JP2004262978A - 蛍光粉末の回収法 - Google Patents
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Abstract
【課題】蛍光灯管やディスプレーのブラウン管内部に蛍光粉末混合物には貴重な資源であるレアメタルが含まれ、それを簡単な工程で且つ経済的な手法で分離回収することを可能にする資源のリサイクル技術を提供する。
【解決手段】廃棄された蛍光管から回収された希土類元素を含む3波長の蛍光粉をその母結晶を実質的に溶解などせしめることなく3波長成分のそれぞれに分離する固体分離技術であり、液液分離により当該蛍光体粉末などの粉末混合物からそれぞれの蛍光体粉に分離回収せしめることを可能にする。本技術では、2−テノイルトリフルオロアセトン、酒石酸カリウムナトリウム、炭酸ナトリウム、n−ヘプタン、クロロホルム、N,N−ジメチルホルムアミド、ドデシルアミン、1−オクタンスルホン酸ナトリウム、エタノール、1−ペンタノール、水などを使用して簡単且つ経済的な方法で効率よく分離を達成できる。
【選択図】 なし
【解決手段】廃棄された蛍光管から回収された希土類元素を含む3波長の蛍光粉をその母結晶を実質的に溶解などせしめることなく3波長成分のそれぞれに分離する固体分離技術であり、液液分離により当該蛍光体粉末などの粉末混合物からそれぞれの蛍光体粉に分離回収せしめることを可能にする。本技術では、2−テノイルトリフルオロアセトン、酒石酸カリウムナトリウム、炭酸ナトリウム、n−ヘプタン、クロロホルム、N,N−ジメチルホルムアミド、ドデシルアミン、1−オクタンスルホン酸ナトリウム、エタノール、1−ペンタノール、水などを使用して簡単且つ経済的な方法で効率よく分離を達成できる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、蛍光灯管(ブラウン管を含む)内部に使用されている蛍光粉末混合粉の分離回収方法に関する。本発明は廃棄された蛍光管から回収された希土類元素を含む3波長の蛍光粉をその母結晶を実質的に溶解などせしめることなく3波長成分のそれぞれに分離する固体分離技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境上の問題や、資源の有効利用という観点からも、廃棄される蛍光管、TVやコンピューターのモニターのブラウン管などの処理がクローズアップされてきている。資源回収、リサイクル、環境汚染の防止の観点から廃蛍光管(ブラウン管を含む)は、現在、ガラス、枠の金属、水銀の一部についてはその分離回収がなされ始めてきている。
ところが、蛍光管の内部に被覆されている蛍光粉については、使用済みの蛍光粉は発光効率が劣化しているため、従来は再使用されていなかった。また、該蛍光粉の粒子の分離は難しく、それの回収など行わずに廃棄されるか、あるいは高温溶融炉に入れられているのが実情であった。
蛍光管の分野では、近年、蛍光灯やブラウン管の演色性改善のために、赤・青・緑の可視光領域に半値幅の狭いピークを有する希土類化合物を含む蛍光粉を用いた蛍光管が普及してきた。これら蛍光粉は、具体的には, 例えば、青色にはユーロピウム(Eu)イオン(II) 、緑色にはテルビウム(Tb)イオン(III)、赤色にはユーロピウムイオン(III)を含んでいる。これら希土類元素の資源は我が国ではそれが産出しないことから、もっぱら輸入に依存している。また、世界的にも希少な元素で、その産出も限られたものであることから、その元素含有化合物は一般に高価である。こうした事情から、使用済の蛍光管やブラウン管など、蛍光体を使用している廃棄物(大量にある)から、そこに含まれる希土類元素を有効利用すべく、該蛍光体を分離回収して再利用することが求められている。
【0003】
こうした再利用技術として、蛍光粉中の希少元素をその種類毎に分離する方法が提案され、例えば希土類金属元素含有物をメカノケミカル処理を施した後酸に溶出せしめて希土類金属化合物を抽出したり(特許文献1)、レアメタル成分含有の廃棄蛍光材に対してメカノケミカル処理を施した後酸に溶出せしめてレアメタル成分を選択分離する(特許文献2)といった手法や、蛍光粉を酸に溶出した後、共沈法によって分離する方法(非特許文献1)などが提案されている。しかし、いづれも、一旦、化合物を酸に溶解する必要があるので、あとで元の化合物に還元する処理が必要となり、コストがかかり経済的に有用な方法とは言えず、実用的でない。
【0004】
廃蛍光管から回収された蛍光粉は劣化のため輝度が低下しているが、このような蛍光粉の再生法として劣化した蛍光粉を還元雰囲気中で高温で焼成する事により再生する方法も提案されている(特許文献3)。この方法では酸などによる処理を行わないため、元の結晶形は保持されるとあり、さらに、最適処理温度は蛍光体の種類毎に異なるとされているが、蛍光体の種類毎の分離方法については述べられていない。
廃蛍光管からの蛍光粉の分離法には、浮遊選別法を用いた報告もあるが、その分離成績は良くない。
このように現在までのところ、希土類を含有する蛍光粉の微細な結晶形を保持したまま、その種類毎に高効率で分離回収する方法は提案されていない。
【0005】
【特許文献1】
特開平11−71111号公報
【特許文献2】
特開2000−192167号公報
【特許文献3】
特開2002−302670号公報
【非特許文献1】
高橋徹 他、資源と素材、118: 413−418 (2002)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
希土類元素は世界的にも産出量が少なく希少価値が高いため、従来、廃蛍光管等に含まれる希土類元素を有効利用すべく、該廃蛍光管から得られた蛍光体を再利用する方法が検討されている。しかしながら、従来の処理方法では、蛍光体から希土類元素を溶出させるとか、分離された成分を新たに蛍光体として再構成するなど化学的な処理を行うため、その工程が複雑となるばかりでなく、コストもかかることとなり、経済性も悪いという問題がある。さらに、該溶剤によって蛍光体の母結晶が溶解されてしまい、再生不可能になるという問題もある。
3波長のそれぞれの蛍光体、すなわち、青色蛍光体、緑色蛍光体、そして赤色蛍光体をその結晶形を損なう事なくそれぞれに効率よく分離した後それを再生することができれば、その再生処理が簡単になるばかりでなく、効率的な分離回収再生利用にとって非常に有利である。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記した課題に鑑み、本発明者等は鋭意研究を行った結果、微細粒子の混合粉を液液分離をして互いに分離できることを知見し、本発明に至った。
本発明は、
〔1〕 蛍光体粉末を液液分離により分離回収することを特徴とする蛍光体の回収方法;
〔2〕 (1) 出発物質が廃棄物であり、廃棄物中の蛍光体を分離回収処理に付すこと、及び/又は(2) 出発物質が、青色蛍光体粉末、赤色蛍光体粉末及び緑色蛍光体粉末を含有する粉末混合物であることを特徴とする上記〔1〕記載の蛍光体の回収方法;
〔3〕 (A) 水性溶液と油性溶液の間での液液分離を行う工程を含有するか、あるいは
(B) 界面活性剤を含有する油性溶液と極性化合物からなる有機溶液の間での液液分離を行う工程を含有する
ことを特徴とする上記〔1〕又は〔2〕記載の蛍光体の回収方法;
〔4〕 上記〔3〕の(A) において、(a) 水性溶液が、ヒドロキシ有機酸のアルカリ塩又はアルカリ土類塩を含有するもので、(b) 油性溶液が、(1)(i)硫黄、酸素又は窒素含有の複素環残基置換フッ化ジケトン化合物及び(ii)アルカン類から成る群から選ばれたものを含有するもの、及び/又は(2)(i)ハロゲン化炭化水素類及び(ii)アルカノール類から成る群から選ばれたものを含有するものであり、上記〔3〕の(B) において、界面活性剤が(c) 陽イオン界面活性剤で、及び/又は(d) 陰イオン界面活性剤で、油性溶液がアルカン類を含有するもので、極性化合物が酸アミドであることを特徴とする上記〔3〕記載の蛍光体の回収方法;
〔5〕 上記〔4〕の水性溶液(a) が、(i) 酒石酸カリウムナトリウム及び(ii)炭酸のアルカリ塩又はアルカリ土類塩から成る群から選ばれたものを含有するもので、油性溶液(1) が、2−テノイルトリフルオロアセトン及びn−ヘプタンから成る群から選ばれたものを含有するもので、油性溶液(2) が、クロロホルム及び1−ペンタノールから成る群から選ばれたものを含有するもので、陽イオン界面活性剤(c) が、ラウリルアミン及びステアリルアミンから成る群から選ばれたもので、陰イオン界面活性剤(d) が、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩及び1−オクタンスルホン酸ナトリウム塩から成る群から選ばれたものであることを特徴とする上記〔4〕記載の蛍光体の回収方法;
【0008】
〔6〕 蛍光体粉末を液液分離により分離回収する蛍光体の回収方法であって、(A) 第一のプロセスでは、酒石酸カリウムナトリウム及び炭酸ナトリウムを含有する水性溶液を水相とし、2−テノイルトリフルオロアセトンを含有するn−ヘプタン液を油相として使用し、該水相に蛍光体粉末混合物を混合した後該水相と該油相とを混合し、ついで水相と油相とに分離し、該油相から蛍光体粉末を取得し、第二のプロセスでは、該第一のプロセスで得られた水性溶液を水相とし、クロロホルムと1−ペンタノールとの混合物を油相として使用し、該水相と該油相とを混合し、ついで水相と油相とに分離し、油相及び水相からそれぞれ蛍光体粉末を取得するか、あるいは
(B) 第一のプロセスでは、ドデシルアミンを含有するn−ヘプタン液を油相とし、N,N−ジメチルホルムアミドを極性有機相として使用し、該極性有機相に蛍光体粉末混合物を混合した後該極性有機相と該油相とを混合し、ついで極性有機相と油相とに分離し、該油相から蛍光体粉末を取得し、第二のプロセスでは、該第一のプロセスで得られた極性有機相より回収した蛍光体粉末混合物をN,N−ジメチルホルムアミドに混合して極性有機相とし、1−オクタンスルホン酸ナトリウムを含有するn−ヘプタン液を油相として使用し、該極性有機相と該油相とを混合し、ついで極性有機相と油相とに分離し、油相及び極性有機相からそれぞれ蛍光体粉末を取得する
ことを特徴とする上記〔1〕〜〔5〕のいずれか一記載の蛍光体の回収方法;
〔7〕 上記〔6〕の(A) の第一のプロセスにおいては、1−ペンタノールを系に添加し、上記〔6〕の(B) の第二のプロセスでは、第一のプロセスで得られた極性有機相より回収した蛍光体粉末混合物をエタノールで洗浄した後分離処理する、及び/又は出発蛍光体粉末混合物が青色蛍光体粉末、赤色蛍光体粉末及び緑色蛍光体粉末を含有する粉末混合物であり、上記〔6〕の(A) の第一のプロセスでは油相から青色蛍光体粉末を得、該(A) の第二のプロセスでは油相から緑色蛍光体粉末を得、水相から赤色蛍光体粉末を得るもので、上記〔6〕の(B) の第一のプロセスでは油相から緑色蛍光体粉末を得、該(B) の第二のプロセスでは油相から青色蛍光体粉末を得、極性有機相から赤色蛍光体粉末を得るものであることを特徴とする上記〔6〕記載の蛍光体の回収方法;
【0009】
〔8〕 青色蛍光体粉末、赤色蛍光体粉末及び緑色蛍光体粉末を含有する粉末混合物を液液分離により各色の蛍光体粉末に分離して回収する方法であって、約1%の酒石酸カリウムナトリウムと約0.058%の炭酸ナトリウムを含有する水溶液を水相とし、0.25%の2−テノイルトリフルオロアセトンを含有するn−ヘプタン液を油相として使用し、蛍光粉混合物を水相中に入れ撹拌後、該水相と油相を約3:2の割合で混合し、少量の1−ペンタノールを添加した後撹拌し、水相と油相に分離した後、油相から青色蛍光粉を得、該水相は1−ペンタノールとクロロホルムの混合物(1−ペンタノール:クロロホルム=約1:4)を油相として使用して、水相と油相の割合約3:2で混合し、混合物を撹拌後油相と水相に分離し、油相から緑色蛍光粉を得、水相から赤色蛍光粉を得ることを特徴とする蛍光体の分離回収方法;
〔9〕 青色蛍光体粉末、赤色蛍光体粉末及び緑色蛍光体粉末を含有する粉末混合物を液液分離により各色の蛍光体粉末に分離して回収する方法であって、約1.7 ×10−4〜3×10−4 mol/Lの濃度のドデシルアミンアセテートを含有するn−ヘプタン液を油相とし、N,N−ジメチルホルムアミドを極性有機相として使用し、蛍光粉混合物を極性有機相中に入れ撹拌後、該極性有機相と油相を約1:1の割合で混合し、極性有機相と油相に分離した後、油相から緑色蛍光粉を得、極性有機相から残りの蛍光粉混合物を得、次いで該残りの蛍光粉混合物をエタノールで洗浄後極性有機相中に入れ撹拌し、得られた極性有機相は、約約2.5 ×10−3〜5 ×10−3 mol/Lの濃度の1−オクタンスルホン酸ナトリウムを含有するn−ヘプタン液を油相としして、極性有機相と油相の割合約1:1で混合し、混合物を撹拌後油相と極性有機相に分離し、油相から青色蛍光粉を得、極性有機相から赤色蛍光粉を得ることを特徴とする蛍光体の分離回収方法を提供する。
【0010】
本発明によると、例えば青色蛍光粉であるBaMgAl10O17:Eu2+と緑色蛍光粉であるCeMgAl10O17:Tb3+のようにきわめて性質の似た化合物同士を界面活性剤を適宜選択することにより溶媒抽出により水相あるいは極性溶媒相と有機相に分離する事が可能となる。
