JP2004284952A - 酸化インジウム−酸化錫粉末 - Google Patents

酸化インジウム−酸化錫粉末 Download PDF

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彰 長谷川
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Abstract

【課題】
微細な一次粒子からなり、一次粒子同士の凝集が比較的弱く、高密度のITO焼結体を与える焼結性に優れたITO粉末を提供する。
【解決手段】
酸化錫の含有量が2〜20重量%、BET比表面積径が0.05μm以上1μm以下、累積粒度分布の50%径が1μm以下、ハロゲン含有量が0.2重量%以下であり、成形し焼結して得られる焼結体の相対密度が90%以上である酸化インジウム−酸化錫粉末。インジウム塩の水溶液、錫塩の水溶液及びアルカリ水溶液を、40℃以上100℃未満の水中に、反応中のpHが4.5以上5.5以下の範囲に維持されるように供給して反応させた後、生成した沈殿を固液分離後に洗浄し、600℃以上1300℃以下で焼成する製造方法により製造されてなる前記酸化インジウム−酸化錫粉末。
【選択図】 なし

Description

本発明は、酸化インジウム−酸化錫粉末及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、焼結性に優れた酸化インジウム−酸化錫粉末及びその製造方法に関する。
酸化錫を2〜20重量%含有する、酸化インジウム−酸化錫(Indium−Tin−Oxide:以下、ITOと略すことがある)薄膜は、高い導電性と優れた透光性を有するために、液晶ディスプレー用の透明導電膜として利用されている。
ITO薄膜を形成させる方法としては、ITO微粉末を含んだペーストを基材に塗布する方法や、ITO粉末を成形、焼結して得たITO焼結体ターゲットのスパッタリングによって基材面にITO膜を形成させる方法などが挙げられる。
ITO粉末の製造方法としては、例えば、インジウム塩と錫塩の混合水溶液とアンモニア等の沈殿生成剤とを混合し、インジウムと錫を含む沈殿を得て、次いでこれを乾燥して焼成することにより、酸化錫が均一に分布したITO粉末を製造する方法が、例えば、特許文献1に開示されている。この方法は、従来より共沈法として知られている方法である。
しかしながら、従来の共沈法による製造においては、ITO粉末の前駆体として得られるインジウムと錫を含む沈殿はゲル状であるために、濾過等による固液分離が難しく、また該沈殿の乾燥物は強固な塊状となり、該乾燥物を焼成して得られるITO粉末には、一次粒子が強固に固着した粗大な凝集粒子が多く含まれるために、解砕による微粒子化が容易でない。
さらに、上記のように凝集粒子が多く含まれるITO粉末を用いてITO焼結体を作製した場合、理論密度の90%以上の高密度のITO焼結体を得ることは難しい。そして、理論密度の90%を下回るような低密度のITO焼結体をスパッタリングターゲットとして使用した場合、ターゲット表面でのノジュールの発生や成膜速度が遅くなる等のスパッタリング効率の低下や、得られるITO薄膜の導電性や透光性が劣るなどの問題が発生するために、高密度のITO焼結体の製造が可能なITO粉末の開発が求められてきた。
このような問題点を解決するためにいくつかの提案がなされている。例えば、共沈法等で得られた一次粒子が1μm以下のITO粉末を、粉砕効率の高い振動型粉砕機を用いて機械的に粉砕したITO粉末を焼結用原料として用いることにより、理論密度の75%以上、さらには85%以上の高密度のITO焼結体が製造できることが、特許文献2に開示されている。該公報によれば、粉砕効率の低い、例えばボールミル等では高密度ITO焼結体が得られるITO原料粉末とはならないことが示されており、また、振動型粉砕機で粉砕するために、粉砕媒体によっては不純物の混入等が問題となる恐れがある等の問題を有していた。
また、60℃以下のインジウム塩水溶液と炭酸アルカリまたは重炭酸アルカリとを反応させて、炭酸インジウム主体の沈殿を生成させた後、固液分離し、得られた沈殿を、乾燥、仮焼することにより、微粉砕工程が殆ど必要ない酸化インジウム粉末を製造する方法、さらには該酸化インジウム粉末に酸化錫粉末を添加、混合した粉末を焼結用原料として用いることにより、理論密度の70%以上の密度のITO焼結体が製造できることが、特許文献3に開示されている。
また、硝酸インジウム水溶液を70〜95℃に加熱して、該水溶液にアルカリ水溶液を添加した後、濾過、乾燥することによって得られる針状水酸化インジウムを仮焼することにより、凝集性の弱い酸化インジウム粉末を製造する方法、および該酸化インジウム粉末に酸化錫粉末を添加、混合した粉末を焼結用原料として用いることにより、理論密度の70%以上の密度のITO焼結体が製造できることが特許文献4に開示されている。
しかしながら、これらの方法で製造されるのは酸化インジウム粉末であって、ITO焼結用原料とするためには、別途製造した酸化錫粉末をボールミル等で混合する工程が必要となるが、この場合、酸化錫粉末の混合状態を均一にすることが難しく、酸化錫の混合状態は共沈法に比較して劣る等の問題を有している。
特開昭62−7627号公報 特開平3−215318号公報 特開平4−219315号公報 特開平4−325415号公報
本発明の目的は、インジウム塩と錫塩の水溶液と沈殿生成剤とを混合して、インジウムと錫を含む沈殿を得て、該沈殿を焼成するITO粉末の製造方法において、濾過性および乾燥後の解砕性が良好なインジウムと錫を含む沈殿を製造することによって生産性を向上させ、さらに、該沈殿を焼成することにより、微細な一次粒子からなり、一次粒子同士の凝集が比較的弱く、高密度のITO焼結体を与える焼結性に優れたITO粉末を提供することにある。
