JP2004285255A - 印刷インキ用樹脂及び該印刷インキ用樹脂を使用した印刷インキ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ロジン類とアクリル酸を加熱付加反応させて得られるアクリル酸1モル付加ロジン(A)、重合ロジン(B)、アルケニル置換コハク酸又はその無水物(C)、及び多価アルコール(D)を加熱反応させて得られる印刷インキ用樹脂および該印刷インキ用樹脂を用いた印刷インキ。
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、印刷インキ用樹脂及び該印刷インキ用樹脂を使用した印刷インキに関し、具体的には、フェノール樹脂を一切含まない樹脂であって、印刷インキに使用した場合、非芳香族系溶剤に対する溶解性に優れ、オフセット印刷において要求される優れたインキ性能を与える印刷インキ用樹脂、及び該印刷インキ用樹脂を使用した印刷インキに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、高分子量、高粘度、高軟化点、インキ用溶剤に対する優れた溶解性等の諸性質を有し、オフセット印刷インキに用いた場合には印刷適性に優れることから、オフセット印刷インキに使用するインキ用樹脂としては、ロジン類をレゾール型フェノール樹脂で変性したロジン変性フェノール樹脂が広く使用されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。ロジン変性フェノール樹脂は、顔料への濡れが良く、顔料が均一分散しやすいという特長を有するとともに、ゲル化剤との反応によって印刷インキに適した物性の樹脂ワニスを得られるため、オフセット印刷インキ用樹脂として、重用されており、高速印刷・高光沢を支える樹脂として、現在、国内では年間約数万トンが消費されている。このロジン変性フェノール樹脂は、ロジン類、アルキルフェノールホルムアルデヒド縮合物、及び多価アルコールの反応生成物から構成される。
【0003】
ロジン変性フェノール樹脂は、アルキルフェノールホルムアルデヒド縮合物をその主原料の一つとしており、アルキルフェノールホルムアルデヒド縮合物の合成には、アルキルフェノールとホルムアルデヒドとを、アルカリまたは酸触媒を用いて反応させる方法が用いられている。しかし、この合成過程では、有害な揮発性有機化合物(VOC)であるホルムアルデヒドを含有する廃水が発生するため、近年、ロジン変性フェノール樹脂に由来する大気汚染などの環境問題や作業環境上の問題が指摘されている。また、ロジン変性フェノール樹脂からなるインキを用いる印刷工程においては、インキの加熱乾燥時にホルムアルデヒドが発生することも以前から指摘されていた。さらに、アルキルフェノールは近年内分泌攪乱物質(いわゆる環境ホルモン)として疑われてきており、我が国や合衆国、欧州においても内分泌攪乱作用を調査する優先物質に指定されている。我が国においては、2001年にノニルフェノールが、2002年にはオクチルフェノールが内分泌攪乱作用を有する物質として結論付けられた。
【0004】
そこで、ロジン変性フェノール樹脂の諸問題を軽減するために従来から種々の試みがなされてきた。例えば、石油樹脂、不飽和カルボン酸又はその無水物、脂肪族多塩基酸、多価アルコールとを加熱反応させて得られる樹脂(例えば、特許文献3参照)、樹脂酸とα,β−エチレン性不飽和カルボン酸またはその無水物及びC4〜C5のトリメチロールアルカン又はアルケンを反応させてなることを特徴とする樹脂(例えば、特許文献4参照)、ロジン類(a)、極性基含有石油樹脂(b)、脂肪族モノアルコール類、脂肪族ジアルコール類、脂肪族モノアミン類及び脂肪族モノエポキシ類からなる群より選択される少なくとも1種(c)、並びにポリオール類(d)を反応させてなるポリエステル樹脂(例えば、特許文献5参照)、重合性石油樹脂(a)と不飽和カルボン酸類(b)を共重合させてなるポリマー(A)、並びに▲1▼脂肪族モノアルコール類、▲2▼脂肪族モノアミン類及び▲3▼脂肪酸類からなる群より選択される少なくとも一種(c)を反応させてなる印刷インキ用樹脂(例えば、特許文献6参照)などが提案されている。
