)が上記範囲にある場合には、高速の電子写真装置に用いた場合でも定着時の特性が安定し好ましい。
【0077】
本発明の電子写真用トナーの製造方法は特に限定されるものではないが、湿式造粒法により作製されることが好ましい。前記湿式造粒法としては、公知の溶融懸濁法、乳化凝集法、溶解懸濁法等の方法が挙げられるが、本発明においては、これらの中でも乳化凝集法が好適に用いられる。
【0078】
乳化凝集法を用いる場合、本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法は、少なくとも結晶性ポリエステル微粒子と無定形高分子微粒子を含む分散液中で、前記2種類の樹脂微粒子を含む凝集粒子を形成する凝集工程と、前記凝集を融合させる融合工程と、少なくとも含むものであることが好ましく、さらに、好ましくは結晶性ポリエステル微粒子の凝集粒子を作製後、その表面に無定形高分子微粒子を付着させる付着工程を経て、加熱することにより融合させる融合工程を、含むことがより好ましい。以下、各工程について詳細に説明する。
【0079】
−乳化工程−
前記乳化工程において、原料分散液は、結着樹脂の乳化粒子(以下、「樹脂粒子」と略す)と、水系媒体および必要に応じて着色剤や離型剤を含む分散液とを混合した溶液に、剪断力を与えることにより形成される。したがって結着樹脂は原料分散液中にあらかじめ樹脂粒子として分散させておく必要がある。
【0080】
前記樹脂粒子の平均粒径としては、通常1μm以下であり、0.01〜1μmであるのが好ましい。前記平均粒径が1μmを越えると、最終的に得られる静電荷像現像用トナーの粒径分布が広くなったり、遊離粒子の発生が生じ、性能や信頼性の低下を招き易い。一方、前記平均粒径が前記範囲内にあると前記欠点がない上、トナー間の偏在が減少し、トナー中の分散が良好となり、性能や信頼性のバラツキが小さくなる点で有利である。なお、前期平均粒径は、例えばコールターカウンターなどを用いて測定することができる。
【0081】
前記分散液における分散媒としては、例えば水系媒体や有機溶剤などが挙げられる。
前記水系媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の水、アルコール類などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。本発明においては、前記水系媒体に界面活性剤を添加混合しておくのが好ましい。界面活性剤としては特に限定されるものでは無いが、例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン系界面活性剤などが挙げられる。これらの中でもアニオン界面活性剤、カチオン系界面活性剤が好ましい。前記非イオン系界面活性剤は、前記アニオン界面活性剤又はカチオン系界面活性剤と併用されるのが好ましい。前記界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0082】
なお、前記アニオン界面活性剤の具体例としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウムなどが挙げられる。また、前記カチオン界面活性剤の具体例としては、アルキルベンゼンジメチルアンモニウムクロライド、アルキルトリメチルンモニウムクロライド、ジステアリルアンモニウムクロライドなどが挙げられる。これらの中でもアニオン界面活性剤、カチオン系界面活性剤等のイオン性界面活性剤が好ましい。
前記有機溶剤としては、例えば、酢酸エチル、トルエンが挙げられ、前記結着樹脂に応じて適宜選択して用いる。
【0083】
前記樹脂粒子が、前記ビニル基を有するエステル類、前記ビニルニトリル類、前記ビニルエーテル類、前記ビニルケトン類等のビニル系単量体の単独重合体又は共重合体(ビニル系樹脂)である場合には、前記ビニル系単量体をイオン性界面活性剤中で乳化重合やシード重合等することにより、ビニル系単量体の単独重合体又は共重合体(ビニル系樹脂)製の樹脂粒子をイオン性界面活性剤に分散させてなる分散液が調製される。
【0084】
前記樹脂粒子が、前記ビニル系単量体の単独重合体又は共重合体以外の樹脂である場合には、該樹脂が、水への溶解度が比較的低い油性溶剤に溶解するのであれば、該樹脂を該油性溶剤に溶解させ、この溶液を、ホモジナイザー等の分散機を用いてイオン性界面活性剤や高分子電解質と共に水中に微粒子分散し、その後、加熱又は減圧して該油性溶剤を蒸散させることにより、ビニル系樹脂以外の樹脂製の樹脂粒子をイオン性界面活性剤に分散させてなる分散液が調製される。
【0085】
一方、前記樹脂粒子が、結晶性ポリエステル及び無定形ポリエステル樹脂である場合、中和によりアニオン型となり得る官能基を含有した、自己水分散性をもっており、親水性となり得る官能基の一部又は全部が塩基で中和された、水性媒体の作用下で安定した水分散体を形成できる。結晶性ポリエステル及び無定形ポリエステル樹脂において中和により親水性基と成り得る官能基はカルボキシル基やスルフォン基等の酸性基である為、中和剤としては例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、アンモニア等の無機塩基や、ジエチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミンなどの有機塩基が挙げられる。
【0086】
また、結着樹脂として、それ自体水に分散しない、すなわち自己水分散性を有しないポリエステル樹脂を用いる場合には、後述する離型剤と同様、樹脂溶液及び又はそれと混合する水性媒体に、イオン性界面活性剤、高分子酸、高分子塩基等の高分子電解質と共に分散し、融点以上に加熱し、強い剪断力を印加可能なホモジナイザーや圧力吐出型分散機を用いて処理すると、容易に1μm以下の微粒子にされ得る。このイオン性界面活性剤や高分子電解質を用いる場合には、その水性媒体中における濃度は、0.5〜5重量%程度になるようにするのが適当である。
【0087】
前記乳化工程で、樹脂分散液と混合される着色剤としては、既述した着色剤を用いることができる。
前記着色剤の分散方法としては、任意の方法、例えば回転せん断型ホモジナイザーや、メディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミルなどの一般的な分散方法を使用することができ、なんら制限されるものではない。必要に応じて、界面活性剤を使用してこれら着色剤の水分散液を調製したり、分散剤を使用してこれら着色剤の有機溶剤分散液を調製したりすることもできる。以下、かかる着色剤の分散液のことを、「着色粒子分散液」という場合がある。分散に用いる界面活性剤や分散剤としては、前記結着樹脂を分散させる際に用い得る分散剤と同様のものを用いることができる。
【0088】
前記着色剤の添加量としては、前記ポリマーの総量に対して1〜20質量%とすることが好ましく、1〜10質量%とすることがより好ましく、2〜10質量%とすることがさらに好ましく、2〜7質量%とすることが特に好ましく、定着後における画像表面の平滑性を損なわない範囲でできるだけ多い方が好ましい。着色剤の含有量を多くすると、同じ濃度の画像を得る際、画像の厚みを薄くすることができ、オフセットの防止の点で有利である。
また、これらの着色剤は、その他の微粒子成分と共に混合溶媒中に一度に添加してもよいし、分割して多段回で添加してもよい。
【0089】
前記乳化工程で、樹脂分散液と混合される離型剤としては、既述した離型剤を用いることができる。
離型剤は、自己水分散性をもたないポリエステル樹脂を乳化分散する場合と同様、水中にイオン性界面活性剤等と共に分散し、融点以上に加熱し、強い剪断力を印加可能なホモジナイザーや圧力吐出型分散機を用いて、1μm以下の分散微粒子径に調整にされる。離型剤分散液における分散媒としては、結着樹脂の分散媒と同様のものを用いることができる。
【0090】
本発明において前記結着樹脂や離型剤を水性媒体と混合して、乳化分散させる装置としては、例えばホモミキサー(特殊機化工業株式会社)、あるいはスラッシャー(三井鉱山株式会社)、キャビトロン(株式会社ユーロテック)、マイクロフルイダイザー(みずほ工業株式会社)、マントン・ゴーリンホミジナイザー(ゴーリン社)、ナノマイザー(ナノマイザー株式会社)、スタティックミキサー(ノリタケカンパニー)などの連続式乳化分散機等が挙げられる。