本発明のその他の目的、特徴、優秀性及びその有する観点は、以下の記載より当業者にとっては明白であろう。しかしながら、以下の記載及び具体的な実施例等の記載を含めた本件明細書の記載は本発明の好ましい態様を示すものであり、説明のためにのみ示されているものであることを理解されたい。本明細書に開示した本発明の意図及び範囲内で、種々の変化及び/又は改変(あるいは修飾)をなすことは、以下の記載及び本明細書のその他の部分からの知識により、当業者には容易に明らかであろう。本明細書で引用されている全ての特許文献及び参考文献は、説明の目的で引用されているもので、それらは本明細書の一部としてその内容はここに含めて解釈されるべきものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明は廃蛍光管中の蛍光粉をその結晶形がきわめて類似しているものまで含めて結晶形を損なう事なく高効率で固体のまま分離することを可能にしたものである。
本発明では、希土類元素などのレアメタルを所定の化合物形態として含んでおり、特定の演色作用を示す蛍光体の微細粉末混合物を液液分離をして、例えば3波長蛍光管などから得られる廃蛍光体混合物では、青色、緑色、赤色の各単色蛍光体粉末にそれぞれ分離する技術を提供する。
本明細書中、レアメタルとは、希土類元素を包含していてよく、該希土類元素とは原子番号57のLa(ランタン)から原子番号71のLu(ルテチウム)までの15元素と、化学的性質が類似するSc(スカンジウム)とY(イットリウム)の2元素を加えた17元素を総称するものを包含してよい。そして、蛍光管に使用される蛍光体にはY をはじめ、La、Eu、Ce、Tbなど多くのレアメタルが含まれている。
【0012】
廃棄される三波長高演色蛍光管等に含まれる蛍光体(以下、単に蛍光体という)は青色、緑色、赤色の各単色蛍光体が混合された粉末状の物質であり、代表的には、下記4種類の複合酸化物からなるものが挙げられる。
(1) 青色蛍光体・・・BaMgAl10O17:Eu2+や(Sr,Ca,Ba)10(PO4)6Cl2:Eu2+など、BaMgAl10O17 あるいは(Sr,Ca,Ba)10(PO4)6Cl2 を主体としたものにEu2+を含むもの
(2) 緑色蛍光体・・・LaPO4:Ce3+,Tb3+など、LaPO4 を主体としたものにCe3+,Tb3+ などを含むものやCeMgAl10O17:Tb3+など、CeMgAl10O17 を主体としたものにTb3+などを含むもの
(3) 赤色蛍光体・・・Y2O3:Eu3+など、Y2O3 を主体としたものにEu3+などを含むもの
こうした蛍光管等に使用される蛍光体は、Sn, Eu, Ce, Tb, Mn, Sr, Y, La などの元素をはじめとしたレアメタルを含むものである。
【0013】
本発明において、蛍光体の微細粉末混合物の液液分離としては、水性溶液と油性溶液の間での液液分離、界面活性剤を含有する油性溶液と極性化合物からなる有機溶液の間での液液分離が挙げられる。
本発明の液液分離において使用する液相を形成する液体媒質としては、分離の対象である微細粉末混合物の構成体たる物質の結晶を溶解して、あるいはその構成成分の一部を溶解するなどして、実質的に悪影響を与えることのないものが好ましく、そうしたものであれば当該分野で当業者に知られたもののうちから適宜選択してそれを使用することができるが、好ましくは好適な分離を助けるものが挙げられる。例えば、蛍光体を構成する物質が水不溶性のものである場合は、水、水性アルコール、炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類などの有機化合物などを使用することができるし、反対に蛍光体を構成する物質が水溶性のものである場合は、極性有機化合物、炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類などの有機化合物などを使用できる。液相中には、キレート化剤、金属捕捉剤、界面活性剤、pH調整剤、アルコール類などを添加して分離を促進することができる。
【0014】
先ず、水性溶液と油性溶液の間での液液分離で、青色、緑色、赤色の蛍光体微細粉末混合物を分離するプロセスを以下説明する。本プロセスによる分離は、分離対象物中にPO4 イオンなどの水溶性のものが含まれていない場合に好適に使用できる。
本分離の第一のプロセスでは、水性溶液、すなわち、水相として水酸基及び/又はカルボキシル基を有する有機化合物の水溶液を使用する。該有機化合物としては、所要の分離性状の得られるものが好ましく、そうしたものであれば当該分野で当業者に知られたもののうちから適宜選択してそれを使用することができるが、好ましくは複数の水酸基及び/又は複数のカルボキシル基を有する有機化合物が挙げられる。該有機化合物の代表的なものとしては、炭素数1〜10個程度を有するものが挙げられるが、例えば酒石酸などは好ましい。該有機化合物がカルボキシル基を有する場合、該化合物は塩であってよく、該塩としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属などとの塩が挙げられる。本発明においては、酒石酸カリウムナトリウムを特に好適に使用できる。該化合物の水溶液中の濃度は、至適の分離を達成できるように実験を行って決定することができるが、例えば酒石酸カリウムナトリウムを使用した場合、約0 〜3.0%の濃度とすることができ、好ましいものとしては約0.2 〜1.5%の濃度であり、特には約0.5 〜1.0%の濃度である。
【0015】
水相にはpH調整剤を添加しておくことができ、また適切なpH調整剤の添加は分離を好ましいものとする。該pH調整剤としては、酸、アルカリ、塩などが挙げられ、例えば水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムなどが挙げられる。本発明においては、炭酸ナトリウムを特に好適に使用できる。
水相は、適宜適切な値に調整できるが、好ましくは所要の分離性状の得られるものがよく、例えばpH5〜12の範囲が挙げられ、好ましくはpH7〜11の範囲であり、特に好適にはpH約9〜10.5の範囲が挙げられる。好ましい代表的な場合ではpH10.3である。
油性溶液、すなわち、油相として、青色、緑色、赤色の蛍光体のうちのいずれか一つに特異的な構成元素あるいは特異的な構造(例えば、結晶形など)に対して親和性を有する試薬、例えばキレート化剤、金属捕捉剤、又は界面活性剤を溶媒に添加したものを使用する。代表的な場合、硫黄、酸素又は窒素含有の複素環残基置換フッ化ジケトン化合物を使用できる。本発明においては、2−テノイルトリフルオロアセトンを特に好適に使用できる。該化合物の溶媒中の濃度は、至適の分離を達成できるように実験を行って決定することができるが、例えば2−テノイルトリフルオロアセトンを使用した場合、約1.0 〜50 g/Lの濃度とすることができ、好ましいものとしては約1.5 〜10 g/Lの濃度であり、より好ましいものとしては約2.0 〜3 g/L の濃度であり、特には約2.5 g/L の濃度である。
【0016】
油相の溶媒としては、水混和性の無いものが好適に使用でき、所要の分離性状の得られるものが好ましく、そうしたものであれば当該分野で当業者に知られたもののうちから適宜選択してそれを使用することができるが、好ましいものとしては炭化水素類が挙げられる。炭化水素類としては、直鎖状又は分岐状及び/又は飽和又は不飽和のものであってよいが、好ましくは直鎖状又は分岐状で飽和の炭化水素類が挙げられる。該炭化水素類の炭素数は、好適には常温で液体のものが適宜選択使用できるのでそうした範囲のものであればよいが、好ましくは炭素数5〜16を有するものが挙げられる。該炭化水素類は、例えばn−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−デカン、n−ドデカン、n−ヘキサデカンなどから選択することができ、特に好適にn−ヘプタンを選択できる。
本分離の第一のプロセスでは、分離を補助するためにアルコール類を系に添加することができるし、好ましい場合がある。添加するアルコール類としては、当該分野で当業者に知られたもののうちから適宜選択してそれを使用することができるが、好ましくは1−ペンタノールが挙げられる。
【0017】
典型的な第一のプロセスでは、水に酒石酸カリウムナトリウムを1%とNa2CO3 を0.058%溶解させて水性液(水相)としたものに対して、三波長高演色蛍光管等に含まれる蛍光体の青色、緑色、赤色の混合物を混入せしめ、撹拌する。
次にこうして得られた水相を、0.25%の2−テノイルトリフルオロアセトンのn−ヘプタン溶液の油性液(有機相)と混合する。該水相と有機相との割合は、所要の分離性状の得られるものであればよいが、至適の分離を達成できるように実験を行って決定することができる。該水相と有機相との代表的な割合は、3:2である。また、溶液に添加する混合粉の量は、至適の分離を達成できるように実験を行って決定することができるが、代表的には水相と有機相をあわせた溶液に対して約3%である。分離を効果的にするために1−ペンタノールを少量添加することができる。全体を撹拌した後静置する。本第一のプロセスでは、有機相中に青色蛍光粉のみが抽出され、その有機相をろ過した後、乾燥して青色蛍光粉体を得る。一方、有機相を除去した後の水相には緑色と赤色の蛍光粉体混合物が残存する。該水相は本分離の第二のプロセスに付される。
【0018】
本分離の第二のプロセスでは、水性溶液、すなわち、水相として上記第一のプロセスで得られた水相を使用することができる。本第二のプロセスで使用される油性溶液、すなわち、油相としては、好適には緑色蛍光体に親和性を有するもの、あるいは赤色蛍光体への親和性を欠いたものであって、通常液体のものが使用でき、例えば水混和性の無いものが好適に使用でき、所要の分離性状の得られるものが好ましく、そうしたものであれば当該分野で当業者に知られたもののうちから適宜選択してそれを使用することができるが、好ましいものとしてはハロゲン化炭化水素類及び水酸基含有炭化水素類から成る群から選ばれたものが挙げられる。ハロゲン化炭化水素類としては、クロロホルムが好適なものとして挙げられる。水酸基含有炭化水素類としては、好適にはハロゲン化炭化水素類と混和性のものが挙げられ、例えば1−ペンタノールが好適なものとして挙げられる。好ましい油相としては、ハロゲン化炭化水素と水酸基含有炭化水素との混合物が挙げられ、特に好ましい油相としては、1−ペンタノールとクロロホルムの混合物である。油相として溶媒を混合して用いる場合、その比率は所要の分離性状の得られるものであればよいが、至適の分離を達成できるように実験を行って決定することができる。例えば1−ペンタノールとクロロホルムの混合の割合としては、1:4あるいはそれに類似した範囲が特に好ましい。
【0019】
典型的な本分離の第二のプロセスでは、上記第一のプロセスで得られた水相(緑色蛍光粉体と赤色蛍光粉体とを含有)を、1:4の割合で1−ペンタノールとクロロホルムとを混合した油相液と混合し、得られた混合物を撹拌する。該水相と有機相との割合は、所要の分離性状の得られるものであればよいが、至適の分離を達成できるように実験を行って決定することができる。該水相と有機相との代表的な割合は、3:2である。全体を撹拌した後静置する。本第二のプロセスでは、有機相中に緑色蛍光粉のみが入り、水相には赤色蛍光粉が残り、分離が達成される。
【0020】
次に、極性化合物からなる有機溶液と油性溶液の間での液液分離で、青色、緑色、赤色の蛍光体微細粉末混合物を分離するプロセスを以下説明する。
本分離の第一のプロセスでは、有機溶液、すなわち、有機相として、極性化合物を使用することができる。該極性化合物としては、極性のある有機化合物として当該分野で当業者に知られたもののうちから適宜選択してそれを使用することができるが、好ましくは酸アミド類が挙げられる。該酸アミド類の代表的なものとしては、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド(DMF) などのモノアルキル又はジアルキルホルムアミドなどが挙げられるが、例えばDMF などは好ましい。
油性溶液、すなわち、油相としては、界面活性剤を溶媒に添加したものを使用する。代表的な場合、陽イオン界面活性剤を使用できる。該陽イオン界面活性剤としては、アミノ基を含有する有機化合物が好適に使用でき、例えば、ラウリルアミン (n−ドデシルアミン) 、テトラドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ステアリルアミン (n−オクタドデシルアミン) などを好ましく使用できるが、n−ドデシルアミンを特に好適に使用できる。該化合物の溶媒中の濃度は、至適の分離を達成できるように実験を行って決定することができるが、例えばn−ドデシルアミンアセテートを使用した場合、約 0.5×10−4〜 7×10−4 mol/Lの濃度とすることができ、好ましいものとしては約1×10−4〜5×10−4 mol/Lの濃度であり、より好ましいものとしては約1.5 ×10−4〜4 ×10−4 mol/Lの濃度であり、特には約1.7 ×10−4〜3×10−4 mol/Lの濃度である。代表的なn−ドデシルアミンの濃度としては、約1.85×10−4 mol/Lである。
【0021】
油相の溶媒としては、上記極性有機相との混和性の無いものが好適に使用でき、所要の分離性状の得られるものが好ましく、そうしたものであれば当該分野で当業者に知られたもののうちから適宜選択してそれを使用することができるが、好ましいものとしては炭化水素類が挙げられる。炭化水素類としては、直鎖状又は分岐状及び/又は飽和又は不飽和のものであってよいが、好ましくは直鎖状又は分岐状で飽和の炭化水素類が挙げられる。該炭化水素類の炭素数は、好適には常温で液体のものが適宜選択使用できるのでそうした範囲のものであればよいが、好ましくは炭素数5〜16を有するものが挙げられる。該炭化水素類は、例えばn−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−デカン、n−ドデカン、n−ヘキサデカンなどから選択することができ、特に好適にn−ヘプタンを選択できる。
