JP2004276780A - 高速走行車両における車外突起部材の被覆形状 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】高速走行車両1における車外突起部材20の被覆形状は、その平面断面形状を車両前後方向の中心線pに対して前後対称とし、さらに車両前後方向に長尺の楕円弧形状とした。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新幹線等の高速走行車両における静電アンテナや特高ケーブル等の車外突起部材を被覆する被覆部材の形状に関し、特に走行中の空力騒音を低減する高速走行車両における車外突起部材の被覆形状に関する。
【0002】
【従来の技術】
高速走行する鉄道車両の車外騒音問題においては、車両の周りから発生する騒音、特に走行中に発生する風切り音等の空力音の低減が大きな課題となっている。この空力音は、車両の外側表面の各部に空気流が当たることによって発生するものであり、その発生要因となる場所は、車体表面の段差部や角部および急な曲面部、あるいは車両の外側に設けられる取手、踏台、アンテナ等の各種部品等が挙げられる。
上記のような段差部による空力音を低減する技術として、特開2001−58568号公報(以下、「特許文献1」という。)に記載の「高速車両の車体側表面の段差形状」があり、また、角部や曲面部による空力音を低減する対策技術として、特開平7−172311号公報(以下、「特許文献2」という。)に記載の「低空力音移動体」が知られている。
【0003】
特許文献1に記載の技術は、車体側表面の段差形状を側出入口2に適用したもので、車体外表面10から側引戸3の外表面3aにかけて、その断面形状が、長軸を側引戸3の外表面とする略1/4楕円弧状に形成したものである(特許文献1の「0017」〜「0019」および第1図、第5図参照)。
特許文献2に記載の技術は、高速で移動する移動体の外側表面の内、空気流の剥離が発生する部位の表面を網状あるいは微少凹凸の構造としたものである(特許文献2の「0005」、「0006」および第1図参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−58568号公報
【特許文献2】
特開平7−172311号公報
【0005】
ところが、上記いずれの空力音低減技術は、車体の段差部あるいは角部や曲面部に施されるものであり、取手やアンテナのような車体外表面から突出する突起部に対応するものではなかった。
例えば、図7、図8に示すような車体の屋根外面に取り付けられる静電アンテナのカバー930は、側面視で下端の比較的幅の広い台座部931の前部から上部に向かって後方に傾斜する前面部9351と、後部の下端から前面部9351と略平行に後方に傾斜する後面部9350と、これら前面部9351と後面部9350とを接続する左右の側壁9355とからなる平面視で車両左右方向に薄い薄板状の箱体であり、その上部は後面部9350からさらに後方に丸パイプ状の突出部9353により突出して、架線との所要の対向長さを確保するようになっている。
その水平断面は、前面部9351、後面部9350が半円形状で全体が長方形に近く、この断面を、上部に行くにしたがって徐々に小さくしたものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このような従来の静電アンテナカバー930の空力音を風洞実験により測定した結果、図6に一点鎖線で示すように、時速270kmの走行速度に相当する風速のとき、周波数500Hz付近にピークを持つ大きな騒音を発生していることがわかった。これは気流が静電アンテナカバー930の前縁部・後縁部の両方で大きな剥離を起こすからと考えられる。
【0007】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、空気の流れの剥離を極力少なくする高速走行車両における車外突起部材の被覆形状を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る請求項1に記載の高速走行車両における車外突起部材の被覆形状は、高速走行する車両の車体表面より車外に突出する突起部材を被覆する部材の形状であって、前記被覆部材の水平方向の断面形状を、車両前後方向の中心線に対して前後対称としたことを特徴とする。