【0091】
前記乳化工程における結着樹脂分散液に含まれる樹脂粒子の含有量及び、着色剤及び離型剤の分散液における、着色剤、離型剤それぞれの含有量は通常、5〜50質量%であり、好ましくは10〜40質量%である。前記含有量が前記範囲外にあると、粒度分布が広がり、特性が悪化する場合がある。
【0092】
なお、本発明において、目的に応じて、前記結着樹脂分散液に、既述したような内添剤、帯電制御剤、無機粉体等のその他の成分が分散させておいても良い。
なお、本発明における帯電制御剤としては、凝集工程や融合工程の安定性に影響するイオン強度の制御と廃水汚染減少の点で、水に溶解しにくい素材のものが好ましい。
【0093】
前記その他の成分の平均粒径としては、通常1μm以下であり、0.01〜1μmであることが好ましい。前記平均径が1μmを超えると、最終的に得られる静電荷像現像用トナーの粒径分布が広くなったり、遊離粒子の発生が生じ、性能や信頼性の低下を招きやすい。一方、前記平均粒径が前記範囲内にあると前記欠点がない上、トナー間の偏在が減少し、トナー中の分散が良好となり性能や信頼性のばらつきが小さくなる点で有利である。
【0094】
−凝集工程−
凝集工程においては、乳化工程で得られた樹脂粒子、及び着色剤、離型剤の分散液を混合し(以下この混合液を「原料分散液」という)、前記結着樹脂の融点付近の温度で、かつ融点以下の温度にて加熱してそれぞれの分散粒子を凝集させた凝集粒子を形成する。
【0095】
凝集粒子の形成は、回転せん断型ホモジナイザーで攪拌下、室温で凝集剤を添加し、原料分散液のpHを酸性にすることによってなされる。当該pHとしては、結着樹脂の無定形高分子としてビニル系共重合体を用いる場合には、3.5〜6が好ましく、4〜6がより好ましい。
【0096】
一方、結着樹脂(無定形高分子)としてポリエステル樹脂を用いる場合、原料分散液を調整する前のポリエステル樹脂の乳化分散液のpHが7〜8である為、pH3〜5である結晶性ポリエステル樹脂の乳化分散液や着色剤、離型剤分散液を混合すると、極性のバランスが崩れて、緩凝集が生じてしまう。そこで、原料分散液を混合した時点で、pHを4〜6に調整して加熱し、凝集粒子を形成させる。
【0097】
前記凝集工程に用いられる凝集剤は、前記分散剤に用いる界面活性剤と逆極性の界面活性剤、無機金属塩の他、2価以上の金属錯体を好適に用いることができる。特に、金属錯体を用いた場合には界面活性剤の使用量を低減でき、帯電特性が向上するため特に好ましい。
【0098】
前記無機金属塩としては、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウムなどの金属塩、および、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシウム等の無機金属塩重合体などが挙げられる。その中でも特に、アルミニウム塩およびその重合体が好適である。よりシャープな粒度分布を得るためには、無機金属塩の価数が1価より2価、2価より3価、3価より4価の方が、また、同じ価数であっても重合タイプの無機金属塩重合体の方が、より適している。
また、凝集工程においては、加熱による急凝集を抑える為に、室温で攪拌混合している段階でpH調整を行ない、必要に応じて分散安定剤を添加することが好ましい(以下、この段階を「プレ凝集工程」という)。このプレ凝集工程に用いる分散安定剤としては、極性を変えないようにする為、公知の非イオン性界面活性剤を1〜3%添加することが好ましい。分散安定剤を添加しない場合、加熱凝集工程において、原料粒子の微粉の取り込みが悪くなり、結果として粒度分布がブロードになってしまうという不具合がある。また、分散安定剤はプレ凝集工程と加熱凝集工程との両方に分けて添加しても効果的である。
−付着工程−
付着工程では、上記した凝集工程を経て形成された結晶性ポリエステルを含む凝集粒子(以下、「コア凝集粒子」と略す)の表面に無定形高分子粒子を付着させることにより被覆層を形成する(以下、コア凝集粒子表面に被覆層を設けたものを「付着凝集粒子」と略す)。なお、この被覆層は、後述する融合工程を経て形成される本発明のトナーの表面層に相当するものである。
被覆層の形成は、凝集工程においてコア凝集粒子を形成した分散液中に、無定形高分子粒子を含む分散液を追添加することにより行うことができ、必要に応じて他の成分も同時に追添加してもよい。付着工程においても、用いる無定形高分子に応じて凝集工程と同様にpHや凝集剤を選択し、付着凝集粒子中に含まれる2種以上の結着樹脂のうち、最も融点の低い結着樹脂の融点以下の温度にて加熱し付着凝集粒子を得ることができる。また、この付着工程は、プレ凝集の段階で凝集粒子に取り込まれなかった原料微粒子を凝集に導くことにおいても有効である。
【0099】
−融合工程−
融合工程においては、凝集工程と同様の攪拌下で、凝集粒子(結晶性ポリエステル微粒子及び無定形高分子微粒子を含む)または付着凝集粒子(以下これを「(付着)凝集粒子」と略す)の懸濁液のpHを6.5〜8.5の範囲にすることにより、凝集の進行を止めた後、結着樹脂の融点以上の温度で加熱を行うことにより(付着)凝集粒子を融合させる。なお、(付着)凝集粒子を含む分散液の液性にもよるが、凝集を停止するpHが適性なpHでないと、融合させる為の昇温過程で、(付着)凝集粒子がばらけてしまい収率が悪くなる。また、融合工程は、必要に応じて凝集工程を得た後に実施してもよい。
【0100】
融合時の加熱の温度としては、(付着)凝集粒子中に含まれる結着樹脂の融点以上であれば問題無い。前記加熱の時間としては、融合が十分に為される程度行えばよく、0.5〜1.5時間程度行えばよい。それ以上時間を掛けるとコア凝集粒子に含まれる結晶性ポリエステルがトナー表面ヘ露出し易くなってしまう。したがって、定着性、ドキュメント保存性には効果的であるが、帯電性に悪影響を及ぼすため、長時間加熱するのは好ましくない。
【0101】
前記融合工程においては、前記結着樹脂が融点以上に加熱されている時に、あるいは融合が終了した後に、架橋反応を行わせてもよい。また、融合と同時に架橋反応を行うこともできる。架橋反応を行わせる場合には、例えば、結着樹脂として2重結合成分を共重合させた、不飽和スルホン化結晶性ポリエステル樹脂を用い、この樹脂にラジカル反応を起こさせ、架橋構造を導入する。この際、以下に示す重合開始剤を用いる。
【0102】
重合開始剤としては、例えば、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、クミルパーピバレート、t−ブチルパーオキシラウレート、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,4−ビス(t−ブチルパーオキシカルボニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、n−ブチル4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バリレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル‐2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルジパーオキシイソフタレート、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、ジ−t−ブチルパーオキシα−メチルサクシネート、ジ−t−ブチルパーオキシジメチルグルタレート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼラート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジエチレングリコール−ビス(t−ブチルパーオキシカーボネート)、ジ−t−ブチルパーオキシトリメチルアジペート、トリス(t−ブチルパーオキシ)トリアジン、ビニルトリス(t―ブチルパーオキシ)シラン、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジンジハイドロクロライド)、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]、4,4’−アゾビス(4−シアノワレリックアシド)等が挙げられる。
【0103】