【0005】
これらの各公報に開示されている印刷インキ用樹脂は、いずれもアルキルフェノールホルムアルデヒド縮合物を原料とせず、しかもロジン変性フェノール樹脂に匹敵する特性(高分子量、高粘度、高軟化点、高溶解性)を有するものであると記載されている。しかしながら、オフセット印刷インキ用樹脂に対する要求性能の中で、特に非芳香族系溶剤に対する溶解性に関して、前記各公報記載の印刷インキ用樹脂は充分満足するものではない。更に、最近は印刷インキの低コスト化、印刷の高速化等、印刷インキ用樹脂に対する要求は多岐に亘っているため、今までのところロジン変性フェノール樹脂以外には、前述の要求される諸性能をすべて満足することは困難であり、したがって脱フェノール樹脂の技術は未だ完成されてはいないといえる。
【0006】
上記の理由により、人体に有害なフェノール類やホルムアルデヒドを合成過程で使用せず、しかもロジン変性フェノール樹脂に匹敵する特性を備えた印刷インキ用樹脂の開発が望まれている。
【特許文献1】
特開平9−268211号公報
【特許文献2】
特開2001−106754号公報
【特許文献3】
特開2001−31718号公報
【特許文献4】
特開2000−143785号公報
【特許文献5】
特開2001−233947号公報
【特許文献6】
特開2002−97232号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、合成過程でフェノール類、ホルムアルデヒドを使用せず、オフセット印刷インキ用樹脂として好適な程度に樹脂粘度が高く、非芳香族系溶剤に対する優れた溶解性を示す、新規な印刷インキ用樹脂、及び該印刷インキ用樹脂を使用した印刷インキを提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、アクリル酸1モル付加ロジン(A)、重合ロジン(B)、アルケニル置換コハク酸又はその無水物(C)、多価アルコール(D)、及び必要に応じて、さらにα,β−不飽和カルボン酸付加石油樹脂(E)からなる混合物を、加熱反応させて得られる樹脂であって、アルケニル置換コハク酸又はその無水物(C)を、アクリル酸1モル付加ロジン(A)及び重合ロジン(B)の総量100重量部に対して、5〜20重量部使用することを特徴とする樹脂からなる印刷インキ用樹脂に関するものである。
【0009】
また、本発明は、前記印刷インキ用樹脂、石油系溶剤、乾性油及び顔料を必須成分とする印刷インキに関するものである。
【0010】
以下に、本発明の構成をより詳しく説明する。
【0011】
【発明の実施の形態】
アクリル酸1モル付加ロジン(A)は、ロジン類とアクリル酸とを加熱付加反応して得ることができる。本発明のロジン類とは、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン、又はこれらの混合物が挙げられる。本発明は、アビエチン酸及びその類縁体を主成分とする樹脂酸から構成されるロジン類と、アクリル酸とを加熱反応して得られるアクリル酸1モル付加ロジン(A)を使用することを特徴としている。ロジン類とアクリル酸との反応はディールスアルダー反応であり、この反応は、例えば、反応温度は120〜300℃、好ましくは150〜260℃、反応時間は3〜8時間で行うことができる。なお、未反応のアクリル酸が残留すると得られる印刷インキ用樹脂の溶剤に対する溶解性が低下するため、アクリル酸1モルに対してロジン類1モル以上、好ましくは、アクリル酸:ロジン類=1:1(モル比)を使用してアクリル酸1モル付加ロジン(A)を得るのが良い。
【0012】