すなわち本発明は、インジウム塩の水溶液、錫塩の水溶液及びアルカリ水溶液を、40℃以上100℃未満の水中に、反応中のpHが4.5以上5.5以下の範囲に維持されるように供給して反応させた後、生成した沈殿を固液分離後に洗浄し、600℃以上1300℃以下で焼成する製造方法により製造される酸化インジウム−酸化錫粉末であって、酸化錫の含有量が2〜20重量%、BET比表面積径が0.05μm以上1μm以下、累積粒度分布の50%径が1μm以下、ハロゲン含有量が0.2重量%以下であり、成形し焼結して得られる焼結体の相対密度が90%以上であることを特徴とする酸化インジウム−酸化錫粉末を提供する。
インジウム塩と錫塩の水溶液と沈殿生成剤とを混合して、インジウムと錫を含む沈殿を得て、該沈殿を焼成するITO粉末の製造方法において、本発明の方法を用いることにより、濾過性および乾燥後の解砕性が優れたインジウムと錫を含む沈殿を製造することができるので生産性が向上する。また、本発明の方法により、微細な一次粒子からなり一次粒子同士の凝集が比較的に弱く、好ましくは理論密度の90%以上、さらに好ましくは理論密度の95%以上にまで緻密化した高密度の焼結体を与える焼結性に優れたITO粉末を製造することができる。
以下に本発明について詳しく説明する。
本発明で使用されるインジウム塩の水溶液としては、塩化インジウム(InCl3)、硝酸インジウム(In(NO)3)、硫酸インジウム(In2(SO43)等の水溶性のインジウム塩を水に溶解させたもの、或いは、金属インジウムを塩酸水溶液や硝酸水溶液等に溶解させたもの等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
本発明で使用される錫塩の水溶液としては、塩化錫(SnCl4、SnCl2)、硫酸錫(SnSO4)等の水溶性の錫塩を水に溶解させたもの、或いは、金属錫を塩酸水溶液等に溶解させたもの等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
また、本発明で使用されるインジウム塩と錫塩の混合水溶液としては、塩化インジウムや硝酸インジウム等の水溶性のインジウム塩および塩化錫等の水溶性の錫塩を水に溶解させたもの、或いは、金属インジウムを塩酸水溶液や硝酸水溶液等に溶解させたものと、金属錫を塩酸水溶液に溶解させたものを混合したもの、さらには金属インジウムと金属錫の合金を塩酸水溶液等に溶解させたもの等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
インジウム塩の水溶液およびインジウム塩と錫塩の混合水溶液中のインジウム濃度は、特に限定はされないが、20〜400g/l程度の範囲のものが好ましい。インジウム濃度が20g/l未満では、ITO粉末の生産性が低下して、工業的な製造方法としては好ましくない。
また、錫塩の水溶液およびインジウム塩と錫塩の混合水溶液中の錫濃度は、最終的に得ようとするITO粉末に含有される酸化錫量に対応して、インジウム濃度との関係で決定すれば良い。ITOの導電性を考慮して、最終的に得られるITO粉末中の酸化錫含有量が2〜20重量%となるように、インジウム塩と錫塩の濃度の比率を選ぶことが好ましい。
インジウム塩の水溶液、錫塩の水溶液及びアルカリ水溶液は、40℃以上100℃未満の水中に、反応中のpHが4以上6以下の範囲に維持されるように調節しつつ供給して反応させて、インジウムと錫を含む沈殿を生成させる。
または、インジウム塩と錫塩の混合水溶液及びアルカリ水溶液を、40℃以上100℃未満の水中に、反応中のpHが4以上6以下の範囲に維持されるように供給して反応させて、インジウムと錫を含む沈殿を生成させる。
上記の二つの方法のうち、インジウム塩と錫塩の混合水溶液を用いる方が、反応中のpHを4以上6以下に制御し易いので好ましい。以下、インジウム塩と錫塩の混合水溶液を用いる方法を主体に説明するが、インジウム塩の水溶液及び錫塩の水溶液を個々に用いる方法も、それぞれの水溶液の添加速度を制御することにより、インジウム塩と錫塩の混合水溶液を用いる方法に準じて採用することができる。
用いるアルカリ水溶液としては、アンモニア水や水酸化ナトリウム水溶液等が挙げられるが、インジウムと錫を含む沈殿に金属イオンが混入しないアンモニア水を用いることが好ましい。
反応方法としては、例えば、まず反応槽に所定量、所定温度、所定pHの水(蒸留水あるいはイオン交換水等をpH調整したもの)を入れて撹拌する。次いで、攪拌を行いながら水中にインジウム塩と錫塩の混合水溶液及びアルカリ水溶液の供給を開始する。インジウム塩と錫塩の混合水溶液の供給により、反応系のpHが低下するので、反応中のpHが4以上6以下の範囲に維持されるように、必要量のアルカリ水溶液を供給する。
所定のpHを維持する方法としては、例えば、pHコントローラーとアルカリ水溶液を供給するポンプとを連動させ、所定のpH値を下回った時にポンプが作動するようにする方法等で達成できる。
また、反応に用いるインジウム塩と錫塩の混合水溶液は強酸性を呈するため、該混合水溶液にアンモニア水等のアルカリ水溶液を予め添加して、該混合水溶液のpHを、インジウムおよび錫の沈澱が生成しない程度、例えばpH=0〜2程度に調整しておくことも、反応中のpHを4以上6以下の範囲に維持するためには好ましい方法の一つとして挙げられる。
反応槽に入れる水の温度は40℃以上100℃未満である。水温が40℃未満の場合、得られる沈殿の濾過性および該沈殿の乾燥物の解砕性が悪化するために好ましくない。