これら重合開始剤は、単独で使用することも、または2種以上を併用することもできる。重合開始剤の量や種類は、ポリマー中の不飽和部位量、共存する着色剤の種類や量によって選択される。
重合開始剤は、乳化工程前にあらかじめポリマーに混合しておいてもよいし、凝集工程で凝集塊に取り込ませてもよい。さらには、融合工程、或いは融合工程の後に導入してもよい。凝集工程、付着工程、融合工程、あるいは融合工程の後に導入する場合は、重合開始剤を溶解、または乳化した液を、粒子分散液(樹脂粒子分散液等)に加える。これらの重合開始剤には、重合度を制御する目的で、公知の架橋剤、連鎖移動剤、重合禁止剤等を添加してもよい。
【0104】
融合して得た融合粒子は、ろ過などの固液分離工程や、必要に応じて洗浄工程、乾燥工程を経てトナーの粒子とすることができる。この場合、トナーとして十分な帯電特性、信頼性を確保するために、洗浄工程において、十分に洗浄することが好ましい。
【0105】
乾燥工程では、通常の振動型流動乾燥法、スプレードライ法、凍結乾燥法、フラッシュジェット法など、任意の方法を採用することができる。トナーの粒子は、乾燥後の含水分率を1.0%以下、好ましくは0.5%以下に調整することが望ましい。
【0106】
上述のように乾燥工程を経て造粒されたトナー粒子は、その他の成分として、目的に応じて既述したような無機微粒子、有機微粒子等の公知の各種外添剤を添加することができる。
【0107】
本発明に用いられるトナーの体積平均粒子径としては、1〜20μmが好ましく、3〜10μmがより好ましく、また、数平均粒子径としては、1〜20μmが好ましく、3〜10μmがより好ましい。更に粒度分布の指標である(体積平均粒子径)÷(数平均粒子径)の値は1.6以下が好ましく、1.5以下が更に好ましい。この値が1.6より大きいと粒度分布の広がりが大きくなる為、帯電の分布も広くなってしまい、逆極性のトナーやローチャージトナーが発生する場合がある。
【0108】
前記体積平均粒子径および数平均粒子径は、例えば、コールターカウンター[TA−II]型(コールター社製)を用いて、50μmのアパーチャー径で測定することにより求めることができる。この時、測定はトナーを電解質水溶液(アイソトン水溶液)に分散させ、超音波により30秒以上分散させた後に行う。
【0109】
本発明の画像形成方法において、初期現像剤および補給用現像剤におけるトナーは、上記した範囲で適宜選定して両者とも実質的に同じ成分、特性等を有するように設定される。ただし、初期現像剤および補給用現像剤におけるキャリアとトナーの混合割合は、異なり、補給用現像剤の場合、現像剤中のキャリアは5〜30質量が好ましく、6〜25質量がより好ましい。
補給用現像剤中のキャリア量が5質量%よりも少ないと、繰り返しコピーを行うことによって、現像剤の帯電量が低くなり、画像濃度の低下が生じ、一方、30質量%を超えると、補給される現像剤の帯電付与能が大きすぎて現像剤の帯電量が急激に変化して画質が不安定になりやすい。
【0110】
次に、本発明の上記補給用現像剤を用いる現像装置を備えた画像形成装置について説明する。図1は、ロータリー回転方式の現像装置を搭載した電子写真方式のフルカラー画像形成装置の概略構成図である。まず、静電潜像担持体1は、一様帯電器15によりその表面を負極性に一様に帯電される。次に、レーザー露光器14により、一色目、例えばブラック画像に対応する像露光がなされ、静電潜像担持体1の表面にはブラック画像に対応する静電潜像が形成される。
【0111】
現像装置13は、回転移動式の構成であり、前記ブラック画像に対応する静電潜像の先端が現像位置に到達する以前に、ブラック現像器が静電潜像担持体1に対向し、その後磁気ブラシが静電潜像を摺擦して、前記静電潜像担持体上にブラックトナー像を形成する。
【0112】
上記の現像に用いられる現像装置には、例えば、現像器の内部は、現像スリーブ、供給ロール、マグネットロール、規制部材、スクレーパ等が設けられている。図2は、図1の現像器2、3、4および5の概略構成図である。図2によって現像機内の現像剤が現像されるまでの搬送されていく流れを説明する。
【0113】
現像スリーブ6は、固定したマグネットを内包し、静電潜像担持体1の周面との間に所定の現像間隔を保ち、駆動回転される。なお、現像スリーブ6と静電潜像担持体1とは接触している場合もある。規制部材7は剛性かつ磁性を有し、現像スリーブ6に対し現像剤が介在しない状態で所定の荷重をもって圧接されるものや、現像スリーブ6との間に所定の間隔を保って配されるもの等、種々のものがある。一対の10、11は、スクリュー構造を持ち、互いに逆方向に現像剤を搬送循環させて、トナーとキャリアを十分撹拌混合した上、現像剤として現像スリーブ6に送る作用をするものである。マグネットロール8は、例えば、N極およびS極を交互に等間隔に配置した等磁力の8極の磁石から構成されるもの、或いは、スクレーパに接する部分において反発磁界を形成し、現像剤の剥離を容易にするために、1極欠落させて7極とし、前記現像スリーブ6内で固定した状態で内包させたものであってもよい。
【0114】
上記二本の現像剤撹拌搬送部材10、11は、互いに相反する方向に回転する撹拌部材を兼ねる部材であって、撹拌スクリューの推力によってトナー収容装置9より補給される補給用トナーを搬送すると共に、トナーと磁性キャリアとの混合作用によって、摩擦帯電がなされた均質な二成分の現像剤とされ、現像スリーブ6の周面上にその現像剤を層状に付着する。現像スリーブ6の表面の現像剤は、マグネットロール8の磁極に対向して設けた非磁性材料と磁性材からなる二重構造の規制部材7により、均一な層を形成する。均一に形成された現像剤層は、現像領域において、静電潜像担持体1の周面上の潜像を現像し、トナー像を形成する。
【0115】
図1において、用紙または透明シート等の転写材12は、給紙トレイ26または27から、送り出しロール28または29により搬送され、一度レジストレーションロール25で先端を塞き止められた後、所定のタイミングで転写ドラム24へと送り出される。送り出された転写材12は、吸着装置32と対向ロール30により転写ドラム24へ静電的に保持され、転写ドラム24と静電潜像担持体1が対向する転写領域へ搬送される。そこで前記転写材は、静電潜像担持体1上のブラックトナー像と密着し、転写装置31の作用でブラックトナー像が転写材12上に転写され、前記転写ドラム24は、転写材12を保持したまま次の工程に備える。
【0116】
ブラックトナーの転写を終えた静電潜像担持体1は、その後、必要に応じてクリーニング前処理が施された後、除電コロトロンで除電され、クリーニング装置18により表面に残ったブラックトナーが掻き取られ、さらに除電装置16で表面に残った電荷が除電される。
【0117】
次に、二色目、例えば、イエローの画像形成工程のために、前記静電潜像担持体1は、帯電器15によりその表面を負極性に一様に帯電され、レーザー露光器14により、イエロー画像に対応する像露光がなされ、静電潜像担持体1の表面にはイエロー画像に対応する静電潜像が形成される。また、現像装置13は、ブラックトナー層の形成を終了した後で、イエローの現像器が前記静電潜像担持体1に対向するように切り換えられており、前記イエロー画像に対応する静電潜像は、イエロー用の磁気ブラシで現像される。そして、前記転写ドラム上に保持されていた転写材が、再び転写領域へと搬送され、転写装置31の作用で、今度はブラックトナーの上にイエロートナーが多重転写される。
【0118】
イエロートナーの転写を終えた静電潜像担持体1は、その後、ブラック画像形成工程と同様にして、表面の残留トナーのクリーニングと残留電荷の除電が行われ、一方で、イエロートナーの転写を終えた転写材は、転写ドラム24に保持されたまま、次の工程に備える。
【0119】
その後、イエロー画像形成工程と同様にして、三色目、例えばマゼンタの画像形成工程が行われ、最後に四色目、例えばシアンの画像形成工程が行われる。最後のシアンの画像形成工程では、転写材の搬送が前記三色目までの工程と異なる。すなわち、四色目の転写を終えた転写材は、剥離除電器19および搬送ガイド部材20の先端の図示していない剥離フィンガーにより、転写ドラム24から分離され、定着器21で多重トナー像が転写材に転写された後、画像形成装置の外に搬出される。
【0120】
また、転写材の分離を終えた転写ドラム24は、その表面を除電装置22、33で除電した後、クリーニング装置23で表面クリーニングが行われ、次の転写材12の供給を待つことになる。
