JP2004273671A - 積層セラミックコンデンサの内部電極用材料 - Google Patents
積層セラミックコンデンサの内部電極用材料 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004273671A JP2004273671A JP2003061149A JP2003061149A JP2004273671A JP 2004273671 A JP2004273671 A JP 2004273671A JP 2003061149 A JP2003061149 A JP 2003061149A JP 2003061149 A JP2003061149 A JP 2003061149A JP 2004273671 A JP2004273671 A JP 2004273671A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- internal electrode
- ceramic capacitor
- multilayer ceramic
- metal
- metal compound
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Withdrawn
Links
Images
Landscapes
- Ceramic Capacitors (AREA)
Abstract
【課題】積層セラミックコンデンサは、例えば有機フィルム上に形成した内部電極をセラミックグリーンシートに転写し、このセラミックグリーンシートを複数枚積層することにより作製されるが、従来の有機金属化合物からなる内部電極用材料においては内部電極の形成に高温での熱処理が必要であり、上述したような有機フィルム上での内部電極の形成は有機フィルムを変形させるおそれがあり、また高温での熱処理を行うため金属酸化物が発生しやすいという課題がある。
【解決手段】積層セラミックコンデンサの内部電極を形成するための内部電極用材料であって、主としてベンゾイル金属化合物からなり、紫外線照射により内部電極用の金属を形成するものであることを特徴とする。
【選択図】 なし
【解決手段】積層セラミックコンデンサの内部電極を形成するための内部電極用材料であって、主としてベンゾイル金属化合物からなり、紫外線照射により内部電極用の金属を形成するものであることを特徴とする。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は積層セラミックコンデンサの内部電極を形成するために用いられる内部電極用材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子機器の大容量、小型化によって積層セラミックコンデンサの大容量、小型化が求められている。このような積層セラミックコンデンサは、例えば以下のようにして製造される。
【0003】
まず、コートフィルム上にスラリー状のセラミック誘電体ペーストを塗布し、加熱乾燥してセラミックグリーンシートを作製する。この上に内部電極となる金属ペーストをスクリーン印刷により塗布しパターン形成する。次いで、所定の区画に切断後、複数枚積層しプレスで圧着する。さらに、最小単位に切断して焼成した後、外部電極を装着して積層セラミックコンデンサとする。
【0004】
しかし、従来の金属ペーストは主として金属粉末からなるものであり、この金属粉末には微粒子であることが求められ、さらには有機結合剤中で容易に分散することが求められるが、このような金属粉末を製造することは容易でない。また、従来の金属粉末を用いた金属ペーストでは、内部電極の厚さを1.0μm以下にすることは困難である。
【0005】
そのため、上述したような金属ペーストに代えて、無電解メッキ法、または、蒸着法やスパッタ法等の薄膜形成法を用いて、厚さ1.0μm以下の内部電極を形成することも検討されている。これらの方法によって内部電極を形成する場合、例えば有機フィルム上に薄膜を形成し、それをセラミックグリーンシート上に転写するという手法が用いられる。
【0006】
しかし、いずれの方法においても高価な設備を要するという課題がある。また、無電解メッキ法ではメッキ液浸漬工程を経るため有機フィルム全体に金属が析出してしまうという課題があり、蒸着法やスパッタ法等の薄膜形成法では内部電極のパターニングにマスクを介して行うため、マスクに無駄な金属が析出し、廃棄金属量が多くなるという課題がある。
【0007】
このような課題を解決すべく、レジネート(有機金属化合物)を内部電極用材料として用いることが報告されており(例えば、特許文献1参照。)、本発明者らも卑金属であるニッケル内部電極の作製にこれを用いた例を報告している(例えば、特許文献2参照。)。
【0008】
【特許文献1】
特開平8−169788号公報
【特許文献2】
特開2002−324631号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の有機金属化合物を用いた内部電極の形成では高温での熱処理が必要であり、例えば有機フィルム上で内部電極を形成する場合、有機フィルムが変形するおそれがある。また、高温での熱処理中に金属酸化物が発生するおそれもある。
【0010】
本発明は上述したような課題を解決するためになされたものであって、小型かつ大容量な高性能積層セラミックコンデンサを安価に製造することが可能な積層セラミックコンデンサの内部電極用材料を提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、1.無電解メッキ法ならびに蒸着法およびスパッタ法等の薄膜形成法のように高価な設備を用いず、2.有機フィルムを変形させるような熱処理を行わず、かつ、3.パターン形成にフォトレジストを用いることなく内部電極を形成することを目的として、積層セラミックコンデンサの内部電極用材料として特定の金属化合物を用いたことを特徴とする。
【0012】
すなわち、本発明の積層セラミックコンデンサの内部電極用材料は、積層セラミックコンデンサの内部電極を形成するための内部電極用材料であって、主としてベンゾイル金属化合物からなることを特徴とする。
【0013】
前記ベンゾイル金属化合物を構成する金属は、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金、銀および金から選ばれる少なくとも1種の貴金属、および/または、チタン、ジルコニウム、バナジウム、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、コバルト、ニッケル、インジウム、スズ、ビスマスおよびセリウムから選ばれる少なくとも1種の卑金属であることが好ましい。
【0014】
