JP2004265678A - 非水電解質電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】フッ化炭素を活物質として含む正極と、カルシウムを活物質とする負極と、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドカルシウム等のカルシウムのイミド塩又はトリフルオロメタンスルホン酸カルシウム等のカルシウムのスルホン酸塩をエステル類、エーテル類、ニトリル類、アミド類等の有機溶媒に溶解した非水電解液を用いた非水電解質電池。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、非水電解質電池にかかり、特にカルシウムを活物質とする非水電解質電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、高エネルギー密度の二次電池として、非水電解液を使用し、リチウムイオンを正極と負極との間で移動させて充放電を行うようにした非水電解質二次電池の研究が盛んに行われている。
【0003】
近年、小型ビデオカメラ、携帯電話、ノートパソコン等の携帯用電子・通信機器等に用いられる電池として、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な合金もしくは炭素材料、珪素材料などを負極活物質とし、層状のコバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、あるいはスピネル型のマンガン酸リチウム(LiMn2O4)等のリチウム遷移金属複合酸化物を正極活物質材料とするとともに、エチレンカーボネートやジエチルカーボネートなどの有機溶媒にLiBF4やLiPF6等のリチウム塩からなる電解質を溶解させたものを用いたリチウムイオン電池で代表される非水電解質電池は、小型軽量でかつ高容量で充放電可能な電池として実用化が期待されている。
【0004】
また、フッ化炭素を正極活物質として用い、リチウム、ナトリウムなどのアルカリ金属よりなる負極と、非水電解質とを用いた電池も提案されている(特許文献1参照)
【0005】
その一方で、エネルギー密度という観点から、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属あるいはアルミニウムなどの軽金属を負極活物質として用いる研究が行われている。
【0006】
イオン伝導媒体としてリチウムイオンに代えてカルシウムイオンを用いた場合、反応電子数が大きくまた安価であるという利点がある。
【0007】
【特許文献1】
特公昭48−25566号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このようにカルシウムイオンを活物質として用いた電池も提案されているものの、実際に実現されているカルシウムイオンを活物質として用いた電池は、過塩素酸カルシウム(Ca(ClO4)2)などの過塩素酸塩を電解質として用いたものであった。
【0009】
しかし過塩素酸カルシウムは過酸化物の塩であり、化学的に不安定であって酸素を放出し易い性質をもっているため、実際に電解質として用いるには危険性が高く、このようなカルシウムの過酸化物塩を電解質として用いた非水電解質電池は、実用に供し得る程度のものではなかった。
【0010】
本発明は、前記実情に鑑みてなされたもので、高容量で、安全性の高い非水電解質電池を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明の非水電解質電池は、フッ化炭素を活物質として含む正極と、カルシウムを活物質とする負極と、カルシウムのイミド塩またはカルシウムのスルホン酸塩を含む電解質とを具備したことを特徴とする。
【0012】
かかる構成によれば、電解質として、過酸化物系ではなく、化学的に安定な物質であるカルシウムのイミド塩またはカルシウムのスルホン酸塩を用いているため、安全で高容量の非水電解質電池を提供することが可能となる。なお、非水電解質としてカルシウムのイミド塩またはカルシウムのスルホン酸塩を有機溶媒に溶解した形態であるのが望ましいが、カルシウムのイミド塩またはカルシウムのスルホン酸塩からなる固体電解質の形態であってもよい。
【0013】
カルシウムイオンの酸化還元電位は、以下に示すように、標準水素電極基準(Normal hydrogen electrode, NHE)に対して−2.866Vと低い。またCaイオン1モルの酸化あるいは還元に対して電子は2モル移動するため高エネルギー密度が期待できるイオン種である。
Ca2++2e−⇔Ca −2.866V vs.NHE
活物質として用いられるフッ化炭素は、CxF(x=1〜9)を用いることにより活物質の利用効率が高く、電位が平坦性に優れた高容量の正極活物質である。例えば正極にCF(x=1)を用いると、理論容量密度で約865mAh/gの高容量を期待することができる。
【0014】
また、本発明の非水電解質電池は、前記電解質が、カルシウムのスルホニルイミド塩を含むものを含み、これにより、安全かつ高容量の電池を実現することができる。
【0015】
前記カルシウムのスルホニルイミド塩としては、カルシウムのアルキルスルホニルイミド塩が望ましい。
【0016】