【0121】
上記のような複写動作が繰り返されると、図2の現像器内の現像槽17内に収納されている現像剤中のトナーは徐々に消費され、キャリアに対するトナーの比率、すなわちトナー濃度が低下していく。このトナー濃度の変化は、現像槽17に設けられた図示しないトナー濃度センサによりトナー濃度が現像に必要な適性範囲内に常に入るようにフィードバック制御される。上記制御によりトナー補給部(トナー収容装置9)の補給口から、本発明の補給用現像剤が現像器内の現像槽17に供給される。
【0122】
一方、現像槽17内の現像剤中のキャリアは、現像により消費されることはなく、現像槽17内でのトナーと一緒に撹拌されたり、マグネットロールの磁力、および静電潜像担持体1との接触等の影響により、徐々に表面等が汚染されて、劣化していく。このようにキャリアが劣化していくと、トナーに所定の帯電量を付与し得なくなり、画質の低下を生じることになる。そこで、上記の現像器内の消費されない劣化したキャリアを新しいキャリアと置換する必要がある。図1においては、新しいキャリアを現像装置内に補給する手段として、現像により消費されたトナーを補給するためのトナーカートリッジ(トナー収容装置9)の中に補給用のトナーと上記所定の量のキャリアを混した現像剤〈補給用現像剤)を入れ、トナー収容装置9の補給口から、各々の現像器2、3、4、5に補給する。過剰になった現像剤は、下記のように現像器側現像剤排出口34より排出される。
【0123】
そこで、図1に示した回転移動する現像装置13内の回転移動を利用した現像剤の入れ替えについて図3によって説明する。回転移動方式を採用した現像装置13によりフルカラー画像形成装置において、現像器2、3、4、5は、現像装置13の内部で回転移動し、現像時、静電潜像担持体1に対向する位置に回転移動して現像を行い、非現像時は静電潜像担持体1に対向していない位置に回転移動する。
【0124】
図3においては、現像器2が静電潜像担持体1に対向し、現像動作を行っている状態である。この位置で、現像器2に設けられた現像器側現像剤排出口34から溢出した現像剤は、現像器側現像剤排出口34と回転式現像器切換装置の回転中心軸に設けられた現像剤回収口35をつなぐ連通管36の、一次現像剤蓄積部37に蓄積される。この一次現像剤蓄積部37の体積は、単色モードで回転式現像器切替装置の回転なしに、連続で現像操作を行った場合に排出される現像剤量に比較して、十分に大きい必要がある。
【0125】
次に、現像動作が終了した現像器2は、回転式現像器切替装置の回転により、図3に矢印で示した下から上方向へ45°回転し、現像器3の位置に移動する。この時、一次現像剤蓄積部37に排出された現像剤は、回転動作により連通管36内を移動し、回転式現像器切替装置の回転中心軸に設けられた現像剤回収口35から排出される。図4は、その詳細を説明するものであって、回転軸中心には、現像剤回収オーガー38が設置されており、現像剤回収口35から排出された現像剤は、現像剤回収オーガー38により回転軸内を移動して系外へ排出される。さらに現像動作が継続されると、回転式現像器切替装置の回転により、現像器は現像器4の位置に移動し、連通管36内に搬送されていた現像剤は、完全に現像剤回収口35から排出される。
【0126】
ここで、現像器5の位置および現像動作位置である現像器2の位置では、現像剤回収口35から、連通管36へ回収された現像剤が逆流する恐れがある。しかし現像器5および2の位置で現像剤回収口35から逆流した現像剤は、一次現像剤蓄積部37には到達するが、現像器内部へ侵入することはない。逆流が発生しても、現像器3の位置に到達した時点で、再度現像剤回収口35から排出されるため、現像器内部の現像動作に関わる現像剤に混入せず、画質や現像剤寿命には影響を及ぼさない。
【0127】
連通管36は、図4に示すように、現像位置で現像器側現像剤排出口34から排出された現像剤を貯蔵できるように、また現像器側現像剤排出口35から現像剤が逆流した場合でも、現像器側に侵入しないように、現像器側現像剤排出口34に対して下側に広がる形状がよい。また、45°上方向に回転し、図3の現像器3の位置に移動した時に、現像剤の排出がスムーズになるように、傾斜角を有している。逆流した現像剤の現像器への混入を防止するために、現像器側現像剤排出口34の開口面と回転式現像器切替装置の回転中心に設けられた現像剤回収口35の開口面がなす角度は約90°が望ましい。
【0128】
一方、前記定着工程において、定着機による熱定着の際には、オフセット等を防止するため、通常、前記定着機における定着部材に離型剤が供給される。
【0129】
本発明のトナーにおいて、結着樹脂中に架橋構造がある場合には、その効果から離型性に優れ、離型剤の使用量を低減する、若しくは離型剤を使用せずに定着を行うことができる。
【0130】
前記離型剤は、定着後の被転写体および画像へのオイルの付着をなくす観点からは使用しない方が好ましいが、前記離型剤の供給量を0mg/cm2にすると、定着時に前記定着部材と紙等の被転写体とが接触した際に、前記定着部材の磨耗量が増大し、前記定着部材の耐久性が低下してしまう場合があるので、必要ならば、前記離型剤の使用量が8.0×10−3mg/cm2以下の範囲で、前記定着部材に微量に供給されていることが好ましい。
【0131】
前記離型剤の供給量が、8.0×10−3mg/cm2を越えると、定着後に画像表面に付着した離型剤のために画質が低下し、特にOHPのような透過光を利用する場合には、かかる現象が顕著に現れることがある。また、被転写体への離型剤の付着が顕著になり、ベタ付きが発生することもある。さらに、前記離型剤の供給量は、多くなるほど離型剤を貯蔵しておくタンク容量も大きくしなければならず、定着装置自体の大型化を招く要因ともなる。
【0132】
前記離型剤としては、特に制限はないが、例えば、ジメチルシリコーンオイル、フッ素オイル、フロロシリコーンオイルやアミノ変性シリコーンオイル等の変性オイル等の液体離型剤が挙げられる。中でも、前記定着部材の表面に吸着し、均質な離型剤層を形成しうる観点より、アミノ変性シリコーンオイル等の変性オイルが、前記定着部材に対する塗れ性に優れ、好ましい。また、均質な離型剤層を形成しうる観点より、フッ素オイル、フロロシリコーンオイルが好ましい。
【0133】
前記離型剤として、フッ素オイル、フロロシリコーンオイルを使用するのは、本発明の電子写真用トナーを用いない、従来の画像形成方法においては、離型剤自体の供給量を低減し得ないため、コストの面で実用的ではないが、本発明の電子写真用トナーを使用する場合においては、前記離型剤の供給量を激減できるのでコスト面でも実用上問題がない。
【0134】
前記加熱圧着に用いる定着部材であるローラあるいはベルトの表面に、前記離型剤を供給する方法としては、特に制限はなく、例えば、液体離型剤を含浸したパッドを用いるパッド方式、ウエブ方式、ローラ方式、非接触型のシャワー方式(スプレー方式)等が挙げられ、なかでも、ウエブ方式、ローラ方式が好ましい。これらの方式の場合、前記離型剤を均一に供給でき、しかも供給量をコントロールすることが容易な点で有利である。尚、シャワー方式により前記定着部材の全体に均一に前記離型剤を供給するには、別途ブレード等を用いる必要がある。
【0135】
前記離型剤の供給量は、以下のようにして測定できる。即ち、その表面に離型剤を供給した定着部材に、一般の複写機で使用される普通紙(代表的には、富士ゼロックス(株)製の複写用紙、商品名J紙)を通過させると、該普通紙上に離型剤が付着する。この付着した離型剤をソックスレー抽出器を用いて抽出する。ここで、溶媒にはヘキサンを用いる。
このヘキサン中に含まれる離型剤の量を、原子吸光分析装置にて定量することで、普通紙に付着した離型剤の量を定量できる。この量を離型剤の定着部材への供給量と定義する。
【0136】
トナー像を転写する被転写体(記録材)としては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンター等に使用される普通紙、OHPシート等が挙げられる。
定着後における画像表面の平滑性をさらに向上させるには、前記被転写体の表面もできるだけ平滑であることが好ましく、例えば、普通紙の表面を樹脂等でコーティングしたコート紙、印刷用のアート紙等を好適に使用することができる。
【0137】