前記積層セラミックコンデンサの内部電極用材料は、紫外線を照射することにより内部電極用の金属を遊離するものであることを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の積層セラミックコンデンサの内部電極用材料について説明する。
【0016】
本発明の積層セラミックコンデンサの内部電極用材料は、積層セラミックコンデンサの内部電極を形成するために用いられるものであり、主としてベンゾイル金属化合物からなることを特徴とする。
【0017】
本発明に用いられるベンゾイル金属化合物は積層セラミックコンデンサの内部電極となる金属を形成する金属前駆物質としての役割を有するものであり、下記一般式(1)で示されるものである。
【0018】
【化1】
【0019】
ここで、Mは金属原子を示し、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金、銀および金等の貴金属、チタン、ジルコニウム、バナジウム、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、コバルト、ニッケル、インジウム、スズ、ビスマスおよびセリウム等の卑金属である。
【0020】
また、R1、R2およびR3は、水素原子、アルコキシ基、チオエーテル基およびアルキルアミノ基等であり、R1、R2およびR3は全て同じものとしてもよいし、また全て異なるものとしてもよく、任意に組み合わせることができる。このような組み合わせの中でも特に好ましいものは、R1=OMeまたはSMe、R2およびR3=Hのような組み合わせである。なお、Meはメチル基を示す。また、nは金属に固有の値であり、1以上5以下の整数であることが好ましい。
【0021】
このベンゾイル金属化合物(1)からの金属の生成は、下記反応式Iに示すように、ベンゾイル金属化合物(1)に紫外線(波長250nm〜380nm)を照射することにより行われる。
【0022】
【化2】
【0023】
上記反応式I中、M(2)はベンゾイル金属化合物(1)から遊離した金属であり、内部電極となるものである。一般式(3)、(4)で示されるベンゾイル化合物は副生成物として生成したものであり、ベンゾイル化合物(4)中のRは水素原子、または、アルキル基、フェニル基等の一価の置換基である。ベンゾイル化合物(3)、(4)は、ベンゾイル金属化合物(1)のnの値によりいずれか一方のみが生成する場合あるいは両方が生成する場合がある。
【0024】
ベンゾイル金属化合物(1)に紫外線を照射するものとしては、例えば低圧、高圧あるいは超高圧水銀灯、キセノンランプおよびメタルハライドランプ等が好適に用いられる。
【0025】
このようなベンゾイル金属化合物(1)は、例えば下記反応式IIに示すように、ベンゾイルフェニルセレン(5)を出発物質として合成することができる。具体的には、例えばベンゼン溶媒中、ベンゾイルフェニルセレン(5)に2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、トリブチルスズヒドリドおよび金属化合物MXm(6)を作用させ、ベンゾイル金属化合物(1)を合成することができる。
【0026】
【化3】
【0027】
上記反応式II中、ベンゾイルフェニルセレン(5)の芳香族上の置換基であるR1、R2およびR3は、水素原子、アルコキシ基、チオエーテル基およびアルキルアミノ基等であり、R1、R2およびR3は全て同じものとしてもよいし、また全て異なるものとしてもよく、任意に組み合わせることができる。このような組み合わせの中でも特に好ましいものは、R1=OMeまたはSMe、R2およびR3=Hのような組み合わせである。
【0028】
また、金属化合物(6)のうち金属原子Mはロジウム、イリジウム、パラジウム、白金、銀および金等の貴金属、チタン、ジルコニウム、バナジウム、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、コバルト、ニッケル、インジウム、スズ、ビスマスおよびセリウム等の卑金属であり、XはF、Cl、Br、I、SO4、CO3、NO3、CH3CO2およびOH等である。
【0029】
本発明の積層セラミックコンデンサの内部電極用材料は、上述したベンゾイル金属化合物(1)のみからなるものであってもよいが、ベンゾイル金属化合物(1)の安定化のために配位子となるものを加えてもよい。このようなものとしては、ジアミン、ジホスフィン化合物等が挙げられ、例えばベンゾイル金属化合物(1)に対して等モル加えられる。具体的には、例えばN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンや1,2−ビス(ジメチルホスフィノ)エタンが好適に用いられる。
【0030】
また、本発明の積層セラミックコンデンサの内部電極用材料には、必要に応じて溶剤を加えてもよい。ベンゾイル金属化合物(1)を溶剤で溶解混合することにより、塗布作業性や得られる膜の均一性を向上させることができる。
【0031】
溶剤としてはベンゾイル金属化合物(1)を溶解することができるものであれば特に限定されるものではなく、例えばジオキサン、トルエン、エチルセロソルブ、シクロヘキサノン、ブチルセロソルブ、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジアセトンアルコール、α−テルピオネールおよびベンジルアルコールが挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。2種以上混合して用いる方が膜をより均一にできるため好ましい。
【0032】
次に、本発明の積層セラミックコンデンサの内部電極用材料を用いた積層セラミックコンデンサの製造方法について説明する。
【0033】
まず、セラミックグリーンシートへの内部電極の形成は、積層セラミックコンデンサの内部電極用材料をスクリーン印刷やインクジェット方式等でセラミックグリーンシート上に直接所望のパターンに塗布して感光性層を形成した後、これを露光し金属化することにより行うことができる。
【0034】
また、上述したように内部電極を直接セラミックグリーンシートへ形成する代わりに、離型性を有する基材、例えばPET基材上にスクリーン印刷やインクジェット方式等で所望のパターン状に塗布して感光性層を形成し、これを露光により金属化してシート状の内部電極を形成した後、セラミックグリーンシートに転写してもよい。
【0035】
感光性層の露光による金属化は、上記反応式Iで示されるように紫外線を照射することにより行われ、例えば低圧、高圧あるいは超高圧水銀灯、キセノンランプおよびメタルハライドランプ等が好適に用いられる。
【0036】
積層セラミックコンデンサの内部電極用材料を塗布するセラミックグリーンシートは特に制限されるものではなく、公知の材料、手段を用いて作製されるものを広く用いることができる。例えば、セラミックス粉末、有機バインダー樹脂、有機溶剤等を混合して得られるスラリーをドクターブレード法やカレンダ法でシート状に成形したものを用いることができる。