よって、1編成の車両が上りまたは下りの両方向に高速走行しても、被覆部材に働く空気流は略同一のため、略同一の空力音とすることができる。
【0009】
また、本発明に係る請求項2に記載の高速走行車両における車外突起部材の被覆形状は、請求項1に記載の高速走行車両における車外突起部材の被覆形状において、前記被覆部材の水平方向の断面形状を、車両の長手方向を長軸とする半楕円形状の前後縁を直線で結んだ形状としたことを特徴とする。
よって、車両進行方向の前縁部に当接した空気は、先端の楕円形状から直線に連なる壁面に沿って流れるため、前縁部での空気流の剥離が小さく抑えられ、かつ後縁部においても空気流は大きな剥離を伴わず滑らかに後方に流れるため、その分、空力音を低減することができる。さらに、側壁が直線であるため、被覆部材の製造が容易である。
【0010】
また、本発明に係る請求項3に記載の高速走行車両における車外突起部材の被覆形状は、請求項1に記載の高速走行車両における車外突起部材の被覆形状において、前記被覆部材の水平方向の断面形状を、車両の長手方向を長軸とする楕円弧状としたことを特徴とする。
よって、車両進行方向の前縁部に当接した空気は、楕円弧状の側壁に沿って流れるため、前縁部・後縁部ともに空気流の剥離が最小限に抑えられ、その分、空力音を低減することができる。
【0011】
また、本発明に係る請求項4に記載の高速走行車両における車外突起部材の被覆形状は、請求項1乃至請求項3に記載の高速走行車両における車外突起部材の被覆形状において、前記車外突起部材が静電アンテナであることを特徴とする。
よって、静電アンテナを車両の走行方向に関係なく低騒音で安定的に被覆できるため、静電アンテナと架線との関係を常に一定に保つように静電アンテナを被覆することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係る高速走行車両における車外突起部材の被覆形状の一の実施の形態について図面を参照して以下に説明する。本実施の形態の高速走行車両における車外突起部材の被覆形状は、新幹線の先頭車両および最後尾車両に設けられる静電アンテナの被覆部材に適用したものである。
ここで、図1は、高速走行車両の先頭車両の側面図である。図2は、被覆部材の側面図であり、図3はその平面図、図4はその正面図である。
【0013】
(構成)本発明の一の実施の形態である静電アンテナの被覆部材の構成について説明する。静電アンテナ(図略)の被覆部材30は、図1に示すように、高速走行車両1の先頭車両および最後尾車両の車体10の次車両寄りの端部(以下、「後端部」という。)の天井部外表面101に取り付けられる。
被覆部材30は、図2に示すように、側面視で車両長手方向の中心線pに対して前後対称の山形をなし、その下端に形成され、左右が鍔状に広がった鍔部311を有する台座部31と、該台座部31の中心から上方に起立するカバー部35とからなるFRP製の中空箱体である。
【0014】
カバー部35は、側面視で、台座部31に連続する底辺352から徐々に前後方向の長さが短くなり、頂上部353に至る台形状を呈し、その水平断面の外形形状は図5に示すように車両の長手方向を長軸とする楕円弧状を、前記底辺352から頂上部353まで連続させたものである。
そして、カバー部35は、正面視で、その幅(厚み)が前記底辺352から徐々に減少しながら頂上部353に至るようになっており、したがって、水平断面における前後の前縁部351、351の楕円の短径は上部に行くにしたがって小さくなり、且つ側壁355を形成する長径も上部に行くにしたがって小さく形成される。
なお、頂上部353の前後方向の長さは、従来の被覆部材930の前縁部9351上端から、後部に突出したパイプ部9353の後端までの長さと略同一である。
また、前記台座部31には、この被覆部材30を車体10の外表面101で天井部に取り付けるための多数の取付孔314が設けられている。
【0015】
(作用)次に、本実施の形態の高速走行車両における車外突起部材の被覆形状の作用を説明する。
車両の高速走行に伴い、被覆部材30の前縁部351には空気が当接し、該空気を切り裂くようにして楕円の短径の前縁部351から両側の側壁355に沿って空気流が発生する。