また、アクリル酸1モル付加ロジン(A)の使用量としては、使用する原料の総量100重量部に対して、25〜70重量部が好ましい。アクリル酸1モル付加ロジン(A)の使用量が25重量部に満たない場合は、分子量の高い樹脂が得られない。また70重量部を超える場合は樹脂の分子量の制御が難しくなる。
【0013】
重合ロジン(B)は、ロジン類を硫酸触媒により重合したもので、2量体ロジンを主成分として、他に単量体、場合によっては3量体以上のものを含む混合物である。重合ロジン(B)は本発明の印刷インキ用樹脂に適正な分子量と溶解性とを付与するはたらきがあり、その使用量は、アクリル酸1モル付加ロジン(A)及び重合ロジン(B)の総量100重量部に対して25〜60重量部であり、好ましくは30〜50重量部である。重合ロジン(B)の使用量が、25重量部に満たない場合は樹脂の分子量の制御が難しくなり、60重量部を超える場合にはコスト高となり、好ましくない。
【0014】
アルケニル置換コハク酸又はその無水物(C)は、直鎖又は分岐状の、α−オレフィン又は内部オレフィンに、(無水)マレイン酸を付加することで得られ、炭素数12〜18のオレフィンと(無水)マレイン酸との付加物が好ましく使用できる。本発明ではアルケニル置換コハク酸又はその無水物(C)を印刷インキ用溶剤に対する溶解性付与剤として使用する。アルケニル置換コハク酸又はその無水物(C)の添加量は、アクリル酸1モル付加ロジン(A)及び重合ロジン(B)の総量100重量部に対して、5〜20重量部である。アルケニル置換コハク酸又はその無水物(C)の添加量が、5重量部に満たない場合は樹脂の溶解性の向上効果が低く、又20重量部を超える場合には樹脂の融点が下がり、好ましくない。
【0015】
多価アルコール(D)は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、ネオペンチルグリコール等の2価アルコール;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール等の3価以上のアルコール;が挙げられる。これらの中でも、樹脂の分子量、融点等を適正に調整する面から、グリセリン又はペンタエリスリトールが好ましい。多価アルコール(D)は、他の成分とエステル化反応することにより印刷インキ用樹脂の分子量及び粘度を上げるはたらきがあり、その添加量はアクリル酸1モル付加ロジン(A)、重合ロジン(B)、およびα,β−不飽和カルボン酸付加石油樹脂(E)の総カルボキシル基1当量に対して、0.8〜1.2当量である。多価アルコール(D)の添加量が、0.8当量に満たない場合、また1.2当量を超える場合は、得られる印刷インキの乳化性、耐水性が悪くなり好ましくない。
【0016】
α,β−不飽和カルボン酸付加石油樹脂(E)は、例えばビニルトルエン、α−メチルスチレン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、メチルブテン、イソプレン、ペンテン、シクロペンテン、ペンタジエン等を主成分とする公知の石油樹脂に、α,β−不飽和カルボン酸を加熱付加反応させることによって得られる。α,β−不飽和カルボン酸としては公知のものが使用出来、具体的には、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸;またはこれらの無水物;などが挙げられる。これらのα,β−不飽和カルボン酸付加石油樹脂(E)の中でも、ジシクロペンタジエンを主成分とする石油樹脂に、マレイン酸又はその無水物を付加させたものが好ましい。α,β−不飽和カルボン酸付加石油樹脂(E)は、印刷インキを調製する際、石油系溶剤に対する溶解性を向上させるはたらきがある。α,β−不飽和カルボン酸付加石油樹脂(E)は、使用する原料全量に対して、20〜40重量部使用するのが好ましい。α,β−不飽和カルボン酸付加石油樹脂(E)の使用量が20重量部に満たない場合は、溶解性の向上効果が低く、40重量部を超える場合は顔料の分散性が悪くなり、インキにした場合、ミスチングが発生しやすくなる。