【0037】
上述のようにして内部電極が形成されたセラミックグリーンシートは例えば30〜500枚程度積層した後、所定の温度、時間で熱処理する。このようにして得られた焼成済積層体は、その両端部を研磨し、一方の端部については奇数番目の内部電極だけを露出させ、他端部では偶数番目の内部電極だけを露出させる。
【0038】
それぞれの端部に外部電極用ペーストを塗布して乾燥させた後、外部電極用ペーストを塗布して電気炉内で外部電極の焼結を行う。さらに、外部電極表面に半田付け性を向上させるためのニッケルメッキ、スズメッキを施して積層セラミックコンデンサとする。
【0039】
また、本発明の積層セラミックコンデンサの内部電極用材料を用いた積層セラミックコンデンサの製造においては、以下に説明するようにフォトマスクを用いたパターン形成法を用いることもできる。
【0040】
具体的には、図1に示すように、例えば離型処理を施したPET基材1上に積層セラミックコンデンサの内部電極用材料をスピンコート法等により塗布、乾燥して感光性層2を形成する。さらに、この感光性層2上にネガ状態のフォトマスク3を真空蒸着する。
【0041】
この状態で露光機により紫外線を露光し、図2に示すように、感光性層2うちフォトマスク3で覆われていない部分を金属化して内部電極4とする。さらに、フォトマスク3を取り除いた後、感光性層2を現像して金属化されなかった部分を取り除き内部電極4のみを残す。現像後のPET基材1は、図3に示すように、その表面が露出した状態となっている。このような現像は、所定の現像液を用いて行うことができる。
【0042】
現像液としては、例えばメタノール、エタノール、ペンタン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エステル、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ジメチルホルムアミドおよびN−メチルピロリジノン等が挙げられ、これらの中でもペンタン、ヘキサン、ベンゼンおよびトルエン等の炭化水素系溶媒が好ましく用いられる。
【0043】
表面を露出させたPET基材1は、専用リンス液によりその露出面を洗浄した後、図4に示すように、セラミックグリーンシート5を接触させて、図5に示すように、セラミックグリーンシート5に内部電極4を転写する。
【0044】
内部電極4とグリーンシート5との間には必要に応じてこれらを接着するための接着層を設けてもよい。接着層としては、例えばポリメタクリル酸メチル、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体またはエチレン−ビニルアルコール共重合体等からなるものが挙げられる。
【0045】
内部電極4が転写されたセラミックグリーンシート5は例えば30〜500枚程度積層した後、所定の温度、時間で熱処理する。このようにして得た焼成済積層体は、その両端部を研磨し、一方の端部については奇数番目の内部電極だけを露出させ、他端部では偶数番目の内部電極だけを露出させる。
【0046】
それぞれの端部に外部電極用ペーストを塗布して乾燥させた後、電気炉内で外部電極の焼結を行う。さらに、外部電極表面に半田付け性を向上させるためのニッケルメッキ、スズメッキを施して積層セラミックコンデンサを得ることができる。
【0047】
本発明の積層セラミックコンデンサの内部電極用材料を用いれば、無電解メッキやスパッタ等の薄膜形成法のように高価な設備を用いることなく極めて薄い内部電極を適切に形成することができる。
【0048】
また、内部電極の形成に熱処理を必要としないため有機フィルム上へ内部電極を形成して、これをセラミックグリーンシートに転写することも可能となる。また、フォトマスクを用いたパターン形成方法においては、ベンゾイル金属化合物がレジストの役割も兼ねるため、別途レジストを用いる必要もない。
【0049】
【実施例】
次に、本発明を実施例を参照して詳細に説明する。
【0050】
(実施例1)
p−チオメチルベンゾイルフェニルセレン(2g、6.5mmol)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(0.13g、0.79mmol)のベンゼン(100ml)溶液を還流後、トリブチルスズヒドリド(2.38g、8.2mmol)のベンゼン(30ml)溶液を1時間かけて滴下した。
【0051】
その後、30分還流し、室温に戻してから塩化ニッケル(0.42g、3.2mmol)のジメチルホルムアミド(30ml)懸濁液を加え、5時間攪拌した。溶媒を減圧下留去し、残さをベンゼンで洗浄、乾燥し、ビス(p−チオメチルベンゾイル)ニッケル(2.4g,100%)を得た。
【0052】
得られたビス(p−チオメチルベンゾイル)ニッケル40重量部をα−テルピオネール20重量部に80℃で溶解させて、内部電極用材料であるビス(p−チオメチルベンゾイル)ニッケル組成液を調整した。
【0053】
次に、BaTiO3を主成分とするセラミック誘電体粉末120重量部、ポリビニルブチラール樹脂30重量部、ブチルカルビトール150重量部およびフタル酸ジオクチル4重量部を配合し、チルドロールで混練してセラミック誘電体用スラリーを作製した。このセラミック誘電体用スラリーを用いてドクターブレード法により厚さ4μmまたは8μmの2種類のセラミックグリーンシートを作製した。
【0054】
セラミックグリーンシート上にビス(p−チオメチルベンゾイル)ニッケル組成液を印刷後、高圧水銀灯(80W/cm)を300mJ/cm2照射し金属化し乾燥後の膜厚が0.1〜1.5μmの内部電極を形成し、内部電極付きセラミックグリーンシートを作製した。
【0055】
このようにして作製されたセラミックグリーンシートを150枚積層し、1.0t/cm2の圧力で熱圧着しグリーン基板を作製した。
【0056】
さらに、このグリーン基板をチップ状に切断し、グリーンチップを得た。このグリーンチップを280℃の大気中で8時間脱脂した後、酸素濃度を制御したN2+H2雰囲気中、1250℃にて焼成処理を行った。さらに、外部電極としてCuペーストを塗布焼付けした後、ニッケル、スズを電気メッキして、内部電極厚み0.1〜1.5μm、セラミック誘電体層厚み4μmまたは8μm、積層数150層の積層セラミックコンデンサを作製した。
【0057】
(実施例2)
p−メトキシベンゾイルフェニルセレン(1.9g、6.5mmol)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(0.13g、0.79mmol)のベンゼン(100ml)溶液を還流後、トリブチルスズヒドリド(2.38g、8.2mmol)のベンゼン(30ml)溶液を1時間かけて滴下した。