また、このカルシウムのアルキルスルホニルイミド塩としては、Ca[N(CF3SO2)2]2、Ca[N(C2F5SO2)2]2、Ca[(C4F9SO2) (CF3SO2)N] 2、Ca[(C6F5SO2) (CF3SO2)N]2、Ca[(C8F17SO2) (CF3SO2)N]2、Ca[N(CF3CH2OSO2)2]2、Ca[N(CF3CF2CH2OSO2)2]2、Ca[N(CF3)2CHOSO2)2]2から選択される少なくとも1種を含むのが望ましい。
【0017】
さらにまた、前記電解質としては、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドカルシウムCa[N(CF3SO2)2]2を含むものが特に望ましい。
【0018】
また、前記スルホン酸塩としては、アルキルスルホン酸塩が望ましい。
【0019】
また、このアルキルスルホン酸塩としては、Ca(CF3SO3)2、Ca(CH3SO3)2、Ca(C4F9SO3)2、Ca(C6F5SO3)2、Ca(C8F17SO3)2から選択される少なくとも1種を含むのが望ましい。
【0020】
また、前記電解質が、トリフルオロメタンスルホン酸カルシウムCa(CF3SO3)2を含むものがさらに望ましい。
【0021】
ここで、カルシウムのイミド塩あるいはスルホン酸塩は、一種類で使用してもよいが、また二種類以上を組み合わせて使用してもよい。なおこの電解質は有機溶媒に0.1から1.5M,好ましくは0.5〜1.5Mの濃度で溶解されて使用される。
この濃度を用いることにより、実験結果から安定で高容量の電池を提供できることがわかっている。
【0022】
非水電解質で用いられる有機溶媒(非水溶媒)としては、環状エステル、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステルなどのエステル類、環状エーテル、鎖状エーテル、ニトリル類、アミド類などがあげられる。環状炭酸エステルとしては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートなどがあげられ、これらの水素の一部または全部をフッ素化されているものも用いることが可能で、トリフルオロプロピレンカーボネートやフルオロエチルカーボネートなどがあげられる。鎖状炭酸エステルとしては、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネートなどがあげられ、これらの水素の一部または全部をフッ素化されているものも用いることが可能である。エステル類としては酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ−ブチルラクトンなどがあげられる。上記の環状エーテル類としては1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、1,4−ジオキサン、1,3,5−トリオキサン、フラン、2−メチルフラン、1,8−シネオール、クラウンエーテルなどがあげられる。また、鎖状エーテルとしては、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、メチルフェニルエーテル、エチルフェニルエーテル、ブチルフェニルエーテル、ペンチルフェニルエーテル、メトキシトルエン、ベンジルエチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、o−ジメトキシベンゼン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジメトキシメタン、1,1−ジエトキシエタン、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテルから選択される少なくとも1種を用いることができる。ニトリル類としては、アセトニトリル類、アミド類としてはジメチルホルムアミドなどである。また、これらを2種以上混合した混合溶媒も有効である。
【0023】
また、カルシウムを活物質とする負極すなわちカルシウムを吸蔵または放出可能な負極材料としては、炭素、珪素、カルシウム金属、カルシウム合金のうち少なくとも1種を含むものが望ましい。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
まず、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドカルシウムCa[N(CF3SO2)2]2をプロピレンカーボネート(PC)、γ−ブチルラクトン(γ―BL)およびエチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)の混合溶媒(体積比EC:DMC=50:50)に溶解させた非水電解質の導電率を測定した。その結果を表1に示す。
【0025】
一方、同様に、トリフルオロメタンスルホン酸カルシウムCa(CF3SO2)2についても、プロピレンカーボネート(PC)、γ−ブチルラクトン(γ―BL)およびエチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)の混合溶媒に溶解させた非水電解質の導電率を測定した。
【0026】