【0017】
本発明に係る印刷インキ用樹脂は、前記(A)〜(D)成分、及び必要に応じてさらに(E)成分を混合・加熱することによりエステル化反応を行って製造する。加熱する温度は、150〜280℃が好ましく、200〜260℃であればより好ましい。混合・加熱方法は、特に限定されず、(A)〜(E)成分を混合した後に加熱し反応させる方法、多価アルコール(D)成分以外をあらかじめ溶融可能温度まで加熱して混合した後、多価アルコール(D)成分を添加して、反応温度まで加熱して行う方法などを適用することができる。
【0018】
本発明においては前記(A)〜(E)成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、他の成分を併用することが出来、具体的には分子量調整などの目的で、ロジン類、アクリル酸以外のα,β−不飽和カルボン酸とロジン類とを加熱付加反応して得られるα,β−不飽和カルボン酸付加ロジン、脂肪酸等を使用することができる。
【0019】
本発明に係る印刷インキ用樹脂の物性は、酸価が25以下、重量平均分子量が1〜15万、融点が120℃以上、印刷インキ用溶剤との溶解性(トレランス)は、2(g/g)以上が望ましい。ここで印刷インキ溶剤との溶解性は次の方法で求められる。
溶解性(トレランス):樹脂2gと溶剤(0号ソルベント)2gを190〜200℃で15分間溶解し、25℃で同じ溶剤を滴下しつつ白濁するまでの、樹脂1g当たりの全溶剤量(g)。
したがってこの数値は大きいほど良好な溶解性を示す。
【0020】
本発明に係る印刷用インキを調製する方法を以下に説明する。
【0021】
本発明に係る印刷インキは、オフセット印刷に使用されるものであり、前述のようにして得られた本発明の印刷インキ用樹脂、石油系溶剤、乾性油及び顔料を必須成分とし、具体的には次の組成を混錬して得るのが好ましい。
印刷インキの組成:(重量%)
顔料 10〜25
樹脂ワニス 40〜80
乾性油 0〜10
石油系溶剤 5〜40
乾燥促進剤 0〜 2
顔料としては公知のものが使用出来、例えばカーボンブラック、フタロシアニンブルー、カーミン6B、レーキレッドC、ベンジジンイエローなどが挙げられる。これらの顔料は被印刷物に色付けをするためのものであり、必要に応じて、黒色、黄色、紅色、藍色等の顔料が選択される。
【0022】
樹脂ワニスを調製する方法は次の通りである。攪拌機、水分離冷却器、及び温度計付セパラブルフラスコに、本発明の印刷インキ用樹脂30〜60重量%、乾性油10〜30重量%、石油系溶剤20〜60重量%を仕込み、窒素気流下で180〜200℃で1時間溶解して元ワニスを得る。得られた元ワニスを100℃まで冷却した後、ゲル化剤0.5〜2重量%を添加する。更に、180℃まで昇温し、30分保温して樹脂ワニスを調製する。
【0023】
乾性油としては、亜麻仁油、桐油等が挙げられ、亜麻仁油が好適に使用される。
【0024】
石油系溶剤は、インキ粘度の調整や印刷後の乾燥性を促進するために添加され、主に沸点が200〜400℃の炭化水素系の溶剤が使用できる。具体的には0号ソルベント、0号ソルベントH、3〜7号ソルベント、AF4〜7号ソルベント[いずれも新日本石油化学(株)製]等が使用される。
【0025】
乾燥促進剤は、印刷後に乾性油が重合して皮膜を硬化させる触媒のはたらきをするものであり、例えばナフテン酸マンガン溶液などが挙げられる。
【0026】
【実施例】
次に具体例により、本発明の印刷インキ用樹脂、その合成方法、及び印刷インキ用樹脂を用いた印刷インキの印刷適性についてより詳しく説明する。なお、例中「部」とは重量部を表わす。
【0027】
[実施例1]
(1)印刷インキ用樹脂の製造