【0022】
典型的な第一のプロセスでは、DMF を有機相とし、これに対して、三波長高演色蛍光管等に含まれる蛍光体の青色、緑色、赤色の混合物を混入せしめ、撹拌する。液に添加する混合粉の量は、至適の分離を達成できるように実験を行って決定することができるが、代表的には約6重量%となるようにすればよい。
次にこうして得られた有機相を、約1.7 ×10−4〜3×10−4 mol/Lの濃度でn−ドデシルアミンアセテートを含有するn−ヘプタン溶液の油性液(油相)と混合する。該油相と有機相との割合は、所要の分離性状の得られるものであればよいが、至適の分離を達成できるように実験を行って決定することができる。該油相と有機相との代表的な割合は、1:1である。全体を撹拌した後静置する。本第一のプロセスでは、比重の低いヘプタン相(油相)は上部に、比重の大きいDMF 相(有機相)は下部にいき、上部のヘプタン相に緑色青色蛍光粉のみが抽出され、その油相をろ過した後、乾燥して緑色蛍光粉体を得る。一方、油相を除去した後のDMF 有機相には青色と赤色の蛍光粉体混合物が残存する。該DMF 有機相をろ過することにより、それより青色蛍光粉と赤色蛍光粉との粉体混合物を得る。この粉体混合物は、適宜洗浄後乾燥される。本分離では、該DMF 有機相のろ過により得られた粉体混合物は、例えばエタノールなどのアルコール類でよく洗った後ろ過して、乾燥される。該粉体混合物は本分離の第二のプロセスに付される。
【0023】
本分離の第二のプロセスでは、有機溶液、すなわち、有機相として、上記第一のプロセスの極性化合物を使用することができる。該極性化合物としては、例えばDMF などは好ましい。
油性溶液、すなわち、油相としては、界面活性剤を溶媒に添加したものを使用する。代表的な場合、陰イオン界面活性剤を使用できる。該陰イオン界面活性剤としては、スルホン酸を含有する有機化合物が好適に使用でき、例えば、脂肪族炭化水素残基あるいは芳香族炭化水素残基を有するスルホン酸などが挙げられ、例えばアルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩などが挙げられ、好ましくは1−オクタンスルホン酸ナトリウム、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどであり、1−オクタンスルホン酸ナトリウムを特に好適に使用できる。該化合物の溶媒中の濃度は、至適の分離を達成できるように実験を行って決定することができるが、例えば1−オクタンスルホン酸ナトリウムを使用した場合、約1×10−3〜10×10−3 mol/Lの濃度とすることができ、好ましいものとしては約1.5 ×10−3〜8 ×10−3 mol/Lの濃度であり、より好ましいものとしては約 2×10−3〜5 ×10−3 mol/Lの濃度であり、特には約3 ×10−3 mol/Lの濃度である。
【0024】
油相の溶媒としては、上記第一のプロセスのものと同様なものを使用することができる。該該炭化水素類は、例えばn−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−デカン、n−ドデカン、n−ヘキサデカンなどから選択することができ、特に好適にn−ヘプタンを選択できる。
典型的な第二のプロセスでは、DMF を有機相とし、これに対して、上記 第一のプロセスで得られた青色蛍光粉と赤色蛍光粉との粉体混合物を混入せしめ、撹拌する。次にこうして得られた有機相を、約0.05% の濃度で1−オクタンスルホン酸ナトリウムを含有するn−ヘプタン溶液の油性液(油相)と混合する。該油相と有機相との割合は、所要の分離性状の得られるものであればよいが、至適の分離を達成できるように実験を行って決定することができる。該油相と有機相との代表的な割合は、1:1である。混合液中の添加された混合粉の量は、至適の分離を達成できるように実験を行って決定することができるが、代表的には混合液に対して約2重量%である。全体を撹拌した後静置する。本第二のプロセスでは、上相のヘプタン相(油相)に、青色蛍光粉のみが抽出され、下相のDMF 相(有機相)に赤色蛍光粉のみが抽出される。それぞれの相を分けた後ろ過し乾燥することで、青色蛍光体粉末と赤色蛍光体粉末とが分離回収される。
【0025】
廃棄蛍光管からレアメタル成分を含有している蛍光体を取出す際は、予め金具と管内の水銀成分を除き、全体を粗砕して蛍光体を機械的に分離してからこれを分離処理にかけるのが望ましい。通常の蛍光管であれば二つ折り程度にすると蛍光体が一部剥離し、ガラス破片も多少同伴する。さらに、折れた蛍光管に振動を与えると蛍光体が95%以上剥離してくる。これをたとえば200メッシュ(目開き74ミクロン)のふるいにかけると、供給した70%程度にあたる蛍光体が殆ど回収され、ガラス成分が分離される。得られた蛍光体はさらに粉砕して微粉末にすることができる。かくして、青色蛍光体、赤色蛍光体および緑色蛍光体が混合した状態で回収される。
このように、分離回収用蛍光体は、通常廃蛍光管などとして廃棄され、回収されるものであるため、本発明の分離回収処理を行うにあたっては、まず前処理を行うことにより処理対象である蛍光体のみを分離、回収しておくことが好ましい。例えば、廃蛍光管より蛍光体のみを回収するには、上記したように該廃蛍光管を切断あるいは破砕することにより蛍光体を含む粉状物を金属およびガラスより分離回収し、分離回収された粉状物から蒸留等によって水銀を除去することにより、蛍光体のみを回収するなどしておくことができる。
本方法は希土類化合物を含む蛍光粉の分離に限定される訳ではなく、あらゆる金属元素を含む化合物の微細粒子の混合粉の分離に適用できる。
【0026】
【実施例】
以下に実施例を掲げ、本発明を具体的に説明するが、この実施例は単に本発明の説明のため、その具体的な態様の参考のために提供されているものである。これらの例示は本発明の特定の具体的な態様を説明するためのものであるが、本願で開示する発明の範囲を限定したり、あるいは制限することを表すものではない。本発明では、本明細書の思想に基づく様々な実施形態が可能であることは理解されるべきである。
全ての実施例は、他に詳細に記載するもの以外は、標準的な技術を用いて実施したもの、又は実施することのできるものであり、これは当業者にとり周知で慣用的なものである。
【0027】
実施例1
3色の蛍光粉、すなわち
(1) 赤色蛍光粉(Y2O3を主体にEu3+を含むもの)、
(2) 青色蛍光粉(BaMgAl10O17 を主体にEu2+を含むもの)、そして
(3) 緑色蛍光粉(CeMgAl10O17 を主体にTb3+を含むもの)
の混合物(約数μmサイズの微粉末の混合物)につき、水溶液と油層による液液分離を行った。
先ず、実験用の模擬試料混合粉(赤色、青色、緑色の蛍光粉をそれぞれ1:1:1の重量比で混合したもの)を作製し、分離のための模擬試料として使用した。2−テノイルトリフルオロアセトン(TTA, CF3COCH2COC4H3S)を0.25%の濃度となるようにn−ヘプタン(CH3(CH2)5CH3)中に溶解させ油性液(有機相)とする。水に酒石酸カリウムナトリウム(PST, KNaC4H4O6・4H2O)を1%とNa2CO3を0.058%溶解させて水性液(水相)とする。
【0028】
3色の蛍光粉の混合物(混合粉)を水相中に入れ、1〜2分間撹拌する。その後、水相と前述の有機相を3:2の割合で混合する。溶液に添加する混合粉の量は水相と有機相をあわせた溶液に対して約3%である。これに1−ペンタノール(CH3(CH2)4OH) を0.05ml添加することで、より分離が効果的になる。つぎに5分間撹拌する。油性溶液側(ヘプタン有機相中)に青色蛍光粉のみが抽出され、その油性溶液をろ過した後、乾燥して青色蛍光粉体を得る。
一方、ヘプタン有機相を除去した混合粉を含む水相は次のように処理して、それから緑色蛍光粉と赤色蛍光粉とに分離する。まず、油性液(有機相)として1−ペンタノールとクロロホルム(CHCl3) を1:4に混合したものを使用する。その有機相を該水相と混合する。水相と有機相の割合を3:2とし、混合物を撹拌すると、緑色蛍光粉のみが有機相に入り、水相の赤色蛍光粉と分離できる。
3種の蛍光粉を人工的に1:1:1で混合したものに対して、本処理法に従って分離した結果を表1に示す。本処理法の蛍光粉混合物の分離フローシート1を図1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
実施例2
3色の蛍光粉、すなわち
(1) 赤色蛍光粉(Y2O3を主体にEu3+を含むもの)、
(2) 青色蛍光粉((Sr,Ca,Ba)10(PO4)6Cl2 を主体にEu2+を含むもの)、そして
(3) 緑色蛍光粉(LaPO4 を主体にTb3+,Ce3+ を含むもの)
の混合物(約数μmサイズの微粉末の混合物)につき、有機相と油層による液液分離を行った。
先ず、実験用の模擬試料混合粉(赤色、青色、緑色の蛍光粉をそれぞれ1:1:1の重量比で混合したもの)を作製し、分離のための模擬試料として使用した。ドデシルアミンアセテート(DAA, CH3(CH2)10CH2NH・CH3COOH)を1.7 ×10−4〜3×10−4 mol/Lとなるようにn−ヘプタン(CH3(CH2)5CH3)中に溶解させ、油性層(ヘプタン相)とする。ヘプタンと同量のN,N−ジメチルホルムアミド(DMF, HCON(CH3)2) を用意し、これを有機相として使用する。
【0031】
蛍光粉の混合物(混合粉) を6%重量、DMF 中に入れ、1〜2分間撹拌する。その後、ヘプタン相を混合し5分間撹拌する。比重の低いヘプタン相は上部に、比重の重いDMF 相は下部に移動する。このとき、緑色蛍光粉のみがヘプタン相中に抽出される。分離した上相をろ過した後乾燥し、緑色蛍光粉が得られる。
一方、下相をろ過して赤色および青色蛍光粉の混合粉が得られる。この混合粉から試薬を洗浄するために粉の25倍重量のエタノールでよく洗浄してからろ過し、乾燥して混合粉を得る。この混合粉をDMF に入れて撹拌する。これに1−オクタンスルホン酸ナトリウム(CH3(CH2)7SO3Na)を0.05%溶解したヘプタンをDMF相と同量入れて、5分間かくはんする。混合液体に入っている混合粉の量は約2%重量である。上相のヘプタン相には青色蛍光粉が、下相のDMF 相には赤色蛍光粉が入り、それぞれろ過後乾燥して、分離した粉が得られる。3種の蛍光粉を人工的に1:1:1で混合したものを分離した結果を表2に示す。本処理法の蛍光粉混合物の分離フローシート2を図2に示す。
【0032】
【表2】
【0033】
実際の蛍光管から回収した蛍光粉混合物を試料として用いて本分離を同様にして行った。各種蛍光粉の結合剤として使用されたわずかなアルミナ(Al2O3)が部分的にその結合に関与していた。このアルミナを希薄ふっ酸、あるいは酸により処理することで、混合蛍光粉相互の結合をはずし単体分離させた。この蛍光粉を上記と同様な分離方法を試みたところ良好な相互分離ができ、緑色、赤色、青色の各種蛍光粉を分離回収することができた。
このように高効率の品位、分布率で回収された各種色の蛍光粉は、必要によりそれぞれを再生し、再度、ブレンドして新しい蛍光管に粉のまま入れて使用でき、エネルギー的にも経済的にも重要なリサイクル手法と考えられる。
【0034】
実施例3
純粋な3色の蛍光粉、すなわち(1) 赤色蛍光粉(Y2O3:Eu3+) 、(2) 青色蛍光粉(BaMgAl10O17:Eu2+) 、そして(3) 緑色蛍光粉(CeMgAl10O17:Tb3+) をICP SPS−3000及びXRD により分析した。ICP 分析の前には、各蛍光粉の試料は、適量の炭酸ナトリウム及びH3BO3 と共に1100〜1200℃で20〜30分管焼いて熔融せしめ、次に蒸溜水に1:1 HCl 液を使用してゆっくりと溶解した。純粋な3色の蛍光粉は市販の蛍光体であり、それは蛍光灯や低電圧ディスプレイに広く使用されているもので、その粒子サイズは1〜10μm の範囲のもので、平均粒径は5 μm を下回るものである。比重を測定したところ、赤色蛍光粉では4.295 で青色蛍光粉では3.506 、そして緑色蛍光粉は4.062 であった。
表3に蛍光粉試料(samples) の組成を示し、図3にゼータポテンシャルの結果を示す。ゼータポテンシャル及び粒子サイズは、ELS−8000ゼータポテンシャルメーター(Otsuka Electronic Co., Ltd., Japan)を使用して調べた。
【0035】
【表3】
【0036】
実施例1と同様にして、TTA をヘプタンに溶解せしめた溶液を有機相とし、適切な量のPST とNa2CO3 を含有する水溶液を水相として使用した。上記の3色の蛍光粉末の混合物を水相に入れ、1〜2分間振り混ぜる。次に有機相対該水相の割合2:3(有機相:水相の容量比)で混合し、得られた混合物を室温で5分間振り混ぜる。少量の1−ペンタノールを添加して分離をより良好なものとした。青色蛍光粉を有機相からろ過して乾燥することにより回収した。次に水相にクロロホルム(場合により1−ペンタノールを所定の割合で混合)を添加し、緑色蛍光粉を選択的に抽出した。有機相対水相の割合は、1:5 〜1:1 の割合の容量比で混合した。
【0037】
〔各色の蛍光体単独試料を使用しての抽出処理〕
異なったpHで、TTA をヘプタンに溶解せしめた有機相で抽出を行った結果を、図4に示す。青色蛍光粉は、pH7〜11の範囲で選択的に有機相に抽出され、赤色や緑色の蛍光粉は殆ど抽出されなかった。溶液のpHの値が約10.34 の時にはほとんど100%の青色蛍光粉の抽出率であった。図3からも明らかなように、当該pHの値では、三種の蛍光粉のゼータポテンシャルの間にかなりの違いがある。つまり、青色蛍光粉のゼータポテンシャルは、他のものよりも大きい。抽出と粒子の表面電荷との間に関連性があると思われた。かくして、TTA により、青色蛍光粉を他のものから分離可能であることがわかる。