前縁部351が楕円の短径となっているため、前縁部351で空気流は滑らかに両側の側壁355に沿うように流れ、剥離はほとんど生じない。前縁部351と対称形状の後部の前縁部351で、剥離せずに流れてきた空気流は大きく剥離することなく再び合流し、後方へと流れ去っていく。
【0016】
したがって、空力騒音の原因となる空気流の剥離による渦は殆ど発生せず、その結果、空力音を低減させることができた。この効果を実証するための騒音測定の結果を説明する。
すなわち、この騒音測定は、滋賀県米原町に所在する鉄道総合技術研究所内に設置された低騒音風洞において、新幹線「のぞみ」の走行速度である270Km/hに相当する風速を与えて行い、被覆部材の側方3.5mで測定した結果である。
その結果、図6のグラフの太い実線で示すように、270Km/h走行時の騒音は、従来の被覆部材930と比較して、約12dBA低減できることがわかった。
【0017】
このように、本実施の形態の高速走行車両1における車外突起部材20の被覆形状は、その平面断面形状を車両前後方向の中心線pに対して前後対称とし、さらに車両前後方向に長尺の楕円弧状としたので、高速走行時の空気の流れを剥離させることが無く、したがって空力音を低減させるとともに、高速走行車両1の前後いずれへの走行時にもこの効果を発揮することが可能となった。
【0018】
なお、本発明は前記実施の形態のものに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、前記実施の形態では、被覆部材の形状を静電アンテナの被覆部材に適用した例で説明したが、これに限られず、新幹線車両の4両目と5両目等の天井部外面に対向するように設けられた特高ケーブルのケーブルヘッドを被覆する被覆部材に適用することも可能である。
また、前記ケーブルヘッド以外の車両の両端に設けられる特高ケーブルの直ジョイントや通信アンテナ等の比較的高さの低い突起部材の水平断面形状を楕円弧状にすることも可能である。
【0019】
【発明の効果】
本発明は、高速走行する車両の車体表面より車外に突出する突起部材を被覆する部材の形状であって、前記被覆部材の水平方向の断面形状を、車両前後方向の中心線に対して前後対称に形成し、また、車両の長手方向を長軸とする楕円弧状としたので、高速走行車両の高速走行時に発生する空気の流れによる前記被覆部材からの空気の剥離を極力少なくすることができ、その結果、空力騒音を低減することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一の実施の形態に係る高速走行車両の側面図である。
【図2】本発明の一の実施の形態に係る高速走行車両に適用した被覆部材の側面図である。
【図3】本発明の一の実施の形態に係る高速走行車両に適用した被覆部材の平面図である。
【図4】本発明の一の実施の形態に係る高速走行車両に適用した被覆部材の正面図である。
【図5】図2のV−V線に沿う断面図である。
【図6】本発明の一の実施の形態に係る被覆部材と従来の被覆部材の低騒音風洞における騒音試験の結果を示すグラフである。
【図7】従来の被覆部材の側面図である。
【図8】従来の被覆部材の平面図である。
【符号の説明】
1 高速走行車両
10 車体
20 突起部材
30 被覆部材
31 台座部
35 カバー部
351 前縁部
355 側壁
Claims (4)
- 高速走行する車両の車体表面より車外に突出する突起部材を被覆する部材の形状であって、
前記被覆部材の水平方向の断面形状を、車両前後方向の中心線に対して前後対称としたことを特徴とする高速走行車両における車外突起部材の被覆形状。 - 請求項1に記載の高速走行車両における車外突起部材の被覆形状において、
前記被覆部材の水平方向の断面形状を、車両の長手方向を長軸とする半楕円形状の前後縁を直線で結んだ形状としたことを特徴とする高速走行車両における車外突起部材の被覆形状。 - 請求項1に記載の高速走行車両における車外突起部材の被覆形状において、
前記被覆部材の水平方向の断面形状を、車両の長手方向を長軸とする楕円弧状としたことを特徴とする高速走行車両における車外突起部材の被覆形状。 - 請求項1乃至請求項3に記載の高速走行車両における車外突起部材の被覆形状において、
前記車外突起部材は静電アンテナであることを特徴とする高速走行車両における車外突起部材の被覆形状。
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