JP2004281334A - 走査電子顕微鏡 - Google Patents
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Abstract
【課題】試料に負電圧を印加するリターディング法で、試料表面の一部に傾斜面があったり、不連続の段差が有る場合でも電子ビームの光軸の対称性が保たれ、非点収差の発生が抑えられ、高分解能で像歪みのない2次電子像を得ることができる走査電子顕微鏡を提供する。
【解決手段】電子銃と、該電子銃から発生した電子ビームを細く集束して試料ホルダに保持させた試料に照射するための対物レンズと、試料に負電圧を印加するための電源とを備えた走査電子顕微鏡において、試料上への電子ビームの照射領域を制限する穴を有する導電性の遮蔽板を前記試料ホルダに設けると共に、該遮蔽板に前記試料とほぼ同電位を与えるようにしたことを特徴とする。
【選択図】 図1
【解決手段】電子銃と、該電子銃から発生した電子ビームを細く集束して試料ホルダに保持させた試料に照射するための対物レンズと、試料に負電圧を印加するための電源とを備えた走査電子顕微鏡において、試料上への電子ビームの照射領域を制限する穴を有する導電性の遮蔽板を前記試料ホルダに設けると共に、該遮蔽板に前記試料とほぼ同電位を与えるようにしたことを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は走査電子顕微鏡に関し、特に試料に負電圧を印加するリターディング法を利用した際に、試料表面の一部に傾斜面や、不連続の段差があっても高分解能で像歪みのない画像を得ることの可能な走査電子顕微鏡に関する。
【0002】
【従来の技術】
走査型電子顕微鏡において、試料のチャージアップやダメージを避けるために、低加速電圧の電子ビームを用いる試料観察が行われるが、対物レンズの収差は通過する電子ビームのエネルギーが低いほど悪化する傾向がある。それを避けるため、電子ビームのエネルギーを高くして対物レンズ領域を通過させると共に、試料に負の電位を印加することにより試料直前で電子ビームを減速して試料に入射させる方法が実用化されている。この方法はリターディング法と呼ばれており、低加速電圧においても高い分解能で試料観察が可能である。この場合、試料から発生した2次電子は、対物レンズからの磁界にとらえられて内側磁極の中を通って対物レンズ上部へ進行するため、対物レンズの内部あるいは対物レンズ上部で2次電子を検出する。このリターディング法では、試料と対物レンズとの間に一次電子ビームを減速させる電界が発生しているが、試料表面がほぼ平坦で傾斜させない場合、試料と対物レンズ間の電界は電子ビームの光軸に対して軸対称性が保たれるので、一次電子ビームに与える非点収差(軸外非点収差)は発生しない。
【0003】
試料を傾斜させる場合、試料と対物レンズ間の電界は電子ビームの光軸に対して軸対称性が崩れ、光軸上に横方向の電界成分が発生し、軸外非点収差が増大して分解能を損なわれる。この対策として例えば、特願2002−189936号公報、発明名称「走査電子顕微鏡」では、対物レンズと試料との間の電子ビーム通路に筒状のシールド電極を設け、シールド電極に試料電圧とほぼ同電位を与える走査電子顕微鏡を提案している。
【0004】
【特許文献】
特願2002−189936号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記に述べたようなリターディング法では、試料を傾斜させなくとも試料表面の一部にある角度以上の傾斜面があったり、不連続の段差が有る場合、その傾斜部や段差部と対物レンズ間の電界は、電子ビームの光軸に対して軸対称性が崩れ、光軸上に横方向の電界成分が発生し、軸外非点収差が増大して細く絞られた円形の電子ビームが細長い楕円となり分解能が損なわれたり、また、試料上を直線的に走査する電子ビームに偏向歪みを受けることにより画像に歪みが生じる問題が発生する。
【0006】