図5には、クロロホルム/PST 溶液系の結果を示してある。青色蛍光粉と緑色蛍光粉とは有機相(下相)に抽出された。pH7〜11の範囲で90% をこえる抽出率で、赤色蛍光粉は水相に分散しており、有機相へは10% より少ない分配の結果であった。かくして、二つの溶媒抽出プロセスを採用して3色の蛍光粉混合物をそれぞれの色の蛍光粉末に分離することが可能性のあるものであることが示された。
【0038】
〔青色蛍光体と緑色蛍光体の分離〕
青色蛍光体微粉末と緑色蛍光体微粉末とは互いに同様な化学的な成分からなり、その結晶形も似ているので、それらを互いに分離することは大変難しい。
表4にTTA を使用しての青色蛍光粉と緑色蛍光粉の抽出結果とpHとの関係をまとめたものを示す。至適pHは、約10.3であり、Na2CO3を水相のpH調整に使用するほうがNaOHを使用するより好ましいことがわかる。表5には、青色蛍光粉と緑色蛍光粉の分離に及ぼすTTA の濃度の影響の結果を示す。TTA の濃度が低くなるにしたがい速やかに抽出効率が増進する。一定の条件ではTTA の濃度が2.5 g/L の時に一番良い結果となっていた。しかし、TTA の濃度が低すぎると、青色蛍光粉を抽出できなくなり、悪い分配に結果となった。粉末(固体)と液体との比率や青色蛍光粉と緑色蛍光粉の分離に及ぼすPST の濃度についても調査した。その結果、TTA 2.5 g/L, pH 10.3, 固体/液体比 30g/L, PST 1% が至適条件であると結論付けた。
【0039】
【表4】
【0040】
【表5】
【0041】
〔蛍光体混合物からの赤色蛍光体の抽出分離処理〕
クロロホルム/PST 溶液系で他の蛍光体粉からの赤色蛍光粉の室温での分離につき、粉末(固体)と液体との比率、PST 濃度、工程の繰り返しの数、液のpHなどについて検討した。分離に及ぼすpHの作用を図6に示す。図6より好適なpHの範囲は7〜11の間であることがわかる。特に中性のpHでは90% をこえるグレード及び分配を示した。PST を使用して良好な選択性を得ることができるが、その濃度について調べた結果を図7に示す。図7より、PST の好適な濃度としては0.5 % 〜1.0%であることがわかる。本工程で1−ペンタノールを添加すると分離効率が促進される。赤色蛍光体分離に及ぼす1−ペンタノール/クロロホルム比の作用を調べた結果を図8に示す。1−ペンタノール/クロロホルム比の好ましい値は0.2 〜0.5 で、赤色蛍光体のグレード及び分配は90% をこえるものであった。1−ペンタノールはクロロホルムの抽出能を高める働きがある。粉末(固体)の濃度についてもその影響を調べた。粉末(固体)と液体との比率の分離に及ぼす作用を図9に示す。好適な固体/液体比は、5〜30 g/Lで、粉末の量が多過ぎたり、少な過ぎると好ましくはなかった。抽出回数を増やすと赤色蛍光粉の分離が良くなる。例えば3回抽出処理を行うと、1回よりは良い分離となった。同じ抽出条件で抽出操作を繰り返した場合の結果を図10に示す。赤色蛍光粉を他のものから分離するためには2回又は3回抽出操作を繰り返すことが好ましい。
【0042】
〔蛍光体混合物からの青色蛍光体の抽出処理〕
青色と緑色とを分離することと比較して、三種の蛍光体混合物からの青色蛍光体分離はより難しい。上記でpHやTTA 濃度の青色蛍光粉の抽出に及ぼす作用効果は論じたところである。基本的にはほぼ同様の仕方で処理したが、1−ペンタノールの少量を使用するという変更を加えてある。図11には、青色蛍光粉のグレード及び分配に及ぼす1−ペンタノール量の作用を調べた結果が示してある。PST 1%, pH 10.3, TTA 0.25%, 固体/液体比 2/3の条件下では0.05 ml の1−ペンタノール添加が良い結果となることが示されている。水相のpHを調節するためのNa2CO3の使用量の及ぼす効果を調べた結果を表6に示す。Na2CO3の使用量が0.03% 〜0.158%の範囲の場合、水性相のpHが安定しており、おおよそpH 10.3 であった。おおよそ0.058%のNa2CO3の使用量が好ましいとすることができた。
【0043】
【表6】
【0044】
実施例4
純粋な3色の蛍光粉、すなわち(1) 赤色蛍光粉(Y2O3:Eu3+) 、(2) 青色蛍光粉((Sr,Ca,Ba)10(PO4)6Cl2:Eu2+) 、そして(3) 緑色蛍光粉(LaPO4:Tb3+,Ce3+)
をICP SPS−3000及びXRD により分析した。ICP 分析の前には、各蛍光粉の試料は、HClO4:HNO3=1:1でもって沸点で処理し、次にHNO3:HCl=1:3液にゆっくりと溶解した。純粋な3色の蛍光粉は市販の蛍光体であり、それは蛍光灯や低電圧ディスプレイに使用されているもので、その粒子サイズは1〜3μm の範囲のもので、平均粒径は3μm を下回るものである。比重を測定したところ、赤色蛍光粉では5.12で青色蛍光粉では4.27、そして緑色蛍光粉は5.06であった。
表7に蛍光粉試料(samples) の組成を示し、図12にゼータポテンシャルの結果を示す。
【0045】
【表7】
【0046】
実施例2と同様にして、DMF/ヘプタン系で緑色蛍光粉を他のものから抽出する。ヘプタンにはDAA 又はステアリルアミンを溶解せしめた。蛍光粉の混合物(混合粉) をDAA 又はステアリルアミン存在下にDMF/ヘプタン系で2分間振り混ぜた。DMF/ヘプタンの容量比は、1:1とした。ヘプタン中に緑色蛍光粉を抽出せしめた後完全に他のものから分離した。DMF 相に残っていた赤色蛍光粉と青色蛍光粉をろ過してから、99.5% のエタノールで洗浄する。赤色蛍光粉と青色蛍光粉との分離処理を、1−オクタンスルホン酸ナトリウムを溶解したDMF を使用してDMF/ヘプタン系で行った。上相のヘプタン相には青色蛍光粉が、下相のDMF 相には赤色蛍光粉が入り、それぞれろ過後乾燥して、分離した粉が得られる。
【0047】
〔蛍光体混合物からの緑色蛍光体の抽出分離処理〕
陽イオン界面活性剤であるDAA 及びステアリルアミンを使用して分離操作を行った。各種の溶媒に溶解したDAA を使用しての緑色蛍光体の抽出の結果を表8に示す。比較的低分子の溶媒で良好な結果であった。
【0048】
【表8】
【0049】
本分離におけるDAA 濃度の作用を調べた結果を図13に示す。DAA 濃度の好ましい範囲は、1 ×10−4〜2 ×10−4 mol/Lであった。ステアリルアミンの場合の結果を表9及び図14に示す。図14から明らかなように、ステアリルアミンを使用した場合の挙動はDAA と同様な傾向のものであった。ステアリルアミンの濃度は 2×10−4〜3 ×10−4 mol/Lに制御することが好ましいことがわかる。
【0050】
【表9】
【0051】
〔青色蛍光体と赤色蛍光体との抽出分離処理〕
陰イオン界面活性剤であるラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS: C18H29SO3Na) と1−オクタンスルホン酸ナトリウムを使用して分離操作を行った。ヘプタン/DMF系で行った結果を図15及び16に示す。SDBSの濃度が約3×10−3mol/L の場合に良好な結果であった。1−オクタンスルホン酸ナトリウムを使用して分離操作を行った場合の溶媒の違いによる影響を調べた結果を表10に示す。n−ドデカン以外は大きな違いはなく、90% を超えるグレード及び分配が得られた。ヘプタンでは青色蛍光体及び赤色蛍光体で95% を超えるグレード及び分配が得られた。
【0052】
【表10】
【0053】
1−オクタンスルホン酸ナトリウムの濃度の及ぼす効果について調べた結果を図17(赤色蛍光体)及び図18(青色蛍光体)に示す。これより低濃度の1−オクタンスルホン酸ナトリウムでは分離が良くないことがわかる。1.85×10−3mol/L の1−オクタンスルホン酸ナトリウムの濃度で良好な結果が得られている。
〔三種の蛍光体混合物の抽出分離処理〕
先ず、分離に及ぼす粉末(固体)の濃度の影響を調べた。本分離の第一のプロセス(緑色蛍光体の分離)の結果を表11に示す。また、第二のプロセス(赤色蛍光体と青色蛍光体の分離)の結果を表12に示す。
【0054】
【表11】
【表12】
【0055】
粉末(固体)の濃度は、本分離の第一のプロセスでは、30 g/L程度が好ましく、第二のプロセスでは、35 g/L程度が好ましい。出発蛍光粉の混合物(混合粉)の組成の分離に及ぼす影響を調べた結果を表13に示す。分離の第一のプロセスは、ステアリルアミン 1.85 ×10 −4 mol/L, 粉末(固体)の濃度 24 g/L, ヘプタン/DMF比(容積比) 1:1 の条件で行った。
【0056】
【表13】
【0057】
【発明の効果】
本発明では、蛍光粉に使用されている微細粉末(数μm)である赤色粉末、緑色粉末、青色粉末等の混合粉を液液分離により、互いを分離せしめることを可能にするもので、希土類を含有する蛍光粉を酸に溶解することなく元の化学形のままその3原色に固体分離することができる。よって、分離回収された各蛍光粉を経済的且つ効率的に所定の蛍光輝度を得るように再生処理することも可能であり、それぞれの色の粉末は蛍光管の演色性に応じた比率に配合され、再び三波長高演色蛍光管用の蛍光粉として使用される。このように、本発明によって、高価かつ有限な希土類元素を有効に活用することが可能になる。
本発明は、前述の説明及び実施例に特に記載した以外も、実行できることは明らかである。上述の教示に鑑みて、本発明の多くの改変及び変形が可能であり、従ってそれらも本件添付の請求の範囲の範囲内のものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】水性溶液(水相)と油性溶液(油相)の間での液液分離を行う場合の蛍光粉混合物の分離フローシートを示す。
【図2】有機相(極性有機溶媒相)と油性溶液(油相)の間での液液分離を行う場合の蛍光粉混合物の分離フローシートを示す。
【図3】実施例3に示した三色の蛍光粉のゼータポテンシャル測定結果を示す。
【図4】TTA 含有油相を使用し異なるpHで抽出処理(条件: TTA 1%, PST 1%, 油相/水相比 1/3) した結果を示す。
【図5】クロロホルム/PST 溶液系での抽出とpHとの関係(条件: PST 0.05%,油相/水相比 2/3) を示す。
【図6】クロロホルム/PST 溶液系で他の蛍光体粉からの赤色蛍光粉分離に及ぼすpHの効果を示す(条件: 粉末(固体)/液体比 30 g/L, 1−ペンタノール/クロロホルム比 1/4) 。
【図7】クロロホルム/PST 溶液系で他の蛍光体粉からの赤色蛍光粉分離に及ぼすPST 濃度の効果を示す(条件: 粉末(固体)/液体比 30 g/L, 1−ペンタノール/クロロホルム比 1/4, 中性pH) 。
【図8】クロロホルム/PST 溶液系で他の蛍光体粉からの赤色蛍光粉分離に及ぼす1−ペンタノール/クロロホルム比の効果を示す(条件: 粉末(固体)/液体比 30 g/L, PST 0.25%, 中性pH) 。
【図9】クロロホルム/PST 溶液系で他の蛍光体粉からの赤色蛍光粉分離に及ぼす粉末(固体)濃度の効果を示す(条件: 油相/水相比 2/3, PST 0.25%,中性pH) 。
【図10】クロロホルム/PST 溶液系で他の蛍光体粉からの赤色蛍光粉分離に及ぼす処理繰り返し数の効果を示す(条件: 油相/水相比 2/3, PST 0.25%,中性pH) 。
【図11】青色蛍光粉のグレード及び分配に及ぼす1−ペンタノール使用量の効果を示す(条件: PST 1%, pH 10.3, TTA 0.251%)。
【図12】実施例4に示した三色の蛍光粉のゼータポテンシャル測定結果を示す。
【図13】蛍光体混合物からの緑色蛍光体の抽出分離処理におけるDAA 濃度の効果を示す。
【図14】蛍光体混合物からの緑色蛍光体の抽出分離処理におけるステアリルアミン濃度のの効果を示す。
【図15】青色と赤色蛍光体混合物からの赤色蛍光体の抽出分離に及ぼすSDBS濃度の効果を示す。
【図16】青色と赤色蛍光体混合物からの青色蛍光体の抽出分離に及ぼすSDBS濃度の効果を示す。
【図17】青色と赤色蛍光体混合物からの赤色蛍光体の抽出分離に及ぼすCH3(CH2)7SO3Na濃度の効果を示す。
【図18】青色と赤色蛍光体混合物からの青色蛍光体の抽出分離に及ぼすCH3(CH2)7SO3Na濃度の効果を示す。
【発明の属する技術分野】
本発明は、蛍光灯管(ブラウン管を含む)内部に使用されている蛍光粉末混合粉の分離回収方法に関する。本発明は廃棄された蛍光管から回収された希土類元素を含む3波長の蛍光粉をその母結晶を実質的に溶解などせしめることなく3波長成分のそれぞれに分離する固体分離技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境上の問題や、資源の有効利用という観点からも、廃棄される蛍光管、TVやコンピューターのモニターのブラウン管などの処理がクローズアップされてきている。資源回収、リサイクル、環境汚染の防止の観点から廃蛍光管(ブラウン管を含む)は、現在、ガラス、枠の金属、水銀の一部についてはその分離回収がなされ始めてきている。
ところが、蛍光管の内部に被覆されている蛍光粉については、使用済みの蛍光粉は発光効率が劣化しているため、従来は再使用されていなかった。また、該蛍光粉の粒子の分離は難しく、それの回収など行わずに廃棄されるか、あるいは高温溶融炉に入れられているのが実情であった。