インジウム塩と錫塩の混合水溶液の供給速度は、工業的に有利な速度で供給することができる。供給速度としては、インジウムと錫を含む沈澱を析出させるスケール等によって異なるが、インジウム塩と錫塩の混合水溶液の全量を供給する時間として、好ましくは10分以上300分以下、より好ましくは20分以上200分以下である。インジウム塩と錫塩の混合水溶液の供給時間が300分を越えると、最終的に得られるITO粉末中の一次粒子同士の凝集が強くなる場合がある。このような場合、後述するように固液分離し乾燥した後の乾燥物を解砕して、凝集粒子を少なくしてから焼成することもできる。
また、同時に供給するアルカリ水溶液の供給速度は、反応中のpHが4以上6以下に維持できるように供給すればよく特に限定はされない。
反応中のpHは4以上6以下、好ましくは4.5以上5.5以下の範囲に維持することが必要である。この範囲内にpHを維持して反応させることで、均一な粒径で、かつ濾過性および乾燥後の解砕性が良好なインジウムと錫を含む沈殿を得ることができる。
反応中のpHを6を越えた範囲に維持して反応させた場合、微細なインジウムと錫を含む沈殿が得られるために、濾過が困難となるばかりでなく、乾燥後には強固な塊状となるために解砕性が悪化する。また、4未満の範囲に維持して反応させた場合、沈殿とならずに溶液中に溶解しているインジウム量が多くなり、最終的な収率が低下する。
反応中のpHの変動の幅は、上記のpH範囲において、好ましくは±1.0以内、さらに好ましくは±0.5以内におさまるように制御する。
なお、反応の初期段階において、pHが4以上6以下の範囲外に振れる場合がある。特にインジウム塩と錫塩の混合水溶液の供給を開始した直後の急激なpHの低下と、その後のアルカリ水溶液の供給による急激なpHの上昇を生じる場合があるが、この現象が反応の初期のみであれば、得られるインジウムと錫を含む沈殿の濾過性や該沈殿の乾燥物の解砕性に支障をきたすことはない。
したがって、この反応の初期段階における急激なpH変動は許容できるものである。反応の初期段階における急激なpH変動は、好ましくは全反応時間の10%以内の時間、さらに好ましくは全反応時間の5%以内の時間になるよう反応させる。また、反応系において、局所的に或いは瞬間的に上記範囲外にpHが振れる場合もあり得るが、本発明の主旨を逸脱せず、本発明の目的を達成できる限りにおいて、多少の振れは許容できるものである。
インジウム塩と錫塩の混合水溶液の供給が終了した後は、生成したインジウムと錫を含む沈殿を熟成することが好ましい。熟成の方法としては、生成した沈殿を含有する懸濁液を撹拌または静置する方法等が採用できる。熟成の温度としては、反応温度と同じ40℃以上100℃未満が好ましい。この熟成を行なうことにより、粒子径の均一化が生じて、沈殿の濾過性や該沈殿の乾燥物の解砕性が一層向上する。
静置熟成により、インジウムと錫を含む沈殿は析出槽の底部に沈降する。得られる沈澱の容積は、理論的に得られるITOの1g当たり0.5〜6cc程度であり、高密度に固形分が詰まったものである。
次いで、濾過等による固液分離を行って、熟成後のインジウムと錫を含む沈殿を採取する。濾過の方法は特に限定されず、吸引濾過、フィルタープレス等の方法が挙げられる。
また、濾過による固液分離後のインジウムと錫を含む沈殿には、インジウムおよび錫塩がアルカリ水溶液と反応して副生成した塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム等のアンモニウム塩、塩化ナトリウム、硝酸ナトリウム等のアルカリ金属塩等の塩類が付着しているため、該沈澱を洗浄することが必要である。
特に、塩化アンモニウムが多量に付着したインジウムと錫を含む沈澱を焼成して得たITO粉末には、後述する水洗等による脱塩素処理を行っても、多量の塩素分を含んだITO粉末となり、相対密度が90%を越えるような高密度のITO焼結体が得られない。
洗浄液としては、副生成した塩類を溶解するような、蒸留水やイオン交換水等の水、あるいは、アンモニア水等を用いることができる。洗浄液にアンモニア水を用いた場合には、洗浄時間の短縮効果がある等から好ましい。この場合、アンモニア水のpHとしては、好ましくはpHが8以上12以下、より好ましくはpHが9以上11以下である。pHが12を越えるアンモニア水を用いて洗浄を行った場合、インジウムと錫を含む沈澱が再溶解する恐れがあり、最終的なITO粉末の収率の低下や、ITO粉末中の酸化錫組成の仕込み組成からのずれが起こる場合がある。
次いで、固液分離後のインジウムと錫を含む沈殿を焼成する。焼成の前工程として、固液分離後のインジウムと錫を含む沈殿を乾燥することが好ましい。乾燥の方法は特に限定されず従来から知られている方法を用いることができる。乾燥温度は特に限定されず、インジウムと錫を含む沈殿に付着した水分を除去できる程度の温度、例えば、90〜200℃程度で行えばよい。
得られた乾燥物は解砕を行うことが好ましく、例えば、インジウム塩と錫塩の混合水溶液を長時間かけて供給し反応して得た沈降容積の小さな沈澱の場合ほど、解砕を行うことによって、最終的に得られるITO粉末中の一次粒子同士の凝集が弱くなる。乾燥物は凝集していてもその凝集は弱いものであって解砕は容易である。解砕の方法は特に限定されず、例えば、ボールミル解砕或いはアトマイザー解砕等の方法が挙げられる。
次に、上記の方法で得られたインジウムと錫を含む沈殿の乾燥物を焼成することによってITO粉末とする。
焼成温度は600〜1300℃であることが必要であり、好ましくは、800℃〜1200℃である。焼成温度が600℃未満では、結晶化が十分でなかったり、インジウムと錫を含む沈殿の乾燥物に付着した塩化アンモニウム等の塩の分解が不十分であったりする。また焼成温度が1300℃を越える場合には、一次粒子が結晶成長し一部が凝集して、焼結性が良好なITO粉末が得られない場合がある。