本発明は、上記のような試料条件においでも電子ビーム光軸の対称性が保たれ、軸外非点収差の発生が抑えられ、また、走査の偏向歪みが抑えられることができる走査電子顕微鏡を提供する。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するため、本発明の走査電子顕微鏡は、電子銃と、該電子銃から発生した電子ビームを細く集束して試料ホルダに保持された試料に照射するための対物レンズと、試料に負電圧を印加するための電源とを備えた走査電子顕微鏡において、試料上への電子ビームの照射領域を制限する穴を有する導電性の遮蔽板を前記試料ホルダに設けると共に、該遮蔽板に前記試料とほぼ同電位を与えるようにしたことを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明に基づく走査型電子顕微鏡の一例を示す。1は電子銃で、電子銃1から発生した一次電子ビームEbは、集束レンズ2とセミインレンズ型の対物レンズ3によって試料ホルダ6に搭載されている試料4上に細く集束される。一次電子ビームEbは、走査コイル5によって偏向され、試料上を二次元的に走査される。10は、この走査型電子顕微鏡を制御する制御装置でパソコン等のコンピュータから成り、図示していないがキーボード、マウス等の入力装置と、表示装置(CRT)等を備えている。
【0009】
試料4(試料ホルダ6)を載置する試料ステージ7は、一次電子ビームEbの光軸に垂直な平面内のX、Y軸方向の水平移動機構、Z軸方向(光軸方向)の垂直移動機構および傾斜機構を備え、図示していないが、ステージ駆動回路を介して制御装置10によって制御される。また、試料4(試料ホルダ6)には試料ステージ7を介して電源13が接続されるが、この電源13は試料4に負電圧を印加し、電子ビームEbを減速させるためのリターディング用の電源である。
【0010】
対物レンズ3は、電子ビーム通路を取り巻くように配置される内側磁極3b、その外側を取り巻くように配置される外側磁極3c、両磁極を接続するヨーク3a及び励磁コイル3dにより構成されている。対物レンズ3の中央付近には、レンズの外側から光軸へむけて磁極3a、3bを貫通する孔3eと3fが対称に開けられている。そして、一方の孔3eには2次電子検出器9が挿入されており、試料4から発生し対物レンズ3内を上昇してきた2次電子は孔3eの中に誘引されて2次電子検出器9へ入射して検出される。
【0011】
2次電子検出器9は図示してないがシンチレータと光電子増倍管とを組み合わせた構造を有しており、先端に設けられた円形のシンチレータの周囲部分にはリング状の電極が設けられ、その電極には2次電子を引き寄せる正の10kV程度の電圧が印加される。2次電子検出器9の検出信号は、図示していないが、増幅器によって増幅された後、表示装置に供給されるため、表示装置の画面には試料の2次電子像として表示される。
【0012】
8は、本発明の試料4(試料ホルダ)上部を覆って保持する試料キャップである。試料キャップ8は、図2に示すように、円形の平坦な遮蔽板8aおよび遮蔽板8aの周囲を縁どるリング8bから構成され、共に導電性の材料で作成され、遮蔽板8aには丸穴が観察穴8cとして設けられている。試料キャップ8には試料ホルダ6を介して試料4と同じ負の電位が与えられる。
【0013】
11は、試料キャップ8を試料ホルダ6に保持し移動させる移動機構である。この移動機構11の実施例を図3に示す。図3(A)は図2(A)の矢印A−Aより試料ホルダ6および移動機構11を含めた断面図である。移動機構11は、試料ホルダ6内に設けられおり、試料キャップ8を電子ビームEbの光軸に沿って上下に移動させ、試料4表面と遮蔽板8a間の距離を適切に調整できる機能を備えている。試料キャップ8は、モータ11aのシャフトに固定されたネジ11bの回転方向により、移動アーム部11c(図3B)が図中の矢印の方向に上下に移動する。この移動機構の駆動は、移動駆動回路14を介して制御装置10によって制御される。
【0014】