【0058】
その後、30分還流し、室温に戻してから塩化ニッケル(0.42g、3.2mmol)のジメチルホルムアミド(30ml)懸濁液を加え、5時間攪拌した。溶媒を減圧下留去し、残さをベンゼンで洗浄、乾燥し、ビス(p−メトキシベンゾイル)ニッケル(2.1g,100%)を得た。
【0059】
得られたビス(p−メトキシベンゾイル)ニッケル40重量部をα−テルピオネール20重量部に80℃で溶解させて、内部電極用材料であるビス(p−メトキシベンゾイル)ニッケル組成液を調整した。
【0060】
このビス(p−メトキシベンゾイル)ニッケルを用いて、実施例1と同様にして内部電極付きセラミックグリーンシート、積層セラミックコンデンサを作製した。
【0061】
(実施例3)
実施例1で作製したものと同様の内部電極用材料ビス(p−チオメチルベンゾイル)ニッケル組成液を離型処理を施したPET基材上にドクターブレード法で塗布した。これに高圧水銀灯(80W/cm)を300mJ/cm2照射し金属化し乾燥後の膜厚が0.1〜1.5μmの内部電極を形成した。
【0062】
この内部電極が形成されたPET基材に実施例1と同様のセラミックグリーンシートを接触させ、PET基材からセラミックグリーンシートへ内部電極を転写し、内部電極付きセラミックグリーンシートを作製した。これを実施例1と同様に積層、焼成し積層セラミックコンデンサを作製した。
【0063】
(比較例1)
エチルセルロース樹脂10重量部を、α−テルピオネール90重量部中で90℃、4時間で溶解させ粘稠な樹脂を得た。この樹脂30重量部に、粒径0.5μm、比表面積1.9m2/g、タップ密度5.8g/cm2の球状ニッケル粉を50重量部、内部電極の焼結性を抑制するために粒径0.1μmのBaTiO3を10重量部、粘度調整用にブチルセロソルブ10重量部を混合し、さらにチルド三本ロールにより混練処理を行い、減圧脱泡して内部電極用材料であるニッケルペーストを製造した。
【0064】
このニッケルペーストを実施例1と同様のセラミックグリーンシート上に0.1〜1.5μmの厚さとなるように塗布、乾燥し、内部電極付きセラミックグリーンシートを作製した。これを実施例1と同様に積層、焼成し積層セラミックコンデンサを作製した。
【0065】
このようして作製した実施例1〜3、比較例1の積層セラミックコンデンサ1000個について断面研磨して内部欠陥発生率(%)を調べた。また、実施例1〜3、比較例1で作製した内部電極付きセラミックグリーンシート(セラミック誘電体厚み4μmまたは8μm、内部電極厚み0.1μm)と同様のものを脱脂、焼成したもの1000個について内部電極の剥離の有無を調べた。結果を表1および表2に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
表1、表2から明らかなように、本発明の積層セラミックコンデンサの内部電極用材料では、内部電極厚み0.1〜1.5μm、セラミック誘電体厚み4μm、8μmのときに150層以上積層しても内部欠陥の発生が少なく、金属ニッケル粉を用いた従来のニッケルペーストと比べて積層セラミックコンデンサの高積層化に有効であることが認められた。また、本発明の積層セラミックコンデンサの内部電極用材料は内部電極の剥離もなく、内部電極を形成するための材料として好適であることが認められた。
【0069】
以上、本発明について実施例を参照して具体的に説明したが、本発明はこのようなものに限定されるものではなく、本発明の趣旨に反しない範囲で各種の変更が可能なことは言うまでもない。
【0070】
【発明の効果】
本発明では、積層セラミックコンデンサの内部電極を形成するための内部電極用材料を主としてベンゾイル金属化合物からなるものとすることで、無電解メッキやスパッタ等の薄膜形成法のように高価な設備を用いることなく1μm以下といった極めて薄い内部電極を適切に形成することが可能となる。これにより積層セラミックコンデンサの小型化、大容量化が可能となる。
【0071】
また、従来の有機金属化合物のように熱処理を行う必要がないため、熱処理により変形しやすい有機フィルム上へ内部電極を形成した後、これをセラミックグリーンシートへ転写するといった方法を用いることも可能となり、また金属酸化物の発生も抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】基材上に感光性層およびをフォトマスクを形成した一例を示す断面図。
【図2】感光性層の一部を金属化した一例を示す断面図。
【図3】内部電極が形成された基板の一例を示す断面図。
【図4】内部電極とセラミックグリーンシートとを接触させた一例を示す断面図。
【図5】内部電極を転写したセラミックグリーンシートの一例を示す断面図。
【符号の説明】
1…基材 2…感光性層 3…フォトマスク 4…内部電極(金属化部分) 5…セラミックグリーンシート
【発明の属する技術分野】
本発明は積層セラミックコンデンサの内部電極を形成するために用いられる内部電極用材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子機器の大容量、小型化によって積層セラミックコンデンサの大容量、小型化が求められている。このような積層セラミックコンデンサは、例えば以下のようにして製造される。
【0003】
まず、コートフィルム上にスラリー状のセラミック誘電体ペーストを塗布し、加熱乾燥してセラミックグリーンシートを作製する。この上に内部電極となる金属ペーストをスクリーン印刷により塗布しパターン形成する。次いで、所定の区画に切断後、複数枚積層しプレスで圧着する。さらに、最小単位に切断して焼成した後、外部電極を装着して積層セラミックコンデンサとする。
【0004】
しかし、従来の金属ペーストは主として金属粉末からなるものであり、この金属粉末には微粒子であることが求められ、さらには有機結合剤中で容易に分散することが求められるが、このような金属粉末を製造することは容易でない。また、従来の金属粉末を用いた金属ペーストでは、内部電極の厚さを1.0μm以下にすることは困難である。
【0005】
そのため、上述したような金属ペーストに代えて、無電解メッキ法、または、蒸着法やスパッタ法等の薄膜形成法を用いて、厚さ1.0μm以下の内部電極を形成することも検討されている。これらの方法によって内部電極を形成する場合、例えば有機フィルム上に薄膜を形成し、それをセラミックグリーンシート上に転写するという手法が用いられる。
【0006】
しかし、いずれの方法においても高価な設備を要するという課題がある。また、無電解メッキ法ではメッキ液浸漬工程を経るため有機フィルム全体に金属が析出してしまうという課題があり、蒸着法やスパッタ法等の薄膜形成法では内部電極のパターニングにマスクを介して行うため、マスクに無駄な金属が析出し、廃棄金属量が多くなるという課題がある。