焼成の雰囲気ガスとしては、空気、酸素、窒素あるいは塩素水素、臭素水素、ヨウ化水素等のハロゲン化水素ガス、または、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲンガス等を用いることが好ましいが、ハロゲン化水素ガスまたはハロゲンガスを含有する雰囲気中での焼成がより好ましく、塩化水素ガスを含有する雰囲気ガス中での焼成が特に好ましい。塩化水素ガスを含有する雰囲気ガス中での焼成によって、最も凝集性の弱いITO粉末を得ることができる。
ハロゲン化水素ガスあるいはハロゲンガス、特に塩化水素ガスを含有する雰囲気ガス中で焼成する場合、雰囲気ガスの全体積に対して、該ガスを好ましくは1体積%以上、より好ましくは5体積%、さらに好ましくは10体積%以上含有する雰囲気ガス中にて焼成する。ハロゲン化水素ガスの濃度の上限は特に限定されないが、工業的な生産性の面から、好ましくは70体積%以下、より好ましくは50体積%以下、さらに好ましくは40体積%以下である。該ガスの希釈ガスとしては、例えば、アルゴン等の不活性ガス、窒素、酸素、空気またはこれらの混合ガスを用いることができる。
ハロゲン化水素ガスあるいはハロゲンガスを含有する雰囲気ガス、特に塩化水素ガスを含有する雰囲気ガスは、600℃以上で導入することが好ましい。600℃未満の温度から、塩化水素ガスを含有する雰囲気ガスを導入すると、ITOの揮発損失が多くなり、収率が低下すると等の問題が生ずる場合がある。また、所定温度で所定時間焼成した後は、塩化水素ガスを含有する雰囲気ガスの供給を止めて、アルゴン等の不活性ガス、窒素、酸素、空気またはこれらの混合ガスを含有する雰囲気ガスを供給し、冷却することが好ましい。
焼成における雰囲気ガスの圧力は特に限定されず、工業的に用いられる範囲において任意に選ぶことができる。
適切な焼成の時間は雰囲気ガスの濃度や焼成の温度にも依存するので必ずしも限定されないが、好ましくは1分以上、より好ましくは10分以上である。
雰囲気ガスの供給源や供給方法は特に限定されない。原料であるインジウムと錫を含む原料が存在する反応系に上記の雰囲気ガスを導入することができればよい。
焼成装置は必ずしも限定されず、いわゆる焼成炉を用いることができる。特に、ハロゲン化水素ガスまたはハロゲンガスを用いる場合、焼成炉はハロゲン化水素ガスまたはハロゲンガスに腐食されない材質で構成されていることが好ましい。さらに雰囲気ガスの組成を調節できる装置を備えていることが望ましい。また、ハロゲン化水素ガスまたはハロゲンガスという腐食性ガスを用いるので、焼成炉は気密性があることが望ましい。
工業的には連続法で焼成することが好ましく、例えば、トンネル炉等を用いることができる。腐食性ガス雰囲気中での焼成の場合、焼成工程で用いられる装置、坩堝やボートは、アルミナ製、石英製、耐酸レンガ或いはグラファイト製であることが好ましい。
上記の製造方法により製造されたITO粉末は、BET比表面積径(ITO粉末のBET比表面積とITOの理論密度から求めた値)が、好ましくは0.05μm以上1μm以下、さらに好ましくは0.1μm以上0.5μm以下の微細な一次粒子からなる。また該ITO粉末の累積粒度分布の50%径(平均凝集粒子径)は、インジウムと錫を含む沈澱を析出させる条件等によっては1μm以上となり、そのままでは、相対密度が90%、好ましくは95%を越えるような高密度のITO焼結体が得られる場合もあるが、このような場合には、焼成後のITO粉末を解砕することが好ましい。
ITO粉末の解砕の方法としては特に限定されるものではなく、例えば、通常工業的に用いられる、振動ミル、ボールミルやジェットミル等による解砕方法が挙げられるが、本発明のITO粉末の解砕方法としては、ITO粉末中の一次粒子同士の凝集は弱いため、軽度の解砕、例えば、ボールミルやジェットミル等による程度の解砕を利用し得る。また、ボールミル解砕に際しては、乾式解砕または湿式解砕、またはこれらの組合せのいずれの方法も用いることができる。
ITO粉末の解砕に用いられる粉砕容器やボールとしては、粉砕容器としてはアルミナ製や樹脂製等のものを用いることができ、粉砕用ボールとしてはアルミナ製やジルコニア製や樹脂製等のものを用いることができるが、ボールミル粉砕の際に粉砕容器やボールからの汚染が少ない、粉砕用容器としては樹脂製で、粉砕用ボールとしては耐摩耗性の高いジルコニアボールを用いることが好ましい。
また、焼成の際の雰囲気ガスとして、特にハロゲン化水素ガスまたはハロゲンガスを用いた場合、焼成後のITO粉末には、ハロゲン分が多量に残存する場合がある。残存ハロゲン、特に残存塩素量が多い場合には、相対密度が90%、好ましくは95%を越えるような高密度の焼結体が得られない場合もあるが、このような場合には、焼成後または焼成し解砕した後のITO粉末を、水あるいはアルカリ水溶液で洗浄、または、水蒸気、酸素から選ばれた1種以上のガスを0.1体積%以上含有する雰囲気中で600℃以上1300℃以下での熱処理、またはこれら両者の組合せ等を行うこてにより、残存ハロゲン量を、好ましくは0.2重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下に低減することができる。
上記の製造方法により製造されたITO粉末は、BET比表面積径が、0.05μm以上1μm以下、好ましくは0.1μm以上0.5μm以下、累積粒度分布の50%径が1μm以下、ハロゲン含有量が0.2重量%以下、好ましくは0.1重量%以下であり、相対密度が90%以上、好ましくは95%以上の高密度焼結体を得ることを可能とする、易焼結性のITO粉末である。