試料4は、図1に示すように、試料表面の一部にある値以上の大きな傾斜部と不連続の段差部を持っている。試料4の2次電子像を観察する場合、図示していない走査信号発生回路から走査信号が走査コイル5に供給され、試料4上の対物レンズ直下の領域が電子ビームEbによってラスター走査される。電子ビームEbの加速電圧は、例えば4kVと高く設定され、比較的高いエネルギーで電子ビームEbが対物レンズ3内部を通過することから、電子ビームEbが対物レンズ3から受ける収差は低減される。そして、試料4には電源11より例えば−3kVの負電圧が印加されるため、電子ビームEbは試料4の直前で減速され、1keVのエネルギーにて試料4に照射される。
【0015】
なお、従来このように試料4の上部を覆って保持する試料キャップ8がない場合、試料4の傾斜部や、不連続の段差部と対物レンズ3間の電界は、電子ビームEbの光軸に対して軸対称性が崩れ、光軸上に横方向の電界成分が発生し、軸外非点収差が増大して分解能が損なわれたり、また、試料4上を直線的に走査する電子ビームEbに偏向歪みを受けることにより画像に歪みが生じる。
【0016】
本発明では、この弊害を取り除くために、試料4(試料ホルダ6)上部を試料キャップ8で覆って、遮蔽板8aの平坦で観察穴8cを通して電子ビームEbが試料4に照射される。遮蔽板8aは平坦で試料4と同電位が与えられていることにより、試料4と遮蔽板8a間では軸対称性面での不正電界が抑えられると共に、遮蔽板8aと対物レンズ3との間の電界も軸対称性が損なわれない。これにより、対物レンズ3を通過した電子ビームEbは、試料面に到達するまでの間、光軸に対して軸対称性が保たれ、光軸上に横方向の電界成分が発生しないため、試料4の傾斜部や不連続の段差部でも、分解能低下の原因となる非点収差の発生が抑えられ、また、画像歪みとなる走査の偏向歪みが抑えられ状態で試料4に照射される。従って、上記の試料表面の一部にある傾斜角の傾斜面と不連続の段差を持っている試料4の状態でも、高分解能で像歪みのない2次電子像を得ることができる。
【0017】
なお、試料キャップ8の位置は、試料4の傾斜部の傾斜角度の大きさや、不連続の段差部の段差の高さに応じて、試料4と試料キャップ8の遮蔽板8aの間を調節すればよい。試料4の傾斜角度や段差が大きい場合には、試料4と試料キャップ8の遮蔽板8a間の距離を離す方向に調節し、試料4の傾斜角度や段差が小さい場合には、試料4と試料キャップ8の遮蔽板8a間の距離を縮める方向に調節し、電子ビームEbの光軸に対して軸対称性が保たれ、光軸上に横方向の電界成分が発生しないようにすればよい。
【0018】
また、観察穴8cの大きさを種々に変更して実験したところ、6mmφ以下で顕著な効果があることが見出された。
【0019】
以上、本発明の実施例の形態を説明したが、本発明は上記の形態に限定されるものではない。例えば、セミインレンズ型の対物レンズに限らず、対物レンズ3と試料4との間に電界が発生し、その電界の光軸に関する軸対称性が1次電子ビームEbに対して悪影響を与える走査電子顕微鏡であれば、本発明を適用することができる。また、2次電子検出器は対物レンズ内に配置したが、対物レンズ3の上部に配置してもよい。また、試料キャップの観察穴は目的に合わせて複数個の穴を設けてもよく、その場合には、試料ホルダを移動して使用する観察穴を選べばよい。また、観察穴は円形だけでなく四角等の多角形でもよい。
【0020】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、試料の上部に所定の距離を保って配置する試料キャップを設け、この試料キャップには試料に印加する同一の電圧を印加することによって、試料表面の一部に傾斜面があったり、不連続の段差が有る場合でも電子ビーム光軸の対象性が保たれ、非点収差の発生を抑えられ、高分解能で像歪みのない2次電子像を得ることができる。また、この試料キャップは試料の傾斜角度や段差の大きさによって、最適な所定の距離に制御することにより、より非点収差を改善できる。
【0021】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例である走査電子顕微鏡の概略構成図である。
【図2】試料キャップの構成図である。
【図3】試料キャップの移動機構の概略構成図である。
【符号の説明】