蛍光管の分野では、近年、蛍光灯やブラウン管の演色性改善のために、赤・青・緑の可視光領域に半値幅の狭いピークを有する希土類化合物を含む蛍光粉を用いた蛍光管が普及してきた。これら蛍光粉は、具体的には, 例えば、青色にはユーロピウム(Eu)イオン(II) 、緑色にはテルビウム(Tb)イオン(III)、赤色にはユーロピウムイオン(III)を含んでいる。これら希土類元素の資源は我が国ではそれが産出しないことから、もっぱら輸入に依存している。また、世界的にも希少な元素で、その産出も限られたものであることから、その元素含有化合物は一般に高価である。こうした事情から、使用済の蛍光管やブラウン管など、蛍光体を使用している廃棄物(大量にある)から、そこに含まれる希土類元素を有効利用すべく、該蛍光体を分離回収して再利用することが求められている。
【0003】
こうした再利用技術として、蛍光粉中の希少元素をその種類毎に分離する方法が提案され、例えば希土類金属元素含有物をメカノケミカル処理を施した後酸に溶出せしめて希土類金属化合物を抽出したり(特許文献1)、レアメタル成分含有の廃棄蛍光材に対してメカノケミカル処理を施した後酸に溶出せしめてレアメタル成分を選択分離する(特許文献2)といった手法や、蛍光粉を酸に溶出した後、共沈法によって分離する方法(非特許文献1)などが提案されている。しかし、いづれも、一旦、化合物を酸に溶解する必要があるので、あとで元の化合物に還元する処理が必要となり、コストがかかり経済的に有用な方法とは言えず、実用的でない。
【0004】
廃蛍光管から回収された蛍光粉は劣化のため輝度が低下しているが、このような蛍光粉の再生法として劣化した蛍光粉を還元雰囲気中で高温で焼成する事により再生する方法も提案されている(特許文献3)。この方法では酸などによる処理を行わないため、元の結晶形は保持されるとあり、さらに、最適処理温度は蛍光体の種類毎に異なるとされているが、蛍光体の種類毎の分離方法については述べられていない。
廃蛍光管からの蛍光粉の分離法には、浮遊選別法を用いた報告もあるが、その分離成績は良くない。
このように現在までのところ、希土類を含有する蛍光粉の微細な結晶形を保持したまま、その種類毎に高効率で分離回収する方法は提案されていない。
【0005】
【特許文献1】
特開平11−71111号公報
【特許文献2】
特開2000−192167号公報
【特許文献3】
特開2002−302670号公報
【非特許文献1】
高橋徹 他、資源と素材、118: 413−418 (2002)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
希土類元素は世界的にも産出量が少なく希少価値が高いため、従来、廃蛍光管等に含まれる希土類元素を有効利用すべく、該廃蛍光管から得られた蛍光体を再利用する方法が検討されている。しかしながら、従来の処理方法では、蛍光体から希土類元素を溶出させるとか、分離された成分を新たに蛍光体として再構成するなど化学的な処理を行うため、その工程が複雑となるばかりでなく、コストもかかることとなり、経済性も悪いという問題がある。さらに、該溶剤によって蛍光体の母結晶が溶解されてしまい、再生不可能になるという問題もある。
3波長のそれぞれの蛍光体、すなわち、青色蛍光体、緑色蛍光体、そして赤色蛍光体をその結晶形を損なう事なくそれぞれに効率よく分離した後それを再生することができれば、その再生処理が簡単になるばかりでなく、効率的な分離回収再生利用にとって非常に有利である。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記した課題に鑑み、本発明者等は鋭意研究を行った結果、微細粒子の混合粉を液液分離をして互いに分離できることを知見し、本発明に至った。
本発明は、
〔1〕 蛍光体粉末を液液分離により分離回収することを特徴とする蛍光体の回収方法;
〔2〕 (1) 出発物質が廃棄物であり、廃棄物中の蛍光体を分離回収処理に付すこと、及び/又は(2) 出発物質が、青色蛍光体粉末、赤色蛍光体粉末及び緑色蛍光体粉末を含有する粉末混合物であることを特徴とする上記〔1〕記載の蛍光体の回収方法;
〔3〕 (A) 水性溶液と油性溶液の間での液液分離を行う工程を含有するか、あるいは
(B) 界面活性剤を含有する油性溶液と極性化合物からなる有機溶液の間での液液分離を行う工程を含有する
ことを特徴とする上記〔1〕又は〔2〕記載の蛍光体の回収方法;
〔4〕 上記〔3〕の(A) において、(a) 水性溶液が、ヒドロキシ有機酸のアルカリ塩又はアルカリ土類塩を含有するもので、(b) 油性溶液が、(1)(i)硫黄、酸素又は窒素含有の複素環残基置換フッ化ジケトン化合物及び(ii)アルカン類から成る群から選ばれたものを含有するもの、及び/又は(2)(i)ハロゲン化炭化水素類及び(ii)アルカノール類から成る群から選ばれたものを含有するものであり、上記〔3〕の(B) において、界面活性剤が(c) 陽イオン界面活性剤で、及び/又は(d) 陰イオン界面活性剤で、油性溶液がアルカン類を含有するもので、極性化合物が酸アミドであることを特徴とする上記〔3〕記載の蛍光体の回収方法;
〔5〕 上記〔4〕の水性溶液(a) が、(i) 酒石酸カリウムナトリウム及び(ii)炭酸のアルカリ塩又はアルカリ土類塩から成る群から選ばれたものを含有するもので、油性溶液(1) が、2−テノイルトリフルオロアセトン及びn−ヘプタンから成る群から選ばれたものを含有するもので、油性溶液(2) が、クロロホルム及び1−ペンタノールから成る群から選ばれたものを含有するもので、陽イオン界面活性剤(c) が、ラウリルアミン及びステアリルアミンから成る群から選ばれたもので、陰イオン界面活性剤(d) が、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩及び1−オクタンスルホン酸ナトリウム塩から成る群から選ばれたものであることを特徴とする上記〔4〕記載の蛍光体の回収方法;
【0008】
〔6〕 蛍光体粉末を液液分離により分離回収する蛍光体の回収方法であって、(A) 第一のプロセスでは、酒石酸カリウムナトリウム及び炭酸ナトリウムを含有する水性溶液を水相とし、2−テノイルトリフルオロアセトンを含有するn−ヘプタン液を油相として使用し、該水相に蛍光体粉末混合物を混合した後該水相と該油相とを混合し、ついで水相と油相とに分離し、該油相から蛍光体粉末を取得し、第二のプロセスでは、該第一のプロセスで得られた水性溶液を水相とし、クロロホルムと1−ペンタノールとの混合物を油相として使用し、該水相と該油相とを混合し、ついで水相と油相とに分離し、油相及び水相からそれぞれ蛍光体粉末を取得するか、あるいは
(B) 第一のプロセスでは、ドデシルアミンを含有するn−ヘプタン液を油相とし、N,N−ジメチルホルムアミドを極性有機相として使用し、該極性有機相に蛍光体粉末混合物を混合した後該極性有機相と該油相とを混合し、ついで極性有機相と油相とに分離し、該油相から蛍光体粉末を取得し、第二のプロセスでは、該第一のプロセスで得られた極性有機相より回収した蛍光体粉末混合物をN,N−ジメチルホルムアミドに混合して極性有機相とし、1−オクタンスルホン酸ナトリウムを含有するn−ヘプタン液を油相として使用し、該極性有機相と該油相とを混合し、ついで極性有機相と油相とに分離し、油相及び極性有機相からそれぞれ蛍光体粉末を取得する
ことを特徴とする上記〔1〕〜〔5〕のいずれか一記載の蛍光体の回収方法;
〔7〕 上記〔6〕の(A) の第一のプロセスにおいては、1−ペンタノールを系に添加し、上記〔6〕の(B) の第二のプロセスでは、第一のプロセスで得られた極性有機相より回収した蛍光体粉末混合物をエタノールで洗浄した後分離処理する、及び/又は出発蛍光体粉末混合物が青色蛍光体粉末、赤色蛍光体粉末及び緑色蛍光体粉末を含有する粉末混合物であり、上記〔6〕の(A) の第一のプロセスでは油相から青色蛍光体粉末を得、該(A) の第二のプロセスでは油相から緑色蛍光体粉末を得、水相から赤色蛍光体粉末を得るもので、上記〔6〕の(B) の第一のプロセスでは油相から緑色蛍光体粉末を得、該(B) の第二のプロセスでは油相から青色蛍光体粉末を得、極性有機相から赤色蛍光体粉末を得るものであることを特徴とする上記〔6〕記載の蛍光体の回収方法;
【0009】
〔8〕 青色蛍光体粉末、赤色蛍光体粉末及び緑色蛍光体粉末を含有する粉末混合物を液液分離により各色の蛍光体粉末に分離して回収する方法であって、約1%の酒石酸カリウムナトリウムと約0.058%の炭酸ナトリウムを含有する水溶液を水相とし、0.25%の2−テノイルトリフルオロアセトンを含有するn−ヘプタン液を油相として使用し、蛍光粉混合物を水相中に入れ撹拌後、該水相と油相を約3:2の割合で混合し、少量の1−ペンタノールを添加した後撹拌し、水相と油相に分離した後、油相から青色蛍光粉を得、該水相は1−ペンタノールとクロロホルムの混合物(1−ペンタノール:クロロホルム=約1:4)を油相として使用して、水相と油相の割合約3:2で混合し、混合物を撹拌後油相と水相に分離し、油相から緑色蛍光粉を得、水相から赤色蛍光粉を得ることを特徴とする蛍光体の分離回収方法;
〔9〕 青色蛍光体粉末、赤色蛍光体粉末及び緑色蛍光体粉末を含有する粉末混合物を液液分離により各色の蛍光体粉末に分離して回収する方法であって、約1.7 ×10−4〜3×10−4 mol/Lの濃度のドデシルアミンアセテートを含有するn−ヘプタン液を油相とし、N,N−ジメチルホルムアミドを極性有機相として使用し、蛍光粉混合物を極性有機相中に入れ撹拌後、該極性有機相と油相を約1:1の割合で混合し、極性有機相と油相に分離した後、油相から緑色蛍光粉を得、極性有機相から残りの蛍光粉混合物を得、次いで該残りの蛍光粉混合物をエタノールで洗浄後極性有機相中に入れ撹拌し、得られた極性有機相は、約約2.5 ×10−3〜5 ×10−3 mol/Lの濃度の1−オクタンスルホン酸ナトリウムを含有するn−ヘプタン液を油相としして、極性有機相と油相の割合約1:1で混合し、混合物を撹拌後油相と極性有機相に分離し、油相から青色蛍光粉を得、極性有機相から赤色蛍光粉を得ることを特徴とする蛍光体の分離回収方法を提供する。
【0010】
本発明によると、例えば青色蛍光粉であるBaMgAl10O17:Eu2+と緑色蛍光粉であるCeMgAl10O17:Tb3+のようにきわめて性質の似た化合物同士を界面活性剤を適宜選択することにより溶媒抽出により水相あるいは極性溶媒相と有機相に分離する事が可能となる。
本発明のその他の目的、特徴、優秀性及びその有する観点は、以下の記載より当業者にとっては明白であろう。しかしながら、以下の記載及び具体的な実施例等の記載を含めた本件明細書の記載は本発明の好ましい態様を示すものであり、説明のためにのみ示されているものであることを理解されたい。本明細書に開示した本発明の意図及び範囲内で、種々の変化及び/又は改変(あるいは修飾)をなすことは、以下の記載及び本明細書のその他の部分からの知識により、当業者には容易に明らかであろう。本明細書で引用されている全ての特許文献及び参考文献は、説明の目的で引用されているもので、それらは本明細書の一部としてその内容はここに含めて解釈されるべきものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明は廃蛍光管中の蛍光粉をその結晶形がきわめて類似しているものまで含めて結晶形を損なう事なく高効率で固体のまま分離することを可能にしたものである。
本発明では、希土類元素などのレアメタルを所定の化合物形態として含んでおり、特定の演色作用を示す蛍光体の微細粉末混合物を液液分離をして、例えば3波長蛍光管などから得られる廃蛍光体混合物では、青色、緑色、赤色の各単色蛍光体粉末にそれぞれ分離する技術を提供する。
本明細書中、レアメタルとは、希土類元素を包含していてよく、該希土類元素とは原子番号57のLa(ランタン)から原子番号71のLu(ルテチウム)までの15元素と、化学的性質が類似するSc(スカンジウム)とY(イットリウム)の2元素を加えた17元素を総称するものを包含してよい。そして、蛍光管に使用される蛍光体にはY をはじめ、La、Eu、Ce、Tbなど多くのレアメタルが含まれている。
【0012】
廃棄される三波長高演色蛍光管等に含まれる蛍光体(以下、単に蛍光体という)は青色、緑色、赤色の各単色蛍光体が混合された粉末状の物質であり、代表的には、下記4種類の複合酸化物からなるものが挙げられる。
(1) 青色蛍光体・・・BaMgAl10O17:Eu2+や(Sr,Ca,Ba)10(PO4)6Cl2:Eu2+など、BaMgAl10O17 あるいは(Sr,Ca,Ba)10(PO4)6Cl2 を主体としたものにEu2+を含むもの
(2) 緑色蛍光体・・・LaPO4:Ce3+,Tb3+など、LaPO4 を主体としたものにCe3+,Tb3+ などを含むものやCeMgAl10O17:Tb3+など、CeMgAl10O17 を主体としたものにTb3+などを含むもの
(3) 赤色蛍光体・・・Y2O3:Eu3+など、Y2O3 を主体としたものにEu3+などを含むもの
こうした蛍光管等に使用される蛍光体は、Sn, Eu, Ce, Tb, Mn, Sr, Y, La などの元素をはじめとしたレアメタルを含むものである。
【0013】
本発明において、蛍光体の微細粉末混合物の液液分離としては、水性溶液と油性溶液の間での液液分離、界面活性剤を含有する油性溶液と極性化合物からなる有機溶液の間での液液分離が挙げられる。
本発明の液液分離において使用する液相を形成する液体媒質としては、分離の対象である微細粉末混合物の構成体たる物質の結晶を溶解して、あるいはその構成成分の一部を溶解するなどして、実質的に悪影響を与えることのないものが好ましく、そうしたものであれば当該分野で当業者に知られたもののうちから適宜選択してそれを使用することができるが、好ましくは好適な分離を助けるものが挙げられる。例えば、蛍光体を構成する物質が水不溶性のものである場合は、水、水性アルコール、炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類などの有機化合物などを使用することができるし、反対に蛍光体を構成する物質が水溶性のものである場合は、極性有機化合物、炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類などの有機化合物などを使用できる。液相中には、キレート化剤、金属捕捉剤、界面活性剤、pH調整剤、アルコール類などを添加して分離を促進することができる。