【0007】
このような課題を解決すべく、レジネート(有機金属化合物)を内部電極用材料として用いることが報告されており(例えば、特許文献1参照。)、本発明者らも卑金属であるニッケル内部電極の作製にこれを用いた例を報告している(例えば、特許文献2参照。)。
【0008】
【特許文献1】
特開平8−169788号公報
【特許文献2】
特開2002−324631号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の有機金属化合物を用いた内部電極の形成では高温での熱処理が必要であり、例えば有機フィルム上で内部電極を形成する場合、有機フィルムが変形するおそれがある。また、高温での熱処理中に金属酸化物が発生するおそれもある。
【0010】
本発明は上述したような課題を解決するためになされたものであって、小型かつ大容量な高性能積層セラミックコンデンサを安価に製造することが可能な積層セラミックコンデンサの内部電極用材料を提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、1.無電解メッキ法ならびに蒸着法およびスパッタ法等の薄膜形成法のように高価な設備を用いず、2.有機フィルムを変形させるような熱処理を行わず、かつ、3.パターン形成にフォトレジストを用いることなく内部電極を形成することを目的として、積層セラミックコンデンサの内部電極用材料として特定の金属化合物を用いたことを特徴とする。
【0012】
すなわち、本発明の積層セラミックコンデンサの内部電極用材料は、積層セラミックコンデンサの内部電極を形成するための内部電極用材料であって、主としてベンゾイル金属化合物からなることを特徴とする。
【0013】
前記ベンゾイル金属化合物を構成する金属は、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金、銀および金から選ばれる少なくとも1種の貴金属、および/または、チタン、ジルコニウム、バナジウム、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、コバルト、ニッケル、インジウム、スズ、ビスマスおよびセリウムから選ばれる少なくとも1種の卑金属であることが好ましい。
【0014】
前記積層セラミックコンデンサの内部電極用材料は、紫外線を照射することにより内部電極用の金属を遊離するものであることを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の積層セラミックコンデンサの内部電極用材料について説明する。
【0016】
本発明の積層セラミックコンデンサの内部電極用材料は、積層セラミックコンデンサの内部電極を形成するために用いられるものであり、主としてベンゾイル金属化合物からなることを特徴とする。
【0017】
本発明に用いられるベンゾイル金属化合物は積層セラミックコンデンサの内部電極となる金属を形成する金属前駆物質としての役割を有するものであり、下記一般式(1)で示されるものである。
【0018】
【化1】
【0019】
ここで、Mは金属原子を示し、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金、銀および金等の貴金属、チタン、ジルコニウム、バナジウム、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、コバルト、ニッケル、インジウム、スズ、ビスマスおよびセリウム等の卑金属である。
【0020】
また、R1、R2およびR3は、水素原子、アルコキシ基、チオエーテル基およびアルキルアミノ基等であり、R1、R2およびR3は全て同じものとしてもよいし、また全て異なるものとしてもよく、任意に組み合わせることができる。このような組み合わせの中でも特に好ましいものは、R1=OMeまたはSMe、R2およびR3=Hのような組み合わせである。なお、Meはメチル基を示す。また、nは金属に固有の値であり、1以上5以下の整数であることが好ましい。
【0021】
このベンゾイル金属化合物(1)からの金属の生成は、下記反応式Iに示すように、ベンゾイル金属化合物(1)に紫外線(波長250nm〜380nm)を照射することにより行われる。
【0022】
【化2】
【0023】
上記反応式I中、M(2)はベンゾイル金属化合物(1)から遊離した金属であり、内部電極となるものである。一般式(3)、(4)で示されるベンゾイル化合物は副生成物として生成したものであり、ベンゾイル化合物(4)中のRは水素原子、または、アルキル基、フェニル基等の一価の置換基である。ベンゾイル化合物(3)、(4)は、ベンゾイル金属化合物(1)のnの値によりいずれか一方のみが生成する場合あるいは両方が生成する場合がある。
【0024】
ベンゾイル金属化合物(1)に紫外線を照射するものとしては、例えば低圧、高圧あるいは超高圧水銀灯、キセノンランプおよびメタルハライドランプ等が好適に用いられる。
【0025】
このようなベンゾイル金属化合物(1)は、例えば下記反応式IIに示すように、ベンゾイルフェニルセレン(5)を出発物質として合成することができる。具体的には、例えばベンゼン溶媒中、ベンゾイルフェニルセレン(5)に2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、トリブチルスズヒドリドおよび金属化合物MXm(6)を作用させ、ベンゾイル金属化合物(1)を合成することができる。
【0026】
【化3】
【0027】
上記反応式II中、ベンゾイルフェニルセレン(5)の芳香族上の置換基であるR1、R2およびR3は、水素原子、アルコキシ基、チオエーテル基およびアルキルアミノ基等であり、R1、R2およびR3は全て同じものとしてもよいし、また全て異なるものとしてもよく、任意に組み合わせることができる。このような組み合わせの中でも特に好ましいものは、R1=OMeまたはSMe、R2およびR3=Hのような組み合わせである。
【0028】
また、金属化合物(6)のうち金属原子Mはロジウム、イリジウム、パラジウム、白金、銀および金等の貴金属、チタン、ジルコニウム、バナジウム、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、コバルト、ニッケル、インジウム、スズ、ビスマスおよびセリウム等の卑金属であり、XはF、Cl、Br、I、SO4、CO3、NO3、CH3CO2およびOH等である。
【0029】
本発明の積層セラミックコンデンサの内部電極用材料は、上述したベンゾイル金属化合物(1)のみからなるものであってもよいが、ベンゾイル金属化合物(1)の安定化のために配位子となるものを加えてもよい。このようなものとしては、ジアミン、ジホスフィン化合物等が挙げられ、例えばベンゾイル金属化合物(1)に対して等モル加えられる。具体的には、例えばN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンや1,2−ビス(ジメチルホスフィノ)エタンが好適に用いられる。