本発明の画像形成方法は、本発明の補給用現像剤を用いているため、長期の使用により現像剤収容部内における二成分現像剤の電気抵抗値及び帯電量の双方が大きく変化することなく適正な範囲内に維持され、長期にわたって安定した画質を得ることができる。
【0138】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
−結晶性ポリエステル樹脂分散液(1)の調製−
加熱乾燥した三口フラスコに、セバシン酸ジメチル92.5mol%、および、5−t−ブチルイソフタル酸7.5mol%の酸成分と、エチレングリコール(酸成分に対し2mol倍量)と、触媒としてTi(OBu)4(酸成分に対し、0.012質量%)と、を入れた後、減圧操作により容器内の空気を減圧し、さらに窒素ガスにより不活性雰囲気下とし、機械攪拌にて180℃で5時間還流を行った。その後、減圧蒸留にて過剰なエチレングリコールを除去し、230℃まで徐々に昇温を行い2時間攪拌し、粘稠な状態となったところでGPCにて分子量を確認し、重量平均分子量12000になったところで、減圧蒸留を停止、空冷し結晶性ポリエステル樹脂(1)を得た。
またこの樹脂の融点を、示差走査熱量計(マックサイエンス社製:DSC3110、熱分析システム001)(以下、「DSC」と略記する。)の熱分析装置を用いて測定した。測定は、室温から150℃まで毎分10℃の昇温速度で行い、融点をJIS規格(JIS K−7121参照)により解析したところ、明瞭なピークを有し、ピークトップの温度は69℃であった。
【0139】
ついで、この結晶性ポリエステル(1)80質量部及び脱イオン水720質量部をステンレスビーカーに入れ、温浴につけ、95℃に加熱する。結晶性ポリエステル樹脂が溶融した時点で、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて8000rpmで攪拌した。ついでアニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株):ネオゲンRK)1.6質量部を希釈した水溶液20質量部を滴下しながら、乳化分散を行ない、平均粒径が0.20μmの結晶性ポリエステル樹脂分散液(1)〔樹脂粒子濃度:10質量%〕を調製した。
【0140】
−結晶性ポリエステル樹脂分散液(2)の調製
加熱乾燥した三口フラスコに、セバシン酸ジメチル85mol%、n−オクタデセニルコハク酸無水物15mol%、および、エチレングリコール(酸成分に対し1.5mol倍量)と、触媒としてTi(OBu)4(酸成分に対し、0.012質量%)と、を入れた後、減圧操作により容器内の空気を減圧し、さらに窒素ガスにより不活性雰囲気下とし、機械攪拌にて180℃で6時間還流を行った。その後、減圧蒸留にて過剰なエチレングリコールを除去し、230℃まで徐々に昇温を行い4時間攪拌し、粘稠な状態となったところでGPCにて分子量を確認し、重量平均分子量72000になったところで、減圧蒸留を停止、空冷し結晶性ポリエステル(2)を得た。この融点をDSCを用いて測定したところ、明瞭なピークを有し、ピークトップは67℃であった。
【0141】
ついで、この結晶性ポリエステル(2)80質量部及び脱イオン水720質量部をステンレスビーカーに入れ、温浴につけ、95℃に加熱する。結晶性ポリエステル樹脂が溶融した時点で、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて8000rpmで攪拌する。ついでアニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株):ネオゲンRK)1.6質量部を希釈した水溶液20質量部を滴下しながら、乳化分散を行ない、平均粒径が0.22μmの結晶性ポリエステル樹脂分散液(2)〔樹脂粒子濃度:10質量%〕を調製した。
【0142】
−結晶性ポリエステル樹脂分散液(3)の調製−
加熱乾燥した三口フラスコに、1,10ドデカン二酸90.5mol%、及びイソフタル酸ジメチル−5−スルホン酸ナトリウム2mol%、5−t−ブチルイソフタル酸7.5mol%の酸成分、および、1,9ノナンジオール100mol%と、触媒としてTi(OBu)4(酸成分に対し、0.014質量%)と、を入れた後、減圧操作により容器内の空気を減圧し、さらに窒素ガスにより不活性雰囲気下とし、機械攪拌にて180℃で6時間還流を行った。その後、減圧蒸留にて留出物を除去し、220℃まで徐々に昇温を行い4時間攪拌し、粘稠な状態となったところでGPCにて分子量を確認し、重量平均分子量13000になったところで、減圧蒸留を停止、空冷し結晶性ポリエステル(3)を得た。この融点をDSCを用いて測定したところ、明瞭なピークを示し、ピークトップは72℃であった。
【0143】
ついで、この結晶性ポリエステル(3)80質量部及び脱イオン水720質量部をステンレスビーカーに入れ、温浴につけ、95℃に加熱する。結晶性ポリエステル樹脂が溶融した時点で、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて8000rpmで攪拌する。ついでアニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株):ネオゲンRK)1.6質量部を希釈した水溶液20質量部を滴下しながら、乳化分散を行ない、平均粒径が0.24μmの結晶性ポリエステル樹脂分散液(3)〔樹脂粒子濃度:10質量%〕を調製した。
【0144】
−結晶性ポリエステル樹脂分散液(4)の調製−
加熱乾燥した三口フラスコに、セバシン酸ジメチル95mol%、イソフタル酸ジメチル−5−スルホン酸ナトリウム5mol%、1,3‐プロパンジオール120mol%、触媒としてTi(OBu)4(酸成分に対し、0.02質量%)と、を入れた後、減圧操作により容器内の空気を減圧し、さらに窒素ガスにより不活性雰囲気下とし、機械攪拌にて180℃で6時間還流を行った。その後、減圧蒸留に留出物を除去し、230℃まで徐々に昇温を行い3時間攪拌し、粘稠な状態となったところでGPCにて分子量を確認し、重量平均分子量10800になったところで、減圧蒸留を停止、空冷し結晶性ポリエステル(4)を得た。この融点をDSCを用いて測定したところ、明瞭なピークを示し、ピークトップは48℃であった。
【0145】
ついでこの結晶性ポリエステル(4)80質量部及び脱イオン水720質量部をステンレスビーカーに入れ、温浴につけ、95℃に加熱する。結晶性ポリエステル樹脂が溶融した時点で、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて8000rpmで攪拌する。ついでアニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株):ネオゲンRK)1.6質量部を希釈した水溶液20質量部を滴下し、更にアンモニア水溶液でpHを7.0に調整しながら、乳化分散を行ない、平均粒径が0.26μmの結晶性ポリエステル樹脂分散液(4)〔樹脂粒子濃度:10質量%〕を調製した。
【0146】
−結晶性ポリエステル樹脂分散液(5)の調製−
加熱乾燥した三口フラスコに、テレフタル酸90mol%、イソフタル酸ジメチル−5−スルホン酸ナトリウム10mol%、1,8‐オクタンジオール110mol%、触媒としてTi(OBu)4(酸成分に対し、0.018質量%)とを入れた後、減圧操作により容器内の空気を減圧し、さらに窒素ガスにより不活性雰囲気下とし、機械攪拌にて180℃で6時間還流を行った。その後、減圧蒸留に留出物を除去し、220℃まで徐々に昇温を行い3時間攪拌し、粘稠な状態となったところでGPCにて分子量を確認し、重量平均分子量14300になったところで、減圧蒸留を停止、空冷し結晶性ポリエステル(5)を得た。この融点をDSCを用いて測定したところ、明瞭なピークを示し、ピークトップは128℃であった。
【0147】
ついでこの結晶性ポリエステル(5)80質量部及び脱イオン水720質量部をステンレスビーカーに入れ、温浴につけ、95℃に加熱する。結晶性ポリエステル樹脂が溶融した時点で、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて8000rpmで攪拌する。ついでアニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株):ネオゲンRK)1.6質量部を希釈した水溶液20質量部を滴下し、更にアンモニア水溶液でpHを7.0に調整しながら、乳化分散を行ない、平均粒径が0.22μmの結晶性ポリエステル樹脂分散液(5)〔樹脂粒子濃度:10質量%〕を調製した。