次に本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、本発明における各種の測定は次のようにして行った。
1.焼成後のITO粉末の累積粒度分布、BET比表面積及び一次粒子径(BET比表面積径)の測定
(1)累積粒度分布
光透過法を測定原理とする遠心沈降式粒度分布測定装置(島津製作所社製 SA−CP2型)を用いて測定した。
(2)BET比表面積及び一次粒子径(BET比表面積径)
フローソーブ 2300型(マイクロメリティクス社製)を用いてBET比表面積を測定した。また、次式によってBET比表面積径(DBET)を算出して一次粒子径の目安とした。この際に、ITOの理論密度としては、酸化錫を10重量%含むITOの場合、7.16g/cm3とした。
DBET(μm)=6/(S×ρ)
ここで、S=BET比表面積(m2/g)、
ρ=ITO理論密度(g/cm3
2.焼成後のITO粉末中の酸化錫含有量の測定
発光分析により錫の含有量を測定し、含有量を酸化物換算して酸化錫含有量を求めた。
3.ITO粉末中の塩素含有量の測定
硝酸銀滴定法により塩素の含有量を測定した。
インジウム塩と錫塩の混合水溶液は、以下に示す3種類の方法で調製した。
(1)インジウム塩と錫塩の混合水溶液A 金属インジウム(純度99.99%)57.40gを6規定塩酸水溶液に溶解後、イオン交換水にて希釈して1lとしたインジウム塩水溶液から200mlと、金属錫(純度99.99%)6.21gを濃塩酸水溶液に溶解して100mlとした錫塩水溶液から21mlを採取し混合して、インジウム塩と錫塩の混合水溶液を調製した。該インジウム塩と錫塩の混合水溶液中のインジウムと錫濃度は、それぞれ、In=51.95g/lおよびSn=5.90g/lであった。
(2)インジウム塩と錫塩の混合水溶液B
金属インジウム57.40gを濃塩酸水溶液に溶解して120mlとしたインジウム塩水溶液から106mlと、金属スズ5.81gを濃塩酸水溶液に溶解して93mlとした錫塩水溶液から90mlを採取し混合して、インジウム塩と錫塩の混合水溶液を調製した。該水溶液中のインジウムと錫濃度は、In=258.69g/lおよびSn=28.68g/lであった。
(3)インジウム塩と錫塩の混合水溶液C
金属インジウム252.60gを濃塩酸水溶液に溶解して680mLとしたインジウム塩水溶液と、金属錫53.95gを濃塩酸水溶液に溶解して230mlとした錫塩水溶液から117mlを採取し混合後、濃アンモニア水を63ml添加して、インジウム塩と錫塩の混合水溶液860mlを調整した。該インジウム塩と錫塩の混合水溶液中の錫濃度は、それぞれ、In=293.72g/lおよびSn=31.91g/lである。
インジウムと錫を含む沈澱の焼成は、以下に示す2種類の方法で行った。
1.焼成方法A
原料であるインジウムと錫を含む沈澱物を110℃にて乾燥して、アルミナ製あるいは石英製のボートに充填した。充填量は2〜18g、充填深さは10mm程度とした。焼成は石英製炉芯管(直径58mm、長さ1200mm)を用いた管状炉(株式会社モトヤマ製、MS電気炉)で行った。昇温速度は900℃までは10℃/分、1100℃までは5℃/分とした。
雰囲気ガスとしては、室温から1000℃までは空気のみを流し、それ以降は所定濃度の塩化水素ガスを流した。雰囲気ガス濃度の調整は、流量計によりガス流量の調整により行った。塩化水素ガスの希釈ガスとしては、空気を使用し、雰囲気ガス流量の線流速を約10cm/分に調整した。塩化水素ガスは鶴見ソーダ(株)製のボンベ塩化水素(純度99.9%)を用いた。
所定の温度に至った後はその温度にて所定の時間保持した。所定の保持時間の経過後、空気のみを流して冷却し、目的とするITO粉末を、最初に原料としてのインジウムと錫を含む沈澱の乾燥物を充填したアルミナボート中に得た。
2.焼成方法B
原料であるインジウムと錫を含む沈澱物を110℃にて乾燥して、石英製ボートに充填した。充填量は360g、充填深さは10mm程度とした。焼成は石英製炉芯管(直径160mm、長さ1600mm)を挿入した高温箱型電気炉(モリサワ理工株式会社製)で行った。昇温速度は、1100℃までは5℃/分とした。それ以外の操作は前記1と同様とした。
また、焼成により得たITO粉末については、脱塩素を目的として水洗し、次いで乾燥を行い、必要に応じて解砕処理を行った後に成形した後、焼結評価を行った。水洗方法は、ITO粉末の水洗方法は、焼成後のITO粉末5〜10gをイオン交換水500ml、あるいは、焼成後のITO粉末280gをイオン交換水3000mlに投入し、30分撹拌の後に、吸引濾過し、洗浄後の排水中に硝酸銀水溶液を添加して、該排水中に塩素イオンの存在を認めなくなるまでイオン交換水にて洗浄を繰り返した。
また、ITO粉末の解砕は以下に示す2種類の方法で行った。
1.乾式解砕
ITO粉末5gと、直径5mmジルコニアボール500gをポリエチレン製500mlポットに入れ、回転数60rpmにて6時間ボールミル解砕した。
2.乾式解砕
ITO粉末250gと、直径5mmジルコニアボール3500gと、エタノール500mlをポリエチレン製2lポットに入れ、回転数100rpmにて6時間ボールミル解砕し、ロータリーエバポレーターにて減圧下にて乾燥した。
成形は、100kg/cm2にて一軸加圧成形後、3ton/cm2の圧力にてCIP成形を行った。焼結は、常圧の酸素雰囲気中、1500〜1600℃にて10時間焼結してITO焼結体を得た。昇温速度は20℃/分とした。得られたITO焼結体は、JIS R 2205−1992の測定法に準拠してアルキメデス法にてその密度の測定を行った。 また、酸化錫を10重量%含んだITO焼結体の理論密度は7.16g/cm3として、ITO焼結体の相対密度を算出した。
実施例1