1…電子銃、2…集束レンズ、3…対物レンズ、4…試料、5…走査コイル、6…試料ホルダ、7…試料ステージ、8…シールド電極、9…2次電子検出器10…制御装置、11…移動機構、13…電源、14…移動機構制御回路、
【発明の属する技術分野】
本発明は走査電子顕微鏡に関し、特に試料に負電圧を印加するリターディング法を利用した際に、試料表面の一部に傾斜面や、不連続の段差があっても高分解能で像歪みのない画像を得ることの可能な走査電子顕微鏡に関する。
【0002】
【従来の技術】
走査型電子顕微鏡において、試料のチャージアップやダメージを避けるために、低加速電圧の電子ビームを用いる試料観察が行われるが、対物レンズの収差は通過する電子ビームのエネルギーが低いほど悪化する傾向がある。それを避けるため、電子ビームのエネルギーを高くして対物レンズ領域を通過させると共に、試料に負の電位を印加することにより試料直前で電子ビームを減速して試料に入射させる方法が実用化されている。この方法はリターディング法と呼ばれており、低加速電圧においても高い分解能で試料観察が可能である。この場合、試料から発生した2次電子は、対物レンズからの磁界にとらえられて内側磁極の中を通って対物レンズ上部へ進行するため、対物レンズの内部あるいは対物レンズ上部で2次電子を検出する。このリターディング法では、試料と対物レンズとの間に一次電子ビームを減速させる電界が発生しているが、試料表面がほぼ平坦で傾斜させない場合、試料と対物レンズ間の電界は電子ビームの光軸に対して軸対称性が保たれるので、一次電子ビームに与える非点収差(軸外非点収差)は発生しない。
【0003】
試料を傾斜させる場合、試料と対物レンズ間の電界は電子ビームの光軸に対して軸対称性が崩れ、光軸上に横方向の電界成分が発生し、軸外非点収差が増大して分解能を損なわれる。この対策として例えば、特願2002−189936号公報、発明名称「走査電子顕微鏡」では、対物レンズと試料との間の電子ビーム通路に筒状のシールド電極を設け、シールド電極に試料電圧とほぼ同電位を与える走査電子顕微鏡を提案している。
【0004】
【特許文献】
特願2002−189936号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記に述べたようなリターディング法では、試料を傾斜させなくとも試料表面の一部にある角度以上の傾斜面があったり、不連続の段差が有る場合、その傾斜部や段差部と対物レンズ間の電界は、電子ビームの光軸に対して軸対称性が崩れ、光軸上に横方向の電界成分が発生し、軸外非点収差が増大して細く絞られた円形の電子ビームが細長い楕円となり分解能が損なわれたり、また、試料上を直線的に走査する電子ビームに偏向歪みを受けることにより画像に歪みが生じる問題が発生する。
【0006】
本発明は、上記のような試料条件においでも電子ビーム光軸の対称性が保たれ、軸外非点収差の発生が抑えられ、また、走査の偏向歪みが抑えられることができる走査電子顕微鏡を提供する。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するため、本発明の走査電子顕微鏡は、電子銃と、該電子銃から発生した電子ビームを細く集束して試料ホルダに保持された試料に照射するための対物レンズと、試料に負電圧を印加するための電源とを備えた走査電子顕微鏡において、試料上への電子ビームの照射領域を制限する穴を有する導電性の遮蔽板を前記試料ホルダに設けると共に、該遮蔽板に前記試料とほぼ同電位を与えるようにしたことを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明に基づく走査型電子顕微鏡の一例を示す。1は電子銃で、電子銃1から発生した一次電子ビームEbは、集束レンズ2とセミインレンズ型の対物レンズ3によって試料ホルダ6に搭載されている試料4上に細く集束される。一次電子ビームEbは、走査コイル5によって偏向され、試料上を二次元的に走査される。10は、この走査型電子顕微鏡を制御する制御装置でパソコン等のコンピュータから成り、図示していないがキーボード、マウス等の入力装置と、表示装置(CRT)等を備えている。
【0009】