【0014】
先ず、水性溶液と油性溶液の間での液液分離で、青色、緑色、赤色の蛍光体微細粉末混合物を分離するプロセスを以下説明する。本プロセスによる分離は、分離対象物中にPO4 イオンなどの水溶性のものが含まれていない場合に好適に使用できる。
本分離の第一のプロセスでは、水性溶液、すなわち、水相として水酸基及び/又はカルボキシル基を有する有機化合物の水溶液を使用する。該有機化合物としては、所要の分離性状の得られるものが好ましく、そうしたものであれば当該分野で当業者に知られたもののうちから適宜選択してそれを使用することができるが、好ましくは複数の水酸基及び/又は複数のカルボキシル基を有する有機化合物が挙げられる。該有機化合物の代表的なものとしては、炭素数1〜10個程度を有するものが挙げられるが、例えば酒石酸などは好ましい。該有機化合物がカルボキシル基を有する場合、該化合物は塩であってよく、該塩としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属などとの塩が挙げられる。本発明においては、酒石酸カリウムナトリウムを特に好適に使用できる。該化合物の水溶液中の濃度は、至適の分離を達成できるように実験を行って決定することができるが、例えば酒石酸カリウムナトリウムを使用した場合、約0 〜3.0%の濃度とすることができ、好ましいものとしては約0.2 〜1.5%の濃度であり、特には約0.5 〜1.0%の濃度である。
【0015】
水相にはpH調整剤を添加しておくことができ、また適切なpH調整剤の添加は分離を好ましいものとする。該pH調整剤としては、酸、アルカリ、塩などが挙げられ、例えば水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムなどが挙げられる。本発明においては、炭酸ナトリウムを特に好適に使用できる。
水相は、適宜適切な値に調整できるが、好ましくは所要の分離性状の得られるものがよく、例えばpH5〜12の範囲が挙げられ、好ましくはpH7〜11の範囲であり、特に好適にはpH約9〜10.5の範囲が挙げられる。好ましい代表的な場合ではpH10.3である。
油性溶液、すなわち、油相として、青色、緑色、赤色の蛍光体のうちのいずれか一つに特異的な構成元素あるいは特異的な構造(例えば、結晶形など)に対して親和性を有する試薬、例えばキレート化剤、金属捕捉剤、又は界面活性剤を溶媒に添加したものを使用する。代表的な場合、硫黄、酸素又は窒素含有の複素環残基置換フッ化ジケトン化合物を使用できる。本発明においては、2−テノイルトリフルオロアセトンを特に好適に使用できる。該化合物の溶媒中の濃度は、至適の分離を達成できるように実験を行って決定することができるが、例えば2−テノイルトリフルオロアセトンを使用した場合、約1.0 〜50 g/Lの濃度とすることができ、好ましいものとしては約1.5 〜10 g/Lの濃度であり、より好ましいものとしては約2.0 〜3 g/L の濃度であり、特には約2.5 g/L の濃度である。
【0016】
油相の溶媒としては、水混和性の無いものが好適に使用でき、所要の分離性状の得られるものが好ましく、そうしたものであれば当該分野で当業者に知られたもののうちから適宜選択してそれを使用することができるが、好ましいものとしては炭化水素類が挙げられる。炭化水素類としては、直鎖状又は分岐状及び/又は飽和又は不飽和のものであってよいが、好ましくは直鎖状又は分岐状で飽和の炭化水素類が挙げられる。該炭化水素類の炭素数は、好適には常温で液体のものが適宜選択使用できるのでそうした範囲のものであればよいが、好ましくは炭素数5〜16を有するものが挙げられる。該炭化水素類は、例えばn−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−デカン、n−ドデカン、n−ヘキサデカンなどから選択することができ、特に好適にn−ヘプタンを選択できる。
本分離の第一のプロセスでは、分離を補助するためにアルコール類を系に添加することができるし、好ましい場合がある。添加するアルコール類としては、当該分野で当業者に知られたもののうちから適宜選択してそれを使用することができるが、好ましくは1−ペンタノールが挙げられる。
【0017】
典型的な第一のプロセスでは、水に酒石酸カリウムナトリウムを1%とNa2CO3 を0.058%溶解させて水性液(水相)としたものに対して、三波長高演色蛍光管等に含まれる蛍光体の青色、緑色、赤色の混合物を混入せしめ、撹拌する。
次にこうして得られた水相を、0.25%の2−テノイルトリフルオロアセトンのn−ヘプタン溶液の油性液(有機相)と混合する。該水相と有機相との割合は、所要の分離性状の得られるものであればよいが、至適の分離を達成できるように実験を行って決定することができる。該水相と有機相との代表的な割合は、3:2である。また、溶液に添加する混合粉の量は、至適の分離を達成できるように実験を行って決定することができるが、代表的には水相と有機相をあわせた溶液に対して約3%である。分離を効果的にするために1−ペンタノールを少量添加することができる。全体を撹拌した後静置する。本第一のプロセスでは、有機相中に青色蛍光粉のみが抽出され、その有機相をろ過した後、乾燥して青色蛍光粉体を得る。一方、有機相を除去した後の水相には緑色と赤色の蛍光粉体混合物が残存する。該水相は本分離の第二のプロセスに付される。
【0018】
本分離の第二のプロセスでは、水性溶液、すなわち、水相として上記第一のプロセスで得られた水相を使用することができる。本第二のプロセスで使用される油性溶液、すなわち、油相としては、好適には緑色蛍光体に親和性を有するもの、あるいは赤色蛍光体への親和性を欠いたものであって、通常液体のものが使用でき、例えば水混和性の無いものが好適に使用でき、所要の分離性状の得られるものが好ましく、そうしたものであれば当該分野で当業者に知られたもののうちから適宜選択してそれを使用することができるが、好ましいものとしてはハロゲン化炭化水素類及び水酸基含有炭化水素類から成る群から選ばれたものが挙げられる。ハロゲン化炭化水素類としては、クロロホルムが好適なものとして挙げられる。水酸基含有炭化水素類としては、好適にはハロゲン化炭化水素類と混和性のものが挙げられ、例えば1−ペンタノールが好適なものとして挙げられる。好ましい油相としては、ハロゲン化炭化水素と水酸基含有炭化水素との混合物が挙げられ、特に好ましい油相としては、1−ペンタノールとクロロホルムの混合物である。油相として溶媒を混合して用いる場合、その比率は所要の分離性状の得られるものであればよいが、至適の分離を達成できるように実験を行って決定することができる。例えば1−ペンタノールとクロロホルムの混合の割合としては、1:4あるいはそれに類似した範囲が特に好ましい。
【0019】
典型的な本分離の第二のプロセスでは、上記第一のプロセスで得られた水相(緑色蛍光粉体と赤色蛍光粉体とを含有)を、1:4の割合で1−ペンタノールとクロロホルムとを混合した油相液と混合し、得られた混合物を撹拌する。該水相と有機相との割合は、所要の分離性状の得られるものであればよいが、至適の分離を達成できるように実験を行って決定することができる。該水相と有機相との代表的な割合は、3:2である。全体を撹拌した後静置する。本第二のプロセスでは、有機相中に緑色蛍光粉のみが入り、水相には赤色蛍光粉が残り、分離が達成される。
【0020】
次に、極性化合物からなる有機溶液と油性溶液の間での液液分離で、青色、緑色、赤色の蛍光体微細粉末混合物を分離するプロセスを以下説明する。
本分離の第一のプロセスでは、有機溶液、すなわち、有機相として、極性化合物を使用することができる。該極性化合物としては、極性のある有機化合物として当該分野で当業者に知られたもののうちから適宜選択してそれを使用することができるが、好ましくは酸アミド類が挙げられる。該酸アミド類の代表的なものとしては、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド(DMF) などのモノアルキル又はジアルキルホルムアミドなどが挙げられるが、例えばDMF などは好ましい。
油性溶液、すなわち、油相としては、界面活性剤を溶媒に添加したものを使用する。代表的な場合、陽イオン界面活性剤を使用できる。該陽イオン界面活性剤としては、アミノ基を含有する有機化合物が好適に使用でき、例えば、ラウリルアミン (n−ドデシルアミン) 、テトラドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ステアリルアミン (n−オクタドデシルアミン) などを好ましく使用できるが、n−ドデシルアミンを特に好適に使用できる。該化合物の溶媒中の濃度は、至適の分離を達成できるように実験を行って決定することができるが、例えばn−ドデシルアミンアセテートを使用した場合、約 0.5×10−4〜 7×10−4 mol/Lの濃度とすることができ、好ましいものとしては約1×10−4〜5×10−4 mol/Lの濃度であり、より好ましいものとしては約1.5 ×10−4〜4 ×10−4 mol/Lの濃度であり、特には約1.7 ×10−4〜3×10−4 mol/Lの濃度である。代表的なn−ドデシルアミンの濃度としては、約1.85×10−4 mol/Lである。
【0021】
油相の溶媒としては、上記極性有機相との混和性の無いものが好適に使用でき、所要の分離性状の得られるものが好ましく、そうしたものであれば当該分野で当業者に知られたもののうちから適宜選択してそれを使用することができるが、好ましいものとしては炭化水素類が挙げられる。炭化水素類としては、直鎖状又は分岐状及び/又は飽和又は不飽和のものであってよいが、好ましくは直鎖状又は分岐状で飽和の炭化水素類が挙げられる。該炭化水素類の炭素数は、好適には常温で液体のものが適宜選択使用できるのでそうした範囲のものであればよいが、好ましくは炭素数5〜16を有するものが挙げられる。該炭化水素類は、例えばn−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−デカン、n−ドデカン、n−ヘキサデカンなどから選択することができ、特に好適にn−ヘプタンを選択できる。
【0022】
典型的な第一のプロセスでは、DMF を有機相とし、これに対して、三波長高演色蛍光管等に含まれる蛍光体の青色、緑色、赤色の混合物を混入せしめ、撹拌する。液に添加する混合粉の量は、至適の分離を達成できるように実験を行って決定することができるが、代表的には約6重量%となるようにすればよい。
次にこうして得られた有機相を、約1.7 ×10−4〜3×10−4 mol/Lの濃度でn−ドデシルアミンアセテートを含有するn−ヘプタン溶液の油性液(油相)と混合する。該油相と有機相との割合は、所要の分離性状の得られるものであればよいが、至適の分離を達成できるように実験を行って決定することができる。該油相と有機相との代表的な割合は、1:1である。全体を撹拌した後静置する。本第一のプロセスでは、比重の低いヘプタン相(油相)は上部に、比重の大きいDMF 相(有機相)は下部にいき、上部のヘプタン相に緑色青色蛍光粉のみが抽出され、その油相をろ過した後、乾燥して緑色蛍光粉体を得る。一方、油相を除去した後のDMF 有機相には青色と赤色の蛍光粉体混合物が残存する。該DMF 有機相をろ過することにより、それより青色蛍光粉と赤色蛍光粉との粉体混合物を得る。この粉体混合物は、適宜洗浄後乾燥される。本分離では、該DMF 有機相のろ過により得られた粉体混合物は、例えばエタノールなどのアルコール類でよく洗った後ろ過して、乾燥される。該粉体混合物は本分離の第二のプロセスに付される。
【0023】
本分離の第二のプロセスでは、有機溶液、すなわち、有機相として、上記第一のプロセスの極性化合物を使用することができる。該極性化合物としては、例えばDMF などは好ましい。
油性溶液、すなわち、油相としては、界面活性剤を溶媒に添加したものを使用する。代表的な場合、陰イオン界面活性剤を使用できる。該陰イオン界面活性剤としては、スルホン酸を含有する有機化合物が好適に使用でき、例えば、脂肪族炭化水素残基あるいは芳香族炭化水素残基を有するスルホン酸などが挙げられ、例えばアルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩などが挙げられ、好ましくは1−オクタンスルホン酸ナトリウム、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどであり、1−オクタンスルホン酸ナトリウムを特に好適に使用できる。該化合物の溶媒中の濃度は、至適の分離を達成できるように実験を行って決定することができるが、例えば1−オクタンスルホン酸ナトリウムを使用した場合、約1×10−3〜10×10−3 mol/Lの濃度とすることができ、好ましいものとしては約1.5 ×10−3〜8 ×10−3 mol/Lの濃度であり、より好ましいものとしては約 2×10−3〜5 ×10−3 mol/Lの濃度であり、特には約3 ×10−3 mol/Lの濃度である。
【0024】
油相の溶媒としては、上記第一のプロセスのものと同様なものを使用することができる。該該炭化水素類は、例えばn−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−デカン、n−ドデカン、n−ヘキサデカンなどから選択することができ、特に好適にn−ヘプタンを選択できる。