1lビーカー中に、イオン交換水に希塩酸水溶液を添加してpH=4.5に調整した水400mlを入れて60℃に保持した。この60℃のpH=4.5の水を撹拌しながら、インジウム塩と錫塩の混合水溶液Aと12.5%アンモニア水を、反応中のpHを4.5に維持するように、35分かけて同時に供給した。反応開始から2分間は、pH=3.0〜5.2の範囲で変動が見られたが、それ以降は、pH=4.4〜4.6の範囲に維持して反応させインジウムと錫を含む沈殿を生成させた。
反応終了後、60℃にて30分撹拌の後に、60℃にて6時間静置し、更に室温にて14時間静置して沈澱を熟成した。熟成後の沈殿の沈降容積は、理論的に得られるITO1g当たり3.5ccであった。
次に、吸引濾過(内径76mmのブフナー型ロート(ニッカトー社製、濾過ロート、ブフナー型)定量濾紙(アドバンテック東洋社製、定量濾紙No.5C)、アスピレーター(ヤマト科学社製、HANDY ASPIRATOR)使用)にて沈澱を採取し、イオン交換水約120mlにて10回洗浄した。濾過および洗浄に要した時間は1時間であり、濾過性に優れ、操作は非常に容易であった。また、この沈殿を110℃にて乾燥したところ、乾燥物は容易に解砕できた。次に、上記乾燥物を、焼成方法Aにより、1000℃から20体積%の塩化水素ガス(空気希釈)を流しながら、1100℃で30分間焼成した後に、水洗、乾燥してITO粉末を得た。
得られたITO粉末は、酸化錫含有量は9.9重量%、BET比表面積は8.2m2/gでBET比表面積径は0.10μm、累積粒度分布の50%径は0.33μmであった。また、該ITO粉末を走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製:JSM−T220型)で観察したところ、一次粒子径が約0.1μmで、一次粒子同士の凝集が弱いITO粉末であった。
実施例2
1lビーカー中に、イオン交換水に希塩酸水溶液を添加してpH=4.5に調整した水400mlを入れて60℃に保持した。この60℃のpH=4.5の水を撹拌しながら、インジウム塩と錫塩の混合水溶液Bと12.5%アンモニア水を、反応中のpHを4.5に維持するように、69分かけて同時に供給した。反応開始から2分間は、pH=3.1〜5.4の範囲で変動が見られたが、それ以降はpH=4.4〜4.6の範囲に維持して反応させインジウムと錫を含む沈殿を生成させた。
反応終了後、60℃にて30分撹拌の後に、60℃にて6時間静置し、更に室温にて14時間静置して沈澱を熟成した。熟成後の沈殿の沈降容積は、理論的に得られるITO1g当たり1.3ccであった。
次に、吸引濾過(内径135mmのブフナー型ロート、定量濾紙No.5C、アスピレーター使用)にて沈澱を採取し、イオン交換水約120mlにて10回洗浄した。濾過および洗浄に要した時間は1時間であり、濾過性に優れ、操作は非常に容易であった。また、この沈殿を110℃にて乾燥したところ、乾燥物は容易に解砕できた。次に、該乾燥物を焼成方法Aにより、1000℃から20体積%の塩化水素ガス(空気希釈)を流しながら、1100℃で30分間焼成した後に、水洗、乾燥してITO粉末を得た。
得られたITO粉末は、酸化錫含有量は10.5重量%、BET比表面積は6.1m2/gでBET比表面積径は0.14μmであった。累積粒度分布の50%径は1.1μmであり、該ITO粉末を走査型電子顕微鏡で観察したところ、一次粒子径が約0.1μmで、かつ一次粒子同士の凝集が弱い粉末であった。また該粉末を乾式解砕処理することによって、BET比表面積は8.7m2/gでBET比表面積径は0.10μm、累積粒度分布の50%径は0.39μmのITO粉末となった。
実施例3
実施例1において、インジウム塩と錫塩の混合水溶液Aと12.5%アンモニア水を、反応中のpHを5.0に維持するように、36分かけて同時に供給した以外は、実施例1と同様の方法でITO粉末を得た。反応中のpH変動は、反応開始から2分間は、pH=3.5〜6.7の範囲で変動が見られたが、それ以降はpH=4.5〜5.5の範囲に維持して反応させた。
反応終了後、60℃にて30分撹拌の後に、60℃にて6時間静置し、更に室温にて14時間静置して沈澱を熟成した。熟成後の沈殿の沈降容積は、理論的に得られるITO1g当たりの容積は4.6ccであった。次に、吸引濾過(内径76mmのブフナー型ロート、定量濾紙No.5C、アスピレター使用)にて沈澱を採取し、イオン交換水約120mlにて10回洗浄した。濾過、洗浄に要した時間は1時間であり、濾過性に優れ、操作が非常に容易であった。また、この沈殿を110℃にて乾燥したところ、乾燥物の解砕は容易であった。
次に、該乾燥物を焼成方法Aにより1000℃から20体積%の塩化水素ガス(空気希釈)を流しながら1100℃で30分間焼成した。焼成によって得られたITO粉末は、BET比表面積は8.1m2/gでBET比表面積径は0.10μm、累積粒度分布の50%径は0.40μmであった。また、該ITO粉末を走査型電子顕微鏡で観察したところ、一次粒子径が約0.1μmで、一次粒子同士の凝集が弱いITO粉末であった。
実施例4
実施例3で得た沈殿の乾燥物を塩化水素ガスを流すことなく、空気中で、1100℃で30分間焼成した。焼成によって得られたITO粉末は、BET比表面積は7.3m2/gでBET比表面積径は0.11μm、累積粒度分布の50%径は0.50μmであった。また、該ITO粉末を走査型電子顕微鏡で観察したところ、一次粒子径が約0.1μmで、一次粒子同士の凝集が弱いITO粉末であった。
実施例5