攪拌機、リービッヒ冷却器、温度計付セパラブルフラスコに、ガムロジン4000部、アクリル酸847部を仕込み、135℃で3時間、140℃で2時間、210℃で2時間反応した後、更に10mmHg以下で1時間減圧を行い、アクリル酸1モル付加ロジンを得た。
攪拌機、リービッヒ冷却器、温度計付セパラブルフラスコに、上記で得られたアクリル酸1モル付加ロジン675部、重合ロジン[(株)理化ファインテク製:リカロジンDX]675部、アルケニル置換コハク酸無水物(C18直鎖内部オレフィンと無水マレイン酸の付加物)169部を仕込んだ後210℃まで昇温し、ペンタエリスリトール109.1部、グリセリン49.2部を添加した。この後、255℃まで昇温して10時間反応を行った後、更に10mmHg以下で1時間減圧を行い、印刷インキ用樹脂であるS1を得た。
【0028】
(2)印刷インキの製造方法
攪拌機、水分離冷却器、及び温度計付セパラブルフラスコに、前記(1)で得られた印刷インキ用樹脂(S1)40部、亜麻仁油20部、及びAF5号ソルベント[新日本石油化学(株)製の非芳香族石油系溶剤]40部を仕込み、窒素気流下で200℃で1時間溶解して元ワニスを得た。得られた元ワニスを100℃まで冷却した後、ALCH[川研ファインケミカル(株)製アルミキレート]1.0部を添加した。更に、180℃まで昇温し、30分保温してそれぞれのインキ用ゲルワニスを調製した。
前記インキ用ゲルワニスを用いて以下に示す配合割合で3本ロールで練肉して印刷インキ、I1を得た。なお、インキのタック値は9〜10になるように調整した。
カーミン6B(紅顔料) 18部
ワニス 70〜79部
日石AF5号ソルベント 2〜11部
ナフテン酸マンガン 1部
【0029】
[実施例2〜4]
表1に記載したように原料の種類と使用量を代えた以外は実施例1と同じ操作を行い、印刷インキ用樹脂であるS2〜S4、及び印刷インキI2〜I4を得た。
【0030】
[比較例1〜5]
表1に記載したように原料の種類と使用量を代えた以外は実施例1と同じ操作を行い、比較印刷インキ用樹脂であるRS1〜RS5、及び比較印刷インキRI1〜RI5を得た。
【0031】
[比較例6]
(1)比較印刷インキ用樹脂の製造
攪拌機、還流冷却器、温度計付セパラブルフラスコに、トルエン1500部、パラオクチルフェノール2060部、パラホルムアルデヒド652.2部からなる混合物を52〜57℃に加熱し、48%水酸化ナトリウム水溶液50部を添加した。発熱反応で昇温するが、75℃で保温とし、水浴及び湯浴にて6時間反応を続けた。反応終了後、濃塩酸63部、水200部を加えて攪拌し、冷却後静置させ、上澄層を分液ロートで分離し、不揮発分64%のレゾール型フェノール樹脂を得た。
攪拌機、リービッヒ冷却器、温度計付セパラブルフラスコに、ガムロジン1000部と、上記で得られたレゾール型フェノール樹脂787部との混合物をトルエンを留去させながら210〜220℃まで昇温し、グリセリン96部を添加した後245〜250℃で8時間反応し、酸価が27以下になったことを確認後、更に10mmHg以下で1時間減圧を行い、比較印刷インキ用樹脂、RI6を得た。
【0032】
【表1】
【0033】
前記実施例及び比較例で得られた印刷インキ用樹脂について、色相、酸価、融点、重量平均分子量(Mw)、亜麻仁油粘度、溶剤への溶解性(トレランス)を評価した。なお、その評価方法は以下のように行い、結果を表2に示した。
・色相:ASTMによるUSロジンカラーグレード。
・酸価:JIS K−5902 ロジン酸価測定法による。
・融点:JIS K−0064 化学薬品の融点測定法による。
・重量平均分子量:ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の分子量を測定。
・亜麻仁油粘度(Ps):亜麻仁油と樹脂とを重量比65:35の割合で配合し、加熱溶解させたものを、落球粘度計で測定。