【0148】
−無定形高分子分散液(1)の調整−
・スチレン :370質量部
・nブチルアクリレート : 30質量部
・アクリル酸 : 4質量部
・ドデカンチオール : 24質量部
・四臭化炭素 : 4質量部
以上を混合し、溶解したものを、非イオン性界面活性剤(三洋化成(株)製:ノニポール400)6質量部及びアニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製:ネオゲンSC)10質量部をイオン交換水560質量部に溶解したものに、フラスコ中で分散し、乳化し、10分ゆっくりと混合しながら、これに過硫酸アンモニウム4質量部を溶解したイオン交換水50質量部を投入し、窒素置換を行った後、前記フラスコ内を攪拌しながら内容物が70℃になるまでオイルバスで加熱し、5時間そのまま乳化重合を継続した。こうして、平均粒径が180nm、重量平均分子量(Mw)が15,500である樹脂粒子を分散させてなる無定形高分子分散液(1)(樹脂粒子濃度:40質量%)を調製した。なおこの樹脂分散液を乾燥させ、樹脂の融点をDSCを用いて測定したところ、明瞭なピークは確認できず、ガラス転移点は59℃を示した。
【0149】
−無定形高分子分散液(2)の調整−
・エチレングリコ−ル :486質量部
・ネオペンチルグリコール :650質量部
・テレフタル酸 :957質量部
攪拌装置、窒素導入管、温度センサー、精留塔を備えた内容量5リットルのフラスコに上記のモノマーのを仕込み、1時間を要して温度を190℃まで上げ、反応系内が均一に攪拌されていることを確認した後、ジブチル錫オキサイドの1.2質量部を投入した。さらに生成する水を留去しながら同温度から6時間を要して240℃まで温度を上げ、240℃でさらに3時間脱水縮合反応を継続し、酸価が6.5mgKOH/g、重量平均分子量9700である無定形ポリエステル樹脂(2)を得た。この樹脂の融点をDSCで測定したところ、明瞭なピークは確認できず、ガラス転移点は66℃を示した。
【0150】
ついで、これを溶融状態のまま、キャビトロンCD1010(株式会社ユーロテック製)に毎分100gの速度で移送した。別途準備した水性媒体タンクには試薬アンモニア水をイオン交換水で希釈した0.37質量%濃度の希アンモニア水を入れ、熱交換器で120℃に加熱しながら毎分0.1リットルの速度で、上記ポリエステル樹脂熔融体と同時に上記キャビトロン(株式会社ユーロテック製)に移送した。
回転子の回転速度が60Hz、圧力が5Kg/cm2の条件でキャビトロンを運転し、平均粒径0.14μmのポリエステル樹脂からなる無定形高分子分散液(2)(樹脂粒子濃度:30質量%)を得た。
【0151】
前記無定形ポリエステル樹脂(1)と全く同様にして、酸価が6.0mgKOH/g、軟化点が105℃になるまで、反応をさせた。次いで、温度を190℃まで下げ無水フタル酸の497部を徐々に投入し、同温度で1時間反応を継続し、酸価が51mgKOH/gで重量平均分子量が32000である無定形ポリエステル樹脂を得た。この樹脂の融点をDSCを用いて測定したところ、明瞭なピークは確認できず、ガラス転移点は、67℃であった。
ついでこれを無定形ポリエステル樹脂分散液(2)の調製条件と同様にキャビトロンで乳化分散させ、平均粒径0.23μmのポリエステル樹脂からなる無定形高分子分散液(3)(樹脂粒子濃度:30質量%)を得た。
【0152】
−離型剤分散液の調製−
以上を95℃に加熱して、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて分散した後、マントンゴーリン高圧ホモジナイザ(ゴーリン社)で分散処理し、平均粒径が230nmである離型剤を分散させてなる離型剤分散液(離型剤濃度:20質量%)を調製した。
【0153】
以上を混合し、溶解し、高圧衝撃式分散機アルティマイザー((株)スギノマシン製、HJP30006)を用いて約1時間分散して着色剤(シアン顔料)を分散させてなる着色剤分散液を調製した。着色剤分散液における着色剤(シアン顔料)の平均粒径は、0.15μm、着色剤粒子濃度は23質量%であった。
【0154】
(実施例1)
−トナー母粒子(1)の製造−
・結晶性ポリエステル樹脂分散液(1) :500質量部
・無定形高分子分散液(1) : 75質量部
・着色剤分散液 :22.87質量部
・離型剤分散液 :40質量部
・ノニオン性界面活性剤(IGEPAL CA897):1.05質量部
上記原料を5Lの円筒ステンレス容器に入れ、Ultraturraxにより8000rpmでせん断力を加えながら30分間分散混合する。ついで、凝集剤としてポリ塩化アルミニウムの10%硝酸水溶液0.14質量部を滴下しはじめ、プレ凝集を促進した。それぞれの分散粒子が凝集しはじめると、原料分散液自体の粘度が上昇するので、増粘をはじめたら光学顕微鏡で凝集粒子の大きさを確認しながら、前記凝集剤水溶液を滴下した。またこの際、原料分散液のpHは4.2〜4.5の範囲に制御するのが好ましく、必要に応じて、0.3Nの硝酸や1Nの水酸化ナトリウム水溶液でpH調整を行なう。pHが4.0以下になると凝集粒子径が成長し始めるので、凝集粒子径を大きすぎないようにするには上記範囲が好ましい。上記pH範囲で約2時間保持し、コア凝集粒子を形成した。この際コールターカウンター[TA−II]型(アパーチャー径:50μm;コールター社製)を用いて測定したコア凝集粒子の体積平均粒子径は2〜3μm程度であった。次に、無定形高分子分散液(1)17.5質量部を追添加し、また、形成される付着凝集粒子を安定化させる為にノニオン性界面活性剤(IGEPAL CA897)0.45質量部を添加し、コア凝集粒子表面に無定形高分子粒子を付着させた。
【0155】
その後、攪拌装置、温度計を備えた重合釜に原料分散液を移し、マントルヒーターにて加熱し始め、40℃にて付着凝集粒子の成長を促進させた。その後、光学顕微鏡及びコールターカウンターで付着凝集粒子の大きさ及び形態を確認しながら造粒を進め、体積平均粒子径が6〜7μmになった時点で、付着凝集粒子を融合させるために、pHを9.0に上げた後、90℃まで昇温させた。顕微鏡で粒子が融合したのを確認した後90℃で保持したまま、再度pHを6.5まで下げて、1時間後に加熱を止め、放冷した。その後45μmメッシュで篩分し、水洗を繰り返した後、真空乾燥機で乾燥した。以上のように造粒したトナー母粒子(1)の体積平均粒子径は7.3μmであった。
【0156】
このトナー母粒子に、外添剤としてチタニア微粉末(商品名STT−100H:チタン工業社製)をトナー100質量部に対して1.0質量部、シリカ微粉末(商品名RY50:日本アエロジル社製)0.6質量部添加し、ヘンシェルミキサーで混合して静電荷像現像用トナー(1)を得た。
【0157】
フェライト粒子を除く上記成分を攪拌機を分散させ、被覆形成用塗布液を作製した。この被覆層形成用液とフェライトを真空脱気型ニーダーに入れ、60℃で30分間攪拌した後、減圧してトルエン溶媒を留去して、該フェライト粒子表面上に被膜を形成して、キャリア(1)を得た。上記キャリア100質量部に対して、上記静電荷現像用トナー(1)6質量部をVブレンダーで混合して、あらかじめ現像機内に収容する初期現像剤を調製した。この初期現像剤のトナーの帯電量は−27μC/g、キャリア抵抗値は2.4×109Ω・cmであった。
【0158】
−補給用現像剤の調製−
帯電付与剤であるメラミン樹脂の配合量を0.8質量部、及びパーフルオロオクチルエチルアクリレート‐メチルメタクリレート共重合体の量を2.6質量部に変更した以外は、上記と同様にして補給用現像剤用キャリア(1)を作製した。このキャリア100質量部に対して上記静電荷現像用トナー(1)6質量部をVブレンダーで混合して、帯電量を測定した。このキャリアによる現像剤のトナーの帯電量は−31μC/g、キャリア抵抗値は2.8×109Ω・cmであった。上記補給現像用キャリア1質量部に対して、上記静電荷現像用トナー(1)10質量部の割合で混合して補給用現像剤(1)を調製した。
【0159】
(比較例1)