試料4(試料ホルダ6)を載置する試料ステージ7は、一次電子ビームEbの光軸に垂直な平面内のX、Y軸方向の水平移動機構、Z軸方向(光軸方向)の垂直移動機構および傾斜機構を備え、図示していないが、ステージ駆動回路を介して制御装置10によって制御される。また、試料4(試料ホルダ6)には試料ステージ7を介して電源13が接続されるが、この電源13は試料4に負電圧を印加し、電子ビームEbを減速させるためのリターディング用の電源である。
【0010】
対物レンズ3は、電子ビーム通路を取り巻くように配置される内側磁極3b、その外側を取り巻くように配置される外側磁極3c、両磁極を接続するヨーク3a及び励磁コイル3dにより構成されている。対物レンズ3の中央付近には、レンズの外側から光軸へむけて磁極3a、3bを貫通する孔3eと3fが対称に開けられている。そして、一方の孔3eには2次電子検出器9が挿入されており、試料4から発生し対物レンズ3内を上昇してきた2次電子は孔3eの中に誘引されて2次電子検出器9へ入射して検出される。
【0011】
2次電子検出器9は図示してないがシンチレータと光電子増倍管とを組み合わせた構造を有しており、先端に設けられた円形のシンチレータの周囲部分にはリング状の電極が設けられ、その電極には2次電子を引き寄せる正の10kV程度の電圧が印加される。2次電子検出器9の検出信号は、図示していないが、増幅器によって増幅された後、表示装置に供給されるため、表示装置の画面には試料の2次電子像として表示される。
【0012】
8は、本発明の試料4(試料ホルダ)上部を覆って保持する試料キャップである。試料キャップ8は、図2に示すように、円形の平坦な遮蔽板8aおよび遮蔽板8aの周囲を縁どるリング8bから構成され、共に導電性の材料で作成され、遮蔽板8aには丸穴が観察穴8cとして設けられている。試料キャップ8には試料ホルダ6を介して試料4と同じ負の電位が与えられる。
【0013】
11は、試料キャップ8を試料ホルダ6に保持し移動させる移動機構である。この移動機構11の実施例を図3に示す。図3(A)は図2(A)の矢印A−Aより試料ホルダ6および移動機構11を含めた断面図である。移動機構11は、試料ホルダ6内に設けられおり、試料キャップ8を電子ビームEbの光軸に沿って上下に移動させ、試料4表面と遮蔽板8a間の距離を適切に調整できる機能を備えている。試料キャップ8は、モータ11aのシャフトに固定されたネジ11bの回転方向により、移動アーム部11c(図3B)が図中の矢印の方向に上下に移動する。この移動機構の駆動は、移動駆動回路14を介して制御装置10によって制御される。
【0014】
試料4は、図1に示すように、試料表面の一部にある値以上の大きな傾斜部と不連続の段差部を持っている。試料4の2次電子像を観察する場合、図示していない走査信号発生回路から走査信号が走査コイル5に供給され、試料4上の対物レンズ直下の領域が電子ビームEbによってラスター走査される。電子ビームEbの加速電圧は、例えば4kVと高く設定され、比較的高いエネルギーで電子ビームEbが対物レンズ3内部を通過することから、電子ビームEbが対物レンズ3から受ける収差は低減される。そして、試料4には電源11より例えば−3kVの負電圧が印加されるため、電子ビームEbは試料4の直前で減速され、1keVのエネルギーにて試料4に照射される。
【0015】
なお、従来このように試料4の上部を覆って保持する試料キャップ8がない場合、試料4の傾斜部や、不連続の段差部と対物レンズ3間の電界は、電子ビームEbの光軸に対して軸対称性が崩れ、光軸上に横方向の電界成分が発生し、軸外非点収差が増大して分解能が損なわれたり、また、試料4上を直線的に走査する電子ビームEbに偏向歪みを受けることにより画像に歪みが生じる。
【0016】