【0030】
また、本発明の積層セラミックコンデンサの内部電極用材料には、必要に応じて溶剤を加えてもよい。ベンゾイル金属化合物(1)を溶剤で溶解混合することにより、塗布作業性や得られる膜の均一性を向上させることができる。
【0031】
溶剤としてはベンゾイル金属化合物(1)を溶解することができるものであれば特に限定されるものではなく、例えばジオキサン、トルエン、エチルセロソルブ、シクロヘキサノン、ブチルセロソルブ、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジアセトンアルコール、α−テルピオネールおよびベンジルアルコールが挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。2種以上混合して用いる方が膜をより均一にできるため好ましい。
【0032】
次に、本発明の積層セラミックコンデンサの内部電極用材料を用いた積層セラミックコンデンサの製造方法について説明する。
【0033】
まず、セラミックグリーンシートへの内部電極の形成は、積層セラミックコンデンサの内部電極用材料をスクリーン印刷やインクジェット方式等でセラミックグリーンシート上に直接所望のパターンに塗布して感光性層を形成した後、これを露光し金属化することにより行うことができる。
【0034】
また、上述したように内部電極を直接セラミックグリーンシートへ形成する代わりに、離型性を有する基材、例えばPET基材上にスクリーン印刷やインクジェット方式等で所望のパターン状に塗布して感光性層を形成し、これを露光により金属化してシート状の内部電極を形成した後、セラミックグリーンシートに転写してもよい。
【0035】
感光性層の露光による金属化は、上記反応式Iで示されるように紫外線を照射することにより行われ、例えば低圧、高圧あるいは超高圧水銀灯、キセノンランプおよびメタルハライドランプ等が好適に用いられる。
【0036】
積層セラミックコンデンサの内部電極用材料を塗布するセラミックグリーンシートは特に制限されるものではなく、公知の材料、手段を用いて作製されるものを広く用いることができる。例えば、セラミックス粉末、有機バインダー樹脂、有機溶剤等を混合して得られるスラリーをドクターブレード法やカレンダ法でシート状に成形したものを用いることができる。
【0037】
上述のようにして内部電極が形成されたセラミックグリーンシートは例えば30〜500枚程度積層した後、所定の温度、時間で熱処理する。このようにして得られた焼成済積層体は、その両端部を研磨し、一方の端部については奇数番目の内部電極だけを露出させ、他端部では偶数番目の内部電極だけを露出させる。
【0038】
それぞれの端部に外部電極用ペーストを塗布して乾燥させた後、外部電極用ペーストを塗布して電気炉内で外部電極の焼結を行う。さらに、外部電極表面に半田付け性を向上させるためのニッケルメッキ、スズメッキを施して積層セラミックコンデンサとする。
【0039】
また、本発明の積層セラミックコンデンサの内部電極用材料を用いた積層セラミックコンデンサの製造においては、以下に説明するようにフォトマスクを用いたパターン形成法を用いることもできる。
【0040】
具体的には、図1に示すように、例えば離型処理を施したPET基材1上に積層セラミックコンデンサの内部電極用材料をスピンコート法等により塗布、乾燥して感光性層2を形成する。さらに、この感光性層2上にネガ状態のフォトマスク3を真空蒸着する。
【0041】
この状態で露光機により紫外線を露光し、図2に示すように、感光性層2うちフォトマスク3で覆われていない部分を金属化して内部電極4とする。さらに、フォトマスク3を取り除いた後、感光性層2を現像して金属化されなかった部分を取り除き内部電極4のみを残す。現像後のPET基材1は、図3に示すように、その表面が露出した状態となっている。このような現像は、所定の現像液を用いて行うことができる。
【0042】
現像液としては、例えばメタノール、エタノール、ペンタン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エステル、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ジメチルホルムアミドおよびN−メチルピロリジノン等が挙げられ、これらの中でもペンタン、ヘキサン、ベンゼンおよびトルエン等の炭化水素系溶媒が好ましく用いられる。
【0043】
表面を露出させたPET基材1は、専用リンス液によりその露出面を洗浄した後、図4に示すように、セラミックグリーンシート5を接触させて、図5に示すように、セラミックグリーンシート5に内部電極4を転写する。
【0044】
内部電極4とグリーンシート5との間には必要に応じてこれらを接着するための接着層を設けてもよい。接着層としては、例えばポリメタクリル酸メチル、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体またはエチレン−ビニルアルコール共重合体等からなるものが挙げられる。
【0045】
内部電極4が転写されたセラミックグリーンシート5は例えば30〜500枚程度積層した後、所定の温度、時間で熱処理する。このようにして得た焼成済積層体は、その両端部を研磨し、一方の端部については奇数番目の内部電極だけを露出させ、他端部では偶数番目の内部電極だけを露出させる。
【0046】
それぞれの端部に外部電極用ペーストを塗布して乾燥させた後、電気炉内で外部電極の焼結を行う。さらに、外部電極表面に半田付け性を向上させるためのニッケルメッキ、スズメッキを施して積層セラミックコンデンサを得ることができる。
【0047】
本発明の積層セラミックコンデンサの内部電極用材料を用いれば、無電解メッキやスパッタ等の薄膜形成法のように高価な設備を用いることなく極めて薄い内部電極を適切に形成することができる。
【0048】
また、内部電極の形成に熱処理を必要としないため有機フィルム上へ内部電極を形成して、これをセラミックグリーンシートに転写することも可能となる。また、フォトマスクを用いたパターン形成方法においては、ベンゾイル金属化合物がレジストの役割も兼ねるため、別途レジストを用いる必要もない。
【0049】
【実施例】
次に、本発明を実施例を参照して詳細に説明する。
【0050】
(実施例1)
p−チオメチルベンゾイルフェニルセレン(2g、6.5mmol)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(0.13g、0.79mmol)のベンゼン(100ml)溶液を還流後、トリブチルスズヒドリド(2.38g、8.2mmol)のベンゼン(30ml)溶液を1時間かけて滴下した。