5Lビーカー中に、イオン交換水に希塩酸を添加してpH=5.0に調整した水2000mlを入れて60℃に保持した。この60℃のpH=5.0の水を撹拌しながら、インジウム塩と錫塩の混合水溶液Cと12.5%アンモニア水を、反応中のpH5.0に維持するように、84分かけて同時に供給した。反応中のpH変動は、反応開始から2分間は、pH=3.6〜5.6の範囲の変動が見られたが、それ以降は、pH=4.8〜5.2の範囲に維持して反応させインジウムと錫を含む沈澱を生成させた。
反応終了後、60どにて30分撹拌の後に、60℃にて6時間静置し、さらに室温にて14時間静置して沈澱を熟成した。熟成後の沈澱の沈降容積は、理論的に得られるITO1g当たり1.1ccであった。
次に、熟成後の沈澱を含む懸濁液を再度撹拌しながら、濃アンモニア水を添加してpH=8.5に調整した後に、吸引濾過(内径195mmのブフナー型ロート、定量濾紙No.5C、アスピレーター使用)にて沈澱を採取し、イオン交換水にアンモニア水を添加してpH=10に調整した希アンモニア水約2Lにて5回洗浄した。濾過および洗浄に要した時間は25分であり、濾過性に優れ、操作は非常に容易であった。また、この沈澱を110℃にて乾燥したところ、乾燥物は容易に解砕できた。
次に、該乾燥物を、焼成方法Bにより、1000℃から20体積%の塩化水素ガス(空気希釈)を流しながら、1100℃で40分間焼成した後に、水洗、乾燥してITO粉末を得た。
得られたITO粉末は、BET比表面積が3.3m2 /gでBET比表面積径が0.25μmで、累積粒度分布の50%径が2.6μmで、該ITO粉末を走査型電子顕微鏡で観察したところ、一次粒子径約0.1〜0.2μmで、一次粒子同士の凝集が弱いITO粉末であった。
また、該粉末を湿式解砕処理することによって、BET比表面積が5.1m2/gでBET比表面積径が0.16μm、累積粒度分布の50%径が0.48μmのITO粉末となった。また、該ITO粉末の塩素含有量は0.05%以下であった。
実施例6
5Lビーカー中に、イオン交換水に希塩酸を添加してpH=5.0に調整した水2000mlを入れて50℃に保持したこと、また、この50℃のpH=5.0の水を撹拌しながら、インジウム塩と錫塩の混合水溶液Cと12.5%アンモニア水を、反応中のpHを5.0に維持するように、81分かけて同時に供給した以外は、実施例5と同様な方法でITO粉末を得た。反応中のpH変動は、反応開始から2分間は、pH=3.6〜6.5の範囲の変動が見られたが、それ以降は、pH=4.8〜5.3の範囲に維持して反応させインジウムと錫を含む沈澱を生成させた。 反応終了後、60℃にて30分撹拌の後に、60℃にて6時間静置し、さらに室温にて14時間静置して沈澱を熟成した。熟成後の沈澱の沈降容積は、理論的に得られるITO1g当たり1.7ccであった。
次に、熟成後の沈澱を含む懸濁液を再度撹拌しながら、濃アンモニア水を添加してpH=8.6に調整した後に、吸引濾過(内径195mmのブフナー型ロート、定量濾紙No.5C、アスピレーター使用)にて沈澱を採取し、イオン交換水を添加してpH=10に調整した希アンモニア水約2Lにて5回洗浄した。濾過および洗浄に要した時間は30分であり、濾過性に優れ、操作は非常に容易であった。また、この沈澱を110℃にて乾燥したところ、乾燥物は容易に解砕できた。
次に、該乾燥物を、焼成方法Bにより焼成後、水洗、乾燥して得られたITO粉末は、BET比表面積が3.2m2/gでBET比表面積径が0.26μmで、累積粒度分布の50%径が2.8μmで、該ITO粉末を走査型電子顕微鏡で観察したところ、一次粒子径が0.1〜0.2μmで、一次粒子同士の凝集が弱いITO粉末であった。
また、該粉末を湿式解砕処理することによって、BET比表面積が5.1m2/gでBET比表面積径が0.16μm、累積粒度分布の50%径が0.52μmのITO粉末となった。
参考例1
実施例1で得られた、酸化錫含有量が9.9重量%、BET比表面積径が0.1μm、累積粒度分布の50%径が0.33μmのITO粉末を直径10mmの円板状に成形して、1600℃にて焼結した結果、焼結体密度7.09g/cm3で、理論密度の99.1%にまで緻密化したITO焼結体が得られた。
参考例2
実施例1で得られた、酸化錫含有量が9.9重量%、BET比表面積径が0.1μm、累積粒度分布の50%径が0.33μmのITO粉末を直径10mmの円板状に成形して1500℃にて焼結した結果、焼結体密度7.06g/cm3で、理論密度の98.5%にまで緻密化したITO焼結体が得られた。
参考例3
実施例2で得られた、酸化錫含有量が10.5重量%、BET比表面積径が0.1μm、累積粒度分布の50%径が0.39μmの解砕後のITO粉末を直径10mmの円板状に成形して1600℃にて焼結した結果、焼結体密度7.06g/cm3で、理論密度の98.6%にまで緻密化したITO焼結体が得られた。
参考例4
実施例5で得られたBET比表面積が0.16μm、累積粒度分布の50%が0.48μmの解砕後のITO粉末を、直径90mmの円板状に成形して、1600℃にて10時間焼結した結果、焼結体密度7.15g/cm3で、理論密度の99.8%にまで緻密化したITO焼結体が得られた。
参考例5
実施例6で得られたBET比表面積径が0.16μm、累積粒度分布の50%径が0.52μmの解砕後のITO粉末を、直径20mmの円板状に成形して、1600℃にて10時間焼結した結果、焼結体密度7.15g/cm3で、理論密度の99.8%にまで緻密化したITO焼結体が得られた。
比較例1 1Lビーカー中に、イオン交換水に希アンモニア水を添加してpH=7.3に調整した水400mlを入れて60℃に保持した。この60℃のpH=7.3の水を撹拌しながら、インジウム塩と錫塩の混合水溶液Aと25%アンモニア水を、反応中のpHを7.3に維持するように、39分かけて同時に供給した。反応開始から3分間は、pH=3.0〜7.8の範囲で変動が見られたが、それ以降はpH=7.0〜7.4の範囲に維持して反応させインジウムと錫を含む沈殿を生成させた。