本発明では、この弊害を取り除くために、試料4(試料ホルダ6)上部を試料キャップ8で覆って、遮蔽板8aの平坦で観察穴8cを通して電子ビームEbが試料4に照射される。遮蔽板8aは平坦で試料4と同電位が与えられていることにより、試料4と遮蔽板8a間では軸対称性面での不正電界が抑えられると共に、遮蔽板8aと対物レンズ3との間の電界も軸対称性が損なわれない。これにより、対物レンズ3を通過した電子ビームEbは、試料面に到達するまでの間、光軸に対して軸対称性が保たれ、光軸上に横方向の電界成分が発生しないため、試料4の傾斜部や不連続の段差部でも、分解能低下の原因となる非点収差の発生が抑えられ、また、画像歪みとなる走査の偏向歪みが抑えられ状態で試料4に照射される。従って、上記の試料表面の一部にある傾斜角の傾斜面と不連続の段差を持っている試料4の状態でも、高分解能で像歪みのない2次電子像を得ることができる。
【0017】
なお、試料キャップ8の位置は、試料4の傾斜部の傾斜角度の大きさや、不連続の段差部の段差の高さに応じて、試料4と試料キャップ8の遮蔽板8aの間を調節すればよい。試料4の傾斜角度や段差が大きい場合には、試料4と試料キャップ8の遮蔽板8a間の距離を離す方向に調節し、試料4の傾斜角度や段差が小さい場合には、試料4と試料キャップ8の遮蔽板8a間の距離を縮める方向に調節し、電子ビームEbの光軸に対して軸対称性が保たれ、光軸上に横方向の電界成分が発生しないようにすればよい。
【0018】
また、観察穴8cの大きさを種々に変更して実験したところ、6mmφ以下で顕著な効果があることが見出された。
【0019】
以上、本発明の実施例の形態を説明したが、本発明は上記の形態に限定されるものではない。例えば、セミインレンズ型の対物レンズに限らず、対物レンズ3と試料4との間に電界が発生し、その電界の光軸に関する軸対称性が1次電子ビームEbに対して悪影響を与える走査電子顕微鏡であれば、本発明を適用することができる。また、2次電子検出器は対物レンズ内に配置したが、対物レンズ3の上部に配置してもよい。また、試料キャップの観察穴は目的に合わせて複数個の穴を設けてもよく、その場合には、試料ホルダを移動して使用する観察穴を選べばよい。また、観察穴は円形だけでなく四角等の多角形でもよい。
【0020】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、試料の上部に所定の距離を保って配置する試料キャップを設け、この試料キャップには試料に印加する同一の電圧を印加することによって、試料表面の一部に傾斜面があったり、不連続の段差が有る場合でも電子ビーム光軸の対象性が保たれ、非点収差の発生を抑えられ、高分解能で像歪みのない2次電子像を得ることができる。また、この試料キャップは試料の傾斜角度や段差の大きさによって、最適な所定の距離に制御することにより、より非点収差を改善できる。
【0021】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例である走査電子顕微鏡の概略構成図である。
【図2】試料キャップの構成図である。
【図3】試料キャップの移動機構の概略構成図である。
【符号の説明】
1…電子銃、2…集束レンズ、3…対物レンズ、4…試料、5…走査コイル、6…試料ホルダ、7…試料ステージ、8…シールド電極、9…2次電子検出器10…制御装置、11…移動機構、13…電源、14…移動機構制御回路、
Claims (3)
- 電子銃と、該電子銃から発生した電子ビームを細く集束して試料ホルダに保持させた試料に照射するための対物レンズと、試料に負電圧を印加するための電源とを備えた走査電子顕微鏡において、試料上への電子ビームの照射領域を制限する穴を有する導電性の遮蔽板を前記試料ホルダに設けると共に、該遮蔽板に前記試料とほぼ同電位を与えるようにしたことを特徴とする走査電子顕微鏡。
- 前記遮蔽板は、試料表面との距離を調節可能に前記試料ホルダに支持されていることを特徴とする請求項1記載の走査電子顕微鏡。
- 前記穴が遮蔽板に複数設けられていることを特徴とする請求項1記載の走査電子顕微鏡。
Priority Applications (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2003074740A JP2004281334A (ja) | 2003-03-19 | 2003-03-19 | 走査電子顕微鏡 |
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