典型的な第二のプロセスでは、DMF を有機相とし、これに対して、上記 第一のプロセスで得られた青色蛍光粉と赤色蛍光粉との粉体混合物を混入せしめ、撹拌する。次にこうして得られた有機相を、約0.05% の濃度で1−オクタンスルホン酸ナトリウムを含有するn−ヘプタン溶液の油性液(油相)と混合する。該油相と有機相との割合は、所要の分離性状の得られるものであればよいが、至適の分離を達成できるように実験を行って決定することができる。該油相と有機相との代表的な割合は、1:1である。混合液中の添加された混合粉の量は、至適の分離を達成できるように実験を行って決定することができるが、代表的には混合液に対して約2重量%である。全体を撹拌した後静置する。本第二のプロセスでは、上相のヘプタン相(油相)に、青色蛍光粉のみが抽出され、下相のDMF 相(有機相)に赤色蛍光粉のみが抽出される。それぞれの相を分けた後ろ過し乾燥することで、青色蛍光体粉末と赤色蛍光体粉末とが分離回収される。
【0025】
廃棄蛍光管からレアメタル成分を含有している蛍光体を取出す際は、予め金具と管内の水銀成分を除き、全体を粗砕して蛍光体を機械的に分離してからこれを分離処理にかけるのが望ましい。通常の蛍光管であれば二つ折り程度にすると蛍光体が一部剥離し、ガラス破片も多少同伴する。さらに、折れた蛍光管に振動を与えると蛍光体が95%以上剥離してくる。これをたとえば200メッシュ(目開き74ミクロン)のふるいにかけると、供給した70%程度にあたる蛍光体が殆ど回収され、ガラス成分が分離される。得られた蛍光体はさらに粉砕して微粉末にすることができる。かくして、青色蛍光体、赤色蛍光体および緑色蛍光体が混合した状態で回収される。
このように、分離回収用蛍光体は、通常廃蛍光管などとして廃棄され、回収されるものであるため、本発明の分離回収処理を行うにあたっては、まず前処理を行うことにより処理対象である蛍光体のみを分離、回収しておくことが好ましい。例えば、廃蛍光管より蛍光体のみを回収するには、上記したように該廃蛍光管を切断あるいは破砕することにより蛍光体を含む粉状物を金属およびガラスより分離回収し、分離回収された粉状物から蒸留等によって水銀を除去することにより、蛍光体のみを回収するなどしておくことができる。
本方法は希土類化合物を含む蛍光粉の分離に限定される訳ではなく、あらゆる金属元素を含む化合物の微細粒子の混合粉の分離に適用できる。
【0026】
【実施例】
以下に実施例を掲げ、本発明を具体的に説明するが、この実施例は単に本発明の説明のため、その具体的な態様の参考のために提供されているものである。これらの例示は本発明の特定の具体的な態様を説明するためのものであるが、本願で開示する発明の範囲を限定したり、あるいは制限することを表すものではない。本発明では、本明細書の思想に基づく様々な実施形態が可能であることは理解されるべきである。
全ての実施例は、他に詳細に記載するもの以外は、標準的な技術を用いて実施したもの、又は実施することのできるものであり、これは当業者にとり周知で慣用的なものである。
【0027】
実施例1
3色の蛍光粉、すなわち
(1) 赤色蛍光粉(Y2O3を主体にEu3+を含むもの)、
(2) 青色蛍光粉(BaMgAl10O17 を主体にEu2+を含むもの)、そして
(3) 緑色蛍光粉(CeMgAl10O17 を主体にTb3+を含むもの)
の混合物(約数μmサイズの微粉末の混合物)につき、水溶液と油層による液液分離を行った。
先ず、実験用の模擬試料混合粉(赤色、青色、緑色の蛍光粉をそれぞれ1:1:1の重量比で混合したもの)を作製し、分離のための模擬試料として使用した。2−テノイルトリフルオロアセトン(TTA, CF3COCH2COC4H3S)を0.25%の濃度となるようにn−ヘプタン(CH3(CH2)5CH3)中に溶解させ油性液(有機相)とする。水に酒石酸カリウムナトリウム(PST, KNaC4H4O6・4H2O)を1%とNa2CO3を0.058%溶解させて水性液(水相)とする。
【0028】
3色の蛍光粉の混合物(混合粉)を水相中に入れ、1〜2分間撹拌する。その後、水相と前述の有機相を3:2の割合で混合する。溶液に添加する混合粉の量は水相と有機相をあわせた溶液に対して約3%である。これに1−ペンタノール(CH3(CH2)4OH) を0.05ml添加することで、より分離が効果的になる。つぎに5分間撹拌する。油性溶液側(ヘプタン有機相中)に青色蛍光粉のみが抽出され、その油性溶液をろ過した後、乾燥して青色蛍光粉体を得る。
一方、ヘプタン有機相を除去した混合粉を含む水相は次のように処理して、それから緑色蛍光粉と赤色蛍光粉とに分離する。まず、油性液(有機相)として1−ペンタノールとクロロホルム(CHCl3) を1:4に混合したものを使用する。その有機相を該水相と混合する。水相と有機相の割合を3:2とし、混合物を撹拌すると、緑色蛍光粉のみが有機相に入り、水相の赤色蛍光粉と分離できる。
3種の蛍光粉を人工的に1:1:1で混合したものに対して、本処理法に従って分離した結果を表1に示す。本処理法の蛍光粉混合物の分離フローシート1を図1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
実施例2
3色の蛍光粉、すなわち
(1) 赤色蛍光粉(Y2O3を主体にEu3+を含むもの)、
(2) 青色蛍光粉((Sr,Ca,Ba)10(PO4)6Cl2 を主体にEu2+を含むもの)、そして
(3) 緑色蛍光粉(LaPO4 を主体にTb3+,Ce3+ を含むもの)
の混合物(約数μmサイズの微粉末の混合物)につき、有機相と油層による液液分離を行った。
先ず、実験用の模擬試料混合粉(赤色、青色、緑色の蛍光粉をそれぞれ1:1:1の重量比で混合したもの)を作製し、分離のための模擬試料として使用した。ドデシルアミンアセテート(DAA, CH3(CH2)10CH2NH・CH3COOH)を1.7 ×10−4〜3×10−4 mol/Lとなるようにn−ヘプタン(CH3(CH2)5CH3)中に溶解させ、油性層(ヘプタン相)とする。ヘプタンと同量のN,N−ジメチルホルムアミド(DMF, HCON(CH3)2) を用意し、これを有機相として使用する。
【0031】
蛍光粉の混合物(混合粉) を6%重量、DMF 中に入れ、1〜2分間撹拌する。その後、ヘプタン相を混合し5分間撹拌する。比重の低いヘプタン相は上部に、比重の重いDMF 相は下部に移動する。このとき、緑色蛍光粉のみがヘプタン相中に抽出される。分離した上相をろ過した後乾燥し、緑色蛍光粉が得られる。
一方、下相をろ過して赤色および青色蛍光粉の混合粉が得られる。この混合粉から試薬を洗浄するために粉の25倍重量のエタノールでよく洗浄してからろ過し、乾燥して混合粉を得る。この混合粉をDMF に入れて撹拌する。これに1−オクタンスルホン酸ナトリウム(CH3(CH2)7SO3Na)を0.05%溶解したヘプタンをDMF相と同量入れて、5分間かくはんする。混合液体に入っている混合粉の量は約2%重量である。上相のヘプタン相には青色蛍光粉が、下相のDMF 相には赤色蛍光粉が入り、それぞれろ過後乾燥して、分離した粉が得られる。3種の蛍光粉を人工的に1:1:1で混合したものを分離した結果を表2に示す。本処理法の蛍光粉混合物の分離フローシート2を図2に示す。
【0032】
【表2】
【0033】
実際の蛍光管から回収した蛍光粉混合物を試料として用いて本分離を同様にして行った。各種蛍光粉の結合剤として使用されたわずかなアルミナ(Al2O3)が部分的にその結合に関与していた。このアルミナを希薄ふっ酸、あるいは酸により処理することで、混合蛍光粉相互の結合をはずし単体分離させた。この蛍光粉を上記と同様な分離方法を試みたところ良好な相互分離ができ、緑色、赤色、青色の各種蛍光粉を分離回収することができた。
このように高効率の品位、分布率で回収された各種色の蛍光粉は、必要によりそれぞれを再生し、再度、ブレンドして新しい蛍光管に粉のまま入れて使用でき、エネルギー的にも経済的にも重要なリサイクル手法と考えられる。
【0034】
実施例3
純粋な3色の蛍光粉、すなわち(1) 赤色蛍光粉(Y2O3:Eu3+) 、(2) 青色蛍光粉(BaMgAl10O17:Eu2+) 、そして(3) 緑色蛍光粉(CeMgAl10O17:Tb3+) をICP SPS−3000及びXRD により分析した。ICP 分析の前には、各蛍光粉の試料は、適量の炭酸ナトリウム及びH3BO3 と共に1100〜1200℃で20〜30分管焼いて熔融せしめ、次に蒸溜水に1:1 HCl 液を使用してゆっくりと溶解した。純粋な3色の蛍光粉は市販の蛍光体であり、それは蛍光灯や低電圧ディスプレイに広く使用されているもので、その粒子サイズは1〜10μm の範囲のもので、平均粒径は5 μm を下回るものである。比重を測定したところ、赤色蛍光粉では4.295 で青色蛍光粉では3.506 、そして緑色蛍光粉は4.062 であった。
表3に蛍光粉試料(samples) の組成を示し、図3にゼータポテンシャルの結果を示す。ゼータポテンシャル及び粒子サイズは、ELS−8000ゼータポテンシャルメーター(Otsuka Electronic Co., Ltd., Japan)を使用して調べた。
【0035】
【表3】
【0036】
実施例1と同様にして、TTA をヘプタンに溶解せしめた溶液を有機相とし、適切な量のPST とNa2CO3 を含有する水溶液を水相として使用した。上記の3色の蛍光粉末の混合物を水相に入れ、1〜2分間振り混ぜる。次に有機相対該水相の割合2:3(有機相:水相の容量比)で混合し、得られた混合物を室温で5分間振り混ぜる。少量の1−ペンタノールを添加して分離をより良好なものとした。青色蛍光粉を有機相からろ過して乾燥することにより回収した。次に水相にクロロホルム(場合により1−ペンタノールを所定の割合で混合)を添加し、緑色蛍光粉を選択的に抽出した。有機相対水相の割合は、1:5 〜1:1 の割合の容量比で混合した。
【0037】
〔各色の蛍光体単独試料を使用しての抽出処理〕
異なったpHで、TTA をヘプタンに溶解せしめた有機相で抽出を行った結果を、図4に示す。青色蛍光粉は、pH7〜11の範囲で選択的に有機相に抽出され、赤色や緑色の蛍光粉は殆ど抽出されなかった。溶液のpHの値が約10.34 の時にはほとんど100%の青色蛍光粉の抽出率であった。図3からも明らかなように、当該pHの値では、三種の蛍光粉のゼータポテンシャルの間にかなりの違いがある。つまり、青色蛍光粉のゼータポテンシャルは、他のものよりも大きい。抽出と粒子の表面電荷との間に関連性があると思われた。かくして、TTA により、青色蛍光粉を他のものから分離可能であることがわかる。
図5には、クロロホルム/PST 溶液系の結果を示してある。青色蛍光粉と緑色蛍光粉とは有機相(下相)に抽出された。pH7〜11の範囲で90% をこえる抽出率で、赤色蛍光粉は水相に分散しており、有機相へは10% より少ない分配の結果であった。かくして、二つの溶媒抽出プロセスを採用して3色の蛍光粉混合物をそれぞれの色の蛍光粉末に分離することが可能性のあるものであることが示された。
【0038】
〔青色蛍光体と緑色蛍光体の分離〕
青色蛍光体微粉末と緑色蛍光体微粉末とは互いに同様な化学的な成分からなり、その結晶形も似ているので、それらを互いに分離することは大変難しい。
表4にTTA を使用しての青色蛍光粉と緑色蛍光粉の抽出結果とpHとの関係をまとめたものを示す。至適pHは、約10.3であり、Na2CO3を水相のpH調整に使用するほうがNaOHを使用するより好ましいことがわかる。表5には、青色蛍光粉と緑色蛍光粉の分離に及ぼすTTA の濃度の影響の結果を示す。TTA の濃度が低くなるにしたがい速やかに抽出効率が増進する。一定の条件ではTTA の濃度が2.5 g/L の時に一番良い結果となっていた。しかし、TTA の濃度が低すぎると、青色蛍光粉を抽出できなくなり、悪い分配に結果となった。粉末(固体)と液体との比率や青色蛍光粉と緑色蛍光粉の分離に及ぼすPST の濃度についても調査した。その結果、TTA 2.5 g/L, pH 10.3, 固体/液体比 30g/L, PST 1% が至適条件であると結論付けた。
【0039】
【表4】
【0040】
【表5】
【0041】
〔蛍光体混合物からの赤色蛍光体の抽出分離処理〕
クロロホルム/PST 溶液系で他の蛍光体粉からの赤色蛍光粉の室温での分離につき、粉末(固体)と液体との比率、PST 濃度、工程の繰り返しの数、液のpHなどについて検討した。分離に及ぼすpHの作用を図6に示す。図6より好適なpHの範囲は7〜11の間であることがわかる。特に中性のpHでは90% をこえるグレード及び分配を示した。PST を使用して良好な選択性を得ることができるが、その濃度について調べた結果を図7に示す。図7より、PST の好適な濃度としては0.5 % 〜1.0%であることがわかる。本工程で1−ペンタノールを添加すると分離効率が促進される。赤色蛍光体分離に及ぼす1−ペンタノール/クロロホルム比の作用を調べた結果を図8に示す。1−ペンタノール/クロロホルム比の好ましい値は0.2 〜0.5 で、赤色蛍光体のグレード及び分配は90% をこえるものであった。1−ペンタノールはクロロホルムの抽出能を高める働きがある。粉末(固体)の濃度についてもその影響を調べた。粉末(固体)と液体との比率の分離に及ぼす作用を図9に示す。好適な固体/液体比は、5〜30 g/Lで、粉末の量が多過ぎたり、少な過ぎると好ましくはなかった。抽出回数を増やすと赤色蛍光粉の分離が良くなる。例えば3回抽出処理を行うと、1回よりは良い分離となった。同じ抽出条件で抽出操作を繰り返した場合の結果を図10に示す。赤色蛍光粉を他のものから分離するためには2回又は3回抽出操作を繰り返すことが好ましい。
【0042】
〔蛍光体混合物からの青色蛍光体の抽出処理〕