実施例1において、カーボンブラック量を0.1質量部に変えた以外は同様にして補給用現像剤に添加するキャリア(2)を調製した。このキャリア100質量部に対して上記静電荷現像用トナー(1)6質量部をVブレンダーで混合して、帯電量を測定した。このキャリア(2)による現像剤のトナーの帯電量は−32μC/g、キャリア抵抗値は3.2×1014Ω・cmであった。このキャリア(2)を用い、実施例1の場合と同様にして補給用現像剤を調製した。
【0160】
前記図1に示す画像形成装置における2つの現像器を用い、各々実施例1および比較例1のあらかじめ現像器内に入れておく現像剤を入れた。一方、追加用キャリアを含んだ補給用トナーをトナーカートリッジ(トナー収容装置)に入れて現像器に装着し、供給しながら、回転式現像器切替装置にて10枚ごとに現像器を切り替えてコピー操作を行い、評価した。その際、A4サイズの用紙1枚当たりのトナー消費量が20mg、60mgの場合について、ランニングテストを実施した。その結果を図5および図6に示す。図5は、コピー枚数に対するキャリア抵抗値の変動を示すグラフであり、図6は、コピー枚数に対する帯電量の変動を示すグラフである。これらの図から明らかなように、本発明の実施例の場合は、キャリア抵抗値および帯電量の変動は殆どなく、安定した状態を維持したのに対して、比較例の場合は、帯電量は安定していたが、キャリア抵抗値はランニングと共に上昇し、画像濃度が低いものとなった。なお、キャリア抵抗値は、現像剤中のトナーをブローオフすることによって求めた。
【0161】
(実施例2)
−トナー母粒子(2)の製造−
・結晶性ポリエステル樹脂分散液(1) :550質量部
・無定形高分子分散液(1) : 75質量部
・着色剤分散液 :22.87質量部
・ノニオン性界面活性剤(IGEPAL CA897) :1.0質量部
原料として上記各分散液を用いたこと以外は、実施例1と同様の条件でプレ凝集まで進め、コア凝集粒子を2〜3μmまで成長させた。
【0162】
次に、実施例1と同様に、コア凝集粒子の表面に無定形高分子粒子を付着させて付着凝集粒子を形成するために無定形高分子分散液(1)25質量部を追添加した後、加熱し始めた。加熱開始から3時間後の付着凝集粒子の体積平均径が6.5μmになったところで、融合させる為、pHを8.3に調整してから温度を90℃まで昇温させた。顕微鏡で付着凝集粒子が融合したのを確認した後90℃で保持したまま再度pHを6.5まで下げて1時間後に加熱を止め、放冷した。その後実施例1と同様の条件で、篩分、洗浄、乾燥し、体積平均径が7.5μmのトナー母粒子(2)を得た。
【0163】
(実施例3)
−トナー母粒子(3)の製造−
・結晶性ポリエステル樹脂分散液(2) :600質量部
・無定形高分子分散液(1) :50.0質量部
・着色剤分散液: 22.87質量部
・離型剤分散液 :50質量部
・ノニオン性界面活性剤(IGEPAL CA897):1.0質量部
原料として上記各分散液を用い、凝集剤(ポリ塩化アルミニウム10%硝酸水溶液)の添加量を0.18質量部に変更した以外は、実施例1と同様の条件でプレ凝集まで進めた。次に、原料分散液のpHを4.6〜5.0に調整しながら、コア凝集粒子を2〜3μmまで成長させた。
【0164】
次に、コア凝集粒子の表面に無定形高分子粒子を付着させて付着凝集粒子を形成するために無定形高分子分散液(1)12.5質量部を追添加し、また、形成される付着凝集粒子を安定化させる為にノニオン性界面活性剤(アンタロックスCA897)1.0質量部を添加した。凝集状態を光学顕微鏡とコールターカウンターで確認しながら加熱開始から3時間後に付着凝集粒子の体積平均径が6.2μmになったところで、融合させる為、pH9.0に調整してから温度を95℃まで昇温させた。顕微鏡で付着凝集粒子が融合するのを確認した後95℃で保持したまま再度pHを6.5まで下げて1時間後に加熱を止め、放冷した。その後実施例1と同様の条件で、篩分、洗浄、乾燥し、体積平均径が6.9μmのトナー母粒子(3)を得た。
【0165】
(実施例4)
−トナー母粒子(4)の製造−
・結晶性ポリエステル樹脂分散液(3) :400質量部
・無定形高分子分散液(2) : 90質量部
・着色剤分散液 :22.87質量部
・離型剤分散液 :50質量部
・ノニオン性界面活性剤(IGEPAL CA897):1.50質量部
原料として上記各分散液を用い、凝集剤(ポリ塩化アルミニウム10%硝酸水溶液)の添加量を0.24質量部に変更した以外は実施例1と同様の条件でプレ凝集まで進めた。次に原料分散液のpHを5.0〜5.4に調整しながらコア凝集粒子を2〜3μmまで成長させた。
【0166】
次に、コア凝集粒子の表面に無定形高分子粒子を付着させて付着凝集粒子を形成するために無定形高分子分散液(2)22.5質量部を追添加し、また、形成される付着凝集粒子を安定化させる為にノニオン性界面活性剤(IGEPALCA897)1.0質量部を添加した後、40℃で加熱凝集させた。凝集状態を光学顕微鏡とコールターカウンターで確認しながら加熱開始から3時間後に付着凝集粒子の体積平均径が6.9μmになったところで、融合させる為、pHを7に調整してから温度を95℃まで昇温させた。顕微鏡で付着凝集粒子が融合するのを確認した後、95℃で保持したまま再度pHを6.3まで下げて1時間後、加熱を止め、放冷した。その後実施例1と同様の条件で、篩分、洗浄、乾燥し、体積平均径が7.6μmのトナー母粒子(4)を得た。
【0167】
(実施例5)
−トナー母粒子(5)の製造−
・結晶性ポリエステル樹脂分散液(3) :1000質量部
・着色剤分散液 :22.87質量部
・離型剤分散液 :50質量部
・ノニオン性界面活性剤(IGEPAL CA897):2.0質量部
上記原料を5Lの円筒ステンレス容器に入れ、Ultraturraxにより6000rpmでせん断力を加えながら5分間分散混合する。ついで凝集剤としてポリ塩化アルミニウムの10%硝酸水溶液0.32質量部を添加する。この時、増粘する為、十分原料をUltraturraxにて攪拌し、均一になったところで、実施例1と同様の重合釜にセットする。マントルヒーターで一度40℃に昇温させ、pHを4.6に設定する。その後、昇温とともに起こる急凝集を抑える為に1Nの水酸化ナトリウムを加えて、phを上げながら、粒径を制御しつつ55℃まで徐々に昇温させる。55℃のときの粒径は5.7μmであった。さらに微粉を凝集粒子に取り込む為に、60℃まで昇温させる。ついで、この凝集粒子を融合させるとともに、凝集粒子がばらけるのを防ぐ為に、ph6.9、攪拌速度を200rpmから120rpmに落としてから80℃に昇温させる。
顕微鏡で粒子が融合したのを確認した(以下、「コア融合粒子」と略す)後、80℃に保持したまま、pH6.5まで下げ、コア粒子径の成長を停止させる為に、氷水を注入して降温速度100℃/分で急冷した。
【0168】
このようにして作製したコア融合粒子分散液を固体濃度20 重量%になるように一度遠心分離器で濃縮した。ついで、このコア融合粒子表面に凝集剤成分を含侵させる目的で、凝集剤(ポリ塩化アルミニウム10%硝酸水溶液)を0.12質量部加え、約12時間保持した。その後、コア融合粒子分散液を50℃まで昇温し、コア融合粒子表面に無定形高分子で被覆する目的で、無定形高分子分散液(1)を60質量部添加し、pHを3.5まで下げて、コア融合粒子表面への無定形高分子微粒子の付着を促進させた。続いてコア融合粒子表面上の無定形高分子粒子の融合を促進させる為に、50℃のまま24時間保持したのち、pH7.0まであげて中和させた。その後実施例1と同様の条件で、篩分、洗浄、乾燥し、体積平均粒径7.4μmのトナー母粒子(5)を得た。
【0169】
(比較例2)
−トナー母粒子(6)の製造−
原料として結晶性ポリエステル樹脂分散液(4)に替えたこと以外は、実施例1と同様の条件で造粒し、篩分、洗浄、乾燥して、体積平均粒径7.1μmのトナー母粒子(6)を得た。
【0170】
(比較例3)
−トナー母粒子(7)の製造−
原料として結晶性ポリエステル樹脂分散液(1)の代わりに(5)を用い、凝集剤(ポリ塩化アルミニウム10%硝酸水溶液)の添加量を0.20質量部に変更した以外は実施例1と同様の条件でプレ凝集まで進めた。次に原料分散液のpHを4.8〜5.1に調整しながらコア凝集粒子を2〜3μmまで成長させた。
【0171】