【0051】
その後、30分還流し、室温に戻してから塩化ニッケル(0.42g、3.2mmol)のジメチルホルムアミド(30ml)懸濁液を加え、5時間攪拌した。溶媒を減圧下留去し、残さをベンゼンで洗浄、乾燥し、ビス(p−チオメチルベンゾイル)ニッケル(2.4g,100%)を得た。
【0052】
得られたビス(p−チオメチルベンゾイル)ニッケル40重量部をα−テルピオネール20重量部に80℃で溶解させて、内部電極用材料であるビス(p−チオメチルベンゾイル)ニッケル組成液を調整した。
【0053】
次に、BaTiO3を主成分とするセラミック誘電体粉末120重量部、ポリビニルブチラール樹脂30重量部、ブチルカルビトール150重量部およびフタル酸ジオクチル4重量部を配合し、チルドロールで混練してセラミック誘電体用スラリーを作製した。このセラミック誘電体用スラリーを用いてドクターブレード法により厚さ4μmまたは8μmの2種類のセラミックグリーンシートを作製した。
【0054】
セラミックグリーンシート上にビス(p−チオメチルベンゾイル)ニッケル組成液を印刷後、高圧水銀灯(80W/cm)を300mJ/cm2照射し金属化し乾燥後の膜厚が0.1〜1.5μmの内部電極を形成し、内部電極付きセラミックグリーンシートを作製した。
【0055】
このようにして作製されたセラミックグリーンシートを150枚積層し、1.0t/cm2の圧力で熱圧着しグリーン基板を作製した。
【0056】
さらに、このグリーン基板をチップ状に切断し、グリーンチップを得た。このグリーンチップを280℃の大気中で8時間脱脂した後、酸素濃度を制御したN2+H2雰囲気中、1250℃にて焼成処理を行った。さらに、外部電極としてCuペーストを塗布焼付けした後、ニッケル、スズを電気メッキして、内部電極厚み0.1〜1.5μm、セラミック誘電体層厚み4μmまたは8μm、積層数150層の積層セラミックコンデンサを作製した。
【0057】
(実施例2)
p−メトキシベンゾイルフェニルセレン(1.9g、6.5mmol)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(0.13g、0.79mmol)のベンゼン(100ml)溶液を還流後、トリブチルスズヒドリド(2.38g、8.2mmol)のベンゼン(30ml)溶液を1時間かけて滴下した。
【0058】
その後、30分還流し、室温に戻してから塩化ニッケル(0.42g、3.2mmol)のジメチルホルムアミド(30ml)懸濁液を加え、5時間攪拌した。溶媒を減圧下留去し、残さをベンゼンで洗浄、乾燥し、ビス(p−メトキシベンゾイル)ニッケル(2.1g,100%)を得た。
【0059】
得られたビス(p−メトキシベンゾイル)ニッケル40重量部をα−テルピオネール20重量部に80℃で溶解させて、内部電極用材料であるビス(p−メトキシベンゾイル)ニッケル組成液を調整した。
【0060】
このビス(p−メトキシベンゾイル)ニッケルを用いて、実施例1と同様にして内部電極付きセラミックグリーンシート、積層セラミックコンデンサを作製した。
【0061】
(実施例3)
実施例1で作製したものと同様の内部電極用材料ビス(p−チオメチルベンゾイル)ニッケル組成液を離型処理を施したPET基材上にドクターブレード法で塗布した。これに高圧水銀灯(80W/cm)を300mJ/cm2照射し金属化し乾燥後の膜厚が0.1〜1.5μmの内部電極を形成した。
【0062】
この内部電極が形成されたPET基材に実施例1と同様のセラミックグリーンシートを接触させ、PET基材からセラミックグリーンシートへ内部電極を転写し、内部電極付きセラミックグリーンシートを作製した。これを実施例1と同様に積層、焼成し積層セラミックコンデンサを作製した。
【0063】
(比較例1)
エチルセルロース樹脂10重量部を、α−テルピオネール90重量部中で90℃、4時間で溶解させ粘稠な樹脂を得た。この樹脂30重量部に、粒径0.5μm、比表面積1.9m2/g、タップ密度5.8g/cm2の球状ニッケル粉を50重量部、内部電極の焼結性を抑制するために粒径0.1μmのBaTiO3を10重量部、粘度調整用にブチルセロソルブ10重量部を混合し、さらにチルド三本ロールにより混練処理を行い、減圧脱泡して内部電極用材料であるニッケルペーストを製造した。
【0064】
このニッケルペーストを実施例1と同様のセラミックグリーンシート上に0.1〜1.5μmの厚さとなるように塗布、乾燥し、内部電極付きセラミックグリーンシートを作製した。これを実施例1と同様に積層、焼成し積層セラミックコンデンサを作製した。
【0065】
このようして作製した実施例1〜3、比較例1の積層セラミックコンデンサ1000個について断面研磨して内部欠陥発生率(%)を調べた。また、実施例1〜3、比較例1で作製した内部電極付きセラミックグリーンシート(セラミック誘電体厚み4μmまたは8μm、内部電極厚み0.1μm)と同様のものを脱脂、焼成したもの1000個について内部電極の剥離の有無を調べた。結果を表1および表2に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
表1、表2から明らかなように、本発明の積層セラミックコンデンサの内部電極用材料では、内部電極厚み0.1〜1.5μm、セラミック誘電体厚み4μm、8μmのときに150層以上積層しても内部欠陥の発生が少なく、金属ニッケル粉を用いた従来のニッケルペーストと比べて積層セラミックコンデンサの高積層化に有効であることが認められた。また、本発明の積層セラミックコンデンサの内部電極用材料は内部電極の剥離もなく、内部電極を形成するための材料として好適であることが認められた。
【0069】
以上、本発明について実施例を参照して具体的に説明したが、本発明はこのようなものに限定されるものではなく、本発明の趣旨に反しない範囲で各種の変更が可能なことは言うまでもない。
【0070】
【発明の効果】
本発明では、積層セラミックコンデンサの内部電極を形成するための内部電極用材料を主としてベンゾイル金属化合物からなるものとすることで、無電解メッキやスパッタ等の薄膜形成法のように高価な設備を用いることなく1μm以下といった極めて薄い内部電極を適切に形成することが可能となる。これにより積層セラミックコンデンサの小型化、大容量化が可能となる。
【0071】
また、従来の有機金属化合物のように熱処理を行う必要がないため、熱処理により変形しやすい有機フィルム上へ内部電極を形成した後、これをセラミックグリーンシートへ転写するといった方法を用いることも可能となり、また金属酸化物の発生も抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】基材上に感光性層およびをフォトマスクを形成した一例を示す断面図。