・溶解性(トレランス):樹脂2gと溶剤(0号ソルベント)2gを190〜200℃で15分間溶解し、25℃で同じ溶剤を滴下しつつ白濁するまでの、樹脂1g当たりの全溶剤量(g)。
【0034】
【表2】
【0035】
前記実施例及び比較例で得られた印刷インキの性能評価を次のように行い、その結果を表3に示した。
・光沢:インキ0.4mlをRIテスター[(株)明製作所製]全面ロールでアート紙に展色した後、20℃、相対湿度65%で24時間調湿し、60°〜60°光沢計で測定した。
・タック:インコメーター400rpm、室温25℃、ロール温度32℃、規格のインキ量で1分後の値を測定した。
・セット:インキ0.175mlをRIテスター[(株)明製作所製]4分割ロールで展色した後、展色物を時間毎に分割し、別のアート紙に貼り合わせた。この試料についてRIテスターのロールを用いて展色物から別のアート紙上へのインキの付着度を観察し、インキが付着しなくなるまでの時間(分)を測定した。
・ミスチング:インキ4mlをインコメーターにチャージし、400rpmで1分間、更に1200rpmで3分間回転させ、ロール直下に置いて白色紙上へのインキの飛散度を観察し、下記の判定基準に準じて評価を行った。
◎:インキの飛散の発生がなかった。
○:インキの飛散がやや発生していた。
△:インキの飛散が目立つ程度に発生していた。
・フロー:規格平行板粘度計(スプレッドメーター)で25℃、1分後のインキの広がり(直径)(mm)を測定した。
【0036】
【表3】
【0037】
以上の結果より、(A)〜(D)成分よりなる本願発明の印刷インキ用樹脂は、重量平均分子量が高く、溶解性に優れており、該印刷インキ用樹脂を用いた印刷インキにおいては、ミスチングの発生がないことがわかった。また、(A)〜(D)成分に加えて(E)成分を使用した印刷インキ用樹脂は、溶解性がさらに改善されることが分かった。
【0038】
従来のアルキルフェノールホルムアルデヒド縮合物を使用した印刷インキ用樹脂および印刷インキ(比較例6)に対し、本願発明に係る印刷インキ用樹脂および印刷インキの性能は同等であることが分かった。
【0039】
【発明の効果】
本発明の印刷インキ用樹脂はアクリル酸1モル付加ロジン(A)、重合ロジン(B)、アルケニル置換コハク酸又はその無水物(C)、及び多価アルコール(D)及び必要に応じて、さらにα,β−不飽和カルボン酸付加石油樹脂(E)からなる混合物を加熱反応して得られる樹脂であり、アルキルフェノールやホルムアルデヒド等人体に有害とされる物質を含まないため、作業環境の面で優れており、しかも、オフセット印刷に使用されるインキの調製に適した物性を示す。また、従来から使用されてきたロジン変性フェノール樹脂と比較して遜色のない印刷適性を有している。
Claims (3)
- アクリル酸1モル付加ロジン(A)、重合ロジン(B)、アルケニル置換コハク酸又はその無水物(C)、及び多価アルコール(D)からなる混合物を、加熱反応して得られる樹脂であって、アルケニル置換コハク酸又はその無水物(C)が、アクリル酸1モル付加ロジン(A)、及び重合ロジン(B)の総量100重量部に対して、5〜20重量部含まれることを特徴とする樹脂を構成成分とする印刷インキ用樹脂。
- アクリル酸1モル付加ロジン(A)、重合ロジン(B)、アルケニル置換コハク酸又はその無水物(C)、多価アルコール(D)、及びα,β−不飽和カルボン酸付加石油樹脂(E)からなる混合物を、加熱反応して得られる樹脂であって、アルケニル置換コハク酸又はその無水物(C)が、アクリル酸1モル付加ロジン(A)、及び重合ロジン(B)の総量100重量部に対して、5〜20重量部含まれることを特徴とする樹脂を構成成分とする印刷インキ用樹脂。
- 請求項1又は請求項2に記載の印刷インキ用樹脂、石油系溶剤、乾性油及び顔料を必須成分とする印刷インキ。
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