次に、コア凝集粒子の表面に無定形高分子粒子を付着させて付着凝集粒子を形成するために無定形高分子分散液(2)22.5質量部を追添加し、また、形成される付着凝集粒子を安定化させる為にノニオン性界面活性剤(IGEPALCA897)0.5質量部を添加した後、40℃で加熱凝集させた。凝集状態を光学顕微鏡とコールターカウンターで確認しながら加熱開始から3時間後に付着凝集粒子の体積平均径が7.0μmになったところで、融合させる為、pHを7.2に調整してから温度を95℃まで昇温させた。顕微鏡で付着凝集粒子が融合するのを確認した後、95℃で保持したまま再度pHを6.3まで下げて1時間後、加熱を止め、放冷した。その後実施例1と同様の条件で、篩分、洗浄、乾燥し、体積平均径が7.7μmのトナー母粒子(7)を得た。
【0172】
(比較例4)
−トナー母粒子(8)の製造−
・無定形高分子分散液(1) :150質量部
・無定形高分子分散液(3) :100質量部
・着色剤分散液 :22.87質量部
・離型剤分散液 :50質量部
原料として上記各分散液を用いたこと以外は、実施例1と同様の条件でプレ凝集まで進めた。次に原料分散液のpHを5.0〜5.5に調整しながら、凝集粒子を2〜3μmまで成長させ、実施例1と同様、凝集粒子を安定化させる為にノニオン性界面活性剤(IGEPAL CA897)2.0質量部を添加した後、加熱し始めた。加熱開始から2時間後の凝集粒子の体積平均径が6.5μmになったところで、融合させる為、pHを7.5に調整してから温度を90℃まで昇温させた。顕微鏡で粒子が融合したのを確認したが、一部融合粒子が融着し始めたので、再度pHを6.5まで下げ、更に氷水を投入して100℃/分の降温速度で急冷した。その後、実施例1と同様の条件で、篩分、洗浄、乾燥し、体積平均粒子径が7.8μmのトナー母粒子(8)を得た。
【0173】
<トナーの諸特性評価>
(定着性及びドキュメント保存性の評価)
トナー母粒子(1)〜(8)にそれぞれに外添剤として、静電荷現像用トナー(1)と同様、チタニア微粉末をトナー100質量部に対して1.0質量部、シリカ微粉末0.6質量部添加し、ヘンシェルミキサーで混合して静電荷像現像用トナー(1)〜(8)を得た。
ついで、静電荷現像用トナー(1)〜(8)をそれぞれ8質量部と実施例(1)で作製したキャリア(1)100質量部を混合して二成分現像剤を調整し、これを市販の電子写真複写機(富士ゼロックス社製 A−Color 635)を用いて画像出しを行い、未定着画像を得た。
【0174】
ついで、ベルトニップ方式の外部定着機を用いて、定着温度を90℃から220℃の間で段階的に上昇させながら画像の定着性、ホットオフセット性を評価した。なお、低温定着性は、未定着のソリッド画像(25mm×25mm)を定着した後、一定荷重の錘を用いて折り曲げ、その部分の画像欠損度合いグレード付けし、ある一定のグレード以上になる定着温度を最低定着温度として、低温定着性の指標とした。
【0175】
一方、ドキュメント保存性の評価については、上記定着評価の際に作成した未定着像2枚を、外部定着機で150℃にて定着した後、画像部と、非画像部及び画像部とが重なるように向かい合わせて重ね、重ねた部分に対して80g/cm2相当になるように重りを載せ、60℃湿度50%の恒温恒湿槽で3日間放置した。放置後、重ねた2枚の定着像の画像欠損度合いを以下に示す「G1」〜「G5」の5段階でグレード付けした。
【0176】
G1:互いの画像部が接着した為、画像が定着されている紙ごと剥がれて、画像欠損が激しく、また非画像部へ明らかな画像の移行が見られる。
G2:画像同士が接着していた為、画像部のところどころに画像欠損の白抜けが発生している。
G3:重ねた2枚の画像を離す際、互いの定着表面に画像のあれやグロス低下は発生するが、画像としては画像欠損は殆どなく許容できるレベル。非画像部に若干の移行が見られる。
G4:重ねた2枚の画像を離す時に、パリッと音がし、非画像部にもわずかに画像移行が見られるが、画像欠損はなく、全く問題無いレベル
G5:画像部、非画像ともに全く画像欠損や画像移行が見られない。
【0177】
(帯電の経時安定性の評価)
実施例(1)と同様、あらかじめ現像器に収容される現像剤に使用するキャリア(1)100質量部に対して、上記静電荷現像用トナー(2)〜(8)6質量部をVブレンダーで混合して、あらかじめ現像機内に収容する現像剤(2)〜(8)を調製した。さらに、補給用キャリア(1)1質量部に対して、静電荷現像用トナー(2)〜(8)10質量部の割合で混合して補給用現像剤(2)〜(8)を調製した。
【0178】
実施例(1)と同様、図1に示す画像形成装置における2つの現像器を用い、各々実施例(2)〜(5)および比較例(2)〜(4)のあらかじめ現像器内に入れておく現像剤を入れた。一方、追加用キャリアを含んだ補給用現像剤をトナーカートリッジ(トナー収容装置)に入れて現像器に装着し、供給しながら、回転式現像器切替装置にて10枚ごとに現像器を切り替えてコピー操作を行い、評価した。その際、A4サイズの用紙1枚当たりのトナー消費量が20mg、60mgの場合について、ランニングテストを実施した。
以上の様に作製したトナーの諸特性を表1に示す。また、帯電の経時安定性評価結果については図7および図8にコピー枚数に対する帯電量の変動を示す。
【0179】
【表1】
【0180】
表1が示すように、本発明の実施例の場合は、広い定着ラチチュードと優れたドキュメント保存性を示しているのに対して、比較例の場合は、いずれかの特性が悪化し、トナー特性を両立し得なかった。また帯電の経時安定性の観点からでは、図7および図8から明らかなように、本発明の実施例の場合は、帯電量の変動は殆どなく、安定した状態を維持したのに対して、比較例の場合は、帯電量の経時安定性は見出せず、経時後のコピーは濃度低下やかぶりが見られ画質が著しく悪化していた。
【0181】
【発明の効果】
以上のように、本発明の補給用現像剤及びこれを用いた画像形成方法は、結晶性樹脂を含有するトナーとトリクル現像方式を用いた現像方法において、比較的少量のキャリア補給であっても、長期の使用により現像剤収容部内における二成分現像剤の電気抵抗値及び帯電量の双方が大きく変化することなく適正な範囲内に維持され、長期にわたって安定した画質を得ることができる。
さらに、耐ホットオフセットと低温定着性に優れ、省エネルギーを実現し、生産性の高い高速複写機にも対応可能な補給用現像剤である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の画像形成方法を実施するためのロータリー回転方式の現像装置を搭載した電子写真方式のフルカラー画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】図1の要部概略的構成図である。
【図3】図1に示す回転移動する現像装置における現像剤の入れ替えを説明するための説明図である。
【図4】図3の詳細説明図である。
【図5】実施例1と比較例1のランニングテストにおけるコピー枚数に対するキャリア抵抗値の変動を示すグラフである。
【図6】実施例1と比較例1のランニングテストにおけるコピー枚数に対する帯電量の変動を示すグラフである。
【図7】実施例2〜実施例5のランニングテストにおけるコピー枚数に対する帯電量の変動を示すグラフである。
【図8】比較例2〜比較例4のランニングテストにおけるコピー枚数に対する帯電量の変動を示すグラフである。
【符号の説明】
1 潜像担持体
2、3、4、5 現像器
6 現像スリーブ
9 トナー収納装置
10,11 現像剤攪拌搬送部材
14 レーザー露光器
15 一様帯電器
16 除電装置
17 現像槽
18 クリニング装置
21 定着器
24 転写ドラム
34 現像剤側現像剤排出口
Claims (2)
- トナーとキャリアとからなる二成分現像剤を収容した現像機を用いて潜像担持体上の潜像を現像するに際して、補給用現像剤を補給しながら現像を行なうトリクル現像方式用の補給用現像剤であって、該補給用現像剤のキャリアが予め現像機に収容されている初期現像剤のキャリアよりも高い帯電量をトナーに付与し、該補給用現像剤のキャリアと初期現像剤のキャリアの電気抵抗が等しく、前記トナーが融点50〜110℃の結晶性ポリエステル樹脂を主成分とする結着樹脂と着色剤とを含むことを特徴とする補給用現像剤。
- トナーとキャリアとからなる二成分現像剤を収容した現像機を用いて潜像担持体上の潜像を現像するに際して、補給用現像剤を補給しながら現像を行なうトリクル現像方法であって、該補給用現像剤が請求項1に記載の補給用現像剤であることを特徴とする画像形成方法。
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