【図2】感光性層の一部を金属化した一例を示す断面図。
【図3】内部電極が形成された基板の一例を示す断面図。
【図4】内部電極とセラミックグリーンシートとを接触させた一例を示す断面図。
【図5】内部電極を転写したセラミックグリーンシートの一例を示す断面図。
【符号の説明】
1…基材 2…感光性層 3…フォトマスク 4…内部電極(金属化部分) 5…セラミックグリーンシート
Claims (3)
- 積層セラミックコンデンサの内部電極を形成するための内部電極用材料であって、主としてベンゾイル金属化合物からなることを特徴とする積層セラミックコンデンサの内部電極用材料。
- 前記ベンゾイル金属化合物を構成する金属は、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金、銀および金から選ばれる少なくとも1種の貴金属、および/または、チタン、ジルコニウム、バナジウム、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、コバルト、ニッケル、インジウム、スズ、ビスマスおよびセリウムから選ばれる少なくとも1種の卑金属であることを特徴とする請求項1記載の積層セラミックコンデンサの内部電極用材料。
- 前記積層セラミックコンデンサの内部電極用材料は、紫外線を照射することにより内部電極用の金属を遊離するものであることを特徴とする請求項1または2記載の積層セラミックコンデンサの内部電極用材料。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003061149A JP2004273671A (ja) | 2003-03-07 | 2003-03-07 | 積層セラミックコンデンサの内部電極用材料 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003061149A JP2004273671A (ja) | 2003-03-07 | 2003-03-07 | 積層セラミックコンデンサの内部電極用材料 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004273671A true JP2004273671A (ja) | 2004-09-30 |
Family
ID=33123442
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003061149A Withdrawn JP2004273671A (ja) | 2003-03-07 | 2003-03-07 | 積層セラミックコンデンサの内部電極用材料 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004273671A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2016148190A1 (ja) * | 2015-03-19 | 2016-09-22 | 並木精密宝石株式会社 | 基板とその製造方法、及び発光素子とその製造方法、及びその基板又は発光素子を有する装置 |
-
2003
- 2003-03-07 JP JP2003061149A patent/JP2004273671A/ja not_active Withdrawn
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2016148190A1 (ja) * | 2015-03-19 | 2016-09-22 | 並木精密宝石株式会社 | 基板とその製造方法、及び発光素子とその製造方法、及びその基板又は発光素子を有する装置 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP4468314B2 (ja) | 厚膜回路パターニング方法 | |
TWI240289B (en) | Laminated type parts for electronics and manufacturing method thereof | |
JP2007182547A (ja) | 高導電性インク組成物および金属導電パターンの作製方法 | |
JPS6361798B2 (ja) | ||
WO2015040934A1 (ja) | 金属パターン付樹脂材の製造方法及び金属パターン付樹脂材 | |
JP2004273671A (ja) | 積層セラミックコンデンサの内部電極用材料 | |
JP2002231574A (ja) | 積層型セラミック電子部品の製造方法および積層型セラミック電子部品 | |
KR102643291B1 (ko) | 감광성 조성물, 복합체, 전자 부품, 및 전자 부품의 제조 방법 | |
JPH0721833A (ja) | 導電性ペーストおよびそれを用いた多層セラミック電子部品の製造方法 | |
WO2019155819A1 (ja) | 感光性組成物とその利用 | |
JP2002097215A (ja) | ペースト状導電性樹脂組成物及びその焼結体の形成方法 | |
JP2005072452A (ja) | 積層型電子部品およびその製法 | |
JP5973479B2 (ja) | 導電膜を有する孔充填基板及びその製造方法並びに膨れ又は剥離抑制方法 | |
JP7113779B2 (ja) | 感光性組成物とその利用 | |
JP2002260954A (ja) | セラミックグリーン体およびセラミック電子部品の製造方法 | |
JP4639411B2 (ja) | ペースト組成物、電子部品およびセラミックグリーンシート、ならびに多層セラミック基板の製造方法 | |
TW202140576A (zh) | 感光性組成物、複合體、電子零件及電子零件的製造方法 | |
JP2000222940A (ja) | 感光性誘電ペ―スト | |
JP2016134424A (ja) | 多層配線基板の製造方法 | |
JP2006308805A (ja) | 感光性ペースト、厚膜パターンの形成方法、および電子部品の製造方法 | |
JP2004183027A (ja) | ニッケル粉末の製造方法、ニッケル粉末、導電性ペースト、及び積層セラミック電子部品 | |
WO2022191054A1 (ja) | 感光性組成物とその利用 | |
JP2005026479A (ja) | セラミック電子部品用電極ペースト | |
JP2001085264A (ja) | 積層セラミックコンデンサの製造方法 | |
CN1734349A (zh) | 介电片和光敏介电组合物及介电带的使用方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300 Effective date: 20060509 |