反応終了後、実施例1と同様な方法で熟成した結果、熟成後の沈殿の容積は170ccであり、理論的に得られるITO1g当たりの容積は11ccと、非常に嵩高い沈殿であった。
次に、実施例1と同様な吸引濾過にて沈澱を採取し、イオン交換水約120mlにて3回洗浄した。濾過、洗浄に要した時間は9時間を要し、濾過操作が困難であり、またこの沈殿を110℃で乾燥したところ、非常に強固な塊状物となり、解砕が困難であった。
比較例2
反応槽の水温および熟成の温度を28℃とした以外は実施例1と同様な方法で、インジウムと錫を含んだ沈殿を得た。熟成後の沈殿の沈降容積は、理論的に得られるITOの1g当たり8.7ccと、非常に嵩高い沈殿であった。次に、実施例1と同様な吸引濾過にて沈澱を採取したところ、濾過のみに7時間を要し、濾過操作が非常に困難で、またこの沈殿を110℃で乾燥したところ、非常に強固な塊状物となり、解砕が困難であった。
比較例3
実施例2で得た、酸化錫含有量が10.5重量%、BET比表面積が6.1m2/gでBET比表面積径が0.14μmで、累積粒度分布の50%径が1.1μmの、乾式解砕処理を行わなかったITO粉末を直径10mmの円板状に成形して、1600℃にて10時間焼結した結果、焼結体密度6.34g/cm3 で、理論密度の88.5%にまでしか緻密化しなかった。
比較例4
実施例5と同様な方法で得た沈澱を吸引濾過後、2重量%の塩化アンモニウム水溶液約2lにて3回洗浄した。濾過および洗浄に要した時間は23分であり、濾過性に優れ、操作は非常に容易であった。また、この沈澱を110℃にて乾燥したところ、乾燥物は容易に解砕できた。
次に、塩化アンモニウムが付着した該乾燥物を、焼成方法Aにより、1000℃から20体積%の塩化水素ガス(空気希釈)を流しながら、1100℃で30分間焼成した後に、水洗、乾燥してITO粉末を得た。
得られたITO粉末は、BET比表面積が3.8m2/gでBET比表面積径が0.22μmで、累積粒度分布の50%径が1.2μmで、該ITO粉末を走査型電子顕微鏡で観察したところ、一次粒子径が0.1〜0.2μmで一次粒子同士の凝集が弱いITO粉末であった。次に、該ITO粉末を乾式解砕処理することによって、BET比表面積が7.4m2/gでBET比表面積径が0.11μm、累積粒度分布の50%径が0.43μmのITO粉末となった。また、該ITO粉末の塩素含有量は0.28%であった。
乾式解砕を行った上記ITO粉末を直径20mmの円板状に成形して、1600℃にて10分間焼結した結果、焼結体密度6.06g/cm3で、理論密度の84.7%にまでしか緻密化しなかった。
比較例5
60℃に加温したインジウム塩と錫塩の混合水溶液Aに25%アンモニア水を、10分かけて滴下して、最終的なpHを7.2トシタ以外は、実施例1と同様な方法でITO粉末を得た。熟成後の沈澱の沈降容積は、理論的に得られるITO1g当たり2.3ccであった。
次に、実施例1と同様に吸引濾過により沈澱を採取し、イオン交換水約120mlにて10回洗浄した。濾過および洗浄に要した時間は1時間であり、濾過性に優れ、操作性は非常に容易であった。また、この沈澱を110℃にて乾燥したところ、乾燥物は容易に解砕できた。
次に、該乾燥物を、焼成方法Aにより、1000℃から20体積%の塩化水素ガス(空気希釈)を流しながら、1100℃で30分間焼成してITO粉末を得た。得られたITO粉末は、BET比表面積が4.8m2/gでBET比表面積径が0.17μm、累積粒度分布の50%径が1.2μmで、該ITO粉末を走査型電子顕微鏡で観察したところ、一次粒子径が約0.1〜0.2μmであり、これら一次粒子が強固に固着した凝集粒子を形成していた。
本発明のITO粉末は、ITO焼結体製造用の原料粉末として使用する場合には、高密度のITO焼結体が得られ、その高密度のITO焼結体をスパッタリングターゲットとして用いた場合、スパッタリング効率を向上させることが期待できる。また、本発明の微粒子からなるITO粉末は、透明導電性のフィラー用途としても適している。

Claims (5)

  1. 酸化錫の含有量が2〜20重量%、BET比表面積径が0.05μm以上1μm以下、累積粒度分布の50%径が1μm以下、ハロゲン含有量が0.2重量%以下であり、成形し焼結して得られる焼結体の相対密度が90%以上であることを特徴とする酸化インジウム−酸化錫粉末。
  2. インジウム塩の水溶液、錫塩の水溶液及びアルカリ水溶液を、40℃以上100℃未満の水中に、反応中のpHが4.5以上5.5以下の範囲に維持されるように供給して反応させた後、生成した沈殿を固液分離後に洗浄し、600℃以上1300℃以下で焼成する製造方法により製造される酸化インジウム−酸化錫粉末であって、酸化錫の含有量が2〜20重量%、BET比表面積径が0.05μm以上1μm以下、累積粒度分布の50%径が1μm以下、ハロゲン含有量が0.2重量%以下であり、成形し焼結して得られる焼結体の相対密度が90%以上であることを特徴とする酸化インジウム−酸化錫粉末。
  3. 成形が、100kg/cm2にて一軸加圧成形後3ton/cm2の圧力にてCIP成形を行う成形であり、焼結が、常圧の酸素雰囲気中1600℃にて10時間焼結して行う焼結である請求項1または2に記載の酸化インジウム−酸化錫粉末。
  4. 焼結体の相対密度が95%以上である請求項1〜3のいずれかに記載の酸化インジウム−酸化錫粉末。
  5. ハロゲン含有量が0.1重量%以下である請求項1〜4のいずれかに記載の酸化インジウム−酸化錫粉末。
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