この結果を次表1に示す。この結果カルシウムのイミド塩であるCa[N(CF3SO2)2]2は、カルシウムのスルホン酸塩であるCa(CF3SO3)2に比べ導電率が高く、前者の方が優れている。
【0027】
【表1】
これらの実験結果から、Ca(CF3SO3)2 よりも、Ca[N(CF3SO2)2]2のほうが、導電率が高い。従って本発明の電池には,カルシウムのスルホン酸塩よりも、カルシウムのイミド塩が好適である。
【0028】
(実施例1)
1.正極の作製
活物質としてのフッ化炭素(CF)、導電剤としての炭素、結着剤としてのポリフッ化ビリニデン(PVDF)をそれぞれ重量比90:5:5で混合し、合剤とし、これにN−メチル−2−ピロリドンを加えスラリーを調製した。
【0029】
次いで、このスラリーを、正極集電体としてのアルミニウム箔の片面にドクターブレード法により塗布し、真空下において110℃で乾燥し、NMPを蒸散させ、正極(フッ化炭素を活物質として含む正極)を形成した。
【0030】
2.負極の作製
カルシウム金属板を所定の大きさにカットし、カルシウム金属(Ca)からなる対極としての負極(カルシウムを活物質とする負極)を作成した。
また、リチウム金属板を所定の大きさにカットし、リチウム金属からなる参照極を用意した。
【0031】
3.非水電解質の調製
トリフルオロプロピレンカーボネート溶媒に、電解質として1モル/リットルの、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドカルシウムCa[N(CF3SO2)2]2(カルシウムのイミド塩)を溶かして非水電解質を調製した。
【0032】
4.試験セルの作製
上述のようにして作製した正極にリードを取り付け、作用極としての正極12aとし、上述のようにして作製された負極にリードを取り付け、対極としての負極11とし、上述のようにして作製された参照極13とし、上記非水電解質14を試験セル容器10内に注液して図1に示すような試験セルを形成した。15はセパレータである。
【0033】
5.試験
上述のようにして作製した試験セルを、室温で電流密度0.025mA/cm2の定電流で参照極13に対する正極12aの電位が0.3V(vs.Li/Li+)になるまで定電流放電を行った。
このときの放電曲線を図2に示す。この放電曲線から、20mAh/g程度までは安定した放電電位を得ることが可能であることがわかる。
【0034】
(実施例2)
次に本発明の第2の実施例として、トリフルオロプロピレンカーボネートに代えて、γ−ブチルラクトン溶媒に、電解質として1モル/リットルの、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドカルシウムCa[N(CF3SO2)2]2を溶かして非水電解質を調製した他は、前記実施例1と同様にして非水電解質を調製した。
【0035】
そして他は前記実施例1と同様にしてセルを組み立てた。
電流密度0.025mA/cm2でLi/Li+電位に対して0.5Vまで定電流放電を行った。その放電曲線を図3に示す。この放電曲線から、300mAh/g程度までは安定した放電電位を得ることが可能であることがわかる。
【0036】
また、前記実施の形態では、非水電解質として、室温溶融塩および有機溶媒に電解質を溶解させた非水電解質を用いた非水電解質電池に適用した例について説明したが、固体電解質を用いたポリマー電池(高分子固体電解質電池)に適用することも可能である。
【0037】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明によれば、イミド系あるいはスルホン酸系の電解質を用いることにより安全で高容量の非水電解質電池を形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例の非水電解質電池の試験セルを示す斜視図である。
【図2】本発明実施例1の試験セルの放電曲線を示す図である。
【図3】本発明実施例2の試験セルの放電曲線を示す図である。
【符号の説明】
10 試験セル容器
11 負極
12a 正極
13 参照極
14 非水電解質
15 セパレータ
Claims (6)
- フッ化炭素を活物質として含む正極と、カルシウムを活物質とする負極と、カルシウムのイミド塩またはカルシウムのスルホン酸塩を含む電解質とを具備したことを特徴とする非水電解質電池。
- 前記カルシウムのイミド塩が、カルシウムのスルホニルイミド塩であることを特徴とする請求項1に記載の非水電解質電池。
- 前記カルシウムのスルホニルイミド塩が、カルシウムのアルキルスルホニルイミド塩であることを特徴とする請求項2に記載の非水電解質電池。
- 前記電解質が、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドカルシウムCa[N(CF3SO2)2]2を含むことを特徴とする請求項3に記載の非水電解質電池。
- 前記カルシウムのスルホン酸塩が、カルシウムのアルキルスルホン酸塩であることを特徴とする請求項1に記載の非水電解質電池。
- 前記カルシウムのアルキルスルホン酸塩が、トリフルオロメタンスルホン酸カルシウムCa(CF3SO3)2であることを特徴とする請求項5に記載の非水電解質電池。
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