青色と緑色とを分離することと比較して、三種の蛍光体混合物からの青色蛍光体分離はより難しい。上記でpHやTTA 濃度の青色蛍光粉の抽出に及ぼす作用効果は論じたところである。基本的にはほぼ同様の仕方で処理したが、1−ペンタノールの少量を使用するという変更を加えてある。図11には、青色蛍光粉のグレード及び分配に及ぼす1−ペンタノール量の作用を調べた結果が示してある。PST 1%, pH 10.3, TTA 0.25%, 固体/液体比 2/3の条件下では0.05 ml の1−ペンタノール添加が良い結果となることが示されている。水相のpHを調節するためのNa2CO3の使用量の及ぼす効果を調べた結果を表6に示す。Na2CO3の使用量が0.03% 〜0.158%の範囲の場合、水性相のpHが安定しており、おおよそpH 10.3 であった。おおよそ0.058%のNa2CO3の使用量が好ましいとすることができた。
【0043】
【表6】
【0044】
実施例4
純粋な3色の蛍光粉、すなわち(1) 赤色蛍光粉(Y2O3:Eu3+) 、(2) 青色蛍光粉((Sr,Ca,Ba)10(PO4)6Cl2:Eu2+) 、そして(3) 緑色蛍光粉(LaPO4:Tb3+,Ce3+)
をICP SPS−3000及びXRD により分析した。ICP 分析の前には、各蛍光粉の試料は、HClO4:HNO3=1:1でもって沸点で処理し、次にHNO3:HCl=1:3液にゆっくりと溶解した。純粋な3色の蛍光粉は市販の蛍光体であり、それは蛍光灯や低電圧ディスプレイに使用されているもので、その粒子サイズは1〜3μm の範囲のもので、平均粒径は3μm を下回るものである。比重を測定したところ、赤色蛍光粉では5.12で青色蛍光粉では4.27、そして緑色蛍光粉は5.06であった。
表7に蛍光粉試料(samples) の組成を示し、図12にゼータポテンシャルの結果を示す。
【0045】
【表7】
【0046】
実施例2と同様にして、DMF/ヘプタン系で緑色蛍光粉を他のものから抽出する。ヘプタンにはDAA 又はステアリルアミンを溶解せしめた。蛍光粉の混合物(混合粉) をDAA 又はステアリルアミン存在下にDMF/ヘプタン系で2分間振り混ぜた。DMF/ヘプタンの容量比は、1:1とした。ヘプタン中に緑色蛍光粉を抽出せしめた後完全に他のものから分離した。DMF 相に残っていた赤色蛍光粉と青色蛍光粉をろ過してから、99.5% のエタノールで洗浄する。赤色蛍光粉と青色蛍光粉との分離処理を、1−オクタンスルホン酸ナトリウムを溶解したDMF を使用してDMF/ヘプタン系で行った。上相のヘプタン相には青色蛍光粉が、下相のDMF 相には赤色蛍光粉が入り、それぞれろ過後乾燥して、分離した粉が得られる。
【0047】
〔蛍光体混合物からの緑色蛍光体の抽出分離処理〕
陽イオン界面活性剤であるDAA 及びステアリルアミンを使用して分離操作を行った。各種の溶媒に溶解したDAA を使用しての緑色蛍光体の抽出の結果を表8に示す。比較的低分子の溶媒で良好な結果であった。
【0048】
【表8】
【0049】
本分離におけるDAA 濃度の作用を調べた結果を図13に示す。DAA 濃度の好ましい範囲は、1 ×10−4〜2 ×10−4 mol/Lであった。ステアリルアミンの場合の結果を表9及び図14に示す。図14から明らかなように、ステアリルアミンを使用した場合の挙動はDAA と同様な傾向のものであった。ステアリルアミンの濃度は 2×10−4〜3 ×10−4 mol/Lに制御することが好ましいことがわかる。
【0050】
【表9】
【0051】
〔青色蛍光体と赤色蛍光体との抽出分離処理〕
陰イオン界面活性剤であるラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS: C18H29SO3Na) と1−オクタンスルホン酸ナトリウムを使用して分離操作を行った。ヘプタン/DMF系で行った結果を図15及び16に示す。SDBSの濃度が約3×10−3mol/L の場合に良好な結果であった。1−オクタンスルホン酸ナトリウムを使用して分離操作を行った場合の溶媒の違いによる影響を調べた結果を表10に示す。n−ドデカン以外は大きな違いはなく、90% を超えるグレード及び分配が得られた。ヘプタンでは青色蛍光体及び赤色蛍光体で95% を超えるグレード及び分配が得られた。
【0052】
【表10】
【0053】
1−オクタンスルホン酸ナトリウムの濃度の及ぼす効果について調べた結果を図17(赤色蛍光体)及び図18(青色蛍光体)に示す。これより低濃度の1−オクタンスルホン酸ナトリウムでは分離が良くないことがわかる。1.85×10−3mol/L の1−オクタンスルホン酸ナトリウムの濃度で良好な結果が得られている。
〔三種の蛍光体混合物の抽出分離処理〕
先ず、分離に及ぼす粉末(固体)の濃度の影響を調べた。本分離の第一のプロセス(緑色蛍光体の分離)の結果を表11に示す。また、第二のプロセス(赤色蛍光体と青色蛍光体の分離)の結果を表12に示す。
【0054】
【表11】
【表12】
【0055】
粉末(固体)の濃度は、本分離の第一のプロセスでは、30 g/L程度が好ましく、第二のプロセスでは、35 g/L程度が好ましい。出発蛍光粉の混合物(混合粉)の組成の分離に及ぼす影響を調べた結果を表13に示す。分離の第一のプロセスは、ステアリルアミン 1.85 ×10 −4 mol/L, 粉末(固体)の濃度 24 g/L, ヘプタン/DMF比(容積比) 1:1 の条件で行った。
【0056】
【表13】
【0057】
【発明の効果】
本発明では、蛍光粉に使用されている微細粉末(数μm)である赤色粉末、緑色粉末、青色粉末等の混合粉を液液分離により、互いを分離せしめることを可能にするもので、希土類を含有する蛍光粉を酸に溶解することなく元の化学形のままその3原色に固体分離することができる。よって、分離回収された各蛍光粉を経済的且つ効率的に所定の蛍光輝度を得るように再生処理することも可能であり、それぞれの色の粉末は蛍光管の演色性に応じた比率に配合され、再び三波長高演色蛍光管用の蛍光粉として使用される。このように、本発明によって、高価かつ有限な希土類元素を有効に活用することが可能になる。
本発明は、前述の説明及び実施例に特に記載した以外も、実行できることは明らかである。上述の教示に鑑みて、本発明の多くの改変及び変形が可能であり、従ってそれらも本件添付の請求の範囲の範囲内のものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】水性溶液(水相)と油性溶液(油相)の間での液液分離を行う場合の蛍光粉混合物の分離フローシートを示す。
【図2】有機相(極性有機溶媒相)と油性溶液(油相)の間での液液分離を行う場合の蛍光粉混合物の分離フローシートを示す。
【図3】実施例3に示した三色の蛍光粉のゼータポテンシャル測定結果を示す。
【図4】TTA 含有油相を使用し異なるpHで抽出処理(条件: TTA 1%, PST 1%, 油相/水相比 1/3) した結果を示す。
【図5】クロロホルム/PST 溶液系での抽出とpHとの関係(条件: PST 0.05%,油相/水相比 2/3) を示す。
【図6】クロロホルム/PST 溶液系で他の蛍光体粉からの赤色蛍光粉分離に及ぼすpHの効果を示す(条件: 粉末(固体)/液体比 30 g/L, 1−ペンタノール/クロロホルム比 1/4) 。
【図7】クロロホルム/PST 溶液系で他の蛍光体粉からの赤色蛍光粉分離に及ぼすPST 濃度の効果を示す(条件: 粉末(固体)/液体比 30 g/L, 1−ペンタノール/クロロホルム比 1/4, 中性pH) 。
【図8】クロロホルム/PST 溶液系で他の蛍光体粉からの赤色蛍光粉分離に及ぼす1−ペンタノール/クロロホルム比の効果を示す(条件: 粉末(固体)/液体比 30 g/L, PST 0.25%, 中性pH) 。
【図9】クロロホルム/PST 溶液系で他の蛍光体粉からの赤色蛍光粉分離に及ぼす粉末(固体)濃度の効果を示す(条件: 油相/水相比 2/3, PST 0.25%,中性pH) 。
【図10】クロロホルム/PST 溶液系で他の蛍光体粉からの赤色蛍光粉分離に及ぼす処理繰り返し数の効果を示す(条件: 油相/水相比 2/3, PST 0.25%,中性pH) 。
【図11】青色蛍光粉のグレード及び分配に及ぼす1−ペンタノール使用量の効果を示す(条件: PST 1%, pH 10.3, TTA 0.251%)。
【図12】実施例4に示した三色の蛍光粉のゼータポテンシャル測定結果を示す。
【図13】蛍光体混合物からの緑色蛍光体の抽出分離処理におけるDAA 濃度の効果を示す。
【図14】蛍光体混合物からの緑色蛍光体の抽出分離処理におけるステアリルアミン濃度のの効果を示す。
【図15】青色と赤色蛍光体混合物からの赤色蛍光体の抽出分離に及ぼすSDBS濃度の効果を示す。
【図16】青色と赤色蛍光体混合物からの青色蛍光体の抽出分離に及ぼすSDBS濃度の効果を示す。
【図17】青色と赤色蛍光体混合物からの赤色蛍光体の抽出分離に及ぼすCH3(CH2)7SO3Na濃度の効果を示す。
【図18】青色と赤色蛍光体混合物からの青色蛍光体の抽出分離に及ぼすCH3(CH2)7SO3Na濃度の効果を示す。
Claims (7)
- 蛍光体粉末を液液分離により分離回収することを特徴とする蛍光体の回収方法。
- (1) 出発物質が廃棄物であり、廃棄物中の蛍光体を分離回収処理に付すこと、及び/又は(2) 出発物質が、青色蛍光体粉末、赤色蛍光体粉末及び緑色蛍光体粉末を含有する粉末混合物であることを特徴とする請求項1記載の蛍光体の回収方法。
- (A) 水性溶液と油性溶液の間での液液分離を行う工程を含有するか、あるいは
(B) 界面活性剤を含有する油性溶液と極性化合物からなる有機溶液の間での液液分離を行う工程を含有する
ことを特徴とする請求項1又は2記載の蛍光体の回収方法。 - 請求項3の(A) において、(a) 水性溶液が、ヒドロキシ有機酸のアルカリ塩又はアルカリ土類塩を含有するもので、(b) 油性溶液が、(1)(i)硫黄、酸素又は窒素含有の複素環残基置換フッ化ジケトン化合物及び(ii)アルカン類から成る群から選ばれたものを含有するもの、及び/又は(2)(i)ハロゲン化炭化水素類及び(ii)アルカノール類から成る群から選ばれたものを含有するものであり、請求項3の(B) において、界面活性剤が(c) 陽イオン界面活性剤で、及び/又は(d) 陰イオン界面活性剤で、油性溶液がアルカン類を含有するもので、極性化合物が酸アミドであることを特徴とする請求項3記載の蛍光体の回収方法。
- 請求項4の水性溶液(a) が、(i) 酒石酸カリウムナトリウム及び(ii)炭酸のアルカリ塩又はアルカリ土類塩から成る群から選ばれたものを含有するもので、油性溶液(1) が、2−テノイルトリフルオロアセトン及びn−ヘプタンから成る群から選ばれたものを含有するもので、油性溶液(2) が、クロロホルム及び1−ペンタノールから成る群から選ばれたものを含有するもので、陽イオン界面活性剤(c) が、ラウリルアミン及びステアリルアミンから成る群から選ばれたもので、陰イオン界面活性剤(d) が、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩及び1−オクタンスルホン酸ナトリウム塩から成る群から選ばれたものであることを特徴とする請求項4記載の蛍光体の回収方法。
- 蛍光体粉末を液液分離により分離回収する蛍光体の回収方法であって、
(A) 第一のプロセスでは、酒石酸カリウムナトリウム及び炭酸ナトリウムを含有する水性溶液を水相とし、2−テノイルトリフルオロアセトンを含有するn−ヘプタン液を油相として使用し、該水相に蛍光体粉末混合物を混合した後該水相と該油相とを混合し、ついで水相と油相とに分離し、該油相から蛍光体粉末を取得し、第二のプロセスでは、該第一のプロセスで得られた水性溶液を水相とし、クロロホルムと1−ペンタノールとの混合物を油相として使用し、該水相と該油相とを混合し、ついで水相と油相とに分離し、油相及び水相からそれぞれ蛍光体粉末を取得するか、あるいは
(B) 第一のプロセスでは、ドデシルアミンを含有するn−ヘプタン液を油相とし、N,N−ジメチルホルムアミドを極性有機相として使用し、該極性有機相に蛍光体粉末混合物を混合した後該極性有機相と該油相とを混合し、ついで極性有機相と油相とに分離し、該油相から蛍光体粉末を取得し、第二のプロセスでは、該第一のプロセスで得られた極性有機相より回収した蛍光体粉末混合物をN,N−ジメチルホルムアミドに混合して極性有機相とし、1−オクタンスルホン酸ナトリウムを含有するn−ヘプタン液を油相として使用し、該極性有機相と該油相とを混合し、ついで極性有機相と油相とに分離し、油相及び極性有機相からそれぞれ蛍光体粉末を取得する
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一記載の蛍光体の回収方法。 - 請求項6の(A) の第一のプロセスにおいては、1−ペンタノールを系に添加し、請求項6の(B) の第二のプロセスでは、第一のプロセスで得られた極性有機相より回収した蛍光体粉末混合物をエタノールで洗浄した後分離処理する、及び/又は出発蛍光体粉末混合物が青色蛍光体粉末、赤色蛍光体粉末及び緑色蛍光体粉末を含有する粉末混合物であり、請求項6の(A) の第一のプロセスでは油相から青色蛍光体粉末を得、該(A) の第二のプロセスでは油相から緑色蛍光体粉末を得、水相から赤色蛍光体粉末を得るもので、請求項6の(B) の第一のプロセスでは油相から緑色蛍光体粉末を得、該(B) の第二のプロセスでは油相から青色蛍光体粉末を得、極性有機相から赤色蛍光体粉末を得るものであることを特徴とする請求項6記載の蛍光体の回収方法。
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